説明

洗浄装置

【課題】簡単に、最小限の設置面積かつ低エネルギー消費で消泡を行うことが出来る洗浄装置を提供する。
【解決手段】被洗浄物の洗浄を行ったときの洗剤液を貯留するための洗剤槽1に、略円形の水平断面を有する排気ダクト11を設ける。排気ダクト11は、上向きに空気を排出するが、被洗浄物が搬送される高さよりも下の位置に吸引口がくるように設置される。そして、排気ダクト11内の消泡したい高さ位置に、空気流4を形成するための複数の空気ノズル3を、水平方向に対してダクト中心を外した一定の向きで設置する。なお、空気ノズル3の直近下に、泡を押さえるための多孔押さえ板2を設置してもよい。排気ダクト11の吸引力によって引き寄せられ、多孔押さえ板2をすり抜けつつある泡液13に、空気ノズル3によって形成される空気流4をぶつけて破泡させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平面表示装置用の基板や半導体素子の製造に用いられる基板等の被洗浄物を洗浄するための洗浄装置であって、特に、洗剤液を利用して被洗浄物を洗浄する洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
洗剤液を利用する洗浄装置では、洗浄液を循環させると、洗剤液の発泡が促進されて、洗浄能力が減少したり、洗浄槽からのオーバーフロー等によって洗浄装置の運転が困難になるといった問題がある。なお、これらの問題を解決するために、洗剤液から発生する泡液を強力な排気とともに排出すれば、洗剤循環量の減少という別の問題を招いてしまう。
【0003】
そこで、洗剤液から発生する泡液を消泡させるための技術として、例えば、特許文献1には、シャワーノズルから噴出された洗浄水を貯留するための洗浄水貯槽と、洗浄水貯槽内の貯留洗浄水の上層に形成される泡液を流路から導入して消泡するための消泡槽とを備え、消泡槽において、洗浄水貯槽から導入される泡液をヒータを用いて加熱することによって、泡内の空気を膨張させて破泡させる消泡方法が記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、洗浄槽から溢れた薬液を留める補助槽の液面上方に、ノズルパイプとエアノズルとから主に構成される抑泡装置が設けられた洗浄装置が記載されている。特許文献2に記載されている洗浄装置では、洗剤液の液面上にエア流を形成し、エア流を泡の表面に衝突させることによって破泡させる。
【0005】
【特許文献1】特開平5−253410号公報
【特許文献2】特開平7−302777号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載されているような、電熱を利用する消泡方法では、エネルギー消費の増大を招く。また、特許文献2に記載されているような、洗剤液の液面上にエア流を形成する消泡方法では、補助槽の液面上などエア流を衝突させるための空間が必要となり、洗浄装置への内蔵が困難である。
【0007】
そこで、本発明は、簡単に、最小限の設置面積かつ低エネルギー消費で消泡を行うことができる洗浄装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による洗浄装置は、洗剤液を利用して被洗浄物を洗浄する洗浄装置であって、被洗浄物を洗浄した後の洗剤液を貯留するための洗剤槽を備え、洗剤槽に、水平断面が略円形の、上向き(斜め上方向きでもよい。)に空気を排出するための排気ダクトを設け、排気ダクトの所定の高さ位置に、排気の流れを上方方向に維持しつつ、一定の方向に気流回転する空気流を該排気ダクトの内側で形成するための空気ノズルを設けたことを特徴とする。
【0009】
また、空気ノズルの直近下に、泡を押さえるための多孔押さえ板を設け、空気ノズルは、多孔押さえ板に空気流が直接吹き付けられる角度で設置されてもよい。
【0010】
また、多孔押さえ板は、所定のピッチのメッシュを形成する網、または所定径の小孔を複数個設けたパンチングプレートであってもよい。
【0011】
また、空気ノズルは、排気ダクトの水平方向に対して、ダクト中心を外した、コリオリ力を助ける方向に向くように設置されてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、被洗浄物を洗浄した後の洗剤液を貯留するための洗剤槽に、、水平断面が略円形の排気ダクトを設け、その排気ダクトの所定の高さ位置に、排気の流れを上方方向に維持しつつ、一定の方向に気流回転する空気流を該排気ダクトの内側で形成するための空気ノズルを設けた構成となっているので、排気ダクトの吸引力を利用して泡液を引き寄せ、空気流にぶつけることによって破泡させることができる。従って、簡単に、最小限の設置面積かつ低エネルギー消費で消泡を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は、本実施の形態による洗浄装置の構成例を示す説明図である。本実施の形態では、液晶表示装置用のガラス基板の洗浄処理を行う洗浄装置に適用した場合を例に説明する。図1に示すように、本実施の形態による洗浄装置は、被洗浄物(ここでは、ガラス基板)に対しロールブラシ等で洗浄を行う洗剤ブラシ槽や、洗剤液をスプレー状にして吐出して洗浄を行う洗剤スプレー槽などに付随する、被洗浄物の洗浄を行ったときの洗剤液を貯留するための洗剤槽1を備える。なお、洗剤ブラシ槽や洗剤スプレー槽でそのまま洗剤液を貯留する場合には、洗剤ブラシ槽や洗剤スプレー槽が洗剤槽1を兼ねることになる。
【0014】
図1では、洗剤槽1として、シャワーノズル16から吐出されたシャワー状の洗剤液でガラス基板15を洗浄する洗剤シャワー槽が例示されている。図1に示す例では、洗浄を行った後に貯留された洗剤液12の液面上に泡液13が発生している様子を示している。以下、ガラス基板15を搬送する高さ位置を搬送レベル14という。
【0015】
また、洗剤槽1は、洗剤槽1の排気を行う筒状の排気ダクト11に連通され、排気ダクト11の先に設けられている排気用ファン(図示せず。)の吸引力によって、洗剤槽1内の空気を外部へと排出している。本実施の形態では、この排気ダクト11を利用して泡液の消泡を行う。
【0016】
具体的には、洗剤槽1に、水平断面が略円形の排気ダクト11を設ける。排気ダクト11は、上向きに空気を排出するが、洗剤槽1に連通される吸引口17は、被洗浄物が搬送される高さよりも下に位置するように設置される。また、一般に、吸引口17は、その洗剤槽1において洗剤液を貯留しておく液面の高さよりも上に位置するように設置される。そして、その排気ダクト11内に空気流4を形成するための、例えば円筒形状の複数の空気ノズル3が設けられる。空気ノズル3の噴出口は、排気ダクト11の壁面に設けられている穴部(図示せず。)を介して、排気ダクト11に空気を送り込む。空気ノズル3は、消泡したい高さ位置に設置すればよい。なお、図示省略しているが、洗剤槽1には、洗剤液12をポンプにより回収してシャワーノズル16側で再使用するために圧送するフィルター付き循環路が配設されているものとする。なお、図1では、洗剤槽1の上部に上向きに延びる排気ダクト11を設けた例を示したが、排気ダクト11は、例えば、洗剤槽11の側面から曲線を描いて上向きに延びるような形状であってもよい。
【0017】
図2は、空気流4の形成例を示す説明図である。図2に示すように、本発明では、各空気ノズル3は、排気の流れを上方方向に維持したまま、一定の方向(右回り、または左回り)に気流回転する空気流4を形成する。具体的には、各空気ノズル3を、水平方向に対して、ダクト中心を外した一定の向きで設置する。なお、少しでも気流の渦回転を促進すべく、コリオリ力を助ける方向(北半球の場合は、上方から見て半時計方向)へ空気流4が流れるように設置することが好ましい。また、垂直方向に対しては、排気方向に応じて上昇する泡をより効果的に破泡させるために、若干下向きに傾けて設置することが好ましい。なお、図2には3つの空気ノズル3を示したが、空気ノズル3の設置数量は3つに限定されず、空気ノズル全体において排気量よりも小さい空気量が導入されるのであれば、いくつであってもよい。
【0018】
本発明では、排気ダクト11の吸引力を利用して泡液を引き寄せて、空気ノズル3によって形成される空気流4にぶつけることによって破泡させる。従って、各空気ノズル3が吹き付ける空気量を合わせた空気量(以下、供給空気量という。)は、排気ダクト11の排気量よりも小さくする必要がある。仮に、供給空気量が排気量を上回ると、泡液を遠ざける方向となってしまい、消泡効果がなくなってしまうからである。なお、空気ノズル3からの空気噴射を断続的に行う場合に、瞬間的に排気量を上回る空気を入れた場合であっても、泡液を消泡面(空気流4が形成される面)から遠ざけてしまうため、消泡しない時間の分、効果が落ちてしまうからである。
【0019】
本発明では、排気ダクト11の排気量よりも小さい供給空気量であっても、円形ダクトを用いて気流の渦回転を促進させることにより、消泡に充分な(風速をより高めた)空気流4を形成することができる。その上、直接泡液に吹き付けて消泡させる方法に比べて設置面積も消費エネルギー量も小さくて済む。
【0020】
なお、空気ノズル3のみでも消泡させることは可能であるが、供給空気量と排気量との関係によっては、泡を破泡しきれずに空気流4の中心から抜けてしまう場合がある。そのような場合には、空気ノズル3の直近下に、泡を押さえるための多孔押さえ板2を設置すればよい。多孔押さえ板2は、具体的には、所定のピッチのメッシュを形成する網や、所定径の小孔を複数個設けた、開口率の大きいパンチングプレートである。なお、編み目のピッチ(またはパンチングプレートの小孔の直径)は、発生する泡の表面張力や泡の大きさに応じて適当なサイズを選定する必要があるが、発生した泡が少しずつ通り抜ける程度を目安とする。
【0021】
図3は、多孔押さえ板2と空気ノズル3との設置位置関係の例を示す説明図である。図3(a)は多孔押さえ板2と空気ノズル3とを斜め上方より見た斜視図であり、図3(b)は多孔押さえ板2と空気ノズル3とを横から見た側面図である。図3(a)に示すように、例えば、5mmピッチのメッシュを形成する網を多孔押さえ板2として、空気ノズル3の直近下(例えば、10mm〜15mm程度)に設置してもよい。また、図3(b)に示すように、多孔押さえ板2を設けた場合には、空気ノズル3を、垂直方向に対して、多孔押さえ板2に直接吹き付ける角度に傾斜させることが好ましい。
【0022】
次に、以上の構成を持つ本実施の形態による洗浄装置の動作を説明する。ここでは、洗浄装置が、液晶表示装置用のガラス基板の洗浄工程に用いられる枚葉式ガラス基板洗浄装置である場合を例にして説明する。枚葉式ガラス基板洗浄装置に含まれる洗剤シャワー処理槽には、例えば、ローダで駆動する搬送ローラによって、ガラス基板15が順次供給される。
【0023】
洗剤シャワー処理槽では、被洗浄物であるガラス基板15を所定の搬送レベルにおいて定置させた後、シャワーノズル16を作動させ、ガラス基板15に対し、その上面方向(上下両面方向であってもよい)から洗剤液12を噴出させて洗浄する。この際に、シャワーノズル16から噴出された洗剤液12は、洗剤シャワー処理槽に付随した、洗剤液12を貯留するための洗剤シャワー用洗剤槽1内に貯留される。なお、洗剤シャワー処理槽内で洗剤液12を貯留する場合には、洗剤シャワー処理槽が洗剤シャワー用洗剤槽1に相当する。
【0024】
洗剤シャワー用洗剤槽1に貯留される洗剤液12は、ガラス基板15への衝突した際や、洗剤シャワー用洗剤槽1への落下の際に発泡し、その液面上に泡液13を発生させ蓄積させる。
【0025】
なお、泡液13が蓄積されつづけ、泡液13が搬送レベルまで上昇したり、側壁を超えてしまうと、ガラス基板が浮いて搬送できない、スリップが多くなる、センサーの誤作動が増加するなどいった問題が多数発生し、装置運転を良好に継続させることができなくなってしまう。泡液13の上昇を抑えるためには、洗浄液12の循環量を減らす等の対策をしなければならず、その場合には、洗浄能力を落とした状態で装置運転を行うこととなる。
【0026】
本実施の形態による洗剤シャワー用洗剤槽1内には、貯留させる洗剤液12の液面より上部に位置するように排気ダクト11が設けられているので、排気用ファンによる吸引力によって吸引口の近くの泡液13を吸い寄せていく。
【0027】
吸い寄せられた泡液13は、排気ダクト11内において、網2によって押さえられつつも、吸引力によってその編み目を少しずつ通り抜けようとする。ここで、網2の直近上部には、ダクト中心を外した一定の向き、かつ網2に直接吹き付ける角度に傾斜させられた空気ノズル3が設けられているので、その空気ノズル3によって形成された、網2に向かって一定の方向に気流回転する空気流4が、網2をすり抜けつつある泡液13にぶつかることによって、その泡液13を破泡させる。ここでは、網2によって泡がほぼ固定された状態で空気流4をぶつけるので、より確実に、より容易に破泡させることができる。
【0028】
なお、以上の動作は、枚葉式ガラス基板洗浄装置に含まれる洗剤シャワー処理槽を例に説明したが、例えば、洗剤液を吐出しつつブラシ洗浄を行う洗剤ブラシ処理槽に適用することも可能である。本例では、洗剤の循環量を調整しなくても、泡液を所望の高さ(空気流4を形成した高さ)で破泡させることができ、結果、洗浄能力を落とさず装置運転を良好に継続させることができるようになった。
【0029】
以上のように、本実施の形態によれば、洗剤槽1内に発生する泡液を円形ダクトの吸引力で引きつけ、円形ダクト内で、気流の渦回転を促進させた空気流によって消泡するので、洗浄装置が通常備える排気機構を利用してわずかな加工で設置することができるとともに、空気ノズルのエネルギー消費量(供給空気量)や設置面積を抑えることができる。つまり、本実施の形態によれば、簡単に、最小限の設置面積かつ低エネルギー消費で消泡を行うことができる。
【0030】
また、発熱がないため、可燃性液体(例えば、アルコール系洗剤)を用いた洗浄装置であっても適用することができる。また、消耗部材がなく余計なメンテナンスがほぼ不要である。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明は、洗浄装置に限らず、貯留時に発泡する液体の消泡を要する装置であれば、好適に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本実施の形態による洗浄装置の構成例を示す説明図である。
【図2】空気流の形成例を示す説明図である。
【図3】多孔押さえ板と空気ノズルとの設置位置関係の例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0033】
1 洗剤槽
2 多孔押さえ板
3 空気ノズル
4 空気流
11 排気ダクト
12 洗剤液
13 泡液
14 搬送レベル(高さ位置)
15 被洗浄物(ガラス基板)
17 吸引口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗剤液を利用して被洗浄物を洗浄する洗浄装置であって、
被洗浄物を洗浄した後の洗剤液を貯留するための洗剤槽を備え、
前記洗剤槽に、水平断面が略円形の、上向きに空気を排出するための排気ダクトを設け、
前記排気ダクトは、前記洗剤槽に連通される吸引口が、前記洗剤槽において貯留される洗剤液の液面の高さよりも上に、かつ被洗浄物が搬送される高さよりも下に位置するように設置され、
前記排気ダクトの所定の高さ位置に、排気の流れを上方方向に維持しつつ、一定の方向に気流回転する空気流を該排気ダクトの内側で形成するための空気ノズルを設けた
ことを特徴とする洗浄装置。
【請求項2】
空気ノズルの直近下に、泡を押さえるための多孔押さえ板を設け、
前記空気ノズルは、前記多孔押さえ板に空気流が直接吹き付けられる角度で設置される
請求項1に記載の洗浄装置。
【請求項3】
多孔押さえ板は、所定のピッチのメッシュを形成する網、または所定径の小孔を複数個設けたパンチングプレートである
請求項2に記載の洗浄装置。
【請求項4】
空気ノズルは、排気ダクトの水平方向に対して、ダクト中心を外した、コリオリ力を助ける方向に向くように設置される
請求項1から請求項3のうちのいずれか1項に記載の洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−132419(P2008−132419A)
【公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−319801(P2006−319801)
【出願日】平成18年11月28日(2006.11.28)
【出願人】(000103747)オプトレックス株式会社 (843)
【出願人】(000167783)広島オプト株式会社 (95)
【Fターム(参考)】