流体制御弁
【課題】小型でありながら大流量の流体を流すことができる流体制御弁を提供する
【解決手段】着座面6aと弁座面4aとの間に弁内流路41を介して上流側流路に連通する環状有底溝と、弁内流路42を介して下流側流路に連通する環状有底溝とを互い違いに多重に設けたものにおいて、弁内流路41有底溝に対する開口である連通口を当該有底溝の少なくとも側面に形成するようにした。
【解決手段】着座面6aと弁座面4aとの間に弁内流路41を介して上流側流路に連通する環状有底溝と、弁内流路42を介して下流側流路に連通する環状有底溝とを互い違いに多重に設けたものにおいて、弁内流路41有底溝に対する開口である連通口を当該有底溝の少なくとも側面に形成するようにした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばガスの流量を制御するマスフローコントローラ等に用いられる流体制御弁に関するものである。
【背景技術】
【0002】
流体制御弁とは、上流側流路と下流側流路との間に介在してこれらに流れる流体の流量を制御したり、開閉したりするものである。例えば、半導体プロセスに用いられるガスの流量を制御する流体制御弁として、特許文献1に示すような構成のものが知られている。
【0003】
この特許文献1に示された流体制御弁は、弁座面(又は着座面)に、前記上流側流路に連通する円環状の有底溝(以下、第1有底溝とも言う)と、前記下流側流路に連通する円環状の有底溝(以下、第2有底溝とも言う)と、交互に多重に設けたものである。
【0004】
これら有底溝には弁体部材又は弁座部材に設けられて前記上流側流路及び下流側流路にそれぞれ連通する弁内流路が設けてあり、この弁内流路が前記各有底溝の底面に接続されて連通口が形成されるように構成されている。
【0005】
そして、前記着座面と弁座面が密接した状態では、前記第1有底溝の開口と第2有底溝の開口との連通が遮断されて前記上流側流路と下流側流路とが接続されない閉状態となる一方で、前記着座面と弁座面とが離間した状態では、それらの隙間を介して前記第1有底溝の開口と第2有底溝の開口とが連通し、前記上流側流路と下流側流路とが接続された開状態となる。
【0006】
ところで、この流体制御弁を流れる流量は、他の流路部分にボトルネックがないことを前提として、前記着座面と弁座面との離間距離に依存する。より厳密に言えば、第1有底溝と第2有底溝との間に形成される突条の総延長距離に前記離間距離を乗じた値が、制御のための流路断面積であり弁開度となることから、流体制御弁を流れる流量はこの弁開度に依存することとなる。
【0007】
しかして、上述したように有底溝を多重化することで、例えば一重の有底溝に比べ、突条の総延長距離を長くすることができるので、同一の流路断面積を確保するのに、その分だけ着座面と弁座面との離間距離を短くすることができ、弁体部材を駆動するアクチュエータの小型化などを促進することができる。また、逆に着座面と弁座面との離間距離が従来と同じであれば、前記流路断面積が大きくなるので、流量の増大や圧力損失の低減を図ることができる。
したがって、以上の理論に従えば、有底溝をできるだけ数多く設ければよいこととなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2010-230159号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、従来は、弁内流路の有底溝に対する連通口が、有底溝の底面に形成してあることから、該有底溝の幅を弁内流路の内径よりも小さくできず、このことによって有底溝の多重化に制限が生じている。
【0010】
かといって、弁内流路及び連通口の径を小さくして有底溝の幅の縮小を図ると弁内流路径あるいは連通口面積がボトルネックとなり、流量制御のワイドレンジ、すなわち最大可能制御流量が小さくなってしまう恐れがある。また、弁内流路の径を小さくすればするほど、その弁内流路の製作難易度が飛躍的に上がるという不具合や、目詰まりを起こし易くなるといった不具合も発生する。
【0011】
そこで本発明は、上記問題点を一挙に解決するためになされたものであり、小型でありながら大流量の流体を流すことができる流体制御弁を提供することをその主たる所期課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
すなわち、本発明に係る流体制御弁は、一方に着座面、他方に弁座面が形成された一対の弁部材を具備し、前記着座面又は弁座面のいずれか一方に、対応する弁部材の内部に設けた第1弁内流路を介して外部の上流側流路に連通する略環状の第1有底溝と、当該弁部材の内部に設けた第2弁内流路を介して外部の下流側流路に連通する略環状の第2有底溝とを交互にそれぞれ複数重形成し、前記着座面と弁座面が密接した状態では、前記第1有底溝の開口と第2有底溝の開口との連通が遮断されて前記上流側流路と下流側流路と接続されない閉状態となる一方で、前記着座面と弁座面が離間した状態では、それらの隙間を介して前記第1有底溝の開口と第2有底溝の開口とが連通し、前記上流側流路と下流側流路とが接続された開状態となる流体制御弁である。
そして、前記弁内流路の有底溝に対する連通口が、当該有底溝の少なくとも側面に形成されるようにしたことを特徴とする。
このようなものであれば、有底溝の幅が連通口の径の制限を受けなくなるので、有底溝の幅寸法を小さくして有底溝のより多重化を図れる。
【0013】
また、連通口が有底溝の側面に開口するので、有底溝の深ささえ十分にとれば、連通口の面積を大きくすることができ、十分な径の弁内流路にして製作の容易化や目詰まり防止を図ることも容易にできる。
【0014】
同様な作用効果を奏し得る態様として、以下のような流体制御弁も考えられる。すなわち、一方に着座面、他方に弁座面が形成された一対の弁部材を具備し、前記着座面又は弁座面のいずれか一方には、対応する弁部材の内部に設けた第1弁内流路を介して外部の上流側流路に連通する略環状の第1有底溝を複数重に形成するとともに、前記着座面又は弁座面の他方には、当該弁部材の内部に設けた第2弁内流路を介して外部の下流側流路に連通する略環状の第2有底溝を隣り合う第1有底溝の間の位置に複数重に形成し、前記着座面と弁座面が密接した状態では、前記第1有底溝の開口と第2有底溝の開口との連通が遮断されて前記上流側流路と下流側流路と接続されない閉状態となる一方で、前記着座面と弁座面が離間した状態では、その隙間を介して前記第1有底溝の開口と第2有底溝の開口とが連通し、前記上流側流路と下流側流路とが接続された開状態となるように構成された流体制御弁であって、前記第1弁内流路の第1有底溝に対する連通口又は前記第2弁内流路の第2有底溝に対する連通口のいずれか一方又は両方を、当該有底溝の底面及び側面に亘って形成したことを特徴とする流体制御弁である。
連通口の大きさを無理なく拡大するには、前記連通口が、有底溝の底面から側面に亘って形成されているものが好ましい。
【0015】
この流体制御弁を流れる最大可能流量が連通口によって低減することがないようにするには、連通口の面積を、この連通口の直前位置での弁内流路の断面積以上に設定しておくことが望ましい。
【0016】
弁内流路の具体的構成としては、前記弁内流路が有底溝の底方向から延びてその先端部が当該有底溝の底面及び側面に前記連通口として開口させてあるものを挙げることができる。
【0017】
また、前記弁内流路が有底溝の延伸方向と略直交する方向から延びてその側周面が当該有底溝の底面及び側面に前記連通口として開口させてあるものでも構わない。
【発明の効果】
【0018】
以上に述べた本発明によれば、有底溝の幅が連通口の径の制限を受けなくなるので、有底溝の幅寸法を小さくして有底溝のより多重化を図れる。その結果、例えば一重の有底溝に比べ、突条の総延長距離を長くすることができるので、同一の流路断面積を確保するのに、その分だけ着座面と弁座面との離間距離を短くすることができ、弁体部材を駆動するアクチュエータの小型化などを促進することができる。また、逆に着座面と弁座面との離間距離が従来と同じであれば、前記流路断面積が大きくなるので、流量の増大や圧力損失の低減を図ることができる。
また、連通口が有底溝の側面に開口するので、有底溝の深ささえ十分にとれば、連通口の面積を大きくすることができ、十分な径の弁内流路にして製作の容易化や目詰まり防止を図ることも容易にできる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1実施形態におけるマスフローコントローラの全体断面図。
【図2】同実施形態における流体制御弁の断面図。
【図3】同実施形態における弁座部材の平面図。
【図4】図3におけるA−A線断面図。
【図5】同実施形態における弁座部材の斜視図。
【図6】同実施形態に有底溝を示す拡大断面斜視図。
【図7】本発明の第2実施形態における流体制御弁の断面図。
【図8】同実施形態における弁座部材の斜視図。
【図9】同実施形態における弁座部材の平面図。
【図10】同実施形態における弁体部材の部分断面斜視図。
【図11】同実施形態における弁座部材の部分断面斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明に係る流体制御弁を組み込んだマスフローコントローラ100の一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0021】
<第1実施形態>
本実施形態のマスフローコントローラ100は、半導体製造装置に用いられるものであって、図1に示すように、測定対象となる流体が流れる流路を形成したボディ5と、このボディ5の流路51を流れる流体の流量をセンシングする流量検知機構2と、前記流路を流れる流体の流量を制御する流体制御弁3と、前記流量検知2の出力する測定流量を予め定めた設定流量に近づけるべく流体制御弁3の弁開度を制御する制御部(図示しない)とを具備する。
各部を詳述する。
【0022】
前記ボディ5は、前述した流路51が貫通するブロック状をなすものであり、当該流路51の上流端が、インレットポート5Aとして外部流入配管(図示しない)に接続されるとともに、下流端がアウトレットポート5Bとして外部流出配管(図示しない)に接続されている。
【0023】
流量検知機構2としては、種々考えられるが、ここでは、いわゆる熱式流量検知機構2を採用している。この熱式流量検知機構2は、前記流路51を流れる流体のうちの所定割合の流体が導かれるように当該流路51と並列接続した細管21と、この細管21に設けたヒータ24及びその前後に設けた一対の温度センサ22、23とを具備したものである。そして、前記細管21に流体が流れると、二つの温度センサ22、23の間にその質量流量に対応した温度差が生じることから、この温度差に基づいて流量を測定するように構成してある。
【0024】
この実施形態では、前記細管21、ヒータ24、温度センサ22、23及びその周辺の電気回路を収容する長尺状の筐体25を設ける一方、ボディ5の流路51から一対の分岐流路2a、2bを設け、この筐体25を前記ボディ5に取り付けることによって、前記細管21の導入口が上流側の分岐流路2aに接続され、該細管21の導出口が下流側の分岐流路2bに接続されるように構成してある。
なお、流量センサはこの方式に限定されるものではない。
【0025】
流体制御弁3は、前記流路51上に設けられたもので、一対の弁部材たる弁座部材4及び弁体部材6と、前記弁体部材6を駆動して弁開度、すなわち弁座部材4と弁体部材6との離間距離を設定するアクチュエータ7とを具備したものである。
【0026】
弁座部材4は、図2等に示すように、その底面とは反対側の端面を弁座面4aとするとともに、底面側を小径、弁座面側を大径にした2段円柱形状をなすものであり、その内部には第1弁内流路41と第2弁内流路42とが設けてある。
【0027】
第1弁内流路41は、一端を当該弁座部材41の底面に開口させた第1大径路41aと、この第1大径路41aの他端部から分岐して当該弁座部材41の軸方向に延び、前記弁座面4aに連通する複数の第1小径路41bとからなるものである。
【0028】
前記第2弁内流路42は、一端を当該弁座部材4における小径部分の側面に開口させた半径方向に延びる第2大径路42aと、前記第2大径路42aから分岐して当該弁座部材4の軸方向に延び、前記弁座面4aに連通する複数の第2小径路42bからなる、
【0029】
この弁座部材4は、ボディ5に設けた円柱状の凹部52に嵌め入れてある。この凹部52は、ボディ5の流路51を分断するように配置してあり、この凹部52によって分断された流路51のうち、上流側の流路(以下、上流側流路とも言う)51(A)が、例えば当該凹部52の底面に開口し、この凹部52より下流側の流路(以下、下流側流路とも言う)52(B)が、例えばこの凹部52の側面に開口するように構成してある。
【0030】
そして、前記弁座部材4を前記凹部52に嵌め入れた状態では、当該弁座部材4の大径部分が凹部52の内側周面に略隙間なく嵌合する一方、弁座部材4の小径部分は凹部52の内側周面との間に隙間が形成され、ボディ5の上流側流路51(A)が前記第1弁内流路41に凹部52の底面を介して連通するとともに、ボディ5の下流側流路51(B)が前記第2弁内流路42に凹部52の側周面を介して連通することとなる。又、前記弁座面4aはこの凹部52の周囲のボディ外表面と面一となる。
【0031】
弁体部材6は、ボディ5に取着された円筒状のケーシング部材72に収容されて弁座部材4に対向配置された概略円板状をなすものである。具体的にこの弁体部材6は、その周縁部を、薄肉円環状をなすダイヤフラム部材8を介して、前記ケーシング部材72に支持されている。そして、このダイヤフラム部材8が弾性変形することにより、当該弁体部材6が動き、その着座面6aが前記弁座面4aに接離するように構成してある。なお、この着座面6aは平面である。
【0032】
アクチュエータ7は、例えば、ピエゾ素子を複数枚積層して形成されるピエゾスタック71を備えたものである。このピエゾスタック71は、前記ケーシング部材74内に収容されており、その先端部が棒状の中間接続材73を介して前記弁体部材6の反着座面側に接続してある。そして、一定電圧が印加されることによってピエゾスタック71が伸長して、弁体部材6を移動させ、その着座面6aを弁座面4aに押し付けて、閉状態となるように構成してある。また、一定電圧を下回る電圧であれば、その電圧値に応じた距離だけ弁座面4aと着座面6aとが離間する。そして、この隙間を通じて上流側流路51(A)と下流側流路(B)とが連通する。すなわち、この流体制御弁3は、ノーマルオープンのものである。
【0033】
しかして、この実施形態では、図2〜図6に示すように、前記弁座部材4の弁座面4aに開口する、複数重(4重以上)の円環状有底溝9を形成している。この有底溝9には、2種類あり、幅狭で深いもの(以下、第1有底溝9(A)とも言う)と幅広で浅いもの(以下、第2有底溝9(B)とも言う)とが交互に配置してある。各有底溝は、いわゆる角溝であり、断面が矩形状をなす。
【0034】
前記第2有底溝9(B)には、第2弁内流路42の他端側、すなわち第2小径路42bが連通させてある。しかして、この第2有底溝9(B)の溝幅は、第2小径路42bの溝近傍における実質的な内径と同一若しくは若干大きく設定してあって、第2小径路42bの第2有底溝9(B)に対する連通口42cが、第2有底溝9(B)の底面にのみ現れるように構成してある。
【0035】
前記第1有底溝9(A)には第1弁内流路41の他端側、すなわち第1小径路41bが連通させてある。しかして、この第1有底溝9(A)の溝幅は、第1小径路41bの溝近傍における実質的な内径よりも小さく設定してあって、特に図6に示すように、この第1小径路41bの第1有底溝9(A)に対する連通口41cが、当該第1有底溝9(A)の底面9b及び側面9aに亘って現れ、かつその開口面積が第1小径路41bの実質的な断面積(有効断面積)以上となるように構成してある。また、この実施形態において、第1小径路41bの連通口41cは1つの第1有底溝9(A)に対して複数設けてあるが、それら連通口41cの中心は、必ずしも第1有底溝9(A)の幅中心ライン上にあるわけではなく、偏位させたものもある。偏位させた連通口41cは、第1有底溝9(A)の底面の他、一方の側面にのみ現れたり、一方の側面に現れる面積が他方の側面に現れる面積と異なっていたりする。このように、開口中心を偏位させているのは、第1小径路41bの加工容易性や他の構成要素との干渉を避けるためである。
【0036】
ところで、この実施形態では、弁体部材6の着座面6aが、弁座部材4における最外周の有底溝9とその1つ内側の有底溝9との間に形成される突条10までを覆う大きさに構成してある。したがって、最外周の有底溝9には、ダイヤフラム部材8が対向することとなる。
【0037】
一方、ダイヤフラム部材8にはある程度の径方向の幅が必要なため、この実施形態では、ダイヤフラム部材8の幅に合わせて最外周の有底溝9の幅を特に大きくしてある。
【0038】
その結果、仮にこの最外周有底溝9を圧力が高い上流側流路51(A)に連通させると、幅広の最外周有底溝の開口面積に圧力を乗じた大きな開方向の力が弁体部材6に作用することとなり、確実な閉状態を保つためには不利となる。そこで、この実施形態では、最外周の有底溝9を下流側流路51(B)に連通させて前記第2有底溝9(B)とし、これを基準としてその内側の有底溝の順番、つまり第1有底溝9(A)か第2有底溝9(B)にするかを決めている。
【0039】
次にかかる流体制御弁3の動作を説明する。
前述した構成から明らかなように、ボディ5の上流側流路51(A)は、第1弁内流路41を介して第1有底溝9(A)に連通している一方、ボディ5の下流側流路51(B)は、第2弁内流路42を介して第2有底溝9(B)に連通している。
【0040】
ここでアクチュエータ7に電圧を印加すると、弁体部材6が弁座部材4に向かって移動し、着座面6aが弁座面4a、すなわち突条10の頂面に密着する。その結果、この突条10及び着座面6aによって、第1有底溝9(A)に形成されている第1弁内流路41の連通口41cと第2有底溝9(B)に形成されている第2弁内流路42の連通口42cとの連通が遮断される。すなわち、第1弁内流路41に連通している上流側流路51(A)と、第2弁内流路42に連通している下流側流路51(B)とが遮断され、流体の流れが阻止される。これが閉状態である。
【0041】
一方、アクチュエータ7への電圧印加をやめると、弁体部材6が弁座部材4とは逆方向に移動し、着座面6aが弁座面4a、すなわち突条10の頂面から最大限まで離間する。その結果、流体は、第1弁内流路41の連通口41cから、突条10と着座面6aとの隙間を通って第2弁内流路42の連通口42cに流れ込む。これが全開状態である。
【0042】
流体流量を制御する場合は、アクチュエータ7に、前記規定最大電圧と0との間の電圧を印加する。それによって、突条10の頂面と着座面6aとの間の隙間の距離を調整して流量を制御する。これが流量制御状態であり、この明細書では、前記全開状態と流量制御状態とを総称して開状態と定義している。
しかして、この流体制御弁3の弁開度は、突条10の頂面と着座面6aとの間の隙間の距離に前記突条10の総延長距離を乗じた値で決まるが、本実施形態の構成によれば、第1有底溝9(A)の溝幅を第1小径路41bの有効内径よりも小さくしているので、従来のように溝幅を第1小径路41bの有効内径以上に設定したものに比べ、有底溝の9の多重化を図れ、前記突条10の総延長距離を長くすることができる。したがって、従来より弁体部材6の離間量が少なくても同等の流路断面積を確保でき、従来と等流量の流体を流すことができる。逆に言えば、従来と同じだけ弁体部材6を離間させれば、より多くの流量を流すことができる。
【0043】
しかも、幅が狭い第1有底溝9(A)に形成される連通口41cの面積は、溝側面を利用して従来より大きな面積、すなわち溝幅を直径とする円の面積を超える面積を担保できるので、この連通口41cが流量のボトルネックとなることはないし、第1小径路41bの内径を小さくする必要もないので、穿孔が困難になることもない。
【0044】
このように本実施形態によれば、アクチュエータの小型化や、弁座面、着座面の小型化によって従来よりもコンパクト化を図れるし、逆に従来と同等の大きさで大流量化を図れる。
【0045】
<第2実施形態>
この第2実施形態では、前記第1実施形態とは異なり、弁座部材4と弁体部材6の配置が逆になっている。すなわち、アクチュエータ7側に動かない弁座部材4が設けられており、この弁座部材4の反アクチュエータ7側、すなわちボディ5側に弁体部材6が、弁座部材4の中心を貫通させた接続棒Pを介して接続されている。また、これら弁座部材4及び弁体部材6は、ボディ5に設けた凹部52に嵌め込まれている。この凹部52は前記第1実施形態同様、ボディ5の流路51を分断するように配置してある。
【0046】
そして、アクチュエータ7に電圧を印加しないノーマル状態では、弁体部材6が周囲の弾性体(ここでは板バネ)によって付勢され、弁座部材4に密着する一方、アクチュエータ7に電圧を印加してこれを伸長させると、弁体部材6が弁座部材4から離間する方向に移動し、開状態となる。すなわち、この流体制御弁3は、ノーマルクローズのものである。
【0047】
しかしてこの実施形態では、弁体部材6の着座面4a及び弁座部材4の弁座面4aにそれぞれ複数重の円環状有底溝9を設けている。弁体部材6に設けた有底溝が第1有底溝9(A)であり、弁座部材4に設けた有底溝が第2有底溝9(B)である。
【0048】
第1有底溝9(A)と第2有底溝9(B)とは互い違いになっており、閉状態においては、隣り合う第1有底溝9(A)の間に形成される突条(以下、第1突条10(A)とも言う)が、第2有底溝9(B)の開口を閉塞する一方、隣り合う第2有底溝9(B)の間に形成される突条(以下、第2突条10(B)とも言う)が第1有底溝9(A)の開口を閉塞する。この実施形態では、第2突条10(B)の表面に前記有底溝よりも浅い円環状の溝をさらに設け、圧力損失の低減化を図っているが、これを第1突条10(A)に設けてもよいし、第1突条10(A)及び第2突条10(B)の双方に設けてもよい。
【0049】
また、弁体部材6に第1弁内流路41を設けてこれを前記第1有底溝9(A)に連通させるとともに、弁座部材4に第2弁内流路42を設けてこれを前記第2有底溝9(B)に連通させている。
【0050】
第1弁内流路41は、その一端部を弁体部材6の側周面に開口させた径方向に延びるものであり、ここでは複数が放射状に設けてある。そして、この第1弁内流路41の側周面が前記各第1有底溝9(A)の底部に重合し、特に図10に部分断面斜視図を示すように、当該各第1有底溝9(A)の底面9b及び側面9aに亘って連通口41cとして開口する。この連通口41cの面積は、第1弁内流路41の実質的な断面積(有効断面積)以上となるように構成してある。また、この第1弁内流路41は軸方向にも分岐して弁体部材6の反着座面側に開口し、凹部52の底面に開口する上流側流路51(A)と連通する。
【0051】
第2弁内流路42は、その一端部が弁座部材4の側周面に開口して、凹部4の側周面に開口する下流側流路に連通するものである。ここでは、第1弁内流路41同様、複数の第2弁内流路42が放射状、すなわち径方向に延びるように構成してある。そして、この第2弁内流路42の側周面が前記各第2有底溝9(B)の底部に重合し、特に図11に部分断面斜視図を示すように、当該各第2有底溝9(B)の底面9b及び側面9aに亘って連通口42cとして開口する。この連通口42cの面積は、第2弁内流路42の実質的な断面積(有効断面積)以上となるように構成してある。
【0052】
このようなものであれば、基本的には第1実施形態と同様の効果を奏し得る。さらに言えば、第1実施形態とは異なり、第1有底溝9(A)及び第2有底溝9(B)の両方の溝幅を小さくできるので、より高密度化が可能になり、前記第1実施形態の効果がさらに顕著となる。
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
【0053】
例えば、前記各実施形態では流量制御弁であったが、ON/OFF開閉弁にも本発明を適用できる。また、アクチュエータはピエゾ式に限らず、電磁コイル等を用いてもよい。
有底溝の形状は角溝に限られず、U溝や丸溝でも構わない。U溝、丸溝の場合の側面及び底面の定義であるが、溝の深さ方向と略直交する面が底面、溝の深さ方向と略平行な面が側面であり、その中間の角度の面は、ここでは側面とする。
また、有底溝が、単一の溝形状ではなく、複数重の溝要素からなるような、すなわち、溝底面に1重以上の突条が設けられているような形状であっても構わない。なお、この突条はその頂面が対向する弁部材に、閉状態で接するものでも離間するものでもよい。
【0054】
その他、前述した実施形態や変形実施形態の一部又は全部を適宜組み合わせてよいし、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0055】
3・・・流体制御弁
4・・・弁座部材(一方の弁部材)
41・・・第1弁内流路
42・・・第2弁内流路
4a・・・弁座面
41c・・・連通口
6・・・弁体部材(他方の弁部材)
6a・・・着座面
9(A)・・・第1有底溝
9(B)・・・第2有底溝
9a・・・溝側面
9b・・・溝底面
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばガスの流量を制御するマスフローコントローラ等に用いられる流体制御弁に関するものである。
【背景技術】
【0002】
流体制御弁とは、上流側流路と下流側流路との間に介在してこれらに流れる流体の流量を制御したり、開閉したりするものである。例えば、半導体プロセスに用いられるガスの流量を制御する流体制御弁として、特許文献1に示すような構成のものが知られている。
【0003】
この特許文献1に示された流体制御弁は、弁座面(又は着座面)に、前記上流側流路に連通する円環状の有底溝(以下、第1有底溝とも言う)と、前記下流側流路に連通する円環状の有底溝(以下、第2有底溝とも言う)と、交互に多重に設けたものである。
【0004】
これら有底溝には弁体部材又は弁座部材に設けられて前記上流側流路及び下流側流路にそれぞれ連通する弁内流路が設けてあり、この弁内流路が前記各有底溝の底面に接続されて連通口が形成されるように構成されている。
【0005】
そして、前記着座面と弁座面が密接した状態では、前記第1有底溝の開口と第2有底溝の開口との連通が遮断されて前記上流側流路と下流側流路とが接続されない閉状態となる一方で、前記着座面と弁座面とが離間した状態では、それらの隙間を介して前記第1有底溝の開口と第2有底溝の開口とが連通し、前記上流側流路と下流側流路とが接続された開状態となる。
【0006】
ところで、この流体制御弁を流れる流量は、他の流路部分にボトルネックがないことを前提として、前記着座面と弁座面との離間距離に依存する。より厳密に言えば、第1有底溝と第2有底溝との間に形成される突条の総延長距離に前記離間距離を乗じた値が、制御のための流路断面積であり弁開度となることから、流体制御弁を流れる流量はこの弁開度に依存することとなる。
【0007】
しかして、上述したように有底溝を多重化することで、例えば一重の有底溝に比べ、突条の総延長距離を長くすることができるので、同一の流路断面積を確保するのに、その分だけ着座面と弁座面との離間距離を短くすることができ、弁体部材を駆動するアクチュエータの小型化などを促進することができる。また、逆に着座面と弁座面との離間距離が従来と同じであれば、前記流路断面積が大きくなるので、流量の増大や圧力損失の低減を図ることができる。
したがって、以上の理論に従えば、有底溝をできるだけ数多く設ければよいこととなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2010-230159号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、従来は、弁内流路の有底溝に対する連通口が、有底溝の底面に形成してあることから、該有底溝の幅を弁内流路の内径よりも小さくできず、このことによって有底溝の多重化に制限が生じている。
【0010】
かといって、弁内流路及び連通口の径を小さくして有底溝の幅の縮小を図ると弁内流路径あるいは連通口面積がボトルネックとなり、流量制御のワイドレンジ、すなわち最大可能制御流量が小さくなってしまう恐れがある。また、弁内流路の径を小さくすればするほど、その弁内流路の製作難易度が飛躍的に上がるという不具合や、目詰まりを起こし易くなるといった不具合も発生する。
【0011】
そこで本発明は、上記問題点を一挙に解決するためになされたものであり、小型でありながら大流量の流体を流すことができる流体制御弁を提供することをその主たる所期課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
すなわち、本発明に係る流体制御弁は、一方に着座面、他方に弁座面が形成された一対の弁部材を具備し、前記着座面又は弁座面のいずれか一方に、対応する弁部材の内部に設けた第1弁内流路を介して外部の上流側流路に連通する略環状の第1有底溝と、当該弁部材の内部に設けた第2弁内流路を介して外部の下流側流路に連通する略環状の第2有底溝とを交互にそれぞれ複数重形成し、前記着座面と弁座面が密接した状態では、前記第1有底溝の開口と第2有底溝の開口との連通が遮断されて前記上流側流路と下流側流路と接続されない閉状態となる一方で、前記着座面と弁座面が離間した状態では、それらの隙間を介して前記第1有底溝の開口と第2有底溝の開口とが連通し、前記上流側流路と下流側流路とが接続された開状態となる流体制御弁である。
そして、前記弁内流路の有底溝に対する連通口が、当該有底溝の少なくとも側面に形成されるようにしたことを特徴とする。
このようなものであれば、有底溝の幅が連通口の径の制限を受けなくなるので、有底溝の幅寸法を小さくして有底溝のより多重化を図れる。
【0013】
また、連通口が有底溝の側面に開口するので、有底溝の深ささえ十分にとれば、連通口の面積を大きくすることができ、十分な径の弁内流路にして製作の容易化や目詰まり防止を図ることも容易にできる。
【0014】
同様な作用効果を奏し得る態様として、以下のような流体制御弁も考えられる。すなわち、一方に着座面、他方に弁座面が形成された一対の弁部材を具備し、前記着座面又は弁座面のいずれか一方には、対応する弁部材の内部に設けた第1弁内流路を介して外部の上流側流路に連通する略環状の第1有底溝を複数重に形成するとともに、前記着座面又は弁座面の他方には、当該弁部材の内部に設けた第2弁内流路を介して外部の下流側流路に連通する略環状の第2有底溝を隣り合う第1有底溝の間の位置に複数重に形成し、前記着座面と弁座面が密接した状態では、前記第1有底溝の開口と第2有底溝の開口との連通が遮断されて前記上流側流路と下流側流路と接続されない閉状態となる一方で、前記着座面と弁座面が離間した状態では、その隙間を介して前記第1有底溝の開口と第2有底溝の開口とが連通し、前記上流側流路と下流側流路とが接続された開状態となるように構成された流体制御弁であって、前記第1弁内流路の第1有底溝に対する連通口又は前記第2弁内流路の第2有底溝に対する連通口のいずれか一方又は両方を、当該有底溝の底面及び側面に亘って形成したことを特徴とする流体制御弁である。
連通口の大きさを無理なく拡大するには、前記連通口が、有底溝の底面から側面に亘って形成されているものが好ましい。
【0015】
この流体制御弁を流れる最大可能流量が連通口によって低減することがないようにするには、連通口の面積を、この連通口の直前位置での弁内流路の断面積以上に設定しておくことが望ましい。
【0016】
弁内流路の具体的構成としては、前記弁内流路が有底溝の底方向から延びてその先端部が当該有底溝の底面及び側面に前記連通口として開口させてあるものを挙げることができる。
【0017】
また、前記弁内流路が有底溝の延伸方向と略直交する方向から延びてその側周面が当該有底溝の底面及び側面に前記連通口として開口させてあるものでも構わない。
【発明の効果】
【0018】
以上に述べた本発明によれば、有底溝の幅が連通口の径の制限を受けなくなるので、有底溝の幅寸法を小さくして有底溝のより多重化を図れる。その結果、例えば一重の有底溝に比べ、突条の総延長距離を長くすることができるので、同一の流路断面積を確保するのに、その分だけ着座面と弁座面との離間距離を短くすることができ、弁体部材を駆動するアクチュエータの小型化などを促進することができる。また、逆に着座面と弁座面との離間距離が従来と同じであれば、前記流路断面積が大きくなるので、流量の増大や圧力損失の低減を図ることができる。
また、連通口が有底溝の側面に開口するので、有底溝の深ささえ十分にとれば、連通口の面積を大きくすることができ、十分な径の弁内流路にして製作の容易化や目詰まり防止を図ることも容易にできる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1実施形態におけるマスフローコントローラの全体断面図。
【図2】同実施形態における流体制御弁の断面図。
【図3】同実施形態における弁座部材の平面図。
【図4】図3におけるA−A線断面図。
【図5】同実施形態における弁座部材の斜視図。
【図6】同実施形態に有底溝を示す拡大断面斜視図。
【図7】本発明の第2実施形態における流体制御弁の断面図。
【図8】同実施形態における弁座部材の斜視図。
【図9】同実施形態における弁座部材の平面図。
【図10】同実施形態における弁体部材の部分断面斜視図。
【図11】同実施形態における弁座部材の部分断面斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明に係る流体制御弁を組み込んだマスフローコントローラ100の一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0021】
<第1実施形態>
本実施形態のマスフローコントローラ100は、半導体製造装置に用いられるものであって、図1に示すように、測定対象となる流体が流れる流路を形成したボディ5と、このボディ5の流路51を流れる流体の流量をセンシングする流量検知機構2と、前記流路を流れる流体の流量を制御する流体制御弁3と、前記流量検知2の出力する測定流量を予め定めた設定流量に近づけるべく流体制御弁3の弁開度を制御する制御部(図示しない)とを具備する。
各部を詳述する。
【0022】
前記ボディ5は、前述した流路51が貫通するブロック状をなすものであり、当該流路51の上流端が、インレットポート5Aとして外部流入配管(図示しない)に接続されるとともに、下流端がアウトレットポート5Bとして外部流出配管(図示しない)に接続されている。
【0023】
流量検知機構2としては、種々考えられるが、ここでは、いわゆる熱式流量検知機構2を採用している。この熱式流量検知機構2は、前記流路51を流れる流体のうちの所定割合の流体が導かれるように当該流路51と並列接続した細管21と、この細管21に設けたヒータ24及びその前後に設けた一対の温度センサ22、23とを具備したものである。そして、前記細管21に流体が流れると、二つの温度センサ22、23の間にその質量流量に対応した温度差が生じることから、この温度差に基づいて流量を測定するように構成してある。
【0024】
この実施形態では、前記細管21、ヒータ24、温度センサ22、23及びその周辺の電気回路を収容する長尺状の筐体25を設ける一方、ボディ5の流路51から一対の分岐流路2a、2bを設け、この筐体25を前記ボディ5に取り付けることによって、前記細管21の導入口が上流側の分岐流路2aに接続され、該細管21の導出口が下流側の分岐流路2bに接続されるように構成してある。
なお、流量センサはこの方式に限定されるものではない。
【0025】
流体制御弁3は、前記流路51上に設けられたもので、一対の弁部材たる弁座部材4及び弁体部材6と、前記弁体部材6を駆動して弁開度、すなわち弁座部材4と弁体部材6との離間距離を設定するアクチュエータ7とを具備したものである。
【0026】
弁座部材4は、図2等に示すように、その底面とは反対側の端面を弁座面4aとするとともに、底面側を小径、弁座面側を大径にした2段円柱形状をなすものであり、その内部には第1弁内流路41と第2弁内流路42とが設けてある。
【0027】
第1弁内流路41は、一端を当該弁座部材41の底面に開口させた第1大径路41aと、この第1大径路41aの他端部から分岐して当該弁座部材41の軸方向に延び、前記弁座面4aに連通する複数の第1小径路41bとからなるものである。
【0028】
前記第2弁内流路42は、一端を当該弁座部材4における小径部分の側面に開口させた半径方向に延びる第2大径路42aと、前記第2大径路42aから分岐して当該弁座部材4の軸方向に延び、前記弁座面4aに連通する複数の第2小径路42bからなる、
【0029】
この弁座部材4は、ボディ5に設けた円柱状の凹部52に嵌め入れてある。この凹部52は、ボディ5の流路51を分断するように配置してあり、この凹部52によって分断された流路51のうち、上流側の流路(以下、上流側流路とも言う)51(A)が、例えば当該凹部52の底面に開口し、この凹部52より下流側の流路(以下、下流側流路とも言う)52(B)が、例えばこの凹部52の側面に開口するように構成してある。
【0030】
そして、前記弁座部材4を前記凹部52に嵌め入れた状態では、当該弁座部材4の大径部分が凹部52の内側周面に略隙間なく嵌合する一方、弁座部材4の小径部分は凹部52の内側周面との間に隙間が形成され、ボディ5の上流側流路51(A)が前記第1弁内流路41に凹部52の底面を介して連通するとともに、ボディ5の下流側流路51(B)が前記第2弁内流路42に凹部52の側周面を介して連通することとなる。又、前記弁座面4aはこの凹部52の周囲のボディ外表面と面一となる。
【0031】
弁体部材6は、ボディ5に取着された円筒状のケーシング部材72に収容されて弁座部材4に対向配置された概略円板状をなすものである。具体的にこの弁体部材6は、その周縁部を、薄肉円環状をなすダイヤフラム部材8を介して、前記ケーシング部材72に支持されている。そして、このダイヤフラム部材8が弾性変形することにより、当該弁体部材6が動き、その着座面6aが前記弁座面4aに接離するように構成してある。なお、この着座面6aは平面である。
【0032】
アクチュエータ7は、例えば、ピエゾ素子を複数枚積層して形成されるピエゾスタック71を備えたものである。このピエゾスタック71は、前記ケーシング部材74内に収容されており、その先端部が棒状の中間接続材73を介して前記弁体部材6の反着座面側に接続してある。そして、一定電圧が印加されることによってピエゾスタック71が伸長して、弁体部材6を移動させ、その着座面6aを弁座面4aに押し付けて、閉状態となるように構成してある。また、一定電圧を下回る電圧であれば、その電圧値に応じた距離だけ弁座面4aと着座面6aとが離間する。そして、この隙間を通じて上流側流路51(A)と下流側流路(B)とが連通する。すなわち、この流体制御弁3は、ノーマルオープンのものである。
【0033】
しかして、この実施形態では、図2〜図6に示すように、前記弁座部材4の弁座面4aに開口する、複数重(4重以上)の円環状有底溝9を形成している。この有底溝9には、2種類あり、幅狭で深いもの(以下、第1有底溝9(A)とも言う)と幅広で浅いもの(以下、第2有底溝9(B)とも言う)とが交互に配置してある。各有底溝は、いわゆる角溝であり、断面が矩形状をなす。
【0034】
前記第2有底溝9(B)には、第2弁内流路42の他端側、すなわち第2小径路42bが連通させてある。しかして、この第2有底溝9(B)の溝幅は、第2小径路42bの溝近傍における実質的な内径と同一若しくは若干大きく設定してあって、第2小径路42bの第2有底溝9(B)に対する連通口42cが、第2有底溝9(B)の底面にのみ現れるように構成してある。
【0035】
前記第1有底溝9(A)には第1弁内流路41の他端側、すなわち第1小径路41bが連通させてある。しかして、この第1有底溝9(A)の溝幅は、第1小径路41bの溝近傍における実質的な内径よりも小さく設定してあって、特に図6に示すように、この第1小径路41bの第1有底溝9(A)に対する連通口41cが、当該第1有底溝9(A)の底面9b及び側面9aに亘って現れ、かつその開口面積が第1小径路41bの実質的な断面積(有効断面積)以上となるように構成してある。また、この実施形態において、第1小径路41bの連通口41cは1つの第1有底溝9(A)に対して複数設けてあるが、それら連通口41cの中心は、必ずしも第1有底溝9(A)の幅中心ライン上にあるわけではなく、偏位させたものもある。偏位させた連通口41cは、第1有底溝9(A)の底面の他、一方の側面にのみ現れたり、一方の側面に現れる面積が他方の側面に現れる面積と異なっていたりする。このように、開口中心を偏位させているのは、第1小径路41bの加工容易性や他の構成要素との干渉を避けるためである。
【0036】
ところで、この実施形態では、弁体部材6の着座面6aが、弁座部材4における最外周の有底溝9とその1つ内側の有底溝9との間に形成される突条10までを覆う大きさに構成してある。したがって、最外周の有底溝9には、ダイヤフラム部材8が対向することとなる。
【0037】
一方、ダイヤフラム部材8にはある程度の径方向の幅が必要なため、この実施形態では、ダイヤフラム部材8の幅に合わせて最外周の有底溝9の幅を特に大きくしてある。
【0038】
その結果、仮にこの最外周有底溝9を圧力が高い上流側流路51(A)に連通させると、幅広の最外周有底溝の開口面積に圧力を乗じた大きな開方向の力が弁体部材6に作用することとなり、確実な閉状態を保つためには不利となる。そこで、この実施形態では、最外周の有底溝9を下流側流路51(B)に連通させて前記第2有底溝9(B)とし、これを基準としてその内側の有底溝の順番、つまり第1有底溝9(A)か第2有底溝9(B)にするかを決めている。
【0039】
次にかかる流体制御弁3の動作を説明する。
前述した構成から明らかなように、ボディ5の上流側流路51(A)は、第1弁内流路41を介して第1有底溝9(A)に連通している一方、ボディ5の下流側流路51(B)は、第2弁内流路42を介して第2有底溝9(B)に連通している。
【0040】
ここでアクチュエータ7に電圧を印加すると、弁体部材6が弁座部材4に向かって移動し、着座面6aが弁座面4a、すなわち突条10の頂面に密着する。その結果、この突条10及び着座面6aによって、第1有底溝9(A)に形成されている第1弁内流路41の連通口41cと第2有底溝9(B)に形成されている第2弁内流路42の連通口42cとの連通が遮断される。すなわち、第1弁内流路41に連通している上流側流路51(A)と、第2弁内流路42に連通している下流側流路51(B)とが遮断され、流体の流れが阻止される。これが閉状態である。
【0041】
一方、アクチュエータ7への電圧印加をやめると、弁体部材6が弁座部材4とは逆方向に移動し、着座面6aが弁座面4a、すなわち突条10の頂面から最大限まで離間する。その結果、流体は、第1弁内流路41の連通口41cから、突条10と着座面6aとの隙間を通って第2弁内流路42の連通口42cに流れ込む。これが全開状態である。
【0042】
流体流量を制御する場合は、アクチュエータ7に、前記規定最大電圧と0との間の電圧を印加する。それによって、突条10の頂面と着座面6aとの間の隙間の距離を調整して流量を制御する。これが流量制御状態であり、この明細書では、前記全開状態と流量制御状態とを総称して開状態と定義している。
しかして、この流体制御弁3の弁開度は、突条10の頂面と着座面6aとの間の隙間の距離に前記突条10の総延長距離を乗じた値で決まるが、本実施形態の構成によれば、第1有底溝9(A)の溝幅を第1小径路41bの有効内径よりも小さくしているので、従来のように溝幅を第1小径路41bの有効内径以上に設定したものに比べ、有底溝の9の多重化を図れ、前記突条10の総延長距離を長くすることができる。したがって、従来より弁体部材6の離間量が少なくても同等の流路断面積を確保でき、従来と等流量の流体を流すことができる。逆に言えば、従来と同じだけ弁体部材6を離間させれば、より多くの流量を流すことができる。
【0043】
しかも、幅が狭い第1有底溝9(A)に形成される連通口41cの面積は、溝側面を利用して従来より大きな面積、すなわち溝幅を直径とする円の面積を超える面積を担保できるので、この連通口41cが流量のボトルネックとなることはないし、第1小径路41bの内径を小さくする必要もないので、穿孔が困難になることもない。
【0044】
このように本実施形態によれば、アクチュエータの小型化や、弁座面、着座面の小型化によって従来よりもコンパクト化を図れるし、逆に従来と同等の大きさで大流量化を図れる。
【0045】
<第2実施形態>
この第2実施形態では、前記第1実施形態とは異なり、弁座部材4と弁体部材6の配置が逆になっている。すなわち、アクチュエータ7側に動かない弁座部材4が設けられており、この弁座部材4の反アクチュエータ7側、すなわちボディ5側に弁体部材6が、弁座部材4の中心を貫通させた接続棒Pを介して接続されている。また、これら弁座部材4及び弁体部材6は、ボディ5に設けた凹部52に嵌め込まれている。この凹部52は前記第1実施形態同様、ボディ5の流路51を分断するように配置してある。
【0046】
そして、アクチュエータ7に電圧を印加しないノーマル状態では、弁体部材6が周囲の弾性体(ここでは板バネ)によって付勢され、弁座部材4に密着する一方、アクチュエータ7に電圧を印加してこれを伸長させると、弁体部材6が弁座部材4から離間する方向に移動し、開状態となる。すなわち、この流体制御弁3は、ノーマルクローズのものである。
【0047】
しかしてこの実施形態では、弁体部材6の着座面4a及び弁座部材4の弁座面4aにそれぞれ複数重の円環状有底溝9を設けている。弁体部材6に設けた有底溝が第1有底溝9(A)であり、弁座部材4に設けた有底溝が第2有底溝9(B)である。
【0048】
第1有底溝9(A)と第2有底溝9(B)とは互い違いになっており、閉状態においては、隣り合う第1有底溝9(A)の間に形成される突条(以下、第1突条10(A)とも言う)が、第2有底溝9(B)の開口を閉塞する一方、隣り合う第2有底溝9(B)の間に形成される突条(以下、第2突条10(B)とも言う)が第1有底溝9(A)の開口を閉塞する。この実施形態では、第2突条10(B)の表面に前記有底溝よりも浅い円環状の溝をさらに設け、圧力損失の低減化を図っているが、これを第1突条10(A)に設けてもよいし、第1突条10(A)及び第2突条10(B)の双方に設けてもよい。
【0049】
また、弁体部材6に第1弁内流路41を設けてこれを前記第1有底溝9(A)に連通させるとともに、弁座部材4に第2弁内流路42を設けてこれを前記第2有底溝9(B)に連通させている。
【0050】
第1弁内流路41は、その一端部を弁体部材6の側周面に開口させた径方向に延びるものであり、ここでは複数が放射状に設けてある。そして、この第1弁内流路41の側周面が前記各第1有底溝9(A)の底部に重合し、特に図10に部分断面斜視図を示すように、当該各第1有底溝9(A)の底面9b及び側面9aに亘って連通口41cとして開口する。この連通口41cの面積は、第1弁内流路41の実質的な断面積(有効断面積)以上となるように構成してある。また、この第1弁内流路41は軸方向にも分岐して弁体部材6の反着座面側に開口し、凹部52の底面に開口する上流側流路51(A)と連通する。
【0051】
第2弁内流路42は、その一端部が弁座部材4の側周面に開口して、凹部4の側周面に開口する下流側流路に連通するものである。ここでは、第1弁内流路41同様、複数の第2弁内流路42が放射状、すなわち径方向に延びるように構成してある。そして、この第2弁内流路42の側周面が前記各第2有底溝9(B)の底部に重合し、特に図11に部分断面斜視図を示すように、当該各第2有底溝9(B)の底面9b及び側面9aに亘って連通口42cとして開口する。この連通口42cの面積は、第2弁内流路42の実質的な断面積(有効断面積)以上となるように構成してある。
【0052】
このようなものであれば、基本的には第1実施形態と同様の効果を奏し得る。さらに言えば、第1実施形態とは異なり、第1有底溝9(A)及び第2有底溝9(B)の両方の溝幅を小さくできるので、より高密度化が可能になり、前記第1実施形態の効果がさらに顕著となる。
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
【0053】
例えば、前記各実施形態では流量制御弁であったが、ON/OFF開閉弁にも本発明を適用できる。また、アクチュエータはピエゾ式に限らず、電磁コイル等を用いてもよい。
有底溝の形状は角溝に限られず、U溝や丸溝でも構わない。U溝、丸溝の場合の側面及び底面の定義であるが、溝の深さ方向と略直交する面が底面、溝の深さ方向と略平行な面が側面であり、その中間の角度の面は、ここでは側面とする。
また、有底溝が、単一の溝形状ではなく、複数重の溝要素からなるような、すなわち、溝底面に1重以上の突条が設けられているような形状であっても構わない。なお、この突条はその頂面が対向する弁部材に、閉状態で接するものでも離間するものでもよい。
【0054】
その他、前述した実施形態や変形実施形態の一部又は全部を適宜組み合わせてよいし、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0055】
3・・・流体制御弁
4・・・弁座部材(一方の弁部材)
41・・・第1弁内流路
42・・・第2弁内流路
4a・・・弁座面
41c・・・連通口
6・・・弁体部材(他方の弁部材)
6a・・・着座面
9(A)・・・第1有底溝
9(B)・・・第2有底溝
9a・・・溝側面
9b・・・溝底面
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方に着座面、他方に弁座面が形成された一対の弁部材を具備した流体制御弁であって、
前記着座面又は弁座面のいずれか一方には、弁部材の内部に設けた第1弁内流路を介して外部の上流側流路に連通する略環状の第1有底溝と、当該弁部材の内部に設けた第2弁内流路を介して外部の下流側流路に連通する略環状の第2有底溝とが交互にそれぞれ複数重形成してあり、
前記着座面と弁座面が密接した状態では、前記第1有底溝の開口と第2有底溝の開口との連通が遮断されて前記上流側流路と下流側流路と接続されない閉状態となる一方で、前記着座面と弁座面が離間した状態では、それらの隙間を介して前記第1有底溝の開口と第2有底溝の開口とが連通し、前記上流側流路と下流側流路とが接続された開状態となるように構成してあり
前記弁内流路の有底溝に対する連通口が、当該有底溝の少なくとも側面に形成してあることを特徴とする流体制御弁。
【請求項2】
一方に着座面、他方に弁座面が形成された一対の弁部材を具備した流体制御弁であって、
前記着座面又は弁座面のいずれか一方には、対応する弁部材の内部に設けた第1弁内流路を介して外部の上流側流路に連通する略環状の第1有底溝が複数重に形成してあるとともに、前記着座面又は弁座面の他方には、当該弁部材の内部に設けた第2弁内流路を介して外部の下流側流路に連通する略環状の第2有底溝が隣り合う第1有底溝の間の位置に複数重に形成してあり、
前記着座面と弁座面が密接した状態では、前記第1有底溝の開口と第2有底溝の開口との連通が遮断されて前記上流側流路と下流側流路と接続されない閉状態となる一方で、前記着座面と弁座面が離間した状態では、その隙間を介して前記第1有底溝の開口と第2有底溝の開口とが連通し、前記上流側流路と下流側流路とが接続された開状態となるように構成してあり、
前記弁内流路の有底溝に対する連通口が、当該有底溝の少なくとも側面に形成してあることを特徴とする流体制御弁。
【請求項3】
前記連通口が、有底溝の底面から側面に亘って形成されている請求項1又は2記載のいずれかの流体制御弁。
【請求項4】
前記連通口の面積が、この連通口の直前位置での弁内流路の断面積以上に設定してある請求項1乃至3いずれか記載の流体制御弁。
【請求項5】
前記弁内流路が有底溝の底方向から延びてその先端部が当該有底溝の底面及び側面に前記連通口として開口させてある請求項3記載の流体制御弁。
【請求項6】
前記弁内流路が有底溝の延伸方向と略直交する方向から延びてその側周面が当該有底溝の底面及び側面に前記連通口として開口させてある請求項1乃至3いずれか記載の流体制御弁。
【請求項1】
一方に着座面、他方に弁座面が形成された一対の弁部材を具備した流体制御弁であって、
前記着座面又は弁座面のいずれか一方には、弁部材の内部に設けた第1弁内流路を介して外部の上流側流路に連通する略環状の第1有底溝と、当該弁部材の内部に設けた第2弁内流路を介して外部の下流側流路に連通する略環状の第2有底溝とが交互にそれぞれ複数重形成してあり、
前記着座面と弁座面が密接した状態では、前記第1有底溝の開口と第2有底溝の開口との連通が遮断されて前記上流側流路と下流側流路と接続されない閉状態となる一方で、前記着座面と弁座面が離間した状態では、それらの隙間を介して前記第1有底溝の開口と第2有底溝の開口とが連通し、前記上流側流路と下流側流路とが接続された開状態となるように構成してあり
前記弁内流路の有底溝に対する連通口が、当該有底溝の少なくとも側面に形成してあることを特徴とする流体制御弁。
【請求項2】
一方に着座面、他方に弁座面が形成された一対の弁部材を具備した流体制御弁であって、
前記着座面又は弁座面のいずれか一方には、対応する弁部材の内部に設けた第1弁内流路を介して外部の上流側流路に連通する略環状の第1有底溝が複数重に形成してあるとともに、前記着座面又は弁座面の他方には、当該弁部材の内部に設けた第2弁内流路を介して外部の下流側流路に連通する略環状の第2有底溝が隣り合う第1有底溝の間の位置に複数重に形成してあり、
前記着座面と弁座面が密接した状態では、前記第1有底溝の開口と第2有底溝の開口との連通が遮断されて前記上流側流路と下流側流路と接続されない閉状態となる一方で、前記着座面と弁座面が離間した状態では、その隙間を介して前記第1有底溝の開口と第2有底溝の開口とが連通し、前記上流側流路と下流側流路とが接続された開状態となるように構成してあり、
前記弁内流路の有底溝に対する連通口が、当該有底溝の少なくとも側面に形成してあることを特徴とする流体制御弁。
【請求項3】
前記連通口が、有底溝の底面から側面に亘って形成されている請求項1又は2記載のいずれかの流体制御弁。
【請求項4】
前記連通口の面積が、この連通口の直前位置での弁内流路の断面積以上に設定してある請求項1乃至3いずれか記載の流体制御弁。
【請求項5】
前記弁内流路が有底溝の底方向から延びてその先端部が当該有底溝の底面及び側面に前記連通口として開口させてある請求項3記載の流体制御弁。
【請求項6】
前記弁内流路が有底溝の延伸方向と略直交する方向から延びてその側周面が当該有底溝の底面及び側面に前記連通口として開口させてある請求項1乃至3いずれか記載の流体制御弁。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−219924(P2012−219924A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−86700(P2011−86700)
【出願日】平成23年4月8日(2011.4.8)
【出願人】(000127961)株式会社堀場エステック (88)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年4月8日(2011.4.8)
【出願人】(000127961)株式会社堀場エステック (88)
【Fターム(参考)】
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