説明

流体機械及びこれを用いたランキンサイクル

【課題】膨張機構の回転数に拘わらずポンプ機構の容量を任意に調整することのできる流体機械及びこれを用いたランキンサイクルを提供する。
【解決手段】作動流体の膨張によって回転する膨張機構30と、膨張機構30の回転力によって駆動される発電機40と、膨張機構30の回転力によって駆動されるポンプ機構50とを一体に備えるとともに、ポンプ機構50を膨張機構30の回転数に対して容量可変に構成したので、膨張機構30の回転数に拘わらずポンプ機構50の容量を任意に調整することができ、ポンプ機構50によって圧送される流体の流量を常に適正にすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば車両のエンジンの廃熱を利用して発電する廃熱利用装置に用いられる流体機械及びこれを用いたランキンサイクルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両等に用いられるランキンサイクルは、エンジンの廃熱によって作動流体を蒸発させる蒸発器と、蒸発した作動流体の膨張により発電機を駆動する膨張機と、膨張機から流出した作動流体を凝縮させる凝縮器と、凝縮器から蒸発器に作動流体を圧送するポンプとから構成されている。また、このようなランキンサイクルに用いられる流体機械として、膨張機、発電機及びポンプを一体に設けたものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
前記流体機械は、作動流体の膨張により回転力を発生する膨張機構と、膨張機構の回転力によって駆動される発電機と、発電機と共に膨張機構の回転力によって駆動されるポンプ機構とを備え、ポンプ機構によって凝縮器から蒸発器に作動流体を圧送するようにしている。この流体機械では、膨張機構によってポンプ機構が駆動されるので、ポンプ駆動用のモータを別途用いる必要がないという利点がある。
【特許文献1】特開2005−30386号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前記ランキンサイクルでは、吸熱量や放熱量が車速や外気温度によって変化するため、これに応じて作動流体の流量を調整する必要がある。しかしながら、前記流体機械では、膨張機構によってポンプ機構を駆動する場合、膨張機構とポンプ機構とが互いに直結状態となるため、膨張機構の回転数に対してポンプ機構の容量を変えることができず、ランキンサイクルにおけるポンプの流量を適正に調整することができないという問題点があった。
【0005】
本発明は前記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、膨張機構の回転数に拘わらずポンプ機構の容量を任意に調整することのできる流体機械及びこれを用いたランキンサイクルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は前記目的を達成するために、作動流体の膨張により回転力を発生する膨張機構と、膨張機構の回転力によって駆動される発電機と、膨張機構の回転力によって駆動されるポンプ機構とを備えた流体機械において、前記ポンプ機構を容量可変に構成している。
【0007】
これにより、作動流体の膨張によって膨張機構が回転するとともに、膨張機構によって発電機及びポンプ機構が駆動される。その際、ポンプ機構の容量を変えることにより、膨張機構の回転数に拘わらずポンプ機構の容量を任意に調整することができる。
【0008】
また、本発明は前記目的を達成するために、前記流体機械を備えたランキンサイクルを、蒸発器によって蒸発した作動流体を流体機械の膨張機構で膨張させるとともに、膨張機構から流出する作動流体を凝縮器によって凝縮させ、凝縮器から流出する作動流体を流体機械のポンプ機構によって蒸発器に圧送するように構成している。
【0009】
これにより、蒸発器で蒸発した作動流体が膨張機構で膨張し、凝縮器で凝縮した作動流体がポンプ機構によって蒸発器に圧送されることから、作動流体の膨張によって得られる動力を発電のみならず作動流体の循環にも利用することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の流体機械によれば、膨張機構の回転数に拘わらずポンプ機構の容量を任意に調整することができるので、ポンプ機構によって圧送される流体の流量を常に適正にすることができ、例えばエンジンの廃熱を利用する車両用廃熱利用装置に用いる場合に極めて有利である。
【0011】
また、本発明のランキンサイクルによれば、作動流体の膨張によって得られる動力を発電のみならず作動流体の循環にも利用することができるので、ランキンサイクルの効率の向上に極めて有利である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1及び図2は本発明のランキンサイクルを用いた車両用廃熱利用装置の一実施形態を示す概略構成図、図2は本発明のランキンサイクルに用いられる流体機械の側面断面図である。この廃熱利用装置は、エンジンを駆動源とする自動車に用いられるもので、エンジンの廃熱を利用して発電するようになっている。
【0013】
本実施形態の廃熱利用装置は、エンジン1の冷却水を循環する冷却水回路2と、エンジン1の排気ガスによって加熱される熱媒体を循環する熱媒体回路3と、エンジン1の廃熱を熱源として発電するランキンサイクル4とを備えている。
【0014】
冷却水回路2は、エンジン1と、冷却水を冷却するラジエータ5と、冷却水を熱媒体回路3の熱媒体と熱交換することにより加熱する冷却水加熱器6と、ランキンサイクル4の作動流体を冷却水と熱交換することにより蒸発させる蒸発器7とを接続してなり、第1のポンプ8によって冷却水を循環するようになっている。冷却水回路2にはラジエータ5の流入側と流出側とを連通するバイパス流路9が設けられ、ラジエータ5側の流路とバイパス流路9の何れか一方がサーモスタット10によってエンジン1側の流路に連通するようになっている。尚、サーモスタット10は流出側(エンジン1側)の温度が所定温度になるように温度に応じて三方弁の開度を調整する周知の機器からなる。冷却水加熱器6及び蒸発器7はエンジン1の冷却水流出側に互いに並列に接続され、冷却水加熱器6及び蒸発器7の冷却水流入側には第1及び第2の電磁弁11,12がそれぞれ設けられている。
【0015】
熱媒体回路3は、熱媒体をエンジン1の排気ガス流路1a内の排気ガスと熱交換することにより加熱する熱媒体加熱器13と、熱媒体加熱器13によって加熱された熱媒体を貯溜する断熱構造の蓄熱タンク14と、ランキンサイクル4の作動流体を過熱する過熱器15と、冷却水回路2の冷却水加熱器6とを接続してなり、第2のポンプ16によって熱媒体を循環するようになっている。この場合、熱媒体には、例えばシリコンオイル等、冷却水よりも沸点が高く、液体として蓄熱タンク14に貯溜可能な熱媒体が用いられる。冷却水加熱器6及び過熱器15は蓄熱タンク14の冷却水流出側に互いに並列に接続され、冷却水加熱器6及び過熱器15の熱媒体流入側には第3及び第4の電磁弁17,18がそれぞれ設けられている。
【0016】
ランキンサイクル4は、蒸発器7と、過熱器15と、後述する流体機械20の膨張機構30と、膨張機構30から流出した作動流体を凝縮させる凝縮器19とを接続してなり、流体機械20のポンプ機構50によって作動流体を循環するようになっている。この場合、作動流体には、例えばフロン系冷媒(R245ca、R245fa、R152a等)が用いられる。
【0017】
また、冷却水回路2には、ラジエータ5から流出する冷却水の温度に応じて各電磁弁11,12,17,18を作動させる温度スイッチ2aが設けられている。
【0018】
次に、前記ランキンサイクル4に用いる流体機械20について説明する。この流体機械20は、作動流体の膨張によって回転する膨張機構30と、膨張機構30の回転力によって駆動される発電機40と、膨張機構30の回転力によって駆動されるポンプ機構50と、膨張機構30の回転力を発電機40及びポンプ機構50に伝達するシャフト60とからなり、発電機40は外部から供給される電力により回転してポンプ機構50を駆動することも可能になっている。
【0019】
膨張機構30は、一端側を閉塞した円筒状の第1のハウジング31と、第1のハウジング31の他端面を閉塞する第2のハウジング32と、第1のハウジング31内に互いに軸方向に対向して配置された固定スクロール部材33及び可動スクロール部材34とを備え、可動スクロール部材34の偏心揺動運動によってシャフト60を回転させるようになっている。
【0020】
第1のハウジング31は側面に作動流体の流出口31aを有し、その一端面には作動流体の流入口31bが設けられている。第2のハウジング32の一端側に軸方向に円筒状に延出する軸受部32aが設けられ、他端面の径方向一端側には径方向に延びる長孔32bが設けられている。
【0021】
固定スクロール部材33は一端側を第1のハウジング31に固定され、その他端面には可動スクロール部材34に対向する渦巻体33aが設けられている。また、固定スクロール部材33の一端面には第1のハウジング31の流入口31bに連通する流通孔33bが設けられている。可動スクロール部材34は一端面に固定スクロール部材33に対向する渦巻体34aを有し、可動スクロール部材34の渦巻体34aは固定スクロール部材33の渦巻体33aに偏心揺動可能に噛み合っている。可動スクロール部材34の他端面の径方向一端側には第2のハウジング32の長孔32bに径方向に移動自在に係合する係合ピン34bが設けられ、係合ピン34bと長孔32bとの係合により可動スクロール部材34の自転が規制されるようになっている。また、可動スクロール部材34の他端面中央にはボス部34cが設けられ、ボス部34c内には偏心ブシュ35がベアリング35aを介して回動自在に支持されている。偏心ブシュ35の一端側にはシャフト60と同軸状をなす支軸35bが突設され、支軸35bには静バランスを修正するためのバランスウエイト36が取付けられている。第1のハウジング32の軸受部32a内には偏心ブシュ35によって回転する回転体37がベアリング37aを介して回動自在に支持され、回転体37の径方向中央には偏心ブシュ35の支軸35bが回動自在に挿入されるとともに、回転体37には偏心ブシュ35の径方向一端側に回動自在に係合する偏心ピン37bが突設されている。また、回転体37は一方向伝達機構としてのワンウェイクラッチ38を介してシャフト60の一端側に接続され、一方向の回転力のみをシャフト60に伝達するようになっている。
【0022】
発電機40は、両端を開口した円筒状のハウジング41と、ハウジング41の内周面に固定されたステータ42と、ステータ42に保持された巻線43と、ステータ42の内側に配置されたロータ44とを備え、ロータ44はシャフト60に固定されている。
【0023】
ポンプ機構50は、一端を閉塞した円筒状のハウジング51と、一端をハウジング51の他端に連結されたシリンダブロック52と、シリンダブロック52内に設けられた複数のピストン53と、シリンダブロック52の他端側に配置されたシリンダヘッド54と、シリンダブロック52とシリンダヘッド54との間に設けられたバルブプレート55と、各ピストン53の一端側に摺動自在に係合する斜板56と、斜板56の傾斜角度を変える可変機構57とを備え、斜板56はシャフト60によって回転するようになっている。
【0024】
ハウジング51の一端には軸方向に延出する軸受部51aが設けられ、軸受部51aにはシャフト60がベアリング51bを介して回動自在に支持されている。
【0025】
シリンダブロック52はシリンダ52aを有し、各シリンダ52aの両端はそれぞれハウジング51側及びバルブプレート55側に開口している。また、シリンダブロック52には、シャフト60の他端側がベアリング52bを介して回動自在に支持されている。
【0026】
各ピストン53は各シリンダ52a内に摺動自在に設けられ、その一端には斜板56と係合する係合部53aが設けられている。係合部53aは互いに対向する一対の半球面を有し、各半球面間には半球状のシュー53bが摺動自在に設けられている。
【0027】
シリンダヘッド54は作動流体の吐出室54a及び吸入室54bを有し、吐出室54a及び吸入室54bはそれぞれシリンダブロック52側に開口している。吐出室54aはシリンダヘッド54の中央部に設けられ、シリンダヘッド54には吐出室54aに連通する吐出口(図示せず)が設けられている。また、吸入室54bには吐出室54aの周囲に設けられ、シリンダヘッド54には吸入室54bに連通する吸入口(図示せず)が設けられている。
【0028】
バルブプレート55は各シリンダ52aに連通する複数の吐出孔55a及び吸入孔55bを有し、吐出孔55a及び吸入孔55bはそれぞれシリンダヘッド54の吐出室54a及び吸入室54bに連通している。バルブプレート55の一方の面側(シリンダヘッド54側)には吐出側プレート55cが配置され、吐出側プレート55cには各吐出孔55aを開閉する吐出弁(図示せず)が設けられている。また、バルブプレート55の他方の面側(シリンダブロック52側)には吸入側プレート55dが配置され、吸入側プレート55dには各吸入孔55bを開閉する吸入弁(図示せず)が設けられている。
【0029】
斜板56はシャフト60の軸方向に対して傾動自在に設けられ、その周縁部には各ピストン53の係合部53aがシュー53bを介して摺動自在に係合している。斜板56はシャフト60と一体に回転する回転板56aに傾動自在に連結され、回転板56aによってシャフト60を中心に回転し、その傾斜角度に応じたストローク量で各ピストン53を往復移動させるようになっている。また、斜板56の中央部にはシャフト60が貫通しており、シャフト60には軸方向に延びる長孔60aが設けられている。即ち、斜板56の中央部はピン56bを介して長孔60aに係合しており、ピン56bは斜板56の傾動に伴ってシャフト60の長孔60a内を移動するようになっている。
【0030】
可変機構57は、一端を斜板56のピン56bに連結されたロッド57aと、ロッド57aをシャフト60の軸方向に移動させる駆動部57bとからなり、ロッド57aはシャフト60内に摺動自在に設けられている。駆動部57bは、例えばモータを備えたギアユニット等、ロッド57aを軸方向に任意の量だけ移動可能な周知の機構からなり、図示しない外部の制御部からの信号に基づいて斜板56の傾斜角度を変えるようになっている。
【0031】
以上のように構成された流体機械20は、膨張機構30の流入側がランキンサイクル4の過熱器15の流出側に接続され、膨張機構30の流出側が凝縮器19の流入側に接続される。また、流体機械20は、ポンプ機構50の吸入側が凝縮器19の流出側に接続され、ポンプ機構50の吐出側が蒸発器7の流入側に接続される。
【0032】
膨張機構30では、作動流体が流入口31bを介して各スクロール部材33,34間に流入すると、作動流体が各渦巻体33a,34a間で膨張し、可動スクロール部材33が各渦巻体33a,34a間の容積を拡大させるように係合ピン34bを中心に偏心揺動運動を行う。これにより、可動スクロール部材34のボス部34c内の偏心ブシュ35が支軸35bを中心に回転し、偏心ブシュ35に係合する偏心ピン37bが偏心ブシュ35によって回転する。偏心ピン37bが回転すると回転体37が回転し、回転体37の回転力はワンウェイクラッチ38を介してシャフト60に伝達される。
【0033】
発電機40では、膨張機構30によってシャフト60が回転すると、ロータ44が回転して起電力が発生し、発電した電力が外部に供給される。
【0034】
ポンプ機構50では、シャフト60が回転すると、斜板56が各ピストン53に係合しながら回転し、各ピストン53が斜板56の傾斜角度に応じたストローク量でシリンダ52a内を往復移動する。これにより、作動流体がシリンダヘッド54の吸入室54bを介してシリンダ52a内に吸入され、シリンダ52a内から吐出室54aを介して外部に吐出される。
【0035】
次に、前記流体機械20を用いた廃熱利用装置の動作について説明する。まず、エンジン1の冷却水が所定温度(例えば80℃)よりも高い場合は、サーモスタット10のラジエータ5側の流路がエンジン1側の流路に連通するとともに、温度スイッチ2aにより、冷却水回路2の第1の電磁弁11が閉鎖され、第2の電磁弁12が開放される。これにより、図中実線矢印で示すようにエンジン1から流出した冷却水が蒸発器7及びラジエータ5を流通してエンジン1に流入する。その際、蒸発器7を流通する高温の冷却水によってランキンサイクル4の作動流体が蒸発する。また、温度スイッチ2aにより、熱媒体回路3の第3の電磁弁17が閉鎖され、第4の電磁弁18が開放される。これにより、図中実線矢印で示すように熱媒体加熱器13で冷却水の沸点よりも高温に加熱された熱媒体が断熱材で保温された蓄熱タンク14に貯溜され、蓄熱タンク14が蓄熱されるとともに、蓄熱タンク14から流出した熱媒体が過熱器15を流通して熱媒体加熱器13に流入する。その際、過熱器15を流通する高温(例えば200℃)の熱媒体によってランキンサイクル4の作動流体が過熱される。
【0036】
また、ランキンサイクル4の作動流体は、図中一点鎖線矢印で示すように、蒸発器7、過熱器15、流体機械20の膨張機構30、凝縮器19、流体機械20のポンプ機構50に流通して蒸発器7に流入する。即ち、蒸発器7で飽和蒸発となった作動流体が過熱器15によって過熱され、過熱蒸気となって膨張機構30に流入し、膨張機構30で膨張することにより、膨張機構30によって発電機40が駆動される。その際、ランキンサイクル4の起動時など、膨張機構30の回転数が低い場合は、外部電源によって発電機40に電圧を印加し、発電機40をモータとして膨張機構30よりも高回転で駆動することにより、ポンプ機構50を発電機40(モータ)によって駆動する。その際、ワンウェイクラッチ38により、発電機40(モータ)の回転力は膨張機構30に伝達されず、膨張機構30の負荷が発電機40(モータ)に加わることがない。そして、膨張機構30の回転数が発電機40(モータ)の回転数を上回ると、発電機40への電圧の印加を停止し、発電機40による発電に切り換える。
【0037】
また、膨張機構30から流出した作動流体は凝縮器19で凝縮した後、ポンプ機構50によって圧送され、蒸発器7に流入する。その際、ポンプ機構50では、可変機構57によって斜板56の傾斜角度を大きくすると各ピストン53のストローク量が大きくなり、傾斜角度を小さくするとストローク量が小さくなるので、例えば吸熱量、放熱量、車速、外気温度等の運転条件に応じて、ポンプ機構50を適正な容量になるように調整することが可能になる。
【0038】
次に、エンジン1を停止した後、長時間が経過してからエンジン1を始動した直後において、エンジン1の冷却水が所定温度(例えば80℃)以下の場合は、サーモスタット10のバイパス流路9側がエンジン1側の流路に連通するとともに、温度スイッチ2aにより、冷却水回路2の第1の電磁弁11が開放され、第2の電磁弁12が閉鎖される。これにより、図中破線矢印で示すようにエンジン1から流出した冷却水が冷却水加熱器6及びバイパス流路9を流通してエンジン1に流入する。また、温度スイッチ2aにより、熱媒体回路3の第3の電磁弁17が開放され、第4の電磁弁18が閉鎖される。これにより、図中破線矢印で示すように、蓄熱タンク14に貯溜されていた高温(例えば200℃)の熱媒体が冷却水加熱器6を流通して熱媒体加熱器13に流入する。その際、冷却水加熱器6を流通する熱媒体によって冷却水回路2の冷却水が加熱され、冷却水の温度が速やかに上昇する。
【0039】
このように、本実施形態の流体機械20によれば、作動流体の膨張によって回転する膨張機構30と、膨張機構30の回転力によって駆動される発電機40と、膨張機構30の回転力によって駆動されるポンプ機構50とを一体に備えるとともに、ポンプ機構50を膨張機構30の回転数に対して容量可変に構成したので、膨張機構30の回転数に拘わらずポンプ機構50の容量を任意に調整することができ、ポンプ機構50によって圧送される流体の流量を常に適正にすることができる。
【0040】
この場合、ランキンサイクル4の蒸発器7で蒸発した作動流体を膨張機構30によって膨張させ、凝縮した作動流体をポンプ機構50によって蒸発器7側に圧送するようにしたので、ランキンサイクル4の作動流体の膨張によって得られる動力を発電のみならず作動流体の循環にも利用することができ、ランキンサイクル4の効率の向上に極めて有利である。
【0041】
また、ポンプ機構50を、シリンダ52a内を往復移動することにより流体を吸入及び吐出するピストン53と、ピストン53に摺動自在に係合する斜板56と、斜板56を回転させることにより斜板56の傾斜角度に応じてピストンを往復移動させるシャフト60と、斜板56の傾斜角度を変える可変機構57とから構成したので、膨張機構30によるシャフト60の回転速度を変速することなく容量を変えることができる。これにより、例えば減速機を用いて容量を変えるものに比べて構造の簡素化を図ることができ、小型化及び低コスト化に極めて有利である。
【0042】
更に、膨張機構30の回転力をワンウェイクラッチ38によって所定の回転方向でのみ発電機40に伝達するとともに、発電機40をモータとして前記所定の回転方向に回転可能に構成したので、ランキンサイクル4の起動時など、膨張機構30の回転数が低い場合は、外部電源によって発電機40に電圧を印加し、発電機40をモータとして膨張機構30よりも高回転で駆動することにより、ポンプ機構50を発電機40(モータ)によって駆動することができ、常にポンプ機構50に必要な回転力を得ることができる。
【0043】
また、膨張機構30を、固定スクロール部材33と、固定スクロール部材33との間に流入した作動流体の膨張によって偏心揺動することによりシャフト60を回転させる可動スクロール部材34とから構成したので、小型で効率のよいスクロール型膨張機を構成することができ、実用化に際して極めて有利である。
【0044】
図3は本発明の他の実施形態を示す流体機械の側面断面図であり、前記実施形態と同等の構成部分には同一の符号を付して示す。
【0045】
本実施形態の流体機械20は、ポンプ機構50の各ピストン53に代えて複数のダイヤフラム58を設けたものである。ダイヤフラム58はシリンダ52aの一端側に設けられた可撓性の膜状部材からなり、樹脂、金属、ゴム等の周知の素材によって形成されている。ダイヤフラム58は、その一方の面側とバルブプレート55側との間が密閉されるように設けられ、その他方の面には斜板56に係合する係合部材59が取付けられている。係合部材59は、前記実施形態のピストン53と同様、一端側に係合部59aが設けられ、係合部59aはシュー59bを介して斜板56の周縁部に摺動自在に係合している。
【0046】
本実施形態のポンプ機構50では、シャフト60が回転すると、斜板56が各ダイヤフラム58の係合部材59に係合しながら回転し、各係合部材59が斜板56の傾斜角度に応じたストローク量でシリンダ52a内を往復移動することにより、各ダイヤフラム58が伸縮する。その際、係合部材59がシリンダ52aの他端側に向かって移動すると、ダイヤフラム58が伸びてバルブプレート55とダイヤフラム58との間の容積が拡大し、作動流体がシリンダヘッド54の吸入室54bを介してダイヤフラム58側に吸入される。また、係合部材59がシリンダ52aの一端側に向かって移動すると、ダイヤフラム58が収縮してバルブプレート55とダイヤフラム58との間の容積が縮小し、作動流体がダイヤフラム58側から吐出室54aを介して外部に吐出される。その際、可変機構57によって斜板56の傾斜角度を大きくすると各ダイヤフラム58の伸縮量が大きくなり、傾斜角度を小さくすると伸縮量が小さくなるので、前記実施形態と同様、ランキンサイクル4の運転条件に応じてポンプ機構50の容量を適正になるように調整することが可能になる。
【0047】
このように、本実施形態によれば、流体機械20のポンプ機構50を、所定方向に伸縮することにより作動流体を吸入及び吐出するダイヤフラム58と、ダイヤフラム58に摺動自在に係合する斜板56と、斜板56を回転させることにより斜板56の傾斜角度に応じてダイヤフラム58を伸縮させるシャフト60と、斜板56の傾斜角度を変える可変機構57とから構成したので、前記実施形態と同様、膨張機構30によるシャフト60の回転速度を変速することなく容量を変えることができ、小型化及び低コスト化に極めて有利である。この場合、作動流体の吸入及び吐出にダイヤフラム58を用いているので、ハウジング51内の斜板56やシャフト60等の駆動機構部側に作動流体が侵入することがなく、作動流体との接触による駆動機構部の耐久性低下を防止することができる。また、駆動機構部を潤滑するための潤滑油を作動流体に混合する必要がないので、潤滑油の混合による作動流体の熱交換特性の低下を生ずることがなく、ランキンサイクル4の効率の向上に極めて有利である。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明のランキンサイクルを用いた車両用廃熱利用装置の一実施形態を示す概略構成図
【図2】本発明のランキンサイクルに用いられる流体機械の側面断面図
【図3】本発明の他の実施形態を示す流体機械の側面断面図
【符号の説明】
【0049】
4…ランキンサイクル、7…蒸発器、19…凝縮器、20…流体機械、30…膨張機構、33…固定スクロール部材、34…固定スクロール部材、40…発電機、50…ポンプ機構、52a…シリンダ、53…ピストン、56…斜板、57…可変機構、58…ダイヤフラム、60…シャフト。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動流体の膨張により回転力を発生する膨張機構と、膨張機構の回転力によって駆動される発電機と、膨張機構の回転力によって駆動されるポンプ機構とを備えた流体機械において、
前記ポンプ機構を容量可変に構成した
ことを特徴とする流体機械。
【請求項2】
前記ポンプ機構を、シリンダ内を往復移動することにより流体を吸入及び吐出するピストンと、ピストンに摺動自在に係合する斜板と、斜板を回転させることにより斜板の傾斜角度に応じてピストンを往復移動させる回転軸と、斜板の傾斜角度を変える可変機構とから構成した
ことを特徴とする請求項1記載の流体機械。
【請求項3】
前記ポンプ機構を、所定方向に伸縮することにより流体を吸入及び吐出するダイヤフラムと、ダイヤフラムに摺動自在に係合する斜板と、斜板を回転させることにより斜板の傾斜角度に応じてダイヤフラムを伸縮させる回転軸と、斜板の傾斜角度を変える可変機構とから構成した
ことを特徴とする請求項1記載の流体機械。
【請求項4】
前記膨張機構を、固定スクロール部材と、固定スクロール部材との間に流入した作動流体の膨張によって偏心揺動することにより回転力を発生する可動スクロール部材とから構成した
ことを特徴とする請求項1、2または3記載の流体機械。
【請求項5】
前記膨張機構の回転力を所定の回転方向でのみ発電機に伝達する一方向伝達機構を備え、
前記発電機を外部から供給される電力によりモータとして前記回転方向に回転するように構成した
ことを特徴とする請求項1、2、3または4記載の流体機械。
【請求項6】
請求項1、2、3、または5記載の流体機械を備えたランキンサイクルであって、
蒸発器によって蒸発した作動流体を流体機械の膨張機構で膨張させるとともに、膨張機構から流出する作動流体を凝縮器によって凝縮させ、凝縮器から流出する作動流体を流体機械のポンプ機構によって蒸発器に圧送するように構成した
ことを特徴とするランキンサイクル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−185772(P2009−185772A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−29063(P2008−29063)
【出願日】平成20年2月8日(2008.2.8)
【出願人】(000001845)サンデン株式会社 (1,791)
【Fターム(参考)】