説明

流動層乾燥装置および流動層乾燥設備

【課題】流動層の褐炭を乾燥することにより発生した発生蒸気の温度を、発生蒸気が結露しないような温度とすることにより、結露の発生を抑制可能な流動層乾燥装置および流動層乾燥設備を提供する。
【解決手段】内部に形成された乾燥室126に供給される流動化蒸気107により、乾燥室126に供給された褐炭101を流動させることで、乾燥室126に流動層111が形成される乾燥容器120と、乾燥容器120の内部に設けられ、流動層111の褐炭101が乾燥されることにより発生蒸気104が発生する領域であるフリーボード部Fに設けられた過熱部材130と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、褐炭等の被乾燥物を流動させながら乾燥させる流動層乾燥装置および流動層乾燥設備に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、流動乾燥室に供給された石炭の下方から熱風を吹き上げて、石炭を流動させながら乾燥させる石炭の乾燥・分級装置を制御可能な制御装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。この制御装置は、流動乾燥室内に吹き付けられる熱風の流量を制御する熱風流量制御装置を有している。ここで、石炭を通過した熱風である排出ガスの温度が結露温度以下になると、排出ガスに含まれる水分が結露し、この結露した部分に、熱風により乾燥された微粒の石炭(微粒炭)が付着する。このため、熱風流量制御装置は、熱風の流量を増加させ、排出ガスの温度を上昇させることにより、結露の発生を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−11270号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記の発生ガスの温度は、石炭に包含される水分の蒸発のし易さや、流動乾燥室内の温度等によって経時的に変化する。換言すれば、結露の発生を防止可能な熱風の流量は、石炭に包含される水分の蒸発のし易さや、流動乾燥室内の温度等によって、最適な流量が異なる。このため、発生ガスの温度を安定的に制御することは難しい。
【0005】
そこで、本発明は、流動層の被乾燥物を乾燥させることにより発生した発生蒸気の温度を、安定的に発生蒸気が結露(凝縮)しないような温度とすることにより、結露の発生を抑制可能な流動層乾燥装置および流動層乾燥設備を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の流動層乾燥装置は、内部に形成された乾燥室に供給される流動化ガスにより、乾燥室に供給された被乾燥物を流動させることで、乾燥室に流動層が形成される乾燥容器と、乾燥容器の内部に設けられ、流動層の被乾燥物が乾燥されることにより発生蒸気が発生する領域に設けられた過熱手段と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、流動層の被乾燥物を乾燥させることにより発生する発生蒸気を、過熱手段により直接過熱することができる。このため、発生蒸気の温度を、安定的に発生蒸気が結露(凝縮)しないような温度にすることができるため、結露の発生を抑制することができる。
【0008】
この場合、過熱手段の過熱温度を制御可能な温度制御手段をさらに備えたことが、好ましい。
【0009】
この構成によれば、過熱手段の過熱温度を制御することができるため、過熱手段を通過する発生蒸気の温度を好適な温度とすることができる。
【0010】
この場合、発生蒸気の流れ方向において、過熱手段の下流側に設けられた温度検出手段をさらに備え、温度制御手段は、温度検出手段によって検出された検出温度に基づいて、過熱手段の過熱温度を制御することが、好ましい。
【0011】
この構成によれば、温度検出手段により過熱手段の下流側における発生蒸気の温度を検出することができる。これにより、温度制御手段は、過熱手段の下流側における発生蒸気の温度を把握することができるため、発生蒸気の検出温度に基づいて、過熱手段の温度を好適な温度とすることができる。
【0012】
この場合、発生蒸気の流れ方向において、過熱手段の下流側には、発生蒸気に処理を実行可能な処理装置が設けられ、処理装置に導入される発生蒸気の圧力と、処理装置から導出される発生蒸気の圧力との圧力差を検出可能な圧力差検出手段をさらに備え、温度制御手段は、圧力差検出手段によって検出された圧力差に基づいて、過熱手段の過熱温度を制御することが、好ましい。
【0013】
この構成によれば、圧力差検出手段により処理装置の通過前後における発生蒸気の圧力差を検出することができる。これにより、温度制御手段は、処理装置の通過前後における発生蒸気の圧力差を把握することができるため、温度制御手段は、発生蒸気の圧力差に基づいて、過熱手段の温度を好適な温度とすることができる。
【0014】
この場合、発生蒸気の流れ方向に直交する乾燥容器の断面積において、過熱手段の配設位置における乾燥容器の断面積は、過熱手段の上流側における乾燥容器の断面積に比して小さいことが、好ましい。
【0015】
この構成によれば、過熱手段の上流側を流れる発生蒸気は、過熱手段に流入すると、乾燥容器の断面積が小さくなるため、過熱手段を通過する発生蒸気の流速が増加する。これにより、過熱手段の発生蒸気に対する伝熱効率を向上させることができる。
【0016】
この場合、乾燥容器の内部に設けられ、流動層の内部に配置された加熱手段を、さらに備えたことが、好ましい。
【0017】
この構成によれば、加熱手段により流動層の被乾燥物を加熱することができるため、被乾燥物を好適に乾燥させることができる。
【0018】
この場合、過熱手段には、その内部に高温ガスを流通可能な過熱ガス流路が設けられ、加熱手段には、その内部に高温ガスを流通可能な加熱ガス流路が設けられ、過熱ガス流路および加熱ガス流路にそれぞれ高温ガスを供給可能な高温ガス供給手段をさらに備えたことが、好ましい。
【0019】
この構成によれば、高温ガス供給手段は、過熱ガス流路に高温ガスを流通させることで過熱手段を過熱することができ、また、加熱ガス流路に高温ガスを流通させることで加熱手段を加熱することができる。
【0020】
この場合、過熱手段には、その内部に高温ガスを流通可能な過熱ガス流路が設けられ、加熱手段には、その内部に高温ガスを流通可能な加熱ガス流路が設けられ、過熱ガス流路と加熱ガス流路とを接続するガス接続流路と、過熱ガス流路へ高温ガスを供給可能な高温ガス供給手段と、をさらに備えたことが、好ましい。
【0021】
この構成によれば、高温ガス供給手段は、過熱ガス流路に高温ガスを流通させることで過熱手段を過熱することができる。過熱ガス流路に流通した高温ガスは、ガス接続流路を介して、加熱ガス流路へ流通することで、加熱手段を加熱することができる。
【0022】
本発明の流動層乾燥設備は、被乾燥物を乾燥可能な上記の流動層乾燥装置と、発生蒸気を流動層乾燥装置の外部に排出する発生蒸気ラインと、発生蒸気ラインに介装され、発生蒸気中の粉塵を除去する集塵装置と、発生蒸気ラインにおける集塵装置の下流側に介装され、発生蒸気の熱を回収する熱回収システムと、集塵装置から粉塵が除去された発生蒸気の一部を分岐し、流動化ガスとして流動層乾燥装置内に供給する分岐ラインと、流動層乾燥装置によって乾燥された被乾燥物を冷却する冷却器と、を備えたことを特徴とする。
【0023】
この構成によれば、流動層乾燥装置において結露の発生を抑制しつつ、被乾燥物を好適に乾燥させることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明の流動層乾燥装置および流動層乾燥設備によれば、流動層から発生した発生蒸気を、過熱手段により直接過熱することができ、これにより、発生蒸気の温度を、結露しないような温度とすることができるため、発生蒸気による結露の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1は、実施例1に係る流動層乾燥装置を適用した流動層乾燥設備の一例を示す概略図である。
【図2】図2は、図1に示す流動層乾燥設備を適用した石炭ガス化複合発電システムの一例を示す概略図である。
【図3】図3は、実施例2に係る流動層乾燥装置を適用した流動層乾燥設備の一例を示す概略図である。
【図4】図4は、実施例3に係る流動層乾燥装置を適用した流動層乾燥設備の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、添付した図面を参照して、本発明に係る流動層乾燥装置および流動層乾燥設備について説明する。なお、以下の実施例によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施例における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、或いは実質的に同一のものが含まれる。
【実施例1】
【0027】
本発明の実施例1について、図面を参照して説明する。図1は、実施例1に係る流動層乾燥装置を適用した流動層乾燥設備の一例を示す概略図である。
【0028】
図1に示すように、流動層乾燥設備100は、被乾燥物として水分含量が高い褐炭101を供給する供給ホッパ118と、供給された褐炭101を乾燥させる流動層乾燥装置102と、褐炭101を乾燥させる際に発生する発生蒸気104を流動層乾燥装置102の外部に排出する発生蒸気ラインLと、前記発生蒸気ラインLに介装され、発生蒸気104中の粉塵を除去する集塵装置105と、発生蒸気ラインLにおける集塵装置105の下流側に介装され、発生蒸気104の熱を回収する熱回収システム106と、前記集塵装置105から粉塵が除去された発生蒸気104の一部を分岐し、流動化蒸気(流動化ガス)107として流動層乾燥装置102内に供給する分岐ラインLと、前記流動層乾燥装置102から抜き出された乾燥褐炭108を冷却して製品炭109とする冷却器110とを備えるものである。
【0029】
流動層乾燥設備100において、褐炭101は、供給ホッパ118により供給ラインL0を介して流動層乾燥装置102内に投入され、流動層乾燥装置102内に別に導入される流動化蒸気107により流動されて流動層111を形成する。
【0030】
流動層乾燥装置102は、内部に褐炭101が投入される乾燥容器120と、乾燥容器120内部に設けられたガス分散板121とが設けられている。このガス分散板121は、乾燥容器120内部の空間を、鉛直方向下方側(図示下側)に位置するチャンバ室125と、鉛直方向上方側(図示上側)に位置する乾燥室126とに区分けしている。チャンバ室125には、分岐ラインLから流動化蒸気107が導入され、また、ガス分散板121には、多数の貫通孔121aが形成されている。
【0031】
従って、流動層乾燥装置102において、供給ホッパ118により褐炭101が乾燥容器120の乾燥室126内に投入され、チャンバ室125に流動化蒸気107が導入される。すると、チャンバ室125内に導入された流動化蒸気107は、ガス分散板121の貫通孔121aを通過して、乾燥室126内の褐炭101に対し流動化蒸気107を吹き上げることで、褐炭101を流動させる。これにより、乾燥室126内には、褐炭101が流動する流動層111が形成される。つまり、乾燥室126には、鉛直方向下方側に流動層111が形成され、鉛直方向上方側にフリーボード部Fが形成される。このフリーボード部Fは、流動層111の褐炭101が乾燥されることにより発生蒸気104が発生する領域となっている。
【0032】
この流動層乾燥装置102は、流動層111の内部に設けられた加熱手段としての伝熱部材103と、フリーボード部Fに設けられた過熱手段としての過熱部材130と、伝熱部材103および過熱部材130に過熱蒸気(高温ガス)Aを供給可能な過熱蒸気供給装置(高温ガス供給手段)135とを備えている。また、流動層乾燥装置102は、過熱部材130の温度を制御可能な温度制御装置(温度制御手段)140と、温度制御装置140に接続された温度検出センサ(温度検出手段)141と、温度制御装置140に接続された圧力差検出センサ(圧力差検出手段)142と、温度制御装置140に接続された流量調整手段としての流量調整弁143とを備えている。
【0033】
伝熱部材103は、流動層111の褐炭101中の水分を除去するものであり、過熱蒸気(例えば150℃の蒸気)Aが流通可能な第1蒸気流路(加熱ガス流路)Rを有している。従って、伝熱部材103の第1蒸気流路Rに150℃の過熱蒸気Aが供給されると、伝熱部材103は、高温の過熱蒸気Aの潜熱を利用して褐炭101を乾燥させる。この後、乾燥に利用された過熱蒸気Aは、例えば150℃の凝縮水Bとして流動層乾燥装置102の外部に排出される。
【0034】
すなわち、第1蒸気流路Rの内面では、過熱蒸気Aが凝縮して液体(水分)になるので、この際に放熱される凝縮潜熱を、褐炭101の乾燥の加熱に有効利用している。なお、高温の過熱蒸気A以外としては、相変化を伴う熱媒であれば何れでも良く、例えばフロンやペンタンやアンモニア等を例示することができる。また、伝熱部材103として熱媒体を用いる以外に電気ヒータを設置してもよい。なお、伝熱部材103によって褐炭101が乾燥される際に発生する発生蒸気104は、鉛直方向上方側(発生蒸気104の流れ方向の下流側)のフリーボード部Fへ流れる。
【0035】
過熱部材130は、フリーボード部Fに流れ込んだ発生蒸気104を過熱するものであり、過熱蒸気(例えば150℃の蒸気)Aが流通可能な第2蒸気流路(過熱ガス流路)Rを有している。従って、過熱部材130の第2蒸気流路Rに150℃の過熱蒸気Aが供給されると、過熱部材130は、高温の過熱蒸気Aの潜熱を利用して発生蒸気104を過熱する。この後、過熱に利用された過熱蒸気Aは、例えば150℃の凝縮水Bとして流動層乾燥装置102の外部に排出される。なお、伝熱部材103と同様に、過熱部材130も熱媒体を用いる以外に電気ヒータを設置してもよい。
【0036】
過熱蒸気供給装置135は、加熱ラインLを介して、伝熱部材103の第1蒸気流路Rに過熱蒸気Aを供給している。また、過熱蒸気供給装置135は、加熱ラインLから分岐する過熱ラインLを介して、過熱部材130の第2蒸気流路Rに過熱蒸気Aを供給している。つまり、過熱蒸気供給装置135は、伝熱部材103と過熱部材130とのそれぞれに過熱蒸気Aを供給することにより、伝熱部材103を加熱すると共に、過熱部材130を過熱している。
【0037】
ここで、上記の過熱部材130は、温度制御装置140によって流量調整弁143の開度が調整されることにより温度制御される。流量調整弁143は、過熱ラインLに介設されており、過熱ラインLを流通する過熱蒸気Aの流量を調整している。
【0038】
温度検出センサ141は、発生蒸気ラインLに設けられ、発生蒸気ラインLを流通する発生蒸気104の温度を検出している。そして、温度検出センサ141は、検出した検出温度を、温度制御装置140へ向けて出力している。
【0039】
圧力差検出センサ142は、集塵装置(処理装置)105の前後を流れる発生蒸気104の圧力差を検出可能に配設されている。つまり、圧力差検出センサ142は、集塵装置105の上流側における発生蒸気ラインLを流通する発生蒸気104の圧力を検出すると共に、集塵装置105の下流側における発生蒸気ラインLを流通する発生蒸気104の圧力を検出している。そして、圧力差検出センサ142は、集塵装置105の上流側における発生蒸気104の圧力と、集塵装置105の下流側における発生蒸気104の圧力との差分を圧力差として検出し、この圧力差を、温度制御装置140に出力している。
【0040】
温度制御装置140は、温度検出センサ141から入力された検出温度と、圧力差検出センサ142から入力された圧力差とに基づいて、流量調整弁143の開度を調整することにより、過熱部材130の温度を制御している。
【0041】
具体的に説明すると、温度制御装置140は、温度検出センサ141から入力された検出温度が、例えば、予め設定された設定温度、すなわち発生蒸気104が結露しないような温度であるか否かを判定する。判定した結果、検出温度が設定温度以上である場合、温度制御装置140は、流量調整弁143を閉弁側へ制御する一方で、検出温度が設定温度未満である場合、温度制御装置140は、流量調整弁143を開弁側へ制御する。
【0042】
また、温度制御装置140は、圧力差検出センサ142から入力された圧力差が、例えば、予め設定された設定圧力差、すなわち発生蒸気104が結露しないような圧力差であるか否かを判定する。ここで、圧力差が大きくなる場合とは、集塵装置105の上流側の発生蒸気104の圧力に対し、集塵装置105の下流側の発生蒸気104の圧力が低くなった場合であり、これは、集塵装置105の下流側の発生蒸気104の温度が低くなることにより、発生蒸気104の圧力が低くなるからである。従って、判定した結果、圧力差が設定圧力差以上である場合、温度制御装置140は、流量調整弁143を開弁側へ制御する一方で、圧力差が設定圧力差未満である場合、温度制御装置140は、流量調整弁143を閉弁側へ制御する。
【0043】
従って、流動層乾燥装置102において、流動層111の内部に設けられた伝熱部材103は、流動層111の褐炭101を加熱することにより、褐炭101を乾燥させる。褐炭101を乾燥させることにより発生した発生蒸気104は、流動層111からフリーボード部Fに流れ込む。そして、フリーボード部Fに流れ込んだ発生蒸気104は、過熱部材130によって過熱された後、発生蒸気ラインLにより流動層乾燥装置102の外部に排出される。
【0044】
この発生蒸気104には、褐炭101が乾燥し微粉化したものが含まれているので、サイクロンや電気集塵機等の集塵装置105により集塵して固体成分115として分離する。この固体成分115は、分離ラインLを通って、流動層乾燥装置102から抜き出された乾燥褐炭108に合流して混合され、冷却器110で冷却したものが、製品ラインLを通って、製品炭109として排出される。この製品炭109は、例えばボイラ、ガス化炉等の原料として利用に供される。
【0045】
一方、集塵装置105により集塵された後の発生蒸気104は、例えば105〜110℃の蒸気であるので、熱回収システム106で熱回収された後、水処理部112で処理され、排水113として流動層乾燥設備100の外部に排出されている。なお、集塵装置105により集塵された後の発生蒸気104は、例えば、熱交換器や蒸気タービン等に適用してその熱を有効利用するようにしてもよい。
【0046】
また、集塵装置105により集塵された後の発生蒸気104の一部は、分岐ラインLに介装された循環ファン114により流動層乾燥装置102内に送られて、褐炭101の流動層111を流動させる流動化蒸気107として利用される。なお、流動層111を流動化させる流動化媒体としては、発生蒸気104の一部を再利用しているが、これに限定されず、例えば窒素、二酸化炭素またはこれらのガスを含む低酸素濃度の空気を用いてもよい。
【0047】
なお、被乾燥物として褐炭101を例示したが、水分含量の高いものであれば、亜瀝青炭等を含む低品位炭や、スラッジ等の被乾燥物を乾燥対象としてもよい。
【0048】
続いて、実施の形態1に係る流動層乾燥装置102で乾燥した製品炭109を用い、石炭ガス化複合発電(Integrated Coal Gasification Combined Cycle:IGCC)システムに適用した一例を説明する。図2は、図1に示す流動層乾燥設備を適用した石炭ガス化複合発電システムの一例を示す概略図である。
【0049】
図2に示すように、石炭ガス化複合発電システム200は、燃料である褐炭101を流動層乾燥設備100で乾燥させて製品炭109とした後、製品炭109をミル210で粉砕した微粉炭201aを処理してガス化ガス202に変換する石炭ガス化炉203と、前記ガス化ガス202を燃料として運転されるガスタービン(GT)204と、前記ガスタービン204からのタービン排ガス205を導入する排熱回収ボイラ((Heat Recovery Steam Generator:HRSG)206で生成した蒸気207により運転される蒸気タービン(ST)208と、前記ガスタービン204および/または前記蒸気タービン208と連結された発電機(G)209とを備えるものである。
【0050】
この石炭ガス化複合発電システム200は、ミル210で粉砕された微粉炭201aを石炭ガス化炉203でガス化し、生成ガスであるガス化ガス202を得る。このガス化ガス202は、サイクロン211およびガス精製装置212で除塵およびガス精製された後、発電手段であるガスタービン204の燃焼器213に供給され、ここで燃焼して高温・高圧の燃焼ガス214を生成する。そして、この燃焼ガス214によってガスタービン204を駆動する。このガスタービン204は、発電機209と連結されており、ガスタービン204が駆動することによって発電機209が電力を発生する。ガスタービン204を駆動した後のタービン排ガス205は、まだ約500〜600℃の温度を持っているため、排熱回収ボイラ(HRSG)206へ送られ、ここで熱エネルギーが回収される。この排熱回収ボイラ(HRSG)206では、タービン排ガス205の熱エネルギーによって蒸気207が生成され、この蒸気207によって蒸気タービン208を駆動する。この排熱回収ボイラ(HRSG)206で熱エネルギーが回収された排ガス215は、ガス浄化装置216で排ガス215中のNOxおよびSOx分が除去された後、煙突217を介して大気中へ放出される。なお、図中、符号218は復水器、219は空気、220は圧縮機、221は空気を窒素(N)と酸素(O)とに分離する空気分離装置(ASU)を各々図示する。
【0051】
この石炭ガス化複合発電システム200によれば、高い水分を有する褐炭101を用いてガス化する場合においても、効率的な流動層乾燥装置102により褐炭101を乾燥しているので、ガス化効率が向上し、長期間に亙って安定して発電を行うことができる。
【0052】
なお、本実施例に係る流動層乾燥設備100で乾燥した製品炭109を用いた発電システムとしては、上述した石炭ガス化複合発電システム200に限らない。例えば、図には明示しないが、流動層乾燥設備100で乾燥した製品炭109をボイラ火炉に供給し、当該ボイラ火炉で発生した蒸気で蒸気タービンを駆動して発電機により出力を得る褐炭炊ボイラによる発電システムであってもよい。
【0053】
以上の構成によれば、実施例1の流動層乾燥装置102を用いることで、流動層111の褐炭101を乾燥させることにより発生する発生蒸気104を、過熱部材130により直接過熱することができる。また、温度制御装置140は、過熱部材130の温度を制御することにより、発生蒸気104が結露(凝縮)しないような温度とすることができる。これにより、実施例1に係る流動層乾燥装置102は、発生蒸気104による結露の発生を抑制することができ、また、温度制御装置140により発生蒸気104の温度を安定的に制御することができる。
【0054】
また、温度制御装置140は、温度検出センサ141により検出した発生蒸気104の検出温度に基づいて、過熱部材130の温度を制御することができ、また、圧力差検出センサ142により検出した発生蒸気104の圧力差に基づいて、過熱部材130の温度を制御することができる。このため、温度制御装置140は、発生蒸気104の温度や圧力差を好適に把握することができ、これにより、過熱部材130の温度制御を好適に実行することができる。
【0055】
また、過熱蒸気供給装置135は、第1蒸気流路Rおよび第2蒸気流路Rに、それぞれ過熱蒸気Aを供給することができるため、伝熱部材103を好適に加熱することができ、過熱部材130を好適に過熱することができる。
【0056】
なお、実施例1では、流動層111の内部に伝熱部材103を配設したが、これを廃した構成としてもよい。この場合、流動層111の褐炭101は、流動化蒸気107によって乾燥可能な構成とすることが好ましい。また、伝熱部材103および過熱部材130には、過熱蒸気供給装置135により過熱蒸気Aが送られたが、過熱蒸気Aに限らず、他の高温ガスを送ってもよい。さらに、実施例1において、温度制御装置140は、温度検出センサ141および圧力差検出センサ142の検出結果に基づいて、流量調整弁143を制御したが、温度検出センサ141または圧力差検出センサ142のいずれか一方を廃した構成としてもよい。つまり、温度制御装置140は、温度検出センサ141または圧力差検出センサ142の検出結果に基づいて、流量調整弁143を制御してもよい。
【実施例2】
【0057】
次に、実施例2について、図面を参照して説明する。図3は、実施例2に係る流動層乾燥装置を適用した流動層乾燥設備の一例を示す概略図である。なお、重複した記載を避けるべく、異なる部分についてのみ説明する。実施例1に係る流動層乾燥装置102は、過熱蒸気供給装置135により伝熱部材103および過熱部材130にそれぞれ過熱蒸気Aを供給したが、実施例2に係る流動層乾燥装置250では、過熱蒸気供給装置257により過熱蒸気Aは過熱部材256に供給された後、過熱部材256から伝熱部材255へ供給される。以下、実施例2の流動層乾燥装置250について説明する。
【0058】
図3に示すように、流動層乾燥装置250は、第1蒸気流路Rを有する伝熱部材255と、第2蒸気流路Rを有する過熱部材256と、第1蒸気流路Rおよび第2蒸気流路Rを接続する接続流路Rと、第2蒸気流路Rに過熱蒸気Aを供給可能な過熱蒸気供給装置257とを備えている。
【0059】
過熱蒸気供給装置257は、過熱ラインLを介して、過熱部材256の第2蒸気流路Rに過熱蒸気Aを供給している。過熱部材256は、第2蒸気流路Rの一端が過熱ラインLに接続され、第2蒸気流路Rの他端が接続流路Rの一端に接続されている。接続流路Rは、その一端が第2蒸気流路Rの他端に接続され、その他端が伝熱部材255の第1蒸気流路Rの一端に接続されている。伝熱部材255は、第1蒸気流路Rの一端が接続流路Rの他端に接続され、第1蒸気流路Rの他端は凝縮水Bを流動層乾燥装置250の外部に排出可能に構成されている。なお、過熱ラインLには、実施例1の流量調整弁143が介設されている。
【0060】
従って、過熱蒸気供給装置257から過熱蒸気Aが過熱ラインLを通過して、過熱部材256に供給されると、過熱蒸気Aは、第2蒸気流路Rを流通して、過熱部材256を過熱する。この後、第2蒸気流路Rを流通した過熱蒸気Aは、接続流路Rを流通して、伝熱部材255に流入する。伝熱部材255に流入した過熱蒸気Aは、第1蒸気流路Rを流通して、伝熱部材255を加熱する。
【0061】
以上の構成によれば、過熱蒸気供給装置257は、過熱蒸気Aを過熱部材256に供給することで、過熱部材256を過熱することができると共に、伝熱部材255を加熱することができる。これにより、過熱蒸気Aの流れを直列にすることができるため、流動層乾燥装置250の構成を簡易なものとすることができる。
【実施例3】
【0062】
次に、実施例3について、図面を参照して説明する。図4は、実施例3に係る流動層乾燥装置を適用した流動層乾燥設備の一例を示す概略図である。なお、重複した記載を避けるべく、この場合も異なる部分についてのみ説明する。実施例1に係る流動層乾燥装置102は、その乾燥容器120の鉛直方向に直交する断面積が、鉛直方向において同じである。つまり、過熱部材130が設けられたフリーボード部Fにおける乾燥容器120の断面積と、流動層111における乾燥容器120の断面積とは同じである。一方で、実施例3に係る流動層乾燥装置270は、過熱部材273が設けられたフリーボード部Fにおける乾燥容器271の断面積と、流動層111における乾燥容器271の断面積とは異なっている。以下、実施例3の流動層乾燥装置270について説明する。
【0063】
この流動層乾燥装置270の乾燥容器271は、鉛直方向下方側に流動層111が形成され、鉛直方向上方側にフリーボード部Fが形成される。このとき、乾燥容器271は、そのフリーボード部Fにおける部分が、鉛直方向上方側に向かうにつれて先細りとなるテーパ形状となっている。このため、鉛直方向(つまり発生蒸気の流れ方向)に直交する乾燥容器271の断面積において、フリーボード部Fにおける乾燥容器271の断面積は、流動層111における乾燥容器271の断面積に比して小さくなっている。そして、テーパ状に形成されたフリーボード部Fの先端側(鉛直方向上方側)に過熱部材273が配置されている。なお、過熱部材273は、実施例1の過熱部材130とほぼ同様の構成であるが、フリーボード部Fにおける乾燥容器271の断面積が小さい分、過熱部材273のサイズも小さくなっている。
【0064】
従って、流動層111から発生蒸気104が発生すると、発生蒸気104は、フリーボード部Fを通過するが、このとき、フリーボード部Fにおける乾燥容器271の断面積は、鉛直方向上方側へ向かって小さくなっていく。このため、鉛直方向上方側へ向かう発生蒸気104は、フリーボード部Fの断面積が小さくなる分、発生蒸気104の流速が上昇する。これにより、過熱部材273では、流速が上昇した発生蒸気104が通過する。
【0065】
以上の構成によれば、流動層111から発生した鉛直方向上方側へ向かう発生蒸気104は、過熱部材273が設けられたフリーボード部Fにおける乾燥容器271の断面積が小さくなる分、発生蒸気104の流速が上昇する。このため、過熱部材273には、流速が上昇した発生蒸気104が通過することから、過熱部材273の発生蒸気104に対する伝熱効率を向上させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0066】
以上のように、本発明に係る流動層乾燥装置および流動層乾燥設備は、被乾燥物として褐炭を用いるものに有用であり、特に、結露の発生を抑制する場合に適している。
【符号の説明】
【0067】
100 流動層乾燥設備
101 褐炭
102 流動層乾燥装置
103 伝熱部材
104 発生蒸気
105 集塵装置
106 熱回収システム
107 流動化蒸気
108 乾燥褐炭
109 製品炭
110 冷却器
111 流動層
120 乾燥容器
125 チャンバ室
126 乾燥室
130 過熱部材
135 過熱蒸気供給装置
140 温度制御装置
141 温度検出センサ
142 圧力差検出センサ
143 流量調整弁
200 石炭ガス化複合発電システム
250 流動層乾燥装置(実施例2)
255 伝熱部材(実施例2)
256 過熱部材(実施例2)
257 過熱蒸気供給装置(実施例2)
270 流動層乾燥装置(実施例3)
271 乾燥容器(実施例3)
273 過熱部材(実施例3)
A 過熱蒸気
B 凝縮水
F フリーボード部
発生蒸気ライン
分岐ライン
分離ライン
製品ライン
加熱ライン
過熱ライン
第1蒸気流路(加熱ガス流路)
第2蒸気流路(過熱ガス流路)
接続流路(実施例2)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に形成された乾燥室に供給される流動化ガスにより、前記乾燥室に供給された被乾燥物を流動させることで、前記乾燥室に流動層が形成される乾燥容器と、
前記乾燥容器の内部に設けられ、前記流動層の前記被乾燥物が乾燥されることにより発生蒸気が発生する領域に設けられた過熱手段と、を備えたことを特徴とする流動層乾燥装置。
【請求項2】
前記過熱手段の過熱温度を制御可能な温度制御手段をさらに備えたことを特徴とする請求項1に記載の流動層乾燥装置。
【請求項3】
前記発生蒸気の流れ方向において、前記過熱手段の下流側に設けられた温度検出手段をさらに備え、
前記温度制御手段は、前記温度検出手段によって検出された検出温度に基づいて、前記過熱手段の過熱温度を制御することを特徴とする請求項2に記載の流動層乾燥装置。
【請求項4】
前記発生蒸気の流れ方向において、前記過熱手段の下流側には、前記発生蒸気に処理を実行可能な処理装置が設けられ、
前記処理装置に導入される発生蒸気の圧力と、前記処理装置から導出される発生蒸気の圧力との圧力差を検出可能な圧力差検出手段をさらに備え、
前記温度制御手段は、前記圧力差検出手段によって検出された圧力差に基づいて、前記過熱手段の過熱温度を制御することを特徴とする請求項2または3に記載の流動層乾燥装置。
【請求項5】
前記発生蒸気の流れ方向に直交する前記乾燥容器の断面積において、前記過熱手段の配設位置における前記乾燥容器の断面積は、前記過熱手段の上流側における前記乾燥容器の断面積に比して小さいことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の流動層乾燥装置。
【請求項6】
前記乾燥容器の内部に設けられ、前記流動層の内部に配置された加熱手段を、さらに備えたことを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の流動層乾燥装置。
【請求項7】
前記過熱手段には、その内部に高温ガスを流通可能な過熱ガス流路が設けられ、
前記加熱手段には、その内部に前記高温ガスを流通可能な加熱ガス流路が設けられ、
前記過熱ガス流路および前記加熱ガス流路にそれぞれ前記高温ガスを供給可能な高温ガス供給手段をさらに備えたことを特徴とする請求項6に記載の流動層乾燥装置。
【請求項8】
前記過熱手段には、その内部に高温ガスを流通可能な過熱ガス流路が設けられ、
前記加熱手段には、その内部に前記高温ガスを流通可能な加熱ガス流路が設けられ、
前記過熱ガス流路と前記加熱ガス流路とを接続するガス接続流路と、
前記過熱ガス流路へ前記高温ガスを供給可能な高温ガス供給手段と、をさらに備えたことを特徴とする請求項6に記載の流動層乾燥装置。
【請求項9】
被乾燥物を乾燥可能な請求項1ないし8のいずれか1項に記載の流動層乾燥装置と、
前記発生蒸気を前記流動層乾燥装置の外部に排出する発生蒸気ラインと、
前記発生蒸気ラインに介装され、前記発生蒸気中の粉塵を除去する集塵装置と、
前記発生蒸気ラインにおける前記集塵装置の下流側に介装され、前記発生蒸気の熱を回収する熱回収システムと、
前記集塵装置から粉塵が除去された前記発生蒸気の一部を分岐し、流動化ガスとして前記流動層乾燥装置内に供給する分岐ラインと、
前記流動層乾燥装置によって乾燥された前記被乾燥物を冷却する冷却器と、を備えたことを特徴とする流動層乾燥設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−214807(P2011−214807A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−86019(P2010−86019)
【出願日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】