流路構成体およびその製造方法、インクジェット記録ヘッド、ならびに記録装置
【課題】3枚以上の流路形成部材が積層され、各流路形成部材の間に流路が形成される、コンパクトで、かつ信頼性の高い流路構成体を提供する。
【解決手段】流路構成体は、少なくとも3つの流路形成部材401,402,410が積層され、かつ、流路形成部材401,402,410の間に流路405A,407A,411を備えている。各流路形成部材401,402,410の間を個別に超音波溶着法によって溶着し、各流路形成部材401,402,410の間の総溶着面積が、溶着する順番が早いほど大きい。
【解決手段】流路構成体は、少なくとも3つの流路形成部材401,402,410が積層され、かつ、流路形成部材401,402,410の間に流路405A,407A,411を備えている。各流路形成部材401,402,410の間を個別に超音波溶着法によって溶着し、各流路形成部材401,402,410の間の総溶着面積が、溶着する順番が早いほど大きい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の流路形成部材が積層され、各流路形成部材の間に流路が形成される流路構成体およびその製造方法、インクジェット記録ヘッド、ならびに記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体を吐出する液体吐出ヘッドの代表的なものとして、インクジェット記録ヘッド(以下、「記録ヘッド」とも称する。)がある。記録ヘッドには、記録媒体の搬送方向と交差する方向に記録媒体の幅に対応する範囲にわたってインク吐出口が配列されたフルライン型のものがある。特許文献1に、記録ヘッドにインクを供給する流路だけでなく、循環流路や、流路内に溜まった気泡を除去するための流路などが形成された記録ヘッドが開示されている。
【0003】
特許文献2には、インク等の流体を所定の方向に案内することが可能な流路が設けられた流路構成体が開示されている。特許文献2に開示された流路構成体は、第1の流路形成部材の上に第2の流路形成部材が積載された構成を有している。
【0004】
この流路構成体の第1の流路形成部材の上面には、流路となる流路溝が形成されており、流路溝に沿った溶着リブが当該流路溝の両側に形成されている。第2の流路形成部材の下面には、第1の流路形成部材に積載される際に、第1の流路形成部材の溶着リブを受け入れる溝が形成されている。第1の流路形成部材の溶着リブは、第2の流路形成部材の溝に超音波溶着法により溶着されている。
【0005】
これにより、第1の流路形成部材と第2の流路形成部材とが溶着されると、第1の流路形成部材の流路溝は、第2の流路形成部材の下面によって閉塞される。これにより、第1の流路形成部材の流路溝は、インク等の流体を当該流路溝に沿って案内することが可能な管状の流路となる。このように、特許文献2に記載された流路構成体では、第1の流路形成部材の上に第2の流路形成部材を積載することにより第1の流路形成部材と第2の流路形成部材との間に流路が形成される。
【0006】
特許文献2に記載の流路構成体は、第1の流路形成部材上に第2の流路形成部材のみを積載する構成であるが、第2の流路形成部材上にさらに第3の流路形成部材を積載する構成も考えられる。
【0007】
このような構成の流路構成体では、第2の流路形成部材の上面に第1の流路形成部材と同様の流路溝および溶着リブが形成され、第3の流路形成部材の下面に第2の流路形成部材と同様の溝が形成されている。そして、第3の流路形成部材の溶着リブが、第1の流路形成部材の溝に超音波溶着法により溶着される。
【0008】
このような流路構成体では、第2の流路形成部材と第3の流路形成部材との間にも流路が形成される。これにより、流路構成体には上下に並んだ2つの流路が形成される。流路構成体は、複数の流路を有することにより、同時に複数の種類のインク等の流体を個別に案内することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2008−87465号公報
【特許文献2】特開2007−283668号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述のように、記録ヘッドに複数の流路が形成された流路構成体を用いると、記録ヘッドが大型化する。
【0011】
また、上述した第1の流路形成部材、第2の流路形成部材および第3の流路形成部材が積層された流路構成体を製造する場合、まず、第1の工程として、第1の流路形成部材の溶着リブが第2の流路形成部材の溝に超音波溶着法により溶着される。その後、第2の工程として、第2の流路形成部材の溶着リブが第3の流路形成部材の溝に超音波溶着法により溶着される。
【0012】
したがって、第2の工程で、第2の流路形成部材の溶着リブが第3の流路形成部材の溝に超音波溶着法による溶着時の振動等の負荷により、第1の工程で溶着された第1の流路形成部材の溶着リブが第2の流路形成部材の溝から部分的に剥がれてしまう場合がある。
【0013】
工程順番を代えて、第1の工程で第2の流路形成部材の溶着リブを第3の流路形成部材の溝に溶着し、第2の工程で第1の流路形成部材の溶着リブを第2の流路形成部材の溝に溶着することも考えられる。しかし、この場合も、第2の工程で、第1の流路形成部材の溶着リブが第2の流路形成部材の溝に超音波溶着法による溶着時の負荷により、第1の工程で溶着された第2の流路形成部材の溶着リブが第3の流路形成部材の溝から部分的に剥がれてしまう場合がある。
【0014】
上記のように、溶着リブが溝から剥がれた流路構成体では、流路を通過するインク等の流体がその剥がれた部分から漏れ出してしまう。
【0015】
そこで、本発明は、3枚以上の流路形成部材が積層され、各流路形成部材の間に流路が形成される、コンパクトで、かつ信頼性の高い流路構成体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するため、本発明の流路構成体は、少なくとも3つの流路形成部材が積層され、かつ、該流路形成部材の間に流路が設けられた流路構成体であって、前記各流路形成部材の間を個別に超音波溶着法によって溶着し、前記各流路形成部材の間の総溶着面積が、溶着する順番が早いほど大きい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、3枚以上の流路形成部材が積層され、各流路形成部材の間に流路が形成される流路構成体の信頼性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るインクジェット記録ヘッドの斜視図である。
【図2】図1に示したインクジェット記録ヘッドの分解斜視図である。
【図3】図1に示した記録素子基板の概略構成図である。
【図4】図1に示したインク供給ユニットの分解斜視図である。
【図5】図1に示したインク供給ユニットの分解斜視図である。
【図6】図1に示したインクジェット記録ヘッドの概略構成図である。
【図7】図1に示したインクジェット記録ヘッドを適用可能な記録装置の斜視図である。
【図8】図1に示したインクジェット記録ヘッドの機能ブロック図である。
【図9】図1に示したインクジェット記録ヘッドの部分断面図である。
【図10】図1に示したインクジェット記録ヘッドの溶着部を示した図である。
【図11】図9に示した構成の変形例を示した図である。
【図12】図9に示した構成の変形例を示した図である。
【図13】本発明の第2の実施形態に係る流路構成体の斜視図である。
【図14】図13に示した流路構成体の断面図である。
【図15】図13に示した流路構成体の平面図である。
【図16】図13に示した流路構成体の製造工程を示した断面図である。
【図17】図13に示した流路構成体の製造工程を示した断面図である。
【図18】図13に示した流路構成体の変形例の断面図である。
【図19】本発明の第3の実施形態に係る流路構成体の断面図である。
【図20】本発明の第4の実施形態に係る流路構成体の断面図である。
【図21】本発明の第5の実施形態に係る流路構成体の断面図である。
【図22】本発明の第6の実施形態に係る流路構成体の断面図である。
【図23】本発明の第7の実施形態に係るインクジェット記録ヘッドの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
(第1の実施形態)
(インクジェット記録ヘッド)
まず、本発明の第1の実施形態に係るインクジェット記録ヘッド90の構成について説明する。図1および図2はインクジェット記録ヘッド90の概略構成図であり、図1は斜視図であり、図2は分解斜視図である。
【0020】
インクジェット記録ヘッド90は、いわゆるフルライン型の記録装置に搭載可能である。インクジェット記録ヘッド90は、図1の矢印L方向に搬送される紙等の記録媒体に対して記録素子基板100に設けられた吐出口からインクを吐出する。これにより、インクジェット記録ヘッド90では記録媒体に記録を行う。
【0021】
インクジェット記録ヘッド90には、図1および図2に示すように、液体吐出基板としての記録素子基板100や、固定部材200や、電気配線部材300や、液体供給部材としてのインク供給ユニット400などが設けられている。記録素子基板100と、該記録素子基板100が固定される固定部材200と、は一体となって液体吐出部材として機能する。
【0022】
インクジェット記録ヘッド90には、18個の記録素子基板100が設けられている。各記録素子基板100は、記録媒体の搬送方向に重なっている重複領域N(図1参照)が形成されるように千鳥状に固定部材200上に配置されている。インクジェット記録ヘッド90の、記録素子基板100が配置されている部分の全幅である印字幅は13インチ程度である。
【0023】
各記録素子基板100は電気配線部材300とワイヤーボンディング等の方法で電気的接続がなされ、その各電気的接続部分は封止材700で封止されることにより保護されている。また、固定部材200の、記録素子基板100が配置されている面の裏面には、インク供給ユニット400が設けられている。インク供給ユニット400は、接着剤による接着やゴム部材を介したネジ止め等により記録素子基板100の裏面に固定されている。
【0024】
次に、インクジェット記録ヘッド90を構成する各部材について詳細に説明する。
【0025】
図3はインクジェット記録ヘッド90の記録素子基板100を拡大して示した図であり、図3(a)は斜視図であり、図3(b)は図3(a)のB−B’線に沿った断面図である。
【0026】
記録素子基板100はインクを吐出するためのデバイスである。図3(b)に示すように、シリコン基板101には、長溝状のインク供給口102が形成されている。シリコン基板101の表面には、インクを吐出するためのエネルギーを発生させるエネルギー発生素子である複数の電気熱変換素子103と、該電気熱変換素子103に接続されるアルミニウム等の電気配線(不図示)と、が成膜技術によって形成されている。
【0027】
また、記録素子基板100の長手方向の両端部には、電気配線部材300(図1および図2参照)との電気的接続がなされる電極104が設けられている。さらに、シリコン基板101上には、樹脂材料からなる吐出口形成部材105が形成されている。
【0028】
吐出口形成部材105には、複数の電気熱変換素子103に対応する位置に、インクを吐出するための吐出口106が形成されている。また、吐出口形成部材105には、吐出口106に連通するインク貯蔵室107が形成されている。吐出口106およびインク貯蔵室107は、フォトリソグラフィー技術を用いて形成されている。
【0029】
図1および図2に示す固定部材200は、複数の記録素子基板100を固定し、各記録素子基板100にインクを供給するために設けられている。固定部材200の内部には、インク供給ユニット400に接続されたインク流路が形成されている。また、図2に示すように、固定部材200の表面に記録素子基板100にインクを供給するための開口部201が形成されている。
【0030】
図1および図2に示す電気配線部材300は、記録装置(不図示)から送られる駆動信号等を記録素子基板100に伝達する。電気配線部材300には、記録素子基板100を組み込むための開口部301や、記録素子基板100の電極104に対応する電極端子302や、記録装置1からの駆動信号等を受けるための外部信号入力端子303などが設けられている。
【0031】
図4および図5はインクジェット記録ヘッド90のインク供給ユニット400の分解斜視図である。供給ユニット400は、記録装置に接続され、固定部材200を介して記録素子基板100にインクを供給する。
【0032】
インク供給ユニット400には、フィルタ収容部材401、第1のプレート402、第2のプレート410、第3のプレート403、第1のフィルタ501、第2のフィルタ502、およびジョイントゴム600が設けられている。フィルタ収容部材401、第1のプレート402、第2のプレート410、第3のプレート403は、樹脂材料を用いて射出成形法により形成されている。
【0033】
フィルタ収容部材401には、第1のプレート402によって閉じられる溝状のインク流路406A,407Aが形成されている。また、第1のプレートには、第2のプレート410およびフィルタ収容部材401と組み合わせられてインク流路411となる溝が形成されている。
【0034】
また、フィルタ収容部材401には、インク流路406Aに接続されたインク流路406Bが設けられている。インク流路406Aと流路406Bとの接続部には、第1のフィルタ収容室408が設けられている。また、フィルタ収容部材401には、インク流路407Aに接続されたインク流路407Bが設けられている。インク流路407Aと流路407Bとの接続部には、第2のフィルタ収容室409が設けられている。
【0035】
第1のフィルタ収容室408および第2のフィルタ収容室409には、インクジェット記録ヘッド90内へのゴミの侵入を防ぐため、それぞれ第1のフィルタ501および第2のフィルタ502が設けられている。第1のフィルタおよび第2のフィルタ502は、それぞれ第1のフィルタ収容室408および第2のフィルタ収容室409に熱溶着されている。
【0036】
また、インクジェット記録ヘッド90には、ジョイントゴム600がジョイントゴム収容室405A、405B、405Cにそれぞれ圧入されている。インクジェット記録ヘッド90は、記録装置に取り付けられた際に、記録装置に設けられたインクジョイントパイプ(不図示)にジョイントゴム600を介して接続される。
【0037】
図4および図5に示したインク供給ユニット400が組み合わされる際には、第1のプレート402および第3のプレート403はフィルタ収容部材401に接合され、第2のプレート410は第1のプレート402に接合される。
【0038】
(インク流路構成)
図1に示すように、インクジェット記録ヘッド90には、インク供給ユニット400が長手方向の両端に一つずつ互いに逆向きに設けられている。図6は、インクジェット記録ヘッド90の概略構成図である。
【0039】
記録装置には、インクジェット記録ヘッド90に供給されるインク7を貯蔵するインクタンクTと、該インクタンクTとインク供給ユニット400を連通させるインク流路5A,5Bが設けられている。また、インクタンクT内のインク7を、インクタンクTとインクジェット記録ヘッド90と間で循環させるための循環手段としてのポンプPが、インク流路5A,5Bの少なくとも一方に設けられる。本実施形態では、ポンプPがインク流路5Bに設けられている。
【0040】
インク流路5Bにはバルブ6A,6Bが設けられている。記録装置の記録動作時には、第1のバルブ6Aが開かれ、第2のバルブ6Bが閉られ、インクジェット記録ヘッド90内では、図中の矢印aで示す経路をインク7が循環するようになる。具体的には、インク7は、インクタンクTから、インク流路5Aを通り、インク供給ユニット400内の第1のフィルタ501を通過する。そして、フィルタ501を通過したインク7は、固定部材200に形成されたインク流路202内を流れ、第2のフィルタ502を通過してインクタンクTに戻る。
【0041】
このように、インク供給ユニット400は、記録装置の記録動作時に、安定してインク流路202から記録素子基板100へとインク7を供給し、かつ、インク7を循環させて記録素子基板100の冷却を行うことができるように構成されている。記録装置の記録動作時に、記録素子基板100へインク7を供給するまでの経路中にある第1のフィルタ501は、該第1のフィルタ501がインク7の経路内での流抵抗を大きくすることを抑制するために、面積が大きいことが望ましい。
【0042】
第1のフィルタ501によってインク7の流抵抗が大きくなると、記録素子基板100へのインク供給不良などが生じることがある。本実施形態では、記録素子基板100の冷却のために必要なインク流路202におけるインク流量が50〜200cc/min程度である。そのために、第1のフィルタ501には、穴径が5μm程度であり、面積が1000〜4000mm2程度のものを用いた。
【0043】
一方、記録素子基板100からインクを導出する側に設けられた第2のフィルタ502は、その流抵抗により記録素子基板100によるインク7の吐出には影響を与えないため、面積を小さくすることが可能である。
【0044】
また、第1のフィルタ501を通過したインク7の一部は記録素子基板100に送り込まれ、記録に用いられる。そのため、第2のフィルタ502を通過するインク7は、第1のフィルタ501を通過するインク7よりも少ない。そのため、この点においても、第2のフィルタ502の面積は第1のフィルタ501の面積よりも小さくてよい。
【0045】
また、インクジェット記録ヘッド90内の気泡を除去するためには、第2のフィルタ502の面積は小さい方がよい。一方で第2のフィルタ502の面積が大きいほどインクの濾過性能が高くなる。本実施形態では、この両方の観点から、第2のフィルタ502として、穴径が5μm程度であり、面積が50〜200mm2程度であるものを用いた。
【0046】
フィルタ収容室408は、フィルタ501を介して、フィルタ収容室408Aとフィルタ408Bとに分けられている。
【0047】
記録前におけるインクジェット記録ヘッド90へのインク充填時や、記録動作を行っていない時にフィルタ収容室408Aに溜まった空気抜き(泡抜き)を行う際には、第1のバルブ6Aを閉じ、かつ、第2のバルブ6Bを開く。これにより、インクジェット記録ヘッド90内では、図中の矢印bで示す経路をインク7が循環する。
【0048】
記録装置の非記録時には、記録素子基板100の吐出口を保湿するために、インクジェット記録ヘッド90内に循環用のインク7を入れておく。インクジェット記録ヘッド90を記録装置に装着した際には、インクジェット記録ヘッド90内の循環用のインク7を排出して、インクジェット記録ヘッド90内を空の状態とする。このようにインクジェット記録ヘッド90内を空の状態にしてから、記録用のインク7を充填する。
【0049】
インクジェット記録ヘッド90内にインクを充填する際に、仮に、最初から矢印aで示した経路でインクを循環させるとする。この場合、第1のフィルタ501の底部からインク7が流れてフィルタ収容室408B内に流入するため、フィルタ収容室408A内がインク7で充填されない。したがって、まず矢印bの経路でインク7を循環させてフィルタ収容室408A内をインク7で充填する必要がある。
【0050】
また、記録装置の記録動作に、インク流路406Aなどの中に混入している気泡が、フィルタ収容室408A内に溜まることがある。フィルタ収容室408A内に気泡が溜まると、第1のフィルタ501におけるインク7が通過する面積が小さくなってしまう。これにより、インク7が第1のフィルタ501を通過する際の流抵抗が高くなってしまう。これを防止するためにも、記録動作前に、矢印bに示す経路にインク7を流してフィルタ収容室408A内の気泡を除去する。
【0051】
(記録装置)
次に、本実施形態に係るインクジェット記録ヘッドが搭載される記録装置に関して説明する。
【0052】
図7は、インクジェット記録ヘッド90を適用可能な記録装置1を部分的に示した概略構成図である。また、図7は、本実施形態における記録装置1内の制御系の機能ブロック図である。図7では、記録装置1が記録を行っている状態を示している。記録装置1には、たとえば、Bk、C、M、Yの4色のインクに対応した4つのインクジェット記録ヘッド90が搭載され、各インクジェット記録ヘッド90の間には紙搬送用ローラ60が配置され、該紙搬送用ローラ60によって記録媒体70が搬送される。
【0053】
記録装置1に設けられた制御手段としてのCPU12は、記録信号等に基づき、インクジェット記録ヘッド90の電気熱変換素子103を駆動させて吐出口106(図3参照)からインク7を吐出する。これにより、インク7が記録媒体70に付着し、記録媒体70に記録信号に基づいた記録がなされる。
【0054】
このように、複数のインクジェット記録ヘッド90が紙搬送方向に並べられているため、インクジェット記録ヘッド90の並び方向(図7におけるX方向)の寸法は小さいことが望ましい。そのために、たとえば、インクジェット記録ヘッド90間のピッチを狭くして配列することができる。これにより記録装置1の小型化が可能である。さらに、インクジェット記録ヘッド90に対して記録媒体を平行に保つ必要のある領域が狭くなるため、記録媒体の搬送精度が向上され、紙ジャムが防止される。これらにより記録装置1による記録媒体への高品位の記録が可能となる。
【0055】
図8を参照して、記録装置1の構成について詳細に説明する。
【0056】
記録装置1は、ユーザにより入力された記録情報をホストコンピュータ4から受信する。記録装置1が受信した記録情報は、記録装置1内に設けられた入出力インターフェイス11に一時保存されるとともに、記録装置1内で処理可能なデータに変換され、インクジェット記録ヘッド駆動信号の供給手段を兼ねるCPU12に入力される。
【0057】
CPU12は、ROM13に保存されている制御プログラムに基づき、CPU12に入力されたデータをRAM14等の周辺ユニットを用いて処理する。また、CPU12は、当該処理により、記録媒体に対してインクによるドットを形成するか否かを表す2値化データ(記録データ)に変換する。
【0058】
インクジェット記録ヘッド90に設けられている電気熱変換素子103を駆動するヘッドドライバ17には、上述した記録データと、CPU12から出力されたインクジェット記録ヘッド駆動データと、が入力されている。ヘッドドライバ17は、2値化データやインクジェット記録ヘッド駆動データに応じて電気熱変換素子103を駆動させ、インクジェット記録ヘッド90にインクを吐出させる。
【0059】
(インク供給ユニット)
インクジェット記録ヘッド90に用いられるインク供給ユニット400について、図9および図10を用いて詳細に説明する。図9はインク供給ユニット400の図1における矢印Aで示す平面における断面図である。また、図10は各溶着部414,415における溶着面積を示す模式図である。
【0060】
上述のとおり、インク供給ユニット400は、記録装置1の記録動作中における安定したインク供給性能、記録素子基板100の冷却性能、インク充填性能、流路内の泡抜き性能に優れている。インクジェット記録ヘッド90のサイズを小さくするために、大面積を有するフィルタ501をフィルタ収容部材401の側面に配設している(図4および図5参照)。このような構成により、インクジェット記録ヘッド90のサイズは、最小限に抑えられている。
【0061】
また、インクジェット記録ヘッド90の幅方向(図7における矢印X方向)の寸法の小型化を図るべく、インク流路406A,406B,411を2層に分けて形成している。そのため、流路406A,406B,411を形成する3つの流路形成部材である、フィルタ収容部材401、第1のプレート402、第2のプレート410を積層している。
【0062】
図9に示すように、第1のプレート402の下面には複数の溶着リブ412が形成され、第2のプレート410の下面には複数の溶着リブ413が形成されている。第1のプレート402の溶着リブ412はフィルタ収容部材401のインク流路406A,407Aが形成された上面に超音波溶着され、第2のプレート410の溶着リブ413は第1のプレート402のインク流路411が形成された上面に超音波溶着される。これにより、フィルタ収容部材401、第1のプレート402、第2のプレート410は、それぞれが流路形成部材として機能し、積層されて個別に溶着されることにより一体となり、流路構成体となる。
【0063】
溶着リブ412,413の先端部における平面度や、溶着される面の平面度のばらつきにより、超音波の付与により潰れる量(溶ける量)が異なる箇所が存在する場合があり、溶着リブの潰れる量が少ない箇所では溶着幅が小さく、溶着強度も相対的に小さくなる場合がある。本実施形態に係るインク供給ユニット400のプレート402,403の超音波溶着される部分は、長手方向の長さが100〜200mm程度と長く、その面積は比較的大きいため、プレートの反りなどの影響により溶着リブの潰れ量が異なり、溶着強度の高い箇所と低い箇所が混在する場合が発生し易い。
【0064】
本実施形態では、フィルタ収容部材401に第1のプレート402を超音波溶着した後に、第1のプレート402に第2のプレート410を超音波溶着する。したがって、第1のプレート402と第2のプレート410との超音波溶着の際に、既に超音波溶着されたフィルタ収容部材401と第1のプレート402との溶着部分の内、溶着強度が低い箇所が、超音波の衝撃によって部分的に剥がれる場合がある。
【0065】
これに対し、本実施形態では以下に説明する構成とすることで信頼性の高い流路構成体を製造可能である。
【0066】
フィルタ収容部材401には、第1のプレート402が溶着されると、第1のプレート402によって塞がれる、インク流路406Aおよびインク流路407Aが設けられている。第1のプレート402には、第2のプレート410が溶着されると、第2のプレート410によって塞がれるインク流路411が設けられている。
【0067】
図10には、フィルタ収容部材401の、第1のプレート402の溶着リブ412が溶着される溶着部414を斜線で示している。また、第1のプレート402の、第2のプレート403の溶着リブ413が溶着される溶着部415を斜線で示している。
【0068】
図9に示すように、第1のプレート402の溶着リブ412と第2のプレート410の溶着リブ413の断面形状は略同一である。なお、図9では、溶着リブ412,413の、超音波溶着により潰される部分(溶ける部分)を破線で示している。溶着リブ412と溶着リブ413とでは、超音波溶着時の潰し量も略同一である。したがって、溶着部414と溶着部415とでは、幅がほぼ等しい。
【0069】
しかし、フィルタ収容部材401では2つのインク流路406A,407Aがあるのに対し、第1のプレート402とでは1つのインク流路411しかない。したがって、フィルタ収容部材401と第1のプレート402とでは溶着すべき部分の面積が大きい。換言すると、溶着部414の総溶着面積と溶着部415の総溶着面積とでは、溶着部414の総溶着面積の方が大きい。
【0070】
したがって、第2のプレート410の溶着リブ413を第1のプレート402に超音波溶着する際に必要なエネルギー(振幅や荷重)は、第1のプレート402の溶着リブ412をフィルタ収容部材401に超音波溶着する場合よりも小さい。そのため、第1のプレート402の溶着リブ412をフィルタ収容部材401に溶着した後、第2のプレート410の溶着リブ413を第1のプレート402に溶着する際に、第1の溶着部414に加わる超音波による衝撃を抑制することができる。
【0071】
なお、超音波溶着法による溶着の条件を変更することにより、溶着リブの潰し量を変更することが可能である。また、溶着リブの断面形状は、図9に示すような形状に限らない。溶着リブの変形例を図11および図12に示す。図11および図12は図9に対応する図であり、第2のプレート410の溶着リブ以外の構成は、図9に示した構成と同様である。
【0072】
図11に示した第2のプレート410の溶着リブ413aは、第1のプレート402の溶着リブ412より小さい。溶着リブ401,413aは互いに相似関係にある三角形状の断面を有する。ここで、溶着リブ412の断面の幅をWaとし、溶着リブ401の断面の高さをd1とする。また、溶着リブ413aの断面の幅をWbとし、溶着リブ413aの高さをd2とする。この場合、Wa>Wbであり、かつ、d1>d2である。
【0073】
図11に示すように、第2のプレート410の溶着リブ413aを、第1のプレート402の溶着リブ412より小さくすることによって、図10に示す溶着部414の幅が溶着部415の幅より大きくなる。これにより、フィルタ収容部材401の溶着部414の総溶着面積と、第1のプレート402の溶着部415の総溶着面積と、の差がさらに大きくなる。この場合、第2のプレート410の溶着リブ413aを第1のプレート402に超音波溶着する際の超音波のエネルギーが小さくて済む。そのため、第1のプレート402の溶着リブ412をフィルタ収容部材401に溶着した後、第2のプレート410の溶着リブ413aを第1のプレート402に溶着する際に、第1の溶着部414に加わる超音波による衝撃を抑制することができる。
【0074】
図12に示した第2のプレート410の溶着リブ413bは、第1のプレート402の溶着リブ412より小さい。溶着リブ413bは、第2のプレート410の下面に垂直であり、先端が三角形状である断面を有する。ここで、溶着リブ413aの断面の幅をWbとし、溶着リブ413aの高さをd2とする。この場合、Wa>Wbであり、かつ、d1=d2である。
【0075】
図12に示すように、第2のプレート410の溶着リブ413bを、第1のプレート402の溶着リブ412より小さくすることによって、図10に示す溶着部414の幅が溶着部415の幅より大きくなる。これにより、フィルタ収容部材401の溶着部414の総溶着面積と、第1のプレート402の溶着部415の総溶着面積と、の差がさらに大きくなる。この場合、第2のプレート410の溶着リブ413bを第1のプレート402に超音波溶着する際の超音波のエネルギーが小さくて済む。そのため、第1のプレート402の溶着リブ412をフィルタ収容部材401に溶着した後、第2のプレート410の溶着リブ413aを第1のプレート402に溶着する際に、第1の溶着部414に加わる超音波による衝撃を抑制することができる。
【0076】
また、本実施形態では、3本のインク流路が形成された流路構成体について説明を行ったが、インク流路の数はこれに限られることはなく、流路構成体にはインクの色数に対応した数の流路を形成することができる。また、本実施形態では、フィルタ収容部材401、第1のプレート402、第2のプレート410の3つの流路形成部材を積層してインク流路を形成する場合について説明したが、これに限られない。たとえば、4つ以上の流路形成部材を積層して流路を形成することもできる。
【0077】
また、本実施形態では、フィルタ収容部材401に第1のプレート402を超音波溶着した後に、第1のプレート402に第2のプレート410を超音波溶着した。しかし、第1のプレート402に第2のプレート410を超音波溶着した後にフィルタ収容部材401に第1のプレート402を超音波溶着してもよい。ただし、この場合には、第1のプレート402と第2のプレート410との溶着部の総溶着面積が、フィルタ収容部材401と第1のプレート402との溶着部の総溶着面積よりも大きいことが必要である。
【0078】
すなわち、超音波溶着を行う順番が早い溶着部の総溶着面積が大きくなるような順番で超音波溶着を行えば、先に超音波溶着を行った溶着部が、後の超音波溶着によって剥がれることを防止できる。
【0079】
ただし、図9に示したように、下層となるフィルタ収容部材401と第1のプレート402との間、すなわち、記録ヘッドの記録素子基板に近い側により多くのインク流路を配設する構成がインク供給安定性の観点からは好ましい。上層に配設されるインク流路は、流路形成部材の接合箇所が増えるため、部品の位置ずれによる段差箇所に気泡が溜まったりするなどしてインク供給性能を損なう可能性がある。本実施例では、記録動作時に使用するインク流路406A,407Aを下層に配設しているため、インク供給性能を損なう可能性が低く、また、上層に配設したインク流路411は、先に述べたように、フィルタ収容室408A内の気泡を除去する時のみに使用する流路であるため、仮に部品の位置ずれによる段差箇所に気泡が溜まったとしても、通常の記録動作に影響することがない。
【0080】
さらに、下層の総溶着面積が大きくなるような構成とすることで、上層のインク流路を形成する部品寸法をより小さくすることが可能である。図4に示すように、長手方向の寸法の大きいインク流路407Aが下層に配設され、それよりも長手方向の寸法が小さいインク流路411を上層に配設することで、第2のプレート410の長手寸法を第1のプレート402の長手寸法よりも小さくすることが可能である。部品を小さくできることはコスト面のメリットだけでなく、上述した通り、超音波溶着は部品の平面度の影響を受けるため、平面度を高くするには、部品をなるべく小さくすることが望ましい。
【0081】
また、本実施形態ではフルライン型のインクジェット記録ヘッドについて説明したが、本実施形態による超音波溶着を用いた積層体の作製方法の適用範囲はこれに限られることはない。本実施形態による方法は、複数の部材が積層されて複数の流路が形成される積層体全般に適用が可能である。本実施形態による方法を適用した積層体には、リークが発生しにくく、信頼性の高い流路が形成される。
(第2の実施形態)
図13は、本発明の第2の実施形態に係る流路構成体を示した概略構成図であり、図13(a)は分解斜視図であり、図13(b)は斜視図である。図14は本実施形態に係る流路構成体の断面図であり、図14(a)は図13(a)のC−C線に沿った断面図であり、図14(b)は図13(b)のD−D線に沿った断面図である。また、図15(a)は流路形成部材1の上面図であり、図15(b)は流路形成部材2の下面図である。
【0082】
この流路構成体は、第1の流路形成部材1、第2の流路形成部材2、および第3の流路形成部材3の3枚の平板状の部材により構成されている。
【0083】
流路形成部材1の上面には長手方向に沿って流路溝11および2つの溝12が形成されている。流路溝11は流路形成部材1の上面の中央部に設けられており、各溝12は流路溝11の両側に設けられている。
【0084】
流路形成部材2の下面には、流路形成部材1の各溝12に対向する位置に、それぞれ下方に突出した溶着リブ23が設けられている。
【0085】
流路形成部材2の上面には長手方向に沿って流路溝21および2つの溝22が形成されている。流路溝21は流路形成部材2の上面の中央部に設けられており、各溝22は流路溝21の両側に設けられている。
【0086】
流路形成部材3の下面には、流路形成部材2の各溝22に対向する位置に、それぞれ下方に突出した溶着リブ33が設けられている。
【0087】
各溶着リブ23,33は、その長手方向に沿って、該長手方向直交する断面形状が同一となるように形成されている。図14に示すように、溶着リブ23,33は、頂角が下向きの二等辺三角形状の断面を有する。ここで、本実施形態では溶着リブ23の頂角の角度a°と溶着リブ33の頂角の角度b°は等しい。すなわち、a°=b°という式が成り立つ。また、溶着リブ23の流路形成部材2の下面からの高さh1と、溶着リブ33の流路形成部材3の下面からの高さh2と、は等しい。すなわち、h1=h2という式が成り立つ。つまり、本実施形態では溶着リブ23と溶着リブ33とは同様の形状を有している。
【0088】
溶着リブ23,33は超音波により溶解可能な樹脂等の材料で形成されている。したがって、超音波溶着法によって、溶着リブ23を溝12に溶着して溶着部14を形成し、溶着リブ33を溝22に溶着して溶着部24を形成することができる。これにより、流路形成部材1,2,3が一体化して図13(b)および図14(b)に示す流路構成体となる。
【0089】
図13(b)および図14(b)に示す流路構成体では、流路形成部材1の流路溝11が流路形成部材2の下面によって閉塞されて第1の流路となり、流路形成部材2の流路溝21が流路形成部材3の下面によって閉塞されて第2の流路となる。したがって、本実施形態に係る流路構成体では、流路形成部材1,2,3が積層されることにより2つの流路が形成されている。
【0090】
図16および図17を参照して本実施形態に係る流路構成体の製造方法について説明する。図16および図17は本実施形態に係る流路構成体の製造方法の流れを例示した図である。
【0091】
図16に示した流路構成体の製造方法では、まず、流路形成部材1と流路形成部材2を溶着する第1の工程(a)を行う。工程(a)では、流路形成部材1上に流路形成部材2を積載し、流路形成部材2上に溶着ホーン4を積載する。溶着ホーン4は流路形成部材2を下方に加圧した状態で、超音波を溶着リブ23に付与することにより、流路形成部材2の溶着リブ23を溶融させて流路形成部材1の溝12に溶着する。これにより、流路形成部材1と流路形成部材2とが溶着された溶着部14が形成される。
【0092】
その後、流路形成部材2と流路形成部材3を溶着する第2の工程(b)を行う。工程(b)では、流路形成部材2上に流路形成部材3を積載し、流路形成部材3上に溶着ホーン4を積載する。溶着ホーン4は超音波を溶着リブ33に付与することにより、流路形成部材3の溶着リブ33を溶融させて流路形成部材2の溝22に溶着する。これにより本実施形態に係る流路構成体が完成する(図16(c))。
【0093】
工程(b)において流路形成部材3の溶着リブ33を流路形成部材2の溝22に溶着する際に流路形成部材1と流路形成部材2との溶着部に負荷がかかるが、本実施形態では、流路形成部材1と流路形成部材2との溶着部が剥がれにくい構成となっている。以下、当該構成について説明する。
【0094】
図14(b)に示すように、流路形成部材1の溝12と流路形成部材2の溶着リブ23との溶着部14の幅をW1とし、流路形成部材2の溝22と流路形成部材3の溶着リブ33との溶着部24の幅をW2とする。
【0095】
図16に示した流路構成体の製造方法では、工程(a)および工程(b)において、W1がW2より大きくなるように、すなわち、W1>W2となるように溶着ホーン4を制御する。したがって、流路形成部材1と流路形成部材2との溶着部14の単位長さ当たりの溶着面積は、流路形成部材2と流路形成部材3との溶着部24の単位長さ当たりの溶着面積よりも大きい。
【0096】
ここで、溶着リブの、溶着ホーン4によって溶融させる部分の、溶着リブの先端からの長さの設定値を「設定溶かし込み量」ということとする。本実施形態に係る超音波溶着法では、溶着ホーン4は、超音波を発していないときにも、流路形成部材を下方に加圧し続ける。したがって、溶着ホーン4が、溶着リブに超音波を付与し終えた後にも、流路形成部材を加圧し続ける。そのため、溶着リブの実際の溶かし込み量、すなわち溶着リブの、溶着ホーン4によって溶融させる部分の、溶着リブの先端からの実際の長さは、設定溶かし込み量より大きくなる。
【0097】
溶着リブの溶かし込み量の制御は、溶着ホーン4が超音波を発する時間や、溶着ホーン4が発する超音波のエネルギー(単位は「J:ジュール」である。)を調整することによって行うことができる。溶着ホーン4が超音波を発する時間を長くすると、溶着リブの溶かし込み量が大きくなる。また、溶着ホーン4が発する超音波のエネルギーを大きくすると、溶着リブの溶かし込み量が大きくなる。
【0098】
本実施形態では、溶着リブ23の設定溶かし込み量を0.6mmとし、溶着リブ23の実際の溶かし込み量は0.7mmであった。また、溶着リブ33の設定溶かし込み量を0.3mmとし、溶着リブ33の実際の溶かし込み量は0.4mmであった。このように溶着ホーン4を制御することにより、W1>W2とすることができた。
【0099】
したがって、流路形成部材1と流路形成部材2との溶着部14の溶着強度は、流路形成部材2と流路形成部材3との溶着部24の溶着強度と比較して強固である。そのため、工程(b)において流路形成部材3の溶着リブ33を流路形成部材2の溝22に溶着する際に流路形成部材1と流路形成部材2との溶着部14に負荷がかかっても、溶着リブ23が溝12から剥がれにくい。
【0100】
次に、図17に示した流路構成体の製造方法では、まず、流路形成部材2と流路形成部材3を溶着する第1の工程(a)を行う。工程(a)では、流路形成部材2上に流路形成部材3を積載し、流路形成部材3上に溶着ホーン4を積載する。溶着ホーン4は流路形成部材3を下方に加圧した状態で、超音波を溶着リブ33に付与することにより、流路形成部材3の溶着リブ33を溶融させて流路形成部材2の溝22に溶着する。これにより、流路形成部材2と流路形成部材3とが溶着された溶着部24が形成される。
【0101】
その後、流路形成部材1と流路形成部材2を溶着する第2の工程(b)を行う。工程(b)では、流路形成部材1上に流路形成部材2を積載し、流路形成部材2上に溶着ホーン4を積載する。溶着ホーン4は超音波を溶着リブ23に付与することにより、流路形成部材2の溶着リブ23を溶融させて流路形成部材1の溝12に溶着する。これにより本実施形態に係る流路構成体が完成する(図17(c))。
【0102】
図17に示した流路構成体の製造方法では、工程(a)および工程(b)において、W2がW1より大きくなるように、すなわち、W2>W1となるように溶着ホーン4を制御する。したがって、流路形成部材2と流路形成部材3との溶着部24の単位長さ当たりの溶着面積は、流路形成部材1と流路形成部材2との溶着部14の単位長さ当たりの溶着面積よりも大きい。
【0103】
本実施形態では、溶着リブ33の設定溶かし込み量を0.6mmとし、溶着リブ33の実際の溶かし込み量は0.7mmであった。また、溶着リブ23の設定溶かし込み量を0.3mmとし、溶着リブ23の実際の溶かし込み量は0.4mmであった。このように溶着ホーン4を制御することにより、W2>W1とすることができた。
【0104】
したがって、流路形成部材2と流路形成部材3との溶着部24の溶着強度は、流路形成部材1と流路形成部材2との溶着部14の溶着強度と比較して強固である。そのため、工程(b)において流路形成部材2の溶着リブ23を流路形成部材1の溝12に溶着する際に流路形成部材2と流路形成部材3との溶着部24に負荷がかかっても、流路形成部材3の溶着リブ33が流路形成部材2の溝22から剥がれにくい。
【0105】
このように、図16および図17に係る流路構成体の製造方法によれば、先に流路形成部材同士を溶着した溶着部において流路形成部材の溶着リブが流路形成部材の溝から剥がれにくい。したがって、本製造方法によれば、信頼性の高い流路構成体を製造することができる。また、本実施形態に係る流路構成体は、流路を平面的ではなく立体的に設けるため、小型化が可能である。
【0106】
なお、図14に示すように本実施形態に係る流路構成体は、流路形成部材1と流路形成部材2との溶着部14は、流路形成部材2と流路形成部材3との溶着部24の真下にある。しかし、流路構成体の溶着部の位置は適宜変更可能である。たとえば、流路構成体は、図18のように、流路形成部材2aと流路形成部材3aとの溶着部24aを、流路形成部材1と流路形成部材2aとの溶着部14aから、流路溝21a側に距離dだけオフセットした構成でもよい。
【0107】
また、流路溝の形状も図13〜15に示す構成に限らない。たとえば、流路構成体は、図18に示す第2の流路形成部材2aの流路溝21aのように、流路溝の幅を狭くする構成でもよい。
【0108】
また、本実施形態に係る溶着リブは二等辺三角形状の断面を有するが、溶着リブの断面の形状は適宜変更可能である。たとえば、溶着リブの断面の形状は、任意の三角形状であってよい。また、本実施形態では溶着リブが流路形成部材の下面に形成され、溝が流路形成部材の上面に形成されているが、溶着部は溶着リブと溝により形成されていればよく、流路形成部材の上面に形成され、溝が流路形成部材の下面に形成されていてもよい。
【0109】
また、本実施形態に係る流路構成体の製造方法では、溶着リブを溝に溶着して溶着部を形成したが、溶着部の形成方法は適宜変更可能である。さらに、本実施形態に係る流路構成体は、3枚の流路形成部材によって構成されているが、流路形成部材の枚数は3枚以上の枚数で適宜決定することができる。ただし、いずれの場合にも、溶着する順番が早い溶着部ほど、単位長さ当たりの溶着面積を大きくする。
(第3の実施形態)
図19は本発明の第2の実施形態に係る流路構成体の断面図である。図19は第1の実施形態に係る流路構成体の図14に対応する。
【0110】
この流路構成体は、第1の流路形成部材1、第2の流路形成部材2b、および第3の流路形成部材3bの3枚の平板状の部材により構成されている。本実施形態に係る流路構成体の第1の流路形成部材1は、第1の実施形態に係る第1の流路形成部材1と共通する。第2の流路形成部材2bは第1の実施形態に係る流路形成部材2と溶着リブの形状のみが異なり、第3の流路形成部材3bは第1の実施形態に係る流路形成部材3と溶着リブの形状のみが異なる。
【0111】
流路形成部材2b,3bの各溶着リブ23b,33bは、第1の実施形態に係る溶着リブ23,33と同様に、その長手方向に沿って、該長手方向直交する断面形状が同一となるように形成されている。溶着リブ23b,33bは、頂角が下向きの二等辺三角形状の断面を有する。ここで、本実施形態では溶着リブ23bの頂角の角度c°は、溶着リブ33bの頂角の角度d°より大きい。すなわち、c°>d°の式が成り立つ。また、溶着リブ23bの流路形成部材2bの下面からの高さh3と、溶着リブ33bの流路形成部材3bの下面からの高さh4は等しい。すなわち、h3=h4という式が成り立つ。
【0112】
流路形成部材2bの溝22bは、第1の実施形態に係る流路形成部材2の溝22と同様に形成されている。したがって、超音波溶着法によって、溶着リブ23bを溝12に溶着して溶着部14bを形成し、溶着リブ33bを溝22bに溶着して溶着部24bを形成することができる。これにより、流路形成部材1,2b,3bが一体化して図19(b)に示す流路構成体となる。
【0113】
本実施形態に係る流路構成体は、図16に示した流路構成体の製造工程と同様の流れに沿って製造することが可能である。
【0114】
図19(b)に示すように、流路形成部材1の溝12と流路形成部材2bの溶着リブ23bとの溶着部14bの幅をW3とし、流路形成部材2bの溝22bと流路形成部材3bの溶着リブ33bとの溶着部24bの幅をW4とする。
【0115】
本実施形態では、第1の流路形成部材1と第2の流路形成部材2bを溶着する工程(a)と、第2の流路形成部材2bと第3の流路形成部材3bを溶着する工程(b)と、で溶着ホーン4を同様の設定条件(超音波を発する時間や超音波のエネルギー等)とした。具体的には、溶着リブ23b,33bの設定溶かし込み量をともに0.4mmとした。なお、溶着リブ23b,33bの実際の溶かし込み量は0.5mmであった。
【0116】
本実施形態では、溶着リブ23b,33bで溶かし込み量が等しく、上述したようにc°>d°であるため、W3>W4となる。このように、先に行われる工程(a)で溶着される流路形成部材1と流路形成部材2bとの溶着部14bの幅W3が、後に行われる工程(b)で溶着される流路形成部材2bと流路形成部材3bとの溶着部24bの幅W4より大きくなる。
【0117】
したがって、流路形成部材1と流路形成部材2bとの溶着部14bの溶着強度は、流路形成部材2bと流路形成部材3bとの溶着部24bの溶着強度と比較して強固である。そのため、工程(b)において流路形成部材3bの溶着リブ33bを流路形成部材2bの溝12に溶着する際に流路形成部材1と流路形成部材2bとの溶着部14bに負荷がかかっても、溶着リブ23bが溝12から剥がれにくい。
【0118】
このように、本実施形態に係る流路構成体の製造方法によれば、先に溶着した溶着部において流路形成部材の溶着リブが流路形成部材の溝から剥がれにくい。したがって、本製造方法によれば、信頼性の高い流路構成体を製造することができる。
(第4の実施形態)
図20は本発明の第3の実施形態に係る流路構成体の断面図である。図20は第1の実施形態に係る流路構成体の図14に対応する。
【0119】
この流路構成体は、第1の流路形成部材1、第2の流路形成部材2c、および第3の流路形成部材3cの3枚の平板状の部材により構成されている。本実施形態に係る流路構成体の第1の流路形成部材1は、第1の実施形態に係る第1の流路形成部材1と共通する。第2の流路形成部材2cは第1の実施形態に係る流路形成部材2と溶着リブの形状のみが異なり、第3の流路形成部材3cは第1の実施形態に係る流路形成部材3と溶着リブの形状のみが異なる。
【0120】
流路形成部材2c,3cの各溶着リブ23c,33cは、第1の実施形態に係る溶着リブ23,33と同様に、その長手方向に沿って、該長手方向直交する断面形状が同一となるように形成されている。溶着リブ23cは、頂角が下向きの二等辺三角形状の断面を有する。溶着リブ33cは、溶着リブ23cと同様の断面形状を有する2つの溶着リブにより構成される。
【0121】
流路形成部材2cの溝22cは、第1の実施形態に係る流路形成部材2の溝22と同様に形成されている。したがって、超音波溶着法によって、溶着リブ23cを溝12に溶着して溶着部14cを形成し、溶着リブ33cを溝22cに溶着して溶着部24cを形成することができる。これにより、流路形成部材1,2c,3cが一体化して図20(b)に示す流路構成体となる。
【0122】
本実施形態に係る流路構成体は、図16に示した流路構成体の製造工程と同様の流れに沿って製造することが可能である。
【0123】
本実施形態では、第1の流路形成部材1と第2の流路形成部材2cを溶着する工程(a)と、第2の流路形成部材2cと第3の流路形成部材3cを溶着する工程(b)と、で溶着ホーン4を同様の設定条件(超音波を発する時間や超音波のエネルギー等)とした。具体的には、溶着リブ23c,33cの設定溶かし込み量をともに0.4mmとした。なお、溶着リブ23c,33cの実際の溶かし込み量は0.5mmであった。
【0124】
本実施形態では、溶着リブ23c,33cで溶かし込み量が等しく、第2の流路形成部材2cの溶着リブ23cは、第3の流路形成部材3cの溶着リブ33cと同様の形状の2つの溶着リブを有する。そのため、溶着部24cの幅の合計は、溶着部14cの幅の2倍となる。
【0125】
したがって、流路形成部材1と流路形成部材2cとの溶着部14cの溶着強度は、流路形成部材2cと流路形成部材3cとの溶着部24cの溶着強度と比較して強固である。そのため、工程(b)において流路形成部材3cの溶着リブ33cを流路形成部材2cの溝12に溶着する際に流路形成部材1と流路形成部材2cとの溶着部14cに負荷がかかっても、溶着リブ23cが溝12から剥がれにくい。
【0126】
このように、本実施形態に係る流路構成体の製造方法によれば、先に溶着した溶着部において流路形成部材の溶着リブが流路形成部材の溝から剥がれにくい。したがって、本製造方法によれば、信頼性の高い流路構成体を製造することができる。
(第5の実施形態)
図21は本発明の第4の実施形態に係る流路構成体の断面図である。図21は第1の実施形態に係る流路構成体の図14に対応する。
【0127】
この流路構成体は、第1の流路形成部材1、第2の流路形成部材2d、および第3の流路形成部材3dの3枚の平板状の部材により構成されている。本実施形態に係る流路構成体の第1の流路形成部材1は、第1の実施形態に係る第1の流路形成部材1と共通する。第2の流路形成部材2dは第1の実施形態に係る流路形成部材2と溶着リブの形状のみが異なり、第3の流路形成部材3dは第1の実施形態に係る流路形成部材3と溶着リブの形状のみが異なる。
【0128】
流路形成部材2d,3dの各溶着リブ23d,33dは、第1の実施形態に係る溶着リブ23,33と同様に、その長手方向に沿って、該長手方向直交する断面形状が同一となるように形成されている。溶着リブ23d,33dは、頂角が下向きの二等辺三角形状の断面を有する。ここで、本実施形態では溶着リブ23dの頂角の角度e°は溶着リブ33dの頂角の角度f°より大きい。すなわち、e°>f°という式が成り立つ。また、溶着リブ23dの流路形成部材2dの下面からの高さh5は、溶着リブ33の流路形成部材3dの下面からの高さh6より高い。すなわち、h5>h6という式が成り立つ。
【0129】
流路形成部材2dの溝22dは、第1の実施形態に係る流路形成部材2の溝22と同様に形成されている。したがって、超音波溶着法によって、溶着リブ23dを溝12に溶着して溶着部14dを形成し、溶着リブ33dを溝22dに溶着して溶着部24dを形成することができる。これにより、流路形成部材1,2d,3dが一体化して図21(b)に示す流路構成体となる。
【0130】
本実施形態に係る流路構成体は、図16に示した流路構成体の製造工程と同様の流れに沿って製造することが可能である。
【0131】
図21(b)に示すように、流路形成部材1の溝12と流路形成部材2dの溶着リブ23dとの溶着部14dの幅をW5とし、流路形成部材2dの溝22dと流路形成部材3dの溶着リブ33dとの溶着部24dの幅をW6とする。
【0132】
本実施形態では、溶着リブ23dの設定溶かし込み量を0.6mmとし、溶着リブ23dの実際の溶かし込み量は0.7mmであった。また、溶着リブ33dの設定溶かし込み量を0.3mmとし、溶着リブ33dの実際の溶かし込み量は0.4mmであった。このように溶着ホーン4を制御することにより、W5>W6とすることができた。
【0133】
したがって、流路形成部材1と流路形成部材2dとの溶着部14dの溶着強度は、流路形成部材2dと流路形成部材3dとの溶着部24dの溶着強度と比較して強固である。そのため、工程(b)において流路形成部材3dの溶着リブ33dを流路形成部材2dの溝12に溶着する際に流路形成部材1と流路形成部材2dとの溶着部14dに負荷がかかっても、溶着リブ23dが溝12から剥がれにくい。
【0134】
このように、本実施形態に係る流路構成体の製造方法によれば、先に溶着した溶着部において流路形成部材の溶着リブが流路形成部材の溝から剥がれにくい。したがって、本製造方法によれば、信頼性の高い流路構成体を製造することができる。
(第6の実施形態)
図22は本発明の第5の実施形態に係る流路構成体の断面図である。図22は第1の実施形態に係る流路構成体の図14(a)に対応する。
【0135】
この流路構成体は、第1の流路形成部材1、第2の流路形成部材2e、および第3の流路形成部材3eの3枚の平板状の部材により構成されている。本実施形態に係る流路構成体の第1の流路形成部材1は、第1の実施形態に係る第1の流路形成部材1と共通する。第2の流路形成部材2eは第1の実施形態に係る流路形成部材2と溶着リブの形状のみが異なり、第3の流路形成部材3eは第1の実施形態に係る流路形成部材3と溶着リブの形状のみが異なる。
【0136】
流路形成部材2e,3eの各溶着リブ23e,33eは、第1の実施形態に係る溶着リブ23,33と同様に、その長手方向に沿って、該長手方向直交する断面形状が同一となるように形成されている。溶着リブ23eは、頂角が下向きの二等辺三角形状の断面を有する。溶着リブ33eは板状であり、先端が、頂角が下向きの二等辺三角形状である矢印状の断面を有する。ここで、本実施形態では溶着リブ23eの頂角の角度g°と溶着リブ33eの頂角の角度h°とは等しい。すなわち、g°=h°という式が成り立つ。また、溶着リブ23eの流路形成部材2eの下面からの高さh7と、溶着リブ33の流路形成部材3eの下面からの高さh8と、は等しい。すなわち、h7=h8という式が成り立つ。
【0137】
流路形成部材2eの溝22eは、第1の実施形態に係る流路形成部材2の溝22と同様に形成されている。したがって、超音波溶着法によって、溶着リブ23eを溝12に溶着して溶着部14eを形成し、溶着リブ33eを溝22eに溶着して溶着部24eを形成することができる。これにより、流路形成部材1,2e,3eが一体化して流路構成体となる。
【0138】
本実施形態に係る流路構成体は、図16に示した流路構成体の製造工程と同様の流れに沿って製造することが可能である。
【0139】
本実施形態では、第1の流路形成部材1と第2の流路形成部材2eを溶着する工程(a)と、第2の流路形成部材2eと第3の流路形成部材3eを溶着する工程(b)と、で溶着ホーン4を同様の設定条件(超音波を発する時間や超音波のエネルギー等)とした。具体的には、溶着リブ23e,33eの設定溶かし込み量をともに0.4mmとした。なお、溶着リブ23e,33eの実際の溶かし込み量は0.5mmであった。
【0140】
本実施形態では、溶着リブ23e,33eで溶かし込み量が等しく、溶着リブ33eの溶融する部分は、板状の部分まで達している。したがって、溶着リブ23eの溶融量と溶着リブ33eの溶融量とでは、溶着リブ23eの溶融量の方が多い。
【0141】
したがって、流路形成部材1と流路形成部材2eとの溶着部14eの溶着強度は、流路形成部材2eと流路形成部材3eとの溶着部24eの溶着強度と比較して強固である。そのため、工程(b)において流路形成部材3eの溶着リブ33eを流路形成部材2eの溝12に溶着する際に流路形成部材1と流路形成部材2eとの溶着部14eに負荷がかかっても、溶着リブ23eが溝12から剥がれにくい。
【0142】
このように、本実施形態に係る流路構成体の製造方法によれば、先に溶着した溶着部において流路形成部材の溶着リブが流路形成部材の溝から剥がれにくい。したがって、本製造方法によれば、信頼性の高い流路構成体を製造することができる。
(第7の実施形態)
図23は、本発明の第6の実施形態に係るインクジェット記録ヘッドの概略構成図であり、図23(a)は分解斜視図であり、図23(b)は斜視図である。
【0143】
本実施形態に係るインクジェット記録ヘッドH1000は、記録素子基板H1100,支持部材H1200,電気配線基板H1300からなる記録素子ユニットH1002と、第1の実施形態に係る流路構成体H1001と、で構成されている。
【0144】
記録素子基板H1100はシリコン製の基板であり、中央にインク供給口が形成されている。また、記録素子基板H1100上には複数の発熱抵抗体が配列されている。このような発熱抵抗体を形成した記録素子基板H1100はヒーターボードと呼ばれている。ヒーターボードには発熱抵抗体に電力を供給するための配線が形成されており、両端に設置された電極パッドに結線されている。このようなヒーターボードの上に複数の吐出口が形成されたオリフィスプレート等が設けられて記録素子基板H1100が完成する。
【0145】
記録素子基板H1100は、支持部材H1200に高精度で接着される。支持部材H1200の両端部には、それぞれ、第1の実施形態に係る流路構成体H1001が接続される流路孔H1200a,H1200bが形成されている。
【0146】
第1の実施形態に係る流路構成体H1001の端部には、支持部材H1200の流路孔H1200a,H1200bに接続される接続部H1001a,H1001bが形成されている。ひとつの支持部材H1200あたり2つの流路構成体H1001が接続される。各流路構成体H1001の接続部はH1001a,H1001bは支持部材H1200の流路孔H1200a,H1200bに接続される。流路構成体H1001は、支持部材H1200の両端部に接着あるいはビス締め等で接続される。
【0147】
各流路構成体H1001には、支持部材1200に接続される接続部H1001a,H1001bとは反対側の端部に、プリンタ本体(不図示)に接続される接続部H1001c,H1001dが設けられている。
【0148】
電気配線基板H1300には、記録素子基板H1100の発熱抵抗体に電力を供給するための配線が引き回されている。電気配線基板H1300も、支持部材H1200に高精度で接着される。また記録素子基板H1100と電気配線基板H1300は、インナーリードを用いたTAB実装法によって電気な接合がなされ、その接合部分は封止材によって封止される。
【0149】
このように、図23(b)に示すインクジェット記録ヘッドH1000が完成する。インクジェット記録ヘッドH1000では、プリンタ本体のインク供給部から供給されたインクが各流路構成体H1001の接続部H1001cから流路構成体H1001の下側の流路を通って接続部H1001aまで導かれる。そして、インクは流路構成体H1001の接続部H1001aから支持部材H1200の流路孔H1200aへ流入する。
【0150】
また、これと同時に、プリンタ本体のインク供給部から供給されたインクが各流路構成体H1001の接続部H1001dから流路構成体H1001の上側の流路を通って接続部H1001bまで導かれる。そして、インクは流路構成体H1001の接続部H1001aから支持部材H1200の流路孔H1200bへ流入する。
【0151】
支持部材H1200に流入したインクは、支持部材H1200の内部の流路を通過し、記録素子基板H1100に供給され、記録素子基板H1100の吐出口から記録媒体に吐出される。なお、インクが流れる流路には、ゴミ等の混入を防止するフィルタを設けることが望ましい。
【0152】
第1の実施形態に係る小型の流路構成体H1001を用いることにより、本実施形態に係るインクジェット記録ヘッドH1000は小型化している。また、流路構成体H1001は、インクジェット記録ヘッドH1000を長手方向に直交する方向に並列して配置する場合の妨げとはならない。そのため、たとえば、インクジェット記録ヘッドを各色別に並列して配置する場合にも、小さいスペースに収めることができる。
【符号の説明】
【0153】
溶着リブ401 フィルタ収容部材
402 第1のプレート
410 第2のプレート
412,413 溶着リブ
406A,407A,411 インク流路
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の流路形成部材が積層され、各流路形成部材の間に流路が形成される流路構成体およびその製造方法、インクジェット記録ヘッド、ならびに記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体を吐出する液体吐出ヘッドの代表的なものとして、インクジェット記録ヘッド(以下、「記録ヘッド」とも称する。)がある。記録ヘッドには、記録媒体の搬送方向と交差する方向に記録媒体の幅に対応する範囲にわたってインク吐出口が配列されたフルライン型のものがある。特許文献1に、記録ヘッドにインクを供給する流路だけでなく、循環流路や、流路内に溜まった気泡を除去するための流路などが形成された記録ヘッドが開示されている。
【0003】
特許文献2には、インク等の流体を所定の方向に案内することが可能な流路が設けられた流路構成体が開示されている。特許文献2に開示された流路構成体は、第1の流路形成部材の上に第2の流路形成部材が積載された構成を有している。
【0004】
この流路構成体の第1の流路形成部材の上面には、流路となる流路溝が形成されており、流路溝に沿った溶着リブが当該流路溝の両側に形成されている。第2の流路形成部材の下面には、第1の流路形成部材に積載される際に、第1の流路形成部材の溶着リブを受け入れる溝が形成されている。第1の流路形成部材の溶着リブは、第2の流路形成部材の溝に超音波溶着法により溶着されている。
【0005】
これにより、第1の流路形成部材と第2の流路形成部材とが溶着されると、第1の流路形成部材の流路溝は、第2の流路形成部材の下面によって閉塞される。これにより、第1の流路形成部材の流路溝は、インク等の流体を当該流路溝に沿って案内することが可能な管状の流路となる。このように、特許文献2に記載された流路構成体では、第1の流路形成部材の上に第2の流路形成部材を積載することにより第1の流路形成部材と第2の流路形成部材との間に流路が形成される。
【0006】
特許文献2に記載の流路構成体は、第1の流路形成部材上に第2の流路形成部材のみを積載する構成であるが、第2の流路形成部材上にさらに第3の流路形成部材を積載する構成も考えられる。
【0007】
このような構成の流路構成体では、第2の流路形成部材の上面に第1の流路形成部材と同様の流路溝および溶着リブが形成され、第3の流路形成部材の下面に第2の流路形成部材と同様の溝が形成されている。そして、第3の流路形成部材の溶着リブが、第1の流路形成部材の溝に超音波溶着法により溶着される。
【0008】
このような流路構成体では、第2の流路形成部材と第3の流路形成部材との間にも流路が形成される。これにより、流路構成体には上下に並んだ2つの流路が形成される。流路構成体は、複数の流路を有することにより、同時に複数の種類のインク等の流体を個別に案内することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2008−87465号公報
【特許文献2】特開2007−283668号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述のように、記録ヘッドに複数の流路が形成された流路構成体を用いると、記録ヘッドが大型化する。
【0011】
また、上述した第1の流路形成部材、第2の流路形成部材および第3の流路形成部材が積層された流路構成体を製造する場合、まず、第1の工程として、第1の流路形成部材の溶着リブが第2の流路形成部材の溝に超音波溶着法により溶着される。その後、第2の工程として、第2の流路形成部材の溶着リブが第3の流路形成部材の溝に超音波溶着法により溶着される。
【0012】
したがって、第2の工程で、第2の流路形成部材の溶着リブが第3の流路形成部材の溝に超音波溶着法による溶着時の振動等の負荷により、第1の工程で溶着された第1の流路形成部材の溶着リブが第2の流路形成部材の溝から部分的に剥がれてしまう場合がある。
【0013】
工程順番を代えて、第1の工程で第2の流路形成部材の溶着リブを第3の流路形成部材の溝に溶着し、第2の工程で第1の流路形成部材の溶着リブを第2の流路形成部材の溝に溶着することも考えられる。しかし、この場合も、第2の工程で、第1の流路形成部材の溶着リブが第2の流路形成部材の溝に超音波溶着法による溶着時の負荷により、第1の工程で溶着された第2の流路形成部材の溶着リブが第3の流路形成部材の溝から部分的に剥がれてしまう場合がある。
【0014】
上記のように、溶着リブが溝から剥がれた流路構成体では、流路を通過するインク等の流体がその剥がれた部分から漏れ出してしまう。
【0015】
そこで、本発明は、3枚以上の流路形成部材が積層され、各流路形成部材の間に流路が形成される、コンパクトで、かつ信頼性の高い流路構成体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するため、本発明の流路構成体は、少なくとも3つの流路形成部材が積層され、かつ、該流路形成部材の間に流路が設けられた流路構成体であって、前記各流路形成部材の間を個別に超音波溶着法によって溶着し、前記各流路形成部材の間の総溶着面積が、溶着する順番が早いほど大きい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、3枚以上の流路形成部材が積層され、各流路形成部材の間に流路が形成される流路構成体の信頼性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るインクジェット記録ヘッドの斜視図である。
【図2】図1に示したインクジェット記録ヘッドの分解斜視図である。
【図3】図1に示した記録素子基板の概略構成図である。
【図4】図1に示したインク供給ユニットの分解斜視図である。
【図5】図1に示したインク供給ユニットの分解斜視図である。
【図6】図1に示したインクジェット記録ヘッドの概略構成図である。
【図7】図1に示したインクジェット記録ヘッドを適用可能な記録装置の斜視図である。
【図8】図1に示したインクジェット記録ヘッドの機能ブロック図である。
【図9】図1に示したインクジェット記録ヘッドの部分断面図である。
【図10】図1に示したインクジェット記録ヘッドの溶着部を示した図である。
【図11】図9に示した構成の変形例を示した図である。
【図12】図9に示した構成の変形例を示した図である。
【図13】本発明の第2の実施形態に係る流路構成体の斜視図である。
【図14】図13に示した流路構成体の断面図である。
【図15】図13に示した流路構成体の平面図である。
【図16】図13に示した流路構成体の製造工程を示した断面図である。
【図17】図13に示した流路構成体の製造工程を示した断面図である。
【図18】図13に示した流路構成体の変形例の断面図である。
【図19】本発明の第3の実施形態に係る流路構成体の断面図である。
【図20】本発明の第4の実施形態に係る流路構成体の断面図である。
【図21】本発明の第5の実施形態に係る流路構成体の断面図である。
【図22】本発明の第6の実施形態に係る流路構成体の断面図である。
【図23】本発明の第7の実施形態に係るインクジェット記録ヘッドの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
(第1の実施形態)
(インクジェット記録ヘッド)
まず、本発明の第1の実施形態に係るインクジェット記録ヘッド90の構成について説明する。図1および図2はインクジェット記録ヘッド90の概略構成図であり、図1は斜視図であり、図2は分解斜視図である。
【0020】
インクジェット記録ヘッド90は、いわゆるフルライン型の記録装置に搭載可能である。インクジェット記録ヘッド90は、図1の矢印L方向に搬送される紙等の記録媒体に対して記録素子基板100に設けられた吐出口からインクを吐出する。これにより、インクジェット記録ヘッド90では記録媒体に記録を行う。
【0021】
インクジェット記録ヘッド90には、図1および図2に示すように、液体吐出基板としての記録素子基板100や、固定部材200や、電気配線部材300や、液体供給部材としてのインク供給ユニット400などが設けられている。記録素子基板100と、該記録素子基板100が固定される固定部材200と、は一体となって液体吐出部材として機能する。
【0022】
インクジェット記録ヘッド90には、18個の記録素子基板100が設けられている。各記録素子基板100は、記録媒体の搬送方向に重なっている重複領域N(図1参照)が形成されるように千鳥状に固定部材200上に配置されている。インクジェット記録ヘッド90の、記録素子基板100が配置されている部分の全幅である印字幅は13インチ程度である。
【0023】
各記録素子基板100は電気配線部材300とワイヤーボンディング等の方法で電気的接続がなされ、その各電気的接続部分は封止材700で封止されることにより保護されている。また、固定部材200の、記録素子基板100が配置されている面の裏面には、インク供給ユニット400が設けられている。インク供給ユニット400は、接着剤による接着やゴム部材を介したネジ止め等により記録素子基板100の裏面に固定されている。
【0024】
次に、インクジェット記録ヘッド90を構成する各部材について詳細に説明する。
【0025】
図3はインクジェット記録ヘッド90の記録素子基板100を拡大して示した図であり、図3(a)は斜視図であり、図3(b)は図3(a)のB−B’線に沿った断面図である。
【0026】
記録素子基板100はインクを吐出するためのデバイスである。図3(b)に示すように、シリコン基板101には、長溝状のインク供給口102が形成されている。シリコン基板101の表面には、インクを吐出するためのエネルギーを発生させるエネルギー発生素子である複数の電気熱変換素子103と、該電気熱変換素子103に接続されるアルミニウム等の電気配線(不図示)と、が成膜技術によって形成されている。
【0027】
また、記録素子基板100の長手方向の両端部には、電気配線部材300(図1および図2参照)との電気的接続がなされる電極104が設けられている。さらに、シリコン基板101上には、樹脂材料からなる吐出口形成部材105が形成されている。
【0028】
吐出口形成部材105には、複数の電気熱変換素子103に対応する位置に、インクを吐出するための吐出口106が形成されている。また、吐出口形成部材105には、吐出口106に連通するインク貯蔵室107が形成されている。吐出口106およびインク貯蔵室107は、フォトリソグラフィー技術を用いて形成されている。
【0029】
図1および図2に示す固定部材200は、複数の記録素子基板100を固定し、各記録素子基板100にインクを供給するために設けられている。固定部材200の内部には、インク供給ユニット400に接続されたインク流路が形成されている。また、図2に示すように、固定部材200の表面に記録素子基板100にインクを供給するための開口部201が形成されている。
【0030】
図1および図2に示す電気配線部材300は、記録装置(不図示)から送られる駆動信号等を記録素子基板100に伝達する。電気配線部材300には、記録素子基板100を組み込むための開口部301や、記録素子基板100の電極104に対応する電極端子302や、記録装置1からの駆動信号等を受けるための外部信号入力端子303などが設けられている。
【0031】
図4および図5はインクジェット記録ヘッド90のインク供給ユニット400の分解斜視図である。供給ユニット400は、記録装置に接続され、固定部材200を介して記録素子基板100にインクを供給する。
【0032】
インク供給ユニット400には、フィルタ収容部材401、第1のプレート402、第2のプレート410、第3のプレート403、第1のフィルタ501、第2のフィルタ502、およびジョイントゴム600が設けられている。フィルタ収容部材401、第1のプレート402、第2のプレート410、第3のプレート403は、樹脂材料を用いて射出成形法により形成されている。
【0033】
フィルタ収容部材401には、第1のプレート402によって閉じられる溝状のインク流路406A,407Aが形成されている。また、第1のプレートには、第2のプレート410およびフィルタ収容部材401と組み合わせられてインク流路411となる溝が形成されている。
【0034】
また、フィルタ収容部材401には、インク流路406Aに接続されたインク流路406Bが設けられている。インク流路406Aと流路406Bとの接続部には、第1のフィルタ収容室408が設けられている。また、フィルタ収容部材401には、インク流路407Aに接続されたインク流路407Bが設けられている。インク流路407Aと流路407Bとの接続部には、第2のフィルタ収容室409が設けられている。
【0035】
第1のフィルタ収容室408および第2のフィルタ収容室409には、インクジェット記録ヘッド90内へのゴミの侵入を防ぐため、それぞれ第1のフィルタ501および第2のフィルタ502が設けられている。第1のフィルタおよび第2のフィルタ502は、それぞれ第1のフィルタ収容室408および第2のフィルタ収容室409に熱溶着されている。
【0036】
また、インクジェット記録ヘッド90には、ジョイントゴム600がジョイントゴム収容室405A、405B、405Cにそれぞれ圧入されている。インクジェット記録ヘッド90は、記録装置に取り付けられた際に、記録装置に設けられたインクジョイントパイプ(不図示)にジョイントゴム600を介して接続される。
【0037】
図4および図5に示したインク供給ユニット400が組み合わされる際には、第1のプレート402および第3のプレート403はフィルタ収容部材401に接合され、第2のプレート410は第1のプレート402に接合される。
【0038】
(インク流路構成)
図1に示すように、インクジェット記録ヘッド90には、インク供給ユニット400が長手方向の両端に一つずつ互いに逆向きに設けられている。図6は、インクジェット記録ヘッド90の概略構成図である。
【0039】
記録装置には、インクジェット記録ヘッド90に供給されるインク7を貯蔵するインクタンクTと、該インクタンクTとインク供給ユニット400を連通させるインク流路5A,5Bが設けられている。また、インクタンクT内のインク7を、インクタンクTとインクジェット記録ヘッド90と間で循環させるための循環手段としてのポンプPが、インク流路5A,5Bの少なくとも一方に設けられる。本実施形態では、ポンプPがインク流路5Bに設けられている。
【0040】
インク流路5Bにはバルブ6A,6Bが設けられている。記録装置の記録動作時には、第1のバルブ6Aが開かれ、第2のバルブ6Bが閉られ、インクジェット記録ヘッド90内では、図中の矢印aで示す経路をインク7が循環するようになる。具体的には、インク7は、インクタンクTから、インク流路5Aを通り、インク供給ユニット400内の第1のフィルタ501を通過する。そして、フィルタ501を通過したインク7は、固定部材200に形成されたインク流路202内を流れ、第2のフィルタ502を通過してインクタンクTに戻る。
【0041】
このように、インク供給ユニット400は、記録装置の記録動作時に、安定してインク流路202から記録素子基板100へとインク7を供給し、かつ、インク7を循環させて記録素子基板100の冷却を行うことができるように構成されている。記録装置の記録動作時に、記録素子基板100へインク7を供給するまでの経路中にある第1のフィルタ501は、該第1のフィルタ501がインク7の経路内での流抵抗を大きくすることを抑制するために、面積が大きいことが望ましい。
【0042】
第1のフィルタ501によってインク7の流抵抗が大きくなると、記録素子基板100へのインク供給不良などが生じることがある。本実施形態では、記録素子基板100の冷却のために必要なインク流路202におけるインク流量が50〜200cc/min程度である。そのために、第1のフィルタ501には、穴径が5μm程度であり、面積が1000〜4000mm2程度のものを用いた。
【0043】
一方、記録素子基板100からインクを導出する側に設けられた第2のフィルタ502は、その流抵抗により記録素子基板100によるインク7の吐出には影響を与えないため、面積を小さくすることが可能である。
【0044】
また、第1のフィルタ501を通過したインク7の一部は記録素子基板100に送り込まれ、記録に用いられる。そのため、第2のフィルタ502を通過するインク7は、第1のフィルタ501を通過するインク7よりも少ない。そのため、この点においても、第2のフィルタ502の面積は第1のフィルタ501の面積よりも小さくてよい。
【0045】
また、インクジェット記録ヘッド90内の気泡を除去するためには、第2のフィルタ502の面積は小さい方がよい。一方で第2のフィルタ502の面積が大きいほどインクの濾過性能が高くなる。本実施形態では、この両方の観点から、第2のフィルタ502として、穴径が5μm程度であり、面積が50〜200mm2程度であるものを用いた。
【0046】
フィルタ収容室408は、フィルタ501を介して、フィルタ収容室408Aとフィルタ408Bとに分けられている。
【0047】
記録前におけるインクジェット記録ヘッド90へのインク充填時や、記録動作を行っていない時にフィルタ収容室408Aに溜まった空気抜き(泡抜き)を行う際には、第1のバルブ6Aを閉じ、かつ、第2のバルブ6Bを開く。これにより、インクジェット記録ヘッド90内では、図中の矢印bで示す経路をインク7が循環する。
【0048】
記録装置の非記録時には、記録素子基板100の吐出口を保湿するために、インクジェット記録ヘッド90内に循環用のインク7を入れておく。インクジェット記録ヘッド90を記録装置に装着した際には、インクジェット記録ヘッド90内の循環用のインク7を排出して、インクジェット記録ヘッド90内を空の状態とする。このようにインクジェット記録ヘッド90内を空の状態にしてから、記録用のインク7を充填する。
【0049】
インクジェット記録ヘッド90内にインクを充填する際に、仮に、最初から矢印aで示した経路でインクを循環させるとする。この場合、第1のフィルタ501の底部からインク7が流れてフィルタ収容室408B内に流入するため、フィルタ収容室408A内がインク7で充填されない。したがって、まず矢印bの経路でインク7を循環させてフィルタ収容室408A内をインク7で充填する必要がある。
【0050】
また、記録装置の記録動作に、インク流路406Aなどの中に混入している気泡が、フィルタ収容室408A内に溜まることがある。フィルタ収容室408A内に気泡が溜まると、第1のフィルタ501におけるインク7が通過する面積が小さくなってしまう。これにより、インク7が第1のフィルタ501を通過する際の流抵抗が高くなってしまう。これを防止するためにも、記録動作前に、矢印bに示す経路にインク7を流してフィルタ収容室408A内の気泡を除去する。
【0051】
(記録装置)
次に、本実施形態に係るインクジェット記録ヘッドが搭載される記録装置に関して説明する。
【0052】
図7は、インクジェット記録ヘッド90を適用可能な記録装置1を部分的に示した概略構成図である。また、図7は、本実施形態における記録装置1内の制御系の機能ブロック図である。図7では、記録装置1が記録を行っている状態を示している。記録装置1には、たとえば、Bk、C、M、Yの4色のインクに対応した4つのインクジェット記録ヘッド90が搭載され、各インクジェット記録ヘッド90の間には紙搬送用ローラ60が配置され、該紙搬送用ローラ60によって記録媒体70が搬送される。
【0053】
記録装置1に設けられた制御手段としてのCPU12は、記録信号等に基づき、インクジェット記録ヘッド90の電気熱変換素子103を駆動させて吐出口106(図3参照)からインク7を吐出する。これにより、インク7が記録媒体70に付着し、記録媒体70に記録信号に基づいた記録がなされる。
【0054】
このように、複数のインクジェット記録ヘッド90が紙搬送方向に並べられているため、インクジェット記録ヘッド90の並び方向(図7におけるX方向)の寸法は小さいことが望ましい。そのために、たとえば、インクジェット記録ヘッド90間のピッチを狭くして配列することができる。これにより記録装置1の小型化が可能である。さらに、インクジェット記録ヘッド90に対して記録媒体を平行に保つ必要のある領域が狭くなるため、記録媒体の搬送精度が向上され、紙ジャムが防止される。これらにより記録装置1による記録媒体への高品位の記録が可能となる。
【0055】
図8を参照して、記録装置1の構成について詳細に説明する。
【0056】
記録装置1は、ユーザにより入力された記録情報をホストコンピュータ4から受信する。記録装置1が受信した記録情報は、記録装置1内に設けられた入出力インターフェイス11に一時保存されるとともに、記録装置1内で処理可能なデータに変換され、インクジェット記録ヘッド駆動信号の供給手段を兼ねるCPU12に入力される。
【0057】
CPU12は、ROM13に保存されている制御プログラムに基づき、CPU12に入力されたデータをRAM14等の周辺ユニットを用いて処理する。また、CPU12は、当該処理により、記録媒体に対してインクによるドットを形成するか否かを表す2値化データ(記録データ)に変換する。
【0058】
インクジェット記録ヘッド90に設けられている電気熱変換素子103を駆動するヘッドドライバ17には、上述した記録データと、CPU12から出力されたインクジェット記録ヘッド駆動データと、が入力されている。ヘッドドライバ17は、2値化データやインクジェット記録ヘッド駆動データに応じて電気熱変換素子103を駆動させ、インクジェット記録ヘッド90にインクを吐出させる。
【0059】
(インク供給ユニット)
インクジェット記録ヘッド90に用いられるインク供給ユニット400について、図9および図10を用いて詳細に説明する。図9はインク供給ユニット400の図1における矢印Aで示す平面における断面図である。また、図10は各溶着部414,415における溶着面積を示す模式図である。
【0060】
上述のとおり、インク供給ユニット400は、記録装置1の記録動作中における安定したインク供給性能、記録素子基板100の冷却性能、インク充填性能、流路内の泡抜き性能に優れている。インクジェット記録ヘッド90のサイズを小さくするために、大面積を有するフィルタ501をフィルタ収容部材401の側面に配設している(図4および図5参照)。このような構成により、インクジェット記録ヘッド90のサイズは、最小限に抑えられている。
【0061】
また、インクジェット記録ヘッド90の幅方向(図7における矢印X方向)の寸法の小型化を図るべく、インク流路406A,406B,411を2層に分けて形成している。そのため、流路406A,406B,411を形成する3つの流路形成部材である、フィルタ収容部材401、第1のプレート402、第2のプレート410を積層している。
【0062】
図9に示すように、第1のプレート402の下面には複数の溶着リブ412が形成され、第2のプレート410の下面には複数の溶着リブ413が形成されている。第1のプレート402の溶着リブ412はフィルタ収容部材401のインク流路406A,407Aが形成された上面に超音波溶着され、第2のプレート410の溶着リブ413は第1のプレート402のインク流路411が形成された上面に超音波溶着される。これにより、フィルタ収容部材401、第1のプレート402、第2のプレート410は、それぞれが流路形成部材として機能し、積層されて個別に溶着されることにより一体となり、流路構成体となる。
【0063】
溶着リブ412,413の先端部における平面度や、溶着される面の平面度のばらつきにより、超音波の付与により潰れる量(溶ける量)が異なる箇所が存在する場合があり、溶着リブの潰れる量が少ない箇所では溶着幅が小さく、溶着強度も相対的に小さくなる場合がある。本実施形態に係るインク供給ユニット400のプレート402,403の超音波溶着される部分は、長手方向の長さが100〜200mm程度と長く、その面積は比較的大きいため、プレートの反りなどの影響により溶着リブの潰れ量が異なり、溶着強度の高い箇所と低い箇所が混在する場合が発生し易い。
【0064】
本実施形態では、フィルタ収容部材401に第1のプレート402を超音波溶着した後に、第1のプレート402に第2のプレート410を超音波溶着する。したがって、第1のプレート402と第2のプレート410との超音波溶着の際に、既に超音波溶着されたフィルタ収容部材401と第1のプレート402との溶着部分の内、溶着強度が低い箇所が、超音波の衝撃によって部分的に剥がれる場合がある。
【0065】
これに対し、本実施形態では以下に説明する構成とすることで信頼性の高い流路構成体を製造可能である。
【0066】
フィルタ収容部材401には、第1のプレート402が溶着されると、第1のプレート402によって塞がれる、インク流路406Aおよびインク流路407Aが設けられている。第1のプレート402には、第2のプレート410が溶着されると、第2のプレート410によって塞がれるインク流路411が設けられている。
【0067】
図10には、フィルタ収容部材401の、第1のプレート402の溶着リブ412が溶着される溶着部414を斜線で示している。また、第1のプレート402の、第2のプレート403の溶着リブ413が溶着される溶着部415を斜線で示している。
【0068】
図9に示すように、第1のプレート402の溶着リブ412と第2のプレート410の溶着リブ413の断面形状は略同一である。なお、図9では、溶着リブ412,413の、超音波溶着により潰される部分(溶ける部分)を破線で示している。溶着リブ412と溶着リブ413とでは、超音波溶着時の潰し量も略同一である。したがって、溶着部414と溶着部415とでは、幅がほぼ等しい。
【0069】
しかし、フィルタ収容部材401では2つのインク流路406A,407Aがあるのに対し、第1のプレート402とでは1つのインク流路411しかない。したがって、フィルタ収容部材401と第1のプレート402とでは溶着すべき部分の面積が大きい。換言すると、溶着部414の総溶着面積と溶着部415の総溶着面積とでは、溶着部414の総溶着面積の方が大きい。
【0070】
したがって、第2のプレート410の溶着リブ413を第1のプレート402に超音波溶着する際に必要なエネルギー(振幅や荷重)は、第1のプレート402の溶着リブ412をフィルタ収容部材401に超音波溶着する場合よりも小さい。そのため、第1のプレート402の溶着リブ412をフィルタ収容部材401に溶着した後、第2のプレート410の溶着リブ413を第1のプレート402に溶着する際に、第1の溶着部414に加わる超音波による衝撃を抑制することができる。
【0071】
なお、超音波溶着法による溶着の条件を変更することにより、溶着リブの潰し量を変更することが可能である。また、溶着リブの断面形状は、図9に示すような形状に限らない。溶着リブの変形例を図11および図12に示す。図11および図12は図9に対応する図であり、第2のプレート410の溶着リブ以外の構成は、図9に示した構成と同様である。
【0072】
図11に示した第2のプレート410の溶着リブ413aは、第1のプレート402の溶着リブ412より小さい。溶着リブ401,413aは互いに相似関係にある三角形状の断面を有する。ここで、溶着リブ412の断面の幅をWaとし、溶着リブ401の断面の高さをd1とする。また、溶着リブ413aの断面の幅をWbとし、溶着リブ413aの高さをd2とする。この場合、Wa>Wbであり、かつ、d1>d2である。
【0073】
図11に示すように、第2のプレート410の溶着リブ413aを、第1のプレート402の溶着リブ412より小さくすることによって、図10に示す溶着部414の幅が溶着部415の幅より大きくなる。これにより、フィルタ収容部材401の溶着部414の総溶着面積と、第1のプレート402の溶着部415の総溶着面積と、の差がさらに大きくなる。この場合、第2のプレート410の溶着リブ413aを第1のプレート402に超音波溶着する際の超音波のエネルギーが小さくて済む。そのため、第1のプレート402の溶着リブ412をフィルタ収容部材401に溶着した後、第2のプレート410の溶着リブ413aを第1のプレート402に溶着する際に、第1の溶着部414に加わる超音波による衝撃を抑制することができる。
【0074】
図12に示した第2のプレート410の溶着リブ413bは、第1のプレート402の溶着リブ412より小さい。溶着リブ413bは、第2のプレート410の下面に垂直であり、先端が三角形状である断面を有する。ここで、溶着リブ413aの断面の幅をWbとし、溶着リブ413aの高さをd2とする。この場合、Wa>Wbであり、かつ、d1=d2である。
【0075】
図12に示すように、第2のプレート410の溶着リブ413bを、第1のプレート402の溶着リブ412より小さくすることによって、図10に示す溶着部414の幅が溶着部415の幅より大きくなる。これにより、フィルタ収容部材401の溶着部414の総溶着面積と、第1のプレート402の溶着部415の総溶着面積と、の差がさらに大きくなる。この場合、第2のプレート410の溶着リブ413bを第1のプレート402に超音波溶着する際の超音波のエネルギーが小さくて済む。そのため、第1のプレート402の溶着リブ412をフィルタ収容部材401に溶着した後、第2のプレート410の溶着リブ413aを第1のプレート402に溶着する際に、第1の溶着部414に加わる超音波による衝撃を抑制することができる。
【0076】
また、本実施形態では、3本のインク流路が形成された流路構成体について説明を行ったが、インク流路の数はこれに限られることはなく、流路構成体にはインクの色数に対応した数の流路を形成することができる。また、本実施形態では、フィルタ収容部材401、第1のプレート402、第2のプレート410の3つの流路形成部材を積層してインク流路を形成する場合について説明したが、これに限られない。たとえば、4つ以上の流路形成部材を積層して流路を形成することもできる。
【0077】
また、本実施形態では、フィルタ収容部材401に第1のプレート402を超音波溶着した後に、第1のプレート402に第2のプレート410を超音波溶着した。しかし、第1のプレート402に第2のプレート410を超音波溶着した後にフィルタ収容部材401に第1のプレート402を超音波溶着してもよい。ただし、この場合には、第1のプレート402と第2のプレート410との溶着部の総溶着面積が、フィルタ収容部材401と第1のプレート402との溶着部の総溶着面積よりも大きいことが必要である。
【0078】
すなわち、超音波溶着を行う順番が早い溶着部の総溶着面積が大きくなるような順番で超音波溶着を行えば、先に超音波溶着を行った溶着部が、後の超音波溶着によって剥がれることを防止できる。
【0079】
ただし、図9に示したように、下層となるフィルタ収容部材401と第1のプレート402との間、すなわち、記録ヘッドの記録素子基板に近い側により多くのインク流路を配設する構成がインク供給安定性の観点からは好ましい。上層に配設されるインク流路は、流路形成部材の接合箇所が増えるため、部品の位置ずれによる段差箇所に気泡が溜まったりするなどしてインク供給性能を損なう可能性がある。本実施例では、記録動作時に使用するインク流路406A,407Aを下層に配設しているため、インク供給性能を損なう可能性が低く、また、上層に配設したインク流路411は、先に述べたように、フィルタ収容室408A内の気泡を除去する時のみに使用する流路であるため、仮に部品の位置ずれによる段差箇所に気泡が溜まったとしても、通常の記録動作に影響することがない。
【0080】
さらに、下層の総溶着面積が大きくなるような構成とすることで、上層のインク流路を形成する部品寸法をより小さくすることが可能である。図4に示すように、長手方向の寸法の大きいインク流路407Aが下層に配設され、それよりも長手方向の寸法が小さいインク流路411を上層に配設することで、第2のプレート410の長手寸法を第1のプレート402の長手寸法よりも小さくすることが可能である。部品を小さくできることはコスト面のメリットだけでなく、上述した通り、超音波溶着は部品の平面度の影響を受けるため、平面度を高くするには、部品をなるべく小さくすることが望ましい。
【0081】
また、本実施形態ではフルライン型のインクジェット記録ヘッドについて説明したが、本実施形態による超音波溶着を用いた積層体の作製方法の適用範囲はこれに限られることはない。本実施形態による方法は、複数の部材が積層されて複数の流路が形成される積層体全般に適用が可能である。本実施形態による方法を適用した積層体には、リークが発生しにくく、信頼性の高い流路が形成される。
(第2の実施形態)
図13は、本発明の第2の実施形態に係る流路構成体を示した概略構成図であり、図13(a)は分解斜視図であり、図13(b)は斜視図である。図14は本実施形態に係る流路構成体の断面図であり、図14(a)は図13(a)のC−C線に沿った断面図であり、図14(b)は図13(b)のD−D線に沿った断面図である。また、図15(a)は流路形成部材1の上面図であり、図15(b)は流路形成部材2の下面図である。
【0082】
この流路構成体は、第1の流路形成部材1、第2の流路形成部材2、および第3の流路形成部材3の3枚の平板状の部材により構成されている。
【0083】
流路形成部材1の上面には長手方向に沿って流路溝11および2つの溝12が形成されている。流路溝11は流路形成部材1の上面の中央部に設けられており、各溝12は流路溝11の両側に設けられている。
【0084】
流路形成部材2の下面には、流路形成部材1の各溝12に対向する位置に、それぞれ下方に突出した溶着リブ23が設けられている。
【0085】
流路形成部材2の上面には長手方向に沿って流路溝21および2つの溝22が形成されている。流路溝21は流路形成部材2の上面の中央部に設けられており、各溝22は流路溝21の両側に設けられている。
【0086】
流路形成部材3の下面には、流路形成部材2の各溝22に対向する位置に、それぞれ下方に突出した溶着リブ33が設けられている。
【0087】
各溶着リブ23,33は、その長手方向に沿って、該長手方向直交する断面形状が同一となるように形成されている。図14に示すように、溶着リブ23,33は、頂角が下向きの二等辺三角形状の断面を有する。ここで、本実施形態では溶着リブ23の頂角の角度a°と溶着リブ33の頂角の角度b°は等しい。すなわち、a°=b°という式が成り立つ。また、溶着リブ23の流路形成部材2の下面からの高さh1と、溶着リブ33の流路形成部材3の下面からの高さh2と、は等しい。すなわち、h1=h2という式が成り立つ。つまり、本実施形態では溶着リブ23と溶着リブ33とは同様の形状を有している。
【0088】
溶着リブ23,33は超音波により溶解可能な樹脂等の材料で形成されている。したがって、超音波溶着法によって、溶着リブ23を溝12に溶着して溶着部14を形成し、溶着リブ33を溝22に溶着して溶着部24を形成することができる。これにより、流路形成部材1,2,3が一体化して図13(b)および図14(b)に示す流路構成体となる。
【0089】
図13(b)および図14(b)に示す流路構成体では、流路形成部材1の流路溝11が流路形成部材2の下面によって閉塞されて第1の流路となり、流路形成部材2の流路溝21が流路形成部材3の下面によって閉塞されて第2の流路となる。したがって、本実施形態に係る流路構成体では、流路形成部材1,2,3が積層されることにより2つの流路が形成されている。
【0090】
図16および図17を参照して本実施形態に係る流路構成体の製造方法について説明する。図16および図17は本実施形態に係る流路構成体の製造方法の流れを例示した図である。
【0091】
図16に示した流路構成体の製造方法では、まず、流路形成部材1と流路形成部材2を溶着する第1の工程(a)を行う。工程(a)では、流路形成部材1上に流路形成部材2を積載し、流路形成部材2上に溶着ホーン4を積載する。溶着ホーン4は流路形成部材2を下方に加圧した状態で、超音波を溶着リブ23に付与することにより、流路形成部材2の溶着リブ23を溶融させて流路形成部材1の溝12に溶着する。これにより、流路形成部材1と流路形成部材2とが溶着された溶着部14が形成される。
【0092】
その後、流路形成部材2と流路形成部材3を溶着する第2の工程(b)を行う。工程(b)では、流路形成部材2上に流路形成部材3を積載し、流路形成部材3上に溶着ホーン4を積載する。溶着ホーン4は超音波を溶着リブ33に付与することにより、流路形成部材3の溶着リブ33を溶融させて流路形成部材2の溝22に溶着する。これにより本実施形態に係る流路構成体が完成する(図16(c))。
【0093】
工程(b)において流路形成部材3の溶着リブ33を流路形成部材2の溝22に溶着する際に流路形成部材1と流路形成部材2との溶着部に負荷がかかるが、本実施形態では、流路形成部材1と流路形成部材2との溶着部が剥がれにくい構成となっている。以下、当該構成について説明する。
【0094】
図14(b)に示すように、流路形成部材1の溝12と流路形成部材2の溶着リブ23との溶着部14の幅をW1とし、流路形成部材2の溝22と流路形成部材3の溶着リブ33との溶着部24の幅をW2とする。
【0095】
図16に示した流路構成体の製造方法では、工程(a)および工程(b)において、W1がW2より大きくなるように、すなわち、W1>W2となるように溶着ホーン4を制御する。したがって、流路形成部材1と流路形成部材2との溶着部14の単位長さ当たりの溶着面積は、流路形成部材2と流路形成部材3との溶着部24の単位長さ当たりの溶着面積よりも大きい。
【0096】
ここで、溶着リブの、溶着ホーン4によって溶融させる部分の、溶着リブの先端からの長さの設定値を「設定溶かし込み量」ということとする。本実施形態に係る超音波溶着法では、溶着ホーン4は、超音波を発していないときにも、流路形成部材を下方に加圧し続ける。したがって、溶着ホーン4が、溶着リブに超音波を付与し終えた後にも、流路形成部材を加圧し続ける。そのため、溶着リブの実際の溶かし込み量、すなわち溶着リブの、溶着ホーン4によって溶融させる部分の、溶着リブの先端からの実際の長さは、設定溶かし込み量より大きくなる。
【0097】
溶着リブの溶かし込み量の制御は、溶着ホーン4が超音波を発する時間や、溶着ホーン4が発する超音波のエネルギー(単位は「J:ジュール」である。)を調整することによって行うことができる。溶着ホーン4が超音波を発する時間を長くすると、溶着リブの溶かし込み量が大きくなる。また、溶着ホーン4が発する超音波のエネルギーを大きくすると、溶着リブの溶かし込み量が大きくなる。
【0098】
本実施形態では、溶着リブ23の設定溶かし込み量を0.6mmとし、溶着リブ23の実際の溶かし込み量は0.7mmであった。また、溶着リブ33の設定溶かし込み量を0.3mmとし、溶着リブ33の実際の溶かし込み量は0.4mmであった。このように溶着ホーン4を制御することにより、W1>W2とすることができた。
【0099】
したがって、流路形成部材1と流路形成部材2との溶着部14の溶着強度は、流路形成部材2と流路形成部材3との溶着部24の溶着強度と比較して強固である。そのため、工程(b)において流路形成部材3の溶着リブ33を流路形成部材2の溝22に溶着する際に流路形成部材1と流路形成部材2との溶着部14に負荷がかかっても、溶着リブ23が溝12から剥がれにくい。
【0100】
次に、図17に示した流路構成体の製造方法では、まず、流路形成部材2と流路形成部材3を溶着する第1の工程(a)を行う。工程(a)では、流路形成部材2上に流路形成部材3を積載し、流路形成部材3上に溶着ホーン4を積載する。溶着ホーン4は流路形成部材3を下方に加圧した状態で、超音波を溶着リブ33に付与することにより、流路形成部材3の溶着リブ33を溶融させて流路形成部材2の溝22に溶着する。これにより、流路形成部材2と流路形成部材3とが溶着された溶着部24が形成される。
【0101】
その後、流路形成部材1と流路形成部材2を溶着する第2の工程(b)を行う。工程(b)では、流路形成部材1上に流路形成部材2を積載し、流路形成部材2上に溶着ホーン4を積載する。溶着ホーン4は超音波を溶着リブ23に付与することにより、流路形成部材2の溶着リブ23を溶融させて流路形成部材1の溝12に溶着する。これにより本実施形態に係る流路構成体が完成する(図17(c))。
【0102】
図17に示した流路構成体の製造方法では、工程(a)および工程(b)において、W2がW1より大きくなるように、すなわち、W2>W1となるように溶着ホーン4を制御する。したがって、流路形成部材2と流路形成部材3との溶着部24の単位長さ当たりの溶着面積は、流路形成部材1と流路形成部材2との溶着部14の単位長さ当たりの溶着面積よりも大きい。
【0103】
本実施形態では、溶着リブ33の設定溶かし込み量を0.6mmとし、溶着リブ33の実際の溶かし込み量は0.7mmであった。また、溶着リブ23の設定溶かし込み量を0.3mmとし、溶着リブ23の実際の溶かし込み量は0.4mmであった。このように溶着ホーン4を制御することにより、W2>W1とすることができた。
【0104】
したがって、流路形成部材2と流路形成部材3との溶着部24の溶着強度は、流路形成部材1と流路形成部材2との溶着部14の溶着強度と比較して強固である。そのため、工程(b)において流路形成部材2の溶着リブ23を流路形成部材1の溝12に溶着する際に流路形成部材2と流路形成部材3との溶着部24に負荷がかかっても、流路形成部材3の溶着リブ33が流路形成部材2の溝22から剥がれにくい。
【0105】
このように、図16および図17に係る流路構成体の製造方法によれば、先に流路形成部材同士を溶着した溶着部において流路形成部材の溶着リブが流路形成部材の溝から剥がれにくい。したがって、本製造方法によれば、信頼性の高い流路構成体を製造することができる。また、本実施形態に係る流路構成体は、流路を平面的ではなく立体的に設けるため、小型化が可能である。
【0106】
なお、図14に示すように本実施形態に係る流路構成体は、流路形成部材1と流路形成部材2との溶着部14は、流路形成部材2と流路形成部材3との溶着部24の真下にある。しかし、流路構成体の溶着部の位置は適宜変更可能である。たとえば、流路構成体は、図18のように、流路形成部材2aと流路形成部材3aとの溶着部24aを、流路形成部材1と流路形成部材2aとの溶着部14aから、流路溝21a側に距離dだけオフセットした構成でもよい。
【0107】
また、流路溝の形状も図13〜15に示す構成に限らない。たとえば、流路構成体は、図18に示す第2の流路形成部材2aの流路溝21aのように、流路溝の幅を狭くする構成でもよい。
【0108】
また、本実施形態に係る溶着リブは二等辺三角形状の断面を有するが、溶着リブの断面の形状は適宜変更可能である。たとえば、溶着リブの断面の形状は、任意の三角形状であってよい。また、本実施形態では溶着リブが流路形成部材の下面に形成され、溝が流路形成部材の上面に形成されているが、溶着部は溶着リブと溝により形成されていればよく、流路形成部材の上面に形成され、溝が流路形成部材の下面に形成されていてもよい。
【0109】
また、本実施形態に係る流路構成体の製造方法では、溶着リブを溝に溶着して溶着部を形成したが、溶着部の形成方法は適宜変更可能である。さらに、本実施形態に係る流路構成体は、3枚の流路形成部材によって構成されているが、流路形成部材の枚数は3枚以上の枚数で適宜決定することができる。ただし、いずれの場合にも、溶着する順番が早い溶着部ほど、単位長さ当たりの溶着面積を大きくする。
(第3の実施形態)
図19は本発明の第2の実施形態に係る流路構成体の断面図である。図19は第1の実施形態に係る流路構成体の図14に対応する。
【0110】
この流路構成体は、第1の流路形成部材1、第2の流路形成部材2b、および第3の流路形成部材3bの3枚の平板状の部材により構成されている。本実施形態に係る流路構成体の第1の流路形成部材1は、第1の実施形態に係る第1の流路形成部材1と共通する。第2の流路形成部材2bは第1の実施形態に係る流路形成部材2と溶着リブの形状のみが異なり、第3の流路形成部材3bは第1の実施形態に係る流路形成部材3と溶着リブの形状のみが異なる。
【0111】
流路形成部材2b,3bの各溶着リブ23b,33bは、第1の実施形態に係る溶着リブ23,33と同様に、その長手方向に沿って、該長手方向直交する断面形状が同一となるように形成されている。溶着リブ23b,33bは、頂角が下向きの二等辺三角形状の断面を有する。ここで、本実施形態では溶着リブ23bの頂角の角度c°は、溶着リブ33bの頂角の角度d°より大きい。すなわち、c°>d°の式が成り立つ。また、溶着リブ23bの流路形成部材2bの下面からの高さh3と、溶着リブ33bの流路形成部材3bの下面からの高さh4は等しい。すなわち、h3=h4という式が成り立つ。
【0112】
流路形成部材2bの溝22bは、第1の実施形態に係る流路形成部材2の溝22と同様に形成されている。したがって、超音波溶着法によって、溶着リブ23bを溝12に溶着して溶着部14bを形成し、溶着リブ33bを溝22bに溶着して溶着部24bを形成することができる。これにより、流路形成部材1,2b,3bが一体化して図19(b)に示す流路構成体となる。
【0113】
本実施形態に係る流路構成体は、図16に示した流路構成体の製造工程と同様の流れに沿って製造することが可能である。
【0114】
図19(b)に示すように、流路形成部材1の溝12と流路形成部材2bの溶着リブ23bとの溶着部14bの幅をW3とし、流路形成部材2bの溝22bと流路形成部材3bの溶着リブ33bとの溶着部24bの幅をW4とする。
【0115】
本実施形態では、第1の流路形成部材1と第2の流路形成部材2bを溶着する工程(a)と、第2の流路形成部材2bと第3の流路形成部材3bを溶着する工程(b)と、で溶着ホーン4を同様の設定条件(超音波を発する時間や超音波のエネルギー等)とした。具体的には、溶着リブ23b,33bの設定溶かし込み量をともに0.4mmとした。なお、溶着リブ23b,33bの実際の溶かし込み量は0.5mmであった。
【0116】
本実施形態では、溶着リブ23b,33bで溶かし込み量が等しく、上述したようにc°>d°であるため、W3>W4となる。このように、先に行われる工程(a)で溶着される流路形成部材1と流路形成部材2bとの溶着部14bの幅W3が、後に行われる工程(b)で溶着される流路形成部材2bと流路形成部材3bとの溶着部24bの幅W4より大きくなる。
【0117】
したがって、流路形成部材1と流路形成部材2bとの溶着部14bの溶着強度は、流路形成部材2bと流路形成部材3bとの溶着部24bの溶着強度と比較して強固である。そのため、工程(b)において流路形成部材3bの溶着リブ33bを流路形成部材2bの溝12に溶着する際に流路形成部材1と流路形成部材2bとの溶着部14bに負荷がかかっても、溶着リブ23bが溝12から剥がれにくい。
【0118】
このように、本実施形態に係る流路構成体の製造方法によれば、先に溶着した溶着部において流路形成部材の溶着リブが流路形成部材の溝から剥がれにくい。したがって、本製造方法によれば、信頼性の高い流路構成体を製造することができる。
(第4の実施形態)
図20は本発明の第3の実施形態に係る流路構成体の断面図である。図20は第1の実施形態に係る流路構成体の図14に対応する。
【0119】
この流路構成体は、第1の流路形成部材1、第2の流路形成部材2c、および第3の流路形成部材3cの3枚の平板状の部材により構成されている。本実施形態に係る流路構成体の第1の流路形成部材1は、第1の実施形態に係る第1の流路形成部材1と共通する。第2の流路形成部材2cは第1の実施形態に係る流路形成部材2と溶着リブの形状のみが異なり、第3の流路形成部材3cは第1の実施形態に係る流路形成部材3と溶着リブの形状のみが異なる。
【0120】
流路形成部材2c,3cの各溶着リブ23c,33cは、第1の実施形態に係る溶着リブ23,33と同様に、その長手方向に沿って、該長手方向直交する断面形状が同一となるように形成されている。溶着リブ23cは、頂角が下向きの二等辺三角形状の断面を有する。溶着リブ33cは、溶着リブ23cと同様の断面形状を有する2つの溶着リブにより構成される。
【0121】
流路形成部材2cの溝22cは、第1の実施形態に係る流路形成部材2の溝22と同様に形成されている。したがって、超音波溶着法によって、溶着リブ23cを溝12に溶着して溶着部14cを形成し、溶着リブ33cを溝22cに溶着して溶着部24cを形成することができる。これにより、流路形成部材1,2c,3cが一体化して図20(b)に示す流路構成体となる。
【0122】
本実施形態に係る流路構成体は、図16に示した流路構成体の製造工程と同様の流れに沿って製造することが可能である。
【0123】
本実施形態では、第1の流路形成部材1と第2の流路形成部材2cを溶着する工程(a)と、第2の流路形成部材2cと第3の流路形成部材3cを溶着する工程(b)と、で溶着ホーン4を同様の設定条件(超音波を発する時間や超音波のエネルギー等)とした。具体的には、溶着リブ23c,33cの設定溶かし込み量をともに0.4mmとした。なお、溶着リブ23c,33cの実際の溶かし込み量は0.5mmであった。
【0124】
本実施形態では、溶着リブ23c,33cで溶かし込み量が等しく、第2の流路形成部材2cの溶着リブ23cは、第3の流路形成部材3cの溶着リブ33cと同様の形状の2つの溶着リブを有する。そのため、溶着部24cの幅の合計は、溶着部14cの幅の2倍となる。
【0125】
したがって、流路形成部材1と流路形成部材2cとの溶着部14cの溶着強度は、流路形成部材2cと流路形成部材3cとの溶着部24cの溶着強度と比較して強固である。そのため、工程(b)において流路形成部材3cの溶着リブ33cを流路形成部材2cの溝12に溶着する際に流路形成部材1と流路形成部材2cとの溶着部14cに負荷がかかっても、溶着リブ23cが溝12から剥がれにくい。
【0126】
このように、本実施形態に係る流路構成体の製造方法によれば、先に溶着した溶着部において流路形成部材の溶着リブが流路形成部材の溝から剥がれにくい。したがって、本製造方法によれば、信頼性の高い流路構成体を製造することができる。
(第5の実施形態)
図21は本発明の第4の実施形態に係る流路構成体の断面図である。図21は第1の実施形態に係る流路構成体の図14に対応する。
【0127】
この流路構成体は、第1の流路形成部材1、第2の流路形成部材2d、および第3の流路形成部材3dの3枚の平板状の部材により構成されている。本実施形態に係る流路構成体の第1の流路形成部材1は、第1の実施形態に係る第1の流路形成部材1と共通する。第2の流路形成部材2dは第1の実施形態に係る流路形成部材2と溶着リブの形状のみが異なり、第3の流路形成部材3dは第1の実施形態に係る流路形成部材3と溶着リブの形状のみが異なる。
【0128】
流路形成部材2d,3dの各溶着リブ23d,33dは、第1の実施形態に係る溶着リブ23,33と同様に、その長手方向に沿って、該長手方向直交する断面形状が同一となるように形成されている。溶着リブ23d,33dは、頂角が下向きの二等辺三角形状の断面を有する。ここで、本実施形態では溶着リブ23dの頂角の角度e°は溶着リブ33dの頂角の角度f°より大きい。すなわち、e°>f°という式が成り立つ。また、溶着リブ23dの流路形成部材2dの下面からの高さh5は、溶着リブ33の流路形成部材3dの下面からの高さh6より高い。すなわち、h5>h6という式が成り立つ。
【0129】
流路形成部材2dの溝22dは、第1の実施形態に係る流路形成部材2の溝22と同様に形成されている。したがって、超音波溶着法によって、溶着リブ23dを溝12に溶着して溶着部14dを形成し、溶着リブ33dを溝22dに溶着して溶着部24dを形成することができる。これにより、流路形成部材1,2d,3dが一体化して図21(b)に示す流路構成体となる。
【0130】
本実施形態に係る流路構成体は、図16に示した流路構成体の製造工程と同様の流れに沿って製造することが可能である。
【0131】
図21(b)に示すように、流路形成部材1の溝12と流路形成部材2dの溶着リブ23dとの溶着部14dの幅をW5とし、流路形成部材2dの溝22dと流路形成部材3dの溶着リブ33dとの溶着部24dの幅をW6とする。
【0132】
本実施形態では、溶着リブ23dの設定溶かし込み量を0.6mmとし、溶着リブ23dの実際の溶かし込み量は0.7mmであった。また、溶着リブ33dの設定溶かし込み量を0.3mmとし、溶着リブ33dの実際の溶かし込み量は0.4mmであった。このように溶着ホーン4を制御することにより、W5>W6とすることができた。
【0133】
したがって、流路形成部材1と流路形成部材2dとの溶着部14dの溶着強度は、流路形成部材2dと流路形成部材3dとの溶着部24dの溶着強度と比較して強固である。そのため、工程(b)において流路形成部材3dの溶着リブ33dを流路形成部材2dの溝12に溶着する際に流路形成部材1と流路形成部材2dとの溶着部14dに負荷がかかっても、溶着リブ23dが溝12から剥がれにくい。
【0134】
このように、本実施形態に係る流路構成体の製造方法によれば、先に溶着した溶着部において流路形成部材の溶着リブが流路形成部材の溝から剥がれにくい。したがって、本製造方法によれば、信頼性の高い流路構成体を製造することができる。
(第6の実施形態)
図22は本発明の第5の実施形態に係る流路構成体の断面図である。図22は第1の実施形態に係る流路構成体の図14(a)に対応する。
【0135】
この流路構成体は、第1の流路形成部材1、第2の流路形成部材2e、および第3の流路形成部材3eの3枚の平板状の部材により構成されている。本実施形態に係る流路構成体の第1の流路形成部材1は、第1の実施形態に係る第1の流路形成部材1と共通する。第2の流路形成部材2eは第1の実施形態に係る流路形成部材2と溶着リブの形状のみが異なり、第3の流路形成部材3eは第1の実施形態に係る流路形成部材3と溶着リブの形状のみが異なる。
【0136】
流路形成部材2e,3eの各溶着リブ23e,33eは、第1の実施形態に係る溶着リブ23,33と同様に、その長手方向に沿って、該長手方向直交する断面形状が同一となるように形成されている。溶着リブ23eは、頂角が下向きの二等辺三角形状の断面を有する。溶着リブ33eは板状であり、先端が、頂角が下向きの二等辺三角形状である矢印状の断面を有する。ここで、本実施形態では溶着リブ23eの頂角の角度g°と溶着リブ33eの頂角の角度h°とは等しい。すなわち、g°=h°という式が成り立つ。また、溶着リブ23eの流路形成部材2eの下面からの高さh7と、溶着リブ33の流路形成部材3eの下面からの高さh8と、は等しい。すなわち、h7=h8という式が成り立つ。
【0137】
流路形成部材2eの溝22eは、第1の実施形態に係る流路形成部材2の溝22と同様に形成されている。したがって、超音波溶着法によって、溶着リブ23eを溝12に溶着して溶着部14eを形成し、溶着リブ33eを溝22eに溶着して溶着部24eを形成することができる。これにより、流路形成部材1,2e,3eが一体化して流路構成体となる。
【0138】
本実施形態に係る流路構成体は、図16に示した流路構成体の製造工程と同様の流れに沿って製造することが可能である。
【0139】
本実施形態では、第1の流路形成部材1と第2の流路形成部材2eを溶着する工程(a)と、第2の流路形成部材2eと第3の流路形成部材3eを溶着する工程(b)と、で溶着ホーン4を同様の設定条件(超音波を発する時間や超音波のエネルギー等)とした。具体的には、溶着リブ23e,33eの設定溶かし込み量をともに0.4mmとした。なお、溶着リブ23e,33eの実際の溶かし込み量は0.5mmであった。
【0140】
本実施形態では、溶着リブ23e,33eで溶かし込み量が等しく、溶着リブ33eの溶融する部分は、板状の部分まで達している。したがって、溶着リブ23eの溶融量と溶着リブ33eの溶融量とでは、溶着リブ23eの溶融量の方が多い。
【0141】
したがって、流路形成部材1と流路形成部材2eとの溶着部14eの溶着強度は、流路形成部材2eと流路形成部材3eとの溶着部24eの溶着強度と比較して強固である。そのため、工程(b)において流路形成部材3eの溶着リブ33eを流路形成部材2eの溝12に溶着する際に流路形成部材1と流路形成部材2eとの溶着部14eに負荷がかかっても、溶着リブ23eが溝12から剥がれにくい。
【0142】
このように、本実施形態に係る流路構成体の製造方法によれば、先に溶着した溶着部において流路形成部材の溶着リブが流路形成部材の溝から剥がれにくい。したがって、本製造方法によれば、信頼性の高い流路構成体を製造することができる。
(第7の実施形態)
図23は、本発明の第6の実施形態に係るインクジェット記録ヘッドの概略構成図であり、図23(a)は分解斜視図であり、図23(b)は斜視図である。
【0143】
本実施形態に係るインクジェット記録ヘッドH1000は、記録素子基板H1100,支持部材H1200,電気配線基板H1300からなる記録素子ユニットH1002と、第1の実施形態に係る流路構成体H1001と、で構成されている。
【0144】
記録素子基板H1100はシリコン製の基板であり、中央にインク供給口が形成されている。また、記録素子基板H1100上には複数の発熱抵抗体が配列されている。このような発熱抵抗体を形成した記録素子基板H1100はヒーターボードと呼ばれている。ヒーターボードには発熱抵抗体に電力を供給するための配線が形成されており、両端に設置された電極パッドに結線されている。このようなヒーターボードの上に複数の吐出口が形成されたオリフィスプレート等が設けられて記録素子基板H1100が完成する。
【0145】
記録素子基板H1100は、支持部材H1200に高精度で接着される。支持部材H1200の両端部には、それぞれ、第1の実施形態に係る流路構成体H1001が接続される流路孔H1200a,H1200bが形成されている。
【0146】
第1の実施形態に係る流路構成体H1001の端部には、支持部材H1200の流路孔H1200a,H1200bに接続される接続部H1001a,H1001bが形成されている。ひとつの支持部材H1200あたり2つの流路構成体H1001が接続される。各流路構成体H1001の接続部はH1001a,H1001bは支持部材H1200の流路孔H1200a,H1200bに接続される。流路構成体H1001は、支持部材H1200の両端部に接着あるいはビス締め等で接続される。
【0147】
各流路構成体H1001には、支持部材1200に接続される接続部H1001a,H1001bとは反対側の端部に、プリンタ本体(不図示)に接続される接続部H1001c,H1001dが設けられている。
【0148】
電気配線基板H1300には、記録素子基板H1100の発熱抵抗体に電力を供給するための配線が引き回されている。電気配線基板H1300も、支持部材H1200に高精度で接着される。また記録素子基板H1100と電気配線基板H1300は、インナーリードを用いたTAB実装法によって電気な接合がなされ、その接合部分は封止材によって封止される。
【0149】
このように、図23(b)に示すインクジェット記録ヘッドH1000が完成する。インクジェット記録ヘッドH1000では、プリンタ本体のインク供給部から供給されたインクが各流路構成体H1001の接続部H1001cから流路構成体H1001の下側の流路を通って接続部H1001aまで導かれる。そして、インクは流路構成体H1001の接続部H1001aから支持部材H1200の流路孔H1200aへ流入する。
【0150】
また、これと同時に、プリンタ本体のインク供給部から供給されたインクが各流路構成体H1001の接続部H1001dから流路構成体H1001の上側の流路を通って接続部H1001bまで導かれる。そして、インクは流路構成体H1001の接続部H1001aから支持部材H1200の流路孔H1200bへ流入する。
【0151】
支持部材H1200に流入したインクは、支持部材H1200の内部の流路を通過し、記録素子基板H1100に供給され、記録素子基板H1100の吐出口から記録媒体に吐出される。なお、インクが流れる流路には、ゴミ等の混入を防止するフィルタを設けることが望ましい。
【0152】
第1の実施形態に係る小型の流路構成体H1001を用いることにより、本実施形態に係るインクジェット記録ヘッドH1000は小型化している。また、流路構成体H1001は、インクジェット記録ヘッドH1000を長手方向に直交する方向に並列して配置する場合の妨げとはならない。そのため、たとえば、インクジェット記録ヘッドを各色別に並列して配置する場合にも、小さいスペースに収めることができる。
【符号の説明】
【0153】
溶着リブ401 フィルタ収容部材
402 第1のプレート
410 第2のプレート
412,413 溶着リブ
406A,407A,411 インク流路
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも3つの流路形成部材が積層され、かつ、該流路形成部材の間に流路が設けられた流路構成体であって、
前記各流路形成部材の間を個別に超音波溶着法によって溶着し、前記各流路形成部材の間の総溶着面積が、溶着する順番が早いほど大きい流路構成体。
【請求項2】
少なくとも3つの流路形成部材が積層され、かつ、該流路形成部材の間に流路が設けられた、インクジェット記録ヘッドに用いられる流路構成体であって、
前記各流路形成部材の間の総溶着面積が、前記インクジェット記録ヘッドの記録素子基板に近いほど大きい流路構成体。
【請求項3】
前記各流路形成部材の間の前記流路の数は、前記総溶着面積が大きいほど多い、請求項1または2に記載の流路構成体。
【請求項4】
前記各流路形成部材の間には、前記流路に沿って溶着された溶着部が形成されている、請求項1から3のいずれか1項に記載の流路構成体。
【請求項5】
前記総溶着面積が大きい前記各流路形成部材の間に形成された溶着部ほど幅が広い、請求項4に記載の流路構成体。
【請求項6】
複数の流路形成部材が積層され、かつ、該流路形成部材の間に流路が設けられた流路構成体の製造方法であって、
対向する前記流路形成部材を、前記流路に沿って、超音波溶着法により溶着する複数の工程を有し、
前記複数の工程のうち早く行われる前記工程ほど、前記対向する流路形成部材同士を溶着した際の単位長さあたりの溶着面積を大きくすることを特徴とする流路構成体の製造方法。
【請求項7】
前記複数の工程のうち早く行われる前記工程ほど、前記超音波溶着法で超音波を発する時間を長くする、請求項6に記載の流路構成体の製造方法。
【請求項8】
前記複数の工程のうち早く行われる前記工程ほど、前記超音波溶着法における超音波のエネルギーを高くする、請求項6または7に記載の流路構成体の製造方法。
【請求項9】
溶着される前記流路形成部材のうちの、一方の前記流路形成部材には前記面から突出した溶着リブが形成されており、前記工程では前記一方の流路形成部材の前記溶着リブを他方の前記流路形成部材に溶着する、請求項6から8のいずれか1項に記載の流路構成体の製造方法。
【請求項10】
前記他方の流路形成部材には溝が形成されており、前記工程では前記溶着リブを前記溝に溶着する、請求項9に記載の流路構成体の製造方法。
【請求項11】
前記複数の工程のうち早く行われる前記工程ほど、溶着する前記溶着リブを大きくする、請求項9または10に記載の流路構成体の製造方法。
【請求項12】
前記複数の工程のうち早く行われる前記工程ほど、溶着する前記溶着リブの先端の角度を大きくする、請求項9から11のいずれか1項に記載の流路構成体の製造方法。
【請求項13】
記録素子基板に形成された吐出口からインクを吐出して記録媒体に記録を行うインクジェット記録ヘッドであって、
請求項1から5のいずれか1項に記載の流路構成体を備え、該流路構成体の前記流路を介して前記記録素子基板にインクを供給するインクジェット記録ヘッド。
【請求項14】
記録素子基板に形成された吐出口からインクを吐出して記録媒体に記録を行うインクジェット記録ヘッドであって、
請求項6から12のいずれか1項に記載の製造方法で製造された流路構成体を備え、該流路構成体の前記流路を介して前記記録素子基板にインクを供給するインクジェット記録ヘッド。
【請求項15】
インクを吐出して記録媒体に記録を行う記録装置であって、
請求項13または14に記載のインクジェット記録ヘッドを搭載可能であり、該インクジェット記録ヘッドの吐出口からインクを吐出する記録装置。
【請求項1】
少なくとも3つの流路形成部材が積層され、かつ、該流路形成部材の間に流路が設けられた流路構成体であって、
前記各流路形成部材の間を個別に超音波溶着法によって溶着し、前記各流路形成部材の間の総溶着面積が、溶着する順番が早いほど大きい流路構成体。
【請求項2】
少なくとも3つの流路形成部材が積層され、かつ、該流路形成部材の間に流路が設けられた、インクジェット記録ヘッドに用いられる流路構成体であって、
前記各流路形成部材の間の総溶着面積が、前記インクジェット記録ヘッドの記録素子基板に近いほど大きい流路構成体。
【請求項3】
前記各流路形成部材の間の前記流路の数は、前記総溶着面積が大きいほど多い、請求項1または2に記載の流路構成体。
【請求項4】
前記各流路形成部材の間には、前記流路に沿って溶着された溶着部が形成されている、請求項1から3のいずれか1項に記載の流路構成体。
【請求項5】
前記総溶着面積が大きい前記各流路形成部材の間に形成された溶着部ほど幅が広い、請求項4に記載の流路構成体。
【請求項6】
複数の流路形成部材が積層され、かつ、該流路形成部材の間に流路が設けられた流路構成体の製造方法であって、
対向する前記流路形成部材を、前記流路に沿って、超音波溶着法により溶着する複数の工程を有し、
前記複数の工程のうち早く行われる前記工程ほど、前記対向する流路形成部材同士を溶着した際の単位長さあたりの溶着面積を大きくすることを特徴とする流路構成体の製造方法。
【請求項7】
前記複数の工程のうち早く行われる前記工程ほど、前記超音波溶着法で超音波を発する時間を長くする、請求項6に記載の流路構成体の製造方法。
【請求項8】
前記複数の工程のうち早く行われる前記工程ほど、前記超音波溶着法における超音波のエネルギーを高くする、請求項6または7に記載の流路構成体の製造方法。
【請求項9】
溶着される前記流路形成部材のうちの、一方の前記流路形成部材には前記面から突出した溶着リブが形成されており、前記工程では前記一方の流路形成部材の前記溶着リブを他方の前記流路形成部材に溶着する、請求項6から8のいずれか1項に記載の流路構成体の製造方法。
【請求項10】
前記他方の流路形成部材には溝が形成されており、前記工程では前記溶着リブを前記溝に溶着する、請求項9に記載の流路構成体の製造方法。
【請求項11】
前記複数の工程のうち早く行われる前記工程ほど、溶着する前記溶着リブを大きくする、請求項9または10に記載の流路構成体の製造方法。
【請求項12】
前記複数の工程のうち早く行われる前記工程ほど、溶着する前記溶着リブの先端の角度を大きくする、請求項9から11のいずれか1項に記載の流路構成体の製造方法。
【請求項13】
記録素子基板に形成された吐出口からインクを吐出して記録媒体に記録を行うインクジェット記録ヘッドであって、
請求項1から5のいずれか1項に記載の流路構成体を備え、該流路構成体の前記流路を介して前記記録素子基板にインクを供給するインクジェット記録ヘッド。
【請求項14】
記録素子基板に形成された吐出口からインクを吐出して記録媒体に記録を行うインクジェット記録ヘッドであって、
請求項6から12のいずれか1項に記載の製造方法で製造された流路構成体を備え、該流路構成体の前記流路を介して前記記録素子基板にインクを供給するインクジェット記録ヘッド。
【請求項15】
インクを吐出して記録媒体に記録を行う記録装置であって、
請求項13または14に記載のインクジェット記録ヘッドを搭載可能であり、該インクジェット記録ヘッドの吐出口からインクを吐出する記録装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
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【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【公開番号】特開2012−254617(P2012−254617A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−154911(P2011−154911)
【出願日】平成23年7月13日(2011.7.13)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年7月13日(2011.7.13)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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