説明

活性炭輸液剤、その調製方法及び癌治療用薬物の調製におけるその使用

本発明は、活性炭輸液剤、その調製方法及び癌を治療するための薬剤の調製におけるその使用に関する。静脈輸液用の純活性炭微粒子注射剤と、活性化活性炭微粒子注射剤と、活性剤を吸着した活性炭注射剤及び各種薬を担持した活性炭注射剤を含む活性炭輸液剤において、使用する原料活性炭の比表面積≧400−10000M2/g又はそれ以上、重金属の含有量≦0.1−10ppm、その他の可溶性金属イオン≦0.1−10ppm、灰分<2%、総孔容積>0.3−6cm3/g、0.15%のメチレンブルーの吸着値>6−30、その活性炭輸液剤の中に含まれる活性炭微粒子が、粒径が35μm−2nmであり、主な粒状度分布範囲が、6μm−2nmであり、その中で3μm−2nmの粒が99%を占め、6μm−3μmの粒が1%未満であり、最大直径が35μm−6μmである活性炭微粒子が2×104個/mgを超えない活性炭微粉であり、その活性炭微粒子が静脈を経由して血液に輸入した後に、組織との適合性が優れていて、毒性又は副作用がなく、不良な刺激性がなく、免疫原性がなく、安全でかつ効果があり、癌、血管の粥状動脈硬化、冠状動脈性心疾患、脳梗塞、感染症、高窒素血症、急性有機や無機毒物中毒等に対して、著しい治療効果を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は活性炭輸液剤、その調製方法及び癌治療用薬物の調製におけるその使用に関する。具体的に言えば、静脈輸液用の活性炭製剤、その調製方法及び癌治療薬物の調製におけるその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
医学分野における活性炭の使用は既に百年の歴史がある。通常、活性炭は漢方薬、西洋薬の注射剤を調製する過程の精製工程に使用され、例えば次の引例:CN1377689, CN1287838, CN1068958, CN1062083に記載されているように、その活性炭が薬剤の中の不純物又は残留物を吸着した後にろ過して取り除かれ、注射剤完成品の中に活性炭を含んでいない。しかし、医学研究から、活性炭製剤を利用して各種の疾患を治療することができることが明らかになった。例えば、経口投与の活性炭製剤での胃の疾患の治療、睡眠薬中毒、酒酔い防止剤のように、活性炭製剤によって、胃腸に入った毒素を吸着することができ、スポーツ選手に対して興奮剤を検査する際に、活性炭を尿吸着剤とし、また皮膚が感染して炎症を起こした際に、活性炭を膿に付けて毒素や異臭を吸着する。EP620006には経口投与の活性炭製剤による糖尿病の治療が開示され;JP11029485には経口投与の活性炭製剤による肥満症の治療が開示され;US4152412には0.5μmの活性炭によって動物の使用に供する免疫ワクチンや抗原や類毒素を吸着し、注射後免疫ワクチンの効果が改善され、薬剤が徐々に放出されることが開示され;SU1465052には活性炭を動物の回虫防止・治療の薬剤と混合して油懸濁液形式で皮下注射することで、治療効果が高められかつ抗虫薬の効き目を三ヶ月まで延長可能であることが開示され;W09108776には腫瘍の中に1−6.8μmの非活性又はやや活性の炭微粒子を注射し、化学療法や手術をする前に腫瘍を標識することができ、またレーザ又は電磁波加熱等の治療においてエネルギーを吸収することができ、腫瘍組織の周囲に注射すると、治療作用を発揮するように薬物を徐々に放出させることが開示されている。その炭微粒子が血管や血液以外の組織の中で徐々に放出することは、外用原理の一種であり、本発明の活性炭微粒子を血液に直接注射することとは、使用ルートや治療メカニズムの点で本質的に相異している。本発明者は長期にわたる研究により、大きい比表面積を有し、粒径が主に6μm−2nmに分布する活性炭微粒子を従来の静脈輸液の液体に入れ、そして人体の血液又は腹腔、胸腔に輸液することによって、多種類の癌、粥状動脈硬化症、冠状動脈性心疾患、脳梗塞、感染性疾患、高窒素血症、急性有機と無機毒物中毒等に対して治療効果があることを証明した。多くの動物実験の結果から明らかなように、その活性炭微粒子を血液に輸液した後に、組織との適合性がとてもよく、毒性副作用や不良な刺激や免疫原性がなく、かつ安全、有効であり、器官の塞栓や病理性損害を生じない。
【0003】
動物の実験結果により次のことを明らかにした。つまりいくつか微小な不溶性物質(剛性粒子と略称する)、例えばアガロース粒子、デキストラン粒子、セルロース類粒子、そして珪藻土粒子、沸石粒子、ベントナイト粒子等のような非水溶性物質は、その粒子の大きさが6μm−2nmの範囲以内であれば、腫瘍に対して抑制作用と薬を担持する作用を有する。然しながら、その安全性と治療効果は活性炭のより明らかに悪い。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の一つの目的は、静脈輸液剤用の活性炭輸液剤を提供する。本発明のもう一つの目的は、そのプロセスが独特であり、操作が簡単である活性炭輸液剤の調製方法を提供する。本発明のその他の目的は、その活性炭輸液剤が癌治療薬物の調製における使用を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の活性炭輸液剤は、静脈輸液用の純活性炭微粒子注射剤と、活性化活性炭微粒子注射剤と、活性剤を吸着した活性炭注射剤と、薬物を担持した活性炭注射剤(抗癌薬を吸着した注射剤と、抗凝固及びコレステロール降下薬を吸着した注射剤と、抗生物質を吸着した注射剤と、抗ウイルス薬を吸着した注射剤を含む)とを含む活性炭輸液剤であって、使用する原料活性炭が次の品質要求を満たしている。すなわち、比表面積≧400−10000M2/g又はそれ以上、重金属の含有量≦0.1−10ppm、その他の可溶性金属イオン≦0.1−10ppm、灰分<2%、総孔容積>0.3−6cm3/g、0.15%のメチレンブルーの吸着値>6−30、その活性炭輸液剤の中に含まれる活性炭微粒子の粒径が35μm−2nmであり、主な粒度分布範囲が6μm−2nmであり、その中で3μm−2nmの粒が99%を占め、6μm−3μmの粒子が1%未満であり、最大直径が35μm−6μmである活性炭微粒子が2×104個/mg未満である活性炭微粉である。
【0006】
多くの動物実験の結果から証明されたように、その活性炭微粒子を血液に輸液した後、組織との適合性がとてもよく、毒性副作用や不良な刺激や免疫原性がなく、使用量範囲以内(一回当たりの血液に輸液する有効治療量は0.1−5mg/kg体重であり、一週当たり1から7回輸液し、成人の平均累積投与量は10g以下である)で、製剤品質標準範囲以内であれば、重要器官の塞栓は生じない。治療量や総蓄積量を適切に把握すれば、複数回にわたり静脈輸液ができ、中毒や重要臓器の損傷はない。動物解剖によって、静脈にその活性炭微粒子を輸液することは心臓、肝臓、脾臓、肺臓、骨髄、大脳に対して病理性損傷が生じないことを実証した。
【0007】
本発明の活性炭輸液剤の調製方法においては、
(1)機械的な方法を用いて原料の活性炭を120メッシュの粗粒子に粉砕する工程と、
(2)活性炭を活性化するようにその活性炭粗粒子に活性剤を吸着させ、前記活性剤濃度が0.01−10%であり、高圧容器の中で70−190℃に加熱し、反応時間が5−20分間として、酸化型又は還元型活性炭を生成し、冷却、減圧し、残留ガスを排除してから、再び圧力下でそれぞれ60−100℃の水蒸気とアンモニアガスとを入れ、炭素−ヒドロキシ基や、炭素−イミノ基又は炭素−水素を含む活性炭を生成する工程と、
(3)薬物を選択して、活性化されている活性炭又は活性化されていない純活性炭を用いて、液相飽和吸着を行った後に、低温で乾燥させ、空気粉砕機で所望の粒径の活性炭微粒子に粉砕することにより活性炭の薬物担持処理を行う工程と、
(4)その活性炭微粒子に生物導向剤を浸漬・吸着させた後に、短時間、高速かつ低温で乾燥させる工程と、
を備えることを特徴とする。
【0008】
工程(2)において、前記活性剤が酸化剤と還元剤に分けられ、酸化剤がエポキシエーテル類、塩化アシル類、酸無水物類及びアルデヒド類から選択され、還元剤がLiAlH4及びNaBH4から選択される。
【0009】
工程(3)において、選択される薬物が、(i)例えば5−FU,CTX,MTX,Ara−C/A,6−MP、抗癌抗生物質類、シスプラチン・カルボプラチン、ヒ素剤類、パクリタキセル(紫杉醇)のような従来の抗癌薬物と、(ii)例えばIL−2,4,6,GM,G−CSF,γ−IFN,TNF,FCF−B,VECF,4−IBB/4−IBBL,B7−1B7−2,ヒキガエル−毒蛋白、特異的抗ハプテン抗体のような免疫活性化、調節様サイトカイン類と、(iii)例えば主金属有機化合物ベンジル/ブチルリチウム等、遷移金属銅アンモニア剤、白金、パラジウム剤、セレン、ゲルマニウム化合物等のような、触媒作用と腫瘍を殺すという二重機能を持つ活性剤類、(iv)例えば、酸化還元酵素類、アミノ基転移酵素類、加水分解酵素類、異性化酵素類等のような吸着性生物酵素類とを含む。
【0010】
工程(4)において、前記生物導向剤が、フェロポルフィリン又はチミン、シトシン、ウラシル、アデニン、グアニン及びその誘導体(例えば5−フルオロウラシルやヒドロ重水素チミン、メチルアミノプリテン)、腫瘍細胞粘着因子(例えばVCAM−1)及び腫瘍細胞成長因子(例えばVEGF)類等を含む。
【0011】
工程3と工程4において、異なる薬物と生物導向剤を選択すれば、各種の異なる薬を担持した活性炭製剤を調製することができ、例えば、抗癌薬物を吸着した注射剤、抗凝固や降コレステロール薬物を吸着した注射剤、抗生物質を吸着した注射剤、抗ウイルス薬物を吸着した注射剤などである。
【0012】
本発明は、一回当たりの血液に輸液する有効治療量が0.1−5mg/kg体重であり、一週当たり1から7回輸液し、成人の平均累積量が10g以下であることを特徴とする活性炭輸液剤の癌治療用薬物の調製における使用を提供している。
【0013】
長期の研究で明らかにしたように、直径が所定の大きさ範囲内にあるナノメートル−マイクロメートル活性炭は癌の痛みを緩和し、腫瘍の成長を抑制し又は腫瘍細胞を殺す作用を有する。その活性炭微粒子を静脈を通して血液に輸液すると多種類の癌を治療することができ、粥状動脈硬化症、冠状動脈性心疾患、脳梗塞も治療することができる。その活性炭微粒子は血液に輸液された後に、免疫因子に類似したような機能を果し、例えば、IgG/A/M、DC小ペプチド分子、免疫グロブリンスーパーファミリー分子群のような機能を果している。各種の治療困難型、微生物及びウイルス感染の治療に用いられることができる。またその活性炭微粒子が静脈を通して血液に輸液されると身体組織回復を促進する機能を果し、慢性不癒合性傷、骨髄炎症等疾病に対して優れた治療効果を有し、急性有機、無機毒物中毒も治療できることが見出だされた。
【0014】
純活性炭微粉顆粒そのものが抗癌作用以外にまた吸着、免疫調節、化学触媒、薬物担持などの作用も有する。純活性炭微粉顆粒に対してさらなる化学活性処理と、薬物担持処理と、生物導向剤処理を行うことにより、前記作用が正相的に強化され、すばらしい治療効果が得られる。これは、本発明の活性炭輸液剤の癌治療薬物の調製における応用的なメカニズムであると考えられる。その詳細内容につき、次の通りである。
【0015】
1.純活性炭微粒子に対するさらなる活性化処理:
活性炭そのものは化学触媒の作用を有すると同時に、異なる化学基で修飾もできる。これらの化学基はヒドロキシ基、カルボキシル基、アミノ基、カルボニル基、アリール基を含む低分子有機化合物であっても良い。活性炭と結合した化学活性触媒グループは、水素や酸素や炭化水素やペプチドや脂質に対して触媒反応できるために、酵素類有機物でもよく、又は常温常圧下で、溶液において触媒として作用する主金属有機化合物、遷移金属有機化合物又は対応する無機化合物でもよい。化学活性化処理された活性炭は、その吸着値が著しく高められ、それは適切に触媒治療作用又は薬物担持作用を発揮させることができる。
【0016】
2.活性化処理された活性炭微粒子に対するさらなる薬物担持処理及び生物導向剤処理:
活性炭微粒子上に生物導向材料を結合することは、活性炭微粒子輸液剤の治療効果を高める有効な方法である。その導向材料の選択原則は、癌細胞の成長が旺盛である特徴を利用し、癌細胞の成長代謝に必要な摂取量が正常の細胞のより多い物質を導向材料とすることである。すなわち、特に癌細胞に親和性のある物質を導向材料とし、その材料が免疫原生のない物質でなければならなく、例えばDNA又はRNAを構成する必要な塩基対(チミン、ウラシル、アデニン、グアニン及びその誘導体)、癌細胞成長代謝に必要な摂取量が正常細胞のより何百倍も多い物質(例えば、フェロポルフィリン)、又は腫瘍親和物質、例えば腫瘍細胞接着因子(VCAM−1)や腫瘍細胞成長因子(VEGF)等を導向材料として選択する。それらの物質が腫瘍成長を促進する作用を有する。非常に面白い現象に、腫瘍細胞はそのような活性炭微粒子を捕獲することが好み、かつ死亡又は成長停止するまでに大量に呑み込む。しかし正常な組織細胞は殆どそのような活性炭微粒子に目が向かないのである。そのような癌細胞に対する指向性と、腫瘍親和性を有する導向活性炭微粒子が自動的に癌細胞の周囲に集まり、癌組織内部の活性炭微粒子の濃度がその他の正常組織より何百倍も又は何万倍も高くなる。その新たな導向材料の活性炭との結合における使用については、生物導向材料の選択原則を突破し、長期に渡った腫瘍化学治療薬物の選択性の弱い問題及び導向材料に対して生じる抵抗性問題を解決した。
【0017】
研究により、新生血管が非常に豊富かつ紊乱している腫瘍組織内において、その癌細胞に対する指向性、癌親和性を有する活性炭微粒子又は純活性炭微粒子は、癌細胞組織微血管内又は腫瘍新生微血管盲端内で濃度の極めて高い堆積を形成し、癌細胞に沢山飲み込まれる。癌組織内にたまった大量な活性炭微粒子は、抗癌薬物の放出と、免疫調節と、化学触媒とを行い、物質を吸着して動的なバランスで腫瘍成長を妨害し、総合的な癌細胞に対する殺作用を完成する。
【0018】
もう一種類の抗ウイルス生物導向剤と担持薬との組み合わせの選択原則については、ウイルス親和剤−ウイルス干渉剤組み合わせであり、例えば、DNAウイルスについては、チミン塩基を選択し、RNAウイルスについてウラシル塩基とインターフェロン、IL−1、ウイルス転写酵素抑制剤、重合酵素抑制剤類を選択する。
【0019】
そのような生物導向を有する活性炭微粉は、その巨大な比表面積をもって、多種の抗癌薬物を吸着することができる。薬物は活性炭粉が導向されるにつれ、腫瘍細胞周囲に多く集まってくる。担持する薬物としては、異なる抗癌薬、例えば化学治療薬物類、放射性核種類、免疫調節細胞因子類及びパラジウム、プラチナ、銅、ゲルマニウム、セレン、コバルト等の配位触媒金属類物質が挙げられる。それらの薬物は腫瘍細胞に導向され、腫瘍血管内部と腫瘍細胞間質において、薬物は通常治療方法の何百倍又は何万倍まで集まることができ、抗腫瘍治療効果を高め、化学治療薬物による毒性副作用を抑えることができる。活性炭に担持されている化学治療用薬物、放射線治療用薬物量は、普通従来の治療量の5−20%であるだけで、従来の治療プランの効果に達するか又は超えることができ、抗癌薬物の体の正常細胞と免疫システムに対する損害を最大限下げることができる。
【0020】
本発明の活性炭輸液剤の安全性に関する動物実験は次の通りである。
1.ラット毒性実験:ラット12匹、135g±10g、雌雄半分づつ、尾静脈注射法、28日間観察
【表1】


尾静脈に連続的に注射するのが困難であるため、多くとも2/Wとする。Dは最大許容量実験で、Eは便宜上の限度実験に相当する。
A、B、Cは、動物の短期毒性実験における高中低の三つの剤量群に相当するが、注射回数は短期毒性実験より多く、観察日数も多い。
【0021】
2.病理解剖結果:ランダムに雌雄それぞれ2匹を取って病理解剖により得られた結果が次の通りである。
【表2】


説明:以上の動物実験資料は我々の研究過程における観察資料であり、厳密に薬局方における短期毒性実験又は長期毒性実験に対する規定に従って行ったものではなく、ラットへの薬物投与量は標準実験の規定より多く、飼育観察期間も標準実験の規定より長く、ラットの数が標準定まりより少ない。
【0022】
臨床実験症例については、
症例一:
男性、57歳、肺ガンと診断され、右鎖骨上のリンパ節の生検により腺癌が分かった。様々な化学治療を行った後、胸部圧迫、動悸、息切れ、平臥不能で入院した。心臓のB型超音波検査及び肺のCT検査により、心臓周囲に大量の液体がたまり、心拍数が120回/分であり、毎日24時間座るか又は立つかにしなければならず、心臓周囲の液体を採取しようとしたが、患者がそれに耐えられなくて成功できなかった。本発明の活性炭製剤20mgを静脈注射した24時間後心臓圧迫、動悸と息切れの症状が緩和され、かつ平臥可能になり、心拍数が90回/分になった。48時間後にB型超音波により心臓を検査した結果、心臓周囲にたまった液体が完全に無くなった。
【0023】
症例二:
男性、21歳、肺胞細胞癌と診断され、化学治療したが緩和されず、胸部写真より、両肺には綿状の陰が万遍に分布し、心電図には急性肺性心病の変性が現れ、間隔をおいて酸素呼吸する必要があった。患者は化学治療に対する抵抗を生じたため、その症状がますます重くなり、後胸部写真により、両側が気胸であり、右側が50%圧縮され、左側が40%圧縮されている。右側胸腔に対して一回抽気し、800ml透視で胸腔にはまだ大量なガスがあった。本発明の活性炭製剤20mgにDDP20mgと5−Fu0.25gを加えて、三日毎に一回で、計四回静脈注射し、薬を投与してから一週間、胸部写真を検査した結果、ガスは完全に吸収されていた。
【0024】
症例三:
女性、42歳、右鼻咽頭非ホジキンリンパ腫T細胞型と診断され、前後して全身的な化学治療と鼻咽部の放射線治療が与えられたが、右側頚部の1×lcmサイズのリンパ節が消滅できなかった。本発明の活性炭製剤20mgを静脈注射し、二日後にリンパ節がなくなり、現在病状が安定し、他の治療は一切行われていない。
【0025】
症例四:
女性、38歳、乳癌と診断され、かつ全身骨に移転し、モルフィネで鎮痛不可能であったため、歩くのが困難であった。本発明の活性炭製剤20mgを静脈注射した1時間後、痛みが著しく緩和され、24時間後、自由に歩けるようになった。三ヶ月後に検査し、体重が2kg増え、かつ普通の家事ができるようになった。
【0026】
症例五:
男性、67歳、前後して住血吸虫性肝硬変、慢性B型肝炎、糖尿病II型、アルコール性肝硬変、肺結核の病気にかかったことがある。その後、咳嗽と喀血で入院検査した結果、右上肺癌と診断された。患者は年でかつ多くの病気にかかっているため、手術や化学治療や放射線治療ができなかった。本発明の活性炭製剤20mgを静脈注射し、24時間後に、喀血が著しく減少した。10日間連続的に投薬してから、症状がなくなり、三ヶ月後にまた胸部写真検査した結果、腫瘍が以前より縮小し、その周縁がはっきりし、病巣が目立った変化がなく、他の治療を行わず、病状が安定している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明については、次の実施例でさらに説明するが、本発明はそれ限りではない。
【0028】
実施例1
純活性炭微粒子注射剤の調製:
比表面積6800M2の活性炭を500g取り、機械で120メッシュの細粉に粉砕した後、空気粉砕機に入れ、粒径を35μn−2nmにするようにコントロールして粉砕した。主な粒度分布範囲が6μm−2nmで、その中で3μm−2nmのものが99%を占め、6μm−3μmのものが1%未満であり、最大直径が35μm−6μmである活性炭微粒子が2×104個/mgを超えない活性炭微粉が得られた。前記活性炭微粉を溶質とし、ジメチルスルホキシドを懸濁溶媒として1%の活性炭懸濁液5000mlを調製し、強い磁力で攪拌しながら、ボトルごとに1ml又は2mlの輸液注射剤が作られた。
【0029】
実施例2
活性炭微粒子注射剤の調製:
比表面積6800M2/gの活性炭100gを取り、機械で120メッシュの細粉に粉砕し、−10℃の1%塩化チオニル/クロロホルム溶液300mlを入れ、2時間攪拌し吸着反応させ、2万RPMの高速で遠心分離させ、沈澱を取る。そして沈澱物が含有された容器を圧力容器内に入れ、80℃まで加熱してから5分間後に減圧し、酸化型活性炭を生成させる。また異なる活性基を持つ幾つかの種類の活性炭を生成するように圧力容器にそれぞれ活性剤を流させる。
ヒドロキシ基化活性炭を調製する場合、90℃の水蒸気を2時間にわたり流させた後、減圧して排気し、ヒドロキシ基化活性炭を生成する。
イミノ基化活性炭を調製する場合、90℃の純アンモニアを2時間にわたり流させ、イミノ基化活性炭をを生成する。
ヒドロキシ・アミノ基活性炭を調製する場合、90℃の10−40%のアンモニア−水蒸気を流させ、ヒドロキシ基とアミノ基ともを持つ活性炭を生成する。
炭−水素活性炭を調製する場合、比表面積が6800M2/gの活性炭100gを取り、機械で120メッシュの細粉に粉砕し、エーテルで溶解したLiAlH4を入れ、1%の溶液300mlを調製し、2時間攪拌して吸着させ、遠心分離して沈澱を出し、圧力容器内で95℃まで5分間加熱し、冷却して減圧し、炭−水素とリチウムが結合されている活性炭を生成する。
前記活性化した活性炭を空気粉砕機に入れて粉砕し、粒径を35μm−2nmにコントロールした。それにより、主な粒度分布範囲が6μm−2nmで、その中で3μm−2nmのものが99%を占め、6μm−3μmのものが1%未満であり、最大直径が35μm−6μmである活性炭微粒子が2×104個/mgを超えない活性炭微粉が得られた。活性化した活性炭10ml又は20mlの輸液注射剤をそれぞれボトルに分けて入れる。
【0030】
実施例3
薬物を担持した活性炭注射剤の調製:
(1)抗癌薬物を吸着した注射剤については、薬物拮抗のない場合、薬物を任意に選び吸着させることができ、例えば、シスプラチン6g,5−FU 0.4g、又はシスプラチン6g、6−MP 0.8gを100mlの水に溶かし、120メッシュ活性炭10g又は活性化したヒドロキシ基−アミノ基活性炭を入れ、攪拌して十分に吸着させる。高速遠心分離によって沈澱を取り、アセトンで脱水させ、遠心分離して沈澱させ、乾燥させる。それから0.1%キトサン水溶液で5分間浸漬して沈澱させ、アセトンで脱水させ、乾燥させる。空気粉砕機で粉砕し、粒径が35μm−2nmで、主な粒度分布範囲が6μn−2nmで、その中で3μn−2nmのものが99%を占め、6μm−3μmの粒子が1%を超えず、最大直径35μm−6μmの活性炭微粒子が2×104個/mgを超えない活性炭微粉になるようにコントロールする。粉砕によって露出された新しい断面の薬を担持した活性炭微粒子を20%のフェロポルフィリンアセトン溶液に10分間浸漬し、高速遠心分離により沈澱させ、乾燥させる。それぞれボトルごとに10mg又は20mgの活性化した活性炭を含む輸液注射剤を分けていれる。
一部の薬物に対して測定した吸着値が次の通りである。比表面積6800M2である活性炭/ヒドロキシ、アミノ基炭は、その吸着量測定値(活性炭吸着値mg/ヒドロキシ、アミノ基炭吸着値mg)が、ウラシル33/51、アデニン(Adenine)213/260で、グアニン331/378で、5−クロロウラシル75/102、5−フルオロウラシル20/49,チミン5/17、チモシン(Thymosin)90/127、6−MP220/304,シスプラチン995/1105,フェロポルフィリン283/311、CTX98/136,クロロホルム10/4である。
(2)抗凝固、コレステロール降下薬を吸着した注射剤については、例えば、r−tPA 100mg又はコレステロールトランスアセチラーゼ80mg又はニコチン酸220mgに粒度が0.5μm以下であるように空気粉砕機で粉砕したヒドロキシ基活性炭微粒子1gを入れ、十分に水相吸着させ、高速遠心分離により沈澱させ、アセトンで脱水させ、乾燥させる。それから0.1%キトサン水溶液で5分間浸漬し、高速遠心分離により沈澱させ、アセトンで脱水させ、乾燥させ、10mgボトルの輸液注射剤に分けられる。得られた注射剤は心臓や脳塞栓の血栓崩壊治療と血管硬化、高血圧などの治療に用いられる。
(3)抗生物質薬物を吸着した注射剤については、例えば、イソニアジド500mg又はリファンピシン200mgを空気粉砕機で粉砕した粒度が0.7μm以下であるヒドロキシ基、アミノ基活性炭微粒子1gと、20分間水相吸着させ、高速遠心分離によりで沈澱させ、アセトンで脱水させ、乾燥させる。それから0.1%キトサン水溶液に5分間浸漬し、高速遠心分離により沈澱させ、アセトンで脱水させ、乾燥させ、20mg/ボトルの輸液注射剤に分けられる。得られた注射剤は治療困難な骨結核や粟粒性肺結核等の治療に用いられる。
(4)抗ウイルス薬物を吸着した注射剤については、例えばIFN−γ100mgを空気粉砕機で粉砕した粒度が0.3μm以下であるヒドロキシ基−アミノ基活性炭微粒子1gと十分に水相吸着させ、高速遠心分離により沈澱させ、沈澱物に対してアセトンで脱水させ、低温で乾燥させる。セリンと特異性抗ハプテン抗体導向剤に5分間浸漬させ、高速遠心分離により沈澱させ、アセトンで脱水させ、低温で乾燥させ、10mg/ボトル又は20mg/ボトルの輸液注射剤に分けられる。得られた注射剤は各種病毒性感染の治療困難な疾病、例えば、EB病毒性ギラン・バレー症候群とウイルス感染脳等の治療に用いられる。またHIVの治療にも用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
純活性炭微粒子注射剤と、活性化された活性炭微粒子注射剤と、活性剤を吸着した活性炭注射剤と、薬物を担持した活性炭注射剤とを含む活性炭輸液剤であって、前記薬物を担持した活性炭注射剤が、抗癌薬を吸着した注射剤と、抗凝固及びコレステロール降下薬を吸着した注射剤と、抗生物質を吸着した注射剤と、抗ウイルス薬を吸着した注射剤とを含み;そして使用する原料活性炭が、その比表面積≧400−10000M2/g又はそれ以上、重金属の含有量≦0.1−10ppm、その他の可溶性金属イオン≦0.1−10ppm、灰分<2%、総孔容積>0.3−6cm3/g、0.15%のメチレンブルーの吸着値>6−30、その活性炭輸液剤の中に含まれる活性炭微粒子の粒径が35μm−2nmであり、主な粒度分布範囲が6μm−2nmであり、その中で3μm−2nmの粒が99%を占め、6μm−3μmの粒が1%未満であり、最大直径が35μm−6μmである活性炭微粒子が2×104個/mgを超えないことを特徴とする、活性炭輸液剤。
【請求項2】
(1)機械的な方法を用いて原料の活性炭を120メッシュの粗粒子に粉砕する工程と、
(2)活性炭を活性化するようにその活性炭粗粒子に活性剤を吸着させ、前記活性剤濃度が0.01−10%であり、高圧容器の中で70−190℃に加熱し、反応時間を5−20分間とし、酸化型又は還元型活性炭を生成し、冷却して減圧し、残留ガスを排除してから、再び圧力の下でそれぞれ60−100℃の水蒸気とアンモニアガスとを入れ、炭素−ヒドロキシ基や、炭素−イミノ基又は炭素−水素を含む活性炭を生成する工程と、
(3)薬物を選択して、活性化されている活性炭又は活性化されていない純活性炭と液相飽和吸着を行った後、低温で乾燥させ、空気粉砕機で所望の粒径の活性炭微粒子に粉砕することにより、活性炭の薬物担持処理を行う工程と、
(4)その活性炭微粒子に生物導向剤を浸漬して吸着させた後に、短時間、高速かつ低温で乾燥させる工程と、を備えることを特徴とする、請求項1記載の活性炭輸液剤の調製方法。
【請求項3】
工程(2)に記載の活性剤が、酸化剤と還元剤に分けられ、酸化剤が、エポキシエーテル類、塩化アシル類、酸無水物類及びアルデヒド類から選択され、還元剤が、LiAlH4及びNaBH4から選択されることを特徴とする、請求項2記載の活性炭輸液剤の調製方法。
【請求項4】
工程(3)に記載の薬物が、(i)5−FU,CTX,MTX,Ara−C\A,6−MP、抗癌抗生物質類、シスプラチン/カルボプラチン、ヒ素剤類、パクリタキセルのような従来の抗癌薬物と、(ii)IL−2,4,6,GM,G−CSF,γ−IFN,TNF,FCF−B,VECF,4−IBB/4−IBBL,B7−1B7−2,ヒキガエル−毒蛋白、特異的抗ハプテン抗体のような免疫活性化、調節様サイトカイン類と、(iii)主金属有機化合物ベンジル/ブチルリチウム、及び遷移金属銅アンモニア剤、白金、パラジウム剤、セレン、ゲルマニウム化合物のような、触媒作用と腫瘍を殺すという二重機能を果す活性剤類、(iv)酸化還元酵素類、アミノ基転移酵素類、加水分解酵素類、異性化酵素類のような吸着性生物酵素類と、を含むことを特徴とする、請求項2記載の活性炭輸液剤の調製方法。
【請求項5】
工程(4)における生物導向剤が、フェロポルフィリン又はチミン、シトシン、ウラシル、アデニン、グアニン及びその誘導体(例えば5−フルオロウラシル、ヒドロ重水素チミン、メチルアミノプテリン)並びに腫瘍細胞接着因子(例えばVCAM−1)及び腫瘍細胞成長因子(例えばVEGF)類を含むことを特徴とする、請求項2記載の活性炭輸液剤の調製方法。
【請求項6】
一回当たりの血液に輸液する有効治療量が0.1−5mg/kg体重であり、一週当たり1から7回輸液し、成人の平均累積投与量が10g以下であることを特徴とする、請求項1記載の活性炭輸液剤の癌治療用薬物の調製における使用。

【公表番号】特表2006−525238(P2006−525238A)
【公表日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−504190(P2006−504190)
【出願日】平成16年1月14日(2004.1.14)
【国際出願番号】PCT/CN2004/000045
【国際公開番号】WO2004/098620
【国際公開日】平成16年11月18日(2004.11.18)
【出願人】(505413853)
【氏名又は名称原語表記】CHEN,Xiaochuan
【出願人】(505413864)
【氏名又は名称原語表記】WANG,Pulin
【出願人】(506152793)
【氏名又は名称原語表記】HOU,Xizhong
【Fターム(参考)】