説明

流体噴射装置

本発明は、主噴射軸(AB)を有する流体噴射装置(131)であって、少なくとも、ケーシング(1)と、ケーシング(1)内に軸方向に取付けられ、軸方向両側の二つの面(C)、(D)を有する積層体を備え、かつ電気活性材料を有する少なくとも一つの電気活性部分(22)を備えたアクチュエータ(2)と、前記積層体に少なくとも部分的に予圧縮応力を加えるためのプレストレス手段とを具備する上記流体噴射装置に関する。本発明に従い、プレストレス手段は、積層体の外側に、積層体とケーシング(1)の間に配置された少なくとも一つの締め付けフランジ(25)を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に内燃機関のための、流体、例えば燃料を噴射する装置に関する。
【0002】
更に詳しくは、本発明は、その第1の様相に従い、主噴射軸を有する、噴射器と呼ばれる流体噴射装置であって、
ケーシングと、
ケーシング内に軸方向に取付けられ、軸方向両側の二つの横面を有する積層体を備え、そして電気活性材料からなる少なくとも一つの電気活性部分を有するアクチュエータと、
上記積層体に少なくとも部分的に予圧縮応力を加えるのに適したプレストレス手段とを具備する、上記流体噴射装置に関する。
【背景技術】
【0003】
上記積層体、特に電気活性材料、例えば積層体に分配された圧電セラミックシムまたは磁歪要素に、予圧縮応力を加えるのに適したプレストレス手段は、例えば特許文献1によって示されているように、当業者によく知られている。このプレストレス手段の設置は、電気活性材料を穿孔する必要があり、これは電気活性材料を弱体化する。穿孔時および/または組み立て時および/または噴射器動作時に、セラミックシムは簡単にひび割れおよび破壊するので、その寿命が短くなる。
【0004】
噴射器の動作に影響を及ぼし得る電気的な短絡の問題を回避するために、一般的に、ケーシング内に収納されたアクチュエータのコンパクトさと、ワイヤによる電極の空間的な分配の複雑さとの間で、厄介な妥協をしなければならない。このワイヤは各セラミックシムを、ケーシングの外側の電気活性材料を励起する手段に接続する。上記の妥協は、例えばアクチュエータをケーシングに挿入するときに、積層体がケーシングに不意に接触するので、噴射器の組み立てを困難にし、ワイヤによる電極の空間的な分配を損なう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】欧州特許出願第1172552号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この新規な観察に基づく本発明の主目的は、上述の制限の少なくとも一つを減らすように形成された流体噴射装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的のために、噴射装置は、更に上記の前提部分による噴射装置の包括的定義に従って、プレストレス手段が積層体の外側において積層体とケーシングの間に配置された少なくとも一つの締め付けフランジを備えていることを特徴とする。
【0008】
この構成により、電気活性材料の穿孔はもはや不可欠なものではない。これは、例えば噴射器の組み立ておよび/または動作中に、特に機械的応力に対して電気活性材料を脆くなりにくくする。更に、積層体とケーシングの間に締め付けフランジを設けると、積層体は例えば噴射器に組み立て中に、ケーシングとの不意の接触および/またはケーシングによる不意の崩壊が防止される。この接触や崩壊は例えばワイヤによる電極の空間的分配を損ない、そしてセラミック材料自体を損傷させる。
【0009】
本発明の第2様相に従って、本発明は本発明による流体噴射装置を使用する内燃機関、すなわちこの噴射装置が配置されたエンジンに関する。
【0010】
本発明の他の特徴および効果は、添付の図を参照して表示として非限定的に行った次の説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】エンジン内に配置され、かつケーシング内に軸方向に取付けられたアクチュエータに連結された外向きと呼ばれるヘッドを有するニードルを装着した本発明に係る噴射装置を示す図である。
【図2】エンジン内に配置され、かつアクチュエータに連結された内向きと呼ばれるヘッドを有するニードルを装着した本発明に係る噴射装置を示す図である。
【図3】ノズルと外向きヘッドを有するニードルとによって形成された弁要素の動作を示す図であり、図3では弁要素が閉鎖している。
【図4】ノズルと外向きヘッドを有するニードルとによって形成された弁要素の動作を示す図であり、図4では弁要素が開放している。
【図5】ノズルと内向きヘッドを有するニードルとによって形成された弁要素の動作を示す図であり、図5では弁要素が閉鎖している。
【図6】ノズルと内向きヘッドを有するニードルとによって形成された弁要素の動作を示す図であり、図6では弁要素が開放している。
【図7】積層体の外側において積層体とケーシングの間に配置された締め付けフランジによって予圧縮応力を加えられた積層体を概略的に示す略式側面図である。
【図8】噴射器の対称軸に対して垂直な平面内の噴射器の簡略化した断面を概略的に示す。
【図9】締め付けフランジによって予圧縮応力を加えられた積層体を概略的に示す略式側面図であり、積層体の軸方向締め付け力を調節するための手段が軸方向においてフランジと積層体の間に配置されている。
【図10】異なる構造の締め付けフランジによって予圧縮応力を加えられた積層体を概略的に示す別の略式側面図であり、積層体の軸方向締め付け力を調節するための手段が軸方向においてフランジと積層体の間に配置されている。
【図11】さらに異なる構造の締め付けフランジによって予圧縮応力を加えられた積層体を概略的に示すまた別の略式側面図であり、積層体の軸方向締め付け力を調節するための手段が軸方向においてフランジと積層体の間に配置されている。
【図12】締め付けフランジによって予圧縮応力を加えられた積層体を概略的に示す略式側面図であり、弾性手段によって補われた調節手段が軸方向においてフランジと積層体の間に配置されている。
【図13】異なる構造の締め付けフランジによって予圧縮応力を加えられた積層体を概略的に示す別の略式側面図であり、弾性手段によって補われた調節手段が軸方向においてフランジと積層体の間に配置されている。
【図14】さらに異なる構造の締め付けフランジによって予圧縮応力を加えられた積層体を概略的に示すまた別の略式側面図であり、弾性手段によって補われた調節手段が軸方向においてフランジと積層体の間に配置されている。
【図15】円筒棒の形をした一体ニードルを概略的に示す略式部分縦断側面図である。
【図16】一体的な円筒ノズルを概略的に示す略式部分縦断側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
上述したように、本発明は、流体、例えば燃料131を内燃機関151の燃焼室15にあるいは図示していない吸気ダクトにあるいは図示していない排気ダクトに噴射するように形成された噴射装置または噴射器に関する。
【0013】
噴射器は例えば円筒形の2個のボディを備えている。ケーシング1を示す第1ボディは、噴射装置の好ましい軸AB、例えば噴射装置の対称軸に沿って、少なくとも一つのノズル3だけ延長している。このノズルは軸ABに沿って長さを有し、噴射穴と座部5(または5′)を備えている。ケーシング1の直線的な寸法、例えば軸ABに対して垂直方向のケーシングの幅および/または軸ABに沿ったケーシングの長さは、ノズル3の寸法よりも大きくすることができる。ケーシング1の比重はノズル3の比重よりも大きくすることができる。ケーシング1は少なくとも一つの開口9を介して燃料131の少なくとも一つの回路130に接続可能である。燃料131の回路130は例えばタンク、ポンプおよびフィルタを有する、燃料131を処理するための装置13を備えている。
【0014】
アクチュエータ2を示す第2ボディは、ケーシング1内で軸方向に動くことができるように配置されている。ニードル4は軸ABに沿って長さを有し、第1端部6はノズル3の座部5(または5′)との接触領域に弁要素を形成している。アクチュエータ2の直線的な寸法、例えば軸ABに対して垂直方向のアクチュエータの幅および/または軸ABに沿ったアクチュエータの長さは、ニードル4の寸法よりも大きくすることができる。アクチュエータの比重はニードル4の比重よりも大きくすることができる。ニードル4とアクチュエータ2は接合領域ZJ(図2)によって互いに連結されている。第1端部6は好ましくは、噴射器の弁要素の良好なシールを保証するように、座部5(または5′)を閉鎖するヘッド7(または7′)だけ軸ABに沿ってアクチュエータ2から離れるよう縦方向に延長している。
【0015】
アクチュエータ2は軸ABに沿ってニードル4だけ延長し、設定周期τでニードル4を直接振動させるために配置されている。従って、図3〜4と図5〜6に示すように、アクチュエータは、弁要素を交互に開閉するのに適した相対軸方向運動を、ニードル4の第1端部6とノズル3の座部5(または5′)の間に生じる。よって、アクチュエータ2はニードル4を制御する能動的な「マスター」の役割をする。ニードルは受動的に制御される「スレーブ」として作用する。
【0016】
アクチュエータ2は軸方向両側の横面C、Dを有する積層体を備え、この積層体は電気活性材料221を有する少なくとも一つの電気活性部分22を含んでいる(図7〜14)。電気活性材料は予め定めた周波数ν、例えば超音波周波数の振動を発生するように形成されている。超音波周波数はν=20KHzと約60KHzの間の範囲にある、すなわち50ミリ秒と16ミリ秒の間の振動の設定周期τを有する。一例として、鋼の場合、振動の波長λはν=50KHz(τ=20ミリ秒)でほぼ10−1mである。図1、2に示すように、積層体はアクチュエータ2とは見分けがつかない。
【0017】
積層体は増幅器21と呼ばれる少なくとも一つの部分を有する。この部分は上記の横面C、Dの一方Dの位置で、軸方向においてニードル4に取付けられている。この増幅器21の軸方向の各側に、電気活性部分22とニードル4とが配置されている。増幅器は電気活性材料221の振動をニードル4に伝達し、弁要素でのニードル4の運動が電気活性材料221の変形の全体よりも大きくなるように、振動を増幅する。増幅器21はほぼ円筒形である(図7、9〜10、12〜13)。その代わりに、増幅器21は他の形状、例えば電気活性部分22からニードル4の方へ軸ABの方向に細くなっている円錐台の形をしていてもよい(図11、14)。
【0018】
積層体は後部ウェイト23と呼ばれる少なくとも一つの他の部分23を有する。この部分は電気活性材料221の応力を均一に分配する役目をする。増幅器21と後部ウェイト23とは、軸方向において電気活性部分22の各側に配置されている。後部ウェイト23は軸方向において電気活性部分22とは反対側に壁を有する。この壁は、軸方向においてニードル4とは反対側の積層体の横面Cとは見分けがつかない。
【0019】
増幅器21と電気活性部分22と後部ウェイト23は一方では、上記積層体に少なくとも部分的に予圧縮応力を加えるために適したプレストレス手段によって互いに強く押し付けられ、他方では電気活性部分22の振動によって発生した音波が通過するのに適している。
【0020】
プレストレス手段は、積層体の外側において積層体とケーシング1の間に配置された少なくとも一つの締め付けフランジ25を備えている。
【0021】
電気活性材料221は好ましくは圧電材料である。この圧電材料は、積層体の電気活性部分22を形成するために、例えば互いに軸方向に積層された一つ以上のセラミック圧電シムの形をしている。噴射器内で音波を発生する電気活性材料221の選択的変形、例えば設定周期τでの周期的変形は最終的に、図3〜4と図5〜6を参照して上述したように弁要素を交互に開放および閉鎖するために適した、座部5(または5′)と相対的なニードル4のヘッド7(または7′)の縦方向運動あるいはその逆の縦方向運動となる。これらの選択的変形は、設定周期τで積層体の電気活性部分22を振動させるために適した適当な励起手段14、例えばワイヤ(図示せず)を介して、圧電性電気活性材料221に固定された電極220に加えられる電位差で生じる電界によって制御される。電気活性材料221はその代わりに磁歪材料であってもよい。この磁歪材料の選択的変形は図示していない適当な励起手段、例えば選択的磁界から生じる磁気誘導によって制御される。この選択的磁界は図示していない励磁機によっておよび特に積層体に固定されたコイルによってあるいは積層体を取り巻く他のコイルによって得られる。
【0022】
プレストレス手段は、積層体を締め付けるための軸方向力を調節するための少なくとも一つの手段250を備えている。これにより、プレストレス手段は、図1、2に示すように、例えば後部ウェイト23と増幅器21の間で、電気活性部分22を強く押し付けることができる。押し付ける力は、電気活性材料221の性質、例えば圧電また磁歪の関数として、および/または軸ABに対して垂直な平面内の、積層体の圧電セラミックシムまたは磁歪要素の断面の関数として、および/または積層体内における上記シムの空間的な分配の関数として、および/またはシムの形状の関数として、および/またはシムの直線的な寸法(および/またはシムの形状)の関数として、「ケース毎に」調節可能である。調節手段250は締め付けフランジ25に連結可能である(図1、2、7、9〜14)。
【0023】
特に、軸方向において締め付けフランジ25と積層体の間に、調節手段250を配置することができる(図7、9〜10、12〜14)。これにより噴射器の組み立てが容易になるという事実に加えて、調節手段250の軸方向位置決めは、「ニードル4+アクチュエータ2」組み立て体の構造的対称性および/または音響的対称性を保つのに役立ち、その結果ニードル4の軸方向の交互の往復運動も、「ニードル4+アクチュエータ2」組み立て体の音波の伝播も、非対称ウェイトの干渉作用によって妨害されることがない。
【0024】
締め付け手段25は好ましくは積層体の熱膨張、特に電気活性材料221の熱膨張とほぼ同じ熱膨張(特に熱膨張係数)を有する。例えば、電気活性材料221の膨張係数と積層体の膨張係数の差は、噴射器の動作温度範囲内でこれらの部品の膨張の差が、(プレストレス手段250によってもたらされる)公称応力値の10%よりも大きな電気活性材料221の予圧縮応力の変化を生じないように、選定することができる。セラミック電気活性材料221の場合、締め付けフランジ25は、炭素とクロムを含む鉄とニッケルの合金、例えば「インバー」タイプの合金で作ることができる。この構成のおかげで、電気活性材料221の予圧縮応力は噴射器の温度変化に関係なく、一定に保たれる。積層体の同じ膨張(および特に電気活性材料221の同じ膨張と締め付けフランジ25の同じ膨張)は、噴射器の温度変化に起因する膨張を熱的に確実に補償する。積層体、ひいてはアクチュエータ2の組み立ては一層速くなる。なぜなら、上記熱膨張を補償するための他の手段を必要としないからである。この実施の形態では、後部ウェイト23は調節手段250と見分けがつかない(図には状況を示していない)。
【0025】
締め付けフランジ25は、上記の代わりに、積層体の熱膨張、特に電気活性材料221の熱膨張と異なる熱膨張(特に熱膨張係数)を有していてもよい。この場合、プレストレス手段は、締め付けフランジ25と積層体の間に配置された少なくとも一つの弾性手段251(例えば少なくとも一つのゴムシール、弾性シム、ばね)を備えている。弾性手段251は、熱膨張に起因する締め付けフランジ25の伸びに関係なく、電気活性部分22と特に電気活性材料221のほとんど一定の予圧縮応力を提供することを可能にする。この構成のおかげで、例えばインバー締め付けフランジ25が在庫切れしているときに、工業規模で積層体ひいてはアクチュエータ2の組み立てを続けることができる。従って、この実施の形態は噴射器の製造を一層信頼できるものにするのに役立つ。
【0026】
弾性手段251は好ましくは、積層体を迅速に組み立てることができるように、積層体と調節手段250の間に配置されている(図7、12〜14)。
【0027】
調節手段250は好ましくは、ねじ、好ましくはねじ切りしたねじの形をしている。この調節手段のための締め付けフランジ25は好ましくは中央に、すなわち軸ABに沿ってねじ切りした対応する穿孔を有する(図7、9〜14)。
【0028】
特に、締め付けフランジ25は、積層体が締め付けられるときに均一な応力を生じるように、積層体の両側の二つの横面C、Dに接触している(図7)。
【0029】
増幅器21は軸ABに沿ってニードル4の方へ細くなった少なくとも一つのセグメント、例えば電気活性部分22との連結のためのセグメント211を備えることができる。この場合、締め付け手段25はその少なくとも一部が、図10〜11、13〜14に示すように、増幅器21の上記の細くなったセグメントの形状に近い形をしている。これにより、締め付けフランジ25の軸方向長さを短くすることができる。これは、図9、12の締め付けフランジ25を図10〜11、13〜14の締め付けフランジと比較することによって明らかである。締め付けフランジ25をこのように短くすることができると、フランジが軽量になる(フランジの他のすべてのパラメータは変わらないままである)かあるいは(例えば短縮したフランジの厚さを比例的増加させることによって)機械的摩耗および/または大きな締め付け力に対する耐性が大きくなる。
【0030】
プレストレス手段が軸ABに対して垂直な平面内で予め定めた角度でかつ半径方向において互いに間隔をおいて積層体の周りに対称に配置された数個の締め付けフランジ25を備えることができることを理解すべきである。数個のフランジを設けることにより、積層体が締め付けられるときに、応力が均一に分配される。
【0031】
図1は外向きと呼ばれるヘッド7を備えたニードル4のケースを示している。ヘッドはケーシング1から燃焼室15内のノズル3の外側に向けて軸ABの方向に拡がるフレア形状(好ましくは円錐台)を有する。外向きヘッド7は、ケーシング1から離れるように軸ABの方向に向いたノズル3の外側の座部5を閉鎖する。
【0032】
図2は内向きと呼ばれるヘッド7′を備えたニードル4のケースを示している。ヘッドは好ましくは円錐台であり、ケーシング1からノズル3の外側に向けて軸ABの方向に細くなっており、ケーシング1の方に向いたノズル3の内側の座部5′を閉鎖する。
【0033】
アクチュエータ2の戻し手段11(または11′)は、ニードル4のヘッド7(または7′)をノズル3の座部5(または5′)に対して押し付け保持ために設けることができる。それによって、戻し手段は、燃焼室15内の圧力に関係なく、弁要素を確実に閉じる。
【0034】
締め付けフランジ25とケーシング1は、図8においてUWで示す点によって表した少なくとも一つの縦方向接触領域を有することができる。縦方向接触領域UWを設けることができることにより、噴射器の組み立てが容易になる。特に、外向きヘッド7を有するニードル4を備えた噴射器を組み立てるとき、摩擦やアライメントの制御に注意して、積層体をケーシング1に挿入する間に、ケーシング1との予期しない接触に対して電極220を保護することにより、噴射器の組み立てが容易になる。
【0035】
ノズル3およびケーシング1と、ニードル4およびアクチュエータ2とは、それぞれ第1と第2の音波伝播媒体を形成する。この2個の媒体の各々は少なくとも一つの線形音響インピーダンスIを有する。このインピーダンスは軸ABに対して垂直な媒体断面の表面Σ、媒体の密度ρおよび媒体内の音速cに依存する。すなわち、I=f(Σ、ρ、c)。この比を示すために、それぞれ図15〜16に示した、ニードル4またはノズル3に関する簡略化したいろいろな例を考察しましょう。簡略化するために、理解されるように、これらのすべての例のために、第2ボディとアクチュエータ2と積層体は区別不能である。燃焼室15の圧力に対してあまり敏感でない噴射器の弁要素の穴を得るために、噴射器はニードル4の第1端部6の運動を制御し一方、ノズル3の座部(図15〜16に簡略化して示され、参照符号50が付けてある)は、不動に保持されているかまたは固定され、従って運動節のように挙動する。
【0036】
ニードル4とノズル3はそれぞれボディの形をし、軸ABに対して垂直な半径方向寸法は軸ABに沿った長さと比べて小さい。ニードル4の簡略化したモデルとしてここで引き合いに出す中実の棒400(図15)あるいはノズル3の簡略化したモデルとしてここで引き合いに出す縦方向に穴をあけた棒300(図16)では、音波の伝播は、張力(力)ΔFの跳躍の伝播と速度Δvの跳躍の伝播を次の等式によって関係づける。ΔF=Σ×Δσ=Σ×z×Δv。ここで、Σは棒の好ましい軸AB、例えば棒の対称軸に対して垂直な棒の断面であり、Δσ=z×Δvは応力の跳躍であり、zは等式z=ρ×cによって定められる音響インピーダンスである。この等式において、ρは棒の比重であり、cは棒内の音速である。理解されるように、張力Fは圧縮が正であり、速度vは音波の伝播方向が正である。棒(中実または中空)の音響特性を示す積I=Σ×z=Σ×ρ×cは「音響線形インピーダンス」または「線形インピーダンス」と呼ばれる。
【0037】
線形音響インピーダンスIのすべての変化はエコーを含んでいる。すなわち、線形インピーダンスIの変化の個所、例えばニードル4とアクチュエータ2の間の接合部(図15)またはノズル3とケーシング1の間の他の接合部(図16)から、棒の逆方向に(例えば図15〜16において左側から右側へ)伝播される他の音波による、棒の方向に(例えば図15〜16において右側から左側へ)伝播される音波の弱まりを含んでいる。これと同じ推理は、すべての線形インピーダンス破壊Iに適用可能である。用語「破壊」は「波長と比較して短い距離にわたって、好ましくは波長の8分の1(λ/8)よりも小さな距離にわたって音波の伝播媒体内に位置する線形インピーダンス破壊領域の、音波伝播方向に関して線形インピーダンス上流と下流の間の差を示す予め定められた閾値を超える線形インピーダンスIの変化」として理解すべきである。
【0038】
噴射器は、ノズル3(図16)またはケーシング1に沿って、座部50とニードル4の第1端部6との接触領域からある距離をおいて存在する線形音響インピーダンス破壊の少なくとも一つの領域と、ニードル4(図15)またはアクチュエータ2に沿って、第1端部6と座部50との接触領域からある距離をおいて存在する線形音響インピーダンス破壊の少なくとも一つの他の領域とを有することができる。上記の線形音響インピーダンス破壊の領域と他の領域はそれぞれ、ケーシング1とアクチュエータ2の方に向いた音波の伝播方向における、ニードル4の第1端部6と座部50との上記接触領域からの順番で第1番目である。
【0039】
図1(図2)に概略的に示すように、一方では座部5(または5′)と第1端部6の間の接触領域と、他方ではノズル3またはケーシング1に沿った線形音響インピーダンス破壊の第1領域との間の、第1距離Lと呼ばれる距離は、積層体の電気活性部分22によって生じ第1距離L=f(T)に沿って移動する音波の、「音響飛行時間」Tと呼ばれる伝播時間が次の等式
=n×[τ/2] (E1)
を満たすような大きさである。ここで、nは第1乗数と呼ばれる、非ゼロの正の整数の乗数である。一方では第1端部6と座部5(または5′)の間の接触領域と、他方ではニードル4またはアクチュエータ2に沿った線形音響インピーダンス破壊の第1領域との間の、第2距離Lと呼ばれる距離は、積層体の電気活性部分22によって生じこの第2距離L=f(T)にわたって移動する音波の、「音響飛行時間」Tと呼ばれる伝播時間が次の等式
=n×[τ/2] (E2)
を満たすような大きさである。ここで、nは第2乗数と呼ばれる、非ゼロの整数の他の乗数であり、例えばn≠nである。
【0040】
上記のE1、E2の式は実証されているようにある許容誤差内で考えなければならないと理解すべきである。それによって、製造上の制約条件、例えば設定周期τの±10%のオーダーの許容誤差、すなわち半分の設定周期τ/2の±20%のオーダーの許容誤差を考慮に入れることができる。この許容誤差を考慮に入れると、上記のE1、E2の式はそれぞれ、次のように書き換えることができる。
【0041】
=n×[τ/2]±0.2×[τ/2] (E1′)
=n×[τ/2]±0.2×[τ/2] (E2′)
【0042】
実際には、音響飛行時間Tと表現される第1距離L=f(T)と、音響飛行時間Tと表現される第2距離L=f(T)は、工業規模で製造される相当の部品で測定したとき、上記の式E1、E2によって計算した基準値に対して小さな偏差を有するかもしれない。この小さな偏差は取付けられたウェイトの効果に起因し得る。このウェイトは例えばニードル4のヘッド7(7′)および/またはノズル3内のニードル4の端部6の軸ABに対して垂直な平面内の案内ボス(図示せず)であってもよい。上記の許容誤差は、上記の式E1′、E2′によって、第1距離L=f(T)と第2距離L=f(T)の音響飛行時間の表現を補正するために、取付けウェイトの上記効果を考慮することを可能にする。
【0043】
吸気ダクトおよび/または排気ダクトのためにできるだけ大きなスペースを残す目的で、軸ABに沿った噴射器の直線的な寸法を最小限に抑えるために、好ましくは第2乗数と第1乗数についてn=n、特に、n=n=1である。従って、座部5(5′)とニードル4の第1端部6の間の接触領域から始まって、ノズル3は第1距離L=f(T)を示す連続長さにわたって一定の音響特性を有する。この音響特性は実質的に、音響飛行時間T内で互いに等しい。音響飛行時間TBでの音響特性の表現は好ましくは2分の1設定周期τ/2になる。同様に、座部5(5′)とニードル4の第1端部6の間の接触領域から始まって、ニードル4は第2距離L=f(T)を示す連続長さにわたって一定の音響特性を有する。この音響特性は実質的に、音響飛行時間T内で互いに等しい。音響飛行時間Tでの音響特性の表現は好ましくは2分の1設定周期τ/2になる。
【0044】
噴射器の既定の動作条件の間、すなわち噴射器の始動相と停止相を除く予め定めた温度での動作の間、噴射器は、燃焼室15内の圧力に対してあまり敏感でない方法で、弁要素を交互に開閉することができる。図1に示した例では、この方法は、ニードル4のヘッド7によって延長した第1端部6の運動の制御と、ノズル3の座部5の動的に不動の保持とを含んでいる。上述のように、ニードル4のヘッド7の運動制御は、積層体の増幅器21(図1)によって、アクチュエータ2を介してニードル4に伝達される積層体の電気活性材料221の選択的変形、例えば設定周期τでの周期的変形によって行われる。座部5は音波伝播現象の周期性をうまく利用して、軸ABに沿ったその縦方向速度をゼロに保つことによって動的に不動に保持される。座部5における、設定周期τでのニードル4のヘッド7の周期的な着座中の弁要素の各閉鎖は、衝撃を生じる。この衝撃は入射波と呼ばれる音波を生じ、それに伴い速度の跳躍Δvと応力の跳躍Δσを生じる。この波は第1距離LBにわたって移動する間ケーシング1の方に向かってノズル3に伝播し、そして線形音響インピーダンス破壊の第1領域で反射する。この音響インピーダンス破壊は図1では、軸ABに対して垂直な平面内にノズルの断面よりもはるかに大きな断面を有するケーシング1内へのノズル3の引っ込み部SXの位置とは区別不能である。入射波が反射すると、反射波と呼ばれるそのエコーは、第1距離Lを逆方向に、すなわちケーシング1から座部5に第1距離Lにわたって移動するために、ノズル3に戻る。反射波は入射波と同じ符号の応力跳躍Δσと、入射波と逆の符号の速度跳躍Δvを有する(伝播方向が逆であり、座部5に到達する方向がすべて正の速度であり、波の伝播方向はもはや正の速度ではない場合には、速度跳躍Δvは変更された符号を有する)。第1距離が好ましくは式L=f(T)=f(n×[τ/2]を条件としているので、反射波は、新しい波が弁要素の閉鎖による衝撃によって生じるときと全く同じ運動で、座部5に到達する。ニードル4のヘッド4の運動は、好ましくは半分の設定周期τ/2の倍数に依存する第2距離L:L=f(T)=f(n×[τ/2]を条件としている。その結果、座部5において、応力が維持され、速度が無くなる。従って、座部5は運動の節を有する。この状態で、燃焼室15内の圧力の変化は、衝撃の増幅を生じるがしかし、それらの同期性を変更しない。従って、噴射器の作動は燃焼室15内のこの圧力変化によって影響を受けない。
【0045】
上記の詳細を鑑みて、n≠nのような第1および第2乗数について一般的な場合には、座部5を動かないように固定するために、入射波と反射波が座部において互いに補償し合う若干の周期τだけオフセットすると理解すべきである。この補償のために、例えばnとnの差が予め定めた値および/またはノズル3内の音波の損失(および最後に音波の線形音響インピーダンスの損失)よりも大きいときに、全体としてある閾値を超えないようにすることができる。その理由は、n=n、特にn=n=1を有する噴射器の構造が音響的な信頼性を優先し、n≠nを有する構造と比べて依存として好ましいからである。
【0046】
第1距離L=f(T)と第2距離L=f(T)はそれぞれ、音波の伝播のための第1の「ノズル3+ケーシング1」の媒体と第2の「ニードル4+アクチュエータ2」の媒体に関して、好ましくは各音響飛行時間T=n×[τ/2]とT=n×[τ/2]によって、音響に関連して定められると理解すべきである。この音響飛行時間は、本例では上述のようにアクチュエータ2と区別つかない積層体の電気活性部分22によって開始される、設定周期τの振動、例えば超音波振動の存在に起因する。換言すると、第1距離L=f(T)と第2距離L=f(T)は二つの音響限界の間にある。一般的に、第1距離Lと第2距離Lの両方を定めるために使用される第1音響限界は、当該の組み立て体(「ノズル3+ケーシング1」または「ニードル4+アクチュエータ2」)の一端によって表される。簡略化すると、この第1音響限界は図1(または2)に示すように、ニードル4の第1端部6(必要な場合にはヘッド7(または7′)だけ軸方向に延長している)とノズル3の座部5(または5′)との間の接触領域と区別できないと考えることができる。
【0047】
外向きヘッド7を有するニードル4を備えた図1に示す例では、音波の伝播のための第2「ニードル4+アクチュエータ2」媒体に関連して第2距離Lを決定するために使用される第1音響限界が、拡散円錐台外向きヘッド7上で半分になると理解すべきである。同様に、音波の伝播のための第1「ノズル3+ケーシング1」媒体に関連して第1距離L=f(T)を決定するために使用される第1音響限界は、対応する拡散円錐台座部5上で半分になる。
【0048】
内向きヘッド7′を有するニードル4を備えた図2に示す例では、音波の伝播のための第2「ニードル4+アクチュエータ2」媒体に関連して第2距離Lを決定するために使用される第1音響限界が、収斂円錐台内向きヘッド7′上で半分になると理解すべきである。同様に、音波の伝播のための第1「ノズル3+ケーシング1」媒体に関連して第1距離L=f(T)を決定するために使用される第1音響限界は、対応する収斂円錐台座部5′上で半分になる。
【0049】
二つの組み立て体の各々の特有の第2音響限界は、詳細に上述したように、線形音響インピーダンス破壊Iの各第1領域によって示される。例えば第2音響限界は、当該組み立て体の直径が軸ABに対して垂直な平面内で変化する位置、例えばニードル4と積層体の増幅器21との接合領域ZJあるいはケーシング1(図1、2)内へのノズル3の引っ込み部SXの位置(図1、2)に一致する。理解されるように、
− 接合領域ZJにおいて、ニードル4と増幅器21は例えば、好ましくは同じ比重および同じ音速を有する材料で作られた一体品を機械加工することによって作られる。
− 引っ込み部SXの位置では、ノズル3とケーシング1は例えば、好ましくは同じ比重および同じ音速を有する材料で作られた一体品を機械加工することによって作られる。
【0050】
特に、一体品の機械加工は、工業規模での上記部品の製造中に使用するための最も簡単な解決策を提供する。
【0051】
しかしながら、ボティの音響限界はボディの物理的限界に一致しないことがあると理解すべきである。特に、ボディの形状に加えて、例えば上述の線形音響インピーダンスによって反射した音響特性は、ボディの比重やボディ内の音速のような他のパラメータに依存する。
【0052】
音響に関して噴射器を一層良好に機能させるために、増幅器21と電気活性部分22と後部ウェイト23(図1〜2、7、9〜14)によって形成された積層体の両横面C、Dの間の長さLは、電気活性部分22の振動によって開始される音波の伝播とこの長さL=f(T)にわたる移動のための時間Tが次の等式を満たすようになっている。
T=n×[τ/2] (E3)
ここで、nは第3乗数と呼ばれる非ゼロの正の整数の乗数であり、例えばn≠n≠nである。従って、アクチュエータ2(既に上述したように、本例では積層体と区別できない)は、ノズル3とニードル4に類似して、対称の音響的構造を有することができる。それによって、対称積層体の位置で伝達される音波のエコーは、図1〜2、7、9〜14の両側の横面C、Dによって示される積層体の端で1回以上反射した後で、音波伝達後非ゼロの正の整数の周期を経て、音波のこの同じ伝達位置に戻る傾向がある。例えば、弁要素のニードル4上をアクチュエータ2まで移動し、(例えばアクチュエータ2内のニードル4の音響的引っ込みが完全ではないときに)ニードル4と増幅器21の間の積層体の第1面と呼ばれる面Dを経てアクチュエータに入る音波は、アクチュエータ2内を軸方向に伝播し、それに続いて上記第1面Dとは反対側の、積層体の第2面と呼ばれる面Cで反射する。しかしながら、アクチュエータ2の対称共鳴構造によって、第1反射波、すなわち第1面Dまで伝達される波の第1エコーは、その伝達後1周期遅れて同じ第1面Dに戻る。同じことが、積層体の電気活性部分22の電気活性材料221によって生じニードル4の方へ軸方向に伝播する音波に適用される。音波はその向き変え時に第1面Dで反射し、アクチュエータ2に戻って第2面Cで反射し、そして第1面Dから出発した後1周期遅れて第1面Dに戻る。従って、アクチュエータ2の対称共鳴構造は、波の始点に関係なく(ニードル4からまたはアクチュエータ2から)第1端Dに伝達される波、特に正弦波の遅延または符号の変化を生じない。この正弦波の場合、正弦曲線の正の部分は正弦曲線の対称の負の部分に続く。従って、アクチュエータ2の対称共鳴構造は噴射器の規則正しい動作に寄与する。
【0053】
上記のE1、E2の等式に類似して、例えば設定周期τの±10%のオーダーの許容誤差、すなわち半分の設定周期τ/2の±20%のオーダーの許容誤差での製造上の制約条件を考慮に入れるために、上記のE3の等式は実証されているように、程度の差は別にしてある許容誤差を考えなければならないと理解すべきである。この許容誤差を考慮に入れると、上記のE3の式は次のように書き換えることができる。
T=n×[τ/2]±0.2×[τ/2] (E3′)
【0054】
実際には、音響飛行時間Tと表現される、工業規模で製造される相当の部品で測定した長さL=f(T)は、上記の式E3によって計算した基準値に対して小さな偏差を有することができる。この小さな偏差は取付けられたウェイトの効果に起因し得る。このウェイトは例えば付加物または掴み用機械加工部または組み立て用機械加工部に相当する。上記の許容誤差は、上記の式E3′によって、長さL=f(T)の音響飛行時間の表現を補正するために、取付けウェイトの上記効果を考慮することを可能にする。
【0055】
とnに関して上述した理由と同じ理由から、n=n=n、特にn=n=n=1が好ましい。
【0056】
締め付けフランジ25は、その形状(および特にニードル4の直径Dと比べて無視できる、軸ABに対して垂直な平面上のその厚さ)、その比重およびその音速のために、音響に対する寄与は無視することができると理解すべきである。従って、締め付けフランジ25の圧力は音響飛行時間Tで表される積層体の長さL=f(T)に実質的に影響を与えない。
【0057】
締め付けフランジ25が積層体の熱膨張係数、特に電気活性材料221の熱膨張係数と同じ熱膨張係数を有するときには、積層体の第2横面Cは、ニードル4とは反対側の調節手段250の面に音響的に一致する(およびニードル4とは反対側の後部ウェイト23の面に一致しない)と理解すべきであり、積層体の第1横面Dの上述の定義の一部が変更されないままであるので、積層体の長さL=f(T)は図9〜11に示すように、両側の二つの横面C、Dの間に依然として存在する。
【0058】
締め付けフランジ25が積層体の熱膨張係数、特に電気活性材料221の熱膨張係数と異なる熱膨張係数を有するときには、積層体の第1横面Dと第2横面Cの上述の定義が変更されないままであるので(特に、積層体の第2横面Cはニードル4とは反対側の後部ウェイト23の面に一致する)、積層体の長さL=f(T)は図7.12〜14に示すように、両側の二つの横面C、Dの間に残っている。特に、弾性手段251は低い線形インピーダンスを有し、音波は後部ウェイト23と弾性手段251の間の境界面を形成する面Cで反射するので、後部ウェイト23から軸方向に出る音波は、弾性手段251を通過して調節手段250に入る。後部ウェイト23と弾性手段251の間の線形音響インピーダンス破壊は全体的であるので、後部ウェイト23と調節手段250の間には、図7、12〜14に示すように、もはや音響媒体の連続性が存在しない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主噴射軸(AB)を有する流体噴射装置(131)であって、少なくとも、
−ケーシング(1)と、
−ケーシング(1)内に軸方向に取付けられ、軸方向両側の二つの横面(C)、(D)を有する積層体を備え、かつ電気活性材料(221)からなる少なくとも一つの電気活性部分(22)を有するアクチュエータ(2)と、
−前記積層体に少なくとも部分的に予圧縮応力を加えるのに適したプレストレス手段と
を具備し、プレストレス手段が積層体の外側に積層体とケーシング(1)の間に配置された少なくとも一つの締め付けフランジ(25)を備えていることを特徴とする、流体噴射装置。
【請求項2】
プレストレス手段が積層体を締め付ける軸方向の力を調節するための少なくとも一つの調節手段(250)を備え、前記調節手段(250)が締め付けフランジ(25)に連結されていることを特徴とする、請求項1記載の噴射装置。
【請求項3】
調節手段(250)が軸方向において締め付けフランジ(25)と積層体との間に配置されていることを特徴とする、請求項2記載の噴射装置。
【請求項4】
締め付けフランジ(25)が積層体の熱膨張と異なる熱膨張を有することと、プレストレス手段が締め付けフランジ(25)と積層体との間に配置された少なくとも一つの弾性手段(251)を備えていることとを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の噴射装置。
【請求項5】
弾性手段(251)が積層体と調節手段(250)との間に配置されていることを特徴とする、請求項4と組み合わせた請求項2および3のいずれか一方に記載の噴射装置。
【請求項6】
締め付けフランジ(25)が積層体の両側の二つの横面(C)、(D)に載っていることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の噴射装置。
【請求項7】
少なくとも一つのニードル(4)を備えていることと、積層体が増幅器(21)と呼ばれる少なくとも一つの部分(21)を備え、この部分が前記横面(C)、(D)の一方の位置で軸方向にニードル(4)に取付けられており、電気活性部分(22)とニードル(4)とが軸方向において増幅器(21)の各側に配置されていることとを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の噴射装置。
【請求項8】
増幅器(21)が、軸(AB)に沿ってニードル(4)に近づく程細くなる少なくとも一つのセグメントを有することと、締め付けフランジ(25)の少なくとも一部が増幅器(21)の前記狭窄セグメントの形状によく似ていることとを特徴とする、請求項7記載の噴射装置。
【請求項9】
積層体が後部ウェイト(23)と呼ばれる少なくとも一つの他の部分(23)を有し、増幅器(21)と後部ウェイト(23)とが軸方向において電気活性部分(22)の各側に配置されていることと、後部ウェイト(23)が軸方向において電気活性部分(22)とは反対の側に壁を有し、この壁が、軸方向においてニードル(4)とは反対の側の積層体の横面(C)とは区別不能であることとを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載の噴射装置。
【請求項10】
締め付けフランジ(25)とケーシング(1)とが少なくとも一つの縦方向接触領域(UW)を有することを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載の噴射装置。
【請求項11】
積層体の電気活性部分(22)を設定周期τで振動させるための励起手段(14)を備えていることと、積層体がアクチュエータ(2)から区別不能であることと、増幅器(21)と電気活性部分(22)と後部ウェイト(23)とが、プレストレス手段によって互いに対して強く押し付けられ、電気活性部分(22)の振動によって生じる音波を伝えるのに適していることとを特徴とする、請求項7、9と組み合わせた前記請求項のいずれか一項に記載の噴射装置。
【請求項12】
積層体の二つの横面(C)、(D)の間の長さ(L)が、電気活性部分(22)の振動によって生じてこの長さ(L)を伝わる音波の伝播時間(T)がプラスマイナス許容誤差で等式T=n×[τ/2](n=非ゼロの正の指数の乗数)を満足するような大きさであることを特徴とする、請求項11記載の噴射装置。
【請求項13】
ノズル(3)を備え、このノズルが、前記軸(AB)に沿って噴射穴と座部(5)とを備え、かつ反対側の端部でケーシング(1)に連結されていることと、
ニードル(4)が、座部(5)との接触領域に、前記軸(AB)に沿って、弁要素を画定する第1端部(6)を有し、かつ反対側の端部でアクチュエータ(2)の積層体に連結され、アクチュエータがこのニードル(4)を振動させて、ニードルの第1端部(6)とノズル(3)の座部(5)との間に、弁要素を交互に開閉するのに適した相対運動を生じさせることと、
−ノズル(3)およびケーシング(1)と、ニードル(4)およびアクチュエータ(2)とが、それぞれ音波を伝播させる第1媒体と第2媒体とを形成し、各媒体が、等式I=Σ×ρ×c(Σ=軸(AB)に対して垂直な媒体の断面の表面、ρ=媒体の比重、c=媒体の音速)で定義される線形音響インピーダンス(I)を有し、
−少なくとも一つの線形音響インピーダンス破壊領域が、ノズル(3)またはケーシング(1)に沿って座部(5)と第1端部(6)との接触領域から距離をおいて存在し、少なくとも一つの他の線形音響インピーダンス破壊領域が、ニードル(4)またはアクチュエータ(2)に沿って第1端部(6)と座部(5)との接触領域から距離をおいて存在し、かつ
−前記線形音響インピーダンス破壊領域または他の線形音響インピーダンス破壊領域が、それぞれケーシング(1)とアクチュエータ(2)の方に向かう音波の伝播方向において、ニードル(4)の第1端部(6)と座部(5)との前記接触領域から一番目の領域であることと
を特徴とする、請求項11または12に記載の噴射装置。
【請求項14】
座部(5)と第1端部(6)の間の接触領域と、ノズル(3)またはケーシング(1)に沿った第1の線形音響インピーダンス破壊領域との間の、第1距離(L)と呼ばれる距離が、積層体の電気活性部分(22)によって生じてこの第1距離(L)に沿って伝わる音波の伝播時間(T)がプラスマイナス許容誤差で等式T=n×[τ/2](n=非ゼロの整数の乗数)を満たすような大きさであることと、
第1端部(6)と座部(5)の間の接触領域と、ニードル(4)またはアクチュエータ(2))に沿った第1の線形音響インピーダンス破壊領域との間の、第2距離(L)と呼ばれる距離が、積層体の電気活性部分(22)によって生じてこの第2距離(L)を伝わる音波の伝播時間(T)がプラスマイナス許容誤差で等式T=n×[τ/2](n=非ゼロの整数の乗数)を満たすような大きさであることと
を特徴とする、請求項13記載の噴射装置。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれか一項に記載の流体噴射装置(131)を使用する内燃機関(151)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9−11】
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【図12−14】
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【図15】
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【図16】
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【公表番号】特表2010−531410(P2010−531410A)
【公表日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−514061(P2010−514061)
【出願日】平成20年6月25日(2008.6.25)
【国際出願番号】PCT/FR2008/051147
【国際公開番号】WO2009/007596
【国際公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【出願人】(507308902)ルノー・エス・アー・エス (281)
【Fターム(参考)】