説明

流体噴射装置、医療機器

【課題】効率よくスムーズに流体を排出することができる流体噴射装置を実現する。
【解決手段】流体噴射装置1は、圧力室40と、周方向に分割され、回転方向に配列される内部電極11a〜11fを有する円柱形状の積層型圧電素子10と、積層型圧電素子10の圧力室40側の端面に密着固定されるダイアフラム30と、内部電極11aの一つを始点内部電極とし、始点内部電極の回転方向の一つ前に配設される内部電極11fを終点内部電極としたとき、終点内部電極と対向する位置で圧力室40を開口する出口孔60と、を有し、積層型圧電素子10を、始点内部電極から終点内部電極に向かって内部電極の形成領域の一つ一つを独立して時間差を有して順々に変位させ、圧力室40の容積をダイアフラム30により始点内部電極の形成領域から終点内部電極の形成領域に向かって順々に縮小していき、圧力室40内の圧力を高め、出口孔60から流体を送出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体噴射装置と、この流体噴射装置を用いた医療機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ダイアフラムを密着した圧電素子の厚さ方向の変位を用いて圧力室の容積を、変更し、流体をパルス状に噴射させる流体噴射装置がある(例えば、特許文献1参照)。このような流体噴射装置に用いられる圧電素子は、全面電極と圧電体が多数層積層された一体焼結型の積層型圧電素子である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−82202号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような積層型圧電素子は、全面電極に電圧を印加し変位させても、ダイアフラムは電極面に対して垂直方向(厚さ方向)に一様に変位するだけである。従って、平面圧力波はダイアフラム変位方向へ向かって伝播し、圧力室面内方向においてダイアフラムと正対する圧力壁の特定の位置にある出口孔へと向かう圧力波が生じにくい。すなわち、圧力波は圧力室厚み方向へ一様に伝播するが、圧力室面内方向には伝播しがたいため、出口孔から効率よく流体が送出され難いと考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0006】
[適用例1]本適用例に係る流体噴射装置は、圧力室と、周方向に分割され、回転方向に配列される内部電極を有する円柱形状の積層型圧電素子と、前記積層型圧電素子の前記圧力室側の端面に密着固定されるダイアフラムと、前記内部電極の一つを始点内部電極とし、前記始点内部電極の回転方向の一つ前に配設される前記内部電極を終点内部電極としたとき、前記終点内部電極と対向する位置で前記圧力室を開口する出口孔と、を有し、前記積層型圧電素子を、前記始点内部電極から前記終点内部電極に向かって前記内部電極の形成領域の一つ一つを独立して時間差を有して順々に変位させ、前記圧力室の容積を前記ダイアフラムにより前記始点内部電極の形成領域から前記終点内部電極の形成領域に向かって順々に縮小していき、前記圧力室内の圧力を高め、前記出口孔から流体を送出することを特徴とする。
【0007】
本適用例によれば、ダイアフラムは、積層型圧電素子によって始点内部電極の形成領域から終点内部電極形成領域に向かって順次変位されていく。このため、変位された瞬間のダイアフラム直下の領域(分割された内部電極の形成領域)において、ダイアフラム変位方向へ伝搬する圧力波が発生すると同時に、圧力室の面内方向に伝播して行く圧力波も発生する。この圧力室面内方向に伝播する圧力波は、圧力室側面での反射を繰り返しながら、始点内部電極形成領域から終点内部電極形成領域へ向かって順次伝播していく。従って、圧力室の終点内部電極形成領域に圧力波が集中し、圧力室の出口孔から流体を効率よくスムーズに送出することができる。
【0008】
[適用例2]上記適用例に係る流体噴射装置は、前記分割された内部電極の形成領域のうち、回転方向に互いに並び合ういずれの2つの前記内部電極においても、一方の前記内部電極の形成領域の前記ダイアフラムが最大変位の状態に達するまで、回転方向手前の前記内部電極の形成領域の前記ダイアフラムは、前記圧力室の容積を最大に縮小する、最大変位の状態を維持していることが好ましい。
【0009】
このようにすれば、ダイアフラムは圧力室の始点内部電極の形成領域から終点内部電極形成領域に向かって間断なく順次変位し、圧力室を順次縮小していく。しかも、終点内部電極形成領域のダイアフラムが最大変位の状態に達するまで、いずれのダイアフラムも自身の領域の圧力室を拡大するような方向に変位することが無いため、負の圧力波を生じることが無い。従って、圧力室の終点内部電極形成領域に位置する出口孔に向かった圧力波を、後から負の圧力波で減じてしまうことが無いため、効率よく流体を出口孔から送出することができる。
【0010】
[適用例3]上記適用例に係る流体噴射装置は、前記分割された内部電極の形成領域のうち、回転方向に互いに並び合ういずれの2つの前記内部電極においても、一方の前記内部電極と、回転方向次の前記内部電極との間の駆動遅延時間をτ、一方の前記内部電極の形成領域の前記ダイアフラムの変位により回転方向に進行する圧力波が、回転方向次の前記内部電極の形成領域を通過するのに要する時間をτs、とするとき、τ>τsの関係にあることが好ましい。
なお、駆動遅延時間とは、一つの内部電極に印加される駆動波形と、次の内部電極に印加される駆動波形の時間差である。
【0011】
このようにすれば、駆動遅延時間τを、当該内部電極を通過する時間τsよりも長くすることにより、一方の当該内部電極の形成領域の前記ダイアフラムの変位により回転方向に進行する圧力波が、回転方向次の当該内部電極の形成領域を通過する前に、次の内部電極に駆動電圧波形が入力され、ダイアフラムが変位し圧力室を縮小し始めてしまうことはない。このため圧力波はスムーズに出口孔へ向かって伝播し、スムーズに流体を圧力室から出口孔に送出することができる。
【0012】
[適用例4]上記適用例に係る流体噴射装置は、前記分割された内部電極の形成領域のうち、回転方向に互いに並び合ういずれの2つの前記内部電極においても、一方の前記内部電極の形成領域の前記ダイアフラムの変位が最大変位の状態に達するまでに要する時間をτr、一方の前記内部電極と、回転方向次の前記内部電極との間の駆動遅延時間をτ、とするとき、τ<τrの関係にあることが好ましい。
【0013】
このようにすれば、一つの内部電極の形成領域のダイアフラムが最大変位に達するまでの間に、次の領域のダイアフラムの変位を開始することで、圧力室の始点内部電極の形成領域から終点内部電極形成領域に向かってダイアフラムを間断なく且つ連続的に変位させ、圧力室面内方向で終点内部電極形成領域に向かう間断のない圧力波を発生させることができる。このため圧力波はスムーズに出口孔へ向かって伝播し、流体を出口孔から送出することができる。
【0014】
[適用例5]上記適用例に係る流体噴射装置は、一方の前記内部電極と、回転方向次の前記内部電極との間の駆動遅延時間をτ、一方の前記内部電極の形成領域の前記ダイアフラムの変位により回転方向に進行する圧力波が、回転方向次の前記内部電極の形成領域を通過するのに要する時間をτs、一方の前記内部電極の形成領域の前記ダイアフラムの変位が最大変位の状態に達するまでに要する時間をτr、とするとき、τ>τs、且つ、τ<τrの関係にあることが好ましい。
【0015】
このような条件で積層型圧電素子を駆動することで、圧力室の始点内部電極の形成領域から終点内部電極形成領域に向かってダイアフラムを間断なく且つ連続的に変位させることができ、より一層、スムーズに圧力波を出口孔へ向かって伝播させ、流体を出口孔から送出することができる。
【0016】
[適用例6]本適用例に係る医療機器は、上記各適用例のいずれかに記載の流体噴射装置を用いたことを特徴とする。
【0017】
上述した流体噴射装置は、液体をパルス状に高速噴射するものであって、生体組織を選択的に切除・切開・破砕することが可能で、血管等の細管組織を温存できるなど手術具として優れた特性を有している。また、上述した流体噴射装置を用いて手術等を行う場合、噴射する液体量が従来の高圧流を用いたものに比べ少ないため、術視野の視認性に優れているという利点もある。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施形態1に係る流体噴射装置の概略構成を示す断面図。
【図2】実施形態1に係る積層型圧電素子を端面方向から視認した平面図。
【図3】図2のA−A切断面の一部を示す断面図。
【図4】内部電極及びGND電極の結線構成の一部を示す結線説明図。
【図5】内部電極に印加される電圧波形を示す説明図。
【図6】圧力室の容積変化を模式的に示す円周方向部分断面図。
【図7】変形例1に係る積層型圧電素子の内部電極の分割を示す平面図。
【図8】変形例2に係る積層型圧電素子の内部電極の分割を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
なお、以下の説明で参照する図は、図示の便宜上、部材ないし部分の縦横の縮尺は実際のものとは異なる模式図である。また、本実施形態では、流体は液体である。
(流体噴射装置・実施形態1)
【0020】
図1は、実施形態1に係る流体噴射装置の概略構成を示す断面図である。図1において、流体噴射装置1は、筒状の第1機枠50の内部に配置される積層型圧電素子10と、積層型圧電素子10の一方の端面に密着固定されるダイアフラム30と、ダイアフラム30と第2機枠51に形成される凹部と、によって構成される圧力室40と、圧力室40に連通する流体噴射管63と、圧力室40内に液体を供給する流体供給管71と、を有して構成されている。
【0021】
積層型圧電素子10の他方の端面は、底板52に密着固定されており、底板52は第1機枠50の開口部を封止している。
【0022】
ダイアフラム30は、円盤状の薄板からなり、周縁部が第1機枠50と第2機枠51との間で密着固定されている。この固定部以外の内側領域は積層型圧電素子10の伸縮に伴い変位可能な弾性を有している。
【0023】
流体噴射管63は、送液流路61と、先端部に送液流路61の流路径を縮小した流体噴射開口部(ノズル)62を有し、送液流路61は、圧力室40に開口される出口孔60に連通されている。出口孔60は、積層型圧電素子10と対向する位置に開口されている。
【0024】
流体供給管71は流体供給流路70を有し、流体供給流路70は圧力室40に連通されており、図示しないポンプ等の流体供給手段から圧力室40に液体を一定流量あるいは一定圧力で供給する。
【0025】
次に、積層型圧電素子10の構成について図面を参照して説明する。
図2は、積層型圧電素子を端面方向から視認した平面図、図3は、図2のA−A切断面の一部を示す断面図である。まず、図3を参照して積層型圧電素子10の概略断面構成を説明する。積層型圧電素子10は、断面が円形の柱状をなしており、圧電体20と、内部電極11,12,13,14,…と、GND電極21,22,23,24,…と、が交互に積層されて構成されている。これら内部電極とGND電極とは圧電体20の層を挟んで対をなして構成されている。なお、図3は、積層型圧電素子10の一部を表しており、実際には更に多数の層により構成される。
【0026】
内部電極には駆動信号が入力され、GND電極は基準電位(0V)である。駆動信号の電圧波形については、図5を参照して後述する。なお、積層型圧電素子10は、内部電極に電圧が印加されると厚さ方向に伸長し、除電されると初期状態に復帰するように、厚さ方向に分極処理されている。
【0027】
続いて、内部電極11,12,13,14,…の分割について説明する。図2に示すように、内部電極のそれぞれは、積層型圧電素子10の点Pを中心にから、周方向に分割されており、それぞれ電気的に独立して配置されている。なお、図3に示すように、GND電極21,22,23,24,…は内部電極と対をなす全面電極であって、積層型圧電素子10の側面を介して図示しない接続電極によって基準電位(0V)に接続されている。
次に、内部電極の構成について図2を参照して説明する。内部電極11,12,13,14,…は、それぞれ同じように分割された構成なので、内部電極11を例示して説明する。
【0028】
内部電極11は、周方向に、内部電極11a,11b,11c,11d,11e,11fに6分割されている。なお、ダイアフラム30の変位によって発生する圧力波が矢視L1方向に回転するように伝播するとしたとき、内部電極11aを始点内部電極11a、始点内部電極11aの回転方向の一つ前に配設される内部電極11fを終点内部電極11fとして説明する。
【0029】
また、出口孔60は、終点内部電極11fの形成領域内に配置される。ただし、出口孔60は、圧力波の伝播の終末位置、つまり、図示するように、終点内部電極11fの形成領域内の周縁部に配置されることがより好ましい。
【0030】
なお、内部電極の分割数(内部電極の数)は、図2のように6個に限定されず、2以上の整数であれば良い。また、分割角度も均等でなくてもよい。
【0031】
内部電極11a〜11fは、互いに独立した接続電極で積層型圧電素子10の外周側面に延在されており、それぞれ接続電極e1,e2,e3,e4,e5,e6に接続され、それぞれに独立した電圧波形が入力される。なお、各内部電極を分割する隙間は、電気的に短絡しない程度の幅があればよい。
【0032】
次に、内部電極及びGND電極の結線構成について説明する。
図4は、内部電極及びGND電極の結線構成の一部を示す結線説明図である。図4では、内部電極11,12,13、GND電極21,22,23を例示している。内部電極11は、図2に示すように内部電極11a,11b,11c,11d,11e,11fに6分割されており、内部電極12,13も内部電極11と同様に(図2、参照)、それぞれ内部電極12a,12b,12c,12d,12e,12fに、内部電極13a,13b,13c,13d,13e,13fというように周方向に分割されている。ここで、内部電極11a,12a,13aは接続電極e1に接続され、電圧波形S1(図5、参照)が入力される。
【0033】
また、内部電極11b,12b,13bは接続電極e2に接続され、内部電極11c,12c,13cは接続電極e3に、内部電極11d,12d,13dは接続電極e4に、内部電極11e,12e,13eは接続電極e5に、内部電極11f,12f,13fは接続電極e6に、それぞれ接続されている。これら接続電極e1〜e6には独立して電圧波形S1〜S6がそれぞれ入力される。図示しない他の内部電極についても同様な考え方で接続される。そして、これら接続電極e1〜e6の順に電圧波形S1〜S6がそれぞれ入力される。
【0034】
GND電極21,22,23は、分割された各層の内部電極と対向する全面電極であって、内部電極11a,11b,11c,11d,11e,11f,及び12a,12b,12c,12d,12e,12fとGND電極21が対をなし、内部電極12a,12b,12c,12d,12e,12f、及び13a,13b,13c,13d,13e,13fとGND電極22、内部電極13a,13b,13c,13d,13e,13f、及び、及び14(内部電極11〜13と同様に14a〜14fに分割される)とGND電極23と、がそれぞれ対をなして構成され、全てが基準電位(0V)に接続されている。
【0035】
続いて、流体噴射装置1の駆動方法について図面を参照して説明する。
図5は、内部電極に印加される電圧波形を示す説明図、図6は、圧力室の容積変化を模式的に示す円周方向の部分断面図である。図2も参照する。まず、電圧波形と、電圧波形の入力タイミングについて図5を参照して説明する。横軸に時間、縦軸に電圧を表している。電圧波形S1は、時間τr1の間に0Vからピーク電圧Vmまで急峻に立ち上がり、その後ピーク電圧Vmを維持し、終点内部電極11fに入力される電圧波形S6がピーク電圧Vmに達するまで維持し、そこから徐々に電圧を低下させて0Vになる駆動波形を有する。電圧波形S1は、始点内部電極11aに入力される。
【0036】
電圧波形S2は、電圧波形S1の立ち上がりから時間差τ1を有して、時間τr2の間に0Vからピーク電圧Vmまで急峻に立ち上がり、その後ピーク電圧Vmを維持し、終点内部電極11fに入力される電圧波形S6がピーク電圧Vmに達するまで維持し、そこから徐々に電圧を低下させて0Vになる駆動波形を有する。電圧波形S2は、内部電極11bに入力される。
【0037】
電圧波形S3は、電圧波形S2の立ち上がりから時間差τ2を有して、時間τr3の間に0Vからピーク電圧Vmまで急峻に立ち上がり、その後ピーク電圧Vmを維持し、終点内部電極11fに入力される電圧波形S6がピーク電圧Vmに達するまで維持し、そこから徐々に電圧を低下させて0Vになる駆動波形を有する。電圧波形S3は、内部電極11cに入力される。
【0038】
電圧波形S4は、電圧波形S3の立ち上がりから時間差τ3を有して、時間τr4の間に0Vからピーク電圧Vmまで急峻に立ち上がり、その後ピーク電圧Vmを維持し、終点内部電極11fに入力される電圧波形S6がピーク電圧Vmに達するまで維持し、そこから徐々に電圧を低下させて0Vになる駆動波形を有する。電圧波形S4は、内部電極11dに入力される。
【0039】
電圧波形S5は、電圧波形S4の立ち上がりから時間差τ4を有して、時間τr5の間に0Vからピーク電圧Vmまで急峻に立ち上がり、その後ピーク電圧Vmを維持し、終点内部電極11fに入力される電圧波形S6がピーク電圧Vmに達するまで維持し、そこから徐々に電圧を低下させて0Vになる駆動波形を有する。電圧波形S5は、内部電極11eに入力される。
【0040】
電圧波形S6は、電圧波形S5の立ち上がりから時間差τ5を有して、時間τr6の間に0Vからピーク電圧Vmまで急峻に立ち上がり、そこから徐々に電圧を低下させて0Vになる駆動波形を有する。電圧波形S6は、終点内部電極11fに入力される。
【0041】
分割された各内部電極に印加される電圧波形の立ち下がり波形は、終点内部電極11fに入力される電圧波形S6の立ち下がり波形と同じであって、積層型圧電素子10は、各内部電極の形成領域全般で収縮(初期状態に復帰)が同時に行われることを意味している。
【0042】
なお、図5に示すように、内部電極11a〜11fのそれぞれに印加される電圧波形S1〜S6の立ち上がり開始(0V)からピーク電圧(Vm)に至るまでの時間を駆動立ち上がり時間と表し、この範囲の駆動波形を立ち上がり波形と表す。また、ピーク電圧Vmから0Vになる範囲を立ち下り波形と表す。また、電圧波形の立ち上がりの時間差(τ1〜τ5で図示)を一般化して駆動遅延時間τi(i=1,2,3,…、5)と表す。
【0043】
ここで、立ち上がり波形を急峻にしているのは、圧力室40の容積を急激に縮小させ、圧力室40の内部圧力を急激に高めるためであり、立ち下り波形を緩やかにしているのは、流体供給流路70からの流体の吸引を容易にするためと、積層型圧電素子10の変位速度を緩やかにして破壊を防止することと、電荷の除去を時間をかけて十分に行うためである。
【0044】
実際に、流体噴射装置1を駆動する際には、電圧波形S1,S2,S3,S4,S5,S6からなる基本電圧波形をある周期で繰り返し印加しても良いし、ある周期で、ある有限の回数だけ繰り返し印加しても良い。あるいは、基本電圧波形を単発で印加しても良い。
【0045】
ここで、分割された内部電極の形成領域のうち、互いに並び合ういずれの2つの内部電極においても、駆動遅延時間をτi(i=1,2,3、…、5)、一つの内部電極の形成領域のダイアフラム30の変位により回転方向(図2、矢視L1方向)に進行する圧力波が、回転方向次の内部電極の形成領域を通過するのに要する時間をτsi(i=1,2,3、…、5)としたときに、それぞれの関係は、本実施形態の目的を実現する条件として次式で表すことができる。
【0046】
【数1】

【0047】
【数2】

【0048】
次に、流体噴射作用について図面を参照して説明する。
図6は、液体送出作用を模式的に示す円周方向の部分断面図である。なお、積層型圧電素子10の変位量は数μm程度から数十μm程度と小さいので、説明を分かりやすくするために変位量を誇張して図示している。図1〜図5も参照する。図6は、分割された内部電極を代表して最上層の内部電極11を一平面に展開して図示している。
【0049】
図6(a)は、駆動信号が入力されていない状態を表している。従って、ダイアフラム30の変位量は0であって、圧力室40の容積も初期状態(容積最大)である。この状態のとき、流体供給流路70から一定圧力(あるいは一定流量)で液体が供給されており、ポンプの供給圧力と流体供給流路70から圧力室40及び送液流路61を経て流体噴射開口部62へ至る流路系全体の流路抵抗によって決まる一定流量の液体が、ポンプから流体噴射開口部62へ向かって流れる。この状態では、流体噴射開口部62から弱い連続流の液体が噴射される。
【0050】
図6(b)は、始点内部電極11aのみに電圧波形S1が入力された状態を表している。このとき、始点内部電極11aの形成領域のダイアフラム30を圧力室40の容積を縮小する方向に変位させ、圧力室40の面内方向に伝播する圧力波を発生させる。内部電極11b〜11fの形成領域ではダイアフラム30の変位はない。
【0051】
図6(c)は、始点内部電極11aに続いて内部電極11bに電圧波形S2が入力された状態を表している。このとき、内部電極11bの形成領域のダイアフラム30を圧力室40の容積を縮小する方向に変位させる。なお、始点内部電極11aの形成領域でのダイアフラム30の変位は、図6(b)の状態を維持しているため、圧力室40の容積は、始点内部電極11aと内部電極11bの形成領域両方の変位分だけ縮小され、圧力室40の面内方向へ伝播する圧力波を間断なく且つ連続的に発生させる。内部電極11c〜11fの形成領域ではダイアフラム30の変位はない。
【0052】
図6(d)は、内部電極11bに続いて内部電極11cに電圧波形S3が入力された状態を表している。このとき、内部電極11cの形成領域のダイアフラム30を圧力室40の容積を縮小する方向に変位させる。なお、内部電極11a,11bの形成領域でのダイアフラム30の変位は、図6(c)の状態を維持しているため、圧力室40の容積は、内部電極11a〜11cの形成領域の変位分だけ縮小され、圧力室40の面内方向へ伝播する圧力波を間断なく且つ連続的に発生させる。内部電極11d〜11fの形成領域ではダイアフラム30の変位はない。
【0053】
図6(e)は、内部電極11cに続いて内部電極11dに電圧波形S4が入力された状態を表している。このとき、内部電極11dの形成領域のダイアフラム30を圧力室40の容積を縮小する方向に変位させる。なお、内部電極11a〜11cの形成領域でのダイアフラム30の変位は、図6(d)の状態を維持しているため、圧力室40の容積は、内部電極11a〜11dの形成領域の変位分だけ縮小され、圧力室40の面内方向へ伝播する圧力波を間断なく且つ連続的に発生させる。内部電極11e〜11fの形成領域ではダイアフラム30の変位はない。
【0054】
図6(f)は、内部電極11dに続いて内部電極11eに電圧波形S5が入力された状態を表している。このとき、内部電極11eの形成領域のダイアフラム30を圧力室40の容積を縮小する方向に変位させる。なお、内部電極11a〜11dの形成領域でのダイアフラム30の変位は、図6(e)の状態を維持しているため、圧力室40の容積は、内部電極11a〜11eの形成領域の変位分だけ縮小され、圧力室40の面内方向へ伝播する圧力波を間断なく且つ連続的に発生させる。内部電極11fの形成領域ではダイアフラム30の変位はない。
【0055】
図6(g)は、内部電極11eに続いて終点内部電極11fに電圧波形S6が入力された状態を表している。このとき、終点内部電極11fの形成領域のダイアフラム30を圧力室40の容積を縮小する方向に変位させる。なお、内部電極11a〜11eの形成領域でのダイアフラム30の変位は、図6(f)の状態を維持しているため、圧力室40の容積は、内部電極11a〜11fの形成領域、つまり、ダイアフラム30が積層型圧電素子10の端面全体で押し上げたときと同じように最小容積に縮小される。従って、圧力室40の面内方向へ伝播する圧力波は間断なく且つ連続的に出口孔60から送出される。送液流路61内を伝搬する圧力波は、流体噴射開口部(ノズル)62に到達した際に、高速噴流として噴射される。
すなわち、積層型圧電素子10に駆動電圧が印加され、急激に積層型圧電素子10が、内部電極形成領域の回転方向(図2、矢視L1方向)に向かって順々に伸長する。その結果、圧力室40の容積は回転方向に急速に縮小されていき、圧力室40内の流体自身が有する圧縮性により圧力が急速に上昇する。一旦、圧力室40内で急激に高められた圧力は、非常に大きな流体変位量を伴った圧力波として送液流路61内を流体噴射開口部62へ向かって伝播し始める。この圧力波は、送液流路61内を流体噴射開口部62方向へ音速で伝播し、流体噴射開口部62に到達した際にパルス状の強い高速噴流として噴射される。
電圧波形S6がピーク電圧Vmに達した後、電圧波形S1,S2,S3,S4,S5,S6の電圧は徐々に低下し0Vになり、ダイアフラム30は初期状態(変位量0)の状態に復帰する。この際、圧力室40の内部圧力は低下し、流体供給流路70から液体を吸引する。
【0056】
電圧波形S1,S2,S3,S4,S5,S6が0Vになった後、再び駆動波形S1〜S6の順で入力する。このような動作を繰り返すことで、流体噴射開口部62から液体を周期的なパルス状の液滴として高速噴射させる。
【0057】
従って、上述した実施形態1によれば、ダイアフラム30は、積層型圧電素子10によって始点内部電極11aの形成領域から終点内部電極11fの形成領域に向かって順次変位されていく。このため圧力室40の面内方向に伝播する圧力波が発生し、圧力室側面での反射を繰り返しながら、始点内部電極形成領域から終点内部電極形成領域へ向かって順次伝播していく。従って圧力室40の終点内部電極形成領域に圧力波が集中し、出口孔60から流体を効率よく送出することができる。
【0058】
また、回転方向に互いに並び合ういずれの2つの内部電極においても、一方の内部電極の形成領域のダイアフラム30が最大変位の状態に達するまで、回転方向手前の内部電極の形成領域のダイアフラム30は、圧力室40の容積を最大に縮小する、最大変位の状態を維持している。すなわち、終点内部電極形成領域のダイアフラム30が最大変位の状態に達するまで、いずれのダイアフラム30も自身の領域の圧力室40を拡大するような方向に変位することが無いため、負の圧力波を生じることが無い。従って、圧力室40の終点内部電極形成領域に位置する出口孔60に向かった圧力波を、後から負の圧力波で減じてしまうことが無いため、効率よく流体を出口孔60から送出することができる。
【0059】
また、駆動遅延時間τを、当該内部電極を通過する時間τsよりも長くすること、即ち、τ>τsとすることにより、一方の当該内部電極の形成領域の前記ダイアフラム30の変位により回転方向に進行する圧力波が、回転方向次の当該内部電極の形成領域を通過する前に、次の内部電極に駆動電圧波形が入力され、ダイアフラム30が変位し圧力室40を縮小し始めてしまうことはない。このため圧力波はスムーズに出口孔60へ向かって伝播し、スムーズに流体を圧力室40から出口孔60に送出することができる。
【0060】
また、遅延時間τを、当該一つの内部電極の形成領域のダイアフラム30が最大変位に達するまでの時間τrよりも短くすること、即ち、τ<τrとすることにより、当該一つの内部電極の形成領域のダイアフラム30が最大変位に達するまでの間に、次の領域のダイアフラム30の変位を開始する。このことによって、圧力室40の始点内部電極の形成領域から終点内部電極形成領域に向かってダイアフラム30を間断なく且つ連続的に変位させ、圧力室面内方向で終点内部電極形成領域に向かう間断のない圧力波を発生させることができる。このため圧力波はスムーズに出口孔60へ向かって伝播し、流体を出口孔60から送出することができる。
【0061】
さらに、τi>τsi(i=1,2,3、…、5)、且つ、τi<τri(i=1,2,3、…、5)の条件を満たすことにより、圧力室40の始点内部電極の形成領域から終点内部電極形成領域に向かってダイアフラム30を間断なく且つ連続的に変位させることができ、より一層、スムーズに圧力波を出口孔60へ向かって伝播させ、流体を出口孔60から送出することができる。
【0062】
また、本願発明では、積層圧電素子の内部電極が複数に分割されているため、分割されたそれぞれの内部電極毎のキャパシタンスは、面積分割比と同じ割合で小さくなる。分割されたそれぞれの内部電極は、それぞれ電気的に独立して駆動されるため、全面内部電極の大きなキャパシタンスを有する積層圧電素子を駆動する場合と比べてアンプの負荷を大幅に低減することができる。その結果、負荷に応じた小型のアンプを適用できるので、装置におけるアンプのレイアウトの自由度が高く、流体噴射装置1の小型化が可能となる。
さらに、上述した通り、小型のアンプが適用できるため、大きなキャパシタンスを有する積層圧電素子を駆動する場合と比べて、個々のアンプからの発熱量が低くなり、流体噴射装置1に対してアンプからの熱影響を低減することもできる。
【0063】
なお、内部電極の分割形態は、前述した実施形態1に限らず様々に変形させることが可能であり、以降に実施形態1の変形例について図面を参照して説明する。
(変形例1)
【0064】
まず、変形例1について説明する。変形例1は、前述した実施形態1に対して、内部電極の分割形態が、周方向及び径方向に分割されていることに特徴を有する。よって、実施形態1との相違箇所を中心に説明する。なお、内部電極各層、GND電極の構成と、内部電極の結線については、前述した実施形態1の考え方を踏襲できるので説明を省略する。
【0065】
図7は、変形例1に係る積層型圧電素子の内部電極の分割を示す平面図である。図7において、内部電極は、積層型圧電素子10の外側周方向に分割された4個の内部電極11a,11b,11c,11dと、これらの内側周方向に分割された内部電極11e,11f,11g,11hとから構成されている。
【0066】
内部電極11a〜11hは、互いに独立した接続電極で積層型圧電素子10の外周側面に延在されており、それぞれ接続電極e1,e2,e3,e4,e5,e6,e7,e8,に接続され、それぞれに独立した電圧波形S1、S2、S3、S4、S5、S6、S7,S8が入力される。なお、各内部電極を分割する隙間は、電気的に短絡しない程度の幅があればよい。
【0067】
ここで、内部電極11aを、電圧波形を入力する最初の領域として始点内部電極11aとし、内部電極11hを、電圧波形を入力する最後の領域として終点内部電極11hとして説明する。つまり、電圧波形は始点内部電極11aからスタートして同じ回転領域内の矢視L2方向に順々に入力され最終位置にある内部電極11dに達したところから、次に、矢視L3方向に移動し、内周側にある内部電極11e、続いて同じ回転領域内の矢視L4方向に、電圧波形Si+1が電圧波形Siに対し駆動遅延時間τi(i=1,2,3、…、6、7)を有して順々に入力される。なお、終点内部電極11hの形成領域に、出口孔60が開口されている。出口孔60は、終点内部電極11hの形成領域の外周方向に偏心した位置に開口される。
【0068】
変形例1に係る電圧波形は、実施形態1(図5、参照)と同じ考え方で入力される。つまり、始点内部電極11aに電圧波形S1、次の内部電極11bに電圧波形S2というように、終点内部電極11hまで回転方向(矢視L2,L3)に順々に入力すればよい。
【0069】
また、各電圧波形の入力タイミングとしての駆動遅延時間τi(i=1,2,3、…、6、7)、内部電極の形成領域を通過するのに要する時間をτsi(i=1,2,3、…、6、7)、電圧波形の立ち上がり時間τri(i=1,2,3、…、6、7)それぞれの関係は、τi>τsi(i=1,2,3,…,6,7)、及び、τi<τri(i=1,2,3,…,6,7)の条件を満たしている。
【0070】
なお、図7にて説明した内部電極の分割形態は1例であって、周方向の分割数、径方向の分割数はこれに限定されない。
(変形例2)
【0071】
続いて、変形例2について図面を参照して説明する。変形例2は、内部電極が、積層型圧電素子10の外周方向から中心方向に向かう渦線状に形成され、且つ、周方向に分割されていることを特徴とする。よって、実施形態1、変形例1との相違箇所を中心に説明する。なお、内部電極各層、GND電極の構成と、内部電極の結線については、前述した実施形態1の考え方を踏襲できるので説明を省略する。
【0072】
図8は、変形例2に係る積層型圧電素子の内部電極の分割を示す平面図である。図8において、内部電極は、積層型圧電素子10の外周方向から中心方向に向かう渦線状に形成され、且つ、周方向に分割され、外側端部から順に、内部電極11a,11b,11c,11d,11e,11f,11g,11h,11i,11jが形成される。ここで、内部電極11aは始点内部電極であって、内部電極11jは終点内部電極である。なお、図8では、終点内部電極11jは円形をしているが、他の内部電極と同様にさらに周方向に分割する形態としてもよい。
【0073】
内部電極11a〜11jは、互いに独立した接続電極で積層型圧電素子10の外周側面に延在されており、それぞれ接続電極e1,e2,e3,e4,e5,e6,e7,e8,e9,e10に接続され、それぞれに独立した電圧波形S1、S2、S3、S4、S5、S6、S7,S8、S9、S10が入力される。なお、各内部電極を分割する隙間は、電気的に短絡しない程度の幅があればよい。
【0074】
電圧波形S1〜S10は、始点内部電極11aから終点内部電極11jに至るまで、Si+1がSiに対し駆動遅延時間τi(i=1,2,3、…、8、9)を有して順々に渦線に沿って入力していく。なお、終点内部電極11jの形成領域に、出口孔60が開口されている。出口孔60は、終点内部電極11jの形成領域のほぼ中央に開口される。
【0075】
変形例2に係る電圧波形S1〜S10は、実施形態1(図5、参照)と同じ考え方で入力される。つまり、始点内部電極11aに電圧波形S1、次の内部電極11bに電圧波形S2というように、終点内部電極11jまで順々に入力すればよい。
【0076】
また、各電圧波形の入力タイミングとしての駆動遅延時間τi(i=1,2,3、…、8、9)、内部電極の形成領域を通過するのに要する時間をτsi(i=1,2,3、…、8、9)、電圧波形の立ち上がり時間τri(i=1,2,3、…、8、9)それぞれの関係は、τi>τsi(i=1,2,3,…,8,9)、及び、τi<τri(i=1,2,3,…,8、9)の条件を満たしている。
【0077】
なお、図8にて説明した内部電極の分割形態は1例であって、渦線の条数、周方向の分割数はこれに限定されない。
【0078】
以上説明した、変形例1及び変形例2においても、実施形態1に対して内部電極の分割構成が異なる構成としても、実施形態1と同様な効果が得られる。
また、積層型圧電素子10のダイアフラム30との接合部断面積が大きい場合には、変形例1及び変形例2のような周方向に分割する構成にすれば、分割数を多くできる他、前述したτ>τsの条件を満たす設計がし易くなるという効果がある。
【0079】
また、変形例1及び変形例2においては、実施形態1に比べ、積層圧電素子の内部電極が更に数多く分割できるため、分割されたそれぞれの内部電極毎のキャパシタンスは、面積分割比と同じ割合で更に小さくなり、アンプの負荷を大幅に低減することができる。その結果、負荷に応じた小型のアンプを適用できるため、流体噴射装置1の小型化が可能となり、さらにアンプからの熱影響を低減することもできる。
(医療機器)
【0080】
医療機器は、前述した実施形態に記載の流体噴射装置1を用いる。この流体噴射装置1は、積層型圧電素子10を駆動することによって、流体噴射開口部(ノズル)62から一連のパルス状の微小液滴を高速噴射する。パルス状の微小液滴の噴射による手術は、生体組織の切除・切開・破砕する際、熱損傷がなく、生体組織を選択的に切除並びに温存できるなど、手術具として優れた特性を有している。また、このような流体噴射装置1を用いて手術等を行う場合、噴射する液体量が従来の高圧定常流を用いたものに比べ少なく、術部の視認性に優れているという利点もある。
【符号の説明】
【0081】
1…流体噴射装置、10…積層型圧電素子、11〜14…内部電極、11a,11b,11c,11d,11e,11f…分割された内部電極、30…ダイアフラム、40…圧力室、60…出口孔。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧力室と、
周方向に分割され、回転方向に配列される内部電極を有する円柱形状の積層型圧電素子と、
前記積層型圧電素子の前記圧力室側の端面に密着固定されるダイアフラムと、
前記内部電極の一つを始点内部電極とし、前記始点内部電極の回転方向の一つ前に配設される前記内部電極を終点内部電極としたとき、前記終点内部電極と対向する位置で前記圧力室を開口する出口孔と、
を有し、
前記積層型圧電素子を、前記始点内部電極から前記終点内部電極に向かって前記内部電極の形成領域の一つ一つを独立して時間差を有して順々に変位させ、
前記圧力室の容積を前記ダイアフラムにより前記始点内部電極の形成領域から前記終点内部電極の形成領域に向かって順々に縮小していき、前記圧力室内の圧力を高め、前記出口孔から流体を送出することを特徴とする流体噴射装置。
【請求項2】
請求項1に記載の流体噴射装置において、
前記分割された内部電極の形成領域のうち、回転方向に互いに並び合ういずれの2つの前記内部電極においても、
一方の前記内部電極の形成領域の前記ダイアフラムが最大変位の状態に達するまで、回転方向手前の前記内部電極の形成領域の前記ダイアフラムは、前記圧力室の容積を最大に縮小する、最大変位の状態を維持していることを特徴とする流体噴射装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の流体噴射装置において、
前記分割された内部電極の形成領域のうち、回転方向に互いに並び合ういずれの2つの前記内部電極においても、
一方の前記内部電極と、回転方向次の前記内部電極との間の駆動遅延時間をτ、
一方の前記内部電極の形成領域の前記ダイアフラムの変位により回転方向に進行する圧力波が、回転方向次の前記内部電極の形成領域を通過するのに要する時間をτs
とするとき、τ>τsの関係にあることを特徴とする流体噴射装置。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の流体噴射装置において、
前記分割された内部電極の形成領域のうち、回転方向に互いに並び合ういずれの2つの前記内部電極においても、
一方の前記内部電極の形成領域の前記ダイアフラムの変位が最大変位の状態に達するまでに要する時間をτr
一方の前記内部電極と、回転方向次の前記内部電極との間の駆動遅延時間をτ、
とするとき、τ<τrの関係にあることを特徴とする流体噴射装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の流体噴射装置において、
一方の前記内部電極と、回転方向次の前記内部電極との間の駆動遅延時間をτ、
一方の前記内部電極の形成領域の前記ダイアフラムの変位により回転方向に進行する圧力波が、回転方向次の前記内部電極の形成領域を通過するのに要する時間をτs
一方の前記内部電極の形成領域の前記ダイアフラムの変位が最大変位の状態に達するまでに要する時間をτr
とするとき、τ>τs、且つ、τ<τrの関係にあることを特徴とする流体噴射装置。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載の流体噴射装置を用いたことを特徴とする医療機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−107513(P2012−107513A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−254589(P2010−254589)
【出願日】平成22年11月15日(2010.11.15)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】