説明

流体フィルタ

【課題】溶着による部材同士の接合を確実なものとすることができるとともに、溶着時に発生する溶着バリが濾過室内へ侵入するのを防止することができる流体フィルタを提供する。
【解決手段】本流体フィルタ1は、流出口2Aを有する上側ケース部材2と、流入口3Aを有する下側ケース部材3と、濾材4及び該濾材の周縁部を保持し且つ2つのケース部材の間に挟持される保持枠5を有するフィルタエレメント6と、を備え、各ケース部材が溶着により保持枠に接合されていることにより濾過室Sが形成されており、流出口側にポンプPが接続されている。2つのケース部材うちの少なくとも一方には、保持枠との接合部7,8から濾過室の内側方向へ所定の間隔離れた位置に、フィルタエレメント側に突出する凸状壁部22,32が設けられており、凸状壁部は、濾過時の圧力変化により各ケース部材が変形したときに保持枠と当接するように設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体フィルタに関し、更に詳しくは、溶着による部材同士の接合を確実なものとすることができるとともに、溶着時に発生する溶着バリが濾過室内へ侵入するのを防止することができる流体フィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の自動変速機等に用いられる流体フィルタとして、流出口を有する樹脂製の上側ケース部材と、流入口を有する樹脂製の下側ケース部材と、濾材及び濾材の周縁部を保持し且つ両ケース部材の間に挟持される樹脂製の保持枠を有するフィルタエレメントと、を備えてなるものが一般に知られている。このような流体フィルタは、例えば、レーザ溶着や振動溶着等により、部材同士を接合して一体化されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−353783号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のような構造においては、溶着時に発生する溶着バリが濾過室内に露出してしまうため、この溶着バリが脱落してしまうことにより、濾材の目詰まりや流体流路の閉塞など、不具合の原因となってしまう、といった問題があった。
【0005】
また、溶着部に発生する溶着バリが外部に露出するのを防止する目的で、溶着部の近傍に目隠し用の壁部を設けることが知られている。このような壁部は、通常、その先端が相手側部材に当接しないように、相手側部材との間に隙間が生じる長さに設定されている。これは、溶着の進行が阻害されないようにして部材同士の接合を確実なものとするためである。しかしながら、このような壁部を設けたとしても、この隙間から溶着バリが流出してしまう恐れがあった。
【0006】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、溶着による部材同士の接合を確実なものとすることができるとともに、溶着時に発生する溶着バリが濾過室内へ侵入するのを防止することができる流体フィルタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、流出口を有する樹脂製の上側ケース部材と、流入口を有する樹脂製の下側ケース部材と、濾材及び該濾材の周縁部を保持し且つ前記上側ケース部材及び前記下側ケース部材の間に挟持される樹脂製の保持枠を有するフィルタエレメントと、を備え、前記上側ケース部材及び前記下側ケース部材が、溶着により前記保持枠にそれぞれ接合されていることにより濾過室が形成されており、前記流出口には、濾過対象となる流体を前記濾過室から吸入するポンプが直接又は配管を介して接続されている流体フィルタであって、前記上側ケース部材及び前記下側ケース部材の少なくとも一方には、前記保持枠との接合部から前記濾過室の内側方向へ所定の間隔離れた位置に、前記フィルタエレメント側に突出するように形成された凸状壁部が設けられており、前記凸状壁部は、濾過時の圧力変化により前記上側ケース部材及び前記下側ケース部材が変形したときに、前記保持枠と当接するように設けられていることを要旨とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1において、前記凸状壁部と当接する前記保持枠の当接面は、上下方向に延びるように形成された壁面であって、前記接合部から離れた位置の壁面ほど前記濾過室の内側方向へ向かうように傾斜する傾斜面とされていることを要旨とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2において、前記流体フィルタは自動変速機用オイルフィルタであることを要旨とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の流体フィルタによると、上側ケース部材及び下側ケース部材の少なくとも一方には、保持枠との接合部から濾過室の内側方向へ所定の間隔離れた位置に、フィルタエレメント側に突出するように形成された凸状壁部が設けられており、この凸状壁部は、濾過時の圧力変化により上側ケース部材及び下側ケース部材が変形したときに、保持枠と当接するように設けられている。このような構成により、溶着時に発生する溶着バリは接合部と凸状壁部との間の空間に収容される。そして、流体が濾過室内を流通する濾過時においては、凸状壁部が保持枠と当接していることにより、溶着バリが収容される空間が濾過室の空間から隔離される。その結果、溶着バリの濾過室内への侵入を防止することができる。また、凸状壁部は濾過時に保持枠と当接するように設けられているので、溶着時においては、凸状壁部と保持枠との当接による接合部の溶け込みの阻害が発生しない。このため、接合部は、設定された溶着量(溶け込み量)をもって溶着される。このため、溶着による部材同士の接合を確実なものとすることができる。
【0011】
また、前記凸状壁部と当接する前記保持枠の当接面は、上下方向に延びるように形成された壁面であって、前記接合部から離れた位置の壁面ほど前記濾過室の内側方向へ向かうように傾斜する傾斜面とされている場合は、ケース部材の変形が進行するほど、凸状壁部と保持枠とが強固に圧接される。このため、より確実に溶着バリの濾過室内への侵入を防止することができる。
【0012】
更に、前記流体フィルタが自動変速機用オイルフィルタである場合は、好適にオイルを濾過することができる自動変速機を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
本発明について、本発明による典型的な実施形態の非限定的な例を挙げ、言及された複数の図面を参照しつつ以下の詳細な記述にて更に説明するが、同様の参照符号は図面のいくつかの図を通して同様の部品を示す。
【図1】実施例に係る流体フィルタの縦断面図である。
【図2】実施例に係る流体フィルタの要部断面図である。
【図3】実施例に係る流体フィルタの要部拡大断面図である。
【図4】実施例に係る流体フィルタの作用を説明するための説明図である。
【図5】実施例に係る流体フィルタの作用を説明するための説明図である。
【図6】他の実施形態に係る流体フィルタを説明するための説明図である。
【図7】他の実施形態に係る流体フィルタの作用を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
ここで示される事項は例示的なものおよび本発明の実施形態を例示的に説明するためのものであり、本発明の原理と概念的な特徴とを最も有効に且つ難なく理解できる説明であると思われるものを提供する目的で述べたものである。この点で、本発明の根本的な理解のために必要である程度以上に本発明の構造的な詳細を示すことを意図してはおらず、図面と合わせた説明によって本発明の幾つかの形態が実際にどのように具現化されるかを当業者に明らかにするものである。
【0015】
本実施形態に係る流体フィルタ(1)は、流出口(2A)を有する樹脂製の上側ケース部材(2)と、流入口(3A)を有する樹脂製の下側ケース部材(3)と、濾材(4)及び該濾材の周縁部を保持し且つ上側ケース部材及び下側ケース部材の間に挟持される樹脂製の保持枠(5)を有するフィルタエレメント(6)と、を備え、上側ケース部材及び下側ケース部材が、溶着により保持枠にそれぞれ接合されていることにより濾過室(S)が形成されており、流出口には、濾過対象の流体を濾過室から吸入するポンプ(P)が直接又は配管を介して接続されている流体フィルタである(例えば、図1等参照)。
【0016】
上記「上側ケース部材」及び上記「下側ケース部材」の構造、形状、大きさ等は特に問わない。上側ケース部材及び下側ケース部材の材質は、樹脂である限り特に問わないが、例えば、レーザ透過性樹脂であることができる。また、上側ケース部材及び下側ケース部材は、下方または上方を開放した箱状に形成されていることができる(例えば、図1等参照)。
【0017】
上記「濾材」の大きさ、形状等は特に問わない。この濾材の材質としては、例えば、不織布、織物、紙等を挙げることができる。
上記「保持枠」の構造、大きさ、形状等は特に問わない。この保持枠の材質は、樹脂である限り特に問わないが、例えば、レーザ吸収性樹脂等を挙げることができる。この保持枠の上端面及び下端面には、例えば、それぞれ断面凸形状の凸縁部(51,52)が保持枠の周縁に沿って形成されていることができる(例えば、図2等参照)。
上記「フィルタエレメント」の構成、形状、大きさ等は特に問わない。このフィルタエレメントは、例えば、インサート成形により、上記濾材の周縁部に樹脂製の上記保持枠が形成されている形態であることができる。
【0018】
本実施形態に係る流体フィルタは、例えば、上側ケース部材の周縁部(21)の下端面、及び上記保持枠の上端面、並びに、下側ケース部材の周縁部(31)の上端面、及び上記保持枠の下端面、がそれぞれ接合されて接合部(7,8)とされる形態であることができる(例えば、図1〜図3等参照)。
上記「接合部」の接合形態は特に限定されないが、例えば、レーザ溶着、振動溶着、超音波溶着、高周波溶着等により接合されている形態であることができる。特に、レーザ溶着により接合されている場合、上側ケース部材及び下側ケース部材の材質はレーザ透過性樹脂であり、保持枠の材質はレーザ吸収性樹脂であることができる。
【0019】
本実施形態に係る流体フィルタでは、上側ケース部材及び下側ケース部材の少なくとも一方には、保持枠との接合部から濾過室の内側方向へ所定の間隔離れた位置に、フィルタエレメント側に突出するように形成された凸状壁部(22,32)が設けられている(例えば、図2、図3等参照)。そして、この凸状壁部は、濾過時の圧力変化により上側ケース部材及び下側ケース部材が変形したときに、保持枠と当接するように設けられている(例えば、図4、図5等参照)。
なお、上記「所定の間隔」は特に限定されないが、通常、溶着時に生じるバリの大きさを考慮して、バリを収容するのに十分な空間が確保できる間隔に設定される。
【0020】
凸状壁部と当接する保持枠の当接面は特に限定されないが、例えば、(i)保持枠の上端面又は下端面(例えば、図4等参照)、(ii)保持枠の上下方向に延びるように形成された壁面(例えば、図6、図7等参照)等であることができる。上記(ii)の場合、上記壁面は、例えば、上記接合部から離れた位置の壁面ほど濾過室の内側方向へ向かうように傾斜する傾斜面であることができる(例えば、図6、図7等参照)。
【0021】
また、本実施形態に係る流体フィルタには、例えば、上側ケース部材及び下側ケース部材の少なくとも一方に、保持枠との接合部から濾過室の外側方向へ所定の間隔離れた位置に、フィルタエレメント側に突出するように形成された外側凸状壁部(23,33)が設けられていることができる(例えば、図2、図3等参照)。これにより、溶着の際に接合部に発生する溶着バリ(B)のうち、濾過室の外側に発生した溶着バリが覆われて外部に露出しないため、意匠性を高めることができる。
【実施例】
【0022】
以下、図面を用いて実施例により本発明を具体的に説明する。なお、本実施例では、本発明に係る「流体フィルタ」として、自動変速機に用いられるオイルフィルタを例示する。
【0023】
(1)オイルフィルタの構成
本実施例に係るオイルフィルタ1は、図1に示すように、流出口2Aを有する上側ケース部材2と、流入口3Aを有する下側ケース部材3と、濾材4及び濾材4の周縁部を保持し且つ上側ケース部材2及び下側ケース部材3の間に挟持される保持枠5を有するフィルタエレメント6と、を備えている。オイルフィルタ1は、レーザ透過性樹脂からなる上側ケース部材2及び下側ケース部材3がレーザ吸収性樹脂からなる保持枠5にレーザ溶着されている。そしてこれらの部材により濾過室Sが形成されている。
【0024】
オイルフィルタ1は、オイルパン(図示せず)内でオイルに浸漬されている。オイルパン内には、自動変速機側で使用されたオイルが貯留されており、流入口3Aは、このオイルパン内のオイルを流入可能にオイルパン内に開口している。また、流出口2Aには、オイルを自動変速機へ供給するためのオイルポンプPが図示しない配管を介して接続されている。オイルパン内のオイルは、このオイルポンプが作動することにより、流入口3Aから濾過室S内に流入して濾材4により濾過される。
【0025】
フィルタエレメント6は、濾材4及び保持枠5をインサート成形により一体成形して形成されている。図1及び図2に示すように、濾材4はひだ折り状に形成されている。保持枠5の上端面及び下端面には、それぞれ断面凸形状の凸縁部51,52が全周に渡って形成されている。凸縁部51,52は、図2に示すように、上側ケース部材2の周縁部21の下端面及び下側ケース部材3の周縁部31の上端面と溶着されて接合部7,8を形成している。
【0026】
図1に示すように、上側ケース部材2は、下方を開放した箱状に形成されている。図2及び図3に示すように、上側ケース部材2の周縁部21の下端面は、保持枠5の凸縁部51と当接して溶着されて接合部7を形成している。また、周縁部21の下端面には、保持枠との接合部7から濾過室Sの内側方向へ所定の間隔離れた位置に、フィルタエレメント6側に突出するように形成された凸状壁部22が設けられている。これにより、接合部7と凸状壁部22との間には空間が形成されており、この空間内に溶着時に発生する溶着バリBが収容されている。
また、図1に示すように、下側ケース部材3は、上方を開放した箱状に形成されている。図2に示すように、下側ケース部材3の周縁部31の上端面は、保持枠5の凸縁部52と当接して溶着されて接合部8を形成している。また、周縁部31の上端面には、保持枠との接合部8から濾過室Sの内側方向へ所定の間隔離れた位置に、フィルタエレメント6側に突出するように形成された凸状壁部32が設けられている。これにより、接合部8と凸状壁部32との間には空間が形成されており、この空間内に溶着時に発生する溶着バリBが収容されている。
【0027】
また、図1に示すように、上側ケース部材2の周縁部21の下端面には、保持枠との接合部7から濾過室Sの外側方向へ所定の間隔離れた位置に、フィルタエレメント6側に突出するように形成された外側凸状壁部23が設けられている。これにより、接合部7と外側凸状壁部23との間には空間が形成されており、この空間内に溶着時に発生する溶着バリBが収容されている。
【0028】
また、図1に示すように、下側ケース部材3の周縁部31の上端面には、保持枠との接合部8から濾過室Sの外側方向へ所定の間隔離れた位置に、フィルタエレメント6側に突出するように形成された外側凸状壁部33が設けられている。これにより、接合部8と外側凸状壁部33との間には空間が形成されており、この空間内に溶着時に発生する溶着バリBが収容されている。
【0029】
図4及び図5に示すように、凸状壁部22,32は、濾過時の圧力変化により上側ケース部材2及び下側ケース部材3が変形したときに、保持枠5と当接するように設けられている。この凸状壁部22,32の先端と、この先端が当接する保持枠5の上端面と、の間には隙間が生じている。また、本実施例において、凸状壁部22,32と当接する保持枠5の当接面は、それぞれ保持枠5の上端面及び下端面である。
【0030】
(2)オイルフィルタの作用
次に、上記構成のオイルフィルタ1の作用について説明する。オイルフィルタ1は、オイルポンプPが作動していない通常状態では、図1〜図3に示すように、上側ケース部材2及び下側ケース部材3の変形は生じておらず、凸状壁部22、32は保持枠5に当接していない。オイルの濾過のためにオイルポンプPを作動させると、図4及び図5に示すように、濾過室S内の内圧が下がり、この圧力変化により、上側ケース部材2及び下側ケース部材3が濾過室Sの内側方向に変形し、これにより、凸状壁部22,32は保持枠5に当接する。そして、凸状壁部22,32が保持枠5と当接していることにより、溶着バリBが収容される空間が濾過室Sの空間から隔離される。従って、オイルポンプPが作動して、オイルが濾過室S内を流通している状態であっても、溶着バリBが濾過室S内に流出することはない。
【0031】
(3)実施例の効果
以上より、本実施例のオイルフィルタ1によると、上側ケース部材2及び下側ケース部材3の各周縁部21,31には、保持枠5との接合部7,8から濾過室Sの内側方向へ所定の間隔離れた位置に、フィルタエレメント6側に突出するように形成された凸状壁部22,32がそれぞれ設けられており、この凸状壁部22,32は、濾過時の圧力変化により上側ケース部材2及び下側ケース部材3が変形したときに、保持枠5と当接するように設けられている。このような構成により、溶着時に発生する溶着バリBは接合部7,8と凸状壁部22,32との間の空間に収容される。そして、オイルが濾過室S内を流通する濾過時においては、凸状壁部22,32が保持枠5と当接していることにより、溶着バリBが収容される空間が濾過室Sの空間から隔離される。その結果、溶着バリBの濾過室S内への侵入を防止することができる。また、凸状壁部22,23は濾過時に保持枠5と当接するように設けられているので、溶着時においては、凸状壁部22,32と保持枠5との当接による接合部7,8の溶け込みの阻害が発生しない。このため、接合部7,8は、設定された溶着量(溶け込み量)をもって溶着される。このため、溶着による部材同士の接合を確実なものとすることができる。
【0032】
また、本実施例では、上側ケース部材2及び下側ケース部材3の各周縁部21,31に、保持枠5との接合部7,8から濾過室Sの外側方向へ所定の間隔離れた位置に、フィルタエレメント6側に突出するように形成された外側凸状壁部23,33が設けられているので、溶着の際に接合部7,8に発生する溶着バリBのうち、濾過室Sの外側に発生した溶着バリが覆われて外部に露出しないため、意匠性を高めることができる。
【0033】
尚、本発明においては、上記実施例に限られず、目的、用途に応じて本発明の範囲内で種々変更した実施例とすることができる。即ち、上記実施例では、凸状壁部22と当接する保持枠5の当接面を、保持枠5の上端面としたが、これに限定されず、例えば、図6及び図7に示すように、凸状壁部22と当接する保持枠5の当接面を、上下方向に延びるように形成された壁面であって、接合部7から離れた位置の壁面ほど濾過室Sの内側方向へ向かうように傾斜する傾斜面としてもよい。これにより、上側ケース部材2の変形が進行するほど、凸状壁部22と保持枠5とが強固に圧接され、より確実に溶着バリBの濾過室S内への侵入を防止することができる。また同様に、凸状壁部32と当接する保持枠5の当接面を、上下方向に延びるように形成された壁面であって、接合部8から離れた位置の壁面ほど濾過室Sの内側方向へ向かうように傾斜する傾斜面としてもよい。
【0034】
また、上記実施例では、上側ケース部材2及び下側ケース部材3の両方に、同様の凸状壁部22,23を設けるようにしたが、これに限定されず、例えば、上側ケース部材及び下側ケース部材のいずれか一方にのみ凸状壁部の設ける形態としてもよい。上側ケース部材2に凸状壁部22を設けた場合には、溶着バリBが濾過後の濾過室S内に侵入することを防止できる利点がある。
【0035】
更に、上記実施例では、上側ケース部材2及び下側ケース部材3に外側凸状壁部23,33をそれぞれ設けるようにしたが、これに限定されず、例えば、外側凸状壁部を上側ケース部材及び下側ケース部材のいずれか一方のケース部材にのみ設けるようにしてもよいし、いずれのケース部材にも設けないようにしてもよい。
【0036】
また、上記実施例では、本発明に係る流体フィルタとして、自動変速機に用いられるオイルフィルタ1を例示したが、これに限定されず、例えば、内燃機関の吸気系統に設けられるエアフィルタなど、濾過室内の圧力が外部圧力よりも低くなる状態で用いられる流体フィルタ全般に適用することができる。
【0037】
前述の例は単に説明を目的とするものでしかなく、本発明を限定するものと解釈されるものではない。本発明を典型的な実施形態の例を挙げて説明したが、本発明の記述および図示において使用された文言は、限定的な文言ではなく説明的および例示的なものであると理解される。ここで詳述したように、その形態において本発明の範囲または精神から逸脱することなく、添付の特許請求の範囲内で変更が可能である。ここでは、本発明の詳述に特定の構造、材料および実施例を参照したが、本発明をここにける開示事項に限定することを意図するものではなく、むしろ、本発明は添付の特許請求の範囲内における、機能的に同等の構造、方法、使用の全てに及ぶものとする。
【0038】
本発明は上記で詳述した実施形態に限定されず、本発明の請求項に示した範囲で様々な変形または変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0039】
流体を濾過する技術として広く利用される。特に、乗用車、バス、トラック等の他、列車、汽車等の鉄道車両、建設車両、農業車両、産業車両などの車両の自動変速機用流体フィルタとして好適に利用される。
【符号の説明】
【0040】
1;オイルフィルタ、2;上側ケース部材、21;上側ケース部材の周縁部、22;凸状壁部、22,32;凸状壁部、23,33;外側凸状壁部、2A;流出口、3;下側ケース部材、31;下側ケース部材の周縁部、3A;流入口、4;濾材、5;保持枠、51,52;凸縁部、6;フィルタエレメント、7,8;接合部、B;溶着バリ、P;オイルポンプ、S;濾過室。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流出口を有する樹脂製の上側ケース部材と、
流入口を有する樹脂製の下側ケース部材と、
濾材及び該濾材の周縁部を保持し且つ前記上側ケース部材及び前記下側ケース部材の間に挟持される樹脂製の保持枠を有するフィルタエレメントと、を備え、
前記上側ケース部材及び前記下側ケース部材が、溶着により前記保持枠にそれぞれ接合されていることにより濾過室が形成されており、
前記流出口には、濾過対象となる流体を前記濾過室から吸入するポンプが直接又は配管を介して接続されている流体フィルタであって、
前記上側ケース部材及び前記下側ケース部材の少なくとも一方には、前記保持枠との接合部から前記濾過室の内側方向へ所定の間隔離れた位置に、前記フィルタエレメント側に突出するように形成された凸状壁部が設けられており、
前記凸状壁部は、濾過時の圧力変化により前記上側ケース部材及び前記下側ケース部材が変形したときに、前記保持枠と当接するように設けられていることを特徴とする流体フィルタ。
【請求項2】
前記凸状壁部と当接する前記保持枠の当接面は、上下方向に延びるように形成された壁面であって、前記接合部から離れた位置の壁面ほど前記濾過室の内側方向へ向かうように傾斜する傾斜面とされている請求項1記載の流体フィルタ。
流体フィルタ。
【請求項3】
前記流体フィルタは自動変速機用オイルフィルタである請求項1又は2記載の流体フィルタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−22568(P2013−22568A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−162535(P2011−162535)
【出願日】平成23年7月25日(2011.7.25)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【Fターム(参考)】