説明

洗浄剤組成物

【課題】N−アシルアミノ酸塩など増粘化が難しいアニオン界面活性剤を主成分とする洗浄剤組成物において、洗浄性が良好で使用感を低下させることなく優れた増粘作用を有する洗浄剤組成物を提供する
【解決手段】アニオン性界面活性剤、両性界面活性剤及びHLBが6以上のショ糖脂肪酸エステルを必須成分として含有し、前記アニオン性界面活性剤/両性界面活性剤の重量比率が1/9〜9/1であり、アニオン性界面活性剤としてN−アシルアミノ酸塩、N−アシルタウリン塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、ポリオキシエチレンアルキルスルホコハク酸二塩、ポリオキシエチレンアルキルスルホコハク酸塩等が、両性界面活性剤としてアルキルベタイン、アルキルアミドプロピルベタイン、2−アルキル−1−カルボキシメチル−1−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、及びアルキルアミンオキシド等が使用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄剤組成物に関し、洗浄性が良好で使用感を低下させることなく増粘作用を有する洗浄剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、N−アシルアミノ酸塩などのアニオン性界面活性剤を主成分として用いる低刺激性の洗浄剤組成物では、必要な粘度が得られず使用し辛いという問題点があった。この洗浄剤組成物を増粘するためにベタイン類などの両性界面活性剤を添加することにより多少の増粘が可能であるが、それだけでは不十分であり,さらにセルロースなどの高分子化合物を添加して増粘する必要があった。
【0003】
しかし、ここで高分子化合物として用いられるカチオン化セルロース、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)などは、洗浄剤がぬるついたり糸を引いたりするなど使用感の点で問題があった。
【0004】
これらに対して、洗浄剤組成物のぬめり感などの使用感、洗浄性を低下させることなく増粘作用を高めるために、N−アシルアミノ酸塩、両性界面活性剤にポリオキシエチレン脂肪酸ペンタエリスリトールエステルなどを添加すること、また特定成分からなる界面活性剤用増粘剤を用いることが提案されている(例えば、特許文献1、2)が、洗浄剤組成物の使用感を低下させずにさらなる洗浄性と増粘性の向上が求められている。
【特許文献1】特開2004−203776号公報
【特許文献2】特開2005−200640号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明の目的は、N−アシルアミノ酸塩など増粘化が難しいアニオン性界面活性剤を主成分とする洗浄剤組成物において上記問題を解決し、洗浄性が良好で使用感を低下させることなく優れた増粘作用を有する洗浄剤組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意研究を重ねた結果、N−アシルアミノ酸塩などのアニオン性界面活性剤に、特定の両性界面活性剤と低刺激性非イオン性界面活性剤(SE)を一定比率で混合することで、使用感を低下させることなく起泡性を向上するとともに優れた増粘効果が得られることを見出し本発明に至った。
【0007】
すなわち、本発明の洗浄剤組成物は、アニオン性界面活性剤、両性界面活性剤及びHLBが6以上のショ糖脂肪酸エステルを必須成分として含有し、前記アニオン性界面活性剤/両性界面活性剤の重量比率が1/9〜9/1であることを特徴とする。
【0008】
本発明の洗浄剤組成物では、前記アニオン性界面活性剤が、N−アシルアミノ酸塩、N−アシルタウリン塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、ポリオキシエチレンアルキルスルホコハク酸二塩、及びポリオキシエチレンアルキルスルホコハク酸塩の群から選ばれた少なくとも1種であり、前記両性界面活性剤が、アルキルベタイン、アルキルアミドプロピルベタイン、2−アルキル−1−カルボキシメチル−1−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、及びアルキルアミンオキシドの内の少なくとも1種であることが好ましい。
【0009】
更に、カチオン化セルロース、ヒドロキシエチルセルロース、及びヒドロキシプロピルセルロースの群から選ばれた少なくとも1種を含んでなることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の洗浄剤組成物によれば、増粘化が難しいN−アシルアミノ酸塩などアニオン界面活性剤に、ベタイン、ラウリルジメチルアミンオキシド等の両性界面活性剤と低刺激性非イオン性界面活性剤(SE)との一定量を混合使用することで、起泡性を向上し洗浄性に優れ、使用感を低下させることなく優れた増粘効果を得ることができる。また、上記界面活性剤はポリオキシエチレンラウリル硫酸エーテルナトリウム(LES)などに比べて低刺激であるため、乳児用食器や敏感肌用洗浄剤に特に好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0012】
本発明の洗浄剤組成物に使用されるアニオン性界面活性剤としては、特に制限されることはないが、N−アシルアミノ酸塩、N−アシルタウリン塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、ポリオキシエチレンアルキルスルホコハク酸二塩、ポリオキシエチレンアルキルスルホコハク酸塩などが挙げられ、これらは1種または2種以上を混合して用いることができる。
【0013】
例えば、上記N−アシルアミノ酸塩及びN−アシルタウリン塩は、そのアシル基については特に制限されないが、炭素数8〜22の飽和の脂肪酸が良好に使用でき、単一のアシル基、ヤシ油脂肪酸、パーム核油脂肪酸、牛脂脂肪酸等から誘導されるアシル基、又はそれらの混合物でも良い。また、N−アシルアミノ酸塩を構成するアミノ酸としてはグリシン、アラニン、グルタミン酸、アスパラギン酸等が挙げられる。さらに、N−アシルアミノ酸及びN−アシルタウリンの塩としてはナトリウム、カリウム、アンモニウム、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン、アルギニン、リジン、ヒスチジン、オルチニン、オキシリジン等を挙げることができる。具体的には、N−ヤシ油脂肪酸アシルグリシンカリウム、N−パーム核油脂肪酸アシルグリシンアンモニウム、N−ステアロイルアラニンナトリウム、N−ラウロイルグルタミン酸ナトリウム、N−ラウロイルグルタミン酸トリエタノールアミン、N−ヤシ油脂肪酸アシルグルタミン酸カリウム、N−ヤシ油脂肪酸アシルグルタミン酸ナトリウム、N−ヤシ油脂肪酸アシルグルタミン酸トリエタノールアミン、N−ミリストイルアスパラギン酸トリエタノールアミン、N−ココイルメチルタウリンナトリウム等が挙げられる。これらは必要に応じて1種または2種以上を混合して用いることができる。
【0014】
ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、ポリオキシエチレンアルキルスルホコハク酸二塩、ポリオキシエチレンアルキルスルホコハク酸塩のアルキル基については特に制限されないが、炭素数8〜22の飽和の脂肪酸が良好に使用でき、単一のアルキル基、ヤシ油脂肪酸、パーム核油脂肪酸、牛脂脂肪酸等から誘導されるアルキル基、又はそれらの混合物でも良い。さらに、塩としてはナトリウム、カリウム、アンモニウム、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン、アルギニン、リジン、ヒスチジン、オルチニン、オキシリジン等を挙げることができる。
【0015】
両性界面活性剤としては、ラウリルジメチルベタイン等のアルキルベタインやヤシ脂肪酸アミドプロピルベタイン等のアルキルアミドプロピルベタイン、ラウリルジメチルアミンオキシド等のアルキルアミンオキシド、2−ウンデシル−1−カルボキシメチル−1−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン等の2−アルキル−1−カルボキシメチル−1−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン等が挙げられ、必要に応じて2種以上を混合して用いることができる。
【0016】
本発明の洗浄剤組成物は、従来増粘し難かった上記アニオン性界面活性剤に、上記両性界面活性剤と低刺激性非イオン性界面活性剤(SE)をある一定の比率で混合することで、増粘効果が得られる。
【0017】
前記非イオン性界面活性剤は、HLBが6以上のショ糖脂肪酸エステルであり、HLBは11以上のものがより増粘効果が向上し好ましい。HLBの上限は特に制限されないが好ましくは19以下である。
【0018】
ショ糖脂肪酸エステルのHLBが6未満であると水への溶解性が低下し分離が生じる場合があり、さらに洗浄力、起泡力が不充分となり組成物の安定性も低下する。また、HLBが19を超えると価格が高くなるため経済的に好ましくない。
【0019】
ショ糖脂肪酸エステルの構成脂肪酸としては、炭素数6以上のものであれば特に制限されないが、洗浄力、起泡力、組成物の安定性の面から炭素数8〜22、特に炭素数12であるものが好ましい。
【0020】
これらの脂肪酸としては、例えば、カプロン酸、カプリル酸、2−エチルヘキサン酸、カプリン酸、ラウリン酸、イソトリデカン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、ベヘン酸、エルカ酸、リシノール酸、ヒドロキシステアリン酸などが挙げられ、中でもラウリン酸、ミリスチン酸が好ましい。
【0021】
ショ糖脂肪酸エステルの具体例としては、ラウリン酸スクロース、ミリスチン酸スクロース、ステアリン酸スクロース、エルカ酸スクロース、オレイン酸スクロース、パルミチン酸スクロースなどが挙げられる。これらを1種または2種以上を混合し使用してもよい。
【0022】
本発明は、これらのアニオン性界面活性剤と両性界面活性剤、アニオン性界面活性剤とショ糖脂肪酸エステル、両性界面活性剤とショ糖脂肪酸エステルの組み合わせでは洗浄剤組成物の増粘効果が得られないが、上記アニオン性界面活性剤と両性界面活性剤とショ糖脂肪酸エステルの3種を併用することにより増粘効果が得られ、また起泡力を向上することもできる。
【0023】
すなわち、図1に示すアニオン性界面活性剤/両性界面活性剤を2/1とし、ショ糖脂肪酸エステルを変量し、残部が水からなる洗浄剤組成物の粘度挙動から、ショ糖脂肪酸エステルの添加量を増量することにより増粘されることが示される。
【0024】
アニオン性界面活性剤と両性界面活性剤の使用量は、重量比率でアニオン性界面活性剤/両性界面活性剤が1/9〜9/1であり、好ましくは2/8〜8/2、より好ましくは3/7〜7/3である。この比率が1/9〜9/1の範囲を外れると洗浄剤組成物の増粘効果が充分に発現されない。
【0025】
また、ショ糖脂肪酸エステルの使用量は、アニオン性界面活性剤と両性界面活性剤との総量に対して5%以上、好ましくは7%以上、さらに好ましくは10%以上である。使用量が5%未満であると図1に示す通り洗浄剤組成物の増粘効果が得られない。
【0026】
また、ショ糖脂肪酸エステルを一定量にしたとき、両性界面活性剤とアニオン性界面活性剤の比率を変えることにより粘度を調整することができる(図2参照)。
【0027】
本発明の洗浄剤組成物は、上記必須成分に加えて、カチオン化セルロース、HEC,HPC等の高分子化合物を添加することで増粘効果、増粘安定性をさらに向上することができる。
【0028】
本発明の洗浄剤組成物を洗浄剤に用いる場合、上記必須成分に加えて通常の洗浄剤の成分とし使用する油分、界面活性剤、高分子化合物、酸化防止剤、紫外線吸収剤、保湿剤、香料、染料、顔料、色素、防腐剤、ビタミン剤、ホルモン剤、消臭剤、pH調製剤、固着剤等の添加物を本発明の効果を損なわない範囲で適宜、適量を配合し用いることができる。
【実施例】
【0029】
以下、実施例および比較例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
【0030】
表1、2に記載の処方(固形分濃度%)でアニオン性界面活性剤(アニオン性−A〜Dという)、両性界面活性剤(両性−A、Bという)及びショ糖脂肪酸エステルをビーカーに測りとり、70℃に加熱し、ガラス棒で攪拌しながら溶解した後、残部水を加えて100部とし、洗浄剤組成物を調製した。用いた界面活性剤は下記の通りである。
【0031】
得られた洗浄剤組成物の粘度をB型粘度計((株)東京計器製造所製、粘度計BM型)を用い、25℃で測定した。結果を表1に示す。
【0032】
[界面活性剤]
・アニオン性−A:ココイルグルタミン酸トリエタノールアミン(味の素(株)製、アミソフトCT−12)
・アニオン性−B:ポリオキシエチレンスルホコハク酸ラウリル二ナトリウム
・アニオン性−C:ラウロイルメチルβ−アラニンナトリウム(日光ケミカルズ(株)製)
・アニオン性−D:N−ラウロイルサンコシンナトリウム
・両性−A:ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン
・両性−B:ラウリルジメチルアミンオキシド
・ショ糖脂肪酸エステル:ラウリン酸スクロース
【0033】
【表1】

【0034】
表1に示す結果(図2参照)より、比較例1〜3の両性界面活性剤とショ糖脂肪酸エステル(非イオン性界面活性剤)、アニオン性界面活性剤とショ糖脂肪酸エステル、及びアニオン性界面活性剤と両性界面活性剤の組み合わせでは洗浄剤組成物の粘度が出ていないのに対し、アニオン性界面活性剤と両性界面活性剤とショ糖脂肪酸エステルの3者を併用することで増粘効果が得られることがわかる。
【0035】
さらに、アニオン性界面活性剤と両性界面活性剤の総量濃度15%のうちアニオン性界面活性剤が30〜70%(両性界面活性剤が70〜30%)のとき(実施例3〜5)、粘度の著しい上昇が見られ、この区間に粘度の最大値を持つことがわかる。
【0036】
【表2】

【0037】
また、表2に示すように、両性界面活性剤(実施例8)、アニオン性界面活性剤(実施例9〜11)を表記載の界面活性剤に変更した場合にもショ糖脂肪酸エステルを併用することで増粘効果が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明の洗浄剤組成物は、洗顔料、メイク落とし、ボディソープ、ハンドソープ、ヘアーシャンプー、食器用洗剤などの各種の洗浄料、洗浄剤に使用することができ、特に安全性、非刺激性に優れることから哺乳瓶などの乳幼児用食器、敏感肌用洗浄料に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】ショ糖脂肪酸エステルの添加量と粘度の関係を示すグラフである。
【図2】アニオン性界面活性剤と両性界面活性剤の比率と粘度の関係を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アニオン性界面活性剤、両性界面活性剤及びHLBが6以上のショ糖脂肪酸エステルを必須成分として含有し、前記アニオン性界面活性剤/両性界面活性剤の重量比率が1/9〜9/1であることを特徴とする洗浄剤組成物。
【請求項2】
前記アニオン性界面活性剤が、N−アシルアミノ酸塩、N−アシルタウリン塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、ポリオキシエチレンアルキルスルホコハク酸二塩、及びポリオキシエチレンアルキルスルホコハク酸塩の群から選ばれた少なくとも1種であり、前記両性界面活性剤が、アルキルベタイン、アルキルアミドプロピルベタイン、2−アルキル−1−カルボキシメチル−1−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、及びアルキルアミンオキシドの内の少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載の洗浄剤組成物。
【請求項3】
更に、カチオン化セルロース、ヒドロキシエチルセルロース、及びヒドロキシプロピルセルロースの群から選ばれた少なくとも1種を含んでなることを特徴とする請求項1又は2に記載の洗浄剤組成物。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2007−138023(P2007−138023A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−333815(P2005−333815)
【出願日】平成17年11月18日(2005.11.18)
【出願人】(000003506)第一工業製薬株式会社 (491)
【Fターム(参考)】