流動床反応器中で粒状の多結晶ケイ素を製造する方法および装置
本発明は、粒状の多結晶ケイ素を製造する方法であって、高温の表面を有する流動床反応器中で、気体状のケイ素化合物を含有する反応ガスを、600〜1100℃の反応温度で、流動化ガスにより流動化されて流動床となっているケイ素粒子上にケイ素金属として堆積させ、かつ堆積したケイ素を有する粒子ならびに反応しなかった反応ガスおよび流動化ガスを反応器から除去する方法において、反応器の表面に、水素99.5〜95モル%および気体状のケイ素化合物0.5〜5モル%を含有する気体組成物が存在し、かつ反応器の表面は、700〜1400℃の温度を有し、かつこの温度は、ケイ素粒子の温度に相応するか、またはケイ素粒子の温度よりも高いことを特徴とする、流動床反応器中で粒状の多結晶ケイ素を製造する方法に関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流動床反応器中で粒状の多結晶ケイ素を製造する方法および装置に関する。
【0002】
高純度の多結晶ケイ素は特に電子工学部材およびソーラーセルを製造するために使用される。該多結晶ケイ素は、ケイ素含有ガスまたはケイ素含有ガス混合物を熱分解することにより得られる。この方法は、蒸気相からの堆積(CVD、化学気相成長)とよばれる。この方法は大規模の場合、いわゆるシーメンス反応器中で実現される。
【0003】
最近では不連続的なシーメンス法の代替法として、連続的な流動床法を利用する数多くの試みが存在する。この場合、流動床はケイ素粒子、通常はほぼ球形の、200〜3000μmの直径を有するケイ素粒子からなる流動床が運転される。該粒子は有利に600〜1100℃の堆積温度まで加熱され、かつケイ素含有ガスもしくはガス混合物、たとえばトリクロロシランもしくはトリクロロシランと水素との混合物が流動床に導通される。その際、元素のケイ素が全ての高温表面上に堆積し、かつケイ素粒子はその大きさにおいて成長する。このような方法もしくは適切な反応器はたとえばDE19948395A1に記載されている。この方法は、成長した粒子を規則的に取り出し、かつより小さい粒子をシード粒子として添加することにより、理論的にはこの方法と結びついた全ての利点と共に連続的に運転することができる。しかし実際には、高温の反応器部分、たとえば反応器壁、内部構造物部材およびノズルにケイ素が堆積することに基づいて、反応器の熱的および機械的負荷を生じ、ひいては反応器表面における熱ジャムによる反応器の停止につながる。ケイ素が高温の反応器表面に堆積する問題を最小化することは、流動床法の経済的な運転法にとって極めて重要である。
【0004】
US2002/0102850A1(Kim)の出願には、連続的に、不連続的に、または制御された方法で、HCl+不活性ガス(H2、N2、He、Ar)または不活性ガスH2を供給することにより、原料ガスノズル上でのケイ素堆積物を回避および除去するための方法および装置が記載されている。残念ながらこのような方法実施の際には、運転コストが上昇するという欠点があり、というのも、反応率ひいては反応器の空時収率が、HCl供給の際に低下するからである。さらに、電子工学グレードのHClの使用は付加的な精製および純度維持の方法工程を必要とし、かつ汚染の危険の上昇および原料コストの上昇と結びついている。
【0005】
DE4327308C2(US5,382,412に相応)の特許は、加熱帯域および反応帯域が分離されており、かつ反応器の加熱がマイクロ波により行われる反応器を記載している。マイクロ波加熱は、壁の過熱ひいては壁の堆積を回避すべきものである。というのは、高い壁温度の結果として、Siの壁堆積が高まるからである。この特許はさらに、壁における堆積が400℃より高い温度で行われ、かつ壁の冷却は、エネルギー損失により不経済的であることを開示している。
【0006】
US4,868,013(Allen)は、低温の不活性ガス(たとえばH2)をノズル導入することにより、反応器表面を冷却し、かつこのことによって壁の堆積が低減される。
【0007】
EP0832312B1もしくはUS2002/0081250A1には、流動床反応器の運転温度で、または運転温度に近い温度で、ハロゲン含有の気体状エッチング剤、たとえば塩化水素、塩素ガスまたは四塩化ケイ素を用いて、壁の堆積物をエッチング除去するか、または部分的に除去する方法が記載されている。全ての前記のエッチング剤は、本来の目的反応の局所的な逆転をもたらし、そのために反応器の空時収率が低下し、かつこのことによって方法の経済性が低下する。
【0008】
DE3910343A1(Union Carbide Corp)には、壁の堆積が、反応器の二重壁により防止される反応器が記載されている。反応器壁の外側のリングには、流動化ガスのみがノズル導入され、反応ガスは導入されない。この出願は、反応器壁が、流動床よりも高い温度を有しており、かつ従って壁におけるケイ素の堆積を生じ、かつここから反応器への熱輸送の低下が生じる。二重壁により加熱帯域および反応帯域の分離が達成され、その際、加熱帯域への熱輸送は良好に維持される。
【0009】
ケイ素が反応器表面に堆積することを低減するための前記の全ての解決策の欠点は、運転コストの上昇である。HCl/不活性ガスの供給の際に、反応率ひいては反応器の空時収率が低下する。というのも、HCl/不活性ガスの供給は、ケイ素の堆積の本来の目的に対抗するからである。さらに塩化水素は一般に、残りの原料ガス(水素、クロロシラン)のように高純度で利用されない。従って塩化水素を使用するためには、相応する品質への後処理のために付加的な装置が必要とされる。壁の冷却の際に、方法のエネルギー必要量は、方法が不経済的になるほど著しく上昇する。
【0010】
本発明の課題は、加熱された表面を有する流動床反応器中で、粒状の多結晶ケイ素を製造するための経済的な方法であって、流動床反応器の表面におけるケイ素の堆積が低減されている方法を提供することであった。
【0011】
前記課題は、高温の表面を有する反応器中で、流動化ガスにより流動化されて流動床となっており、かつ反応温度に加熱されているケイ素粒子上に、600〜1100℃の反応温度で、気体状のケイ素化合物を含有する反応ガスをケイ素金属として堆積させ、かつ堆積したケイ素を有する粒子ならびに反応していない反応ガスおよび流動化ガスを反応器から除去する方法であって、その際、反応器の表面に、水素99.5〜95モル%および気体状のケイ素化合物0.5〜5モル%を含有する気体組成物が存在し、かつ反応器の表面が、700〜1400℃の温度を有し、かつこの温度は、ケイ素粒子の温度に相応するか、またはケイ素粒子の温度よりも高い方法により解決される。
【0012】
高い反応器表面温度と、水素99.5〜95モル%および気体状のケイ素化合物0.5〜5モル%を含有する気体組成物とを組み合わせることにより、反応器表面において反応平衡状態を調整することができ、その際、反応器の表面上でのケイ素の堆積はほぼ行われず、従って連続的な方法の実施が可能であり、かつ有利でもあることは、全く意外であった。
【0013】
本発明による方法は、従来技術において記載されている、反応器壁の冷却または反応ガスノズルを冷却する方法よりも低いエネルギー消費量を有する。この方法は、ハロゲン化水素を供給する従来技術の方法と比較して、高い空時収率を有する。従ってこの方法は、経済的にも興味深い。
【0014】
有利には反応器の表面において、水素97〜99モル%および気体状ケイ素化合物1〜3モル%を含有する気体組成物が存在する。
【0015】
反応器の表面における気体組成物は、別の化合物、たとえば反応器の排ガスからの含有物質、たとえば循環ガスを含有していてもよい。循環ガスは、−60℃よりも高い沸点を有する全ての成分が凝縮により除去された、反応器の排ガスである。
【0016】
有利には反応器の表面温度は800〜1100℃である。流動化ガスは、有利には水素ガス、循環ガスまたはこれらのガスの混合物である。
【0017】
気体状のケイ素化合物を含有している反応ガスは、有利にはモノシランまたはクロロシラン化合物であるか、またはモノシランと水素との、もしくはクロロシランと水素との混合物である。特に有利であるのは、トリクロロシランまたはトリクロロシランと水素との混合物である。
【0018】
反応器表面における局所的な濃度比の調整は、流動化ガスおよび反応ガスの量比を相応して供給することにより行う。流動化ガスおよび反応ガスからなる異なった組成の気体混合物をノズル導入することにより、反応器中の異なった箇所における局所的な気体組成は、そのつど異なるように調整されうる。この場合、本発明によれば、反応器中の気体組成物は、気体量を制御することにより、反応器の表面に、水素99.5〜95モル%および気体状のケイ素化合物0.5〜5モル%を含有する気体組成物が存在するように制御される。残りの反応空間には、水素中の気体状のケイ素化合物の高い割合、有利には20〜80モル%、特に有利には30〜50モル%を有する気体混合物が存在する。
【0019】
全ての気体量の合計において、反応器横断面の気体組成物は、気体状ケイ素化合物を有利には15〜60モル%、および水素を40〜85モル%、好ましくは気体状のケイ素化合物を20〜50モル%、および水素を50〜80モル%含有している。
【0020】
本発明による方法は、有利には1〜20バール絶対の範囲、特に有利には1〜6バール絶対の範囲で実施される。
【0021】
本発明はまた、本発明による方法を実施するための装置にも関する。
【0022】
この装置は、
a)耐圧性外被(2)
b)温度放射のための高い透過率を有する材料からなる内部管型反応器(3)
c)ケイ素粒子(5)のための入口(4)
d)気体状もしくは蒸気状のケイ素化合物を含有する反応ガス(7)を供給するための導入装置(6)
e)流動化ガス(9)を供給するためのガス分散装置(8)
f)反応しなかった反応ガス、流動化ガスならびに流動床表面(19)の上方に集まる、気体状もしくは蒸気状反応生成物(11)のための出口(10)
g)生成物(13)のための出口(12)
h)加熱装置(14)
i)加熱装置(14)のためのエネルギー供給源(15)
を有する流動床反応器(1)であり、保護されるべき反応器表面の領域に、付加的なノズル(18)が存在しており、該ノズルを介して、水素99.5〜95モル%および気体状のケイ素化合物0.5〜5モル%を含有する気体組成物(17)が、反応器中へ導入されることを特徴とする。
【0023】
有利にはエネルギー損失を低減するために、断熱材(16)が、内部管型反応器(3)の周囲に配置されている。
【0024】
加熱装置(14)は有利に、温度放射のための放射源であり、これは内部管型反応器(3)の外部に、かつ該管型反応器に直接接触することなくリング状に配置されている。
【0025】
温度放射のための高い透過率とは、有利には、管型反応器が、加熱装置から放出される温度放射に関して有利に80%を超える透過率を有していることであると理解すべきである。
【0026】
本発明の1実施態様では、導入装置(6)が管状に形成されており、かつ流動床を、加熱帯域と、その上に存在する反応帯域とに分割する。この実施態様では、加熱装置(14)は有利には、温度放射によってケイ素粒子は加熱帯域中で、反応温度が反応帯域中で調整されるような温度に加熱されるように構成されている。
【0027】
「反応器表面」および「反応器の表面」とは、本発明の意味では有利には、反応空間に向かい合う反応器壁の表面(流動床反応器(1)中の、内部管型反応器(3)の反応空間に向かい合う表面)、反応空間に向かい合う導入装置の表面、および存在する場合には、反応器中の内部構造物の、反応空間に向かい合う表面であると理解すべきである。内部構造物とは、流動床反応器において通例の内部構造物、たとえばじゃま板、または気泡を破壊する内部構造物、たとえば多孔板またはジグザグ状の物体である。
【0028】
有利には反応器表面はさらに、通例の流動床加熱のために加熱される。これはたとえば導入装置の表面における電気加熱コイルにより、または反応器壁の放射線加熱を増大することにより行うことができる。
【0029】
気体組成物の局所的な濃度の調整は、図面において例示的に記載されているような、別のノズル、ランスまたは内部構造物により軽減することができる。
【0030】
図1は、本発明による反応器の1実施態様の縦断面を略図により示しており、この場合、水素中の気体状のケイ素化合物の高い割合を有する気体混合物(7)を、ノズルの形の中央の導入装置(6)により反応器へ導入し、かつ周囲のノズル(18)により、水素99.5〜95モル%および気体状のケイ素化合物0.5〜5モル%の割合を有する気体混合物(17)を、反応器(1)に導入する。
【0031】
図2aおよび2bは、本発明による反応器の1実施態様の縦断面および横断面を略図により示しており、これは水素中の気体状もしくは蒸気状のケイ素化合物を含有する反応ガスを供給するための複数の中央のノズル(6)の形の中央の導入装置、およびリングギャップ(20)を有しており、該ギャップにより水素99.5〜95モル%および気体状のケイ素化合物0.5〜5モル%を含有する気体組成物が、内部管型反応器(3)に導入される。
【0032】
図3aおよび3bは、本発明による反応器の1実施態様の縦断面および横断面を略図により示しており、これは、水素中の気体状もしくは蒸気状のケイ素化合物を含有する反応ガスを供給するために、中央の導入装置として、複数の中央のノズル(6)、および複数の短い、もしくは長い底部ノズル(21)を有しており、該ノズルにより、水素99.5〜95モル%および気体状のケイ素化合物0.5〜5モル%を含有する気体組成物が、内部管型反応器(3)に導入される。
【0033】
図4aおよび4bは、本発明による反応器の1実施態様の縦断面および横断面を略図により示しており、この場合、内部構造物(22)および、気体状のケイ素化合物の高い割合を有する気体混合物を内部管型反応器(3)中に導入する中央のノズル(6)におけるケイ素の堆積から保護するために、付加的なノズル(18)が、内部構造物(22)および中央のノズル(6)の付近に存在しており、該ノズルにより水素99.5〜95モル%および気体状のケイ素化合物0.5〜5モル%を含有する気体組成物が、内部管型反応器(3)に導入される。
【0034】
図5aおよび5bは、本発明による反応器の1実施態様を縦断面および横断面を略図により示しており、この場合、中央のノズル(6)の表面を保護するためにリングギャップノズル(23)が、および内部管型反応器(3)のノズルの表面を保護するために反応器ヘッドノズル(24)が存在しており、その際、リングギャップノズル(23)および反応器ヘッドノズル(24)により、水素99.5〜95モル%および気体状のケイ素化合物0.5〜5モル%を含有する気体組成物が、内部管型反応器(3)に導入される。
【0035】
図6は、本発明による反応器中での反応ガス濃度の低下の測定を略図により示している。このために、スケール(28)を備えた反応器の外側に存在する直径6mmを有する試料吸引管(27)は、半径方向で内部管型反応器(3)を通って異なった深さで反応器へ挿入される。このことにより特定の反応器高さにおける半径方向の濃度の推移の測定が可能である。反応器中での軸方向での濃度の推移を示すために、試料吸引管を導入するための複数の穿孔を、異なった反応器高さに取り付け、かつ同一の測定を実施する(図面に示されていない)。気体濃度の測定の分析的な実施は、毛細管(OV1−カラム)を有するガスクロマトグラフ(29)中で行う。個々の気体成分の分離はこの場合、気体状の「移動相」および液状の「定常相」との間での乗法的な分布により行われる。溶出液中の分離された成分の検出は、熱伝導性検出器により行われる。反応ガス濃度の、20〜80モル%までの低下は、全ての内部管型反応器表面付近および全ての内部構造物、たとえばノズル付近等の反応器の内部で行われる。濃度の低下は、s形の推移で最初の6つの粒子層内で、つまり4.5mmの界面層において0.75mmの平均粒径で行われる。極限値として測定される0.5〜5%の濃度は、0mmの壁の間隔である(25)。その他の測定は、1、2、3、4、5mmなどの間隔で行われる。5mm以上の間隔での測定(25)では、20〜80モル%の反応ガス濃度を有する反応空間(26)中に存在する。
【0036】
図7は、図6に記載されているような、最初の6つの粒子層内での濃度低下のs形の推移を示している。
【0037】
以下の例は、本発明をさらに詳しく説明するためのものである:
実施例1
内径770mmを有する耐圧性の鋼製容器中に、内部管型反応器、内径600mmおよび長さ2200mmを有する石英管が存在している。石英管の下端では、開口部を有する石英製の板が、流動化ガスのための気体分散装置を形成している。直径250mmを有する中心円には、気体分散板から、内部管型反応器4へと、内径20mmおよび長さ250mmを有する別の石英管が、ケイ素含有ガスもしくはガス混合物の供給のための導入装置として突出している。さらに、該石英板は、生成物を取り出すための2つの開口部を有している。
【0038】
温度放射による反応器へのエネルギー導入のために、放射加熱装置が存在している。これは、相互に結合したリング形の、グラファイト製の板であり、これらの板は内部管型反応器に接触することなく、該反応器を包囲する。放射加熱装置は、電気的な出力により制御可能な電圧源を備えている。その最大性能は、200kWである。
【0039】
反応器の開始充填量は、平均粒径600μmを有するケイ素顆粒225kgである。
【0040】
反応器中では以下の条件が調整された:
流動化ガス(水素):290m3/h(標準条件)
流動化ガスの運転前温度:400℃
反応ガストリクロロシラン:270kg/h
運転温度:900℃
反応器中の圧力:200kPa(絶対)
反応器壁温度:910℃
ノズル壁温度:910℃
加熱出力:190kW。
【0041】
管型反応器の内側および反応ガスノズルの外側では、前記のパラメータ設定で、ガスクロマトグラフ測定を用いて、水素中トリクロロシラン0.1モル%の反応ガス濃度が測定された。流動床は、約1.5倍の緩和速度Umfで700時間運転した。その後に排出された粒子の粒径分析により、665μmの平均粒径が生じた。管型反応器の内側および反応ガスノズルの外側は、700時間後に、局所的なケイ素堆積物を有していた。壁における堆積物の最大厚さは0.8mmであった。ノズルにおける堆積物の最大厚さは0.9mmであった。
【0042】
例2〜9:
例1と同様に、その他は同一の条件で、運転温度、ノズル壁温度、反応器壁温度および反応ガス濃度のパラメータを、壁もしくはノズルにおいて変更し、かつ壁もしくは導入装置における最大の堆積/hを測定した。第1表は、変更した条件ならびに壁におけるケイ素の最大堆積量を記載している。第2表は、変更した条件ならびに導入装置におけるケイ素の最大堆積量を記載している。
【0043】
【表1】
【0044】
【表2】
【0045】
本発明によらない例3、4、7および8(比較例)は、運転温度よりも低い反応器壁温度で、ケイ素の局所的な堆積が高まることを示している。本発明によらない例1、3、5および7はさらに、意外にも0.5%未満の反応ガス濃度で壁堆積が増大することを示している。同じことが、ノズル壁堆積物に関しても該当する。
【0046】
例10〜16:
例1に記載の反応器中に、以下の内部構造物部材を導入した:
例10、11および12:
図5に(24)として記載されている付加的なノズルの内部構造物。横断面直径3mmを有する付加的なノズルにより、ノズルあたり、水素99.9〜95モル%およびトリクロロシラン0.1〜5モル%を含有する気体組成物10Nm3の処理量を運転した。
【0047】
例13、14および15:
図2(20)および図5(23)に記載されている、ガスにより貫流されるリングギャップの内部構造物。2mmの横断面直径を有するリングギャップにより、水素99.9〜95モル%およびトリクロロシラン0.1〜5モル%を含有する気体組成物2m/sの流速が調整された。
【0048】
例16:
図2(20)および図5(23)に記載されている、ガスにより貫流されるリングギャップの内部構造物。2mmの横断面直径を有するリングギャップにより、水素98モル%およびトリクロロシラン2モル%を含有する気体組成物2m/sの流速が調整された。流動床の運転温度および内部構造物部材の温度は、950℃に調整された。
【0049】
例1と同様に、その他は同一の条件で、運転温度、内部構造物部材の温度および内部構造物部材における反応ガス濃度のパラメータを変更した。第3表は、変更した条件ならびに内部構造物部材における最大堆積を記載している。本発明によらない例12および13は、意外にも0.5%未満の反応ガス濃度で、壁堆積物が増大することを証明している。
【0050】
【表3】
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明による反応器の1実施態様の縦断面を略図により示す図
【図2】本発明による反応器の1実施態様の縦断面および横断面を略図により示す図
【図3】本発明による反応器の1実施態様の縦断面および横断面を略図により示す図
【図4】本発明による反応器の1実施態様の縦断面および横断面を略図により示す図
【図5】本発明による反応器の1実施態様の縦断面および横断面を略図により示す図
【図6】反応器中での反応ガス濃度の測定を略図により示す図
【図7】濃度低下のs形の推移を示すグラフの図
【符号の説明】
【0052】
1 反応器、 2 外被、 3 内部管型反応器、 4 入口、 5 ケイ素粒子、 6 導入装置(ノズル)、 7 反応ガス、 8 ガス分散装置、 9 流動化ガス、 10 出口、 11 反応生成物、 12 出口、 13 生成物、 14 加熱装置、 15 エネルギー供給源、 16 断熱材、 17 気体組成物、 18 ノズル、 19 流動床表面、 20 リングギャップ、 21 底部ノズル、 22 内部構造物、 23 リングギャップノズル、 24 反応器ヘッドノズル、 27 試料吸引管、 28 スケール、 29 ガスクロマトグラフ
【技術分野】
【0001】
本発明は、流動床反応器中で粒状の多結晶ケイ素を製造する方法および装置に関する。
【0002】
高純度の多結晶ケイ素は特に電子工学部材およびソーラーセルを製造するために使用される。該多結晶ケイ素は、ケイ素含有ガスまたはケイ素含有ガス混合物を熱分解することにより得られる。この方法は、蒸気相からの堆積(CVD、化学気相成長)とよばれる。この方法は大規模の場合、いわゆるシーメンス反応器中で実現される。
【0003】
最近では不連続的なシーメンス法の代替法として、連続的な流動床法を利用する数多くの試みが存在する。この場合、流動床はケイ素粒子、通常はほぼ球形の、200〜3000μmの直径を有するケイ素粒子からなる流動床が運転される。該粒子は有利に600〜1100℃の堆積温度まで加熱され、かつケイ素含有ガスもしくはガス混合物、たとえばトリクロロシランもしくはトリクロロシランと水素との混合物が流動床に導通される。その際、元素のケイ素が全ての高温表面上に堆積し、かつケイ素粒子はその大きさにおいて成長する。このような方法もしくは適切な反応器はたとえばDE19948395A1に記載されている。この方法は、成長した粒子を規則的に取り出し、かつより小さい粒子をシード粒子として添加することにより、理論的にはこの方法と結びついた全ての利点と共に連続的に運転することができる。しかし実際には、高温の反応器部分、たとえば反応器壁、内部構造物部材およびノズルにケイ素が堆積することに基づいて、反応器の熱的および機械的負荷を生じ、ひいては反応器表面における熱ジャムによる反応器の停止につながる。ケイ素が高温の反応器表面に堆積する問題を最小化することは、流動床法の経済的な運転法にとって極めて重要である。
【0004】
US2002/0102850A1(Kim)の出願には、連続的に、不連続的に、または制御された方法で、HCl+不活性ガス(H2、N2、He、Ar)または不活性ガスH2を供給することにより、原料ガスノズル上でのケイ素堆積物を回避および除去するための方法および装置が記載されている。残念ながらこのような方法実施の際には、運転コストが上昇するという欠点があり、というのも、反応率ひいては反応器の空時収率が、HCl供給の際に低下するからである。さらに、電子工学グレードのHClの使用は付加的な精製および純度維持の方法工程を必要とし、かつ汚染の危険の上昇および原料コストの上昇と結びついている。
【0005】
DE4327308C2(US5,382,412に相応)の特許は、加熱帯域および反応帯域が分離されており、かつ反応器の加熱がマイクロ波により行われる反応器を記載している。マイクロ波加熱は、壁の過熱ひいては壁の堆積を回避すべきものである。というのは、高い壁温度の結果として、Siの壁堆積が高まるからである。この特許はさらに、壁における堆積が400℃より高い温度で行われ、かつ壁の冷却は、エネルギー損失により不経済的であることを開示している。
【0006】
US4,868,013(Allen)は、低温の不活性ガス(たとえばH2)をノズル導入することにより、反応器表面を冷却し、かつこのことによって壁の堆積が低減される。
【0007】
EP0832312B1もしくはUS2002/0081250A1には、流動床反応器の運転温度で、または運転温度に近い温度で、ハロゲン含有の気体状エッチング剤、たとえば塩化水素、塩素ガスまたは四塩化ケイ素を用いて、壁の堆積物をエッチング除去するか、または部分的に除去する方法が記載されている。全ての前記のエッチング剤は、本来の目的反応の局所的な逆転をもたらし、そのために反応器の空時収率が低下し、かつこのことによって方法の経済性が低下する。
【0008】
DE3910343A1(Union Carbide Corp)には、壁の堆積が、反応器の二重壁により防止される反応器が記載されている。反応器壁の外側のリングには、流動化ガスのみがノズル導入され、反応ガスは導入されない。この出願は、反応器壁が、流動床よりも高い温度を有しており、かつ従って壁におけるケイ素の堆積を生じ、かつここから反応器への熱輸送の低下が生じる。二重壁により加熱帯域および反応帯域の分離が達成され、その際、加熱帯域への熱輸送は良好に維持される。
【0009】
ケイ素が反応器表面に堆積することを低減するための前記の全ての解決策の欠点は、運転コストの上昇である。HCl/不活性ガスの供給の際に、反応率ひいては反応器の空時収率が低下する。というのも、HCl/不活性ガスの供給は、ケイ素の堆積の本来の目的に対抗するからである。さらに塩化水素は一般に、残りの原料ガス(水素、クロロシラン)のように高純度で利用されない。従って塩化水素を使用するためには、相応する品質への後処理のために付加的な装置が必要とされる。壁の冷却の際に、方法のエネルギー必要量は、方法が不経済的になるほど著しく上昇する。
【0010】
本発明の課題は、加熱された表面を有する流動床反応器中で、粒状の多結晶ケイ素を製造するための経済的な方法であって、流動床反応器の表面におけるケイ素の堆積が低減されている方法を提供することであった。
【0011】
前記課題は、高温の表面を有する反応器中で、流動化ガスにより流動化されて流動床となっており、かつ反応温度に加熱されているケイ素粒子上に、600〜1100℃の反応温度で、気体状のケイ素化合物を含有する反応ガスをケイ素金属として堆積させ、かつ堆積したケイ素を有する粒子ならびに反応していない反応ガスおよび流動化ガスを反応器から除去する方法であって、その際、反応器の表面に、水素99.5〜95モル%および気体状のケイ素化合物0.5〜5モル%を含有する気体組成物が存在し、かつ反応器の表面が、700〜1400℃の温度を有し、かつこの温度は、ケイ素粒子の温度に相応するか、またはケイ素粒子の温度よりも高い方法により解決される。
【0012】
高い反応器表面温度と、水素99.5〜95モル%および気体状のケイ素化合物0.5〜5モル%を含有する気体組成物とを組み合わせることにより、反応器表面において反応平衡状態を調整することができ、その際、反応器の表面上でのケイ素の堆積はほぼ行われず、従って連続的な方法の実施が可能であり、かつ有利でもあることは、全く意外であった。
【0013】
本発明による方法は、従来技術において記載されている、反応器壁の冷却または反応ガスノズルを冷却する方法よりも低いエネルギー消費量を有する。この方法は、ハロゲン化水素を供給する従来技術の方法と比較して、高い空時収率を有する。従ってこの方法は、経済的にも興味深い。
【0014】
有利には反応器の表面において、水素97〜99モル%および気体状ケイ素化合物1〜3モル%を含有する気体組成物が存在する。
【0015】
反応器の表面における気体組成物は、別の化合物、たとえば反応器の排ガスからの含有物質、たとえば循環ガスを含有していてもよい。循環ガスは、−60℃よりも高い沸点を有する全ての成分が凝縮により除去された、反応器の排ガスである。
【0016】
有利には反応器の表面温度は800〜1100℃である。流動化ガスは、有利には水素ガス、循環ガスまたはこれらのガスの混合物である。
【0017】
気体状のケイ素化合物を含有している反応ガスは、有利にはモノシランまたはクロロシラン化合物であるか、またはモノシランと水素との、もしくはクロロシランと水素との混合物である。特に有利であるのは、トリクロロシランまたはトリクロロシランと水素との混合物である。
【0018】
反応器表面における局所的な濃度比の調整は、流動化ガスおよび反応ガスの量比を相応して供給することにより行う。流動化ガスおよび反応ガスからなる異なった組成の気体混合物をノズル導入することにより、反応器中の異なった箇所における局所的な気体組成は、そのつど異なるように調整されうる。この場合、本発明によれば、反応器中の気体組成物は、気体量を制御することにより、反応器の表面に、水素99.5〜95モル%および気体状のケイ素化合物0.5〜5モル%を含有する気体組成物が存在するように制御される。残りの反応空間には、水素中の気体状のケイ素化合物の高い割合、有利には20〜80モル%、特に有利には30〜50モル%を有する気体混合物が存在する。
【0019】
全ての気体量の合計において、反応器横断面の気体組成物は、気体状ケイ素化合物を有利には15〜60モル%、および水素を40〜85モル%、好ましくは気体状のケイ素化合物を20〜50モル%、および水素を50〜80モル%含有している。
【0020】
本発明による方法は、有利には1〜20バール絶対の範囲、特に有利には1〜6バール絶対の範囲で実施される。
【0021】
本発明はまた、本発明による方法を実施するための装置にも関する。
【0022】
この装置は、
a)耐圧性外被(2)
b)温度放射のための高い透過率を有する材料からなる内部管型反応器(3)
c)ケイ素粒子(5)のための入口(4)
d)気体状もしくは蒸気状のケイ素化合物を含有する反応ガス(7)を供給するための導入装置(6)
e)流動化ガス(9)を供給するためのガス分散装置(8)
f)反応しなかった反応ガス、流動化ガスならびに流動床表面(19)の上方に集まる、気体状もしくは蒸気状反応生成物(11)のための出口(10)
g)生成物(13)のための出口(12)
h)加熱装置(14)
i)加熱装置(14)のためのエネルギー供給源(15)
を有する流動床反応器(1)であり、保護されるべき反応器表面の領域に、付加的なノズル(18)が存在しており、該ノズルを介して、水素99.5〜95モル%および気体状のケイ素化合物0.5〜5モル%を含有する気体組成物(17)が、反応器中へ導入されることを特徴とする。
【0023】
有利にはエネルギー損失を低減するために、断熱材(16)が、内部管型反応器(3)の周囲に配置されている。
【0024】
加熱装置(14)は有利に、温度放射のための放射源であり、これは内部管型反応器(3)の外部に、かつ該管型反応器に直接接触することなくリング状に配置されている。
【0025】
温度放射のための高い透過率とは、有利には、管型反応器が、加熱装置から放出される温度放射に関して有利に80%を超える透過率を有していることであると理解すべきである。
【0026】
本発明の1実施態様では、導入装置(6)が管状に形成されており、かつ流動床を、加熱帯域と、その上に存在する反応帯域とに分割する。この実施態様では、加熱装置(14)は有利には、温度放射によってケイ素粒子は加熱帯域中で、反応温度が反応帯域中で調整されるような温度に加熱されるように構成されている。
【0027】
「反応器表面」および「反応器の表面」とは、本発明の意味では有利には、反応空間に向かい合う反応器壁の表面(流動床反応器(1)中の、内部管型反応器(3)の反応空間に向かい合う表面)、反応空間に向かい合う導入装置の表面、および存在する場合には、反応器中の内部構造物の、反応空間に向かい合う表面であると理解すべきである。内部構造物とは、流動床反応器において通例の内部構造物、たとえばじゃま板、または気泡を破壊する内部構造物、たとえば多孔板またはジグザグ状の物体である。
【0028】
有利には反応器表面はさらに、通例の流動床加熱のために加熱される。これはたとえば導入装置の表面における電気加熱コイルにより、または反応器壁の放射線加熱を増大することにより行うことができる。
【0029】
気体組成物の局所的な濃度の調整は、図面において例示的に記載されているような、別のノズル、ランスまたは内部構造物により軽減することができる。
【0030】
図1は、本発明による反応器の1実施態様の縦断面を略図により示しており、この場合、水素中の気体状のケイ素化合物の高い割合を有する気体混合物(7)を、ノズルの形の中央の導入装置(6)により反応器へ導入し、かつ周囲のノズル(18)により、水素99.5〜95モル%および気体状のケイ素化合物0.5〜5モル%の割合を有する気体混合物(17)を、反応器(1)に導入する。
【0031】
図2aおよび2bは、本発明による反応器の1実施態様の縦断面および横断面を略図により示しており、これは水素中の気体状もしくは蒸気状のケイ素化合物を含有する反応ガスを供給するための複数の中央のノズル(6)の形の中央の導入装置、およびリングギャップ(20)を有しており、該ギャップにより水素99.5〜95モル%および気体状のケイ素化合物0.5〜5モル%を含有する気体組成物が、内部管型反応器(3)に導入される。
【0032】
図3aおよび3bは、本発明による反応器の1実施態様の縦断面および横断面を略図により示しており、これは、水素中の気体状もしくは蒸気状のケイ素化合物を含有する反応ガスを供給するために、中央の導入装置として、複数の中央のノズル(6)、および複数の短い、もしくは長い底部ノズル(21)を有しており、該ノズルにより、水素99.5〜95モル%および気体状のケイ素化合物0.5〜5モル%を含有する気体組成物が、内部管型反応器(3)に導入される。
【0033】
図4aおよび4bは、本発明による反応器の1実施態様の縦断面および横断面を略図により示しており、この場合、内部構造物(22)および、気体状のケイ素化合物の高い割合を有する気体混合物を内部管型反応器(3)中に導入する中央のノズル(6)におけるケイ素の堆積から保護するために、付加的なノズル(18)が、内部構造物(22)および中央のノズル(6)の付近に存在しており、該ノズルにより水素99.5〜95モル%および気体状のケイ素化合物0.5〜5モル%を含有する気体組成物が、内部管型反応器(3)に導入される。
【0034】
図5aおよび5bは、本発明による反応器の1実施態様を縦断面および横断面を略図により示しており、この場合、中央のノズル(6)の表面を保護するためにリングギャップノズル(23)が、および内部管型反応器(3)のノズルの表面を保護するために反応器ヘッドノズル(24)が存在しており、その際、リングギャップノズル(23)および反応器ヘッドノズル(24)により、水素99.5〜95モル%および気体状のケイ素化合物0.5〜5モル%を含有する気体組成物が、内部管型反応器(3)に導入される。
【0035】
図6は、本発明による反応器中での反応ガス濃度の低下の測定を略図により示している。このために、スケール(28)を備えた反応器の外側に存在する直径6mmを有する試料吸引管(27)は、半径方向で内部管型反応器(3)を通って異なった深さで反応器へ挿入される。このことにより特定の反応器高さにおける半径方向の濃度の推移の測定が可能である。反応器中での軸方向での濃度の推移を示すために、試料吸引管を導入するための複数の穿孔を、異なった反応器高さに取り付け、かつ同一の測定を実施する(図面に示されていない)。気体濃度の測定の分析的な実施は、毛細管(OV1−カラム)を有するガスクロマトグラフ(29)中で行う。個々の気体成分の分離はこの場合、気体状の「移動相」および液状の「定常相」との間での乗法的な分布により行われる。溶出液中の分離された成分の検出は、熱伝導性検出器により行われる。反応ガス濃度の、20〜80モル%までの低下は、全ての内部管型反応器表面付近および全ての内部構造物、たとえばノズル付近等の反応器の内部で行われる。濃度の低下は、s形の推移で最初の6つの粒子層内で、つまり4.5mmの界面層において0.75mmの平均粒径で行われる。極限値として測定される0.5〜5%の濃度は、0mmの壁の間隔である(25)。その他の測定は、1、2、3、4、5mmなどの間隔で行われる。5mm以上の間隔での測定(25)では、20〜80モル%の反応ガス濃度を有する反応空間(26)中に存在する。
【0036】
図7は、図6に記載されているような、最初の6つの粒子層内での濃度低下のs形の推移を示している。
【0037】
以下の例は、本発明をさらに詳しく説明するためのものである:
実施例1
内径770mmを有する耐圧性の鋼製容器中に、内部管型反応器、内径600mmおよび長さ2200mmを有する石英管が存在している。石英管の下端では、開口部を有する石英製の板が、流動化ガスのための気体分散装置を形成している。直径250mmを有する中心円には、気体分散板から、内部管型反応器4へと、内径20mmおよび長さ250mmを有する別の石英管が、ケイ素含有ガスもしくはガス混合物の供給のための導入装置として突出している。さらに、該石英板は、生成物を取り出すための2つの開口部を有している。
【0038】
温度放射による反応器へのエネルギー導入のために、放射加熱装置が存在している。これは、相互に結合したリング形の、グラファイト製の板であり、これらの板は内部管型反応器に接触することなく、該反応器を包囲する。放射加熱装置は、電気的な出力により制御可能な電圧源を備えている。その最大性能は、200kWである。
【0039】
反応器の開始充填量は、平均粒径600μmを有するケイ素顆粒225kgである。
【0040】
反応器中では以下の条件が調整された:
流動化ガス(水素):290m3/h(標準条件)
流動化ガスの運転前温度:400℃
反応ガストリクロロシラン:270kg/h
運転温度:900℃
反応器中の圧力:200kPa(絶対)
反応器壁温度:910℃
ノズル壁温度:910℃
加熱出力:190kW。
【0041】
管型反応器の内側および反応ガスノズルの外側では、前記のパラメータ設定で、ガスクロマトグラフ測定を用いて、水素中トリクロロシラン0.1モル%の反応ガス濃度が測定された。流動床は、約1.5倍の緩和速度Umfで700時間運転した。その後に排出された粒子の粒径分析により、665μmの平均粒径が生じた。管型反応器の内側および反応ガスノズルの外側は、700時間後に、局所的なケイ素堆積物を有していた。壁における堆積物の最大厚さは0.8mmであった。ノズルにおける堆積物の最大厚さは0.9mmであった。
【0042】
例2〜9:
例1と同様に、その他は同一の条件で、運転温度、ノズル壁温度、反応器壁温度および反応ガス濃度のパラメータを、壁もしくはノズルにおいて変更し、かつ壁もしくは導入装置における最大の堆積/hを測定した。第1表は、変更した条件ならびに壁におけるケイ素の最大堆積量を記載している。第2表は、変更した条件ならびに導入装置におけるケイ素の最大堆積量を記載している。
【0043】
【表1】
【0044】
【表2】
【0045】
本発明によらない例3、4、7および8(比較例)は、運転温度よりも低い反応器壁温度で、ケイ素の局所的な堆積が高まることを示している。本発明によらない例1、3、5および7はさらに、意外にも0.5%未満の反応ガス濃度で壁堆積が増大することを示している。同じことが、ノズル壁堆積物に関しても該当する。
【0046】
例10〜16:
例1に記載の反応器中に、以下の内部構造物部材を導入した:
例10、11および12:
図5に(24)として記載されている付加的なノズルの内部構造物。横断面直径3mmを有する付加的なノズルにより、ノズルあたり、水素99.9〜95モル%およびトリクロロシラン0.1〜5モル%を含有する気体組成物10Nm3の処理量を運転した。
【0047】
例13、14および15:
図2(20)および図5(23)に記載されている、ガスにより貫流されるリングギャップの内部構造物。2mmの横断面直径を有するリングギャップにより、水素99.9〜95モル%およびトリクロロシラン0.1〜5モル%を含有する気体組成物2m/sの流速が調整された。
【0048】
例16:
図2(20)および図5(23)に記載されている、ガスにより貫流されるリングギャップの内部構造物。2mmの横断面直径を有するリングギャップにより、水素98モル%およびトリクロロシラン2モル%を含有する気体組成物2m/sの流速が調整された。流動床の運転温度および内部構造物部材の温度は、950℃に調整された。
【0049】
例1と同様に、その他は同一の条件で、運転温度、内部構造物部材の温度および内部構造物部材における反応ガス濃度のパラメータを変更した。第3表は、変更した条件ならびに内部構造物部材における最大堆積を記載している。本発明によらない例12および13は、意外にも0.5%未満の反応ガス濃度で、壁堆積物が増大することを証明している。
【0050】
【表3】
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明による反応器の1実施態様の縦断面を略図により示す図
【図2】本発明による反応器の1実施態様の縦断面および横断面を略図により示す図
【図3】本発明による反応器の1実施態様の縦断面および横断面を略図により示す図
【図4】本発明による反応器の1実施態様の縦断面および横断面を略図により示す図
【図5】本発明による反応器の1実施態様の縦断面および横断面を略図により示す図
【図6】反応器中での反応ガス濃度の測定を略図により示す図
【図7】濃度低下のs形の推移を示すグラフの図
【符号の説明】
【0052】
1 反応器、 2 外被、 3 内部管型反応器、 4 入口、 5 ケイ素粒子、 6 導入装置(ノズル)、 7 反応ガス、 8 ガス分散装置、 9 流動化ガス、 10 出口、 11 反応生成物、 12 出口、 13 生成物、 14 加熱装置、 15 エネルギー供給源、 16 断熱材、 17 気体組成物、 18 ノズル、 19 流動床表面、 20 リングギャップ、 21 底部ノズル、 22 内部構造物、 23 リングギャップノズル、 24 反応器ヘッドノズル、 27 試料吸引管、 28 スケール、 29 ガスクロマトグラフ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒状の多結晶ケイ素を製造する方法であって、高温の表面を有する流動床反応器中で、流動化ガスにより流動化されて流動床となっているケイ素粒子上に、600〜1100℃の反応温度で、気体状のケイ素化合物を含有する反応ガスをケイ素金属として堆積させ、かつ堆積したケイ素を有する粒子ならびに反応しなかった反応ガスおよび流動化ガスを反応器から除去し、その際、反応器の表面に、水素99.5〜95モル%および気体状のケイ素化合物0.5〜5モル%を含有する気体組成物が存在し、かつ反応器の表面は、700〜1400℃の温度を有し、かつこの温度は、ケイ素粒子の温度に相応するか、またはケイ素粒子の温度よりも高い、粒状の多結晶ケイ素を製造する方法。
【請求項2】
連続的に実施することを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
反応器の表面に、水素97〜99モル%および気体状のケイ素化合物1〜3モル%を含有する気体組成物が存在することを特徴とする、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
反応器の表面温度が、800〜1100℃であることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
流動化ガスが、水素であることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
反応ガスが、気体状のケイ素化合物、有利にはモノシランまたはクロロシラン化合物、特に有利にはトリクロロシランを含有することを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
請求項1から6までのいずれか1項記載の方法を実施するための流動床反応器であって、
a)耐圧性外被(2)
b)温度放射のための高い透過率を有する材料からなる内部管型反応器(3)
c)ケイ素粒子(5)のための入口(4)
d)気体状もしくは蒸気状のケイ素化合物を含有する反応ガス(7)を供給するための導入装置(6)
e)流動化ガス(9)を供給するためのガス分散装置(8)
f)反応しなかった反応ガス、流動化ガスならびに流動床表面(19)の上方に集まる、気体状もしくは蒸気状反応生成物(11)のための出口(10)
g)生成物(13)のための出口(12)
h)加熱装置(14)
i)加熱装置(14)のためのエネルギー供給源(15)
を有する流動床反応器において、保護されるべき反応器表面の領域に、付加的なノズル(18)が存在しており、該ノズルを介して、水素99.5〜95モル%および気体状のケイ素化合物0.5〜5モル%を含有する気体組成物(17)が、反応器中へ導入されることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法を実施するための流動床反応器。
【請求項1】
粒状の多結晶ケイ素を製造する方法であって、高温の表面を有する流動床反応器中で、流動化ガスにより流動化されて流動床となっているケイ素粒子上に、600〜1100℃の反応温度で、気体状のケイ素化合物を含有する反応ガスをケイ素金属として堆積させ、かつ堆積したケイ素を有する粒子ならびに反応しなかった反応ガスおよび流動化ガスを反応器から除去し、その際、反応器の表面に、水素99.5〜95モル%および気体状のケイ素化合物0.5〜5モル%を含有する気体組成物が存在し、かつ反応器の表面は、700〜1400℃の温度を有し、かつこの温度は、ケイ素粒子の温度に相応するか、またはケイ素粒子の温度よりも高い、粒状の多結晶ケイ素を製造する方法。
【請求項2】
連続的に実施することを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
反応器の表面に、水素97〜99モル%および気体状のケイ素化合物1〜3モル%を含有する気体組成物が存在することを特徴とする、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
反応器の表面温度が、800〜1100℃であることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
流動化ガスが、水素であることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
反応ガスが、気体状のケイ素化合物、有利にはモノシランまたはクロロシラン化合物、特に有利にはトリクロロシランを含有することを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
請求項1から6までのいずれか1項記載の方法を実施するための流動床反応器であって、
a)耐圧性外被(2)
b)温度放射のための高い透過率を有する材料からなる内部管型反応器(3)
c)ケイ素粒子(5)のための入口(4)
d)気体状もしくは蒸気状のケイ素化合物を含有する反応ガス(7)を供給するための導入装置(6)
e)流動化ガス(9)を供給するためのガス分散装置(8)
f)反応しなかった反応ガス、流動化ガスならびに流動床表面(19)の上方に集まる、気体状もしくは蒸気状反応生成物(11)のための出口(10)
g)生成物(13)のための出口(12)
h)加熱装置(14)
i)加熱装置(14)のためのエネルギー供給源(15)
を有する流動床反応器において、保護されるべき反応器表面の領域に、付加的なノズル(18)が存在しており、該ノズルを介して、水素99.5〜95モル%および気体状のケイ素化合物0.5〜5モル%を含有する気体組成物(17)が、反応器中へ導入されることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法を実施するための流動床反応器。
【図1】
【図2a】
【図2b】
【図3a】
【図3b】
【図4a】
【図4b】
【図5a】
【図5b】
【図6】
【図7】
【図2a】
【図2b】
【図3a】
【図3b】
【図4a】
【図4b】
【図5a】
【図5b】
【図6】
【図7】
【公表番号】特表2009−507749(P2009−507749A)
【公表日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−529616(P2008−529616)
【出願日】平成18年9月4日(2006.9.4)
【国際出願番号】PCT/EP2006/065943
【国際公開番号】WO2007/028776
【国際公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【出願人】(390008969)ワッカー ケミー アクチエンゲゼルシャフト (417)
【氏名又は名称原語表記】Wacker Chemie AG
【住所又は居所原語表記】Hanns−Seidel−Platz 4, D−81737 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年9月4日(2006.9.4)
【国際出願番号】PCT/EP2006/065943
【国際公開番号】WO2007/028776
【国際公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【出願人】(390008969)ワッカー ケミー アクチエンゲゼルシャフト (417)
【氏名又は名称原語表記】Wacker Chemie AG
【住所又は居所原語表記】Hanns−Seidel−Platz 4, D−81737 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】
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