流体輸送用可撓管および流体輸送用可撓管の製造方法
【課題】 可撓性に優れ、軽量であり、軸力補強層の強度低下のない長期信頼性に優れる流体輸送用可撓管および流体輸送用可撓管の製造方法を提供する。
【解決手段】 インターロック管3の外周側には、樹脂層5が設けられる。樹脂層5の外周には、耐内圧補強層9が設けられる。耐内圧補強層9の外周には、軸力補強層10が設けられる。軸力補強層10を構成する補強条は、繊維補強プラスチック製である。軸力補強層10の外周には、遮水層11が設けられる。遮水層11は、複層テープが巻き付けられて形成される。遮水層11は、外部から侵入した水が、内部の軸力補強層10に透過することを防止する。遮水層11の外周には保護層13が設けられる。複層テープ17は、金属層19、樹脂被覆部21により構成される。金属層19は、樹脂被覆部21に挟み込まれる。金属層19は断面において波形状を有する。
【解決手段】 インターロック管3の外周側には、樹脂層5が設けられる。樹脂層5の外周には、耐内圧補強層9が設けられる。耐内圧補強層9の外周には、軸力補強層10が設けられる。軸力補強層10を構成する補強条は、繊維補強プラスチック製である。軸力補強層10の外周には、遮水層11が設けられる。遮水層11は、複層テープが巻き付けられて形成される。遮水層11は、外部から侵入した水が、内部の軸力補強層10に透過することを防止する。遮水層11の外周には保護層13が設けられる。複層テープ17は、金属層19、樹脂被覆部21により構成される。金属層19は、樹脂被覆部21に挟み込まれる。金属層19は断面において波形状を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海底油ガス田等から産出した油やガスを輸送するための流体輸送用可撓管および流体輸送用可撓管の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、海底油ガス田から産出する高圧の油やガスは、流体輸送用可撓管によって浮遊式石油生産設備まで輸送される。可撓管には、耐内圧特性や液密性、防水性等が要求されている。
【0003】
このような流体輸送用可撓管としては、例えば、最内層に、可撓性に優れ、耐外圧および敷設時の耐側圧補強に優れるステンレス製のインターロック管を用い、その外周部に、耐油ガス性に優れ、液密性に優れるプラスチック内管が設けられ、さらにその外周に耐内圧補強としての金属製内圧補強層および軸方向補強としての金属製軸力補強層が設けられ、最外層に防水層としてのプラスチックシースが設けられる(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−156285号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1のような可撓性流体輸送管には、軸方向補強として金属製軸力補強層が設けられるが、より深い海底から油ガスを汲み上げる場合には、より長さの長い可撓性流体輸送管を用いる必要がある。このため、輸送管全体の重量が増加する。したがって、この重量にも耐えうるような軸力補強が必要となる。このようなより高い軸力補強を得るためには、より強度の高い金属を用いるか、軸力補強層の厚みを厚くする必要がある。
【0006】
しかし、高強度の金属を用いることはコスト増につながり、軸力補強層の厚みを厚くしたのでは、ますます輸送管の重量増につながる。このため、より軽量かつ高強度な軸力補強手段が望まれている。
【0007】
これに対し、補強条を繊維補強プラスチック(FRP)等の樹脂で構成して、必要な軸力と軽量化を達成する方法がある。樹脂製の補強条を用いることで、金属製の従来の補強条と比較して軽量化を達成でき、さらに防食が不要となるため、大きな軽量化効果を期待できる。
【0008】
しかし、発明者らは、樹脂製の補強条であっても、保護層を透過する水分によって、その強度が低下することを見出した。すなわち、軽量であり。補強条(軸力補強層)の強度低下が無く、長期信頼性に優れる流体輸送用可撓管が望まれる。
【0009】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、可撓性に優れ、軽量であり、軸力補強層の強度低下のない長期信頼性に優れる流体輸送用可撓管および流体輸送用可撓管の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前述した目的を達成するため、第1の発明は、前記インターロック管の外周側に設けられた樹脂層と、前記樹脂層の外周側に設けられた耐内圧補強層と、前記耐内圧補強層の外周側に設けられた軸力補強層と、前記軸力補強層の外周側に設けられた遮水層と、前記遮水層の外周側に設けられた保護層と、を少なくとも具備し、前記軸力補強層は繊維強化プラスチック製であり、前記遮水層は、樹脂で金属層を挟み込んだ複層テープにより形成され、前記金属層は、前記複層テープの断面において、少なくとも一部が波形状であり、前記保護層を透過する水により前記軸力補強層を構成する樹脂が劣化することを前記遮水層によって防止可能であることを特徴とする流体輸送用可撓管である。
【0011】
記複層テープの平面において、前記金属層の波形状における波頂部が、前記複層テープの長手方向に対して、所定の角度で形成されており、前記金属層の波形状は、前記複層テープの平面において、異なる2方向に向けて形成され、波形状の山部または谷部が格子状に形成されてもよい。
【0012】
ここで、本発明において、山部又は谷部が格子状位置に形成されるとは、異なる2方向に山部又は谷部が周期的に繰り返して形成され、その結果山部又は谷部の中心が周期構造のそれぞれの格子点位置にくるように配置することをいう。この場合、金属層の厚みが一定ではなく、厚み変化に伴う凹凸の配列も当然に「格子状配置」に含み、いわゆるエンボス形状をも「格子状配置」に含むものである。
【0013】
前記遮水層に用いる樹脂としては、水の透過特性からポリプロピレンやポリエチレン、ブチルゴム、ポリエチレンテレフタレートなどのポリオレフィン系樹脂材料や、四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合体樹脂やポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン、ポリフッ化ビニル、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデンなどのフッ素系樹脂材料がより望ましく、もしくは塩酸ゴム、ポリアミド、エポキシ樹脂、ポリスチレン、スチレン系共重合樹脂、ポリホルムアルデヒド、ポリ塩化ビニル、アセチルセルロース、エチルセルロース、ポリブタジエン、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体、ポリカーボネート、ポリウレタン、クロロスルホン化ポリエチレン、ポリクロロプレン、天然ゴム、シリコンゴム、ポリビニルアルコール等の樹脂材料が望ましい。また、前記樹脂材料に無水マレイン酸等で変性して接着性を向上させることで遮水性能を向上することが可能である。また、本発明では遮水層を設けることにより、軸力補強層の超寿命化させることができる。
【0014】
前記複層テープの長手方向と前記金属層の波形状における波頂部とのなす角度は、前記流体輸送用可撓管の周方向に対する前記複層テープの巻き付け角度と略一致し、前記複層テープが巻き付けられた状態で、前記波頂部の延伸方向が前記流体輸送用可撓管の周方向と略一致することが望ましい。
【0015】
また、保護層を構成する樹脂としては、ポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂(ポリアミド11、ポリアミド12等)を使用することができるが、前記複層テープの樹脂部は、前記保護層と相溶性を有し、前記保護層よりも低融点の樹脂製であってもよい。または、前記複層テープの少なくとも表面は、ゴム材料で構成され、前記ゴム材料が前記保護層と密着してもよい。
【0016】
前記複層テープは、幅方向の端部同士が互いにラップしないように前記流体輸送用可撓管に対して螺旋状に巻き付けられ、内層側の前記複層テープ同士の隙間を覆うように、前記複層テープを2層以上巻き付けてもよく、前記複層テープは、前記複層テープの幅方向端部が互いにラップするように前記流体輸送用可撓管に対して、螺旋状に巻き付けられてもよい。
【0017】
また、前記複層テープの長手方向が前記流体輸送用可撓管の軸方向と略一致し、前記複層テープの幅方向が前記流体輸送用可撓管の周方向となるように巻き付けられ、前記複層テープのラップ部が、前記流体輸送用可撓管の軸方向に延伸するように形成されてもよい。
【0018】
第1の発明によれば、補強条が繊維補強プラスチック製であるため、必要な軸力を確保することができるとともに、金属製の補強条と比較して軽量化を達成することができる。また、軸力補強層と保護層との間に遮水層が設けられ、遮水層が金属フィルムを樹脂フィルムで挟み込んだ積層フィルムで構成される。このため、外部からの水分の浸入を確実に遮蔽することができる。したがって、水分による補強条の強度劣化がない。
【0019】
また、金属層が樹脂に挟み込まれているため、遮水層構築時に金属層が破れたり折れ曲がったりすることがない。このため、確実に遮水層を構築することができる。さらに、金属層によって、内部の補強層を傷つけることがなく、金属層の磨耗や疲労による強度低下や、補強層の強度低下を防止することができる。
【0020】
また、金属層が複層テープの断面において波形状を有するため、複層テープが巻き付けられた状態において、複層テープ(金属層)が波形状方向に変形可能である。このため、複層テープが巻き付けられた状態で、複層テープが、流体輸送用可撓管の可撓性に対し、変形の妨げとなることを抑制することができる。
【0021】
また、金属層の波形状が、複層テープの平面において、異なる2方向に向けて形成され、波形状の山部または谷部が格子状に形成されれば、複層テープが、流体輸送用可撓管の可撓性に対し、いずれの方向の変形にも追従することができる。
【0022】
また、金属層の波形状の波頂部が複層テープの長手方向に対して所定角度で形成され、複層テープの長手方向と金属層の波形状における波頂部とのなす角度と、流体輸送用可撓管の周方向に対する複層テープの巻き付け角度とを略一致させることで、複層テープが巻き付けられた状態における波頂部の延伸方向を、流体輸送用可撓管の周方向と略一致させることができる。その結果、波形状の進行方向を管軸方向とすることが可能となる。このため、流体輸送用可撓管の曲げ時の変形方向(流体輸送用可撓管の軸方向)に対して複層テープ(金属層)が大きな変形能を有し、高い可撓性を確保することができる。また、変形時の管軸方向の応力を波形状により緩和できるので、複層テープの疲労寿命も向上する。
【0023】
また、保護層を構成する樹脂としては、ポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂(ポリアミド11、ポリアミド12等)を使用することができるが、遮水層を構築する樹脂が、保護層と相溶性を有し、保護層よりも融点の低い材質が用いられれば、保護層を押出し被覆する際に、保護層と当該樹脂部とが熱融着により一体化され、曲げ、ねじりの機械履歴に対してもズレの心配がない。
【0024】
また、複層テープの表面と保護層を接着することもできるが、複層テープの少なくとも表面が、ゴム材料で構成され、ゴム材料と保護層とを密着させることで、複層テープと保護層との間の接着が不要となる。したがって、長期間にわたる当該可撓管の使用時に、接着剤が劣化して、複層テープと保護層との間に隙間が形成されることを防止することができる。
【0025】
なお、金属層はステンレス、アルミニウム、クラッド鋼など表面耐食性に優れる材質を用いることで、高い長期耐久性を得ることができる。
【0026】
第2の発明は、可撓性を有するインターロック管を管軸方向に送り、前記インターロック管の外周側に樹脂層を形成し、前記樹脂層の外周側に耐内圧補強層を設け、前記耐内圧補強層の外周部に軸力補強層を形成し、前記軸力補強層の外周側に遮水層を形成し、前記遮水層の外周に保護層が押出被覆される流体輸送用可撓管の製造方法であって、前記遮水層は、樹脂で金属層を挟み込んだ複層テープにより形成され、前記金属層は、前記複層テープの断面において、少なくとも一部が波形状であり、前記複層テープの平面において、前記金属層の波形状における波頂部の形成方向が、前記複層テープの長手方向に対して、所定の角度で形成されており、前記複層テープの長手方向と前記金属層の波形状における波頂部の形成方向とのなす角度を、前記流体輸送用可撓管の周方向に対する前記複層テープの巻き付け角度と略一致させて、前記波頂部の延伸方向が前記流体輸送用可撓管の周方向と略一致するように前記複層テープを巻き付けることで前記遮水層を形成することを特徴とする流体輸送用可撓管の製造方法である。
【0027】
前記金属層の波形状は、前記複層テープの平面において、異なる2方向に向けて形成され、波形状の山部または谷部が格子状に形成されることが望ましい。
【0028】
前記複層テープは、幅方向の端部同士が互いにラップしないように前記流体輸送用可撓管に対して螺旋状に巻き付けられ、内層側の前記複層テープ同士の隙間を覆うように、前記複層テープを2層以上巻き付けてもよい。
【0029】
前記複層テープは、前記複層テープの幅方向端部が互いにラップするように前記流体輸送用可撓管に対して、螺旋状に巻き付けてもよい。
【0030】
前記複層テープの長手方向が前記流体輸送用可撓管の軸方向と略一致し、前記複層テープの幅方向が前記流体輸送用可撓管の周方向となるように巻き付けられ、前記複層テープのラップ部を、前記流体輸送用可撓管の軸方向に延伸してもよい。
【0031】
第2の発明によれば、補強条を樹脂で形成するため、軽量な流体輸送用可撓管を得ることができる。また、保護層の内周側に金属層を樹脂で挟み込んだ複層テープによる遮水層が設けられるため、外部からの水分の浸入を確実に防止できる。また、金属層が複層テープの断面において波形状を有するため、複層テープが巻き付けられた状態において、複層テープ(金属層)が波形状方向に伸縮変形可能である。
【0032】
さらに、金属層の波形状の波頂部が複層テープの長手方向に対して所定角度で形成され、複層テープの長手方向と金属層の波形状における波頂部とのなす角度と、流体輸送用可撓管の周方向に対する複層テープの巻き付け角度とが略一致するため、複層テープが巻き付けられた状態における波頂部の延伸方向が、流体輸送用可撓管の周方向と略一致し、流体輸送用可撓管の曲げ時の変形方向(流体輸送用可撓管の軸方向)に対して複層テープ(金属層)が追従可能な高い可撓性を確保することができる。
【0033】
また、複層テープを互いの幅方向端部がラップしないように螺旋状に複数層巻き付けて、上下層のそれぞれの複層テープの隙間が互いに埋め合うように巻き付ければ、確実に水の浸入を防ぐことができる。このとき、複層テープの巻きの方向は、同一方向に螺旋状に巻き付けても良いし、反対方向に螺旋状に巻き付けても良い。このようにすれば、螺旋状に巻き付けたテープの隙間をほぼ埋め合わせることができる。
【0034】
また、複層テープを互いの幅方向端部がラップするように螺旋状に巻き付ければ、ラップ部を形成することで確実に水の浸入を防ぐことができる。
【0035】
また、複層テープの長手方向が流体輸送用可撓管の軸方向と略一致し、複層テープの幅方向が流体輸送用可撓管の周方向となるように巻き付けて、周方向に巻き付けた巻き付け部の先端を相互にラップさせることで、確実に水の浸入を防ぐことができる。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、可撓性に優れ、軽量であり、軸力補強層の強度低下のない長期信頼性に優れる流体輸送用可撓管および流体輸送用可撓管の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】可撓管1を示す図であり、(a)は斜視図、(b)は断面図。
【図2】複層テープ17の構成を示す図であり、(a)は斜視図、(b)は断面図であり、(a)のA方向矢視図。
【図3】複層テープ17の波頂部の配置を示す図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のB−B線断面図、(c)は(a)のC−C線断面図、(d)は(a)のD−D線断面図。
【図4】複層テープ17の巻き付け方法を示す図で(a)は全体図、(b)は(a)のE部拡大図。
【図5】複層テープ17を螺旋状に巻き付けた巻き付け状態を示す図。
【図6】複層テープ17aの構成を示す図。
【図7】複層テープ17を縦巻きした巻き付け状態を示す図。
【図8】複層テープ17を縦巻きした巻き付け状態を示す図。
【図9】複層テープ17bを示す樹脂被覆層の透視図であり、(a)は斜視図、(b)は平面図。
【図10】複層テープ17の変形状態を示す図。
【図11】遮水層11の効果を示す図。
【図12】複層テープの他の実施形態を示す図。
【図13】可撓管1a、1bを示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下図面に基づいて、本発明の実施形態を詳細に説明する。図1は、可撓管1を示す図であり、図1(a)は斜視図、図1(b)は断面図である。可撓管1は、主に管体であるインターロック管3、樹脂層5、耐内圧補強層9、軸力補強層10、遮水層11、保護層13、座床層15a、15b、15c、15d等から構成される。
【0039】
インターロック管3は、可撓管1の最内層に位置し、外圧に対する座屈強度に優れ、耐食性も良好なステンレス製である。インターロック管3はテープを断面S字形状に成形させてS字部分で互いに噛み合わせて連結されて構成され、可撓性を有する。なお、インターロック管3に代えて、同様の可撓性を有し、座屈強度に優れる管体であれば、他の態様の管体を使用することも可能である。
【0040】
インターロック管3の外周側には、樹脂層5が設けられる。樹脂層5は、インターロック管3内を流れる流体を遮蔽する。樹脂層5としては、例えばナイロンまたは90℃以上の高温にも耐え、耐油性にも優れるポリビニルデンフロライド(PVDF)等が使用できる。
【0041】
なお、インターロック管3の外周側とは、断面におけるインターロック管3の外側であることを意味し、インターロック管3と樹脂層5との間に他の層構造を有することをも含むものである。以下の説明においては、各層の位置関係において、単に「外周」と称するが、同様に、各層間に他の層構造を有するものを含むことは言うまでもない。
【0042】
例えば、インターロック管3と樹脂層5の間には、必要に応じて座床層15aが設けられる。座床層15aは、インターロック管3の外周の凹凸形状を略平らにならすための層であり、インターロック管3の可撓性に追従して変形可能である。すなわち、座床層15aは、例えば不織布のようにある程度の厚みを有し、インターロック管3の外周の凹凸のクッションとしての役割を有する。
【0043】
なお、座床層については、必要に応じて設けられるものであり、以下の説明においては座床層を有する場合について説明するが、必ずしも必要なものではないので省くことができる。したがって、以下の図においては、座床層の図示を省略する。
【0044】
樹脂層5の外周には、耐内圧補強層9が設けられる。耐内圧補強層9は、主にインターロック管3内を流れる流体の内圧に対する補強層である。耐内圧補強層9は、例えば断面C形状または断面Z形状等の金属製のテープが互いに向かい合うように、かつ、互いに軸方向に重なり合うように短ピッチで巻き付けられて形成される。なお、耐内圧補強層9は、上述のように金属テープが所定ピッチで巻き付けられた構成であり、インターロック管3の曲げ変形やねじり変形に追従可能である。
【0045】
耐内圧補強層9の外周には、軸力補強層10が設けられる。軸力補強層10は、主にインターロック管3が可撓管1の軸方向へ変形する(伸びる)ことを抑えるための補強層である。軸力補強層10は、平型断面形状の補強条をロングピッチで(補強条の幅に対して巻付けピッチが十分長くなるように)2層交互巻きして形成される。補強条は、耐内圧補強層の外周において、周方向に複数配列され、ロングピッチで巻きつけられる。軸力補強層10は、インターロック3の可撓性に追従して変形可能である。
【0046】
軸力補強層10を構成する補強条は、繊維補強プラスチック製である。補強条を構成する高強度繊維としては、例えば、太さ0.1mm〜1.0mm程度のアラミド繊維やカーボン繊維等が用いられる。また、補強条を構成するマトリックス樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂が用いられる。
【0047】
なお、必要に応じて、耐内圧補強層9と軸力補強層10の間にポリエチレン製の樹脂テープである座床層15bを設けてもよい。また、互いに逆方向に螺旋状に巻き付けられる2層の補強条の間に、ポリエチレン製の樹脂テープである座床層15cを設けてもよい。座床層に用いる樹脂テープは、強度と耐食性が同等であれば、ポリエチレン以外の樹脂材料を用いても良い。座床層15b、15cは、補強部材同士が可撓管1の変形に追従する際に擦れて、摩耗することを防止するものである。この場合でも、座床層の有無を問わず、耐内圧補強層9の外周側に軸力補強層10が設けられると称する。なお、以後、特に説明がない場合には、耐内圧補強層9と軸力補強層10を総称して補強層と称する。
【0048】
軸力補強層10の外周には、必要に応じて座床層15dが設けられる。座床層15dは、軸力補強層10の外周の凹凸形状を略平らにならすための層であり、インターロック管3の可撓性に追従して変形可能である。なお、座床層15dは座床層15aと同様の構成であるため、説明を省略する。
【0049】
座床層15dの外周には、遮水層11が設けられる。遮水層11は、複層テープが巻き付けられて形成される。遮水層11は、外部から侵入した水が、内部の軸力補強層10に透過することを防止する。なお、複層テープの構成及び巻付け方法については後述する。
【0050】
遮水層11の外周には保護層13が設けられる。保護層13は、内部の各層を保護する為のものである。保護層13は、例えばナイロン製、ポリエチレン製、ポリアリレート樹脂やポリアミド系合成樹脂製の非架橋樹脂が使用できる。以上のように、可撓管1を構成する各層は、それぞれ可撓管1の曲げ変形やねじり変形に追従し、可撓性を有する。
【0051】
なお、可撓管1は、以下のように製造される。あらかじめ製造されたインターロック管3が軸方向に送られて、必要に応じてインターロック管3に座床テープが巻き付けられ、座床層15aが形成される。座床層15aが形成されたインターロック管3は、押出機に送られ、押出機によって、外周部に樹脂が押し出され、樹脂層5が形成される。
【0052】
さらに、樹脂層5の外周側に、補強テープ巻き機により補強層が形成される。さらに複層テープ供給機から、あらかじめ製造された複層テープが供給される。なお、複層テープは、螺旋巻きされるか、または、複層テープの長手方向がインターロック管3の軸方向と略同方向になるように供給され、フォーミング機内でフォーミングされ、縦巻きされる。以上により遮水層11が形成される。なお、複層テープの供給機からの送り速度は、インターロック管3の押出速度に、螺旋巻きも軸方向に縦巻きの場合も、管が静止していると考えた場合の巻き付け速度を重畳した速度で送り出す必要がある。
【0053】
さらに最外周部に押出機によって保護層13が形成され、所定長さに巻き取られる。以上により、可撓管1が製造される。
【0054】
次に、遮水層11を構成する複層テープ17について説明する。図2は複層テープ17を示す図であり、図2(a)は斜視図、図2(b)は図2(a)のA方向矢視図であり、複層テープ17の断面図である。複層テープ17は、金属層19、樹脂被覆部21により構成される。金属層19は、樹脂被覆部21に挟み込まれる。
【0055】
金属層19は、フィルム上に薄く加工が容易であるものであり、耐食性に優れるものであれば良い。たとえば、ステンレス、アルミニウム、外面に耐食性の良い材質でクラッドしたクラッド鋼等が使用できる。なお、金属層19は例えば0.05mm程度の厚さであり、複層テープ17全体としては、例えば0.2〜0.3mm程度であればよい。
【0056】
樹脂被覆部21は、樹脂製の部材であり、遮水層11の構築時に、金属層19の折れ曲がりや破れ、しわなどの発生を防止できる。樹脂被覆部21の材質については後述する。
【0057】
図2(b)に示すように、金属層19は断面において波形状を有する。このような金属層19は、波形の金属フィルムに樹脂を押し出し被覆してもよい、または対応する金型に設置して樹脂を射出により一体化させてもよい。または、それぞれ別々に形成された、対応する波形形状を有する樹脂部材と金属フィルムとを接着や圧着など公知の技術で一体化したものでもよい。また、あらかじめ表面が波形に形成された樹脂部材に、金属層を蒸着等により形成することもできる。
【0058】
ここで、金属層19は、山部と谷部とを有する波形状を有するが、山部(または谷部)の頂部を波頂部23と称する。すなわち、図2(b)に示す断面例では、山部側(上方)の波頂部23が5か所存在することとなる。
【0059】
図3(a)は、複層テープ17の平面図であり、図3(b)は図3(a)のB−B線断面図、図3(c)は図3(a)のC−C線断面図、図3(d)は図3(a)のD−D線断面図を示す図である。図中の点線は、波頂部23の位置を表す。波頂部23は、複層テープ17の長手方向に対して、所定の角度で連続して形成される。すなわち、図3(a)の例では、波頂部23は、複層テープ17の長手方向に対して角度Kだけ斜めに形成される。
【0060】
したがって、断面位置によって波形状が異なり、例えば、図3(b)の左端の波頂部23は、図3(c)、図3(d)に行くにつれて、図中右方向にずれながら連続して形成される。
【0061】
次に、複層テープ17の巻き付け方法について説明する。図4(a)は、複層テープ17を軸力補強層10(座床層15d)の外周に螺旋巻きする方法を示す図であり、図4(b)は図4(a)のE部拡大図である。複層テープ17は、例えば、図4(a)に示すように、螺旋状(図中矢印F方向)に巻き付けられる。たとえば、補強条(座床テープ)を供給して軸力補強層10(座床層15d)を形成後、複層テープ17が供給されて巻き付けられる。
【0062】
図5は、軸力補強層10の外周に複層テープ17が巻き付けられた状態を示す軸方向の断面図である。図5(a)に示すように、複層テープ17は、複層テープ17の幅方向端部が互いに重なり合わないように(ラップしないように)わずかな隙間をあけて軸力補強層10の外周に巻き付けられ、さらにその外周に、下層(内層)の複層テープ17の隙間を覆うように、巻き付け位置をずらして上層(外層)に複層テープ17を同様の方法で巻き付けてもよい。複層テープの巻き付けは、下層(内層)のテープと上層(外層)のテープを互いに反対方向に巻き付ける方が、巻き付け時のインターロック管にかかる張力がバランスするので、巻き付けやすいので好ましい。
【0063】
また、図5(b)に示すように、複層テープ17を、複層テープ17の幅方向端部が互いに重なり合うようにラップさせて巻き付けてもよい。図5のいずれの方法で巻き付けても、遮水層において複層テープ17を隙間なく巻き付けることができる。なお、複層テープ17と座床層15dと接着、融着などにより一体化してもよい。
【0064】
なお、遮水層11を構成する樹脂被覆部21の融点は、保護層13を構成する樹脂の融点よりも低く、樹脂被覆部21を構成する樹脂と、保護層13を構成する樹脂とが相溶性を有してもよい。樹脂被覆部21と保護層13とが相溶性を有し、樹脂被覆部21の融点が保護層13の融点よりも低ければ、保護層13の樹脂を押し出した際に、保護層13と複層テープ17とを互いに一体化しやすい。このため、保護層13が形成された際に、遮水層11と保護層13との間でずれ等が起こることがない。
【0065】
このような関係を有する材質としては、樹脂被覆部21を例えばナイロン12とし、保護層13をナイロン11とすればよい。あるいは、樹脂被覆部を低密度ポリエチレン(LDPE)、保護層13を高密度ポリエチレン(HDPE)とすればよい。
【0066】
また、樹脂被覆部21(の表面)をゴム材料(例えば、エチレンゴム、エチレンプロピレンゴム、シリコンゴム、ウレタンゴム、ブチルゴムなど)で構成することもできる。このようにすることで、保護層13と樹脂被覆部21(複層テープ17)との摩擦係数が大きくなる。このため、保護層13と複層テープ17とが密着してずれることがない。
【0067】
なお、樹脂被覆部21全体をゴム材料とすると、金属層19との接着性が劣る恐れがある。このため、図6に示すように、樹脂被覆部21を複層としてもよい。すなわち、図6に示す複層テープ17aは、樹脂被覆部21が、金属層19との接着性に優れる樹脂層が内層に設けられ、その外層のみにゴム材料によって、ゴム部21aが形成されてもよい。
【0068】
図4(b)に示すように、可撓管の正面図(または平面図)において、複層テープ17が軸力補強層10(座床層15d)の外周に螺旋状に巻き付けられた状態では、可撓管の軸方向Hと可撓管の周方向Gとは垂直になる。また、可撓管の周方向Gに対して、複層テープ17の巻き付け方向Iとのなす角度をJとする。また、前述の通り、複層テープ17の長手方向Iと波頂部23とのなす角度はKとする。ここで、複層テープ17の巻き付け方向Iは、複層テープ17の長手方向と一致する。
【0069】
したがって、複層テープ17の巻き付け方向Iと可撓管の周方向Gとのなす角度Jと、複層テープ17の長手方向Iと波頂部23とのなす角度はKとを略一致させることにより、波頂部23の形成される方向(延伸方向)は、可撓管の周方向Gと略一致する。すなわち、複層テープ17の巻き付け角度(J)を予め設定し、平面図において、これに対応した角度(K)で傾斜した波頂部を有する複層テープ17を用いることで、波頂部23の延伸方向を流体輸送用可撓管の周方向と略一致させることができる。
【0070】
ここで、巻き付け方向Iと可撓管の周方向Gとのなす角度(J)と、複層テープ17の長手方向Iと波頂部23とのなす角度(K)とが、多少のずれを生ずる場合について考察する。例えば、複層テープの巻き付け部の外径をDとすると、テープが完全に周方向に平行でない場合の巻き付け1回転あたり軸方向のズレは、D・π・tan(J−K)と表される。ここで、例えば、複層テープの巻き付け部の外径Dを、150Φとすると、J−Kが5°の場合には、tan5°=0.087で、テープの巻き方向に約41mmずれることになり、半回転あたりのズレは、約20mmになる。従って、好ましくは、角度のズレは、5°以下が好ましい。また、ズレ角を2.5°とするズレ量が上記の約半分になるので、更に好ましい。
【0071】
図7は、複層テープ17を軸力補強層10(座床層15d)が形成されたインターロック管3に縦巻きで巻き付ける際のフォーミング工程を示す他の実施形態を示す図である。複層テープ17は、図7(a)に示すように、縦巻きされてもよい。この場合、複層テープ17は、複層テープ17の長手方向がインターロック管3の軸方向に略同一の方向になるようにインターロック管3へ送られる。この際、複層テープ17の両側は、インターロック管3(軸力補強層10)全体を包むようにU字状に曲げられる。
【0072】
さらに、複層テープ17によってインターロック管3(軸力補強層10)が包みこまれる。すなわち、複層テープ17の両側端部同士を軸力補強層10の外周部でラップさせ、複層テープ17で軸力補強層10を包みこむ。すなわち、ラップ部25がインターロック管3の軸方向に沿って形成される。以上のようにして、複層テープ17が軸力補強層10(座床層15d)に縦巻きで巻き付けられ、遮水層11が形成されてもよい。
【0073】
図8は、図4に対応する図であり、図8(a)は複層テープ17が軸力補強層10(座床層15d)の外周に縦巻きされた状態を示す図であり、図8(b)は図4(b)に対応する拡大図である。図8(a)に示すように、ラップ部25は、可撓管の軸方向(図中矢印L方向)に延伸するように形成される。
【0074】
この際、図8(b)に示すように、可撓管の軸方向Hと可撓管の周方向Gとは垂直になる。また、複層テープ17の長手方向Iと可撓管の軸方向Hとは一致する。したがって、可撓管の周方向Gと可撓管の軸方向Hとのなす角度をJとすると、Jは略90度となる。また、前述の通り、複層テープ17の長手方向Iと波頂部23とのなす角度Kも同様に90°である。
【0075】
したがって、縦巻きの場合であっても、複層テープ17の巻き付け方向Iに対する可撓管の周方向Gの角度J(90°)と、複層テープ17の長手方向Iと波頂部23とのなす角度はK(90°)とを略一致させることで、波頂部23の延伸方向を流体輸送用可撓管の周方向と略一致させることができる。
【0076】
図9は他の複層テープ17bを示す図であり、図9(a)は複層テープ17bの斜視図(樹脂被覆部21透視図)、図9(b)は金属層19の平面概念図である。本発明では、図9に示すような複層テープ17bを用いてもよい。複層テープ17bは、複層テープ17と略同様の構成であるが、金属層19の形態が異なる。
【0077】
前述の通り、複層テープ17では、波頂部23が、連続して形成される。すなわち、図3に示すように、複層テープ17は一方向に波形状が形成され、波頂部23に沿った方向での断面では、波形状とはならない。これに対し、複層テープ17bは、少なくとも異なる2方向(図9(b)のS方向およびT方向)に対して波形状が形成される。したがって、山部27と谷部29(波頂部)が格子状に形成される。なお、図9(b)のR−R線断面図は、複層テープ17(図2(b))と同様となる。
【0078】
このような複層テープ17bとしては、図9に示すようなエンボス加工が施された金属フィルムに樹脂を押し出し被覆してもよい、または対応する金型に設置して樹脂を射出により一体化させてもよい。または、それぞれ別々に形成された、対応する凹凸形状を有する樹脂部材と金属フィルムとを接着や圧着など公知の技術で一体化したものでもよい。また、あらかじめ表面がエンボス形状に形成された樹脂部材に、金属層を蒸着により形成することもできる。
【0079】
このような複層テープ17bが、軸力補強層10(座床層15d)の外周に、図4または図7に示したいずれかの方法で巻き付けられて、遮水層11が形成される。なお、複層テープ17bについても、前述したような波頂部の並列方向(例えば図9(b)のS方向またはT方向)と複層テープ17bの巻き付け角度とを合わせてもよい。また、複層テープ17bは、いずれの方向に対しても変形が可能である。このため、巻き付け角度と波頂部の並列方向(図9(b)のS方向またはT方向)とを完全に一致させなくても、十分な可撓性を得ることができる。
【0080】
次に、可撓管1の変形時における複層テープ17の機能について説明する。図10は、可撓管1を変形させた状態を示す図である。図10(a)に示すように、可撓管1を曲げ変形させると(図中矢印M方向)、可撓管1の曲げ外周側(図中N部)では引張変形となる。
【0081】
図10(b)は、図10(a)のN部における、複層テープ17の状態を示す模式図である。なお、図10(b)は、例えば、複層テープ17が螺旋巻きされた状態を示す図である。可撓管1が曲げ変形し、局部的に引張変形が生じると、当該部位に巻き付けられる複層テープ17も幅方向に引張変形が生じて、可撓管1の曲げに追従しようとする(図中矢印Q方向)。この際、樹脂被覆部21は、樹脂の弾性変形能によって容易に追従変形可能である。
【0082】
一方、金属層19は、波形状であるため波の伸縮によって、容易に変形に追従可能である。特に、波頂部23が可撓管1の周方向に延伸するように形成されるため、波形状による伸縮変形方向は、可撓管1の軸方向に対応する。このため、可撓管1の曲げ変形に対して、複層テープ17(遮水層11)は容易に追従して変形することができる。すなわち、金属層19を有する複層テープ17の巻き付けが、可撓管1の可撓性(変形)の妨げにならない。
【0083】
次に、遮水層11の機能について説明する。図11は、可撓管1の断面を示す図であり、図11(a)は軸方向の断面図、図11(b)は、遮水層11を構成する複層テープ17の拡大図である。前述の通り、可撓管1は、例えば通常海中に沈めて、または浮かべて使用される。したがって、保護層13は常に海水と接触する。保護層13は樹脂製であるため、ある程度の防水性は有しているが、樹脂自体がわずかながらの吸水性を有する。このため、保護層13内にも海水成分がわずかながら浸透する。特に、海底においては高い水圧が付与され、長時間の使用に際しては、保護層13内への海水成分の浸透の恐れが大きい(図中矢印O方向)。
【0084】
しかし、本願発明にかかる可撓管1は、保護層13の内周面に遮水層11が設けられる。したがって、図11(b)に示すように、遮水層11は、内部の金属層19が外部からの水の浸入を確実に遮蔽する(図中矢印P方向)。したがって、軸力補強層10を構成する樹脂が水によって劣化することがない。
【0085】
以上説明したように、第1の実施形態にかかる可撓管1によれば、保護層13の外周に遮水層11が設けられるため、外部からの水の浸入によって、補強層が劣化することがない。また、遮水層11が金属層19を樹脂被覆部21で挟み込んだ複層テープ17で構成されるため、外部からの水の管体径方向の流れが、金属層19によって確実に遮蔽され、補強層が劣化することがない。
【0086】
また、金属層19が樹脂被覆部21に挟み込まれているため、遮水層11の構築時に金属層19が破れたり折れ曲がったりすることがなく、確実に遮水層11を構築することができる。さらに、金属層19が直接軸力補強層10に接触しないため、製造時に各層を傷つけることがない。
【0087】
また、金属層19が複層テープ17の断面において波形状を有するため、複層テープ17が巻き付けられた状態において、複層テープ17(金属層19)が波形状方向に容易に伸縮変形可能である。また、金属層19を波形状とすることで、可撓管を曲げた際、金属層19に発生する局所的な応力集中を緩和できる。このため、長期的な繰り返し曲げ疲労特性を向上させることができ、長期信頼性に優れる可撓管を得ることができる。
【0088】
特に、金属層19の波形状の波頂部23が複層テープ17の長手方向に対して所定角度で形成される。また、複層テープ17の長手方向と金属層19の波形状における波頂部23とのなす角度と、可撓管1の周方向に対する複層テープ17の巻き付け角度とを略一致させることで、複層テープ17が巻き付けられた状態における波頂部23の延伸方向を、可撓管1の周方向と略一致させることができる。したがって、可撓管1の曲げ時の変形方向に対して複層テープ17(金属層19)が容易に追従し、高い可撓性を確保することができる。また、金属層19をエンボス形状とすることで、異なるいずれの2つの方向にも波形状が形成される。このため、いずれの方向に対しても変形に追従することができ、複層テープの製造性にも優れる。
【0089】
次に、他の実施の形態について説明する。なお、以下の実施の形態において、図1〜図11に示す可撓管1と同一の機能を果たす構成要素には、図1〜図11と同一番号を付し、重複した説明を避ける。
【0090】
図12は、複層テープの断面における金属層19の形状についての、他の実施形態を示す図である。複層テープの断面における金属層19の形状は、前述した例に限られず、例えば、図12(a)に示す複層テープ30のように、波形状は、金属層19の一部のみに形成されてもよい。この場合でも、波頂部23が、複層テープ30の長手方向に対して所定角度で形成されることで、複層テープ17と同様の効果を奏する。
【0091】
また、例えば、図12(b)に示す複層テープ40のように、波形状は、矩形波であってもよい。また、図12(c)に示す複層テープ50のように、波形状は、三角波であってもよい。この場合でも、波頂部23が、複層テープの長手方向に対して所定角度で形成されることで、複層テープ17と同様の効果を奏することができる。なお、波形状は、これらの実施形態に限られず、伸縮可能な形態であれば良い。また、このような各種波形状は、一方向に形成(複層テープ17と同様)されてもよく、二方向に形成(複層テープ17bと同様)されてもよい。
【0092】
また、図13(a)に示すように、樹脂層5の外周に、遮蔽層7を設けてもよい。遮蔽層7は、インターロック管3内を流れる流体から生じる腐食性ガス(硫化物など)等を遮蔽する。なお、遮蔽層7としては、腐食性ガスの浸透を防止するものであればよく、前述した複層テープを用いることができる。また、遮蔽層7に用いられる複層テープの樹脂被覆部21には、硫化物トラップ材などの金属粒子を含有させてもよい。硫化物トラップ材を含有させる場合には、金属層19を有さず、通常の樹脂のみの樹脂層を用いることもできる。
【0093】
また、同様に、図13(b)に示すように、樹脂層5a、5bを遮蔽層7の両側(内周および外周)に形成してもよい。この場合でも、遮蔽層7によって、硫化水素等が遮蔽されるため、硫化水素等が、補強層へ浸入することを防止することができる。すなわち、樹脂層は遮蔽層7の内周側または外周側の少なくとも一方に形成されれば良い。
【0094】
なお、樹脂層が遮蔽層7の外周側に形成される場合において、遮蔽層7をより安定して機能させるためには、遮蔽層7を構成する複層テープの樹脂被覆部の樹脂として、樹脂層5(5b)を形成する樹脂の融点よりも融点が低く、樹脂層5を形成する樹脂と相溶性を有するものを使用することができる。
【0095】
樹脂被覆部21と樹脂層5(5b)とが相溶性を有し、樹脂被覆部21の融点が低ければ、樹脂層5の樹脂を遮蔽層7の外周側に押し出した際に、樹脂層5(5b)と樹脂被覆部21とが互いに一体化しやすい。このため、樹脂層5(5b)が形成された際、遮蔽層7と樹脂層5(5b)との間でずれや捩れが起こることがなく、可撓管1の曲げ変形の際に、遮蔽層7の一部が破損することがない。
【0096】
このような関係を有する材質としては、樹脂被覆部21を例えばナイロン12とし、樹脂層5(5b)をナイロン11とすればよい。なお、前述の通り、樹脂被覆部21(またはその表面)をゴム材料で構成してもよい。
【0097】
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0098】
1、1a、1b………可撓管
3………インターロック管
5………樹脂層
7………遮蔽層
9………耐内圧補強層
10………軸力補強層
11………遮水層
13………保護層
15a、15b、15c、15d………座床層
17、17a、17b、30、40、50………複層テープ
19………金属層
21………樹脂被覆部
21a………ゴム部
23………波頂部
25………ラップ部
27………山部
29………谷部
【技術分野】
【0001】
本発明は、海底油ガス田等から産出した油やガスを輸送するための流体輸送用可撓管および流体輸送用可撓管の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、海底油ガス田から産出する高圧の油やガスは、流体輸送用可撓管によって浮遊式石油生産設備まで輸送される。可撓管には、耐内圧特性や液密性、防水性等が要求されている。
【0003】
このような流体輸送用可撓管としては、例えば、最内層に、可撓性に優れ、耐外圧および敷設時の耐側圧補強に優れるステンレス製のインターロック管を用い、その外周部に、耐油ガス性に優れ、液密性に優れるプラスチック内管が設けられ、さらにその外周に耐内圧補強としての金属製内圧補強層および軸方向補強としての金属製軸力補強層が設けられ、最外層に防水層としてのプラスチックシースが設けられる(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−156285号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1のような可撓性流体輸送管には、軸方向補強として金属製軸力補強層が設けられるが、より深い海底から油ガスを汲み上げる場合には、より長さの長い可撓性流体輸送管を用いる必要がある。このため、輸送管全体の重量が増加する。したがって、この重量にも耐えうるような軸力補強が必要となる。このようなより高い軸力補強を得るためには、より強度の高い金属を用いるか、軸力補強層の厚みを厚くする必要がある。
【0006】
しかし、高強度の金属を用いることはコスト増につながり、軸力補強層の厚みを厚くしたのでは、ますます輸送管の重量増につながる。このため、より軽量かつ高強度な軸力補強手段が望まれている。
【0007】
これに対し、補強条を繊維補強プラスチック(FRP)等の樹脂で構成して、必要な軸力と軽量化を達成する方法がある。樹脂製の補強条を用いることで、金属製の従来の補強条と比較して軽量化を達成でき、さらに防食が不要となるため、大きな軽量化効果を期待できる。
【0008】
しかし、発明者らは、樹脂製の補強条であっても、保護層を透過する水分によって、その強度が低下することを見出した。すなわち、軽量であり。補強条(軸力補強層)の強度低下が無く、長期信頼性に優れる流体輸送用可撓管が望まれる。
【0009】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、可撓性に優れ、軽量であり、軸力補強層の強度低下のない長期信頼性に優れる流体輸送用可撓管および流体輸送用可撓管の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前述した目的を達成するため、第1の発明は、前記インターロック管の外周側に設けられた樹脂層と、前記樹脂層の外周側に設けられた耐内圧補強層と、前記耐内圧補強層の外周側に設けられた軸力補強層と、前記軸力補強層の外周側に設けられた遮水層と、前記遮水層の外周側に設けられた保護層と、を少なくとも具備し、前記軸力補強層は繊維強化プラスチック製であり、前記遮水層は、樹脂で金属層を挟み込んだ複層テープにより形成され、前記金属層は、前記複層テープの断面において、少なくとも一部が波形状であり、前記保護層を透過する水により前記軸力補強層を構成する樹脂が劣化することを前記遮水層によって防止可能であることを特徴とする流体輸送用可撓管である。
【0011】
記複層テープの平面において、前記金属層の波形状における波頂部が、前記複層テープの長手方向に対して、所定の角度で形成されており、前記金属層の波形状は、前記複層テープの平面において、異なる2方向に向けて形成され、波形状の山部または谷部が格子状に形成されてもよい。
【0012】
ここで、本発明において、山部又は谷部が格子状位置に形成されるとは、異なる2方向に山部又は谷部が周期的に繰り返して形成され、その結果山部又は谷部の中心が周期構造のそれぞれの格子点位置にくるように配置することをいう。この場合、金属層の厚みが一定ではなく、厚み変化に伴う凹凸の配列も当然に「格子状配置」に含み、いわゆるエンボス形状をも「格子状配置」に含むものである。
【0013】
前記遮水層に用いる樹脂としては、水の透過特性からポリプロピレンやポリエチレン、ブチルゴム、ポリエチレンテレフタレートなどのポリオレフィン系樹脂材料や、四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合体樹脂やポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン、ポリフッ化ビニル、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデンなどのフッ素系樹脂材料がより望ましく、もしくは塩酸ゴム、ポリアミド、エポキシ樹脂、ポリスチレン、スチレン系共重合樹脂、ポリホルムアルデヒド、ポリ塩化ビニル、アセチルセルロース、エチルセルロース、ポリブタジエン、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体、ポリカーボネート、ポリウレタン、クロロスルホン化ポリエチレン、ポリクロロプレン、天然ゴム、シリコンゴム、ポリビニルアルコール等の樹脂材料が望ましい。また、前記樹脂材料に無水マレイン酸等で変性して接着性を向上させることで遮水性能を向上することが可能である。また、本発明では遮水層を設けることにより、軸力補強層の超寿命化させることができる。
【0014】
前記複層テープの長手方向と前記金属層の波形状における波頂部とのなす角度は、前記流体輸送用可撓管の周方向に対する前記複層テープの巻き付け角度と略一致し、前記複層テープが巻き付けられた状態で、前記波頂部の延伸方向が前記流体輸送用可撓管の周方向と略一致することが望ましい。
【0015】
また、保護層を構成する樹脂としては、ポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂(ポリアミド11、ポリアミド12等)を使用することができるが、前記複層テープの樹脂部は、前記保護層と相溶性を有し、前記保護層よりも低融点の樹脂製であってもよい。または、前記複層テープの少なくとも表面は、ゴム材料で構成され、前記ゴム材料が前記保護層と密着してもよい。
【0016】
前記複層テープは、幅方向の端部同士が互いにラップしないように前記流体輸送用可撓管に対して螺旋状に巻き付けられ、内層側の前記複層テープ同士の隙間を覆うように、前記複層テープを2層以上巻き付けてもよく、前記複層テープは、前記複層テープの幅方向端部が互いにラップするように前記流体輸送用可撓管に対して、螺旋状に巻き付けられてもよい。
【0017】
また、前記複層テープの長手方向が前記流体輸送用可撓管の軸方向と略一致し、前記複層テープの幅方向が前記流体輸送用可撓管の周方向となるように巻き付けられ、前記複層テープのラップ部が、前記流体輸送用可撓管の軸方向に延伸するように形成されてもよい。
【0018】
第1の発明によれば、補強条が繊維補強プラスチック製であるため、必要な軸力を確保することができるとともに、金属製の補強条と比較して軽量化を達成することができる。また、軸力補強層と保護層との間に遮水層が設けられ、遮水層が金属フィルムを樹脂フィルムで挟み込んだ積層フィルムで構成される。このため、外部からの水分の浸入を確実に遮蔽することができる。したがって、水分による補強条の強度劣化がない。
【0019】
また、金属層が樹脂に挟み込まれているため、遮水層構築時に金属層が破れたり折れ曲がったりすることがない。このため、確実に遮水層を構築することができる。さらに、金属層によって、内部の補強層を傷つけることがなく、金属層の磨耗や疲労による強度低下や、補強層の強度低下を防止することができる。
【0020】
また、金属層が複層テープの断面において波形状を有するため、複層テープが巻き付けられた状態において、複層テープ(金属層)が波形状方向に変形可能である。このため、複層テープが巻き付けられた状態で、複層テープが、流体輸送用可撓管の可撓性に対し、変形の妨げとなることを抑制することができる。
【0021】
また、金属層の波形状が、複層テープの平面において、異なる2方向に向けて形成され、波形状の山部または谷部が格子状に形成されれば、複層テープが、流体輸送用可撓管の可撓性に対し、いずれの方向の変形にも追従することができる。
【0022】
また、金属層の波形状の波頂部が複層テープの長手方向に対して所定角度で形成され、複層テープの長手方向と金属層の波形状における波頂部とのなす角度と、流体輸送用可撓管の周方向に対する複層テープの巻き付け角度とを略一致させることで、複層テープが巻き付けられた状態における波頂部の延伸方向を、流体輸送用可撓管の周方向と略一致させることができる。その結果、波形状の進行方向を管軸方向とすることが可能となる。このため、流体輸送用可撓管の曲げ時の変形方向(流体輸送用可撓管の軸方向)に対して複層テープ(金属層)が大きな変形能を有し、高い可撓性を確保することができる。また、変形時の管軸方向の応力を波形状により緩和できるので、複層テープの疲労寿命も向上する。
【0023】
また、保護層を構成する樹脂としては、ポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂(ポリアミド11、ポリアミド12等)を使用することができるが、遮水層を構築する樹脂が、保護層と相溶性を有し、保護層よりも融点の低い材質が用いられれば、保護層を押出し被覆する際に、保護層と当該樹脂部とが熱融着により一体化され、曲げ、ねじりの機械履歴に対してもズレの心配がない。
【0024】
また、複層テープの表面と保護層を接着することもできるが、複層テープの少なくとも表面が、ゴム材料で構成され、ゴム材料と保護層とを密着させることで、複層テープと保護層との間の接着が不要となる。したがって、長期間にわたる当該可撓管の使用時に、接着剤が劣化して、複層テープと保護層との間に隙間が形成されることを防止することができる。
【0025】
なお、金属層はステンレス、アルミニウム、クラッド鋼など表面耐食性に優れる材質を用いることで、高い長期耐久性を得ることができる。
【0026】
第2の発明は、可撓性を有するインターロック管を管軸方向に送り、前記インターロック管の外周側に樹脂層を形成し、前記樹脂層の外周側に耐内圧補強層を設け、前記耐内圧補強層の外周部に軸力補強層を形成し、前記軸力補強層の外周側に遮水層を形成し、前記遮水層の外周に保護層が押出被覆される流体輸送用可撓管の製造方法であって、前記遮水層は、樹脂で金属層を挟み込んだ複層テープにより形成され、前記金属層は、前記複層テープの断面において、少なくとも一部が波形状であり、前記複層テープの平面において、前記金属層の波形状における波頂部の形成方向が、前記複層テープの長手方向に対して、所定の角度で形成されており、前記複層テープの長手方向と前記金属層の波形状における波頂部の形成方向とのなす角度を、前記流体輸送用可撓管の周方向に対する前記複層テープの巻き付け角度と略一致させて、前記波頂部の延伸方向が前記流体輸送用可撓管の周方向と略一致するように前記複層テープを巻き付けることで前記遮水層を形成することを特徴とする流体輸送用可撓管の製造方法である。
【0027】
前記金属層の波形状は、前記複層テープの平面において、異なる2方向に向けて形成され、波形状の山部または谷部が格子状に形成されることが望ましい。
【0028】
前記複層テープは、幅方向の端部同士が互いにラップしないように前記流体輸送用可撓管に対して螺旋状に巻き付けられ、内層側の前記複層テープ同士の隙間を覆うように、前記複層テープを2層以上巻き付けてもよい。
【0029】
前記複層テープは、前記複層テープの幅方向端部が互いにラップするように前記流体輸送用可撓管に対して、螺旋状に巻き付けてもよい。
【0030】
前記複層テープの長手方向が前記流体輸送用可撓管の軸方向と略一致し、前記複層テープの幅方向が前記流体輸送用可撓管の周方向となるように巻き付けられ、前記複層テープのラップ部を、前記流体輸送用可撓管の軸方向に延伸してもよい。
【0031】
第2の発明によれば、補強条を樹脂で形成するため、軽量な流体輸送用可撓管を得ることができる。また、保護層の内周側に金属層を樹脂で挟み込んだ複層テープによる遮水層が設けられるため、外部からの水分の浸入を確実に防止できる。また、金属層が複層テープの断面において波形状を有するため、複層テープが巻き付けられた状態において、複層テープ(金属層)が波形状方向に伸縮変形可能である。
【0032】
さらに、金属層の波形状の波頂部が複層テープの長手方向に対して所定角度で形成され、複層テープの長手方向と金属層の波形状における波頂部とのなす角度と、流体輸送用可撓管の周方向に対する複層テープの巻き付け角度とが略一致するため、複層テープが巻き付けられた状態における波頂部の延伸方向が、流体輸送用可撓管の周方向と略一致し、流体輸送用可撓管の曲げ時の変形方向(流体輸送用可撓管の軸方向)に対して複層テープ(金属層)が追従可能な高い可撓性を確保することができる。
【0033】
また、複層テープを互いの幅方向端部がラップしないように螺旋状に複数層巻き付けて、上下層のそれぞれの複層テープの隙間が互いに埋め合うように巻き付ければ、確実に水の浸入を防ぐことができる。このとき、複層テープの巻きの方向は、同一方向に螺旋状に巻き付けても良いし、反対方向に螺旋状に巻き付けても良い。このようにすれば、螺旋状に巻き付けたテープの隙間をほぼ埋め合わせることができる。
【0034】
また、複層テープを互いの幅方向端部がラップするように螺旋状に巻き付ければ、ラップ部を形成することで確実に水の浸入を防ぐことができる。
【0035】
また、複層テープの長手方向が流体輸送用可撓管の軸方向と略一致し、複層テープの幅方向が流体輸送用可撓管の周方向となるように巻き付けて、周方向に巻き付けた巻き付け部の先端を相互にラップさせることで、確実に水の浸入を防ぐことができる。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、可撓性に優れ、軽量であり、軸力補強層の強度低下のない長期信頼性に優れる流体輸送用可撓管および流体輸送用可撓管の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】可撓管1を示す図であり、(a)は斜視図、(b)は断面図。
【図2】複層テープ17の構成を示す図であり、(a)は斜視図、(b)は断面図であり、(a)のA方向矢視図。
【図3】複層テープ17の波頂部の配置を示す図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のB−B線断面図、(c)は(a)のC−C線断面図、(d)は(a)のD−D線断面図。
【図4】複層テープ17の巻き付け方法を示す図で(a)は全体図、(b)は(a)のE部拡大図。
【図5】複層テープ17を螺旋状に巻き付けた巻き付け状態を示す図。
【図6】複層テープ17aの構成を示す図。
【図7】複層テープ17を縦巻きした巻き付け状態を示す図。
【図8】複層テープ17を縦巻きした巻き付け状態を示す図。
【図9】複層テープ17bを示す樹脂被覆層の透視図であり、(a)は斜視図、(b)は平面図。
【図10】複層テープ17の変形状態を示す図。
【図11】遮水層11の効果を示す図。
【図12】複層テープの他の実施形態を示す図。
【図13】可撓管1a、1bを示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下図面に基づいて、本発明の実施形態を詳細に説明する。図1は、可撓管1を示す図であり、図1(a)は斜視図、図1(b)は断面図である。可撓管1は、主に管体であるインターロック管3、樹脂層5、耐内圧補強層9、軸力補強層10、遮水層11、保護層13、座床層15a、15b、15c、15d等から構成される。
【0039】
インターロック管3は、可撓管1の最内層に位置し、外圧に対する座屈強度に優れ、耐食性も良好なステンレス製である。インターロック管3はテープを断面S字形状に成形させてS字部分で互いに噛み合わせて連結されて構成され、可撓性を有する。なお、インターロック管3に代えて、同様の可撓性を有し、座屈強度に優れる管体であれば、他の態様の管体を使用することも可能である。
【0040】
インターロック管3の外周側には、樹脂層5が設けられる。樹脂層5は、インターロック管3内を流れる流体を遮蔽する。樹脂層5としては、例えばナイロンまたは90℃以上の高温にも耐え、耐油性にも優れるポリビニルデンフロライド(PVDF)等が使用できる。
【0041】
なお、インターロック管3の外周側とは、断面におけるインターロック管3の外側であることを意味し、インターロック管3と樹脂層5との間に他の層構造を有することをも含むものである。以下の説明においては、各層の位置関係において、単に「外周」と称するが、同様に、各層間に他の層構造を有するものを含むことは言うまでもない。
【0042】
例えば、インターロック管3と樹脂層5の間には、必要に応じて座床層15aが設けられる。座床層15aは、インターロック管3の外周の凹凸形状を略平らにならすための層であり、インターロック管3の可撓性に追従して変形可能である。すなわち、座床層15aは、例えば不織布のようにある程度の厚みを有し、インターロック管3の外周の凹凸のクッションとしての役割を有する。
【0043】
なお、座床層については、必要に応じて設けられるものであり、以下の説明においては座床層を有する場合について説明するが、必ずしも必要なものではないので省くことができる。したがって、以下の図においては、座床層の図示を省略する。
【0044】
樹脂層5の外周には、耐内圧補強層9が設けられる。耐内圧補強層9は、主にインターロック管3内を流れる流体の内圧に対する補強層である。耐内圧補強層9は、例えば断面C形状または断面Z形状等の金属製のテープが互いに向かい合うように、かつ、互いに軸方向に重なり合うように短ピッチで巻き付けられて形成される。なお、耐内圧補強層9は、上述のように金属テープが所定ピッチで巻き付けられた構成であり、インターロック管3の曲げ変形やねじり変形に追従可能である。
【0045】
耐内圧補強層9の外周には、軸力補強層10が設けられる。軸力補強層10は、主にインターロック管3が可撓管1の軸方向へ変形する(伸びる)ことを抑えるための補強層である。軸力補強層10は、平型断面形状の補強条をロングピッチで(補強条の幅に対して巻付けピッチが十分長くなるように)2層交互巻きして形成される。補強条は、耐内圧補強層の外周において、周方向に複数配列され、ロングピッチで巻きつけられる。軸力補強層10は、インターロック3の可撓性に追従して変形可能である。
【0046】
軸力補強層10を構成する補強条は、繊維補強プラスチック製である。補強条を構成する高強度繊維としては、例えば、太さ0.1mm〜1.0mm程度のアラミド繊維やカーボン繊維等が用いられる。また、補強条を構成するマトリックス樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂が用いられる。
【0047】
なお、必要に応じて、耐内圧補強層9と軸力補強層10の間にポリエチレン製の樹脂テープである座床層15bを設けてもよい。また、互いに逆方向に螺旋状に巻き付けられる2層の補強条の間に、ポリエチレン製の樹脂テープである座床層15cを設けてもよい。座床層に用いる樹脂テープは、強度と耐食性が同等であれば、ポリエチレン以外の樹脂材料を用いても良い。座床層15b、15cは、補強部材同士が可撓管1の変形に追従する際に擦れて、摩耗することを防止するものである。この場合でも、座床層の有無を問わず、耐内圧補強層9の外周側に軸力補強層10が設けられると称する。なお、以後、特に説明がない場合には、耐内圧補強層9と軸力補強層10を総称して補強層と称する。
【0048】
軸力補強層10の外周には、必要に応じて座床層15dが設けられる。座床層15dは、軸力補強層10の外周の凹凸形状を略平らにならすための層であり、インターロック管3の可撓性に追従して変形可能である。なお、座床層15dは座床層15aと同様の構成であるため、説明を省略する。
【0049】
座床層15dの外周には、遮水層11が設けられる。遮水層11は、複層テープが巻き付けられて形成される。遮水層11は、外部から侵入した水が、内部の軸力補強層10に透過することを防止する。なお、複層テープの構成及び巻付け方法については後述する。
【0050】
遮水層11の外周には保護層13が設けられる。保護層13は、内部の各層を保護する為のものである。保護層13は、例えばナイロン製、ポリエチレン製、ポリアリレート樹脂やポリアミド系合成樹脂製の非架橋樹脂が使用できる。以上のように、可撓管1を構成する各層は、それぞれ可撓管1の曲げ変形やねじり変形に追従し、可撓性を有する。
【0051】
なお、可撓管1は、以下のように製造される。あらかじめ製造されたインターロック管3が軸方向に送られて、必要に応じてインターロック管3に座床テープが巻き付けられ、座床層15aが形成される。座床層15aが形成されたインターロック管3は、押出機に送られ、押出機によって、外周部に樹脂が押し出され、樹脂層5が形成される。
【0052】
さらに、樹脂層5の外周側に、補強テープ巻き機により補強層が形成される。さらに複層テープ供給機から、あらかじめ製造された複層テープが供給される。なお、複層テープは、螺旋巻きされるか、または、複層テープの長手方向がインターロック管3の軸方向と略同方向になるように供給され、フォーミング機内でフォーミングされ、縦巻きされる。以上により遮水層11が形成される。なお、複層テープの供給機からの送り速度は、インターロック管3の押出速度に、螺旋巻きも軸方向に縦巻きの場合も、管が静止していると考えた場合の巻き付け速度を重畳した速度で送り出す必要がある。
【0053】
さらに最外周部に押出機によって保護層13が形成され、所定長さに巻き取られる。以上により、可撓管1が製造される。
【0054】
次に、遮水層11を構成する複層テープ17について説明する。図2は複層テープ17を示す図であり、図2(a)は斜視図、図2(b)は図2(a)のA方向矢視図であり、複層テープ17の断面図である。複層テープ17は、金属層19、樹脂被覆部21により構成される。金属層19は、樹脂被覆部21に挟み込まれる。
【0055】
金属層19は、フィルム上に薄く加工が容易であるものであり、耐食性に優れるものであれば良い。たとえば、ステンレス、アルミニウム、外面に耐食性の良い材質でクラッドしたクラッド鋼等が使用できる。なお、金属層19は例えば0.05mm程度の厚さであり、複層テープ17全体としては、例えば0.2〜0.3mm程度であればよい。
【0056】
樹脂被覆部21は、樹脂製の部材であり、遮水層11の構築時に、金属層19の折れ曲がりや破れ、しわなどの発生を防止できる。樹脂被覆部21の材質については後述する。
【0057】
図2(b)に示すように、金属層19は断面において波形状を有する。このような金属層19は、波形の金属フィルムに樹脂を押し出し被覆してもよい、または対応する金型に設置して樹脂を射出により一体化させてもよい。または、それぞれ別々に形成された、対応する波形形状を有する樹脂部材と金属フィルムとを接着や圧着など公知の技術で一体化したものでもよい。また、あらかじめ表面が波形に形成された樹脂部材に、金属層を蒸着等により形成することもできる。
【0058】
ここで、金属層19は、山部と谷部とを有する波形状を有するが、山部(または谷部)の頂部を波頂部23と称する。すなわち、図2(b)に示す断面例では、山部側(上方)の波頂部23が5か所存在することとなる。
【0059】
図3(a)は、複層テープ17の平面図であり、図3(b)は図3(a)のB−B線断面図、図3(c)は図3(a)のC−C線断面図、図3(d)は図3(a)のD−D線断面図を示す図である。図中の点線は、波頂部23の位置を表す。波頂部23は、複層テープ17の長手方向に対して、所定の角度で連続して形成される。すなわち、図3(a)の例では、波頂部23は、複層テープ17の長手方向に対して角度Kだけ斜めに形成される。
【0060】
したがって、断面位置によって波形状が異なり、例えば、図3(b)の左端の波頂部23は、図3(c)、図3(d)に行くにつれて、図中右方向にずれながら連続して形成される。
【0061】
次に、複層テープ17の巻き付け方法について説明する。図4(a)は、複層テープ17を軸力補強層10(座床層15d)の外周に螺旋巻きする方法を示す図であり、図4(b)は図4(a)のE部拡大図である。複層テープ17は、例えば、図4(a)に示すように、螺旋状(図中矢印F方向)に巻き付けられる。たとえば、補強条(座床テープ)を供給して軸力補強層10(座床層15d)を形成後、複層テープ17が供給されて巻き付けられる。
【0062】
図5は、軸力補強層10の外周に複層テープ17が巻き付けられた状態を示す軸方向の断面図である。図5(a)に示すように、複層テープ17は、複層テープ17の幅方向端部が互いに重なり合わないように(ラップしないように)わずかな隙間をあけて軸力補強層10の外周に巻き付けられ、さらにその外周に、下層(内層)の複層テープ17の隙間を覆うように、巻き付け位置をずらして上層(外層)に複層テープ17を同様の方法で巻き付けてもよい。複層テープの巻き付けは、下層(内層)のテープと上層(外層)のテープを互いに反対方向に巻き付ける方が、巻き付け時のインターロック管にかかる張力がバランスするので、巻き付けやすいので好ましい。
【0063】
また、図5(b)に示すように、複層テープ17を、複層テープ17の幅方向端部が互いに重なり合うようにラップさせて巻き付けてもよい。図5のいずれの方法で巻き付けても、遮水層において複層テープ17を隙間なく巻き付けることができる。なお、複層テープ17と座床層15dと接着、融着などにより一体化してもよい。
【0064】
なお、遮水層11を構成する樹脂被覆部21の融点は、保護層13を構成する樹脂の融点よりも低く、樹脂被覆部21を構成する樹脂と、保護層13を構成する樹脂とが相溶性を有してもよい。樹脂被覆部21と保護層13とが相溶性を有し、樹脂被覆部21の融点が保護層13の融点よりも低ければ、保護層13の樹脂を押し出した際に、保護層13と複層テープ17とを互いに一体化しやすい。このため、保護層13が形成された際に、遮水層11と保護層13との間でずれ等が起こることがない。
【0065】
このような関係を有する材質としては、樹脂被覆部21を例えばナイロン12とし、保護層13をナイロン11とすればよい。あるいは、樹脂被覆部を低密度ポリエチレン(LDPE)、保護層13を高密度ポリエチレン(HDPE)とすればよい。
【0066】
また、樹脂被覆部21(の表面)をゴム材料(例えば、エチレンゴム、エチレンプロピレンゴム、シリコンゴム、ウレタンゴム、ブチルゴムなど)で構成することもできる。このようにすることで、保護層13と樹脂被覆部21(複層テープ17)との摩擦係数が大きくなる。このため、保護層13と複層テープ17とが密着してずれることがない。
【0067】
なお、樹脂被覆部21全体をゴム材料とすると、金属層19との接着性が劣る恐れがある。このため、図6に示すように、樹脂被覆部21を複層としてもよい。すなわち、図6に示す複層テープ17aは、樹脂被覆部21が、金属層19との接着性に優れる樹脂層が内層に設けられ、その外層のみにゴム材料によって、ゴム部21aが形成されてもよい。
【0068】
図4(b)に示すように、可撓管の正面図(または平面図)において、複層テープ17が軸力補強層10(座床層15d)の外周に螺旋状に巻き付けられた状態では、可撓管の軸方向Hと可撓管の周方向Gとは垂直になる。また、可撓管の周方向Gに対して、複層テープ17の巻き付け方向Iとのなす角度をJとする。また、前述の通り、複層テープ17の長手方向Iと波頂部23とのなす角度はKとする。ここで、複層テープ17の巻き付け方向Iは、複層テープ17の長手方向と一致する。
【0069】
したがって、複層テープ17の巻き付け方向Iと可撓管の周方向Gとのなす角度Jと、複層テープ17の長手方向Iと波頂部23とのなす角度はKとを略一致させることにより、波頂部23の形成される方向(延伸方向)は、可撓管の周方向Gと略一致する。すなわち、複層テープ17の巻き付け角度(J)を予め設定し、平面図において、これに対応した角度(K)で傾斜した波頂部を有する複層テープ17を用いることで、波頂部23の延伸方向を流体輸送用可撓管の周方向と略一致させることができる。
【0070】
ここで、巻き付け方向Iと可撓管の周方向Gとのなす角度(J)と、複層テープ17の長手方向Iと波頂部23とのなす角度(K)とが、多少のずれを生ずる場合について考察する。例えば、複層テープの巻き付け部の外径をDとすると、テープが完全に周方向に平行でない場合の巻き付け1回転あたり軸方向のズレは、D・π・tan(J−K)と表される。ここで、例えば、複層テープの巻き付け部の外径Dを、150Φとすると、J−Kが5°の場合には、tan5°=0.087で、テープの巻き方向に約41mmずれることになり、半回転あたりのズレは、約20mmになる。従って、好ましくは、角度のズレは、5°以下が好ましい。また、ズレ角を2.5°とするズレ量が上記の約半分になるので、更に好ましい。
【0071】
図7は、複層テープ17を軸力補強層10(座床層15d)が形成されたインターロック管3に縦巻きで巻き付ける際のフォーミング工程を示す他の実施形態を示す図である。複層テープ17は、図7(a)に示すように、縦巻きされてもよい。この場合、複層テープ17は、複層テープ17の長手方向がインターロック管3の軸方向に略同一の方向になるようにインターロック管3へ送られる。この際、複層テープ17の両側は、インターロック管3(軸力補強層10)全体を包むようにU字状に曲げられる。
【0072】
さらに、複層テープ17によってインターロック管3(軸力補強層10)が包みこまれる。すなわち、複層テープ17の両側端部同士を軸力補強層10の外周部でラップさせ、複層テープ17で軸力補強層10を包みこむ。すなわち、ラップ部25がインターロック管3の軸方向に沿って形成される。以上のようにして、複層テープ17が軸力補強層10(座床層15d)に縦巻きで巻き付けられ、遮水層11が形成されてもよい。
【0073】
図8は、図4に対応する図であり、図8(a)は複層テープ17が軸力補強層10(座床層15d)の外周に縦巻きされた状態を示す図であり、図8(b)は図4(b)に対応する拡大図である。図8(a)に示すように、ラップ部25は、可撓管の軸方向(図中矢印L方向)に延伸するように形成される。
【0074】
この際、図8(b)に示すように、可撓管の軸方向Hと可撓管の周方向Gとは垂直になる。また、複層テープ17の長手方向Iと可撓管の軸方向Hとは一致する。したがって、可撓管の周方向Gと可撓管の軸方向Hとのなす角度をJとすると、Jは略90度となる。また、前述の通り、複層テープ17の長手方向Iと波頂部23とのなす角度Kも同様に90°である。
【0075】
したがって、縦巻きの場合であっても、複層テープ17の巻き付け方向Iに対する可撓管の周方向Gの角度J(90°)と、複層テープ17の長手方向Iと波頂部23とのなす角度はK(90°)とを略一致させることで、波頂部23の延伸方向を流体輸送用可撓管の周方向と略一致させることができる。
【0076】
図9は他の複層テープ17bを示す図であり、図9(a)は複層テープ17bの斜視図(樹脂被覆部21透視図)、図9(b)は金属層19の平面概念図である。本発明では、図9に示すような複層テープ17bを用いてもよい。複層テープ17bは、複層テープ17と略同様の構成であるが、金属層19の形態が異なる。
【0077】
前述の通り、複層テープ17では、波頂部23が、連続して形成される。すなわち、図3に示すように、複層テープ17は一方向に波形状が形成され、波頂部23に沿った方向での断面では、波形状とはならない。これに対し、複層テープ17bは、少なくとも異なる2方向(図9(b)のS方向およびT方向)に対して波形状が形成される。したがって、山部27と谷部29(波頂部)が格子状に形成される。なお、図9(b)のR−R線断面図は、複層テープ17(図2(b))と同様となる。
【0078】
このような複層テープ17bとしては、図9に示すようなエンボス加工が施された金属フィルムに樹脂を押し出し被覆してもよい、または対応する金型に設置して樹脂を射出により一体化させてもよい。または、それぞれ別々に形成された、対応する凹凸形状を有する樹脂部材と金属フィルムとを接着や圧着など公知の技術で一体化したものでもよい。また、あらかじめ表面がエンボス形状に形成された樹脂部材に、金属層を蒸着により形成することもできる。
【0079】
このような複層テープ17bが、軸力補強層10(座床層15d)の外周に、図4または図7に示したいずれかの方法で巻き付けられて、遮水層11が形成される。なお、複層テープ17bについても、前述したような波頂部の並列方向(例えば図9(b)のS方向またはT方向)と複層テープ17bの巻き付け角度とを合わせてもよい。また、複層テープ17bは、いずれの方向に対しても変形が可能である。このため、巻き付け角度と波頂部の並列方向(図9(b)のS方向またはT方向)とを完全に一致させなくても、十分な可撓性を得ることができる。
【0080】
次に、可撓管1の変形時における複層テープ17の機能について説明する。図10は、可撓管1を変形させた状態を示す図である。図10(a)に示すように、可撓管1を曲げ変形させると(図中矢印M方向)、可撓管1の曲げ外周側(図中N部)では引張変形となる。
【0081】
図10(b)は、図10(a)のN部における、複層テープ17の状態を示す模式図である。なお、図10(b)は、例えば、複層テープ17が螺旋巻きされた状態を示す図である。可撓管1が曲げ変形し、局部的に引張変形が生じると、当該部位に巻き付けられる複層テープ17も幅方向に引張変形が生じて、可撓管1の曲げに追従しようとする(図中矢印Q方向)。この際、樹脂被覆部21は、樹脂の弾性変形能によって容易に追従変形可能である。
【0082】
一方、金属層19は、波形状であるため波の伸縮によって、容易に変形に追従可能である。特に、波頂部23が可撓管1の周方向に延伸するように形成されるため、波形状による伸縮変形方向は、可撓管1の軸方向に対応する。このため、可撓管1の曲げ変形に対して、複層テープ17(遮水層11)は容易に追従して変形することができる。すなわち、金属層19を有する複層テープ17の巻き付けが、可撓管1の可撓性(変形)の妨げにならない。
【0083】
次に、遮水層11の機能について説明する。図11は、可撓管1の断面を示す図であり、図11(a)は軸方向の断面図、図11(b)は、遮水層11を構成する複層テープ17の拡大図である。前述の通り、可撓管1は、例えば通常海中に沈めて、または浮かべて使用される。したがって、保護層13は常に海水と接触する。保護層13は樹脂製であるため、ある程度の防水性は有しているが、樹脂自体がわずかながらの吸水性を有する。このため、保護層13内にも海水成分がわずかながら浸透する。特に、海底においては高い水圧が付与され、長時間の使用に際しては、保護層13内への海水成分の浸透の恐れが大きい(図中矢印O方向)。
【0084】
しかし、本願発明にかかる可撓管1は、保護層13の内周面に遮水層11が設けられる。したがって、図11(b)に示すように、遮水層11は、内部の金属層19が外部からの水の浸入を確実に遮蔽する(図中矢印P方向)。したがって、軸力補強層10を構成する樹脂が水によって劣化することがない。
【0085】
以上説明したように、第1の実施形態にかかる可撓管1によれば、保護層13の外周に遮水層11が設けられるため、外部からの水の浸入によって、補強層が劣化することがない。また、遮水層11が金属層19を樹脂被覆部21で挟み込んだ複層テープ17で構成されるため、外部からの水の管体径方向の流れが、金属層19によって確実に遮蔽され、補強層が劣化することがない。
【0086】
また、金属層19が樹脂被覆部21に挟み込まれているため、遮水層11の構築時に金属層19が破れたり折れ曲がったりすることがなく、確実に遮水層11を構築することができる。さらに、金属層19が直接軸力補強層10に接触しないため、製造時に各層を傷つけることがない。
【0087】
また、金属層19が複層テープ17の断面において波形状を有するため、複層テープ17が巻き付けられた状態において、複層テープ17(金属層19)が波形状方向に容易に伸縮変形可能である。また、金属層19を波形状とすることで、可撓管を曲げた際、金属層19に発生する局所的な応力集中を緩和できる。このため、長期的な繰り返し曲げ疲労特性を向上させることができ、長期信頼性に優れる可撓管を得ることができる。
【0088】
特に、金属層19の波形状の波頂部23が複層テープ17の長手方向に対して所定角度で形成される。また、複層テープ17の長手方向と金属層19の波形状における波頂部23とのなす角度と、可撓管1の周方向に対する複層テープ17の巻き付け角度とを略一致させることで、複層テープ17が巻き付けられた状態における波頂部23の延伸方向を、可撓管1の周方向と略一致させることができる。したがって、可撓管1の曲げ時の変形方向に対して複層テープ17(金属層19)が容易に追従し、高い可撓性を確保することができる。また、金属層19をエンボス形状とすることで、異なるいずれの2つの方向にも波形状が形成される。このため、いずれの方向に対しても変形に追従することができ、複層テープの製造性にも優れる。
【0089】
次に、他の実施の形態について説明する。なお、以下の実施の形態において、図1〜図11に示す可撓管1と同一の機能を果たす構成要素には、図1〜図11と同一番号を付し、重複した説明を避ける。
【0090】
図12は、複層テープの断面における金属層19の形状についての、他の実施形態を示す図である。複層テープの断面における金属層19の形状は、前述した例に限られず、例えば、図12(a)に示す複層テープ30のように、波形状は、金属層19の一部のみに形成されてもよい。この場合でも、波頂部23が、複層テープ30の長手方向に対して所定角度で形成されることで、複層テープ17と同様の効果を奏する。
【0091】
また、例えば、図12(b)に示す複層テープ40のように、波形状は、矩形波であってもよい。また、図12(c)に示す複層テープ50のように、波形状は、三角波であってもよい。この場合でも、波頂部23が、複層テープの長手方向に対して所定角度で形成されることで、複層テープ17と同様の効果を奏することができる。なお、波形状は、これらの実施形態に限られず、伸縮可能な形態であれば良い。また、このような各種波形状は、一方向に形成(複層テープ17と同様)されてもよく、二方向に形成(複層テープ17bと同様)されてもよい。
【0092】
また、図13(a)に示すように、樹脂層5の外周に、遮蔽層7を設けてもよい。遮蔽層7は、インターロック管3内を流れる流体から生じる腐食性ガス(硫化物など)等を遮蔽する。なお、遮蔽層7としては、腐食性ガスの浸透を防止するものであればよく、前述した複層テープを用いることができる。また、遮蔽層7に用いられる複層テープの樹脂被覆部21には、硫化物トラップ材などの金属粒子を含有させてもよい。硫化物トラップ材を含有させる場合には、金属層19を有さず、通常の樹脂のみの樹脂層を用いることもできる。
【0093】
また、同様に、図13(b)に示すように、樹脂層5a、5bを遮蔽層7の両側(内周および外周)に形成してもよい。この場合でも、遮蔽層7によって、硫化水素等が遮蔽されるため、硫化水素等が、補強層へ浸入することを防止することができる。すなわち、樹脂層は遮蔽層7の内周側または外周側の少なくとも一方に形成されれば良い。
【0094】
なお、樹脂層が遮蔽層7の外周側に形成される場合において、遮蔽層7をより安定して機能させるためには、遮蔽層7を構成する複層テープの樹脂被覆部の樹脂として、樹脂層5(5b)を形成する樹脂の融点よりも融点が低く、樹脂層5を形成する樹脂と相溶性を有するものを使用することができる。
【0095】
樹脂被覆部21と樹脂層5(5b)とが相溶性を有し、樹脂被覆部21の融点が低ければ、樹脂層5の樹脂を遮蔽層7の外周側に押し出した際に、樹脂層5(5b)と樹脂被覆部21とが互いに一体化しやすい。このため、樹脂層5(5b)が形成された際、遮蔽層7と樹脂層5(5b)との間でずれや捩れが起こることがなく、可撓管1の曲げ変形の際に、遮蔽層7の一部が破損することがない。
【0096】
このような関係を有する材質としては、樹脂被覆部21を例えばナイロン12とし、樹脂層5(5b)をナイロン11とすればよい。なお、前述の通り、樹脂被覆部21(またはその表面)をゴム材料で構成してもよい。
【0097】
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0098】
1、1a、1b………可撓管
3………インターロック管
5………樹脂層
7………遮蔽層
9………耐内圧補強層
10………軸力補強層
11………遮水層
13………保護層
15a、15b、15c、15d………座床層
17、17a、17b、30、40、50………複層テープ
19………金属層
21………樹脂被覆部
21a………ゴム部
23………波頂部
25………ラップ部
27………山部
29………谷部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性を有するインターロック管と、
前記インターロック管の外周側に設けられた樹脂層と、
前記樹脂層の外周側に設けられた耐内圧補強層と、
前記耐内圧補強層の外周側に設けられた軸力補強層と、
前記軸力補強層の外周側に設けられた遮水層と、
前記遮水層の外周側に設けられた保護層と、
を少なくとも具備し、
前記軸力補強層は繊維強化プラスチック製であり、
前記遮水層は、樹脂で金属層を挟み込んだ複層テープにより形成され、
前記金属層は、前記複層テープの断面において、少なくとも一部が波形状であり、
前記保護層を透過する水により前記軸力補強層を構成する樹脂が劣化することを前記遮水層によって防止可能であることを特徴とする流体輸送用可撓管。
【請求項2】
前記複層テープの平面において、前記金属層の波形状における波頂部が、前記複層テープの長手方向に対して、所定の角度で形成されており、前記金属層の波形状は、前記複層テープの平面において、異なる2方向に向けて形成され、波形状の山部または谷部が格子状に形成されることを特徴とする請求項1記載の流体輸送用可撓管。
【請求項3】
前記複層テープの長手方向と前記金属層の波形状における波頂部の形成方向とのなす角度は、前記流体輸送用可撓管の周方向に対する前記複層テープの巻き付け角度と略一致し、前記複層テープが巻き付けられた状態で、前記波頂部の形成方向が前記流体輸送用可撓管の周方向と略一致することを特徴とする請求項2記載の流体輸送用可撓管。
【請求項4】
前記複層テープの樹脂部は、前記保護層と相溶性を有し、前記保護層よりも低融点の樹脂製であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の流体輸送用可撓管。
【請求項5】
前記複層テープの少なくとも表面は、ゴム材料で構成され、前記ゴム材料が前記保護層と密着することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の流体輸送用可撓管。
【請求項6】
可撓性を有するインターロック管を管軸方向に送り、前記インターロック管の外周側に樹脂層を形成し、前記樹脂層の外周側に耐内圧補強層を設け、前記耐内圧補強層の外周部に軸力補強層を形成し、前記軸力補強層の外周側に遮水層を形成し、前記遮水層の外周に保護層が押出被覆される流体輸送用可撓管の製造方法であって、
前記遮水層は、樹脂で金属層を挟み込んだ複層テープにより形成され、前記金属層は、前記複層テープの断面において、少なくとも一部が波形状であり、
前記複層テープの平面において、前記金属層の波形状における波頂部の形成方向が、前記複層テープの長手方向に対して、所定の角度で形成されており、
前記複層テープの長手方向と前記金属層の波形状における波頂部の形成方向とのなす角度を、前記流体輸送用可撓管の周方向に対する前記複層テープの巻き付け角度と略一致させて、前記波頂部の延伸方向が前記流体輸送用可撓管の周方向と略一致するように前記複層テープを巻き付けることで前記遮水層を形成することを特徴とする流体輸送用可撓管の製造方法。
【請求項7】
前記金属層の波形状は、前記複層テープの平面において、異なる2方向に向けて形成され、波形状の山部または谷部が格子状に形成され、
前記複層テープの長手方向と前記金属層の波形状における波頂部の形成方向とのなす一方の角度が、前記複層テープの巻き付け角度と略一致することを特徴とする請求項6記載の流体輸送用可撓管の製造方法。
【請求項8】
前記複層テープは、幅方向の端部同士が互いにラップしないように前記流体輸送用可撓管に対して螺旋状に巻き付けられ、内層側の前記複層テープ同士の隙間を覆うように、前記複層テープを2層以上巻き付けることを特徴とする請求項6または請求項7に記載の流体輸送用可撓管の製造方法。
【請求項9】
前記複層テープは、前記複層テープの幅方向端部が互いにラップするように前記流体輸送用可撓管に対して、螺旋状に巻き付けられることを特徴とする請求項6または請求項7に記載の流体輸送用可撓管の製造方法。
【請求項10】
前記複層テープの長手方向が前記流体輸送用可撓管の軸方向と略一致し、前記複層テープの幅方向が前記流体輸送用可撓管の周方向となるように巻き付けられ、前記複層テープのラップ部が、前記流体輸送用可撓管の軸方向に延伸することを特徴とする請求項6または請求項7に記載の流体輸送用可撓管の製造方法。
【請求項1】
可撓性を有するインターロック管と、
前記インターロック管の外周側に設けられた樹脂層と、
前記樹脂層の外周側に設けられた耐内圧補強層と、
前記耐内圧補強層の外周側に設けられた軸力補強層と、
前記軸力補強層の外周側に設けられた遮水層と、
前記遮水層の外周側に設けられた保護層と、
を少なくとも具備し、
前記軸力補強層は繊維強化プラスチック製であり、
前記遮水層は、樹脂で金属層を挟み込んだ複層テープにより形成され、
前記金属層は、前記複層テープの断面において、少なくとも一部が波形状であり、
前記保護層を透過する水により前記軸力補強層を構成する樹脂が劣化することを前記遮水層によって防止可能であることを特徴とする流体輸送用可撓管。
【請求項2】
前記複層テープの平面において、前記金属層の波形状における波頂部が、前記複層テープの長手方向に対して、所定の角度で形成されており、前記金属層の波形状は、前記複層テープの平面において、異なる2方向に向けて形成され、波形状の山部または谷部が格子状に形成されることを特徴とする請求項1記載の流体輸送用可撓管。
【請求項3】
前記複層テープの長手方向と前記金属層の波形状における波頂部の形成方向とのなす角度は、前記流体輸送用可撓管の周方向に対する前記複層テープの巻き付け角度と略一致し、前記複層テープが巻き付けられた状態で、前記波頂部の形成方向が前記流体輸送用可撓管の周方向と略一致することを特徴とする請求項2記載の流体輸送用可撓管。
【請求項4】
前記複層テープの樹脂部は、前記保護層と相溶性を有し、前記保護層よりも低融点の樹脂製であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の流体輸送用可撓管。
【請求項5】
前記複層テープの少なくとも表面は、ゴム材料で構成され、前記ゴム材料が前記保護層と密着することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の流体輸送用可撓管。
【請求項6】
可撓性を有するインターロック管を管軸方向に送り、前記インターロック管の外周側に樹脂層を形成し、前記樹脂層の外周側に耐内圧補強層を設け、前記耐内圧補強層の外周部に軸力補強層を形成し、前記軸力補強層の外周側に遮水層を形成し、前記遮水層の外周に保護層が押出被覆される流体輸送用可撓管の製造方法であって、
前記遮水層は、樹脂で金属層を挟み込んだ複層テープにより形成され、前記金属層は、前記複層テープの断面において、少なくとも一部が波形状であり、
前記複層テープの平面において、前記金属層の波形状における波頂部の形成方向が、前記複層テープの長手方向に対して、所定の角度で形成されており、
前記複層テープの長手方向と前記金属層の波形状における波頂部の形成方向とのなす角度を、前記流体輸送用可撓管の周方向に対する前記複層テープの巻き付け角度と略一致させて、前記波頂部の延伸方向が前記流体輸送用可撓管の周方向と略一致するように前記複層テープを巻き付けることで前記遮水層を形成することを特徴とする流体輸送用可撓管の製造方法。
【請求項7】
前記金属層の波形状は、前記複層テープの平面において、異なる2方向に向けて形成され、波形状の山部または谷部が格子状に形成され、
前記複層テープの長手方向と前記金属層の波形状における波頂部の形成方向とのなす一方の角度が、前記複層テープの巻き付け角度と略一致することを特徴とする請求項6記載の流体輸送用可撓管の製造方法。
【請求項8】
前記複層テープは、幅方向の端部同士が互いにラップしないように前記流体輸送用可撓管に対して螺旋状に巻き付けられ、内層側の前記複層テープ同士の隙間を覆うように、前記複層テープを2層以上巻き付けることを特徴とする請求項6または請求項7に記載の流体輸送用可撓管の製造方法。
【請求項9】
前記複層テープは、前記複層テープの幅方向端部が互いにラップするように前記流体輸送用可撓管に対して、螺旋状に巻き付けられることを特徴とする請求項6または請求項7に記載の流体輸送用可撓管の製造方法。
【請求項10】
前記複層テープの長手方向が前記流体輸送用可撓管の軸方向と略一致し、前記複層テープの幅方向が前記流体輸送用可撓管の周方向となるように巻き付けられ、前記複層テープのラップ部が、前記流体輸送用可撓管の軸方向に延伸することを特徴とする請求項6または請求項7に記載の流体輸送用可撓管の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2013−36575(P2013−36575A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−174628(P2011−174628)
【出願日】平成23年8月10日(2011.8.10)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月10日(2011.8.10)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】
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