説明

流体圧シリンダ

【課題】流体圧シリンダにおいて、ピストンロッドに付着した塵埃等を確実に除去し、該ピストンロッドを含むピストンを円滑に作動させると共に耐久性の向上を図る。
【解決手段】流体圧シリンダ10において、ロッドカバー14には、第2ポート48に供給された圧力流体を第4連通路54側へ供給し、且つ、前記圧力流体の排出時にピストンロッド18側へと供給状態を切り換える切換バルブ56を有した塵埃除去機構20を備える。そして、ピストン16がシリンダチューブ12の壁部24側に向かって変位する際、第2シリンダ室72の圧力流体が前記切換バルブ56による切換作用下に導出通路52を通じてピストンロッド18の外周面へと供給される。これにより、ピストンロッド18に付着した塵埃等が好適に除去される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧力流体の供給作用下にピストンを軸線方向に沿って変位させる流体圧シリンダに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ワーク等の搬送手段として、例えば、圧力流体の供給作用下に変位するピストンを有する流体圧シリンダが用いられている。
【0003】
このような流体圧シリンダでは、筒状のシリンダ本体の内部に画成されたシリンダ室にピストンが変位自在に設けられると共に、前記シリンダ本体の両端部にそれぞれヘッドカバー及びロッドカバーが装着され、前記シリンダ室を閉塞している。また、ピストンには、軸状のピストンロッドが連結され、ロッドカバーに挿通されることによって変位自在に支持されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−74007号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したような流体圧シリンダでは、ピストンがロッドカバー側へ変位した際に、ピストンロッドが前記ロッドカバーを通じて外部に突出して露呈する構成としているため、前記ピストンロッドの外周面に塵埃等が付着することがある。そして、ピストンが再びヘッドカバー側へと変位し、ピストンロッドがシリンダチューブ内に引き込まれる際、例えば、ロッドカバーの内部に設けられたスクレーパによって前記ピストンロッドの外周面に付着した塵埃等を除去している。
【0006】
しかしながら、上述した塵埃が粉体等の微粒子や、水、溶剤等の液体である場合には、スクレーパによって前記塵埃を完全に除去することが困難であり、残存した塵埃がピストンロッドと共にシリンダチューブ内へと進入し、前記塵埃が、例えば、ピストンロッドとロッドパッキン及び軸受との間や、前記シリンダチューブとピストンとの間に入り込むことが懸念される。この場合には、塵埃の進入に起因した流体圧シリンダの動作不良を引き起こすことが懸念される。
【0007】
本発明は、前記の課題を考慮してなされたものであり、ピストンロッドに対して付着した塵埃等を確実に除去し、該ピストンロッドを含むピストンを円滑に作動させると共に耐久性の向上を図ることが可能な流体圧シリンダを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の目的を達成するために、本発明は、圧力流体が供給されるポートと、該ポートから前記圧力流体の導入される一組のシリンダ室とを有するシリンダ本体と、
前記シリンダ室の内部に軸線方向に沿って変位自在に設けられるピストンと、
前記シリンダ本体に支持され、前記ピストンに連結され前記シリンダ本体の外部へ突出するように変位するピストンロッドと、
前記圧力流体を前記ピストンロッドに対して導出し、該ピストンロッドに付着した塵埃を除去する塵埃除去手段と、
を備え、
前記塵埃除去手段は、前記ピストンの変位に伴って一方の前記シリンダ室から排出される圧力流体を前記ピストンロッド側へと供給することを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、シリンダ本体の外部に突出しているピストンロッドを、ピストンの変位作用下にシリンダ本体の内部に収容する方向へと変位させる際、前記ピストンの変位に伴って一方のシリンダ室から排出される圧力流体を、前記ピストンロッドに対して導出することにより、前記ピストンロッドに付着した塵埃を確実且つ容易に除去することができる。従って、ピストンロッドに付着した塵埃がピストンロッドと共にシリンダ本体の内部に進入することを確実に阻止することができる。その結果、シリンダ本体内に塵埃が進入した際に懸念される流体圧シリンダの動作不良を確実に回避することができ、常にピストン及びピストンロッドを円滑に変位させることができると共に、前記流体圧シリンダの耐久性を向上させることができる。
【0010】
また、例えば、塵埃が、従来の流体圧シリンダにおけるスクレーパ等で完全に除去することが困難な粉体等の微粒子や、水、溶剤等の液体である場合にも、導出された圧力流体によって確実且つ容易に吹き飛ばしてピストンロッドから除去することが可能であり、より一層好適である。
【0011】
さらに、塵埃除去手段は、ピストンロッドがシリンダ本体の内部に収容される方向に変位する際に、前記ピストンロッドの外周面に対して前記圧力流体を導出する切換機構を備えるとよい。
【0012】
さらにまた、塵埃除去手段は、シリンダ本体の端部に設けられピストンロッドを軸線方向に沿って変位自在に支持するロッドカバーに設けるとよい。
【0013】
またさらに、切換機構は、ピストンロッドをシリンダ本体の内部から外部へと突出させるように変位させる際に圧力流体の供給されるポートと、一方のシリンダ室との間に設けるとよい。
【0014】
また、切換機構は、ピストン及びピストンロッドの変位方向と直交方向に変位自在な切換弁と、
ポートと一方のシリンダ室とを連通する連通路と、
前記ポートと前記ピストンロッドの外周面に臨む開口部とを連通する導出通路と、
を備え、
前記切換弁によって前記連通路を介した前記ポートと前記シリンダ室との連通状態と、前記シリンダ室と前記導出通路との連通状態とを切り換えるとよい。
【0015】
さらに、ロッドカバーには、ピストンロッドの挿通される孔部を有し、前記孔部には、塵埃を捕捉して保持可能な塵埃捕捉部材を設けるとよい。
【0016】
さらにまた、ロッドカバーには、孔部と外部とを連通し、塵埃を外部に排出可能な排出ポートを備えるとよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、以下の効果が得られる。
【0018】
すなわち、シリンダ本体の外部に突出しているピストンロッドを、ピストンの変位作用下にシリンダ本体の内部に収容する方向へと変位させる際、前記ピストンの変位に伴って一方のシリンダ室から排出される圧力流体を、前記ピストンロッドに対して導出することにより、前記ピストンロッドに付着した塵埃を確実且つ容易に除去することができる。そのため、ピストンロッドに付着した塵埃がピストンロッドと共にシリンダ本体の内部に進入することを確実に阻止することができ、シリンダ本体内に塵埃が進入した際に懸念される流体圧シリンダの動作不良を確実に回避することができ、常にピストン及びピストンロッドを円滑に変位させることができ、しかも、前記流体圧シリンダの耐久性を向上させることができる。
【0019】
また、例えば、塵埃が、従来の流体圧シリンダにおけるスクレーパ等で完全に除去することが困難な粉体等の微粒子や、水、溶剤等の液体である場合にも、導出された圧力流体によって確実且つ容易に吹き飛ばしてピストンロッドから除去することができるため、より一層好適である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る流体圧シリンダの全体縦断面図である。
【図2】図1の流体圧シリンダにおける第1及び第2ポート近傍を示す拡大断面図である。
【図3】図1の流体圧シリンダにおいてピストンがロッドカバー側まで変位して変位終端位置に到達した状態を示す全体縦断面図である。
【図4】図3の変位終端位置からピストンが変位し始め、切換バルブが変位して導出通路から圧力流体がロッド孔側へと流通した状態を示す拡大断面図である。
【図5】図4の流体圧シリンダにおける第1及び第2ポート近傍を示す拡大断面図である。
【図6】塵埃を外部に排出可能な排出ポートがロッドカバーに設けられた変形例に係る流体圧シリンダを示す全体縦断面図である。
【図7】本発明の第2の実施の形態に係る流体圧シリンダの全体縦断面図である。
【図8】図7の流体圧シリンダにおける第1及び第2ポート近傍を示す拡大断面図である。
【図9】図8に示す流体圧シリンダにおいて、第2ポートに圧力流体が供給され、切換バルブの鍔部が変形した状態を示す拡大断面図である。
【図10】図9に示す流体圧シリンダにおいて、第2シリンダ室から排出された圧力流体によって切換バルブが上方へと押圧され、前記圧力流体がピストンロッド側へと流通する状態を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明に係る流体圧シリンダについて好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら以下詳細に説明する。
【0022】
図1において、参照符号10は、本発明の第1の実施の形態に係る流体圧シリンダを示す。
【0023】
この流体圧シリンダ10は、図1〜図5に示されるように、有底筒状のシリンダチューブ(シリンダ本体)12と、前記シリンダチューブ12の一端部に装着されるロッドカバー14と、前記シリンダチューブ12の内部に変位自在に設けられるピストン16と、前記ピストン16に連結されて前記ロッドカバー14に変位自在に支持されるピストンロッド18と、前記ピストンロッド18に付着した塵埃S(図4及び図5参照)等を除去可能な塵埃除去機構20とを含む。
【0024】
シリンダチューブ12は、その中央部に軸線方向(矢印A、B方向)に沿った貫通したシリンダ孔22を有し、前記シリンダ孔22は、前記シリンダチューブ12の一端部側(矢印A方向)で開口している。一方、シリンダチューブ12の他端部には、壁部24が一体的に形成され前記シリンダ孔22を閉塞している。
【0025】
また、シリンダチューブ12の外側面には、圧力流体の供給・排出される第1ポート26が形成され、該第1ポート26は、シリンダチューブ12の一端部近傍に設けられ、図示しない配管及び切換装置を介して圧力流体源に接続されている。第1ポート26は、シリンダ孔22側(矢印C方向)に向かって延在する第1連通路28と連通し、前記第1連通路28を通じて前記シリンダ孔22と連通している。
【0026】
一方、シリンダチューブ12には、シリンダ孔22の外周側に第2連通路30が形成され、該シリンダ孔22と略平行に形成された第2連通路30は、前記シリンダチューブ12の一端部から他端部まで貫通している。さらに、シリンダチューブ12の他端部近傍には、該シリンダチューブ12の軸線と直交するように延在する第3連通路32が形成され、該第3連通路32は、シリンダチューブ12の外側面からシリンダ孔22まで貫通すると共に、第2連通路30と直角に交差している。すなわち、第2連通路30と第3連通路32とが連通している。
【0027】
なお、第2連通路30は、シリンダチューブ12の他端部側となる端部に封止ボール34が圧入されて閉塞されており、同様に、第3連通路32は、シリンダチューブ12の外側面側となる端部に封止ボール34が圧入されて閉塞されている。そのため、第2及び第3連通路30、32は、シリンダチューブ12の他端部側(矢印B方向)及び外側面側(矢印D方向)との連通が遮断され、該シリンダチューブ12の一端部側(矢印A方向)及びシリンダ孔22とを連通している。
【0028】
ロッドカバー14は、その一端部には軸線方向に沿って突出した凸部36が形成され、シリンダチューブ12におけるシリンダ孔22に挿入されて連結される。凸部36の外周面には、環状溝を介してOリング38が装着されており、シリンダ孔22の内周面との間に挟持されることにより、シリンダ孔22の内部の気密を保持している。また、凸部36の端面には、例えば、ゴム等の弾性材料からなる第1ダンパ40が設けられ、該第1ダンパ40が、前記端面から突出しているためピストン16が当接した際の衝撃等が緩和される。
【0029】
このロッドカバー14の中央部には、軸線方向(矢印A、B方向)に沿って貫通したロッド孔(孔部)42が形成され、前記ロッド孔42にはピストンロッド18が挿通される。なお、ロッド孔42の内周径は、ピストンロッド18の直径より若干だけ大きく設定されているため、該ロッド孔42とピストンロッド18との間には所定間隔の間隙44が設けられている。
【0030】
また、ロッド孔42の内部には、環状溝を介してロッドパッキン46が装着され、前記ピストンロッド18の外周面に摺接することにより、前記間隙44を通じたシリンダ孔22と外部との連通を遮断し、該シリンダ孔22の内部の気密を保持している。
【0031】
一方、ロッドカバー14の外側面は、シリンダチューブ12の外側面と略同一面となるように形成され、圧力流体の供給・排出される第2ポート48が形成される。この第2ポート48は、第1ポート26と同様に、図示しない配管及び切換装置を介して圧力流体源に接続されている。
【0032】
シリンダチューブ12における第2ポート48の内周側には、該第2ポート48より縮径し、塵埃除去機構20を構成する切換バルブ(切換弁)56の設けられる装着孔50が形成される。そして、装着孔50には、その中央部からロッド孔42に向かって延在する導出通路52と、該導出通路52の側方に形成されロッドカバー14の軸線方向に折曲して延在する第4連通路54とが接続される。すなわち、第2ポート48は、装着孔50を介して導出通路52と連通すると共に、第4連通路54と連通している。
【0033】
塵埃除去機構20は、ロッドカバー14に設けられ、ピストン16を変位させる場合には第2ポート48に供給された圧力流体を第4連通路54側へ供給し、且つ、前記圧力流体の排出時にシリンダチューブ12内の圧力流体をピストンロッド18側(ロッド孔42側)へと供給する切換バルブ56と、該切換バルブ56の着座する弁座部58と、前記切換バルブ56の切換作用下に前記圧力流体を前記ピストンロッド18側へと供給する導出通路52とを含む。
【0034】
すなわち、切換バルブ56は、圧力流体の供給状態(流通状態)を切換可能な切換機構として機能する。
【0035】
切換バルブ56は、例えば、ゴム等の弾性材料から形成され、上方(矢印D方向)に向かって徐々に先細状となる断面形状で形成される。この切換バルブ56の下部には、導出通路52に臨むように形成された突出部60が形成され、その上部との突出部60との間には、半径外方向に向かって所定角度で拡径した鍔部62が形成される。鍔部62は、切換バルブ56の周方向に沿って環状に形成され、該切換バルブ56の上部から下部側(矢印C方向)に向かって徐々に拡径するように形成され、半径方向に縮径自在な可撓性を有している。
【0036】
弁座部58は、装着孔50に装着され、上方(矢印D方向)に向かって徐々に縮径し、且つ、切換バルブ56の鍔部62が当接するように形成されると共に、前記弁座部58を通じて第2ポート48と導出通路52及び第4連通路54とが連通する。そして、切換バルブ56が、装着孔50の内部において下方側、すなわち、導出通路52側(矢印C方向)へと変位することによって突出部60が前記導出通路52の内部に挿入され、第2ポート48と前記導出通路52との連通を遮断する(図1〜図3参照)。一方、切換バルブ56が、上方側、すなわち、第2ポート48側(矢印D方向)へと変位することによって鍔部62が弁座部58に着座するため、導出通路52と第2ポート48との連通が遮断され、且つ、該導出通路52と第4連通路54とが連通状態となる(図4及び図5参照)。
【0037】
なお、上述した弁座部58の内周面は、切換バルブ56における鍔部62の断面形状に対応した形状で形成されている。
【0038】
導出通路52は、装着孔50から半径内方向に向かって延在し、ロッド孔42まで貫通している。そして、導出通路52は、ロッド孔42の内周面に開口することによってシリンダ孔22と連通し、ロッドパッキン46に対してロッドカバー14の他端部側(矢印A方向)となる位置に開口している。そして、導出通路52の開口部は、ロッドカバー14に挿通されたピストンロッド18の外周面に臨むように設けられている。
【0039】
ピストン16は、断面円形状に形成され、その外周面には環状溝を介してピストンパッキン64及び磁性体66がそれぞれ装着される。そして、ピストンパッキン64がシリンダ孔22の内周面に摺接することにより、該シリンダ孔22とピストン16との間を通じた圧力流体の漏出が防止され、一方、シリンダチューブ12の外側面に設けられた位置検出センサ(図示せず)によって前記磁性体66の位置を検出することにより、シリンダチューブ12内におけるピストン16の変位位置、変位量が確認される。
【0040】
また、ピストン16には、シリンダチューブ12の壁部24に臨む端面に、例えば、ゴム等の弾性材料からなる第2ダンパ68が設けられ、該第2ダンパ68が、前記端面から突出しているためピストン16が壁部24に当接した際の衝撃等が緩和される。
【0041】
一方、ピストン16の略中央部には、軸線方向(矢印A、B方向)に沿って貫通した孔部にピストンロッド18の一端部が挿通されて加締められている。ピストンロッド18は、ピストン16の端部から突出することがないように連結されている。
【0042】
そして、シリンダチューブ12において、ピストン16とロッドカバー14との間には、第1ポート26から第1連通路28を通じて圧力流体の供給される第1シリンダ室70が形成され、一方、前記ピストン16と壁部24との間には、第2ポート48から第4連通路54及び第2連通路30を通じて圧力流体の供給される第2シリンダ室72が形成される。
【0043】
ピストンロッド18は、略一定の直径で形成され、ピストン16に連結される一端部が縮径して形成される。そして、ピストンロッド18は、ロッド孔42に挿通された際、その外周面にロッドパッキン46が摺接している。
【0044】
本発明の第1の実施の形態に係る流体圧シリンダ10は、基本的には以上のように構成されるものであり、次にその動作並びに作用効果について説明する。なお、図1に示されるピストン16がシリンダチューブ12の壁部24側(矢印B方向)に変位した状態を初期位置として説明する。
【0045】
先ず、この初期位置において圧力流体供給源(図示せず)から圧力流体を第2ポート48へと導入することにより、該圧力流体の圧力によって切換バルブ56が下方(矢印C方向)へと押圧されて変位し、その突出部60が導出通路52を閉塞すると共に、該切換バルブ56の鍔部62が前記圧力によって半径内方向へと縮径して弁座部58との間に間隙が生じる(図3参照)。なお、この場合、第1ポート26は大気開放状態にある。
【0046】
そして、図3に示されるように、この間隙を通じて第2ポート48から供給された圧力流体が、第4連通路54から第2及び第3連通路30、32を通じて第2シリンダ室72へと供給され、ピストン16と壁部24との間に供給された圧力流体による押圧作用下にピストン16がロッドカバー14側(矢印A方向)に向かって変位する。これにより、ピストンロッド18が、ピストン16と共に壁部24から離間する方向(矢印A方向)へと変位し、ロッドカバー14に対して徐々に外部へと突出していき、ピストン16の端面が第1ダンパ40に当接することにより変位終端位置となる。
【0047】
次に、ピストン16を図3に示される変位終端位置から再び初期位置へと復帰させる場合には、第2ポート48に供給されていた圧力流体を、図示しない切換装置を介して第1ポート26へと供給することにより、図4に示されるように、第1連通路28を通じて第1シリンダ室70へと供給された圧力流体によってピストン16がロッドカバー14から離間する方向(矢印B方向)に向かって徐々に押圧される。この場合、第2ポート48は大気開放状態にある。
【0048】
この際、図4及び図5に示されるように、第2シリンダ室72に残存していた圧力流体が、ピストン16の変位作用下に該第2シリンダ室72の内部で圧縮され、第3連通路32、第2連通路30及び第4連通路54を通じて装着孔50へと流通し、前記装着孔50内に導入された前記圧力流体の圧力によって切換バルブ56が上方(矢印D方向)へと押圧される。詳細には、切換バルブ56の下部は、鍔部62によって下方に向かって開口した断面略凹状に形成されているため、該切換バルブ56の下部側となる第4連通路54から供給された圧力流体が凹状の下部によって確実に受け止められ、確実且つ好適に上方へと押圧される。
【0049】
これにより、切換バルブ56による導出通路52の閉塞状態が解除され、装着孔50を通じて第4連通路54と導出通路52とが連通する。なお、切換バルブ56が上昇してその鍔部62が弁座部58に当接しているため、第2ポート48と導出通路52及び第4連通路54との連通は遮断されている。
【0050】
そして、第2シリンダ室72から排出される圧力流体が、第2〜第4連通路30、32、54、導出通路52を経て開口部からロッド孔42の内部へと供給され、前記圧力流体が、前記導出通路52に臨むピストンロッド18の外周面へと吹き付けられ、間隙44を通じてロッドカバー14の他端部側(矢印A方向)に向かって流通する。その結果、例えば、外部からロッドカバー14の内部にピストンロッド18が変位する際に、その外周面に付着していた塵埃S等が圧力流体を吹き付けることによって好適に除去され、間隙44を通じてロッドカバー14の他端部側(矢印A方向)へと送出された後、外部へと排出される。
【0051】
最後に、ピストン16が壁部24側に向かって変位し続けている間、第2シリンダ室72の圧力流体が導出通路52からピストンロッド18の外周面へと供給され、該ピストンロッド18の外周面に付着した塵埃S等が継続的に除去され続け、図1に示されるようにピストン16が壁部24に当接することにより、圧力流体の供給が停止して初期位置となる。
【0052】
以上のように、第1の実施の形態では、ピストン16の変位作用下にピストンロッド18がロッドカバー14及びシリンダチューブ12の内部へと変位する際、前記ピストン16に押圧されて第2シリンダ室72から排出される圧力流体を前記ピストンロッド18の外周面に対して吹き出すことにより、ロッドカバー14の外部に露呈していた際、前記外周面に付着した塵埃S等を好適に除去することができる。その結果、ピストンロッド18に付着した塵埃S等がロッドカバー14を介してシリンダチューブ12の内部へと進入することが確実に阻止され、該塵埃S等が進入した際に懸念される流体圧シリンダ10の動作不良を確実に回避することができるため、常にピストン16及びピストンロッド18を円滑に変位させることができ、しかも、その耐久性を向上させることが可能となる。
【0053】
また、例えば、塵埃Sが、従来のスクレーパ等で完全に除去することが困難な粉体等の微粒子や、水、溶剤等の液体である場合でも、圧力流体によって確実且つ容易に吹き飛ばしてピストンロッド18の外周面から除去することが可能であり、より一層好適である。
【0054】
さらに、第2シリンダ室72から排出される圧力流体を利用してピストンロッド18の外周面に付着した塵埃S等を除去しているため、前記塵埃S等を除去するための圧力流体を新たに供給する場合と比較し、その作動コストを低減することができる。
【0055】
また、図6に示される流体圧シリンダ80のように、ロッドカバー82において、第2ポート48の形成される外側面とは反対側となる外側面に、ロッド孔42から前記外側面まで貫通する排出ポート84を備えた塵埃除去機構86を採用するようにしてもよい。この場合、排出ポート84は、導出通路52と略同軸上に設けられ、且つ、該排出ポート84に対してロッドカバー82の一端部側及び他端部側には、塵埃S等を捕捉可能な一対の塵埃吸収部材88a、88bがそれぞれ設けられる。なお、塵埃吸収部材88a、88bは、例えば、繊維が織り込まれた部材から形成され、且つ、潤滑剤が内部に含有され、ピストンロッド18の外周面に摺接している。
【0056】
このように、ロッド孔42と連通し、ロッドカバー82の外部まで延在する排出ポート84を設けることにより、ピストンロッド18が前記ロッドカバー82の内部に収容されるように変位し、前記ピストンロッド18の外周面に付着した塵埃Sが一方の塵埃吸収部材84bを越えてロッド孔42へと進入した場合でも、排出ポート84を通じて前記塵埃Sを該ロッドカバー82の外部へと排出することができる。そのため、塵埃Sが、ロッド孔42の内部に堆積してしまうことが回避され好適である。
【0057】
また、塵埃Sが、ピストンロッド18に沿ってロッドカバー82の外部へと排出されることがなく、例えば、排出ポート84に対して図示しない配管を接続することにより、流体圧シリンダ80をクリーンルーム等で用いる場合に、室内に塵埃Sが排出されることを回避できるため好適である。
【0058】
次に、第2の実施の形態に係る流体圧シリンダ100を図7〜図10に示す。なお、上述した第1の実施の形態に係る流体圧シリンダ10と同一の構成要素には同一の参照符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0059】
この第2の実施の形態に係る流体圧シリンダ100では、ピストンロッド18の外周面に臨むように、塵埃S等を捕捉可能な一対の塵埃吸収部材106a、106bを設けている点で、第1の実施の形態に係る流体圧シリンダ10と相違している。
【0060】
この流体圧シリンダ100は、図7〜図10に示されるように、有底筒状のシリンダチューブ108と、前記シリンダチューブ108の一端部に装着されるロッドカバー102と、前記ロッドカバー102の端部に装着され、ピストンロッド18に付着した塵埃S等を除去可能な塵埃除去機構110とを含む。
【0061】
この塵埃除去機構110は、ボディ112と、該ボディ112の上部に連結され、第2ポート48を有するカバーブロック114と、前記カバーブロック114の下部に連結される円筒体116と、ロッドカバー102に設けられる一対の塵埃吸収部材106a、106bとを含む。
【0062】
ボディ112は、シリンダチューブ108の一端部に連結されると共に、アダプタ107を介してロッドカバー102の端部に接続される。
【0063】
カバーブロック114には、上方(矢印D方向)に向かって開口した第2ポート48を備え、前記第2ポート48の下部側となる内部に切換バルブ118が変位自在に設けられる。また、カバーブロック114の下方には、第2ポート48と同軸上となるように円筒体116が設けられ、該円筒体116に形成された導出通路52が、第2ポート48とピストンロッド18の挿通される挿通孔120とを連通している。
【0064】
また、カバーブロック114には、側方に向かって貫通した第4連通路54を備え、該第4連通路54が、シリンダチューブ108に形成された第2連通路30と連通している。そして、カバーブロック114は、その中央部がボディ112の中央部に形成された凹部に挿入されると共に、円筒体116が嵌合されて固定される。このカバーブロック114と円筒体116の上部との間に、切換バルブ118が変位自在に設けられる。なお、第2連通路30は、シリンダチューブ108の他端部まで貫通し(矢印A、B方向)、封止プラグ122によって封止されると共に、シリンダ孔22側に向かって延在した第3連通路32と連通している。
【0065】
塵埃吸収部材106a、106bは、環状に形成され、例えば、繊維が織り込まれた部材からなり、微細な塵埃S等を内部に取り込んで保持可能に形成されると共に、その内部に潤滑剤が含有されているため、前記塵埃吸収部材106a、106bがピストンロッド18の外周面に摺接することにより、前記塵埃S等が好適に吸収され、且つ、該外周面の潤滑がなされる。
【0066】
そして、一方の塵埃吸収部材106aが、アダプタ107においてピストンロッド18に臨む内周面に設けられ、他方の塵埃吸収部材106bが、ボディ112の挿通孔120に設けられ、円筒体116を挟んで互いに所定間隔離間するように配置されている。
【0067】
切換バルブ118は、例えば、金属製材料からなる本体部124と、該本体部124を囲繞するように設けられ弾性材料からなる弾性部126とからなり、前記弾性部126の外周部位には、半径外方向に拡径した鍔部128が設けられる。この鍔部128は、半径方向に撓曲自在に形成される。
【0068】
上述した流体圧シリンダ100では、第2ポート48に圧力流体が供給されることにより、切換バルブ118が下方(矢印C方向)へと変位し、円筒体116の導出通路52を閉塞すると共に、鍔部128が前記圧力流体の圧力によって半径内方向に縮径し、カバーブロック114の内壁面との間にクリアランスができるため、前記圧力流体が第4連通路54、第2及び第3連通路30、32を通じて第2シリンダ室72へと供給される。これにより、ピストン16及びピストンロッド18がシリンダチューブ108に沿ってロッドカバー102側(矢印A方向)へと変位する。
【0069】
一方、第1ポート26に圧力流体を供給し、ピストン16をシリンダチューブ108の壁部24側(矢印B方向)に向かって変位させる際、第2シリンダ室72に残存している圧力流体が、第3連通路32、第2連通路30及び第4連通路54を通じてカバーブロック114の内部へと流通し、その圧力流体の圧力によって切換バルブ118が上方(矢印D方向)へと押圧される。これにより、第4連通路54と第2シリンダ室72とが導出通路52を介して連通するため、圧力流体が前記導出通路52を通じて挿通孔120へと流通する。
【0070】
その結果、導出通路52の開口部からピストンロッド18の外周面に向かって吹き出された圧力流体によって該外周面に付着した塵埃S等が吹き飛ばされ、ボディ112とピストンロッド18との間に設けられた間隙44を通じて軸線方向に沿って2方向(矢印A、B方向)に流通して一対の塵埃吸収部材106a、106bによって確実に捕捉される。
【0071】
このように、第2の実施の形態に係る流体圧シリンダ100では、ピストン16の変位作用下にピストンロッド18がロッドカバー102及びシリンダチューブ108の内部へと変位する際、前記ピストン16に押圧されて第2シリンダ室72から排出される圧力流体を前記ピストンロッド18の外周面に対して吹き出し、前記外周面に付着した塵埃S等を吹き飛ばし、且つ、該ピストンロッド18に臨むように設けられた一対の塵埃吸収部材106a、106bによって確保することができるため、前記塵埃S等が流体圧シリンダ100の外部に排出されることが確実に回避され、例えば、前記流体圧シリンダ100をクリーンルーム等で用いる際に好適である。
【0072】
また、例えば、塵埃Sが、粉体等の微粒子や、水、溶剤等の液体である場合、圧力流体によって確実且つ容易に吹き飛ばしてピストンロッド18の外周面から除去することが可能であり、より一層好適である。
【0073】
さらに、第2シリンダ室72から排出される圧力流体を利用してピストンロッド18の外周面に付着した塵埃S等を除去しているため、塵埃S等を除去するための圧力流体を新たに供給する場合と比較し、その作動コストを低減することができる。
【0074】
なお、本発明に係る流体圧シリンダは、上述の実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることはもちろんである。
【符号の説明】
【0075】
10、100…流体圧シリンダ 12、108…シリンダチューブ
14、102…ロッドカバー 16…ピストン
18…ピストンロッド 20、110…塵埃除去機構
22…シリンダ孔 24…壁部
26…第1ポート 42…ロッド孔
44…間隙 48…第2ポート
50…装着孔 52…導出通路
56、118…切換バルブ 58…弁座部
60…突出部 62、128…鍔部
70…第1シリンダ室 72…第2シリンダ室
106a、106b…塵埃吸収部材 112…ボディ
114…カバーブロック 116…円筒体
124…本体部 126…弾性部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧力流体が供給されるポートと、該ポートから前記圧力流体の導入される一組のシリンダ室とを有するシリンダ本体と、
前記シリンダ室の内部に軸線方向に沿って変位自在に設けられるピストンと、
前記シリンダ本体に支持され、前記ピストンに連結され前記シリンダ本体の外部へ突出するように変位するピストンロッドと、
前記圧力流体を前記ピストンロッドに対して導出し、該ピストンロッドに付着した塵埃を除去する塵埃除去手段と、
を備え、
前記塵埃除去手段は、前記ピストンの変位に伴って一方の前記シリンダ室から排出される圧力流体を前記ピストンロッド側へと供給することを特徴とする流体圧シリンダ。
【請求項2】
請求項1記載の流体圧シリンダにおいて、
前記塵埃除去手段は、前記ピストンロッドが前記シリンダ本体の内部に収容される方向に変位する際に、前記ピストンロッドの外周面に対して前記圧力流体を導出する切換機構を備えることを特徴とする流体圧シリンダ。
【請求項3】
請求項1又は2記載の流体圧シリンダにおいて、
前記塵埃除去手段は、前記シリンダ本体の端部に設けられ前記ピストンロッドを軸線方向に沿って変位自在に支持するロッドカバーに設けられることを特徴とする流体圧シリンダ。
【請求項4】
請求項2又は3記載の流体圧シリンダにおいて、
前記切換機構は、前記ピストンロッドを前記シリンダ本体の内部から外部へと突出させるように変位させる際に前記圧力流体の供給されるポートと、一方の前記シリンダ室との間に設けられることを特徴とする流体圧シリンダ。
【請求項5】
請求項4記載の流体圧シリンダにおいて、
前記切換機構は、前記ピストン及びピストンロッドの変位方向と直交方向に変位自在な切換弁と、
前記ポートと一方の前記シリンダ室とを連通する連通路と、
前記ポートと前記ピストンロッドの外周面に臨む開口部とを連通する導出通路と、
を備え、
前記切換弁によって前記連通路を介した前記ポートと前記シリンダ室との連通状態と、前記シリンダ室と前記導出通路との連通状態とが切り換えられることを特徴とする流体圧シリンダ。
【請求項6】
請求項3記載の流体圧シリンダにおいて、
前記ロッドカバーには、前記ピストンロッドの挿通される孔部を有し、前記孔部には、前記塵埃を捕捉して保持可能な塵埃捕捉部材が設けられることを特徴とする流体圧シリンダ。
【請求項7】
請求項6記載の流体圧シリンダにおいて、
前記ロッドカバーには、前記孔部と外部とを連通し、前記塵埃を外部に排出可能な排出ポートを備えることを特徴とする流体圧シリンダ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−153694(P2011−153694A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−17061(P2010−17061)
【出願日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【出願人】(000102511)SMC株式会社 (344)
【Fターム(参考)】