説明

流体試料を処理するための装置

本発明は、流体試料を処理する装置、方法及び装置の使用に関する。本発明の装置(2)は、流入口及び流出口を有する試料処理チャンバ(102)と、その下流で試料処理チャンバ(102)の流出口と連通する廃棄物チャンバ(100)を有する。試料処理チャンバ(102)の流出口と廃棄物チャンバ(100)との間の連通部に、分岐検体流路が配置される。装置(2)は、更に、試料処理チャンバ(102)の上流にある2つのチャンバ(4,6)を有し、両方のチャンバ(4,6)とも、試料処理チャンバ(102)の流入口と連通する。装置(2)は、更に、正圧又は負圧を所望の流路に適用することによって、流体を2つの更なるチャンバ(4,6)の各々から試料処理チャンバ(102)を通して廃棄物チャンバ(100)又は分岐検体流路の中に移動させるためのプランジャ又は真空と、流体の流れを制限するビード(204,208)を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体試料を処理するための装置及び関連方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
臨床試料又は環境試料等の流体試料の分析は、いくつかの理由で行われる。1つの現在注目される分野は、臨床試料又は環境試料等の流体試料中の生体物質を積極的に識別する方法の開発である。この方法は、病状の早期診断を助け、それにより、迅速な治療及び感染予防又は環境汚染物質の識別等を可能にするので重要である。ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)等の核酸増幅は非常に有用であり、生体物質の積極的な識別のために一般的に使用される方法であるが、実験室以外の環境において多くの個々の流体試料中の生体物質を迅速に識別するための日常的な使用について、核酸増幅を満足できるように発展させること、例えば、患者の近傍又は看護場所での病気の診断を達成することを試みるとき、いくつかの問題が存在する。
【0003】
主な問題点の1つは、典型的な臨床試料又は環境試料において核酸増幅を行う前、幾分有害な試薬を使用して、生体物質を精製及び濃縮する一連の処理工程を行う必要があることである。しかしながら、核酸増幅は、試料、特に流体試料の、多くの同時的な又は一連の処理工程を含む操作が必要とされる様々な可能な技術例のうちの1つに過ぎない。処理工程そのものは、多く且つ異なり、可能な希釈工程及び濃縮工程に加えて、例えば、化学的、光学的、電気的、熱的、機械的、音響的な処理、感知、又は監視を含んでいてもよい。今日まで、かかる複雑な処理は、実験室において行われ、実験室では、試料が1つずつ手作業で処理されるか、多くの異なる試料を並行して処理するための専用ロボット装置を使用することによって処理されるかのいずれかである。しかしながら、これらの方法と関連したいくつかの問題がある。問題は、上記方法が、遅い、リソース集約的である、高価である、誤差及び試料の相互汚染があることを含む。これに加えて、従来の流体処理システムは、流体試料が一連の異なるチャンバの中を通って順番に流れることを必要とし、各チャンバが一連の工程の中の単一の工程に使用され、その結果、試料の損失を招き、かかる処理の自動化には、複雑な流体用アセンブリ及び処理アルゴリズムを使用することが必要である。
【0004】
従って、所望の最終生成物を得るために、所定の一連の工程を使用して流体試料を処理することができる改良装置を開発する必要性が依然として存在する。かかる装置は、それを例えば核酸増幅による分析の前に流体試料、例えば臨床又は環境試料を操作するのに使用することができるように、実験室以外の環境での使用及び実験室の訓練をほとんど又は全く受けていない操作者による使用に対して容易に適応されるべきである。そのような装置は、分析結果を迅速に得ることができることを保証し、熟練作業者を反復作業から解放し、必要経費を低減させるであろう。更に、そのような装置は、その後に行われる試験の失敗を防止するために十分な一貫性及び精度を有するべきであり、製造するのに廉価であり、相互汚染の可能性を最小にして大量の器機を滅菌する必要性を排除するために使い捨てであるべきである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来技術の調査が特定した特許は、所定の手順に従った流体試料の処理を容易にするために使用することができる複数のチャンバと1つの可動バルブ本体を含む流体制御及び処理システムを開示した米国特許第6,374,684号である。これは、流体試料を処理するための装置の分野における発展をもたらしたが、いくつかの問題を残している。1つのそのような問題は、流体試料を異なる溶液に対して順番に晒すために、バルブ本体を回転させて試料処理チャンバを各溶液のリザーバにいくつかの外部ポートを介して順番に接続する必要があることである。そのような装置は、とりわけ、外部ポートを必要な各溶液のリザーバに接続する必要があり、これは実際的ではなく、有害化学物質の場合には安全性の問題があり得るので、実験室以外の環境での未熟な実験室作業者による使用に十分に適するとは言えない。更に、そのような装置は、その複雑さ故にコストが高く、使い捨て装置としてのコスト効果はありそうになく、これは、試料の相互汚染の可能性をもたらす。更に、この装置は、各処理溶液を試料に順番に送出していずれの廃棄物質も除去するのに、単一の流体置換チャンバを利用しており、これは、流体置換チャンバ内の残留物質の混合や敏感な処理シーケンスの失敗の可能性をもたらすことがある。上述の問題を克服する流体試料を処理するための装置を開発する必要性は依然として存在している。
【0006】
WO00/62931は、微小チャンネルを介して検出モジュールに接続した試料入口ポートを有する微小流体装置について開示している。装置内の流体移動は、電界を印加するオン又はオフチップポンプによって制御される。この装置は、任意的に、記憶モジュール、廃棄モジュール、及び反応モジュールなどを含んでもよく、この出願は、一例として核酸増幅反応のための装置の使用を開示している。そのような装置は、微小スケールの容積試料に対して核酸増幅反応を行うのに有用であるが、臨床又は環境試料の場合のように試料の容積が数ミリリットルという分野で使用することができる装置を開発する方法の点で問題が残る。
【0007】
更に、米国特許第6,391,541号は、試料流路、試料溶解チャンバ、廃棄物チャンバ、検体流路、及び流体流れの向きを定めるための流れコントローラを含む、流体試料から望ましい検体を分離するためのカートリッジを開示している。また、この特許は、一例として、流体試料から核酸試料を分離するための装置の使用を開示している。この装置も、流体試料を処理する分野での発展を呈示するものであるが、いくつかの問題点を残している。それらに含まれるのは、望ましい化学的及び物理的処理工程を有する望ましい方法で試料を処理することができるように、この装置が複雑な流体用チャンネルを有することである。これは、多くのバルブを装置全体に使用することを必要とし、これは、望ましい仕方で流体が進むことを保証するために、機械的な開閉を必要とする。更に、この複雑な構成は、結果的に流体カートリッジ内に幾らかの試料を残留させ、それによって最終的に処理される試料の量を低減させる場合がある。これは、低濃度の所望の検体を維持する大容積の試料の場合、不正確な結果に導く可能性がある。最後に、カートリッジの複雑さは、未熟な使用者が現場で装置を作動させることを一層困難にしている。
【0008】
本発明において、上述の問題点を克服した装置及びそれと関連した方法を開発した。この装置は、流体入口及び流体出口を有する試料処理チャンバと、試料処理チャンバの下流にあり、試料処理チャンバの流体出口と流体連通する廃棄物チャンバと、を有し、試料処理チャンバの流体出口と廃棄物チャンバとの間の流体連通部に分岐検体流路が配置され、更に、試料処理チャンバの上流にある少なくとも2つの更なるチャンバを有し、少なくとも2つの更なるチャンバは両方とも、試料処理チャンバの流体入口と流体連通し、更に、正圧又は負圧を所望の流路に適用することによって、流体を、少なくとも2つの更なるチャンバの各々から試料処理チャンバを通して廃棄物チャンバ又は分岐検体流路の中に移動させるための手段と、流体の流れを制限するための消極的手段と、を有する。
【0009】
流体試料は、それが任意的に機能的因子と相互作用する試料チャンバを任意的に経由して、試料処理チャンバ内に導入される。次に、1つ又は2つ以上の流体処理溶液は、同時に又は順番に、更なるチャンバの少なくとも1つから、流体処理溶液が流体試料と相互作用する試料処理チャンバを通り、次に、廃棄物チャンバ内に移動される。更なるチャンバがいずれも試料処理チャンバと連通していることを確保することにより、流体は、各流体連通路を順番に確立させる又は形成する必要なしに、装置の中を通って移動する。流体連通路を介して流体を移動させるための手段を制御することにより、各流体が所定の手順に従って試料処理チャンバ内を通過することを確保することが可能であり、必要に応じて、試料処理チャンバ到達以前の各流体と別の流体との相互作用を最小にすることも可能である。装置の中を通して流体を移動させるために、正圧又は負圧を適用する手段を利用することにより、正しい流路を最小の複雑さで確立させることができ、流体の流れを制限するための消極的手段を使用することにより、流路を簡単に制御することができる。装置は、いくつかの方法で強化することができる。これらの方法には、正圧と負圧の適用の組合せ、即ち、真空を任意的に利用し、装置をの中を通る流体を制御された仕方で移動させること、製造中に任意の試薬又は流体をチャンバに予め充填し、かくして、装置の使用者がかかる物質を処理する必要性を排除すること、装置の中を通る流体の逆流を防止するために1つよりも多い消極的バルブを使用すること、及び処理済みの試料を更に別の用途、例えば核酸増幅のために直接回収することができるように回収チャンバを装置内に組み込むことを含む。これに加えて、1つ又は2つ以上のチャンバは、任意的に、流体試料を含む1つ又は2つ以上の流体にも物理的処理、例えば、熱的、音響的、光学的、又は電気的な処理、感知、又は監視技術を用いることができるように適応させる。
【0010】
本発明の装置は、いくつかの利点を有する。利点は、それが化学的及び物理的工程を含む広範な所定の処理プロトコルに適応して使用が簡単な流体処理装置をもたらすように容易に設計することができること、装置が単一の処理チャンバを使用しているので試料損失を最小にすること、全ての化学試薬及び生成された任意の廃棄物を含む装置が単一ユニット内に完全に一体にされ、かくして、試料の汚染を最小にし、潜在的に有害な物質に使用者を晒すことを低減すること、使用する可動部品の数が減らされているので、装置の信頼性が向上し、実験室の訓練をほとんど又は全く受けていない使用者でも使用が簡単になる可能性が高いこと、及びその製造が廉価であり、これが装置を使い捨てとして設計することができることを意味し、従って試料相互汚染の危険性を更に低減することが含まれる。
【0011】
本発明の目的は、流体試料を処理するための装置及び関連方法を開発することである。本発明の更に別の目的は、好ましくは核酸増幅反応の前に流体試料を精製及び濃縮するために、流体試料に対して所定のシーケンスで一連の順番の化学的及び物理的工程を行うことのできる装置を設計することである。本発明の別の目的は、実験室の訓練をほとんど又は全く受けていない作業者が、実験室以外の環境で簡単に使用することができる装置を設計することである。本発明の更に別の目的は、試料、化学物質、又は廃棄物質に対する使用者の露出を最小にするために、必要な化学物質又は廃棄生成物のいずれかもが装置内に結合されたままであるような装置を設計することである。本発明の更に別の目的は、1回使用の後に廃棄し、従って、試料相互汚染の可能性を低減して大量の機器の滅菌の必要性を排除することができるように、製造が廉価である装置を設計することである。本発明の上記及び他の目的は、以下に開示する内容から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0012】
第1の側面によれば、本発明は、流体試料を処理するための装置であって、流体入口及び流体出口を有する試料処理チャンバと、試料処理チャンバの下流にあり、試料処理チャンバの流体出口と流体連通する廃棄物チャンバと、を有し、試料処理チャンバの流体出口と廃棄物チャンバとの間の流体連通部に分岐検体流路が配置され、更に、試料処理チャンバの上流にある少なくとも2つの更なるチャンバを有し、少なくとも2つの更なるチャンバは両方とも、試料処理チャンバの流体入口と流体連通し、更に、正圧又は負圧を所望の流路に適用することによって、流体を、少なくとも2つの更なるチャンバの各々から試料処理チャンバを通して廃棄物チャンバ又は分岐検体流路の中に移動させるための手段と、流体の流れを制限するための消極的手段と、を有する。
【0013】
第2の側面によれば、本発明は、流体試料を処理する方法であって、本発明による装置の試料処理チャンバ内に試料を配置する工程と、正圧又は負圧を適用し、流体を装置の中を通して移動させる工程と、試料に1つ又は2つ以上の処理を施す工程と、処理した試料を前記分岐検体流路から回収する工程と、を有する。
【0014】
第3の側面によれば、本発明は、流体試料から核酸物質を精製及び濃縮する本発明による装置の使用に関する。
【0015】
特に断らない限り、本明細書に引用した全ての文献は、本明細書においてその全内容を援用する。
【0016】
本明細書において使用される用語「流体連通」は、問題となるチャンバ間に、流体が流れることができる通路が原則的に存在するが、流体の流れを制限するための1つ又は2つ以上の消極的手段によって流体の流れが制限され得ることを意味する。
【0017】
本明細書において使用される用語「連続的流体連通」は、問題となるチャンバ間に、流体が流れることができる通路が常に存在することを意味する。
【0018】
本明細書において使用される用語「流体の流れを制限するための消極的手段」は、所定の通路を流れる流体を制限する手段を意味すると理解されるが、その制限は、消極的に克服され、すなわち、正圧又は負圧を上記手段又は流路自体のいずれかに適用することによって純粋に克服され、それにより、所定の通路に沿う流体の流れを許す。選択的には、かかる手段は、消極的作用によって開放されてもよいし、消極的作用によって閉鎖されてもよい。更に、かかる手段は、それが圧力を適用する位置に応じて配置された流路を通るいずれか一方向の流体流れも可能にしてもよいし、変形例として、上記流路を通る単一方向の流体流れを可能にしてもよい。
【0019】
本明細書において使用される用語「流体試料」は、気体、液体、溶媒によって溶解された試料を含む溶液、又は、エマルジョン等の1つ又はそれ以上の相を有する流体システムとして存在する任意の試料を意味する。「流体試料」はまた、最初に固体又は粘性液体として装置内に導入され、次いで、一定量の溶媒を加えることによって希釈又は溶解される試料も意味すると理解される。
【0020】
本明細書において使用される用語「機能的因子」は、本発明の装置又は方法において使用される固形化学物質又は物理的因子を意味する。機能的因子は、1つ又は2つ以上の化学的試薬を含むのがよく、この化学的試薬は、流体試料と相互作用する試薬を構成する固体粉末、ビード、カプセル、プレス錠剤等として投与される。そのような試薬の適切な例は、限定するわけではないが、カオトロピック塩類等の溶解試薬、核酸ターゲット、核酸合成制御試薬、バクテリオファージ、凍結乾燥酵素、染料、及び洗浄薬を含む。しかし、機能的因子という用語が、流体試料と相互作用するための物理的手段を含むことを理解すべきである。物理的手段は、限定するわけではないが、磁気攪拌器ビード、加熱手段、及び抗体被覆磁気ビード等を含む。
【0021】
以下において装置の要素を一層詳細に説明する。
本発明は、流体試料を処理するための装置であって、試料処理チャンバと、廃棄物チャンバと、少なくとも2つの更なるチャンバと、流体を少なくとも2つの更なるチャンバの各々から試料処理チャンバを通して廃棄物チャンバ内又は分岐検体流路内へ移動させるための手段と、を有し、少なくとも2つの更なるチャンバの各々は、試料処理チャンバと流体連通し、試料処理チャンバは、廃棄物チャンバと流体連通している。本発明の実施形態は、所定の手順に従った流体試料の処理を容易にする。
【0022】
試料処理チャンバは、流体試料自体が1つ又は2つ以上の処理工程を施される領域である。処理工程は、試料を希釈する工程、1つ又は2つ以上の緩衝液を用いて順番に試料を洗浄する工程、試料を1つ又は2つ以上の化学的試薬と反応させる工程等の化学的処理工程を含むが、物理的工程を含んでいてもよく、物理的工程は、例えば、流体試料に1つ又は2つ以上の熱放射線を放射する工程、流体試料に音響処理を行う工程等を含む。試料処理チャンバは、選択的には、能動部材、好ましくは、捕捉部材を有し、捕捉部材は、微小流体チップ、固体相材料、フィルタ、フィルタスタック、親和性マトリックス、磁気分離マトリックス、サイズ排除コラム、毛細管、及びこれらの組合せからなるグループから選択される。試料処理チャンバは、流体試料内の生体物質を捕捉することができる捕捉部材を有することが好ましく、捕捉部材は、例えば、細胞、胞子、ウイルス、大小の分子、及び蛋白質を捕捉することができる。選択される適確な捕捉部材は、捕捉すべき物質の性質に依存する。本明細書で使用される好ましい捕捉部材は、試料処理チャンバの内面領域の一部分又は全部にわたって拡がるグラスファイバフィルタである。
【0023】
試料処理チャンバは、流体入口と流体出口を含み、一方では、少なくとも2つの更なるチャンバと流体連通し、他方では、廃棄物チャンバと流体連通している。廃棄物チャンバは、試料処理チャンバの下流にあり、試料処理チャンバの流体出口と流体連通しており、少なくとも2つの更なるチャンバは両方とも、試料処理チャンバの上流にあり、試料処理チャンバの流体入口と流体連通している。これらの流体連通のうちの少なくとも1つは、連続的に流体連通しているのがよい。試料処理チャンバ流体出口と廃棄物チャンバの間の流体連通部は、分岐検体流路を有する。分岐検体流路も、連続的に流体連通しているのがよい。装置はまた、正圧又は負圧を所望の流路に適用することによって、流体を少なくとも2つの更なるチャンバから試料処理チャンバを通して廃棄物チャンバ内又は分岐検体流路内に望むように移動させるための手段を有する。流体を2つの更なるチャンバの各々から試料処理チャンバを通して廃棄物チャンバ又は分岐検体流路内へ移動させるための手段は、流体を少なくとも2つの更なるチャンバのうちの第1のチャンバから試料処理チャンバを通して廃棄物チャンバ内へ移動させ、引き続いて、流体を更なるチャンバのうちの別のチャンバから試料処理チャンバを通して廃棄物チャンバ又は分岐検体流路内へ移動させることが好ましい。
【0024】
流体を移動させる多くの異なる手段が許容される。この手段は、正圧又は負圧を所望の流路に適用することによって、流体を移動させる。負圧を適用する手段の一例は、真空を発生させるための手段であり、この手段は、例えば、廃棄物チャンバの出口又は分岐検体流路の出口ポートなどの出口ポートを介して装置に取り付けられ、流体を装置から望むように抜き取ることができる。真空発生手段は、当業者に公知のいくつかの異なる手段のうちの1つによって出口ポートに取り付けられることが可能である。出口ポートに真空発生手段を取り付ける1つの有効な方法は、ベローズを使用する方法であり、その理由は、この方法が、高い許容誤差を有し且つ非常に正確な取扱いの必要を軽減させ、小さい出口ポートにさえも容易に取付け可能であるからである。そのような適応性は、装置が機械的に操作される場合又は未熟な作業者によって操作される場合に特に有用である。装置の廃棄物チャンバは、真空を発生させるための手段を取り付けることができる出口ポートを有することが好ましい。その結果、真空により、流体を更なるチャンバのうちの少なくとも1つから試料処理チャンバを通して廃棄物チャンバ内へ引き入れることができる。分岐検体流路は、好ましくは、真空を発生させるための手段を容易に取り付けることができる出口ポートを有する。真空を発生させるための手段は、いくつかの方法で使用される。例えば、真空を発生させるための手段は、所定の順序で流体を装置から抜き取るのに使用される。選択的には、装置は、例えば、流体流路の寸法を制御することによって、又は、流体の流れを可能にするために消極的に開くことが必要な膜又はゲートを組み込むことによって、装置の中を通る流体の流れを制限するための消極的手段を有するように設計され、その結果、流体を各チャンバから順番に放出するために増大させた真空力が必要であり、使用中に真空を増大させることによって、順番に、最初の1つのチャンバから流体を引き、次に別のチャンバから流体を引くことを可能にする。また、真空の使用により、各流体を移動させる工程と工程との間の一時的工程として空気を装置の中を通して引くように構成すことができ、その結果、流体が流体連通路から一掃され、異なる流体が試料処理チャンバに入る前に相互作用しない。このことは、試料処理チャンバへの進入の前に第1の緩衝液と第2の緩衝液の相互作用がその効果を無効にすることがある場合、又は、非常に少ない量の物質の全てが試料に到達することが重要である場合等の、非常に微妙である試料処理手順において重要になり得る。真空が使用される場合、装置内のいずれの物質も真空によってエーロゾル化され、装置から大気中に引き出されることを考慮することも好ましい。放出されたときの安全上の問題があることが分かっている試薬を使用するように装置が構成されているとき、エーロゾル化された物質の放出を最少にするか又はなくすように装置を構成することが重要である。1つのそのような可能な構成は、エーロゾル化された物質を捕捉してそれが大気中に放出されないように、装置内又は真空を適用する手段内にフィルタ膜を組み込むことである。
【0025】
流体を装置内で移動させるのに適した別の手段の例は、正圧又は力を流体の後方に適用する手段である。かかる力は、当業者に知られている多くの手段によって加えることができる。1つの例は、多くの更なるチャンバ内の1つの中で、プランジャを使用することであり、プランジャが押し下げられると、チャンバ内のいかなる流体も流体連通路を通して試料処理チャンバ内に押し入れられ、次に、廃棄物チャンバ内へ押し入れられる。プランジャの使用等によって力を流体の後方に適用する手段の使用により、少なくとも2つの更なるチャンバからの流体が、同時に又は順番に、好ましくは順番に、更なるチャンバから試料処理チャンバを通して廃棄物チャンバ又は分岐検体流路内へ移動されるように構成される。例えば、1つ又は2つ以上の一連のプランジャを順番に押し下げ、流体を更なるチャンバの第1のチャンバから試料処理チャンバを通して廃棄物チャンバ内に順番に移動させ、次いで、更なるチャンバの別のチャンバから移動させることが可能である。上述の両方の場合、流体を移動させるための手段は、注入器、プランジャ、及びポンプなどを使用することによって手動で提供されてもよいし、必要な動力と手段を供給することができる別の装置に本発明の装置を組み込むことによって機械的に提供されてもよい。正圧を適用するためのかかる手段は、装置の中を通る流体の流れを制限するための消極的手段と共に使用されるのがよい。
【0026】
本発明の装置においては、真空を発生させるための手段と力を流体の後方に適用する手段との組合せを利用して、流体を更なるチャンバのうちの少なくとも1つから試料処理チャンバを通して廃棄物チャンバ内へ移動させることが好ましい。両方の手段を一緒に使用することは、流体の後方に加わる初期力により、任意所定のチャンバからの流体の放出を開始させ、真空により、装置の中を通る流体の流れを方向付けし、かくして、流体の流れが望ましい経路から反れることを防止することができる利点を有する。これにより、流体が所定の手順に従って更なるチャンバから試料処理チャンバを通って順番に流れるように、装置を容易に設計することを可能にする。
【0027】
本発明の流体連通路は、装置の中を通って望ましい方法でチャンバ同士を接続する1つ又は2つ以上のチャンネルによって得られる。装置は、少なくとも2つの更なるチャンバが試料処理チャンバと流体連通するように設計される。これらのチャンバの各々は、選択的には、試料処理チャンバに入る前に共通の箇所において接続する個別の流出チャンネルを有するように設計される。設計の複雑さの低減を可能にするために、溶液が試料処理チャンバ内へ流入するための流入箇所、すなわち、試料処理チャンバ入口は、1つしかないことが好ましい。従って、更なるチャンバの各々からの流出チャンネルが接続され、流れが試料処理チャンバに入る前に共通の試料処理チャンネルに流入することが好ましい。1つ又は2つ以上のこれらの流体連通部は、連続的な流体連通部であるのがよい。
【0028】
チャンバの中を通る不適切な仕方で流体が流れることを最小にするために、装置は、その中の流体の流れを制限するための消極的手段を含むことが好ましく、この消極的手段は、任意特定の流路が必要とされるときまでその任意特定の流路を制限する特徴を有するように設計される。これをしないと、結果として、2つ以上のチャンバから同時に流体が流出し、試料処理順序を狂わせたり、流体が廃棄物チャンバから装置内に逆流したりすることがある。かかる流れを制御するのに適切な手段の例は、チャンネルを覆う1つ又は2つ以上の膜を使用し且つ膜の後方又は前方に圧力を適用したときに膜が破壊されるようにしておくこと、表面張力のため、力を適用することなしに流体が流れることができないほど直径が非常に小さいチャンネルを使用すること、吸引力を使用して緩衝液を予め充填したチャンバを使用し且つ緩衝液を放出する力が適用されるまで緩衝液を適所に保持するように吸引力を作用させること、真空、圧力、磁石などにより作動するバルブを装置全体にわたって使用すること、小さな漏れが行き過ぎることなしに収容されることを可能にする流体連通路を実現するために、完全に満たされる必要がある小さなリザーバを含むように流体連通路を設計すること、等を含む。かかる特徴の1つ又は2つ以上を含む装置が、適切な流体の流れを確保するために好ましい。本発明の装置においては、流体の流れを制限するための消極的手段は、少なくとも2つの更なるチャンバのうちの少なくとも1つと試料処理チャンバとの間の流体連通部に配置されたリザーバを有することが好ましい。また、流体の流れを制限するための消極的手段は、正圧又は負圧を加えることなしに流体が流れることができないほど小さい直径を有する流路を有することが好ましく、この流路は、少なくとも2つの更なるチャンバのうちの少なくとも1つと試料処理チャンバとの間の流体連通部に配置される。少なくとも2つの更なるチャンバのうちの少なくとも1つと試料処理チャンバとの間の連続的な流体連通部が、これらの両方の特徴を有することが更に好ましい。流体の流れを制限するための消極的手段の上述した例は、装置内に連続的な流体連通を確立することを可能にし、同時に、装置内における流体の流れの制御を可能にする。これにより、装置の複雑さを更に低減する。
【0029】
同様に、試料処理チャンバは、廃棄物チャンネルを介して廃棄物チャンバと流体連通する。廃棄物チャンバ内の物質が試料処理チャンバ内へ逆流できないということも重要である。従って、流体の流れを制限するための消極的手段を試料処理チャンバと廃棄物チャンバとの間に組み込むように、装置を設計することが好ましい。逆流を防止するために、消極的手段は、好ましくは、試料処理チャンバと廃棄物チャンバの間の流体連通部に配置された消極的バルブ、好ましくは、一方向弁である。消極的バルブは、分岐検体流路の下流に配置されることが好ましい。1つの単純な解決法は、廃棄物チャンバを試料処理チャンバに接続する流路内の一定の箇所に且つ廃棄物チャンバの開口部の中に配置されたガラスビード等の小さなビードを利用することである。装置が使用中で、流体が試料処理チャンバから廃棄物チャンバへ移動しているとき、流体の移動又は真空の使用は、ビードを開口部から解放し、流体が流れることを可能にする。流体の流れが存在しないとき、ビードは、廃棄物チャンバの開口部に戻って着座し、装置内における流体の逆流を防止する。このバルブを作動させるために、廃棄物チャンバを介した真空の作用を使用することが好ましい。
【0030】
流体の流れを制限するための消極的手段の別の例は、重力を用いることによって流体の流れを制御することである。流体は、試料処理チャンバに入る前、好ましくは真空によって、前処理チャンネル内を上向きに差し向けられることが好ましい。次に、流体は、上方から試料処理チャンバに流入し、試料処理チャンバでは、その中を流体が重力によって落下する。また、流体は、廃棄物チャンネルを介して試料処理チャンバから離れるとき、再び上方に流れて廃棄物チャンバにその上部から入ることが好ましい。この構成により、流体が装置内において逆流すること、例えば、廃棄物チャンバから試料処理チャンバ内へ逆流すること、試料処理チャンバから更なるチャンバ内へ逆流することを防止することができる。関心のある特定の使用に応じて、当業者は、上記及びその他の機構から選択された任意の必要な流体流制御機構を含むように、装置を設計することができる。
【0031】
試料処理によって生じた廃棄物質は、廃棄物チャンバ内に回収される。廃棄物を回収して廃棄するために追加の容器を必要としないように、廃棄物チャンバは、本発明の装置内に完全に組み込まれることが好ましい。これは、問題の物質が有害であるか又は感染性がある場合に使用者による取扱いの必要性を最小にするので、特に好ましいものである。廃棄物チャンバは、試料処理中に使用される流体の全てを容易に保持するのに十分な容積を有するべきである。廃棄物チャンバは、試料処理チャンバ及び少なくとも2つの更なるチャンバとの間及び周りに且つ装置内部の任意の余剰空間内に収容されることが好ましい。これにより、空間の最も効率的な使用を可能にし、かくして、装置全体の寸法を最小に保つ。上述したように、廃棄物チャンバは、真空を発生させるための手段に接続することができる出口を有することが好ましく、その結果、真空が、流体の流れを装置の中を通して廃棄物チャンバ内へ直接差し向けるように装置に適用される。
【0032】
また、装置は、少なくとも2つの更なるチャンバを含む。装置の用途に応じて、これらの更なるチャンバは、いくつかの役割を果たすのがよい。チャンバの可能な例は、試料処理手順において必要とされる緩衝液又は水を有する緩衝液チャンバ、又は、流体又は固体のいずれかの試料が最初に装置内に導入される試料チャンバ、を含み、試料チャンバは、選択的には、試料が相互作用する第1の試薬を有し、試料チヤンバにおいて、選択的には、固体試料が最初に溶媒中に溶解され、変形例として、試料に物理的処理が施される。これらのチャンバに、製造中、必要な溶液又は試薬を予め充填するのがよい。このことは、いくつかの利点を有し、かかる利点は、使用者が大量の化学溶液から一定量の化学溶液を正確に計量する必要がないこと、チャンバ自体を溶液のリザーバに取り付ける必要がないこと、及び、次の流体の使用の前に流体チャンネルを確実に空にするために、流体を装置から抜くとき、流体の流れに追随することができるエアポケットをチャンバに予め充填することができることを含む。チャンバは、選択的には、真空又は力を適用したときにチャンバ内での固体試薬の移動を最小にするために使用することができる部分的な内部障壁を有し、この内部障壁は、例えば、内部チャンバの一部分を貫通して延びるプラスチックスピンドルである。同様に、チャンバは、内容物の早期放出、又は、試料の前処理工程中における汚染又は蒸発等による内容物の破壊を防止するための膜を有するのがよい。本発明の一実施形態では、少なくとも2つの更なるチャンバのうちの少なくとも1つは、酢酸カリウムと3塩酸塩の水溶液、又は、酢酸カリウムと3塩酸塩の水性エタノール溶液からなるグループから選択された緩衝液で予め充填されることが好ましい。また、少なくとも2つの更なるチャンバのうちの少なくとも1つは、試料を装置内に導入する入口ポートを有する試料チャンバとして機能することが好ましい。更に、試料チャンバは、試薬を有することが好ましく、試薬は、好ましくは、溶解試薬を有する試薬であり、更に好ましくは、カオトロピック塩類を有する試薬である。この試薬は、固体ビードの形態をしていてもよいし、チャンバ内部の1つ又は2つ以上の表面上に凍結乾燥されていてもよい。
【0033】
1つ又は2つ以上の更なるチャンバ及び/又は試料処理チャンバ自体を含む装置のチャンバは、処理シーケンス中、必要に応じて、チャンバの内容物に物理的工程を施すことができるように設計されるのがよい。例えば、チャンバの壁は、チャンバの内容物を温めることを可能にする加熱要素を有していてもよいし、音響処理を可能にするために可撓性であってもよいし、光学的な処理、感知又は監視等を可能にするために1つ又は2つ以上の波長の光に対して透明であってもよい。装置のチャンバのうちの少なくとも1つは、国際公開WO98/24548に開示されているような導電性ポリマーでコーティングされることが好ましい。物理的処理が必要な場合、チャンバが物理的処理の源又はソースに容易かつ効率的にアクセスできる位置に配置されるように、装置を設計すべきである。例えば、チャンバは、装置の外面に向けて配置されてもよいし、光源又は加熱源等の物理的処理の源と相互作用することができるように、チャンバの一部分が装置の本体から外へ部分的又は全体的に延びていてもよい。好ましくは、装置の少なくとも1つのチャンバは、試料処理チャンバとの流体連通を維持したままで装置の本体の外側に配置され、更に好ましくは、チャンバは、導電性ポリマーで少なくとも部分的にコーティングされた壁を有する。装置の本体の外側に配置されることが好ましいチャンバの例は、内部で検体又は緩衝液を加熱する必要がある任意のチャンバである。
【0034】
加えて、装置は、1つ又は2つ以上のフィルタ膜を有するように設計されるのがよい。既に説明したように、試料処理チャンバは、捕捉部材を有することが好ましい。また、既に示したように、装置が真空を発生させるための手段に取り付けられた出口を有する場合、エーロゾル化された物質が大気中に放出されるのを防止するために、フィルタが装置内又は真空を発生させるための手段内のいずれかに組み込まれることが好ましい。更に、装置は、固体粒子が閉塞を引き起こすことを防止するために、例えば連通路内に、他のフィルタを有していてもよい。試料が装置に入る前に試料を濾過するために、試料処理チャンバの入口のところで、フィルタを選択的に使用してもよい。変形例として、空気が大気から装置内に引き込まれる入口ポートを装置が含む場合、いかなる汚染物質も大気から装置内に侵入せず且つ処理される試料を潜在的に汚染しないことを保証するために、フィルタ膜を使用することが必要であろう。試料処理チャンバの入口ポートは、フィルタ膜を有することが好ましく、このフィルタ膜は、試料が試料処理チャンバ内に導入される前又は後のいずれかに位置決めされる。
【0035】
本発明の装置は、処理済み試料を直接回収することができる回収チャンバを任意的に含んでいてもよい。回収チャンバは、装置内に組み込まれていてもよいし、必要なときに回収チャンバを適所に簡単かつ確実にクリップ固定することができるように装置を設計してもよい。固定チャンバが適所にあるとき、固定チャンバは、検体流路の下流にあり、分岐検体流路の出口、かくして、試料処理チャンバと流体連通する。装置内の流体を移動させるための手段を使用して、試料を回収チャンバ内に差し向けるように、装置を作動させるのがよい。例えば、装置は、処理済み試料を試料処理チャンバから回収チャンバ内へ移動させるための手段を有する。従って、流体を廃棄物チャンバ内へ移動させるための手段を分離し、且つ、流体を回収チャンバ内へ移動させるための手段を接続することによって、流体を試料処理チャンバから回収チャンバ内へ差し向けることが可能である。かかる手段は、第2の出口を介して回収チャンバに接続された、真空を発生させるための手段を含有することが好ましく、この場合、真空の経路が試料処理チャンバから回収チャンバの中に通じ、かくして、いかなる流体も廃棄物チャンバから反らし、その代わりに、回収チャンバ内へ流入させる。上述のように、真空が使用される場合、試料からのエーロゾル化した物質が大気に入ることを防止するために、フィルタ膜を真空の上流側の装置内に取り付けることが有利である。他のチャンバの場合と同様、回収チャンバは、物理的な処理、感知又は監視が施されるように設計されるのがよく、回収チャンバと物理的処理の源との相互作用を促進するために、装置の本体の外側に全体的に又は部分的に延びるのがよい。回収チャンバが核酸増幅用に構成されることが大いに好ましい。従って、回収チャンバは、装置の本体の外側にあり、試料の熱サイクルを促進するために、少なくとも部分的に導電性ポリマーによってコーティングされた壁を有し、核酸増幅反応を光学的に、好ましくは蛍光によって監視することができる透明部分も有することが好ましい。変形例として、回収チャンバは、取り外し可能であり、それにより、いったん処理済みの試料が回収されたら、回収チャンバを別の用途のために取り外してもよい。取り外し可能であれば、一体の回収チャンバが有する主な利点の1つは、いかなる介在又は付加装置の必要なしに、処理済み試料を回収することができることである。また、これにより、使用者のために装置を単純化し、試料の相互汚染を最小にし、使用者が試料に晒されることを最小にする。しかし、回収チャンバに劣化しやすい試薬が予め供給される場合、回収チャンバを別に保管しておき、必要な時にそれを装置に取り付けることが有用である。そのような試薬の例は、核酸増幅反応及び検出システムのために必要な当業者に公知の試薬、例えば、核酸プライマー、核酸プローブ、蛍光染料、酵素緩衝液、ヌクレオチド、マグネシウム塩、ウシ血清アルブミン、及び変性剤を含む。
【0036】
ある状況では、いったん主要な試料処理手順が完了し、試料が回収チャンバ内に回収される前、試料を更に別の試薬と相互作用させることが必要な場合がある。この最終工程は、更なるチャンバ、即ち、試料処理チャンバと回収チャンバとの間の後処理チャンバを任意的に含むことにより行われるのがよい。処理済み試料が試料処理から溶離された後、処理済み試料は後処理チャンバに入り、逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応核酸増幅における逆転写酵素工程のために必要とされる試薬と相互作用する。装置は、選択的には、問題の最終試薬を含む回収チャンバの下流に後処理チャンバを有するのがよい。次に真空を適用し、処理済み試料を試料処理チャンバから回収チャンバを通して後処理チャンバ内に引き入れ、処理済み試料が後処理チャンバ内にある試薬と更に相互作用することを可能にし、次に真空を遮断した後、真空を廃棄物チャンバを介して再び適用し、完全に処理済みの試料を引いて、回収チャンバ内に戻すことが可能である。他のチャンバと同様、使用者がこれらの物質を取り扱う必要性を最小にするために、装置にいかなる試薬も予め供給しておくことが好ましい。装置が核酸増幅のための試料を準備するのに使用される場合、試薬は、核酸プライマー、核酸プローブ、蛍光染料、酵素緩衝液剤、ヌクレオチド、マグネシウム塩、ウシ血清アルブミン、及び変性剤等からなるグループから選択された1つ又は2つ以上の試薬を含むことが好ましい。
【0037】
装置自体は、特定の用途に応じて様々な異なる設計、形状、サイズを有し、多くの異なる材料で作られる。装置のコストを最小にし、単一用途のために製造することが商業的に妥当であることを確保するために、装置は、熱可塑性物質等の廉価な材料で製造されることが好ましく、かかる材料は、例えば、ポリエチレン又はポリプロピレン、ポリカーボネート、アクリル、ナイロン、又はブタジエン−スチレンコポリマー、又はこれらの混合物である。装置は、できるだけ少数の構成要素から製造されることが好ましい。従って、装置の主要部は、チャンバ及び主なチャンネルを含む単一の射出成形ユニットとして製造されることが好ましい。複雑なチャンネルは、射出成形ユニットの基部とチャンネル経路を含むプレートとを超音波密封することによって形成されることが好ましい。いかなる物質の漏れ及び使用後の汚染された廃棄物の流出を防止するために、任意のプランジャが、蓋となり得るように後から追加される。使用後、廃棄物を含む装置を、廃棄物を蓄積することなしに又は含まれる化学物質に使用者が晒される危険を冒すことなしに、容易に廃棄することができるように、装置は、焼却することができる材料で製造されることが更に好ましい。装置は、透明であってもよいし、半透明であってもよい。装置の正しい使用法に関し、未熟な使用者に指示を与える助けとなるように、任意のプランジャにカラーコードを付けることが有利である。
【0038】
装置は、選択的には、試料容器等の更なる追加の装置と一体に設計されてもよく、いったん流体試料を患者又は環境から収集したら、流体試料は、いかなる注入器又は試料捕集円錐体も使用することなしに、流体処理装置内に直接導入され、その結果、資料は、流体処理装置に直接回収される。2つの装置は、シールを介して一体にされ、シールは、例えば、急速取付けシール、ネジシール又はその他の手段である。本発明の装置がプラスチックで成形される場合、かかる密封装置は、その形状に容易に一体化することができる。この一体化は、科学的訓練をほとんど又は全く受けていない使用者に対する実験室以外の環境における装置の使用法を一層単純化すると共に、使用者と試料そのものとの相互作用を最小にする。
【0039】
加えて、装置は、機械的な装置と一体であってもよい。これは、真空又はプランジャの押下げ等の物理的装置を使用して流体を移動させるための手段を適用するか、又は、装置の1つ又は2つ以上のチャンバに、熱的、光学的又は音響的な処理、感知又は監視のための物理的処理工程を行うこと、を含むいくつかの理由による。そのような一体化が必要である場合、装置が、そのような付加的な物理的装置と有効に一体化することができるように設計されることが重要である。かかる一体化は、未熟な作業者が装置を有効に使用することができるように、できるだけ単純であることをかくほすることも重要である。このことは、付加的な物理装置が単一の向きにのみ配置され且つ一体化されるように、配向等を補助する色分けを使用して装置を設計することを含む。
【0040】
本発明はまた、流体試料を処理する方法であって、本発明による装置の試料処理チャンバ内に試料を配置する工程と、正圧又は負圧を適用し、流体を前記装置の中を通して移動させる工程と、試料に1つ又は2つ以上の処理を施す工程と、処理した試料を前記分岐検体流路から回収する工程と、を有する。処理工程は、化学的工程であってもよいし、物理的工程であってもよい。
【0041】
第3の態様によれば、本発明は、流体試料からの核酸物質の精製及び濃縮のための本発明による装置の使用に関するものである。そのような試料は、好ましくは、その後に核酸増幅、例えばポリメラーゼ連鎖反応増幅を施すことができるように準備されるべきである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
添付図面に示す本発明の装置の特定の実施形態を参照して、以下、本発明を説明する。
図1は、本発明の装置2を示し、装置2は、試料チャンバ4と、第1のプランジャ8を有する第1の緩衝液チャンバ6と、第2のプランジャ12を有する第2の緩衝液チャンバ10とを有している。使用中、第1のプランジャ8及び第2のプランジャ12を移動させるために、第1のプランジャ8及び第2のプランジャ12は、それらと外部装置とを一体にすることを可能にするソケット34を有している。装置2は、更に、その本体を越えて延びる小さな容積の水チャンバ14を有している。水チャンバ14は、保管中又は試料処理の初期工程中にチャンバ内の水が蒸発しないようにチャンバを包囲する膜シールを有している。膜は、薄いプラスチックシートであり、例えば、0.1から0.2mmのアクリロニトリルブタジエンスチレンの膜(skin)である。装置2は、また、それに1つ又は2つ以上の真空装置を取り付けることのできる第1の出口ポート16及び第2の出口ポート18を有している。試料チャンバ4は、ペグ24の周りを枢動することができるアーム22を介して装置2の本体に取り付けられた蓋20を有している。試料チャンバ4内への試料(図示せず)の導入後、蓋20をペグ24の周りに試料チャンバ4を密封する位置に枢動させる。蓋20は、また、ポンプ(図示せず)を介して空気を装置2内に引き入れることができる出入口ポート26を有している。装置2は、また、その底部から頂部まで延び且つその本体の外側に位置するチャンネル28を有している。チャンネル28は、装置の流体連通ネットワークの一部を形成する。装置2のベース板30及び天板32は、別個の単体として製造され、製造の最終工程において装置2に取り付けられる。
【0043】
図2を参照すると、装置2は、天板32、ベース板30、及び外部チャンネル28を有している。図2は、装置2がその本体の外側にある3つのリザーバ50、52、54を有していることを示す。リザーバ50は、試料チャンバの下にあり、リザーバ52は、第1の緩衝液チャンバの下にあり、リザーバ54は、第2の緩衝液チャンバの下にある。これらのリザーバ50、52、54は、試料又は緩衝液が各チャンバから装置の流体連通ネットワークを通って不適切に流れることを防止する機構の一部として使用される。装置2のベース板30は、装置2の本体の外側にある回収チャンバ56を有している。流体試料(図示せず)が完全に精製されたら、流体試料は、分岐検体流路から、PCR増幅反応を行うことができる回収チャンバ56に入る。回収チャンバ56は、導電性ポリマー(図示せず)でコーティングされ、核酸増幅反応をモニタすることができる2つの透明面58を有することが好ましい。
【0044】
図3を参照すると、装置2は、試料チャンバ4、第1の緩衝液チャンバ6、及び第2の緩衝液チャンバ10を有している。装置2は、装置2の本体内のデッドスペースである廃棄物チャンバ100を有し、この廃棄物チャンバ100は、その他の内部チャンバを包囲する。装置2は、試料処理チャンバ102を有している。試料処理チャンバ102は、前処理チャンネル104を介して試料チャンバ4及び緩衝液チャンバ6、10と流体連通している。試料処理チャンバ102は、廃棄物チャンネル28を介して廃棄物チャンバ100と流体連通し、廃棄物チャンネル28は、廃棄物ポート106を介して廃棄物チャンバ100に接続している。装置2は、また、第2の真空出口ポート18(図3の斜視図には図示せず)及び試料処理チャンバ102(連通は図示せず)に接続している後処理チャンバ108を有している。
【0045】
図4を参照すると、ベース板30は、試料リザーバ50、第1の緩衝液リザーバ52、及び第2の緩衝液リザーバ54を有している。ベース板は、試料チャンネル152、第1の緩衝液チャンネル154、及び第2の緩衝液チャンネル156を含み、試料チャンバ4(図示せず)、第1の緩衝液チャンバ6(図示せず)及び第2の緩衝液チャンバ10(図示せず)のそれぞれから、参照符号158で示す基部を有する前処理チャンネル104を介して試料処理チャンバ102(図示せず)までの流体連通を提供する。試料処理チャンバ102の基部160は、廃棄物チャンネル28の基部162と流体連通している。試料処理チャンバ102の基部160は、分岐検体流路及び回収チャンバ56(図示せず)を介して後処理チャンバ108の基部164と流体連通している。
【0046】
図5を参照すると、試料200は、試料チャンバ4を介して装置2内に導入される。いったん試料200を試料チャンバ4内に導入したら、試料チャンバ蓋20を閉める。この試料チャンバ蓋20は、装置に入る空気による汚染を防止すると共にエーロゾル化された試料が装置から離れることを防止するフィルタ202を有している。試料チャンバ内において、装置は、溶解試薬を含む第1の試薬ビード204と相互作用し、溶解試薬は、試料内の任意のバクテリアを溶解させるカオトロピック塩、例えば、グアニジウム塩酸塩を含む。第1の試薬は、選択的には、次のPCR増幅反応の効率を正常化するための手段として後で作用することができる核酸ターゲットを含んでいてもよい。試料が第1の試薬と相互作用した後、真空が第1の真空出口ポートを介して装置に適用される(真空を図5Aの断面図に示しているが、第1の真空出口ポート16は図示せず)。この真空は、最初、試料を試料リザーバ50内に引き込み、次いで、試料チャンネル152に沿って前処理チャンネル104の基部158まで引く。次に、試料は、前処理チャンネル104を引き上げられ、試料処理チャンバ102に引き入れられる。試料処理チャンバ102は、試料が通過する時に試料から核酸を分離することができるフィルタ手段206、例えば、グラスファイバフィルタを含んでいる。次いで、真空により、試料をフィルタから引き出し、試料処理チャンバ102の基部160、廃棄物チャンネル28の基部162、廃棄物チャンネル28内に引き上げる。廃棄物チャンネル28の上部において、全ての核酸が取り除かれた試料は、廃棄物チャンネル出口ポート106を介して廃棄物チャンバ100に入る。この図は、廃棄物チャンバ内の廃棄物質を示していない。廃棄物チャンネル28は、その基部162内に配置された小さなビード208を有している。真空が適用されたとき、ビード208は、廃棄物チャンネル28内を上昇し、流体がチャンネル28の中を通って廃棄物チャンバ100に入ることを可能にする。真空が除去されると、ビード208は、落下し、廃棄物チャンネル28の基部162を覆って入口を塞ぐ。これにより、廃棄流体が試料処理チャンバ102内へ逆流することを防止する。この装置の図は、水チャンバ14、第1の緩衝液チャンバ6、第1のプランジャ8、後処理チャンバ108、及び後処理チャンバ出口ポート18を示しているが、これらのチャンバ間の流体連通を示していない。
【0047】
図6を参照すると、装置2の第1の緩衝液チャンバ6は、第1の緩衝液252を有し、第1の緩衝液252は、例えば、「Promega Wizard(登録商標)」キットで入手可能できる水性酢酸カリウム/3塩酸塩溶液である。装置には、廃棄物チャンバ出口ポート(図5には図示せず)を介して真空が適用されている。それと同時に、プランジャ8が第1の緩衝液チャンバ6内で押し下げられ、それにより、第1の緩衝液252の流れが緩衝液リザーバ52を介して開始し、前処理チャンネル104の基部158のところで接続した第1の緩衝液チャンネル154及び前処理チャンネル104を介して試料処理チャンバ102に入る。第1の緩衝液チャンネル154は、それが第1の緩衝液リザーバ52から離れる箇所において非常に小さな直径を有するように設計される。これにより、プランジャ8が押し下げられるまで、第1の緩衝液がその表面張力により第1の緩衝液チャンネル154内に漏れることができないことを確実にする。試料の場合と同様、いったん緩衝液が試料処理チャンバ102に入ると、緩衝液は、フィルタ手段206の中を通って流れ、かくして、フィルタ膜上の核酸物質を洗い流す。次いで、第1の緩衝液252は、真空(図示せず)により、廃棄物チャンネル28及び廃棄物チャンネル出口ポート106を介して廃棄物チャンバ100内に引かれる(廃棄物チャンネル内の廃棄物質を図示せず)。
【0048】
図7を参照すると、第2の緩衝液チャンバ10は、第2の緩衝液302を有し、第2の緩衝液302は、例えば、「Promega Wizard(登録商標)」キットで入手可能である酢酸カリウム/3塩酸塩の水性エタノール溶液である。装置には、廃棄物チャンバ出口ポート(図示しないが、図5に示す)を介して真空が適用される。それと同時に、プランジャ12が第2緩衝液チャンバ10内で押し下げられ、それにより、第2の緩衝液302の流れが緩衝液リザーバ54を介して開始し、前処理チャンネル104の基部158のところで接続した第2の緩衝液チャンネル156及び前処理チャンネル104介して試料処理チャンバ102内に入る。上述の場合のように、第2の緩衝液チャンネル156は、それが第2の緩衝液リザーバ54から離れる箇所において非常に小さな直径を有するように設計される。これにより、第2の緩衝液302が漏れないことを確実にする。再び、試料処理チャンバ102内において、緩衝液がフィルタ手段206を通って流れると、再びフィルタ膜上の核酸物質を洗い流す。次いで、第2の緩衝液302は、真空(図示せず)により、廃棄物チャンネル28及び廃棄物チャンネル出口ポート106を介して廃棄物チャンバ100内に引き入れられる(廃棄物チャンネル内の廃棄物質を図示せず)。
【0049】
図8を参照すると、任意の過剰な溶媒をフィルタから除去するために、装置は、精製された核酸を含むフィルタ膜を空気乾燥するように構成されている。これを行うために、真空が第1の真空出口ポート16(図示せず)を介して装置2に適用される。これにより、空気が試料チャンバ蓋20内の入口ポート26を介して装置に引き入れられる。この空気がフィルタ202を通過することにより、空気中の物質を除去し、試料の汚染を防止する。次に、この空気は、真空によって、試料チャンバ4、試料チャンバリザーバ50、試料チャンバチャンネル152、前処理チャンネル104、試料処理チャンバ102、フィルタ手段206、廃棄物チャンネル28を介して引き入れられ、廃棄物チャンバ100を介して装置の外に出る。次いで、真空を出口ポート16を介して装置2に加える手段が除去される。
【0050】
図9を参照すると、小容積チャンバ14は、好ましくは、約100マイクロリットルの浄水を含む。浄水は、その温度が好ましくは80℃よりも高くなるまで、外部加熱手段(図示せず)を使用して温められる。次に、第2の真空が、第2の真空出口ポート18を介して装置に適用される。プランジャ305が押し下げられて、温められた水が水チャンバ14から試料処理チャンバ102内に放出される。小容積の水を直接フィルタ手段206に差し向けるための円錐体315が使用される。水は、第2の真空によりフィルタ手段206を通って回収チャンバ56内に引き込まれ、水がフィルタ手段206を通るとき、精製された核酸を溶離させる。第2の真空は、更に、水を分岐検体流路、回収チャンバ56を介して後処理チャンバ108内に引き込む。後処理チャンバ108は、第2の固体試薬310を含み、この第2の固体試薬は、更に別のPCR試薬、例えば、プローブ、蛍光染料、及び更に別の核酸制御剤を含む。試薬310は、溶液中に溶解する。第2の真空を除去することにより、溶液が重力によって回収チャンバ56内に落下することを可能にする。変形例として、溶液を回収チャンバ56に戻すために、第1の真空を再び適用してもよい。
【0051】
核酸は、いったん回収チャンバ内に入ると、PCR増幅を行うのに必要とされる加熱サイクルを受ける準備が整っている。回収チャンバは、その壁が熱伝導性ポリマーで作られるように設計されることが好ましい。回収チャンバは、次に、現場で加熱サイクルを受けるか、或いは、取り外されて、別のサイクル用装置内に配置される。
【0052】
装置のこの実施形態は、10ミリリットルの流体試料から核酸物質を精製するために開発された。装置の本体は、約70から80mmの高さ、及び約70から80mmの直径を有する。試料チャンバは、約20ミリリットルの容積を有し、第1及び第2の緩衝液チャンバは、約30ミリリットルの容積を有する。小容積の水チャンバは、約500マイクロリットルの容積を有し、試料処理チャンバは、約2ミリリットルの容積及び約5mmの直径を有する。前処理チャンネル及び廃棄物チャンネルは各々、約3mmの直径を有する。本体内のデッドスペースによって形成された廃棄物チャンバは、約120ミリリットルの容積を有する。流体連通チャンネルは、形状決めされたベース板をチャンバの下面に超音波溶接することによって形成される。これらのチャンネルは、約1mmの直径を有する。チャンネルが試料リザーバから離れる箇所において、この直径は、望ましくない流体の流れがチャンバから試料処理チャンバ内に流入することを防止するために、約0.6mmまで小さくされる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】装置を側方から見た斜視図である。
【図2】装置を下方から見た斜視図である。
【図3】内部チャンバを見ることができるように天板を除去した装置を上方から見た斜視図である。
【図4】装置のベース板の内部を示す図である。
【図5A】PCR用の流体試料を処理するための装置の使用方法における第1の工程を示す、図5Bの線A−Aにおける装置の断面図である。
【図5B】装置の底面図である。
【図6A】PCR用の流体試料を処理するための装置の使用方法における第2の工程を示す、図6Bの線B−Bにおける装置の断面図である。
【図6B】装置の底面図である。
【図7A】PCR用の流体試料を処理するための装置の使用方法における第3の工程を示す、図7Bの線C−Cにおける装置の断面図である。
【図7B】装置の底面図である。
【図8A】PCR用の流体試料を処理するための装置の使用方法における第4の工程を示す、図8Bの線D−Dにおける装置の断面図である。
【図8B】装置の底面図である。
【図9A】PCR用の流体試料を処理するための装置の使用方法における第5の工程を示す、図9Bの線E−Eにおける装置の断面図である。
【図9B】装置の底面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体試料を処理するための装置であって、
流体入口及び流体出口を有する試料処理チャンバと、
前記試料処理チャンバの下流にあり、前記試料処理チャンバの流体出口と流体連通する廃棄物チャンバと、を有し、前記試料処理チャンバの流体出口と前記廃棄物チャンバとの間の流体連通部に分岐検体流路が配置され、
更に、前記試料処理チャンバの上流にある少なくとも2つの更なるチャンバを有し、前記少なくとも2つの更なるチャンバは両方とも、前記試料処理チャンバの流体入口と流体連通し、
更に、正圧又は負圧を所望の流路に適用することによって、流体を、前記少なくとも2つの更なるチャンバの各々から前記試料処理チャンバを通して前記廃棄物チャンバ又は前記分岐検体流路の中に移動させるための手段と、
流体の流れを制限するための消極的手段と、を有することを特徴とする装置。
【請求項2】
流体を前記少なくとも2つの更なるチャンバのうちの少なくとも1つから前記試料処理チャンバを通して移動させるための前記手段は、真空を発生させるための手段を有する、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記廃棄物チャンバは、前記真空を発生させるための手段に接続した出口ポートを有する、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記分岐検体流路は、前記真空を発生させるための手段に接続した出口ポートを有する、請求項2に記載の装置。
【請求項5】
流体を前記少なくとも2つの更なるチャンバのうちの少なくとも1つから試料処理チャンバを通して移動させるための前記手段は、流体を前記更なるチャンバのうちの前記少なくとも1つから放出させるように押し下げることができるプランジャを有する、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
流体を前記2つの更なるチャンバの少なくとも一方から前記試料処理チャンバを通して移動させるための前記手段は、更に、真空を発生させるための手段を有する、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
流体を前記2つの更なるチャンバの各々から試料処理チャンバを通して移動させるための前記手段は、流体を前記少なくとも2つの更なるチャンバのうちの第1のチャンバから前記試料処理チャンバを通して前記廃棄物チャンバ内に移動させ、それに引き続いて、流体を前記少なくとも2つの更なるチャンバのうちの第2のチャンバから前記試料処理チャンバを通して前記廃棄物チャンバ内又は前記分岐検体流路内のいずれかに移動させる、請求項1〜6のいずれか1項に記載の装置。
【請求項8】
前記流体の流れを制限するための消極的手段は、前記試料処理チャンバと前記廃棄物チャンバとの間の前記流体連通部に配置されたバルブを有する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の装置。
【請求項9】
前記バルブは、前記分岐検体流路の下流にある、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記バルブは、正圧又は負圧を適用することによって開放されるビードを有する、請求項8に記載の装置。
【請求項11】
前記流体の流れを制限するための消極的手段は、前記少なくとも2つの更なるチャンバのうちの少なくとも1つと前記試料処理チャンバとの間の流体連通部に配置されたリザーバを有する、請求項1〜10のいずれか1項に記載の装置。
【請求項12】
前記流体の流れを制限するための消極的手段は、前記少なくとも2つの更なるチャンバのうちの少なくとも1つと前記試料処理チャンバとの間の前記流体連通部に配置された小直径の流路を有し、その結果、流体は、正圧又は負圧を適用することなしに前記流路内を流れることができない、請求項1〜11のいずれか1項に記載の装置。
【請求項13】
前記分岐検体流路の下流にあり、前記分岐検体流路の出口と流体連通した回収チャンバを有する、請求項1〜請求項12のいずれか1項に記載の装置。
【請求項14】
前記回収チャンバは、試薬を有し、この試薬は、好ましくは、1つ又は2つ以上の核酸増幅試薬を含み、より好ましくは、核酸プライマー、核酸プローブ、蛍光染料、酵素緩衝液、ヌクレオチド、マグネシウム塩、ウシ血清アルブミン、及び変性剤から成るグループから選択される試薬を含む、請求項13に記載の装置。
【請求項15】
前記回収チャンバは、真空を発生させるための手段に選択的に接続される出口ポートを有する、請求項13に記載の装置。
【請求項16】
更に、前記回収チャンバの下流にあり、前記回収チャンバの出口と流体連通する後処理チャンバを有し、この後処理チャンバは、それ自体、真空を発生させるための手段と接続される出口を選択的に有する、請求項15に記載の装置。
【請求項17】
前記試料処理チャンバは、能動部材を有し、この能動部材は、好ましくは、微小流体チップ、固体相物質、フィルタ、フィルタスタック、親和性マトリックス、磁気分離マトリックス、サイズ排除コラム、毛細管、及びそれらの混合物から成るグループから選択される捕捉部材を有する、請求項1〜16のいずれか1項に記載の装置。
【請求項18】
前記試料処理チャンバは、グラスファイバフィルタ膜を有する、請求項17に記載の装置。
【請求項19】
前記少なくとも2つの更なるチャンバのうちの少なくとも1つは、緩衝溶液で予備充填され、緩衝溶液は、好ましくは、酢酸カリウムと3塩酸塩の水溶液、又は酢酸カリウムと3塩酸塩の水性エタノール溶液から成るグループから選択される、請求項1〜18のいずれか1項に記載の装置。
【請求項20】
前記少なくとも2つの更なるチャンバのうちの少なくとも1つは、試料を装置内に導入する入口ポートを有する試料チャンバとして作用する、請求項1〜19のいずれか1項に記載の装置。
【請求項21】
前記試料チャンバの入口ポートは、フィルタ膜を有する、請求項20に記載の装置。
【請求項22】
前記試料チャンバは、試薬を有し、この試薬は、好ましくは、溶解試薬を含み、より好ましくはカオトロピック塩を含む、請求項20又は21に記載の装置。
【請求項23】
更に、装置の本体の外部に位置する少なくとも1つのチャンバを含む、請求項1〜22のいずれか1項に記載の装置。
【請求項24】
装置の本体の外部に位置する前記チャンバは、前記回収チャンバである、請求項23に記載の装置。
【請求項25】
装置の本体の外部に位置する前記チャンバは、前記少なくとも2つの更なるチャンバのうちの少なくとも1つである、請求項23に記載の装置。
【請求項26】
装置の本体の外部に位置する少なくとも1つのチャンバは、導電性ポリマーでコーティングされた壁を有する、請求項23に記載の装置。
【請求項27】
流体試料を処理する方法であって、
請求項1に記載の装置の試料処理チャンバ内に試料を配置する工程と、
正圧又は負圧を適用し、流体を前記装置の中を通して移動させる工程と、
試料に1つ又は2つ以上の処理を施す工程と、
処理した試料を前記分岐検体流路から回収する工程と、を有することを特徴とする方法。
【請求項28】
流体試料からの核酸物質の精製及び濃縮のための請求項1に記載の装置の使用。
【請求項29】
前記核酸物質は、次にポリメラーゼ連鎖反応増幅を受けることを特徴とする請求項28に記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図6A】
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【図7A】
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【図8A】
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【図9A】
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【公表番号】特表2006−508343(P2006−508343A)
【公表日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−554704(P2004−554704)
【出願日】平成15年11月28日(2003.11.28)
【国際出願番号】PCT/GB2003/005173
【国際公開番号】WO2004/047992
【国際公開日】平成16年6月10日(2004.6.10)
【出願人】(390040604)イギリス国 (58)
【氏名又は名称原語表記】THE SECRETARY OF STATE FOR DEFENCE IN HER BRITANNIC MAJESTY’S GOVERNMENT OF THE UNETED KINGDOM OF GREAT BRITAIN AND NORTHERN IRELAND
【Fターム(参考)】