説明

活性エネルギー線硬化性組成物及びハードコート層を有するプラスチックフィルム

【課題】 表面硬度、耐擦傷性、耐摩耗性および密着性に優れ、低硬化収縮性でカールが少ない硬化被膜を得ることができる硬化性組成物、及びその硬化被膜を有する被覆物品を提供する。
【解決手段】 イソシアヌレート骨格を有するエチレン性不飽和化合物(A)、無機微粒子(b1)および有機シラン化合物の加水分解生成物(b2)を縮合反応して得られる有機被覆無機微粒子(B)、光重合開始剤(C)、溶剤(D)を含んでなる光学用活性エネルギー線硬化性組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチック基材の表面硬度を改良するのに有用な活性エネルギー線硬化性組成物に関する。さらに詳しくは、特にトリアセテートへの密着性に優れ、透明で高耐擦傷性に優れたハードコート層を形成できる活性エネルギー線硬化性組成物、この硬化性組成物を硬化させて得たハードコート層を有するプラスチックフィルムおよび該ハードコート層を有するプラスチックフィルムを備えてなる液晶用偏光板に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶に代表される表示装置には、液晶特性を発揮させるために偏光フィルムが用いられている。偏光フィルムは割れやすいので通常、トリアセテートのような樹脂の透明フィルムで保護されている。しかしながら、偏光フィルムの割れ防止に使用される透明フィルムは耐擦傷性や耐薬品性に劣るために、保護のためにハードコート層が形成されている。そのハードコート層形成には、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート等の紫外線硬化性アクリル系樹脂を含有するハードコート層形成用組成物が用いられている。このようなハードコート層形成用組成物では、形成された硬化被膜は表面硬度や耐擦傷性、耐摩耗性が十分ではなかった。
【0003】
このような問題を克服する手法として、アクリロイルオキシ基を複数有する多官能アクリレートを添加し、硬化被膜中の樹脂成分の架橋密度を高めることによって、高い表面硬度を得る方法が一般的ではある。しかし、架橋密度が高くなるに伴い硬化収縮により硬化被膜が設けられたフィルムはカールが大きくなる他、基材フィルに対する硬化被膜の密着性も悪くなる問題がある。
【0004】
また、ハードコート層の厚みを通常よりも厚くすることによって高い表面硬度を得る方法もあるが、厚みが増すに伴いフィルムのカールが大きくなる問題がある。
【0005】
これら問題を克服した技術として、多官能ウレタンアクリレート、コロイダルシリカ、および分子中にテトラヒドロフルフリル基と(メタ)アクリレートと有する化合物よりなる組成物が提案されている(例えば、特許文献1および2参照)。しかしながら、この組成物は、コロイダルシリカが官能基を有していないため、十分な表面硬度を得ることができないことに加え、硬化被膜の透明性も不十分であるという問題がある。
【特許文献1】特開2002−67238号公報
【特許文献2】特開2002−69333号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
すなわち、本発明の課題は、表面硬度が高く、特にトリアセテートへの密着性に優れたハードコート層を形成できる活性エネルギー線硬化性組成物および該硬化性組成物から形成されたハードコート層を有するフィルムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するため、鋭意検討した結果、イソシアヌレート骨格を有するエチレン性不飽和化合物および特定の有機被覆無機微粒子を使用し、光重合開始剤と共に有機溶剤に分散した組成物を使用し、プラスチックフィルム上に塗布乾燥し、その後に紫外線照射により硬化させたならば、表面硬度の高い被膜が形成できること、また、カールの発生も殆ど無いことを見出し、ついに本発明に至った。
【0008】
すなわち、本発明は、イソシアヌレート骨格を有するエチレン性不飽和化合物(A)、無機微粒子(b1)と有機シラン化合物の加水分解生成物(b2)を縮合反応して得られる有機被覆無機微粒子(B)、光重合開始剤(C)および溶剤(D)を含んでなる活性エネルギー線硬化性組成物である。
【0009】
また、本発明は、有機被覆無機微粒子(B)の製造に用いられる無機微粒子(b1)が、平均粒子径1〜300nmのものである上記活性エネルギー線硬化性組成物である。
【0010】
さらに、本発明は、溶剤(D)が、ケトン系溶剤およびエステル系溶剤からなる群から選ばれる上記活性エネルギー線硬化性組成物である。
【0011】
また、本発明は、上記のいずれかの光学用活性エネルギー線硬化性組成物からなるプラスチックフィルム用活性エネルギー線硬化性組成物である。
【0012】
そして、本発明は、透明支持体上に、上記プラスチックフィルム用活性エネルギー線硬化性組成物を硬化させてなる、ハードコート層を有するプラスチックフィルムである。
【0013】
なお、上記透明支持体が、トリアセテートフィルムであることが好ましい。
【0014】
また、本発明は上記ハードコート層を有するプラスチックフィルムを備えてなる液晶用偏光板である。
【発明の効果】
【0015】
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物は、薄膜でカールの少ない硬化被膜が形成できるだけではなく、その硬化被膜は、表面硬度、耐擦傷性、耐摩耗性、密着性に優れているので、ハードコート層を有する透明被覆物品の製造に有用である。そして、製造される透明被覆物品は、透明性にも優れているので、特に光学用途として用いれば、優れた性能を有する光学部材とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0017】
なお、本発明において、「(メタ)アクリレート」は、アクリレートまたはメタクリレートを意味し、「(メタ)アクリロイル」も同様に、アクリロイルまたはメタクリロイルを意味する。
【0018】
また、本発明において、「樹脂分」とは、イソシアヌレート骨格を有するエチレン性不飽和化合物(A)(以下、「成分A」と略すことがある)、有機被覆無機微粒子(B)(以下、「成分B」と略すことがある)、及び必要に応じて添加される分子内に少なくとも1個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する単量体等、紫外線等の活性エネルギー線の照射により重合硬化し、硬化被膜を形成するのに有用な本発明の活性エネルギー線硬化性組成物中の成分をさす。
【0019】
さらに、本発明における「固形分」とは、本発明の活性エネルギー線硬化性組成物から溶剤(D)(以下、「成分D」と称することがある)及びその他の揮発性成分を除いた成分のことで、具体的には前述「樹脂分」に光重合開始剤(C)(以下、「成分C」と略すことがある)、その他不揮発性の添加剤等を加えた、硬化後に被膜を構成することになる全成分をさす。
【0020】
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物(以下、「硬化性組成物」と略すことがある)は、イソシアヌレート骨格を有してなるエチレン性不飽和化合物(A)、無機微粒子(b1)および有機シラン化合物の加水分解生成物(b2)を縮合反応して得られる有機被覆無機微粒子(B)、光重合開始剤(C)および溶剤(D)を含有する。
【0021】
本発明に用いる成分Aは、イソシアヌレート骨格を有してなるエチレン性不飽和化合物であり、本発明の硬化性組成物の硬化物に、表面硬度と基材への密着性とを付与する成分である。
【0022】
成分Aとしては、例えば、トリス[(メタ)アクリロイルオキシエチル]イソシアヌレート、トリス[2−(メタ)アクリロイルオキシプロピル]イソシアヌレート、ビス[(メタ)アクリロイルオキシエチル]ヒドロキシエチルイソシアヌレート、ビス[2−(メタ)アクリロイルオキシプロピル]−2−エトキシプロピルイソシアヌレート、トリス[(メタ)アクリロイルオキシエトキシエチル]イソシアヌレート、これらの混合物等の(メタ)アクリロイルイソシアネート類;ヘキサメチレンジイソシアネート等のイソシアネート化合物をイソシアヌレート化した化合物のイソシアネート基に、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、これらヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートをカプロラクトン変性した化合物、グリシジル(メタ)アクリレートと(メタ)アクリル酸の反応物、ペンタエリスリトールモノ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等のヒドロキシ基含有(メタ)アクリレート類を反応させたウレタン(メタ)アクリレート類;トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートに、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、イソホロンジイソシアネートと2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、これらヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートをカプロラクトン変性した化合物、グリシジル(メタ)アクリレートと(メタ)アクリル酸の反応物、ペンタエリスリトールモノ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等のヒドロキシ基含有(メタ)アクリレート類とを反応させて得られる(メタ)アクリロイルオキシイソシアネート類を反応させて得られるウレタン(メタ)アクリレート類等が挙げられる。これらは1種単独でまたは2種以上を併用して用いることができる。
【0023】
それらの中でも、得られる硬化被膜の表面硬度、及び基材との密着性の観点から、トリス[(メタ)アクリロイルオキシエチル]イソシアヌレート、ヘキサメチレンジイソシアネート等のイソシアヌレート化合物に、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等を反応させて得られるウレタン(メタ)アクリレートが好ましい。
【0024】
本発明の硬化性組成物における成分Aの配合量は、樹脂分100質量部中、5〜95質量部が適当である。成分Aの配合量が少なすぎると、硬化被膜の表面硬度が低下すると共に、基材への密着性が低下し、多すぎると硬化被膜を形成したフィルムにおける硬化被膜側へのカールが増大する。好ましい成分Aの配合量は10〜90質量部である。
【0025】
本発明において使用する、無機微粒子(b1)(以下、「成分b1」ということがある)および有機シラン化合物の加水分解生成物(b2)(以下、「成分b2」ということがある)を縮合反応して得られる有機被覆無機微粒子(B)は、得られる硬化被膜にスチールウール磨耗試験においても傷を生じないほどの耐擦傷性を付与する成分である。
【0026】
成分b1としては、特に限定されるものではないが、得られる硬化被膜の耐磨耗性の観点からシリカが好ましい。なお、成分b1は、水、有機溶剤等の分散媒にコロイド状態に分散させた無機微粒子が使用可能であり、その一次粒子径は成分b2との反応時にゲル化を起こさない1nm以上であることが好ましく、得られる硬化被膜の透明性の観点から300nm以下が好ましい。より好ましくは5〜80nmの範囲である。
【0027】
成分b2は、有機シラン化合物の加水分解生成物であれば、特に限定されるものではなく、公知のものを使用することができる。
【0028】
有機シラン化合物としては、例えば、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、スチリルトリメトキシシラン、スチリルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、 N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアナトプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。これらは1種単独でまたは2種以上を併用して用いることができる。
【0029】
なお、これらの有機シラン化合物のエポキシ基やグリシジル基に(メタ)アクリル酸を付加したシラン化合物、アミノ基を(メタ)アクリロイルオキシ基を2個有する化合物にマイケル付加したシラン化合物、アミノ基やメルカプト基を(メタ)アクリロイルオキシ基およびイソシアネート基を有する化合物を付加したシラン化合物、イソシアネート基に(メタ)アクリロイルオキシ基および水酸基を有する化合物を付加したシラン化合物等も用いることができる。
【0030】
この中でも、成分b2を得るのに最も好ましい化合物は、下記一般式(I)で示される有機シラン化合物である。
【0031】
【化1】

(式中、Xは(メタ)アクリロイルオキシ基、スチリル基又はビニル基を表し、R1は直接結合もしくは炭素数1〜8の直鎖型または分岐型アルキレン基またはアルキリデン基を表し、R2およびR3は、それぞれ独立に、炭素数1〜8の直鎖型又は分岐型アルキル基を表す。また、aは1〜3であり、bは0〜2であり、そして、a+bは1〜3である。)
【0032】
一般式(I)で示される有機シラン化合物は、加水分解してシラノール化合物である成分b2となる。この成分b2は成分b1と反応させることにより、成分Aとの相溶性が良好な有機被覆無機微粒子Bとすることができる。
【0033】
一般式(I)で示される有機シラン化合物は、活性エネルギー線照射により重合活性を示す(メタ)アクリロイルオキシ基、スチリル基またはビニル基を有する化合物であり、本発明において、特に好適に用いられる。
【0034】
すなわち、このような有機シラン化合物を用いることにより、成分Aとの化学結合形成が可能な光硬化性の成分Bを形成することができ、かつ得られる硬化被膜に高度な耐擦傷性を付与することができる。
【0035】
一般式(I)で示される有機シラン化合物としては、例えば、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、スチリルトリメトキシシラン、スチリルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等が挙げられる。これらは1種単独でまたは2種以上を併用して用いることができる。
【0036】
この中でも、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシランおよびビニルトリエトキシシランから選択される有機シラン化合物は、得られる成分Bが成分Aとの反応性に優れる点で、特に好ましい。
【0037】
成分Bは、成分b1と成分b2の存在下で、成分b1の分散媒を常圧または減圧下で該分散媒より極性の低い溶媒とともに共沸留出させ、該分散媒を極性の低い溶媒に置換した後、加熱下で反応させる工程で行うことにより製造できる。なお、成分b1の分散媒が既により極性の低い溶媒となっている場合は、縮合反応で生成した水を、単に共沸により系外へ取り除くだけでよい。
【0038】
ここでいう「成分b1と成分b2の存在下」とは、成分b2が有機シラン化合物を加水分解して得たシラノール化合物である場合、下記2通りの方法により得られる状態を意味する。
1)成分b1と有機シラン化合物を必要により水と共に混合した後、加水分解触媒を加え、常温又は加熱下で攪拌する等の常法により成分b1および成分b2を共存させる。
2)予め有機シラン化合物を加水分解して得た成分b2を成分b1と混合し、共存させる。
【0039】
1)および2)のいずれにおいても、有機シラン化合物1モルに対して、アルコール等の有機溶媒の存在下または非存在下に、0.5〜6モルの水、および0.001〜0.1規定の塩酸または酢酸水溶液等の加水分解触媒を加え、加熱下で攪拌しつつ、加水分解で生じるアルコールを系外に除去することにより、成分b2は製造できる。なお、1)の場合、成分b2を製造する反応は成分b1の存在下に行われる。
【0040】
次いで行われる縮合反応は、以下の如く行えばよい。
【0041】
まず、1)の方法ではそのまま、2)の方法ではここで成分b1と混合し、成分b1と成分b2の縮合反応で生じる水および成分b1の分散媒を常圧または減圧下で60〜100℃、好ましくは70〜90℃の温度で共沸留出させ、固形分濃度を50〜90質量%とする。
【0042】
次に反応系内に、成分b1の分散媒より極性の低い溶媒を加え、この低極性溶媒、水および成分b1の分散媒をさらに共沸留出させながら60〜150℃、好ましくは80〜130℃の温度で固形分濃度を30〜90質量%、好ましくは50〜80質量%に保持しながら、0.5〜10時間攪拌し縮合反応を行う。この際、反応を促進させる目的で、水、酸、塩基、塩等の触媒を用いてもよい。
【0043】
本発明の硬化性組成物において、成分Bの使用割合は特に限定されないが、樹脂分100質量部中、5〜95質量部が好ましく、特に好ましくは10〜90質量部である。
【0044】
本発明の硬化性組成物には、効率よく紫外線等の活性エネルギー線による硬化法による硬化被膜を形成させる目的で、光重合開始剤(C)が配合されている。
【0045】
成分Cとしては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、アセトイン、ブチロイン、トルオイン、ベンジル、ベンゾフェノン、p−メトキシベンゾフェノン、ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、メチルフェニルグリオキシレート、エチルフェニルグリオキシレート、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン等のカルボニル化合物;テトラメチルチウラムジスルフィド等の硫黄化合物、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル等のアゾ化合物;ベンゾイルパーオキシド、ジターシャリブチルパーオキシド等のパーオキシド化合物;2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド等のアシルホスフィンオキサイド化合物等を挙げられる。
【0046】
これらの中でも、特に硬化性組成物の硬化性、及び得られる硬化被膜の耐候性に優れることから、ベンゾフェノン、メチルフェニルグリオキシレート、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイドから選ばれることが好ましい。
【0047】
本発明において、成分Cの含有量は特に限定されないが、樹脂分100質量部に対して、0.01〜10質量部が好ましく、0.1〜8質量部がより好ましい。成分Cの含有量が前記範囲内である場合には、硬化性が良好であり、優れた耐擦傷性を示す傾向にある。
【0048】
本発明の硬化性組成物は溶剤(D)を含むことによって、均一な溶解性、分散安定性、粘度調整、基材に対する塗工作業性、得られる硬化被膜の均一性、基材に対する密着性、平滑性等の諸物性が改善されたものとなる。
【0049】
溶剤(D)としては、特に限定はされないが、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、シクロヘキサノール、ジアセトンアルコール等のアルコール類;メチルセロソルブ、セロソルブ、ブチルセロソルブ、メチルカルビトール、カルビトール、ブチルカルビトール、ジエチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル類;スワゾール1000(商品名、丸善石油化学社製)、ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン等の炭化水素系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸n−アミル等のエステル系溶剤などがあげられる。これらの中でも、基材への密着性の観点から、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル等のエステル系溶剤などが好ましい。
【0050】
本発明の硬化性組成物における溶剤(D)の配合量は、所望する物性により異なるため限定されるものではない。例えば、本発明の硬化性組成物をトリアセテートフィルムに用いる場合には、通常固形分100質量部に対して、10〜1000質量部が好ましく、塗装工程の条件に好適であることから、40〜300質量部とすることがより好ましい。
【0051】
本発明の硬化性組成物には、必要に応じて、分子内に少なくとも1個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物を添加してもよい。
【0052】
その化合物の例としては、ジ(メタ)アクリレート、多官能(メタ)アクリレート、エポキシポリ(メタ)アクリレート、ウレタンポリ(メタ)アクリレート、ポリエステルポリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。以下、それらについて具体的に列記する。
【0053】
ジ(メタ)アクリレートとしては、例えば、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(繰り返し単位n=2〜15)ジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(繰り返し単位n=2〜15)ジ(メタ)アクリレート、ポリブチレングリコール(繰り返し単位n=2〜15)ジ(メタ)アクリレート、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシジエトキシフェニル)プロパン、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、ビス(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)ヒドロキシエチル−イソシアヌレート等が挙げられる。
【0054】
多官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0055】
エポキシポリ(メタ)アクリレートとしては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂等のエポキシ基を分子内に2個以上有する化合物に(メタ)アクリル酸あるいはヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレートを反応させたものが挙げられる。
【0056】
ウレタンポリ(メタ)アクリレートとしては、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等のジイソシアネートに2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等のヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレートを反応させたウレタンジ(メタ)アクリレート、イソホロンジイソシアネートにペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートを反応させたウレタンヘキサ(メタ)アクリレート、ジシクロメタンジイソシアネートとポリ(繰り返し単位n=6〜15)テトラメチレングリコールとのウレタン化反応物に2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとを反応させたポリウレタンジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0057】
ポリエステルポリ(メタ)アクリレートとしては、トリメチロールエタンとコハク酸および(メタ)アクリル酸を反応させたポリエステル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパン、エチレングリコール、コハク酸及び(メタ)アクリル酸とを反応させたポリエステル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0058】
これらの分子内に少なくとも1個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物は、1種単独でまたは2種以上を併用して用いることができる。
【0059】
これらの中でも、特に耐擦り傷性を向上させることができることから、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、イソホロンジイソシアネートにペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートを反応させたウレタンヘキサ(メタ)アクリレート、ジシクロメタンジイソシアネートに2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートを反応させたウレタンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレートから選ばれる化合物を併用することが特に好ましい。
【0060】
必要に応じて添加される分子内に少なくとも1個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物は、樹脂分100質量部中、0〜70質量部、好ましくは0〜60質量部を配合することが好ましい。この化合物の配合量が70質量部を超えると、硬化被膜を形成したフィルムにおける硬化被膜側へのカールが増大すると共に、基材との密着性が低下する。
【0061】
さらに、本発明の硬化性組成物には、非反応性熱可塑性高分子、有機ベントン、ポリアミド、マイクロゲル、繊維素系樹脂等のようなレオロジー調節剤やシリコーンに代表される表面調整剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、重合禁止剤、シランカップリング剤、無機フィラー、有機フィラー、表面有機化処理した無機フィラー、垂れ止め剤等の添加剤を必要に応じて公知の手段を用いて適宜配合することができる。
【0062】
これらの添加剤の中でも、組成物の貯蔵安定性の向上や、硬化被膜の変色や変質を抑制することができるので、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤を使用することが好ましい。
【0063】
本発明の硬化性組成物には、成分B以外の微粒子を添加してもよい。微粒子を添加することで、重合時の硬化収縮を低減することが可能であるほか、屈折率調整、電気伝導度等を付与することが可能である。
【0064】
本発明の硬化性組成物は各種プラスチックフィルムにも使用可能であり、プラスチックフィルムの例として、セルロース樹脂、ポリエステル樹脂、ポリメチルメタクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリエーテルスルフォン樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリメタクリルイミド樹脂等のフィルムが挙げられる。なお、フィルムは、シート状のものであってもよい。なお、本発明の硬化性組成物は極めて透明な硬化被膜を形成することが可能であるので、特に、偏光板用途に一般的に使用されるトリアセテート、ジアセテート等のセルロース系樹脂のフィルムに好適である。
【0065】
本発明の硬化性組成物は、バーコーター塗装、メイヤーバー塗装、エアナイフ塗工、グラビア塗工、リバースグラビア塗工、マイクログラビアコート塗工、オフセット印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷、ハケ塗り法、スプレー塗装、シャワーフロー塗装、ディップ塗装、カーテンコート法等の公知の塗布方法で基材に塗布することができる。この際、使用するフィルムに柄や易接着層を設けられていてもよい。
【0066】
本発明の硬化性組成物の基材上への塗布量は、特に限定されず、目的に応じて適宜調整すればよく、塗布乾燥後の活性エネルギー線照射での硬化処理後に得られる硬化被膜の膜厚が、好ましくは1〜50μm、より好ましくは3〜20μm、さらに好ましくは5〜10μmとなるような量であればよい。
【0067】
硬化被膜の厚みがこの範囲内にあれば、充分な硬度、耐擦り傷性、基材への密着性を有する硬化被膜が得られる。また、硬化収縮率も低く、基材との密着性が良好でとなり、硬化被膜の耐久性も向上する。
【0068】
本発明の硬化性組成物を硬化させる手段としては、活性エネルギー線の照射による。ここでいう活性エネルギー線は、α、β、γ線及び紫外線等のことであり、これらは特に限定されないが、汎用性の観点から紫外線が好ましい。
【0069】
紫外線の発生源としては、実用性、経済性の面から、一般的に用いられている紫外線ランプが挙げられる。紫外線ランプとしては、例えば、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、キセノンランプ、メタルハライドランプ、マグネトロンを利用した無電極UVランプ等が挙げられ、いずれでも使用可能である。
【0070】
本発明の硬化性組成物は、活性エネルギー線を照射する際の雰囲気が、空気であっても、窒素、アルゴン等の不活性ガスであっても構わない。その中でも、実用性、経済性の点から、空気雰囲気下で活性エネルギー線照射を行なうことが好ましい。
【0071】
次に、本発明の被覆物品について以下に説明する。
【0072】
本発明の被覆物品は、上記の硬化性組成物の硬化被膜(ハードコート層)を有する物品である。
【0073】
本発明の被覆物品の構造は、基材上に上記の硬化性組成物の硬化被膜を有していればよく、基材上に直接本発明の硬化性組成物の硬化被膜が形成されていてもよいし、密着性の向上を目的にプライマー処理等を行った上に本発明の硬化性組成物の硬化被膜が形成されていてもよい。
【0074】
また、本発明の被覆物品は、硬化被膜上に、さらに、反射防止層、紫外線・赤外線吸収層、選択波長吸収性層、電磁波シールド層、防汚性層等の機能を有する膜が設けられていてもよい。
【実施例】
【0075】
以下、実施例により、本発明をさらに詳しく説明する。
【0076】
なお、実施例中の「部」は「質量部」を意味する。また実施例中の用語の意味は、以下に示す通りである。また、得られた硬化被膜の評価方法は以下の通りである。
【0077】
〔外観〕
得られた被覆試験フィルムの硬化被膜について、透明性をJIS K7105に対応したヘイズメーターにて測定し、下記にて評価した。
○:全光線透過率90%以上。
×:全透過線透過率90%未満。
【0078】
〔密着性〕
得られた被覆試験フィルムの硬化被膜について、JIS K5700に準拠し、1mm間隔で縦、横11本の切れ目を入れて、100個の碁盤目を作る。セロハンテープ(ニチバン社製、商品名;セロテープ(登録商標))をその表面に密着させた後、一気に剥がした際に剥離せず残存したマス目の個数を計測し、下記にて評価した。
○:残存したマス目が100枚。
△:残存したマス目が50枚以上100枚未満。
×:残存したマス目が50枚未満。
【0079】
〔鉛筆硬度〕
得られた被覆試験フィルムの硬化被膜について、JIS K5700に準拠し、三菱鉛筆ユニ(登録商標)を用いて45度の角度で引っ掻き、傷のつかない最大硬さの鉛筆を調べ、その硬さを鉛筆硬度とした。
【0080】
〔耐擦傷性〕
得られた被覆試験フィルムの硬化被膜について、スチールウール#0000上に500g/cm2の荷重をかけて20往復させ、発生した傷の状況を目視により、下記基準で判定した。
○:傷なし。
×:傷発生。
【0081】
〔耐摩耗性〕
得られた被覆試験フィルムの硬化被膜について、JIS K7204に準拠した磨耗輪を用いた磨耗試験(4.9N荷重)を500回行い、磨耗試験前後のヘイズ値の変化をJIS K7105に対応したヘイズメーターを用いて測定した。
【0082】
〔カール性〕
得られた被覆試験フィルムを10cm×10cmにカットし、水平な台上で浮き上がった4辺それぞれの高さを測定し、その平均値をカール性の基準とした。
【0083】
合成例1<イソシアヌレート骨格含有エチレン性不飽和化合物(A−1)の製造>
温度計、攪拌機、温度制御装置およびコンデンサーを備えた反応容器内に、ヘキサメチレンジイソシアネート3量体(旭化成(株)製、商品名;デュラネートTPA−100)604.8部、ジブチル錫ジラウリレート0.3部、ハイドロキノンモノメチルエーテル1部を入れ、攪拌しながら50℃へ昇温した後、2−ヒドロキシエチルアクリレート418部を4時間かけて滴下した。1時間かけて70℃へ昇温した後、更に5時間攪拌を続け、イソシアヌレート骨格含有ウレタンアクリレート(A−1)を製造した。
【0084】
合成例2<有機被覆無機微粒子(B−1)の製造>
撹拌機、温度計およびコンデンサーを備えた3リットルの4ツ口フラスコに、イソプロパノール−シリカゾル(分散媒;イソプロパノール、SiO2濃度;30重量%、一次粒子径;12nm、商品名;IPA−ST、日産化学工業(株)製)(以下、IPA−STと略記する。)2000部および3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン(商品名;TSL−8370、東芝シリコン(株)製)(以下、「TSL−8370」と略記)382部を入れ、撹拌しながら昇温し、揮発成分の還流が始まると同時に純水150部を徐々に滴下し、滴下終了後、還流下で2時間撹拌しながら加水分解を行った。加水分解終了後、常圧状態でアルコール、水等の揮発成分を留出させ、固形分濃度(なお、ここでは固形分はIPA−STのSiO2分600部とTSL−8370の加水分解物分317部の合計量917部である)が約60質量%になった時点でトルエン600部を追加し、アルコール、水等をトルエンと共沸留出させた。その後、トルエン1500部を数回に分けて追加し、完全に溶媒置換を行い、トルエン分散系とした。このときの固形分濃度は約40質量%であった。さらに、トルエンを留出させながら110℃で4時間反応を行ない、固形分濃度を約60質量%とした。この後さらにメチルイソブチルケトン1000部を追加し、トルエンを蒸発留出させて溶媒置換を行い、メチルイソブチルケトン分散系とした。このメチルイソブチルケトン分散系は、黄色状でニュートン流体の透明、粘稠な液体状であり、25℃の粘度が30mPa・sであった。また、固形分濃度は下記式で算出される加熱残分(加熱条件:105℃、3時間、常圧)で58質量%であったので、メチルイソブチルケトンにて固形分濃度を50質量%として、有機被覆無機微粒子(B−1)を製造した。
加熱残分(質量%)=(加熱処理後の質量(g)/加熱前の質量(g))×100
【0085】
合成例3<有機被覆無機微粒子(B−2)の製造>
合成例2において、メチルイソブチルケトンに代えてメトキシプロパノールを使用する以外は、合成例2と同様にして有機被覆無機微粒子(B−2)を製造した。なお、固形分濃度は50質量%とした。
【0086】
合成例4<有機被覆無機微粒子(B−3)の製造>
TSL−8370に代えて、3−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン(商品名;KBM−5103、信越シリコーン(株)製)362部を用いる以外は、合成例2と同様にして有機被覆無機微粒子(B−3)を製造した。なお、固形分濃度は50質量%とした。
【0087】
実施例1
〈硬化性組成物の調製〉
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬(株)製、商品名;カヤラッドDPHA)45部、トリス(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート(東亜合成(株)製、商品名;アロニックスM−315)45部、合成例2の有機被覆無機微粒子(B−1)20部(固形分で10部)、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルホリノプロパン−1−オン(チバスペシャリティケミカルス社製、商品名;イルガキュア907)5部を配合し、固形分60質量%になるようにメチルイソブチルケトン30部、メトキシプロパノール30部を加えた上で攪拌混合し、硬化性組成物を得た。
【0088】
〈被覆試験フィルムの製造〉
上記で調製した硬化性組成物について、トリアセテートフィルム(富士フィルム(株)製、膜厚40μm)上に、硬化被膜の厚みが5μmとなるように塗布し、80℃の熱風乾燥機で1分間乾燥した。引き続き、高圧水銀灯により紫外線を、塗膜への紫外線照度が、200mW/cm2(350nmモニター)の条件下において、積算光量150mJ/cm2(波長320〜380nmの紫外線積算エネルギー量)になるよう照射し、被覆試験フィルム(硬化被膜厚5μm)を製造した。
【0089】
製造した被覆試験フィルムを用い、上記評価方法により、密着性、鉛筆硬度、耐擦傷性、耐磨耗性およびカール性を評価した。結果を表1に示した。
【0090】
実施例2〜11、比較例1〜3
表1、2の組成物欄に示す配合および組成とする以外は、実施例1と同様にして硬化性組成物を調製し、以下、調製した硬化性組成物を用い、実施例1と同様にして、被覆試験フィルムを作製し、密着性、鉛筆硬度、耐擦傷性、耐磨耗性およびカール性を評価した。結果を表1、2に示した。
【0091】
表1および2中の符号および記号は、下記を示す。
TAEIC:トリス(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート(東亜合成社製、商品名;アロニックスM−315)(成分A)
A−1:合成例1で製造したイソシアヌレート骨格含有エチレン性不飽和化合物(A−1)(成分A)
B−1:合成例2で製造したメチルイソブチルケトン分散のメタクリロイル変性の有機被覆無機微粒子(B−1)(成分B)
B−2:合成例3で製造したメトキシプロパノール分散のメタクリロイル変性の有機被覆無機微粒子(B−2)(成分B)
B−3:合成例4で製造したメチルイソブチルケトン分散のアクリロイル変性の有機被覆無機微粒子(B−3)(成分B)
B−4:有機未被覆無機微粒子(日産化学(株)製、商品名;IPA−ST)(成分B)
PI:2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルホリノプロパン−1−オン(チバスペシャリティケミカルス社製、商品名;イルガキュア907)(成分C)
MIBK:メチルイソブチルケトン(成分D)
AcEt:酢酸エチル(成分D)
PGM:メトキシプロパノール(成分D)
IPA:イソプロパノール(成分D)
DPHA:ジペンタエリスリトールテトラアクリレート(日本化薬(株)製、商品名;カヤラッドDPHA)(その他、単量体成分)
PETA:ペンタエリスリトールテトラアクリレート(東亜合成(株)製、商品名;アロニックスM−305)(その他、単量体成分)
【0092】
【表1】

【0093】
【表2】

【0094】
表1、2に見られるように、本発明の条件を満足する硬化性組成物(実施例1〜11)では良好な硬化被膜(トップコート層)が形成でき、特に低カールで高硬度な硬化被膜が得られるという点で、産業上の利用価値が高いことが分かる。一方、本発明の条件外である硬化性組成物(比較例1〜3)では、表2に明らかなように、外観、密着性、耐擦傷性、カール性等に問題がある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イソシアヌレート骨格を有するエチレン性不飽和化合物(A)、無機微粒子(b1)と有機シラン化合物の加水分解生成物(b2)を縮合反応して得られる有機被覆無機微粒子(B)、光重合開始剤(C)および溶剤(D)を含んでなる活性エネルギー線硬化性組成物。
【請求項2】
有機被覆無機微粒子(B)の製造に用いられる無機微粒子(b1)が、平均粒子径1〜300nmのものである請求項1に記載の活性エネルギー線硬化性組成物。
【請求項3】
溶剤(D)が、ケトン系溶剤およびエステル系溶剤からなる群から選ばれる請求項1または2に記載の活性エネルギー線硬化性組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の光学用活性エネルギー線硬化性組成物からなるプラスチックフィルム用活性エネルギー線硬化性組成物。
【請求項5】
透明支持体上に、請求項4に記載のプラスチックフィルム用活性エネルギー線硬化性組成物を硬化させてなる、ハードコート層を有するプラスチックフィルム。
【請求項6】
透明支持体が、トリアセテートフィルムである請求項5記載のハードコート層を有するプラスチックフィルム。
【請求項7】
請求項5または6に記載のプラスチックフィルムを備えてなる液晶用偏光板。

【公開番号】特開2006−225434(P2006−225434A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−37839(P2005−37839)
【出願日】平成17年2月15日(2005.2.15)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】