流体発電装置
【課題】発電機ロータと直線運動する発電機ステータとの芯を出すのが容易な流体発電装置を提供する。
【解決手段】発電機11は、主軸4と共に回転する発電機ロータ12を有するロータ軸9と、ロータ軸9の一端部を回転可能に支持する軸受29を有する第一のベース24と、ロータ軸9の他端部を回転可能に支持する軸受27を有する第二のベース23と、発電機ロータ12とすきまを介して対向する発電機ステータ14が設けられるステータベース25と、第一のベース24と第二のベース23とを連結する軌道部材21と、軌道部材21に沿って直線運動可能な移動部材22と、ステータベース25をロータ軸9の軸線方向に移動させるステータ駆動装置13と、を備える。ステータベース25の直線運動は、軌道部材21及び移動部材22を備える直線運動案内装置によって案内される。
【解決手段】発電機11は、主軸4と共に回転する発電機ロータ12を有するロータ軸9と、ロータ軸9の一端部を回転可能に支持する軸受29を有する第一のベース24と、ロータ軸9の他端部を回転可能に支持する軸受27を有する第二のベース23と、発電機ロータ12とすきまを介して対向する発電機ステータ14が設けられるステータベース25と、第一のベース24と第二のベース23とを連結する軌道部材21と、軌道部材21に沿って直線運動可能な移動部材22と、ステータベース25をロータ軸9の軸線方向に移動させるステータ駆動装置13と、を備える。ステータベース25の直線運動は、軌道部材21及び移動部材22を備える直線運動案内装置によって案内される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風力又は水力の流体エネルギを発電機によって電気エネルギに変換する流体発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題や化石燃料の枯渇に関する関心が世界的に高まっており、その対策の一つとして自然エネルギの利用に注目が集まっている。自然エネルギは、資源を枯渇させずに利用可能なエネルギであり、再生可能エネルギとも呼ばれている。自然エネルギの一種として風のエネルギ(風力)、水のエネルギ(水力)が注目されている。
【0003】
風力発電装置又は水力発電装置は、風力又は水力を電気エネルギに変換する装置である。風力発電装置において、風力を風車ロータ(翼車)が受け、風車ロータの回転力は主軸を介して発電機に伝達され、発電機が風車ロータの機械的な回転力を電力に変換する。水力発電装置は、風力の替わりに水力を利用するものであり、風力発電装置と同様に電力を発生させる。
【0004】
風力、水力を利用した発電は、資源が無尽蔵でクリーンな反面、出力が風、水などの自然現象に影響されて変動するという問題をもつ。この問題を解決するために、特許文献1には、発電機ステータを発電機ロータの軸線の方向に移動させる風車が開示されている。風車ロータの一端には、発電機ロータが取り付けられる。発電機ロータの回りには、僅かなすきまを介して発電機ステータが配置される。この発電機ステータは、可動ガイドによって発電機ロータの軸線方向に移動可能に支持される。
【0005】
この風車は、定格風速のときは、発電機ステータと発電機ロータとの対向面積を大きくとり、コイルに鎖交する磁束を大きくする。その一方、微風状態のときは、発電機ステータを移動させ、発電機ステータと発電機ロータとの対向面積を小さくしている。これにより、微風状態のときの発電効率、回転効率を向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−161052号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
風車には、発電機の出力を大きくするために、発電機ロータと発電機ステータとの間のすきまをできるだけ小さくすることが要請される。また、発電機ステータ移動時の摺動抵抗を低減するために、発電機ステータが移動してもすきまの大きさが変化しないことが要請される。しかし、特許文献1に記載の風車においては、発電機ロータが風車の主軸の端部に取り付けられているので、いくら主軸を軸受で支持しているといえども、発電機ロータが振れ、発電機ロータと発電機ステータのすきまが変動し易いという問題がある。
【0008】
そこで本発明は、発電機ステータを直線運動させる流体発電装置において、発電機ロータの中心線と発電機ステータの中心線とを一致させ、これらの間のすきまが変動するのを防止できる流体発電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様は、風力又は水力を受けて回転する風車ロータと、前記風車ロータの回転力を発電機に伝達する主軸と、前記風車ロータの回転力を受けて電力を発生する発電機と、を備える流体発電装置において、前記発電機は、前記主軸と共に回転する発電機ロータを有するロータ軸と、前記ロータ軸の一端部を回転可能に支持する軸受を有する第一のベースと、前記ロータ軸の他端部を回転可能に支持する軸受を有する第二のベースと、前記発電機ロータとすきまを介して対向する発電機ステータが設けられるステータベースと、前記第一のベースと前記第二のベースとを連結する軌道部材と、前記ステータベースに取り付けられ、前記軌道部材に沿って直線運動可能な移動部材と、前記ステータベースを前記ロータ軸の軸線方向に移動させるステータ駆動装置と、を備え、前記ステータベースの前記ロータ軸の軸線方向の直線運動は、前記軌道部材及び前記移動部材を備える直線運動案内装置によって案内される流体発電装置である。
【0010】
本発明の他の態様は、風力又は水力を受けて回転する風車ロータの回転力を受けて電力を発生する流体発電装置用の発電機であって、発電機ロータを有するロータ軸と、前記ロータ軸の一端部を回転可能に支持する軸受を有する第一のベースと、前記ロータ軸の他端部を回転可能に支持する軸受を有する第二のベースと、前記発電機ロータとすきまを介して対向する発電機ステータが設けられるステータベースと、前記第一のベースと前記第二のベースとを連結する軌道部材と、前記ステータベースに取り付けられ、前記軌道部材に沿って直線運動可能な移動部材と、前記ステータベースを前記ロータ軸の軸線方向に移動させるステータ駆動装置と、を備え、前記ステータベースの前記ロータ軸の軸線方向の直線運動は、前記軌道部材及び前記移動部材を備える直線運動案内装置によって案内される流体発電装置用の発電機である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、直線運動案内装置の軌道部材に、第一のベースと第二のベースとを連結する構造体としての機能と、発電機ステータが直線運動するのを案内する直線運動案内装置としての機能を併せて持たせるので、発電機ロータの中心線と直線運動案内装置の軌道部材との平行度が管理し易くなり、発電機ロータの中心線と発電機ステータの中心線とを一致させることが容易になる。また、ロータ軸の両端部を軸受で支持しているので、ロータ軸が振れるのを防止できる。これに対し、第一のベース及び第二のベースを連結する構造体と直線運動案内装置が別物になった場合、それぞれの部品の加工精度と組立精度を厳しく管理しなければ、発電機ロータの中心線と発電機ステータの中心線とを一致させることができないので、発電機の製作が困難になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第一の実施形態の流体発電装置の全体図
【図2】発電機の平面図
【図3】図2のIII-III線断面図
【図4】図2のIV-IV線断面図
【図5】発電機の斜視図
【図6】発電機ロータ及び発電機ステータの概略図(図中(a)は平面図を示し、図中(b)は垂直断面図を示す)
【図7】ステータ駆動装置に組み込まれるボールねじの斜視図
【図8】発電機ステータの直線運動を案内する直線運動案内装置の斜視図
【図9】本発明の第一の実施形態の流体発電装置の発電機の垂直断面図
【図10】スプライン軸に組み付けられるロータリーボールねじ及びスプラインナットを示す斜視図
【図11】ロータリーボールねじの詳細図
【図12】本発明の第三の実施形態の流体発電装置の発電機の垂直断面図
【図13】本発明の第四の実施形態の流体発電装置の発電機の垂直断面図
【図14】スプライン軸に組み付けられるロータリーボールねじ及びスプラインナットを示す斜視図
【図15】本発明の第四の実施形態の流体発電装置の発電機の動作を説明する図
【図16】水平軸風車に組み込まれる発電機の概略図
【図17】アクチュエータ一体型の直線運動案内装置の斜視図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面に基づいて本発明の第一の実施形態の流体発電装置としての風力発電装置(以下、単に風車という)を説明する。図1は、風車の全体の構成図を示す。図1には、風車として、風車ロータ1の主軸4が風向きに垂直である垂直軸風車が示されている。この垂直軸風車は、風車ロータ1に働く揚力を利用して回転力を得ている。風車ロータ1は、垂直方向に直線状に伸びる複数毎のブレード2を有する。風が吹いたとき、ブレード2は発生する揚力を利用して風車ロータ1に流入する風速の数倍のスピードで回転する。ブレード2は、上下一対の支持腕3を介して主軸4に取り付けられる。
【0014】
主軸4は中空に形成される。主軸4の内側には、主軸4を回転可能に支持する支持軸5が設けられる。支持軸5は風車ベース6から垂直方向に立設する。主軸4と支持軸5との間には、上下方向に間隔を空けて軸受7が配置される。主軸4は軸受7に支持された状態で、支持軸5の外側を回転する。この例の主軸4は支持軸5の外側を回転するので、アウターロータと呼ばれる。
【0015】
風車の下部には、発電機11が設けられる。発電機11の構造の概要は、以下のとおりである。発電機11は、主軸4と共に回転する発電機ロータ12と、発電機ロータ12にすきまg(図3)を介して対向する発電機ステータ14と、を備える。発電機ステータ14に対して発電機ロータ12がその軸線の回りを回転することによって、電力が発生する。
【0016】
主軸4の下端には、ロータ軸9が接続される。ロータ軸9は、主軸に接続される第一のロータ軸としての上部ロータ軸30と、第二のロータ軸としての下部ロータ軸28と、上部ロータ軸30と下部ロータ軸28との間に配置される発電機ロータ12と、を有する。上部ロータ軸30は、第一のベース23に回転可能に支持される。下部ロータ軸28は、第二のベース24に回転可能に支持される。発電機ロータ12は上部ロータ軸30と下部ロータ軸28との間に挟まれる。第一及び第二のベース23,24は、ロータ軸9の外側に配置されるので、ハウジングとして機能する。
【0017】
第二のベース24は、風車ベース6に架台16を介して支持される。第一のベース23と第二のベース24とは軌道部材としての複数本のスプライン軸21で連結される。第二のベース24と第一のベース23との間には、ステータベース25がロータ軸9の軸線方向に直線運動可能に配置される。発電機ステータ14は円環状のステータベース25の内周側に取り付けられる。ステータベース25には、移動部材としての複数のスプラインナット22が取り付けられる。スプラインナット22は、スプライン軸21にスライド可能に組み付けられる。ステータベース25の直線運動は、スプライン軸21及びスプラインナット22を備える直線運動案内装置によって案内される。
【0018】
ステータ駆動装置13は、ステータベース25をロータ軸9の軸線方向に直線運動させる。ステータ駆動装置13は、サーボモータ40と、サーボモータ40によって駆動されるボールねじ52と、を備える。ボールねじ52のねじ軸38は垂直方向に伸びる。ねじ軸38には、ナット37が組み付けられる。ナット37はステータベース25に取り付けられる。サーボモータ40によってねじ軸38を回転させると、ナット37がねじ軸38の軸線方向に直線運動し、ステータベース25がロータ軸9の軸線方向に直線する。発電機11は円筒状のケース15によって覆われる。
【0019】
図2ないし図5は、発電機11の詳細図を示す。図2は発電機11の平面図を示し、図3は図2のIII-III線断面図を示し、図4は図2のIV-IV線断面図を示し、図5は発電機の要部の斜視図を示す。
【0020】
図3及び図5に示すように、発電機11は、円盤状の第二のベース24と、第二のベース24に立設される複数本のスプライン軸21と、複数のスプライン軸21の上端に固定される多角形平板状の第一のベース23と、第二のベース24と第一のベース23との間に垂直方向に直線運動可能に配置される円環状のステータベース25と、を備える。
【0021】
第二のベース24には、軸受27を介して中空の下部ロータ軸28が回転可能に支持される。第一のベース23には、軸受29を介して中空の上部ロータ軸30が回転可能に支持される。上部ロータ軸30の上端には、フランジ33が取り付けられ、上部ロータ軸30は、フランジ33を介してボルト等の結合手段34によって主軸4に結合される。上部ロータ軸30と下部ロータ軸28との間には、発電機ロータ12が挟まれる。発電機ロータ12は、円筒状の本体部39と、本体部39の外周面に周方向に配列された複数の永久磁石31と、を備える。上部ロータ軸30、本体部39、及び下部ロータ軸28は、通しボルト39aによって一体的に結合される。
【0022】
ロータ軸9は主軸4にフランジ33を介して接続され、主軸4に接続したり、切り離したりできる構造となっている。主軸4の下端に発電機ロータ12を直接取り付けるのが最もシンプルな構造となるが、重量の重い主軸4と発電機ステータ14との芯を出す(中心線を一致させる)のが困難になる。ロータ軸9を主軸4から切り離せる構造とすることで、あらかじめ発電機ロータ12と発電機ステータ14との芯を出した後、ロータ軸9を主軸4に結合することが可能になり、発電機ロータ12と発電機ステータ14との芯出し作業が容易になる。
【0023】
第一のベース23と第二のベース24とは、垂直方向に伸びる複数本のスプライン軸21によって連結される。スプライン軸21は、発電機ロータ12の中心線の回りに周方向に例えば120度の間隔を空けて三本設けられる。スプライン軸21は第一のベース23と第二のベース24とを連結する構造体としての機能も持つので、直線運動案内装置として必要な強度よりも頑丈なものが使用される。スプライン軸21の上下方向の両端部は、径が狭められていて、両端部21aの外周には雄ねじが形成される。第一のベース23及び第二のベース24には、スプライン軸21の両端部21aが通される通し孔23a,24aが空けられる。スプライン軸21の両端部21aをこれらの通し孔23a,24aに通し、ロックナット等の結合手段36を両端部21aにねじ込むことにより、スプライン軸21の両端部21aが第一のベース23及び第二のベース24に固定される。第一のベース23及び第二のベース24の通し孔23a,24aの径は、スプライン軸21の両端部21aの径よりも大きく、スプライン軸21の水平方向(すなわち、ロータ軸9の軸線と直交する方向)の位置が調整可能となっている。
【0024】
ステータベース25には、周方向に例えば120度の間隔を空けてスプラインナット22が取り付けられる。スプラインナット22は、スプライン軸21に垂直方向にスライド可能に組み付けられる。
【0025】
ステータベース25には、ボールねじのナット37が取り付けられる。ボールねじのナット37には、ロータ軸9と平行に垂直方向に伸びるねじ軸38が螺合する。ねじ軸38は第一のベース23にねじ軸38の中心線の回りを回転可能に支持される。ねじ軸38の上端は、カップリングを介してサーボモータ40の出力軸に連結される。サーボモータ40はステー41を介して第一のベース23に取り付けられる。サーボモータ40がねじ軸38を回転させると、ねじ軸38に螺合するボールねじのナット37が垂直方向に直線運動し、ナット37に取り付けられる発電機ステータ14が垂直方向に直線運動する。ステータベース25の外周には、表面積を大きくするための多数の冷却用のフィン25bが設けられる(図2参照)。発電機ステータ14のコイル18に発生するジュール熱は冷却用のフィン25bから放熱される。
【0026】
図4に示すように、第一のベース23及び第二のベース24の外周側は補強のためのビーム45で連結される。第一のベース23及び第二のベース24の外周側にはアングル46,47が結合される。ビーム45は上下のアングル46,47間に架け渡される。ビーム45は第一のベース23及び第二のベース24の剛性を上げ、これらの変形を押さえるために設置される。なお、スプライン軸21の強度のみで十分に剛性が高い場合には、ビーム45を省略することも可能である。
【0027】
この実施形態において、発電機ステータ14を垂直方向に移動させる目的は、風車ロータ1が受ける風のエネルギを発電機11が出力する電気エネルギに一致させることにある。風車ロータ1が受ける風のエネルギは風速の三乗に比例する。一方、発電機11が出力する電気エネルギは風速の二乗に比例する。風速の三乗に比例する風車ロータ1が受ける風のエネルギと、風速の二乗に比例する発電機11が出力する電気エネルギとを一致させるために、発電機ステータ14を垂直方向に移動させる(言い換えれば、発電機ロータ12と発電機ステータ14との噛合い率を制御する)。
【0028】
例えば、風速が12m/s→6m/sに変化すると、風車ロータ1が受ける風のエネルギが1/8に低減する。その一方、発電機11が出力する電力は1/4に低減する。もともと風のエネルギが1/8に低減しているから、1/8までしか発電できないにもかかわらず、発電機11の出力が1/4になっている。風のエネルギと発電機11の出力との間にずれが生ずることが原因で、風車ロータ1の回転数が次々と落ちる。これを防止するために、発電機11の噛合い率を制御し、発電機11の出力を1/8にする。
【0029】
一般化して説明すると、風速がN−1(N:1以上の有理数)倍になると、風車ロータ1の回転数はN−1倍になり、風車ロータ1が受ける風のエネルギは、N−3倍になる。一方、風速がN−1倍になると、発電機ロータ12の回転数はN−1倍になり、発電機11の出力はN−2倍になる。風車ロータ1が受ける風のエネルギと発電機11の出力を整合させるために、噛合い率を制御して発電機11の逆起電圧定数をN−1/2倍にする。発電機11の逆起電圧定数をN−1/2倍にすれば、発電機11の電圧がN−3/2倍、電流がN−3/2倍、発電機11の出力がN−3倍になり、風車ロータ1が受ける風のエネルギに整合するようになる。
【0030】
逆に、風速がN(N:1以上の有理数)倍になると、風車ロータ1が受ける風のエネルギはN3倍になるのに対し、発電機11の出力はN2倍になる。風車ロータ1が受ける風のエネルギと発電機11の出力を整合させるために、噛合い率を制御して発電機11の逆起電圧定数をN1/2倍にする。発電機11の逆起電圧定数をN1/2倍にすれば、発電機11の電圧がN3/2倍、電流がN3/2倍、発電機11の出力がN3倍になり、風車ロータ1が受ける風のエネルギに整合するようになる。
【0031】
図6に示すように、発電機ロータ12は、周方向に交互にN極及びS極が形成されるように本体部の外周面に配列された複数の永久磁石31a,31bを有する。各永久磁石31a,31bは垂直方向に細長く伸びている。発電機ステータ14は、ヨーク17と、ヨーク17の複数のコア17aに巻かれる複数のコイル18と、を有する。ヨーク17は、筒状のヨーク本体17bと、筒状のヨーク本体17bから半径方向の内側に突出する複数のコア17aと、を有する。コア17aは永久磁石31a,31bと同様に垂直方向に伸びる。コア17aの垂直方向の長さは永久磁石31a,31bの垂直方向の長さにほぼ等しい。複数のコア17aには、U相,V相,及びW相のコイル18が巻かれる。ヨーク17には、珪素鋼等の電気エネルギと磁気エネルギの変換効率が高い電磁鋼が用いられる。発電機ロータ12が回転すると、U相,V相及びW相からなるコイル18に三相交流が発生する。この三相交流は、直流リンク方式又は交流リンク方式を介して商用電源に系統連係される。コイル18は、ステータベース25に取り付けられたコイルケース44(図3参照)によって覆われる。
【0032】
図7は、ステータ駆動装置13に組み込まれるボールねじ52の斜視図を示す。ボールねじ52は、外周面に螺旋状の転動体転走部としてのボール転走溝38aが形成されるねじ軸38と、内周面にボール転走溝38aに対向する負荷転動体転走部としての負荷ボール転走溝37aが形成されるナット37と、ねじ軸38のボール転走溝38aとナット37の負荷ボール転走溝37aとの間に転がり運動可能に介在される転動体としての多数のボール50とを備える。ナット37には、負荷ボール転走溝37aを転がるボールを循環させるための循環部材としてのリターンパイプ51が取り付けられる。転動体にはボール50の替わりにローラを用いることも可能である。
【0033】
図8は、発電機ステータ14の直線運動を案内する直線運動案内装置の斜視図を示す。直線運動案内装置は、長手方向に沿って転動体転走部としての複数のボール転走溝21bが形成される軌道部材としてのスプライン軸21と、スプライン軸21のボール転走溝21bに対向する負荷転動体転走部としての負荷ボール転走溝22aが形成される移動部材としてのスプラインナット22と、を備える。スプラインナット22には、保持器53が組み込まれる。保持器53には、転動体循環路としてサーキット状のボール循環路54が形成される。ボール循環路54には、転動体として多数のボール55が配列される。ボール55はスプライン軸21のボール転走溝21bとスプラインナット22の負荷ボール転走溝22aとの間にも介在される。スプライン軸21に対してスプラインナット22を直線運動させると、多数のボール55がスプライン軸21のボール転走溝21aとスプラインナット22の負荷ボール転走溝22aとの間を転がり運動し、ボール循環路54を循環する。なお、スプラインナット22の替わりにボールブッシュを用いることもできる。
【0034】
本実施形態によれば、発電機ロータ12を有するロータ軸9の両端部が、第一のベース23及び第二のベース24に設けられる軸受27,29で回転可能に支持され、発電機ステータ14が設けられるステータベース25が第一のベース23及び第二のベース24に連結されるスプライン軸21に沿って直線運動するので、発電機ロータ12と直線運動する発電機ステータ14との芯を出す(発電機ロータ12の中心線と発電機ステータ14の中心線を一致させる)のが容易になる。スプライン軸21に、第一のベース23及び第二のベース24を連結する構造体としての機能と、発電機ステータ14が直線運動するのを案内する直線案内装置としての機能を併せて持たせるので、発電機の製作も容易になり、コストの低減も図れる。これに対して、構造体と直線案内装置が別々であると仮定すると、それぞれの部品の加工精度、組立て精度を厳しく管理しなくては、発電機ステータ14の直線運動時に過大な摺動抵抗が発生する。
【0035】
第一のベース23及び第二のベース24に対して、スプライン軸21の水平方向の位置を調節可能とすることで、発電機ロータ12と直線運動する発電機ステータ14との芯を出すのがより容易になる。スプライン軸21の両端部を第一のベース23及び第二のベース24の通し孔23a,24aに嵌め、通し孔23a,24a内でスプライン軸21の位置を調節することで、スプライン軸21の水平方向の位置を調節すること自体も容易になる。
【0036】
ロータ軸9を、上部ロータ軸30、下部ロータ軸28、及びこれらの間に配置される発電機ロータ12から構成することにより、発電機ロータ12を有するロータ軸9の両端部を軸受27,29で支持するのが容易になる。
【0037】
図9は、本発明の第二の実施形態の流体発電装置の発電機80を示す。上記第一の実施形態の流体発電装置の発電機においては、ロータ軸9の外側に発電機ステータ14が配置されている。これに対し、この第二の実施形態の流体発電装置の発電機においては、中空のロータ軸81の内側に発電機ステータ82が配置される。ロータ軸81には、風車ロータ1の主軸4が接続され、ロータ軸81は風車ロータ1と共に回転する。発電機ステータ82は、ロータ軸9の軸線に沿って直線運動する。
【0038】
ロータ軸9の軸線は鉛直方向を向く。ロータ軸9の内側には、発電機ロータ83が取り付けられる。発電機ロータ83は、周方向に交互にN極及びS極が着磁されるように配列された複数の永久磁石を有する。
【0039】
ロータ軸81の上端部の内側には、第一のベース84が配置される。第一のベース84は円盤状に形成される。第一のベース84の外周には、ロータ軸81を回転可能に支持するリング状の軸受85が設けられる。この軸受85によって、中空のロータ軸81の上端部が回転可能に支持される。
【0040】
中空のロータ軸81の下端部の内側には、第二のベース86が配置される。第二のベース86は円盤状に形成される。第二のベース86の外周には、ロータ軸81を回転可能に支持するリング状の軸受87が設けられる。この軸受87によって、中空のロータ軸81の下端部が回転可能に支持される。
【0041】
第一のベース84及び第二のベース86は、軌道部材としてのスプライン軸88によって連結される。スプライン軸88はロータ軸81の軸線上に配置されている。スプライン軸88の軸線とロータ軸81の軸線とが一致する。スプライン軸88の両端部88aは、径が狭められていて、両端部88aの外周には雄ねじが形成される。第一のベース84及び第二のベース86の中心部には、スプライン軸88の両端部88aが通される通し孔84a,86aが空けられる。スプライン軸88の両端部88aをこれらの通し孔64a,86aに通し、ロックナット等の結合手段89を両端部88aにねじ込むことにより、スプライン軸88が第一及び第二のベース84,86に固定される。
【0042】
なお、この実施形態では、スプライン軸88の両端部88aの外径と第一及び第二のベース84,86の通し孔84a,86aの内径とが一致しており、第一及び第二のベース84,86に対するスプライン軸88の水平方向の位置が調整できないようになっている。第一及び第二のベース84,86の外周と通し孔84a,86aの中心線の同心度が保たれるように第一及び第二のベース84,86を加工すれば、ロータ軸81の軸線とスプライン軸88の軸線とが自動的に一致するからである。
【0043】
ロータ軸81の内側には、発電機ロータ83とすきまを空けて対向する発電機ステータ82が設けられる。発電機ステータ82は、周方向に配列される複数のコイルを有する。発電機ステータ82はステータベース90に取り付けられる。
【0044】
ステータベース90は、軸線方向の一端部にフランジ90aを有する筒状に形成される。ステータベース90の外側に筒状の発電機ステータ82が嵌め込まれる。ステータベース90の内側にロータリーボールねじ91及びスプラインナット92が取り付けられる。ロータリーボールねじ91及びスプラインナット92はスプライン軸88に組み付けられている。
【0045】
ロータリーボールねじ91は、外輪91aと、外輪91aの内側のねじナット91bと、を有する(図10参照)。ねじナット91bは外輪91aに対して回転可能である。ロータリーボールねじ91の外輪91aのフランジ91a1には、ステータベース90のフランジ90aが結合される。ロータリーボールねじ91のねじナット91bには、プーリ95aが取り付けられる。駆動源としてのモータ93はステータベース90にステー94を介して取り付けられる。モータ93の出力軸にはプーリ95bが取り付けられる。モータ93の出力軸はスプライン軸88の軸線から離れている。プーリ95a,95b間にはベルト94が架け渡される。モータ93の出力軸のトルクはプーリ95a,95b及びベルト94を介してねじナット91bに伝動される。駆動源としてのモータ93の回転力をベルト94、プーリ95a,95bからなる巻掛け伝動装置を介してねじナット91bに伝動するので、減速比を任意に設定することができる。
【0046】
図10に示すように、スプライン軸88の外周には、軸線方向に伸びる複数本のスプライン溝88aが形成されると共に、螺旋状の転動体転走溝としてのボール転走溝88bが形成される。スプライン軸88の上部には、ロータリーボールねじ91が組み付けられる。ロータリーボールねじ91のねじナット91bは、ボール転走溝88bに螺合する。スプライン軸88の下部には、スプラインナット92が組み付けられる。スプラインナット92はスプライン溝88に回転不能に係合し、スプライン軸88に沿って直線運動する。
【0047】
なお、この例では、スプライン軸88の全長に渡ってスプライン溝88a及び螺旋状のボール転走溝88bが形成されているが、スプライン溝88aをスプラインナット92が移動する区間にのみ形成し、螺旋状のボール転走溝をロータリーボールねじ91が移動する区間にのみ形成してもよい。また、スプライン軸88の上側にスプラインナット92を配置し、下側にロータリーボールねじ91を配置してもよい。
【0048】
ロータリーボールねじ91の詳細な構造は以下のとおりである。図11に示すように、ロータリーボールねじ91は、外輪91aと、外輪91aの内側に組み込まれるねじナット91bと、を備える。ねじナット91bの内周面には、スプライン軸88の外周のボール転走溝88aに対向する螺旋状のボール転走溝91b1が形成される。ねじナット91bのボール転走溝91b1とスプライン軸88のボール転走溝88bとの間には、複数のボール91cが配列される。ねじナット91bには、複数のボール91cが循環するように循環通路91b2が形成される。スプライン軸88に対してねじナット91bが回転すると、ねじナット91bが回転しながらスプライン軸88の軸線方向に直線運動する。
【0049】
外輪91aはねじナット91bに対して回転可能である。ねじナット91bの外周面には、リング状の軌道溝91b3が形成される。軌道溝91b3は、ねじナット91bの軸線方向に離間して二つ形成される。外輪91aの内周面には、軌道溝91b3に対向する軌道溝91a3が形成される。これらの軌道溝91a3,91b3の間には、複数の転動体としてのボール91dが配列される。転動体91d間には、転動体同士の接触を防止するスペーサが介在される。外輪91aのフランジ91a1はステータベース90に結合される(図9参照)。外輪91aがねじナット91bに対して回転可能であるので、ねじナット91bが回転しても外輪91aは回転することはない。
【0050】
図10に示すように、スプラインナット92は、スプライン軸88に対して直線運動可能であり、スプライン軸88に対して回転不能である。スプラインナット92の構造は図8に示すスプラインナットとほぼ同一である。スプラインナット92のフランジ92aはステータベース90に取り付けられる(図9参照)。スプラインナット92がスプライン軸88に対して回転不能であるから、ステータベース90もスプライン軸88に対して回転不能である。
【0051】
図9に示すように、モータ93がロータリーボールねじ91のねじナット91bを回転させると、ロータリーボールねじ91がスプライン軸88に対して軸線方向に直線運動する。ロータリーボールねじ91にはステータベース90が取り付けられるので、ステータベース90もスプライン軸88に対して軸線方向に直線運動する。ステータベース90はロータリーボールねじ91の外輪91aに取り付けられているので、ねじナット91bと共に回転することはない。ステータベース90にはステー94を介してモータ93が取り付けられるので、モータ93もステータベース90と共に直線運動する。ステータベース90を直線運動させると、発電機ロータ83と発電機ステータ82の噛合い率が変化するので、発電機80の出力を調整することができる。
【0052】
この第二の実施形態の発電機80によれば、ロータ軸81の両端部が第一のベース84及び第二のベース86に設けられる軸受85,87で回転可能に支持され、ステータベース90が第一のベース84及び第二のベース86に連結されるスプライン軸88に沿って直線運動するので、発電機ロータ83の中心線と発電機ステータ82の中心線を一致させるのが容易になる。また、ロータ軸81の軸線上に直線運動案内装置のスプライン軸88が配置されるので、発電機ロータ83の中心線と発電機ステータ82の中心線を一致させるのがより容易になるし、部品点数も減らすことができる。
【0053】
また、中空のロータ軸81の半径方向の内側に第一のベース84、第二のベース86、ステータベース90、ステータ駆動装置93,94,95a,95b及び直線運動案内装置88,92が配置されるので、発電機80の小型化が図れる。
【0054】
さらに、中空のロータ軸81の軸線上にスプライン軸88を配置し、スプライン軸88のボール転走溝88bに螺合するねじナット91bを回転させることによって、ステータベース90を直線運動させるので、ステータベース90を直線運動させる推力がステータベース90の中央に作用する。推力の作用位置とステータベース90の重心とが一致するので、ステータベース90にモーメント荷重が作用することがなく、ステータベース90に傾き又は変形が生じることがない。このため、発電機ロータ83と発電機ステータ82との間のすきまを一定に保つことができる。直線運動案内装置88,92にもモーメント荷重が作用することがないので、ステータベース90を円滑に直線運動させることができる。
【0055】
図12は、本発明の第三の実施形態の流体発電装置の発電機100を示す。中空のロータ軸81、第一のベース84、第二のベース86、ステータベース90、直線運動案内装置88,92、ロータリーボールねじ91の構造は、上記第二の実施形態の発電機と同一であるので、同一の符号を附してその説明を省略する。
【0056】
この実施形態では、ステータ駆動装置の駆動源として、中空モータ96を用いている点が第二の実施形態の発電機80と異なる。中空モータ96は、スプライン軸88と同軸上に配置され、ねじナット91bを回転させる内側のモータロータ96bと、ステータベース90にステー94を介して回転不能に連結される外側のモータステータ96aと、を備える。モータロータ96bは中空に形成され、モータロータ96b内をスプライン軸88が貫通する。中空モータ96のモータロータ96bが回転すると、ねじナット91bが回転する。ねじナット91bが回転すると、第二の実施形態の発電機と同様に、ステータベース90が直線運動する。
【0057】
第三の実施形態の発電機100によれば、中空モータ96を使用することによって、発電機のさらなる小型化が図れる。また、ロータモータ96bの中心線とスプライン軸88の軸線が一致するので、ねじナット91bをさらに円滑に回転させることができる。
【0058】
図13は、本発明の第四の実施形態の流体発電装置の発電機101を示す。中空のロータ軸81、第一のベース84、第二のベース86、ステータベース90、ロータリーボールねじ91、中空モータ96の構造は、上記第三の実施形態の発電機と同一であるので、同一の符号を附してその説明を省略する。
【0059】
この実施形態では、スプラインナット97にステータベース90を回転可能に取り付け、ステータベース90の下側にステータ回転装置としての中空モータ98を取り付け、中空モータ98がステータベース90を回転させる点が第三の実施形態の発電機と異なる。
【0060】
ステータベース90の上側には、ねじナット91bを回転させる中空モータ96が配置され、ステータベース90の下側には、ステータベース90を回転させる中空モータ98が配置される。下側の中空モータ98は、スプライン軸88と同軸上に配置される内側のモータステータ98b及び外側のモータロータ98aを備える。モータステータ98bは、スプラインナット97の内側のナット本体97a(図14参照)に回転不能に連結される。モータステータ98bは中空に形成され、モータステータ98a内をスプライン軸88が貫通する。モータロータ98bには、ステー99を介してステータベース90が連結される。中空モータ98の外側のモータロータ98aによってステータベース90が回転する。
【0061】
図14に示すように、スプライン軸88の上側には、ロータリーボールねじ91が組み付けられる。スプライン軸88の下側には、スプラインナット97が組み付けられる。スプラインナット97は、ナット本体97aと、ナット本体97aの外側に回転可能に設けられる外輪97bと、を備える。ナット本体97aの外周面には、リング状の軌道溝97a1が形成される。軌道溝97a1は、ナット本体97aの軸線方向に離間して二つ形成される。外輪97bの内周面には、軌道溝97a1に対向する軌道溝97b1が形成される。これらの軌道溝97a1,97baの間には、複数の転動体としてのボール97cが配列される。外輪97bのフランジ97b2はステータベース90に結合される(図13参照)。外輪97bがナット本体97aに対して回転可能であるので、外輪97bが回転してもナット本体97aは回転することはない。
【0062】
図15に示すように、上側の中空モータ96のオンオフと下側の中空モータ98のオンオフを組み合わせることで、ステータベース90は以下の三種類の動きをする。
【0063】
まず、上側の中空モータ96をオンにし、下側の中空モータ98をオフにし、ねじナット91bを回転させると、上記第三の実施系形態の発電機100と同様に、ステータベース90が上下運動をする。これにより、発電機の噛合い率が変化する。
【0064】
次に、上側の中空モータ96をオフにし、下側の中空モータ98をオンにすると、ステータベース90が回転する。例えば、強風時にロータ軸81の回転方向と反対方向にステータベース90を回転させることで、発電機101の電圧を上げることができ、発電機101を電気的なブレーキとして機能させることができる。これにより、強風時に風車ロータ1の回転数を下げることができ、風車ロータ1が過回転するのを防止することができる。一方、風車始動時にロータ軸81の回転方向と同方向にステータベース90を回転させることで、回転が安定しない状態の風車ロータ1の回転をアシストすることができる。
【0065】
次に、上側の中空モータ96をオンにし、下側の中空モータ98をオンにすると、ステータベース90が回転しながら直線運動する。このため、上記の機能を同時に実施することができる。
【0066】
図16は、本発明の第五の実施形態における風車の発電機の概要図を示す。この実施形態では、発電機61は、主軸が水平面内にある水平軸風車に組み込まれる。図示しない主軸には、発電機61のロータ軸62が接続される。発電機61のロータ軸62は、その一端部が第一のベース63の軸受64に回転可能に支持され、その他端部が第二のベース65の軸受66に回転可能に支持される。第一のベース63と第二のベース65とは、直線運動案内装置の軌道部材67によって連結される。ロータ軸62には、発電機ロータ68が取り付けられる。発電機ロータ68の周囲には、すきまを空けて(この図にはすきまが大きく示されているが、実際のすきまは僅かである)、発電機ステータ69が対向する。発電機ステータ69は、ロータ軸62の軸線方向に直線運動可能である。発電機ステータ69の直線運動は、アクチュエータ一体型の直線運動案内装置によって案内される。
【0067】
図17は、アクチュエータ一体型の直線運動案内装置の斜視図を示す。この直線運動案内装置は、断面略U字形の軌道部材としてのアウタレール67と、アウタレール67内に設けられ、両側面にガイド部、中央にボールねじ部を一体構造にした移動部材としてのインナブロック71とを備える。インナブロック71には、発電機ステータ69が取り付けられる。インナブロック71に螺合させたねじ軸72を図示しないサーボモータで回転させると、インナブロック71がアウタレール67に沿って直線運動し、発電機ステータ69がロータ軸62の軸線方向に直線運動する。この実施形態において、サーボモータ、ねじ軸72、及びインナブロック71がステータ駆動装置を構成する。
【0068】
アウタレール67は断面略U字形状で、互いに対向する一対の内壁面67aを有する。各内壁面67aには、転動体転走部としての二条のボール転走溝が形成される。アウタレール67の長手方向の両端には、ねじ軸72を回転自在に支持するブラケット73,74が設けられる。ブラケット73,74とアウタレール67とはボルト等の結合手段によって結合される。ブラケット73には、図示しないサーボモータが取り付けられ、サーボモータとねじ軸72とは、継手によって連結される。
【0069】
インナブロック71の幅方向の両側面には、アウタレール67のボール転走溝に対向する上下二条の負荷転動体転走部としての負荷ボール転走溝71aが形成される。インナブロック71には、アウタレール67のボール転走溝とインナブロック71の負荷ボール転走溝71aとの間を転がり運動するボール75を循環させるボール循環路が形成される。アウタレール67に対してインナブロック71が直線運動するとき、アウタレール67のボール転走溝とインナブロック71の負荷ボール転走溝71aとの間に介在される多数のボール75がこれらの間を転がり運動し、またボール循環路を循環する。
【0070】
インナブロック71の中央部には、ねじ軸72が貫通する。ねじ軸72の外周面には、螺旋状のボール転走溝72aが形成される。インナブロック71の貫通孔には、ねじ軸72のボール転走溝72aに対応する負荷転動体転走部としての負荷ボール転走溝が形成される。インナブロック71には、ねじ軸72のボール転走溝72aと負荷ボール転走溝との間を転がるボールを循環させるための循環経路が形成される。ねじ軸72を回転させると、ねじ軸72のボール転走溝72aとインナブロック71の負荷ボール転走溝との間に介在される多数のボールがこれらの間を転がり運動し、またインナブロック71のボール循環路を循環する。
【0071】
なお、本発明は上記実施形態に限られることはなく、本発明の要旨を変更しない範囲でさまざまに変更可能である。
【0072】
本発明は、風車だけでなく、水力を利用して電力を発生する水力発電装置にも適用することができる。
【0073】
上記第一ないし第五の実施形態では、発電機ロータに永久磁石を設け、発電機ステータにコイルを設けたが、これとは逆に発電機ロータにコイルを設け、発電機ステータに永久磁石を設けてもよい。発電機には、上記に記載した同期発電機以外に誘導発電機を用いることもできる。ロータの主軸と発電機との間に増速機を設け、ロータの回転数を増速させて発電機のロータ軸に伝達してもよい。発電機ステータを発電機ロータの中心線の方向に直線運動させるステータ駆動装置としては、錘が遠心力により移動する半径方向の変位をカムを介して発電機ステータの変位に変換するものを用いてもよい。
【0074】
上記第二の実施形態では、中空のロータ軸の半径方向の内側に第一のベース、第二のベース、ステータベース、ステータ駆動装置及び直線運動案内装置が配置されればよく、これらの部材の少なくとも一部が中空のロータ軸から半径方向にはみ出してもよい。
【符号の説明】
【0075】
1…風車ロータ,4…主軸,9,62,81…ロータ軸,11,61,80,100,101…発電機,12,68…発電機ロータ,13,95a,95b,93…ステータ駆動装置,14,69…発電機ステータ,21,88…スプライン軸(軌道部材),22,92,97…スプラインナット(移動部材),23,63,84…第一のベース,24,65,86…第二のベース,25,90…ステータベース,27,29,64,66,85,87…軸受,28…下部ロータ軸(第二のロータ軸),30…上部ロータ軸(第一のロータ軸),67…アウタレール(軌道部材),88b…ボール転走溝(転動体転走溝),91b…ねじナット,96…中空モータ,96a…モータステータ,96b…モータロータ,98…中空モータ(ステータ回転装置)
【技術分野】
【0001】
本発明は、風力又は水力の流体エネルギを発電機によって電気エネルギに変換する流体発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題や化石燃料の枯渇に関する関心が世界的に高まっており、その対策の一つとして自然エネルギの利用に注目が集まっている。自然エネルギは、資源を枯渇させずに利用可能なエネルギであり、再生可能エネルギとも呼ばれている。自然エネルギの一種として風のエネルギ(風力)、水のエネルギ(水力)が注目されている。
【0003】
風力発電装置又は水力発電装置は、風力又は水力を電気エネルギに変換する装置である。風力発電装置において、風力を風車ロータ(翼車)が受け、風車ロータの回転力は主軸を介して発電機に伝達され、発電機が風車ロータの機械的な回転力を電力に変換する。水力発電装置は、風力の替わりに水力を利用するものであり、風力発電装置と同様に電力を発生させる。
【0004】
風力、水力を利用した発電は、資源が無尽蔵でクリーンな反面、出力が風、水などの自然現象に影響されて変動するという問題をもつ。この問題を解決するために、特許文献1には、発電機ステータを発電機ロータの軸線の方向に移動させる風車が開示されている。風車ロータの一端には、発電機ロータが取り付けられる。発電機ロータの回りには、僅かなすきまを介して発電機ステータが配置される。この発電機ステータは、可動ガイドによって発電機ロータの軸線方向に移動可能に支持される。
【0005】
この風車は、定格風速のときは、発電機ステータと発電機ロータとの対向面積を大きくとり、コイルに鎖交する磁束を大きくする。その一方、微風状態のときは、発電機ステータを移動させ、発電機ステータと発電機ロータとの対向面積を小さくしている。これにより、微風状態のときの発電効率、回転効率を向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−161052号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
風車には、発電機の出力を大きくするために、発電機ロータと発電機ステータとの間のすきまをできるだけ小さくすることが要請される。また、発電機ステータ移動時の摺動抵抗を低減するために、発電機ステータが移動してもすきまの大きさが変化しないことが要請される。しかし、特許文献1に記載の風車においては、発電機ロータが風車の主軸の端部に取り付けられているので、いくら主軸を軸受で支持しているといえども、発電機ロータが振れ、発電機ロータと発電機ステータのすきまが変動し易いという問題がある。
【0008】
そこで本発明は、発電機ステータを直線運動させる流体発電装置において、発電機ロータの中心線と発電機ステータの中心線とを一致させ、これらの間のすきまが変動するのを防止できる流体発電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様は、風力又は水力を受けて回転する風車ロータと、前記風車ロータの回転力を発電機に伝達する主軸と、前記風車ロータの回転力を受けて電力を発生する発電機と、を備える流体発電装置において、前記発電機は、前記主軸と共に回転する発電機ロータを有するロータ軸と、前記ロータ軸の一端部を回転可能に支持する軸受を有する第一のベースと、前記ロータ軸の他端部を回転可能に支持する軸受を有する第二のベースと、前記発電機ロータとすきまを介して対向する発電機ステータが設けられるステータベースと、前記第一のベースと前記第二のベースとを連結する軌道部材と、前記ステータベースに取り付けられ、前記軌道部材に沿って直線運動可能な移動部材と、前記ステータベースを前記ロータ軸の軸線方向に移動させるステータ駆動装置と、を備え、前記ステータベースの前記ロータ軸の軸線方向の直線運動は、前記軌道部材及び前記移動部材を備える直線運動案内装置によって案内される流体発電装置である。
【0010】
本発明の他の態様は、風力又は水力を受けて回転する風車ロータの回転力を受けて電力を発生する流体発電装置用の発電機であって、発電機ロータを有するロータ軸と、前記ロータ軸の一端部を回転可能に支持する軸受を有する第一のベースと、前記ロータ軸の他端部を回転可能に支持する軸受を有する第二のベースと、前記発電機ロータとすきまを介して対向する発電機ステータが設けられるステータベースと、前記第一のベースと前記第二のベースとを連結する軌道部材と、前記ステータベースに取り付けられ、前記軌道部材に沿って直線運動可能な移動部材と、前記ステータベースを前記ロータ軸の軸線方向に移動させるステータ駆動装置と、を備え、前記ステータベースの前記ロータ軸の軸線方向の直線運動は、前記軌道部材及び前記移動部材を備える直線運動案内装置によって案内される流体発電装置用の発電機である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、直線運動案内装置の軌道部材に、第一のベースと第二のベースとを連結する構造体としての機能と、発電機ステータが直線運動するのを案内する直線運動案内装置としての機能を併せて持たせるので、発電機ロータの中心線と直線運動案内装置の軌道部材との平行度が管理し易くなり、発電機ロータの中心線と発電機ステータの中心線とを一致させることが容易になる。また、ロータ軸の両端部を軸受で支持しているので、ロータ軸が振れるのを防止できる。これに対し、第一のベース及び第二のベースを連結する構造体と直線運動案内装置が別物になった場合、それぞれの部品の加工精度と組立精度を厳しく管理しなければ、発電機ロータの中心線と発電機ステータの中心線とを一致させることができないので、発電機の製作が困難になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第一の実施形態の流体発電装置の全体図
【図2】発電機の平面図
【図3】図2のIII-III線断面図
【図4】図2のIV-IV線断面図
【図5】発電機の斜視図
【図6】発電機ロータ及び発電機ステータの概略図(図中(a)は平面図を示し、図中(b)は垂直断面図を示す)
【図7】ステータ駆動装置に組み込まれるボールねじの斜視図
【図8】発電機ステータの直線運動を案内する直線運動案内装置の斜視図
【図9】本発明の第一の実施形態の流体発電装置の発電機の垂直断面図
【図10】スプライン軸に組み付けられるロータリーボールねじ及びスプラインナットを示す斜視図
【図11】ロータリーボールねじの詳細図
【図12】本発明の第三の実施形態の流体発電装置の発電機の垂直断面図
【図13】本発明の第四の実施形態の流体発電装置の発電機の垂直断面図
【図14】スプライン軸に組み付けられるロータリーボールねじ及びスプラインナットを示す斜視図
【図15】本発明の第四の実施形態の流体発電装置の発電機の動作を説明する図
【図16】水平軸風車に組み込まれる発電機の概略図
【図17】アクチュエータ一体型の直線運動案内装置の斜視図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面に基づいて本発明の第一の実施形態の流体発電装置としての風力発電装置(以下、単に風車という)を説明する。図1は、風車の全体の構成図を示す。図1には、風車として、風車ロータ1の主軸4が風向きに垂直である垂直軸風車が示されている。この垂直軸風車は、風車ロータ1に働く揚力を利用して回転力を得ている。風車ロータ1は、垂直方向に直線状に伸びる複数毎のブレード2を有する。風が吹いたとき、ブレード2は発生する揚力を利用して風車ロータ1に流入する風速の数倍のスピードで回転する。ブレード2は、上下一対の支持腕3を介して主軸4に取り付けられる。
【0014】
主軸4は中空に形成される。主軸4の内側には、主軸4を回転可能に支持する支持軸5が設けられる。支持軸5は風車ベース6から垂直方向に立設する。主軸4と支持軸5との間には、上下方向に間隔を空けて軸受7が配置される。主軸4は軸受7に支持された状態で、支持軸5の外側を回転する。この例の主軸4は支持軸5の外側を回転するので、アウターロータと呼ばれる。
【0015】
風車の下部には、発電機11が設けられる。発電機11の構造の概要は、以下のとおりである。発電機11は、主軸4と共に回転する発電機ロータ12と、発電機ロータ12にすきまg(図3)を介して対向する発電機ステータ14と、を備える。発電機ステータ14に対して発電機ロータ12がその軸線の回りを回転することによって、電力が発生する。
【0016】
主軸4の下端には、ロータ軸9が接続される。ロータ軸9は、主軸に接続される第一のロータ軸としての上部ロータ軸30と、第二のロータ軸としての下部ロータ軸28と、上部ロータ軸30と下部ロータ軸28との間に配置される発電機ロータ12と、を有する。上部ロータ軸30は、第一のベース23に回転可能に支持される。下部ロータ軸28は、第二のベース24に回転可能に支持される。発電機ロータ12は上部ロータ軸30と下部ロータ軸28との間に挟まれる。第一及び第二のベース23,24は、ロータ軸9の外側に配置されるので、ハウジングとして機能する。
【0017】
第二のベース24は、風車ベース6に架台16を介して支持される。第一のベース23と第二のベース24とは軌道部材としての複数本のスプライン軸21で連結される。第二のベース24と第一のベース23との間には、ステータベース25がロータ軸9の軸線方向に直線運動可能に配置される。発電機ステータ14は円環状のステータベース25の内周側に取り付けられる。ステータベース25には、移動部材としての複数のスプラインナット22が取り付けられる。スプラインナット22は、スプライン軸21にスライド可能に組み付けられる。ステータベース25の直線運動は、スプライン軸21及びスプラインナット22を備える直線運動案内装置によって案内される。
【0018】
ステータ駆動装置13は、ステータベース25をロータ軸9の軸線方向に直線運動させる。ステータ駆動装置13は、サーボモータ40と、サーボモータ40によって駆動されるボールねじ52と、を備える。ボールねじ52のねじ軸38は垂直方向に伸びる。ねじ軸38には、ナット37が組み付けられる。ナット37はステータベース25に取り付けられる。サーボモータ40によってねじ軸38を回転させると、ナット37がねじ軸38の軸線方向に直線運動し、ステータベース25がロータ軸9の軸線方向に直線する。発電機11は円筒状のケース15によって覆われる。
【0019】
図2ないし図5は、発電機11の詳細図を示す。図2は発電機11の平面図を示し、図3は図2のIII-III線断面図を示し、図4は図2のIV-IV線断面図を示し、図5は発電機の要部の斜視図を示す。
【0020】
図3及び図5に示すように、発電機11は、円盤状の第二のベース24と、第二のベース24に立設される複数本のスプライン軸21と、複数のスプライン軸21の上端に固定される多角形平板状の第一のベース23と、第二のベース24と第一のベース23との間に垂直方向に直線運動可能に配置される円環状のステータベース25と、を備える。
【0021】
第二のベース24には、軸受27を介して中空の下部ロータ軸28が回転可能に支持される。第一のベース23には、軸受29を介して中空の上部ロータ軸30が回転可能に支持される。上部ロータ軸30の上端には、フランジ33が取り付けられ、上部ロータ軸30は、フランジ33を介してボルト等の結合手段34によって主軸4に結合される。上部ロータ軸30と下部ロータ軸28との間には、発電機ロータ12が挟まれる。発電機ロータ12は、円筒状の本体部39と、本体部39の外周面に周方向に配列された複数の永久磁石31と、を備える。上部ロータ軸30、本体部39、及び下部ロータ軸28は、通しボルト39aによって一体的に結合される。
【0022】
ロータ軸9は主軸4にフランジ33を介して接続され、主軸4に接続したり、切り離したりできる構造となっている。主軸4の下端に発電機ロータ12を直接取り付けるのが最もシンプルな構造となるが、重量の重い主軸4と発電機ステータ14との芯を出す(中心線を一致させる)のが困難になる。ロータ軸9を主軸4から切り離せる構造とすることで、あらかじめ発電機ロータ12と発電機ステータ14との芯を出した後、ロータ軸9を主軸4に結合することが可能になり、発電機ロータ12と発電機ステータ14との芯出し作業が容易になる。
【0023】
第一のベース23と第二のベース24とは、垂直方向に伸びる複数本のスプライン軸21によって連結される。スプライン軸21は、発電機ロータ12の中心線の回りに周方向に例えば120度の間隔を空けて三本設けられる。スプライン軸21は第一のベース23と第二のベース24とを連結する構造体としての機能も持つので、直線運動案内装置として必要な強度よりも頑丈なものが使用される。スプライン軸21の上下方向の両端部は、径が狭められていて、両端部21aの外周には雄ねじが形成される。第一のベース23及び第二のベース24には、スプライン軸21の両端部21aが通される通し孔23a,24aが空けられる。スプライン軸21の両端部21aをこれらの通し孔23a,24aに通し、ロックナット等の結合手段36を両端部21aにねじ込むことにより、スプライン軸21の両端部21aが第一のベース23及び第二のベース24に固定される。第一のベース23及び第二のベース24の通し孔23a,24aの径は、スプライン軸21の両端部21aの径よりも大きく、スプライン軸21の水平方向(すなわち、ロータ軸9の軸線と直交する方向)の位置が調整可能となっている。
【0024】
ステータベース25には、周方向に例えば120度の間隔を空けてスプラインナット22が取り付けられる。スプラインナット22は、スプライン軸21に垂直方向にスライド可能に組み付けられる。
【0025】
ステータベース25には、ボールねじのナット37が取り付けられる。ボールねじのナット37には、ロータ軸9と平行に垂直方向に伸びるねじ軸38が螺合する。ねじ軸38は第一のベース23にねじ軸38の中心線の回りを回転可能に支持される。ねじ軸38の上端は、カップリングを介してサーボモータ40の出力軸に連結される。サーボモータ40はステー41を介して第一のベース23に取り付けられる。サーボモータ40がねじ軸38を回転させると、ねじ軸38に螺合するボールねじのナット37が垂直方向に直線運動し、ナット37に取り付けられる発電機ステータ14が垂直方向に直線運動する。ステータベース25の外周には、表面積を大きくするための多数の冷却用のフィン25bが設けられる(図2参照)。発電機ステータ14のコイル18に発生するジュール熱は冷却用のフィン25bから放熱される。
【0026】
図4に示すように、第一のベース23及び第二のベース24の外周側は補強のためのビーム45で連結される。第一のベース23及び第二のベース24の外周側にはアングル46,47が結合される。ビーム45は上下のアングル46,47間に架け渡される。ビーム45は第一のベース23及び第二のベース24の剛性を上げ、これらの変形を押さえるために設置される。なお、スプライン軸21の強度のみで十分に剛性が高い場合には、ビーム45を省略することも可能である。
【0027】
この実施形態において、発電機ステータ14を垂直方向に移動させる目的は、風車ロータ1が受ける風のエネルギを発電機11が出力する電気エネルギに一致させることにある。風車ロータ1が受ける風のエネルギは風速の三乗に比例する。一方、発電機11が出力する電気エネルギは風速の二乗に比例する。風速の三乗に比例する風車ロータ1が受ける風のエネルギと、風速の二乗に比例する発電機11が出力する電気エネルギとを一致させるために、発電機ステータ14を垂直方向に移動させる(言い換えれば、発電機ロータ12と発電機ステータ14との噛合い率を制御する)。
【0028】
例えば、風速が12m/s→6m/sに変化すると、風車ロータ1が受ける風のエネルギが1/8に低減する。その一方、発電機11が出力する電力は1/4に低減する。もともと風のエネルギが1/8に低減しているから、1/8までしか発電できないにもかかわらず、発電機11の出力が1/4になっている。風のエネルギと発電機11の出力との間にずれが生ずることが原因で、風車ロータ1の回転数が次々と落ちる。これを防止するために、発電機11の噛合い率を制御し、発電機11の出力を1/8にする。
【0029】
一般化して説明すると、風速がN−1(N:1以上の有理数)倍になると、風車ロータ1の回転数はN−1倍になり、風車ロータ1が受ける風のエネルギは、N−3倍になる。一方、風速がN−1倍になると、発電機ロータ12の回転数はN−1倍になり、発電機11の出力はN−2倍になる。風車ロータ1が受ける風のエネルギと発電機11の出力を整合させるために、噛合い率を制御して発電機11の逆起電圧定数をN−1/2倍にする。発電機11の逆起電圧定数をN−1/2倍にすれば、発電機11の電圧がN−3/2倍、電流がN−3/2倍、発電機11の出力がN−3倍になり、風車ロータ1が受ける風のエネルギに整合するようになる。
【0030】
逆に、風速がN(N:1以上の有理数)倍になると、風車ロータ1が受ける風のエネルギはN3倍になるのに対し、発電機11の出力はN2倍になる。風車ロータ1が受ける風のエネルギと発電機11の出力を整合させるために、噛合い率を制御して発電機11の逆起電圧定数をN1/2倍にする。発電機11の逆起電圧定数をN1/2倍にすれば、発電機11の電圧がN3/2倍、電流がN3/2倍、発電機11の出力がN3倍になり、風車ロータ1が受ける風のエネルギに整合するようになる。
【0031】
図6に示すように、発電機ロータ12は、周方向に交互にN極及びS極が形成されるように本体部の外周面に配列された複数の永久磁石31a,31bを有する。各永久磁石31a,31bは垂直方向に細長く伸びている。発電機ステータ14は、ヨーク17と、ヨーク17の複数のコア17aに巻かれる複数のコイル18と、を有する。ヨーク17は、筒状のヨーク本体17bと、筒状のヨーク本体17bから半径方向の内側に突出する複数のコア17aと、を有する。コア17aは永久磁石31a,31bと同様に垂直方向に伸びる。コア17aの垂直方向の長さは永久磁石31a,31bの垂直方向の長さにほぼ等しい。複数のコア17aには、U相,V相,及びW相のコイル18が巻かれる。ヨーク17には、珪素鋼等の電気エネルギと磁気エネルギの変換効率が高い電磁鋼が用いられる。発電機ロータ12が回転すると、U相,V相及びW相からなるコイル18に三相交流が発生する。この三相交流は、直流リンク方式又は交流リンク方式を介して商用電源に系統連係される。コイル18は、ステータベース25に取り付けられたコイルケース44(図3参照)によって覆われる。
【0032】
図7は、ステータ駆動装置13に組み込まれるボールねじ52の斜視図を示す。ボールねじ52は、外周面に螺旋状の転動体転走部としてのボール転走溝38aが形成されるねじ軸38と、内周面にボール転走溝38aに対向する負荷転動体転走部としての負荷ボール転走溝37aが形成されるナット37と、ねじ軸38のボール転走溝38aとナット37の負荷ボール転走溝37aとの間に転がり運動可能に介在される転動体としての多数のボール50とを備える。ナット37には、負荷ボール転走溝37aを転がるボールを循環させるための循環部材としてのリターンパイプ51が取り付けられる。転動体にはボール50の替わりにローラを用いることも可能である。
【0033】
図8は、発電機ステータ14の直線運動を案内する直線運動案内装置の斜視図を示す。直線運動案内装置は、長手方向に沿って転動体転走部としての複数のボール転走溝21bが形成される軌道部材としてのスプライン軸21と、スプライン軸21のボール転走溝21bに対向する負荷転動体転走部としての負荷ボール転走溝22aが形成される移動部材としてのスプラインナット22と、を備える。スプラインナット22には、保持器53が組み込まれる。保持器53には、転動体循環路としてサーキット状のボール循環路54が形成される。ボール循環路54には、転動体として多数のボール55が配列される。ボール55はスプライン軸21のボール転走溝21bとスプラインナット22の負荷ボール転走溝22aとの間にも介在される。スプライン軸21に対してスプラインナット22を直線運動させると、多数のボール55がスプライン軸21のボール転走溝21aとスプラインナット22の負荷ボール転走溝22aとの間を転がり運動し、ボール循環路54を循環する。なお、スプラインナット22の替わりにボールブッシュを用いることもできる。
【0034】
本実施形態によれば、発電機ロータ12を有するロータ軸9の両端部が、第一のベース23及び第二のベース24に設けられる軸受27,29で回転可能に支持され、発電機ステータ14が設けられるステータベース25が第一のベース23及び第二のベース24に連結されるスプライン軸21に沿って直線運動するので、発電機ロータ12と直線運動する発電機ステータ14との芯を出す(発電機ロータ12の中心線と発電機ステータ14の中心線を一致させる)のが容易になる。スプライン軸21に、第一のベース23及び第二のベース24を連結する構造体としての機能と、発電機ステータ14が直線運動するのを案内する直線案内装置としての機能を併せて持たせるので、発電機の製作も容易になり、コストの低減も図れる。これに対して、構造体と直線案内装置が別々であると仮定すると、それぞれの部品の加工精度、組立て精度を厳しく管理しなくては、発電機ステータ14の直線運動時に過大な摺動抵抗が発生する。
【0035】
第一のベース23及び第二のベース24に対して、スプライン軸21の水平方向の位置を調節可能とすることで、発電機ロータ12と直線運動する発電機ステータ14との芯を出すのがより容易になる。スプライン軸21の両端部を第一のベース23及び第二のベース24の通し孔23a,24aに嵌め、通し孔23a,24a内でスプライン軸21の位置を調節することで、スプライン軸21の水平方向の位置を調節すること自体も容易になる。
【0036】
ロータ軸9を、上部ロータ軸30、下部ロータ軸28、及びこれらの間に配置される発電機ロータ12から構成することにより、発電機ロータ12を有するロータ軸9の両端部を軸受27,29で支持するのが容易になる。
【0037】
図9は、本発明の第二の実施形態の流体発電装置の発電機80を示す。上記第一の実施形態の流体発電装置の発電機においては、ロータ軸9の外側に発電機ステータ14が配置されている。これに対し、この第二の実施形態の流体発電装置の発電機においては、中空のロータ軸81の内側に発電機ステータ82が配置される。ロータ軸81には、風車ロータ1の主軸4が接続され、ロータ軸81は風車ロータ1と共に回転する。発電機ステータ82は、ロータ軸9の軸線に沿って直線運動する。
【0038】
ロータ軸9の軸線は鉛直方向を向く。ロータ軸9の内側には、発電機ロータ83が取り付けられる。発電機ロータ83は、周方向に交互にN極及びS極が着磁されるように配列された複数の永久磁石を有する。
【0039】
ロータ軸81の上端部の内側には、第一のベース84が配置される。第一のベース84は円盤状に形成される。第一のベース84の外周には、ロータ軸81を回転可能に支持するリング状の軸受85が設けられる。この軸受85によって、中空のロータ軸81の上端部が回転可能に支持される。
【0040】
中空のロータ軸81の下端部の内側には、第二のベース86が配置される。第二のベース86は円盤状に形成される。第二のベース86の外周には、ロータ軸81を回転可能に支持するリング状の軸受87が設けられる。この軸受87によって、中空のロータ軸81の下端部が回転可能に支持される。
【0041】
第一のベース84及び第二のベース86は、軌道部材としてのスプライン軸88によって連結される。スプライン軸88はロータ軸81の軸線上に配置されている。スプライン軸88の軸線とロータ軸81の軸線とが一致する。スプライン軸88の両端部88aは、径が狭められていて、両端部88aの外周には雄ねじが形成される。第一のベース84及び第二のベース86の中心部には、スプライン軸88の両端部88aが通される通し孔84a,86aが空けられる。スプライン軸88の両端部88aをこれらの通し孔64a,86aに通し、ロックナット等の結合手段89を両端部88aにねじ込むことにより、スプライン軸88が第一及び第二のベース84,86に固定される。
【0042】
なお、この実施形態では、スプライン軸88の両端部88aの外径と第一及び第二のベース84,86の通し孔84a,86aの内径とが一致しており、第一及び第二のベース84,86に対するスプライン軸88の水平方向の位置が調整できないようになっている。第一及び第二のベース84,86の外周と通し孔84a,86aの中心線の同心度が保たれるように第一及び第二のベース84,86を加工すれば、ロータ軸81の軸線とスプライン軸88の軸線とが自動的に一致するからである。
【0043】
ロータ軸81の内側には、発電機ロータ83とすきまを空けて対向する発電機ステータ82が設けられる。発電機ステータ82は、周方向に配列される複数のコイルを有する。発電機ステータ82はステータベース90に取り付けられる。
【0044】
ステータベース90は、軸線方向の一端部にフランジ90aを有する筒状に形成される。ステータベース90の外側に筒状の発電機ステータ82が嵌め込まれる。ステータベース90の内側にロータリーボールねじ91及びスプラインナット92が取り付けられる。ロータリーボールねじ91及びスプラインナット92はスプライン軸88に組み付けられている。
【0045】
ロータリーボールねじ91は、外輪91aと、外輪91aの内側のねじナット91bと、を有する(図10参照)。ねじナット91bは外輪91aに対して回転可能である。ロータリーボールねじ91の外輪91aのフランジ91a1には、ステータベース90のフランジ90aが結合される。ロータリーボールねじ91のねじナット91bには、プーリ95aが取り付けられる。駆動源としてのモータ93はステータベース90にステー94を介して取り付けられる。モータ93の出力軸にはプーリ95bが取り付けられる。モータ93の出力軸はスプライン軸88の軸線から離れている。プーリ95a,95b間にはベルト94が架け渡される。モータ93の出力軸のトルクはプーリ95a,95b及びベルト94を介してねじナット91bに伝動される。駆動源としてのモータ93の回転力をベルト94、プーリ95a,95bからなる巻掛け伝動装置を介してねじナット91bに伝動するので、減速比を任意に設定することができる。
【0046】
図10に示すように、スプライン軸88の外周には、軸線方向に伸びる複数本のスプライン溝88aが形成されると共に、螺旋状の転動体転走溝としてのボール転走溝88bが形成される。スプライン軸88の上部には、ロータリーボールねじ91が組み付けられる。ロータリーボールねじ91のねじナット91bは、ボール転走溝88bに螺合する。スプライン軸88の下部には、スプラインナット92が組み付けられる。スプラインナット92はスプライン溝88に回転不能に係合し、スプライン軸88に沿って直線運動する。
【0047】
なお、この例では、スプライン軸88の全長に渡ってスプライン溝88a及び螺旋状のボール転走溝88bが形成されているが、スプライン溝88aをスプラインナット92が移動する区間にのみ形成し、螺旋状のボール転走溝をロータリーボールねじ91が移動する区間にのみ形成してもよい。また、スプライン軸88の上側にスプラインナット92を配置し、下側にロータリーボールねじ91を配置してもよい。
【0048】
ロータリーボールねじ91の詳細な構造は以下のとおりである。図11に示すように、ロータリーボールねじ91は、外輪91aと、外輪91aの内側に組み込まれるねじナット91bと、を備える。ねじナット91bの内周面には、スプライン軸88の外周のボール転走溝88aに対向する螺旋状のボール転走溝91b1が形成される。ねじナット91bのボール転走溝91b1とスプライン軸88のボール転走溝88bとの間には、複数のボール91cが配列される。ねじナット91bには、複数のボール91cが循環するように循環通路91b2が形成される。スプライン軸88に対してねじナット91bが回転すると、ねじナット91bが回転しながらスプライン軸88の軸線方向に直線運動する。
【0049】
外輪91aはねじナット91bに対して回転可能である。ねじナット91bの外周面には、リング状の軌道溝91b3が形成される。軌道溝91b3は、ねじナット91bの軸線方向に離間して二つ形成される。外輪91aの内周面には、軌道溝91b3に対向する軌道溝91a3が形成される。これらの軌道溝91a3,91b3の間には、複数の転動体としてのボール91dが配列される。転動体91d間には、転動体同士の接触を防止するスペーサが介在される。外輪91aのフランジ91a1はステータベース90に結合される(図9参照)。外輪91aがねじナット91bに対して回転可能であるので、ねじナット91bが回転しても外輪91aは回転することはない。
【0050】
図10に示すように、スプラインナット92は、スプライン軸88に対して直線運動可能であり、スプライン軸88に対して回転不能である。スプラインナット92の構造は図8に示すスプラインナットとほぼ同一である。スプラインナット92のフランジ92aはステータベース90に取り付けられる(図9参照)。スプラインナット92がスプライン軸88に対して回転不能であるから、ステータベース90もスプライン軸88に対して回転不能である。
【0051】
図9に示すように、モータ93がロータリーボールねじ91のねじナット91bを回転させると、ロータリーボールねじ91がスプライン軸88に対して軸線方向に直線運動する。ロータリーボールねじ91にはステータベース90が取り付けられるので、ステータベース90もスプライン軸88に対して軸線方向に直線運動する。ステータベース90はロータリーボールねじ91の外輪91aに取り付けられているので、ねじナット91bと共に回転することはない。ステータベース90にはステー94を介してモータ93が取り付けられるので、モータ93もステータベース90と共に直線運動する。ステータベース90を直線運動させると、発電機ロータ83と発電機ステータ82の噛合い率が変化するので、発電機80の出力を調整することができる。
【0052】
この第二の実施形態の発電機80によれば、ロータ軸81の両端部が第一のベース84及び第二のベース86に設けられる軸受85,87で回転可能に支持され、ステータベース90が第一のベース84及び第二のベース86に連結されるスプライン軸88に沿って直線運動するので、発電機ロータ83の中心線と発電機ステータ82の中心線を一致させるのが容易になる。また、ロータ軸81の軸線上に直線運動案内装置のスプライン軸88が配置されるので、発電機ロータ83の中心線と発電機ステータ82の中心線を一致させるのがより容易になるし、部品点数も減らすことができる。
【0053】
また、中空のロータ軸81の半径方向の内側に第一のベース84、第二のベース86、ステータベース90、ステータ駆動装置93,94,95a,95b及び直線運動案内装置88,92が配置されるので、発電機80の小型化が図れる。
【0054】
さらに、中空のロータ軸81の軸線上にスプライン軸88を配置し、スプライン軸88のボール転走溝88bに螺合するねじナット91bを回転させることによって、ステータベース90を直線運動させるので、ステータベース90を直線運動させる推力がステータベース90の中央に作用する。推力の作用位置とステータベース90の重心とが一致するので、ステータベース90にモーメント荷重が作用することがなく、ステータベース90に傾き又は変形が生じることがない。このため、発電機ロータ83と発電機ステータ82との間のすきまを一定に保つことができる。直線運動案内装置88,92にもモーメント荷重が作用することがないので、ステータベース90を円滑に直線運動させることができる。
【0055】
図12は、本発明の第三の実施形態の流体発電装置の発電機100を示す。中空のロータ軸81、第一のベース84、第二のベース86、ステータベース90、直線運動案内装置88,92、ロータリーボールねじ91の構造は、上記第二の実施形態の発電機と同一であるので、同一の符号を附してその説明を省略する。
【0056】
この実施形態では、ステータ駆動装置の駆動源として、中空モータ96を用いている点が第二の実施形態の発電機80と異なる。中空モータ96は、スプライン軸88と同軸上に配置され、ねじナット91bを回転させる内側のモータロータ96bと、ステータベース90にステー94を介して回転不能に連結される外側のモータステータ96aと、を備える。モータロータ96bは中空に形成され、モータロータ96b内をスプライン軸88が貫通する。中空モータ96のモータロータ96bが回転すると、ねじナット91bが回転する。ねじナット91bが回転すると、第二の実施形態の発電機と同様に、ステータベース90が直線運動する。
【0057】
第三の実施形態の発電機100によれば、中空モータ96を使用することによって、発電機のさらなる小型化が図れる。また、ロータモータ96bの中心線とスプライン軸88の軸線が一致するので、ねじナット91bをさらに円滑に回転させることができる。
【0058】
図13は、本発明の第四の実施形態の流体発電装置の発電機101を示す。中空のロータ軸81、第一のベース84、第二のベース86、ステータベース90、ロータリーボールねじ91、中空モータ96の構造は、上記第三の実施形態の発電機と同一であるので、同一の符号を附してその説明を省略する。
【0059】
この実施形態では、スプラインナット97にステータベース90を回転可能に取り付け、ステータベース90の下側にステータ回転装置としての中空モータ98を取り付け、中空モータ98がステータベース90を回転させる点が第三の実施形態の発電機と異なる。
【0060】
ステータベース90の上側には、ねじナット91bを回転させる中空モータ96が配置され、ステータベース90の下側には、ステータベース90を回転させる中空モータ98が配置される。下側の中空モータ98は、スプライン軸88と同軸上に配置される内側のモータステータ98b及び外側のモータロータ98aを備える。モータステータ98bは、スプラインナット97の内側のナット本体97a(図14参照)に回転不能に連結される。モータステータ98bは中空に形成され、モータステータ98a内をスプライン軸88が貫通する。モータロータ98bには、ステー99を介してステータベース90が連結される。中空モータ98の外側のモータロータ98aによってステータベース90が回転する。
【0061】
図14に示すように、スプライン軸88の上側には、ロータリーボールねじ91が組み付けられる。スプライン軸88の下側には、スプラインナット97が組み付けられる。スプラインナット97は、ナット本体97aと、ナット本体97aの外側に回転可能に設けられる外輪97bと、を備える。ナット本体97aの外周面には、リング状の軌道溝97a1が形成される。軌道溝97a1は、ナット本体97aの軸線方向に離間して二つ形成される。外輪97bの内周面には、軌道溝97a1に対向する軌道溝97b1が形成される。これらの軌道溝97a1,97baの間には、複数の転動体としてのボール97cが配列される。外輪97bのフランジ97b2はステータベース90に結合される(図13参照)。外輪97bがナット本体97aに対して回転可能であるので、外輪97bが回転してもナット本体97aは回転することはない。
【0062】
図15に示すように、上側の中空モータ96のオンオフと下側の中空モータ98のオンオフを組み合わせることで、ステータベース90は以下の三種類の動きをする。
【0063】
まず、上側の中空モータ96をオンにし、下側の中空モータ98をオフにし、ねじナット91bを回転させると、上記第三の実施系形態の発電機100と同様に、ステータベース90が上下運動をする。これにより、発電機の噛合い率が変化する。
【0064】
次に、上側の中空モータ96をオフにし、下側の中空モータ98をオンにすると、ステータベース90が回転する。例えば、強風時にロータ軸81の回転方向と反対方向にステータベース90を回転させることで、発電機101の電圧を上げることができ、発電機101を電気的なブレーキとして機能させることができる。これにより、強風時に風車ロータ1の回転数を下げることができ、風車ロータ1が過回転するのを防止することができる。一方、風車始動時にロータ軸81の回転方向と同方向にステータベース90を回転させることで、回転が安定しない状態の風車ロータ1の回転をアシストすることができる。
【0065】
次に、上側の中空モータ96をオンにし、下側の中空モータ98をオンにすると、ステータベース90が回転しながら直線運動する。このため、上記の機能を同時に実施することができる。
【0066】
図16は、本発明の第五の実施形態における風車の発電機の概要図を示す。この実施形態では、発電機61は、主軸が水平面内にある水平軸風車に組み込まれる。図示しない主軸には、発電機61のロータ軸62が接続される。発電機61のロータ軸62は、その一端部が第一のベース63の軸受64に回転可能に支持され、その他端部が第二のベース65の軸受66に回転可能に支持される。第一のベース63と第二のベース65とは、直線運動案内装置の軌道部材67によって連結される。ロータ軸62には、発電機ロータ68が取り付けられる。発電機ロータ68の周囲には、すきまを空けて(この図にはすきまが大きく示されているが、実際のすきまは僅かである)、発電機ステータ69が対向する。発電機ステータ69は、ロータ軸62の軸線方向に直線運動可能である。発電機ステータ69の直線運動は、アクチュエータ一体型の直線運動案内装置によって案内される。
【0067】
図17は、アクチュエータ一体型の直線運動案内装置の斜視図を示す。この直線運動案内装置は、断面略U字形の軌道部材としてのアウタレール67と、アウタレール67内に設けられ、両側面にガイド部、中央にボールねじ部を一体構造にした移動部材としてのインナブロック71とを備える。インナブロック71には、発電機ステータ69が取り付けられる。インナブロック71に螺合させたねじ軸72を図示しないサーボモータで回転させると、インナブロック71がアウタレール67に沿って直線運動し、発電機ステータ69がロータ軸62の軸線方向に直線運動する。この実施形態において、サーボモータ、ねじ軸72、及びインナブロック71がステータ駆動装置を構成する。
【0068】
アウタレール67は断面略U字形状で、互いに対向する一対の内壁面67aを有する。各内壁面67aには、転動体転走部としての二条のボール転走溝が形成される。アウタレール67の長手方向の両端には、ねじ軸72を回転自在に支持するブラケット73,74が設けられる。ブラケット73,74とアウタレール67とはボルト等の結合手段によって結合される。ブラケット73には、図示しないサーボモータが取り付けられ、サーボモータとねじ軸72とは、継手によって連結される。
【0069】
インナブロック71の幅方向の両側面には、アウタレール67のボール転走溝に対向する上下二条の負荷転動体転走部としての負荷ボール転走溝71aが形成される。インナブロック71には、アウタレール67のボール転走溝とインナブロック71の負荷ボール転走溝71aとの間を転がり運動するボール75を循環させるボール循環路が形成される。アウタレール67に対してインナブロック71が直線運動するとき、アウタレール67のボール転走溝とインナブロック71の負荷ボール転走溝71aとの間に介在される多数のボール75がこれらの間を転がり運動し、またボール循環路を循環する。
【0070】
インナブロック71の中央部には、ねじ軸72が貫通する。ねじ軸72の外周面には、螺旋状のボール転走溝72aが形成される。インナブロック71の貫通孔には、ねじ軸72のボール転走溝72aに対応する負荷転動体転走部としての負荷ボール転走溝が形成される。インナブロック71には、ねじ軸72のボール転走溝72aと負荷ボール転走溝との間を転がるボールを循環させるための循環経路が形成される。ねじ軸72を回転させると、ねじ軸72のボール転走溝72aとインナブロック71の負荷ボール転走溝との間に介在される多数のボールがこれらの間を転がり運動し、またインナブロック71のボール循環路を循環する。
【0071】
なお、本発明は上記実施形態に限られることはなく、本発明の要旨を変更しない範囲でさまざまに変更可能である。
【0072】
本発明は、風車だけでなく、水力を利用して電力を発生する水力発電装置にも適用することができる。
【0073】
上記第一ないし第五の実施形態では、発電機ロータに永久磁石を設け、発電機ステータにコイルを設けたが、これとは逆に発電機ロータにコイルを設け、発電機ステータに永久磁石を設けてもよい。発電機には、上記に記載した同期発電機以外に誘導発電機を用いることもできる。ロータの主軸と発電機との間に増速機を設け、ロータの回転数を増速させて発電機のロータ軸に伝達してもよい。発電機ステータを発電機ロータの中心線の方向に直線運動させるステータ駆動装置としては、錘が遠心力により移動する半径方向の変位をカムを介して発電機ステータの変位に変換するものを用いてもよい。
【0074】
上記第二の実施形態では、中空のロータ軸の半径方向の内側に第一のベース、第二のベース、ステータベース、ステータ駆動装置及び直線運動案内装置が配置されればよく、これらの部材の少なくとも一部が中空のロータ軸から半径方向にはみ出してもよい。
【符号の説明】
【0075】
1…風車ロータ,4…主軸,9,62,81…ロータ軸,11,61,80,100,101…発電機,12,68…発電機ロータ,13,95a,95b,93…ステータ駆動装置,14,69…発電機ステータ,21,88…スプライン軸(軌道部材),22,92,97…スプラインナット(移動部材),23,63,84…第一のベース,24,65,86…第二のベース,25,90…ステータベース,27,29,64,66,85,87…軸受,28…下部ロータ軸(第二のロータ軸),30…上部ロータ軸(第一のロータ軸),67…アウタレール(軌道部材),88b…ボール転走溝(転動体転走溝),91b…ねじナット,96…中空モータ,96a…モータステータ,96b…モータロータ,98…中空モータ(ステータ回転装置)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
風力又は水力を受けて回転する風車ロータと、前記風車ロータの回転力を発電機に伝達する主軸と、前記風車ロータの回転力を受けて電力を発生する発電機と、を備える流体発電装置において、
前記発電機は、
前記主軸と共に回転する発電機ロータを有するロータ軸と、
前記ロータ軸の一端部を回転可能に支持する軸受を有する第一のベースと、
前記ロータ軸の他端部を回転可能に支持する軸受を有する第二のベースと、
前記発電機ロータとすきまを介して対向する発電機ステータが設けられるステータベースと、
前記第一のベースと前記第二のベースとを連結する軌道部材と、
前記ステータベースに取り付けられ、前記軌道部材に沿って直線運動可能な移動部材と、
前記ステータベースを前記ロータ軸の軸線方向に移動させるステータ駆動装置と、を備え、
前記ステータベースの前記ロータ軸の軸線方向の直線運動は、前記軌道部材及び前記移動部材を備える直線運動案内装置によって案内される流体発電装置。
【請求項2】
前記軌道部材は、前記第一及び前記第二のベースに対して、前記ロータ軸の軸線方向と直交する方向にその位置を調整可能であることを特徴とする請求項1に記載の流体発電装置。
【請求項3】
前記軌道部材は、前記ロータ軸の周方向に配列される複数本のスプライン軸を有し、
前記移動部材は、前記複数本のスプライン軸に組み付けられる複数のスプラインナットを有することを特徴とする請求項1又は2に記載の流体発電装置。
【請求項4】
前記ロータ軸は、
前記第一のベースに回転可能に支持される第一のロータ軸と、
前記第二のベースに回転可能に支持される第二のロータ軸と、を有し、
前記第一のロータ軸と前記第二のロータ軸との間に前記発電機ロータが挟まれることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の流体発電装置。
【請求項5】
前記ロータ軸が中空であり、
前記ロータ軸の半径方向の内側に前記第一のベース、前記第二のベース、前記ステータベース、前記ステータ駆動装置及び前記直線運動案内装置が配置されることを特徴とする請求項1に記載の流体発電装置。
【請求項1】
風力又は水力を受けて回転する風車ロータと、前記風車ロータの回転力を発電機に伝達する主軸と、前記風車ロータの回転力を受けて電力を発生する発電機と、を備える流体発電装置において、
前記発電機は、
前記主軸と共に回転する発電機ロータを有するロータ軸と、
前記ロータ軸の一端部を回転可能に支持する軸受を有する第一のベースと、
前記ロータ軸の他端部を回転可能に支持する軸受を有する第二のベースと、
前記発電機ロータとすきまを介して対向する発電機ステータが設けられるステータベースと、
前記第一のベースと前記第二のベースとを連結する軌道部材と、
前記ステータベースに取り付けられ、前記軌道部材に沿って直線運動可能な移動部材と、
前記ステータベースを前記ロータ軸の軸線方向に移動させるステータ駆動装置と、を備え、
前記ステータベースの前記ロータ軸の軸線方向の直線運動は、前記軌道部材及び前記移動部材を備える直線運動案内装置によって案内される流体発電装置。
【請求項2】
前記軌道部材は、前記第一及び前記第二のベースに対して、前記ロータ軸の軸線方向と直交する方向にその位置を調整可能であることを特徴とする請求項1に記載の流体発電装置。
【請求項3】
前記軌道部材は、前記ロータ軸の周方向に配列される複数本のスプライン軸を有し、
前記移動部材は、前記複数本のスプライン軸に組み付けられる複数のスプラインナットを有することを特徴とする請求項1又は2に記載の流体発電装置。
【請求項4】
前記ロータ軸は、
前記第一のベースに回転可能に支持される第一のロータ軸と、
前記第二のベースに回転可能に支持される第二のロータ軸と、を有し、
前記第一のロータ軸と前記第二のロータ軸との間に前記発電機ロータが挟まれることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の流体発電装置。
【請求項5】
前記ロータ軸が中空であり、
前記ロータ軸の半径方向の内側に前記第一のベース、前記第二のベース、前記ステータベース、前記ステータ駆動装置及び前記直線運動案内装置が配置されることを特徴とする請求項1に記載の流体発電装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2012−97730(P2012−97730A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−162887(P2011−162887)
【出願日】平成23年7月26日(2011.7.26)
【出願人】(390029805)THK株式会社 (420)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年7月26日(2011.7.26)
【出願人】(390029805)THK株式会社 (420)
【Fターム(参考)】
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