説明

活性炭製造装置

【課題】均質に賦活された活性炭を得ることができ、特に電気二重層キャパシタの炭素材として用いたとき高い静電容量を有し耐久性が高い電気二重層キャパシタを得ることができ、発生する金属蒸気を安全に捕集し、安全に、且つ効率よく高品位の活性炭を工業的規模で製造することができる活性炭製造装置を提供すること。
【解決手段】炭素材と金属水酸化物とを加熱して活性炭を生成する活性炭製造装置において、炭素材と金属水酸化物とを収納した反応容器を搬送する搬送手段と、搬入口に雰囲気置換室を備えた内部を不活性ガス雰囲気に保持し長手方向において賦活温度まで昇温し、賦活温度から降温する温度調整手段を有するトンネル炉と、該トンネル炉の搬出口に設けられる二酸化炭素により金属を捕集するトラップ室と、該トラップ室の下流に設けられる冷却室とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性炭製造装置に関し、より詳しくは、電気二重層キャパシタ電極用として極めて大きな静電容量が得られる高品位な活性炭を効率よく、しかも安全に工業的生産を行なうことができる活性炭製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、表面積の大きい多孔質の導体の活性炭は、吸着剤や触媒担体、電気二重層キャパシタなどに多用されている。活性炭はコークス、ヤシがらなどの炭素材を炭化し、水蒸気による高温処理あるいは塩化亜鉛などの水溶液の含浸と高温焼成して賦活して製造している。
【0003】
近年、電気二重層キャパシタにおいて静電容量を増大するために、微細孔が効果的に形成された活性炭が求められている。電気二重層キャパシタに使用可能な活性炭の工業生産としては、コークスなどの炭素材と水酸化アルカリ金属などのアルカリ金属化合物とを高温処理して、アルカリ金属を黒鉛結晶層間に侵入させ反応させることにより、炭素材の比表面積を高くする賦活方法が挙げられる。かかる水酸化アルカリ金属を用いた炭素材の賦活においては、炭素材と水酸化アルカリ金属を加熱炉で加熱する際、アルカリ金属の蒸気や、水素ガスが発生するため、爆発の危険を伴い、製造上での安全性を図ると共に、加熱炉の腐食を抑制することに腐心がされている。このような活性炭の製造装置としては、バッチ式の反応炉を用いたもの(特許文献1)や、プッシャー式のトンネル炉を用いた焼成炉(特許文献2)や、トンネル炉を用いた高表面積活性炭の製造装置(特許文献3)などが報告されている。
【0004】
しかしながら、特許文献1、2記載の焼成炉では、安定して効率のよい工業的な製造を行えるものではなく、特許文献3記載の焼成炉では、バッチ処理でありながら量産性を備え工業的生産を可能とするものであるが、近年その需要が急増している電気二重層キャパシタの炭素材として、微細孔を多数形成し、更なる高い静電容量を有し耐久性が高く、均質な活性炭を、一定して、より安全に製造できる活性炭の製造装置の要請が高い。
【特許文献1】特開平2−97414号公報
【特許文献2】特開平3−294780号公報
【特許文献3】特開平4−140066号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、効果的な微細孔を有し、特に電気二重層キャパシタの炭素材として用いたとき高い静電容量を有し耐久性が高い電気二重層キャパシタを得ることができ、均質に賦活された活性炭を得ることができ、発生する金属蒸気を捕集し、安全に、且つ効率よく高品位の活性炭を連続して製造し、工業的規模で生産することができる活性炭製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、炭素材とアルカリ金属化合物との加熱に、内部を不活性ガス雰囲気に保持し長手方向において賦活温度まで昇温し、賦活温度から降温する温度調整手段を有するトンネル炉を用いることにより、アルカリ金属を黒鉛結晶層間に侵入させ反応させることにより、微細孔を多数形成し、均質に賦活された活性炭を得ることができ、これにより、電気二重層キャパシタの炭素材として用いた場合、高い静電容量で耐久性が高い電気二重層キャパシタとすることができ、また、トンネル炉の搬出口に二酸化炭素により遊離金属を捕集するトラップ室を設けることにより、発生する金属蒸気を安全に捕集し、安全に、且つ効率よく高品位の活性炭の製造を行うことができることの知見を得て、これらの知見に基づき本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、炭素材とアルカリ金属化合物とを加熱して活性炭を生成する活性炭製造装置において、炭素材とアルカリ金属化合物とを収納した反応容器を搬送する搬送手段と、搬入口に雰囲気置換室を備えた内部を不活性ガス雰囲気に保持し長手方向において賦活温度まで昇温し、賦活温度から降温する温度調整手段を有するトンネル炉と、該トンネル炉の搬出口に設けられる二酸化炭素により金属を捕集するトラップ室と、該トラップ室の下流に設けられる冷却室とを備えたことを特徴とする活性炭製造装置に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の活性炭製造装置は、微細孔を有し高表面積で均質に賦活された活性炭を得ることができ、特に電気二重層キャパシタの炭素材として用いたとき高い静電容量を有し耐久性が高い電気二重層キャパシタを得ることができ、発生する金属蒸気を安全に捕集し、安全に、且つ効率よく高品位の活性炭を連続して製造することができ、工業的規模で生産することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の活性炭製造装置は、炭素材とアルカリ金属化合物とを加熱して活性炭を生成する活性炭製造装置において、炭素材とアルカリ金属化合物とを収納した反応容器を搬送する搬送手段と、搬入口に雰囲気置換室を備えた内部を不活性ガス雰囲気に保持し長手方向において賦活温度まで昇温し、賦活温度から降温する温度調整手段を有するトンネル炉と、該トンネル炉の搬出口に設けられる二酸化炭素により金属を捕集するトラップ室と、該トラップ室の下流に設けられる冷却室とを備えたものであれば、特に制限されるものではない。
【0010】
本発明の活性炭製造装置において用いられる炭素材としては、特に制限されるものではないが、例えば、石炭コークス、石油コークス、植物の炭化物などを挙げることができる。
【0011】
また、本発明の活性炭製造装置において用いられるアルカリ金属化合物としては、特に制限されるものではないが、具体的に、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウムなどアルカリ金属の水酸化物を挙げることができ、これらを組み合わせて用いることもできる。これらのうち、水酸化カリウムが電気二重層キャパシタ炭素材用として好適な活性炭が得られるため好ましい。
【0012】
上記炭素材およびアルカリ金属化合物の使用量としては、質量比で、炭素材/金属水酸化物として、1/0.5〜1/10とすることができ、好ましくは1/1〜1/5である。 また、上記炭素材とアルカリ金属化合物の他、炭素材の賦活の原料として水などを含有させることもできる。
【0013】
本発明の活性炭製造装置において、上記炭素材とアルカリ金属化合物を収納する反応容器としては、賦活温度に加熱された上記炭素材と金属水酸化物に対して耐久性を有するものが好ましく、原料の流出を抑制するため、蓋を有することが好ましい。反応容器の本体や蓋の外周面に金属捕集材を有することが、炉内で加熱され容器から流出したアルカリ金属化合物や金属蒸気を捕集できるため、好ましい。
【0014】
本発明の活性炭製造装置において、上記反応容器を搬送する搬送手段としては、搬送方向に対して直交方向に複数が並列して設けられたローラー群を備え、かかるローラー群により原料を収納した反応容器を支持し、ローラーが回転することによりかかる反応容器を一定速度で搬送できるものが好ましい。並列したローラー群により構成される搬送路が、トンネル炉内の搬送路を含め高低差がない直線状となっていることが、温度調整が容易であり、効率のよい製造を行なう点で好ましい。
【0015】
本発明の活性炭製造装置におけるトンネル炉は、上記反応容器をその内部を移動させ、反応容器に収納した炭素材とアルカリ金属化合物とを所定温度で加熱するための直線状の加熱炉であり、その内部に反応容器が通過可能な貫通した搬送路が設けられたものが好ましい。トンネル炉とすることにより、長手方向において所定の温度勾配に変化をもたせた昇温、降温を有する加熱温度を高精度に調整することが容易であり、反応容器が一方向に搬送される間に、反応容器内の原料に対して所定の変化を有する高精度に調整した所望の温度処理を行なうことができるため、好ましい。トンネル炉は、炭素材からの二酸化炭素生成を抑制し、アルカリ金属化合物、例えば、アルカリ金属水酸化物から発生する水素ガスとの爆発的反応を防止する必要から、炉内の酸素を除去して不活性ガス雰囲気とするため内部を気密に保持できるものである。トンネル炉の反応容器の搬入口には、反応容器の搬入出時にトンネル炉内への外気の流入を防止するための雰囲気置換室が設けられる。雰囲気置換室には内部を気密に保持可能なゲートが設けられ、雰囲気置換室へ容器を搬入する際はトンネル炉側のゲートを閉成し、搬入口側雰囲気置換室に容器を搬入後、雰囲気置換室へ不活性ガスを導入して雰囲気置換室内の空気を不活性ガスに置換し、その後、トンネル炉側のゲートを開成してトンネル炉内へ容器を搬入することにより、トンネル炉内への外気の流入を防止することができる。トンネル炉の搬出口においては、雰囲気置換室と同様の機能を有する後述トラップ室が設けられ、搬出口から反応容器を搬出する際、トンネル炉内の不活性ガス雰囲気に保持することができるようになっている。かかる不活性ガスとしては、窒素ガスなどを使用することができる。
【0016】
トンネル炉には、長手方向において賦活温度まで昇温し、賦活温度から降温する温度調整手段が設けられる。温度調整手段としては、内部空間の上下にそれぞれ設けられる上部棒状ヒーター、下部棒状ヒーターと、底面の長手方向の複数の位置にそれぞれ複数設けられる不活性ガスを導入する不活性ガス導入口と、天井の長手方向の複数の位置に設けられる排気口とを有する。不活性ガス導入口が、下部棒状ヒーター側に設けられ、このような構成により、炉内において高温側から低温側へ向かう不活性ガス流を形成することができる。更に、下流側から上流側に向かう不活性ガス流を形成する手段を有するものが好ましい。また、温度調整手段には、トンネル炉の搬出口側に設けられる不加熱領域を有することが好ましい。不加熱領域には、不活性ガス導入口と、排気口のみを設け、ヒーターを設けないことが好ましい。
【0017】
このような温度調整手段によりトンネル炉内を、賦活温度まで昇温し、賦活温度から降温するような温度調整を行なうことが可能となる。賦活温度としては、500〜1000℃であり、好ましくは600〜800℃を挙げることができる。温度調整手段による加熱温度としては、賦活温度までの昇温は、初期と終期には温度勾配を大きく、中間においては温度勾配を小さくすることが好ましく、例えば、漸進の昇温を180分とする場合、初期の50分は300℃、中間期の100分は100℃、終期の30分は300℃などとすることができる。賦活温度での加熱は60分、賦活温度からの降温は、一定の温度勾配で、例えば、100分で600℃などとすることができる。このような温度による加熱処理により、均質に微細孔を形成した活性炭を得ることができ、電気二重層キャパシタの炭素材として高静電容量の高品位の活性炭を得ることができる。
【0018】
また、トンネル炉の搬出口に設けられるトラップ室は、不活性ガスの導入口と二酸化炭素導入口と排気口とを有し、トンネル炉から反応容器を搬出する際は、不活性ガス導入口から不活性ガスを導入してトラップ室内を不活性ガス雰囲気にした後、反応容器を搬出し反応容器を搬出後、二酸化炭素導入口から二酸化炭素を導入し、二酸化炭素により遊離金属とを反応させ、遊離金属を安全に捕集することができるため、危険な反応を回避して、安全性の高い活性炭の製造を行うことができる。
【0019】
更に、トラップ室の下流に設けられる冷却室はガスの導入口と排気口とを有し、適宜ガス流を形成して、反応容器を冷却し、安全性の高い活性炭の製造を行うことができる。
【0020】
以下、本発明の活性炭製造装置の一例を、図面を参照して説明する。
【0021】
図1の概略側断面図に示すように、本発明の活性炭製造装置は、搬入口に設けられる雰囲気置換室1を備えたトンネル炉3と、トラップ室2と、冷却室4とを直線状に接続して設け、その内部に炭素材とアルカリ金属化合物、例えば、水酸化カリウムとを収納した反応容器5が直線状に移動できる貫通した搬送路6(搬送手段)を有するものである。
【0022】
炭素材と金属水酸化物とを収納する反応容器5の材質としては、例えば、純ニッケルやニッケル合金、または、シリカや酸化アルミニウムの焼成物などの金属酸化物の焼成物などセラミックが、賦活温度に加熱されたアルカリ金属化合物に対して耐腐食性を有するため好ましい。この反応容器5は、収納したアルカリ金属化合物と炭素材とが流出するのを抑制できるように、蓋を有するものが好ましい。更に、この反応容器本体や蓋はその外周面に反応容器と蓋の間隙から外部へ流出した金属蒸気などを吸着する、例えば、安価な活性炭やグラスウールなどの金属捕集材を有することが、加熱炉内の腐食を抑制し、排気ガス中の金属蒸気の含有量を低減できるため、好ましい。
【0023】
反応容器の大きさとしては、特に制限されるものではないが、内部に炭素材およびアルカリ金属化合物を収納したときの取扱いが容易な重量や、大きさを有することが好ましく、具体的には、例えば、3mm厚さの410mm×300mm×100mmなどとすることができる。
【0024】
搬送路6は上記反応容器5の搬送方向と直交方向に配置されるローラー61の複数が並列したローラー群により構成される。反応容器5の搬送路をローラー群で構成することにより、炉の底部から導入する後述する不活性ガス流が反応容器5に充分に接触し均一な加熱が可能となる。ローラー群を構成する各ローラー61はその回転速度が、反応容器5が収納する原料に対して所望の加熱処理が行なわれるような搬送速度で搬送されるように調整可能となっている。ローラーの材質としては、上記炭素材およびアルカリ金属化合物を収納した反応容器の重量を支持できる強度を備え、アルカリ金属化合物や遊離金属に接触した場合であっても耐久性を有するようにアルカリ金属化合物に対する耐腐食性を有するものが好ましい。具体的には、シリカや、酸化アルミニウムの焼成物、アルミナ・シリカセラミックなどのセラミックなどが好ましい。ローラーの形状としては、原料を収納した反応容器の重量により適宜選択することができ、原料を収納した反応容器の重量が例えば5〜20kgのものを2列で搬送する場合、口径30〜50mmを挙げることができ、その配置は、例えば60〜100mm間隔を挙げることができる。
【0025】
トンネル炉の反応容器の搬入口に設けられる搬入口側雰囲気置換室1には、内部を気密に保持可能なゲート11、12が設けられ、雰囲気置換室へ窒素ガスなどの不活性ガスを導入する不活性ガス導入口13がその底部に、排気口14がその天井に設けられ、トンネル炉側のゲートを閉成して容器を搬入し、雰囲気置換室内の空気を不活性ガスに置換した後、トンネル炉側のゲートを開成してトンネル炉内へ容器を搬入することにより、トンネル炉内への外気の流入を防止することができるようになっている。かかるゲートの材質としては、金属水酸化物や、遊離金属に接触するため、耐腐食性を有するものが好ましく、例えば、アルミナ・シリカなどのセラミックを挙げることができ、気密性を高めるため、ゲートを二重に設けてもよい。
【0026】
また、雰囲気置換室1の外壁には透明窓15を介して光センサ16を設け、通過してトンネル炉3へ搬入される容器を検知して、炉内の容器の搬送状態を検出できるものとしてもよい。
【0027】
直線状のトンネル炉3は、内部を気密に保持できるものであり、トンネル炉には内部空間を覆うアルミナ・シリカレンガなどの耐熱レンガの断熱壁35が設けられ、その外周に、更にSS400などで形成される外壁36が設けられ、内部空間のヒーターによる熱を有効に利用し、炉内の長手方向において変化する温度を高精度に調整することができるようになっている。トンネル炉長は原料の必要な加熱時間などとの関連により定められ、例えば、加熱時間として4〜6時間のとき、6〜15mなどとすることができる。
【0028】
トンネル炉内には温度調整手段が設けられ、温度調整手段を構成する上部棒状ヒーター31、下部棒状ヒーター32がその内部空間の上下に設けられ、これらのヒーターがトンネル炉内の空間に設けられることにより、放射熱を利用することができ、炉内の温度分布を均等にすることができる。上部棒状ヒーター31、下部棒状ヒーター32は別個に温度調整可能となっており、下部棒状ヒーター32は上部棒状ヒーター31より高温に設定してもよい。また、各上部棒状ヒーター31、下部棒状ヒーター32はそれぞれ長手方向において温度調整可能となっている。これらのヒーターの材質としては、炭化ケイ素や、更に、これにシリカや酸化アルミニウムの焼成物などのセラミックを外層に設けたものなどを用いることができる。
【0029】
また、トンネル炉に設けられる温度調整手段には、窒素ガスなどの不活性ガスを導入する不活性ガス導入口33がその底面の長手方向の複数の位置に設けられ、更に、搬送方向に直交するトンネル炉の概略横断面図(図2)に示すように、長手方向の複数の位置においてそれぞれ2〜6口などに分岐した複数口が設けられ、排気口34がその天井の長手方向の複数の位置に設けられ、不活性ガスの流れがトンネル炉内の高温側から低温側へ形成されるようになっている。不活性ガス導入口33や排気口34は、上部棒状ヒーター31、下部棒状ヒーター32の配置や設定温度との関連において、炉内の温度が、上流から下流に向かって賦活温度まで昇温し、賦活温度から降温する、例えば、図3に示すような所望の温度構成となるように、トンネル炉の長手方向において、その複数が相互に等間隔でない位置に配置されることを選択することができる。更に、不活性ガス導入口33や排気口34は、図4のトンネル炉の概略側断面図に示すように、断熱壁35中を屈曲して設けられ、炉内への開口と外壁に設けられる開口が長手方向において異なる位置に設けられていることが、低温の不活性ガスが炉内に直接導入されることによる温度の不均一の発生を抑制することができ、また、炉内の熱の放射による温度の不均一の発生を抑制することができ、また、異物の混入を防止することができるため、好ましい。また、トンネル炉内には、下流側から上流側への不活性ガス流(図中、矢印で示す。)を形成するため、例えば、不活性ガス導入口33の炉内への開口33aから導入された不活性ガスがそれより上流側の排気口34の炉内への開口34aへ、不活性ガス導入口33の炉内への開口33bから排気口34の炉内への開口34bへ、不活性ガス導入口33の炉内への開口33cから排気口34の炉内への開口34cへ、不活性ガス導入口33の炉内への開口33dから排気口34の炉内への開口34dへの流れ、・・・を形成するように、開口近傍の断熱壁35から反応容器5方向へ突出する仕切壁36が、それぞれ開口33aと開口34aを包囲するように、開口33bと開口34bを包囲するように、開口33cと開口34cを包囲するように、開口33dと開口34dを包囲するように、・・・設けられる。更に、トンネル炉の天井を湾曲形状に形成し、湾曲部の中央部に排気口34を設け、不活性ガスを滞留させず、ローラー61上の反応容器の底面や側面に接触させ、湾曲天井の中央の排気口へ流れるようにガス流を形成することが好ましい。このような温度調整手段により炉内を、横断面方向においては均一に、長手方向においては図3に示すように賦活温度に昇温し、賦活温度から降温する温度構成を高精度に行なうことができるようになっている。
【0030】
更に、トンネル炉の搬出口側には、上部棒状ヒーター31、下部棒状ヒーター32を設置しない不加熱領域37が設けられることが好ましい。不加熱領域37において、不活性ガス導入口33から導入される不活性ガス流と相俟って反応容器の冷却効果を促進させた温度降下を得ることができる。
【0031】
このようなトンネル炉の搬出口に設けられるトラップ室2は、ゲート22を介してトンネル炉の搬出口に設けられ、内部を気密に保持できるようになっている。トラップ室2の底部には、二酸化炭素と不活性ガスとを切り替えて導入するガス導入口23と、天井には、排気口42とが設けられ、ゲート22が開成されてトンネル炉の搬出口から反応容器がトラップ室に搬送される際、トラップ室2が不活性ガスで置換され、反応容器がトラップ室に搬送されゲート22が閉成された後、トラップ室2内へ二酸化炭素が導入され、金属を捕集できるようになっている。ゲートの材質としては、金属水酸化物の遊離金属に接触するため、耐腐食性を有するものが好ましく、例えば、アルミナ・シリカなどのセラミックを挙げることができる。
【0032】
また、トラップ室2の外壁には透明窓25を介して光センサ26を設け、トンネル炉3から搬出された容器を検知して、炉内の容器の搬送状態を検出できるものとしてもよい。
【0033】
更に、トラップ室2の下流にはゲート21を介して冷却室4が設けられ、冷却室4から反応容器を搬出する搬出口には内部を気密に保持できるゲート43が設けられ、底部には冷却ガス導入口41と、天井には排気口42とが設けられる。
【0034】
このような本発明の活性炭製造装置の作用を説明する。
【0035】
ローラー群の各ローラー61の回転速度を、原料を収納した反応容器5の搬送速度が、例えば、10〜40mm/分、好ましくは20〜30mm/分などとなるように調整した搬送路6に、原料を収納した反応容器5を、例えば、各列2個2列で合計4個を1バッチとして載置する。雰囲気置換室1のトンネル炉3側のゲート12を閉成し、ゲート11を開成し、雰囲気置換室1に容器を搬入する。1バッチの容器が雰囲気置換室1に搬入された後、ゲート11を閉成し、排気口14から排気すると共に、不活性ガス導入口13から不活性ガス、例えば、窒素ガスを所定時間導入し、内部の空気を窒素ガスに置換する。雰囲気置換室1内が窒素に置換された後、内部を不活性ガスで置換されたトンネル炉側のゲート12を開成し、1バッチの反応容器1をトンネル炉へ搬送する。このとき、光センサ16により搬送された反応容器数を検出し、トンネル炉内の反応容器の数を検出する。1バッチの反応容器をトンネル炉に搬送した後、ゲート12を閉成し、次の1バッチの反応容器の搬入に備える。
【0036】
トンネル炉内は、不活性ガス導入口から不活性ガス、例えば窒素ガスを導入すると共に排気口から排気を行ない、内部の酸素濃度を、例えば、100ppm以下に保持すると共に、内部の圧力を、例えば、10Pa程度の正圧に保持する。下部棒状ヒーター32、上部棒状ヒーター31の加熱温度をそれぞれ所定の温度に設定する。底面に設けられる不活性ガス導入口33の開口33a、・・・から、不活性ガスを、長手方向における異なる位置において、それぞれ導入量を変化させて、例えば、1〜10m3/hを導入する。開口33aから導入した不活性ガスは開口34aから、開口33bから導入した不活性ガスは開口34b、・・・からそれぞれ排気され、不活性ガス流が、図4に示すように、下流から上流に向かって形成され、かつ、図2に示すように、反応容器5の底面から側面を覆うように形成され、所定温度に設定された下部棒状ヒーター32および上部棒状ヒーター31及び冷却ゾーン37と相俟って、トンネル炉内の温度は、横断面においては均一な温度に、長手方向においては図3に示すように、賦活温度まで昇温し、賦活温度から降温する所望の温度に調整される。このため、炭素材とアルカリ金属化合物を収納した反応容器5がトンネル炉の搬入口から搬入されローラー群により搬送される間に、炭素材とアルカリ金属化合物に対して、図3に示すように、賦活温度まで加熱され、賦活温度で所定時間加熱され、賦活温度から降温されて加熱処理が行なわれる。このような加熱処理により、炭素材の黒鉛層間にアルカリ金属が進入し反応することにより多孔質となり、均質な活性炭が形成される。
【0037】
その後、ゲート21を閉成し排気口24から排気をすると共に、ガス導入口23から導入した不活性ガス、例えば窒素ガスに置換したトラップ室2に反応容器を搬送し、ここで光センサ26により搬出された反応容器数が検出され、トンネル炉内の反応容器の数を検出する。ゲート22を閉成した後、トラップ室2に二酸化炭素を、例えば10m3/h導入し、トラップ室2内を二酸化炭素で置換した状態とし、反応容器を所定時間二酸化炭素に暴露して、遊離金属を二酸化炭素と反応させ、遊離金属を捕集する。その後、搬出口に設けられるゲート43を閉成した状態の冷却室4へ、反応容器5を搬送し、冷却ガス導入口41から、例えば、不活性ガスまたは二酸化炭素などの冷却ガス流を導入し、排気口42から排気して冷却ガス流を形成し、所定時間、反応容器を冷却ガスに暴露して、所定温度まで冷却する。ゲート21を閉成し、ゲート43を開成して反応容器を搬出する。その後、必要に応じて、反応容器を水槽に浸漬し、反応容器中の生成物である活性炭の冷却と、反応容器中に残留する遊離金属の捕集を行うことができる。
【実施例】
【0038】
次に本発明について実施例より詳細に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0039】
反応容器として、410mm×300mm×100mmの純ニッケル製容器を使用し、石油コークス300g、水酸化カリウム600gを収納したものを、2列、2個を1組として、27mm/分で搬送し、炉長8100mmのトンネル炉において、図3に示す温度により加熱処理を行なった。トンネル炉への窒素ガスの導入量は50m3/hとした。1組で得られた活性炭は950gであった。得られた活性炭の比表面積は2000m2/gであった。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の活性炭製造装置の一例の概略側断面図を示す図である。
【図2】本発明の活性炭製造装置の一例のトンネル炉の概略横断面図を示す図である。
【図3】本発明の活性炭製造装置の一例のトンネル炉における長手方向の温度を示す図である。
【図4】本発明の活性炭製造装置の一例のトンネル炉の概略側断面図を示す図である。
【符号の説明】
【0041】
1 雰囲気置換室
2 トラップ室
3 トンネル炉
4 冷却室
5 反応容器
6 搬送路(搬送手段)
31 上部棒状ヒーター
32 下部棒状ヒーター
33 不活性ガス導入口
34 排気口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素材とアルカリ金属化合物とを加熱して活性炭を生成する活性炭製造装置において、炭素材とアルカリ金属化合物とを収納した反応容器を搬送する搬送手段と、搬入口に雰囲気置換室を備えた内部を不活性ガス雰囲気に保持し長手方向において賦活温度まで昇温し、賦活温度から降温する温度調整手段を有するトンネル炉と、該トンネル炉の搬出口に設けられる二酸化炭素により金属を捕集するトラップ室と、該トラップ室の下流に設けられる冷却室とを備えたことを特徴とする活性炭製造装置。
【請求項2】
トンネル炉内に設けられる温度調整手段が、内部空間の上下にそれぞれ設けられる上部棒状ヒーター、下部棒状ヒーターと、底面の長手方向の複数の位置にそれぞれ複数設けられる不活性ガスを導入する不活性ガス導入口と、天井の長手方向の複数の位置に設けられる排気口とを有し、不活性ガス導入口が、下部棒状ヒーター側に設けられ、下流側から上流側に向かうガス流を形成する手段であることを特徴とする請求項1記載の活性炭製造装置。
【請求項3】
炭素材とアルカリ金属化合物とを収納した反応容器を搬送する搬送手段が、搬送方向と直交方向に複数が並列して設けられるローラー群を備えたことを特徴とする請求項1または2記載の活性炭製造装置。
【請求項4】
炭素材とアルカリ金属化合物とを収納した反応容器が、外周面に金属捕集材を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載の活性炭製造装置。
【請求項5】
アルカリ金属化合物が水酸化カリウムであり、トンネル炉に導入する不活性ガスが窒素ガスであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか記載の活性炭製造装置。
【請求項6】
炭素材が石油コークスであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか記載の活性炭製造装置。
【請求項7】
活性炭が、電気二重層キャパシタ用であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか記載の活性炭製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−15870(P2007−15870A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−196122(P2005−196122)
【出願日】平成17年7月5日(2005.7.5)
【出願人】(000004444)新日本石油株式会社 (1,898)
【Fターム(参考)】