流体噴射装置
【課題】流体を受容する吸収部材として線状のものを用い、これを移動させる場合において、吸収材が切れたことを事前に検出可能とし、切れた吸収材が引き起こす不具合の発生を防止した流体噴射装置を提供する。
【解決手段】複数のノズルからなるノズル列Lを有し、ノズル列Lから流体を噴射する流体噴射ヘッド21A〜Eを備えた流体噴射装置である。ノズル列Lに沿って延在するとともに、ノズル列Lに沿って移動可能に設けられ、ノズルから噴射された流体を吸収する線状の吸収部材12を含む流体吸収ユニット11と、吸収部材12が切れたことを検出する検出装置100と、を備える。検出装置100により吸収部材12が切れたことが検出された場合に、少なくとも流体噴射ヘッド21A〜Eの駆動が停止状態とされる。
【解決手段】複数のノズルからなるノズル列Lを有し、ノズル列Lから流体を噴射する流体噴射ヘッド21A〜Eを備えた流体噴射装置である。ノズル列Lに沿って延在するとともに、ノズル列Lに沿って移動可能に設けられ、ノズルから噴射された流体を吸収する線状の吸収部材12を含む流体吸収ユニット11と、吸収部材12が切れたことを検出する検出装置100と、を備える。検出装置100により吸収部材12が切れたことが検出された場合に、少なくとも流体噴射ヘッド21A〜Eの駆動が停止状態とされる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体噴射装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、インク滴を記録紙(媒体)に対して噴射させる流体噴射装置として、インクジェット式プリンター(以下、「プリンター」という。)が広く知られている。このようなプリンターにおいては、記録ヘッドのノズルからインクが蒸発することによるインクの増粘や固化、塵埃の付着、さらには気泡の混入などによりノズルに目詰まりを生じ、印刷不良を引き起こすという問題があった。そこで、通常、プリンターは、記録紙に対しての噴射とは別に、ノズル内のインクを強制的に吐出させるフラッシング動作を行うようになっている。
【0003】
走査タイプのプリンターでは、記録ヘッドを記録領域以外のエリアに移動させてフラッシング動作を行うが、記録ヘッドが固定されたラインヘッドを備えるプリンターでは、フラッシング動作時に記録ヘッドを移動させることができない。そこで、例えば、記録紙の搬送ベルトの表面に設けられた吸収部材に向けてインクを吐出する方法が考えられている(特許文献1)。
【0004】
しかしながら、特許文献1の技術では、搬送ベルト上に複数の吸収材が記録紙のサイズに合わせて等間隔に配置されているため、フラッシング時においては記録紙間の隙間を狙ってインクを噴射しなければならず、記録紙のサイズや搬送速度に制約が生じてしまうという問題がある。また、平面形状の吸収材に対してフラッシングを行うと、インク滴の吐出に伴う風圧によってミスト状のインクが散ってしまい、記録紙や搬送ベルト上を汚してしまうおそれもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−119284号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、吸収材として線状のものを用い、この線状の吸収部材(吸収材)をラインヘッドと記録紙(記録媒体)との間に配置し、これに向けてインクを噴射しフラッシングすることにより、インクを吸収部材に受容させることが考えられる。その場合に、この吸収部材については受容できるインク量に限界があるため、ある程度インクを受容させたら吸収部材を移動させ、吸収部材の新たな領域に向けてフラッシングを行い、再度インクの受容を行わせるようにすることが考えられる。
【0007】
しかしながら、線状の吸収材は使用中に切れるおそれがあり、このように吸収材が切れた状態でフラッシング動作や印刷動作を続けると、インクによって記録紙の搬送面を汚してしまうおそれがある。
【0008】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、流体を受容する吸収部材として線状のものを用い、これを移動させる場合において、吸収材が切れたことを事前に検出可能とし、切れた吸収材が引き起こす不具合の発生を防止した流体噴射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明の流体噴射装置によれば、複数のノズルからなるノズル列を有し、該ノズル列から流体を噴射する流体噴射ヘッドを備えた流体噴射装置であって、前記ノズル列に沿って延在するとともに、該ノズル列に沿って移動可能に設けられ、前記ノズルから噴射された流体を吸収する線状の吸収部材を含む流体吸収ユニットと、前記吸収部材が切れたことを検出する検出装置と、を備え、前記検出装置により前記吸収部材が切れたことが検出された場合に、少なくとも前記流体噴射ヘッドの駆動が停止状態とされることを特徴とする。
【0010】
本発明の流体噴射装置によれば、検出装置により吸収部材が切れたことが検出されると、少なくとも流体噴射ヘッドの駆動が停止されるので、流体噴射ヘッドから流体が噴射されることで装置内が汚れるといった不具合の発生を防止できる。
【0011】
また、上記流体噴射装置においては、前記検出装置は、付勢力を利用して前記吸収部材に張力を付与する張力付与部と、張力付与部の位置を検出する検出センサと、を含むのが好ましい。
この構成によれば、吸収部材が切れた際に張力付与部は付勢力によって移動することとなり、張力付与部の位置は検出センサによって検出される。よって、簡便且つ確実な構成により吸収部材が切れたことを検出することができる。
【0012】
また、上記流体噴射装置においては、前記検出装置は、前記検出センサを複数有し、各々の前記検出センサが前記張力付与部の異なる部分を検出するのが好ましい。
この構成によれば、検出装置は、張力付与部の複数個所の位置を検出するため、切れ以外の例えば弛み等といった吸収部材における様々な状況を検出することができる。
【0013】
また、上記流体噴射装置においては、前記検出装置は、前記検出センサを複数有し、各々の前記検出センサが前記張力付与部の異なる部分を検出するのが好ましい。
【0014】
また、上記流体噴射装置においては、前記吸収部材を前記ノズル列に沿って移動させる移動部を有し、前記検出装置は、前記検出センサの検出結果に基づき、前記移動部を駆動するのが好ましい。
この構成によれば、検出センサの検出結果に基づいて移動部を駆動することで、例えば吸収部材に生じている弛み等の不具合を解消することができる。
【0015】
また、上記流体噴射装置においては、前記検出装置は、前記吸収部材が切れたことを検出した後、前記流体吸収ユニットの通常動作時に比べて遅い速度で前記移動部を駆動して前記吸収部材を移動するのが好ましい。
この構成によれば、通常動作時に比べて遅い速度で移動部が駆動されるので、切れた吸収部材が装置内で絡ませることなく一端側に移動することができる。よって、吸収部材の交換作業を簡便なものとすることができる。
【0016】
また、上記流体噴射装置においては、前記検出装置は前記移動部における駆動電流量の変化に基づき、前記吸収部材が切れたことを検出するのが好ましい。
吸収部材が切れると吸収部材による駆動部の負荷が無くなるため、駆動部の駆動に要する駆動電流が少なくなる。そこで、本発明を採用すれば、吸収部材が切れたことを簡便且つ確実に検出できる。
【0017】
また、上記流体噴射装置においては、前記吸収部材の移動量を計測する移動量計測部を有し、前記検出装置は前記移動量計測部の測定結果に基づき、前記吸収部材が切れたことを検出するのが好ましい。
吸収部材が切れると吸収部材が移動しないため、吸収部材の移動を測定できなくなる。そこで、本発明を採用すれば、吸収部材が切れたことを簡便且つ確実に検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】第1実施形態のプリンターの概略構成を示す斜視図。
【図2】ヘッドユニットの概略構成を示す斜視図。
【図3】記録ヘッドの概略構成を示す斜視図。
【図4】キャップユニットの概略構成を示す斜視図。
【図5】フラッシングユニットの概略構成を示す斜視図。
【図6】吸収部材の移動位置を示す平面図。
【図7】吸収部材の一例を示す模式図。
【図8】プリンターにおける電気的な構成を示すブロック図。
【図9】検出機構の概略構成を示す図。
【図10】検出機構の要部の構成を示す図。
【図11】検出機構による検出結果とその対応に関する図。
【図12】吸収部材の状態について説明する図。
【図13】吸収部材が切れたことを検出するステップの説明図。
【図14】制御部による検出ステップの要部説明図。
【図15】プリンターの動作を示すフローチャート。
【図16】プリンターの動作を示す要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態につき、図面を参照して説明する。なお、以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。
【0020】
本発明の流体噴射装置の一実施形態について説明する。本実施形態では、流体噴射装置として、インクジェットプリンター(以下、単にプリンターと称す)について例示する。
【0021】
(プリンター)
図1はプリンターの概略構成斜視図、図2はヘッドユニットの概略構成斜視図、図3はヘッドユニットを構成する記録ヘッドの概略構成斜視図、図4はキャップユニットの概略構成斜視図である。
【0022】
図1に示すように、プリンター1は、ヘッドユニット2と、記録紙(媒体)を搬送する搬送装置3と、記録紙を供給する給紙ユニット4と、ヘッドユニット2によって印字された記録紙を排出する排紙ユニット5と、ヘッドユニット2に対してメンテナンス処理を行うメンテナンス装置10とを備えている。
【0023】
搬送装置3は、ヘッドユニット2を構成する各記録ヘッド(流体噴射ヘッド)21(21A,21B,21C,21D,21E)のノズル面23との間に所定の間隔をあけた状態で記録紙を保持するようになっている。搬送装置3は、駆動ローラー部31と、従動ローラー部32と、これらローラー部31,32との間に架け回された複数のベルトから構成された搬送ベルト部33と、を備えている。また、搬送装置3の記録紙の搬送方向下流側(排紙ユニット5側)であって、排紙ユニット5との間に、記録紙を保持する保持部材34が設けられている。
【0024】
駆動ローラー部31は、回転軸方向の一端側が不図示の駆動モータに接続されており、駆動モータにより回転駆動されるようになっている。駆動ローラー部31の回転動力が搬送ベルト部33に伝達され、搬送ベルト部33が回転駆動される。駆動ローラー部31と駆動モータとの間には必要に応じて伝達ギアが設置される。従動ローラー部32は、いわゆるフリーローラーであり、搬送ベルト部33を支持するとともに搬送ベルト部33(駆動ローラー部31)の回転駆動に従動して回転される。
【0025】
排紙ユニット5は、排紙用ローラー51と、排紙用ローラー51により搬送された記録紙を保持する排紙トレー52とを備えている。
【0026】
ヘッドユニット2は、複数(本実施形態では5つ)の記録ヘッド21A〜21Eをユニット化することで構成されており、各記録ヘッド21A〜21Eの各ノズル24(図3参照)からは複数色のインク(例えば、ブラックB、マゼンタM、イエローY、シアンCの各インク)が吐出されるようになっている。上記記録ヘッド21A〜21E(以下、記録ヘッド21と称す場合もある)は、取付板22に取付けられることでユニット化されている。すなわち、本実施形態に係るヘッドユニット2は、複数の記録ヘッド21(単一ヘッド部材)を複数組み合わせ、ヘッドユニット2の有効印字幅が記録紙の横幅(搬送方向と直交する幅)と略同等とされるラインヘッドモジュールを構成している。なお、上記各記録ヘッド21A〜21Eにおけるそれぞれの構造自体は共通とされている。
【0027】
図2に示すように、ヘッドユニット2は、取付板22に形成された開口部25内に各記録ヘッド21A〜21Eが配置されている。具体的には、各記録ヘッド21A〜21Eが取付板22の裏面22b側に螺子止めされることで、ノズル面23が上記開口部25を介して取付板22の表面22a側から突出した状態に配置されている。また、ヘッドユニット2は、上記取付板22が不図示のキャリッジに固定されることでプリンター1に搭載されたものとなっている。
【0028】
本実施形態におけるヘッドユニット2は、上記不図示のキャリッジによって記録位置とメンテナンス位置との間(図1中の矢印で示す方向)で移動可能とされている。ここで、記録位置とは、搬送装置3に対向し且つ記録紙に対して記録を行う位置である。一方、メンテナンス位置とは、搬送装置3上から退避した位置であってメンテナンス装置10と対向する位置である。このメンテナンス位置においてヘッドユニット2に対するメンテナンス処理(吸引処理、ワイピング処理)が実施される。
【0029】
図3に示すように、ヘッドユニット2を構成する記録ヘッド21A〜21E(以下、単に記録ヘッド21と称す場合もある)は、複数のノズル24により構成されるノズル列Lが形成されたノズル面23を有するヘッド本体25Aと、このヘッド本体25Aが取付けられる支持部材28と、を備えている。
【0030】
各記録ヘッド21A〜21Eは、4色(イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(Bk))に対応したノズル列(L(Y),L(M),L(C),L(Bk))を4列有している。各ノズル列(L(Y),L(M),L(C),L(Bk))において、当該ノズル列(L(Y),L(M),L(C),L(Bk))を構成するノズル24は、記録紙の搬送方向と交差する水平方向に配列され、より好適には記録紙の搬送方向と直交する水平方向に配列されている。そして、記録ヘッド21A〜21Eの配置方向において、同じ色に対応するノズル列Lが一致している。
【0031】
支持部材28には、ノズル面23の長手方向の両側に張り出し部26、26が形成されている。また、張り出し部26、26には、記録ヘッド21を上記取付板22の裏面22bに螺子止めするための貫通孔27が形成されている。これにより、複数の記録ヘッド21が取付板22に取付けられて上記ヘッドユニット2が構成されている(図1参照)。
【0032】
メンテナンス装置10は、ヘッドユニット2に対して吸引処理を行うキャップユニット6と、ヘッドユニット2に対してフラッシング動作を行うとを有して構成されている。
【0033】
図4に示すように、キャップユニット6は、上記ヘッドユニット2に対してメンテナンス処理を行うもので、各記録ヘッド21A〜21Eに対応する複数(本実施形態では5つ)のキャップ部61A〜61Eをユニット化することで構成されている。このキャップユニット6は、ヘッドユニット2の記録エリアから外れた場所に配置され、ここでは、搬送装置3とは対向しない位置に配置されている。
【0034】
各キャップ部61A〜61Eは、記録ヘッド21A〜21Eの各々にそれぞれ対応するものであり、各記録ヘッド21A〜21Eのノズル面23に当接可能に構成されている。
キャップ部61A〜61Eが、記録ヘッド21A〜21Eの各ノズル面23に対してそれぞれ密着することにより、吸引動作において各ノズル面23からインク(流体)を排出させる吸引動作を良好に行うことができるようになっている。
【0035】
キャップユニット6を構成する各キャップ部61A〜61E(以下、単にキャップ部61と称す場合もある)は、キャップ本体67と、キャップ本体67の上面に枠状に設けられ、記録ヘッド21に当接されるシール部材62と、記録ヘッド21のノズル面23を払拭するワイピング処理時に用いられるワイプ部材63と、これらキャップ本体67及びワイプ部材63を一体的に保持する筐体部64と、を備えている。
【0036】
筐体部64の底部には、筐体部64を上記ベース部材69に保持するための保持部65が2つ(1つは不図示)形成されている。これら保持部65は平面視において筐体部64における対角をなす位置に配置されている。保持部65の各々には、筐体部64をベース部材69に螺子止め固定するための螺子が挿入される貫通孔65bが形成されている。
【0037】
フラッシングユニット(流体吸収ユニット)11は、図5(a),(b)に示すように、フラッシング動作時に吐出されたインク滴を吸収する複数の吸収部材12と、これら複数の吸収部材12を支持する支持機構9と、を備えている。
【0038】
吸収部材12は、各ノズル24から吐出されたインク滴を吸収する線状部材であって、図5に示すように、1つのヘッドユニット2に対して4本設けられている。各吸収部材12は、各色のノズル24が配列されて構成されるノズル列(L(Y),L(M),L(C),L(Bk))に沿って延在し、各ノズル面23と記録紙の搬送領域との間に位置している。この吸収部材12は、例えば糸材などから構成されている。吸収部材12の材料としては、表面に親水加工が施された化学繊維などが挙げられ、インクを効率よく吸収、保持できるものが好ましい。また、この吸収部材12は、ノズル径に対して5〜75倍程度の幅を有している。一般的なプリンターでは、各記録ヘッド21A〜21Eにおける各ノズル面23と記録紙との間のギャップが2mm程度、ノズル径が約0.02mmとなっていることから、吸収部材12は、直径が1mm以下であれば、各ノズル面と記録紙との間に配置することができ、かつ部品の誤差を考慮しても吐出されたインク滴を吸収部材で補足することができる。そのため、好適には吸収部材12はノズル径に対して10〜50倍程度が良い。なお、吸収部材12については、後により詳しく説明する。
また、吸収部材12の長さは、ヘッドユニット2の有効印字幅に対して十分な長さを有していることが好ましい。後に詳説するが、本実施形態のプリンター1においては、吸収部材12の使用済み(インク吸収済み)の領域が順次巻き取られ、吸収部材12の全領域においてインクが吸収された場合に吸収部材12そのものを取り替える構成を採用している。このため、吸収部材12の取替え期間を実用に耐えうる時間とすべく、吸収部材12の長さは、ヘッドユニット2の有効印字幅の数百倍程度であることが好ましい。ただし、プリンター1内において洗浄等を行うことにより吸収部材12の再生を行う場合には、吸収部材12の長さは、ヘッドユニット2の有効印字幅の2倍よりも若干程度長ければ良い。
【0039】
支持機構9は、第1移動機構13および第2移動機構14を備えている。この支持機構9は、ヘッドユニット2と略一体とされている。
第2移動機構14は、吸収部材12をノズル列の延在方向と交差(本実施形態においては直交)する方向に移動させることにより、吸収部材12をノズル24に対向するフラッシング位置と対向しない退避位置との間で移動させる。また、第1移動機構13は、吸収部材12を走行させることによってノズル列の延在方向に沿って移動させる。
【0040】
第1移動機構13は、図1,図5(a)に示すように、ノズル列方向におけるヘッドユニット2の両側であって、取付板22の裏面22b側(ヘッド21A〜21Eのノズル面23と反対側)に各々の回転軸を記録紙の搬送方向に平行とされた送り出し用回転部(移動部)15及び巻取り用回転部(移動部)16を有している。送り出し用回転部15は、吸収部材12を巻き取った状態からこれを巻き出すことで送り出すためのものである。また、巻取り用回転部16は、送り出し用回転部15から送り出された吸収部材12を巻き取るためのものである。
【0041】
送り出し用回転部15は、回転軸15aと、回転軸15aに所定間隔を空けて配置された仕切り板15bとによりボビン形状を呈してなる回転部材である。また、巻取り用回転部16は、送り出し用回転部15と同様、回転軸16aと、回転軸16aに所定間隔を空けて配置された仕切り板16bとによりボビン形状を呈してなる回転部材である。
【0042】
本実施形態では、図示を簡略化する都合上、省略しているものの、吸収部材12ごとに送り出し用回転部15及び巻取り用回転部16が設けられている。すなわち、本実施形態では、送り出し用回転部15及び巻取り用回転部16が4個ずつ設けられている。
【0043】
また、第1移動機構13は、図5に示すように、送り出し用回転部15を回転駆動するための駆動モータM1と、巻取り用回転部16を回転駆動するための駆動モータM2と、を備えている。これら駆動モータM1,M2は、例えばDCモータにより構成される。なお、不図示の送り出し用回転部15及び巻取り用回転部16についてもそれぞれ駆動モータM1,M2が設けられている。第1移動機構13は、このような構成に基づき、上記駆動モータM1,M2の回転によって、各吸収部材12の巻き出し及び巻き取りを行うようになっている。また、プリンター1は吸収部材12の送り出し量(移動量)を検出するための検出センサとしてエンコーダ(移動量計測部)90を有している(図9参照)。なお、本実施形態においては、吸収部材12は後述する検出機構100により支持されている。
【0044】
第2移動機構14は、図5(a),(b)に示すように、軸部14aに凸条部14bが螺旋状に巻回されてなる一対の移動部材14A,14B(リードスクリュー)を有するものであって、軸部14aと凸条部14bとによって形成される案内溝14c内に吸収部材12が1本ずつ廻し掛けられることで保持されるようになっている。移動機構14はノズル列方向におけるヘッドユニット2の両側であって、取付板22の表面22a(記録ヘッド21A〜21Eのノズル面23)側に配置されている。第1移動機構13の送り出し用回転部15と巻取り用回転部16とに巻架されている複数の吸収部材12を、移動部材14A、14Bに架け渡している。そして、ノズル面23と垂直方向において案内溝14cの端部は、ノズル面23に対してノズル面23より離れる方向にある。そのため、移動部材14A、14Bに架け渡された吸収部材12は、記録ヘッド21A〜21Eのノズル面23に接触させることなく保持できるようになっている。
【0045】
そして、図5(b)に示すように、本実施形態のプリンター1において、移動部材14A,14Bの軸方向に見た場合の凸条部14bの配列ピッチP1は、ノズル列の配列ピッチP2(図6参照)の2分の1(1を除く整数分の1)に設定されている。これによって、案内溝14cも、ノズル列の配列ピッチP2(図6参照)の2分の1となっている。このように、凸条部14bの配列ピッチP1が、ノズル列の配列ピッチP2の2分の1に設定されることによって、移動部材14A,14Bを1回転させることによって、吸収部材12をノズル列の配列ピッチP2の2分の1の距離移動させることができ、移動部材14A,14Bの細かな回転数制御を行うことなく、吸収部材12を後述するフラッシング位置と退避位置とに移動させることができる。
【0046】
なお、本実施形態のプリンター1においては、このような移動部材14A,14Bに対して、4本の吸収部材12が廻し掛けられているが、これらの吸収部材12は、1つ置きに案内溝14dに配置され、これによってノズル列の配列ピッチP2ごとに移動部材14A,14Bに対して直接廻し掛けられている。このため、全てのノズル列に対して、全ての吸収部材12をフラッシング位置と退避位置とに同様に移動することができる。
【0047】
また、第2移動機構14は、図5に示すように、移動部材14A,14Bを回転駆動する駆動装置14Cを備えている。上述のように、吸収部材12は、移動部材14A,14Bが1回転されることでフラッシング位置と退避位置とに移動する。このため駆動装置14Cは、指令のたびに移動部材14A,14Bを1回転のみ回転駆動する。このため、本実施形態のプリンター1における駆動装置14Cの制御は、極めて容易なものとなる。
【0048】
そして、支持機構9は、駆動モータM1,M2において送り出し用回転部15および巻取り用回転部16の回転速度をそれぞれ制御することによって、第1移動機構13および第2移動機構14に支持された複数の吸収部材12を撓ませることなく適度にテンションを与えた状態で保持する。
【0049】
支持機構9は、送り出し用回転部15から巻き出された各吸収部材12が各記録ヘッド21A〜21Eの各ノズル面23上を経由して巻取り用回転部16において巻き取られるようになっている。このため吸収部材12は、送り出し用回転部15および巻取り用回転部16の回転に伴い、ヘッドユニット2の各ノズル列Lの延在方向、すなわち記録紙の搬送方向に交差する方向へ移動されることになる。
【0050】
また、移動部材14A,14Bが、駆動装置14Cにより回転させられると、軸部14aと凸条部14bとによって形成される複数の案内溝14cが軸方向に沿って見かけ上移動することになる。これにより、ヘッドユニット2(ノズル列L)に対する各吸収部材12の位置を変化させることが可能である。具体的には、吸収部材12をヘッドユニット2の各ノズル列Lの延在方向に交差する方向、すなわち記録紙の搬送方向に沿って移動させることができる。本実施形態においては、吸収部材12をフラッシング位置と退避(記録)位置との間で移動させる。ここで、吸収部材12の直径を1mmとすると、部品寸法誤差や配置誤差を含めても1mm移動させればよい。凸条部14bの間隔を1mmとすれば、移動部材を1回転させれば吸収部材は1mm移動するので、複数の吸収部材12を容易に精度よく移動することが可能となるし、1mm移動するだけなので移動にかかる時間も少なくて済む。なお、記録ヘッド21と記録紙の距離は2mmあるので、その間に吸収部材12にテンションを与えた状態で配置しているので、移動の際に記録ヘッド21も記録紙も動かす必要はない。
【0051】
ここで、フラッシング位置とは、図6(b)に示すように、各吸収部材12が対応する複数のノズル列L(ノズル列Lを構成する複数のノズル24)にそれぞれ対向した状態であって、フラッシング動作時に各ノズル列Lから吐出されたインク滴を吸収できる位置である。一方、吸収部材12における退避位置とは、図6(a)に示すように、ノズル列L(ノズル列Lを構成する複数のノズル24)とは対向しない状態であって、記録動作時に各ノズル24から吐出された記録用のインク滴が吸収部材12に吸収されることのない位置である。
【0052】
図6(a)、(b)に示すように、移動部材14A、14Bを回転させることで、全ての吸収部材12が移動する。そして、本実施形態のプリンター1において各吸収部材12は、フラッシング位置はもちろん、退避位置においても、記録紙の搬送方向においてヘッド21のノズル面と記録紙との間に配置されている。
【0053】
なお、図1においては、ヘッドユニット2、メンテナンス装置10及びフラッシングユニット11が1組のみ図示している。ただし、実際には、記録紙の搬送方向にもう1組のヘッドユニット2、メンテナンス装置10及びフラッシングユニット11が配置されている。これらの2組は、機構的には同一の構成を有しているが、記録紙の搬送方向と直交する水平方向(ヘッド21A〜21Eの配列方向)にずれて配置されている。より詳細には、記録紙の搬送方向に見て、1組目のヘッドユニット2が備えるヘッド21A〜21E間に2組目のヘッドユニット2が備えるヘッド21A〜21Eが配置されている。このように、2組のヘッドユニット2、メンテナンス装置10及びフラッシングユニット11を記録紙の搬送方向と直交する水平方向にずれて配置することにより、全体的にはヘッド21A〜21Eが千鳥配置されることとなり、有効印字幅の全領域にインクを吐出することが可能となる。
【0054】
ただし、ヘッド21A〜21Eを記録紙の搬送方向と直交する方向に連接して配列する場合には、ヘッドユニット2、メンテナンス装置10及びフラッシングユニット11が1組のみとしても良い。この場合には、ヘッド21A〜21E間に十分な隙間が形成されないため、メンテナンス装置10が備えるキャップ部61A〜61Eをヘッド21A〜21Eごとに設けることが難しい。このため、全てのヘッド21A〜21Eのノズル24が囲える単一のキャップ部を用いることが好ましい。
【0055】
次に、本実施形態のプリンター1において、好適に用いることが可能な吸収部材12の具体的な構成について説明する。
吸収部材12は、例えば、SUS304、ナイロン、親水性コートを施したナイロン、アラミド、絹、綿、ポリエステル、超高分子量ポリエチレン、ポリアリレート、ザイロン(商品名)等の繊維、あるいはこれらの複数を含む複合繊維から形成することができる。
より詳細には、上記繊維あるいは複合繊維から形成される繊維束が、撚り合わされるあるいは束ねられることによって吸収部材12が形成可能である。
図7は、吸収部材12の一例を示す模式図であり、(a)が断面図、(b)が平面図である。この図に示すように、吸収部材12は、例えば、繊維から形成される繊維束12aが2本撚り合わされることによって形成される。
【0056】
また、一例としては、SUS304からなる繊維束が複数本撚り合わされた線状部材、ナイロンからなる繊維束が複数本撚り合わされた線状部材、親水性コートが施されたナイロンからなる繊維束が複数本撚り合わされた線状部材、アラミドからなる繊維束が複数本撚り合わされた線状部材、絹からなる繊維束が複数本撚り合わされた線状部材、綿からなる繊維束が複数本撚り合わされた線状部材、ベリーマ(商品名)からなる繊維束が束ねられた線状部材、ソアリオン(商品名)からなる繊維束が束ねられた線状部材、ハミロン03T(商品名)からなる繊維束が束ねられた線状部材、ダイニーマハミロンDB−8(商品名)からなる繊維束が束ねられた線状部材、ベクトランハミロンVB−30からなる繊維束が束ねられた線状部材、ハミロンS−5コアケブラースリーブポリエステル(商品名)からなる繊維束が束ねられた線状部材、ハミロンS−212コアカブラースリーブポリエステル(商品名)からなる繊維束が束ねられた線状部材、ハミロンSZ−10コアザイロンスリーブポリエステル(商品名)からなる繊維束が束ねられた線状部材、ハミロンVB−3ベクトラン(商品名)からなる繊維束が束ねられた線状部材を吸収部材12として好適に用いることができる。
ナイロンの繊維を用いた吸収部材12は、汎用水糸として広く用いられるナイロンによって形成されているため、安価なものとなる。
SUS材の金属繊維を用いた吸収部材12は、耐腐食性に優れるため多様なインクを吸収可能となると共に、樹脂と比較して磨耗性が高いため繰り返しの使用が可能となる。
超高分子ポリエチレンの繊維を用いた吸収部材12は、切断強度及び耐薬品性が高く、有機溶剤や酸、アルカリに強いものとなる。このように、超高分子ポリエチレンの繊維を用いた吸収部材12は、切断強度が高いため、強いテンションで引っ張ることが可能となり、撓みを抑止することができる。このため、例えば、吸収部材12の径を太くして吸収容量を増加させたり、また吸収部材12の径を太くしない場合にはヘッド21A〜21Eから記録紙の搬送領域までの距離を狭くし印刷精度を向上させることができる。また、ザイロンやアラミドの繊維を用いた吸収部材12も、超高分子ポリエチレンの繊維を用いた吸収部材12と同様の効果を期待できる。
綿の繊維を用いた吸収部材12は、インク吸収性に優れたものとなる。
【0057】
このような吸収部材12では、滴下されたインクは、表面張力によって繊維間及び繊維束12a間に形成される谷部12b(図7参照)に保持されることによって吸収された状態となる。
また、吸収部材12の表面に滴下したインクは、一部が直接吸収部材12の内部に浸透し、残りが繊維束12a間に形成される谷部12bを伝う。そして、吸収部材12の内部に浸透したインクは、吸収部材12の内部において一部が徐々に吸収部材12の延在方向に移動し吸収部材12の延在方向に分散して保持される。吸収部材12の谷部12bを伝うインクは、谷部12bを伝いながら、徐々にその一部が吸収部材12の内部に浸透し、残りが谷部12bに残存し、これによって吸収部材12の延在方向に分散して保持される。つまり、吸収部材12の表面に滴下したインクは、全てが滴下された箇所に留まるわけではなく、滴下された箇所の周囲に分散して吸収される。
【0058】
なお、実際にプリンター1に設置する吸収部材12の形成材料は、吸インク性、保持インク性、引張強度、耐インク性、成形性(けばやほつれの発生量)、ねじれ性、コスト等を考慮して選ぶこととなる。
【0059】
また、吸収部材12のインク吸収量は、吸収部材12の繊維間に保持できるインク量と谷部12bに保持できるインク量の合計である。このため、このインク吸収量が、吸収部材12の交換頻度等を考慮して、フラッシングによって吐出されるインク量よりも十分に大きくなるように吸収部材12の形成材料を選ぶこととなる。
なお、吸収部材12の繊維間に保持できるインク量及び谷部12bに保持できるインク量は、インクと繊維との接触角、インクの表面張力に依存する繊維隙間における毛細管力によって規定することができる。つまり、細い繊維によって形成することで、繊維間の隙間を多くし全体として繊維の表面積を増加することによって、吸収部材12の断面積が同一であっても、吸収部材12は、より多量のインクを吸収可能となる。したがって、より繊維間の隙間を多く得るために、繊維束12aを形成する繊維として、マイクロファイバー(極細繊維)を用いるようにしても良い。
ただし、吸収部材12のインク保持力は、繊維間の隙間が大きくなって毛細管力が低下することによって低減する。このため、繊維間の隙間は、吸収部材12におけるインク保持力が吸収部材12の移動によってインクが垂れない程度に設定する必要がある。
【0060】
また、吸収部材12の太さは、上述のインク吸収量を満足するように設定される。具体的には、例えば、吸収部材12の太さは、0.2〜1.0mmに設定され、より好適には0.5mm程度に設定する。
ただし、吸収部材12の太さは、ヘッド21A〜21E及び記録紙への接触を防止すべく、その最大寸法が、ヘッド21A〜21Eから記録紙の搬送領域までの離間距離から吸収部材12の撓みに起因する変位量を除いた寸法以下となるように設定される。
なお、吸収部材12の断面形状は、必ずしも円形である必要はなく、多角形等であっても良い。ここで、吸収部材は完全な円形に作るのは難しいので、円形とは略円形も含む。
【0061】
以上のように構成されたプリンター1においては、ヘッド21A〜21Eから記録紙にインクを吐出して印刷を行っている間に、全てのノズル24からインクを吐出しているわけではない。このため、インクを吐出していないノズル24内のインクは乾燥して粘土が増加する。インクが増粘すると、所望のインク量が吐出できなくなるため、インクが増粘しないよう定期的にインクを吸収部材12に吐出するフラッシング動作を行う。
そして、本実施形態のプリンター1が備える吸収部材12は、記録紙に対する印刷を行う際にはノズル24の下方からずれた退避位置に位置し、フラッシング動作を行う際にはノズル24の直下のフラッシング位置に位置する。つまり、フラッシング動作を行う際には、吸収部材12がノズル24の直下に位置するため印刷を行うことができず、印刷処理を止める必要がある。このため、フラッシング動作は、搬送される記録紙と記録紙との間がノズルの直下に位置する際に行うことが望ましい。本実施形態のプリンター1のような、いわゆるラインヘッドプリンターにおいては、通常、1分間に60枚程度の記録紙に対して印刷を行うため、5秒ごとに記録紙と記録紙との間がノズルの直下に位置することとなる。
したがって、本実施形態のプリンター1においては、例えば、5秒ごとや10秒ごとにフラッシング動作を行う。
【0062】
なお、連続的に複数の記録紙に対して印刷を行う場合において、記録紙と記録紙との間がノズル24の直下に位置する時間は短時間である。従来のプリンターにおいては、フラッシング動作のために行われる吸収部材あるいはヘッドユニットの移動が大きい。このため、従来のプリンター1では、上記短時間でフラッシング動作を完了することができず、記録紙の搬送を一時的に停止しており、この停止期間が単位時間あたりの印刷枚数を低減させる原因となる。これに対して、本実施形態のプリンター1においては、平面視において吸収部材12が各ヘッド21A〜21Eの直下の極めて狭い領域内で移動するだけで印刷とフラッシング動作とを切り替えることができ、記録紙と記録紙との間がノズル24の直下に位置する間にフラッシング動作を完了する、あるいはフラッシング動作のために記録紙の搬送を停止する期間を極めて短くすることができる。
【0063】
図8はプリンター1における電気的な構成を示すブロック図である。図8に示すようにプリンター1は、各装置の駆動を制御する制御部150を有しており、制御部150は給紙ユニット4、排紙ユニット5、メンテナンス装置10、ヘッドユニット2、フラッシングユニット11、及び、エンコーダ90、検出機構100(図9参照)に電気的に接続されており、これらの駆動を制御するようになっている。
【0064】
ところで、線状部材からなる吸収部材12は微細なため、製造状の不良や送り異常等により切れるおそれもある。吸収部材12が切れた状態で、フラッシング処理を実行するとノズル24から噴射されたインク滴によって記録紙の搬送面が汚れ、以降に印刷される記録紙などが通過すると紙面が汚れてしまう可能性がある。また、切れた状態の吸収部材12を第2移動機構14で移動させると、移動部材14A,14Bに吸収部材12が絡まる可能性もある。さらに吸収部材12が切れた状態のまま印刷処理を行うと、記録紙を搬送する搬送装置3などに切れた吸収部材12の一端や弛んだ吸収部材12が絡まる可能性もある。
【0065】
このような不具合に対し、本実施形態に係るプリンター1は、図1,5に示す吸収部材12が切れたことを検出する検出機構100を備えている。検出機構100は、制御部150と組み合わせることで本発明の検出装置として機能する。そして、プリンター1は、所定時間毎あるいは電源が入っている間において常に吸収部材12の状態を検出するようになっている。
【0066】
図9は検出機構100の概略構成を示す図である。検出機構100は、図9に示されるようにテンションレバー部(張力付与部)101と、テンションレバー部101の位置を検出する検出センサ102と、を備えている。本実施形態においては、図示を省略しているものの、検出機構100は各吸収部材12にそれぞれ設けられている。また、図面を見やすくするため、記録ヘッド21を1個だけ図示している。
【0067】
テンションレバー部101は、回転軸101aを中心として回転可能にプリンター1内に取り付けられたレバー103と、レバー103に対して回転可能に設けられるプーリー104と、一端がレバー103に固定されるとともに他端がプリンター1内に固定されるバネ部材105と、を備えている。吸収部材12は、送り出し用回転部15と第2移動機構14との間においてプーリー104に架け渡されている。送り出し用回転部15とプーリー104との間には、吸収部材12の搬送を補助する補助ローラー110が設けられている。
【0068】
テンションレバー部101は、バネ部材105が延びた状態でプーリー104に吸収部材12が架け渡されている。すなわち、テンションレバー部101は、吸収部材12に対して所定の張力を働かせる張力付与部としての機能を有する。
【0069】
レバー103は、略T字状の端部103aを有している。検出センサ102は第1検出センサPIAと第2検出センサPIBとを含んでおり、これら第1検出センサPIAおよび第2検出センサPIBは制御部150に電気的に接続されており、その検出結果を送信するようになっている。第1検出センサPIAおよび第2検出センサPIBは、例えばフォトインターラプターから構成されるものである。第1検出センサPIAおよび第2検出センサPIBは、図10に示すようにレバー103におけるT字状の端部103aの上方と下方の両側を囲むように配置されている。このように検出機構100は、レバー103における異なる2箇所の位置を測定することで後述するように吸収部材12における弛み等の状態を検出可能となっている。
【0070】
プリンター1は、制御部150が第1検出センサPIAおよび第2検出センサPIBによる検出結果に基づき、レバー103の状態を検出可能となっている。具体的に、プリンター1は上記検出結果に基づいて駆動モータM1,M2を駆動するようになっている。このようにして、プリンター1は吸収部材12の状態(弛み、切れ)を検出可能とされている。
【0071】
図11は、第1検出センサPIAおよび第2検出センサPIBによる検出結果と、この検出結果時の吸収部材12の状態、及び、このときの制御部150におけるモータM1,M2の制御の関係を示した表である。
【0072】
図11に示すように、制御部150は、第1検出センサPIAおよび第2検出センサPIBがそれぞれON状態の場合(すなわちレバー103の端部103aがセンサPIA,PIB間に位置する場合)、吸収部材12の状態が正常であると判定する。そして、制御部150は、駆動モータM1,M2を通常通り駆動する(図11においては○で示す)。
【0073】
また、制御部150は、第1検出センサPIAがOFF状態であり、第2検出センサPIBがON状態である場合に、吸収部材12がA状態であると判定する。図12(a)、(b)は吸収部材12の状態を示す図である。ここで、A状態とは図12(a)に示されるように、レバー103が通常位置(同図破線で示す位置)に比べ、上方に上がることで端部103aの下方側が第1検出センサPIAから外れた状態を意味する。この状態は吸収部材12に弛みが生じることに起因するものと考えられる。このように吸収部材12に弛みが生じた状態でフラッシング処理を行うと、ノズル24の直下に吸収部材12が位置しないため、インク滴が吸収部材12に良好に吸収されず、装置内を汚してしまうおそれがある。
【0074】
これに対し、制御部150は吸収部材12がA状態にあることを検出した場合、弛みを解消するように駆動モータM1,M2を駆動し、吸収部材12を移動する。具体的、制御部150は巻取り用回転部16(駆動モータM2)による巻取り速度に対して、送り出し用回転部15(駆動モータM1)による送り出し速度を遅くする。すなわち、制御部150は駆動モータM1を所定時間の間、減速(同図では△で示す)或いは停止(同図では×で示す)する。これにより、巻取り用回転部16は、吸収部材12を引張った状態で巻き取ることとなり、当該吸収部材12に生じていた弛みを解消することができる。よって、ノズル24の直下に吸収部材12を確実に配置できる。
【0075】
また、制御部150は、第1検出センサPIAがON状態であり、第2検出センサPIBがOFF状態である場合に、吸収部材12がB状態であると判定する。ここで、B状態とは図12(b)に示されるように、レバー103が通常位置(同図破線で示す位置)に比べ、下方に下がることで端部103aの上方側が第2検出センサPIBから外れた状態を意味する。この状態は、例えば巻取り用回転部16が何らかの異物等を巻き込むことにより吸収部材12に過剰に張力が働いたことに起因するものと考えられる。このように吸収部材12に過剰に張力が働いた状態でプリンター1が動作し続けると、吸収部材12が切れるおそれがある。
【0076】
これに対し、制御部150は吸収部材12がB状態にあることを検出した場合、張力を緩めるように駆動モータM1,M2を駆動し、吸収部材12を移動する。具体的、制御部150は送り出し用回転部15(駆動モータM1)による送り出し速度に対して、巻取り用回転部16(駆動モータM2)による巻取り速度を遅くする。すなわち、制御部150は駆動モータM2を所定時間の間、減速(同図では△で示す)或いは停止(同図では×で示す)する。これにより、送り出し用回転部15は、吸収部材12の張力を緩めた状態で送り出すこととなり、当該吸収部材12に生じていた張力を緩和することができる。よって、過剰張力の付与による吸収部材12の切れを防止できる。
【0077】
このようにプリンター1は、検出機構100の第1検出センサPIAおよび第2検出センサPIBによる検出結果に基づき、送り出し用回転部15及び巻取り用回転部16の駆動を制御することで吸収部材12に弛みや過剰に張力が付与された状態といった不具合を解消することができる。
【0078】
続いて、制御部150が、吸収部材12が切れたことを検出するステップについて図13を参照しつつ説明する。図13に示すように、制御部150は、第1検出センサPIAおよび第2検出センサPIBがそれぞれOFF状態の場合、吸収部材12が切れた可能性が高いことから、「切」の有無について判定を行う(ステップS1)。レバー103(プーリー104)は、通常バネ部材105により付勢された状態で吸収部材12に掛け渡されているため、吸収部材12が切れるとバネ部材105の付勢力によってレバー103が上方に上がり、端部103aのいずれもが第1検出センサPIAおよび第2検出センサPIBから外れるからである。
【0079】
まず、制御部150は駆動モータM1,M2を交互に駆動する(ステップS2)。吸収部材12が切れていなかった場合(例えば、送り出し用回転部15及び巻取り用回転部16に大きな異物が挟まった場合等)、駆動モータM1,M2を交互に駆動することで図12(a),(b)に示したA状態或いはB状態に戻る可能性があるからである。
【0080】
制御部150は、駆動モータM1,M2を駆動した後、第1検出センサPIAおよび第2検出センサPIBの信号に基づき、吸収部材12の状態を判定する(ステップS3)。ここで、吸収部材12が状態A或いは状態Bである場合、図11,12を参照して説明したように駆動モータM1,M2を最適に駆動することで、それぞれの状態を解消することができる(ステップS4,S5)。これにより、吸収部材12は正常な状態へと復帰する(ステップS6)。
【0081】
一方、吸収部材12が状態A或いは状態Bでない場合(すなわち、依然としてレバー103の端部103aが第1検出センサPIAおよび第2検出センサPIBの外側に位置している)、制御部150は吸収部材12が切れていると判定する(ステップS4,S7)。
【0082】
なお、制御部150は第1検出センサPIAおよび第2検出センサPIBからの信号がOFFになったタイミングを検出することで吸収部材12が切れたか否かの判定を行うようにしてもよい。
ここで、吸収部材12は通常駆動時に少なからず振動が生じるため、レバー103の端部103aが第1検出センサPIAおよび第2検出センサPIBから外れる場合がある。この場合、制御部150は、図14(a)に示すように第1検出センサPIAがON、OFF間で切り替わる信号と、第2検出センサPIBがON、OFF間で切り替わる信号とが交互に検出する。
一方、吸収部材12が切れた場合、図14(b)に示すように第1検出センサPIAおよび第2検出センサPIBからの信号が略同時にOFFとなるため、制御部150は上述のように信号がOFFになったタイミングに基づいて吸収部材12が切れたかどうかの判定を行うことが可能となる。
【0083】
制御部150は、吸収部材12が切れていると判定すると、プリンター1の動作を停止する。(ステップS8)。ここで、プリンター1の動作を停止するとはヘッドユニット2、フラッシングユニット11、及び記録紙を搬送する搬送装置3を含む全ての駆動を停止することを意味する。これにより、吸収部材12が切れた状態のまま、プリンター1が駆動してフラッシング処理が継続されることで吸収部材12が第2移動機構14の移動部材14A,14Bに絡まるといった不具合の発生を防止できる。また、吸収部材12が切れた状態のまま、印刷処理が行われることで、記録紙を搬送する搬送装置3などに切れた吸収部材12の一端や、切れることで弛んだ吸収部材12が絡まるといった不具合を防止できる。
【0084】
続いて、制御部150は駆動モータM1,M2のみを駆動し、切れた吸収部材12を回収する(ステップS9)。このとき、制御部150は送り出し用回転部15及び巻取り用回転部16の駆動速度、すなわち駆動モータM1,M2の駆動速度を通常のフラッシング処理時における駆動速度に比べて遅くするようにした。これにより、切れた吸収部材12がプリンター1内で絡まることなく、回収動作を行うことができる。よって、吸収部材12の交換作業を簡便に行うことができる。
【0085】
制御部150は、吸収部材12が切れたことを検出する方法として、上述の第1検出センサPIAおよび第2検出センサPIBを用いる方法に加え、エンコーダ90によって検出される吸収部材12の送り量に基づいて判断する構成であってもよい。吸収部材12が切れた場合、送り出し用回転部15及び巻取り用回転部16により吸収部材12が送り出されない或いは巻き取られないため、吸収部材12が移動しないことになるためである。
【0086】
また、制御部150は送り出し用回転部15及び巻取り用回転部16を回転させるための駆動モータM1,M2における駆動電流値を検出し、この検出結果に基づいて吸収部材12が切れたか否かの判定を行うようにしてもよい。吸収部材12が切れると駆動モータM1,M2が送り出し用回転部15及び巻取り用回転部16を回転させるために必要なトルクが低下するため、駆動電流値が低下するためである。
【0087】
次に、上述のフラッシング動作に関連する本実施形態のプリンター1の動作について、図15に示すフローチャートを用いて説明する。図16は、プリンターの動作を示す要部断面図である。また、本実施形態のプリンター1の動作は、制御部150によって統括されている。
【0088】
プリンター1は、所定の指令に基づいてフラッシング動作を開始する。
まず、制御部150は第2移動機構14を駆動させて、支持している複数の吸収部材12を図16(a)に示すようにフラッシング位置へ移動させる。具体的には、移動部材14A,14Bをそれぞれ所定の回転数(本実施形態においては1回転)で正転させることにより、各吸収部材12を記録ヘッド21A〜21Eにおける各ノズル列Lに対向させる(ステップS11)。このとき、各吸収部材12が記録ヘッド21A〜21Eの配置方向に並ぶ複数のノズル列Lにも対向した状態となる。
このようにして、4本の吸収部材12を各ノズル列Lのインク吐出方向上に出現させる。
【0089】
次に、制御部150は、ヘッドユニット2に対するフラッシング動作を実行し(ステップS12)、各記録ヘッド21A〜21Eの各ノズル列L(ノズル24)から、対向する吸収部材12に対してインク滴を噴射させる(例えば10滴程度)。ノズル列Lから吐出されたインク滴は吸収部材12に吸収される。
【0090】
制御部150は、ヘッドユニット2のフラッシング動作を実行している間、送り出し用回転部15及び巻取り用回転部16(駆動モータM1,M2)を駆動させて各吸収部材12を移動させることにより、吸収部材12におけるインクを吸収した部分の巻き取り動作を行う(ステップS13)。これにより、ノズル列Lから吐出されたインク滴は、吸収部材12のインクを含まない新しい部分に常に吐出されることになるので吸収部材12内にすばやく吸収される。
なお、ノズル径に対して吸収部材12の断面最大寸法を75倍くらい確保できる場合には、吸収部材12のインク吸収量が極めて大きくなる。このため、フラッシング動作を行いながら吸収部材12の巻取り動作を行わなくても良い。例えば、吸収部材12の同一箇所に100滴くらいのインクを吐出してもインクが垂れない場合には、フラッシング動作を10回行ってから吸収部材12を巻き取るようにしても良い。
【0091】
本実施形態では、移動機構13における吸収部材12の巻取り速度をインクの吐出量に応じて調整し、吐出量が多いときには吸収部材12が飽和しないように巻取り速度を高めて、インクの吸収漏れが生じないように高速で巻き取るようにする。
【0092】
フラッシング動作が終了すると(ステップS14)、制御部150は第2移動機構14を駆動させて図16(b)に示すように複数の吸収部材12を退避位置へと移動させる(ステップS15)。具体的には、移動部材14A,14Bをそれぞれ所定の回転数で反転させることにより、ノズル列Lと対向していた吸収部材12をノズル列Lと対向する位置から退避させる。なお、退避後に上述の巻取り動作を行っても良い。
【0093】
その後、制御装置は、記録紙に対する記録動作を再開する。
そして、記録動作の間などにフラッシング動作を複数回実行した後、送り出し用回転部15に巻回された吸収部材12の殆どが巻取り用回転部16へと巻き取られて、巻取り用回転部16による吸収部材12の巻き取りが終了したら新しいものと交換する。
【0094】
本実施形態によれば、記録ヘッド21と記録紙8との間に線状の吸収部材12を配置し、線状の吸収部材12を移動して記録ヘッド21のノズルに対向させてフラッシング時のインクを吸収することができるので、ヘッドユニット2を移動させることなくフラッシング動作を実行することが可能となる。ヘッドユニット2を移動させずに済むことから、フラッシング動作を適切な時期に短時間で行うことができる。
【0095】
また、細い線状部材のため、移動距離も短く、短時間が移動も済む。例えば、印字時にノズル列間に対応する位置に配置させておくことも可能である。
また、吸収部材12として、線状部材を用いることによって、インクが吸収部材12に滴下される際に、吸収部材12の周囲における上昇気流の発生を抑制し、ヘッド21A〜21Eにインクが付着することを防止することができる。このため、吸収部材12をヘッド21A〜21Eに近接させることが可能となり、インクが揮発することによって生じ、ヘッド21A〜21E等の汚染の原因となるミストの発生を抑制することができる。
【0096】
また、フラッシング時に吐出対象となるのが線状の吸収部材12であるため、吸収部材12への吐出時の風圧の影響によるドット抜けが生じにくい。また、フラッシング時に吐出されたインク滴はノズル24の近くで吸収部材12に全て吸収されるため、記録紙や搬送ベルト部33上が汚れてしまうのを防止できる。
【0097】
また、吐出されるインク量に応じて吸収部材12の巻き取り速度を変化させることにより、吸収部材12がインクで飽和しないうちに巻き取ることが可能である。これにより、フラッシングインクを漏らすことなく吸収部材12内に確実に吸収させることができる。
以上述べたように、本実施形態に係るプリンター1は、簡単な構成で高速にフラッシング動作を実行することができるので、印刷能力が向上する。
【0098】
なお、上記では、フラッシング動作中に吸収部材12を随時巻き取るようにしたが、吐出されるインク量が少なくて巻き取る必要がない場合は、吸収部材12を停止させておいてもよい。
【0099】
本実施形態に係るプリンター1は、制御部150が検出機構100により吸収部材12が切れたことを検出した場合に、少なくともヘッドユニット2及びフラッシングユニット11の駆動を一旦停止状態とするため、吸収部材12が切れた状態のまま、印刷処理が行われることで、記録紙を搬送する搬送装置3などに切れた吸収部材12の一端や、切れることで弛んだ吸収部材12が絡まるといった不具合を防止できる。
【0100】
また、移動機構14が、吸収部材12のノズル列Lの直交方向における位置を調整する位置調整機構を有していてもよい。これにより、吸収部材12をノズル列Lと対向する位置へと確実に移動させることができるとともに、ノズル列Lとは対向しない位置へと確実に退避させることが可能となる。
【0101】
また、記録動作時において、複数の吸収部材12を記録ヘッド21のノズル面23と対向しない位置まで大幅に退避させても良い。さらに、キャップユニットによるキャッピング時も同様に退避させることにより、記録ヘッド21のノズル面23をキャップ部61によって良好にキャッピングすることができる。
【0102】
なお、吸収部材として幅狭のテープ状部材(布など)を用いれば、記録ヘッド21とキャップ部61との間に吸収部材を介在させた状態であってもノズル面23を良好に封止することが可能である。
【0103】
また、本実施形態のプリンター1によれば、線状の吸収部材12(線状部材からなる吸収部材)をノズル列と対向させた状態(ノズル24から噴射されたインクの飛行経路に配置した状態)にすることで、各ノズル24から吐出されたインクを吸収部材12において吸収することが可能である。また、線状の吸収部材12のため、僅かな移動で吸収部材12を飛行経路から退避する位置に移動することができる。このため、本実施形態のプリンター1によれば、短時間でメンテナンスを終了できる。
また、本実施形態のプリンター1においては、移動部材14A,14Bとこの移動部材14A,14Bを回転駆動する駆動装置14Cとによって吸収部材12の移動が行われる。
このため、極めて簡単な構成でフラッシング動作を行うことが可能となる。
【0104】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもなく、上記各実施形態を組み合わせても良い。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0105】
例えば、プリンター1にクリーニング機構を設けてもよい。この場合、吸収部材12の移動方向下流側(移動部材14Bよりも下流側)に配置することにより、インクを吸収した吸収部材12を洗浄するなどクリーニング処理を実施できる。巻取り用回転部16には、洗浄後の再利用可能な吸収部材12が巻き取られることになり、例えば送り出し用回転部15及び巻取り用回転部16を逆方向に回転させることで再びフラッシング動作を実施することが可能になる。
【0106】
また、吸収部材の本数は、記録ヘッド21のノズル列Lに応じて適宜設定されるものとする。なお、上記各実施形態においては、1つのノズル列Lに対して1つの吸収部材を対応させる構成としたが、複数のノズル列Lに対して1つの吸収部材を対応させるようにしても良い。この場合は、吸収部材の幅を対応する複数のノズル列Lに合わせたものを採用する。
【0107】
また、上記実施形態においては、吸収部材12がノズル列に平行に沿う構成について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、必ずしも吸収部材12の延在方向とノズル列の延在方向とが完全に平行となるようにする必要はない。つまり、本発明において、ノズル列に沿って延在するとは、ノズル列と完全に平行となる状態のみに限定されるものではなく、ノズル列の延在方向に延長した延長線と吸収部材の延在方向に延長した延長線とが先の領域において交差する場合も含む意味である。
【0108】
また、上記実施形態においては、本発明をラインヘッド方式のプリンターに適用した構成について説明した。しかしながら、本発明は、これに限定されるものではなく、シリアル方式のプリンターに適用することもできる。
【0109】
また、上記実施形態においては、吸収部材12が常にヘッド21A〜21Eの直下を移動する構成について説明した。しかしながら、本発明は、これに限定されるものではなく、吸収部材12を退避させる際に、ヘッド21A〜21Eの直下から外れた領域(例えば、ヘッド21A〜21Eの側方)に移動させる構成を採用することもできる。
【0110】
また、上記実施形態においては、吸収部材12を移動することによって、吸収部材12とヘッド21A〜21Eの位置関係を変化する構成を採用した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、ヘッド21A〜21Eを移動することによって、吸収部材12とヘッド21A〜21Eの位置関係を変化する構成を採用しても良い。
【0111】
また、上記実施形態においては、メンテナンス処理の際に、吸収部材12、72がヘッド21A〜21Eと記録紙の搬送領域との間に位置する構成について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、メンテナンス処理の際に吸収部材12、72を記録紙の搬送領域の下方に位置する構成を採用しても良い。
【0112】
また、上記実施形態においては、凸条部14bの配列ピッチP1が、ノズル列の配列ピッチP2の2分の1に設定された構成について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、凸条部14bの配列ピッチP1は、ノズル列の配列ピッチP2の3以上の整数分の1に設定されていても良い。このように、凸条部14bの配列ピッチP1をノズル列の配列ピッチP2の1を除く整数分の1に設定することによって、移動部材14A,14Bの1回転あたりにおける吸収部材12の移動量を容易に算出することができ、駆動装置14Cの制御を容易にすることができる。
【0113】
上記実施形態では、インクジェット式のプリンターが採用されているが、インク以外の他の流体を噴射したり吐出したりする流体噴射装置と、その流体を収容した流体容器を採用しても良い。微小量の液滴を吐出させる流体噴射ヘッド等を備える各種の流体噴射装置に流用可能である。なお、液滴とは、上記流体噴射装置から吐出される流体の状態をいい、粒状、涙状、糸状に尾を引くものも含むものとする。また、ここでいう流体とは、流体噴射装置が噴射させることができるような材料であれ良い。
【0114】
例えば、物質が液相であるときの状態のものであれば良く、粘性の高い又は低い液状態、ゾル、ゲル水、その他の無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)のような流状態、また物質の一状態としての流体のみならず、顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散または混合されたものなどを含む。また、流体の代表的な例としては上記実施例の形態で説明したようなインクや液晶等が挙げられる。ここで、インクとは一般的な水性インクおよび油性インク並びにジェルインク、ホットメルトインク等の各種流体組成物を包含するものとする。
【0115】
流体噴射装置の具体例としては、例えば液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ、面発光ディスプレイ、カラーフィルタの製造などに用いられる電極材や色材などの材料を分散または溶解のかたちで含む流体を噴射する流体噴射装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する流体噴射装置、精密ピペットとして用いられ試料となる流体を噴射する流体噴射装置、捺染装置やマイクロディスペンサ等であってもよい。
【0116】
さらに、時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を噴射する流体噴射装置、光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂等の透明樹脂液を基板上に噴射する流体噴射装置、基板などをエッチングするために酸又はアルカリ等のエッチング液を噴射する流体噴射装置を採用しても良い。そして、これらのうちいずれか一種の噴射装置および流体容器に本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0117】
L…ノズル列、M1,M2…駆動モータ(移動部)、1…プリンター(流体噴射装置)、11…フラッシングユニット(流体吸収ユニット)、12…吸収部材、15…送り出し用回転部(移動部)、16…巻取り用回転部(移動部)、24…ノズル、21…記録ヘッド(流体噴射ヘッド)、90…エンコーダ(移動量計測部)、100…検出機構、101…テンションレバー部(張力付与部)、102…検出センサ
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体噴射装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、インク滴を記録紙(媒体)に対して噴射させる流体噴射装置として、インクジェット式プリンター(以下、「プリンター」という。)が広く知られている。このようなプリンターにおいては、記録ヘッドのノズルからインクが蒸発することによるインクの増粘や固化、塵埃の付着、さらには気泡の混入などによりノズルに目詰まりを生じ、印刷不良を引き起こすという問題があった。そこで、通常、プリンターは、記録紙に対しての噴射とは別に、ノズル内のインクを強制的に吐出させるフラッシング動作を行うようになっている。
【0003】
走査タイプのプリンターでは、記録ヘッドを記録領域以外のエリアに移動させてフラッシング動作を行うが、記録ヘッドが固定されたラインヘッドを備えるプリンターでは、フラッシング動作時に記録ヘッドを移動させることができない。そこで、例えば、記録紙の搬送ベルトの表面に設けられた吸収部材に向けてインクを吐出する方法が考えられている(特許文献1)。
【0004】
しかしながら、特許文献1の技術では、搬送ベルト上に複数の吸収材が記録紙のサイズに合わせて等間隔に配置されているため、フラッシング時においては記録紙間の隙間を狙ってインクを噴射しなければならず、記録紙のサイズや搬送速度に制約が生じてしまうという問題がある。また、平面形状の吸収材に対してフラッシングを行うと、インク滴の吐出に伴う風圧によってミスト状のインクが散ってしまい、記録紙や搬送ベルト上を汚してしまうおそれもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−119284号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、吸収材として線状のものを用い、この線状の吸収部材(吸収材)をラインヘッドと記録紙(記録媒体)との間に配置し、これに向けてインクを噴射しフラッシングすることにより、インクを吸収部材に受容させることが考えられる。その場合に、この吸収部材については受容できるインク量に限界があるため、ある程度インクを受容させたら吸収部材を移動させ、吸収部材の新たな領域に向けてフラッシングを行い、再度インクの受容を行わせるようにすることが考えられる。
【0007】
しかしながら、線状の吸収材は使用中に切れるおそれがあり、このように吸収材が切れた状態でフラッシング動作や印刷動作を続けると、インクによって記録紙の搬送面を汚してしまうおそれがある。
【0008】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、流体を受容する吸収部材として線状のものを用い、これを移動させる場合において、吸収材が切れたことを事前に検出可能とし、切れた吸収材が引き起こす不具合の発生を防止した流体噴射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明の流体噴射装置によれば、複数のノズルからなるノズル列を有し、該ノズル列から流体を噴射する流体噴射ヘッドを備えた流体噴射装置であって、前記ノズル列に沿って延在するとともに、該ノズル列に沿って移動可能に設けられ、前記ノズルから噴射された流体を吸収する線状の吸収部材を含む流体吸収ユニットと、前記吸収部材が切れたことを検出する検出装置と、を備え、前記検出装置により前記吸収部材が切れたことが検出された場合に、少なくとも前記流体噴射ヘッドの駆動が停止状態とされることを特徴とする。
【0010】
本発明の流体噴射装置によれば、検出装置により吸収部材が切れたことが検出されると、少なくとも流体噴射ヘッドの駆動が停止されるので、流体噴射ヘッドから流体が噴射されることで装置内が汚れるといった不具合の発生を防止できる。
【0011】
また、上記流体噴射装置においては、前記検出装置は、付勢力を利用して前記吸収部材に張力を付与する張力付与部と、張力付与部の位置を検出する検出センサと、を含むのが好ましい。
この構成によれば、吸収部材が切れた際に張力付与部は付勢力によって移動することとなり、張力付与部の位置は検出センサによって検出される。よって、簡便且つ確実な構成により吸収部材が切れたことを検出することができる。
【0012】
また、上記流体噴射装置においては、前記検出装置は、前記検出センサを複数有し、各々の前記検出センサが前記張力付与部の異なる部分を検出するのが好ましい。
この構成によれば、検出装置は、張力付与部の複数個所の位置を検出するため、切れ以外の例えば弛み等といった吸収部材における様々な状況を検出することができる。
【0013】
また、上記流体噴射装置においては、前記検出装置は、前記検出センサを複数有し、各々の前記検出センサが前記張力付与部の異なる部分を検出するのが好ましい。
【0014】
また、上記流体噴射装置においては、前記吸収部材を前記ノズル列に沿って移動させる移動部を有し、前記検出装置は、前記検出センサの検出結果に基づき、前記移動部を駆動するのが好ましい。
この構成によれば、検出センサの検出結果に基づいて移動部を駆動することで、例えば吸収部材に生じている弛み等の不具合を解消することができる。
【0015】
また、上記流体噴射装置においては、前記検出装置は、前記吸収部材が切れたことを検出した後、前記流体吸収ユニットの通常動作時に比べて遅い速度で前記移動部を駆動して前記吸収部材を移動するのが好ましい。
この構成によれば、通常動作時に比べて遅い速度で移動部が駆動されるので、切れた吸収部材が装置内で絡ませることなく一端側に移動することができる。よって、吸収部材の交換作業を簡便なものとすることができる。
【0016】
また、上記流体噴射装置においては、前記検出装置は前記移動部における駆動電流量の変化に基づき、前記吸収部材が切れたことを検出するのが好ましい。
吸収部材が切れると吸収部材による駆動部の負荷が無くなるため、駆動部の駆動に要する駆動電流が少なくなる。そこで、本発明を採用すれば、吸収部材が切れたことを簡便且つ確実に検出できる。
【0017】
また、上記流体噴射装置においては、前記吸収部材の移動量を計測する移動量計測部を有し、前記検出装置は前記移動量計測部の測定結果に基づき、前記吸収部材が切れたことを検出するのが好ましい。
吸収部材が切れると吸収部材が移動しないため、吸収部材の移動を測定できなくなる。そこで、本発明を採用すれば、吸収部材が切れたことを簡便且つ確実に検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】第1実施形態のプリンターの概略構成を示す斜視図。
【図2】ヘッドユニットの概略構成を示す斜視図。
【図3】記録ヘッドの概略構成を示す斜視図。
【図4】キャップユニットの概略構成を示す斜視図。
【図5】フラッシングユニットの概略構成を示す斜視図。
【図6】吸収部材の移動位置を示す平面図。
【図7】吸収部材の一例を示す模式図。
【図8】プリンターにおける電気的な構成を示すブロック図。
【図9】検出機構の概略構成を示す図。
【図10】検出機構の要部の構成を示す図。
【図11】検出機構による検出結果とその対応に関する図。
【図12】吸収部材の状態について説明する図。
【図13】吸収部材が切れたことを検出するステップの説明図。
【図14】制御部による検出ステップの要部説明図。
【図15】プリンターの動作を示すフローチャート。
【図16】プリンターの動作を示す要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態につき、図面を参照して説明する。なお、以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。
【0020】
本発明の流体噴射装置の一実施形態について説明する。本実施形態では、流体噴射装置として、インクジェットプリンター(以下、単にプリンターと称す)について例示する。
【0021】
(プリンター)
図1はプリンターの概略構成斜視図、図2はヘッドユニットの概略構成斜視図、図3はヘッドユニットを構成する記録ヘッドの概略構成斜視図、図4はキャップユニットの概略構成斜視図である。
【0022】
図1に示すように、プリンター1は、ヘッドユニット2と、記録紙(媒体)を搬送する搬送装置3と、記録紙を供給する給紙ユニット4と、ヘッドユニット2によって印字された記録紙を排出する排紙ユニット5と、ヘッドユニット2に対してメンテナンス処理を行うメンテナンス装置10とを備えている。
【0023】
搬送装置3は、ヘッドユニット2を構成する各記録ヘッド(流体噴射ヘッド)21(21A,21B,21C,21D,21E)のノズル面23との間に所定の間隔をあけた状態で記録紙を保持するようになっている。搬送装置3は、駆動ローラー部31と、従動ローラー部32と、これらローラー部31,32との間に架け回された複数のベルトから構成された搬送ベルト部33と、を備えている。また、搬送装置3の記録紙の搬送方向下流側(排紙ユニット5側)であって、排紙ユニット5との間に、記録紙を保持する保持部材34が設けられている。
【0024】
駆動ローラー部31は、回転軸方向の一端側が不図示の駆動モータに接続されており、駆動モータにより回転駆動されるようになっている。駆動ローラー部31の回転動力が搬送ベルト部33に伝達され、搬送ベルト部33が回転駆動される。駆動ローラー部31と駆動モータとの間には必要に応じて伝達ギアが設置される。従動ローラー部32は、いわゆるフリーローラーであり、搬送ベルト部33を支持するとともに搬送ベルト部33(駆動ローラー部31)の回転駆動に従動して回転される。
【0025】
排紙ユニット5は、排紙用ローラー51と、排紙用ローラー51により搬送された記録紙を保持する排紙トレー52とを備えている。
【0026】
ヘッドユニット2は、複数(本実施形態では5つ)の記録ヘッド21A〜21Eをユニット化することで構成されており、各記録ヘッド21A〜21Eの各ノズル24(図3参照)からは複数色のインク(例えば、ブラックB、マゼンタM、イエローY、シアンCの各インク)が吐出されるようになっている。上記記録ヘッド21A〜21E(以下、記録ヘッド21と称す場合もある)は、取付板22に取付けられることでユニット化されている。すなわち、本実施形態に係るヘッドユニット2は、複数の記録ヘッド21(単一ヘッド部材)を複数組み合わせ、ヘッドユニット2の有効印字幅が記録紙の横幅(搬送方向と直交する幅)と略同等とされるラインヘッドモジュールを構成している。なお、上記各記録ヘッド21A〜21Eにおけるそれぞれの構造自体は共通とされている。
【0027】
図2に示すように、ヘッドユニット2は、取付板22に形成された開口部25内に各記録ヘッド21A〜21Eが配置されている。具体的には、各記録ヘッド21A〜21Eが取付板22の裏面22b側に螺子止めされることで、ノズル面23が上記開口部25を介して取付板22の表面22a側から突出した状態に配置されている。また、ヘッドユニット2は、上記取付板22が不図示のキャリッジに固定されることでプリンター1に搭載されたものとなっている。
【0028】
本実施形態におけるヘッドユニット2は、上記不図示のキャリッジによって記録位置とメンテナンス位置との間(図1中の矢印で示す方向)で移動可能とされている。ここで、記録位置とは、搬送装置3に対向し且つ記録紙に対して記録を行う位置である。一方、メンテナンス位置とは、搬送装置3上から退避した位置であってメンテナンス装置10と対向する位置である。このメンテナンス位置においてヘッドユニット2に対するメンテナンス処理(吸引処理、ワイピング処理)が実施される。
【0029】
図3に示すように、ヘッドユニット2を構成する記録ヘッド21A〜21E(以下、単に記録ヘッド21と称す場合もある)は、複数のノズル24により構成されるノズル列Lが形成されたノズル面23を有するヘッド本体25Aと、このヘッド本体25Aが取付けられる支持部材28と、を備えている。
【0030】
各記録ヘッド21A〜21Eは、4色(イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(Bk))に対応したノズル列(L(Y),L(M),L(C),L(Bk))を4列有している。各ノズル列(L(Y),L(M),L(C),L(Bk))において、当該ノズル列(L(Y),L(M),L(C),L(Bk))を構成するノズル24は、記録紙の搬送方向と交差する水平方向に配列され、より好適には記録紙の搬送方向と直交する水平方向に配列されている。そして、記録ヘッド21A〜21Eの配置方向において、同じ色に対応するノズル列Lが一致している。
【0031】
支持部材28には、ノズル面23の長手方向の両側に張り出し部26、26が形成されている。また、張り出し部26、26には、記録ヘッド21を上記取付板22の裏面22bに螺子止めするための貫通孔27が形成されている。これにより、複数の記録ヘッド21が取付板22に取付けられて上記ヘッドユニット2が構成されている(図1参照)。
【0032】
メンテナンス装置10は、ヘッドユニット2に対して吸引処理を行うキャップユニット6と、ヘッドユニット2に対してフラッシング動作を行うとを有して構成されている。
【0033】
図4に示すように、キャップユニット6は、上記ヘッドユニット2に対してメンテナンス処理を行うもので、各記録ヘッド21A〜21Eに対応する複数(本実施形態では5つ)のキャップ部61A〜61Eをユニット化することで構成されている。このキャップユニット6は、ヘッドユニット2の記録エリアから外れた場所に配置され、ここでは、搬送装置3とは対向しない位置に配置されている。
【0034】
各キャップ部61A〜61Eは、記録ヘッド21A〜21Eの各々にそれぞれ対応するものであり、各記録ヘッド21A〜21Eのノズル面23に当接可能に構成されている。
キャップ部61A〜61Eが、記録ヘッド21A〜21Eの各ノズル面23に対してそれぞれ密着することにより、吸引動作において各ノズル面23からインク(流体)を排出させる吸引動作を良好に行うことができるようになっている。
【0035】
キャップユニット6を構成する各キャップ部61A〜61E(以下、単にキャップ部61と称す場合もある)は、キャップ本体67と、キャップ本体67の上面に枠状に設けられ、記録ヘッド21に当接されるシール部材62と、記録ヘッド21のノズル面23を払拭するワイピング処理時に用いられるワイプ部材63と、これらキャップ本体67及びワイプ部材63を一体的に保持する筐体部64と、を備えている。
【0036】
筐体部64の底部には、筐体部64を上記ベース部材69に保持するための保持部65が2つ(1つは不図示)形成されている。これら保持部65は平面視において筐体部64における対角をなす位置に配置されている。保持部65の各々には、筐体部64をベース部材69に螺子止め固定するための螺子が挿入される貫通孔65bが形成されている。
【0037】
フラッシングユニット(流体吸収ユニット)11は、図5(a),(b)に示すように、フラッシング動作時に吐出されたインク滴を吸収する複数の吸収部材12と、これら複数の吸収部材12を支持する支持機構9と、を備えている。
【0038】
吸収部材12は、各ノズル24から吐出されたインク滴を吸収する線状部材であって、図5に示すように、1つのヘッドユニット2に対して4本設けられている。各吸収部材12は、各色のノズル24が配列されて構成されるノズル列(L(Y),L(M),L(C),L(Bk))に沿って延在し、各ノズル面23と記録紙の搬送領域との間に位置している。この吸収部材12は、例えば糸材などから構成されている。吸収部材12の材料としては、表面に親水加工が施された化学繊維などが挙げられ、インクを効率よく吸収、保持できるものが好ましい。また、この吸収部材12は、ノズル径に対して5〜75倍程度の幅を有している。一般的なプリンターでは、各記録ヘッド21A〜21Eにおける各ノズル面23と記録紙との間のギャップが2mm程度、ノズル径が約0.02mmとなっていることから、吸収部材12は、直径が1mm以下であれば、各ノズル面と記録紙との間に配置することができ、かつ部品の誤差を考慮しても吐出されたインク滴を吸収部材で補足することができる。そのため、好適には吸収部材12はノズル径に対して10〜50倍程度が良い。なお、吸収部材12については、後により詳しく説明する。
また、吸収部材12の長さは、ヘッドユニット2の有効印字幅に対して十分な長さを有していることが好ましい。後に詳説するが、本実施形態のプリンター1においては、吸収部材12の使用済み(インク吸収済み)の領域が順次巻き取られ、吸収部材12の全領域においてインクが吸収された場合に吸収部材12そのものを取り替える構成を採用している。このため、吸収部材12の取替え期間を実用に耐えうる時間とすべく、吸収部材12の長さは、ヘッドユニット2の有効印字幅の数百倍程度であることが好ましい。ただし、プリンター1内において洗浄等を行うことにより吸収部材12の再生を行う場合には、吸収部材12の長さは、ヘッドユニット2の有効印字幅の2倍よりも若干程度長ければ良い。
【0039】
支持機構9は、第1移動機構13および第2移動機構14を備えている。この支持機構9は、ヘッドユニット2と略一体とされている。
第2移動機構14は、吸収部材12をノズル列の延在方向と交差(本実施形態においては直交)する方向に移動させることにより、吸収部材12をノズル24に対向するフラッシング位置と対向しない退避位置との間で移動させる。また、第1移動機構13は、吸収部材12を走行させることによってノズル列の延在方向に沿って移動させる。
【0040】
第1移動機構13は、図1,図5(a)に示すように、ノズル列方向におけるヘッドユニット2の両側であって、取付板22の裏面22b側(ヘッド21A〜21Eのノズル面23と反対側)に各々の回転軸を記録紙の搬送方向に平行とされた送り出し用回転部(移動部)15及び巻取り用回転部(移動部)16を有している。送り出し用回転部15は、吸収部材12を巻き取った状態からこれを巻き出すことで送り出すためのものである。また、巻取り用回転部16は、送り出し用回転部15から送り出された吸収部材12を巻き取るためのものである。
【0041】
送り出し用回転部15は、回転軸15aと、回転軸15aに所定間隔を空けて配置された仕切り板15bとによりボビン形状を呈してなる回転部材である。また、巻取り用回転部16は、送り出し用回転部15と同様、回転軸16aと、回転軸16aに所定間隔を空けて配置された仕切り板16bとによりボビン形状を呈してなる回転部材である。
【0042】
本実施形態では、図示を簡略化する都合上、省略しているものの、吸収部材12ごとに送り出し用回転部15及び巻取り用回転部16が設けられている。すなわち、本実施形態では、送り出し用回転部15及び巻取り用回転部16が4個ずつ設けられている。
【0043】
また、第1移動機構13は、図5に示すように、送り出し用回転部15を回転駆動するための駆動モータM1と、巻取り用回転部16を回転駆動するための駆動モータM2と、を備えている。これら駆動モータM1,M2は、例えばDCモータにより構成される。なお、不図示の送り出し用回転部15及び巻取り用回転部16についてもそれぞれ駆動モータM1,M2が設けられている。第1移動機構13は、このような構成に基づき、上記駆動モータM1,M2の回転によって、各吸収部材12の巻き出し及び巻き取りを行うようになっている。また、プリンター1は吸収部材12の送り出し量(移動量)を検出するための検出センサとしてエンコーダ(移動量計測部)90を有している(図9参照)。なお、本実施形態においては、吸収部材12は後述する検出機構100により支持されている。
【0044】
第2移動機構14は、図5(a),(b)に示すように、軸部14aに凸条部14bが螺旋状に巻回されてなる一対の移動部材14A,14B(リードスクリュー)を有するものであって、軸部14aと凸条部14bとによって形成される案内溝14c内に吸収部材12が1本ずつ廻し掛けられることで保持されるようになっている。移動機構14はノズル列方向におけるヘッドユニット2の両側であって、取付板22の表面22a(記録ヘッド21A〜21Eのノズル面23)側に配置されている。第1移動機構13の送り出し用回転部15と巻取り用回転部16とに巻架されている複数の吸収部材12を、移動部材14A、14Bに架け渡している。そして、ノズル面23と垂直方向において案内溝14cの端部は、ノズル面23に対してノズル面23より離れる方向にある。そのため、移動部材14A、14Bに架け渡された吸収部材12は、記録ヘッド21A〜21Eのノズル面23に接触させることなく保持できるようになっている。
【0045】
そして、図5(b)に示すように、本実施形態のプリンター1において、移動部材14A,14Bの軸方向に見た場合の凸条部14bの配列ピッチP1は、ノズル列の配列ピッチP2(図6参照)の2分の1(1を除く整数分の1)に設定されている。これによって、案内溝14cも、ノズル列の配列ピッチP2(図6参照)の2分の1となっている。このように、凸条部14bの配列ピッチP1が、ノズル列の配列ピッチP2の2分の1に設定されることによって、移動部材14A,14Bを1回転させることによって、吸収部材12をノズル列の配列ピッチP2の2分の1の距離移動させることができ、移動部材14A,14Bの細かな回転数制御を行うことなく、吸収部材12を後述するフラッシング位置と退避位置とに移動させることができる。
【0046】
なお、本実施形態のプリンター1においては、このような移動部材14A,14Bに対して、4本の吸収部材12が廻し掛けられているが、これらの吸収部材12は、1つ置きに案内溝14dに配置され、これによってノズル列の配列ピッチP2ごとに移動部材14A,14Bに対して直接廻し掛けられている。このため、全てのノズル列に対して、全ての吸収部材12をフラッシング位置と退避位置とに同様に移動することができる。
【0047】
また、第2移動機構14は、図5に示すように、移動部材14A,14Bを回転駆動する駆動装置14Cを備えている。上述のように、吸収部材12は、移動部材14A,14Bが1回転されることでフラッシング位置と退避位置とに移動する。このため駆動装置14Cは、指令のたびに移動部材14A,14Bを1回転のみ回転駆動する。このため、本実施形態のプリンター1における駆動装置14Cの制御は、極めて容易なものとなる。
【0048】
そして、支持機構9は、駆動モータM1,M2において送り出し用回転部15および巻取り用回転部16の回転速度をそれぞれ制御することによって、第1移動機構13および第2移動機構14に支持された複数の吸収部材12を撓ませることなく適度にテンションを与えた状態で保持する。
【0049】
支持機構9は、送り出し用回転部15から巻き出された各吸収部材12が各記録ヘッド21A〜21Eの各ノズル面23上を経由して巻取り用回転部16において巻き取られるようになっている。このため吸収部材12は、送り出し用回転部15および巻取り用回転部16の回転に伴い、ヘッドユニット2の各ノズル列Lの延在方向、すなわち記録紙の搬送方向に交差する方向へ移動されることになる。
【0050】
また、移動部材14A,14Bが、駆動装置14Cにより回転させられると、軸部14aと凸条部14bとによって形成される複数の案内溝14cが軸方向に沿って見かけ上移動することになる。これにより、ヘッドユニット2(ノズル列L)に対する各吸収部材12の位置を変化させることが可能である。具体的には、吸収部材12をヘッドユニット2の各ノズル列Lの延在方向に交差する方向、すなわち記録紙の搬送方向に沿って移動させることができる。本実施形態においては、吸収部材12をフラッシング位置と退避(記録)位置との間で移動させる。ここで、吸収部材12の直径を1mmとすると、部品寸法誤差や配置誤差を含めても1mm移動させればよい。凸条部14bの間隔を1mmとすれば、移動部材を1回転させれば吸収部材は1mm移動するので、複数の吸収部材12を容易に精度よく移動することが可能となるし、1mm移動するだけなので移動にかかる時間も少なくて済む。なお、記録ヘッド21と記録紙の距離は2mmあるので、その間に吸収部材12にテンションを与えた状態で配置しているので、移動の際に記録ヘッド21も記録紙も動かす必要はない。
【0051】
ここで、フラッシング位置とは、図6(b)に示すように、各吸収部材12が対応する複数のノズル列L(ノズル列Lを構成する複数のノズル24)にそれぞれ対向した状態であって、フラッシング動作時に各ノズル列Lから吐出されたインク滴を吸収できる位置である。一方、吸収部材12における退避位置とは、図6(a)に示すように、ノズル列L(ノズル列Lを構成する複数のノズル24)とは対向しない状態であって、記録動作時に各ノズル24から吐出された記録用のインク滴が吸収部材12に吸収されることのない位置である。
【0052】
図6(a)、(b)に示すように、移動部材14A、14Bを回転させることで、全ての吸収部材12が移動する。そして、本実施形態のプリンター1において各吸収部材12は、フラッシング位置はもちろん、退避位置においても、記録紙の搬送方向においてヘッド21のノズル面と記録紙との間に配置されている。
【0053】
なお、図1においては、ヘッドユニット2、メンテナンス装置10及びフラッシングユニット11が1組のみ図示している。ただし、実際には、記録紙の搬送方向にもう1組のヘッドユニット2、メンテナンス装置10及びフラッシングユニット11が配置されている。これらの2組は、機構的には同一の構成を有しているが、記録紙の搬送方向と直交する水平方向(ヘッド21A〜21Eの配列方向)にずれて配置されている。より詳細には、記録紙の搬送方向に見て、1組目のヘッドユニット2が備えるヘッド21A〜21E間に2組目のヘッドユニット2が備えるヘッド21A〜21Eが配置されている。このように、2組のヘッドユニット2、メンテナンス装置10及びフラッシングユニット11を記録紙の搬送方向と直交する水平方向にずれて配置することにより、全体的にはヘッド21A〜21Eが千鳥配置されることとなり、有効印字幅の全領域にインクを吐出することが可能となる。
【0054】
ただし、ヘッド21A〜21Eを記録紙の搬送方向と直交する方向に連接して配列する場合には、ヘッドユニット2、メンテナンス装置10及びフラッシングユニット11が1組のみとしても良い。この場合には、ヘッド21A〜21E間に十分な隙間が形成されないため、メンテナンス装置10が備えるキャップ部61A〜61Eをヘッド21A〜21Eごとに設けることが難しい。このため、全てのヘッド21A〜21Eのノズル24が囲える単一のキャップ部を用いることが好ましい。
【0055】
次に、本実施形態のプリンター1において、好適に用いることが可能な吸収部材12の具体的な構成について説明する。
吸収部材12は、例えば、SUS304、ナイロン、親水性コートを施したナイロン、アラミド、絹、綿、ポリエステル、超高分子量ポリエチレン、ポリアリレート、ザイロン(商品名)等の繊維、あるいはこれらの複数を含む複合繊維から形成することができる。
より詳細には、上記繊維あるいは複合繊維から形成される繊維束が、撚り合わされるあるいは束ねられることによって吸収部材12が形成可能である。
図7は、吸収部材12の一例を示す模式図であり、(a)が断面図、(b)が平面図である。この図に示すように、吸収部材12は、例えば、繊維から形成される繊維束12aが2本撚り合わされることによって形成される。
【0056】
また、一例としては、SUS304からなる繊維束が複数本撚り合わされた線状部材、ナイロンからなる繊維束が複数本撚り合わされた線状部材、親水性コートが施されたナイロンからなる繊維束が複数本撚り合わされた線状部材、アラミドからなる繊維束が複数本撚り合わされた線状部材、絹からなる繊維束が複数本撚り合わされた線状部材、綿からなる繊維束が複数本撚り合わされた線状部材、ベリーマ(商品名)からなる繊維束が束ねられた線状部材、ソアリオン(商品名)からなる繊維束が束ねられた線状部材、ハミロン03T(商品名)からなる繊維束が束ねられた線状部材、ダイニーマハミロンDB−8(商品名)からなる繊維束が束ねられた線状部材、ベクトランハミロンVB−30からなる繊維束が束ねられた線状部材、ハミロンS−5コアケブラースリーブポリエステル(商品名)からなる繊維束が束ねられた線状部材、ハミロンS−212コアカブラースリーブポリエステル(商品名)からなる繊維束が束ねられた線状部材、ハミロンSZ−10コアザイロンスリーブポリエステル(商品名)からなる繊維束が束ねられた線状部材、ハミロンVB−3ベクトラン(商品名)からなる繊維束が束ねられた線状部材を吸収部材12として好適に用いることができる。
ナイロンの繊維を用いた吸収部材12は、汎用水糸として広く用いられるナイロンによって形成されているため、安価なものとなる。
SUS材の金属繊維を用いた吸収部材12は、耐腐食性に優れるため多様なインクを吸収可能となると共に、樹脂と比較して磨耗性が高いため繰り返しの使用が可能となる。
超高分子ポリエチレンの繊維を用いた吸収部材12は、切断強度及び耐薬品性が高く、有機溶剤や酸、アルカリに強いものとなる。このように、超高分子ポリエチレンの繊維を用いた吸収部材12は、切断強度が高いため、強いテンションで引っ張ることが可能となり、撓みを抑止することができる。このため、例えば、吸収部材12の径を太くして吸収容量を増加させたり、また吸収部材12の径を太くしない場合にはヘッド21A〜21Eから記録紙の搬送領域までの距離を狭くし印刷精度を向上させることができる。また、ザイロンやアラミドの繊維を用いた吸収部材12も、超高分子ポリエチレンの繊維を用いた吸収部材12と同様の効果を期待できる。
綿の繊維を用いた吸収部材12は、インク吸収性に優れたものとなる。
【0057】
このような吸収部材12では、滴下されたインクは、表面張力によって繊維間及び繊維束12a間に形成される谷部12b(図7参照)に保持されることによって吸収された状態となる。
また、吸収部材12の表面に滴下したインクは、一部が直接吸収部材12の内部に浸透し、残りが繊維束12a間に形成される谷部12bを伝う。そして、吸収部材12の内部に浸透したインクは、吸収部材12の内部において一部が徐々に吸収部材12の延在方向に移動し吸収部材12の延在方向に分散して保持される。吸収部材12の谷部12bを伝うインクは、谷部12bを伝いながら、徐々にその一部が吸収部材12の内部に浸透し、残りが谷部12bに残存し、これによって吸収部材12の延在方向に分散して保持される。つまり、吸収部材12の表面に滴下したインクは、全てが滴下された箇所に留まるわけではなく、滴下された箇所の周囲に分散して吸収される。
【0058】
なお、実際にプリンター1に設置する吸収部材12の形成材料は、吸インク性、保持インク性、引張強度、耐インク性、成形性(けばやほつれの発生量)、ねじれ性、コスト等を考慮して選ぶこととなる。
【0059】
また、吸収部材12のインク吸収量は、吸収部材12の繊維間に保持できるインク量と谷部12bに保持できるインク量の合計である。このため、このインク吸収量が、吸収部材12の交換頻度等を考慮して、フラッシングによって吐出されるインク量よりも十分に大きくなるように吸収部材12の形成材料を選ぶこととなる。
なお、吸収部材12の繊維間に保持できるインク量及び谷部12bに保持できるインク量は、インクと繊維との接触角、インクの表面張力に依存する繊維隙間における毛細管力によって規定することができる。つまり、細い繊維によって形成することで、繊維間の隙間を多くし全体として繊維の表面積を増加することによって、吸収部材12の断面積が同一であっても、吸収部材12は、より多量のインクを吸収可能となる。したがって、より繊維間の隙間を多く得るために、繊維束12aを形成する繊維として、マイクロファイバー(極細繊維)を用いるようにしても良い。
ただし、吸収部材12のインク保持力は、繊維間の隙間が大きくなって毛細管力が低下することによって低減する。このため、繊維間の隙間は、吸収部材12におけるインク保持力が吸収部材12の移動によってインクが垂れない程度に設定する必要がある。
【0060】
また、吸収部材12の太さは、上述のインク吸収量を満足するように設定される。具体的には、例えば、吸収部材12の太さは、0.2〜1.0mmに設定され、より好適には0.5mm程度に設定する。
ただし、吸収部材12の太さは、ヘッド21A〜21E及び記録紙への接触を防止すべく、その最大寸法が、ヘッド21A〜21Eから記録紙の搬送領域までの離間距離から吸収部材12の撓みに起因する変位量を除いた寸法以下となるように設定される。
なお、吸収部材12の断面形状は、必ずしも円形である必要はなく、多角形等であっても良い。ここで、吸収部材は完全な円形に作るのは難しいので、円形とは略円形も含む。
【0061】
以上のように構成されたプリンター1においては、ヘッド21A〜21Eから記録紙にインクを吐出して印刷を行っている間に、全てのノズル24からインクを吐出しているわけではない。このため、インクを吐出していないノズル24内のインクは乾燥して粘土が増加する。インクが増粘すると、所望のインク量が吐出できなくなるため、インクが増粘しないよう定期的にインクを吸収部材12に吐出するフラッシング動作を行う。
そして、本実施形態のプリンター1が備える吸収部材12は、記録紙に対する印刷を行う際にはノズル24の下方からずれた退避位置に位置し、フラッシング動作を行う際にはノズル24の直下のフラッシング位置に位置する。つまり、フラッシング動作を行う際には、吸収部材12がノズル24の直下に位置するため印刷を行うことができず、印刷処理を止める必要がある。このため、フラッシング動作は、搬送される記録紙と記録紙との間がノズルの直下に位置する際に行うことが望ましい。本実施形態のプリンター1のような、いわゆるラインヘッドプリンターにおいては、通常、1分間に60枚程度の記録紙に対して印刷を行うため、5秒ごとに記録紙と記録紙との間がノズルの直下に位置することとなる。
したがって、本実施形態のプリンター1においては、例えば、5秒ごとや10秒ごとにフラッシング動作を行う。
【0062】
なお、連続的に複数の記録紙に対して印刷を行う場合において、記録紙と記録紙との間がノズル24の直下に位置する時間は短時間である。従来のプリンターにおいては、フラッシング動作のために行われる吸収部材あるいはヘッドユニットの移動が大きい。このため、従来のプリンター1では、上記短時間でフラッシング動作を完了することができず、記録紙の搬送を一時的に停止しており、この停止期間が単位時間あたりの印刷枚数を低減させる原因となる。これに対して、本実施形態のプリンター1においては、平面視において吸収部材12が各ヘッド21A〜21Eの直下の極めて狭い領域内で移動するだけで印刷とフラッシング動作とを切り替えることができ、記録紙と記録紙との間がノズル24の直下に位置する間にフラッシング動作を完了する、あるいはフラッシング動作のために記録紙の搬送を停止する期間を極めて短くすることができる。
【0063】
図8はプリンター1における電気的な構成を示すブロック図である。図8に示すようにプリンター1は、各装置の駆動を制御する制御部150を有しており、制御部150は給紙ユニット4、排紙ユニット5、メンテナンス装置10、ヘッドユニット2、フラッシングユニット11、及び、エンコーダ90、検出機構100(図9参照)に電気的に接続されており、これらの駆動を制御するようになっている。
【0064】
ところで、線状部材からなる吸収部材12は微細なため、製造状の不良や送り異常等により切れるおそれもある。吸収部材12が切れた状態で、フラッシング処理を実行するとノズル24から噴射されたインク滴によって記録紙の搬送面が汚れ、以降に印刷される記録紙などが通過すると紙面が汚れてしまう可能性がある。また、切れた状態の吸収部材12を第2移動機構14で移動させると、移動部材14A,14Bに吸収部材12が絡まる可能性もある。さらに吸収部材12が切れた状態のまま印刷処理を行うと、記録紙を搬送する搬送装置3などに切れた吸収部材12の一端や弛んだ吸収部材12が絡まる可能性もある。
【0065】
このような不具合に対し、本実施形態に係るプリンター1は、図1,5に示す吸収部材12が切れたことを検出する検出機構100を備えている。検出機構100は、制御部150と組み合わせることで本発明の検出装置として機能する。そして、プリンター1は、所定時間毎あるいは電源が入っている間において常に吸収部材12の状態を検出するようになっている。
【0066】
図9は検出機構100の概略構成を示す図である。検出機構100は、図9に示されるようにテンションレバー部(張力付与部)101と、テンションレバー部101の位置を検出する検出センサ102と、を備えている。本実施形態においては、図示を省略しているものの、検出機構100は各吸収部材12にそれぞれ設けられている。また、図面を見やすくするため、記録ヘッド21を1個だけ図示している。
【0067】
テンションレバー部101は、回転軸101aを中心として回転可能にプリンター1内に取り付けられたレバー103と、レバー103に対して回転可能に設けられるプーリー104と、一端がレバー103に固定されるとともに他端がプリンター1内に固定されるバネ部材105と、を備えている。吸収部材12は、送り出し用回転部15と第2移動機構14との間においてプーリー104に架け渡されている。送り出し用回転部15とプーリー104との間には、吸収部材12の搬送を補助する補助ローラー110が設けられている。
【0068】
テンションレバー部101は、バネ部材105が延びた状態でプーリー104に吸収部材12が架け渡されている。すなわち、テンションレバー部101は、吸収部材12に対して所定の張力を働かせる張力付与部としての機能を有する。
【0069】
レバー103は、略T字状の端部103aを有している。検出センサ102は第1検出センサPIAと第2検出センサPIBとを含んでおり、これら第1検出センサPIAおよび第2検出センサPIBは制御部150に電気的に接続されており、その検出結果を送信するようになっている。第1検出センサPIAおよび第2検出センサPIBは、例えばフォトインターラプターから構成されるものである。第1検出センサPIAおよび第2検出センサPIBは、図10に示すようにレバー103におけるT字状の端部103aの上方と下方の両側を囲むように配置されている。このように検出機構100は、レバー103における異なる2箇所の位置を測定することで後述するように吸収部材12における弛み等の状態を検出可能となっている。
【0070】
プリンター1は、制御部150が第1検出センサPIAおよび第2検出センサPIBによる検出結果に基づき、レバー103の状態を検出可能となっている。具体的に、プリンター1は上記検出結果に基づいて駆動モータM1,M2を駆動するようになっている。このようにして、プリンター1は吸収部材12の状態(弛み、切れ)を検出可能とされている。
【0071】
図11は、第1検出センサPIAおよび第2検出センサPIBによる検出結果と、この検出結果時の吸収部材12の状態、及び、このときの制御部150におけるモータM1,M2の制御の関係を示した表である。
【0072】
図11に示すように、制御部150は、第1検出センサPIAおよび第2検出センサPIBがそれぞれON状態の場合(すなわちレバー103の端部103aがセンサPIA,PIB間に位置する場合)、吸収部材12の状態が正常であると判定する。そして、制御部150は、駆動モータM1,M2を通常通り駆動する(図11においては○で示す)。
【0073】
また、制御部150は、第1検出センサPIAがOFF状態であり、第2検出センサPIBがON状態である場合に、吸収部材12がA状態であると判定する。図12(a)、(b)は吸収部材12の状態を示す図である。ここで、A状態とは図12(a)に示されるように、レバー103が通常位置(同図破線で示す位置)に比べ、上方に上がることで端部103aの下方側が第1検出センサPIAから外れた状態を意味する。この状態は吸収部材12に弛みが生じることに起因するものと考えられる。このように吸収部材12に弛みが生じた状態でフラッシング処理を行うと、ノズル24の直下に吸収部材12が位置しないため、インク滴が吸収部材12に良好に吸収されず、装置内を汚してしまうおそれがある。
【0074】
これに対し、制御部150は吸収部材12がA状態にあることを検出した場合、弛みを解消するように駆動モータM1,M2を駆動し、吸収部材12を移動する。具体的、制御部150は巻取り用回転部16(駆動モータM2)による巻取り速度に対して、送り出し用回転部15(駆動モータM1)による送り出し速度を遅くする。すなわち、制御部150は駆動モータM1を所定時間の間、減速(同図では△で示す)或いは停止(同図では×で示す)する。これにより、巻取り用回転部16は、吸収部材12を引張った状態で巻き取ることとなり、当該吸収部材12に生じていた弛みを解消することができる。よって、ノズル24の直下に吸収部材12を確実に配置できる。
【0075】
また、制御部150は、第1検出センサPIAがON状態であり、第2検出センサPIBがOFF状態である場合に、吸収部材12がB状態であると判定する。ここで、B状態とは図12(b)に示されるように、レバー103が通常位置(同図破線で示す位置)に比べ、下方に下がることで端部103aの上方側が第2検出センサPIBから外れた状態を意味する。この状態は、例えば巻取り用回転部16が何らかの異物等を巻き込むことにより吸収部材12に過剰に張力が働いたことに起因するものと考えられる。このように吸収部材12に過剰に張力が働いた状態でプリンター1が動作し続けると、吸収部材12が切れるおそれがある。
【0076】
これに対し、制御部150は吸収部材12がB状態にあることを検出した場合、張力を緩めるように駆動モータM1,M2を駆動し、吸収部材12を移動する。具体的、制御部150は送り出し用回転部15(駆動モータM1)による送り出し速度に対して、巻取り用回転部16(駆動モータM2)による巻取り速度を遅くする。すなわち、制御部150は駆動モータM2を所定時間の間、減速(同図では△で示す)或いは停止(同図では×で示す)する。これにより、送り出し用回転部15は、吸収部材12の張力を緩めた状態で送り出すこととなり、当該吸収部材12に生じていた張力を緩和することができる。よって、過剰張力の付与による吸収部材12の切れを防止できる。
【0077】
このようにプリンター1は、検出機構100の第1検出センサPIAおよび第2検出センサPIBによる検出結果に基づき、送り出し用回転部15及び巻取り用回転部16の駆動を制御することで吸収部材12に弛みや過剰に張力が付与された状態といった不具合を解消することができる。
【0078】
続いて、制御部150が、吸収部材12が切れたことを検出するステップについて図13を参照しつつ説明する。図13に示すように、制御部150は、第1検出センサPIAおよび第2検出センサPIBがそれぞれOFF状態の場合、吸収部材12が切れた可能性が高いことから、「切」の有無について判定を行う(ステップS1)。レバー103(プーリー104)は、通常バネ部材105により付勢された状態で吸収部材12に掛け渡されているため、吸収部材12が切れるとバネ部材105の付勢力によってレバー103が上方に上がり、端部103aのいずれもが第1検出センサPIAおよび第2検出センサPIBから外れるからである。
【0079】
まず、制御部150は駆動モータM1,M2を交互に駆動する(ステップS2)。吸収部材12が切れていなかった場合(例えば、送り出し用回転部15及び巻取り用回転部16に大きな異物が挟まった場合等)、駆動モータM1,M2を交互に駆動することで図12(a),(b)に示したA状態或いはB状態に戻る可能性があるからである。
【0080】
制御部150は、駆動モータM1,M2を駆動した後、第1検出センサPIAおよび第2検出センサPIBの信号に基づき、吸収部材12の状態を判定する(ステップS3)。ここで、吸収部材12が状態A或いは状態Bである場合、図11,12を参照して説明したように駆動モータM1,M2を最適に駆動することで、それぞれの状態を解消することができる(ステップS4,S5)。これにより、吸収部材12は正常な状態へと復帰する(ステップS6)。
【0081】
一方、吸収部材12が状態A或いは状態Bでない場合(すなわち、依然としてレバー103の端部103aが第1検出センサPIAおよび第2検出センサPIBの外側に位置している)、制御部150は吸収部材12が切れていると判定する(ステップS4,S7)。
【0082】
なお、制御部150は第1検出センサPIAおよび第2検出センサPIBからの信号がOFFになったタイミングを検出することで吸収部材12が切れたか否かの判定を行うようにしてもよい。
ここで、吸収部材12は通常駆動時に少なからず振動が生じるため、レバー103の端部103aが第1検出センサPIAおよび第2検出センサPIBから外れる場合がある。この場合、制御部150は、図14(a)に示すように第1検出センサPIAがON、OFF間で切り替わる信号と、第2検出センサPIBがON、OFF間で切り替わる信号とが交互に検出する。
一方、吸収部材12が切れた場合、図14(b)に示すように第1検出センサPIAおよび第2検出センサPIBからの信号が略同時にOFFとなるため、制御部150は上述のように信号がOFFになったタイミングに基づいて吸収部材12が切れたかどうかの判定を行うことが可能となる。
【0083】
制御部150は、吸収部材12が切れていると判定すると、プリンター1の動作を停止する。(ステップS8)。ここで、プリンター1の動作を停止するとはヘッドユニット2、フラッシングユニット11、及び記録紙を搬送する搬送装置3を含む全ての駆動を停止することを意味する。これにより、吸収部材12が切れた状態のまま、プリンター1が駆動してフラッシング処理が継続されることで吸収部材12が第2移動機構14の移動部材14A,14Bに絡まるといった不具合の発生を防止できる。また、吸収部材12が切れた状態のまま、印刷処理が行われることで、記録紙を搬送する搬送装置3などに切れた吸収部材12の一端や、切れることで弛んだ吸収部材12が絡まるといった不具合を防止できる。
【0084】
続いて、制御部150は駆動モータM1,M2のみを駆動し、切れた吸収部材12を回収する(ステップS9)。このとき、制御部150は送り出し用回転部15及び巻取り用回転部16の駆動速度、すなわち駆動モータM1,M2の駆動速度を通常のフラッシング処理時における駆動速度に比べて遅くするようにした。これにより、切れた吸収部材12がプリンター1内で絡まることなく、回収動作を行うことができる。よって、吸収部材12の交換作業を簡便に行うことができる。
【0085】
制御部150は、吸収部材12が切れたことを検出する方法として、上述の第1検出センサPIAおよび第2検出センサPIBを用いる方法に加え、エンコーダ90によって検出される吸収部材12の送り量に基づいて判断する構成であってもよい。吸収部材12が切れた場合、送り出し用回転部15及び巻取り用回転部16により吸収部材12が送り出されない或いは巻き取られないため、吸収部材12が移動しないことになるためである。
【0086】
また、制御部150は送り出し用回転部15及び巻取り用回転部16を回転させるための駆動モータM1,M2における駆動電流値を検出し、この検出結果に基づいて吸収部材12が切れたか否かの判定を行うようにしてもよい。吸収部材12が切れると駆動モータM1,M2が送り出し用回転部15及び巻取り用回転部16を回転させるために必要なトルクが低下するため、駆動電流値が低下するためである。
【0087】
次に、上述のフラッシング動作に関連する本実施形態のプリンター1の動作について、図15に示すフローチャートを用いて説明する。図16は、プリンターの動作を示す要部断面図である。また、本実施形態のプリンター1の動作は、制御部150によって統括されている。
【0088】
プリンター1は、所定の指令に基づいてフラッシング動作を開始する。
まず、制御部150は第2移動機構14を駆動させて、支持している複数の吸収部材12を図16(a)に示すようにフラッシング位置へ移動させる。具体的には、移動部材14A,14Bをそれぞれ所定の回転数(本実施形態においては1回転)で正転させることにより、各吸収部材12を記録ヘッド21A〜21Eにおける各ノズル列Lに対向させる(ステップS11)。このとき、各吸収部材12が記録ヘッド21A〜21Eの配置方向に並ぶ複数のノズル列Lにも対向した状態となる。
このようにして、4本の吸収部材12を各ノズル列Lのインク吐出方向上に出現させる。
【0089】
次に、制御部150は、ヘッドユニット2に対するフラッシング動作を実行し(ステップS12)、各記録ヘッド21A〜21Eの各ノズル列L(ノズル24)から、対向する吸収部材12に対してインク滴を噴射させる(例えば10滴程度)。ノズル列Lから吐出されたインク滴は吸収部材12に吸収される。
【0090】
制御部150は、ヘッドユニット2のフラッシング動作を実行している間、送り出し用回転部15及び巻取り用回転部16(駆動モータM1,M2)を駆動させて各吸収部材12を移動させることにより、吸収部材12におけるインクを吸収した部分の巻き取り動作を行う(ステップS13)。これにより、ノズル列Lから吐出されたインク滴は、吸収部材12のインクを含まない新しい部分に常に吐出されることになるので吸収部材12内にすばやく吸収される。
なお、ノズル径に対して吸収部材12の断面最大寸法を75倍くらい確保できる場合には、吸収部材12のインク吸収量が極めて大きくなる。このため、フラッシング動作を行いながら吸収部材12の巻取り動作を行わなくても良い。例えば、吸収部材12の同一箇所に100滴くらいのインクを吐出してもインクが垂れない場合には、フラッシング動作を10回行ってから吸収部材12を巻き取るようにしても良い。
【0091】
本実施形態では、移動機構13における吸収部材12の巻取り速度をインクの吐出量に応じて調整し、吐出量が多いときには吸収部材12が飽和しないように巻取り速度を高めて、インクの吸収漏れが生じないように高速で巻き取るようにする。
【0092】
フラッシング動作が終了すると(ステップS14)、制御部150は第2移動機構14を駆動させて図16(b)に示すように複数の吸収部材12を退避位置へと移動させる(ステップS15)。具体的には、移動部材14A,14Bをそれぞれ所定の回転数で反転させることにより、ノズル列Lと対向していた吸収部材12をノズル列Lと対向する位置から退避させる。なお、退避後に上述の巻取り動作を行っても良い。
【0093】
その後、制御装置は、記録紙に対する記録動作を再開する。
そして、記録動作の間などにフラッシング動作を複数回実行した後、送り出し用回転部15に巻回された吸収部材12の殆どが巻取り用回転部16へと巻き取られて、巻取り用回転部16による吸収部材12の巻き取りが終了したら新しいものと交換する。
【0094】
本実施形態によれば、記録ヘッド21と記録紙8との間に線状の吸収部材12を配置し、線状の吸収部材12を移動して記録ヘッド21のノズルに対向させてフラッシング時のインクを吸収することができるので、ヘッドユニット2を移動させることなくフラッシング動作を実行することが可能となる。ヘッドユニット2を移動させずに済むことから、フラッシング動作を適切な時期に短時間で行うことができる。
【0095】
また、細い線状部材のため、移動距離も短く、短時間が移動も済む。例えば、印字時にノズル列間に対応する位置に配置させておくことも可能である。
また、吸収部材12として、線状部材を用いることによって、インクが吸収部材12に滴下される際に、吸収部材12の周囲における上昇気流の発生を抑制し、ヘッド21A〜21Eにインクが付着することを防止することができる。このため、吸収部材12をヘッド21A〜21Eに近接させることが可能となり、インクが揮発することによって生じ、ヘッド21A〜21E等の汚染の原因となるミストの発生を抑制することができる。
【0096】
また、フラッシング時に吐出対象となるのが線状の吸収部材12であるため、吸収部材12への吐出時の風圧の影響によるドット抜けが生じにくい。また、フラッシング時に吐出されたインク滴はノズル24の近くで吸収部材12に全て吸収されるため、記録紙や搬送ベルト部33上が汚れてしまうのを防止できる。
【0097】
また、吐出されるインク量に応じて吸収部材12の巻き取り速度を変化させることにより、吸収部材12がインクで飽和しないうちに巻き取ることが可能である。これにより、フラッシングインクを漏らすことなく吸収部材12内に確実に吸収させることができる。
以上述べたように、本実施形態に係るプリンター1は、簡単な構成で高速にフラッシング動作を実行することができるので、印刷能力が向上する。
【0098】
なお、上記では、フラッシング動作中に吸収部材12を随時巻き取るようにしたが、吐出されるインク量が少なくて巻き取る必要がない場合は、吸収部材12を停止させておいてもよい。
【0099】
本実施形態に係るプリンター1は、制御部150が検出機構100により吸収部材12が切れたことを検出した場合に、少なくともヘッドユニット2及びフラッシングユニット11の駆動を一旦停止状態とするため、吸収部材12が切れた状態のまま、印刷処理が行われることで、記録紙を搬送する搬送装置3などに切れた吸収部材12の一端や、切れることで弛んだ吸収部材12が絡まるといった不具合を防止できる。
【0100】
また、移動機構14が、吸収部材12のノズル列Lの直交方向における位置を調整する位置調整機構を有していてもよい。これにより、吸収部材12をノズル列Lと対向する位置へと確実に移動させることができるとともに、ノズル列Lとは対向しない位置へと確実に退避させることが可能となる。
【0101】
また、記録動作時において、複数の吸収部材12を記録ヘッド21のノズル面23と対向しない位置まで大幅に退避させても良い。さらに、キャップユニットによるキャッピング時も同様に退避させることにより、記録ヘッド21のノズル面23をキャップ部61によって良好にキャッピングすることができる。
【0102】
なお、吸収部材として幅狭のテープ状部材(布など)を用いれば、記録ヘッド21とキャップ部61との間に吸収部材を介在させた状態であってもノズル面23を良好に封止することが可能である。
【0103】
また、本実施形態のプリンター1によれば、線状の吸収部材12(線状部材からなる吸収部材)をノズル列と対向させた状態(ノズル24から噴射されたインクの飛行経路に配置した状態)にすることで、各ノズル24から吐出されたインクを吸収部材12において吸収することが可能である。また、線状の吸収部材12のため、僅かな移動で吸収部材12を飛行経路から退避する位置に移動することができる。このため、本実施形態のプリンター1によれば、短時間でメンテナンスを終了できる。
また、本実施形態のプリンター1においては、移動部材14A,14Bとこの移動部材14A,14Bを回転駆動する駆動装置14Cとによって吸収部材12の移動が行われる。
このため、極めて簡単な構成でフラッシング動作を行うことが可能となる。
【0104】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもなく、上記各実施形態を組み合わせても良い。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0105】
例えば、プリンター1にクリーニング機構を設けてもよい。この場合、吸収部材12の移動方向下流側(移動部材14Bよりも下流側)に配置することにより、インクを吸収した吸収部材12を洗浄するなどクリーニング処理を実施できる。巻取り用回転部16には、洗浄後の再利用可能な吸収部材12が巻き取られることになり、例えば送り出し用回転部15及び巻取り用回転部16を逆方向に回転させることで再びフラッシング動作を実施することが可能になる。
【0106】
また、吸収部材の本数は、記録ヘッド21のノズル列Lに応じて適宜設定されるものとする。なお、上記各実施形態においては、1つのノズル列Lに対して1つの吸収部材を対応させる構成としたが、複数のノズル列Lに対して1つの吸収部材を対応させるようにしても良い。この場合は、吸収部材の幅を対応する複数のノズル列Lに合わせたものを採用する。
【0107】
また、上記実施形態においては、吸収部材12がノズル列に平行に沿う構成について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、必ずしも吸収部材12の延在方向とノズル列の延在方向とが完全に平行となるようにする必要はない。つまり、本発明において、ノズル列に沿って延在するとは、ノズル列と完全に平行となる状態のみに限定されるものではなく、ノズル列の延在方向に延長した延長線と吸収部材の延在方向に延長した延長線とが先の領域において交差する場合も含む意味である。
【0108】
また、上記実施形態においては、本発明をラインヘッド方式のプリンターに適用した構成について説明した。しかしながら、本発明は、これに限定されるものではなく、シリアル方式のプリンターに適用することもできる。
【0109】
また、上記実施形態においては、吸収部材12が常にヘッド21A〜21Eの直下を移動する構成について説明した。しかしながら、本発明は、これに限定されるものではなく、吸収部材12を退避させる際に、ヘッド21A〜21Eの直下から外れた領域(例えば、ヘッド21A〜21Eの側方)に移動させる構成を採用することもできる。
【0110】
また、上記実施形態においては、吸収部材12を移動することによって、吸収部材12とヘッド21A〜21Eの位置関係を変化する構成を採用した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、ヘッド21A〜21Eを移動することによって、吸収部材12とヘッド21A〜21Eの位置関係を変化する構成を採用しても良い。
【0111】
また、上記実施形態においては、メンテナンス処理の際に、吸収部材12、72がヘッド21A〜21Eと記録紙の搬送領域との間に位置する構成について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、メンテナンス処理の際に吸収部材12、72を記録紙の搬送領域の下方に位置する構成を採用しても良い。
【0112】
また、上記実施形態においては、凸条部14bの配列ピッチP1が、ノズル列の配列ピッチP2の2分の1に設定された構成について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、凸条部14bの配列ピッチP1は、ノズル列の配列ピッチP2の3以上の整数分の1に設定されていても良い。このように、凸条部14bの配列ピッチP1をノズル列の配列ピッチP2の1を除く整数分の1に設定することによって、移動部材14A,14Bの1回転あたりにおける吸収部材12の移動量を容易に算出することができ、駆動装置14Cの制御を容易にすることができる。
【0113】
上記実施形態では、インクジェット式のプリンターが採用されているが、インク以外の他の流体を噴射したり吐出したりする流体噴射装置と、その流体を収容した流体容器を採用しても良い。微小量の液滴を吐出させる流体噴射ヘッド等を備える各種の流体噴射装置に流用可能である。なお、液滴とは、上記流体噴射装置から吐出される流体の状態をいい、粒状、涙状、糸状に尾を引くものも含むものとする。また、ここでいう流体とは、流体噴射装置が噴射させることができるような材料であれ良い。
【0114】
例えば、物質が液相であるときの状態のものであれば良く、粘性の高い又は低い液状態、ゾル、ゲル水、その他の無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)のような流状態、また物質の一状態としての流体のみならず、顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散または混合されたものなどを含む。また、流体の代表的な例としては上記実施例の形態で説明したようなインクや液晶等が挙げられる。ここで、インクとは一般的な水性インクおよび油性インク並びにジェルインク、ホットメルトインク等の各種流体組成物を包含するものとする。
【0115】
流体噴射装置の具体例としては、例えば液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ、面発光ディスプレイ、カラーフィルタの製造などに用いられる電極材や色材などの材料を分散または溶解のかたちで含む流体を噴射する流体噴射装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する流体噴射装置、精密ピペットとして用いられ試料となる流体を噴射する流体噴射装置、捺染装置やマイクロディスペンサ等であってもよい。
【0116】
さらに、時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を噴射する流体噴射装置、光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂等の透明樹脂液を基板上に噴射する流体噴射装置、基板などをエッチングするために酸又はアルカリ等のエッチング液を噴射する流体噴射装置を採用しても良い。そして、これらのうちいずれか一種の噴射装置および流体容器に本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0117】
L…ノズル列、M1,M2…駆動モータ(移動部)、1…プリンター(流体噴射装置)、11…フラッシングユニット(流体吸収ユニット)、12…吸収部材、15…送り出し用回転部(移動部)、16…巻取り用回転部(移動部)、24…ノズル、21…記録ヘッド(流体噴射ヘッド)、90…エンコーダ(移動量計測部)、100…検出機構、101…テンションレバー部(張力付与部)、102…検出センサ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のノズルからなるノズル列を有し、該ノズル列から流体を噴射する流体噴射ヘッドを備えた流体噴射装置であって、
前記ノズル列に沿って延在するとともに、該ノズル列に沿って移動可能に設けられ、前記ノズルから噴射された流体を吸収する線状の吸収部材を含む流体吸収ユニットと、
前記吸収部材が切れたことを検出する検出装置と、を備え、
前記検出装置により前記吸収部材が切れたことが検出された場合に、少なくとも前記流体噴射ヘッドの駆動が停止状態とされることを特徴とする流体噴射装置。
【請求項2】
前記検出装置は、付勢力を利用して前記吸収部材に張力を付与する張力付与部と、張力付与部の位置を検出する検出センサと、を含むことを特徴とする請求項1に記載の流体噴射装置。
【請求項3】
前記検出装置は、前記検出センサを複数有し、各々の前記検出センサが前記張力付与部の異なる部分を検出することを特徴とする請求項2に記載の流体噴射装置。
【請求項4】
前記吸収部材を前記ノズル列に沿って移動させる移動部を有し、
前記検出装置は、前記検出センサの検出結果に基づき、前記移動部を駆動することを特徴とする請求項2又は3に記載の流体噴射装置。
【請求項5】
前記検出装置は、前記吸収部材が切れたことを検出した後、前記流体吸収ユニットの通常動作時に比べて遅い速度で前記移動部を駆動して前記吸収部材を移動することを特徴とする請求項4に記載の流体噴射装置。
【請求項6】
前記検出装置は前記移動部における駆動電流量の変化に基づき、前記吸収部材が切れたことを検出することを特徴とする請求項4に記載の流体噴射装置。
【請求項7】
前記吸収部材の移動量を計測する移動量計測部を有し、前記検出装置は前記移動量計測部の測定結果に基づき、前記吸収部材が切れたことを検出することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の流体噴射装置。
【請求項1】
複数のノズルからなるノズル列を有し、該ノズル列から流体を噴射する流体噴射ヘッドを備えた流体噴射装置であって、
前記ノズル列に沿って延在するとともに、該ノズル列に沿って移動可能に設けられ、前記ノズルから噴射された流体を吸収する線状の吸収部材を含む流体吸収ユニットと、
前記吸収部材が切れたことを検出する検出装置と、を備え、
前記検出装置により前記吸収部材が切れたことが検出された場合に、少なくとも前記流体噴射ヘッドの駆動が停止状態とされることを特徴とする流体噴射装置。
【請求項2】
前記検出装置は、付勢力を利用して前記吸収部材に張力を付与する張力付与部と、張力付与部の位置を検出する検出センサと、を含むことを特徴とする請求項1に記載の流体噴射装置。
【請求項3】
前記検出装置は、前記検出センサを複数有し、各々の前記検出センサが前記張力付与部の異なる部分を検出することを特徴とする請求項2に記載の流体噴射装置。
【請求項4】
前記吸収部材を前記ノズル列に沿って移動させる移動部を有し、
前記検出装置は、前記検出センサの検出結果に基づき、前記移動部を駆動することを特徴とする請求項2又は3に記載の流体噴射装置。
【請求項5】
前記検出装置は、前記吸収部材が切れたことを検出した後、前記流体吸収ユニットの通常動作時に比べて遅い速度で前記移動部を駆動して前記吸収部材を移動することを特徴とする請求項4に記載の流体噴射装置。
【請求項6】
前記検出装置は前記移動部における駆動電流量の変化に基づき、前記吸収部材が切れたことを検出することを特徴とする請求項4に記載の流体噴射装置。
【請求項7】
前記吸収部材の移動量を計測する移動量計測部を有し、前記検出装置は前記移動量計測部の測定結果に基づき、前記吸収部材が切れたことを検出することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の流体噴射装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2011−240583(P2011−240583A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−114333(P2010−114333)
【出願日】平成22年5月18日(2010.5.18)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年5月18日(2010.5.18)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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