流体噴射装置
【課題】大型化することなく、複数のキャップ内空間を選択的に吸引することが可能な流体噴射装置を提供する。
【解決手段】プリンターは、複数のノズルからインクを噴射する記録ヘッドを支持して往復移動可能なキャリッジと、各ノズルを個別に囲うように記録ヘッドに当接して複数のキャップ内空間を形成するキャップと、各キャップ内空間を、それぞれ第1及び第2排出チューブ35,37を介して吸引可能なチューブポンプと、メンテナンス領域でのキャリッジの往復移動に伴って各排出チューブ35,37を選択的に閉塞可能な選択閉塞手段とを備える。そして、選択閉塞手段は、メンテナンス領域におけるキャリッジの往復移動に伴って往復移動するピン部45と、該ピン部45が往復移動する度に該ピン部45と係合して各排出チューブ35,37を閉塞するそれぞれの閉塞位置B,Cに該ピン部45を順次導く第1〜第4カム面79b,80b,81,82とを備える。
【解決手段】プリンターは、複数のノズルからインクを噴射する記録ヘッドを支持して往復移動可能なキャリッジと、各ノズルを個別に囲うように記録ヘッドに当接して複数のキャップ内空間を形成するキャップと、各キャップ内空間を、それぞれ第1及び第2排出チューブ35,37を介して吸引可能なチューブポンプと、メンテナンス領域でのキャリッジの往復移動に伴って各排出チューブ35,37を選択的に閉塞可能な選択閉塞手段とを備える。そして、選択閉塞手段は、メンテナンス領域におけるキャリッジの往復移動に伴って往復移動するピン部45と、該ピン部45が往復移動する度に該ピン部45と係合して各排出チューブ35,37を閉塞するそれぞれの閉塞位置B,Cに該ピン部45を順次導く第1〜第4カム面79b,80b,81,82とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、インクジェット式プリンターなどの流体噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、流体噴射ヘッドに形成されたノズルから流体をターゲットに対して噴射する流体噴射装置の一種としてインクジェット式プリンター(以下、単に「プリンター」という。)が知られている。こうしたプリンターでは、ノズルが記録ヘッド(流体噴射ヘッド)のノズル形成面において開口していることから、ノズルからのインク溶媒の蒸発によりインク(流体)が増粘してインクの噴射不良が発生することがある。このため、こうしたプリンターには、通常、ヘッドメンテナンス機構が設けられている。
【0003】
このヘッドメンテナンス機構は、ノズルを囲うように記録ヘッドに当接可能なキャップ部材と、該キャップ部材内に連通したインク排出路中に設けられる吸引ポンプ(吸引手段)とを備え、該吸引ポンプの駆動によりキャップ部材内に負圧を発生させることで、ノズルから増粘したインクが吸引除去されるようになっている。このようなヘッドメンテナンス機構を備えたプリンターとしては、従来、特許文献1に記載されたものが知られている。
【0004】
この特許文献1のプリンターには、キャリッジの移動領域のうちの印字領域外にヘッド回復領域(メンテナンス領域)としてのヘッド信頼性維持回復ステーションが設けられている。ヘッド信頼性維持回復ステーションでは、キャリッジに支持された4つの記録ヘッド(ノズル)にそれぞれ当接して密閉するキャップ手段である4つのキャップ部材が、ガイドフレームによってキャリッジと同じ方向に移動可能に支持されたソリ部材に保持されている。ソリ部材における印字領域側と反対側の端部にはキャリッジと係合するピン部材が立設されており、ソリ部材はスプリングによって常に印字領域側に付勢されている。
【0005】
そして、ヘッド信頼性維持回復ステーションにおいて、キャリッジが印字領域側と反対側に移動した場合にはスプリングの付勢力に抗してソリ部材がキャリッジによってピン部材を介してキャリッジと同じ方向へ移動されるとともに、キャリッジが印字領域側に移動した場合にはスプリングの付勢力によってソリ部材がキャリッジと同じ方向へ移動されるようになっている。
【0006】
また、ソリ部材における印字領域側と反対側の端部には、一端が各キャップ部材に接続された4本のチューブの他端がそれぞれ接続される4つのインク吸引用連通孔を有する第1部材が取り付けられている。第1部材の上側に対向する位置には、一端が吸引ポンプに接続された1本のチューブの他端が接続される1つのインク吸引用連通孔を有する第2部材が固定されている。そして、各キャップ部材が各記録ヘッドに当接する位置にソリ部材が移動した状態では第1部材の上面に第2部材が接触して、第1部材の各インク吸引用連通孔のうちのいずれか1つと第2部材のインク吸引用連通孔とが連通可能になっている。
【0007】
この場合、第1部材の各インク吸引用連通孔のうちのどのインク吸引用連通孔と第2部材のインク吸引用連通孔とが連通されるかは、ソリ部材を介して第1部材を移動可能なキャリッジの位置によって決まる。すなわち、各キャップ部材のうちのどのキャップ部材が吸引ポンプによって吸引されるかは、キャリッジの位置によって決まる。したがって、特許文献1のプリンターでは、キャリッジの位置を調節することで、各記録ヘッドを選択的に吸引できるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平9−131882号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、特許文献1のプリンターでは、第1部材の各インク吸引用連通孔がキャリッジの移動方向に沿って配列されている。このため、第1部材の各インク吸引用連通孔のうち最も印字領域側に位置するインク吸引用連通孔と第2部材のインク吸引用連通孔とが連通するようにキャリッジによってソリ部材を移動させると、ソリ部材がガイドフレームから印字領域側と反対側に大きく突出する。したがって、このソリ部材が突出する分のスペースを確保しなければならず、プリンターが大型化してしまうという問題があった。
【0010】
本発明は、このような従来技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的とするところは、大型化することなく、複数のキャップ内空間を選択的に吸引することが可能な流体噴射装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明の流体噴射装置は、複数のノズルから流体を噴射する流体噴射ヘッドを支持して往復移動可能に構成されたキャリッジと、前記各ノズルを個別に囲うように前記流体噴射ヘッドに当接して複数のキャップ内空間を形成するキャップ手段と、前記各キャップ内空間を、それぞれ可撓性を有するチューブによって形成される吸引通路を介して吸引可能な吸引手段とを備えた流体噴射装置において、前記流体噴射ヘッドのメンテナンスを行うためのメンテナンス領域での前記キャリッジの往復移動に伴って前記各吸引通路を選択的に閉塞可能な選択閉塞手段を備え、前記選択閉塞手段は、前記メンテナンス領域における前記キャリッジの往復移動に伴って往復移動することにより、前記各吸引通路を選択的に閉塞する位置に配置された前記各チューブを押圧可能な押圧ユニットを介して該チューブを押し潰すことで、前記各吸引通路を選択的に閉塞する閉塞部材と、前記閉塞部材が往復移動する度に該閉塞部材と係合して前記各吸引通路を閉塞するそれぞれの閉塞位置に該閉塞部材を順次導くカム面とを備え、前記押圧ユニットは、前記キャリッジの往復移動に伴って前記閉塞部材が摺動することで、該押圧ユニットが前記チューブを押圧する方向に移動するように構成された摺動面を有する第1の部材と、該第1の部材と前記チューブとの間に配置されるとともに該チューブを接触押圧することが可能な第2の部材と、前記チューブを押し潰して前記吸引通路を閉塞するために必要な押圧荷重を発生した状態で前記第1の部材と前記第2の部材との間に保持されるとともに、前記第2の部材が前記チューブを押圧して前記吸引通路を閉塞した後にさらに該チューブを押し潰すために必要な単位変位量当たりの荷重よりも単位変位量当たりに発生する荷重が小さくなるように設定された圧縮ばねとを備えている。
【0012】
この発明によれば、既存のメンテナンス領域におけるキャリッジの往復移動に伴って閉塞部材が往復移動する度に、カム面によって該閉塞部材が各吸引通路を閉塞する各閉塞位置に順次導かれるため、キャリッジの移動範囲を広げることなく該各吸引通路を選択的に閉塞することが可能となる。したがって、大型化することなく、複数のキャップ内空間を選択的に吸引することが可能となる。さらに、圧縮ばねは、第2の部材が吸引通路を閉塞した後にさらに該チューブを押し潰すために必要な単位変位量当たりの荷重よりも、単位変位量当たりに発生する荷重が小さくなるように設定されている。このため、第2の部材によってチューブが押し潰されて吸引通路が閉塞された後に圧縮ばねが収縮することで、該第2の部材によってチューブが過剰に押し潰されることを抑制することが可能となる。この結果、キャリッジが移動する際の負荷や閉塞部材が摺動する際の負荷を低減することが可能となる。
【0013】
本発明の流体噴射装置は、複数のノズルから流体を噴射する流体噴射ヘッドを支持して往復移動可能に構成されたキャリッジと、前記各ノズルを個別に囲うように前記流体噴射ヘッドに当接して複数のキャップ内空間を形成するキャップ手段と、前記各キャップ内空間を、それぞれ可撓性を有するチューブによって形成される吸引通路を介して吸引可能な吸引手段とを備えた流体噴射装置において、前記流体噴射ヘッドのメンテナンスを行うためのメンテナンス領域での前記キャリッジの往復移動に伴って前記各吸引通路を選択的に閉塞可能な選択閉塞手段を備え、前記選択閉塞手段は、前記メンテナンス領域における前記キャリッジの往復移動に伴って往復移動することにより、前記各吸引通路を選択的に閉塞する位置に配置された前記各チューブを押圧可能な押圧部材を介して該チューブを押し潰すことで、前記各吸引通路を選択的に閉塞する閉塞部材と、前記閉塞部材が往復移動する度に該閉塞部材と係合して前記各吸引通路を閉塞するそれぞれの閉塞位置に該閉塞部材を順次導くカム面とを備え、前記押圧部材は、前記キャリッジの往復移動に伴って前記閉塞部材が摺動することで、該押圧部材が前記チューブを押圧する方向に移動するように構成された摺動面を有し、該摺動面は、前記閉塞部材の摺動により前記押圧部材が前記チューブを押圧する方向へ移動する際の移動量が互いに異なるように設定された複数の面によって構成され、該各面は、前記押圧部材が前記チューブを押圧する押圧量が増加するに連れて該押圧部材が前記チューブを押圧する方向に移動する移動量が減少するように配置されている。
【0014】
この発明によれば、既存のメンテナンス領域におけるキャリッジの往復移動に伴って閉塞部材が往復移動する度に、カム面によって該閉塞部材が各吸引通路を閉塞する各閉塞位置に順次導かれるため、キャリッジの移動範囲を広げることなく該各吸引通路を選択的に閉塞することが可能となる。したがって、大型化することなく、複数のキャップ内空間を選択的に吸引することが可能となる。さらに、摺動面を構成する各面は、押圧部材がチューブを押圧する押圧量が増加するに連れて該押圧部材がチューブを押圧する方向に移動する移動量が減少するように配置されている。このため、第2の部材によってチューブが押し潰されて吸引通路が閉塞された後に該第2の部材によってチューブが過剰に押し潰されることを抑制することが可能となる。この結果、キャリッジが移動する際の負荷や閉塞部材が摺動する際の負荷を低減することが可能となる。
【0015】
本発明の流体噴射装置は、複数のノズルから流体を噴射する流体噴射ヘッドを支持して往復移動可能に構成されたキャリッジと、前記各ノズルを個別に囲うように前記流体噴射ヘッドに当接して複数のキャップ内空間を形成するキャップ手段と、前記各キャップ内空間を、それぞれ可撓性を有するチューブによって形成される吸引通路を介して吸引可能な吸引手段とを備えた流体噴射装置において、前記流体噴射ヘッドのメンテナンスを行うためのメンテナンス領域での前記キャリッジの往復移動に伴って前記各吸引通路を選択的に閉塞可能な選択閉塞手段を備え、前記選択閉塞手段は、前記メンテナンス領域における前記キャリッジの往復移動に伴って往復移動することにより、前記各吸引通路を選択的に閉塞する位置に配置された前記各チューブを押圧可能な押圧ユニットを介して該チューブを押し潰すことで、前記各吸引通路を選択的に閉塞する閉塞部材と、前記閉塞部材が往復移動する度に該閉塞部材と係合して前記各吸引通路を閉塞するそれぞれの閉塞位置に該閉塞部材を順次導くカム面とを備え、前記押圧ユニットは、前記キャリッジの往復移動に伴って前記閉塞部材が摺動することで、該押圧ユニットが前記チューブを押圧する方向に移動するように構成された摺動面を有する第1の部材と、該第1の部材と前記チューブとの間に配置されるとともに該チューブを接触押圧することが可能な第2の部材と、前記チューブを押し潰して前記吸引通路を閉塞するために必要な押圧荷重を発生した状態で前記第1の部材と前記第2の部材との間に保持されるとともに、前記第2の部材が前記チューブを押圧して前記吸引通路を閉塞した後にさらに該チューブを押し潰すために必要な単位変位量当たりの荷重よりも単位変位量当たりに発生する荷重が小さくなるように設定された圧縮ばねとを備え、前記摺動面は、前記閉塞部材の摺動により前記押圧ユニットが前記チューブを押圧する方向へ移動する際の移動量が互いに異なるように設定された複数の面によって構成され、該各面は、前記押圧ユニットが前記チューブを押圧する押圧量が増加するに連れて該押圧ユニットが前記チューブを押圧する方向に移動する移動量が減少するように配置されていることを備えている。
【0016】
この発明によれば、既存のメンテナンス領域におけるキャリッジの往復移動に伴って閉塞部材が往復移動する度に、カム面によって該閉塞部材が各吸引通路を閉塞する各閉塞位置に順次導かれるため、キャリッジの移動範囲を広げることなく該各吸引通路を選択的に閉塞することが可能となる。したがって、大型化することなく、複数のキャップ内空間を選択的に吸引することが可能となる。さらに、圧縮ばねは、第2の部材が吸引通路を閉塞した後にさらに該チューブを押し潰すために必要な単位変位量当たりの荷重よりも、単位変位量当たりに発生する荷重が小さくなるように設定されているとともに、摺動面を構成する各面は、押圧部材がチューブを押圧する押圧量が増加するに連れて該押圧部材がチューブを押圧する方向に移動する移動量が減少するように配置されている。このため、第2の部材によってチューブが押し潰されて吸引通路が閉塞された後に、該第2の部材によってチューブが過剰に押し潰されることを効果的に抑制することが可能となる。この結果、キャリッジが移動する際の負荷や閉塞部材が摺動する際の負荷を低減することが可能となる。
【0017】
本発明の流体噴射装置において、前記キャップ手段は、前記キャリッジが前記メンテナンス領域にて移動する際に該キャリッジと係合することで、該キャリッジの移動方向へ移動しながら前記流体噴射ヘッドに対して近接する方向に移動して前記流体噴射ヘッドに当接するキャップ部材を備え、前記メンテナンス領域における前記キャリッジの往復移動中は前記キャップ部材の前記流体噴射ヘッドへの当接状態が維持される。
【0018】
この発明によれば、キャップ部材を流体噴射ヘッドに当接させるための駆動源を別途必要とすることなく、キャリッジの移動によってキャップ部材を流体噴射ヘッドに当接させることが可能となる。さらに、閉塞部材が各吸引通路を閉塞する各閉塞位置に順次導かれるように、メンテナンス領域においてキャリッジを往復移動させた場合でも、キャップ部材の流体噴射ヘッドへの当接状態を維持することが可能となる。
【0019】
本発明の流体噴射装置は、複数のノズルから流体を噴射する流体噴射ヘッドを支持して往復移動可能に構成されたキャリッジと、前記各ノズルを個別に囲うように前記流体噴射ヘッドに当接して複数のキャップ内空間を形成するキャップ手段と、前記各キャップ内空間を、それぞれ可撓性を有するチューブによって形成される吸引通路を介して吸引可能な吸引手段とを備えた流体噴射装置において、前記流体噴射ヘッドのメンテナンスを行うためのメンテナンス領域での前記キャリッジの往復移動に伴って前記各吸引通路を選択的に閉塞可能な選択閉塞手段を備え、前記選択閉塞手段は、前記キャリッジと共に移動し、且つ前記キャリッジの移動方向及び前記キャップ手段が前記流体噴射ヘッドへ当接する方向に対して略垂直な方向に移動可能であって、前記各吸引通路を選択的に閉塞する位置に配置された前記各チューブを押圧可能な押圧ユニットを介して該チューブを押し潰すことで、前記各吸引通路を選択的に閉塞する閉塞部材と、前記キャリッジが前記メンテナンス領域にて往復移動する度に前記閉塞部材と係合して該閉塞部材を前記キャリッジの移動方向及び前記キャップ手段が前記流体噴射ヘッドへ当接する方向に対して略垂直な方向に移動させるカム面と、前記キャリッジの移動方向及び前記キャップ手段が前記流体噴射ヘッドへ当接する方向に対して略垂直な方向に移動した前記閉塞部材が進入するとともに、前記閉塞部材が進入した場合に該閉塞部材が前記各吸引通路を閉塞するか否かを選択するように予め設定された複数の選択通路とを備え、前記押圧ユニットは、前記キャリッジの往復移動に伴って前記閉塞部材が摺動することで、該押圧ユニットが前記チューブを押圧する方向に移動するように構成された摺動面を有する第1の部材と、該第1の部材と前記チューブとの間に配置されるとともに該チューブを接触押圧することが可能な第2の部材と、
前記チューブを押し潰して前記吸引通路を閉塞するために必要な押圧荷重を発生した状態で前記第1の部材と前記第2の部材との間に保持されるとともに、前記第2の部材が前記チューブを押圧して前記吸引通路を閉塞した後にさらに該チューブを押し潰すために必要な単位変位量当たりの荷重よりも単位変位量当たりに発生する荷重が小さくなるように設定された圧縮ばねとを備えている。
【0020】
この発明によれば、既存のメンテナンス領域におけるキャリッジの往復移動に伴って閉塞部材が往復移動する度に、該閉塞部材が各選択通路に進入して各吸引通路を閉塞するか否かを選択するため、キャリッジの移動範囲を広げることなく該各吸引通路を選択的に閉塞することが可能となる。したがって、大型化することなく、複数のキャップ内空間を選択的に吸引することが可能となる。さらに、圧縮ばねは、第2の部材が吸引通路を閉塞した後にさらに該チューブを押し潰すために必要な単位変位量当たりの荷重よりも、単位変位量当たりに発生する荷重が小さくなるように設定されている。このため、第2の部材によってチューブが押し潰されて吸引通路が閉塞された後に圧縮ばねが収縮することで、該第2の部材によってチューブが過剰に押し潰されることを抑制することが可能となる。この結果、キャリッジが移動する際の負荷や閉塞部材が摺動する際の負荷を低減することが可能となる。
【0021】
本発明の流体噴射装置は、複数のノズルから流体を噴射する流体噴射ヘッドを支持して往復移動可能に構成されたキャリッジと、前記各ノズルを個別に囲うように前記流体噴射ヘッドに当接して複数のキャップ内空間を形成するキャップ手段と、前記各キャップ内空間を、それぞれ可撓性を有するチューブによって形成される吸引通路を介して吸引可能な吸引手段とを備えた流体噴射装置において、前記流体噴射ヘッドのメンテナンスを行うためのメンテナンス領域での前記キャリッジの往復移動に伴って前記各吸引通路を選択的に閉塞可能な選択閉塞手段を備え、前記選択閉塞手段は、前記キャリッジと共に移動し、且つ前記キャリッジの移動方向及び前記キャップ手段が前記流体噴射ヘッドへ当接する方向に対して略垂直な方向に移動可能であって、前記各吸引通路を選択的に閉塞する位置に配置された前記各チューブを押圧可能な押圧部材を介して該チューブを押し潰すことで、前記各吸引通路を選択的に閉塞する閉塞部材と、前記キャリッジが前記メンテナンス領域にて往復移動する度に前記閉塞部材と係合して該閉塞部材を前記キャリッジの移動方向及び前記キャップ手段が前記流体噴射ヘッドへ当接する方向に対して略垂直な方向に移動させるカム面と、前記キャリッジの移動方向及び前記キャップ手段が前記流体噴射ヘッドへ当接する方向に対して略垂直な方向に移動した前記閉塞部材が進入するとともに、前記閉塞部材が進入した場合に該閉塞部材が前記各吸引通路を閉塞するか否かを選択するように予め設定された複数の選択通路とを備え、前記押圧部材は、前記キャリッジの往復移動に伴って前記閉塞部材が摺動することで、該押圧部材が前記チューブを押圧する方向に移動するように構成された摺動面を有し、該摺動面は、前記閉塞部材の摺動により前記押圧部材が前記チューブを押圧する方向へ移動する際の移動量が互いに異なるように設定された複数の面によって構成され、該各面は、前記押圧部材が前記チューブを押圧する押圧量が増加するに連れて該押圧部材が前記チューブを押圧する方向に移動する移動量が減少するように配置されている。
【0022】
この発明によれば、既存のメンテナンス領域におけるキャリッジの往復移動に伴って閉塞部材が往復移動する度に、該閉塞部材が各選択通路に進入して各吸引通路を閉塞するか否かを選択するため、キャリッジの移動範囲を広げることなく該各吸引通路を選択的に閉塞することが可能となる。したがって、大型化することなく、複数のキャップ内空間を選択的に吸引することが可能となる。さらに、摺動面を構成する各面は、押圧部材がチューブを押圧する押圧量が増加するに連れて該押圧部材がチューブを押圧する方向に移動する移動量が減少するように配置されている。このため、第2の部材によってチューブが押し潰されて吸引通路が閉塞された後に該第2の部材によってチューブが過剰に押し潰されることを抑制することが可能となる。この結果、キャリッジが移動する際の負荷や閉塞部材が摺動する際の負荷を低減することが可能となる。
【0023】
本発明の流体噴射装置は、複数のノズルから流体を噴射する流体噴射ヘッドを支持して往復移動可能に構成されたキャリッジと、前記各ノズルを個別に囲うように前記流体噴射ヘッドに当接して複数のキャップ内空間を形成するキャップ手段と、前記各キャップ内空間を、それぞれ可撓性を有するチューブによって形成される吸引通路を介して吸引可能な吸引手段とを備えた流体噴射装置において、前記流体噴射ヘッドのメンテナンスを行うためのメンテナンス領域での前記キャリッジの往復移動に伴って前記各吸引通路を選択的に閉塞可能な選択閉塞手段を備え、前記選択閉塞手段は、前記キャリッジと共に移動し、且つ前記キャリッジの移動方向及び前記キャップ手段が前記流体噴射ヘッドへ当接する方向に対して略垂直な方向に移動可能であって、前記各吸引通路を選択的に閉塞する位置に配置された前記各チューブを押圧可能な押圧ユニットを介して該チューブを押し潰すことで、前記各吸引通路を選択的に閉塞する閉塞部材と、前記キャリッジが前記メンテナンス領域にて往復移動する度に前記閉塞部材と係合して該閉塞部材を前記キャリッジの移動方向及び前記キャップ手段が前記流体噴射ヘッドへ当接する方向に対して略垂直な方向に移動させるカム面と、前記キャリッジの移動方向及び前記キャップ手段が前記流体噴射ヘッドへ当接する方向に対して略垂直な方向に移動した前記閉塞部材が進入するとともに、前記閉塞部材が進入した場合に該閉塞部材が前記各吸引通路を閉塞するか否かを選択するように予め設定された複数の選択通路とを備え、前記押圧ユニットは、前記キャリッジの往復移動に伴って前記閉塞部材が摺動することで、該押圧ユニットが前記チューブを押圧する方向に移動するように構成された摺動面を有する第1の部材と、該第1の部材と前記チューブとの間に配置されるとともに該チューブを接触押圧することが可能な第2の部材と、前記チューブを押し潰して前記吸引通路を閉塞するために必要な押圧荷重を発生した状態で前記第1の部材と前記第2の部材との間に保持されるとともに、前記第2の部材が前記チューブを押圧して前記吸引通路を閉塞した後にさらに該チューブを押し潰すために必要な単位変位量当たりの荷重よりも単位変位量当たりに発生する荷重が小さくなるように設定された圧縮ばねとを備え、前記摺動面は、前記閉塞部材の摺動により前記押圧ユニットが前記チューブを押圧する方向へ移動する際の移動量が互いに異なるように設定された複数の面によって構成され、該各面は、前記押圧ユニットが前記チューブを押圧する押圧量が増加するに連れて該押圧ユニットが前記チューブを押圧する方向に移動する移動量が減少するように配置されていることを備えている。
【0024】
この発明によれば、既存のメンテナンス領域におけるキャリッジの往復移動に伴って閉塞部材が往復移動する度に、該閉塞部材が各選択通路に進入して各吸引通路を閉塞するか否かを選択するため、キャリッジの移動範囲を広げることなく該各吸引通路を選択的に閉塞することが可能となる。したがって、大型化することなく、複数のキャップ内空間を選択的に吸引することが可能となる。さらに、圧縮ばねは、第2の部材が吸引通路を閉塞した後にさらに該チューブを押し潰すために必要な単位変位量当たりの荷重よりも、単位変位量当たりに発生する荷重が小さくなるように設定されているとともに、摺動面を構成する各面は、押圧部材がチューブを押圧する押圧量が増加するに連れて該押圧部材がチューブを押圧する方向に移動する移動量が減少するように配置されている。このため、第2の部材によってチューブが押し潰されて吸引通路が閉塞された後に、該第2の部材によってチューブが過剰に押し潰されることを効果的に抑制することが可能となる。この結果、キャリッジが移動する際の負荷や閉塞部材が摺動する際の負荷を低減することが可能となる。
【0025】
本発明の流体噴射装置において、前記各選択通路は前記閉塞部材が進入した際に前記チューブを押圧可能な部材が配置された選択通路と該部材が配置されていない選択通路とを含み、前記メンテナンス領域での前記キャリッジの往復移動により、前記閉塞部材が進入すべき選択通路を前記各選択通路の中から選択する。
【0026】
この発明によれば、チューブを押圧可能な部材が配置された選択通路を閉塞部材が進入すべき選択通路として選択した場合には該部材によってチューブが押圧されるとともに、チューブを押圧可能な部材が配置されていない選択通路を閉塞部材が進入すべき選択通路として選択した場合には該部材によってチューブが押圧されないようにすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】第1実施形態のインクジェット式プリンターの斜視図。
【図2】同プリンターのメンテナンス機構の簡略断面模式図。
【図3】同プリンターのキャリッジの要部拡大斜視図。
【図4】同プリンターのメンテナンス領域におけるキャリッジとキャップとの位置関係を示す模式図。
【図5】同プリンターのバルブユニットの斜視図。
【図6】図5の分解斜視図。
【図7】図5の平面図。
【図8】同プリンターにおいて、(a)は揺動部材のピン部が第1押圧部材または第2押圧部材の斜面に当接したときの状態を示す模式図、(b)は揺動部材のピン部が第1押圧部材または第2押圧部材を介して第1排出チューブまたは第2排出チューブを押圧して押し潰したときの状態を示す模式図。
【図9】メンテナンス領域におけるホームポジションを基点としたキャリッジの往復移動範囲と、両支持板の各貫通溝における各上側水平部の左右方向の長さの範囲との関係を示す模式図。
【図10】第2実施形態のバルブユニットの斜視図。
【図11】図10の分解斜視図。
【図12】同バルブユニットのカバー部材の平面図。
【図13】同バルブユニットのスライダがキャリッジによって右側にスライド移動されたときの状態を示す斜視図。
【図14】第3実施形態のメンテナンス機構の簡略断面模式図。
【図15】第3実施形態のバルブユニットの分解斜視図。
【図16】第3実施形態のバルブユニットの平面図。
【図17】第4実施形態の第1押圧部材及び第2押圧部材の側面図。
【図18】(a)〜(d)は、第4実施形態及び第5実施形態における第1排出チューブ及び第2排出チューブの潰れ具合を示す断面図。
【図19】第5実施形態の第1押圧ユニット及び第2押圧ユニットの斜視図。
【図20】第5実施形態の第1押圧ユニットの側面図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
(第1実施形態)
以下、本発明をインクジェット式プリンターに具体化した一実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の説明において、「前後方向」、「上下方向」及び「左右方向」をいう場合は、特に説明がない限り、図1を基準とした場合の「前後方向」、「上下方向」及び「左右方向」と一致するものとする。
【0029】
図1に示すように、流体噴射装置としてのインクジェット式プリンター11は、略矩形箱状をなすフレーム12を備えている。フレーム12内の下部には、その長手方向である左右方向に沿ってプラテン13が延設されている。プラテン13上には、フレーム12の背面下部に設けられた紙送りモーター14の駆動に基づき、図示しない紙送り機構により記録用紙Pが後方側から給送されるようになっている。
【0030】
フレーム12内におけるプラテン13の上方には、該プラテン13の長手方向に沿ってガイド軸15が架設されている。ガイド軸15には、該ガイド軸15の軸線方向(左右方向)に沿って往復移動可能にキャリッジ16が支持されている。すなわち、キャリッジ16には左右方向に貫通するように支持孔16aが形成されており、該支持孔16aにガイド軸15が挿通されることにより、キャリッジ16がガイド軸15によって左右方向に往復移動可能に支持されている。
【0031】
フレーム12の後壁内面におけるガイド軸15の両端部と対応する位置には、駆動プーリ17a及び従動プーリ17bが回転自在に支持されている。駆動プーリ17aにはキャリッジ16を往復移動させる際の駆動源となるキャリッジモーター18の出力軸が連結されており、これら一対のプーリ17a,17b間には一部がキャリッジ16に連結された無端状のタイミングベルト17が掛装されている。従って、キャリッジ16は、ガイド軸15にガイドされながら、キャリッジモーター18の駆動力により無端状のタイミングベルト17を介して左右方向に移動可能になっている。
【0032】
キャリッジ16の下面には流体噴射ヘッドとしての記録ヘッド19が設けられており、キャリッジ16上には記録ヘッド19に対して流体としての複数色(本実施形態では、ブラック、シアン、イエロー、マゼンタの4色)のインクをそれぞれ供給するためのインクカートリッジ20が着脱可能に装着されている。図2及び図3に示すように、記録ヘッド19の下面には、複数(本実施形態では5つ)のノズル22が前後方向に並んでなる複数列(本実施形態では4列)のノズル列22A〜22Dが左右方向に並設されている。
【0033】
各ノズル列22A〜22Dは、左側から順にノズル列22A、ノズル列22B、ノズル列22C、ノズル列22Dとされている。ノズル列22Bとノズル列22Cとの間隔及びノズル列22Cとノズル列22Dとの間隔は同じになっており、ノズル列22Aとノズル列22Bとの間隔はノズル列22Bとノズル列22Cとの間隔及びノズル列22Cとノズル列22Dとの間隔よりも広くなっている。
【0034】
そして、インクカートリッジ20内の各インクは、記録ヘッド19内に備えられた図示しない圧電素子の駆動により、インクカートリッジ20から記録ヘッド19へと供給され、該記録ヘッド19に備えられた各ノズル列22A〜22Dの各ノズル22からそれぞれ噴射されるようになっている。すなわち、図1〜図3に示すように、キャリッジ16をプラテン13と対応する印刷領域PAにて左右方向に往復移動させながら、記録ヘッド19内に備えられた図示しない圧電素子を駆動することで、プラテン13上に給送された記録用紙Pに各インクがそれぞれ噴射されて印刷が行われるようになっている。
【0035】
この場合、ノズル列22Aを構成する各ノズル22からはブラックインクが噴射され、ノズル列22Bを構成する各ノズル22からはシアンインクが噴射され、ノズル列22Cを構成する各ノズル22からはイエローインクが噴射され、ノズル列22Dを構成する各ノズル22からはマゼンタインクが噴射される。
【0036】
なお、フレーム12内の右端部に位置するプラテン13と対応しない非印刷領域は非印刷時に記録ヘッド19のクリーニング等のメンテナンスを行うためのメンテナンス領域MAとされ、該メンテナンス領域MAにはメンテナンス機構23が設けられている。
【0037】
次に、メンテナンス機構23の構成について詳述する。
図4に示すように、メンテナンス機構23は前後一対の支持板24を備えており、両支持板24には前後に並ぶ2つで一組の貫通溝25がそれぞれ形成されている。各貫通溝25は、左から右へ向かって真っ直ぐ水平に延びる下側水平部25aと、該下側水平部25aの右端から右斜め上方に向かって真っ直ぐに延びる斜面部25bと、該斜面部25bの右端から右へ向かって真っ直ぐ水平に延びる上側水平部25cとをそれぞれ備えている。
【0038】
各貫通溝25において、下側水平部25a、斜面部25b、及び上側水平部25cは互いに連通している。そして、両支持板24の前後に並ぶ一組の貫通溝25における一方(左側の貫通溝25)の下側水平部25aと他方(右側の貫通溝25)の上側水平部25cとは上下方向においてそれぞれ重なっている。
【0039】
両支持板24間には矩形板状のキャップホルダ26が配置され、該キャップホルダ26の上面中央部にはキャップ手段を構成するキャップ部材としての有底四角箱状をなすキャップ27が設けられている。さらに、キャップホルダ26の上面右端部にはキャリッジ16がメンテナンス領域MAに移動する際に該キャリッジ16の右面と係合する係合棒28が立設されている。
【0040】
キャップホルダ26の左右両端部には前後方向に延びる支持棒29がそれぞれ設けられている。そして、前側の支持棒29の両端部は両支持板24の前側の貫通溝25内にそれぞれ摺動可能に挿通されており、後側の支持棒29の両端部は両支持板24の後側の貫通溝25内にそれぞれ摺動可能に挿通されている。キャップホルダ26は、図示しないばねによって常に左側へ向かって付勢されており、キャリッジ16がメンテナンス領域MAに位置しない印刷状態では、該ばねの付勢力により両支持棒29が各貫通溝25の下側水平部25aの左端面に当接する位置(図4の2点鎖線で示す位置)にキャップ27とともに位置するようになっている。
【0041】
そして、キャリッジ16がメンテナンス領域MAに移動すると、該キャリッジ16の右面が係合棒28に当接し、さらにキャリッジ16が右方向に移動すると、図示しないばねの付勢力に抗して両支持棒29が各貫通溝25の下側水平部25aを右側に向かって摺動する。そして、更なるキャリッジ16の右方向への移動に伴って両支持棒29が各貫通溝25の斜面部25bを右側に向かって摺動する過程で、キャップホルダ26とともにキャップ27が記録ヘッド19に向かって近接するように徐々に上昇し、両支持棒29が各貫通溝25の上側水平部25cに達した段階で該キャップ27が記録ヘッド19に当接する。
【0042】
そして、キャップホルダ26は、キャリッジ16が最も右側に移動した位置であるホームポジションに位置したメンテナンス状態(図4の実線で示す状態)では、両支持棒29が各貫通溝25の上側水平部25cの右端面に当接する位置(図4の実線で示す位置)にキャップ27とともに位置するようになっている。
【0043】
図2に示すように、キャップ27内には該キャップ27内を左右2室に隔絶する隔壁30が設けられている。キャップ27において、隔壁30から左側の部分は第1キャップ部31とされ、隔壁30から右側の部分は第2キャップ部32とされている。そして、キャリッジ16がホームポジションに位置したメンテナンス状態では、キャップ27が各ノズル22を囲うように記録ヘッド19に対して当接するようになっている。
【0044】
すなわち、キャップ27が記録ヘッド19に当接した状態では、第1キャップ部31がノズル列22Aを囲みながら記録ヘッド19との間で第1キャップ内空間31aを形成するとともに、第2キャップ部32がノズル列22B〜22Dを囲みながら記録ヘッド19との間で第2キャップ内空間32aを形成するようになっている。
【0045】
第1キャップ部31の底壁からは第1突部33が下方に向かって突設されており、該第1突部33内には第1キャップ部31内からインクを排出するための第1排出路33aが上下方向に貫通するように形成されている。一方、第2キャップ部32の底壁からは第2突部34が下方に向かって突設されており、該第2突部34内には第2キャップ部32内からインクを排出するための第2排出路34aが上下方向に貫通するように形成されている。
【0046】
第2突部34には可撓性を有するチューブとしての第2排出チューブ37の基端側(上流側)が接続され、該第2排出チューブ37の他端側(下流側)は直方体状をなす廃インクタンク36内に挿入されている。一方、第1突部33には可撓性を有するチューブとしての第1排出チューブ35の基端側(上流側)が接続され、該第1排出チューブ35の他端側(下流側)は第2排出チューブ37の中間部に合流するように連通状態で連結されている。
【0047】
両排出チューブ35,37はこれらの合流点Gまでは並ぶようにして引き回されており、第2排出チューブ37における第1排出チューブ35との合流点Gよりも下流端の位置には該第2排出チューブ37内をキャップ27側から廃インクタンク36側へ向かって吸引するための吸引手段としての1つのチューブポンプ38が配設されている。
【0048】
すなわち、チューブポンプ38を駆動した場合には、両排出チューブ35,37内が同時に吸引されるようになっている。したがって、第1排出チューブ35及び第2排出チューブ37は、第1キャップ内空間31a及び第2キャップ内空間32aをそれぞれ吸引するための吸引通路を形成している。
【0049】
そして、キャップ27が記録ヘッド19に当接した状態でチューブポンプ38を駆動することで、各ノズル列22A〜22Dを構成する各ノズル22(図3参照)から増粘したインクが気泡等とともに吸引され、キャップ27及び両排出チューブ35,37を介して廃インクタンク36内に排出される、いわゆるクリーニングが行われるようになっている。なお、廃インクタンク36内には、該廃インクタンク36内に排出されたインクを吸収して保持する廃インク吸収材39が収容されている。
【0050】
また、両排出チューブ35,37におけるこれらの合流点Gよりも上流側の位置には、両排出チューブ35,37を選択的に閉塞可能な直方体状のバルブユニット40が配設されている。バルブユニット40は、メンテナンス機構23の一部を構成しており、メンテナンス領域MAにおいてキャップ27の前側に位置している。
【0051】
なお、図2においては、理解を容易にするために、破断線を境に左側と右側とで方向が異なるように描いている。すなわち、図2において、破断線よりも左側ではキャリッジ16が左右方向に移動し、破断線よりも右側ではキャリッジ16が紙面と直交する方向に移動する。
【0052】
図3に示すように、キャリッジ16の下面の右端部における記録ヘッド19よりも前側の位置には円板状の凸部41が形成されており、該凸部41には揺動部材42が揺動可能に支持されている。すなわち、揺動部材42は円環状の環状部43と該環状部43から左方に向かって真っ直ぐに延びる矩形板状のアーム部44とを備えており、環状部43が揺動可能に凸部41と嵌合している。そして、アーム部44の先端部における下面には、下方に向かって突出した円柱状の閉塞部材としてのピン部45が形成されている。なお、本実施形態では、バルブユニット40と揺動部材42とによって選択閉塞手段が構成されている。
【0053】
次に、バルブユニット40の構成について詳述する。
図5及び図6に示すように、バルブユニット40は、前後に並ぶ両排出チューブ35,37の中間部を支持する略直方体状のケース部材46と、該ケース部材46の上面上に支持される第1排出チューブ35の一部及び第2排出チューブ37の一部を上側からそれぞれ押圧可能な押圧部材としての第1押圧部材47及び第2押圧部材48と、該両押圧部材47,48を収容しつつケース部材46の上面を覆う直方体状のカバー部材49とを備えている。
【0054】
ケース部材46の上面における前後両端縁部には、左右方向のほぼ中央部から左端にかけて前壁50及び後壁51がそれぞれ立設されている。ケース部材46の上面における後壁51の前側には、該後壁51の左右方向の中央部と隣接するように、中心部にねじ孔52aを有する円形のボス部52が立設されている。前壁50の上面における右端部及び後壁51の上面における右端部には円柱状の突起53がそれぞれ立設されており、該両突起53はこれらと対応するカバー部材49の下面にそれぞれ設けられた図示しない凹部に嵌合可能になっている。
【0055】
ケース部材46の上面において、前壁50の右端部と後壁51の右端部との間の位置には、前壁50及び後壁51と同じ高さの直方体状の島部54が立設されている。この場合、島部54と前壁50の右端部との間には隙間55が形成されるとともに、島部54と後壁51の右端部との間には隙間56が形成されている。また、ケース部材46の上面における右端縁部には、前壁50及び後壁51と同じ高さの右壁57が形成されている。左右方向において右壁57における隙間55及び隙間56と対応する位置には、該右壁57を切り欠いてなる切欠凹部58及び切欠凹部59がそれぞれ形成されている。
【0056】
そして、ケース部材46の上面に第1排出チューブ35及び第2排出チューブ37が支持された状態では、第1排出チューブ35が隙間55及び切欠凹部58を通るとともに、第2排出チューブ37が隙間56及び切欠凹部59を通るようになっている。したがって、第1排出チューブ35は隙間55及び切欠凹部58間で前後方向の位置決めがなされ、第2排出チューブ37は隙間56及び切欠凹部59間で前後方向の位置決めがなされる。
【0057】
第1押圧部材47はブロック状の本体部60を備えており、該本体部60の上面における後端縁部には平板状の突出部61が形成されている。突出部61の上面61aは水平になっており、該上面61aの左側には該上面61aと隣接するように斜面61bが形成されている。斜面61bは上面61aに向かって上昇するように傾斜している。本体部60の下面における右端部には、下方に向かって突出するとともに前後方向に向かって延びる凸条62が設けられている。
【0058】
凸条62は、左右方向の幅が先端部(下端部)に行くにつれて徐々に狭くなっており、先端(下端)は丸みを帯びている。そして、凸条62の先端は、ケース部材46における隙間55及び切欠凹部58間において第1排出チューブ35の上面に当接している。
【0059】
一方、第2押圧部材48はブロック状の本体部63を備えており、該本体部63の上面における前端縁部には平板状の突出部64が形成されている。突出部64の上面64aは水平になっており、該上面64aの左側には該上面64aと隣接するように斜面64bが形成されている。斜面64bは上面64aに向かって上昇するように傾斜している。本体部63の下面における右端部には、下方に向かって突出するとともに前後方向に向かって延びる凸条65が設けられている。
【0060】
凸条65は、左右方向の幅が先端部(下端部)に行くにつれて徐々に狭くなっており、先端(下端)は丸みを帯びている。そして、凸条65の先端は、ケース部材46における隙間56及び切欠凹部59間において第2排出チューブ37の上面に当接している。
【0061】
なお、第1押圧部材47と第2押圧部材48とは、上下方向及び左右方向に広がる鉛直面を対称面として互いに面対称な形状になっている。
図6及び図7に示すように、カバー部材49の上面におけるケース部材46のボス部52と対応する位置には円形のねじ凹部66が形成されている。ねじ凹部66の底面中央にはカバー部材49を上下に貫通する貫通孔67が形成されている。したがって、貫通孔67に図示しないねじを挿通した状態で、該ねじをケース部材46のボス部52のねじ孔52aに螺入することで、カバー部材49がケース部材46に固定されるようになっている。
【0062】
カバー部材49の上面には全体として左右方向に長い凹溝70が形成されており、該凹溝70は左端側が広く開口しているとともに右端側が閉塞されている。凹溝70の右端部には、前後方向に等間隔で互いに平行となるとともに左右方向に長い平面視矩形状をなす3つの選択通路としての袋小路部71〜73が形成されている。各袋小路部71〜73は前側から順に袋小路部71、袋小路部72,袋小路部73とされ、該各袋小路部71〜73の前後の幅は揺動部材42のピン部45の外径よりも若干大きくなるように設定されている。
【0063】
凹溝70の前側面74は、カバー部材49の上面の左端縁における前端部から右方向へ真っ直ぐに延びており、カバー部材49における左右方向の中央部よりもやや右寄りの位置で右斜め後方に傾斜した後、袋小路部71の前側面になっている。この場合、凹溝70の前側面74における傾斜部分は傾斜面75とされている。
【0064】
凹溝70の後側面76は、カバー部材49の上面の左端縁における後端部から右斜め前方向へ真っ直ぐに延びており、カバー部材49における左右方向の中央部よりもやや左寄りの位置で前側面74に最も近づいた後、右斜め後方に向かって2段階に傾斜し、さらにその後、右方向に真っ直ぐに延びて袋小路部73の後側面になっている。
【0065】
この場合、凹溝70において、前側面74と後側面76とが最も近づく部分は括れ部77とされ、該括れ部77の前後方向の幅は揺動部材42のピン部45の外径よりも若干大きくなるように設定されている。さらにこの場合、凹溝70の後側面76において2段階に傾斜している部分は、リターン面78とされている。
【0066】
凹溝70内における袋小路部71及び袋小路部72の左側近傍には、該袋小路部71及び袋小路部72と対応するように、平面視で平行四辺形状をなす柱状の第1誘導部79及び第2誘導部80がそれぞれ立設されている。第1誘導部79及び第2誘導部80は、形状が互いに同一になっているとともに、左右方向の位置が互いに一致している。第1誘導部79の上面及び第2誘導部80の上面は、カバー部材49の上面と面一になっている。前後方向における第1誘導部79の幅及び第2誘導部80の幅は、前後方向における袋小路部71及び袋小路部72の幅とほぼ同じになっている。
【0067】
第1誘導部79の後側面は、平面視で左右方向に延びるストレート面79aとされている。第1誘導部79の右側面は、袋小路部71と対向しているとともに、平面視で右斜め前方から左斜め後方へ向かって延びる第1カム面79bとされている。一方、第2誘導部80の後側面は、平面視で左右方向に延びるストレート面80aとされている。第2誘導部80の右側面は、袋小路部72と対向しているとともに、平面視で右斜め前方から左斜め後方へ向かって延びる第2カム面80bとされている。
【0068】
袋小路部71と袋小路部72とを隔てる隔壁の左側面は平面視で左斜め前方から右斜め後方へ向かって延びる第3カム面81とされ、袋小路部72と袋小路部73とを隔てる隔壁の左側面は平面視で左斜め前方から右斜め後方へ向かって延びる第4カム面82とされている。
【0069】
袋小路部72の底壁のほぼ全体にはカバー部材49を上下に貫通する挿通孔83が形成されており、該挿通孔83には第1押圧部材47の突出部61が下側から挿通されている。この場合、突出部61の上面61aはカバー部材49の上面よりも若干低い位置に位置している。一方、袋小路部73の底壁のほぼ全体にはカバー部材49を上下に貫通する挿通孔84が形成されており、該挿通孔84には第2押圧部材48の突出部64が下側から挿通されている。この場合、突出部64の上面64aはカバー部材49の上面よりも若干低い位置に位置している。
【0070】
また、キャリッジ16がメンテナンス領域MAにて移動する際には、揺動部材42のピン部45が凹溝70内を摺動するようになっている。そして、キャリッジ16がホームポジションに移動したときにおいて、揺動部材42のピン部45が袋小路部71内にあるときの該ピン部45の位置は非閉塞位置Aとされ、ピン部45が袋小路部72内にあるときの該ピン部45の位置は閉塞位置Bとされ、ピン部45が袋小路部73内にあるときの該ピン部45の位置は閉塞位置Cとされている。
【0071】
また、揺動部材42のピン部45が閉塞位置Bにあるときには、図8(b)に示すように、該ピン部45が第1押圧部材47を介して第1排出チューブ35を押圧して押し潰すことで、該第1排出チューブ35内が閉塞されるようになっている。一方、揺動部材42のピン部45が閉塞位置Cにあるときには、図8(b)に示すように、該ピン部45が第2押圧部材48を介して第2排出チューブ37を押圧して押し潰すことで、該第2排出チューブ37内が閉塞されるようになっている。
【0072】
次に、インクジェット式プリンター11のクリーニング時の作用について説明する。
(全クリーニング)
さて、全ノズル列22A〜22Dの各ノズル22から各インクを吸引する記録ヘッド19の全クリーニングを行う場合には、まず、キャリッジ16をメンテナンス領域MA内のホームポジションに移動させる。すると、キャップ27が記録ヘッド19に当接し、第1キャップ部31がノズル列22Aを囲みながら記録ヘッド19との間で第1キャップ内空間31aを形成するとともに、第2キャップ部32がノズル列22B〜22Dを囲みながら記録ヘッド19との間で第2キャップ内空間32aを形成する。
【0073】
一方、揺動部材42のピン部45は、バルブユニット40のカバー部材49の上面に設けられた凹溝70内に左側から進入する。このとき、凹溝70の左端開口は大きく広がっているため、ピン部45の位置が多少前後方向にずれていても、該凹溝70の後側面76によってピン部45が括れ部77に誘導される。引き続き、ピン部45は、凹溝70の前側面74に沿って袋小路部71内の非閉塞位置Aに移動する。
【0074】
ピン部45が非閉塞位置Aにあるときには両排出チューブ35,37はともに閉塞されていない状態になっている。この状態でチューブポンプ38を駆動すると、両排出チューブ35,37内が同時に吸引されて第1キャップ内空間31a及び第2キャップ内空間32aにそれぞれ負圧が発生する。
【0075】
この負圧により、ノズル列22Aの各ノズル22から増粘したブラックインクが気泡等とともに吸引され、第1キャップ部31及び第1排出チューブ35を介して廃インクタンク36内に排出される。これと同時に、各ノズル列22B〜22Dの各ノズル22から増粘したシアンインク、イエローインク、マゼンタインクがそれぞれ気泡等とともに吸引され、第2キャップ部32及び第2排出チューブ37を介して廃インクタンク36内に排出される。これにより、記録ヘッド19の全ノズル列22A〜22Dの各ノズル22から各インクを吸引する全クリーニングが完了する。
【0076】
その後、印刷を行う場合には、キャリッジ16を印刷領域PAへ移動させればよい。このとき、揺動部材42のピン部45は、第1誘導部79の第1カム面79b、ストレート面79a、凹溝70のリターン面78を摺動し、括れ部77を経由して凹溝70の左端開口から凹溝70外へ離脱する。
【0077】
(選択クリーニング)
全ノズル列22A〜22Dのうち各ノズル列22B〜22Dの各ノズル22から各インク(カラーインク)を吸引する記録ヘッド19の選択クリーニングを行う場合には、上記のようにキャリッジ16がホームポジションにあってピン部45が非閉塞位置Aにある状態から、さらにキャリッジ16を左方向に移動させる。
【0078】
すると、ピン部45が第1誘導部79の第1カム面79bに摺接し、該第1カム面79b上をストレート面79aに向かって摺動する。そして、ピン部45がストレート面79a上に移動した段階でキャリッジ16を右方向に移動させると、ピン部45が第3カム面81に摺接し、該第3カム面81上を袋小路部72に向かって摺動する。そして、キャリッジ16を再びホームポジションまで移動させると、ピン部45が袋小路部72内の閉塞位置Bに移動する。
【0079】
このとき、図8(a)に示すように、ピン部45は、第1押圧部材47の突出部61の斜面61bを摺動し、その摺動にともなって徐々に第1押圧部材47を下方に向かって押し下げる。そして、ピン部45が閉塞位置Bに移動した状態では、図8(b)に示すように、第1押圧部材47の突出部61の上面61aに完全に乗り上げた状態となる。この状態では、ピン部45が完全に第1押圧部材47を押し下げているため、第1押圧部材47の凸条62が第1排出チューブ35を完全に押し潰して該第1排出チューブ35内を閉塞している。
【0080】
この状態でチューブポンプ38を駆動すると、両排出チューブ35,37内が同時に吸引されるが、第1排出チューブ35が第1押圧部材47によって閉塞されているため、両キャップ内空間31a,32aのうち第2キャップ内空間32aのみに負圧が発生する。この負圧により、各ノズル列22B〜22Dの各ノズル22から増粘したシアンインク、イエローインク、マゼンタインクがそれぞれ気泡等とともに吸引され、第2キャップ部32及び第2排出チューブ37を介して廃インクタンク36内に排出される。これにより、全ノズル列22A〜22Dのうち各ノズル列22B〜22Dの各ノズル22から各インク(カラーインク)を吸引する記録ヘッド19の選択クリーニングが完了する。
【0081】
その後、印刷を行う場合には、キャリッジ16を印刷領域PAへ移動させればよい。このとき、揺動部材42のピン部45は、第2誘導部80の第2カム面80b、ストレート面80a、凹溝70のリターン面78を摺動し、括れ部77を経由して凹溝70の左端開口から凹溝70外へ離脱する。
【0082】
次に、全ノズル列22A〜22Dのうちノズル列22Aの各ノズル22からブラックインクを吸引する記録ヘッド19の選択クリーニングを行う場合には、上記のようにキャリッジ16がホームポジションにあってピン部45が閉塞位置Bにある状態から、さらにキャリッジ16を左方向に移動させる。すると、ピン部45が第2誘導部80の第2カム面80bに摺接し、該第2カム面80b上をストレート面80aに向かって摺動する。
【0083】
このとき、ピン部45は袋小路部72から離脱するため、該ピン部45による第1押圧部材47の押し下げ状態は解除される。このため、第1押圧部材47によって押し潰されていた第1排出チューブ35は、自身の弾性復元力によって押し潰される前の元の形状に戻る。これにより、第1押圧部材47が第1排出チューブ35によって押し上げられて、該第1押圧部材47がピン部45によって押し下げられる前の元の位置に戻る。これにより、第1排出チューブ35は、その閉塞状態が解除されて開放状態となる。
【0084】
そして、ピン部45がストレート面80a上に移動した段階でキャリッジ16を右方向に移動させると、ピン部45が第4カム面82に摺接し、該第4カム面82上を袋小路部73に向かって摺動する。そして、キャリッジ16を再びホームポジションまで移動させると、ピン部45が袋小路部73内の閉塞位置Cに移動する。
【0085】
このとき、図8(a)に示すように、ピン部45は、第2押圧部材48の突出部64の斜面64bを摺動し、その摺動にともなって徐々に第2押圧部材48を下方に向かって押し下げる。そして、ピン部45が閉塞位置Cに移動した状態では、図8(b)に示すように、第2押圧部材48の突出部64の上面64aに完全に乗り上げた状態となる。この状態では、ピン部45が完全に第2押圧部材48を押し下げているため、第2押圧部材48の凸条65が第2排出チューブ37を完全に押し潰して該第2排出チューブ37内を閉塞している。
【0086】
この状態でチューブポンプ38を駆動すると、両排出チューブ35,37内が同時に吸引されるが、第2排出チューブ37が第2押圧部材48によって閉塞されているため、両キャップ内空間31a,32aのうち第1キャップ内空間31aのみに負圧が発生する。この負圧により、ノズル列22Aの各ノズル22から増粘したブラックインクが気泡等とともに吸引され、第1キャップ部31及び第1排出チューブ35を介して廃インクタンク36内に排出される。これにより、全ノズル列22A〜22Dのうちノズル列22Aの各ノズル22からブラックインクを吸引する記録ヘッド19の選択クリーニングが完了する。
【0087】
その後、印刷を行う場合には、キャリッジ16を印刷領域PAへ移動させればよい。このとき、揺動部材42のピン部45は、凹溝70のリターン面78を摺動し、括れ部77を経由して凹溝70の左端開口から凹溝70外へ離脱する。さらにこのとき、ピン部45は袋小路部73から離脱するため、該ピン部45による第2押圧部材48の押し下げ状態は解除される。
【0088】
このため、第2押圧部材48によって押し潰されていた第2排出チューブ37は、自身の弾性復元力によって押し潰される前の元の形状に戻る。これにより、第2押圧部材48が第2排出チューブ37によって押し上げられて、該第2押圧部材48がピン部45によって押し下げられる前の元の位置に戻る。これにより、第2排出チューブ37は、その閉塞状態が解除されて開放状態となる。
【0089】
このように、メンテナンス領域MA内において、ホームポジションを基点としてキャリッジ16を左右に往復移動することで、各カム面79b,81,80b,82の作用により、揺動部材42が揺動しながら該揺動部材42のピン部45が、非閉塞位置Aから閉塞位置Bへ、閉塞位置Bから閉塞位置Cへと、キャリッジ16の移動方向である左右方向及びキャップ27が記録ヘッド19へ当接する方向である上下方向に対して垂直な方向である前後方向に沿って順次導かれる。
【0090】
すなわち、各袋小路部71〜73内には非閉塞位置A、閉塞位置B、及び閉塞位置Cがそれぞれ対応するように予め設定されており、メンテナンス領域MA内におけるキャリッジ16の往復移動により、揺動部材42のピン部45が、各袋小路部71〜73の中から進入すべき袋小路部を1つ選択し、その選択した1つの袋小路部に進入する。この場合の揺動部材42のピン部45による進入すべき1つの袋小路部の選択は、該ピン部45が第1排出チューブ35及び第2排出チューブ37を閉塞するか否かの選択となる。このため、両排出チューブ35,37の閉塞状態をキャリッジ16の移動だけで切り換えることができる。
【0091】
このとき、図9に示すように、メンテナンス領域MAにおけるホームポジションを基点としたキャリッジ16の往復移動範囲は、両支持板24の各貫通溝25における各上側水平部25cの左右方向の長さNの範囲内に収まっている。このため、メンテナンス領域MAにおけるホームポジションを基点としたキャリッジ16の往復移動時に、キャップホルダ26の各支持棒29が各上側水平部25cから離脱することがないので、キャップホルダ26の高さは変わらない。
【0092】
したがって、メンテナンス領域MAにおけるホームポジションを基点としたキャリッジ16の往復移動時に、キャップ27の高さが変わらないため、該キャップ27の記録ヘッド19への当接状態は維持される。
【0093】
以上、詳述した第1実施形態によれば以下の効果を得ることができる。
(1)メンテナンス領域MA内において、ホームポジションを基点としてキャリッジ16を左右に往復移動させることで、各カム面79b,81,80b,82の作用により、揺動部材42のピン部45を、非閉塞位置Aから閉塞位置Bへ、閉塞位置Bから閉塞位置Cへと、キャリッジ16の移動方向及びキャップ27が記録ヘッド19へ当接する方向と垂直な方向に順次導くことができる。すなわち、両排出チューブ35,37の閉塞状態を、既存のメンテナンス領域でキャリッジ16を左右に往復移動させるだけで容易に切り換えることができる。したがって、キャリッジ16の移動範囲を広げることなく両排出チューブ35,37内を選択的に閉塞することができる。この結果、インクジェット式プリンター11を大型化することなく、両キャップ内空間31a,32aをチューブポンプ38によって選択的に吸引することができる。すなわち、ブラックインクとカラーインクとの間で選択的にクリーニングを行うことができる。
【0094】
(2)両キャップ内空間31a,32aを吸引するための吸引通路が可撓性を有する両排出チューブ35,37によって構成されるとともに、閉塞位置B及び閉塞位置Cにおいて揺動部材42のピン部45が両押圧部材47,48を介して両排出チューブ35,37を押し潰すことで両排出チューブ35,37内が閉塞されるようになっている。このため、複雑な切換弁装置を用いることなく、選択的に両排出チューブ35,37内を容易かつ確実に閉塞することができる。また、バルブユニット40は、複雑な切換弁装置を用いない簡単な構成であるため、各インクに固化しやすい顔料インクを用いても両排出チューブ35,37内が目詰まりしにくく、メンテンスをほとんど行う必要がない。
【0095】
(3)キャリッジ16がメンテナンス領域MAにて係合棒28と係合した状態でホームポジションへ移動する際には、両支持棒29が各貫通溝25の斜面部25bを右側に向かって摺動する過程で、キャップホルダ26とともにキャップ27が記録ヘッド19に向かって近接するように徐々に上昇し、両支持棒29が各貫通溝25の上側水平部25cに達した段階で該キャップ27が記録ヘッド19に当接するように構成されている。このため、キャップ27を記録ヘッド19に当接させるための駆動源を別途必要とすることなく、既存のキャリッジ16の移動によってキャップ27を記録ヘッド19に当接させることができる。
【0096】
(4)揺動部材42のピン部45を、非閉塞位置Aから閉塞位置Bへ、閉塞位置Bから閉塞位置Cへと順次導くためのメンテナンス領域MAにおけるホームポジションを基点としたキャリッジ16の往復移動範囲は、両支持板24の各貫通溝25における各上側水平部25cの左右方向の長さNの範囲内に収まっている。このため、メンテナンス領域MAにおけるホームポジションを基点としたキャリッジ16の往復移動時に、キャップホルダ26の各支持棒29が各上側水平部25cから離脱することがないので、キャップホルダ26の高さが変化しないようにすることができる。すなわち、メンテナンス領域MAにおけるホームポジションを基点としたキャリッジ16の往復移動時に、キャップ27の高さを一定にすることができるため、該キャップ27の記録ヘッド19への当接状態を維持することができる。
【0097】
(第2実施形態)
以下、本発明の第2実施形態を上記第1実施形態と異なる点を中心に説明する。
この第2実施形態は、図10及び図11に示すように、上記第1実施形態におけるバルブユニット40をバルブユニット90に変更するように構成したものである。すなわち、バルブユニット90は、ケース部材91と、両押圧部材47,48と、カバー部材92と、揺動部材42と、カバー部材92の上面側を覆うスライダ93とを備えている。したがって、この第2実施形態では、キャリッジ16の下面に揺動部材42は支持されておらず、キャリッジ16の凸部41が省略されている。
【0098】
図10〜図12に示すように、ケース部材91は、第1実施形態のケース部材46の前後両側面の左端部における上端部に一対のフック部94を外側に向かって(前後方向に沿って)延設したものである。カバー部材92は、第1実施形態のカバー部材49において、前後両側面に左右方向に延びる摺動溝95を設けるとともに凹溝70における括れ部77から左側の後側面76をピン部45の外径よりも若干広い間隔をおいて前側面74と平行に延びるように構成したものである。この場合、カバー部材92において、第1実施形態のカバー部材49における凹溝70の括れ部77と対応する位置は、ピン部45の待機位置96とされている。なお、カバー部材92の両摺動溝95は、左端側が閉塞されているとともに右端側が開口している。
【0099】
スライダ93は、矩形板状の天板97と、該天板97の下面における前後両端縁部から真下に向かって延びる一対の矩形板状の側板98とを備えている。両側板98の内面には、左右方向に延びる一対の摺動凸条99が設けられている。両摺動凸条99は、カバー部材92の両摺動溝95内にそれぞれ挿通されており、該両摺動溝95に沿って左右方向に摺動可能になっている。
【0100】
両側板98の外面における左右方向の中央下端部には、先端部が右側に屈曲した一対の掛止片100が突設されている。両掛止片100は、ケース部材91のフック部94と、それぞれコイルばね101を介して連結されている。両コイルばね101は、両掛止片100を介してスライダ93を左方に向かって常に付勢している。したがって、スライダ93は、通常、両コイルばね101の付勢力により、両摺動凸条99の左面が両摺動溝95の左面にそれぞれ当接した待機状態になっている。
【0101】
天板97の下面には図示しない凸部が形成されており、該凸部には揺動部材42が揺動可能に支持されている。そして、スライダ93の待機状態では、カバー部材92の凹溝70内に摺動可能に挿通された揺動部材42のピン部45が待機位置96に位置している。なお、天板97の上面における前後方向の中央右端部にはキャリッジ16と係合可能な係合柱102が立設されている。
【0102】
さて、図12及び図13に示すように、キャリッジ16がホームポジションに移動する際には該キャリッジ16の右面が係合柱102の左面に当接し、キャリッジ16がホームポジションに移動した状態では該キャリッジ16が係合柱102を右方に向かって押圧することで、スライダ93が両コイルばね101の付勢力に抗してキャリッジ16とともに右方に向かってスライド移動する。このとき、揺動部材42のピン部45は、非閉塞位置Aに位置している。
【0103】
そして、メンテナンス領域MA内において、ホームポジションを基点としてキャリッジ16を左右に往復移動すると、両コイルばね101の作用により、スライダ93が該キャリッジ16の往復移動に追従して左右に往復移動する。このスライダ93の往復移動と各カム面79b,81,80b,82の作用とにより、揺動部材42が揺動しながら該揺動部材42のピン部45が非閉塞位置Aから閉塞位置Bへ、閉塞位置Bから閉塞位置Cへと順次導かれ、両排出チューブ35,37の閉塞状態の切り換えが行われる。
【0104】
以上、詳述した第2実施形態によれば、上記(1)〜(4)の効果に加えて、以下の効果を得ることができる。
(5)揺動部材42がバルブユニット90内に組み込まれているため、揺動部材42がスライダ93で隠れて外部から見えなくなり、インクジェット式プリンター11の外観品質が向上する。加えて、揺動部材42に対してインクが付着し難くなるので、該揺動部材42の揺動不良を低減することができる。
【0105】
(6)揺動部材42がキャリッジ16に支持されないため、第1実施形態に比べて揺動部材42の分だけキャリッジ16が軽くなる。このため、キャリッジ16の駆動時におけるキャリッジモーター18への負荷を軽減することができる。
【0106】
(第3実施形態)
以下、本発明の第3実施形態を上記第1実施形態と異なる点を中心に説明する。
この第3実施形態は、図14に示すように、上記第1実施形態のキャップ27の第1キャップ部31及び第2キャップ部32に、第1キャップ内空間31a及び第2キャップ内空間32aをそれぞれ大気開放させるための第1大気開放チューブ110及び第2大気開放チューブ111を接続し、第1大気開放チューブ及び第2大気開放チューブの途中位置にこれらを選択的に閉塞可能なバルブユニット112をバルブユニット40の代わりに設けたものである。したがって、第1排出チューブ35及び第2排出チューブ37にはこれらを閉塞するバルブユニット40が設けられていない。
【0107】
すなわち、図14に示すように、第1キャップ部31の底壁からは第1突部33と並ぶように第3突部113が下方に向かって突設されており、該第3突部113内には第1キャップ部31の内外を連通する第1連通路113aが上下方向に貫通するように形成されている。一方、第2キャップ部32の底壁からは第2突部34と並ぶように第4突部114が下方に向かって突設されており、該第4突部114内には第2キャップ部32の内外を連通する第2連通路114aが上下方向に貫通するように形成されている。
【0108】
第3突部113には大気開放通路を形成する可撓性の第1大気開放チューブ110の基端側(上流側)が接続され、該第1大気開放チューブ110の他端側(下流側)はフレーム12内に大気開放状態で放置されている。一方、第4突部114には大気開放通路を形成する可撓性の第2大気開放チューブ111の基端側(上流側)が接続され、該第2大気開放チューブ111の他端側(下流側)はフレーム12内に大気開放状態で放置されている。
【0109】
したがって、第1キャップ内空間31aは第1連通路113a及び第1大気開放チューブ110を介して大気と連通するとともに、第2キャップ内空間32aは第2連通路114a及び第2大気開放チューブ111を介して大気と連通している。なお、本実施形態では、第1排出チューブ35が第2排出チューブ37に合流しておらず、1つのチューブポンプ38によって両排出チューブ35,37内がキャップ27側から廃インクタンク36側へ同時に吸引されるようになっている。
【0110】
次に、バルブユニット112の構成について詳述する。
図15及び図16に示すように、バルブユニット112は、上記第1実施形態のバルブユニット40において袋小路部71の底壁のほぼ全体にカバー部材49を上下に貫通する挿通孔115を形成するとともに、第1押圧部材47及び第2押圧部材48を第3押圧部材116及び第4押圧部材117にそれぞれ変更したものである。そして、バルブユニット112内には、第1大気開放チューブ110及び第2大気開放チューブ111が並ぶようにして引き回されている。
【0111】
第3押圧部材116はブロック状の本体部118を備えており、該本体部118の上面における前端縁部及び後端縁部には平板状の第1突出部119及び第2突出部120がそれぞれ立設されている。第1突出部119の上面119aは水平になっており、該上面119aの左側には該上面119aと隣接するように斜面119bが形成されている。斜面119bは上面119aに向かって上昇するように傾斜している。
【0112】
第2突出部120は、第1突出部119を半分の厚さにしたものと同一になっており、左右方向から見た形状は第1突出部119の形状と同一になっている。したがって、第2突出部120の上面120aは水平になっており、該上面120aの左側には該上面120aと隣接するように斜面120bが形成されている。そして、斜面120bは上面120aに向かって上昇するように傾斜している。
【0113】
本体部118の下面における右端部には、下方に向かって突出するとともに前後方向に向かって延びる凸条121が設けられている。凸条121は、左右方向の幅が先端部(下端部)に行くにつれて徐々に狭くなっており、先端(下端)は丸みを帯びている。そして、凸条121の先端は、ケース部材46における隙間55及び切欠凹部58間において第1大気開放チューブ110の上面に当接している。
【0114】
一方、第4押圧部材117はブロック状の本体部122を備えており、該本体部122の上面における前端縁部及び後端縁部には平板状の第3突出部123及び第4突出部124がそれぞれ立設されている。第3突出部123は第2突出部120と同一形状になっているとともに、第4突出部124は第1突出部119と同一形状になっている。
【0115】
第3突出部123の上面123aは水平になっており、該上面123aの左側には該上面123aと隣接するように斜面123bが形成されている。斜面123bは上面123aに向かって上昇するように傾斜している。第4突出部124の上面124aは水平になっており、該上面124aの左側には該上面124aと隣接するように斜面124bが形成されている。そして、斜面124bは上面124aに向かって上昇するように傾斜している。
【0116】
本体部122の下面における右端部には、下方に向かって突出するとともに前後方向に向かって延びる凸条125が設けられている。凸条125は、左右方向の幅が先端部(下端部)に行くにつれて徐々に狭くなっており、先端(下端)は丸みを帯びている。そして、凸条125の先端は、ケース部材46における隙間56及び切欠凹部59間において第2大気開放チューブ111の上面に当接している。
【0117】
なお、第3押圧部材116と第4押圧部材117とは、上下方向及び左右方向に広がる鉛直面を対称面として互いに面対称な形状になっている。
図15及び図16に示すように、袋小路部71の挿通孔115には第3押圧部材116の第1突出部119が下側から挿通されている。この場合、第1突出部119の上面119aはカバー部材49の上面よりも若干低い位置に位置している。袋小路部72の挿通孔83には第3押圧部材116の第2突出部120及び第4押圧部材117の第3突出部123が合わせられた状態で下側から挿通されている。この場合、第2突出部120の上面120a及び第3突出部123の上面123aはカバー部材49の上面よりも若干低い位置に位置している。
【0118】
袋小路部73の挿通孔84には第4押圧部材117の第4突出部124が下側から挿通されている。この場合、第4突出部124の上面124aはカバー部材49の上面よりも若干低い位置に位置している。
【0119】
そして、キャリッジ16がホームポジションに移動したときにおいて、揺動部材42のピン部45が袋小路部71内にあるときの該ピン部45の位置は閉塞位置Dとされ、ピン部45が袋小路部72内にあるときの該ピン部45の位置は閉塞位置Eとされ、ピン部45が袋小路部73内にあるときの該ピン部45の位置は閉塞位置Fとされている。
【0120】
したがって、揺動部材42のピン部45が閉塞位置Dにあるときには、該ピン部45が第3押圧部材116を介して第1大気開放チューブ110を押圧して押し潰すことで、該第1大気開放チューブ110内が閉塞される。また、揺動部材42のピン部45が閉塞位置Eにあるときには、該ピン部45が第3押圧部材116及び第4押圧部材117を介して第1大気開放チューブ110及び第2大気開放チューブ111をそれぞれ押圧して押し潰すことで、該第1大気開放チューブ110内及び第2大気開放チューブ111内の双方が閉塞される。
【0121】
さらに、揺動部材42のピン部45が閉塞位置Fにあるときには、該ピン部45が第4押圧部材117を介して第2大気開放チューブ111を押圧して押し潰すことで、該第2大気開放チューブ111内が閉塞される。
【0122】
次に、インクジェット式プリンター11のクリーニング時の作用について説明する。
(全クリーニング)
さて、全ノズル列22A〜22Dの各ノズル22から各インクを吸引する記録ヘッド19の全クリーニングを行う場合には、まず、キャリッジ16をメンテナンス領域MA内のホームポジションに移動させる。すると、キャップ27が記録ヘッド19に当接し、第1キャップ部31がノズル列22Aを囲みながら記録ヘッド19との間で第1キャップ内空間31aを形成するとともに、第2キャップ部32がノズル列22B〜22Dを囲みながら記録ヘッド19との間で第2キャップ内空間32aを形成する。
【0123】
そして、キャリッジ16をホームポジションにて1往復移動させて揺動部材42のピン部45を袋小路部72内の閉塞位置Eに移動させる。すると、ピン部45が第3押圧部材116及び第4押圧部材117を介して第1大気開放チューブ110及び第2大気開放チューブ111をそれぞれ押圧して押し潰すことで、該第1大気開放チューブ110内及び第2大気開放チューブ111内の双方が閉塞された状態となる。
【0124】
この状態でチューブポンプ38を駆動すると、両大気開放チューブ110,111内が同時に吸引されて第1キャップ内空間31a及び第2キャップ内空間32aにそれぞれ負圧が発生する。この負圧により、ノズル列22Aの各ノズル22から増粘したブラックインクが気泡等とともに吸引され、第1キャップ部31及び第1排出チューブ35を介して廃インクタンク36内に排出される。これと同時に、各ノズル列22B〜22Dの各ノズル22から増粘したシアンインク、イエローインク、マゼンタインクがそれぞれ気泡等とともに吸引され、第2キャップ部32及び第2排出チューブ37を介して廃インクタンク36内に排出される。これにより、記録ヘッド19の全ノズル列22A〜22Dの各ノズル22から各インクを吸引する全クリーニングが完了する。
【0125】
(選択クリーニング)
全ノズル列22A〜22Dのうち各ノズル列22B〜22Dの各ノズル22から各インク(カラーインク)を吸引する記録ヘッド19の選択クリーニングを行う場合には、キャリッジ16をホームポジションに移動させて揺動部材42のピン部45を袋小路部71内の閉塞位置Dに移動させる。すると、ピン部45が第3押圧部材116を介して第1大気開放チューブ110を押圧して押し潰すことで、該第1大気開放チューブ110内が閉塞された状態となる。このとき、第2大気開放チューブ111は閉塞されない。
【0126】
この状態でチューブポンプ38を駆動すると、両排出チューブ35,37内が同時に吸引されるが、第1大気開放チューブ110が第3押圧部材116によって閉塞されているとともに第2大気開放チューブ111が閉塞されていないため、両キャップ内空間31a,32aのうち第2キャップ内空間32aのみに負圧が発生する。このとき、第1キャップ内空間31aには僅かな負圧が発生するが、この負圧はノズル列22Aの各ノズル22のメニスカスに影響を及ぼす程のものではない。
【0127】
そして、第2キャップ内空間32aの負圧により、各ノズル列22B〜22Dの各ノズル22から増粘したシアンインク、イエローインク、マゼンタインクがそれぞれ気泡等とともに吸引され、第2キャップ部32及び第2排出チューブ37を介して廃インクタンク36内に排出される。これにより、全ノズル列22A〜22Dのうち各ノズル列22B〜22Dの各ノズル22から各インク(カラーインク)を吸引する記録ヘッド19の選択クリーニングが完了する。
【0128】
また、全ノズル列22A〜22Dのうちノズル列22Aの各ノズル22からブラックインクを吸引する記録ヘッド19の選択クリーニングを行う場合には、キャリッジ16をホームポジションに移動させた後にホームポジションにて2往復移動させて揺動部材42のピン部45を袋小路部73内の閉塞位置Fに移動させる。すると、ピン部45が第4押圧部材117を介して第2大気開放チューブ111を押圧して押し潰すことで、該第2大気開放チューブ111内が閉塞された状態となる。このとき、第1大気開放チューブ110は閉塞されない。
【0129】
この状態でチューブポンプ38を駆動すると、両排出チューブ35,37内が同時に吸引されるが、第2大気開放チューブ111が第4押圧部材117によって閉塞されているとともに第1大気開放チューブ110が閉塞されていないため、両キャップ内空間31a,32aのうち第1キャップ内空間31aのみに負圧が発生する。このとき、第2キャップ内空間32aには僅かな負圧が発生するが、この負圧は各ノズル列22B〜22Dの各ノズル22のメニスカスに影響を及ぼす程のものではない。
【0130】
そして、第1キャップ内空間31aの負圧により、ノズル列22Aの各ノズル22から増粘したブラックインクが気泡等とともに吸引され、第1キャップ部31及び第1排出チューブ35を介して廃インクタンク36内に排出される。これにより、全ノズル列22A〜22Dのうちノズル列22Aの各ノズル22からブラックインクを吸引する記録ヘッド19の選択クリーニングが完了する。
【0131】
以上、詳述した第3実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(7)メンテナンス領域MA内において、ホームポジションを基点としてキャリッジ16を左右に往復移動させることで、各カム面79b,81,80b,82の作用により、揺動部材42のピン部45を、閉塞位置Dから閉塞位置Eへ、閉塞位置Eから閉塞位置Fへと、キャリッジ16の移動方向及びキャップ27が記録ヘッド19へ当接する方向と垂直な方向に順次導くことができる。すなわち、両大気開放チューブ110,111の閉塞状態を、既存のメンテナンス領域でキャリッジ16を左右に往復移動させるだけで容易に切り換えることができる。したがって、キャリッジ16の移動範囲を広げることなく両大気開放チューブ110,111内を選択的に閉塞することができるので、両キャップ内空間31a,32aを選択的に密閉することができる。この結果、両キャップ内空間31a,32aをチューブポンプ38によって同時に吸引することで、両キャップ内空間31a,32aに選択的に負圧を発生させることができる。よって、インクジェット式プリンター11を大型化することなく、ブラックインクとカラーインクとの間で選択的にクリーニングを行うことができる。
【0132】
(第4実施形態)
以下、本発明の第4実施形態を上記第1実施形態と異なる点を中心に説明する。
この第4実施形態は、図17に示すように、上記第1実施形態におけるバルブユニット40において、第1押圧部材47の突出部61の斜面61bを互いに傾斜角度の異なる2つの斜面61ba及び斜面61bbに変更するとともに、第2押圧部材48の突出部64の斜面64bを互いに傾斜角度の異なる斜面64ba及び斜面64bbに変更したものである。
【0133】
図17に示すように、各斜面61ba,61bb,64ba,64bbは、右側に向かって上昇するように傾斜しているとともに、摺動面を構成している。両斜面61ba,64baの水平面に対する傾斜角度は同じになっているとともに、両斜面61bb,64bbの水平面に対する傾斜角度は同じになっている。両斜面61ba,64baは、それぞれ両斜面61bb,64bbの左側に隣接して配置されており、両斜面61bb,64bbよりも水平面に対する傾斜角度が大きくなるように設定されている。本実施形態では、両斜面61ba,64baの水平面に対する傾斜角度は45度に設定されているとともに、両斜面61bb,64bbの水平面に対する傾斜角度は10度に設定されている。
【0134】
さて、第1排出チューブ35内の吸引通路(空間)を閉塞する場合には、キャリッジ16を往復移動させて、ピン部45を袋小路部72内の閉塞位置Bに向かって移動させる。すると、図17に示すように、ピン部45が第1押圧部材47の突出部61の斜面61baを左側から右側に向かって摺動し、この摺動にともなって第1押圧部材47が下方に向かって押し下げられる。これにより、第1排出チューブ35は、第1押圧部材47によって押圧されて、図18(a)に示すような断面略真円状から図18(b)に示すような断面略楕円状になる。
【0135】
引き続き、ピン部45が斜面61baを左側から右側に向かって摺動し、該ピン部45が斜面61baと斜面61bbとの境界Xに差し掛かると、第1排出チューブ35は、第1押圧部材47によってさらに押圧されて、図18(c)に示すように、該第1排出チューブ35内の吸引通路がほぼ閉塞される程度まで押し潰される。引き続き、ピン部45が境界Xを越えて斜面61bbを左側から右側に向かって摺動すると、この摺動にともなって第1押圧部材47がさらに下方に向かって押し下げられる。
【0136】
これにより、第1排出チューブ35は、第1押圧部材47によってさらに押圧されて、図18(d)に示すように、該第1排出チューブ35内の吸引通路が完全に閉塞される程度まで押し潰される。引き続き、ピン部45は斜面61bbを左側から右側に向かって摺動するが、該ピン部45が斜面61bbと上面61aとの境界Yに差し掛かるまでは第1押圧部材47が下方に向かって押し下げられ続ける。このため、第1排出チューブ35は、該第1排出チューブ35内の吸引通路が完全に閉塞された後も、第1押圧部材47によってさらに押圧される。
【0137】
ここで、ピン部45が、上記第1実施形態のように、水平面に対する傾斜角度が一定の1つの斜面61bを摺動して上面61aに到達する場合には、第1押圧部材47によって第1排出チューブ35を押圧する押圧量も終始一定となる。そして、第1排出チューブ35が第1押圧部材47によって押し潰される際の該第1排出チューブ35の反力は、第1排出チューブ35内の吸引通路が閉塞されるまでよりも第1排出チューブ35内の吸引通路が閉塞された後の方が大きくなる。なぜなら、第1排出チューブ35内の吸引通路が閉塞されるまでは第1排出チューブ35の吸引通路(内部空間)が押し潰され、第1排出チューブ35内の吸引通路が閉塞された後は、第1排出チューブ35自体(第1排出チューブ35を構成する材料)が押し潰されるからである。
【0138】
このため、第1排出チューブ35内の吸引通路が閉塞された後は、第1押圧部材47が第1排出チューブ35から大きな反力を受けるため、ピン部45にかかる負荷やキャリッジ16が左右方向へ移動する際の負荷(キャリッジモーター18にかかる負荷)が大きくなってしまい、各種部品の耐久性が低下してしまうおそれがある。
【0139】
この点、本実施形態では、斜面61bbが斜面61baよりも傾斜がなだらかであるため、ピン部45が斜面61bbを摺動するときの第1押圧部材47の下方への移動量は、ピン部45が斜面61baを摺動するときの第1押圧部材47の下方への移動量よりも少なくなる。すなわち、第1押圧部材47による第1排出チューブ35の押圧量は、第1排出チューブ35内の吸引通路が閉塞されるまでよりも第1排出チューブ35内の吸引通路が閉塞された後の方が少なくなる。
【0140】
この結果、第1排出チューブ35内の吸引通路が閉塞された後に、第1押圧部材47の第1排出チューブ35から受ける反力が低減されるため、ピン部45にかかる負荷やキャリッジ16が左右方向へ移動する際の負荷(キャリッジモーター18にかかる負荷)が抑制され、各種部品の耐久性が向上される。
【0141】
そして、ピン部45が閉塞位置Bに移動すると、該ピン部45が第1押圧部材47の突出部61の上面61aに完全に乗り上げた状態(図17の2点鎖線で示す状態)となる。この状態では、ピン部45が十分に第1押圧部材47を押し下げているため、第1押圧部材47の凸条62が第1排出チューブ35を完全に押し潰して該第1排出チューブ35内の吸引通路を完全に閉塞している。
【0142】
なお、第2押圧部材48によって第2排出チューブ37を押し潰す場合の作用も、上述した第1押圧部材47によって第1排出チューブ35を押し潰す場合の作用と同じであるため、説明は省略する。
【0143】
以上、詳述した第4実施形態によれば、上記(1)〜(4)の効果に加えて、以下の効果を得ることができる。
(8)斜面61bbが斜面61baよりも傾斜がなだらかであるため、ピン部45が斜面61bbを摺動するときの第1押圧部材47の下方への移動量を、ピン部45が斜面61baを摺動するときの第1押圧部材47の下方への移動量よりも少なくすることができる。すなわち、第1排出チューブ35内の吸引通路が閉塞された後の第1押圧部材47による第1排出チューブ35の押圧量を、第1排出チューブ35内の吸引通路が閉塞されるまでの第1押圧部材47による第1排出チューブ35の押圧量よりも少なくすることができる。この結果、第1排出チューブ35内の吸引通路が閉塞された後において、第1押圧部材47の第1排出チューブ35から受ける反力を低減することができるため、ピン部45にかかる負荷やキャリッジ16が左右方向へ移動する際の負荷(キャリッジモーター18にかかる負荷)を抑制することができ、ひいては各種部品の耐久性を向上することができる。
【0144】
(第5実施形態)
以下、本発明の第5実施形態を上記第1実施形態と異なる点を中心に説明する。
この第5実施形態は、図19に示すように、上記第1実施形態におけるバルブユニット40において、第1押圧部材47及び第2押圧部材48を押圧ユニットとしての第1押圧ユニット130及び第2押圧ユニット131にそれぞれ変更したものである。なお、第1押圧ユニット130と第2押圧ユニット131とは、上下方向及び左右方向と平行な面に関して面対称になっており、これ以外の構成及び作用効果は全く同一であるため、以下の説明は第1押圧ユニット130の場合のみとし、第2押圧ユニット131の説明は省略する。
【0145】
図19及び図20に示すように、第1押圧ユニット130は、第1の部材としてのベース部材140と、第2の部材としてのプッシュ部材141と、ベース部材140とプッシュ部材141との間に保持される圧縮ばね142とを備えている。ベース部材140は、上下方向及び左右方向に平行な摺動板143と、該摺動板143の前面に設けられるとともに前側及び下側が開口した矩形箱状をなす収容部144とを備えている。
【0146】
摺動板143の上面143aは水平になっており、該上面143aの左側には該上面143aと隣接するように斜面143bが形成されている。この斜面143bは上面143aに向かって上昇するように傾斜している。収容部144の左右両側壁には、上下方向に長い長孔144aが該左右両側壁を貫通するように形成されている。収容部144内には、プッシュ部材141が該収容部144内において上下方向に摺動可能に収容されている。
【0147】
プッシュ部材141は、ブロック状の本体部141aと、該本体部141aの上面141bにおける左右両端部に立設された一対の矩形板状をなす立設部141cと、該本体部141aの下面における右寄りの位置に下側に向かって突設されるとともに前後方向に延びる凸条141dとを備えている。凸条141dは、収容部144の下側の開口から該収容部144外へ突出しており、その丸みを帯びた下端は第1排出チューブ35に当接している。
【0148】
前後方向における両立設部141cの外側には突起141eがそれぞれ設けられており、該両突起141eは収容部144の左右両側壁に設けられた両長孔144aにそれぞれ摺動可能な状態で挿入されている。この場合、両突起141eの先端面と収容部144の左右両側壁の外面とは面一になっている。収容部144の上壁の内面144bとプッシュ部材141の本体部141aの上面141bとの間には、上面141bと内面144bとを離間させる方向に付勢するコイル状の圧縮ばね142が介在している。
【0149】
圧縮ばね142は、第1排出チューブ35内の吸引通路(空間)が閉塞されるまでプッシュ部材141が該第1排出チューブ35を押し潰すのに必要な押圧荷重を発生した状態(若干圧縮された状態)で上面141bと内面144bとの間に保持されている。したがって、プッシュ部材141の両突起141eの下面は、通常、圧縮ばね142の付勢力により、収容部144の両長孔144aの下端面に圧接している。
【0150】
また、圧縮ばね142は、第1排出チューブ35内の吸引通路(空間)が閉塞されるまでプッシュ部材141が該第1排出チューブ35を押し潰した後にさらに該第1排出チューブ35を押し潰すのに必要な単位変位量当たりの押圧荷重よりも、単位変位量当たりに発生する押圧荷重(ばね定数)が小さくなるように設定されている。
【0151】
すなわち、圧縮ばね142は、第1排出チューブ35内の吸引通路が閉塞されるまでプッシュ部材141が該第1排出チューブ35を押し潰す際の該第1排出チューブ35からの反力を受けた場合には圧縮されず、第1排出チューブ35内の吸引通路が閉塞されるまでプッシュ部材141が該第1排出チューブ35を押し潰した後にさらに該第1排出チューブ35を押し潰す際の該第1排出チューブ35からの反力を受けた場合には圧縮されるようになっている。
【0152】
さて、第1排出チューブ35内の吸引通路(空間)を閉塞する場合には、キャリッジ16を往復移動させて、ピン部45を袋小路部72内の閉塞位置Bに向かって移動させる。すると、図20に示すように、ピン部45が第1押圧ユニット130の摺動板143の斜面143bを左側から右側に向かって摺動し、この摺動にともなって第1押圧ユニット130が下方に向かって押し下げられる。これにより、第1排出チューブ35は、第1押圧ユニット130のプッシュ部材141によって押圧されて、図18(a)に示すような断面略真円状から図18(b)に示すような断面略楕円状になる。
【0153】
引き続き、ピン部45が斜面143bを左側から右側に向かって摺動すると、第1排出チューブ35は、プッシュ部材141によってさらに押圧されて、図18(c)に示すように、該第1排出チューブ35内の吸引通路がほぼ閉塞される程度まで押し潰される。引き続き、ピン部45が斜面143bを左側から右側に向かって摺動すると、この摺動にともなって第1押圧ユニット130がさらに下方に向かって押し下げられる。
【0154】
これにより、第1排出チューブ35は、プッシュ部材141によってさらに押圧されて、図18(d)に示すように、該第1排出チューブ35内の吸引通路が完全に閉塞される程度まで押し潰される。なお、ここまでは、圧縮ばね142は、第1排出チューブ35内の吸引通路(空間)が閉塞されるまでプッシュ部材141が該第1排出チューブ35を押し潰すのに必要な押圧荷重を発生させているため、プッシュ部材141を介して第1排出チューブ35の反力を受けても、該反力によって圧縮されることはない。
【0155】
引き続き、ピン部45は斜面143bを左側から右側に向かって摺動するが、該ピン部45が上面143aに差し掛かるまでは第1押圧ユニット130が下方に向かって押し下げられ続ける。このため、第1排出チューブ35は、該第1排出チューブ35内の吸引通路が完全に閉塞された後も、プッシュ部材141によってさらに押圧される。
【0156】
ここで、第1排出チューブ35が第1押圧ユニット130(プッシュ部材141)によって押し潰される際の該第1排出チューブ35の反力は、第1排出チューブ35内の吸引通路が閉塞されるまでよりも第1排出チューブ35内の吸引通路が閉塞された後の方が大きくなる。なぜなら、第1排出チューブ35内の吸引通路が閉塞されるまでは第1排出チューブ35の吸引通路(内部空間)が押し潰され、第1排出チューブ35内の吸引通路が閉塞された後は、第1排出チューブ35自体(第1排出チューブ35を構成する材料)が押し潰されるからである。
【0157】
このため、上記第1実施形態の場合では、第1排出チューブ35内の吸引通路が閉塞された後は、第1押圧部材47が第1排出チューブ35から大きな反力を受けるため、ピン部45にかかる負荷やキャリッジ16が左右方向へ移動する際の負荷(キャリッジモーター18にかかる負荷)が大きくなってしまい、各種部品の耐久性が低下してしまうおそれがある。
【0158】
この点、本実施形態では、圧縮ばね142が、第1排出チューブ35内の吸引通路(空間)が閉塞されるまでプッシュ部材141が該第1排出チューブ35を押し潰した後にさらに該第1排出チューブ35を押し潰すのに必要な単位変位量当たりの押圧荷重よりも、単位変位量当たりに発生する押圧荷重(ばね定数)が小さくなるように設定されている。このため、第1排出チューブ35内の吸引通路が閉塞された後にさらに第1押圧ユニット130が下方に向かって押し下げられても、圧縮ばね142は、プッシュ部材141を介してこのときの第1排出チューブ35の反力を受けると、該反力によって圧縮される。
【0159】
すなわち、第1排出チューブ35内の吸引通路が閉塞された後において、さらに第1押圧ユニット130が下方に向かって押し下げられても、このさらに押し下げられた分の第1押圧ユニット130による第1排出チューブ35の押圧量は、圧縮ばね142が圧縮されることで低減される。
【0160】
この結果、第1排出チューブ35内の吸引通路が閉塞された後に、第1押圧ユニット130(プッシュ部材141)の該第1排出チューブ35から受ける反力が低減されるため、ピン部45にかかる負荷やキャリッジ16が左右方向へ移動する際の負荷(キャリッジモーター18にかかる負荷)が抑制され、各種部品の耐久性が向上される。
【0161】
そして、ピン部45が閉塞位置Bに移動すると、該ピン部45が第1押圧ユニット130の摺動板143の上面143aに完全に乗り上げた状態(図20の2点鎖線で示す状態)となる。この状態では、ピン部45が十分に第1押圧ユニット130を押し下げているため、第1押圧ユニット130の凸条141dが第1排出チューブ35を完全に押し潰して該第1排出チューブ35内の吸引通路を完全に閉塞している。
【0162】
以上、詳述した第5実施形態によれば、上記(1)〜(4)の効果に加えて、以下の効果を得ることができる。
(9)圧縮ばね142が、第1排出チューブ35内の吸引通路(空間)が閉塞されるまでプッシュ部材141が該第1排出チューブ35を押し潰した後にさらに該第1排出チューブ35を押し潰すのに必要な単位変位量当たりの押圧荷重よりも、単位変位量当たりに発生する押圧荷重(ばね定数)が小さくなるように設定されている。このため、第1排出チューブ35内の吸引通路が閉塞された後にさらに第1押圧ユニット130が下方に向かって押し下げられても、このさらに押し下げられた分の第1押圧ユニット130による第1排出チューブ35の押圧量を、圧縮ばね142が圧縮されることで吸収して低減することができる。この結果、第1排出チューブ35内の吸引通路が閉塞された後に、第1押圧ユニット130(プッシュ部材141)の該第1排出チューブ35から受ける反力を低減することができるので、ピン部45にかかる負荷やキャリッジ16が左右方向へ移動する際の負荷(キャリッジモーター18にかかる負荷)を抑制することができ、ひいては各種部品の耐久性を向上させることができる。
(変更例)
なお、上記各実施形態は以下のように変更してもよい。
【0163】
・キャップホルダ26とともにキャップ27を昇降させるための昇降装置を設けてもよい。この場合、キャップホルダ26上の係合棒28は省略されるとともに、両支持板24の各貫通溝25は上下に延びるように形成される。
【0164】
・メンテナンス領域MA内におけるホームポジションを基点としたキャリッジ16の左右方向の往復移動中に、必ずしもキャップ27が記録ヘッド19に当接した状態を維持する必要はない。すなわち、揺動部材42のピン部45が、少なくとも非閉塞位置A、閉塞位置B、及び閉塞位置Cのうちの何れかに位置している間だけキャップ27が記録ヘッド19に当接していればよい。
【0165】
・バルブユニット40,90は横に倒した状態で配置してもよい。この場合、ピン部45側が下がるように揺動部材42が重力によって傾動されないように、揺動部材42を水平位置で維持するべく上方に向かって付勢する付勢手段を設ける必要がある。
【0166】
・第1押圧部材47及び第2押圧部材48のうちの少なくとも一方を省略してもよい。この場合、第1押圧部材47及び第2押圧部材48のうち省略した少なくとも一方と対応する両排出チューブ35,37のうちの少なくとも一方は、バルブユニット40,90内において水平面に対して交差するように配置され、揺動部材42のピン部45によって直接押し潰されて閉塞される。
【0167】
・揺動部材42は、揺動するのではなく、キャリッジ16の移動方向である左右方向及びキャップ27が記録ヘッド19へ当接する方向である上下方向に対して垂直な方向である前後方向に沿って直線的に移動するように構成してもよい。
【0168】
・キャップ27内を左右方向に4室に隔絶し、各室が各ノズル列22A〜22Dを個別に覆うように、該キャップ27が記録ヘッド19に当接するように構成してもよい。この場合、バルブユニット40,90は、キャップ27の各室から延びる4本の排出チューブが揺動部材42のピン部45によって4つの押圧部材を介してそれぞれ選択的に押し潰されるように、カバー部材49,92の凹溝70の袋小路部を5つに増やす必要がある。
【0169】
同様に、各ノズル列を5つ以上にし、内部が任意の数の室に隔絶されたキャップ27によって該各ノズル列が任意の数ずつ覆われるようにメンテナンス機構23を構成してもよい。この場合、キャップ27の各室が覆うノズル列の数は、互いに同じであってもよいし、互いに異なっていてもよい。
【0170】
・第3実施形態のバルブユニット112を第2実施形態のバルブユニット90と同様の機構にしてもよい。すなわち、第3実施形態のバルブユニット112において、第2実施形態のバルブユニット90と同様に、カバー部材49の上面側を覆うスライダ93を設け、該スライダ93に揺動部材42を揺動可能に支持するようにしてもよい。
【0171】
・第4実施形態において、各斜面61ba,61bb,64ba,64bbのうち少なくとも1つを曲面にしてもよい。
・第4実施形態において、第1押圧部材47及び第2押圧部材48の摺動面は、互いに水平面に対する傾斜角度が異なる3つ以上の連続する斜面によってそれぞれ構成してもよい。
【0172】
・第5実施形態において、斜面143bを、第4実施形態と同様に、互いに水平面に対する傾斜角度が異なる複数の連続する斜面によって構成してもよい。
・上記各実施形態では、インクジェット式プリンター11が採用されているが、インク以外の他の流体を噴射したり吐出したりする流体噴射装置を採用してもよい。また、微小量の液滴を吐出させる液体噴射ヘッド等を備える各種の液体噴射装置に流用可能である。この場合、液滴とは、上記液体噴射装置から吐出される液体の状態を言い、粒状、涙状、糸状に尾を引くものも含むものとする。また、ここでいう液体とは、液体噴射装置が噴射させることができるような材料であればよい。例えば、物質が液相であるときの状態のものであればよく、粘性の高い又は低い液状体、ゾル、ゲル水、その他の無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)のような流状体、また物質の一状態としての液体のみならず、顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散または混合されたものなどを含む。また、液体の代表的な例としては上記実施形態で説明したようなインクや液晶等が挙げられる。ここで、インクとは一般的な水性インクおよび油性インク並びにジェルインク、ホットメルトインク等の各種液体組成物を包含するものとする。液体噴射装置の具体例としては、例えば液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ、面発光ディスプレイ、カラーフィルタの製造などに用いられる電極材や色材などの材料を分散または溶解のかたちで含む液体を噴射する液体噴射装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する液体噴射装置、精密ピペットとして用いられ試料となる液体を噴射する液体噴射装置、捺染装置やマイクロディスペンサ等であってもよい。さらに、時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を噴射する液体噴射装置、光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂等の透明樹脂液を基板上に噴射する液体噴射装置、基板などをエッチングするために酸又はアルカリ等のエッチング液を噴射する液体噴射装置を採用してもよい。そして、これらのうちいずれか一種の液体噴射装置に本発明を適用することができる。
【0173】
さらに、上記各実施形態より把握できる技術的思想について以下に記載する。
(イ)複数のノズル群から流体を噴射する流体噴射ヘッドを支持して往復移動可能に構成されたキャリッジと、
前記各ノズル群を個別に囲うように前記流体噴射ヘッドに当接して複数のキャップ内空間を形成するキャップ手段と、
前記各キャップ内空間を、それぞれ吸引通路を介して吸引可能な吸引手段と
を備えた流体噴射装置において、
前記流体噴射ヘッドのメンテナンスを行うためのメンテナンス領域での前記キャリッジの往復移動に伴って前記各吸引通路を選択的に閉塞可能な選択閉塞手段を備えたことを特徴とする流体噴射装置。
【0174】
この構成によれば、メンテナンス領域でのキャリッジの往復移動に伴って選択閉塞手段により各吸引通路を選択的に閉塞可能であるため、キャリッジの移動範囲を広げることなく各吸引通路を選択的に閉塞することが可能となる。したがって、大型化することなく、複数のキャップ内空間を選択的に吸引することが可能となる。
【符号の説明】
【0175】
11…流体噴射装置としてのインクジェット式プリンター、16…キャリッジ、19…流体噴射ヘッドとしての記録ヘッド、22…ノズル、27…キャップ手段を構成するキャップ部材としてのキャップ、31a…第1キャップ内空間、32a…第2キャップ内空間、35…吸引通路を構成するチューブとしての第1排出チューブ、37…吸引通路を構成するチューブとしての第2排出チューブ、38…吸引手段としてのチューブポンプ、40,90,112…選択閉塞手段を構成するバルブユニット、42…選択閉塞手段を構成する揺動部材、45…閉塞部材としてのピン部、47…押圧部材としての第1押圧部材、48…押圧部材としての第2押圧部材、61ba,61bb,64ba,64bb…摺動面を構成する斜面、71〜73…選択通路としての袋小路部、79b…第1カム面、80b…第2カム面、81…第3カム面、82…第4カム面、110…大気開放通路を構成する第1大気開放チューブ、111…大気開放通路を構成する第2大気開放チューブ、116…押圧部材としての第3押圧部材、117…押圧部材としての第4押圧部材、130…押圧ユニットとしての第1押圧ユニット、131…押圧ユニットとしての第2押圧ユニット、140…第1の部材としてのベース部材、141…第2の部材としてのプッシュ部材、142…圧縮ばね、B,C,D,E,F…閉塞位置、MA…メンテナンス領域。
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、インクジェット式プリンターなどの流体噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、流体噴射ヘッドに形成されたノズルから流体をターゲットに対して噴射する流体噴射装置の一種としてインクジェット式プリンター(以下、単に「プリンター」という。)が知られている。こうしたプリンターでは、ノズルが記録ヘッド(流体噴射ヘッド)のノズル形成面において開口していることから、ノズルからのインク溶媒の蒸発によりインク(流体)が増粘してインクの噴射不良が発生することがある。このため、こうしたプリンターには、通常、ヘッドメンテナンス機構が設けられている。
【0003】
このヘッドメンテナンス機構は、ノズルを囲うように記録ヘッドに当接可能なキャップ部材と、該キャップ部材内に連通したインク排出路中に設けられる吸引ポンプ(吸引手段)とを備え、該吸引ポンプの駆動によりキャップ部材内に負圧を発生させることで、ノズルから増粘したインクが吸引除去されるようになっている。このようなヘッドメンテナンス機構を備えたプリンターとしては、従来、特許文献1に記載されたものが知られている。
【0004】
この特許文献1のプリンターには、キャリッジの移動領域のうちの印字領域外にヘッド回復領域(メンテナンス領域)としてのヘッド信頼性維持回復ステーションが設けられている。ヘッド信頼性維持回復ステーションでは、キャリッジに支持された4つの記録ヘッド(ノズル)にそれぞれ当接して密閉するキャップ手段である4つのキャップ部材が、ガイドフレームによってキャリッジと同じ方向に移動可能に支持されたソリ部材に保持されている。ソリ部材における印字領域側と反対側の端部にはキャリッジと係合するピン部材が立設されており、ソリ部材はスプリングによって常に印字領域側に付勢されている。
【0005】
そして、ヘッド信頼性維持回復ステーションにおいて、キャリッジが印字領域側と反対側に移動した場合にはスプリングの付勢力に抗してソリ部材がキャリッジによってピン部材を介してキャリッジと同じ方向へ移動されるとともに、キャリッジが印字領域側に移動した場合にはスプリングの付勢力によってソリ部材がキャリッジと同じ方向へ移動されるようになっている。
【0006】
また、ソリ部材における印字領域側と反対側の端部には、一端が各キャップ部材に接続された4本のチューブの他端がそれぞれ接続される4つのインク吸引用連通孔を有する第1部材が取り付けられている。第1部材の上側に対向する位置には、一端が吸引ポンプに接続された1本のチューブの他端が接続される1つのインク吸引用連通孔を有する第2部材が固定されている。そして、各キャップ部材が各記録ヘッドに当接する位置にソリ部材が移動した状態では第1部材の上面に第2部材が接触して、第1部材の各インク吸引用連通孔のうちのいずれか1つと第2部材のインク吸引用連通孔とが連通可能になっている。
【0007】
この場合、第1部材の各インク吸引用連通孔のうちのどのインク吸引用連通孔と第2部材のインク吸引用連通孔とが連通されるかは、ソリ部材を介して第1部材を移動可能なキャリッジの位置によって決まる。すなわち、各キャップ部材のうちのどのキャップ部材が吸引ポンプによって吸引されるかは、キャリッジの位置によって決まる。したがって、特許文献1のプリンターでは、キャリッジの位置を調節することで、各記録ヘッドを選択的に吸引できるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平9−131882号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、特許文献1のプリンターでは、第1部材の各インク吸引用連通孔がキャリッジの移動方向に沿って配列されている。このため、第1部材の各インク吸引用連通孔のうち最も印字領域側に位置するインク吸引用連通孔と第2部材のインク吸引用連通孔とが連通するようにキャリッジによってソリ部材を移動させると、ソリ部材がガイドフレームから印字領域側と反対側に大きく突出する。したがって、このソリ部材が突出する分のスペースを確保しなければならず、プリンターが大型化してしまうという問題があった。
【0010】
本発明は、このような従来技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的とするところは、大型化することなく、複数のキャップ内空間を選択的に吸引することが可能な流体噴射装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明の流体噴射装置は、複数のノズルから流体を噴射する流体噴射ヘッドを支持して往復移動可能に構成されたキャリッジと、前記各ノズルを個別に囲うように前記流体噴射ヘッドに当接して複数のキャップ内空間を形成するキャップ手段と、前記各キャップ内空間を、それぞれ可撓性を有するチューブによって形成される吸引通路を介して吸引可能な吸引手段とを備えた流体噴射装置において、前記流体噴射ヘッドのメンテナンスを行うためのメンテナンス領域での前記キャリッジの往復移動に伴って前記各吸引通路を選択的に閉塞可能な選択閉塞手段を備え、前記選択閉塞手段は、前記メンテナンス領域における前記キャリッジの往復移動に伴って往復移動することにより、前記各吸引通路を選択的に閉塞する位置に配置された前記各チューブを押圧可能な押圧ユニットを介して該チューブを押し潰すことで、前記各吸引通路を選択的に閉塞する閉塞部材と、前記閉塞部材が往復移動する度に該閉塞部材と係合して前記各吸引通路を閉塞するそれぞれの閉塞位置に該閉塞部材を順次導くカム面とを備え、前記押圧ユニットは、前記キャリッジの往復移動に伴って前記閉塞部材が摺動することで、該押圧ユニットが前記チューブを押圧する方向に移動するように構成された摺動面を有する第1の部材と、該第1の部材と前記チューブとの間に配置されるとともに該チューブを接触押圧することが可能な第2の部材と、前記チューブを押し潰して前記吸引通路を閉塞するために必要な押圧荷重を発生した状態で前記第1の部材と前記第2の部材との間に保持されるとともに、前記第2の部材が前記チューブを押圧して前記吸引通路を閉塞した後にさらに該チューブを押し潰すために必要な単位変位量当たりの荷重よりも単位変位量当たりに発生する荷重が小さくなるように設定された圧縮ばねとを備えている。
【0012】
この発明によれば、既存のメンテナンス領域におけるキャリッジの往復移動に伴って閉塞部材が往復移動する度に、カム面によって該閉塞部材が各吸引通路を閉塞する各閉塞位置に順次導かれるため、キャリッジの移動範囲を広げることなく該各吸引通路を選択的に閉塞することが可能となる。したがって、大型化することなく、複数のキャップ内空間を選択的に吸引することが可能となる。さらに、圧縮ばねは、第2の部材が吸引通路を閉塞した後にさらに該チューブを押し潰すために必要な単位変位量当たりの荷重よりも、単位変位量当たりに発生する荷重が小さくなるように設定されている。このため、第2の部材によってチューブが押し潰されて吸引通路が閉塞された後に圧縮ばねが収縮することで、該第2の部材によってチューブが過剰に押し潰されることを抑制することが可能となる。この結果、キャリッジが移動する際の負荷や閉塞部材が摺動する際の負荷を低減することが可能となる。
【0013】
本発明の流体噴射装置は、複数のノズルから流体を噴射する流体噴射ヘッドを支持して往復移動可能に構成されたキャリッジと、前記各ノズルを個別に囲うように前記流体噴射ヘッドに当接して複数のキャップ内空間を形成するキャップ手段と、前記各キャップ内空間を、それぞれ可撓性を有するチューブによって形成される吸引通路を介して吸引可能な吸引手段とを備えた流体噴射装置において、前記流体噴射ヘッドのメンテナンスを行うためのメンテナンス領域での前記キャリッジの往復移動に伴って前記各吸引通路を選択的に閉塞可能な選択閉塞手段を備え、前記選択閉塞手段は、前記メンテナンス領域における前記キャリッジの往復移動に伴って往復移動することにより、前記各吸引通路を選択的に閉塞する位置に配置された前記各チューブを押圧可能な押圧部材を介して該チューブを押し潰すことで、前記各吸引通路を選択的に閉塞する閉塞部材と、前記閉塞部材が往復移動する度に該閉塞部材と係合して前記各吸引通路を閉塞するそれぞれの閉塞位置に該閉塞部材を順次導くカム面とを備え、前記押圧部材は、前記キャリッジの往復移動に伴って前記閉塞部材が摺動することで、該押圧部材が前記チューブを押圧する方向に移動するように構成された摺動面を有し、該摺動面は、前記閉塞部材の摺動により前記押圧部材が前記チューブを押圧する方向へ移動する際の移動量が互いに異なるように設定された複数の面によって構成され、該各面は、前記押圧部材が前記チューブを押圧する押圧量が増加するに連れて該押圧部材が前記チューブを押圧する方向に移動する移動量が減少するように配置されている。
【0014】
この発明によれば、既存のメンテナンス領域におけるキャリッジの往復移動に伴って閉塞部材が往復移動する度に、カム面によって該閉塞部材が各吸引通路を閉塞する各閉塞位置に順次導かれるため、キャリッジの移動範囲を広げることなく該各吸引通路を選択的に閉塞することが可能となる。したがって、大型化することなく、複数のキャップ内空間を選択的に吸引することが可能となる。さらに、摺動面を構成する各面は、押圧部材がチューブを押圧する押圧量が増加するに連れて該押圧部材がチューブを押圧する方向に移動する移動量が減少するように配置されている。このため、第2の部材によってチューブが押し潰されて吸引通路が閉塞された後に該第2の部材によってチューブが過剰に押し潰されることを抑制することが可能となる。この結果、キャリッジが移動する際の負荷や閉塞部材が摺動する際の負荷を低減することが可能となる。
【0015】
本発明の流体噴射装置は、複数のノズルから流体を噴射する流体噴射ヘッドを支持して往復移動可能に構成されたキャリッジと、前記各ノズルを個別に囲うように前記流体噴射ヘッドに当接して複数のキャップ内空間を形成するキャップ手段と、前記各キャップ内空間を、それぞれ可撓性を有するチューブによって形成される吸引通路を介して吸引可能な吸引手段とを備えた流体噴射装置において、前記流体噴射ヘッドのメンテナンスを行うためのメンテナンス領域での前記キャリッジの往復移動に伴って前記各吸引通路を選択的に閉塞可能な選択閉塞手段を備え、前記選択閉塞手段は、前記メンテナンス領域における前記キャリッジの往復移動に伴って往復移動することにより、前記各吸引通路を選択的に閉塞する位置に配置された前記各チューブを押圧可能な押圧ユニットを介して該チューブを押し潰すことで、前記各吸引通路を選択的に閉塞する閉塞部材と、前記閉塞部材が往復移動する度に該閉塞部材と係合して前記各吸引通路を閉塞するそれぞれの閉塞位置に該閉塞部材を順次導くカム面とを備え、前記押圧ユニットは、前記キャリッジの往復移動に伴って前記閉塞部材が摺動することで、該押圧ユニットが前記チューブを押圧する方向に移動するように構成された摺動面を有する第1の部材と、該第1の部材と前記チューブとの間に配置されるとともに該チューブを接触押圧することが可能な第2の部材と、前記チューブを押し潰して前記吸引通路を閉塞するために必要な押圧荷重を発生した状態で前記第1の部材と前記第2の部材との間に保持されるとともに、前記第2の部材が前記チューブを押圧して前記吸引通路を閉塞した後にさらに該チューブを押し潰すために必要な単位変位量当たりの荷重よりも単位変位量当たりに発生する荷重が小さくなるように設定された圧縮ばねとを備え、前記摺動面は、前記閉塞部材の摺動により前記押圧ユニットが前記チューブを押圧する方向へ移動する際の移動量が互いに異なるように設定された複数の面によって構成され、該各面は、前記押圧ユニットが前記チューブを押圧する押圧量が増加するに連れて該押圧ユニットが前記チューブを押圧する方向に移動する移動量が減少するように配置されていることを備えている。
【0016】
この発明によれば、既存のメンテナンス領域におけるキャリッジの往復移動に伴って閉塞部材が往復移動する度に、カム面によって該閉塞部材が各吸引通路を閉塞する各閉塞位置に順次導かれるため、キャリッジの移動範囲を広げることなく該各吸引通路を選択的に閉塞することが可能となる。したがって、大型化することなく、複数のキャップ内空間を選択的に吸引することが可能となる。さらに、圧縮ばねは、第2の部材が吸引通路を閉塞した後にさらに該チューブを押し潰すために必要な単位変位量当たりの荷重よりも、単位変位量当たりに発生する荷重が小さくなるように設定されているとともに、摺動面を構成する各面は、押圧部材がチューブを押圧する押圧量が増加するに連れて該押圧部材がチューブを押圧する方向に移動する移動量が減少するように配置されている。このため、第2の部材によってチューブが押し潰されて吸引通路が閉塞された後に、該第2の部材によってチューブが過剰に押し潰されることを効果的に抑制することが可能となる。この結果、キャリッジが移動する際の負荷や閉塞部材が摺動する際の負荷を低減することが可能となる。
【0017】
本発明の流体噴射装置において、前記キャップ手段は、前記キャリッジが前記メンテナンス領域にて移動する際に該キャリッジと係合することで、該キャリッジの移動方向へ移動しながら前記流体噴射ヘッドに対して近接する方向に移動して前記流体噴射ヘッドに当接するキャップ部材を備え、前記メンテナンス領域における前記キャリッジの往復移動中は前記キャップ部材の前記流体噴射ヘッドへの当接状態が維持される。
【0018】
この発明によれば、キャップ部材を流体噴射ヘッドに当接させるための駆動源を別途必要とすることなく、キャリッジの移動によってキャップ部材を流体噴射ヘッドに当接させることが可能となる。さらに、閉塞部材が各吸引通路を閉塞する各閉塞位置に順次導かれるように、メンテナンス領域においてキャリッジを往復移動させた場合でも、キャップ部材の流体噴射ヘッドへの当接状態を維持することが可能となる。
【0019】
本発明の流体噴射装置は、複数のノズルから流体を噴射する流体噴射ヘッドを支持して往復移動可能に構成されたキャリッジと、前記各ノズルを個別に囲うように前記流体噴射ヘッドに当接して複数のキャップ内空間を形成するキャップ手段と、前記各キャップ内空間を、それぞれ可撓性を有するチューブによって形成される吸引通路を介して吸引可能な吸引手段とを備えた流体噴射装置において、前記流体噴射ヘッドのメンテナンスを行うためのメンテナンス領域での前記キャリッジの往復移動に伴って前記各吸引通路を選択的に閉塞可能な選択閉塞手段を備え、前記選択閉塞手段は、前記キャリッジと共に移動し、且つ前記キャリッジの移動方向及び前記キャップ手段が前記流体噴射ヘッドへ当接する方向に対して略垂直な方向に移動可能であって、前記各吸引通路を選択的に閉塞する位置に配置された前記各チューブを押圧可能な押圧ユニットを介して該チューブを押し潰すことで、前記各吸引通路を選択的に閉塞する閉塞部材と、前記キャリッジが前記メンテナンス領域にて往復移動する度に前記閉塞部材と係合して該閉塞部材を前記キャリッジの移動方向及び前記キャップ手段が前記流体噴射ヘッドへ当接する方向に対して略垂直な方向に移動させるカム面と、前記キャリッジの移動方向及び前記キャップ手段が前記流体噴射ヘッドへ当接する方向に対して略垂直な方向に移動した前記閉塞部材が進入するとともに、前記閉塞部材が進入した場合に該閉塞部材が前記各吸引通路を閉塞するか否かを選択するように予め設定された複数の選択通路とを備え、前記押圧ユニットは、前記キャリッジの往復移動に伴って前記閉塞部材が摺動することで、該押圧ユニットが前記チューブを押圧する方向に移動するように構成された摺動面を有する第1の部材と、該第1の部材と前記チューブとの間に配置されるとともに該チューブを接触押圧することが可能な第2の部材と、
前記チューブを押し潰して前記吸引通路を閉塞するために必要な押圧荷重を発生した状態で前記第1の部材と前記第2の部材との間に保持されるとともに、前記第2の部材が前記チューブを押圧して前記吸引通路を閉塞した後にさらに該チューブを押し潰すために必要な単位変位量当たりの荷重よりも単位変位量当たりに発生する荷重が小さくなるように設定された圧縮ばねとを備えている。
【0020】
この発明によれば、既存のメンテナンス領域におけるキャリッジの往復移動に伴って閉塞部材が往復移動する度に、該閉塞部材が各選択通路に進入して各吸引通路を閉塞するか否かを選択するため、キャリッジの移動範囲を広げることなく該各吸引通路を選択的に閉塞することが可能となる。したがって、大型化することなく、複数のキャップ内空間を選択的に吸引することが可能となる。さらに、圧縮ばねは、第2の部材が吸引通路を閉塞した後にさらに該チューブを押し潰すために必要な単位変位量当たりの荷重よりも、単位変位量当たりに発生する荷重が小さくなるように設定されている。このため、第2の部材によってチューブが押し潰されて吸引通路が閉塞された後に圧縮ばねが収縮することで、該第2の部材によってチューブが過剰に押し潰されることを抑制することが可能となる。この結果、キャリッジが移動する際の負荷や閉塞部材が摺動する際の負荷を低減することが可能となる。
【0021】
本発明の流体噴射装置は、複数のノズルから流体を噴射する流体噴射ヘッドを支持して往復移動可能に構成されたキャリッジと、前記各ノズルを個別に囲うように前記流体噴射ヘッドに当接して複数のキャップ内空間を形成するキャップ手段と、前記各キャップ内空間を、それぞれ可撓性を有するチューブによって形成される吸引通路を介して吸引可能な吸引手段とを備えた流体噴射装置において、前記流体噴射ヘッドのメンテナンスを行うためのメンテナンス領域での前記キャリッジの往復移動に伴って前記各吸引通路を選択的に閉塞可能な選択閉塞手段を備え、前記選択閉塞手段は、前記キャリッジと共に移動し、且つ前記キャリッジの移動方向及び前記キャップ手段が前記流体噴射ヘッドへ当接する方向に対して略垂直な方向に移動可能であって、前記各吸引通路を選択的に閉塞する位置に配置された前記各チューブを押圧可能な押圧部材を介して該チューブを押し潰すことで、前記各吸引通路を選択的に閉塞する閉塞部材と、前記キャリッジが前記メンテナンス領域にて往復移動する度に前記閉塞部材と係合して該閉塞部材を前記キャリッジの移動方向及び前記キャップ手段が前記流体噴射ヘッドへ当接する方向に対して略垂直な方向に移動させるカム面と、前記キャリッジの移動方向及び前記キャップ手段が前記流体噴射ヘッドへ当接する方向に対して略垂直な方向に移動した前記閉塞部材が進入するとともに、前記閉塞部材が進入した場合に該閉塞部材が前記各吸引通路を閉塞するか否かを選択するように予め設定された複数の選択通路とを備え、前記押圧部材は、前記キャリッジの往復移動に伴って前記閉塞部材が摺動することで、該押圧部材が前記チューブを押圧する方向に移動するように構成された摺動面を有し、該摺動面は、前記閉塞部材の摺動により前記押圧部材が前記チューブを押圧する方向へ移動する際の移動量が互いに異なるように設定された複数の面によって構成され、該各面は、前記押圧部材が前記チューブを押圧する押圧量が増加するに連れて該押圧部材が前記チューブを押圧する方向に移動する移動量が減少するように配置されている。
【0022】
この発明によれば、既存のメンテナンス領域におけるキャリッジの往復移動に伴って閉塞部材が往復移動する度に、該閉塞部材が各選択通路に進入して各吸引通路を閉塞するか否かを選択するため、キャリッジの移動範囲を広げることなく該各吸引通路を選択的に閉塞することが可能となる。したがって、大型化することなく、複数のキャップ内空間を選択的に吸引することが可能となる。さらに、摺動面を構成する各面は、押圧部材がチューブを押圧する押圧量が増加するに連れて該押圧部材がチューブを押圧する方向に移動する移動量が減少するように配置されている。このため、第2の部材によってチューブが押し潰されて吸引通路が閉塞された後に該第2の部材によってチューブが過剰に押し潰されることを抑制することが可能となる。この結果、キャリッジが移動する際の負荷や閉塞部材が摺動する際の負荷を低減することが可能となる。
【0023】
本発明の流体噴射装置は、複数のノズルから流体を噴射する流体噴射ヘッドを支持して往復移動可能に構成されたキャリッジと、前記各ノズルを個別に囲うように前記流体噴射ヘッドに当接して複数のキャップ内空間を形成するキャップ手段と、前記各キャップ内空間を、それぞれ可撓性を有するチューブによって形成される吸引通路を介して吸引可能な吸引手段とを備えた流体噴射装置において、前記流体噴射ヘッドのメンテナンスを行うためのメンテナンス領域での前記キャリッジの往復移動に伴って前記各吸引通路を選択的に閉塞可能な選択閉塞手段を備え、前記選択閉塞手段は、前記キャリッジと共に移動し、且つ前記キャリッジの移動方向及び前記キャップ手段が前記流体噴射ヘッドへ当接する方向に対して略垂直な方向に移動可能であって、前記各吸引通路を選択的に閉塞する位置に配置された前記各チューブを押圧可能な押圧ユニットを介して該チューブを押し潰すことで、前記各吸引通路を選択的に閉塞する閉塞部材と、前記キャリッジが前記メンテナンス領域にて往復移動する度に前記閉塞部材と係合して該閉塞部材を前記キャリッジの移動方向及び前記キャップ手段が前記流体噴射ヘッドへ当接する方向に対して略垂直な方向に移動させるカム面と、前記キャリッジの移動方向及び前記キャップ手段が前記流体噴射ヘッドへ当接する方向に対して略垂直な方向に移動した前記閉塞部材が進入するとともに、前記閉塞部材が進入した場合に該閉塞部材が前記各吸引通路を閉塞するか否かを選択するように予め設定された複数の選択通路とを備え、前記押圧ユニットは、前記キャリッジの往復移動に伴って前記閉塞部材が摺動することで、該押圧ユニットが前記チューブを押圧する方向に移動するように構成された摺動面を有する第1の部材と、該第1の部材と前記チューブとの間に配置されるとともに該チューブを接触押圧することが可能な第2の部材と、前記チューブを押し潰して前記吸引通路を閉塞するために必要な押圧荷重を発生した状態で前記第1の部材と前記第2の部材との間に保持されるとともに、前記第2の部材が前記チューブを押圧して前記吸引通路を閉塞した後にさらに該チューブを押し潰すために必要な単位変位量当たりの荷重よりも単位変位量当たりに発生する荷重が小さくなるように設定された圧縮ばねとを備え、前記摺動面は、前記閉塞部材の摺動により前記押圧ユニットが前記チューブを押圧する方向へ移動する際の移動量が互いに異なるように設定された複数の面によって構成され、該各面は、前記押圧ユニットが前記チューブを押圧する押圧量が増加するに連れて該押圧ユニットが前記チューブを押圧する方向に移動する移動量が減少するように配置されていることを備えている。
【0024】
この発明によれば、既存のメンテナンス領域におけるキャリッジの往復移動に伴って閉塞部材が往復移動する度に、該閉塞部材が各選択通路に進入して各吸引通路を閉塞するか否かを選択するため、キャリッジの移動範囲を広げることなく該各吸引通路を選択的に閉塞することが可能となる。したがって、大型化することなく、複数のキャップ内空間を選択的に吸引することが可能となる。さらに、圧縮ばねは、第2の部材が吸引通路を閉塞した後にさらに該チューブを押し潰すために必要な単位変位量当たりの荷重よりも、単位変位量当たりに発生する荷重が小さくなるように設定されているとともに、摺動面を構成する各面は、押圧部材がチューブを押圧する押圧量が増加するに連れて該押圧部材がチューブを押圧する方向に移動する移動量が減少するように配置されている。このため、第2の部材によってチューブが押し潰されて吸引通路が閉塞された後に、該第2の部材によってチューブが過剰に押し潰されることを効果的に抑制することが可能となる。この結果、キャリッジが移動する際の負荷や閉塞部材が摺動する際の負荷を低減することが可能となる。
【0025】
本発明の流体噴射装置において、前記各選択通路は前記閉塞部材が進入した際に前記チューブを押圧可能な部材が配置された選択通路と該部材が配置されていない選択通路とを含み、前記メンテナンス領域での前記キャリッジの往復移動により、前記閉塞部材が進入すべき選択通路を前記各選択通路の中から選択する。
【0026】
この発明によれば、チューブを押圧可能な部材が配置された選択通路を閉塞部材が進入すべき選択通路として選択した場合には該部材によってチューブが押圧されるとともに、チューブを押圧可能な部材が配置されていない選択通路を閉塞部材が進入すべき選択通路として選択した場合には該部材によってチューブが押圧されないようにすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】第1実施形態のインクジェット式プリンターの斜視図。
【図2】同プリンターのメンテナンス機構の簡略断面模式図。
【図3】同プリンターのキャリッジの要部拡大斜視図。
【図4】同プリンターのメンテナンス領域におけるキャリッジとキャップとの位置関係を示す模式図。
【図5】同プリンターのバルブユニットの斜視図。
【図6】図5の分解斜視図。
【図7】図5の平面図。
【図8】同プリンターにおいて、(a)は揺動部材のピン部が第1押圧部材または第2押圧部材の斜面に当接したときの状態を示す模式図、(b)は揺動部材のピン部が第1押圧部材または第2押圧部材を介して第1排出チューブまたは第2排出チューブを押圧して押し潰したときの状態を示す模式図。
【図9】メンテナンス領域におけるホームポジションを基点としたキャリッジの往復移動範囲と、両支持板の各貫通溝における各上側水平部の左右方向の長さの範囲との関係を示す模式図。
【図10】第2実施形態のバルブユニットの斜視図。
【図11】図10の分解斜視図。
【図12】同バルブユニットのカバー部材の平面図。
【図13】同バルブユニットのスライダがキャリッジによって右側にスライド移動されたときの状態を示す斜視図。
【図14】第3実施形態のメンテナンス機構の簡略断面模式図。
【図15】第3実施形態のバルブユニットの分解斜視図。
【図16】第3実施形態のバルブユニットの平面図。
【図17】第4実施形態の第1押圧部材及び第2押圧部材の側面図。
【図18】(a)〜(d)は、第4実施形態及び第5実施形態における第1排出チューブ及び第2排出チューブの潰れ具合を示す断面図。
【図19】第5実施形態の第1押圧ユニット及び第2押圧ユニットの斜視図。
【図20】第5実施形態の第1押圧ユニットの側面図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
(第1実施形態)
以下、本発明をインクジェット式プリンターに具体化した一実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の説明において、「前後方向」、「上下方向」及び「左右方向」をいう場合は、特に説明がない限り、図1を基準とした場合の「前後方向」、「上下方向」及び「左右方向」と一致するものとする。
【0029】
図1に示すように、流体噴射装置としてのインクジェット式プリンター11は、略矩形箱状をなすフレーム12を備えている。フレーム12内の下部には、その長手方向である左右方向に沿ってプラテン13が延設されている。プラテン13上には、フレーム12の背面下部に設けられた紙送りモーター14の駆動に基づき、図示しない紙送り機構により記録用紙Pが後方側から給送されるようになっている。
【0030】
フレーム12内におけるプラテン13の上方には、該プラテン13の長手方向に沿ってガイド軸15が架設されている。ガイド軸15には、該ガイド軸15の軸線方向(左右方向)に沿って往復移動可能にキャリッジ16が支持されている。すなわち、キャリッジ16には左右方向に貫通するように支持孔16aが形成されており、該支持孔16aにガイド軸15が挿通されることにより、キャリッジ16がガイド軸15によって左右方向に往復移動可能に支持されている。
【0031】
フレーム12の後壁内面におけるガイド軸15の両端部と対応する位置には、駆動プーリ17a及び従動プーリ17bが回転自在に支持されている。駆動プーリ17aにはキャリッジ16を往復移動させる際の駆動源となるキャリッジモーター18の出力軸が連結されており、これら一対のプーリ17a,17b間には一部がキャリッジ16に連結された無端状のタイミングベルト17が掛装されている。従って、キャリッジ16は、ガイド軸15にガイドされながら、キャリッジモーター18の駆動力により無端状のタイミングベルト17を介して左右方向に移動可能になっている。
【0032】
キャリッジ16の下面には流体噴射ヘッドとしての記録ヘッド19が設けられており、キャリッジ16上には記録ヘッド19に対して流体としての複数色(本実施形態では、ブラック、シアン、イエロー、マゼンタの4色)のインクをそれぞれ供給するためのインクカートリッジ20が着脱可能に装着されている。図2及び図3に示すように、記録ヘッド19の下面には、複数(本実施形態では5つ)のノズル22が前後方向に並んでなる複数列(本実施形態では4列)のノズル列22A〜22Dが左右方向に並設されている。
【0033】
各ノズル列22A〜22Dは、左側から順にノズル列22A、ノズル列22B、ノズル列22C、ノズル列22Dとされている。ノズル列22Bとノズル列22Cとの間隔及びノズル列22Cとノズル列22Dとの間隔は同じになっており、ノズル列22Aとノズル列22Bとの間隔はノズル列22Bとノズル列22Cとの間隔及びノズル列22Cとノズル列22Dとの間隔よりも広くなっている。
【0034】
そして、インクカートリッジ20内の各インクは、記録ヘッド19内に備えられた図示しない圧電素子の駆動により、インクカートリッジ20から記録ヘッド19へと供給され、該記録ヘッド19に備えられた各ノズル列22A〜22Dの各ノズル22からそれぞれ噴射されるようになっている。すなわち、図1〜図3に示すように、キャリッジ16をプラテン13と対応する印刷領域PAにて左右方向に往復移動させながら、記録ヘッド19内に備えられた図示しない圧電素子を駆動することで、プラテン13上に給送された記録用紙Pに各インクがそれぞれ噴射されて印刷が行われるようになっている。
【0035】
この場合、ノズル列22Aを構成する各ノズル22からはブラックインクが噴射され、ノズル列22Bを構成する各ノズル22からはシアンインクが噴射され、ノズル列22Cを構成する各ノズル22からはイエローインクが噴射され、ノズル列22Dを構成する各ノズル22からはマゼンタインクが噴射される。
【0036】
なお、フレーム12内の右端部に位置するプラテン13と対応しない非印刷領域は非印刷時に記録ヘッド19のクリーニング等のメンテナンスを行うためのメンテナンス領域MAとされ、該メンテナンス領域MAにはメンテナンス機構23が設けられている。
【0037】
次に、メンテナンス機構23の構成について詳述する。
図4に示すように、メンテナンス機構23は前後一対の支持板24を備えており、両支持板24には前後に並ぶ2つで一組の貫通溝25がそれぞれ形成されている。各貫通溝25は、左から右へ向かって真っ直ぐ水平に延びる下側水平部25aと、該下側水平部25aの右端から右斜め上方に向かって真っ直ぐに延びる斜面部25bと、該斜面部25bの右端から右へ向かって真っ直ぐ水平に延びる上側水平部25cとをそれぞれ備えている。
【0038】
各貫通溝25において、下側水平部25a、斜面部25b、及び上側水平部25cは互いに連通している。そして、両支持板24の前後に並ぶ一組の貫通溝25における一方(左側の貫通溝25)の下側水平部25aと他方(右側の貫通溝25)の上側水平部25cとは上下方向においてそれぞれ重なっている。
【0039】
両支持板24間には矩形板状のキャップホルダ26が配置され、該キャップホルダ26の上面中央部にはキャップ手段を構成するキャップ部材としての有底四角箱状をなすキャップ27が設けられている。さらに、キャップホルダ26の上面右端部にはキャリッジ16がメンテナンス領域MAに移動する際に該キャリッジ16の右面と係合する係合棒28が立設されている。
【0040】
キャップホルダ26の左右両端部には前後方向に延びる支持棒29がそれぞれ設けられている。そして、前側の支持棒29の両端部は両支持板24の前側の貫通溝25内にそれぞれ摺動可能に挿通されており、後側の支持棒29の両端部は両支持板24の後側の貫通溝25内にそれぞれ摺動可能に挿通されている。キャップホルダ26は、図示しないばねによって常に左側へ向かって付勢されており、キャリッジ16がメンテナンス領域MAに位置しない印刷状態では、該ばねの付勢力により両支持棒29が各貫通溝25の下側水平部25aの左端面に当接する位置(図4の2点鎖線で示す位置)にキャップ27とともに位置するようになっている。
【0041】
そして、キャリッジ16がメンテナンス領域MAに移動すると、該キャリッジ16の右面が係合棒28に当接し、さらにキャリッジ16が右方向に移動すると、図示しないばねの付勢力に抗して両支持棒29が各貫通溝25の下側水平部25aを右側に向かって摺動する。そして、更なるキャリッジ16の右方向への移動に伴って両支持棒29が各貫通溝25の斜面部25bを右側に向かって摺動する過程で、キャップホルダ26とともにキャップ27が記録ヘッド19に向かって近接するように徐々に上昇し、両支持棒29が各貫通溝25の上側水平部25cに達した段階で該キャップ27が記録ヘッド19に当接する。
【0042】
そして、キャップホルダ26は、キャリッジ16が最も右側に移動した位置であるホームポジションに位置したメンテナンス状態(図4の実線で示す状態)では、両支持棒29が各貫通溝25の上側水平部25cの右端面に当接する位置(図4の実線で示す位置)にキャップ27とともに位置するようになっている。
【0043】
図2に示すように、キャップ27内には該キャップ27内を左右2室に隔絶する隔壁30が設けられている。キャップ27において、隔壁30から左側の部分は第1キャップ部31とされ、隔壁30から右側の部分は第2キャップ部32とされている。そして、キャリッジ16がホームポジションに位置したメンテナンス状態では、キャップ27が各ノズル22を囲うように記録ヘッド19に対して当接するようになっている。
【0044】
すなわち、キャップ27が記録ヘッド19に当接した状態では、第1キャップ部31がノズル列22Aを囲みながら記録ヘッド19との間で第1キャップ内空間31aを形成するとともに、第2キャップ部32がノズル列22B〜22Dを囲みながら記録ヘッド19との間で第2キャップ内空間32aを形成するようになっている。
【0045】
第1キャップ部31の底壁からは第1突部33が下方に向かって突設されており、該第1突部33内には第1キャップ部31内からインクを排出するための第1排出路33aが上下方向に貫通するように形成されている。一方、第2キャップ部32の底壁からは第2突部34が下方に向かって突設されており、該第2突部34内には第2キャップ部32内からインクを排出するための第2排出路34aが上下方向に貫通するように形成されている。
【0046】
第2突部34には可撓性を有するチューブとしての第2排出チューブ37の基端側(上流側)が接続され、該第2排出チューブ37の他端側(下流側)は直方体状をなす廃インクタンク36内に挿入されている。一方、第1突部33には可撓性を有するチューブとしての第1排出チューブ35の基端側(上流側)が接続され、該第1排出チューブ35の他端側(下流側)は第2排出チューブ37の中間部に合流するように連通状態で連結されている。
【0047】
両排出チューブ35,37はこれらの合流点Gまでは並ぶようにして引き回されており、第2排出チューブ37における第1排出チューブ35との合流点Gよりも下流端の位置には該第2排出チューブ37内をキャップ27側から廃インクタンク36側へ向かって吸引するための吸引手段としての1つのチューブポンプ38が配設されている。
【0048】
すなわち、チューブポンプ38を駆動した場合には、両排出チューブ35,37内が同時に吸引されるようになっている。したがって、第1排出チューブ35及び第2排出チューブ37は、第1キャップ内空間31a及び第2キャップ内空間32aをそれぞれ吸引するための吸引通路を形成している。
【0049】
そして、キャップ27が記録ヘッド19に当接した状態でチューブポンプ38を駆動することで、各ノズル列22A〜22Dを構成する各ノズル22(図3参照)から増粘したインクが気泡等とともに吸引され、キャップ27及び両排出チューブ35,37を介して廃インクタンク36内に排出される、いわゆるクリーニングが行われるようになっている。なお、廃インクタンク36内には、該廃インクタンク36内に排出されたインクを吸収して保持する廃インク吸収材39が収容されている。
【0050】
また、両排出チューブ35,37におけるこれらの合流点Gよりも上流側の位置には、両排出チューブ35,37を選択的に閉塞可能な直方体状のバルブユニット40が配設されている。バルブユニット40は、メンテナンス機構23の一部を構成しており、メンテナンス領域MAにおいてキャップ27の前側に位置している。
【0051】
なお、図2においては、理解を容易にするために、破断線を境に左側と右側とで方向が異なるように描いている。すなわち、図2において、破断線よりも左側ではキャリッジ16が左右方向に移動し、破断線よりも右側ではキャリッジ16が紙面と直交する方向に移動する。
【0052】
図3に示すように、キャリッジ16の下面の右端部における記録ヘッド19よりも前側の位置には円板状の凸部41が形成されており、該凸部41には揺動部材42が揺動可能に支持されている。すなわち、揺動部材42は円環状の環状部43と該環状部43から左方に向かって真っ直ぐに延びる矩形板状のアーム部44とを備えており、環状部43が揺動可能に凸部41と嵌合している。そして、アーム部44の先端部における下面には、下方に向かって突出した円柱状の閉塞部材としてのピン部45が形成されている。なお、本実施形態では、バルブユニット40と揺動部材42とによって選択閉塞手段が構成されている。
【0053】
次に、バルブユニット40の構成について詳述する。
図5及び図6に示すように、バルブユニット40は、前後に並ぶ両排出チューブ35,37の中間部を支持する略直方体状のケース部材46と、該ケース部材46の上面上に支持される第1排出チューブ35の一部及び第2排出チューブ37の一部を上側からそれぞれ押圧可能な押圧部材としての第1押圧部材47及び第2押圧部材48と、該両押圧部材47,48を収容しつつケース部材46の上面を覆う直方体状のカバー部材49とを備えている。
【0054】
ケース部材46の上面における前後両端縁部には、左右方向のほぼ中央部から左端にかけて前壁50及び後壁51がそれぞれ立設されている。ケース部材46の上面における後壁51の前側には、該後壁51の左右方向の中央部と隣接するように、中心部にねじ孔52aを有する円形のボス部52が立設されている。前壁50の上面における右端部及び後壁51の上面における右端部には円柱状の突起53がそれぞれ立設されており、該両突起53はこれらと対応するカバー部材49の下面にそれぞれ設けられた図示しない凹部に嵌合可能になっている。
【0055】
ケース部材46の上面において、前壁50の右端部と後壁51の右端部との間の位置には、前壁50及び後壁51と同じ高さの直方体状の島部54が立設されている。この場合、島部54と前壁50の右端部との間には隙間55が形成されるとともに、島部54と後壁51の右端部との間には隙間56が形成されている。また、ケース部材46の上面における右端縁部には、前壁50及び後壁51と同じ高さの右壁57が形成されている。左右方向において右壁57における隙間55及び隙間56と対応する位置には、該右壁57を切り欠いてなる切欠凹部58及び切欠凹部59がそれぞれ形成されている。
【0056】
そして、ケース部材46の上面に第1排出チューブ35及び第2排出チューブ37が支持された状態では、第1排出チューブ35が隙間55及び切欠凹部58を通るとともに、第2排出チューブ37が隙間56及び切欠凹部59を通るようになっている。したがって、第1排出チューブ35は隙間55及び切欠凹部58間で前後方向の位置決めがなされ、第2排出チューブ37は隙間56及び切欠凹部59間で前後方向の位置決めがなされる。
【0057】
第1押圧部材47はブロック状の本体部60を備えており、該本体部60の上面における後端縁部には平板状の突出部61が形成されている。突出部61の上面61aは水平になっており、該上面61aの左側には該上面61aと隣接するように斜面61bが形成されている。斜面61bは上面61aに向かって上昇するように傾斜している。本体部60の下面における右端部には、下方に向かって突出するとともに前後方向に向かって延びる凸条62が設けられている。
【0058】
凸条62は、左右方向の幅が先端部(下端部)に行くにつれて徐々に狭くなっており、先端(下端)は丸みを帯びている。そして、凸条62の先端は、ケース部材46における隙間55及び切欠凹部58間において第1排出チューブ35の上面に当接している。
【0059】
一方、第2押圧部材48はブロック状の本体部63を備えており、該本体部63の上面における前端縁部には平板状の突出部64が形成されている。突出部64の上面64aは水平になっており、該上面64aの左側には該上面64aと隣接するように斜面64bが形成されている。斜面64bは上面64aに向かって上昇するように傾斜している。本体部63の下面における右端部には、下方に向かって突出するとともに前後方向に向かって延びる凸条65が設けられている。
【0060】
凸条65は、左右方向の幅が先端部(下端部)に行くにつれて徐々に狭くなっており、先端(下端)は丸みを帯びている。そして、凸条65の先端は、ケース部材46における隙間56及び切欠凹部59間において第2排出チューブ37の上面に当接している。
【0061】
なお、第1押圧部材47と第2押圧部材48とは、上下方向及び左右方向に広がる鉛直面を対称面として互いに面対称な形状になっている。
図6及び図7に示すように、カバー部材49の上面におけるケース部材46のボス部52と対応する位置には円形のねじ凹部66が形成されている。ねじ凹部66の底面中央にはカバー部材49を上下に貫通する貫通孔67が形成されている。したがって、貫通孔67に図示しないねじを挿通した状態で、該ねじをケース部材46のボス部52のねじ孔52aに螺入することで、カバー部材49がケース部材46に固定されるようになっている。
【0062】
カバー部材49の上面には全体として左右方向に長い凹溝70が形成されており、該凹溝70は左端側が広く開口しているとともに右端側が閉塞されている。凹溝70の右端部には、前後方向に等間隔で互いに平行となるとともに左右方向に長い平面視矩形状をなす3つの選択通路としての袋小路部71〜73が形成されている。各袋小路部71〜73は前側から順に袋小路部71、袋小路部72,袋小路部73とされ、該各袋小路部71〜73の前後の幅は揺動部材42のピン部45の外径よりも若干大きくなるように設定されている。
【0063】
凹溝70の前側面74は、カバー部材49の上面の左端縁における前端部から右方向へ真っ直ぐに延びており、カバー部材49における左右方向の中央部よりもやや右寄りの位置で右斜め後方に傾斜した後、袋小路部71の前側面になっている。この場合、凹溝70の前側面74における傾斜部分は傾斜面75とされている。
【0064】
凹溝70の後側面76は、カバー部材49の上面の左端縁における後端部から右斜め前方向へ真っ直ぐに延びており、カバー部材49における左右方向の中央部よりもやや左寄りの位置で前側面74に最も近づいた後、右斜め後方に向かって2段階に傾斜し、さらにその後、右方向に真っ直ぐに延びて袋小路部73の後側面になっている。
【0065】
この場合、凹溝70において、前側面74と後側面76とが最も近づく部分は括れ部77とされ、該括れ部77の前後方向の幅は揺動部材42のピン部45の外径よりも若干大きくなるように設定されている。さらにこの場合、凹溝70の後側面76において2段階に傾斜している部分は、リターン面78とされている。
【0066】
凹溝70内における袋小路部71及び袋小路部72の左側近傍には、該袋小路部71及び袋小路部72と対応するように、平面視で平行四辺形状をなす柱状の第1誘導部79及び第2誘導部80がそれぞれ立設されている。第1誘導部79及び第2誘導部80は、形状が互いに同一になっているとともに、左右方向の位置が互いに一致している。第1誘導部79の上面及び第2誘導部80の上面は、カバー部材49の上面と面一になっている。前後方向における第1誘導部79の幅及び第2誘導部80の幅は、前後方向における袋小路部71及び袋小路部72の幅とほぼ同じになっている。
【0067】
第1誘導部79の後側面は、平面視で左右方向に延びるストレート面79aとされている。第1誘導部79の右側面は、袋小路部71と対向しているとともに、平面視で右斜め前方から左斜め後方へ向かって延びる第1カム面79bとされている。一方、第2誘導部80の後側面は、平面視で左右方向に延びるストレート面80aとされている。第2誘導部80の右側面は、袋小路部72と対向しているとともに、平面視で右斜め前方から左斜め後方へ向かって延びる第2カム面80bとされている。
【0068】
袋小路部71と袋小路部72とを隔てる隔壁の左側面は平面視で左斜め前方から右斜め後方へ向かって延びる第3カム面81とされ、袋小路部72と袋小路部73とを隔てる隔壁の左側面は平面視で左斜め前方から右斜め後方へ向かって延びる第4カム面82とされている。
【0069】
袋小路部72の底壁のほぼ全体にはカバー部材49を上下に貫通する挿通孔83が形成されており、該挿通孔83には第1押圧部材47の突出部61が下側から挿通されている。この場合、突出部61の上面61aはカバー部材49の上面よりも若干低い位置に位置している。一方、袋小路部73の底壁のほぼ全体にはカバー部材49を上下に貫通する挿通孔84が形成されており、該挿通孔84には第2押圧部材48の突出部64が下側から挿通されている。この場合、突出部64の上面64aはカバー部材49の上面よりも若干低い位置に位置している。
【0070】
また、キャリッジ16がメンテナンス領域MAにて移動する際には、揺動部材42のピン部45が凹溝70内を摺動するようになっている。そして、キャリッジ16がホームポジションに移動したときにおいて、揺動部材42のピン部45が袋小路部71内にあるときの該ピン部45の位置は非閉塞位置Aとされ、ピン部45が袋小路部72内にあるときの該ピン部45の位置は閉塞位置Bとされ、ピン部45が袋小路部73内にあるときの該ピン部45の位置は閉塞位置Cとされている。
【0071】
また、揺動部材42のピン部45が閉塞位置Bにあるときには、図8(b)に示すように、該ピン部45が第1押圧部材47を介して第1排出チューブ35を押圧して押し潰すことで、該第1排出チューブ35内が閉塞されるようになっている。一方、揺動部材42のピン部45が閉塞位置Cにあるときには、図8(b)に示すように、該ピン部45が第2押圧部材48を介して第2排出チューブ37を押圧して押し潰すことで、該第2排出チューブ37内が閉塞されるようになっている。
【0072】
次に、インクジェット式プリンター11のクリーニング時の作用について説明する。
(全クリーニング)
さて、全ノズル列22A〜22Dの各ノズル22から各インクを吸引する記録ヘッド19の全クリーニングを行う場合には、まず、キャリッジ16をメンテナンス領域MA内のホームポジションに移動させる。すると、キャップ27が記録ヘッド19に当接し、第1キャップ部31がノズル列22Aを囲みながら記録ヘッド19との間で第1キャップ内空間31aを形成するとともに、第2キャップ部32がノズル列22B〜22Dを囲みながら記録ヘッド19との間で第2キャップ内空間32aを形成する。
【0073】
一方、揺動部材42のピン部45は、バルブユニット40のカバー部材49の上面に設けられた凹溝70内に左側から進入する。このとき、凹溝70の左端開口は大きく広がっているため、ピン部45の位置が多少前後方向にずれていても、該凹溝70の後側面76によってピン部45が括れ部77に誘導される。引き続き、ピン部45は、凹溝70の前側面74に沿って袋小路部71内の非閉塞位置Aに移動する。
【0074】
ピン部45が非閉塞位置Aにあるときには両排出チューブ35,37はともに閉塞されていない状態になっている。この状態でチューブポンプ38を駆動すると、両排出チューブ35,37内が同時に吸引されて第1キャップ内空間31a及び第2キャップ内空間32aにそれぞれ負圧が発生する。
【0075】
この負圧により、ノズル列22Aの各ノズル22から増粘したブラックインクが気泡等とともに吸引され、第1キャップ部31及び第1排出チューブ35を介して廃インクタンク36内に排出される。これと同時に、各ノズル列22B〜22Dの各ノズル22から増粘したシアンインク、イエローインク、マゼンタインクがそれぞれ気泡等とともに吸引され、第2キャップ部32及び第2排出チューブ37を介して廃インクタンク36内に排出される。これにより、記録ヘッド19の全ノズル列22A〜22Dの各ノズル22から各インクを吸引する全クリーニングが完了する。
【0076】
その後、印刷を行う場合には、キャリッジ16を印刷領域PAへ移動させればよい。このとき、揺動部材42のピン部45は、第1誘導部79の第1カム面79b、ストレート面79a、凹溝70のリターン面78を摺動し、括れ部77を経由して凹溝70の左端開口から凹溝70外へ離脱する。
【0077】
(選択クリーニング)
全ノズル列22A〜22Dのうち各ノズル列22B〜22Dの各ノズル22から各インク(カラーインク)を吸引する記録ヘッド19の選択クリーニングを行う場合には、上記のようにキャリッジ16がホームポジションにあってピン部45が非閉塞位置Aにある状態から、さらにキャリッジ16を左方向に移動させる。
【0078】
すると、ピン部45が第1誘導部79の第1カム面79bに摺接し、該第1カム面79b上をストレート面79aに向かって摺動する。そして、ピン部45がストレート面79a上に移動した段階でキャリッジ16を右方向に移動させると、ピン部45が第3カム面81に摺接し、該第3カム面81上を袋小路部72に向かって摺動する。そして、キャリッジ16を再びホームポジションまで移動させると、ピン部45が袋小路部72内の閉塞位置Bに移動する。
【0079】
このとき、図8(a)に示すように、ピン部45は、第1押圧部材47の突出部61の斜面61bを摺動し、その摺動にともなって徐々に第1押圧部材47を下方に向かって押し下げる。そして、ピン部45が閉塞位置Bに移動した状態では、図8(b)に示すように、第1押圧部材47の突出部61の上面61aに完全に乗り上げた状態となる。この状態では、ピン部45が完全に第1押圧部材47を押し下げているため、第1押圧部材47の凸条62が第1排出チューブ35を完全に押し潰して該第1排出チューブ35内を閉塞している。
【0080】
この状態でチューブポンプ38を駆動すると、両排出チューブ35,37内が同時に吸引されるが、第1排出チューブ35が第1押圧部材47によって閉塞されているため、両キャップ内空間31a,32aのうち第2キャップ内空間32aのみに負圧が発生する。この負圧により、各ノズル列22B〜22Dの各ノズル22から増粘したシアンインク、イエローインク、マゼンタインクがそれぞれ気泡等とともに吸引され、第2キャップ部32及び第2排出チューブ37を介して廃インクタンク36内に排出される。これにより、全ノズル列22A〜22Dのうち各ノズル列22B〜22Dの各ノズル22から各インク(カラーインク)を吸引する記録ヘッド19の選択クリーニングが完了する。
【0081】
その後、印刷を行う場合には、キャリッジ16を印刷領域PAへ移動させればよい。このとき、揺動部材42のピン部45は、第2誘導部80の第2カム面80b、ストレート面80a、凹溝70のリターン面78を摺動し、括れ部77を経由して凹溝70の左端開口から凹溝70外へ離脱する。
【0082】
次に、全ノズル列22A〜22Dのうちノズル列22Aの各ノズル22からブラックインクを吸引する記録ヘッド19の選択クリーニングを行う場合には、上記のようにキャリッジ16がホームポジションにあってピン部45が閉塞位置Bにある状態から、さらにキャリッジ16を左方向に移動させる。すると、ピン部45が第2誘導部80の第2カム面80bに摺接し、該第2カム面80b上をストレート面80aに向かって摺動する。
【0083】
このとき、ピン部45は袋小路部72から離脱するため、該ピン部45による第1押圧部材47の押し下げ状態は解除される。このため、第1押圧部材47によって押し潰されていた第1排出チューブ35は、自身の弾性復元力によって押し潰される前の元の形状に戻る。これにより、第1押圧部材47が第1排出チューブ35によって押し上げられて、該第1押圧部材47がピン部45によって押し下げられる前の元の位置に戻る。これにより、第1排出チューブ35は、その閉塞状態が解除されて開放状態となる。
【0084】
そして、ピン部45がストレート面80a上に移動した段階でキャリッジ16を右方向に移動させると、ピン部45が第4カム面82に摺接し、該第4カム面82上を袋小路部73に向かって摺動する。そして、キャリッジ16を再びホームポジションまで移動させると、ピン部45が袋小路部73内の閉塞位置Cに移動する。
【0085】
このとき、図8(a)に示すように、ピン部45は、第2押圧部材48の突出部64の斜面64bを摺動し、その摺動にともなって徐々に第2押圧部材48を下方に向かって押し下げる。そして、ピン部45が閉塞位置Cに移動した状態では、図8(b)に示すように、第2押圧部材48の突出部64の上面64aに完全に乗り上げた状態となる。この状態では、ピン部45が完全に第2押圧部材48を押し下げているため、第2押圧部材48の凸条65が第2排出チューブ37を完全に押し潰して該第2排出チューブ37内を閉塞している。
【0086】
この状態でチューブポンプ38を駆動すると、両排出チューブ35,37内が同時に吸引されるが、第2排出チューブ37が第2押圧部材48によって閉塞されているため、両キャップ内空間31a,32aのうち第1キャップ内空間31aのみに負圧が発生する。この負圧により、ノズル列22Aの各ノズル22から増粘したブラックインクが気泡等とともに吸引され、第1キャップ部31及び第1排出チューブ35を介して廃インクタンク36内に排出される。これにより、全ノズル列22A〜22Dのうちノズル列22Aの各ノズル22からブラックインクを吸引する記録ヘッド19の選択クリーニングが完了する。
【0087】
その後、印刷を行う場合には、キャリッジ16を印刷領域PAへ移動させればよい。このとき、揺動部材42のピン部45は、凹溝70のリターン面78を摺動し、括れ部77を経由して凹溝70の左端開口から凹溝70外へ離脱する。さらにこのとき、ピン部45は袋小路部73から離脱するため、該ピン部45による第2押圧部材48の押し下げ状態は解除される。
【0088】
このため、第2押圧部材48によって押し潰されていた第2排出チューブ37は、自身の弾性復元力によって押し潰される前の元の形状に戻る。これにより、第2押圧部材48が第2排出チューブ37によって押し上げられて、該第2押圧部材48がピン部45によって押し下げられる前の元の位置に戻る。これにより、第2排出チューブ37は、その閉塞状態が解除されて開放状態となる。
【0089】
このように、メンテナンス領域MA内において、ホームポジションを基点としてキャリッジ16を左右に往復移動することで、各カム面79b,81,80b,82の作用により、揺動部材42が揺動しながら該揺動部材42のピン部45が、非閉塞位置Aから閉塞位置Bへ、閉塞位置Bから閉塞位置Cへと、キャリッジ16の移動方向である左右方向及びキャップ27が記録ヘッド19へ当接する方向である上下方向に対して垂直な方向である前後方向に沿って順次導かれる。
【0090】
すなわち、各袋小路部71〜73内には非閉塞位置A、閉塞位置B、及び閉塞位置Cがそれぞれ対応するように予め設定されており、メンテナンス領域MA内におけるキャリッジ16の往復移動により、揺動部材42のピン部45が、各袋小路部71〜73の中から進入すべき袋小路部を1つ選択し、その選択した1つの袋小路部に進入する。この場合の揺動部材42のピン部45による進入すべき1つの袋小路部の選択は、該ピン部45が第1排出チューブ35及び第2排出チューブ37を閉塞するか否かの選択となる。このため、両排出チューブ35,37の閉塞状態をキャリッジ16の移動だけで切り換えることができる。
【0091】
このとき、図9に示すように、メンテナンス領域MAにおけるホームポジションを基点としたキャリッジ16の往復移動範囲は、両支持板24の各貫通溝25における各上側水平部25cの左右方向の長さNの範囲内に収まっている。このため、メンテナンス領域MAにおけるホームポジションを基点としたキャリッジ16の往復移動時に、キャップホルダ26の各支持棒29が各上側水平部25cから離脱することがないので、キャップホルダ26の高さは変わらない。
【0092】
したがって、メンテナンス領域MAにおけるホームポジションを基点としたキャリッジ16の往復移動時に、キャップ27の高さが変わらないため、該キャップ27の記録ヘッド19への当接状態は維持される。
【0093】
以上、詳述した第1実施形態によれば以下の効果を得ることができる。
(1)メンテナンス領域MA内において、ホームポジションを基点としてキャリッジ16を左右に往復移動させることで、各カム面79b,81,80b,82の作用により、揺動部材42のピン部45を、非閉塞位置Aから閉塞位置Bへ、閉塞位置Bから閉塞位置Cへと、キャリッジ16の移動方向及びキャップ27が記録ヘッド19へ当接する方向と垂直な方向に順次導くことができる。すなわち、両排出チューブ35,37の閉塞状態を、既存のメンテナンス領域でキャリッジ16を左右に往復移動させるだけで容易に切り換えることができる。したがって、キャリッジ16の移動範囲を広げることなく両排出チューブ35,37内を選択的に閉塞することができる。この結果、インクジェット式プリンター11を大型化することなく、両キャップ内空間31a,32aをチューブポンプ38によって選択的に吸引することができる。すなわち、ブラックインクとカラーインクとの間で選択的にクリーニングを行うことができる。
【0094】
(2)両キャップ内空間31a,32aを吸引するための吸引通路が可撓性を有する両排出チューブ35,37によって構成されるとともに、閉塞位置B及び閉塞位置Cにおいて揺動部材42のピン部45が両押圧部材47,48を介して両排出チューブ35,37を押し潰すことで両排出チューブ35,37内が閉塞されるようになっている。このため、複雑な切換弁装置を用いることなく、選択的に両排出チューブ35,37内を容易かつ確実に閉塞することができる。また、バルブユニット40は、複雑な切換弁装置を用いない簡単な構成であるため、各インクに固化しやすい顔料インクを用いても両排出チューブ35,37内が目詰まりしにくく、メンテンスをほとんど行う必要がない。
【0095】
(3)キャリッジ16がメンテナンス領域MAにて係合棒28と係合した状態でホームポジションへ移動する際には、両支持棒29が各貫通溝25の斜面部25bを右側に向かって摺動する過程で、キャップホルダ26とともにキャップ27が記録ヘッド19に向かって近接するように徐々に上昇し、両支持棒29が各貫通溝25の上側水平部25cに達した段階で該キャップ27が記録ヘッド19に当接するように構成されている。このため、キャップ27を記録ヘッド19に当接させるための駆動源を別途必要とすることなく、既存のキャリッジ16の移動によってキャップ27を記録ヘッド19に当接させることができる。
【0096】
(4)揺動部材42のピン部45を、非閉塞位置Aから閉塞位置Bへ、閉塞位置Bから閉塞位置Cへと順次導くためのメンテナンス領域MAにおけるホームポジションを基点としたキャリッジ16の往復移動範囲は、両支持板24の各貫通溝25における各上側水平部25cの左右方向の長さNの範囲内に収まっている。このため、メンテナンス領域MAにおけるホームポジションを基点としたキャリッジ16の往復移動時に、キャップホルダ26の各支持棒29が各上側水平部25cから離脱することがないので、キャップホルダ26の高さが変化しないようにすることができる。すなわち、メンテナンス領域MAにおけるホームポジションを基点としたキャリッジ16の往復移動時に、キャップ27の高さを一定にすることができるため、該キャップ27の記録ヘッド19への当接状態を維持することができる。
【0097】
(第2実施形態)
以下、本発明の第2実施形態を上記第1実施形態と異なる点を中心に説明する。
この第2実施形態は、図10及び図11に示すように、上記第1実施形態におけるバルブユニット40をバルブユニット90に変更するように構成したものである。すなわち、バルブユニット90は、ケース部材91と、両押圧部材47,48と、カバー部材92と、揺動部材42と、カバー部材92の上面側を覆うスライダ93とを備えている。したがって、この第2実施形態では、キャリッジ16の下面に揺動部材42は支持されておらず、キャリッジ16の凸部41が省略されている。
【0098】
図10〜図12に示すように、ケース部材91は、第1実施形態のケース部材46の前後両側面の左端部における上端部に一対のフック部94を外側に向かって(前後方向に沿って)延設したものである。カバー部材92は、第1実施形態のカバー部材49において、前後両側面に左右方向に延びる摺動溝95を設けるとともに凹溝70における括れ部77から左側の後側面76をピン部45の外径よりも若干広い間隔をおいて前側面74と平行に延びるように構成したものである。この場合、カバー部材92において、第1実施形態のカバー部材49における凹溝70の括れ部77と対応する位置は、ピン部45の待機位置96とされている。なお、カバー部材92の両摺動溝95は、左端側が閉塞されているとともに右端側が開口している。
【0099】
スライダ93は、矩形板状の天板97と、該天板97の下面における前後両端縁部から真下に向かって延びる一対の矩形板状の側板98とを備えている。両側板98の内面には、左右方向に延びる一対の摺動凸条99が設けられている。両摺動凸条99は、カバー部材92の両摺動溝95内にそれぞれ挿通されており、該両摺動溝95に沿って左右方向に摺動可能になっている。
【0100】
両側板98の外面における左右方向の中央下端部には、先端部が右側に屈曲した一対の掛止片100が突設されている。両掛止片100は、ケース部材91のフック部94と、それぞれコイルばね101を介して連結されている。両コイルばね101は、両掛止片100を介してスライダ93を左方に向かって常に付勢している。したがって、スライダ93は、通常、両コイルばね101の付勢力により、両摺動凸条99の左面が両摺動溝95の左面にそれぞれ当接した待機状態になっている。
【0101】
天板97の下面には図示しない凸部が形成されており、該凸部には揺動部材42が揺動可能に支持されている。そして、スライダ93の待機状態では、カバー部材92の凹溝70内に摺動可能に挿通された揺動部材42のピン部45が待機位置96に位置している。なお、天板97の上面における前後方向の中央右端部にはキャリッジ16と係合可能な係合柱102が立設されている。
【0102】
さて、図12及び図13に示すように、キャリッジ16がホームポジションに移動する際には該キャリッジ16の右面が係合柱102の左面に当接し、キャリッジ16がホームポジションに移動した状態では該キャリッジ16が係合柱102を右方に向かって押圧することで、スライダ93が両コイルばね101の付勢力に抗してキャリッジ16とともに右方に向かってスライド移動する。このとき、揺動部材42のピン部45は、非閉塞位置Aに位置している。
【0103】
そして、メンテナンス領域MA内において、ホームポジションを基点としてキャリッジ16を左右に往復移動すると、両コイルばね101の作用により、スライダ93が該キャリッジ16の往復移動に追従して左右に往復移動する。このスライダ93の往復移動と各カム面79b,81,80b,82の作用とにより、揺動部材42が揺動しながら該揺動部材42のピン部45が非閉塞位置Aから閉塞位置Bへ、閉塞位置Bから閉塞位置Cへと順次導かれ、両排出チューブ35,37の閉塞状態の切り換えが行われる。
【0104】
以上、詳述した第2実施形態によれば、上記(1)〜(4)の効果に加えて、以下の効果を得ることができる。
(5)揺動部材42がバルブユニット90内に組み込まれているため、揺動部材42がスライダ93で隠れて外部から見えなくなり、インクジェット式プリンター11の外観品質が向上する。加えて、揺動部材42に対してインクが付着し難くなるので、該揺動部材42の揺動不良を低減することができる。
【0105】
(6)揺動部材42がキャリッジ16に支持されないため、第1実施形態に比べて揺動部材42の分だけキャリッジ16が軽くなる。このため、キャリッジ16の駆動時におけるキャリッジモーター18への負荷を軽減することができる。
【0106】
(第3実施形態)
以下、本発明の第3実施形態を上記第1実施形態と異なる点を中心に説明する。
この第3実施形態は、図14に示すように、上記第1実施形態のキャップ27の第1キャップ部31及び第2キャップ部32に、第1キャップ内空間31a及び第2キャップ内空間32aをそれぞれ大気開放させるための第1大気開放チューブ110及び第2大気開放チューブ111を接続し、第1大気開放チューブ及び第2大気開放チューブの途中位置にこれらを選択的に閉塞可能なバルブユニット112をバルブユニット40の代わりに設けたものである。したがって、第1排出チューブ35及び第2排出チューブ37にはこれらを閉塞するバルブユニット40が設けられていない。
【0107】
すなわち、図14に示すように、第1キャップ部31の底壁からは第1突部33と並ぶように第3突部113が下方に向かって突設されており、該第3突部113内には第1キャップ部31の内外を連通する第1連通路113aが上下方向に貫通するように形成されている。一方、第2キャップ部32の底壁からは第2突部34と並ぶように第4突部114が下方に向かって突設されており、該第4突部114内には第2キャップ部32の内外を連通する第2連通路114aが上下方向に貫通するように形成されている。
【0108】
第3突部113には大気開放通路を形成する可撓性の第1大気開放チューブ110の基端側(上流側)が接続され、該第1大気開放チューブ110の他端側(下流側)はフレーム12内に大気開放状態で放置されている。一方、第4突部114には大気開放通路を形成する可撓性の第2大気開放チューブ111の基端側(上流側)が接続され、該第2大気開放チューブ111の他端側(下流側)はフレーム12内に大気開放状態で放置されている。
【0109】
したがって、第1キャップ内空間31aは第1連通路113a及び第1大気開放チューブ110を介して大気と連通するとともに、第2キャップ内空間32aは第2連通路114a及び第2大気開放チューブ111を介して大気と連通している。なお、本実施形態では、第1排出チューブ35が第2排出チューブ37に合流しておらず、1つのチューブポンプ38によって両排出チューブ35,37内がキャップ27側から廃インクタンク36側へ同時に吸引されるようになっている。
【0110】
次に、バルブユニット112の構成について詳述する。
図15及び図16に示すように、バルブユニット112は、上記第1実施形態のバルブユニット40において袋小路部71の底壁のほぼ全体にカバー部材49を上下に貫通する挿通孔115を形成するとともに、第1押圧部材47及び第2押圧部材48を第3押圧部材116及び第4押圧部材117にそれぞれ変更したものである。そして、バルブユニット112内には、第1大気開放チューブ110及び第2大気開放チューブ111が並ぶようにして引き回されている。
【0111】
第3押圧部材116はブロック状の本体部118を備えており、該本体部118の上面における前端縁部及び後端縁部には平板状の第1突出部119及び第2突出部120がそれぞれ立設されている。第1突出部119の上面119aは水平になっており、該上面119aの左側には該上面119aと隣接するように斜面119bが形成されている。斜面119bは上面119aに向かって上昇するように傾斜している。
【0112】
第2突出部120は、第1突出部119を半分の厚さにしたものと同一になっており、左右方向から見た形状は第1突出部119の形状と同一になっている。したがって、第2突出部120の上面120aは水平になっており、該上面120aの左側には該上面120aと隣接するように斜面120bが形成されている。そして、斜面120bは上面120aに向かって上昇するように傾斜している。
【0113】
本体部118の下面における右端部には、下方に向かって突出するとともに前後方向に向かって延びる凸条121が設けられている。凸条121は、左右方向の幅が先端部(下端部)に行くにつれて徐々に狭くなっており、先端(下端)は丸みを帯びている。そして、凸条121の先端は、ケース部材46における隙間55及び切欠凹部58間において第1大気開放チューブ110の上面に当接している。
【0114】
一方、第4押圧部材117はブロック状の本体部122を備えており、該本体部122の上面における前端縁部及び後端縁部には平板状の第3突出部123及び第4突出部124がそれぞれ立設されている。第3突出部123は第2突出部120と同一形状になっているとともに、第4突出部124は第1突出部119と同一形状になっている。
【0115】
第3突出部123の上面123aは水平になっており、該上面123aの左側には該上面123aと隣接するように斜面123bが形成されている。斜面123bは上面123aに向かって上昇するように傾斜している。第4突出部124の上面124aは水平になっており、該上面124aの左側には該上面124aと隣接するように斜面124bが形成されている。そして、斜面124bは上面124aに向かって上昇するように傾斜している。
【0116】
本体部122の下面における右端部には、下方に向かって突出するとともに前後方向に向かって延びる凸条125が設けられている。凸条125は、左右方向の幅が先端部(下端部)に行くにつれて徐々に狭くなっており、先端(下端)は丸みを帯びている。そして、凸条125の先端は、ケース部材46における隙間56及び切欠凹部59間において第2大気開放チューブ111の上面に当接している。
【0117】
なお、第3押圧部材116と第4押圧部材117とは、上下方向及び左右方向に広がる鉛直面を対称面として互いに面対称な形状になっている。
図15及び図16に示すように、袋小路部71の挿通孔115には第3押圧部材116の第1突出部119が下側から挿通されている。この場合、第1突出部119の上面119aはカバー部材49の上面よりも若干低い位置に位置している。袋小路部72の挿通孔83には第3押圧部材116の第2突出部120及び第4押圧部材117の第3突出部123が合わせられた状態で下側から挿通されている。この場合、第2突出部120の上面120a及び第3突出部123の上面123aはカバー部材49の上面よりも若干低い位置に位置している。
【0118】
袋小路部73の挿通孔84には第4押圧部材117の第4突出部124が下側から挿通されている。この場合、第4突出部124の上面124aはカバー部材49の上面よりも若干低い位置に位置している。
【0119】
そして、キャリッジ16がホームポジションに移動したときにおいて、揺動部材42のピン部45が袋小路部71内にあるときの該ピン部45の位置は閉塞位置Dとされ、ピン部45が袋小路部72内にあるときの該ピン部45の位置は閉塞位置Eとされ、ピン部45が袋小路部73内にあるときの該ピン部45の位置は閉塞位置Fとされている。
【0120】
したがって、揺動部材42のピン部45が閉塞位置Dにあるときには、該ピン部45が第3押圧部材116を介して第1大気開放チューブ110を押圧して押し潰すことで、該第1大気開放チューブ110内が閉塞される。また、揺動部材42のピン部45が閉塞位置Eにあるときには、該ピン部45が第3押圧部材116及び第4押圧部材117を介して第1大気開放チューブ110及び第2大気開放チューブ111をそれぞれ押圧して押し潰すことで、該第1大気開放チューブ110内及び第2大気開放チューブ111内の双方が閉塞される。
【0121】
さらに、揺動部材42のピン部45が閉塞位置Fにあるときには、該ピン部45が第4押圧部材117を介して第2大気開放チューブ111を押圧して押し潰すことで、該第2大気開放チューブ111内が閉塞される。
【0122】
次に、インクジェット式プリンター11のクリーニング時の作用について説明する。
(全クリーニング)
さて、全ノズル列22A〜22Dの各ノズル22から各インクを吸引する記録ヘッド19の全クリーニングを行う場合には、まず、キャリッジ16をメンテナンス領域MA内のホームポジションに移動させる。すると、キャップ27が記録ヘッド19に当接し、第1キャップ部31がノズル列22Aを囲みながら記録ヘッド19との間で第1キャップ内空間31aを形成するとともに、第2キャップ部32がノズル列22B〜22Dを囲みながら記録ヘッド19との間で第2キャップ内空間32aを形成する。
【0123】
そして、キャリッジ16をホームポジションにて1往復移動させて揺動部材42のピン部45を袋小路部72内の閉塞位置Eに移動させる。すると、ピン部45が第3押圧部材116及び第4押圧部材117を介して第1大気開放チューブ110及び第2大気開放チューブ111をそれぞれ押圧して押し潰すことで、該第1大気開放チューブ110内及び第2大気開放チューブ111内の双方が閉塞された状態となる。
【0124】
この状態でチューブポンプ38を駆動すると、両大気開放チューブ110,111内が同時に吸引されて第1キャップ内空間31a及び第2キャップ内空間32aにそれぞれ負圧が発生する。この負圧により、ノズル列22Aの各ノズル22から増粘したブラックインクが気泡等とともに吸引され、第1キャップ部31及び第1排出チューブ35を介して廃インクタンク36内に排出される。これと同時に、各ノズル列22B〜22Dの各ノズル22から増粘したシアンインク、イエローインク、マゼンタインクがそれぞれ気泡等とともに吸引され、第2キャップ部32及び第2排出チューブ37を介して廃インクタンク36内に排出される。これにより、記録ヘッド19の全ノズル列22A〜22Dの各ノズル22から各インクを吸引する全クリーニングが完了する。
【0125】
(選択クリーニング)
全ノズル列22A〜22Dのうち各ノズル列22B〜22Dの各ノズル22から各インク(カラーインク)を吸引する記録ヘッド19の選択クリーニングを行う場合には、キャリッジ16をホームポジションに移動させて揺動部材42のピン部45を袋小路部71内の閉塞位置Dに移動させる。すると、ピン部45が第3押圧部材116を介して第1大気開放チューブ110を押圧して押し潰すことで、該第1大気開放チューブ110内が閉塞された状態となる。このとき、第2大気開放チューブ111は閉塞されない。
【0126】
この状態でチューブポンプ38を駆動すると、両排出チューブ35,37内が同時に吸引されるが、第1大気開放チューブ110が第3押圧部材116によって閉塞されているとともに第2大気開放チューブ111が閉塞されていないため、両キャップ内空間31a,32aのうち第2キャップ内空間32aのみに負圧が発生する。このとき、第1キャップ内空間31aには僅かな負圧が発生するが、この負圧はノズル列22Aの各ノズル22のメニスカスに影響を及ぼす程のものではない。
【0127】
そして、第2キャップ内空間32aの負圧により、各ノズル列22B〜22Dの各ノズル22から増粘したシアンインク、イエローインク、マゼンタインクがそれぞれ気泡等とともに吸引され、第2キャップ部32及び第2排出チューブ37を介して廃インクタンク36内に排出される。これにより、全ノズル列22A〜22Dのうち各ノズル列22B〜22Dの各ノズル22から各インク(カラーインク)を吸引する記録ヘッド19の選択クリーニングが完了する。
【0128】
また、全ノズル列22A〜22Dのうちノズル列22Aの各ノズル22からブラックインクを吸引する記録ヘッド19の選択クリーニングを行う場合には、キャリッジ16をホームポジションに移動させた後にホームポジションにて2往復移動させて揺動部材42のピン部45を袋小路部73内の閉塞位置Fに移動させる。すると、ピン部45が第4押圧部材117を介して第2大気開放チューブ111を押圧して押し潰すことで、該第2大気開放チューブ111内が閉塞された状態となる。このとき、第1大気開放チューブ110は閉塞されない。
【0129】
この状態でチューブポンプ38を駆動すると、両排出チューブ35,37内が同時に吸引されるが、第2大気開放チューブ111が第4押圧部材117によって閉塞されているとともに第1大気開放チューブ110が閉塞されていないため、両キャップ内空間31a,32aのうち第1キャップ内空間31aのみに負圧が発生する。このとき、第2キャップ内空間32aには僅かな負圧が発生するが、この負圧は各ノズル列22B〜22Dの各ノズル22のメニスカスに影響を及ぼす程のものではない。
【0130】
そして、第1キャップ内空間31aの負圧により、ノズル列22Aの各ノズル22から増粘したブラックインクが気泡等とともに吸引され、第1キャップ部31及び第1排出チューブ35を介して廃インクタンク36内に排出される。これにより、全ノズル列22A〜22Dのうちノズル列22Aの各ノズル22からブラックインクを吸引する記録ヘッド19の選択クリーニングが完了する。
【0131】
以上、詳述した第3実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(7)メンテナンス領域MA内において、ホームポジションを基点としてキャリッジ16を左右に往復移動させることで、各カム面79b,81,80b,82の作用により、揺動部材42のピン部45を、閉塞位置Dから閉塞位置Eへ、閉塞位置Eから閉塞位置Fへと、キャリッジ16の移動方向及びキャップ27が記録ヘッド19へ当接する方向と垂直な方向に順次導くことができる。すなわち、両大気開放チューブ110,111の閉塞状態を、既存のメンテナンス領域でキャリッジ16を左右に往復移動させるだけで容易に切り換えることができる。したがって、キャリッジ16の移動範囲を広げることなく両大気開放チューブ110,111内を選択的に閉塞することができるので、両キャップ内空間31a,32aを選択的に密閉することができる。この結果、両キャップ内空間31a,32aをチューブポンプ38によって同時に吸引することで、両キャップ内空間31a,32aに選択的に負圧を発生させることができる。よって、インクジェット式プリンター11を大型化することなく、ブラックインクとカラーインクとの間で選択的にクリーニングを行うことができる。
【0132】
(第4実施形態)
以下、本発明の第4実施形態を上記第1実施形態と異なる点を中心に説明する。
この第4実施形態は、図17に示すように、上記第1実施形態におけるバルブユニット40において、第1押圧部材47の突出部61の斜面61bを互いに傾斜角度の異なる2つの斜面61ba及び斜面61bbに変更するとともに、第2押圧部材48の突出部64の斜面64bを互いに傾斜角度の異なる斜面64ba及び斜面64bbに変更したものである。
【0133】
図17に示すように、各斜面61ba,61bb,64ba,64bbは、右側に向かって上昇するように傾斜しているとともに、摺動面を構成している。両斜面61ba,64baの水平面に対する傾斜角度は同じになっているとともに、両斜面61bb,64bbの水平面に対する傾斜角度は同じになっている。両斜面61ba,64baは、それぞれ両斜面61bb,64bbの左側に隣接して配置されており、両斜面61bb,64bbよりも水平面に対する傾斜角度が大きくなるように設定されている。本実施形態では、両斜面61ba,64baの水平面に対する傾斜角度は45度に設定されているとともに、両斜面61bb,64bbの水平面に対する傾斜角度は10度に設定されている。
【0134】
さて、第1排出チューブ35内の吸引通路(空間)を閉塞する場合には、キャリッジ16を往復移動させて、ピン部45を袋小路部72内の閉塞位置Bに向かって移動させる。すると、図17に示すように、ピン部45が第1押圧部材47の突出部61の斜面61baを左側から右側に向かって摺動し、この摺動にともなって第1押圧部材47が下方に向かって押し下げられる。これにより、第1排出チューブ35は、第1押圧部材47によって押圧されて、図18(a)に示すような断面略真円状から図18(b)に示すような断面略楕円状になる。
【0135】
引き続き、ピン部45が斜面61baを左側から右側に向かって摺動し、該ピン部45が斜面61baと斜面61bbとの境界Xに差し掛かると、第1排出チューブ35は、第1押圧部材47によってさらに押圧されて、図18(c)に示すように、該第1排出チューブ35内の吸引通路がほぼ閉塞される程度まで押し潰される。引き続き、ピン部45が境界Xを越えて斜面61bbを左側から右側に向かって摺動すると、この摺動にともなって第1押圧部材47がさらに下方に向かって押し下げられる。
【0136】
これにより、第1排出チューブ35は、第1押圧部材47によってさらに押圧されて、図18(d)に示すように、該第1排出チューブ35内の吸引通路が完全に閉塞される程度まで押し潰される。引き続き、ピン部45は斜面61bbを左側から右側に向かって摺動するが、該ピン部45が斜面61bbと上面61aとの境界Yに差し掛かるまでは第1押圧部材47が下方に向かって押し下げられ続ける。このため、第1排出チューブ35は、該第1排出チューブ35内の吸引通路が完全に閉塞された後も、第1押圧部材47によってさらに押圧される。
【0137】
ここで、ピン部45が、上記第1実施形態のように、水平面に対する傾斜角度が一定の1つの斜面61bを摺動して上面61aに到達する場合には、第1押圧部材47によって第1排出チューブ35を押圧する押圧量も終始一定となる。そして、第1排出チューブ35が第1押圧部材47によって押し潰される際の該第1排出チューブ35の反力は、第1排出チューブ35内の吸引通路が閉塞されるまでよりも第1排出チューブ35内の吸引通路が閉塞された後の方が大きくなる。なぜなら、第1排出チューブ35内の吸引通路が閉塞されるまでは第1排出チューブ35の吸引通路(内部空間)が押し潰され、第1排出チューブ35内の吸引通路が閉塞された後は、第1排出チューブ35自体(第1排出チューブ35を構成する材料)が押し潰されるからである。
【0138】
このため、第1排出チューブ35内の吸引通路が閉塞された後は、第1押圧部材47が第1排出チューブ35から大きな反力を受けるため、ピン部45にかかる負荷やキャリッジ16が左右方向へ移動する際の負荷(キャリッジモーター18にかかる負荷)が大きくなってしまい、各種部品の耐久性が低下してしまうおそれがある。
【0139】
この点、本実施形態では、斜面61bbが斜面61baよりも傾斜がなだらかであるため、ピン部45が斜面61bbを摺動するときの第1押圧部材47の下方への移動量は、ピン部45が斜面61baを摺動するときの第1押圧部材47の下方への移動量よりも少なくなる。すなわち、第1押圧部材47による第1排出チューブ35の押圧量は、第1排出チューブ35内の吸引通路が閉塞されるまでよりも第1排出チューブ35内の吸引通路が閉塞された後の方が少なくなる。
【0140】
この結果、第1排出チューブ35内の吸引通路が閉塞された後に、第1押圧部材47の第1排出チューブ35から受ける反力が低減されるため、ピン部45にかかる負荷やキャリッジ16が左右方向へ移動する際の負荷(キャリッジモーター18にかかる負荷)が抑制され、各種部品の耐久性が向上される。
【0141】
そして、ピン部45が閉塞位置Bに移動すると、該ピン部45が第1押圧部材47の突出部61の上面61aに完全に乗り上げた状態(図17の2点鎖線で示す状態)となる。この状態では、ピン部45が十分に第1押圧部材47を押し下げているため、第1押圧部材47の凸条62が第1排出チューブ35を完全に押し潰して該第1排出チューブ35内の吸引通路を完全に閉塞している。
【0142】
なお、第2押圧部材48によって第2排出チューブ37を押し潰す場合の作用も、上述した第1押圧部材47によって第1排出チューブ35を押し潰す場合の作用と同じであるため、説明は省略する。
【0143】
以上、詳述した第4実施形態によれば、上記(1)〜(4)の効果に加えて、以下の効果を得ることができる。
(8)斜面61bbが斜面61baよりも傾斜がなだらかであるため、ピン部45が斜面61bbを摺動するときの第1押圧部材47の下方への移動量を、ピン部45が斜面61baを摺動するときの第1押圧部材47の下方への移動量よりも少なくすることができる。すなわち、第1排出チューブ35内の吸引通路が閉塞された後の第1押圧部材47による第1排出チューブ35の押圧量を、第1排出チューブ35内の吸引通路が閉塞されるまでの第1押圧部材47による第1排出チューブ35の押圧量よりも少なくすることができる。この結果、第1排出チューブ35内の吸引通路が閉塞された後において、第1押圧部材47の第1排出チューブ35から受ける反力を低減することができるため、ピン部45にかかる負荷やキャリッジ16が左右方向へ移動する際の負荷(キャリッジモーター18にかかる負荷)を抑制することができ、ひいては各種部品の耐久性を向上することができる。
【0144】
(第5実施形態)
以下、本発明の第5実施形態を上記第1実施形態と異なる点を中心に説明する。
この第5実施形態は、図19に示すように、上記第1実施形態におけるバルブユニット40において、第1押圧部材47及び第2押圧部材48を押圧ユニットとしての第1押圧ユニット130及び第2押圧ユニット131にそれぞれ変更したものである。なお、第1押圧ユニット130と第2押圧ユニット131とは、上下方向及び左右方向と平行な面に関して面対称になっており、これ以外の構成及び作用効果は全く同一であるため、以下の説明は第1押圧ユニット130の場合のみとし、第2押圧ユニット131の説明は省略する。
【0145】
図19及び図20に示すように、第1押圧ユニット130は、第1の部材としてのベース部材140と、第2の部材としてのプッシュ部材141と、ベース部材140とプッシュ部材141との間に保持される圧縮ばね142とを備えている。ベース部材140は、上下方向及び左右方向に平行な摺動板143と、該摺動板143の前面に設けられるとともに前側及び下側が開口した矩形箱状をなす収容部144とを備えている。
【0146】
摺動板143の上面143aは水平になっており、該上面143aの左側には該上面143aと隣接するように斜面143bが形成されている。この斜面143bは上面143aに向かって上昇するように傾斜している。収容部144の左右両側壁には、上下方向に長い長孔144aが該左右両側壁を貫通するように形成されている。収容部144内には、プッシュ部材141が該収容部144内において上下方向に摺動可能に収容されている。
【0147】
プッシュ部材141は、ブロック状の本体部141aと、該本体部141aの上面141bにおける左右両端部に立設された一対の矩形板状をなす立設部141cと、該本体部141aの下面における右寄りの位置に下側に向かって突設されるとともに前後方向に延びる凸条141dとを備えている。凸条141dは、収容部144の下側の開口から該収容部144外へ突出しており、その丸みを帯びた下端は第1排出チューブ35に当接している。
【0148】
前後方向における両立設部141cの外側には突起141eがそれぞれ設けられており、該両突起141eは収容部144の左右両側壁に設けられた両長孔144aにそれぞれ摺動可能な状態で挿入されている。この場合、両突起141eの先端面と収容部144の左右両側壁の外面とは面一になっている。収容部144の上壁の内面144bとプッシュ部材141の本体部141aの上面141bとの間には、上面141bと内面144bとを離間させる方向に付勢するコイル状の圧縮ばね142が介在している。
【0149】
圧縮ばね142は、第1排出チューブ35内の吸引通路(空間)が閉塞されるまでプッシュ部材141が該第1排出チューブ35を押し潰すのに必要な押圧荷重を発生した状態(若干圧縮された状態)で上面141bと内面144bとの間に保持されている。したがって、プッシュ部材141の両突起141eの下面は、通常、圧縮ばね142の付勢力により、収容部144の両長孔144aの下端面に圧接している。
【0150】
また、圧縮ばね142は、第1排出チューブ35内の吸引通路(空間)が閉塞されるまでプッシュ部材141が該第1排出チューブ35を押し潰した後にさらに該第1排出チューブ35を押し潰すのに必要な単位変位量当たりの押圧荷重よりも、単位変位量当たりに発生する押圧荷重(ばね定数)が小さくなるように設定されている。
【0151】
すなわち、圧縮ばね142は、第1排出チューブ35内の吸引通路が閉塞されるまでプッシュ部材141が該第1排出チューブ35を押し潰す際の該第1排出チューブ35からの反力を受けた場合には圧縮されず、第1排出チューブ35内の吸引通路が閉塞されるまでプッシュ部材141が該第1排出チューブ35を押し潰した後にさらに該第1排出チューブ35を押し潰す際の該第1排出チューブ35からの反力を受けた場合には圧縮されるようになっている。
【0152】
さて、第1排出チューブ35内の吸引通路(空間)を閉塞する場合には、キャリッジ16を往復移動させて、ピン部45を袋小路部72内の閉塞位置Bに向かって移動させる。すると、図20に示すように、ピン部45が第1押圧ユニット130の摺動板143の斜面143bを左側から右側に向かって摺動し、この摺動にともなって第1押圧ユニット130が下方に向かって押し下げられる。これにより、第1排出チューブ35は、第1押圧ユニット130のプッシュ部材141によって押圧されて、図18(a)に示すような断面略真円状から図18(b)に示すような断面略楕円状になる。
【0153】
引き続き、ピン部45が斜面143bを左側から右側に向かって摺動すると、第1排出チューブ35は、プッシュ部材141によってさらに押圧されて、図18(c)に示すように、該第1排出チューブ35内の吸引通路がほぼ閉塞される程度まで押し潰される。引き続き、ピン部45が斜面143bを左側から右側に向かって摺動すると、この摺動にともなって第1押圧ユニット130がさらに下方に向かって押し下げられる。
【0154】
これにより、第1排出チューブ35は、プッシュ部材141によってさらに押圧されて、図18(d)に示すように、該第1排出チューブ35内の吸引通路が完全に閉塞される程度まで押し潰される。なお、ここまでは、圧縮ばね142は、第1排出チューブ35内の吸引通路(空間)が閉塞されるまでプッシュ部材141が該第1排出チューブ35を押し潰すのに必要な押圧荷重を発生させているため、プッシュ部材141を介して第1排出チューブ35の反力を受けても、該反力によって圧縮されることはない。
【0155】
引き続き、ピン部45は斜面143bを左側から右側に向かって摺動するが、該ピン部45が上面143aに差し掛かるまでは第1押圧ユニット130が下方に向かって押し下げられ続ける。このため、第1排出チューブ35は、該第1排出チューブ35内の吸引通路が完全に閉塞された後も、プッシュ部材141によってさらに押圧される。
【0156】
ここで、第1排出チューブ35が第1押圧ユニット130(プッシュ部材141)によって押し潰される際の該第1排出チューブ35の反力は、第1排出チューブ35内の吸引通路が閉塞されるまでよりも第1排出チューブ35内の吸引通路が閉塞された後の方が大きくなる。なぜなら、第1排出チューブ35内の吸引通路が閉塞されるまでは第1排出チューブ35の吸引通路(内部空間)が押し潰され、第1排出チューブ35内の吸引通路が閉塞された後は、第1排出チューブ35自体(第1排出チューブ35を構成する材料)が押し潰されるからである。
【0157】
このため、上記第1実施形態の場合では、第1排出チューブ35内の吸引通路が閉塞された後は、第1押圧部材47が第1排出チューブ35から大きな反力を受けるため、ピン部45にかかる負荷やキャリッジ16が左右方向へ移動する際の負荷(キャリッジモーター18にかかる負荷)が大きくなってしまい、各種部品の耐久性が低下してしまうおそれがある。
【0158】
この点、本実施形態では、圧縮ばね142が、第1排出チューブ35内の吸引通路(空間)が閉塞されるまでプッシュ部材141が該第1排出チューブ35を押し潰した後にさらに該第1排出チューブ35を押し潰すのに必要な単位変位量当たりの押圧荷重よりも、単位変位量当たりに発生する押圧荷重(ばね定数)が小さくなるように設定されている。このため、第1排出チューブ35内の吸引通路が閉塞された後にさらに第1押圧ユニット130が下方に向かって押し下げられても、圧縮ばね142は、プッシュ部材141を介してこのときの第1排出チューブ35の反力を受けると、該反力によって圧縮される。
【0159】
すなわち、第1排出チューブ35内の吸引通路が閉塞された後において、さらに第1押圧ユニット130が下方に向かって押し下げられても、このさらに押し下げられた分の第1押圧ユニット130による第1排出チューブ35の押圧量は、圧縮ばね142が圧縮されることで低減される。
【0160】
この結果、第1排出チューブ35内の吸引通路が閉塞された後に、第1押圧ユニット130(プッシュ部材141)の該第1排出チューブ35から受ける反力が低減されるため、ピン部45にかかる負荷やキャリッジ16が左右方向へ移動する際の負荷(キャリッジモーター18にかかる負荷)が抑制され、各種部品の耐久性が向上される。
【0161】
そして、ピン部45が閉塞位置Bに移動すると、該ピン部45が第1押圧ユニット130の摺動板143の上面143aに完全に乗り上げた状態(図20の2点鎖線で示す状態)となる。この状態では、ピン部45が十分に第1押圧ユニット130を押し下げているため、第1押圧ユニット130の凸条141dが第1排出チューブ35を完全に押し潰して該第1排出チューブ35内の吸引通路を完全に閉塞している。
【0162】
以上、詳述した第5実施形態によれば、上記(1)〜(4)の効果に加えて、以下の効果を得ることができる。
(9)圧縮ばね142が、第1排出チューブ35内の吸引通路(空間)が閉塞されるまでプッシュ部材141が該第1排出チューブ35を押し潰した後にさらに該第1排出チューブ35を押し潰すのに必要な単位変位量当たりの押圧荷重よりも、単位変位量当たりに発生する押圧荷重(ばね定数)が小さくなるように設定されている。このため、第1排出チューブ35内の吸引通路が閉塞された後にさらに第1押圧ユニット130が下方に向かって押し下げられても、このさらに押し下げられた分の第1押圧ユニット130による第1排出チューブ35の押圧量を、圧縮ばね142が圧縮されることで吸収して低減することができる。この結果、第1排出チューブ35内の吸引通路が閉塞された後に、第1押圧ユニット130(プッシュ部材141)の該第1排出チューブ35から受ける反力を低減することができるので、ピン部45にかかる負荷やキャリッジ16が左右方向へ移動する際の負荷(キャリッジモーター18にかかる負荷)を抑制することができ、ひいては各種部品の耐久性を向上させることができる。
(変更例)
なお、上記各実施形態は以下のように変更してもよい。
【0163】
・キャップホルダ26とともにキャップ27を昇降させるための昇降装置を設けてもよい。この場合、キャップホルダ26上の係合棒28は省略されるとともに、両支持板24の各貫通溝25は上下に延びるように形成される。
【0164】
・メンテナンス領域MA内におけるホームポジションを基点としたキャリッジ16の左右方向の往復移動中に、必ずしもキャップ27が記録ヘッド19に当接した状態を維持する必要はない。すなわち、揺動部材42のピン部45が、少なくとも非閉塞位置A、閉塞位置B、及び閉塞位置Cのうちの何れかに位置している間だけキャップ27が記録ヘッド19に当接していればよい。
【0165】
・バルブユニット40,90は横に倒した状態で配置してもよい。この場合、ピン部45側が下がるように揺動部材42が重力によって傾動されないように、揺動部材42を水平位置で維持するべく上方に向かって付勢する付勢手段を設ける必要がある。
【0166】
・第1押圧部材47及び第2押圧部材48のうちの少なくとも一方を省略してもよい。この場合、第1押圧部材47及び第2押圧部材48のうち省略した少なくとも一方と対応する両排出チューブ35,37のうちの少なくとも一方は、バルブユニット40,90内において水平面に対して交差するように配置され、揺動部材42のピン部45によって直接押し潰されて閉塞される。
【0167】
・揺動部材42は、揺動するのではなく、キャリッジ16の移動方向である左右方向及びキャップ27が記録ヘッド19へ当接する方向である上下方向に対して垂直な方向である前後方向に沿って直線的に移動するように構成してもよい。
【0168】
・キャップ27内を左右方向に4室に隔絶し、各室が各ノズル列22A〜22Dを個別に覆うように、該キャップ27が記録ヘッド19に当接するように構成してもよい。この場合、バルブユニット40,90は、キャップ27の各室から延びる4本の排出チューブが揺動部材42のピン部45によって4つの押圧部材を介してそれぞれ選択的に押し潰されるように、カバー部材49,92の凹溝70の袋小路部を5つに増やす必要がある。
【0169】
同様に、各ノズル列を5つ以上にし、内部が任意の数の室に隔絶されたキャップ27によって該各ノズル列が任意の数ずつ覆われるようにメンテナンス機構23を構成してもよい。この場合、キャップ27の各室が覆うノズル列の数は、互いに同じであってもよいし、互いに異なっていてもよい。
【0170】
・第3実施形態のバルブユニット112を第2実施形態のバルブユニット90と同様の機構にしてもよい。すなわち、第3実施形態のバルブユニット112において、第2実施形態のバルブユニット90と同様に、カバー部材49の上面側を覆うスライダ93を設け、該スライダ93に揺動部材42を揺動可能に支持するようにしてもよい。
【0171】
・第4実施形態において、各斜面61ba,61bb,64ba,64bbのうち少なくとも1つを曲面にしてもよい。
・第4実施形態において、第1押圧部材47及び第2押圧部材48の摺動面は、互いに水平面に対する傾斜角度が異なる3つ以上の連続する斜面によってそれぞれ構成してもよい。
【0172】
・第5実施形態において、斜面143bを、第4実施形態と同様に、互いに水平面に対する傾斜角度が異なる複数の連続する斜面によって構成してもよい。
・上記各実施形態では、インクジェット式プリンター11が採用されているが、インク以外の他の流体を噴射したり吐出したりする流体噴射装置を採用してもよい。また、微小量の液滴を吐出させる液体噴射ヘッド等を備える各種の液体噴射装置に流用可能である。この場合、液滴とは、上記液体噴射装置から吐出される液体の状態を言い、粒状、涙状、糸状に尾を引くものも含むものとする。また、ここでいう液体とは、液体噴射装置が噴射させることができるような材料であればよい。例えば、物質が液相であるときの状態のものであればよく、粘性の高い又は低い液状体、ゾル、ゲル水、その他の無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)のような流状体、また物質の一状態としての液体のみならず、顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散または混合されたものなどを含む。また、液体の代表的な例としては上記実施形態で説明したようなインクや液晶等が挙げられる。ここで、インクとは一般的な水性インクおよび油性インク並びにジェルインク、ホットメルトインク等の各種液体組成物を包含するものとする。液体噴射装置の具体例としては、例えば液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ、面発光ディスプレイ、カラーフィルタの製造などに用いられる電極材や色材などの材料を分散または溶解のかたちで含む液体を噴射する液体噴射装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する液体噴射装置、精密ピペットとして用いられ試料となる液体を噴射する液体噴射装置、捺染装置やマイクロディスペンサ等であってもよい。さらに、時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を噴射する液体噴射装置、光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂等の透明樹脂液を基板上に噴射する液体噴射装置、基板などをエッチングするために酸又はアルカリ等のエッチング液を噴射する液体噴射装置を採用してもよい。そして、これらのうちいずれか一種の液体噴射装置に本発明を適用することができる。
【0173】
さらに、上記各実施形態より把握できる技術的思想について以下に記載する。
(イ)複数のノズル群から流体を噴射する流体噴射ヘッドを支持して往復移動可能に構成されたキャリッジと、
前記各ノズル群を個別に囲うように前記流体噴射ヘッドに当接して複数のキャップ内空間を形成するキャップ手段と、
前記各キャップ内空間を、それぞれ吸引通路を介して吸引可能な吸引手段と
を備えた流体噴射装置において、
前記流体噴射ヘッドのメンテナンスを行うためのメンテナンス領域での前記キャリッジの往復移動に伴って前記各吸引通路を選択的に閉塞可能な選択閉塞手段を備えたことを特徴とする流体噴射装置。
【0174】
この構成によれば、メンテナンス領域でのキャリッジの往復移動に伴って選択閉塞手段により各吸引通路を選択的に閉塞可能であるため、キャリッジの移動範囲を広げることなく各吸引通路を選択的に閉塞することが可能となる。したがって、大型化することなく、複数のキャップ内空間を選択的に吸引することが可能となる。
【符号の説明】
【0175】
11…流体噴射装置としてのインクジェット式プリンター、16…キャリッジ、19…流体噴射ヘッドとしての記録ヘッド、22…ノズル、27…キャップ手段を構成するキャップ部材としてのキャップ、31a…第1キャップ内空間、32a…第2キャップ内空間、35…吸引通路を構成するチューブとしての第1排出チューブ、37…吸引通路を構成するチューブとしての第2排出チューブ、38…吸引手段としてのチューブポンプ、40,90,112…選択閉塞手段を構成するバルブユニット、42…選択閉塞手段を構成する揺動部材、45…閉塞部材としてのピン部、47…押圧部材としての第1押圧部材、48…押圧部材としての第2押圧部材、61ba,61bb,64ba,64bb…摺動面を構成する斜面、71〜73…選択通路としての袋小路部、79b…第1カム面、80b…第2カム面、81…第3カム面、82…第4カム面、110…大気開放通路を構成する第1大気開放チューブ、111…大気開放通路を構成する第2大気開放チューブ、116…押圧部材としての第3押圧部材、117…押圧部材としての第4押圧部材、130…押圧ユニットとしての第1押圧ユニット、131…押圧ユニットとしての第2押圧ユニット、140…第1の部材としてのベース部材、141…第2の部材としてのプッシュ部材、142…圧縮ばね、B,C,D,E,F…閉塞位置、MA…メンテナンス領域。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のノズルから流体を噴射する流体噴射ヘッドを支持して往復移動可能に構成されたキャリッジと、
前記各ノズルを個別に囲うように前記流体噴射ヘッドに当接して複数のキャップ内空間を形成するキャップ手段と、
前記各キャップ内空間を、それぞれ可撓性を有するチューブによって形成される吸引通路を介して吸引可能な吸引手段と
を備えた流体噴射装置において、
前記流体噴射ヘッドのメンテナンスを行うためのメンテナンス領域での前記キャリッジの往復移動に伴って前記各吸引通路を選択的に閉塞可能な選択閉塞手段を備え、
前記選択閉塞手段は、
前記メンテナンス領域における前記キャリッジの往復移動に伴って往復移動することにより、前記各吸引通路を選択的に閉塞する位置に配置された前記各チューブを押圧可能な押圧ユニットを介して該チューブを押し潰すことで、前記各吸引通路を選択的に閉塞する閉塞部材と、
前記閉塞部材が往復移動する度に該閉塞部材と係合して前記各吸引通路を閉塞するそれぞれの閉塞位置に該閉塞部材を順次導くカム面とを備え、
前記押圧ユニットは、
前記キャリッジの往復移動に伴って前記閉塞部材が摺動することで、該押圧ユニットが前記チューブを押圧する方向に移動するように構成された摺動面を有する第1の部材と、
該第1の部材と前記チューブとの間に配置されるとともに該チューブを接触押圧することが可能な第2の部材と、
前記チューブを押し潰して前記吸引通路を閉塞するために必要な押圧荷重を発生した状態で前記第1の部材と前記第2の部材との間に保持されるとともに、前記第2の部材が前記チューブを押圧して前記吸引通路を閉塞した後にさらに該チューブを押し潰すために必要な単位変位量当たりの荷重よりも単位変位量当たりに発生する荷重が小さくなるように設定された圧縮ばねと
を備えていることを特徴とする流体噴射装置。
【請求項2】
複数のノズルから流体を噴射する流体噴射ヘッドを支持して往復移動可能に構成されたキャリッジと、
前記各ノズルを個別に囲うように前記流体噴射ヘッドに当接して複数のキャップ内空間を形成するキャップ手段と、
前記各キャップ内空間を、それぞれ可撓性を有するチューブによって形成される吸引通路を介して吸引可能な吸引手段と
を備えた流体噴射装置において、
前記流体噴射ヘッドのメンテナンスを行うためのメンテナンス領域での前記キャリッジの往復移動に伴って前記各吸引通路を選択的に閉塞可能な選択閉塞手段を備え、
前記選択閉塞手段は、
前記メンテナンス領域における前記キャリッジの往復移動に伴って往復移動することにより、前記各吸引通路を選択的に閉塞する位置に配置された前記各チューブを押圧可能な押圧部材を介して該チューブを押し潰すことで、前記各吸引通路を選択的に閉塞する閉塞部材と、
前記閉塞部材が往復移動する度に該閉塞部材と係合して前記各吸引通路を閉塞するそれぞれの閉塞位置に該閉塞部材を順次導くカム面とを備え、
前記押圧部材は、前記キャリッジの往復移動に伴って前記閉塞部材が摺動することで、該押圧部材が前記チューブを押圧する方向に移動するように構成された摺動面を有し、
該摺動面は、前記閉塞部材の摺動により前記押圧部材が前記チューブを押圧する方向へ移動する際の移動量が互いに異なるように設定された複数の面によって構成され、
該各面は、前記押圧部材が前記チューブを押圧する押圧量が増加するに連れて該押圧部材が前記チューブを押圧する方向に移動する移動量が減少するように配置されていることを特徴とする流体噴射装置。
【請求項3】
複数のノズルから流体を噴射する流体噴射ヘッドを支持して往復移動可能に構成されたキャリッジと、
前記各ノズルを個別に囲うように前記流体噴射ヘッドに当接して複数のキャップ内空間を形成するキャップ手段と、
前記各キャップ内空間を、それぞれ可撓性を有するチューブによって形成される吸引通路を介して吸引可能な吸引手段と
を備えた流体噴射装置において、
前記流体噴射ヘッドのメンテナンスを行うためのメンテナンス領域での前記キャリッジの往復移動に伴って前記各吸引通路を選択的に閉塞可能な選択閉塞手段を備え、
前記選択閉塞手段は、
前記メンテナンス領域における前記キャリッジの往復移動に伴って往復移動することにより、前記各吸引通路を選択的に閉塞する位置に配置された前記各チューブを押圧可能な押圧ユニットを介して該チューブを押し潰すことで、前記各吸引通路を選択的に閉塞する閉塞部材と、
前記閉塞部材が往復移動する度に該閉塞部材と係合して前記各吸引通路を閉塞するそれぞれの閉塞位置に該閉塞部材を順次導くカム面とを備え、
前記押圧ユニットは、
前記キャリッジの往復移動に伴って前記閉塞部材が摺動することで、該押圧ユニットが前記チューブを押圧する方向に移動するように構成された摺動面を有する第1の部材と、
該第1の部材と前記チューブとの間に配置されるとともに該チューブを接触押圧することが可能な第2の部材と、
前記チューブを押し潰して前記吸引通路を閉塞するために必要な押圧荷重を発生した状態で前記第1の部材と前記第2の部材との間に保持されるとともに、前記第2の部材が前記チューブを押圧して前記吸引通路を閉塞した後にさらに該チューブを押し潰すために必要な単位変位量当たりの荷重よりも単位変位量当たりに発生する荷重が小さくなるように設定された圧縮ばねとを備え、
前記摺動面は、前記閉塞部材の摺動により前記押圧ユニットが前記チューブを押圧する方向へ移動する際の移動量が互いに異なるように設定された複数の面によって構成され、
該各面は、前記押圧ユニットが前記チューブを押圧する押圧量が増加するに連れて該押圧ユニットが前記チューブを押圧する方向に移動する移動量が減少するように配置されていることを備えていることを特徴とする流体噴射装置。
【請求項4】
前記キャップ手段は、前記キャリッジが前記メンテナンス領域にて移動する際に該キャリッジと係合することで、該キャリッジの移動方向へ移動しながら前記流体噴射ヘッドに対して近接する方向に移動して前記流体噴射ヘッドに当接するキャップ部材を備え、
前記メンテナンス領域における前記キャリッジの往復移動中は前記キャップ部材の前記流体噴射ヘッドへの当接状態が維持されることを特徴とする請求項1〜請求項3のうちいずれか一項に記載の流体噴射装置。
【請求項5】
複数のノズルから流体を噴射する流体噴射ヘッドを支持して往復移動可能に構成されたキャリッジと、
前記各ノズルを個別に囲うように前記流体噴射ヘッドに当接して複数のキャップ内空間を形成するキャップ手段と、
前記各キャップ内空間を、それぞれ可撓性を有するチューブによって形成される吸引通路を介して吸引可能な吸引手段と
を備えた流体噴射装置において、
前記流体噴射ヘッドのメンテナンスを行うためのメンテナンス領域での前記キャリッジの往復移動に伴って前記各吸引通路を選択的に閉塞可能な選択閉塞手段を備え、
前記選択閉塞手段は、
前記キャリッジと共に移動し、且つ前記キャリッジの移動方向及び前記キャップ手段が前記流体噴射ヘッドへ当接する方向に対して略垂直な方向に移動可能であって、前記各吸引通路を選択的に閉塞する位置に配置された前記各チューブを押圧可能な押圧ユニットを介して該チューブを押し潰すことで、前記各吸引通路を選択的に閉塞する閉塞部材と、
前記キャリッジが前記メンテナンス領域にて往復移動する度に前記閉塞部材と係合して該閉塞部材を前記キャリッジの移動方向及び前記キャップ手段が前記流体噴射ヘッドへ当接する方向に対して略垂直な方向に移動させるカム面と、
前記キャリッジの移動方向及び前記キャップ手段が前記流体噴射ヘッドへ当接する方向に対して略垂直な方向に移動した前記閉塞部材が進入するとともに、前記閉塞部材が進入した場合に該閉塞部材が前記各吸引通路を閉塞するか否かを選択するように予め設定された複数の選択通路とを備え、
前記押圧ユニットは、
前記キャリッジの往復移動に伴って前記閉塞部材が摺動することで、該押圧ユニットが前記チューブを押圧する方向に移動するように構成された摺動面を有する第1の部材と、
該第1の部材と前記チューブとの間に配置されるとともに該チューブを接触押圧することが可能な第2の部材と、
前記チューブを押し潰して前記吸引通路を閉塞するために必要な押圧荷重を発生した状態で前記第1の部材と前記第2の部材との間に保持されるとともに、前記第2の部材が前記チューブを押圧して前記吸引通路を閉塞した後にさらに該チューブを押し潰すために必要な単位変位量当たりの荷重よりも単位変位量当たりに発生する荷重が小さくなるように設定された圧縮ばねと
を備えていることを特徴とする流体噴射装置。
【請求項6】
複数のノズルから流体を噴射する流体噴射ヘッドを支持して往復移動可能に構成されたキャリッジと、
前記各ノズルを個別に囲うように前記流体噴射ヘッドに当接して複数のキャップ内空間を形成するキャップ手段と、
前記各キャップ内空間を、それぞれ可撓性を有するチューブによって形成される吸引通路を介して吸引可能な吸引手段と
を備えた流体噴射装置において、
前記流体噴射ヘッドのメンテナンスを行うためのメンテナンス領域での前記キャリッジの往復移動に伴って前記各吸引通路を選択的に閉塞可能な選択閉塞手段を備え、
前記選択閉塞手段は、
前記キャリッジと共に移動し、且つ前記キャリッジの移動方向及び前記キャップ手段が前記流体噴射ヘッドへ当接する方向に対して略垂直な方向に移動可能であって、前記各吸引通路を選択的に閉塞する位置に配置された前記各チューブを押圧可能な押圧部材を介して該チューブを押し潰すことで、前記各吸引通路を選択的に閉塞する閉塞部材と、
前記キャリッジが前記メンテナンス領域にて往復移動する度に前記閉塞部材と係合して該閉塞部材を前記キャリッジの移動方向及び前記キャップ手段が前記流体噴射ヘッドへ当接する方向に対して略垂直な方向に移動させるカム面と、
前記キャリッジの移動方向及び前記キャップ手段が前記流体噴射ヘッドへ当接する方向に対して略垂直な方向に移動した前記閉塞部材が進入するとともに、前記閉塞部材が進入した場合に該閉塞部材が前記各吸引通路を閉塞するか否かを選択するように予め設定された複数の選択通路とを備え、
前記押圧部材は、前記キャリッジの往復移動に伴って前記閉塞部材が摺動することで、該押圧部材が前記チューブを押圧する方向に移動するように構成された摺動面を有し、
該摺動面は、前記閉塞部材の摺動により前記押圧部材が前記チューブを押圧する方向へ移動する際の移動量が互いに異なるように設定された複数の面によって構成され、
該各面は、前記押圧部材が前記チューブを押圧する押圧量が増加するに連れて該押圧部材が前記チューブを押圧する方向に移動する移動量が減少するように配置されていることを特徴とする流体噴射装置。
【請求項7】
複数のノズルから流体を噴射する流体噴射ヘッドを支持して往復移動可能に構成されたキャリッジと、
前記各ノズルを個別に囲うように前記流体噴射ヘッドに当接して複数のキャップ内空間を形成するキャップ手段と、
前記各キャップ内空間を、それぞれ可撓性を有するチューブによって形成される吸引通路を介して吸引可能な吸引手段と
を備えた流体噴射装置において、
前記流体噴射ヘッドのメンテナンスを行うためのメンテナンス領域での前記キャリッジの往復移動に伴って前記各吸引通路を選択的に閉塞可能な選択閉塞手段を備え、
前記選択閉塞手段は、
前記キャリッジと共に移動し、且つ前記キャリッジの移動方向及び前記キャップ手段が前記流体噴射ヘッドへ当接する方向に対して略垂直な方向に移動可能であって、前記各吸引通路を選択的に閉塞する位置に配置された前記各チューブを押圧可能な押圧ユニットを介して該チューブを押し潰すことで、前記各吸引通路を選択的に閉塞する閉塞部材と、
前記キャリッジが前記メンテナンス領域にて往復移動する度に前記閉塞部材と係合して該閉塞部材を前記キャリッジの移動方向及び前記キャップ手段が前記流体噴射ヘッドへ当接する方向に対して略垂直な方向に移動させるカム面と、
前記キャリッジの移動方向及び前記キャップ手段が前記流体噴射ヘッドへ当接する方向に対して略垂直な方向に移動した前記閉塞部材が進入するとともに、前記閉塞部材が進入した場合に該閉塞部材が前記各吸引通路を閉塞するか否かを選択するように予め設定された複数の選択通路とを備え、
前記押圧ユニットは、
前記キャリッジの往復移動に伴って前記閉塞部材が摺動することで、該押圧ユニットが前記チューブを押圧する方向に移動するように構成された摺動面を有する第1の部材と、
該第1の部材と前記チューブとの間に配置されるとともに該チューブを接触押圧することが可能な第2の部材と、
前記チューブを押し潰して前記吸引通路を閉塞するために必要な押圧荷重を発生した状態で前記第1の部材と前記第2の部材との間に保持されるとともに、前記第2の部材が前記チューブを押圧して前記吸引通路を閉塞した後にさらに該チューブを押し潰すために必要な単位変位量当たりの荷重よりも単位変位量当たりに発生する荷重が小さくなるように設定された圧縮ばねとを備え、
前記摺動面は、前記閉塞部材の摺動により前記押圧ユニットが前記チューブを押圧する方向へ移動する際の移動量が互いに異なるように設定された複数の面によって構成され、
該各面は、前記押圧ユニットが前記チューブを押圧する押圧量が増加するに連れて該押圧ユニットが前記チューブを押圧する方向に移動する移動量が減少するように配置されていることを備えていることを特徴とする流体噴射装置。
【請求項8】
前記各選択通路は前記閉塞部材が進入した際に前記チューブを押圧可能な部材が配置された選択通路と該部材が配置されていない選択通路とを含み、
前記メンテナンス領域での前記キャリッジの往復移動により、前記閉塞部材が進入すべき選択通路を前記各選択通路の中から選択することを特徴とする請求項5〜請求項7のうちいずれか一項に記載の流体噴射装置。
【請求項1】
複数のノズルから流体を噴射する流体噴射ヘッドを支持して往復移動可能に構成されたキャリッジと、
前記各ノズルを個別に囲うように前記流体噴射ヘッドに当接して複数のキャップ内空間を形成するキャップ手段と、
前記各キャップ内空間を、それぞれ可撓性を有するチューブによって形成される吸引通路を介して吸引可能な吸引手段と
を備えた流体噴射装置において、
前記流体噴射ヘッドのメンテナンスを行うためのメンテナンス領域での前記キャリッジの往復移動に伴って前記各吸引通路を選択的に閉塞可能な選択閉塞手段を備え、
前記選択閉塞手段は、
前記メンテナンス領域における前記キャリッジの往復移動に伴って往復移動することにより、前記各吸引通路を選択的に閉塞する位置に配置された前記各チューブを押圧可能な押圧ユニットを介して該チューブを押し潰すことで、前記各吸引通路を選択的に閉塞する閉塞部材と、
前記閉塞部材が往復移動する度に該閉塞部材と係合して前記各吸引通路を閉塞するそれぞれの閉塞位置に該閉塞部材を順次導くカム面とを備え、
前記押圧ユニットは、
前記キャリッジの往復移動に伴って前記閉塞部材が摺動することで、該押圧ユニットが前記チューブを押圧する方向に移動するように構成された摺動面を有する第1の部材と、
該第1の部材と前記チューブとの間に配置されるとともに該チューブを接触押圧することが可能な第2の部材と、
前記チューブを押し潰して前記吸引通路を閉塞するために必要な押圧荷重を発生した状態で前記第1の部材と前記第2の部材との間に保持されるとともに、前記第2の部材が前記チューブを押圧して前記吸引通路を閉塞した後にさらに該チューブを押し潰すために必要な単位変位量当たりの荷重よりも単位変位量当たりに発生する荷重が小さくなるように設定された圧縮ばねと
を備えていることを特徴とする流体噴射装置。
【請求項2】
複数のノズルから流体を噴射する流体噴射ヘッドを支持して往復移動可能に構成されたキャリッジと、
前記各ノズルを個別に囲うように前記流体噴射ヘッドに当接して複数のキャップ内空間を形成するキャップ手段と、
前記各キャップ内空間を、それぞれ可撓性を有するチューブによって形成される吸引通路を介して吸引可能な吸引手段と
を備えた流体噴射装置において、
前記流体噴射ヘッドのメンテナンスを行うためのメンテナンス領域での前記キャリッジの往復移動に伴って前記各吸引通路を選択的に閉塞可能な選択閉塞手段を備え、
前記選択閉塞手段は、
前記メンテナンス領域における前記キャリッジの往復移動に伴って往復移動することにより、前記各吸引通路を選択的に閉塞する位置に配置された前記各チューブを押圧可能な押圧部材を介して該チューブを押し潰すことで、前記各吸引通路を選択的に閉塞する閉塞部材と、
前記閉塞部材が往復移動する度に該閉塞部材と係合して前記各吸引通路を閉塞するそれぞれの閉塞位置に該閉塞部材を順次導くカム面とを備え、
前記押圧部材は、前記キャリッジの往復移動に伴って前記閉塞部材が摺動することで、該押圧部材が前記チューブを押圧する方向に移動するように構成された摺動面を有し、
該摺動面は、前記閉塞部材の摺動により前記押圧部材が前記チューブを押圧する方向へ移動する際の移動量が互いに異なるように設定された複数の面によって構成され、
該各面は、前記押圧部材が前記チューブを押圧する押圧量が増加するに連れて該押圧部材が前記チューブを押圧する方向に移動する移動量が減少するように配置されていることを特徴とする流体噴射装置。
【請求項3】
複数のノズルから流体を噴射する流体噴射ヘッドを支持して往復移動可能に構成されたキャリッジと、
前記各ノズルを個別に囲うように前記流体噴射ヘッドに当接して複数のキャップ内空間を形成するキャップ手段と、
前記各キャップ内空間を、それぞれ可撓性を有するチューブによって形成される吸引通路を介して吸引可能な吸引手段と
を備えた流体噴射装置において、
前記流体噴射ヘッドのメンテナンスを行うためのメンテナンス領域での前記キャリッジの往復移動に伴って前記各吸引通路を選択的に閉塞可能な選択閉塞手段を備え、
前記選択閉塞手段は、
前記メンテナンス領域における前記キャリッジの往復移動に伴って往復移動することにより、前記各吸引通路を選択的に閉塞する位置に配置された前記各チューブを押圧可能な押圧ユニットを介して該チューブを押し潰すことで、前記各吸引通路を選択的に閉塞する閉塞部材と、
前記閉塞部材が往復移動する度に該閉塞部材と係合して前記各吸引通路を閉塞するそれぞれの閉塞位置に該閉塞部材を順次導くカム面とを備え、
前記押圧ユニットは、
前記キャリッジの往復移動に伴って前記閉塞部材が摺動することで、該押圧ユニットが前記チューブを押圧する方向に移動するように構成された摺動面を有する第1の部材と、
該第1の部材と前記チューブとの間に配置されるとともに該チューブを接触押圧することが可能な第2の部材と、
前記チューブを押し潰して前記吸引通路を閉塞するために必要な押圧荷重を発生した状態で前記第1の部材と前記第2の部材との間に保持されるとともに、前記第2の部材が前記チューブを押圧して前記吸引通路を閉塞した後にさらに該チューブを押し潰すために必要な単位変位量当たりの荷重よりも単位変位量当たりに発生する荷重が小さくなるように設定された圧縮ばねとを備え、
前記摺動面は、前記閉塞部材の摺動により前記押圧ユニットが前記チューブを押圧する方向へ移動する際の移動量が互いに異なるように設定された複数の面によって構成され、
該各面は、前記押圧ユニットが前記チューブを押圧する押圧量が増加するに連れて該押圧ユニットが前記チューブを押圧する方向に移動する移動量が減少するように配置されていることを備えていることを特徴とする流体噴射装置。
【請求項4】
前記キャップ手段は、前記キャリッジが前記メンテナンス領域にて移動する際に該キャリッジと係合することで、該キャリッジの移動方向へ移動しながら前記流体噴射ヘッドに対して近接する方向に移動して前記流体噴射ヘッドに当接するキャップ部材を備え、
前記メンテナンス領域における前記キャリッジの往復移動中は前記キャップ部材の前記流体噴射ヘッドへの当接状態が維持されることを特徴とする請求項1〜請求項3のうちいずれか一項に記載の流体噴射装置。
【請求項5】
複数のノズルから流体を噴射する流体噴射ヘッドを支持して往復移動可能に構成されたキャリッジと、
前記各ノズルを個別に囲うように前記流体噴射ヘッドに当接して複数のキャップ内空間を形成するキャップ手段と、
前記各キャップ内空間を、それぞれ可撓性を有するチューブによって形成される吸引通路を介して吸引可能な吸引手段と
を備えた流体噴射装置において、
前記流体噴射ヘッドのメンテナンスを行うためのメンテナンス領域での前記キャリッジの往復移動に伴って前記各吸引通路を選択的に閉塞可能な選択閉塞手段を備え、
前記選択閉塞手段は、
前記キャリッジと共に移動し、且つ前記キャリッジの移動方向及び前記キャップ手段が前記流体噴射ヘッドへ当接する方向に対して略垂直な方向に移動可能であって、前記各吸引通路を選択的に閉塞する位置に配置された前記各チューブを押圧可能な押圧ユニットを介して該チューブを押し潰すことで、前記各吸引通路を選択的に閉塞する閉塞部材と、
前記キャリッジが前記メンテナンス領域にて往復移動する度に前記閉塞部材と係合して該閉塞部材を前記キャリッジの移動方向及び前記キャップ手段が前記流体噴射ヘッドへ当接する方向に対して略垂直な方向に移動させるカム面と、
前記キャリッジの移動方向及び前記キャップ手段が前記流体噴射ヘッドへ当接する方向に対して略垂直な方向に移動した前記閉塞部材が進入するとともに、前記閉塞部材が進入した場合に該閉塞部材が前記各吸引通路を閉塞するか否かを選択するように予め設定された複数の選択通路とを備え、
前記押圧ユニットは、
前記キャリッジの往復移動に伴って前記閉塞部材が摺動することで、該押圧ユニットが前記チューブを押圧する方向に移動するように構成された摺動面を有する第1の部材と、
該第1の部材と前記チューブとの間に配置されるとともに該チューブを接触押圧することが可能な第2の部材と、
前記チューブを押し潰して前記吸引通路を閉塞するために必要な押圧荷重を発生した状態で前記第1の部材と前記第2の部材との間に保持されるとともに、前記第2の部材が前記チューブを押圧して前記吸引通路を閉塞した後にさらに該チューブを押し潰すために必要な単位変位量当たりの荷重よりも単位変位量当たりに発生する荷重が小さくなるように設定された圧縮ばねと
を備えていることを特徴とする流体噴射装置。
【請求項6】
複数のノズルから流体を噴射する流体噴射ヘッドを支持して往復移動可能に構成されたキャリッジと、
前記各ノズルを個別に囲うように前記流体噴射ヘッドに当接して複数のキャップ内空間を形成するキャップ手段と、
前記各キャップ内空間を、それぞれ可撓性を有するチューブによって形成される吸引通路を介して吸引可能な吸引手段と
を備えた流体噴射装置において、
前記流体噴射ヘッドのメンテナンスを行うためのメンテナンス領域での前記キャリッジの往復移動に伴って前記各吸引通路を選択的に閉塞可能な選択閉塞手段を備え、
前記選択閉塞手段は、
前記キャリッジと共に移動し、且つ前記キャリッジの移動方向及び前記キャップ手段が前記流体噴射ヘッドへ当接する方向に対して略垂直な方向に移動可能であって、前記各吸引通路を選択的に閉塞する位置に配置された前記各チューブを押圧可能な押圧部材を介して該チューブを押し潰すことで、前記各吸引通路を選択的に閉塞する閉塞部材と、
前記キャリッジが前記メンテナンス領域にて往復移動する度に前記閉塞部材と係合して該閉塞部材を前記キャリッジの移動方向及び前記キャップ手段が前記流体噴射ヘッドへ当接する方向に対して略垂直な方向に移動させるカム面と、
前記キャリッジの移動方向及び前記キャップ手段が前記流体噴射ヘッドへ当接する方向に対して略垂直な方向に移動した前記閉塞部材が進入するとともに、前記閉塞部材が進入した場合に該閉塞部材が前記各吸引通路を閉塞するか否かを選択するように予め設定された複数の選択通路とを備え、
前記押圧部材は、前記キャリッジの往復移動に伴って前記閉塞部材が摺動することで、該押圧部材が前記チューブを押圧する方向に移動するように構成された摺動面を有し、
該摺動面は、前記閉塞部材の摺動により前記押圧部材が前記チューブを押圧する方向へ移動する際の移動量が互いに異なるように設定された複数の面によって構成され、
該各面は、前記押圧部材が前記チューブを押圧する押圧量が増加するに連れて該押圧部材が前記チューブを押圧する方向に移動する移動量が減少するように配置されていることを特徴とする流体噴射装置。
【請求項7】
複数のノズルから流体を噴射する流体噴射ヘッドを支持して往復移動可能に構成されたキャリッジと、
前記各ノズルを個別に囲うように前記流体噴射ヘッドに当接して複数のキャップ内空間を形成するキャップ手段と、
前記各キャップ内空間を、それぞれ可撓性を有するチューブによって形成される吸引通路を介して吸引可能な吸引手段と
を備えた流体噴射装置において、
前記流体噴射ヘッドのメンテナンスを行うためのメンテナンス領域での前記キャリッジの往復移動に伴って前記各吸引通路を選択的に閉塞可能な選択閉塞手段を備え、
前記選択閉塞手段は、
前記キャリッジと共に移動し、且つ前記キャリッジの移動方向及び前記キャップ手段が前記流体噴射ヘッドへ当接する方向に対して略垂直な方向に移動可能であって、前記各吸引通路を選択的に閉塞する位置に配置された前記各チューブを押圧可能な押圧ユニットを介して該チューブを押し潰すことで、前記各吸引通路を選択的に閉塞する閉塞部材と、
前記キャリッジが前記メンテナンス領域にて往復移動する度に前記閉塞部材と係合して該閉塞部材を前記キャリッジの移動方向及び前記キャップ手段が前記流体噴射ヘッドへ当接する方向に対して略垂直な方向に移動させるカム面と、
前記キャリッジの移動方向及び前記キャップ手段が前記流体噴射ヘッドへ当接する方向に対して略垂直な方向に移動した前記閉塞部材が進入するとともに、前記閉塞部材が進入した場合に該閉塞部材が前記各吸引通路を閉塞するか否かを選択するように予め設定された複数の選択通路とを備え、
前記押圧ユニットは、
前記キャリッジの往復移動に伴って前記閉塞部材が摺動することで、該押圧ユニットが前記チューブを押圧する方向に移動するように構成された摺動面を有する第1の部材と、
該第1の部材と前記チューブとの間に配置されるとともに該チューブを接触押圧することが可能な第2の部材と、
前記チューブを押し潰して前記吸引通路を閉塞するために必要な押圧荷重を発生した状態で前記第1の部材と前記第2の部材との間に保持されるとともに、前記第2の部材が前記チューブを押圧して前記吸引通路を閉塞した後にさらに該チューブを押し潰すために必要な単位変位量当たりの荷重よりも単位変位量当たりに発生する荷重が小さくなるように設定された圧縮ばねとを備え、
前記摺動面は、前記閉塞部材の摺動により前記押圧ユニットが前記チューブを押圧する方向へ移動する際の移動量が互いに異なるように設定された複数の面によって構成され、
該各面は、前記押圧ユニットが前記チューブを押圧する押圧量が増加するに連れて該押圧ユニットが前記チューブを押圧する方向に移動する移動量が減少するように配置されていることを備えていることを特徴とする流体噴射装置。
【請求項8】
前記各選択通路は前記閉塞部材が進入した際に前記チューブを押圧可能な部材が配置された選択通路と該部材が配置されていない選択通路とを含み、
前記メンテナンス領域での前記キャリッジの往復移動により、前記閉塞部材が進入すべき選択通路を前記各選択通路の中から選択することを特徴とする請求項5〜請求項7のうちいずれか一項に記載の流体噴射装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2010−201912(P2010−201912A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−168187(P2009−168187)
【出願日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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