説明

波形合成樹脂管の接続構造

【課題】管端部の内周面に別途構成した抜け止め部材を装着するということが必要なくなり、組み付けが容易で製造コストを低減でき、また、現場にて衝撃等で抜け止め部材が外れても容易に修復でき、作業性の低下を引き起こすことがなくなり、しかも管を外す際にも優れた作業性を有する波形合成樹脂管の継手構造を提供せんとする。
【解決手段】波形合成樹脂管の管端部20Aの外周面の凹部21に、複数個の抜け止め部材30を周方向に連設してなる抜け止めリング3を装着するとともに、抜け止めリング3を装着した状態の波形合成樹脂管の管端部20Aを受け入れる合成樹脂製のソケット部11Aを設け、抜け止めリング3に、該リング外周面上に突出する掛止爪31を設け、ソケット部11Aの周壁の前記受け入れた抜け止めリング3の掛止爪31に対応する位置に貫通穴12を形成し、掛止爪31が貫通穴12の開口縁部12aに係合して抜け止めとして機能する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば地中に埋設されたり地上で建屋に配設される電力・通信ケーブル保護管や排水管等として好適に用いられる波形合成樹脂管の接続構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の波形合成樹脂管は、通常ブロー成形等により構成され、内周面には凹凸形状を構成することは可能であっても、角部に明確なエッジを形成することができず、アール状に角の取れた丸い凹凸形状となる。したがって、このような波形合成樹脂管を接続する接続継手構造においては、通常、一方の管端部の内周面に、抜け止め用の係止手段を備える抜け止め部材を別途装着し、他方の管外周面に形成される爪に係合させることとした構造が一般的である。
【0003】
例えば、特許文献1の継手構造においても、一方の雄側継手部は、管端部から延設された挿口部とこの挿口部先端においてその円周上に等間隔に配設された係止用突部と挿口部の基端部にリング状シール材を装着するための溝部を備えており、他方の雌側継手部は、挿入口が装着される受口部とこの受口部内に設けられ上記挿口部の係止用突部を係止する抜け止め手段とを備えており、この抜け止め手段として、上記受口部内に形成された環状溝と、その環状溝に装着されるリング状支持体と、このリング状支持体から挿込み方向と逆方向に向けて収束する状態で延設される複数の係止片とを有し、これらの係止片は、上記挿口部の挿入時に上記係止用突部に押圧されて先を広げる方向に弾性変形し、上記係止用突部が通過することにより収束状態に復帰し、上記係止用突部の後部を係止するように構成されている。
【0004】
しかしながら、従来のように管端部の内周面に別途構成した抜け止め部材を装着する構造は、当該抜け止め部材の組み付けが手間であり、コスト上昇の原因となる。また、現場にて管を連結する際に衝撃等で外れてしまい易く、作業性が低下する原因となる。更に、一度装着すると外しにくいという構造上の問題点もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006ー292052号公報(第5図〜第15図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明が前述の状況に鑑み、解決しようとするところは、管端部の内周面に別途構成した抜け止め部材を装着するということが必要なくなり、組み付けが容易で製造コストを低減でき、また、現場にて衝撃等で抜け止め部材が外れても容易に修復でき、作業性の低下を引き起こすことがなくなり、しかも管を外す際にも優れた作業性を有する波形合成樹脂管の継手構造を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前述の課題解決のために、波形合成樹脂管の管端部の外周面の凹部に、複数個の抜け止め部材を周方向に連設してなる抜け止めリングを装着するとともに、前記抜け止めリングを装着した状態の前記波形合成樹脂管の管端部を受け入れる合成樹脂製のソケット部を設け、前記抜け止めリングに、該リング外周面上に突出する掛止爪を設け、前記ソケット部の周壁の前記受け入れた抜け止めリングの掛止爪に対応する位置に貫通穴を形成し、前記掛止爪が前記貫通穴の開口縁部に係合して抜け止めとして機能することを特徴とする波形合成樹脂管の継手構造を提供する。
【0008】
ここで、前記貫通穴をソケット部成形後の後加工により形成した構造が好ましい。
【0009】
また、前記ソケット部の周壁の前記開口縁部若しくはその近傍に、段差部を設けたものが好ましい。
【0010】
また本発明は、波形合成樹脂管の管端部の外周面の凹部に、複数個の抜け止め部材を周方向に連設してなる抜け止めリングを装着するとともに、前記抜け止めリングを装着した状態の前記波形合成樹脂管の管端部を受け入れる合成樹脂製のソケット部を設け、前記抜け止めリングに、該リング外周面上に突出する掛止爪を設け、前記ソケット部の内周面の前記受け入れた抜け止めリングに対応する位置に、前記掛止爪が係合する凹溝を内面側に有する係合部を設け、前記掛止爪が前記係合部の凹溝に係合して抜け止めとして機能することを特徴とする波形合成樹脂管の継手構造をも提供する。
【0011】
ここで、前記係合部として、前記凹溝が内面側に形成された係合部材を、前記ソケット部の内周面に別途取り付けてなる構造が好ましい。
【0012】
前記抜け止め部材は、内周面に前記管端部外周面の凹部に嵌合する凸部を有し、且つ外周面に前記掛止爪を有する合成樹脂成形品よりなるものが好ましい。
【0013】
また、前記ソケット部の内周面に、受け入れた管端部の前記抜け止めリングよりも先端側の部位に密着するシール部材を装着した構造が好ましい。
【0014】
また、合成樹脂製の筒状本体の両端部にそれぞれ前記ソケット部を有する中間継手装置を設け、2本の波形合成樹脂管の各管端部の外周面の凹部に、それぞれ前記抜け止めリングを装着し、2本の波形合成樹脂管が前記中間継手装置を介して接続される構造が好ましい。。
【0015】
さらに、前記抜け止め状態において、前記ソケット部の外側から周壁を貫通して前記抜け止めリングに固定されるピン又はビスを設けてなることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
以上にしてなる本願発明に係る波形合成樹脂管の継手構造は、管端部の外周面に抜け止めリングを装着し、ソケット部の周壁に貫通穴を設けて、この貫通穴の開口縁部を利用して抜け止めリングの掛止爪を係合させる構造としたので、ブロー成形でソケット部を成形した場合にも貫通穴の縁部にはエッジがされ、確実な係合状態を維持できる優れた抜け止め機能を奏する。したがって、従来のような内周面に別途の抜け止め部材を設ける必要がなくなり、組み付けは管端部の外周面に抜け止めリングを組み付けるだけで済み、製造コストを低減できるとともに現場にて衝撃等で抜け止め部材が外れても容易に組み直すことができ、作業性の低下を引き起こすことがなくなる。また、管を外す際にも、この貫通穴から工具等を差し込んで係合状態を容易に解除することが可能となり、優れた作業性を有する。
【0017】
このような貫通穴をソケット部成形後の後加工により容易に形成することができる。
【0018】
また、ソケット部の周壁の前記開口縁部若しくはその近傍に、段差部を設けたので、貫通穴の存在により低下する変形強度が補強され、掛止爪との係合状態を確実に維持でき、優れた抜け止め機能を維持できる。
【0019】
また、抜け止め部材は、内周面に前記管端部外周面の凹部に嵌合する凸部を有し、且つ外周面に前記掛止爪を有する合成樹脂成形品よりなるので、通常の波形合成樹脂管の外面に容易に装着でき、組み付けも容易であり、管端部に直接爪を成形する場合に比べてコストも安くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1実施形態に係る継手構造を示す斜視図。
【図2】同じく継手構造を示す縦断面図。
【図3】同じく横断面図。
【図4】抜け止めリングを管端部に装着する様子を示す説明図。
【図5】(a)〜(d)は変形例を示す横断面図。
【図6】管端部をソケット部に装着する様子を示す説明図。
【図7】(a)〜(c)は掛止爪の変形例を示す要部の縦断面図。
【図8】ソケット部の貫通穴の変形例を示す要部の縦断面図。
【図9】貫通穴の他の変形例を示す要部の縦断面図。
【図10】貫通穴の更に他の変形例を示す要部の縦断面図。
【図11】ピンを設けた変形例を示す横断面図。
【図12】本発明の第2実施形態に係る継手構造を示す要部の縦断面図。
【図13】同じく継手構造の変形例を示す要部の縦断面図。
【図14】本発明の第3実施形態に係る継手構造を示す要部の縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、本発明の実施形態を添付図面に基づき詳細に説明する。
【0022】
図1は、本発明に係る継手構造Sの全体構成を示す斜視図であり、図1〜11は第1実施形態、図12、13は第2実施形態、図14は第3実施形態を示し、図中符号1は中間継手装置、2A,2Bは波形合成樹脂管、3は抜け止めリングをそれぞれ示している。
【0023】
本発明の継手構造Sは、図1,2に示すように、波形合成樹脂管2A(2B)の管端部20A(20B)の外周面の凹部21に、複数個の抜け止め部材30を周方向に連設してなる抜け止めリング3を装着するとともに、抜け止めリング3を装着した状態の波形合成樹脂管2A(2B)の管端部20A(20B)を受け入れる合成樹脂製のソケット部11A(11B)を設け、抜け止めリング3に、該リング外周面上に突出する掛止爪31を設け、ソケット部11A(11B)の周壁の前記受け入れた抜け止めリング3の掛止爪31に対応する位置に貫通穴12を形成し、前記掛止爪31が貫通穴12の開口縁部12aに係合して抜け止めとして機能することを特徴としている。
【0024】
なお、以下の説明では、合成樹脂製の筒状本体10の両端部にそれぞれソケット部11A,11Bを有する中間継手装置1を設け、2本の波形合成樹脂管2A,2Bの各管端部20A,20Bの外周面の凹部21に、それぞれ抜け止めリング3を装着し、2本の波形合成樹脂管2A,2Bが中間継手装置1を介して接続される形態について説明するが、中間継手装置1の一方の端部でのみ継手構造Sを構成し、他方の端部では別の継手構造を構成するものでもよいし、また、中間継手装置1を用いる代わりに一方の波形合成樹脂管の端部に上記ソケット部を備え、他方の波形合成樹脂管との間で直接継手構造Sを構成するものでも勿論よい。
【0025】
波形合成樹脂管2A,2Bは、本例では、丸波部分の凹部21と、角波部分および円波部分の凸部とが管軸方向に多数形成されており、丸波部分の凹部21を管軸方向から見た輪郭が円形に形成され、角波部分の凸部を管軸方向から見た輪郭が方形に形成され、該方形の各角部が円弧状に丸められた形状とされ、円波部分の凸部はほぼ前記方形の凸部に内接する径の輪郭を有している。波形合成樹脂管の基材樹脂は特に制限はなく、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン系樹脂、EVA樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ABS樹脂等のスチレン系樹脂、あるいはそれらの混合樹脂など、いずれも用いることができる。また、内部に柔軟性を有するゴム、塩化ビニル樹脂等からなる内管を挿入しておき、流体を流す場合の流路抵抗を減少させたり、ケーブルを挿通する場合の通りを良くした多層構造であってもよい。
【0026】
波形合成樹脂管の管端部20A(20B)に装着される抜け止めリング3は、図3、4にも示すように、内周面に管端部外周面の凹部21に嵌合する凸部32を有し、且つ外周面に掛止爪31を有する略C字状の合成樹脂成形品よりなる抜け止め部材30を2個組み合わせてリング状に構成されたものである。本例では、管端部20A(20B)の隣接する2つの凹部21にわたって装着されるべく、これに嵌合する凸部32が2つ内周面側に設けられているが、勿論凸部32を1つのみ設け、管端部20A(20B)の1つの凹部21に装着される構造でもよい。抜け止めリング3の当該凸部32を有する内周面は周方向に円形とされているが、外周面側は、管端部20A(20B)とともに受け入れられることとなる中間継手装置1のソケット部11A(11B)の内周面形状にほぼ沿った形状である。
【0027】
より具体的には、抜け止めリング3は、波形合成樹脂管2A(2B)の角波部分の凸部の形状とほぼ等しく、管軸方向から見た輪郭が方形であり、且つ該方形の各角部が円弧状に丸められた形状とされており、該方形の各辺となる外面上に掛止爪31が突設された形状である。そして、このような抜け止めリング3を構成している各抜け止め部材30、30は、それぞれ前記方形の2辺を含む略L字状に近い略C次形状で、各辺の部位にそれぞれ掛止爪31が設けられたものである。各抜け止め部材30は、図4に示すように、対面する端部に設けたピン33と嵌合孔34の嵌合により互いに連結し、中間継手装置1に装着する際に容易に外れないようにして良好な作業性を維持している。このようなピン33や嵌合孔34を省略することや、他の凹凸嵌合などの構造を採用してもよい。
【0028】
抜け止めリング3は、必ずしもこのようにソケット部11A(11B)の内周面形状にほぼ沿った形状にすることを要せず、少なくとも掛止爪31が貫通穴12に係合する形状であればよく、例えば掛止爪31の位置を除いてその他の形状を円形とした例なども可能である。また、抜け止め部材30、30の分割形状は、上記したような2分割形態に何ら限定されず、例えば図5(a)に示すように、各辺ごとに設けた4つの抜け止め部材30,…を組み合わせて構成するものや、各辺及び円弧状角部ごとに設けたものなど、様々な形態が採用できる。本例では、抜け止め部材30,30を互いに同じ構造として管理上、コスト上の配慮がされているが、異なる構造のものを組み合わせてなるものでもよい。
【0029】
各抜け止め部材30の掛止爪31は、幅方向(周方向)に前記貫通穴12の幅よりも少し小さい幅を有し、且つ軸方向外方に向けて次第に高さが低くなる断面視略直角三角形状の傾斜面を有する構造であり、合成樹脂製の本体部35とともに一体成形されたものである。掛止爪31はこのような傾斜面を有することにより、図6に示すように管端部20Aとともに抜け止めリング3を中間継手装置1のソケット部11Aに挿着する際、該傾斜面によりスムーズに貫通穴12の内部に導かれ、その開口縁部12aに係合することとなる。掛止爪31の高さは、本例では貫通穴12の外側に所定寸法突出する高さに設定され、係合後に中間継手装置1のソケット部11Aが多少変形しても容易には抜けないように構成されているが、図7(a)に示すように突出せずに低く設定したものや、ソケット部外面とほぼ面一となる高さに設定したものも好ましい。また、掛止爪31の幅についても本例では管軸方向に同じ幅の略方形に構成されているが、次第に広くなるか狭くなる三角形状や台形形状に構成することも好ましい。この場合、ソケット部側の貫通穴12の形状についてもこれに対応する形状とすればよい。
【0030】
また、掛止爪31の傾斜面は、より詳しくは外方に向けて次第に傾斜が緩やかになる傾斜面とし、ソケット部11Aへの挿入の際に不要な抵抗が生じないように構成しているが、図7(c)に示すように逆に次第に傾斜が大きくなるように構成してもよい。更に、本例では掛止爪31を本体部35と合成樹脂材料で一体成形しているが、掛止爪31を別途成形して接合したものでもよい。また、合成樹脂以外に、例えば金属製の掛止爪を取り付けてもよい。また、本体部についても金属製のものとすることもできる。但し、材料コスト、製作コスト、重量を考えると、代表例で示した合成樹脂の一体成形品が好ましい。
【0031】
掛止爪31及びこれが係合するソケット部11A(11B)側の貫通穴12の個数はとくに限定されないが、波形合成樹脂管2A(2B)が継手装置1に対して安定した接続状態が保たれるように、それぞれ管軸対称位置に対をなす位置に設けることが好ましい。図1〜3に示す代表例では、抜け止めリング3の各辺ごとに合計4組設けたが、図5(b)に示すように、対向する2辺にのみの合計2組設けたものや、その他、1組或いは3組設けることも可能である。掛止爪はすべての掛け止め部材に設ける必要もなく、一部にのみ掛止爪を設けたものでもよい。また、図5(c)に示すように掛止爪31を抜け止めリング3の円弧状の角部に設け、同じくソケット部11A(11B)角部に形成された貫通穴12に係合するものも好ましい。
【0032】
中間継手装置1は、ポリエチレン樹脂やポリプロピレン樹脂等の合成樹脂製の筒状本体10の両端部に、それぞれ第1の波形合成樹脂管2Aの管端部20Aを受け入れる第1のソケット部11A、および第2の波形合成樹脂管2Bの管端部20Bを受け入れる第2のソケット部11Bを備えている。筒状本体10は、少なくとも両端部のソケット部11A、11Bの内周面形状が、波形合成樹脂管2A,2Bの管端部の外周面(方形の凸部)の輪郭形状とほぼ等しい、各角部が円弧状に切り落とされて丸められた方形に形成されている。つまりソケット部の内周面形状は、好ましくは管端部の方形の凸部の形状に合致した形状とされ、波形合成樹脂管にほぼ密嵌状態で外嵌する形状とすることが好ましい。図5(d)に示すように、管端部の凸部が方形以外に、例えば円形、多角形などその他の形状であれば、ソケット部内面形状もそれに合わせた同一形状とすればよい。その場合、上述の抜け止めリング3も、これに対応する形状が好ましいが、必ずしも同一形状である必要はない。ただし、ソケット部内部形状を必ずしも波形合成樹脂管の輪郭形状に合わせる必要はなく、また、多少隙間があっても特に問題はない。
【0033】
ソケット部11A(11B)に設けられる貫通穴12は、ソケット部11A,11Bを含む中間継手装置1の全体を合成樹脂により成形(本例ではブロー成形)した後、挿着される抜け止めリング3の掛止爪31に対応する位置に、機械加工等により後加工で形成される。これにより貫通穴12の縁部にブロー成形では形成できないシャープなエッジが形成され、このエッジに掛止爪31が係合することにより、抜け止めとして確実に機能することとなる。尚、図8に示すように貫通穴12の形状を掛止爪31が係合する必要最小限の長さに構成することも好ましい実施例である。これにより外部から雨水等の浸入の可能性をより小さくすることができる。また、図9に示すように掛止爪31が係合する貫通穴12の開口端部12aにおいて、厚み方向内側に向けて次第に突出する傾斜端面を設けることで、掛止爪31をより抜けにくく係合することが好ましく、この場合、掛止爪31の方にも対応する平行な傾斜端面を設けることも好ましい。
【0034】
本例では、掛止爪31が係合する貫通穴12の開口縁部12a若しくはその近傍に、段差部13が設けられ、これにより係合状態の掛止爪31から抜き方向に大きな力が作用しても、開口縁部12aが容易に変形しない優れた変形強度を有し、優れた抜け止め機能を奏することとなる。勿論このような段差部を有しないものでもよい。また、図10に示すように段差部に相当する圧肉部分を開口縁部12aとして構成することによっても同様に変形強度を高めることが可能となり好ましい。
【0035】
各ソケット部11A(11B)の開口端部の位置には、複数の補強用凹条14(本例では二本)が全周にわたって平行に設けられている。この補強用凹条14の存在によりソケット部11A,11Bの開口部が補強され、接続された波形合成樹脂管2A,2Bが上下左右に動いても開口部の変形が防止でき、したがって掛け止めリング3のガタつきも生じなく、波形合成樹脂管2A,2Bをより安定に保持できる。
【0036】
シール部材4は、筒状本体10の内周面の略中央位置にリング状に突設されており、受け入れた波形合成樹脂管の管端部20A(20B)が当接しうる当止壁41と、管端部20A,20Bの端部外周面に密着するシール部40、40とよりなる断面視略T字状に構成されている。このようなシール部材4は、好ましくは合成ゴムやエラストマー、弾性を有する発泡体、軟質の合成樹脂等から構成される。ただし、従来の中間継手装置に形成されている構造のものを種々採用でき、本例の構造に何ら限定されない。また、本例では一つのシール部材4で管端部20A,20Bの双方のシール部として兼用されているが、それぞれ独立のシール部材を合計2つ設けてもよい。
【0037】
尚、図11に示すように、抜け止めリング3の掛止爪31が貫通穴12に係合した抜け止め状態において、ソケット部11A(11B)の外側から周壁を貫通して前記抜け止めリング3に固定されるピン5又はビスを設け、当該状態を確実なものとすることも好ましい例である。また、本発明における貫通穴12は、掛止爪31を係合させる点ではメリットが大きい反面、外部から雨水等が浸入する原因となるものである。これより先側にシール部4が存在するため問題はないが、管を接続した後、図示しない蓋やテープで開口を覆ったり、充填材を充填して栓をすることも好ましい例である。
【0038】
次に、図12、13に基づき、本発明の第2実施形態を説明する。
【0039】
本実施形態では、図12に示すように掛止爪31を抜け止め部材30の外面に管軸方向に複数連設したものであり、対応する貫通穴12についても、図示したとおり間隔をおいて複数スリット状に形成し、貫通穴12の開口縁部12aに各掛止爪31を係止してなる構造とされている。これにより、掛止爪31と貫通穴12の係合による管端部20A(20B)とソケット部11A(11B)との抜け止め状態をより安定した姿勢に維持することができ、抜け止め効果をより高めることができ、より信頼性の高い接続継手を提供できる。
【0040】
本実施形態においても、図13に示すように各貫通穴12の開口縁部12aに傾斜端面を形成し、掛止爪31をより抜けにくく係合することが好ましく、更に本例では、複数の掛止爪31を係合することから先端側の掛止爪31が基端側の掛止爪31が係合する貫通穴12を乗り越えることとなるが、この際、貫通穴12の先端側の開口縁部にも乗り越えやすいように前記傾斜端面と平行な傾斜端面を設けておくことが好ましい実施例である。このような平行な傾斜端面は一方のみ傾斜端面を形成することに比べて機械加工により容易に形成することが可能である。
【0041】
次に、図14に基づき、本発明の第3実施形態を説明する。
【0042】
本実施形態では、図14に示すように、ソケット部11A(11B)の内周面の前記受け入れた抜け止めリング3に対応する位置に、掛止爪31が係合する凹溝61を内面側に有する係合部6を設け、抜け止めリング3の掛止爪31が凹溝61に係合して抜け止めとして機能するものであり、上記第1実施形態、第2実施形態の貫通穴12を形成する代わりに、上記凹溝61を有する係合部6を構成したものである。具体的には、係合部6として、凹溝61が内面側に形成された係合部材60が、ソケット部11A(11B)の内周面に接着剤やビス等により別途取り付けられる。
【0043】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこうした実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0044】
1 中間継手装置
2A,2B 波形合成樹脂管
3 抜け止めリング
4 シール部材
5 ピン
6 係合部
10 筒状本体
11A,11B ソケット部
12 貫通穴
12a 開口縁部
13 段差部
14 補強用凹条
20A,20B 管端部
21 凹部
30 抜け止め部材
31 掛止爪
32 凸部
33 ピン
34 嵌合孔
35 本体部
40 シール部
41 当止壁
60 係合部材
61 凹溝
S 継手構造

【特許請求の範囲】
【請求項1】
波形合成樹脂管の管端部の外周面の凹部に、複数個の抜け止め部材を周方向に連設してなる抜け止めリングを装着するとともに、
前記抜け止めリングを装着した状態の前記波形合成樹脂管の管端部を受け入れる合成樹脂製のソケット部を設け、
前記抜け止めリングに、該リング外周面上に突出する掛止爪を設け、
前記ソケット部の周壁の前記受け入れた抜け止めリングの掛止爪に対応する位置に貫通穴を形成し、
前記掛止爪が前記貫通穴の開口縁部に係合して抜け止めとして機能することを特徴とする波形合成樹脂管の継手構造。
【請求項2】
前記貫通穴をソケット部成形後の後加工により形成してなる請求項1記載の波形合成樹脂管の継手構造。
【請求項3】
前記ソケット部の周壁の前記開口縁部若しくはその近傍に、段差部を設けてなる請求項1又は2記載の波形合成樹脂管の継手構造。
【請求項4】
波形合成樹脂管の管端部の外周面の凹部に、複数個の抜け止め部材を周方向に連設してなる抜け止めリングを装着するとともに、
前記抜け止めリングを装着した状態の前記波形合成樹脂管の管端部を受け入れる合成樹脂製のソケット部を設け、
前記抜け止めリングに、該リング外周面上に突出する掛止爪を設け、
前記ソケット部の内周面の前記受け入れた抜け止めリングに対応する位置に、前記掛止爪が係合する凹溝を内面側に有する係合部を設け、
前記掛止爪が前記係合部の凹溝に係合して抜け止めとして機能することを特徴とする波形合成樹脂管の継手構造。
【請求項5】
前記係合部として、前記凹溝が内面側に形成された係合部材を、前記ソケット部の内周面に別途取り付けてなる請求項4記載の波形合成樹脂管の継手構造。
【請求項6】
前記抜け止め部材が、内周面に前記管端部外周面の凹部に嵌合する凸部を有し、且つ外周面に前記掛止爪を有する合成樹脂成形品よりなる請求項1〜5の何れか1項に記載の波形合成樹脂管の継手構造。
【請求項7】
前記ソケット部の内周面に、受け入れた管端部の前記抜け止めリングよりも先端側の部位に密着するシール部材を装着してなる請求項1〜6の何れか1項に記載の波形合成樹脂管の継手構造。
【請求項8】
合成樹脂製の筒状本体の両端部にそれぞれ前記ソケット部を有する中間継手装置を設け、2本の波形合成樹脂管の各管端部の外周面の凹部に、それぞれ前記抜け止めリングを装着し、2本の波形合成樹脂管が前記中間継手装置を介して接続される請求項1〜7の何れか1項に記載の波形合成樹脂管の接続構造。
【請求項9】
前記抜け止め状態において、前記ソケット部の外側から周壁を貫通して前記抜け止めリングに固定されるピン又はビスを設けてなる請求項1〜8の何れか1項に記載の波形合成樹脂管の接続構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−270879(P2010−270879A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−125129(P2009−125129)
【出願日】平成21年5月25日(2009.5.25)
【出願人】(398062574)カナフレックスコーポレーション株式会社 (62)
【Fターム(参考)】