説明

洗浄剤組成物

【課題】起泡性及び安定性が改善された洗浄剤組成物を提供すること。
【解決手段】(A)特定のアルキルリン酸モノエステル塩、及び
(B)(b1)一般式(2)で表わされる四級アンモニウム塩、(b2)一般式(3)で表されるカルボキシベタインまたはスルホベタイン、及び(b3)一般式(4)で表されるアミンオキサイドからなる群から選ばれる少なくとも一種


[式中、R2は炭素数3〜9の炭化水素基、R3、R4、R5はそれぞれ炭素数1〜3のアルキル基またはヒドロキシアルキル基、R6は炭素数1〜3のアルキレン基またはヒドロキシアルキレン基、X1-は四級アンモニウムイオンと対イオンを形成する陰イオン基、X2-はカルボキシル基またはスルホン基を示す]
を含有する洗浄剤組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は洗浄剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
洗顔料、全身洗浄料、シャンプー等の洗浄剤は使用の際、直接皮膚に接触するため、使用感を向上させる豊かな起泡性および皮膚への低刺激性が要求される。また、低刺激性に対するさらなる要求の高まりから、これら洗浄剤が示すpH領域は塩基性から中性、さらには弱酸性へと移行している。このような要求を満たす目的から低刺激性界面活性剤として陰イオン性界面活性剤の一種であるリン酸エステル系界面活性剤が使用されている。
しかし、このリン酸エステル系界面活性剤は中性乃至弱酸性のpH領域において水に対する溶解性に乏しいために起泡性が悪く、また、洗浄剤の安定性が満足できるものではないという問題があった。
起泡性を改善するために、分岐鎖アルキル基を有するリン酸エステル系界面活性剤を配合した洗浄剤組成物が提案されている(特許文献1参照)。しかしながら、この洗浄剤組成物は、起泡性が十分に満足できるものではなかった。さらに前記特許文献1には安定性に関する知見はなかった。
【0003】
【特許文献1】特開2001−181677号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、アルキルリン酸モノエステル塩を含有する洗浄剤組成物における起泡性および安定性を改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、特定のアルキルリン酸モノエステル塩に特定の炭素数の炭化水素基を有する助剤を配合することにより洗浄剤組成物における起泡性および安定性が著しく改善されることを見出した。
【0006】
本発明は、(A)下記一般式(1)
【化1】

【0007】
[(1)式中、R1は炭素数8〜18の炭化水素基を示し、kは0〜10の数を示す。mは0.01〜1.3の数を示す。Mはアルカリ金属またはアルカリ土類金属を示し、nはMの原子価である]
で示されるアルキルリン酸モノエステル塩、及び
(B)(b1)下記一般式(2)で表わされる四級アンモニウム塩、(b2)下記一般式(3)で表されるカルボキシベタインまたはスルホベタイン、および(b3)下記一般式(4)で表されるアミンオキサイドからなる群から選ばれる少なくとも1種
【0008】
【化2】

【0009】
[(2)〜(4)式中、R2は炭素数3〜9の炭化水素基を示し、R3、R4、R5はそれぞれ炭素数1〜3のアルキル基またはヒドロキシアルキル基、R6は炭素数1〜3のアルキレン基またはヒドロキシアルキレン基を示す。X1-は四級アンモニウムイオンと対イオンを形成する陰イオン基、X2-はカルボキシル基またはスルホン基を示す]
を含有する洗浄剤組成物を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、アルキルリン酸モノエステル塩を含有する洗浄剤組成物の起泡性および安定性を改善することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の洗浄剤組成物は、(A)一般式(1)で示されるアルキルリン酸モノエステル塩と、(B)(b1)一般式(2)で表わされる四級アンモニウム塩、(b2)一般式(3)で表されるカルボキシベタインまたはスルホベタイン、および(b3)一般式(4)で表されるアミンオキサイドからなる群から選ばれる少なくとも1種とを使用することにより起泡性および安定性を著しく改善させるものである。
【0012】
(A)成分である一般式(1)で表されるアルキルリン酸モノエステル塩において、R1は炭素数8〜18の炭化水素基である。炭化水素基としては、起泡性及び水溶性の観点から、上記炭素数の直鎖あるいは分岐鎖のアルキル基またはアルケニル基が好ましい。具体的には、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、オレイル基、10−ウンデセニル基、2−エチル−ヘキシル基、イソノニル基、イソデシル基、2−メチル−ウンデシル基、5−メチル−テトラデシル基等が挙げられる。
1の炭素数としては、起泡性及び水溶性の観点から、好ましくは9〜15、より好ましくは10〜14である。
kはエチレンオキサイドの平均付加モル数を示し、その値は0〜10であり、起泡性及び水溶性の観点から、好ましくは0〜3であり、より好ましくは0〜1である。
【0013】
Mはアルカリ金属又はアルカリ土類金属を示す。具体的には、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム等の各原子が挙げられる。起泡性及び水溶性の観点から、好ましくはナトリウム原子、カリウム原子、より好ましくはカリウム原子である。nはMの原子価である。
本発明におけるアルキルリン酸モノエステル塩は後述するアルキルリン酸モノエステルを上記アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物などの塩基で部分中和することにより得られる。
【0014】
水酸化アルカリの使用量によって、一般式(1)におけるmを調整することができる。mは0.01〜1.3の数であり、アルキルリン酸モノエステル塩の中和度を表わす。
本発明における中和度は以下のように定義される。
中和度=(塩基の当量)/(アルキルリン酸モノエステルの当量)
【0015】
つまり、中和度はアルキルリン酸モノエステルの1当量に対する塩基の当量比を示している。換言すると中和度の決定は、アルキルリン酸モノエステルの第一当量点に対応する酸価に対する塩基の量として表現される。ここで酸価を求める具体的な方法として、油化学 第39巻 第4号 p250(黒崎ら、1990)に記載される電位差滴定法がある。mの値は、刺激性と起泡性を両立するという観点から、好ましくは0.3〜1.1であり、さらに好ましくは0.7〜1.0である。
【0016】
上記一般式(1)におけるmは対象となる一定量のサンプルに対し、一定量の濃度既知の酸を加えたものを濃度既知の塩基にて滴定し、下記式を用いて求められる。
中和度=(AVblanc−2AV1+ AV2)/(AV2− AV1
AVblank :ブランク(一定量の酸)を中和するのに要する塩基の滴定量
AV1 :サンプルの第一当量点における塩基の滴定量
AV2 :サンプルの第二当量点における塩基の滴定量
【0017】
以下、測定方法の例を示す。なお、本発明では、ここに示す方法に限定されるものではなく、それ以外の公知の方法も使用できる。
(イ)サンプル3gを秤量し、エタノール/水混合溶媒(エタノール/水=70/30 容量比)25mlに溶解させる。
(ロ)さらに0.5規定塩酸10mlを加えた溶液について0.5規定水酸化カリウムを用いて電位差滴定を行い、AV1,AV2を測定する。
(ハ)サンプルを加えずに上記(イ)、(ロ)と同様の操作を行い、AVBlankを測定する。
【0018】
アルキルリン酸モノエステルは、対応するアルコールと無水リン酸又はオキシ塩化リン等のリン酸化剤とを反応させることにより得ることができる。
アルキルリン酸モノエステルの具体例としては、例えば、特開平8−127798号公報に記載されているモノリン酸エステルが挙げられ、その中でオクチルリン酸モノエステル、ノニルリン酸モノエステル、デシルリン酸モノエステル、イソデシルリン酸モノエステル、ウンデシルリン酸モノエステル、ドデシルリン酸モノエステル、トリデシルリン酸モノエステル、テトラデシルリン酸モノエステル、ペンタデシルリン酸モノエステル、ヘキサデシルリン酸モノエステル、ヘプタデシルリン酸モノエステル、オクタデシルリン酸モノエステル、オレイルリン酸モノエステルおよびそれらのエチレンオキサイド付加物等が使用できる。本発明においては、これらのアルキルリン酸モノエステルの中で、起泡性、水溶性、人体に対する安全性、低刺激性、経済性等の観点から、デシルリン酸モノエステル、ドデシルリン酸モノエステル、テトラデシルリン酸モノエステル、ヘキサデシルリン酸モノエステル、オクタデシルリン酸モノエステル、ポリオキシエチレン(以下POEという)(k;0.5)ドデシルリン酸モノエステル、POE(k;1.0)ドデシルリン酸モノエステル、POE(k;0.5)トリデシルリン酸モノエステル、POE(k;1.0)トリデシルリン酸モノエステルが好ましく、ドデシルリン酸モノエステルがより好ましい。これらのアルキルリン酸モノエステルは1種単独でも、または2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0019】
本発明においては、(B)成分として、以下に詳述する(b1)〜(b3)成分から選ばれる少なくとも1種を含む。
(B)成分の中で(b1)成分である一般式(2)で表される四級アンモニウム塩において、R2は炭素数3〜9の炭化水素基である。炭化水素基としては、好ましくは飽和又は不飽和の直鎖または分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基を示す。具体的にはn−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、n−へプチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、n−ノニル基、3,5,5−トリメチル−1−ヘキシル基等のアルキル基、アリル基、8−ノネニル基等のアルケニル基が挙げられる。
2における炭素数としては、3〜9であることが豊かな泡量を発現するためには重要であり、起泡性及び水溶性の観点から、好ましくは4〜8、より好ましくは4〜6である。
【0020】
3、R4およびR5は、それぞれ炭素数1〜3のアルキル基、ヒドロキシアルキル基を示す。
具体例としてはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、1−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシプロピル基等が挙げられる。原料入手性の観点から、好ましくはメチル基である。
1-は四級アンモニウムイオンと対イオンを形成する陰イオン基を示し、原料入手性や合成の容易性の観点から、ハロゲンイオンまたは炭素数1または2のアルキル硫酸イオンが好ましい。具体的には、塩素イオン、臭素イオンおよびヨウ素イオン等のハロゲンイオン、メチル硫酸イオン、エチル硫酸イオン等が好適に挙げられる。これらの中でより好ましくは塩素イオンである。一般式(2)で表される四級アンモニウム塩の具体例としては、プロピルトリメチルアンモニウムクロライド、n−ブチルトリメチルアンモニウムクロライド、イソブチルトリメチルアンモニウムクロライド、ペンチルトリメチルクロライド、2−メチル−1−ブチルトリメチルアンモニウムクロライド、3−メチル−1−ブチルトリメチルクロライド、ヘキシルトリメチルアンモニウムクロライド、ヘプチルトリメチルアンモウムクロライド、オクチルトリメチルアンモニウムクロライド、ノニルトリメチルアンモニウムクロライド、3,5,5−トリメチル−1−ヘキシルトリメチルアンモニウムクロライド等が挙げられ、これらの中でも起泡性改善の観点からn−ブチルトリメチルアンモニウムクロライド、ヘキシルトリメチルアンモニウムクロライドが好ましく、ヘキシルトリメチルアンモニウムクロライドがより好ましい。これらの四級アンモニウム塩は1種で、または2種以上組み合わせて用いても良い。
【0021】
(b2)成分である一般式(3)で示されるカルボキシベタインまたはスルホベタインにおいて、R2は炭素数3〜9の炭化水素基である。炭化水素基としては、上記(b1)成分で述べた説明と同じである。R2における炭素数としては、起泡性及び水溶性の観点から、好ましくは4〜8、より好ましくは6〜8である。R3およびR4は上記と同じである。
6は炭素数1〜3のアルキレン基、もしくはヒドロキシアルキレン基である。具体例としてメチレン基、エチレン基、プロピレン基、2−ヒドロキシプロピレン基等が挙げられる。好ましくはメチレン基、2−ヒドロキシプロピレン基等が挙げられる。 X2-はカルボキシル基またはスルホン基を示す。
上記のような一般式(3)で示されるカルボキシベタインまたはスルホベタインの具体例としては、プロピルジメチルカルボキシベタイン、n−ブチルジメチルカルボキシベタイン、イソブチルジメチルカルボキシベタイン、ペンチルジメチルカルボキシベタイン、2−メチル−1−ブチルジメチルカルボキシベタイン、3−メチル−1−ブチルジメチルカルボキシベタイン、ヘキシルジメチルカルボキシベタイン、ヘプチルジメチルカルボキシベタイン、オクチルジメチルカルボキシベタイン、ノニルジメチルカルボキシベタイン、3,5,5−トリメチル−1−ヘキシルジメチルカルボキシベタイン、プロピルジメチルヒドロキシスルホベタイン、n−ブチルジメチルヒドロキシスルホベタイン、イソブチルジメチルヒドロキシスルホベタイン、ペンチルジメチルヒドロキシスルホベタイン、2−メチル−1−ブチルジメチルヒドロキシスルホベタイン、3−メチル−1−ブチルジメチルヒドロキシスルホベタイン、ヘキシルジメチルヒドロキシスルホベタイン、ヘプチルジメチルヒドロキシスルホベタイン、オクチルジメチルヒドロキシスルホベタイン、ノニルジメチルヒドロキシスルホベタイン、3,5,5−トリメチル−1−ヘキシルジメチルヒドロキシスルホベタイン等が挙げられ、これらの中でも起泡性改善効果の観点から、オクチルジメチルカルボキシベタイン、オクチルジメチルヒドロキシスルホベタインが好ましく、オクチルジメチルカルボキシベタインがより好ましい。
(b2)成分である上記のカルボキシベタインまたはスルホベタインは1種で、または2種以上組み合わせて用いても良い。
【0022】
(b3)成分である一般式(4)で示されるアミンオキサイドにおいて、R2は炭素数3〜9の炭化水素基である。炭化水素基としては、上記(b1)成分で述べた説明と同じである。R2における炭素数としては、起泡性及び水溶性の観点から、好ましくは4〜8、より好ましくは4〜6である。R3、R4は上記と同じである。一般式(4)で示される四級アンモニウム塩の具体例としては、プロピルジメチルアミンオキサイド、n−ブチルジメチルアミンオキサイド、イソブチルジメチルアミンオキサイド、ペンチルジメチルアミンオキサイド、2−メチル−1−ブチルジメチルアミンオキサイド、3−メチル−1−ブチルジメチルアミンオキサイド、ヘキシルジメチルアミンオキサイド、ヘプチルジメチルアミンオキサイド、オクチルジメチルカルボキシベタイン、ノニルジメチルアミンオキサイド、3,5,5−トリメチル−1−ヘキシルジメチルアミンオキサイド等が挙げられ、これらの中でも起泡性改善効果の観点から、n−ブチルジメチルアミンオキサイド、ヘキシルジメチルアミンオキサイドが好ましい。
(b3)成分である上記のアミンオキサイドは1種で、または2種以上組み合わせて用いることができる。
さらに、(B)成分である上記の(b1)〜(b3)成分は、単独で用いることもできるが、(b1)と(b2)の2種類や、(b1)、(b2)、(b3)の3種類等各種組み合わせて用いることができる。2種類以上の各種組み合わせで用いる場合、R2、R3およびR4は(b1)、(b2)、(b3)の間でそれぞれ同じでも良いし異なっていても良い。
【0023】
本発明の洗浄剤組成物中の[(A)+(B)]成分の合計含有量は好ましくは、0.1〜60質量%、より好ましくは、0.5〜40質量%であり、残余は主として水である。
【0024】
(B)成分に対する(A)成分の配合比(A)/(B)は、質量基準で好ましくは、100/1〜1/1、より好ましくは、10/1〜2/1であり、(A)/(B)を前記のような範囲に維持することにより、前記のような特定の(A)成分と特定の(B)成分を使用することによる起泡性改善効果が発揮される。
【0025】
本発明の洗浄剤組成物のpHは、通常2〜7程度である。このpHは皮膚低刺激性の観点から、好ましくは4〜6.5、より好ましくは5〜6.5である。上記のような(A)成分と(B)成分とを混合して0.1〜50質量%の濃度の水溶液にした場合に、該水溶液のpHが前記の範囲内であることが好ましい。pHを前記の範囲内とするためには、洗浄剤組成物を上記濃度、好ましくは5質量%以下の水溶液となるように水で希釈して、任意の酸、塩基を用いてpHを調整することができる。
【0026】
本発明の洗浄剤組成物のロスマイルズ法による泡量は、起泡性向上の観点から、好ましくは500ml以上、より好ましくは550ml以上2000ml以下である。具体的には実施例に記載の方法により測定することができる。
本発明の洗浄剤組成物の安定性とは、外観の均一性(分離してない)や流動性を意味する。安定性は、使用に供する前の原液から洗浄過程に相当する希釈液の全ての領域において外観が均一かつ流動性のあることが、取扱い易さの点で好ましい。
【0027】
本発明の洗浄剤組成物は洗顔料、全身洗浄料、ヘアシャンプー、ボディーシャンプー等の直接皮膚に接触する洗浄剤製品として有用であるが、必要に応じて、各種用途に対応した任意成分を添加することができる。
任意成分としては、通常の洗浄剤に用いられる他の界面活性剤、例えばポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩、アルキル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、α―オレフィンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、脂肪酸塩、α―スルホ脂肪酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、脂肪酸のモノ及び、ジアルカノールアミド、アルキルグルコシド等の非イオン界面活性剤、アミドプロピルベタインを配合することもできる。
その他の任意成分としては、通常の洗浄剤に用いられる成分、例えば、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、ソルビトール等の保湿剤;メチルセルロース、ポリオキシエチレングリコールジステアレート、エタノール等の粘度調整剤;トリクロサン、トリクロロカルバン等の殺菌剤;グリチルリチン酸カリウム、酢酸トコフェロール等の抗炎症剤;ジンクピリチオン、オクトピロックス等の抗フケ剤;メチルパラベン、ブチルパラベン等の防腐剤;香料、色素、酸化防止剤等を配合することができる。
【実施例】
【0028】
以下に、本発明を実施例により更に具体的に説明する。
実施例および比較例で得られた洗浄剤組成物について、以下の方法により、泡量を測定し、安定性を評価した。
[泡量の測定方法]
得られた洗浄剤組成物について、ロスマイルズ法により5分後の泡量を計測した。測定は25℃条件下、同一サンプルにつき5回試行し、その平均値を表1に記載した。
[安定性の評価方法]
得られた洗浄剤組成物(泡量の測定に使用した洗浄剤組成物の20倍濃度品)を10℃で24時間静置した後、外観と流動性を目視で調べた。
I :外観は均一透明で、流動性も高い。
II :外観は均一透明だが、粘度が高く流動性が低い。
III:一部組成物が分離しており、均一ではない。
IV:白濁固化しており、流動性も無い。
【0029】
実施例に使用した(A)成分を以下のように製造した。
[(A)成分の製造]
(1)(A)−1の製造
ドデシルリン酸モノエステル(花王(株)製)10.0gおよび48質量%水酸化カリウム3.07g(ドデシルリン酸モノエステルに対して0.7モル当量)をビーカー内のイオン交換水1987gに添加し、温度60℃で撹拌を行なった後室温まで放冷し、ドデシルリン酸モノエステルカリウム塩(A)−1の0.55質量%水溶液2000gを調製した。このドデシルリン酸モノエステルカリウム塩水溶液の中和度を前記の方法で測定して計算した結果、前記一般式(1)におけるmは0.7であることが確認された。
【0030】
(2)(A)−2および(A)−3の製造
ドデシルリン酸モノエステル(花王(株)製)10.0gに対しそれぞれ、48質量%水酸化カリウム3.95gおよび4.39g(ドデシルリン酸モノエステルに対して、0.9モル当量および1.0当量)をビーカー内のイオン交換水1986gに添加して前記(A)−1の調製例と同様にしてドデシルリン酸モノエステルカリウム塩(A)−2および(A)−3の0.57質量%水溶液2000gをそれぞれ調製した。このドデシルリン酸モノエステル塩水溶液の中和度を前記の方法で測定して計算した結果、前記一般式(1)におけるmはそれぞれ0.9および1.0であることが確認された。
【0031】
(3)(A)−4の製造
ドデシルリン酸モノエステル(花王(株)製)10.0gおよび48質量%水酸化カリウム6.14g(ドデシルリン酸モノエステルに対して1.4モル当量)を、ビーカー内でイオン交換水1986gに溶解して前記(A)−1の調製例と同様にドデシルリン酸モノエステルカリウム塩(A)−4の0.6質量%水溶液2000gを調製した。このドデシルリン酸モノエステルカリウム塩水溶液の中和度を前記の方法で測定して計算した結果、前記一般式(1)におけるmは1.4であることが確認された。
【0032】
[(B)成分の製造]
(1)(b1)ヘキシルトリメチルアンモニウムクロライドの製造
1−クロロヘキサン(Aldrich(株)製)と過剰の40%トリメチルアミン水溶液(Aldrich(株)製)を混合し、更に必要に応じてイオン交換水で希釈
した後に60〜120℃で加熱攪拌して反応を行った。得られた反応液に引き続き窒素を吹き込んで攪拌し、更にはその後減圧下で濃縮して未反応のトリメチルアミンを除去して、(b1)ヘキシルトリメチルアンモニウムクロライドの20%水溶液を得た。
【0033】
(2)(b2)オクチルジメチルカルボキシベタインの製造
オクチルジメチルアミン(Aldrich(株)製)をモノクロロ酢酸ナトリウム(関東化学(株)製)、および水酸化ナトリウムを用いて、イオン交換水とエタノールとの混合溶媒中にて通常の方法(例えばAMPHOTERIC SURFACTANTS surfactant science series volume 59 p78,p94 (Second Edition, Marcel Dekker, Inc.)を参照)にて四級化反応を行った。得られた水溶液を濃縮しエタノールを加えて副成物である塩化ナトリウムを濾別した。濾液を濃縮してエタノールを除去した後、イオン交換水で希釈し(b2)オクチルジメチルカルボキシベタインの20%水溶液を得た。
【0034】
(3)(b3)n−ブチルジメチルアミンオキサイドの製造
n−ブチルジメチルアミン(Aldrich(株)製)を3−クロロ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸ナトリウム(東京化成工業(株)製)、および水酸化ナトリウムを用いて、イオン交換水とエタノールとの混合溶媒中にて上記(2)と同様の方法にて四級化反応を行った。得られた水溶液を濃縮しエタノールを加えて副成物である塩化ナトリウムを濾別した。濾液を濃縮してエタノールを除去した後、イオン交換水で希釈し(b3)n−ブチルジメチルヒドロキシスルホベタインの20%水溶液を得た。
【0035】
実施例1〜4
上記で調製した(A)成分と(B)成分とをそれぞれ表1に示す配合量で混合し、洗浄剤組成物を得た。なお、(A)および(B)成分の配合量は、洗浄剤組成物全量に対する質量%で示す。
得られた組成物について、泡量を測定した。また、泡量の測定に使用した洗浄剤組成物より20倍濃い組成物も別途調製し、安定性の評価を行った。結果を表1に示す。
【0036】
比較例1〜3
(B)成分として用いたヘキシルトリメチルアンモニウムクロライドまたはオクチルジメチルカルボベタインを添加しなかった以外は、実施例1〜3と同様に行い、洗浄剤組成物を得た。
得られた組成物についてそれぞれ泡量を測定した。また、泡量の測定に使用した洗浄剤組成物より20倍濃い組成物も別途調製し、安定性の評価を行った。結果を表1に示す。
比較例4
(A)成分として上記で調製した(A)−4を用いた以外、比較例1と同様に行い洗浄剤組成物を得た。
得られた組成物について、比較例1と同様に泡量の測定および安定性の評価を行った。結果を表1に示す。
比較例5
(A)成分として上記で調製した(A)−4と、(B)成分としてオクチルジメチルカルボキシベタインとを表1に示す配合量で混合し、洗浄剤組成物を得た。
得られた組成物について、実施例1と同様に泡量の測定および安定性の評価を行った。結果を表1に示す。
比較例6
実施例1で用いた(b1)成分をドデシルトリメチルアンモニウムクロライドに変更した以外は実施例1と同様に行い、洗浄剤組成物を得た。
得られた組成物について、実施例1と同様に泡量の測定および安定性の評価を行った。結果を表1に示す。
【0037】
【表1】

【0038】
上記表1の結果から、本発明の洗浄剤組成物においては、特定の中和度を有する(A)成分に特定の(B)成分を添加することにより泡量が多く、起泡性が改善され、かつ優れた安定性を有することがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明の洗浄剤組成物は泡量が多く、安定性を有し、かつ、皮膚への刺激性がないので、特に、直接皮膚に接触する洗顔料、全身洗浄料、シャンプー等の洗浄剤として極めて有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記一般式(1)
【化1】

[(1)式中、R1は炭素数8〜18の炭化水素基を示し、kは0〜10の数を示す。mは0.01〜1.3の数を示す。Mはアルカリ金属又はアルカリ土類金属を示し、nはMの原子価である]
で示されるアルキルリン酸モノエステル塩、及び、
(B)(b1)下記一般式(2)で表わされる四級アンモニウム塩、(b2)下記一般式(3)で表されるカルボキシベタインまたはスルホベタイン、および(b3)下記一般式(4)で表されるアミンオキサイドからなる群から選ばれる少なくとも1種
【化2】

[(2)〜(4)式中、R2は炭素数3〜9の炭化水素基を示し、R3、R4、R5はそれぞれ炭素数1〜3のアルキル基またはヒドロキシアルキル基、R6は炭素数1〜3のアルキレン基またはヒドロキシアルキレン基を示す。X1-は四級アンモニウムイオンと対イオンを形成する陰イオン基、X2-はカルボキシル基またはスルホン基を示す]
を含有する洗浄剤組成物。
【請求項2】
pHが4〜6.5である請求項1に記載の洗浄剤組成物。
【請求項3】
(A)成分がドデシルリン酸モノエステル塩である請求項1または2に記載の洗浄剤組成物。
【請求項4】
(B)成分がヘキシルトリメチルアンモニウムクロライドである請求項1〜3のいずれかに記載の洗浄剤組成物。
【請求項5】
(B)成分がオクチルジメチルカルボキシベタインである請求項1〜3のいずれかに記載の洗浄剤組成物。
【請求項6】
(B)成分に対する(A)成分の配合比[(A)成分/(B)成分]が、質量基準で100/1〜1/1である請求項1〜5のいずれかに記載の洗浄剤組成物。

【公開番号】特開2007−197670(P2007−197670A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−321440(P2006−321440)
【出願日】平成18年11月29日(2006.11.29)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】