説明

洗浄装置及び洗浄方法

【課題】洗浄槽の容積を小型化するとともに洗浄媒体を洗浄槽に滞留させることなく飛翔させて表面が複雑な形状をした洗浄対象物でも効率良く洗浄する。
【解決手段】洗浄対象物4を保持した保持部3を洗浄槽ユニット2の外側に配置して洗浄槽ユニット2の洗浄槽6を小型化する。洗浄槽ユニット2は洗浄槽本体9の開口部の外縁に設けられたプール部材19で保持部3を保持して一定間隙22で吸引気流17の流入路を形成する。洗浄槽6内の空気を洗浄槽本体9に接続された吸引装置16で吸引してプール部材19と保持部3の間隙22に洗浄槽6に向かう吸引気流17を発生させ、洗浄媒体6を洗浄槽6内に回収して、飛翔した洗浄媒体6が洗浄槽6外に漏れることを防ぐとともに洗浄媒体6を有効に利用して洗浄効率を向上させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、洗浄対象物に付着した粉塵又は異物を除去する洗浄装置及び洗浄方法に関するものであり、特に各種電気機器等に使用する電子部品をプリント配線板に実装するはんだ付け工程で用いられるマスク治具に付着したフラックスを除去することに有効な技術である。
【背景技術】
【0002】
近年、プリント基板の製造におけるフローはんだ槽によるはんだ付け工程において、はんだ付けの処理を行う領域以外をマスクするディップパレット、キャリアパレット等と呼称されるマスク治具が多く用いられている。このようなマスク治具は、繰り返し使用されるうちに、フラックスが表面に堆積して固着しマスクの精度を下げるため、定期的に洗浄する必要があった。
【0003】
そこで、フラックス、粘着材、又は接着剤等が付着した治具等の洗浄対象物を洗浄するために、溶剤洗浄槽で洗浄対象物の上下両面に溶剤を噴射させて洗浄した後、洗浄対象物に付着した溶剤を水洗いし、洗浄対象物に温風を吹き当てて乾燥する洗浄装置がある。
【0004】
しかしながら、溶剤を使用した洗浄装置を、フラックス等が付着した洗浄対象物の洗浄に使用した場合、溶剤を大量に使用するだけでなくフラックス等を含んだ廃液の処理及び洗浄後の乾燥処理におけるエネルギーの消費といった環境負荷が大きく、高コストになるという問題がある。
【0005】
これらの問題を解消するため、軽量で飛翔しやすい固体からなる洗浄媒体を洗浄槽内で高速に飛翔させて、洗浄媒体を洗浄対象物に連続して接触させて洗浄対象物に付着した付着物(粉塵、粉体、膜状に固着した汚れなど)を溶剤を使用することなく分離する洗浄装置がある。この洗浄装置は、洗浄媒体が洗浄槽の内部で循環して、洗浄対象物に繰り返し衝突するため、少量の洗浄媒体でかつ乾式であっても大きな洗浄効果を発揮する。特に、可撓性を有する薄片状の洗浄媒体を用いることで、さらに少量の洗浄媒体の使用量で超音波洗浄と同等以上の洗浄能力を発揮する。
【0006】
前述の洗浄装置は、洗浄対象物を洗浄槽内に投入して洗浄媒体を衝突させるため、洗浄対象物のサイズ以上の容積を有する洗浄槽が必要であった。
しかしながら、洗浄槽を大型化してしまうと、洗浄槽の中で洗浄媒体を滞留することなく飛翔させることが困難となり、それによって洗浄媒体が洗浄対象物に衝突する頻度が低下し、洗浄能力が低下するという問題があった。このため大きな洗浄対象物の洗浄には対応しにくかった。
【0007】
特許文献1に示された洗浄装置は、水を噴射するノズルを内蔵したケーシングの先端部が洗浄対象物に押し当てることで閉塞させ、ウォータージェットを洗浄対象物に衝突させて洗浄する。ケーシングを洗浄対象物に沿って移動させることで、洗浄した水を外部に漏らさずに回収している。
【0008】
また、特許文献2に示された窓ガラス等の洗浄装置は、洗浄器本体の周囲にシールを設けている。窓ガラスを洗浄するときには、シールを窓ガラスから離してシールと窓ガラスとの間に隙間を設けることで、洗浄器本体の内側から空気を吸引した隙間に空気流を作り、この状態で洗浄液をブラシに供給して窓ガラスを洗浄し、洗浄液と汚物とを空気流により回収している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2004−299042号公報
【特許文献2】特公昭51−25653号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1に示された洗浄装置に薄片状の洗浄媒体を使用した場合は、洗浄槽の開口部の間隙に洗浄媒体がうろこ状に挟まってしまう。この挟まった洗浄媒体がシールを持ち上げることで隙間を作り、洗浄媒体が飛翔する空間の外にもれ出てしまうという問題が発生する。このように洗浄媒体が漏れ出ることで洗浄媒体の量が減少してしまうと、洗浄媒体が洗浄対象物に衝突する回数が低減し、大幅に洗浄能力が低下してしまう。
【0011】
また、特許文献2に示された洗浄装置により表面に凹凸を有する洗浄対象物を洗浄する場合は、洗浄対象物表面の凹凸により洗浄対象物とシールとの隙間の大きさが変動し空気流が不安定になり、洗浄媒体が外部に漏れてしまう。洗浄槽の中で洗浄媒体を循環させる洗浄装置を使用した場合は、洗浄媒体の漏れによって洗浄媒体の飛翔量が低下し、洗浄媒体が洗浄対象物に衝突する回数が少なくなるため洗浄能力が低下するという問題が発生する。
【0012】
本発明は、上記の事情を鑑み、洗浄対象物を洗浄槽の外側に配置することで洗浄槽の容積を小型化するとともに、洗浄媒体を洗浄槽に滞留させることなく飛翔させて表面に凹凸を有する洗浄対象物でも効率良く洗浄することができる洗浄装置及び洗浄方法を提供することを目的とするものである。
【0013】
また、洗浄媒体が漏出することを防ぎ、洗浄媒体が飛翔する空間内に洗浄媒体を速やかに戻すことで、洗浄対象物に衝突する洗浄媒体の数を維持し、安定した洗浄能力を得ることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、気流により飛翔する洗浄媒体を洗浄対象物に衝突させて洗浄する洗浄装置であって、前記洗浄媒体が飛翔し、かつ開口部を有する洗浄槽と、前記開口部に前記洗浄対象物を配置する保持部と、前記開口部の外縁に、前記保持部で保持された洗浄対象物に対して間隙を有するように配置するプール部材と、前記開口部の外縁から漏れ出て、前記間隙に滞留した前記洗浄媒体を前記洗浄槽に戻す洗浄媒体戻し部とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、洗浄媒体を洗浄媒体飛翔空間で滞留することなく飛翔させることができ、さらに洗浄媒体を有効に利用し、飛翔量を安定させて洗浄能力を維持することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の洗浄装置の機構構成図である。
【図2】洗浄装置の要部を示す部分拡大断面図である。
【図3】洗浄装置に洗浄対象物を固定した状態を示す斜視図である。
【図4】保持部にスクレーパー部材を有する洗浄装置の部分拡大断面図である。
【図5】保持部に通気性を有するスクレーパー部材を有する洗浄装置の部分拡大断面図である。
【図6】保持部に開閉弁を有するスクレーパー部材を有する洗浄装置の部分拡大断面図である。
【図7】保持部に漏れ防止気流生成ノズルを有する洗浄装置の部分拡大断面図である。
【図8】洗浄媒体加速方向制御ノズルの構成図である。
【図9】洗浄媒体加速方向制御ノズルにより噴出する気流を示す断面図である。
【図10】左右2系統の噴出口を有する洗浄媒体加速ノズルの構成図である。
【図11】保持部に設けた円弧状の洗浄媒体堰き止め部を示す正面図である。
【図12】複数の洗浄槽ユニットを直列に設けた洗浄装置の構成図である。
【図13】回転式の保持部を有する洗浄装置の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、本発明の洗浄装置の装置構成を示している。図1(a)は正面図、図1(b)は(a)のA−A断面図、図1(c)は上面図である。洗浄装置1は、洗浄槽ユニット2、保持部3及び洗浄媒体戻し部8を有する。図2は、洗浄装置1の断面図を拡大したものである。図2は、保持部3で保持された洗浄対象物4に付着した付着物を気流によって飛翔する洗浄媒体5を洗浄対象物4に衝突させることで除去することを示している。
【0018】
この洗浄装置1で用いられる洗浄媒体5は、例えば、ポリカーボネイトやPETなどの硬くて、衝撃に対して耐久性を有する素材である。この洗浄媒体5の厚さは0.1〜0.2mmであり、1辺のサイズは5〜10mmの正方形の形状をした薄片である。本実施の形態では、上記の厚さやサイズの洗浄媒体5を用いているが、洗浄対象物4によってサイズや材質を変えることが効果的であり、これに限るものではない。
【0019】
薄片状の洗浄媒体5は、投影面積が大きい方向に気流の力が作用した場合、空気抵抗力に対する質量が非常に小さいため気流によって容易に加速されて飛翔する。また、投影面積が小さい方向には空気抵抗が小さく、その方向へ飛翔した場合、高速運動が長距離にわたって維持される。このため洗浄媒体5の持つエネルギーが大きく、洗浄対象物4に接触したときに作用する力が大きくなって、洗浄対象物の表面に付着した付着物を有効に除去することができるとともに、洗浄媒体5を繰り返し循環して洗浄対象物4に接触する頻度が増すので洗浄効率を高めることができる。
【0020】
薄片状の洗浄媒体5は、姿勢によって空気抵抗が大きく変化するため、気流に沿って動くだけでなく急に方向を変えるなど複雑な運動をして洗浄対象物4に繰り返し接触するため、複雑な形状の洗浄対象物4の洗浄効率を高めることができる。
【0021】
洗浄槽ユニット2は、洗浄槽6、洗浄媒体加速部7及びプール部19を有する。洗浄槽6は、洗浄槽本体9と分離部10とを有する。洗浄槽本体9は、両側が封止された半円筒形、長方形、又は角錐形状に形成され、上部に開口部を有する。分離部10は、気体及び粉塵などは通過することができるが、洗浄媒体5が通過できないよう小孔又はスリットを多数有する。分離部10は、例えば、金網、プラスチック網、メッシュ、パンチメタル、又はスリット板といった多孔性部材で洗浄媒体5が滞留しない滑らかな形状(例えば、半円筒形)で形成される。分離部10は、洗浄槽6の内部に洗浄槽本体9と一定間隔を隔てて設けられている。
【0022】
洗浄媒体加速部7は、複数の噴出口を有する洗浄媒体加速ノズル11、コンプレッサからなる圧縮空気供給装置12を有する。洗浄媒体加速ノズル11は、複数の噴出口を洗浄槽本体9の底面中心に沿って一直線に配置され、洗浄槽本体9と分離部10とを貫通して設けられる。圧縮空気供給装置12は、制御弁13を有する送気管14を介して洗浄媒体加速ノズル11に圧縮空気を供給し、洗浄媒体5を飛翔させる。
【0023】
洗浄媒体戻し部8は、吸引ダクト15と吸引装置16を有し、保持部3で保持された洗浄対象物4に対して間隙22を有するように配置されたプール部材19の間隙22に吸引気流17を生じさせる。吸引装置16は、吸引管18を介して洗浄槽本体9内の空気を吸引する。吸引ダクト15は、分離部10を介して吸引ダクト15に吸引される空気や粉塵などを搬送する。この吸引装置16は洗浄媒体加速ノズル11から噴出される空気の流量に比べて十分な空気の流量を吸引し、洗浄槽本体9内を負圧にする性能を有する。なお、図2(b)で示されるように、洗浄槽6内面の一部に開口を設けて分離部10をこの開口に固定し、分離部10の外部に独立した吸引ダクト15を設けても良い。凹形状に形成されたプール部材19及び側面ガイド21は一定長さを有しており、洗浄槽本体9の両側に設けられる。このプール部材19の水平な上面の角部には、例えば厚さが約5mmの角柱形状のリニアガイド20を有する。このリニアガイド20の表面はフッ素樹脂のような滑らかな材質で形成される。またリニアガイド20は保持部3を保持し、プール部材19の平行な側面ガイド21とともに保持部3の移動を案内する。このリニアガイド20で形成されるプール部材19の水平な上面と保持部3との間隙22は洗浄媒体5が挟まらず、かつ流入する気流が高速になる大きさであれば良く、洗浄媒体5のサイズに応じて適切な条件を選択すればよい。
【0024】
保持部3は、洗浄対象物4より長い板形状であり、中央部に洗浄対象物4の形状に合わせた凹形状の洗浄対象物保持部23を有する。洗浄対象物保持部23は、ウレタンゴム又は発泡樹脂などの弾性のある部材で構成されており、摩擦により洗浄対象物4を固定する。なお、洗浄対象物保持部23は、洗浄媒体によって洗浄するための気流が漏れず、洗浄媒体5が詰まってしまうような間隙を有さない洗浄対象物4を保持する構成であればどのような構成でも良い。
【0025】
保持部3は、例えば、直動モータ、エアシリンダ又はワイヤー駆動部等の図示しない駆動部に着脱自在に接続され、図示しない制御装置からの制御信号により駆動部を駆動し、洗浄槽ユニット2の動作と並行してプール部材19に沿って移動する。プール部材19は、保持部3で保持された洗浄対象物4の移動範囲以上の面積を有している。
【0026】
次に、洗浄装置1で洗浄対象物4に付着している付着物を除去する一連の動作を説明する。
【0027】
まず、洗浄槽6に洗浄媒体5を投入する。図3(a)に示されるように、洗浄対象物4を保持部3の洗浄対象物保持部23に保持する。さらに洗浄対象物4を洗浄槽ユニット2に向けて配置し、保持部3を洗浄槽ユニット2に載置する。図示しない駆動部に保持部3を連結し、図3(b)に示されるように洗浄対象物4を洗浄槽6の上に移動する。その結果、洗浄対象物4と洗浄槽6との間に、洗浄媒体5を飛翔させる空間が形成される。この状態で図示しない制御装置で吸引装置16を駆動させると、洗浄媒体5が飛翔する空間内の空気が吸引される。洗浄媒体5が飛翔する空間内の空気が吸引されることで外気との差圧が生じ、リニアガイド20により形成されたプール部材19と保持部3との間の間隙22において、洗浄媒体5が飛翔する空間内に向けて気流が発生する。この気流はプール部材19の平坦な面を通過して層流化されて、外気を洗浄槽6内に流入させる。次に、図示しない制御装置は圧縮空気供給装置12を駆動して制御弁13を開き、洗浄媒体加速ノズル11に圧縮空気を供給することで洗浄媒体加速ノズル11から洗浄槽6内に垂直上方向の気流を発生させる。図2に示すように、この気流によって洗浄媒体5が飛翔して洗浄対象物4に衝突することで洗浄対象物4の表面に付着している付着物を効率良く除去する。洗浄対象物4に衝突した洗浄媒体5は、気流の流れと重力とによって落下し、分離部10上で吸引されながら洗浄媒体加速ノズル11の近傍に滑り落ちる。このとき、洗浄媒体5に付着した付着物が吸引される。分離部10で分離された付着物は吸気ダクト15と吸引管18とを通って吸引装置16により回収される。また、洗浄媒体加速ノズル11の近傍に落下した洗浄媒体5は、再び洗浄媒体加速ノズル11により噴射された気流によって垂直上方向に飛翔する。この動作を繰り返すことにより、洗浄装置1は洗浄対象物4の表面に付着した付着物を除去する。
【0028】
この飛翔する洗浄媒体洗5により洗浄対象物4を洗浄しているとき、プール部材19と保持部3との間隙22から気流が流れ込む。したがって、間隙22に入り込もうとする洗浄媒体5は、この気流によって洗浄媒体5が飛翔する空間に押し戻されて洗浄装置1の外側に漏れ出ることがなくなる。また、洗浄媒体5が間隙22に入り込んだ場合、間隙22による流路は洗浄媒体5の飛翔速度を減衰させる十分な距離があるため、洗浄媒体5は洗浄装置1の外側に漏れず最終的にはプール部材19の上に落下する。
【0029】
この洗浄媒体5を洗浄媒体加速ノズル11により飛翔させて洗浄対象物4を洗浄するとき、制御弁13を間欠駆動させることで洗浄媒体加速ノズル11からの気流の噴射と停止とを繰り返す。この気流の噴射と停止とを繰り返すことにより、洗浄媒体5が飛翔する空間の内外の差圧が大きくなるタイミングが発生し、プール部材19上に落下した洗浄媒体5を、より確実に洗浄媒体5が飛翔する空間内に引き戻すことができる。
【0030】
制御装置は、制御弁13の間欠駆動と並行して保持部3を洗浄槽ユニット2のプール部材19の側面ガイド21とリニアガイド20とに沿って洗浄槽6の前後に往復移動して洗浄対象物4を洗浄する。この保持部3を少なくとも1往復させた後に、制御装置は圧縮空気供給装置12及び吸引装置16の駆動を停止して一連の洗浄動作を完了させる。
【0031】
このように保持部3を洗浄槽6に対して往復移動させて洗浄対象物4を洗浄することにより、大きな面積を有する洗浄対象物4でも確実に洗浄することができる。
【0032】
これまでの説明では、吸引装置16で洗浄槽6内の空気を吸引し、プール部材19と保持部3との間隙22に発生する気流により、洗浄媒体5が間隙22に入り込むことを防ぎ、洗浄媒体5が飛翔する空間内に洗浄媒体5を戻す場合について示した。しかしながら、これと並行して洗浄槽6に対して前後に移動する保持部3の洗浄対象物保持部23近傍の前後に、図4に示されるようなモータ又はシリンダ等で間隙22を開閉するスクレーパー部材24を設けることが可能である。このように洗浄対象物保持部23の近傍の前後にスクレーパー部材24を設けることにより、制御装置で保持部3を洗浄槽6に対して前後に間欠移動させるとき、スクレーパー部材24をプール部材19の方向に接触させ、プール部材19と保持部3との間の間隙22に滞留した洗浄媒体5を掃き取って洗浄槽6内に確実に戻すことができる。
【0033】
また、図5に示されるように、間隙22を開閉するスクレーパー部材24に替えて、パンチングメタル、スリットの開いた樹脂製の板、柔軟なフィルム、柔軟なゴム板、又はブラシなどの通気性スクレーパー部材25を利用することも可能である。このように、通気性スクレーパー部材25を洗浄対象物4に連結して駆動し、プール部材19上の洗浄媒体5を掃き取るように構成にすることで、洗浄対象物4が凹凸のある形状であっても影響なく、洗浄媒体5が飛翔する空間に洗浄媒体5を速やかに戻して、飛翔する洗浄媒体の量を維持することができる。
【0034】
さらに、図6に示されるように、スクレーパー部材24として、下部に気流により開閉自在な開閉弁26aを有するスクレーパー部材26を設けることも可能である。この開閉弁26aを有するスクレーパー部材26は、洗浄媒体加速ノズル11から気流を噴出しているとき、図6(a)に示されるように、開閉弁26aを閉じて飛翔する洗浄媒体5を堰き止めて洗浄媒体5が洗浄装置1の外側に漏れることを防ぐ。そして、洗浄媒体加速ノズル11から噴出する気流を停止して洗浄槽6内の負圧が高くなると、開閉弁26aを開いて間隙22に流入する気流により堰き止められた洗浄媒体5が洗浄槽6内に戻され、再び洗浄に使用される。
【0035】
また、気流により開閉する開閉弁26aに替えて、エアシリンダ又はモータなどの駆動部によるシャッター機構を設けることも可能である。洗浄槽6内の洗浄媒体加速ノズル11から気流を噴射しているときはこのシャッター機構を閉じ、洗浄媒体加速ノズル11から気流を噴射していないときはこのシャッター機構を開くように制御装置で制御すれば良い。
【0036】
これまでの説明では吸引装置16により洗浄槽6内の空気を吸引することによりプール部材19と保持部3との間の間隙22に発生する気流について説明した。これに対して、図7に示すように、漏れ防止気流生成ノズル27を保持部3に連結して設けても良い。この場合、吸引装置16により洗浄槽6内の空気を吸引するとともに、圧縮空気供給装置12から制御弁28を有する送気管29を介して加圧空気を供給して漏れ防止気流生成ノズル27から気流をプール部材19と保持部3との間の間隙22に発生させる。この間隙22に発生する気流により、洗浄媒体5が間隙22に入り込むことをより確実に防止することができる。
【0037】
また、これまで洗浄槽6に垂直上方向の気流を発生させる洗浄媒体加速ノズル11を設けた場合について説明した。図8(a)の上面図及び図8(b)のA−A断面図に示されるように、垂直上方向に対して保持部3の移動方向の前後方向に一定角度傾いた前後2系統の噴出口30a,30bを有する洗浄媒体加速方向制御ノズル31を設けて2系統の噴出口30a,30bに供給する加圧空気を切換弁32で切り替えるようにしても良い。
【0038】
この洗浄媒体加速方向制御ノズル31を設けることで、図9に示されるように、保持部3で保持された洗浄対象物4を洗浄するため洗浄媒体5が気流で飛翔させられるとき、制御装置で切換弁32を一定周期毎に切り替え、気流の噴射方向を保持部3の移動方向の前後方向に切り替える。このような動作とすることで、洗浄媒体5が洗浄対象物4に衝突する位置を可変にすることができる。一定周期毎に洗浄媒体5が衝突する位置を可変にすることで、洗浄対象物4の表面が複雑な凹凸形状をしていても、凹凸形状の隅々までを確実に洗浄することができる。また、保持部3の移動の方向と、洗浄媒体5の加速方向とを常に対向するように制御することで、プール部材19と保持部3との間の間隙22に挟まった洗浄媒体5を保持部3に設けた通気性スクレーパー部材25で押し出して洗浄媒体5が飛翔する空間に戻す。このように制御することで、洗浄媒体5が間隙22に挟まって残留することを抑制することができる。
【0039】
また、図10(a)、図10(b)、及び図10(c)で示されるように、洗浄媒体加速ノズル11を保持部3の移動方向と直交する長手方向に対して内部で左右に2分割し、左右2系統の噴出口33a,33bを設ける。この2系統の噴出口33a,33bに供給する加圧空気を切換弁32で切り替えるように構成しても良い。この洗浄媒体加速ノズル11に2分割した左右2系統の噴出し口33a,33bを設けた場合、保持部3には、図11で示されるように、スクレーパー部材24は円弧状に配置される。
【0040】
このようにスクレーパー部材24を円弧状に配置し、洗浄媒体加速ノズル11の左右2系統の噴出口33a,33bから一定周期毎に交互に気流を噴出させた場合、一方の噴出口33aから噴出された気流は、気流ガイド部材34と円弧状のスクレーパー部材24とに沿って流れる。この円弧状のスクレーパー部材24に沿って流れる気流は洗浄槽6に戻る流路を形成し、洗浄対象物4に衝突した洗浄媒体5を洗浄槽6内に戻す。したがって、洗浄媒体5を洗浄装置1の外側に漏らすことなく確実に洗浄媒体5が飛翔する空間の中に戻して洗浄媒体5を再利用することができる。その結果、洗浄能力を安定させることができる。
【0041】
洗浄装置1に1組の洗浄槽ユニット2を設けた場合について説明してきたが、図12では、例えば、3組の洗浄槽ユニット2a〜2cを直列に配置した構成としている。この場合、洗浄槽ユニット2a〜2cは、それぞれが洗浄対象物保持部23とその近傍に設けた通気性スクレーパー部材25とに独立して対応するように直列に配置される。さらに、図12では、洗浄槽ユニット2a〜2cが保持部3の移動方向に対して一定間隔で配置され、各洗浄媒体加速ノズル11の気流の噴射方向を保持部3の移動方向に対して異ならせる。例えば、洗浄槽ユニット2aに有する洗浄媒体加速ノズル11の気流の噴射方向を保持部3の移動方向に対して60度とし、洗浄槽ユニット2bに有する洗浄媒体加速ノズル11の気流の噴射方向を保持部3の移動方向に対して90度とし、洗浄槽ユニット2cに有する洗浄媒体加速ノズル11の気流の噴射方向を保持部3の移動方向に対して120度とすることができる。そして洗浄対象物4を保持した保持部3を洗浄槽2a側から移動し、保持部3で保持された洗浄対象物4が洗浄槽ユニット2a〜2cの位置にあるときに、各洗浄槽ユニット2a〜2cの洗浄媒体加速ノズル11から気流を噴射して洗浄媒体5を飛翔させて洗浄対象物4を洗浄する。
【0042】
このように洗浄装置1に複数の洗浄槽ユニット2a〜2cを設け、各洗浄槽ユニット2a〜2cで異なる角度で洗浄媒体5を気流で飛翔させて洗浄対象物4を洗浄することにより、洗浄対象物4が複雑な凹凸形状を備えていても異なる方向から洗浄媒体5を衝突させることができる。したがって、洗浄対象物4をムラ無く洗浄することができる。なお、洗浄槽ユニット2の数が十分あれば、保持部3を往復させる必要が無いのは言うまでもない。また、洗浄槽ユニット2の数が十分あれば、洗浄対象物4が保持された複数の保持部3を連続して投入して洗浄することができ、複数の洗浄対象物4を連続して短時間で洗浄することができる。
【0043】
次に、図13を用いて、回転式の保持部3aを有する洗浄装置1aについて説明する。図13(a)、図13(a)のA−A断面図である図13(b)が示すように洗浄装置1aの洗浄槽ユニット2は、半円筒形状をしたプール部材19を有する。プール部材19の内面角部には、図13(b)が示すように1対の円弧状ガイド20a有する。保持部3aは円筒形状に形成され、外周部を複数等分、例えば4等分した位置に洗浄対象物保持部23を有する。保持部3aは各洗浄対象物保持部23の近傍に通気性を有するスクレーパー部材25を有し、図示しないモータによって回転駆動される。
【0044】
この洗浄装置1aは、洗浄槽6に所定量の洗浄媒体5を投入された状態で、洗浄対象物投入位置35で洗浄対象物4を保持部3aの洗浄対象物保持部23に固定し、洗浄対象物保持部3aを時計回りに回転する。この回転により保持部3aに保持された洗浄対象物4が洗浄槽ユニット2の位置に達すると、洗浄槽ユニット2を駆動して洗浄槽6内を吸気するとともに、洗浄媒体加速ノズル11から気流を噴射して洗浄媒体5を飛翔させて洗浄対象物4を洗浄する。この洗浄対象物4を洗浄しているとき、保持部3aを時計回りと反時計回りに往復駆動して洗浄対象物4の全面を洗浄することも可能である。洗浄対象物4の洗浄が終了すると、洗浄媒体加速ノズル11は気流の噴出を停止する。そして、洗浄槽6内の吸気を停止して保持部3aを時計回りに回転し、洗浄対象物保持部23が洗浄対象物回収位置36に達すると洗浄対象物4を回収することができる。この動作を繰り返して洗浄対象物4を洗浄する。
【0045】
薄片状の洗浄媒体を用いた洗浄装置1を使用し、顧客から回収した使用済の装置の部品を洗浄し、洗浄した部品を再度組み立てて装置を復元することで、装置の再生品として利用することができる。
【符号の説明】
【0046】
1;洗浄装置、2;洗浄槽ユニット、3;保持部、
4;洗浄対象物、5;洗浄媒体、6;洗浄槽、7;洗浄媒体加速部、
8;洗浄媒体戻し部、9;洗浄槽本体、10;分離部、
11;洗浄媒体加速ノズル、12;圧縮空気供給装置、13;制御弁、
14;送気管、15;吸引ダクト、16;吸引装置、17;吸引気流、
18;吸引管、19;プール部材、20;リニアガイド、21;側面ガイド、
22;間隙、23;洗浄対象物保持部、24;スクレーパー部材、
25;通気性スクレーパー部材、26;開閉弁を有するスクレーパー部材、
27;漏れ防止気流生成ノズル、28;制御弁、29;送気管、30;噴出口、
31;洗浄媒体加速方向制御ノズル、32;切換弁、33;噴出口、
34;気流ガイド部材、35;洗浄対象物投入位置、
36;洗浄対象物回収位置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
気流により飛翔する洗浄媒体を洗浄対象物に衝突させて洗浄する洗浄装置であって、
前記洗浄媒体が飛翔し、かつ開口部を有する洗浄槽と、
前記開口部に前記洗浄対象物を配置する保持部と、
前記開口部の外縁に、前記保持部で保持された洗浄対象物に対して間隙を有するように配置するプール部材と、
前記開口部の外縁から漏れ出て、前記間隙に滞留した前記洗浄媒体を前記洗浄槽に戻す洗浄媒体戻し部とを備えることを特徴とする洗浄装置。
【請求項2】
前記保持部は、前記プール部材に沿って移動自在であり、
前記プール部材は、前記保持部で保持された洗浄対象物の移動範囲以上の面積を有することを特徴とする請求項1に記載の洗浄装置。
【請求項3】
前記洗浄媒体戻し部は、前記保持部で保持された洗浄対象物と前記プール部材との間隙に前記洗浄槽に向かう気流を発生することを特徴とする請求項1に記載の洗浄装置。
【請求項4】
さらに、前記洗浄媒体の飛翔する空間に面した分離部を有し、
前記洗浄媒体戻し部は、前記分離部に接続された吸引部を有することを特徴とする請求項1に記載の洗浄装置。
【請求項5】
前記洗浄媒体戻し部は、前記プール部材に密接し、かつ移動自在なスクレーパー部材を有することを特徴とする請求項3又は4に記載の洗浄装置。
【請求項6】
前記スクレーパー部材は、前記保持部と連結して移動することを特徴とする請求項5に記載の洗浄装置。
【請求項7】
前記スクレーパー部材は、前記洗浄媒体を通過させず気流は通過させる通気性を有することを特徴とする請求項5又は6に記載の洗浄装置。
【請求項8】
洗浄槽内の空気を吸引している状態で洗浄槽内に気流を発生し、
洗浄媒体を飛翔させて前記洗浄槽の開口部に配置された洗浄対象物を洗浄し、
気流を間欠的に発生しているときに、前記洗浄対象物と前記洗浄槽の開口部の外縁に配置されたプール部材とで形成される間隙に入り込んだ洗浄媒体を前記洗浄槽内に回収することを特徴とする洗浄方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−167419(P2010−167419A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−98439(P2010−98439)
【出願日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【分割の表示】特願2009−1496(P2009−1496)の分割
【原出願日】平成21年1月7日(2009.1.7)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】