説明

注意欠陥/多動性障害のためのSOFINICLINE(ABT−894)

3−(5,6−ジクロロ−ピリジン−3−イル)−IS,5S−3,6−ジアザビシクロ[3.2.0]ヘプタン(SOFINICLINE、ABT−894)およびこの塩は、注意欠陥/多動性障害に伴う症状に対する薬理作用を示す、ニコチン受容体の有効なアゴニスト化合物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の背景)
(技術分野)
本発明は、精神疾患を治療する方法に関し、特に、注意欠陥/多動性障害に伴う症状を治療する方法に関する。該方法には、神経細胞のニコチン性アセチルコリン受容体のアゴニストである、3−(5,6−ジクロロ−ピリジン−3−イル)−1S,5S−3,6−ジアザビシクロ[3.2.0]ヘプタンなどの神経細胞のニコチン性アセチルコリン受容体のリガンドを、注意欠陥/多動性障害の治療のために投与することが含まれる。
【背景技術】
【0002】
(関連技術の記述)
10年余りの間、研究者達は、神経細胞のニコチン性アセチルコリン受容体(nAChR)における神経伝達物質放出に影響を及ぼす化合物の薬理作用を調べてきた。そのような研究では、様々な認知障害、例えば、注意欠陥/多動性障害(ADHD)、アルツハイマー病などの状態、ならびに例えばニコチン中毒などの他の障害および依存症を含む様々な病態における、神経細胞のニコチン性アセチルコリン受容体のリガンドの潜在的な作用に関して報告されてきた。神経細胞のニコチン性アセチルコリン受容体のリガンドであるバレニクリンは、禁煙治療のため商業用に現在利用可能である。
【0003】
しかし、nAChRの受容体に、有益に影響を及ぼすnAChRのリガンド化合物は、また、被験者および患者に望ましくない作用を起こす恐れもある。悪心、嘔吐および催吐などの有害作用は、nAChRのリガンドの使用に関係しており、特に、ニコチン性アセチルコリン受容体サブタイプα3に関係している。nAChRのリガンドの有益な薬理作用が求められる一方、有害作用の体験が、薬理学的使用を限定する恐れがある。特に、ADHDは、劣った学業または職務成績、同僚との人間関係における問題、傷害、交通違反および事故などの機能障害、ならびに気分障害、不安障害および物質使用障害を含む精神医学的併存症に関係する。患者の約30%が不十分な反応または耐え難い副作用のために、刺激薬の薬物療法を中断する。小児のうちの65−85%が、成人期までADHDの診断基準を満たし続け、またはその部分的症状を示し続ける。注意力障害および実行機能障害を含む認知機能障害は、ADHDの若者および成人では一般的で、学業上および職業上の困難さのリスクを高めている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
nAChRが介在する状態、例えば、ADHD、アルツハイマー病、統合失調症などの疾患または認知機能に関係する他の状態の治療およびニコチン中毒などの中毒の治療または禁煙の治療に、ニコチン性アセチルコリン受容体のリガンドを提供することは、有益であると考えられる。そのような状態を安全で有効な様式で治療する、ニコチン性アセチルコリン受容体のリガンドを提供する必要が、依然としてある。そのような治療方法は、特に、乱用に陥りやすい可能性がある規制物質の投与を含み得る注意欠陥/多動性障害の治療に、現在の治療法に優る重要な利点を提供すると考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(発明の要旨)
3−(5,6−ジクロロ−ピリジン−3−イル)−1S,5S−3,6−ジアザビシクロ[3.2.0]ヘプタンおよびこの塩は、注意欠陥/多動性障害に伴う症状の治療に有効な化合物であることが分かった。その上、3−(5,6−ジクロロ−ピリジン−3−イル)−1S,5S−3,6−ジアザビシクロ[3.2.0]ヘプタンのヒト患者に対する投与は、概して忍容性が良好な様式で、患者における注意欠陥/多動性障害に伴う症状の重症度を低下させた。3−(5,6−ジクロロ−ピリジン−3−イル)−1S,5S−3,6−ジアザビシクロ[3.2.0]ヘプタン(ABT−894)は、ヒト患者におけるADHDの中核症状の治療において、プラセボと比較して統計的に有意な効果を示した。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】ABT−894の成人ADHD投与量決定試験の治験被験者の処置を図示するブロック図である。
【図2】主要エンドポイント、CAARS:Invの総スコアに関して、40mg、BIDにおけるアトモキセチンのプラセボからの平均差と比較した、4mg、BIDにおけるABT−894のプラセボからの平均差を図示するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
(発明の詳細な記述)
本発明は、ヒトにおける注意欠陥/多動性障害を治療する方法に関し、特に注意欠陥/多動性障害の治療方法に関する。1つの実施形態では、該方法は、そのような治療を必要とする患者に、活性剤である3−(5,6−ジクロロ−ピリジン−3−イル)−1S,5S−3,6−ジアザビシクロ[3.2.0]ヘプタンの有効量を投与することを含む。
【0008】
3−(5,6−ジクロロ−ピリジン−3−イル)−1S,5S−3,6−ジアザビシクロ[3.2.0]ヘプタンの活性剤は、2004年10月26日に発行された米国特許第6,809,105号にすでに記載されている。3−(5,6−ジクロロ−ピリジン−3−イル)−1S,5S−3,6−ジアザビシクロ[3.2.0]ヘプタンの使用が好ましいが、米国特許第6,809,105号に開示された他の化合物も使用することができる。3−(5,6−ジクロロ−ピリジン−3−イル)−1S,5S−3,6−ジアザビシクロ[3.2.0]ヘプタンの活性剤の調製および使用は、2008年4月8日発行の米国特許第7,354,937号、2009年5月26日発行の米国特許第7,538,226号、2008年4月1日発行の米国特許第7,351,833号および2009年3月3日発行の米国特許第7,498,444号、ならびにこれらの関連出願に記載されている。そのような特許およびこれらの関連出願は、参照により本明細書に組み込む。
【0009】
本明細書において、注意欠陥/多動性障害の療法において投与する好ましい塩は、3−(5,6−ジクロロ−ピリジン−3−イル)−1S,5S−3,6−ジアザビシクロ[3.2.0]ヘプタンベンゼンスルホン酸(またはベシル酸)塩である。
【0010】
投与される活性剤の量は、患者、投与経路および求められている結果によって異なる。特定の患者に対する、最適な投与レジメンは、本明細書で提供されたガイダンスおよび投与情報を用いて、当技術分野の当業者によって決定することができる。
【0011】
本発明によると、活性剤は、任意の簡便な方式において投与することができる。適切な投与方法の例には、これらだけに限定されないが、経口、舌下、直腸、(皮下、胸郭内、筋肉内および静脈内を含む)非経口または経皮が挙げられる。最も好ましい投与経路は、経口経路である。
【0012】
本発明の活性剤は、医薬組成物の形態または1つまたは2つの活性剤を混合物中に医薬担体と共に含有する医薬組成物の形態で投与することができる。医薬組成物は、錠剤、カプセル、スプリンクルカプセル、粒剤、散剤、シロップ剤、坐剤、注射剤またはその他などの投与単位形態であり得る。
【0013】
本明細書に記載されている注意欠陥/多動性障害の効果的な治療では、このような薬物治療に伴い得る有害な副作用を最小にしながら、患者の認知的注意を向上させるためまたは他の有効性転帰のために効果的な方法が提供される。そのような副作用の例としては、例えば、悪心、けん怠感、頭痛、睡眠障害およびその他を挙げることができる。
【0014】
本発明の特定の態様は、以下の非制限的実施例に、より詳しく記載されている。
【実施例1】
【0015】
試験の詳細
被験者
臨床試験(試験A)を行い、ADHDの成人におけるプラセボと比較したABT−894の安全性および有効性を評価し、用量反応関係を検討した。
【0016】
ADHDに関するDSM−IV−TRの診断基準を満たす、18歳から60歳の合計243名の被験者を、5つの用量群にわたってランダムに割り付けた。男性または女性の患者が含まれていた。患者が第1軸精神疾患、例えば、大うつ病、全般性不安障害(GAD)の患者または統合失調症、統合失調性感情障害、双極性障害、強迫性障害(OCD)もしくは精神遅滞のいずれかの生涯病歴を有する患者、スクリーニングに先立つ3カ月以内にアトモキセチンを服用した患者、またはニコチン置換療法もしくはバレニクリンを含む向精神薬を服用している患者は除外した。治験被験者の処置は、以下の試験結果でさらに検討される。
【0017】
試験デザイン
各用量群の被験者は、2×2のクロスオーバーデザインに従って、順不同にABT−894およびプラセボの両方を摂取した。各試験期間は、2週間の休薬期間で区切られた4週間であった。クロスオーバー試験デザインおよび投与スケジュールは、表1に示されている。
【0018】
【表1】

【0019】
ランダム化、薬物投与および調剤
各施設は、約3:2の割合で、2つのコホート(コホートAまたはB)のうち1つを割り当てられた。表1に示したように、コホートAの被験者は、3つの用量群における6種の治療順序の1つに、等しい割合でランダムに割り付けられ、コホートBの被験者は、2つの用量群における4種の治療順序の1つに、等しい割合でランダムに割り付けられた。各用量群の中で、被験者は、期間1中にABT−894もしくはアトモキセチンのどちらか、期間2中にプラセボを摂取し、または期間1中にプラセボ、期間2中にABT−894もしくはアトモキセチンのどちらかを摂取した。
【0020】
試験薬物は、カプセルの形態で調剤された。各カプセルは、ABT−894、アトモキセチンまたはプラセボを含有した。カプセルは、同一に見えるように作製した。
【0021】
来院および測定
被験者は4週間来院し、2週間の休薬期間をとり、次にさらに4週間来院した。各来院中に、血圧、心拍数、体重、薬物療法の説明可能度および忍容度、ならびに有害作用を評価した。報告義務のある有害作用は、治療中に出現した新たな症状もしくは病気、またはベースラインと比較して重症度が増大したものである。
【0022】
結果のエンドポイントおよび指標
主要有効性エンドポイントは、4週間の各治療期間の最終評価における、Connerの成人ADHD評価スケール−治験責任医師評価(CAARS:Inv)の総スコア(18項目)とした。CAARS:Invは、ベースラインで、ならびに各期間の7、14、21、および28日目に評価した。CAARS:Invの各項目は、それまでの7日間の発生頻度の4点のスケールで評価した(0=全くない、全然ない、3=非常に多い、非常に頻繁)。
【0023】
副次有効性エンドポイントには、CAARS:Invの不注意性および多動性/衝動性のサブスケールスコア、ADHD重症度の臨床全般印象スケール(CGI−ADHD−S)を含めた。トータルおよびサブスケールを含む、成人ADHD治験責任医師の症状に関する報告スケール(AISRS)ならびにConnerの成人ADHDの評価スケールの自己評価(CAARS−Self)。次の臨床試験で使用するために、成人ADHDの生活の質スケール(AAQoL)を含む健康アウトカムおよび作業生産性および活動障害に関する質問票(WPAI)を用いて、この治験対象母集団におけるこれらのスケールの妥当性を評価した。
【0024】
統計分析
統計解析計画書(SAP)に従って、一次解析を各用量群で別々に行った。主要有効性変数、CAARS:INV総スコアおよび他の全ての副次有効性変数を解析するために用いた最初の統計モデルは、SAP規定の検定手順により決定した。共変量として治療および期間Iベースラインの項目を用い、有意水準を0.10として、期間別ベースライン間の差に関する所与の用量群の2順序列間の比較可能性を、一元配置ANCOVAを用いて検定した。有意水準を0.10とし、項目「順序列」に関して、所与の用量群の2種順序列間の期間Iから期間IIまでの同等な残存効果を、クロスオーバー法によるデータ解析の標準モデルである、Grizzle Modelを用いて検定した。
【0025】
試験の目隠しを取り去った後、5つの用量群にわたり、期間別ベースライン間の差には、統計的に有意な治療効果はないとする帰無仮説を、全ての検定で真とみなした。検定では、用量群のいずれにおいても期間残存効果はないとする帰無仮説もまた真とみなした。続いて、Grizzle Modelを一次解析のモデルとして用い、各用量群に対する28日目におけるCAARS:INVの総スコアに関する治療群の差を解析した。共変量として、試験施設、順序列、順序列内の被験者、期間、治療、ならびに期間別ベースラインの項目を用い、SAS PROC MixedによりGrizzle Modelを実施した。
【0026】
主要有効性データセットには、試験の両期間を完遂した全ての被験者を含めた(完遂者データセット)。
【0027】
安全性データセットは、試験薬物の少なくとも1回量を服用した全ての被験者で構成された。中止の理由および治療中に発生した有害事象は、中止または事象が報告されたその治療に基づいて要約された。
【0028】
治療群のバイタルサインの違いを、有効性解析に用いたモデルと同様なGrizzle Modelを用いて、期間特定ベースラインを除外して解析した。
【0029】
結果
被験者の特性および処置
スクリーニングされた353名の被験者のうち、243名がランダム化試験に含まれた。含まれた患者のうち238名は治療され、5名の患者は、治療に関係しない理由のために試験薬物を摂取しなかった。治療された238名の患者のうち、202名によって、試験が完遂された。患者の基本特性は、表2に示されている。
【0030】
【表2】

【0031】
有効性
ABT−894の、28日間、4mg用量、BIDの投与は、主要有効性指標において、プラセボと比較して統計的に有意な改善をもたらした。得られた結果を、注意欠陥/多動性障害の治療用に市販されているアトモキセチンと比較した。4mg用量、BIDで投与されたABT−894とアトモキセチンは、有効性指標の全域で比較可能であった。主要エンドポイント、CAARS:Inv総スコアに関して、4mg用量、BIDにおける、ABT−894のプラセボからの平均差および40mg用量、BIDにおける、アトモキセチンのプラセボからの平均差は、図2に示されている。CAARSの不注意性および多動性/衝動性の総スコアならびにサブスケールスコアから得られた結果は、表3に提示されている。
【0032】
【表3】

【0033】
副次有効性エンドポイントには、CAARS:Invの不注意性および多動性/衝動性のサブスケールスコアを含めた。それまでの7日間の重症度(0=ないから3=重度まで)に基づいた各DSM−IV−TR症状診断基準を成人向けADHDプロンプトを用いて評価する、成人ADHD治験責任医師の症状に関する報告スケール(AISRS)の18項目のスケールもまた評価した。それまでの7日間の発症頻度の4点スケール(0=全くない、全然ないから3=非常に多い、非常に頻繁まで)で被験者により評価される、CAARS:Invに類似する、被験者自身が評価するConnerの成人ADHDの評価スケール(CAARS:Self)も、また評価された。別の副次有効性エンドポイントは、ADHDの症状が原因の病気の総合的重症度を評価するために用いられる、7点評価スケール(1=正常、全く病気ではないから7=病気が最も重い患者まで)である、治験責任医師評価のADHD重症度の臨床全般印象スケール(CGI−ADHD−S)であった。
【0034】
CGI−ADHD−S、AISRSおよびCAARS:Selfから得られた結果は、以下の表4に示されている。データは、4mg、BIDで投与されたABT−894およびアトモキセチンが、有効性指標全域で比較され得ることを裏付けている。
【0035】
【表4】

【0036】
AAQolの改善およびWPAIスケールは、主要有効性エンドポイントの変化と相関性があった。4mg、BIDにおいてABT−894を使用した治療では、プラセボと比べて、生活の質が改善した方向に向かう傾向が見られた。4mg、BIDにおいてABT−894を使用した治療では、また、常習的欠勤の有意な改善も示した。ABT−894およびアトモキセチン(ATX)の患者報告の健康アウトカム指標は、以下の表5に要約されている。
【0037】
【表5】

【0038】
安全性指標
治療中に出現した有害事象は、期間1中で試験薬物の初回投与の後に始まったまたは増悪した事象とした。有害事象のモニタリングは、試験中の各訪問時および試験薬物を中止してから30日後まで行った。他の日常的な安全性評価としては、バイタルサイン、心電図、健康診断、簡単な神経学的診察および臨床検査が含まれた。
【0039】
プラセボでは126例あった有害作用(AE)(被験者のうちの56.0%)と比較して、平均で、患者は、試験期間にわたり109例のAE(治療を受けていた被験者のうちの62.6%)を報告した。個々のAEの中では、プラセボ群における5名の被験者(被験者のうちの2.2%)と比較して、21名の被験者が、悪心(被験者のうちの12.1%)を報告した。治療中に出現したいずれかの有害事象(AE)およびABT−894の任意の用量を摂取していた2名を超える被験者により報告されたこれらのAEのあった被験者数を、プラセボおよびアトモキセチンと比較した概要は、表6に提示されている。
【0040】
【表6】

【0041】
4週間の治療後に評価された体重およびバイタルサインの概要は、表7に提示されている。
【0042】
【表7】

【0043】
データによって示されたように、4mg、BIDにおいてABT−894で治療したADHDの成人は、CAARS:Inv総スコアにおいて、プラセボと比較した場合に、統計的に有意に大きい改善を示した。作業生産性の指標(WPAI)および生活の質の指標(AAQoL)の改善は、主要有効性エンドポイントの変化と相関し、ADHDの成人においてこのような指標の使用が妥当であることが確認された。ABT−894の2mg用量、QDおよび4mg用量、BIDの治療は、プラセボに対して生活の質の指標を改善した。2mg、QDで投与されたABT−894は、持続的注意、抑制制御および実行機能の指標を改善した。4mg、BIDで投与されたABT−894は、プラセボに対して生活の質を改善し、常習的欠勤を有意に改善した。その上、ABT−894は、概して安全で忍容性が良好であった。
【0044】
ABT−894の定常状態の薬物動態パラメーターは、ABT−894を用いて実施した、ランダム化、二重盲検法、プラセボ対照、パラレルまたはクロスオーバーデザイン試験において測定した。これらの試験において、ABT−894または対応のプラセボは、1日1回(QD)または1日2回(BID)で被験者に経口投与され、ABT−894の血漿中濃度および薬物動態パラメーターを測定するために、連続した血液サンプルが採血された。
【0045】
ABT−894の複数回投与後、定常状態において、2mg用量、QDでは、Cmaxは約5ng/mL、Caveは約2ng/mL、AUC24は約46ng.h/mLおよびCminは約0.3ng/mLであった。ABT−894の複数回投与後、定常状態において、4mg用量、BIDでは、Cmaxは約11−15ng/mL、Caveは、約6−10ng/mL、AUC12は約72−114ng.h/mLおよびCminは約2−4ng/mLであった。
【0046】
ABT−894のTmaxは、概して約2−4時間以内、特に2−3時間以内に達した。
【0047】
本明細書で用いる場合、Cmaxは、治療薬、本件ではABT−894の、定常状態の条件下の最高血漿中濃度を示す。
【0048】
本明細書で用いる場合、Caveは、治療薬、本件ではABT−894の、定常状態の条件下の平均血漿中濃度を示す。
【0049】
本明細書で用いる場合、Cminは、治療薬、本件ではABT−894の、定常状態の条件下の最小血漿中濃度を示す。
【0050】
本明細書で用いる場合、Tmaxは、最高血漿中濃度に達する時間を示す。
【0051】
本明細書で用いる場合、AUC12は、12時間測定した濃度曲線下面積を示す。
【0052】
本明細書で用いる場合、AUC24は、24時間測定した濃度曲線下面積を示す。
【0053】
患者への介入は、治療の適切ないずれの時期にもあり得る。ADHDの症状は、経時的に軽減または解消し得るが、ADHDは、慢性的で安定な状態であることがしばしばである。ADHDの患者は、典型的には、長期間療法、維持療法、薬理学的治療を受けている。
【0054】
被験者の中で参加している平均的な成人ヒト患者は、体重が約70kgである。
【0055】
CANTAB(登録商標)神経心理検査は、臨床試験における薬物試験のための市販の評価ツールであり、Cambridge Cognition Ltd.から入手できる。
【0056】
アトモキセチンは、注意欠陥/多動性障害の治療に承認された市販の非刺激薬である。アトモキセチンの化学名は、(3R)−N−メチル−3−(2−メチルフェノキシ)−3−フェニル−プロパン−1−アミン;(R)−N−メチル−3−フェニル−3−(o−トリルオキシ)プロパン−1−アミンである。アトモキセチンに関するより詳しい情報は、製造業者、Eli Lilly and Companyから、商標STRATTERAで入手できる。成人、ならびに体重が154ポンドを超える子供または10代の若者のアトモキセチンの開始用量は、1日1回40mgまたは1日2回20mgである。体重が154ポンド未満の子供または10代の若者は、典型的には、体重1ポンド当たりアトモキセチン0.25mgで開始し、利用可能な最も近い概数の強度にする。アトモキセチンの投与に影響を及ぼし得る要因の中には、年齢、患者の他の医学的状態および患者が服用している可能性のある他の薬物がある。
【0057】
前述の説明で特定した全ての特許書類は、これらの全体を参照により本明細書に組み込む。
【0058】
上記の実施例は、例示的な目的のみのためであって、本発明の範囲を制限することを意図しない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
注意欠陥/多動性障害の治療を必要とする患者に、約2mgから約4mgの量の3−(5,6−ジクロロ−ピリジン−3−イル)−1S,5S−3,6−ジアザビシクロ[3.2.0]ヘプタンまたはこの塩を投与することを含む、治療を必要とする患者における注意欠陥/多動性障害の治療方法。
【請求項2】
投与される3−(5,6−ジクロロ−ピリジン−3−イル)−1S,5S−3,6−ジアザビシクロ[3.2.0]ヘプタンまたはこの塩の量が、薬物の副作用を最小にしながら、症状の重症度を低下させる血漿中濃度曲線下面積(AUC)の比を与えるのに十分である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
平均Cmaxが約5から15ng/mLである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
2mg、QDに関するAUC24が、約46ng.h/mLである、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
4mg、BIDに関するAUC12が約72から114ng.hr/mLの範囲にある、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
3−(5,6−ジクロロ−ピリジン−3−イル)−1S,5S−3,6−ジアザビシクロ[3.2.0]ヘプタンが、24時間周期で2回、4ミリグラムの量で患者に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
3−(5,6−ジクロロ−ピリジン−3−イル)−1S,5S−3,6−ジアザビシクロ[3.2.0]ヘプタンが、24時間周期で1回、2ミリグラムの量で患者に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
(a)包装材、
(b)神経細胞のニコチン性アセチルコリン受容体のアゴニスト、および
(c)3−(5,6−ジクロロ−ピリジン−3−イル)−1S,5S−3,6−ジアザビシクロ[3.2.0]ヘプタンが、約2mgから約4mgの量で投与されることを表示するラベル、または包装材の中に含まれる添付文書
を含む、製品。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2011−522051(P2011−522051A)
【公表日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−512559(P2011−512559)
【出願日】平成21年6月1日(2009.6.1)
【国際出願番号】PCT/US2009/045819
【国際公開番号】WO2009/149003
【国際公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【出願人】(391008788)アボット・ラボラトリーズ (650)
【氏名又は名称原語表記】ABBOTT LABORATORIES
【Fターム(参考)】