説明

流体搬送用ホース

【課題】ホース強度の低下を招くことなく、流体を品質低下させずに搬送することができる流体搬送用ホースを提供する。
【解決手段】内面ゴム3及びその内側に被覆した樹脂層11を、接続金具2の外側端部まで延長する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は流体搬送用ホースに関し、更に詳しくは、ホース強度の低下を招くことなく、流体を品質低下させずに搬送することができる流体搬送用ホースに関する。
【背景技術】
【0002】
マリンホースに代表される流体荷役用の大口径のホースにおいては、流体と接触する最内層の内面ゴム層から、ゴム組成物に含まれる添加物、例えば可塑剤や老化防止剤などが、極微量ながらも流体中に流出することがある。このことは、流体が原油のような混合物である場合には全く問題とはならないが、メタノールやエタノールのような化学薬品の場合には、着色や純度低下などの品質低下の一因となるおそれがある。
【0003】
このような問題を解決するには、例えば特許文献1に示すように、内面ゴム層の表面に樹脂を被覆して、内面ゴム層と流体とが直接に接触しないようにすることが有効である。
【0004】
しかし、一般に樹脂と金属の接着性は非常に低いため、上記特許文献1の方法では、ホース端部に設けられた接続金具と樹脂層との間の接着力が低くなり、ホース強度を低下させてしまうという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−144878号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、ホース強度の低下を招くことなく、流体を品質低下させずに搬送することができる流体搬送用ホースを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成する第1発明の流体搬送用ホースは、内面ゴム層とカバーゴム層との間に複数層からなる補強層群を配置すると共に、該内面ゴム層の内面に樹脂層を被覆してなるホース本体の端部に接続金具を固定した流体搬送用ホースにおいて、前記内面ゴム及び樹脂層を、前記接続金具の外側端部まで延長したことを特徴とするものである。
【0008】
上記の目的を達成する第2発明の流体搬送用ホースは、内面ゴム層とカバーゴム層との間に複数層からなる補強層群を配置すると共に、該内面ゴム層の内面に樹脂層を被覆してなるホース本体の端部に接続金具を固定した流体搬送用ホースにおいて、前記樹脂層を、前記接続金具の外面から離間して沿うように前記内面ゴム層内で延長したことを特徴とするものである。
【0009】
上記の目的を達成する第3発明の流体搬送用ホースは、内面ゴム層とカバーゴム層との間に複数層からなる補強層群を配置すると共に、該内面ゴム層の内面に樹脂層を被覆してなるホース本体の端部に接続金具を固定した流体搬送用ホースにおいて、前記接続金具の内側端部の内面に段部を形成すると共に、該段部を埋めるように前記内面ゴム層及び樹脂層を延長したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
第1〜3発明の流体搬送用ホースによれば、内面ゴム層の内面に被覆された樹脂層が、内面ゴム層の延長部又は内面ゴム層自体を介して接続金具と互いに固定されるため、ホース強度の低下を招くことなく、流体を品質低下させずに搬送することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】第1発明の実施形態からなる流体搬送用ホースの端部構造を示す断面図である。
【図2】図1の流体搬送用ホースにおける接続金具の周辺領域の拡大断面図である。
【図3】第2発明の実施形態からなる流体搬送用ホースの端部構造を示す断面図である。
【図4】図3に示すX部の拡大断面図である。
【図5】第3発明の実施形態からなる流体搬送用ホースの端部構造を示す断面図である。
【図6】図5に示すY部の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0013】
図1は、第1発明の実施形態からなる流体搬送用ホースの端部構造を示す。
【0014】
この流体搬送用ホースは、ホース本体1の端部に液密に接続金具2を取り付けたものであり、ホース本体1の構造は、円筒状の内面ゴム層3と外面ゴム層4との間に、内側カーカス層5、スパイラルワイヤ補強層6、外側カーカス層7及び浮力層8を順に積層したものとなっている。
【0015】
接続金具2は、複数本の有限長のホース本体1の端部同士を相互に連結するためのものであり、ホース本体1の端部が外挿される円筒状のニップル部2aと、このニップル部2aの外端に溶接された環状のフランジ部2bとから構成されている。
【0016】
ホース本体1の内面ゴム層3はホース内を流れる流体への耐侵食性に優れた材質から構成されている。内側カーカス層5は、ホース軸方向にバイアスに配列した有機繊維コードからなる補強層を、層間でコードが互いに交差するように複数積層した補強層群として構成されており、それらの補強層の一部が接続金具2の固定リング9の近傍において固定ワイヤ10にてターンバックされている。この内側カーカス層5は、ホース本体1に主として軸方向の強度と適度な可撓性を付与する。
【0017】
スパイラルワイヤ補強層6は、金属ワイヤを所定のピッチで内側カーカス層5の外周にスパイラル状に巻回することにより構成され、ホース本体1に主に周方向の強度を付与すると共に、ホース本体1が湾曲したときにキンクが発生するのを防止し、更に外圧によるホース本体1の潰れを防止する。
【0018】
外側カーカス層7は、内側カーカス層5と同様に、ホース軸方向にバイアスに配列した有機繊維コードからなる補強層を、層間でコードが互いに交差するように複数積層した補強層群として構成されている。
【0019】
浮力層8は、主に発泡ゴムやスポンジから構成され、ホース本体1に浮力を与えるものである。
【0020】
ホース本体1には、上記の構成部材のほか、スパイラルワイヤ補強層6と外側カーカス層7との間に、内側カーカス層5の破断が外側カーカス層7に伝播しないようにするバッファ層を設けるようにしてもよい。また、流体搬送用ホースの用途及び性能により、浮力層8及び/又は外側カーカス層7を設けないようにしてもよい。
【0021】
このような流体搬送用ホースにおいて、図2に示すように、内面ゴム層3の搬送流体と接触する側となる内面に被覆された樹脂層11が、接続金具2のフランジ部2bの外側端部まで内面ゴム層3とともに延長されている。この樹脂層11は、内面ゴム層3に直接被覆される一方で、接続金具2の内面(搬送流体側の面)には内面ゴム層の延長部12を介して固定されている。
【0022】
このようにすることにより、内側ゴム層3が流体と直接に接触することがないので、流体の純度が低下することはない。また、接続金具2と樹脂層11が、内面ゴム層3の延長部12を介して互いに固定されるため、ホース強度が低下することはない。更に、接続金具2と流体とが直接に接触することがないので、接続金具2に防錆加工を施す必要がなく、流体搬送用ホースの製造コストを低減することができる。
【0023】
図3は、第2発明の実施形態からなる流体搬送用ホースの端部構造を示す。なお、以下の説明において、上記第1発明の実施形態と同じ部分には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0024】
この流体搬送用ホースは、図4に示すように、内面ゴム層3の内面(搬送流体側の面)に樹脂層11を被覆すると共に、その樹脂層11を接続金具2のニップル部2aのカバーゴム層4側となる外面から離間して沿うように、内面ゴム層3内で延長したものである。ニップル部2aの外面と樹脂層11との間の距離Aは、接続金具2の接着力を確保しつつ内面ゴム層3と流体との接触面積を最小化する上から、1.5mm以下とすることが好ましい。また、樹脂層11がニップル部2aの内側端部から外側へ延長する長さBは、ニップル部2aと内面ゴム層3との間の接着力を確保する上から、20〜100mmの範囲とすることが好ましい。
【0025】
このようにすることにより、接続金具2のニップル部2aと樹脂層11が、内面ゴム層3を介して互いに固定されるため、ホース強度が低下することはない。
【0026】
図5は、第3発明の実施形態からなる流体搬送用ホースの端部構造を示す。
【0027】
この流体搬送用ホースは、図6に示すように、内面ゴム層3の内面(搬送流体側の面)に樹脂層11を被覆すると共に、その樹脂層11をニップル部2aの内側端部の内面(搬送流体側の面)に形成された段部13まで内面ゴム層3とともに延長し、内面ゴム層3の延長部14を介して固定したものである。段部13の深さは、樹脂層11の内面がニップル部2aの内面と面一になるように規定されている。
【0028】
このようにすることにより、接続金具2のニップル部2aと樹脂層11が、内面ゴム層3の延長部14を介して互いに固定されるため、ホース強度が低下することはない。
【0029】
上記のいずれの実施形態においても、樹脂層11を超高分子量ポリエチレンから形成することが望ましい。耐摩耗性に優れた超高分子量ポリエチレンを用いることで、流体の付着や摩擦を防いでホースの圧損を低減することができる。なお、このように樹脂層11に超高分子量ポリエチレンを用いる場合には、内面ゴム層3を超高分子量ポリエチレンと溶融接着しやすいゴム組成物から形成することが必要であり、そのゴム組成物としては、天然ゴム(NR)の質量比が50%以上である天然ゴムとスチレン−ブタジエンゴム(SBR)とからなるゴム組成物を用いることができる。
【0030】
また、超高分子量ポリエチレンは、分子量が100万以上のものを用いることが望ましい。分子量が100万未満であると、加硫時にポリエチレンが発泡するので、樹脂層11が破壊されてしまう。
【0031】
樹脂層11の厚さは0.1〜0.5mmの範囲、より好ましくは0.4mmとするのがよい。厚さが0.1mm未満だと流体の圧力に抗することが困難になり、0.5mm超になるとホースの剛性が高くなりフレキシビリティが低下する。
【0032】
本発明の流体搬送用ホースの用途は特に限定するものではないが、流体荷役用の大口径ホースとして好ましく適用され、特に沖合の船舶と陸部のタンク等との間で、メタノールやエタノールのような純度が高く無色透明な化学薬品を搬送するマリンホースとして好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0033】
1 ホース本体
2 接続金具
3 内面ゴム層
4 外面ゴム層
5 内側カーカス層
6 スパイラルワイヤ補強層
7 外側カーカス層
8 浮力層
9 固定リング
10 固定ワイヤ
11 樹脂層
12、14 内面ゴム層の延長部
13 段部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内面ゴム層とカバーゴム層との間に複数層からなる補強層群を配置すると共に、該内面ゴム層の内面に樹脂層を被覆してなるホース本体の端部に接続金具を固定した流体搬送用ホースにおいて、
前記内面ゴム及び樹脂層を、前記接続金具の外側端部まで延長した流体搬送用ホース。
【請求項2】
内面ゴム層とカバーゴム層との間に複数層からなる補強層群を配置すると共に、該内面ゴム層の内面に樹脂層を被覆してなるホース本体の端部に接続金具を固定した流体搬送用ホースにおいて、
前記樹脂層を、前記接続金具の外面から離間して沿うように前記内面ゴム層内で延長した流体搬送用ホース。
【請求項3】
内面ゴム層とカバーゴム層との間に複数層からなる補強層群を配置すると共に、該内面ゴム層の内面に樹脂層を被覆してなるホース本体の端部に接続金具を固定した流体搬送用ホースにおいて、
前記接続金具の内側端部の内面に段部を形成すると共に、該段部を埋めるように前記内面ゴム層及び樹脂層を延長した流体搬送用ホース。
【請求項4】
前記樹脂層を超高分子量ポリエチレンから形成すると共に、前記内面ゴム層を、天然ゴムの質量比が50%以上である天然ゴムとスチレン−ブタジエンゴムとからなるゴム組成物から形成した請求項1〜3のいずれかに記載の流体搬送用ホース。
【請求項5】
前記超高分子量ポリエチレンの分子量が100万以上である請求項4に記載の流体搬送用ホース。
【請求項6】
前記樹脂層の厚さが0.1〜0.5mmである請求項1〜5のいずれかに記載の流体搬送用ホース。
【請求項7】
液状の化学薬品の搬送用のマリンホースである請求項1〜6のいずれかに記載の流体搬送用ホース。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−80523(P2011−80523A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−232884(P2009−232884)
【出願日】平成21年10月6日(2009.10.6)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】