説明

活性エネルギー線硬化組成物、インクジェット用インク組成物及び画像形成方法

【課題】 高湿環境下で印字を行っても光硬化性に優れ、形成した硬化膜の強度が強靭で、耐溶剤性及び耐水性がに優れた活性エネルギー線硬化組成物と、インクジェット用インクに適用した際の吐出安定性に優れるインクジェット用インク組成物及びそれを用いた画像形成方法を提供することにある。
【解決手段】 エポキシ化合物を含有する活性エネルギー線硬化組成物において、脂環式エポキシ環の連結基に、エステル結合を少なくとも3個有する多環式エポキシ化合物を全エポキシ化合物の0.01質量%以上、10質量%以下含有することを特徴とする活性エネルギー線硬化組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性エネルギー線硬化組成物、インクジェット用インク組成物及びそれを用いた画像形成方法に関し、詳しくは、印刷インキ、缶、プラスチック、紙、木材等のコーティング塗料、接着剤、光学的立体造型、インクジェット用インク等に適用可能な活性エネルギー線硬化組成物、インクジェット用インク組成物及びそれを用いた画像形成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、インクジェット記録方式は簡便・安価に画像を作成出来るため、写真、各種印刷、マーキング、カラーフィルター等の特殊印刷など、様々な印刷分野に応用されてきている。特に、微細なドットを出射、制御する記録装置や、色再現域、耐久性、出射適性等を改善したインク及びインクの吸収性、色材の発色性、表面光沢などを飛躍的に向上させた専用紙を用い、銀塩写真に匹敵する画質を得ることも可能となっている。今日のインクジェット記録方式の画質向上は、記録装置、インク、専用紙の全てが揃って初めて達成されている。
【0003】
しかしながら、専用紙を必要とするインクジェットシステムは、記録媒体が制限されること、記録媒体のコストアップが問題となる。そこで、専用紙と異なる被転写媒体へインクジェット方式により記録する試みが多数なされている。具体的には、室温で固形のワックスインクを用いる相変化インクジェット方式、速乾性の有機溶剤を主体としたインクを用いるソルベント系インクジェット方式や、記録後紫外線(UV)光により架橋させるUVインクジェット方式などである。
【0004】
中でも、UVインクジェット方式は、ソルベント系インクジェット方式に比べ比較的低臭気であり、速乾性、インク吸収性の無い記録媒体への記録が出来る点で、近年注目されつつあり、例えば、特開平6−200204号、特表2000−504778号において、活性エネルギー線硬化型インクジェットインクが開示されている。
【0005】
近年では、活性エネルギー線硬化型モノマーとして、エポキシ化合物、特に脂環式エポキシ化合物が、光カチオン重合開始剤と組み合わせた活性エネルギー線硬化組成物として広く使われている。例えば、特許文献1には印刷インキ用途、特許文献2、3にはコーティング塗料用、特許文献4には缶外面コーティング塗料用、特許文献5にはプラスチック被覆コーティング塗料用、特許文献6には紙被覆コーティング塗料用、特許文献7には木材コーティング塗料用、特許文献8には接着剤用、特許文献9、10には光学的立体造型用、特許文献11にはインクジェット用インクに適用する方法が開示されている。
【0006】
しかしながら、該各特許文献に記載のエポキシ化合物を検討してみると、硬化性、特に高湿度環境下での硬化性、硬化膜の強度、耐溶剤性及び耐水性や、あるいは活性エネルギー線硬化組成物をインクジェットインクとして用いた場合の吐出安定性、特に長期間にわたり保存した後の活性エネルギー線硬化組成物の吐出安定性に問題を抱えていた。
【特許文献1】特開平8−143806号公報
【特許文献2】特開平8−20627号公報
【特許文献3】特開平10−158581号公報
【特許文献4】特開平8−134405号公報
【特許文献5】特開平8−208832号公報
【特許文献6】特開平8−218296号公報
【特許文献7】特開平8−239623号公報
【特許文献8】特開平8−231938号公報
【特許文献9】特開平8−20728号公報
【特許文献10】特開2000−62030号公報
【特許文献11】特開2004−315778号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、その目的は、高湿環境下で印字を行っても光硬化性に優れ、形成した硬化膜の強度が強靭で、耐溶剤性及び耐水性がに優れた活性エネルギー線硬化組成物と、インクジェット用インクに適用した際の吐出安定性に優れるインクジェット用インク組成物及びそれを用いた画像形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の上記目的は、以下の構成により達成される。
【0009】
(1)エポキシ化合物を含有する活性エネルギー線硬化組成物において、脂環式エポキシ環の連結基に、エステル結合を少なくとも3個有する多環式エポキシ化合物を全エポキシ化合物の0.01質量%以上、10質量%以下含有することを特徴とする活性エネルギー線硬化組成物。
【0010】
(2)エポキシ化合物を含有する活性エネルギー線硬化組成物において、脂環式エポキシ環の連結基に、エステル結合を少なくとも3個有する多環式エポキシ化合物を全エポキシ化合物の0.1質量%以上、5質量%以下含有することを特徴とする活性エネルギー線硬化組成物。
【0011】
(3)オキセタン化合物またはビニルエーテル化合物を含有することを特徴とする前記(1)または(2)項に記載の活性エネルギー線硬化組成物。
【0012】
(4)光カチオン重合開始剤を含有することを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれか1項に記載の活性エネルギー線硬化組成物。
【0013】
(5)前記光カチオン重合開始剤が、下記一般式〔1〕〜〔4〕から選ばれる活性エネルギー線照射によりベンゼンを発生しないスルホニウム塩の少なくとも1種であることを特徴とする前記(4)項に記載の活性エネルギー線硬化組成物。
【0014】
【化1】

【0015】
〔式中、R1〜R7はそれぞれ水素原子、または置換基を表し、R1〜R3が同時に水素原子を表すことがなく、R4〜R7が同時に水素原子を表すことがなく、R8〜R11が同時に水素原子を表すことがなく、R12〜R17が同時に水素原子を表すことはない。Xは、非求核性のアニオン残基を表す。〕
(6)前記一般式〔1〕〜〔4〕で表されるスルホニウム塩が、下記一般式〔5〕〜〔13〕から選ばれるスルホニウム塩の少なくとも1種であることを特徴とする前記(5)項に記載の活性エネルギー線硬化組成物。
【0016】
【化2】

【0017】
〔式中、Xは非求核性のアニオン残基を表す。〕
(7)顔料を含有することを特徴とする前記(1)〜(6)のいずれか1項に記載の活性エネルギー線硬化組成物。
【0018】
(8)前記(1)〜(7)のいずれか1項に記載の活性エネルギー線硬化組成物を用いることを特徴とするインクジェット用インク組成物。
【0019】
(9)少なくとも1つのノズルを有するインクジェット記録ヘッドより、前記(8)項に記載のインクジェット用インク組成物を画像様に吐出し、インクジェット記録材料上にインクを着弾させた後、紫外線を照射することにより該インクジェット用インク組成物を硬化させることを特徴とする画像形成方法。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、高湿環境下で印字を行っても光硬化性に優れ、形成した硬化膜の強度が強靭で、耐溶剤性及び耐水性がに優れた活性エネルギー線硬化組成物と、インクジェット用インクに適用した際の吐出安定性に優れるインクジェット用インク組成物及びそれを用いた画像形成方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、詳細に説明する。
【0022】
本発明者は、上記課題に鑑み鋭意検討を行った結果、エポキシ化合物を含有する活性エネルギー線硬化組成物において、脂環式エポキシ環の連結基に、エステル結合を少なくとも3個有する多環式エポキシ化合物を全エポキシ化合物の0.01質量%以上、10質量%以下含有することを特徴とする活性エネルギー線硬化組成物により、高湿環境下で印字を行っても光硬化性に優れ、形成した硬化膜の強度が強靭で、耐溶剤性及び耐水性がに優れた活性エネルギー線硬化組成物を実現できることを見出し、本発明に至った次第である。
【0023】
以下、本発明を更に詳しく説明する。
【0024】
本発明の活性エネルギー線硬化組成物は、脂環式エポキシ環の連結基に、エステル結合を少なくとも3個有する多環式エポキシ化合物を全エポキシ化合物の0.01質量%以上、10質量%以下含有することを特徴とする。また、本発明の効果をより発現するには、それに加えて、特定構造のスルホニウム塩、オキセタン化合物、ビニルエーテル化合物、光カチオン重合開始剤、顔料を含むことが好ましい。
【0025】
《活性エネルギー線硬化化合物》
〔エポキシ化合物〕
本発明に係る脂環式エポキシ環の連結基に、エステル結合を少なくとも3個有する多環式エポキシ化合物について説明する。
【0026】
本発明に係る多環式エポキシ化合物の構造としては、特に限定はされないが、下記一般式〔A〕または〔B〕で表されるエポキシ化合物であることが好ましい。
【0027】
【化3】

【0028】
上記一般式〔A〕において、R1、R2はそれぞれ水素原子また独立に置換基を表す。R100は置換基を表し、m0は0〜2の整数を、r0は1〜3の整数を表す。L0は主鎖にエステル結合を少なくとも3個含む炭素数3〜15のr0+1価の連結基または単結合を表す。
【0029】
【化4】

【0030】
上記一般式〔B〕において、R3、R4はそれぞれ水素原子また独立に置換基を表す。R101は置換基を表し、m1は0〜2の整数を表し、p1、q1はそれぞれ1または2を表す。r1は1〜3の整数を表す。L1は主鎖に酸素原子または硫黄原子を含んでもよい炭素数1〜15のr1+1価の連結基または単結合を表す。
【0031】
上記一般式〔A〕、〔B〕において、R1、R2、R3、R4、R100、R101はそれぞれ置換基を表すが、置換基の例としては、例えば、ハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子、フッ素原子等)、炭素数1〜6個のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基等)、炭素数1〜6個のアルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、iso−プロポキシ基、n−ブトキシ基、tert−ブトキシ基等)、アシル基(例えば、アセチル基、プロピオニル基、トリフルオロアセチル基等)、アシルオキシ基(例えば、アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、トリフルオロアセトキシ基等)、アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基等)等が挙げられる。置換基として好ましいのは、アルキル基、アルコキシ基またはアルコキシカルボニル基である。
【0032】
m0、m1は0〜2の整数を表し、0または1であることが好ましい。
【0033】
0は主鎖にエステル結合を少なくとも3個含む炭素数3〜15のr0+1価の連結基または単結合を、L1は主鎖に酸素原子または硫黄原子を含んでもよい炭素数1〜15のr1+1価の連結基あるいは単結合を表す。
【0034】
主鎖に酸素原子または硫黄原子を含んでもよい炭素数1〜15の2価の連結基の例としては、以下の基及びこれらの基と−O−基、−S−基、−CO−基、−CS−基を複数組み合わせてできる基を挙げることができる。
【0035】
メチレン基[−CH2−]、
エチリデン基[>CHCH3]、
イソプロピリデン[>C(CH32]、
1,2−エチレン基[−CH2CH2−]、
1,2−プロピレン基[−CH(CH3)CH2−]、
1,3−プロパンジイル基[−CH2CH2CH2−]、
2,2−ジメチル−1,3−プロパンジイル基[−CH2C(CH32CH2−]、
2,2−ジメトキシ−1,3−プロパンジイル基[−CH2C(OCH32CH2−]、
2,2−ジメトキシメチル−1,3−プロパンジイル基[−CH2C(CH2OCH32CH2−]、
1−メチル−1,3−プロパンジイル基[−CH(CH3)CH2CH2−]、
1,4−ブタンジイル基[−CH2CH2CH2CH2−]、
1,5−ペンタンジイル基[−CH2CH2CH2CH2CH2−]、
オキシジエチレン基[−CH2CH2OCH2CH2−]、
チオジエチレン基[−CH2CH2SCH2CH2−]、
3−オキソチオジエチレン基[−CH2CH2SOCH2CH2−]、
3,3−ジオキソチオジエチレン基[−CH2CH2SO2CH2CH2−]、
1,4−ジメチル−3−オキサ−1,5−ペンタンジイル基[−CH(CH3)CH2OCH(CH3)CH2−]、
3−オキソペンタンジイル基[−CH2CH2COCH2CH2−]、
1,5−ジオキソ−3−オキサペンタンジイル基[−COCH2OCH2CO−]、
4−オキサ−1,7−ヘプタンジイル基[−CH2CH2CH2OCH2CH2CH2−]、
3,6−ジオキサ−1,8−オクタンジイル基[−CH2CH2OCH2CH2OCH2CH2−]、
1,4,7−トリメチル−3,6−ジオキサ−1,8−オクタンジイル基[−CH(CH3)CH2OCH(CH3)CH2OCH(CH3)CH2−]、
5,5−ジメチル−3,7−ジオキサ−1,9−ノナンジイル基[−CH2CH2OCH2C(CH32CH2OCH2CH2−]、
5,5−ジメトキシ−3,7−ジオキサ−1,9−ノナンジイル基[−CH2CH2OCH2C(OCH32CH2OCH2CH2−]、
5,5−ジメトキシメチル−3,7−ジオキサ−1,9−ノナンジイル基[−CH2CH2OCH2C(CH2OCH32CH2OCH2CH2−]、
4,7−ジオキソ−3,8−ジオキサ−1,10−デカンジイル基[−CH2CH2O−COCH2CH2CO−OCH2CH2−]、
3,8−ジオキソ−4,7−ジオキサ−1,10−デカンジイル基[−CH2CH2CO−OCH2CH2O−COCH2CH2−]、
1,3−シクロペンタンジイル基[−1,3−C58−]、
1,2−シクロヘキサンジイル基[−1,2−C610−]、
1,3−シクロヘキサンジイル基[−1,3−C610−]、
1,4−シクロヘキサンジイル基[−1,4−C610−]、
2,5−テトラヒドロフランジイル基[2,5−C46O−]、
p−フェニレン基[−p−C64−]、
m−フェニレン基[−m−C64−]、
α,α′−o−キシリレン基[−o−CH2−C64−CH2−]、
α,α′−m−キシリレン基[−m−CH2−C64−CH2−]、
α,α′−p−キシリレン基[−p−CH2−C64−CH2−]、
フラン−2,5−ジイル−ビスメチレン基[2,5−CH2−C42O−CH2−]、
チオフェン−2,5−ジイル−ビスメチレン基[2,5−CH2−C42S−CH2−]、
イソプロピリデンビス−p−フェニレン基[−p−C64−C(CH32−p−C64−]、
3価以上の連結基としては、以上に挙げた2価の連結基から任意の部位の水素原子を必要なだけ除いてできる基及びそれらと−O−基、−S−基、−CO−基、−CS−基を複数組み合わせてできる基を挙げることができる。
【0036】
0、L1はそれぞれ置換基を有していてもよい。置換基の例としては、例えば、ハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子、フッ素原子等)、炭素数1〜6個のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基等)、炭素数1〜6個のアルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、iso−プロポキシ基、n−ブトキシ基、tert−ブトキシ基等)、アシル基(例えば、アセチル基、プロピオニル基、トリフルオロアセチル基等)、アシルオキシ基(例えば、アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、トリフルオロアセトキシ基等)、アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基等)等が挙げられる。置換基として好ましいのは、アルキル基、アルコキシ基またはアルコキシカルボニル基である。
【0037】
0としては主鎖にエステル結合を少なくとも3個含む炭素数3〜8の2価の連結基が好ましい。
【0038】
1としては主鎖に酸素原子または硫黄原子を含んでもよい炭素数1〜8の2価の連結基が好ましく、主鎖が炭素のみからなる炭素数1〜5の2価の連結基がより好ましい。
【0039】
p1、q1はそれぞれ1または2の整数を表し、p1+q1が2以上であるのが好ましい。
【0040】
r0、r1はそれぞれ1〜3の整数を表し、1が好ましい。
【0041】
以下に、好ましいエポキシ化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0042】
【化5】

【0043】
【化6】

【0044】
【化7】

【0045】
【化8】

【0046】
【化9】

【0047】
【化10】

【0048】
【化11】

【0049】
【化12】

【0050】
【化13】

【0051】
【化14】

【0052】
【化15】

【0053】
【化16】

【0054】
【化17】

【0055】
本発明のエポキシ化合物の合成は、例えば、米国特許第2,745,847号、同第2,750,395号、同第2,853,498号、同第2,853,499号、同第2,863,881号等に記載の方法に準じて行うことができる。
【0056】
本発明の活性エネルギー線硬化組成物では、本発明に係る脂環式エポキシ環の連結基に、エステル結合を少なくとも3個有する多環式エポキシ化合物を全エポキシ化合物の0.01質量%以上、10質量%以下含有することを特徴とし、好ましくは0.1質量%以上、5質量%以下である。
【0057】
〔オキセタン化合物〕
本発明の活性エネルギー線硬化組成物では、本発明に係る脂環式エポキシ環の連結基に、エステル結合を少なくとも3個有する多環式エポキシ化合物と共に、オキセタン化合物を用いることが好ましい。
【0058】
本発明に用いられるオキセタン化合物は、分子内に1以上のオキセタン環を有する化合物である。具体的には、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン(東亜合成(株)製、商品名OXT101等)、1,4−ビス[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシメチル]ベンゼン(同OXT121等)、3−エチル−3−(フェノキシメチル)オキセタン(同OXT211等)、ジ(1−エチル−3−オキセタニル)メチルエーテル(同OXT221等)、3−エチル−3−(2−エチルヘキシロキシメチル)オキセタン(同OXT212等)等を好ましく用いることができ、特に、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、3−エチル−3−(フェノキシメチル)オキセタン、ジ(1−エチル−3−オキセタニル)メチルエーテルを好ましく用いることができる。これらは単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0059】
本発明に係るオキセタン化合物は、活性エネルギー線硬化組成物中に30〜95質量%、好ましくは50〜80質量%の範囲で配合される。
【0060】
本発明の活性エネルギー線硬化組成物には、本発明のエポキシ化合物以外のオキシラン基含有化合物も併用することができる。これは分子中に1個以上の下式で示されるオキシラン環を有する化合物である。
【0061】
【化18】

【0062】
通常、エポキシ樹脂として用いられている、モノマー、オリゴマーまたはポリマーのいずれも使用可能である。具体的には、従来公知の芳香族エポキシド、脂環族エポキシド及び脂肪族エポキシドが挙げられる。なお、本発明でいうエポキシドとは、モノマーまたはそのオリゴマーを意味する。これら化合物は一種または必要に応じて二種以上用いてもよい。
【0063】
芳香族エポキシドとして好ましいものは、少なくとも1個の芳香族核を有する多価フェノールあるいはそのアルキレンオキサイド付加体とエピクロルヒドリンとの反応によって製造されるジまたはポリグリシジルエーテルであり、例えば、ビスフェノールAあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジまたはポリグリシジルエーテル、水素添加ビスフェノールAあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジまたはポリグリシジルエーテル、ならびにノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられる。ここでアルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド等が挙げられる。
【0064】
脂環式エポキシドとしては、少なくとも1個のシクロへキセンまたはシクロペンテン環等のシクロアルカン環を有する化合物を、過酸化水素、過酸等の適当な酸化剤でエポキシ化することによって得られる、シクロヘキセンオキサイドまたはシクロペンテンオキサイド含有化合物が好ましく、具体例としては、例えば、ダイセル化学工業(株)製、セロキサイド2021、セロキサイド2021A、セロキサイド2021P、セロキサイド2080、セロキサイド2000、エポリードGT301、エポリードGT302、エポリードGT401、エポリードGT403、EHPE−3150、EHPEL3150CE、ユニオンカーバイド社製、UVR−6105、UVR−6110、UVR−6128、UVR−6100、UVR−6216、UVR−6000等を挙げることができる。
【0065】
脂肪族エポキシドの好ましいものとしては、脂肪族多価アルコールあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジまたはポリグリシジルエーテル等があり、その代表例としては、エチレングリコールのジグリシジルエーテル、プロピレングリコールのジグリシジルエーテルまたは1,6−ヘキサンジオールのジグリシジルエーテル等のアルキレングリコールのジグリシジルエーテル、グリセリンあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジまたはトリグリシジルエーテル等の多価アルコールのポリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテル等のポリアルキレングリコールのジグリシジルエーテル等が挙げられる。ここでアルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド等が挙げられる。
【0066】
更に、これらの化合物の他に、脂肪族高級アルコールのモノグリシジルエーテル及びフェノール、クレゾールのモノグリシジルエーテル等も用いることができる。これらのエポキシドのうち、速硬化性を考慮すると、芳香族エポキシド及び脂環式エポキシドが好ましく、特に脂環式エポキシドが好ましい。
【0067】
特に好ましくは、特開2004−315778号公報に記載の脂環式エポキシドが用いられる。これらオキシラン基含有化合物は、本発明の活性エネルギー線硬化組成物中、0〜50質量%、好ましくは0〜30質量%配合される。
【0068】
〔ビニルエーテル化合物〕
本発明の活性エネルギー線硬化組成物では、本発明に係る脂環式エポキシ環の連結基に、エステル結合を少なくとも3個有する多環式エポキシ化合物と共に、ビニルエーテル化合物を用いることが好ましい。
【0069】
本発明の活性エネルギー線硬化組成物に含まれるビニルエーテル化合物は、例えば、エチレングリコールジビニルエーテル、エチレングリコールモノビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールモノビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ジプロピレングリコールジビニルエーテル、ブタンジオールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、ヒドロキシエチルモノビニルエーテル、ヒドロキシノニルモノビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル等のジまたはトリビニルエーテル化合物、エチルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、イソプロペニルエーテル−o−プロピレンカーボネート、ドデシルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル等のモノビニルエーテル化合物等が挙げられる。
【0070】
これらのビニルエーテル化合物のうち、硬化性、密着性、表面硬度を考慮すると、ジまたはトリビニルエーテル化合物が好ましく、特にジビニルエーテル化合物が好ましい。本発明では上記ビニルエーテル化合物の1種を単独で使用してもよいが、2種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0071】
ビニルエーテル化合物は任意の配合成分であり、配合させることによって活性エネルギー線硬化組成物に要求される粘度に調整することができる。また、硬化速度の向上もできる。ビニルエーテル化合物はオキシラン基含有化合物及びオキセタン環含有化合物からなる液状成分中、0〜40質量%、好ましくは0〜20質量%が配合される。
【0072】
〔光カチオン重合開始剤〕
本発明の活性エネルギー線硬化組成物では、本発明に係る脂環式エポキシ環の連結基に、エステル結合を少なくとも3個有する多環式エポキシ化合物と共に、光カチオン重合開始剤を用いることが好ましい。
【0073】
本発明で用いられる光カチオン重合開始剤としては、アリールスルホニウム塩誘導体(例えば、ユニオン・カーバイド社製のサイラキュアUVI−6990、サイラキュアUVI−6974、旭電化工業社製のアデカオプトマーSP−150、アデカオプトマーSP−152、アデカオプトマーSP−170、アデカオプトマーSP−172)、アリルヨードニウム塩誘導体(例えば、ローディア社製のRP−2074)、アレン−イオン錯体誘導体(例えば、チバガイギー社製のイルガキュア261)、ジアゾニウム塩誘導体、トリアジン系開始剤及びその他のハロゲン化物等の酸発生剤が挙げられる。光カチオン重合開始剤は、脂環式エポキシ基を有する化合物100質量部に対して、0.2〜20質量部の比率で含有させることが好ましい。光カチオン重合開始剤の含有量が0.2質量部未満では硬化物を得ることが困難であり、20質量部を越えて含有させてもさらなる硬化性向上効果はない。これら光カチオン重合開始剤は、1種または2種以上を選択して使用することができる。
【0074】
本発明においては、光カチオン重合開始剤として、前記一般式〔1〕〜〔4〕で表される活性エネルギー線照射によりベンゼンを発生しないスルホニウム塩が好適に用いられる。「活性エネルギー線照射によりベンゼンを発生しない」とは、実質的にベンゼンを発生しないことを指し、具体的には、インク組成物中にスルホニム塩(光酸発生剤)を5質量%含有したインクを用いて厚さ15μm、面積約100m2の画像を印字し、インク膜面を30℃に保った状態で光酸発生剤が十分に分解する量の活性エネルギー線を照射した際に発生するベンゼンの量が、5μg以下の極微量あるいは皆無であることを指す。
【0075】
スルホニム塩としては、前記一般式〔1〕〜〔4〕で表されるスルホニウム塩化合物が好ましく、S+と結合するベンゼン環に置換基を持つものであれば、上記条件を満たす。
【0076】
一般式〔1〕〜〔4〕において、R1〜R17はそれぞれ水素原子、または置換基を表し、R1〜R3が同時に水素原子を表すことがなく、R4〜R7が同時に水素原子を表すことがなく、R8〜R11が同時に水素原子を表すことがなく、R12〜R17が同時に水素原子を表すことはない。
【0077】
1〜R17で表される置換基としては、好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基、プロピル基、ブトキシ基、ヘキシルオキシ基、デシルオキシ基、ドデシルオキシ基等のアルコキシ基、アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、デシルカルボニルオキシ基、ドデシルカルボニルオキシ基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、ベンゾイルオキシ基等のカルボニル基、フェニルチオ基、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基等を挙げることができる。
【0078】
Xは、非求核性のアニオン残基を表し、例えば、F、Cl、Br、I等のハロゲン原子、B(C654、R18COO、R19SO3、SbF6、AsF6、PF6、BF4等を挙げることができる。ただし、R18及びR19は、それぞれメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基等で置換されていもよいアルキル基もしくはフェニル基を表す。この中でも、安全性の観点から、B(C654、PF6が好ましい。
【0079】
上記化合物は、THE CHEMICAL SOCIETY OF JAPAN Vol.71 No.11,1998年、有機エレクトロニクス材料研究会編,「イメージング用有機材料」,ぶんしん出版(1993年)に記載の光酸発生剤と同様、公知の方法にて容易に合成することができる。
【0080】
本発明においては、一般式〔1〕〜〔4〕で表されるスルホニウム塩が、前記一般式〔5〕〜〔13〕から選ばれるスルホニウム塩の少なくとも1種であることが特に好ましい。Xは非求核性のアニオン残基を表し、前述と同様である。
【0081】
光重合促進剤としては、アントラセン、アントラセン誘導体(例えば、旭電化工業社製のアデカオプトマーSP−100)が挙げられる。これらの光重合促進剤は1種または複数を組み合わせて使用することができる。
【0082】
〔顔料〕
本発明の活性エネルギー線硬化組成物では、色材として顔料を含有することが好ましく、本発明の活性エネルギー線硬化組成物に含まれる顔料としては、有機顔料及び/または無機顔料等の種々のものが使用できる。具体的には、酸化チタン、亜鉛華、鉛白、リトボン及び酸化アンチモン等の白色顔料、アニリンブラック、鉄黒及びカーボンブラック等の黒色顔料、黄鉛、黄色酸化鉄、ハンザイエロー(100、50、30等)、チタンイエロー、ベンジンイエロー及びパーマネントイエロー等の黄色顔料、クロームバーミロオン、パーマネントオレンジ、バルカンファーストオレンジ及びインダンスレンブリリアントオレンジ等の橙色顔料、酸化鉄、パーマネントブラウン及びパラブラウン等の褐色顔料、ベンガラ、カドミウムレッド、アンチモン朱、パーマネントレッド、ローダミンレーキ、アリザリンレーキ、チオインジゴレッド、PVカーミン、モノライトファーストレッド及びキナクリドン系赤色顔料等の赤色顔料、コバルト紫、マンガン紫、ファーストバイオレット、メチルバイオレットレーキ、インダンスレンブリリアントバイオレット、ジオキサジンバイオレット等の紫色顔料、群青、紺青、コバルトブルー、アルカリブルーレーキ、無金属フタロシアニンブルー、銅フタロシアニンブルー、インダンスレンブルー及びインジゴ等の青色顔料、クロムグリーン、酸化クロム、エメラルドグリーン、ナフトールグリーン、グリーンゴールド、アシッドグリーンレーキ、マラカイトグリーンレーキ、フタロシアニングリーン及びポリクロルブロム銅フタロシアニン等の緑色顔料の他、各種螢光顔料、金属粉顔料、体質顔料等が挙げられる。
【0083】
本発明において、顔料は十分な濃度及び十分な耐光性を得るため、活性エネルギー線硬化組成物中に3〜50質量%の範囲で含まれることが好ましい。
【0084】
《その他の添加剤》
本発明の活性エネルギー線硬化組成物には、上記成分の他、用途に応じて活性エネルギー線硬化型組成物中、50質量%までの量で以下の材料を加えることができる。
【0085】
印刷インキ、缶、プラスチック、紙、木材等のコーティング塗料及び接着剤用途の場合は、無機充填剤、軟化剤、酸化防止剤、老化防止剤、安定剤、粘着付与樹脂、レベリング剤、消泡剤、可塑剤、染料、処理剤、粘度調節剤、有機溶剤、潤滑性付与剤及び紫外線遮断剤のような不活性成分を配合することができる。無機充填材の例としては、例えば、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化アンチモン、酸化カルシウム、酸化クロム、酸化スズ、酸化チタン、酸化鉄、酸化銅、酸化鉛、酸化ビスマス、酸化マグネシウム及び酸化マンガン等の金属/非金属酸化物、水酸化アルミニウム、水酸化第一鉄及び水酸化カルシウム等の水酸化物、炭酸カルシウム及び硫酸カルシウム等の塩類、二酸化ケイ素等のケイ素化合物、カオリン、ベントナイト、クレー及びタルク等の天然顔料、天然ゼオライト、大谷石、天然雲母及びアイオナイト等の鉱物類、人工雲母及び合成ゼオライト等の合成無機物、並びにアルミニウム、鉄及び亜鉛等の各種金属等が挙げられる。これらの中には、前記顔料と重複するものもあるが、これらは必要に応じて前記必須成分の顔料に加え、組成物に充填材として配合させることもできる。潤滑性付与剤は、得られる塗膜の潤滑性を向上させる目的で配合されるものであり、例えば、ポリオール化合物と脂肪酸とのエステル化物である脂肪酸エステルワックス、シリコン系ワックス、フッ素系ワックス、ポリオレフィンワックス、動物系ワックス、植物系ワックス等のワックス類を挙げることができる。粘着付与樹脂としては、例えば、ロジン酸、重合ロジン酸及びロジン酸エステル等のロジン類、テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、芳香族炭化水素樹脂、脂肪族飽和炭化水素樹脂並びに石油樹脂等が挙げられる。
【0086】
光学的立体造型用途の場合は、さらに熱可塑性高分子化合物を添加することができる。熱可塑性高分子化合物としては、室温において液体または固体であり、室温において樹脂組成物と均一に混和する高分子化合物である。かかる熱可塑性高分子化合物の代表的なものとしては、ポリエステル、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、ポリブタジエン、ポリカーボナート、ポリスチレン、ポリビニルエーテル、ポリビニルブチラール、ポリアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリブテン、スチレンブタジエンブロックコポリマー水添物等が挙げられる。また、これらの熱可塑性高分子化合物に水酸基、カルボキシル基、ビニル基、エポキシ基等の官能基が導入されたものを用いることもできる。かかる熱可塑性高分子化合物について本発明に対して望ましい数平均分子量は1000〜500000であり、さらに好ましい数平均分子量は5000〜100000である。この範囲外であっても使用できないわけではないが、あまり低分子量であると強度を改善するという効果が十分得られず、あまり高分子量であっては樹脂組成物の粘度が高くなり、光学的立体造形用樹脂組成物として好ましいものとは言えなくなる。
【0087】
活性エネルギー線硬化組成物の調合は、これらの材料を十分混合できれば特に混合方法に制限はない。具体的な混合方法としては、例えば、プロペラの回転に伴う撹拌力を利用する撹拌法、ロール練り混込み法及びサンドミル等の通常の分散機等が挙げられる。
【0088】
《活性エネルギー線、照射方法》
本発明の活性エネルギー線硬化組成物を硬化させる活性エネルギー線としては、紫外線、電子線、X線、放射線、高周波等があり、紫外線が経済的に最も好ましい。紫外線の光源としては、紫外線レーザ、水銀ランプ、キセノンランプ、ナトリウムランプ、アルカリ金属ランプ等があるが、集光性を必要とする場合はレーザ光線が特に好ましい。
【0089】
用途による使用方法の概略を以下に記載する。
【0090】
印刷インキ用途の場合は、本発明の組成物は、紙、フィルムまたはシート等を基材として、種々の印刷法、例えばオフセット印刷等の平版印刷、凸版印刷、シルクスクリーン印刷またはグラビア印刷等で使用することができる。組成物は、印刷の後、活性エネルギー線を照射して硬化させる。活性エネルギー線としては、紫外線、X線及び電子線等が挙げられる。紫外線により硬化させる場合に使用できる光源としては、さまざまなものを使用することができ、例えば加圧あるいは高圧水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、無電極放電ランプまたはカーボンアーク灯等が挙げられる。電子線により硬化させる場合には、種々の照射装置が使用でき、例えばコックロフトワルトシン型、バンデグラフ型または共振変圧器型等が挙げられ、電子線としては50〜1000eVのエネルギーを持つものが好ましく、より好ましくは100〜300eVである。本発明では、安価な装置を使用できることから、組成物の硬化に紫外線を使用することが好ましい。
【0091】
缶、プラスチック、紙、木材等のコーティング塗料用途の場合は、本発明の活性エネルギー線硬化組成物は、種々の金属材料、プラスチック材料、紙、木材等の被覆に適用でき、金属材料としては、例えば電気陽メッキ鋼板、チンフリースチール、アルミニウム等、プラスチック材料としては、例えばポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンテレフタラート、塩化ビニル樹脂及びABS樹脂等、例えばセルロースを主成分とする普通紙の他に、その表面がポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリカーボネートまたはポリイミド等で処理された紙等、例えばサクラ、アカガシ、シタン、カリン、マホガニー、ラワン、クワ、ツゲ、カヤ、キハダ、ホウ、カツラ、ケヤキ、クルミ、クス、ナラ、チーク、カキ、神代カツラ、神代スギ、クロガキ、コクタン、シマコクタン、トチ、カエデ、ヤナギ及びトネリコ等の天然木材をはじめ、合板、積層板、パーティクルボード及びプリント合板等の加工木材、並びにこれら天然または加工木材から製造される床材、家具類及び壁材等を挙げることができ、これらは板状でもフェイム状でもよい。本発明の組成物の基材表面上の膜厚も、使用する用途に応じて適宜選択すればよいが、好ましい膜厚としては1〜50μmであり、より好ましくは3〜20μmである。本発明の組成物の使用方法も特に限定されず、従来より知られた方法に従って行えばよく、例えば、ディッピング、フローコート、スプレー、バーコート、グラビアコート、ロールコート、ブレードコートまたはエアーナイフコート等の方法により、塗工機械を使用して、基材表面上に本発明の組成物を塗布した後、活性エネルギー線を照射して硬化する方法等がある。活性エネルギー線としては、紫外線、X線及び電子線等が挙げられる。紫外線により硬化させる場合に使用できる光源としては、さまざまなものを使用することができ、例えば加圧あるいは高圧水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、無電極放電ランプまたはカーボンアーク灯等が挙げられる。電子線により硬化させる場合には、種々の照射装置が使用でき、例えばコックロフトワルトシン型、バンデグラフ型または共振変圧器型等が挙げられ、電子線としては50〜1000eVのエネルギーを持つものが好ましく、より好ましくは100〜300eVである。本発明では、安価な装置を使用できることから、組成物の硬化に紫外線を使用することが好ましい。本発明の組成物をプラスチック材料に塗工した後、必要に応じて、成形、印刷または転写等の加工を行うこともできる。成形を行う場合には、例えば本発明の組成物塗膜を有する基材を適当な温度に加熱した後、真空成形、真空圧空成形、圧空成形またはマット成形等の方法を用いて行う方法や、干渉縞等の凸凹形状をCDやレコードの複製のように、本発明の組成物塗膜上にエンボス成形する場合のような塗膜層のみの成形を行う方法等が挙げられる。印刷を行う場合は、塗膜上に通常の印刷機を使用し、通常の方法で印刷する。転写を行う場合は、例えばポリエチレンテレフタラートフィルムのような基材に本発明の組成物を塗布し、必要であれば前述の印刷やエンボス成形等を行い、接着層を塗布後、他の基材に転写する。
【0092】
接着剤用途の場合は、本発明の組成物の使用方法は、特に限定されず、ラミネートの製造において通常行われている方法に従えばよい。例えば、本発明の組成物を第1の薄層被着体に塗工し、必要に応じて乾燥させた後、これに第2の薄層被着体を貼り合わせ、活性エネルギー線の照射を行う方法等が挙げられる。ここで、薄層被着体の少なくとも一方は、プラスチックフィルムの必要がある。薄層被着体としては、プラスチックフィルム、紙または金属箔等が挙げられる。ここでプラスチックフィルムとは、活性エネルギー線を透過できるものをいい、膜厚としては使用する薄層被着体及び用途に応じて選択すればよいが、好ましくは厚さが0.2mm以下である。プラスチックフィルムとしては、例えばポリ塩化ビニル樹脂やポリ塩化ビニリデン、セルロース系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ABS樹脂、ポリアミド、ポリエステル、ポリウレタン、ポリビニルアルコール、エチレン−酢酸ビニル共重合体及び塩素化ポリプロピレン等が挙げられる。また、紙としては、模造紙、上質紙、クラフト紙、アートコート紙、キャスターコート紙、純白ロール紙、パーチメント紙、耐水紙、グラシン紙及び段ボール紙等を挙げることができ。金属箔としては、例えばアルミニウム箔等を挙げることができる。薄層被着体に対する塗工は、従来知られている方法に従えばよく、ナチュラルコーター、ナイフベルトコーター、フローティングナイフ、ナイフオーバーロール、ナイフオンブランケット、スプレー、ディップ、キスロール、スクイーズロール、リバースロール、エアブレード、カーテンフローコーター及びグラビアコーター等の方法が挙げられる。また、本発明の活性エネルギー線硬化組成物の塗布厚さは、使用する薄層被着体及び用途に応じて選択すればよいが、好ましくは0.1〜1000μmであり、より好ましくは1〜50μmである。活性エネルギー線としては、紫外線、X線及び電子線等が挙げられる。紫外線により硬化させる場合に使用できる光源としては、さまざまなものを使用することができ、例えば加圧あるいは高圧水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、無電極放電ランプまたはカーボンアーク灯等が挙げられる。電子線により硬化させる場合には、使用できるEB照射装置としては公知のものが用いられる。電子線により硬化させる場合には、種々の照射装置が使用でき、例えば、コックロフトワルトシン型、バンデグラフ型または共振変圧器型等が挙げられ、電子線としては50〜1000eVのエネルギーを持つものが好ましく、より好ましくは100〜300eVである。本発明では、安価な装置を使用できることから、組成物の硬化に紫外線を使用することが好ましい。
【0093】
光学的立体造型用途の場合は、本発明の活性エネルギー線硬化組成物の任意の表面に、エネルギー線を照射し、活性エネルギー線硬化組成物のエネルギー線照射表面を硬化させて所望の厚さの硬化層を形成し、硬化層上に前述の活性エネルギー線硬化組成物をさらに供給して、これを同様に硬化させて前述の硬化層と連続した硬化層を得る積層操作を行い、この操作を繰り返すとによって三次元の立体物を得る。
【0094】
さらに図を参照して具体的に説明すると、図1に示すように、NCテーブル2を組成物5中に位置させ、テーブル2上に所望ピッチに相当する深度の未硬化組成物層を形成する。次にCADデータを元に制御部1からの信号に従って光学系3を制御してレーザー4からのレーザー光線6を未硬化組成物表面に走査照射して第1硬化層7を得る(図2参照)。次に制御部1からの信号に従ってNCテーブル2を降下させ、第1硬化層7上にさらに所望ピッチに相当する深度の未硬化組成物層を形成する(図3参照)。同様にレーザー光線6を走査照射して第2硬化層8を得る(図4参照)。以下同様にして積層する。
【0095】
《インクジェット用インク組成物》
本発明のインクジェット用インク組成物では、本発明の活性エネルギー線硬化組成物を適用することを特徴とする。
【0096】
インクジェットインク用途の場合は、インクジェット用インク組成物は、本発明の活性エネルギー線硬化組成物、顔料分散剤と共に、顔料をサンドミル等の通常の分散機を用いてよく分散することにより製造される。予め、顔料高濃度の濃縮液を調製しておき、活性エネルギー線硬化組成物で希釈することが好ましい。通常の分散機による分散でも充分な分散が可能であり、このため、過剰な分散エネルギーがかからず、多大な分散時間を必要としないため、インク成分の分散時の変質を招きにくく、安定性に優れたインクが調製される。インクは、孔径3μm以下、更には1μm以下のフィルターにて濾過することが好ましい。
【0097】
顔料の分散は、顔料粒子の平均粒径を0.08〜0.5μmとすることが好ましく、最大粒径は0.3〜10μm、好ましくは0.3〜3μmとなるよう、顔料、分散剤、分散媒体の選定、分散条件、ろ過条件を適宜設定する。この粒径管理によって、ヘッドノズルの詰まりを抑制し、インクの保存安定性、インク透明性および硬化の感度を維持することができる。
【0098】
本発明のインクジェット用インク組成物においては、色材濃度として、インク全体の1〜10質量%であることが好ましい。
【0099】
インクジェット用インク組成物は、25℃での粘度が5〜50mPa・sと高めに調整することが好ましい。25℃での粘度が5〜50mPa・sのインクは、特に通常の4〜10KHzの周波数を有するヘッドから、10〜50KHzの高周波数のヘッドにおいても安定した吐出特性を示す。粘度が5mPa・s未満の場合は、高周波数のヘッドにおいて、吐出の追随性の低下が認められ、50mPa・sを越える場合は、加熱による粘度の低下機構をヘッドに組み込んだとしても吐出特性そのものの低下を生じ、吐出の安定性が不良となり、全く吐出できなくなる。
【0100】
また、インクジェット用インク組成物は、ピエゾヘッドにおいては、10μS/cm以下の電導度とし、ヘッド内部での電気的な腐食のないインクとすることが好ましい。また、コンティニュアスタイプにおいては、電解質による電導度の調整が必要であり、この場合には、0.5mS/cm以上の電導度に調整する必要がある。
【0101】
インクの25℃における表面張力が、25〜40mN/mの範囲にあることが好ましい。25℃におけるインクの表面張力が25mN/m未満では、安定した出射が得られにくく、また40mN/mを越えると所望のドット径を得ることができない。25〜40mN/mの範囲外では、本発明のように、インクの粘度や含水率を制御しながら出射、光照射しても、様々な支持体に対して均一なドット径を得ることが困難となる。
【0102】
表面張力を調整するために、必要に応じて、界面活性剤を含有させてもよい。本発明に使用される界面活性剤としては、例えば、ジアルキルスルホコハク酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、脂肪酸塩類等のアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル類、アセチレングリコール類、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類等のノニオン性界面活性剤、アルキルアミン塩類、第4級アンモニウム塩類等のカチオン性界面活性剤、重合性基を有する界面活性化合物などが挙げられる。これらの中で特に、シリコーン変性アクリレート、フッ素変性アクリレート、シリコーン変性エポキシ、フッ素変性エポキシ、シリコーン変性オキセタン、フッ素変性オキセタンなど、不飽和結合やオキシラン、オキセタン環など重合性基を有する界面活性化合物が好ましい。
【0103】
インクジェット用インク組成物には、上記説明した以外に様々な添加剤を用いることができる。例えば、レベリング添加剤、マット剤、膜物性を調整するためのポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ゴム系樹脂、ワックス類を添加することが出来る。記録媒体との密着性を改善するため、極微量の有機溶剤を添加することも有効である。この場合、耐溶剤性やVOCの問題が起こらない範囲での添加が有効であり、その使用量は0.1〜5%の範囲であり、好ましくは0.1〜3%である。また、ラジカル重合性モノマーと開始剤を組み合わせ、ラジカル・カチオンのハイブリッド型硬化インクとすることも可能である。
【0104】
《画像形成方法》
本発明の画像形成方法においては、少なくとも1つのノズルを有するインクジェット記録ヘッドより、上記説明した本発明のインクジェット用インク組成物を画像様に吐出し、インクジェット記録材料上にインクを着弾させた後、紫外線を照射することによりインクジェット用インク組成物を硬化させることを特徴とする。
【0105】
本発明の画像形成方法においては、少なくとも1つのノズルを有するインクジェット記録ヘッドより、上記説明した本発明のインクジェット用インク組成物を画像様に吐出し、インクジェット記録材料上にインクを着弾させた後、紫外線を照射することによりインクジェット用インク組成物を硬化させることを特徴とする。
【0106】
本発明の画像形成方法においては、インク出射時にはインクをインクジェットノズルごと加温し、インク液を低粘度させることが好ましい。加熱温度としては、30〜80℃、好ましくは35〜60℃である。
【0107】
本発明において、インクが着弾し、紫外線を照射して硬化した後の総インク膜厚が2〜20μmであることが好ましい。スクリーン印刷分野の紫外線硬化型インクジェット記録では、総インク膜厚が20μmを越えているのが現状であるが、記録材料が薄いプラスチック材料であることが多い軟包装印刷分野では、前述した記録材料のカール・しわの問題でだけでなく、印刷物全体のこし・質感が変わってしまうという問題が有るため使えない。また、本発明では、各ノズルより吐出する液滴量が2〜15plであることが好ましい。
【0108】
本発明においては、高精細な画像を形成するためには、照射タイミングができるだけ早い方が好ましいが、本発明においては、インクの粘度または含水率が好ましい状態となるタイミングで光照射を開始することが好ましい。
【0109】
詳しくは、発生光線の照射条件として、インク着弾後0.001〜2.0秒の間に紫外線照射を開始することが好ましく、より好ましくは0.001〜0.4秒である。また、0.1〜3秒後、好ましくは0.2〜1秒以内に、インクの流動性が失われる程度まで光照射を行なった後、終了させることが好ましい。上記条件とすることにより、ドット径の拡大やドット間の滲みを防止することができる。
【0110】
紫外線の照射方法として、その基本的な方法が特開昭60−132767号公報に開示されている。これによると、記録ヘッドユニットの両側に光源を設け、シャトル方式で記録ヘッドと光源を走査する。照射は、インク着弾後、一定時間を置いて行われることになる。更に、駆動を伴わない別光源によって硬化を完了させる。米国特許第6,145,979号明細書では、照射方法として、光ファイバーを用いた方法や、コリメートされた光源を記録ヘッドユニット側面に設けた鏡面に当て、記録部へUV光を照射する方法が開示されている。本発明の画像形成方法においては、これらのいずれの照射方法も用いることができる。
【0111】
また、紫外線を照射を2段階に分け、まずインク着弾後0.001〜2.0秒の間に前述の方法で紫外線を照射し、かつ、全印字終了後、更に紫外線を照射する方法も好ましい態様の1つである。紫外線の照射を2段階に分けることで、よりインク硬化の際に起こる記録材料の収縮を抑えることが可能となる。
【0112】
紫外線照射で用いる光源の例としては、水銀アークランプ、キセノンアークランプ、螢光ランプ、炭素アークランプ、タングステン−ハロゲン複写ランプ、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、無電極UVランプ、低圧水銀ランプ、UVレーザー、キセノンフラッシュランプ、捕虫灯、ブラックライト、殺菌灯、冷陰極管、LEDをなどがあるが、これらに限定されないが、この中でも蛍光管が低エネルギー・低コストであり、好ましい。光源波長としては250〜370nm、好ましくには270〜320nmに発光波長のピークがある光源が、感度の点で好ましい。照度は、1〜3000mW/cm2、好ましくは1〜200mW/cm2である。また、電子線により硬化させる場合には、通常300eVの以下のエネルギーの電子線で硬化させるが、1〜5Mradの照射量で瞬時に硬化させることも可能である。
【0113】
本発明のインクジェット用インク組成物を用いて、インクジェット記録材料(基材ともいう)への画像印字を行うが、インクジェット記録材料としては、従来各種の用途で使用されている広汎な合成樹脂を全て用いることができ、具体的には、例えば、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリウレタン、ポリプロピレン、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリブタジエンテレフタレート等が挙げられ、これらの合成樹脂基材の厚みや形状は何ら限定されない。
【0114】
本発明で用いることのできる基材としては、通常の非コート紙、コート紙などの他に、非吸収性支持体を用いることができるが、その中でも、基材として非吸収性支持体を用いることが好ましい。
【0115】
本発明においては、非吸収性支持体としては、各種非吸収性のプラスチックおよびそのフィルムを用いることができ、各種プラスチックフィルムとしては、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム、OPS(延伸ポリスチレン)フィルム、OPP(延伸ポリプロピレン)フィルム、ONy(延伸ナイロン)フィルム、PVC(ポリ塩化ビニル)フィルム、PE(ポリエチレン)フィルム、TAC(トリアセチルセルロース)フィルムを挙げることができる。その他のプラスチックとしては、ポリカーボネート、アクリル樹脂、ABS、ポリアセタール、PVA、ゴム類などが使用できる。また、金属類やガラス類にも適用可能である。これらの記録材料の中でも、特に熱でシュリンク可能な、PETフィルム、OPSフィルム、OPPフィルム、ONyフィルム、PVCフィルムへ画像を形成する場合に本発明の構成は、有効となる。これらの基材はインクの硬化収縮、硬化反応時の発熱などにより、フィルムのカール、変形が生じやすいばかりでなく、インク膜が基材の収縮に追従し難い。
【0116】
これら、各種プラスチックフィルムの表面エネルギーは大きく異なり、インクジェット記録材料によってインク着弾後のドット径が変わってしまうことが、従来から問題となっていた。本発明の構成では、表面エネルギーの低いOPPフィルム、OPSフィルムや表面エネルギーの比較的大きいPETまでを含むが、基材として、濡れ指数が40〜60mN/mであることが好ましい。
【0117】
本発明において、包装の費用や生産コスト等のインクジェット記録材料のコスト、プリントの作成効率、各種のサイズのプリントに対応できる等の点で、長尺(ウェブ)なインクジェット記録材料を使用する方が有利である。
【実施例】
【0118】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」あるいは「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」あるいは「質量%」を表す。
【0119】
《活性エネルギー線硬化組成物1〜13の調製》
表1に記載の光カチオン重合開始剤を除く各添加剤を混合した後、サンドミルに入れて分散を4時間行い、活性エネルギー線硬化組成物原液を調製した。次いで、光カチオン重合開始剤を、活性エネルギー線硬化組成物原液に添加し、光カチオン重合開始剤が溶解するまで、穏やかに混合させた後、これをメンブランフィルターで加圧濾過し、活性エネルギー線硬化組成物1〜13を得た。
【0120】
なお、表1に記載の各添加剤の調製方法を以下に示す。数字は質量部を表す。
【0121】
(顔料P1の調製)
粗製銅フタロシアニン(東洋インク製造社製「銅フタロシアニン」)の250部、塩化ナトリウムの2500部及びポリエチレングリコール(東京化成社製「ポリエチレングリコール300」)の160部を、スチレン製3.79L(1ガロン)ニーダー(井上製作所社製)に仕込み、3時間混練した。次に、この混合物を2.5Lの温水に投入し、約80℃に加熱しながらハイスピードミキサーで約1時間攪拌しスラリー状とした後、濾過、水洗を5回繰り返して塩化ナトリウム及び溶剤を除き、次いでスプレードライにより乾燥して処理済み顔料を得た。
【0122】
(オキセタン化合物)
OXT221:オキセタン環含有化合物(東亞合成社製)
(オキシラン化合物)
【0123】
【化19】

【0124】
(ビニルエーテル化合物)
DVE−3:トリエチレングリコールジビニルエーテル(ISP社製)
(光カチオン重合開始剤)
SP−1:トリフェニルスルホニウム塩(旭電化社製)
SP−2:トリフェニルスルホニウム塩(旭電化社製)
SP−3:トリフェニルスルホニウム塩(旭電化社製)
【0125】
【化20】

【0126】
【表1】

【0127】
《活性エネルギー線硬化組成物の評価》
活性エネルギー線硬化組成物(以下、組成物ともいう)の原材料であるエポキシ化合物及び作製した活性エネルギー線硬化組成物について下記のようにして評価を行った。
【0128】
(硬化性)
以下の5種類の方法により、硬化環境として1)25℃、45%RH、2)25℃、85%RH、3)35℃、85%RHの3条件で硬化を行った後、指触によりタックがなくなるまでの露光エネルギーを測定した。露光エネルギーが少ないほど硬化性に優れていることを表す。なお、露光エネルギーは相対値で表示した。
【0129】
〈硬化法1〉
各活性エネルギー線硬化組成物を、厚さ0.8mm、幅50mm、長さ150mmの大きさのボンデライト鋼板上に10μmの厚さで塗工し、これを80W/cm2、集光型の高圧水銀ランプの下から10cm位置で、露光エネルギーを適宜調整した水銀ランプの下を通過させて硬化した。
【0130】
〈硬化法2〉
各活性エネルギー線硬化組成物を、透明なポリカーボネート板上に10μmの厚さで塗工した以外は、硬化法1と同様に硬化させた。
【0131】
〈硬化法3〉
各活性エネルギー線硬化組成物を、表面処理された膜厚30μmの2軸延伸ポリプロピレンフィルム上に、ロールコータを用いて、上記組成物を1.0g/m2の塗工量で塗布し、この上に厚さ20μmの表面処理無延伸ポリプロピレンフィルムを圧着させた後、硬化法1と同様に硬化させた。
【0132】
〈硬化法4〉
各活性エネルギー線硬化組成物を、アート紙上に10μmの厚さで塗工した後、硬化法1と同様に硬化させた。
【0133】
〈硬化法5〉
各活性エネルギー線硬化組成物を入れる容器を載せた3次元NC(数値制御)テーブル、Arレーザー(波長333、351、364nm)と光学系及びパーソナルコンピューターを中心とした制御部からなる立体造形実験システムを用いて、この組成物から0.1mmピッチで積層してCADによる設計寸法において幅100mm、長さ100mm、厚さ10mmの立体造形物を得た。
【0134】
〈硬化法6〉
得られた活性エネルギー線硬化組成物をインクジェット用インク組成物として用い、液滴サイズ7plが得られるピエゾタイプのインクジェットノズル(ノズルピッチ360dpi、本発明でいうdpiとは2.54cm当たりのドット数を表す)を、ノズル部分を50℃に加熱制御し、コロナ処理を施したポリエチレンテレフタレートフィルムを基材として用いて出射し、ベタ画像と6ポイントMS明朝体文字を印字した。光源は、308nmに主ピークを持つ蛍光管を用い、光源直下、基材面の照度が10mW/cm2の条件で、着弾後0.2秒後に露光を開始し、0.7秒後に露光を終了させた。
【0135】
(膜強度)
35℃、85%RHの環境下で硬化した膜表面の強度を爪の引っ掻き試験で測定し、下記の基準により膜強度の評価を行った。
【0136】
○:引っ掻いても膜が全く取れない
△:強く引っ掻くと膜が若干取れる
×:引っ掻くと簡単に膜が取れてしまう
(耐溶剤性)
膜強度の評価と同様にして作製した試料を、50℃のアルコールに10秒間漬けた後、画像の破損、収縮具合を以下の基準により目視評価し、これを耐溶剤性の尺度とした。
【0137】
○:変化なし
△:僅かに破損、収縮が生じる
×:明らかに破損、収縮が生じる
(耐水性)
膜強度の評価と同様にして作製した試料を、50℃の温水に10秒間漬けた後、画像の破損、収縮具合を以下の基準により目視評価し、これを耐水性の尺度とした。
【0138】
○:変化なし
△:僅かに破損、収縮が生じる
×:明らかに破損、収縮が生じる
(吐出安定性)
未処理のインクジェット用インク組成物およびポリプロピレン製ボトルに入れて70℃で7日間保存した強制劣化処理済みのインクジェット用インク組成物のそれぞれを、上記硬化法6(インクジェット記録方法)に従って、インクジェットノズルより30分間連続して吐出させ、各インクジェットノズルからの射出状態を目視観察し、下記の基準に従って吐出安定性の評価を行った。
【0139】
○:30分連続出射しても、ノズル欠が発生しない
△:30分連続出射でノズル欠がはじないが、わずかにサテライトが発生する
×:30分連続出射で、数カ所以上のノズルでノズル欠が発生する
以上により得られた各評価結果を、表2に示す。
【0140】
【表2】

【0141】
表2に記載の結果より明らかな様に、本発明で規定する構成からなる活性エネルギー線硬化組成物あるいはインクジェット用インク組成物は、比較例に対し、様々な硬化環境下での硬化性に優れ、かつ形成した膜の膜強度、耐溶剤性、耐水性が良好であることが分かる。さらに、強制劣化処理を施したインクジェット用インク組成物を用いて、インクジェットノズルから連続出射を行っても、ノズル欠の発生がなく吐出安定性に優れていることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0142】
【図1】光学的立体造形システムにおいて、未硬化組成物層を形成する工程の一例を示す説明図である。
【図2】光学的立体造形システムにおいて、第1硬化層を得る工程の一例を示す説明図である。
【図3】光学的立体造形システムにおいて、第1硬化層上にさらに未硬化組成物を形成する工程の一例を示す説明図である。
【図4】光学的立体造形システムにおいて、第2硬化層を得る工程の一例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0143】
1 制御部
2 NCテーブル
3 光学系
4 レーザー
5 樹脂
6 レーザー光線
7 第1硬化層
8 第2硬化層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ化合物を含有する活性エネルギー線硬化組成物において、脂環式エポキシ環の連結基に、エステル結合を少なくとも3個有する多環式エポキシ化合物を全エポキシ化合物の0.01質量%以上、10質量%以下含有することを特徴とする活性エネルギー線硬化組成物。
【請求項2】
エポキシ化合物を含有する活性エネルギー線硬化組成物において、脂環式エポキシ環の連結基に、エステル結合を少なくとも3個有する多環式エポキシ化合物を全エポキシ化合物の0.1質量%以上、5質量%以下含有することを特徴とする活性エネルギー線硬化組成物。
【請求項3】
オキセタン化合物またはビニルエーテル化合物を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の活性エネルギー線硬化組成物。
【請求項4】
光カチオン重合開始剤を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の活性エネルギー線硬化組成物。
【請求項5】
前記光カチオン重合開始剤が、下記一般式〔1〕〜〔4〕から選ばれる活性エネルギー線照射によりベンゼンを発生しないスルホニウム塩の少なくとも1種であることを特徴とする請求項4に記載の活性エネルギー線硬化組成物。
【化1】

〔式中、R1〜R7はそれぞれ水素原子、または置換基を表し、R1〜R3が同時に水素原子を表すことがなく、R4〜R7が同時に水素原子を表すことがなく、R8〜R11が同時に水素原子を表すことがなく、R12〜R17が同時に水素原子を表すことはない。Xは、非求核性のアニオン残基を表す。〕
【請求項6】
前記一般式〔1〕〜〔4〕で表されるスルホニウム塩が、下記一般式〔5〕〜〔13〕から選ばれるスルホニウム塩の少なくとも1種であることを特徴とする請求項5に記載の活性エネルギー線硬化組成物。
【化2】

〔式中、Xは非求核性のアニオン残基を表す。〕
【請求項7】
顔料を含有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の活性エネルギー線硬化組成物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の活性エネルギー線硬化組成物を用いることを特徴とするインクジェット用インク組成物。
【請求項9】
少なくとも1つのノズルを有するインクジェット記録ヘッドより、請求項8に記載のインクジェット用インク組成物を画像様に吐出し、インクジェット記録材料上にインクを着弾させた後、紫外線を照射することにより該インクジェット用インク組成物を硬化させることを特徴とする画像形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−51244(P2007−51244A)
【公開日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−238545(P2005−238545)
【出願日】平成17年8月19日(2005.8.19)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】