説明

流体圧駆動装置

【課題】被駆動体を駆動して姿勢変化させる駆動装置に関し、特に、流体圧をアクチュエータに導入して被駆動体を駆動する流体圧駆動装置の改良に関する。
【解決手段】二つの圧力室21、22を備え、当該圧力室21、22に導入される流体圧によって駆動されるアクチュエータ2と、上記各圧力室21、22を連通する通路10と、当該通路10の途中に設けられてモータMにより駆動される双方向吐出ポンプPとを備え、当該双方向吐出ポンプPの吐出方向を切換えることにより上記アクチュエータ2の作動方向を切換える流体圧駆動装置において、上記双方向吐出ポンプPとモータMとの間にセルフロックギヤ3を設け、当該セルフロックギヤ3は、上記モータMの回転を減速して上記双方向吐出ポンプPに伝達すると共に、上記双方向吐出ポンプP側からのトルク入力に対しては回転しないことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、被駆動体を駆動して姿勢変化させる駆動装置に関し、特に、流体圧をアクチュエータに導入して被駆動体を駆動する流体圧駆動装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
被駆動体を駆動して姿勢変化させる駆動装置としては、例えば、電気モータ(以下、単に「モータ」という)により被駆動体を駆動するものが知られている。
【0003】
しかしながら、天体や人工衛星等に常に対向して、その観測や電波の受信等を行う追従装置等の被駆動体を駆動する場合、駆動源をモータとする駆動装置では、被駆動体の姿勢を維持するために何らかの姿勢維持装置が必要である。
【0004】
また、被駆動体が大型で、特に被駆動体が屋外に設置される場合においては、被駆動体自体の重量に加えて風などによる外力がアクチュエータに作用することから、充分なトルクを得るためにモータの大型化を招く。
【0005】
そこで、モータにより駆動されるポンプを使用してアクチュエータに流体圧を導入し、被駆動体を駆動する流体圧駆動装置の利用が検討されている。
【0006】
例えば、上記流体圧駆動装置としては、特許文献1に開示のものが知られている。
【0007】
この特許文献1に開示の流体圧駆動装置にあっては、二つの圧力室を備え、当該圧力室に導入される流体圧によって駆動されるアクチュエータと、上記各圧力室を連通する通路と、当該通路の途中に設けられてモータにより駆動される双方向吐出ポンプとを有してなる。
【0008】
そして、上記通路に双方向吐出ポンプと並列に設けられて当該双方向吐出ポンプを迂回するリリーフ弁を備えたバイパス路と、このバイパス路よりも双方向吐出ポンプよりに設けられた電磁シャットオフ弁とを備え、当該電磁シャットオフ弁は、上記通路を連通状態とする連通ポジションと遮断状態とする遮断ポジションとからなる。
【0009】
上記構成を有することにより、ポンプやアクチュエータを適宜選択することにより、モータを大型化することなく被駆動体を駆動するに際し、充分な動力を得ることが可能となる。
【0010】
更には、例えば、モータを駆動せずとも、電磁シャットオフ弁を遮断ポジションとして通路を作動流体が移動することを阻止し、被駆動体の姿勢を維持することが可能となる。
【0011】
尚、アクチュエータに被駆動体側から一定以上の外力が作用した場合には、バイパス路に設けられたリリーフ弁が開弁して駆動装置各部の過負荷を防ぐようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2002−276606
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、上記した特許文献1に開示の流体圧駆動装置においては、モータを大型化することがなく、モータが失陥した場合にアクチュエータの作動を停止して被駆動体の姿勢を維持することが可能な点で有用であるが、以下のような改善が求められている。
【0014】
上記従来の構成にあっては、モータの失陥を感知して電磁シャットオフ弁に伝達するための電気回路が必要となり、構造が複雑で、流体圧駆動装置を生産するに当たりコスト高となる。
【0015】
また、被駆動体を上記した天体や人工衛星等に常に対向してその観測や電波の受信等を行う追従装置とする場合においては、追従装置を駆動するアクチュエータを微動制御する必要がある。
【0016】
つまり、従来の流体圧駆動装置においては、モータの回転数に対するアクチュエータの駆動量が大きく、アクチュエータを精度よく微動制御することが困難である。
【0017】
そこで、本発明は、上記した事情を鑑みて創案されたものであって、その目的とするところは、電磁シャットオフ弁を使用することなく通路を遮断状態とすると共に、アクチュエータを微動制御する際の精度を向上することが可能で、微動制御に適した流体圧駆動装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記課題を解決するための手段は、二つの圧力室を備え、当該圧力室に導入される流体圧によって駆動されるアクチュエータと、上記各圧力室を連通する通路と、当該通路の途中に設けられてモータにより駆動される双方向吐出ポンプとを備え、当該双方向吐出ポンプの吐出方向を切換えることにより上記アクチュエータの作動方向を切換える流体圧駆動装置において、上記双方向吐出ポンプとモータとの間にセルフロックギヤを設け、当該セルフロックギヤは、上記モータの回転を減速して上記双方向吐出ポンプに伝達すると共に、上記双方向吐出ポンプ側からのトルク入力に対しては回転しないことを特徴とすることである。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、双方向吐出ポンプとモータとの間にセルフロックギヤを設け、当該セルフロックギヤが双方向吐出ポンプ側からのトルク入力に対しては回転しないことから、風などの外力がアクチュエータに作用する場合においても、モータは上記外力による双方向吐出ポンプ側からのトルク入力を受けて回転することがなく、双方向吐出ポンプが上記外力により発生した油圧で回されることを防ぐ。
【0020】
また、モータが失陥した場合においても、上記セルフロックギヤを備えることにより、双方向吐出ポンプ側からのトルク入力を受けてモータが回転して作動流体が通路内を移動することを阻止し、通路を遮断状態としてアクチュエータの作動を停止し被駆動体の姿勢を維持することが可能となる。
【0021】
更には、セルフロックギヤがモータの回転を減速して双方向吐出ポンプに伝達することから、アクチュエータを微動制御する際の精度を向上することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施の形態における流体圧駆動装置の流体圧回路図。
【図2】本発明に係る液体圧駆動装置の使用状態を示す側面図。
【図3】本発明の他の実施の形態における流体圧駆動装置の流体圧回路図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態を示す液体圧駆動装置について、図面を参照して説明する。
【0024】
本発明の実施の形態を示す液体圧駆動装置は、図1に示すように、二つの圧力室21、22を備え、当該圧力室21、22に導入される流体圧によって駆動されるアクチュエータ2と、上記各圧力室21、22を連通する通路10と、当該通路10の途中に設けられてモータMにより駆動される双方向吐出ポンプPとを備え、当該双方向吐出ポンプPの吐出方向を切換えることにより上記アクチュエータ2の作動方向を切換える。
【0025】
そして、上記双方向吐出ポンプPとモータMとの間にセルフロックギヤ3が設けられてなり、当該セルフロックギヤ3は、上記モータMの回転を減速して上記双方向吐出ポンプPに伝達すると共に、上記双方向吐出ポンプP側からのトルク入力に対しては回転しない。
【0026】
つまり、双方向吐出ポンプPとモータMとの間にセルフロックギヤ3を設け、当該セルフロックギヤ3が双方向吐出ポンプP側からのトルク入力に対しては回転しないことから、風などの外力がアクチュエータ2に作用する場合においても、モータMは上記外力による双方向吐出ポンプP側からのトルク入力を受けて回転することがなく、双方向吐出ポンプPが上記外力により駆動されることを防ぐ。
【0027】
また、モータMが失陥した場合においても、上記セルフロックギヤ3を備えることにより、双方向吐出ポンプP側からのトルク入力を受けてモータMが回転して作動流体が通路10内を移動することを阻止し、通路10を遮断状態としてアクチュエータ2の作動を停止し被駆動体の姿勢を維持することが可能となる。
【0028】
更には、セルフロックギヤ3がモータMの回転を減速して双方向吐出ポンプPに伝達することから、アクチュエータ2を微動制御する際の精度を向上することことが可能となる。
【0029】
図2には、本発明に係る上記流体圧駆動装置を、天体の日周運動に追従してその観測を行うことを目的とする追従装置に利用した一実施の形態を示す。
【0030】
上記追従装置は、天体の観測を行う観測部40と、当該観測部40を支える支持部41と、上記観測部40を天体の日周運動に追従させるための追従手段4とを有してなる。
【0031】
当該追従手段4は、仰角調整手段4aと方位角調整手段4bとからなり、図2には、仰角調整手段4aとして本発明に係る流体圧駆動装置を用いた実施の形態を示す。
【0032】
即ち、本発明に係る流体圧駆動装置は、観測部40と支持部41との間に設けられ、観測部40を駆動して観測部40と支持部41とのなす角度を変更し、これにより追従装置の仰角を調整する。
【0033】
この場合において、本発明に係る流体圧駆動装置によって駆動される被駆動体は観測部40であり、以下の説明において被駆動体とは、別段の定めがない限り、観測部40をいうものとする。
【0034】
上記方位角調整手段4aは、基台42と、この基台42に水平方向に回転可能に設けられて上記支持部41が起立する回転台43と、当該回転台43を駆動する駆動手段(図示せず)とからなり、当該駆動手段により回転台43を回転して追従装置の方位角を調整する。
【0035】
上記駆動手段として本発明に係る流体圧駆動装置を用いることも勿論可能であり、この場合にあっては、本発明に係る流体駆動装置を使用することによる上記効果を達成できる。この場合における被駆動体は、回転台43が相当する。
【0036】
尚、本実施の形態においては、本発明に係る流体圧駆動装置を天体の観測を目的とする追従装置に使用しているがこの限りではなく、天体の日周運動のように単位時間当たりの移動量の少ない他の観察物の追従や、その他の微動制御を要する装置に使用することも可能である。
【0037】
そして、本発明に係る上記流体圧駆動装置は、図2に示すように、適宜部材を介して上記追従装置の観測部40と支持部41との間に仰角調整手段4aとして設けられ、図1に示すように、伸縮して追従装置の仰角を変更するアクチュエータ2と、当該アクチュエータ2に流体圧を導入してアクチュエータ2を伸縮させる流体圧回路1とからなる。
【0038】
そして、上記アクチュエータ2は、追従装置の観測部40にその上端側を揺動可能に設けられたシリンダ20と、このシリンダ20内を軸方向に移動すると共に基端側を支持部に揺動可能に設けられたロッド23と、このロッド23の先端に固定されると共に上記シリンダ20内に摺動可能に挿入されて上記シリンダ20内を二つの圧力室21、22に区画するピストン24とからなるシリンダ装置である。
【0039】
即ち、上記構成を備えることにより、ロッド23の移動によるアクチュエータ2の伸縮に伴い観測部40と支持部41とがなす角度が変化し、追従装置の仰角を調整することが可能である。
【0040】
上記追従装置の仰角の調整、即ち、アクチュエータ2の伸縮量の調整は、上記ピストン24の位置を感知するセンサ25によって得た位置情報に基づき、アクチュエータ2の各圧力室21、22に作動流体を導入する指示を出すコントローラ(図示せず)によって行われる。
【0041】
上記センサ25は、シリンダ20内に設けられてピストン24を貫通するセンサロッド26に対するピストン24の位置を感知する。
【0042】
そして、上記センサ25は、その位置情報をコントローラに伝達することにより、コントローラはアクチュエータ2の伸縮状態を把握することが可能であるが、アクチュエータ2の伸縮状態を把握するための手段はこの限りでなく、適宜選択することが可能である。
【0043】
尚、追従装置の仰角を調整すればよいので、観測部40と支持部41とがなす角度を角度センサにより感知し、その角度に基づいてアクチュエータ2の伸縮を行うとしても良い。
【0044】
また、上記アクチュエータ2はシリンダ装置に限らず、適宜構成を選択することが可能であり、図示しないが、円筒形のハウジングと、このハウジング内に回転自在に設けられると共に二つの圧力室に区画するベーンとからなるロータリーアクチュエータ等を採用することも可能である。
【0045】
上記アクチュエータ2に流体圧を導入してアクチュエータ2を伸縮させる前記流体圧回路1は、アクチュエータ2の各圧力室21、22を連通する通路10と、この通路10の途中に設けられてモータMにより駆動される双方向吐出ポンプPと、上記モータMと上記双方向吐出ポンプPとの間に設けたセルフロックギヤ3とを有してなる。
【0046】
そして、上記コントローラからの指示を受けて上記モータMがセルフロックギヤ3を介して上記双方向吐出ポンプPを駆動し、アクチュエータ2を伸張させる場合には、双方向吐出ポンプPを正転させて反ロッド側の圧力室21に作動流体を導入し、アクチュエータ2を収縮させる場合には、双方向吐出ポンプ2を反転させてロッド側の圧力室22に作動流体を導入する。
【0047】
上記通路10は、双方向吐出ポンプPと並列に、第一、第二バイパス路11、12と、作動流体を貯留するタンクTと、低圧側の圧力室を上記タンクTへ接続する低圧優先弁5とを備えてなり、この低圧優先弁5と反ロッド側の圧力室21とを連通する通路10を反ロッド側通路10A、上記低圧優先弁5とロッド側の圧力室22とを連通する通路10をロッド側通路10Bとする。
【0048】
上記低圧優先弁5は、反ロッド側の圧力室21がロッド側の圧力室22よりも低圧となったとき、反ロッド側通路10AとタンクTとを連通してロッド側通路10BとタンクTとを不通とする反ロッド側圧力室連通ポジション5aと、ロッド側の圧力室22が反ロッド側の圧力室21よりも低圧となったとき、ロッド側通路10BとタンクTとを連通して反ロッド側通路10AとタンクTとを不通とするロッド側圧力室連通ポジション5cと、上記反ロッド側圧力室連通ポジション5aと上記ロッド側圧力室連通ポジション5bとの間に設けられて、各圧力室21、22の圧力差がないとき、即ち、双方向吐出ポンプPが停止しているときに、反ロッド側通路10Aとロッド側通路10BとタンクTとを連通状態とする通路連通ポジション5bとからなる。
【0049】
つまり、反ロッド側圧力室連通ポジション5a及びロッド側圧力室連通ポジション5cを備えることにより、双方向吐出ポンプPの吸込側に位置して低圧側となる圧力室をタンクTとを連通し、各圧力室21、22に収容される作動流体に過不足を生じさせることがない。
【0050】
即ち、通常、本実施の形態で示すような片ロッド型のシリンダ装置たるアクチュエータ2において、ピストン24がシリンダ20内を移動した場合には、各圧力室21、22においてロッド23の出没する体積相当量の作動流体の過不足が生じる。
【0051】
しかしながら、上述したように低圧側となる圧力室はタンクTと連通するため、過不足する分の作動流体はタンクTに吸収され、各圧力室21、22に作動流体の過不足が生じてピストン24の円滑な移動を妨げたり、シリンダ20や通路10に負荷をかけたりすることがない。
【0052】
また、各圧力室21、22の圧力差がないときに、通路10とタンクTとを連通状態とする通路連通ポジション5bを備えることにより、双方向吐出ポンプPを稼動していない場合に、温度変化による作動流体の体積変化を上記タンクTで補償することが可能となる。
【0053】
そして、双方向吐出ポンプPと並列に設けられる上記第一バイパス路11は、反ロッド側21の圧力室が高圧となったときに開弁するリリーフ弁11aと、このリリーフ弁11aの下流に位置する絞り11bとを備え、上記第二のバイパス路12は、ロッド側の圧力室22が高圧となったときに開弁するリリーフ弁12aと、このリリーフ弁12aの下流に位置する絞り12bとを備えてなる。
【0054】
即ち、当該構成を備えることにより、アクチュエータ2に外力が作用して圧力室21、22が加圧された場合に、各リリーフ弁11a、12aが開弁して、加圧された圧力室と通じる通路10に負荷がかかることを防ぐと共に、上記絞り11b、12bにより流量が制限されることから、アクチュエータ2の伸縮が急激に起こらず被駆動体の姿勢変化を緩慢にして、被駆動体が急激に姿勢変化することを防止することが可能となる。
【0055】
次に、双方向吐出ポンプPとモータMとの間に設けられるセルフロックギヤ3は、歯車機構を有し、上記モータMの保持トルクで上記双方向吐出ポンプPからのトルク入力に対する回転を阻止することを可能とするギヤ比に設定される。
【0056】
例えば、上記非可逆性の歯車機構として、ギヤ比が1対90から120の曲がり歯傘歯車、例えば、ハイポイド(登録商標)ギヤ等を採用することが好ましい。
【0057】
つまり、上記歯車機構を採用することにより、歯数比が大きく、従って大きいギヤ比を得ることが可能となる。
【0058】
また、上記ギヤ比はこの限りではなく、双方向吐出ポンプPからのトルク入力に対する回転を阻止することが可能な範囲であれば、ギヤ比を適宜選択することができる。
【0059】
当該ギヤ比を備えることにより、風などの外力がアクチュエータ2に作用する場合においても、モータMは上記外力による双方向吐出ポンプP側からのトルク入力を受けて回転することがなく、双方向吐出ポンプPが上記外力により駆動されることを防ぐ。
【0060】
また、モータMが失陥した場合においても、上記セルフロックギヤ3を備えることにより、双方向吐出ポンプP側からのトルク入力を受けてモータMが回転し、作動流体が通路10内を移動することを阻止して通路10を遮断状態とし、これによりアクチュエータ2の作動を停止して被駆動体の姿勢を維持することが可能となる。
【0061】
更には、セルフロックギヤ3がモータMの回転を減速して双方向吐出ポンプPに伝達することから、ギヤ比を上記設定とした場合においては、モータMの回転数に対するアクチュエータ2の駆動量が小さい。
【0062】
例えば、上記ギヤ比を1対120とした場合においては、モータMが120回転したときセルフロックギヤ3が1回転することから、モータMの回転数に対するアクチュエータ2の駆動量が従来の1/120となる。
【0063】
つまり、上記ギヤ比とすることにより、アクチュエータ2を微動制御する際の精度を向上することことが可能となる。
【0064】
更には、上記場合にあっては、モータMの必要とするトルクが1/120となるため、モータMの小型化を図ることが可能となる。
【0065】
また、上記セルフロックギヤ3を非可逆回転のウォームギヤとしても良く、この場合においても上記ギヤ比を有する歯車機構と同様の効果を得ることが可能である。
【0066】
以上、本発明の好ましい実施の形態を詳細に説明したが、特許請求の範囲から逸脱することなく改造、変形及び変更を行うことができることは理解すべきである。
【0067】
例えば、図3に示すように、本発明の上記構成に加えて、風力測定結果により開弁制御される電磁ソレノイド6を設けるとしても良い。
【0068】
上記電磁ソレノイド6は、上記第一、第二のバイパス路11、12の上流側で、これらと並列に設けた第三のバイパス路15の途中に設けられてなり、上記第三のバイパス路15を連通状態とする連通ポジション6aと、上第三のバイパス路を遮断状態とする遮断ポジション6bとを有してなる。
【0069】
そして、上記当該第三のバイパス路15には、上記電磁ソレノイド6と直列に絞り15bが設けられてなり、当該構成を備えることにより、強風の際には、上記絞り15bによって作動流体の流速が制限されることのみによってアクチュエータ2の伸張速度が制限され、被駆動体が強風に煽られて減速されながら姿勢変化することが可能である。
【0070】
よって、被駆動体に作用する外力を逃がして、当該被駆動体を支える追従装置における各部材の負荷を軽減することが可能となる。
【0071】
また、図2、3には、アクチュエータ2を片ロッド型のシリンダ装置として記載したがこの限りではなく、両ロッド型の装置としても良い。
【0072】
上記ロッド径が等しい場合には、各圧力室21、22の断面積が等しくなり、各圧力室21、22においてピストン24の移動に伴う作動流体の過不足が起こらず、タンクTの容量を小さくすることが可能であり、タンクTの容量は温度変化による作動流体の体積変化分を補償可能であれば足りる。
【符号の説明】
【0073】
M モータ
P 双方向吐出ポンプ
T タンク
1 流体圧回路
2 アクチュエータ
3 セルフロックギヤ
4 追従手段
5 低圧優先弁
6 電磁ソレノイド
10 通路
11 第一バイパス路
12 第二バイパス路
15 第三バイパス路
20 シリンダ
21、22 圧力室
23 ロッド
24 ピストン
25 センサ
26 センサロッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二つの圧力室を備え、当該圧力室に導入される流体圧によって駆動されるアクチュエータと、上記各圧力室を連通する通路と、当該通路の途中に設けられてモータにより駆動される双方向吐出ポンプとを備え、当該双方向吐出ポンプの吐出方向を切換えることにより上記アクチュエータの作動方向を切換える流体圧駆動装置において、上記双方向吐出ポンプとモータとの間にセルフロックギヤを設け、当該セルフロックギヤは、上記モータの回転を減速して上記双方向吐出ポンプに伝達すると共に、上記双方向吐出ポンプ側からのトルク入力に対しては回転しないことを特徴とする流体圧駆動装置。
【請求項2】
上記通路に上記双方向吐出ポンプと並列に第一バイパス路と第二バイパス路を設け、当該第一バイパス路に一方の圧力室が高圧となったときに開弁するリリーフ弁とを備え、上記第二のバイパス路に他方の圧力室が高圧となったときに開弁するリリーフ弁とを備えることを特徴とする請求項1に記載の流体圧駆動装置。
【請求項3】
上記第一、第二のバイパス路に、当該各パイパス路に設けたリリーフ弁の下流に絞りをそれぞれ設けることを特徴とする請求項2に記載の流体圧駆動装置。
【請求項4】
上記通路に作動流体を貯留するタンクと、低圧側の圧力室を上記タンクへ接続する低圧優先弁を備えることを特徴とする請求項1から請求項3に記載の流体圧駆動装置。
【請求項5】
上記セルフロックギヤが曲がり歯傘歯車機構を有し、上記モータの保持トルクで上記双方向吐出ポンプからのトルク入力に対する回転を阻止することを可能とするギヤ比に設定されることを特徴とする請求項1から請求項4に記載の流体圧駆動装置。
【請求項6】
上記セルフロックギヤが非可逆回転のウォームギヤとすることを特徴とする請求項1から請求項4に記載の流体圧駆動装置。
【請求項7】
上記アクチュエータがシリンダと、このシリンダ内を軸方向に移動するロッドと、このロッドに固定されると共に上記シリンダ内に摺動可能に挿入されて上記シリンダ内を二つの圧力室に区画するピストンとからなり、上記ロッドの移動により起こる上記アクチュエータの形態変化を感知するセンサを備えることを特徴とする請求項1から請求項6に記載の流体圧駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−27137(P2011−27137A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−171188(P2009−171188)
【出願日】平成21年7月22日(2009.7.22)
【出願人】(000000929)カヤバ工業株式会社 (2,151)
【Fターム(参考)】