説明

洗浄剤組成物

【課題】洗い上がりがしっとり潤うと共に、良好な起泡性を有する洗浄剤組成物を提供する。
【解決手段】(A)アニオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、カチオン界面活性剤及び両性界面活性剤から選ばれる少なくとも一種以上の界面活性剤及び、(B)水酸基価から算出した平均重合度2〜15のポリグリセリンと、炭素数8〜22の分枝脂肪酸とのエステル化反応生成物であり、そのエステル化率が60%以上であるエステル化反応生成物を含有する洗浄剤組成物を使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗い上がりがしっとり潤うと共に、良好な起泡性を有する洗浄剤組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ボディシャンプーや洗顔フォーム等の皮膚洗浄剤は、脂肪酸石鹸を主成分とした物が多く使用されている。しかし、アルカリ性を有している為、皮膚刺激の懸念がある。これを改善する方法として、プロピレングリコール、グリセリン等のポリオールを配合する方法が用いられており、洗浄中については改善されているものの、洗い上がりがしっとり潤うという点については不十分であり、洗浄後の肌がつっぱる等の使用面上の問題があり、洗い上がりがしっとり潤い感のある皮膚洗浄剤が求められている。また、シャンプー等の毛髪洗浄剤に求められる機能も、近年のヘアケアの多様化に伴い、複雑化している。特にヘアカラーやパーマネント処理等が定着し、毛髪の風合いに悪影響を与える機会が増えている。この様な中で、シャンプー等の毛髪洗浄剤には、従来の洗浄効果に加え、しっとり潤い感のある優れた洗い上がり性能が求められている。そこで、洗い上がりの皮膚や毛髪にしっとり潤い感を付与する為、オリーブ油、ひまわり油等の植物油、スクワラン、ラノリン等の動物油、シリコーン油等が配合される。しかし、これらのものを配合すると、起泡性を損ない洗浄力を落とす等の問題があった。これを解決する方法として、特許文献1に、流動パラフィンと多価アルコールとを併用した方法が記載されている。しかし、この方法は、特定の洗浄剤成分(N−アシルアミノ酸塩)だけでしか効果を発揮せず、皮膚洗浄剤に多く使用されている脂肪酸石鹸や、毛髪洗浄剤で多く使用されているラウリル硫酸エステル塩等、これらの系では効果を発揮することの記載はない。この事から、洗い上がりがしっとり潤うと共に、良好な起泡性を有する洗浄剤組成物の開発が望まれていた。
【特許文献1】特開昭62−138600号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明が解決しようとする課題は、洗い上がりがしっとり潤うと共に、良好な起泡性を有する洗浄剤組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、洗浄成分の界面活性剤と特定のポリグリセリン分枝脂肪酸エステルを含有する洗浄剤組成物が、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。即ち、本発明は、(A)アニオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、カチオン界面活性剤及び両性界面活性剤から選ばれる少なくとも一種以上の界面活性剤及び、(B)水酸基価から算出した平均重合度2〜15のポリグリセリンと、炭素数8〜22の分枝脂肪酸とのエステル化反応生成物であり、そのエステル化率が60%以上であるエステル化反応生成物を含有する洗浄剤組成物に関するものである。
【発明の効果】
【0005】
本発明の洗浄剤組成物は、洗い上がりがしっとり潤うと共に、良好な起泡性を有する洗浄剤組成物である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明を詳細にする。
【0007】
本発明で使用する(A)アニオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、カチオン界面活性剤及び両性界面活性剤としては、化粧品に使用されるものであれば特に限定はない。例えば、アニオン界面活性剤としては、脂肪酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキルスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸モノソジウム塩、ジソジウムアルキルアミドエチルスルホコハク酸エステル、α−スルフォン化脂肪酸アルキルエステル塩、ナトリウムN−メチル−Nオレオイルタウリン、ソジウムアルキルイセチオネート、石油スルフォン酸塩、アルキル硫酸塩、硫酸化油脂、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル硫酸塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルメチルカルボン酸塩、ナフタリンスルフォン酸塩ホルマリン縮合物等が挙げられる。非イオン界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、多価アルコール脂肪酸部分エステル、ポリオキシエチレン多価アルコール脂肪酸部分エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸モノ(ジ)エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン化ヒマシ油、脂肪酸ジエタノールアミド、ポリオキシエチレンアルキルアミン、トリエタノールアミン脂肪酸部分エステル、トリアルキルアミンオキサイド等が挙げられる。カチオン界面活性剤としては、第1〜第3級脂肪アミン塩、トリアルキルベンジルアンモニウム塩、アルキルピリジニウム塩、2−アルキル−1−ヒドロキシエチルイミダゾリニウム塩、N,N−ジアルキルモルフォリニウム塩、ポリエチレンポリアミン脂肪酸アミド塩等が挙げられる。両性界面活性剤としては、N,N−ジメチル−N−アルキル−N−カルボキシメチルアンモニオベタイン、N,N,N−トリアルキル−Nアルキレンアンモニオカルボキシベタイン、N−アシルアミドプロピル−N’N’−ジメチル−N’−β−ヒドロキシプロピルアンモニオスルホベタイン、N,N−ジアルキル−N,N−ビス(ポリオキシエチレン硫酸)アンモニオベタイン、2−アルキル−1−ヒドロキシエチル−1−カルボキシメチルイミダゾリニウムベタイン等が挙げられる。これらから選ばれる少なくとも一種以上の界面活性剤を使用する。
【0008】
本発明において、上記界面活性剤の配合量としては、洗浄剤組成物全体の5〜30重量%であるのが好ましく、より好ましくは10〜25重量%である。界面活性剤の量が5重量%未満では、良好な洗浄力を得る事が困難となり、逆に30重量%を超えると、界面活性剤による可溶化力が強すぎる為、濯ぎ中に大部分が洗い流されてしまい、洗い上がりのしっとり、潤い感が発現しにくくなる。
【0009】
次に、本発明では(B)水酸基価から算出した平均重合度2〜15のポリグリセリンと、炭素数8〜22の分枝脂肪酸とのエステル化反応生成物であり、そのエステル化率が60%以上であるエステル化反応生成物を用いる。尚、ここで言うエステル化率について以下に述べる。ポリグリセリンと脂肪酸とのエステル化反応により得たエステル化反応生成物について、そのケン化価(SV)、酸価(AV)、水酸基価(OHV)を「基準油脂物性試験法」(日本油化学協会制定)により測定する。エステル化率とは、エステル化された水酸基を含む、エステル化反応生成物中の全水酸基数からエステル化された水酸基数を除したものであり、次式より算出した。
エステル化率(%)={(SV−AV)×100}/(OHV+SV−AV)
SV:ケン化価、AV:酸価、OHV:水酸基価を表す。
本発明ではエステル化率が60%以上のエステル化反応生成物を用いる。60%未満の場合は、エステル化反応生成物の水溶性が上がり、濯ぎ時にその大部分が洗い流されてしまい、洗い上がりのしっとり感が十分に発現されない。上記条件を満たすエステル化反応生成物としては、トリイソパルミチン酸ジグリセリル(理論エステル化率:75%)、テトライソステアリン酸ジグリセリル(理論エステル化率:100%)、テトライソステアリン酸テトラグリセリル(理論エステル化率:67%)、ヘキサイソステアリン酸ヘキサグリセリル(理論エステル化率:75%)、デカ2−エチルヘキサン酸デカグリセリル(理論エステル化率:83%)等が挙げられ、その中でも、水酸基価から算出した平均重合度10のデカグリセリンと、炭素数18の分枝脂肪酸であるイソステアリン酸とをエステル化反応させ得た、イソステアリン酸デカグリセリルがより好ましい。より好ましくは、デカグリセリン1モルに対して、8〜10モルのイソステアリン酸をエステル化したイソステアリン酸デカグリセリル(理論エステル化率:67〜83%)が挙げられる。
【0010】
本発明の洗浄剤組成物には、上記エステル化反応生成物の配合量としては、洗浄剤組成物全体の0.01〜10重量%であるのが好ましく、より好ましくは0.1〜5重量%である。0.01重量%未満の配合では、洗い上がりのしっとり、潤い感が発現しにくくなる。逆に、逆に10重量%を超えると、濯ぎ時においてヌメリ感が出たり、洗い上がりがべたついたりし、使用面上好ましくない。
【0011】
また、本発明の洗浄剤組成物には、発明の効果を損なわない範囲で通常の洗浄剤組成物に配合される成分、例えば、食塩、可溶化剤、BHT、トコフェロール等の酸化防止剤、グリセリン、ジグリセリン等のポリオール類、紫外線吸収剤、蛋白誘導体、動植物抽出エキス、殺菌剤、色素、香料、カチオン性ポリマー等のコンディショニング剤、パール外観付与剤、ハイドロトロープ、pH調整剤等を適宜配合することができる。
【0012】
以下、実施例及び比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例により限定されるものではない。
【実施例】
【0013】
<実施例1>
エステル化反応生成物は以下の様に合成した。
デカグリセリン100gとイソステアリン酸337gを反応容器に入れ、0.2gの水酸化ナトリウムを加えた後、窒素気流下において250℃、4時間の条件で反応しエステル化反応生成物395gを得た。このエステル化反応生成物について、そのケン化価(SV)、酸価(AV)、水酸基価(OHV)を「基準油脂物性試験法」(日本油化学協会制定)により測定し、次式よりエステル化率を算出した。その結果を表1に示す。
エステル化率(%)={(SV−AV)×100}/(OHV+SV−AV)
SV:ケン化価、AV:酸価、OHV:水酸基価を表す。
【0014】
<実施例2>
デカグリセリン100gと2−エチルヘキサン酸171gを反応容器に入れ、実施例1と同様の条件で反応しエステル化反応生成物237gを得た。また、実施例1記載の算出式により、エステル化率を算出した。その結果を表1に示す。
【0015】
<比較例1>
デカグリセリン100gとステアリン酸328gを反応容器に入れ、実施例1と同様の条件で反応しエステル化反応生成物385gを得た。また、実施例1記載の算出式により、エステル化率を算出した。その結果を表1に示す。
【0016】
<比較例2>
デカグリセリン100gとイソステアリン酸200gを反応容器に入れ、実施例1と同様の条件で反応しエステル化反応生成物260gを得た。また、実施例1記載の算出式により、エステル化率を算出した。その結果を表1に示す。
【0017】
<実施例3〜4、比較例3〜4>
表1に示すシャンプー組成物(試験試料)を調製し、そのシャンプー1gを10gの人毛の毛束に均一に塗布した後、40℃の温湯500mlで30秒間浸け洗いし、流水にて濯ぎ、その操作を3回繰り返した。この毛束を乾燥後、同じ条件下で以下に示す、標準シャンプーで処理した毛束と洗い上がりのしっとり感について比較評価した。判定者は20名で以下の基準に従って評価した。
標準シャンプー
・ポリオキシエチレン(3)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム:10.0%
・ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド : 3.0%
・ラノリン : 2.0%
・無水硫酸ナトリウム : 1.0%
・精製水 :84.0%
評点
◎:試験試料の方が優れている。
○:試験試料の方がやや優れている。
△:標準シャンプーと同等である。
×:標準シャンプーの方が優れている。
判定者20名の評点が○以上であれば、良好なしっとり感を付与する事が出来ると判定した。その結果を表1に示す。
また、起泡力の評価として、調製したシャンプー組成物の6%水溶液20ml(25℃)を100mlのメスシリンダーに採取し、人工汚垢として液状ラノリン0.2gを添加して10秒間に20回振とうし、振とう終了後から1分後の泡容量を測定した。 この結果も表1に示す。
【0018】
【表1】

【0019】
実施例3〜4に示したシャンプーは、全評価項目について良好な結果であった。一方、比較例3〜4に示したものについては、評価項目のいずれかの項目で不十分な評価結果であった。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明の洗浄剤組成物は、洗い上がりがしっとり潤うと共に、良好な起泡性を有する洗浄剤組成物に利用が可能なものである。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)アニオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、カチオン界面活性剤及び両性界面活性剤から選ばれる少なくとも一種以上の界面活性剤及び、(B)水酸基価から算出した平均重合度2〜15のポリグリセリンと、炭素数8〜22の分枝脂肪酸とのエステル化反応生成物であり、そのエステル化率が60%以上であるエステル化反応生成物を含有する洗浄剤組成物。

【公開番号】特開2007−91895(P2007−91895A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−283468(P2005−283468)
【出願日】平成17年9月29日(2005.9.29)
【出願人】(390028897)阪本薬品工業株式会社 (140)
【Fターム(参考)】