説明

流体機械のケーシング及びその製造方法

【課題】流体の流れ方向上流側ケースと下流側ケースとを芯出し連結する構造工夫により、両ケース間に内装構造体を設けて芯出しする構造の設計上及び組立上の煩わしさといった不都合が回避され、改善されたポンプケーシング構造とする。
【解決手段】ケーシングが、複数のケースCを主軸の軸心方向で連結一体化することで構成されているケーシング構造において、複数のケースCのうちの流れ方向の上流側に位置する上流側ケース12と、その流れ方向の下流側に隣合う下流側ケース11とを軸心を中心とするインロー構造で嵌め合う嵌合部Kが形成され、嵌合部Kの径方向内側における上流側ケース12又は下流側ケース11に、ケーシングの内部に装備される内装構造体Nを嵌合及び支持させる取付部25が形成可能に構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体機械のケーシング及び流体機械のケーシングの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1において開示される立軸ポンプにおいて、その図2に示されるように、軸受ケーシング(9)を囲繞する下流側ケースであるポンプケース(揚水管:2)と、その上流側に設けられた上流側ケースである吸込みカバー(ベルマウス:3)とが、互いのフランジ部を付き合せて面当接状態でボルト止め連結されている。そして、それらポンプケース(2)と吸込みカバー(3)との間には、羽根(インペラ:5)に小さい隙間を有して外囲される内装構造体であるケーシングライナ(プロテクトライナ:8)の上端フランジ(符記無し)が挟持支持されている。
【0003】
上述のように、ケーシングライナ(8)を挟んでポンプケース(2)と吸込みカバー(3)とを連結一体化する場合、回転体である羽根車とケーシングライナが干渉しないように、従来は、ケーシングライナ(8)のフランジ部の外周面を寸法基準として、そこにポンプケース(2)及び吸込みカバー(3)を外嵌させることにより、ポンプケース(2)と吸込みカバー(3)との芯出しを行う構造とされている。つまり、ケーシングライナが芯合せ用としても必須の部品として構成されていた。
【0004】
ところが、ケーシングライナの形状が変更される場合や、ケーシングライナを用いない仕様の場合には、芯出しを行うために、ポンプケースと吸込みカバーとの何れか一方又は双方共に形状変更しなければならないことになる。例えば、ケーシングライナの形状や大きさが変更され、そのフランジ部の厚さや最大径が変わる場合には、ポンプケース及び吸込みカバーのケーシングライナ挟み込み部の径及び削り込み深さが変更になる。また、ケーシングライナが省略される場合には、ポンプケースと吸込みカバーとの何れか一方を、その相手側に嵌合するための嵌合周部を設けた別形状の部品とするか、或は、ケーシングライナのフランジ部に相当する芯出し用の別部材を新たに設けるかする必要がある。
【0005】
また、JISB0131(2002)の付図41には、水中軸受支えのフランジ部を上下の揚水管のフランジの間に挟み込む構造が開示されており、この構造によれば、水中軸受支えの有無でポンプ長さが変わってしまう。そして、ポンプ長さが変わると、主軸又は揚水管の長さの修正が必要となる。即ち、ポンプの仕様変更により軸受が追加で必要になった際、主軸長さを修正しない場合には急遽揚水管を短くすることで対応することになる。また、揚水管は鋳造されることが多く、生産リードタイムの関係で、かなり早めに鋳物の手配をする必要があるので、主軸等寸法を延長しない場合には揚水管の接続部に軸受支えのフランジ部の厚みに相当する不要な部材を付けておく等の処置をして、軸受の有無に対応する場合もあった。
【0006】
このように、上流側ケースと下流側ケースとを、それらの間に内装構造体を介装することで芯出しさせるポンプケーシング構造では、ケーシングライナや軸受支え(軸受支持台)等の内装構造体の変更や有無により、上流側ケースと下流側ケースとの少なくとも一方の構造を変更するか、芯出しのためだけに新たな別部材を設けなければならない。従って、仕様変更毎にポンプケースも変更しなければならない設計上及び組付上の煩わしさがある。また、別部材を設ける構造の場合にはその部材のコストが余分に掛かるほか、組付け忘れが発生し易いといった不都合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−056481号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】JISB0131(2002)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、回転する主軸と、主軸に取付られる羽根車を内部に備えた流体機械用のケーシングにおいて、流体の流れ方向の上流側ケースと下流側ケースとの間に内装構造体を介装させることで芯出しを行う従来構造で生じる設計上及び組立上の煩わしさを解消した流体機械のケーシング及びその製造方法を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に係る発明は、回転する主軸4と、前記主軸4に取付けられた羽根車5を内部に備えた流体機械のケーシングにおいて、
ケーシング3が、複数のケースCを前記主軸4の軸心P方向で連結一体化することで構成され、前記複数のケースCのうちの流体の流れ方向の上流側に位置する上流側ケース12と、流体の流れ方向の下流側に隣合う下流側ケース11とを前記軸心Pを中心とするインロー構造で嵌め合う嵌合部Kが形成され、前記上流側ケース12又は下流側ケース11の前記嵌合部Kの径方向内側に、前記ケーシング3の内部に装備される内装構造体Nを嵌合及び支持させる取付部25が形成可能に構成されていることを特徴とするものである。
【0011】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の流体機械用のケーシングにおいて、前記嵌合部25が、前記上流側ケース12と前記下流側ケース11とのそれぞれに設けられた外周フランジ12A,11Aに亘って形成されており、前記取付部25が前記外周フランジ12A,11Aの嵌合部K形成部分の径方向内側部分を軸心P方向に凹入させた凹入部として形成されていることを特徴とするものである。
【0012】
請求項3に係る発明は、請求項2に記載の流体機械用のケーシングにおいて、前記嵌合部25が、前記各外周フランジ12A,11Aのうちの一方の外周フランジ12Aに形成される環状の凸リング部23と、前記凸リング部23に嵌合する状態で他方の外周フランジ11Aに形成される環状の凹リング部33とを有して構成されるとともに、前記凸リング部23を有する外周フランジ12Aに前記環状凹入部25が形成されていることを特徴とするものである。
【0013】
請求項4に係る発明は、請求項2又は3に記載の流体機械用のケーシングにおいて、前記軸心Pが上下向きの立軸心であり、前記両ケース12,11のうちの下側となるケース12に前記凹入部25が形成されていることを特徴とするものである。
【0014】
請求項5に係る発明は、請求項1〜4の何れか一項に記載の流体機械用のケーシングにおいて、前記上流側ケース12が、前記羽根車5をその近傍にて回転可能に支承する軸受部分16を囲繞するポンプケース13の上に隣る下部揚水管であり、前記下流側ケース11が前記下部揚水管12の上に隣る中間揚水管であり、前記内装構造体Nが、前記主軸4を回転可能に支承する中間軸受27を備える軸受台8Aであることを特徴とするものである。
【0015】
請求項6に係る発明は、回転する主軸と、前記主軸に取付けられた羽根車と、少なくとも前記羽根車を内部に備えた流体機械のケーシングの製造方法において、
ケーシング3が、複数のケースCを前記主軸4の軸心P方向で連結一体化することで構成され、前記複数のケースCのうちの流体の流れ方向の上流側に位置する上流側ケース12と、流体の流れ方向の下流側に隣合う下流側ケース11とを前記軸心Pを中心とするインロー構造で嵌め合う嵌合部Kが形成され、前記上流側ケース12又は下流側ケース11の前記嵌合部Kの径方向内側に、前記ケーシング3の内部に装備される内装構造体Nを嵌合及び支持させる取付部25が形成可能に構成され、前記ケーシング3を鋳造で作成し、内装構造体Nを嵌合する場合には、取付部25を切削加工で形成することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0016】
請求項1の発明によれば、詳しくは実施形態の項にて説明するが、上流側ケースと下流側ケースとの嵌合部と、いずれかのケースと内装構造体との嵌合部である取付部とを主軸軸心に対して径方向で分けて形成可能に構成することにより、内装構造体の有無とは無関係に上流側ケースと下流側ケースとを芯合せして組付けることができる。そして、従来では、段落番号「0005」において述べた不都合、即ち、軸受の有無でポンプ長さが変わって主軸又は揚水管の長さ修正が必要になることや、追加で軸受が必要になる場合に備えて不要なものを付けておく必要があったが、本発明においては長さが変わらず、従って、それらの不都合が解消される利点もある。
【0017】
その結果、流体の流れ方向の上流側ケースと下流側ケースとを芯出し状態で連結一体化する際に、それら両ケースの間に必ず内装構造体を介装させることで芯出しを行う従来構造では生じる「仕様変更毎にポンプケースも変更しなければならない設計上及び組付上の煩わしさ」といった不都合が出ないケーシングを提供することができる。また、請求項5のように、このケーシングを、内装構造体として主軸を回転可能に支承する中間軸受を備えた中間軸受台を介装させる部分に適用して、前記効果を確実に享受することができる。
【0018】
請求項2の発明は、上流側と下流側の各ケースの外周フランジに凹入部を形成したものである。
【0019】
請求項3の発明によれば、上流側と下流側の外周フランジのうちの環状の凸リング部を有する外周フランジに環状の凹入部が形成されているから、旋盤等で環状の形状を形成できるので、内装構造体を嵌合及び支持させる取付部を周方向に部分的に設ける場合に比べて加工が容易となる。
【0020】
請求項4の発明によれば、軸心が上下に向く立向きの流体機械のケーシングにおける下側となるケース部の外周フランジに環状凹入部が形成されるので、内装構造体を落し込み嵌合させて保持させることができ、組付け作業が行い易い利点がある。例えば、環状凹入部を上側に設ける場合では、内装構造体を重力に反して持上げて嵌合させる必要があるとともに、ボルト等によって固定させる間中は落ちないように内装構造体を支える必要もあり、作業が複雑でやり難いことが予測できるが、本請求項4の発明ではそのような不便や不都合がない。
【0021】
請求項6の発明は、請求項1に記載の流体機械のケーシングの製造方法であって、ケーシングを鋳造で作成し、内装構造体を嵌合する場合には、そのための取付部を切削加工で形成するようにしたものである。このようにすることで内装構造体を使用しない場合であっても、取付部を加工してしまう無駄が省けるとともに、取付部が必要になった場合には、鋳造されている箇所を切削加工することにより、即ち、後加工によって取付部を設けることが可能となる使い勝手の良さもある。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】立軸ポンプの断面図
【図2】中間揚水管と下部揚水管との接合部を示す要部の拡大断面図(実施例1)
【図3】図2をさらに拡大した断面図
【図4】下部揚水管の上端部の構造を示す要部の拡大断面図
【図5】下部揚水管の上端部の別構造を示す要部の拡大断面図(実施例2)
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下に、本発明による流体機械のケーシングの実施の形態を、立軸ポンプに適用した場合について図面を参照しながら説明する。
【0024】
〔実施例1〕
図1に示すように、立軸ポンプAは、貯水槽の天井床1の取付孔2に落とし込まれるポンプケーシング(ケーシングの一例)3、主軸4、羽根車5、駆動機の回転軸に接続するための軸継手6、上下の中間軸受部7,8等を有して構成されている。ポンプケーシング3は、向きを90度変えるエルボ形状であるとともに上部軸受41を装着した上部ケース9、上部ケース9の上流側に続く上部揚水管10、上部揚水管10の下側に続く中間揚水管11、中間揚水管11の上流側に続く下部揚水管12、下部揚水管12の上流側に続くポンプケース13、ポンプケース13の上流側に続く上吸入カバー14、上吸入カバー14の上流側に続く下吸入カバー15を有して構成されている。これら、上部ケース9〜下吸入カバー15は全て「ケースC」の一例である。
【0025】
上下向きの軸心Pを有する主軸4の下端には下方へ抜止めされる羽根車5が一体回転状態に嵌合装着されており、その上側においてポンプケース13のインナーケース部13iに支持される下部軸受部16が装備されている。ポンプケース13は、外周壁13oとインナーケース部13iと、これら両者を一体化する複数の整流板部13aとを有して構成されている。主軸4に動力伝達されて羽根車5が回転することにより、下吸入カバー15から吸引される水等の液体はポンプケーシング3内で揚水(矢印イ方向)され、上部ケース9から、これに接続される配水管(図示省略)に流れて行く。
【0026】
次に、下部揚水管12と中間揚水管11との連結構造について述べる。図1,図2に示すように、吸込み方向(矢印イ方向)の上流側に位置する下部揚水管(上流側ケースの一例)12と、その吸込み方向の下流側に隣合う中間揚水管(下流側ケースの一例)11とを軸心Pを中心とするインロー構造で嵌め合う嵌合部Kが形成されている。そして、下部揚水管12の嵌合部Kの径内側に、軸心Pを中心とする環状体を為してポンプケーシング3の内部に装備される中間軸受部8を構成する中間軸受台(内装構造体Nの一例)8Aを嵌合及び支持させる取付部25が形成されている。
【0027】
図2,図3に示すように、中間揚水管11の下端に一体形成される下外周フランジ11Aには、その最も外周側の環状底面である最外周底面17、最外周底面17の径内側で少し上に位置する環状の中間底面18、最外周底面17の内端と中間底面18の外端とに亘る基準立内周面19、管内面11aよりも若干径が大きい状態で中間底面18の内端に続く内立周面20、上下に貫通する取付孔21等が形成されている。ここで、中間底面18と基準立内周面19とで形成される上方に凹入する部分を凹リング部33と呼ぶものと定義する。尚、Xは取付孔21の軸心である。
【0028】
図2〜図4に示すように、下部揚水管12の上端に一体形成される上外周フランジ12Aには、その最も外周側の環状上面である最外周上面22、最外周上面22の内側に位置して上方隆起する凸リング部23、凸リング部23の外周側の立側周面である基準立外周面24、凸リング部23の内側に位置して下方に凹んだ取付部(環状凹入部)25、管内面12aよりも若干径が大きい状態で環状凹入部25の内端に続く立側周面26、上下に貫通する取付孔21等が形成されている。環状凹入部25は、凸リング部23の天井面23aの内端に続く垂直な嵌合立周面25b、及び嵌合立周面25bの下端に続く水平な環状載置面25aを有している。
【0029】
中間軸受部8を形成する主要部品である中間軸受台8Aは、図1,図2に示すように、摺動部材(軸受の一例)27を嵌装するボス部8a、内立周面20及び下部揚水管12の立側周面26の径方向内側に位置する外周部8b、及びボス部8aと外周部8bとを繋ぐ複数の支持材8cとを有して構成されている。外周部8bは、図2,図3に示すように、下部揚水管12の立側周面26に径方向の隙間を持って遊内嵌される下外周面28、内立周面20に径方向の隙間を持って遊内嵌される上外周面31、及び環状載置面25aに載せ付けられる環状底面30を有する外周フランジ29を備えて形成されている。外周フランジ29は、嵌合立周面25bに嵌め合い内嵌されるフランジ外周面29a、及び中間底面18に上下の間隙を有して位置するフランジ上面29b、及び取付け用のボルト孔29cを備えている。
【0030】
つまり、外周フランジ29が環状凹入部25に嵌合されること、即ち、フランジ外周面29aと嵌合立周面25bとが嵌め合い嵌合されて外周フランジ29の環状底面30が環状載置面25aに当接するまで落し込み挿入されることにより、下軸受ケース8Aと下部揚水管12との芯出しが行われる。そして、ボルト孔29cに挿通されるボルト(六角穴付ボルト)32を上外周フランジ12Aに螺着することにより、下部揚水管12に対して芯出し状態で中間軸受台8Aを、即ち、中間軸受部8を固定支持させることができる。つまり、下部揚水管12の環状凹入部25は、内装構造体Nである中間軸受台8Aを嵌合及び支持させる取付部として構成されている。
【0031】
そして、図2,図3に示すように、基準立内周面19と基準立外周面24とが嵌め合い嵌合されて下外周フランジ11Aの最外周底面17が最外周上面22に当接するまで中間揚水管11を下部揚水管12に落し込み挿入することができる。それによって、中間揚水管11と下部揚水管12との芯出しを行うことができる。そして、上下の取付孔21に通されるボルト・ナット(図示省略)により、中間揚水管11と下部揚水管12とを芯出し状態で一体的に連結固定することができる。すなわち、互いに嵌め合い嵌合される基準立内周面19と基準立外周面24とによって嵌合部Kが構成されている。
【0032】
つまり、複数のケースCのうちの流体の流れ方向の上流側に位置する下部揚水管12と、その流れ方向の下流側に隣合う中間揚水管12とを軸心Pを中心とするインロー構造で嵌め合う嵌合部Kが形成され、嵌合部Kの径内側における下部揚水管12(又は中間揚水管11)に、軸心Pを中心とする環状体を為してポンプケーシング3の内部に装備される内装構造体N(中間軸受部8を構成する中間軸受台8A)を嵌合及び支持させる取付部25が形成可能に構成されている。
【0033】
そして、図3に示すように、凹入部25を環状に形成し、環状の凸リング部23としているので旋盤等で容易に加工ができる。また、環状凹入部25を有する上外周フランジ12Aの軸心P方向最大厚みDと、環状凹入部25を有さない下外周フランジ11Aの軸心P方向最大厚みEとが同じ厚み又はほぼ同じ厚みに設定されておれば、強度バランスの点でより好都合である。また、厚みを同じにすれば鋳造で揚水管を製作する際には木型を同じ形にすることも可能となりコスト低減につながる。
【0034】
さらに、嵌合部Kが、上外周フランジ12Aと下外周フランジ11Aのうちの一方である上外周フランジ12Aに形成される凸リング部23と、凸リング部23に嵌合する状態で他方の下外周フランジ11Aに形成される凹リング部33とを有して構成されるとともに、凸リング部23を有する外周フランジ12Aに環状凹入部25が形成されている。
【0035】
仕様変更等により、中間軸受部8の無い構造となった場合には、嵌合部Kを用いて中間揚水管11と下部揚水管12とを芯出し状態で嵌合連結すれば良く、嵌合下部揚水管12に中間軸受台8Aは組み込まれない。つまり、中間揚水管11と下部揚水管12との嵌合連結は、中間軸受部8の有無によって左右されない構造となっている。従って、客先仕様に応じて立軸ポンプAとして、ポンプケーシング3から中間軸受部8を省略したり、或は加えることが可能である。尚、ポンプケーシング3は通常鋳造されるので、鋳造後の機械加工工程において、適宜仕様変更が可能となる。
【0036】
つまり、中間揚水管11と下部揚水管12との嵌合部Kと、下部揚水管12と下軸受ケース8Aとの嵌合部である取付部25とを、軸心Pに関する径方向で分けること、あるいは分けて形成可能に構成することにより、中間揚水管11と下部揚水管12とを直接嵌合させてボルト連結させ、中間軸受台8Aが有っても無くても中間揚水管11と下部揚水管12とを芯出し状態で一体的に連結させることが可能となる。
【0037】
これにより、中間軸受台8A等の内装構造体Nを用いて芯出しさせていた従来構造による不都合、即ち、中間軸受台やケーシングライナ等の内装構造体の形状変更や有無によって、上流側ケースと下流側ケースとの少なくとも一方の構造を変更するか、芯出しのためだけに新たな別部材を設けるなど、仕様変更毎にポンプケースも変更しなければならない設計上及び組付上の煩わしさを解消できる。また、別部材を設ける構造の場合にはその部材のコストが余分に掛かるほか、組付け忘れが発生し易いといった不都合があったが、それらから開放される効果も得られる。
【0038】
そして、下外周フランジ11Aの軸心P方向最大厚みEと上外周フランジ12Aの軸心P方向最大厚みDとを実質的に同じ又はほぼ同じとしてあるので、例えば中間軸受台8Aが装着される上外周フランジ12Aの強度や剛性が下外周フランジ11Aに比べて低下するといった不利が無く、強度的なバランスを良くしてポンプケーシング3を構成することも可能となっている。
【0039】
さらに、凸リング部23を有する外周フランジ12Aに環状凹入部25が形成されているから、例えば、環状凹入部25を下外周フランジ11Aに形成するような場合に比べて、各内径側部分11i,12iの強度バランスを、それぞれの軸心P方向厚さに明確な差を付けることなく取ることができる利点がある。また、これにより上下の外周フランジ12A,11Aの軸心P方向のトータル厚さ(嵩高さ)を小さくすることも可能である。
【0040】
〔実施例2〕
中間揚水管11と下部揚水管12との間に中間軸受台8Aを装備しない仕様の立軸ポンプである場合には、下部揚水管12の上端部を、図5に示すように、内装構造体Nである中間軸受台8Aを嵌合及び支持させる取付部25が後加工で形成可能に構成しても良い。つまり、天井面23aが管内面12aまで延びるように凸リング部23を径内側に延長形成し、内径側部分12iの厚みがd1(図5参照)となるように形成された上外周フランジ12Aを持つ構造の下部揚水管12とする構造である。
【0041】
このような構成の上外周フランジ12Aとすれば、内装構造体を設置しない場合には取付部25や立側周面26等を形成する加工費が不要となり、製作工程の簡略化やコストダウンが可能となる利点がある。また、後々に中間軸受部8を装備する必要が生じた際に、後加工(切削加工)によって取付部25や立側周面26等を形成し、下軸受ケース8Aを嵌合及び支持させることが可能であり、その点でも融通性があって汎用性に富む利点もある。さらに、JISB0131(2002)の付図41に示される構造によれば、軸受の有無でポンプ長さが変わってしまい、長さが変わると主軸長さの修正も必要となる。生産リードタイムの関係で、かなり早めに鋳物の手配をする必要があるが、客先との打合せにより、軸受が追加で必要になった場合に、主軸等寸法を延長する必要があるため、不要なものを付けておく必要があった。本発明によれば、上記の主軸長さの修正や不要なものをつけておく不都合が解消される利点もある。特に、ケーシングを鋳造して形成する場合に有利となる。
【0042】
〔別実施例〕
詳細な図示は省略するが、上流側ケースが、羽根車5の羽根5aを囲繞する吸込みカバー(例:図1の上吸入カバー14)であり、下流側ケースが、羽根車5を回転可能に支承する軸受部分(例:図1の下部軸受部16)を囲繞し、かつ、吸込みカバーの上に隣るポンプケースであり、内装構造体Nが、吸込みカバーの内側にて羽根5aを外囲するケーシングライナである、というポンプケーシング構造でも良い。また、凹入部は必ずしも環状に形成する必要はなく、周方向に部分的に形成された形態、例えば周方向4ヶ所にのみ形成しても良い。また、内装構造体の外周フランジ29も環状でなく、支持材8cの近傍にのみにフランジを設けた形態であっても良い。
【0043】
上流側ケースCと下流側ケースCとは、例えば、中間揚水管11と上部揚水管10とでも良く、その他種々の組み合わせが可能である。内装構造体Nは、中間軸受7の軸受台7Aの他、種々のものが可能である。また、立軸ポンプのケーシングに限定されるものではなく、横軸ポンプであっても良いし、立軸のポンプ逆転水車や軸流水車など、回転する主軸と、主軸に取付けられた羽根車を内部に備えた流体機械のポンプケーシングに適用することができるのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0044】
3 ケーシング
4 主軸
5 羽根車
8A 軸受台
11 下流側ケース(中間揚水管)
11A 外周フランジ
12 上流側ケース(下部揚水管)
12A 外周フランジ
13 ポンプケース
16 軸受部分
23 凸リング部
25 取付部(凹入部)
27 軸受
33 凹リング部
C ケース部
K 嵌合部
N 内装構造体
P 主軸の軸心

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転する主軸と、前記主軸に取付けられた羽根車を内部に備えた流体機械のケーシングであって、
ケーシングが、複数のケースを前記主軸の軸心方向で連結一体化することで構成され、前記複数のケースのうちの流体の流れ方向の上流側に位置する上流側ケースと、流体の流れ方向の下流側に隣合う下流側ケースとを前記軸心を中心とするインロー構造で嵌め合う嵌合部が形成され、前記上流側ケース又は下流側ケースの前記嵌合部の径方向内側に、前記ケーシングの内部に装備される内装構造体を嵌合及び支持させる取付部が形成可能に構成されている流体機械のケーシング。
【請求項2】
前記嵌合部が、前記上流側ケースと前記下流側ケースとのそれぞれに設けられた外周フランジに亘って形成されており、前記取付部が前記外周フランジの嵌合部形成部分の径方向内側部分を軸心方向に凹入させた凹入部として形成されている請求項1に記載の流体機械のケーシング。
【請求項3】
前記嵌合部が、前記各外周フランジのうちの一方の外周フランジに形成される環状の凸リング部と、前記凸リング部に嵌合する状態で他方の外周フランジに形成される環状の凹リング部とを有して構成されるとともに、前記凸リング部を有する外周フランジに前記環状凹入部が形成されている請求項2に記載の流体機械のケーシング。
【請求項4】
前記軸心が上下向きの立軸心であり、前記両ケースのうちの下側となるケースに前記凹入部が形成されている請求項2又は3に記載の流体機械のケーシング。
【請求項5】
前記内装構造体が、前記主軸を回転可能に支承する中間軸受を備える軸受台である請求項1〜4の何れか一項に記載の流体機械のケーシング。
【請求項6】
回転する主軸と、前記主軸に取付けられた羽根車と、少なくとも前記羽根車を内部に備えた流体機械のケーシングの製造方法であって、
ケーシングが、複数のケースを前記主軸の軸心方向で連結一体化することで構成され、前記複数のケースのうちの流体の流れ方向の上流側に位置する上流側ケースと、流体の流れ方向の下流側に隣合う下流側ケースとを前記軸心を中心とするインロー構造で嵌め合う嵌合部が形成され、前記上流側ケース又は下流側ケースの前記嵌合部の径方向内側に、前記ケーシングの内部に装備される内装構造体を嵌合及び支持させる取付部が形成可能に構成され、前記ケーシングを鋳造で作成し、内装構造体を嵌合する場合には、取付部を切削加工で形成することを特徴とする流体機械のケーシングの製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2011−47331(P2011−47331A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−196398(P2009−196398)
【出願日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】