説明

洗浄方法及び装置並びに洗浄ノズル

【課題】微細な凹凸を有する被洗浄面の汚れを効率良く洗浄する。
【解決手段】ノズル本体11に、気体噴出口15と液体噴出口16とを設ける。気体噴出口15を中心とする同心円上に一定ピッチで3個の液体噴出口16を形成する。気体噴出口15から圧縮エア36を噴出し気体噴流66を形成する。液体噴出口16から洗浄液46を噴出し液体噴流65を形成する。気体噴流66に7°の交差角度θで交差するように、液体噴出口16を構成する孔を傾斜させる。液体噴流65の交差部70に気体噴流66を衝突させることで、洗浄液46を粉砕・分割して微細液粒71にする。微細液粒71を気体噴流66で加速させ、被洗浄面75に衝突させる。微細液粒71が被洗浄面75の微細な凹部まで入り込み、汚れを除去する。気体噴流66の被洗浄面75への衝突による衝撃波で被洗浄面75を振動させ、汚れやゴミを浮かせ、除去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、輸送機器、プラント機器等の金属表面や塗装表面を洗浄する洗浄方法及び装置並びに洗浄ノズルに関する。
【背景技術】
【0002】
輸送機器、例えば鉄道車両の外板を洗浄するために、車両洗浄装置が用いられている。この車両洗浄装置は、車両の表面に洗剤などの薬液を塗布する薬液塗布部と、薬液が塗布された表面に洗浄水を噴射する洗浄水噴射部と、薬液が塗布された表面を洗浄する洗浄ブラシと、洗浄後の車両表面に気流を噴射するエアブロア等を備えている。そして、車両を低速度で走行させながら、車両の表面に薬液を塗布した後に、この車両の表面に洗浄水を噴射しながら洗浄ブラシを回転させて車両の表面を洗浄し、この後に気流を噴射して車両の表面に付着した水滴などを飛ばしている(例えば、特許文献1)。
【0003】
近年、塗装車両に代わってステンレス車両が増加している。このようなステンレン車両の表面は、つや消し仕上げがされており、表面に微細な凹凸が形成されている。したがって、凹部に汚れが付着すると、洗浄ブランの繊維太さに対して凹部が小さいため、凹部の底までブラシ先端が届かず、汚れを除去することができないという問題がある。
【0004】
また、洗浄ブラシに代えて、高圧水流を利用した洗浄も行われている。しかし、このような洗浄方法では、吐出圧力が5MPa〜20MPa程度と水圧が高いため、車両の隙間から車内に水が侵入するという問題がある。また、高圧水流であるため、水の消費量が多くランニングコストが増える他に、廃水などの後処理も必要になるという問題がある。
【0005】
上記高圧水流洗浄に代えて、洗浄粒子と流体との混合液を圧縮気体によって噴射又は前記洗浄粒子を液体によって加圧して噴射することも提案されている(例えば特許文献2参照)。この噴射装置は、洗浄粒子及び水からなる混合液を吸引する吸引口、圧縮空気が噴射する噴射口、噴射口からの圧縮空気によって吸引口からの混合液を吸引しながら攪拌するガンボディ、ガンボディから洗浄粒子、水及び空気からなる噴射水を噴射するノズル部などを備えており、0.2MPa〜0.8MPa程度の低い吐出圧で噴射水を噴射する。洗浄粒子は凹部よりも微小であるので、凹部内に確実に到達し、凹部に付着している汚れを落とすことができる。
【特許文献1】特開平7−002064号公報
【特許文献2】特開2006−061791号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2記載のものでは、低い吐出圧で噴射水を噴射するため、洗浄表面に近接させて洗浄する必要があり、洗浄表面に突起部や凹み部がある場合には適切な噴射距離を設定することが困難であり、洗浄が不充分になるおそれがある。また、洗浄粒子を混合する手間を要する他に、洗浄粒子による目詰まりの発生もあり、メンテナンスに時間を取られるなどの不都合がある。さらには、特許文献2記載のものでは、ガンボディ内で洗浄粒子・水と空気とを合流させているため、圧力損失が大きくなり、空気等による送り出し効果が充分に得られないという問題もある。
【0007】
本発明は、上記問題に鑑み、被洗浄面とノズルとの距離を充分に確保することができ、しかも洗浄液の消費を抑えて効率の良い洗浄を可能とする洗浄方法及び装置、洗浄ノズルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、被洗浄面に液体を噴出して洗浄する洗浄方法において、前記被洗浄面に向けて気体を噴出して気体噴流を形成し、前記気体噴流に向けて液体を噴出して液体噴流を形成し、前記気体噴流との交差部で該気体噴流によって前記液体噴流の液体を微細液粒に粉砕し、前記微細液粒を気体噴流によって加速させて前記被洗浄面に衝突させることを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、前記液体噴流の気体噴流に対する交差角度を1度以上20度以下とし、前記液体噴流の吐出圧力Paが0.01MPa以上1MPa以下で吐出量Qaが1L/min以上100L/min以下、前記気体噴流の吐出圧力Pbが0.5MPa以上10MPa以下で吐出量Qbが100L/min以上10000L/min以下であり、Pa<Pb、Qa<Qbであることを特徴とする。
【0010】
本発明は、前記液体噴流を複数形成して交差させ、この液体噴流の交差部に向けて前記気体噴流を噴出することを特徴とする。また、前記気体の噴出口を中心として、同心円上に一定ピッチで前記液体の噴出口が配置されていることを特徴とする。
【0011】
本発明は、被洗浄面に液体を噴出して洗浄する洗浄装置において、前記被洗浄面に向けて気体を噴出して気体噴流を形成する気体噴出口と、前記気体噴流に向けて液体を噴出して液体噴流を形成する液体噴出口と、前記気体噴出口に前記気体を供給すると共に前記液体噴出口に前記液体を供給し、前記気体噴流と前記液体噴流との交差部で気体噴流によって液体噴流の液体を微細液粒に粉砕し、前記微細液粒を気体噴流によって加速させて前記被洗浄面に衝突させる流体供給部とを備えることを特徴とする。
【0012】
また、本発明は、前記液体噴流の気体噴流に対する交差角度が1度以上20度以下となるように前記液体噴出口が傾けて設けられ、前記液体供給部は、前記液体を、圧力Paが0.01MPa以上1MPa以下で吐出量Qaが1L/min以上100L/min以下で供給し、前記気体を、圧力Pbが0.5MPa以上10MPa以下で吐出量Qbが100L/min以上10000L/min以下で供給し、Pa<Pb、Qa<Qbであることを特徴とする。
【0013】
本発明は、ノズル本体と、前記ノズル本体のノズル面に設けられ、気体を噴出する気体噴出口と、前記ノズル面に設けられ、前記気体噴出口を中心とする同心円上に一定ピッチで複数形成され、前記気体噴出口から出た気体噴流に対して1度以上20度以下の交差角度で同一位置で前記液体噴流が交差するように形成される液体噴出口と、前記ノズル本体内に設けられ、前記気体噴出口に気体を供給する気体供給通路と、前記ノズル本体内に設けられ、前記液体噴出口に液体を供給する液体供給通路とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、気体噴流と液体噴流とを交差させ、この交差部で気体噴流によって液体噴流の液体を微細液粒に粉砕し、この微細液粒を気体噴流によって加速させて被洗浄面に衝突させるから、微細な凹凸を有する被洗浄面の凹部内に微細液粒が入り込み、凹部内に付着した汚れに衝撃を与えて、これを確実に落とすことができる。しかも、気体噴流が被洗浄面に衝突して衝撃エネルギに代わり、板状の被洗浄面を振動させるため、凹部に入り込んだミクロン単位の微細な汚れを中から浮かすことができ、これを気体噴流によって吹き飛ばすことができる。また、液体噴流を気体噴流によって微細液粒として粉砕し、気体噴流によって被洗浄面に衝突させるため、従来の高圧水流洗浄方式に比べて使用する液体の量を減らすことができ、ランニングコストに優れる他に、高圧水流洗浄方式のように表面の隙間から内部に水が侵入することもなくなる。このように、液体噴流に気体噴流を衝突させることによる微細液粒への分割効果、微細液粒の気体噴流による加速効果、気体噴流が被洗浄面に衝突することによる衝撃エネルギによる被洗浄面の振動効果、気体噴流による吹き飛ばし効果によって、微細な凹部に付着したミクロン単位の微小な汚れから大きなゴミまで非接触式で取り除くことができる。
【0015】
特に、液体噴流の気体噴流に対する交差角度を1度以上20度以下とし、液体噴流の吐出圧力Paが0.01MPa以上1MPa以下で吐出量Qaが1L/min以上100L/min以下、気体噴流の吐出圧力Pbが0.5MPa以上10MPa以下で吐出量Qbが100L/min以上10000L/min以下であり、Pa<Pb、Qa<Qbとすることにより、微細液粒の形成及び加速、被洗浄面への衝撃の付与、付着した汚れ等の吹き飛ばしが効率良く行われる。
【0016】
また、液体噴流を複数形成して同一位置で交差させ、この液体噴流の交差部に向けて気体噴流を噴出することにより、液体を交差部に集約させた後に気体噴流によって粉砕・分割させるため、効率良く液体を粉砕・分割することができる。さらに、気体の噴出口を中心として、同心円上に一定ピッチで液体の噴出口が配置されていることより、液体噴流の集約と粉砕とをより一層効率よく行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に、本発明の実施態様について詳細に説明する。ただし、本発明はここに挙げる実施態様に限定されるものではない。図1に示すように、洗浄ノズル10は、筒状のノズル本体11の一端にノズルチップ12、他端にキャップ13を固着し、内部に気体連通パイプ14を配置して構成されている。
【0018】
図2に示すように、ノズルチップ12は円盤状に構成されており、中心に気体噴出口15が開けられている。また、気体噴出口15を中心として同心円上に120度ピッチで3個の液体噴出口16が開けられている。図1に示すように、液体噴出口16は、気体噴出口15の中心線CL1に対して傾斜角度θが7°となるように内側に向けて傾斜して形成されている。これにより、図3に示すように、液体噴出口16から噴射された液体噴流65が気体噴流66の中心線CL1上において同一位置P1で交わる。
【0019】
図1に示すように、ノズルチップ12の裏面には、気体噴出口15と同心でパイプ取付孔30が形成されており、このパイプ取付孔30には気体連通パイプ14が固着されている。気体連通パイプ14の他端14aは、キャップ13の貫通孔13aから外部に突出している。また、キャップ13の外側面で貫通孔13aの周りにはニップル31が取り付けられている。
【0020】
図3に示すように、気体連通パイプ14の端部には図示しない球状パッキン等が入れられた後に、コネクタ32を介し、高圧エアチューブ33が連結される。高圧エアチューブ33は、ヘッダパイプ34を介してエアコンプレッサ35に接続されており、圧縮エア36が気体噴出口15に供給される。また、球状パッキンやOリング等によって貫通孔13aが塞がれるため、ノズル本体11内の洗浄液46が漏れることはない。
【0021】
ノズル本体11のキャップ13近くの周面にはニップル40が溶着されている。このニップル40には、コネクタ41を介して洗浄水供給ホース42が接続されている。洗浄水供給ホース42はヘッダパイプ43を介してポンプ44に接続されている。ポンプ44はタンク45に接続されており、タンク45の洗浄液46を洗浄ノズル10に送液している。洗浄液46としては本実施形態では水を用いている。
【0022】
図4に示すように、洗浄ノズル10はノズル取付板49に取り付けられている。これら洗浄ノズル10及びノズル取付板49によって、ノズルヘッダ50が構成される。ノズルヘッダ50には、被洗浄エリアをカバーするように必要本数の洗浄ノズル10が1列または複数列で取り付けられている。
【0023】
図5に示すように、本実施形態では、洗浄ノズル10を鉄道車両60の洗浄に用いている。このため、2個のノズルヘッダ50は鉛直方向に並べて取付フレーム51に取り付けられている。また、取付フレーム51は、鉄道車両60のレール61に沿って配置されている。したがって、洗浄ノズル10から液体噴流65と気体噴流66とを噴出させて、鉄道車両60を低速度で走行させることにより、鉄道車両60の側面全域を洗浄することができる。
【0024】
図3に示すように、洗浄時には気体噴出口15から圧縮エア36が噴出され気体噴流66となる。また、3個の液体噴出口16から洗浄液46が噴出され液体噴流65となる。液体噴出口16は気体噴出口15の中心線CL1に対し交差する角度θで形成されているため、これら3本の液体噴流65は、気体噴出口15の中心線CL1上の同一位置P1で交差する。この交差部70において、気体噴流66が液体噴流65に衝突するため、洗浄液46は気体噴流66によって粉砕・分割されて略球状のミクロンオーダーの微細液粒71(図6参照)となる。この微細液粒71は気体噴流66によって直進するエネルギを受けて加速され、被洗浄面75に衝突する。特に、開放された大気圧状態で液体噴流65に気体噴流66を当てているため、気体噴流66の大気放出の際の膨張エネルギを利用することができ、効率良く液体噴流65を微細液粒71に粉砕し分割することができる。
【0025】
図6に示すように、被洗浄面75への微細液粒71の衝突による衝撃によって、被洗浄面75に付着している汚れ76やゴミ77を剥離または削り取ることで、取り除くことができる。特に、被洗浄面75がつや消し仕上げのステンレス板である場合には、表面の微細な凹凸の頂部と谷部との距離Laは20μm程度である。このような微細な凹部75a内に、ミクロンオーダーの微細液粒71が入り込むため、凹部75aに付着したタール状の汚れ76や凹部75a内に入り込んだ微細な金属片などのゴミ77も、確実に除去される。
【0026】
気体噴流66も被洗浄面75に衝突し、この衝突による衝撃波エネルギにより被洗浄面75に振動が発生し、ミクロン単位の汚れ76、ゴミ77をたたき落とす。また、たたき落とされた汚れ76やゴミ77は気体噴流66によって吹き飛ばされる。
【0027】
このように、液体噴流65に気体噴流66を衝突させることによる微細液粒71への粉砕・分割効果、微細液粒71の気体噴流66による加速効果、気体噴流66が被洗浄面75に衝突することによる衝撃波による被洗浄面75の振動効果、気体噴流66による吹き飛ばし効果が相乗効果となって作用し、微細な凹部75aに付着したミクロン単位の微小な汚れ76、ゴミ77から大きなゴミ等まで非接触式で確実に洗浄することができる。しかも、従来の高圧水流方式のジェット洗浄に比べて、洗浄水の使用量を抑えることができる他に、被洗浄面75の隙間などから高圧水流が侵入してしまうという不都合もない。また、ブラシ方式のような接触方式を取らないため、ブラシによる線状痕跡が残ることもない。
【0028】
前記液体噴流65を噴出するために洗浄ノズル10に供給される液体の圧力Paは、0.01MPa以上1MPa以下、吐出量Qaは1L/min以上100L/min以下、前記気体噴流66を噴出するために洗浄ノズル10に供給される気体の圧力Pbは0.5MPa以上10MPa以下で吐出量Qbは100L/min以上10000L/min以下で、Pa<Pb、Qa<Qbであれば、微細液粒の形成、吹き付け、気体噴流による衝撃波の付与、吹き飛ばし効果が得られる。好ましくは、Paが0.1MPa以上0.3MPa以下、Qaが3L/min以上10L/min以下、Pbが0.5MPa以上1.5MPa以下でQbが500L/min以上3000L/min以下であり、特に好ましくは、Paが0.1MPa以上0.3MPa以下、Qaが5L/min以上8L/min以下、Pbが0.6MPa以上0.9MPa以下でQbが900L/min以上1400L/min以下である。このときの、気体噴出口15の直径は3.8mm、液体噴出口16の直径は1.8mmである。また、ノズル先端12aと被洗浄面75との距離Lbは75mmである。
【0029】
なお、液体噴流65の吐出圧力Paが0.01MPa未満であると、液体噴流不足により衝突エネルギが弱くなり、Paが1MPaを超えると、液体噴流過多により気体噴流65が有効に作用せず、衝突エネルギが弱くなる。また、気体噴流66の吐出圧力Pbが0.5MPa未満であると、衝突エネルギが弱くなる。このPbは高いほど衝突エネルギが大きくなり洗浄効果が上がるが、10MPaを超えると、被洗浄面の破壊が起こる。同様にして、液体噴流65の吐出量Qaが1L/min未満であると衝突エネルギが弱く、100L/minを超えると、液体噴流過多で気体噴流が有効に作用せず、衝突エネルギが弱くなる。また、気体噴流66の吐出量Qbが300L/min未満であると、液体に作用する衝突エネルギが弱くなり、10000L/minを超えると被洗浄面の破壊が起こる。
【0030】
また、液体噴流65の気体噴流66に対する交差角度θは、1度以上20度以下であれば、微細液粒の形成、吹き付け、気体噴流による衝撃波の付与、吹き飛ばし効果が得られる。なお、交差角度θは3度以上15度以下が好ましく、より好ましくは5度以上8度以下である。交差角度θが1度未満又はマイナスになると液体噴流と気体噴流との交差する位置がノズルから離れすぎてしまい、衝突エネルギが生まれない。また、交差角度θが20度を超えると、交差する位置がノズルの近くになり、適正な洗浄距離を確保することができない。
【0031】
なお、上記実施形態では、液体噴流65として水を噴射させたが、水の他に薬液(例えば2〜3%のリン酸を含有する水)などを噴射させてもよい。また、液体中にミクロン単位の微小粒子を分散させてもよい。
【0032】
上記実施形態では、気体噴出口15と液体噴出口16とを有する1本の洗浄ノズル10としたが、これに代えて、液体噴出ノズルと気体噴出ノズルとを別体で設けて、同じように液体噴流に対し気体噴流を交差させて、微細液粒を形成し、これを気体噴流によって被洗浄面に衝突させてもよい。
【0033】
液体噴出口16は一つの気体噴出口15に対して、1個以上あればよい。但し、交差部における気体噴流66による液体の粉砕を効果的に行うためには、複数個以上が好ましく、特に好ましくは3個以上である。更に、3個以上の液体噴出口16を設ける場合には、これら液体噴流65同士を鋭角で交差させて集約し、この交差部70に気体噴流66を衝突させることが好ましい。この場合には、3個以上の液体噴流65で囲まれて略円錐状となった交差部70内側面に対して、気体噴流66を衝突させることができ、より一層の液体粉砕・分割効果が得られる。
【0034】
上記実施形態では鉄道車両60の外板洗浄装置として本発明を実施したが、洗浄対象は鉄道車両60に限られることなく、自動車、航空機、船舶などの他の輸送機器であってもよく、また、輸送機器に限られず、洗浄が必要な微小凹凸を有するあらゆる面に対して本発明を実施することができる。また、被洗浄面75は平面に限られず湾曲面であってもよい。この場合には、ノズル先端と被洗浄面との距離Lbが同じになるように、洗浄ノズル10を取り付けるノズルヘッダを湾曲面に合わせた形状とする。また、面洗浄に際して、被洗浄面を移動させる他に、洗浄ノズル10側を移動させてもよく、更には両方を移動させてもよい。
【実施例1】
【0035】
洗浄ノズル10として、図1及び図2に示すものを用い、ノズル本体11の外径を34mm、長さを195mm、気体噴出口15の直径を3.8mm、液体噴出口16の直径を1.8mm、液体噴出口16を構成する孔の前記傾斜角度θを7°、液体噴出口16の配列同心円の直径D1を18.4mmとした。気体は1MPaの圧縮エアを用い、ノズル1本あたりの噴出量は1200L(リットル)/min、液体は0.5MPaの水を用い、ノズル1本あたりの噴出量は6L/minとした。圧縮エアの気体噴出口15における圧力損失により、実際には0.8MPaで大気放出し、気体噴流66を形成した。ノズル先端から被洗浄面までの距離Lbは75mmとした。この洗浄ノズル10を図5に示すノズルヘッダ50に取り付けて、ステンレス車両の側面を被洗浄面とした。
【0036】
洗浄効果の評価は、(株)キーエンス製のVH−6300型のマイクロスコープにより75倍で被洗浄面を撮影し、洗浄前と洗浄後の写真画像を比較し、汚れ、ゴミを目視判断により評価した。被洗浄面として鉄道車両の車両塗装表面(A面)、同じく車両ステンレス表面((つや消し仕上げ面)B面)、同じく窓ガラス面(C面)を任意に選んで、撮影した。洗浄前の各面は、A面がなだらかな表面の山谷全体に汚れが分布している状態であり、B面がつや消し仕上げの溝(ヘアライン)に入り込んだ汚れが広く分布し、溝と溝の間の頂上部にも汚れが点在している状態であり、C面が油脂状の汚れが点在している状態であった。本実施例による洗浄後には、A面は汚れが見られない状態でありOKレベルであった。また、B面は、頂上部に汚れは見られず、ヘアライン内部の汚れは、最奥部に薄く痕跡を残すものの、洗浄はOKレベルであった。C面は、油脂など大きな汚れは落ちているが、洗浄後の水切りを行わなかったため、洗浄水に含まれていたとみられるアルカリ分が白く結晶したスポットが残ったものの、洗浄としてはOKレベルであった。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の洗浄ノズルの一部を切り欠いて示す側面図である。
【図2】洗浄ノズルの正面図である。
【図3】洗浄装置の使用状態を模式的に示す概略の側面図である。
【図4】ノズルヘッダの一例を示す斜視図である。
【図5】鉄道車両の洗浄装置を示す概略の正面図である。
【図6】被洗浄面を拡大して示す概略の断面図である。
【符号の説明】
【0038】
10 洗浄ノズル
11 ノズル本体
12 ノズルチップ
13 キャップ
14 気体連通パイプ
15 気体噴出孔
16 液体噴出孔
35 エアコンプレッサ
36 圧縮エア
44 ポンプ
45 タンク
46 洗浄液
50 ノズルヘッダ
60 鉄道車両
65 液体噴流
66 気体噴流
70 交差部
71 微細液粒
75 被洗浄面
75a 凹部
76 汚れ
77 ゴミ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被洗浄面に液体を噴出して洗浄する洗浄方法において、
前記被洗浄面に向けて気体を噴出して気体噴流を形成し、
前記気体噴流に向けて液体を噴出して液体噴流を形成し、前記気体噴流との交差部で該気体噴流によって前記液体噴流の液体を微細液粒に粉砕し、前記微細液粒を気体噴流によって加速させて前記被洗浄面に衝突させることを特徴とする洗浄方法。
【請求項2】
前記液体噴流の気体噴流に対する交差角度を1度以上20度以下とし、前記液体噴流の吐出圧力Paが0.01MPa以上1MPa以下で吐出量Qaが1L/min以上100L/min以下、前記気体噴流の吐出圧力Pbが0.5MPa以上10MPa以下で吐出量Qbが100L/min以上10000L/min以下であり、Pa<Pb、Qa<Qbであることを特徴とする請求項1記載の洗浄方法。
【請求項3】
前記液体噴流を複数形成して同一位置で交差させ、この液体噴流の交差部に向けて前記気体噴流を噴出することを特徴とする請求項1または2記載の洗浄方法。
【請求項4】
前記気体の噴出口を中心として、同心円上に一定ピッチで前記液体の噴出口が配置されていることを特徴とする請求項3記載の洗浄方法。
【請求項5】
被洗浄面に液体を噴出して洗浄する洗浄装置において、
前記被洗浄面に向けて気体を噴出して気体噴流を形成する気体噴出口と、
前記気体噴流に向けて液体を噴出して液体噴流を形成する液体噴出口と、
前記気体噴出口に前記気体を供給すると共に前記液体噴出口に前記液体を供給し、前記気体噴流と前記液体噴流との交差部で気体噴流によって液体噴流の液体を微細液粒に粉砕し、前記微細液粒を気体噴流によって加速させて前記被洗浄面に衝突させる流体供給部とを備えることを特徴とする洗浄装置。
【請求項6】
前記液体噴流の気体噴流に対する交差角度が1度以上20度以下となるように前記液体噴出口が傾けて設けられ、前記液体供給部は、前記液体を、圧力Paが0.01MPa以上1MPa以下で吐出量Qaが1L/min以上100L/min以下で供給し、前記気体を、圧力Pbが0.5MPa以上10MPa以下で吐出量Qbが100L/min以上10000L/min以下で供給し、Pa<Pb、Qa<Qbであることを特徴とする請求項5記載の洗浄装置。
【請求項7】
前記液体噴出口を複数設け、複数の前記液体噴流を同一位置で交差させ、この液体噴流の交差部に向けて前記気体噴流を噴出することを特徴とする請求項5または6記載の洗浄装置。
【請求項8】
前記気体の噴出口を中心として、同心円上に一定ピッチで前記液体の噴出口が配置されていることを特徴とする請求項7記載の洗浄装置。
【請求項9】
ノズル本体と、
前記ノズル本体のノズル面に設けられ、気体を噴出する気体噴出口と、
前記ノズル面に設けられ、前記気体噴出口を中心とする同心円上に一定ピッチで複数形成され、前記気体噴出口から出た気体噴流に対して1度以上20度以下の交差角度で同一位置で前記液体噴流が交差するように形成される液体噴出口と、
前記ノズル本体内に設けられ、前記気体噴出口に気体を供給する気体供給通路と、
前記ノズル本体内に設けられ、前記液体噴出口に液体を供給する液体供給通路とを備えることを特徴とする洗浄ノズル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−18250(P2009−18250A)
【公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−182620(P2007−182620)
【出願日】平成19年7月11日(2007.7.11)
【出願人】(000221616)東日本旅客鉄道株式会社 (833)
【出願人】(507234922)有限会社モービル・クリーンベース (2)
【出願人】(596018506)遠州工機株式会社 (2)
【Fターム(参考)】