説明

流路構造体および流体混合装置

【課題】流路構造体において、横幅が小さく縦幅が大きい流路を、等方性エッチングを利用して容易に形成する。
【解決手段】微細流路構造体1は、積層方向に対して垂直な第1基板11、第1基板11上に積層された中間基板12および第2基板13を備える。微細流路14の長手方向の一部であって第1基板11に平行な平行部140は、第1基板11および第2基板13上にそれぞれ等方性エッチングにより形成された第1凹部111および第2凹部131、並びに、中間基板12に等方性エッチングにより形成された貫通孔121により形成され、縦幅が横幅の2倍以上とされる。微細流路構造体1では、貫通孔121が形成された中間基板12を、第1基板11および第2基板13で挟んで積層することにより、横幅が小さく縦幅が大きい微細流路14を等方性エッチングを利用して容易に形成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体が流れる流路が内部に形成された流路構造体に関し、例えば、流路構造体は、複数の流体を混合する流体混合装置に利用される。
【背景技術】
【0002】
従来より、化学合成反応や生化学反応等の分野において、微量の試料流体を反応させるための微小容器として、微細流路を有するマイクロリアクタが利用されている。例えば、特許文献1では、異方性エッチングによりチャネル(流路)が形成されたシリコン基板の表面を平板により覆って形成されたマイクロリアクタが開示されている。このようなマイクロリアクタでは、複数の注入ポートから試料流体が供給されてチャネル内で混合および反応し、反応物が排出ポートから取り出される。特許文献2では、流路を蛇行させることにより試料流体の混合時間を延長する技術が開示されている。
【0003】
特許文献3では、2種類の試料流体がそれぞれ流れる複数の分岐流路を交互に並べて合流させることにより、混合流路内において2種類の層状の試料流体を交互に複数回積層し、各層間における試料の混合を短時間で効率良く行う技術が開示されている。また、特許文献4では、混合流路を上下方向に分割して再度合流させることにより、積層される試料流体の層数を増加して混合効率を向上する技術が開示されている。一方、特許文献5では、貫通孔を有する複数の流路板を、底板と蓋板とで挟んで積層することによりマイクロリアクタの流路を形成する技術が開示されている。なお、特許文献6および特許文献7では、管路を流れる流体を磁気力により改質する技術が開示されている。
【特許文献1】特開平10−337173号公報
【特許文献2】特開2002−27984号公報
【特許文献3】特開2003−1077号公報
【特許文献4】特表平11−512645号公報
【特許文献5】特開2004−33907号公報
【特許文献6】特開2004−124918号公報
【特許文献7】特開2002−361261号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、このようなマイクロリアクタでは、試料流体の混合効率を向上するために混合流路の分割および合流を繰り返すことが好ましいが、流路の横幅が大きいと、これらの流路を所定の面積内に配置することが困難となり、マイクロリアクタが大型化してしまう。また、流路を高密度に配置するためには必然的に流路が曲げられることになるが、流路の屈曲部の横幅が大きいと、屈曲部の内周側と外周側とで流速差が生じて内周側に試料流体が滞留しやすくなる。しかしながら、流路の断面積を極端に小さくしてしまうと、流体に働く抵抗が大きくなって流体が流れにくくなってしまうため、所定の断面積を維持し、かつ、横幅の小さい流路が求められている。
【0005】
一方、マイクロリアクタの流路は、一般的に、横方向(幅方向)と縦方向(深さ方向)とのエッチング量がほぼ等しい等方性のウェットエッチングにより金属等の基板上に形成される。したがって、横幅が小さい流路は縦幅も小さくなり、横幅を小さく維持したまま流路に要求される断面積を実現すること、すなわち、横幅が小さく縦幅が大きい流路を形成することが困難であった。さらに、横幅が等しく縦幅が異なる2種類の流路を同一基板上に形成することも困難であった。
【0006】
また、複数のマイクロリアクタを積層して使用する場合、個々のマイクロリアクタの厚さが厚くなると全体が大型化して取り扱いが困難になってしまう。しかしながら、マイクロリアクタの薄型化のために、流路が形成される基板として、流路の縦幅に対応する最小限の厚さを有するものを使用しようとすると、基板の板厚が規格外となってマイクロリアクタの製造コストが上昇してしまう。さらに、マイクロリアクタの種類毎に使用する基板の厚さが異なると、マイクロリアクタの製造装置における基板の搬送機構が複雑化および大型化してしまい、製造装置のコストも上昇してしまう。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、流体が流れる流路が内部に形成された流路構造体において、横幅が小さく縦幅が大きい流路を、等方性エッチングにより容易に形成することを主な目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、流体が流れる流路が内部に形成された流路構造体であって、所定の積層方向に対して垂直な板状またはシート状の第1部材と、それぞれが板状またはシート状であり、前記第1部材上において前記積層方向に積層された少なくとも1つの中間部材と、前記少なくとも1つの中間部材上に積層された板状またはシート状の第2部材とを備え、前記第1部材、前記少なくとも1つの中間部材および前記第2部材により、前記流路の一部であって前記第1部材に平行な平行部が形成され、前記平行部の内壁面のうち前記積層方向に関して両端の部位が前記第1部材および前記第2部材上に存在し、前記少なくとも1つの中間部材が、等方性エッチングにより形成された貫通孔を有し、前記平行部の前記内壁面のうち前記両端の部位の間の部位が前記貫通孔により形成され、前記平行部の前記積層方向の第1の幅が、前記積層方向に垂直な方向の第2の幅の2倍以上である。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の流路構造体であって、前記第1部材および前記少なくとも1つの中間部材のそれぞれの厚さが、100μm以上である。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の流路構造体であって、前記第1部材および前記少なくとも1つの中間部材のそれぞれの厚さが等しく、かつ、それぞれが同じ材料により形成される。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項1ないし3のいずれかに記載の流路構造体であって、前記平行部の前記内壁面のうち前記第1部材上の部位が、等方性エッチングにより形成された凹面である。
【0012】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の流路構造体であって、それぞれが板状またはシート状であり、前記第1部材の前記少なくとも1つの中間部材とは反対側に積層された少なくとも1つの他の中間部材と、前記少なくとも1つの他の中間部材上に積層された板状またはシート状の第3部材とをさらに備え、前記第1部材、前記少なくとも1つの他の中間部材および前記第3部材により、もう1つの流路の一部であって前記第1部材に平行なもう1つの平行部が形成され、前記もう1つの平行部の内壁面のうち前記積層方向に関して両端の部位が前記第1部材および前記第3部材上に存在し、前記少なくとも1つの他の中間部材が、等方性エッチングにより形成された貫通孔を有し、前記もう1つの平行部の前記内壁面のうち前記両端の部位の間の部位が前記貫通孔により形成され、前記もう1つの平行部の前記内壁面のうち前記第1部材上の部位が、等方性エッチングにより形成された凹面である。
【0013】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の流路構造体であって、前記流路を流れる流体と前記もう1つの流路を流れる流体との間で前記第1部材を介して熱交換が行われる。
【0014】
請求項7に記載の発明は、請求項1ないし4のいずれかに記載の流路構造体であって、前記第1部材、前記少なくとも1つの中間部材および前記第2部材により、もう1つの流路の一部であって前記第1部材に平行なもう1つの平行部が形成され、前記流路を流れる流体と前記もう1つの流路を流れる流体との間で非接触状態にて熱交換が行われる。
【0015】
請求項8に記載の発明は、請求項6または7に記載の流路構造体であって、前記流路が、複数の流体がそれぞれ通過する複数の供給路と、前記複数の供給路に接続されて前記複数の流体が混合された混合流体が通過する混合路とを備える。
【0016】
請求項9に記載の発明は、流体混合装置であって、請求項8に記載の流路構造体と、前記流路構造体が浸漬される液体を貯溜する容器と、前記液体に超音波振動を付与する超音波振動源とを備え、前記もう1つの流路を流れる流体の温度と前記容器内の前記液体の温度とが異なる。
【0017】
請求項10に記載の発明は、請求項1ないし5のいずれかに記載の流路構造体であって、前記流路が、複数の流体がそれぞれ通過する複数の供給路と、前記複数の供給路に接続されて前記複数の流体が混合された混合流体が通過する混合路とを備える。
【0018】
請求項11に記載の発明は、流体混合装置であって、請求項10に記載の流路構造体と、前記流路構造体が浸漬される液体を貯溜する容器と、前記液体に超音波振動を付与する超音波振動源とを備える。
【0019】
請求項12に記載の発明は、請求項1ないし4のいずれかに記載の流路構造体であって、前記第1部材、前記少なくとも1つの中間部材および前記第2部材により、前記流路の一部であって前記第1部材に平行なもう1つの平行部が形成され、前記もう1つの平行部が、前記平行部よりも前記第2の幅が大きく、前記第1の幅が小さい。
【0020】
請求項13に記載の発明は、請求項12に記載の流路構造体であって、前記もう1つの平行部が複数の分割流路に連絡しており、前記複数の分割流路のそれぞれが前記平行部であり、前記複数の分割流路のそれぞれの前記第2の幅の合計が、前記もう1つの平行部の前記第2の幅以下であり、前記複数の分割流路のそれぞれの前記第1の幅が前記もう1つの平行部の前記第1の幅以上である。
【0021】
請求項14に記載の発明は、請求項1ないし8,10,12並びに13のいずれかに記載の流路構造体であって、前記流路の少なくとも一部に磁場を印加する磁場発生部をさらに備える。
【発明の効果】
【0022】
本発明では、積層方向に垂直な方向の第2の幅が小さく、かつ、積層方向の第1の幅が大きい流路を、等方性エッチングを利用して容易に形成することができる。
【0023】
請求項2の発明では、第1部材と中間部材とをより確実に接合することができる。請求項3の発明では、流路構造体の製造装置を簡素化することができる。
【0024】
請求項4の発明では、流路構造体を薄型化することができる。請求項5の発明では、積層方向に重ねて形成された2つの流路を備える流路構造体の薄型化を実現することができる。請求項6および7の発明では、互いの間で熱交換が行われる2つの流路を備える流路構造体の薄型化を実現することができる。
【0025】
請求項9および11の発明では、複数の流体の混合を促進することができる。さらに、請求項9の発明では、振動媒体となる液体の温度の影響を抑制することができる。
【0026】
請求項12の発明では、流路を必要に応じて高密度に配置することができる。請求項13の発明では、流路の分割の前後において流路を流れる流体に働く抵抗の変化を抑制しつつ複数の分割流路が占める横幅を小さくすることができる。
【0027】
請求項14の発明では、流路を流れる流体のクラスタを小さくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
図1は、本発明に係る微細流路構造体1の基本構造を示す断面図である。図1は、微細流路構造体1を、微細流路構造体1の内部に形成される微細流路14の長手方向(すなわち、微細流路14を流れる流体の流動方向)に垂直な面で切断した図である。図1に示すように、微細流路構造体1は、所定の積層方向(すなわち、図1中のZ方向)に対して垂直な基板であって最も下側のベースとなる第1基板11、第1基板11上においてZ方向に積層された中間基板12、および、中間基板12の第1基板11とは反対側に直接的に積層された第2基板13を備える。第1基板11、中間基板12および第2基板13は、それぞれが同じ金属材料により形成された厚さが等しい板状(またはシート状)の部材であり、それぞれの厚さは100μm以上とされる。
【0029】
微細流路構造体1では、第1基板11および中間基板12により溝部が形成され、蓋部材である第2基板13により溝部の開口が閉塞されることにより、流体が流れる微細流路14が形成される。図1は、微細流路14の長手方向の一部であって第1基板11に平行な平行部140における断面を示している。平行部140は、第1基板11および第2基板13上にそれぞれ等方性エッチングにより形成された第1凹部111および第2凹部131、並びに、中間基板12に等方性エッチングにより形成されて中間基板12を積層方向に貫通する貫通孔121により形成される。微細流路構造体1では、平行部140の積層方向の幅(以下、「縦幅」という。)が、積層方向に垂直な方向(すなわち、Y方向)の幅(以下、「横幅」という。)の2倍以上とされる。
【0030】
図1に示すように、平行部140の内壁面のうち、Z方向に関して両端の部位(以下、(−Z)側の部位を「下端部1401」、(+Z)側の部位を「上端部1403」という。)は第1基板11および第2基板13上に存在する。換言すれば、下端部1401は、第1基板11上に形成された第1凹部111の内壁面である凹面であり、上端部1403は、第2基板13上に形成された第2凹部131の内壁面である凹面である。また、平行部140の内壁面のうち、下端部1401および上端部1403の間の中間部1402は貫通孔121により形成される。
【0031】
なお、微細流路構造体1では、複数の中間基板12が第1基板11と第2基板13との間にて積層され、第1基板11の第1凹部111、複数の中間基板12に連通して形成された貫通孔121、および、第2基板13の第2凹部131により微細流路14の平行部140が形成されてもよい。また、第2基板13上に第2凹部131が形成されず、第2基板13の(−Z)側の平坦な主面の一部が、平行部140の内壁面の上端部1403とされてもよい(第1基板11についても同様に第1凹部111が省略されてよい。)。微細流路構造体1では、微細流路14の平行部140以外の部位において、微細流路14の底面や上面が水平面(すなわち、XY平面)に対して傾斜して形成されることにより、微細流路14の縦幅が長手方向に関して漸次増加(または減少)してもよい。
【0032】
次に、上記基本構造を有する微細流路構造体1の具体的な形状について説明する。図2は、本発明の第1の実施の形態に係る微細流路構造体1を示す平面図である。微細流路構造体1は、2種類の流体の混合および反応に利用される微小容器であり、以下、「マイクロリアクタ1」という。マイクロリアクタ1は、上述のように、第1基板11、中間基板12および第2基板13により構成される3層構造であり、これらの基板により、図2中に破線にて示す微細流路14が形成される。
【0033】
図2に示すように、マイクロリアクタ1は、2種類の微量の流体がそれぞれ供給される2つの供給口143を微細流路14の(−X)側に備え、微細流路14を通過した流体が排出される1つの排出口144を微細流路14の(+X)側に備える。微細流路14は、マイクロリアクタ1の(+Z)側の主面上に形成された各供給口143から供給された流体がそれぞれ通過する2つの供給路141、および、2つの供給路141に接続されて2種類の流体が混合された混合流体が通過する混合路142を備える。
【0034】
混合路142では、図2に示すように、流路の一部が2つに分割されている。以下、混合路142の分割されている部位を「分割部位1422」、それ以外の部位を「合流部位1421」という。混合路142では、混合流体の分割と合流が繰り返されることにより2種類の流体の混合が効率良く行われる。微細流路14の一部である混合路142を通過した混合流体は、マイクロリアクタ1の(+Z)側の主面上に形成された排出口144から排出される。
【0035】
マイクロリアクタ1では、2つに分割された流路である供給路141のそれぞれが、第1基板11に平行な平行部140となり、2つの供給路141に連絡する混合路142が、第1基板11に平行なもう1つの平行部140となる。図3および図4は、マイクロリアクタ1の一部を図2中のA−AおよびB−Bの位置で供給路141および混合路142の合流部位1421に垂直な面(すなわち、X方向に垂直な面)により切断した部分断面図である。なお、混合路142の分割部位1422の断面形状は、図3に示す供給路141の断面形状と同様であり、2つの流路の間隔のみが異なる。
【0036】
マイクロリアクタ1では、供給路141を流れる流体に働く抵抗、および、混合路142の合流部位1421を流れる流体に働く抵抗が略等しくなるように、供給路141および合流部位1421の断面積が決定されている(分割部位1422についても同様)。ただし、流路の横幅や縦幅が極端に小さくならないことが前提とされる。図3および図4に示すように、混合路142の合流部位1421は、各供給路141(および混合路142の分割部位1422)よりも横幅が大きく、縦幅が小さい。また、2つの供給路141の横幅の合計は混合路142の合流部位1421の横幅以下とされ、各供給路141の縦幅は、合流部位1421の縦幅以上とされる(2つの分割部位1422についても同様)。
【0037】
その結果、微細流路14の分割の前後において微細流路14を流れる流体に働く抵抗の変化を抑制しつつ複数の分割流路である供給路141が占める横幅(2つの供給路141の間隙の横幅も含む。)を小さくすることができる。同様に、微細流路14の2つの分割部位1422が占める横幅を小さくすることもできる。このように、マイクロリアクタ1では、微細流路14の各部位に要求される断面積を、各部位の横幅と縦幅とを自由に組み合わせて実現することにより、微細流路14の横幅を必要に応じて小さくして高密度に配置することができる。
【0038】
図5は、マイクロリアクタ1の中間基板12を(+Z)側から見た平面図である。図5に示すように、中間基板12は、Z方向に貫通して微細流路14の一部を形成する貫通孔121を含む流路領域120、および、微細流路14の長手方向の所定の部位において、流路領域120の両側の部位を連結する複数の連結部122を備える。
【0039】
図6は、マイクロリアクタ1を、図5中のC−Cに対応する位置でX方向に垂直な面により切断した部分断面図である。図6では、理解を容易にするために、第1基板11、中間基板12および第2基板13を分解して示している。図6に示すように、中間基板12の流路領域120の(−Z)側の開口123は、第1基板11により閉塞される。また、連結部122は、連結部122が設けられた流路領域120の両側(すなわち、(+Y)側および(−Y)側)の部位よりも薄い板状であり、連結部122の(+Z)側の主面は、当該両側の部位の(+Z)側の主面と同一平面上に位置する。
【0040】
図5に示すように、中間基板12では、2つの供給路141に対応する流路領域120に挟まれた部位が、複数(本実施の形態では3つ)の連結部122により供給路141の外側の部位と連結されている。また、混合路142の2つの分割部位1422に対応する流路領域120に挟まれた略菱形の孤立部124が、孤立部124の周囲の周辺部125から独立しており、複数(本実施の形態では4つ)の連結部122のみにより周辺部125に連結されている。換言すれば、連結部122を挟んで中間基板12の独立した部材要素である孤立部124および周辺部125は、連結部122が設けられた流路領域120の両側の部位をそれぞれ含む。なお、孤立部124が小さい場合(例えば、連結部122と同程度の大きさである場合)等には、孤立部124は1つの連結部122のみにより周辺部125に連結されてもよい。
【0041】
図7は、マイクロリアクタ1の製造工程を示す図である。マイクロリアクタ1が製造される際には、まず、第1基板11、中間基板12および第2基板13用の金属板(すなわち、各基板の元になる部材であり、以下、「元部材」という。)が準備される。3つの元部材は同じ金属材料により形成されており、厚さも等しい。
【0042】
元部材が準備されると、1つの元部材について、両主面にフォトレジストが塗布され、(+Z)側の主面に対して露光および現像が行われて第1凹部111に対応するエッチング領域以外の領域にレジスト膜が形成される。その後、エッチング領域に対して等方性エッチングが行われて第1凹部111が形成され、さらに、レジスト膜が元部材から除去されて第1基板11が形成される(ステップS11)。
【0043】
第1基板11が形成されると、他の1つの元部材に対する加工が行われて中間基板12が形成される(ステップS12)。図8は、中間基板12の形成工程を示す図である。図9および図10は、中間基板12の形成途上における部分断面図であり、それぞれ、図5中のC−CおよびD−Dの位置における中間基板12の断面を示す。以下、図8ないし図10を参照しつつ中間基板12の形成工程を説明する。
【0044】
中間基板12が形成される際には、まず、元部材の両主面にフォトレジストが塗布される(ステップS121)。続いて、元部材の(−Z)側の主面上のフォトレジストに対して露光および現像が行われ、図9および図10に示すように、流路領域120以外の領域に第1レジスト膜91が形成される(ステップS122)。さらに、元部材の(+Z)側の主面上のフォトレジストに対して露光および現像が行われ、流路領域120以外の領域、および、連結部122に対応する領域に第2レジスト膜92が形成される(ステップS123)。
【0045】
なお、第1レジスト膜91および第2レジスト膜92の形成は、元部材の(−Z)側および(+Z)側の主面に対して露光が同時もしくは順次行われた後、両主面が同時、あるいは、順次に現像されることにより行われてもよい。また、フォトレジストは、光が照射された部分のみが現像時に除去されるポジ型であってもよく、光が照射された部分のみが硬化して現像時に残置されるネガ型であってもよい。さらに、元部材に対する露光は、開口パターンを有するマスクを介しての光の照射であってもよく、変調される光ビームを走査させながら照射してパターンを直接描画する直描方式により行われてもよい。
【0046】
第1レジスト膜91および第2レジスト膜92が形成されると、元部材に対してシャワー状または霧状のエッチング液が付与されて両主面の第1レジスト膜91および第2レジスト膜92以外の領域に対して等方性エッチングが行われ、図9および図10中に二点鎖線にて示す部位が除去されて貫通孔121を含む流路領域120、および、連結部122が形成される(ステップS124)。その後、第1レジスト膜91および第2レジスト膜92が元部材から除去されて中間基板12の形成が完了する(ステップS125)。このように、中間基板12の形成工程では、流路領域120を形成する際のエッチングにより、複数の連結部122が貫通孔121の形成と並行して容易に形成される。なお、エッチング液の付与は、元部材がエッチング液に浸漬されることにより行われてもよい。
【0047】
中間基板12の形成が完了すると、ステップS11と同様に、さらに他の元部材に対するフォトレジストの塗布、露光、現像、等方性エッチング、および、レジスト膜の除去が行われ、第2凹部131を(−Z)側の主面に有する第2基板13が形成される(ステップS13)。なお、第1基板11、中間基板12、第2基板13の処理条件が同じであれば、レジスト塗布、露光、現像、エッチングの各工程を一度の処理で行っても良い。その後、第1基板11上に中間基板12が積層され、数百度に加熱されて加圧されることにより、互いに拡散接合されて微細流路14の一部である溝部が形成され、さらに、中間基板12上(すなわち、中間基板12の第1基板11とは反対側)に溝部の開口を閉塞する蓋部材である第2基板13が直接積層されて拡散接合されることにより、縦幅が横幅の2倍以上である微細流路14を内部に備えるマイクロリアクタ1が形成される(ステップS14)。各基板の接合は、接着剤や板状シールにより行われてもよい。
【0048】
以上に説明したように、マイクロリアクタ1では、貫通孔121が形成された中間基板12を、第1基板11および第2基板13で挟んで積層することにより、横幅が小さく縦幅が大きい微細流路14を、等方性エッチングを利用して容易に形成することができる。また複数の薄い元部材に対してエッチングを行って貫通孔121等を形成し、これらを積層することにより微細流路14が形成されるため、1つの厚い元部材に同じ縦幅の微細流路を形成する場合に比べて、個々の元部材に対するエッチング量を少なくして微細流路14を短時間で形成することができる。さらには、底板部材である第1基板11および蓋部材である第2基板13に、微細流路14の一部を構成する第1凹部111および第2凹部131が形成されているため、必要とされる微細流路14の縦幅に対して、マイクロリアクタ1を薄型化することができる。
【0049】
マイクロリアクタ1では、第1基板11、中間基板12および第2基板13のそれぞれの厚さが等しく、それぞれが同じ金属材料により形成されているため、マイクロリアクタ1の製造時における各基板の曲げや張力等の搬送条件を同じにすることができる。その結果、マイクロリアクタ1の製造装置を簡素化することができる。また、各基板の厚さが100μm以上とされることにより、基板同士を拡散接合する際に、基板に加えられる圧力の均一性が向上し、基板同士をより確実に接合することができる。その結果、微細流路14からの流体の漏出を防止することができる。
【0050】
マイクロリアクタ1の中間基板12では、2つの供給路141に対応する流路領域120に挟まれた片持梁状の部位が、複数の連結部122により供給路141の外側の部位と連結されているため、中間基板12の第1基板11上への積層の際等、中間基板12をハンドリングする際に、当該片持梁状の部位が変形してしまうことが防止される。また、互いに独立した孤立部124および周辺部125が複数の連結部122により連結されているため、中間基板12の一部が分離することが防止される。その結果、中間基板12の形成時およびハンドリング時に、中間基板12をエッチング耐性シート等に固定することなく1つの部材として容易に扱うことができ、マイクロリアクタ1の製造工程を簡素化することができる。
【0051】
生産現場等における混合処理において、処理すべき流体の総量が多い場合には、通常、流体の総量に合わせて流路が拡大されるが、マイクロリアクタ1の場合は本体が薄いため、多数積層されて使用される。これにより、量産時の混合条件の変化が防止され、混合流体の品質を維持することができる。また、混合処理に利用される設備を小型化することもできる。
【0052】
図11は、本発明の第2の実施の形態に係るマイクロリアクタ1aの部分断面図である。(+Z)側から(−Z)方向を向いて見たマイクロリアクタ1aの形状は図2に示すマイクロリアクタ1と同様であり、図11は、図5中のC−Cに対応する位置でマイクロリアクタ1aを切断した断面を示す。図11に示すように、マイクロリアクタ1aは、第1基板11と第2基板13との間に2つの中間基板12を備える。その他の構成は第1の実施の形態と同様であり、以下の説明において同符号を付す。マイクロリアクタ1aの製造工程については、中間基板12の形成工程が2度行われて2つの中間基板12が形成されることを除いて第1の実施の形態と同様であるため、説明を省略する。
【0053】
マイクロリアクタ1aでは、第2基板13が透光性の材料(例えば、ガラス)により形成されており、第1基板11および2つの中間基板12により形成される溝部の(+Z)側の開口を閉塞する蓋部材の役割を果たす。第1の実施の形態と対比した場合、第2基板13は、第1基板11上に積層された中間基板12の第1基板11とは反対側(すなわち、(+Z)側)にもう1つの中間基板12を挟んで間接的に積層された部材となっている。第2基板13を除く他の3つの基板は、第1の実施の形態と同様に、同じ金属材料により形成されており、それぞれの厚さも等しくされる。
【0054】
マイクロリアクタ1aでは、第2基板13を介して微細流路14内の流体に光を照射することができる。したがって、マイクロリアクタ1aは、試料流体の光反応を行うための容器に特に適している。また、マイクロリアクタ1aでは、微細流路14内における流体の様子を視覚的に観察することもできる。
【0055】
マイクロリアクタ1aでは、第1の実施の形態と同様に、貫通孔121が形成された2つの中間基板12を、第1基板11および第2基板13で挟んで積層することにより、横幅が小さく縦幅が大きい微細流路14を、等方性エッチングにより容易に形成することができ、また、微細流路14の一部を第1基板11および第2基板13上に形成することにより、マイクロリアクタ1aを薄型化することができる。さらに、微細流路14の分割の前後において微細流路14を流れる流体に働く抵抗の変化を抑制しつつ複数の分割流路(供給路141、および、混合路142の分割部位1422)が占める横幅を小さくすることができ、微細流路14の横幅を必要に応じて小さくして高密度に配置することができる。
【0056】
また、マイクロリアクタ1aでは、第1基板11および2つの中間基板12の厚さが等しく、それぞれが同じ金属材料により形成されているため、マイクロリアクタ1の製造装置を簡素化することができる。そして、第1基板11および2つの中間基板12の厚さが100μm以上とされることにより、第1基板11および2つの中間基板12をより確実に接合することができる。さらに、2つの中間基板12にそれぞれ連結部122が設けられることにより、各中間基板12の形成時およびハンドリング時に中間基板12の一部が分離することが防止され、中間基板12を1つの部材として容易に扱うことができ、その結果、マイクロリアクタ1aの製造工程を簡素化することができる。なお、以下に説明する他の実施の形態においても、第1の実施の形態と同様の上記効果が実現される。なお、第2基板13は、流路を持たない透光性の材料もしくは非透光性の材料でも良い。
【0057】
図12は、本発明の第3の実施の形態に係るマイクロリアクタ1bを示す平面図である。マイクロリアクタ1bは、流体の混合に利用される微細流路14の周囲に配置されたもう1つの微細流路14a(以下、2つの微細流路を区別するために、「第1微細流路14」、「第2微細流路14a」という。)、並びに、第2微細流路14aの両端に接続される供給口143aおよび排出口144aを備える。その他の構成は第1の実施の形態と同様であり、以下の説明および図12において同符号を付す。
【0058】
第2微細流路14aは、第1微細流路14と同様に、その大部分が第1基板11に平行な平行部140とされる(図1参照)。第2微細流路14aの平行部140は、図1に示すように、第1基板11および第2基板13上にそれぞれ等方性エッチングにより形成された第1凹部111および第2凹部131、並びに、中間基板12に等方性エッチングにより形成された貫通孔121により形成され、縦幅が横幅の2倍以上となっている。第2微細流路14aの形成は、第1微細流路14と同じ方法により第1微細流路14の形成と並行して行われる。
【0059】
マイクロリアクタ1bでは、所定の温度の熱媒流体が供給口143aを介して第2微細流路14aに供給される。そして、第1微細流路14を流れる試料流体と第2微細流路14aを流れる熱媒流体との間で、第1基板11、中間基板12および第2基板13を介して非接触状態にて熱交換が行われ、試料流体の温度が、第1微細流路14内にて行われる反応に適した温度まで加熱(または冷却)される。
【0060】
マイクロリアクタ1bでは、互いの間で熱交換が行われる第1微細流路14および第2微細流路14aが、積層方向に垂直な同一平面を含むようにして第1基板11、中間基板12および第2基板13により形成される。その結果、マイクロリアクタ1bの薄型化を実現することができる。また、第1微細流路14の混合路142が合流部位1421および分割部位1422を有しており、第1微細流路14内において試料流体が合流と分割を繰り返すことにより、第1微細流路14を流れる試料流体の温度分布を均等化することができる。
【0061】
マイクロリアクタ1bでは、第2微細流路14aが、第1微細流路14の2つの供給路141の間、および、排出口144近傍で大きく屈曲しているが、第2微細流路14aの縦幅を大きくして横幅を小さくすることにより、屈曲部における内周側と外周側との流速差を小さくし、内周側における熱媒流体の滞留の発生を抑制することができる。
【0062】
図13は、本発明の第4の実施の形態に係るマイクロリアクタ1cの部分断面図である。(+Z)側から(−Z)方向を向いて見たマイクロリアクタ1cの形状は図2に示すマイクロリアクタ1と同様であり、図13は、図5中のD−Dに対応する位置でマイクロリアクタ1cを切断した断面を示す。図13に示すように、マイクロリアクタ1cは、第1基板11の中間基板12とは反対側に積層されたもう1つの中間基板12(以下、2つの中間基板12を区別するために、上側のものを「第1中間基板12」、下側のものを「第2中間基板12a」という。)、および、第2中間基板12aの(−Z)側に積層された板状(またはシート状)の第3基板15をさらに備える。第2中間基板12aおよび第3基板15は、第1基板11等と同じ金属材料により形成され、等しい厚さを有する。その他の構成は第1の実施の形態と同様であり、以下の説明において同符号を付す。
【0063】
マイクロリアクタ1cでは、第1基板11、第2中間基板12aおよび第3基板15により第2微細流路14aが形成される。第2微細流路14aは、第1微細流路14と同じ形状を有しており、第1基板11を挟んで第1微細流路14の(−Z)側に重ねて形成される。第2微細流路14aは、第1微細流路14の平行部140(図1参照)と同様に第1基板11に平行な平行部140aを流路の一部として備える。第2微細流路14aの平行部140aは、第3基板15の(+Z)側の主面、および、第1基板11の(−Z)側の主面上にそれぞれ等方性エッチングにより形成された第3凹部151および第4凹部112、並びに、第2中間基板12aに等方性エッチングにより形成された貫通孔121aにより形成され、縦幅が横幅の2倍以上となっている。第2微細流路14aの形成は、第1微細流路14と同じ方法により行われる。
【0064】
平行部140aでは、内壁面のうち積層方向(Z方向)に関して両端の部位が第1基板11および第3基板15上に存在する。換言すれば、内壁面の(+Z)側の部位は、第1基板11の(−Z)側の主面に形成された第4凹部112の内壁面である凹面であり、(−Z)側の部位は、第3基板15上に形成された第3凹部151の内壁面である凹面である。また、平行部140aの内壁面のうち、上記両端の部位の間の部位は貫通孔121aにより形成される。
【0065】
マイクロリアクタ1cでは、第3の実施の形態と同様に、所定の温度の熱媒流体が第2微細流路14aに供給され、第1微細流路14を流れる試料流体と第2微細流路14aを流れる熱媒流体との間で第1基板11を介して非接触状態にて熱交換が行われることにより、試料流体の温度が反応に適した温度まで加熱(または冷却)される。
【0066】
マイクロリアクタ1cでは、第1基板11の(+Z)側の主面に第1微細流路14の一部である第1凹部111が形成され、(−Z)側の主面に第2微細流路14aの一部である第4凹部112が形成される。その結果、積層方向に重ねて形成され、互いの間で熱交換が行われる第1微細流路14および第2微細流路14aを備えるマイクロリアクタ1cの薄型化を実現することができる。また、第3の実施の形態と同様に、第1微細流路14の混合路142が合流部位1421および分割部位1422を有しているため、第1微細流路14を流れる試料流体の温度分布を均等化することができる。
【0067】
マイクロリアクタ1cは、他のマイクロリアクタ1cと積層されて利用されてもよい。例えば、複数のマイクロリアクタ1cの第1微細流路14が互いに接続され、混合に利用される流路長が延長されてもよい。さらに、積層されるとともに連結されるマイクロリアクタ1c間に断熱材が設けられ、各マイクロリアクタ1cの第2微細流路14aにそれぞれ異なる温度の熱媒流体が供給されることにより、第1微細流路14における試料流体の混合の前半と後半とで温度条件に差を設けることもできる。例えば、混合の前半では試料流体を加熱することにより2つの試料流体の混合および反応を促進し、後半では混合された試料流体を冷却することにより生成された反応物の分解を防止することができる。
【0068】
なお、マイクロリアクタ1cでは、第1微細流路14における試料流体の混合と並行して、第2微細流路14aにおいても2種類の試料流体の混合が行われてもよい。また、第1微細流路14の排出口と第2微細流路14aの供給口とが接続され、第1微細流路14および第2微細流路14a内において試料流体の混合が連続的に行われてもよい。
【0069】
第2微細流路14aの形状は、必ずしも第1微細流路14の形状と同じである必要はなく、様々な形状とされてよい。図14は、他の形状を有する第2微細流路14aを備えたマイクロリアクタ1dを示す平面図であり、図15は第2中間基板12aの底面図である。図示の都合上、図14では、第2微細流路14aを実線にて描いている(後述の図16についても同様)。マイクロリアクタ1dでは、図14に示すように、蛇行する第2微細流路14aが設けられる。この場合、図15に示すように、第2中間基板12aでは、蛇行する第2微細流路14aに挟まれるY方向に長い帯状の部位が、連結部122により周囲の部位に連結される。なお、連結部122の(−Z)側の主面は、第2中間基板12aの(−Z)側の主面と同一平面上に位置する。
【0070】
図16は、さらに他の形状を有する第2微細流路14aを備えたマイクロリアクタ1eを示す平面図であり、図17は第2中間基板12aの底面図である。マイクロリアクタ1eでは、図16に示すように、2つの独立する渦巻き型の第2微細流路14aが第1基板11、第2中間基板12aおよび第3基板15により形成されてもよい。さらに、2つの第2微細流路14aの間に断熱材145を設け、2つの第2微細流路14aにそれぞれ異なる温度の熱媒流体を供給することにより、第1微細流路14における試料流体の混合の前半と後半とで温度条件に差を設けることができる。また、図17に示すように、第2中間基板12aでは、渦巻き型の第2微細流路14aに囲まれる部位が、複数の連結部122により周囲の部位に連結される。なお、図15の場合と同様、連結部122の(−Z)側の主面は、第2中間基板12aの(−Z)側の主面と同一平面上に位置する。
【0071】
図18は、本発明の第5の実施の形態に係るマイクロリアクタ1fの構成を示す正面図である。マイクロリアクタ1fは、永久磁石41,42をさらに備えることを除き、その他の構成は第1の実施の形態と同様であり、以下の説明において同符号を付す。
【0072】
図18に示すように、永久磁石41および永久磁石42は、第1基板11の(−Z)側、および、第2基板13の(+Z)側に設けられ、第1基板11、中間基板12および第2基板13を挟んで互いに対向する。永久磁石41,42の互いに対向する部位は互いに逆極性とされる。このように、マイクロリアクタ1fでは、永久磁石41,42が、第1基板11、中間基板12および第2基板13により形成される微細流路14(図2参照)の少なくとも一部に磁場を印加する磁場発生部の役割を果たす。なお、永久磁石41,42の互いに対向する部位が、同極性であっても良い。
【0073】
マイクロリアクタ1fでは、永久磁石41,42により、微細流路14を流れる流体に磁場が印可される。その結果、流体のクラスタ(集合体)を小さくすることができ、流体の反応性を向上したり、あるいは、微細流路14の内壁面から流体が受ける抵抗を軽減して流体の流れを滑らかにすることができる。
【0074】
図19は、永久磁石41,42に代えて、電磁石43を磁場発生部として設けたマイクロリアクタ1gを示す正面図である。図19に示すように、電磁石43は、第1基板11、中間基板12および第2基板13の周囲に形成されたコイル431、並びに、コイル431に接続される電源432を備える。電磁石43では、電源432からコイル431へと直流電流、交流電流またはパルス電流が供給されることにより、微細流路14の少なくとも一部に磁場が印加される。
【0075】
マイクロリアクタ1gでは、電磁石43により微細流路14(図2参照)を流れる流体に磁場が印可されることにより、図18に示すマイクロリアクタ1fと同様に、流体のクラスタ(集合体)を小さくすることができる。
【0076】
なお、磁場発生部は、上記以外の様々な構成とされてよい。また、マイクロリアクタの供給口143および排出口144に接続される供給管および排出管に磁場発生部が設けられて、供給管および排出管を流れる流体に磁場が印可されてもよい。
【0077】
図20は、流体混合装置10の構成を示す正面図であり、流体混合装置10は、第1の実施の形態に係るマイクロリアクタ1、マイクロリアクタ1が浸漬される液体20を貯留する貯溜槽2、および、液体20に超音波振動を付与する超音波震動源3を備える。貯溜槽2の内部には、マイクロリアクタ1の図1中の(+X)側および(−X)側に配置され、マイクロリアクタ1を下方から支持するリアクタ支持部21が設けられる。マイクロリアクタ1は、下面にOリングを有する押圧部22によりリアクタ支持部21に対して押圧されて貯溜槽2内に固定される。押圧部22は、マイクロリアクタ1の供給口143および排出口144(図2参照)に対応する位置に設けられ、押圧部22の内部に設けられる流路221は、供給口143または排出口144に接続される。
【0078】
流体混合装置10では、超音波震動源3が駆動され、液体20を介してマイクロリアクタ1に超音波震動が付与されることにより、マイクロリアクタ1が微小振動する。その結果、微細流路14内における2つの試料流体の混合を促進することができる。また、微細流路14の内壁面近傍における試料流体の滞留を抑制することもできる。流体混合装置10では、液体20を媒体としてマイクロリアクタ1に超音波振動を付与するため、出力の大きい超音波震動源3を利用することができる。また、液体20により超音波震動源3を冷却することができるため、超音波震動源3の冷却機構を簡素化することも可能である。
【0079】
流体混合装置10では、マイクロリアクタ1に代えて、他の実施の形態に係るマイクロリアクタが設けられてもよい。例えば、第2微細流路14aを有するマイクロリアクタ1b(図12参照)やマイクロリアクタ1c(図13参照)が設けられた場合、第2微細流路14aを流れる熱媒流体の温度を貯溜槽2内の液体20の温度と異ならせることにより、第1微細流路14内における2つの試料流体の混合を、振動媒体となる液体20の温度の影響を抑制しつつ好ましい温度条件において促進することができる。このような構造を備える流体混合装置10は、マイクロリアクタにおいて超音波震動源3の耐熱温度の範囲外の温度条件にて混合を行う場合に特に適している。
【0080】
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、様々な変更が可能である。
【0081】
例えば、マイクロリアクタを形成する各基板は、金属、ガラス、セラミック、シリコン、樹脂等、様々な材料により形成されてよい。また、基板同士をより確実に接合するという観点からは、各基板の厚さは100μm以上とされることが好ましいが、100μmより薄い基板により形成されるマイクロリアクタに対しても本発明を適用することができる。
【0082】
マイクロリアクタの製造装置の簡素化の観点からは、各基板の厚さおよび材料がそれぞれ同じとされることが好ましいが、必要に応じて、異なる材料から形成された基板や厚さの異なる基板が積層されてマイクロリアクタが形成されてもよい。
【0083】
マイクロリアクタでは、様々な種類の流体が混合される。例えば、組成が異なる2つの流体が混合されてもよく、状態が異なる(例えば、気層と液層)2つの流体が混合されてもよい。また、3種類以上の流体の混合が行われてもよい。マイクロリアクタは、複数の流体の混合による化学反応、化学反応を伴わない単なる混合、液体と気体の混合による微粒子化や霧化、あるいは、泡化等、流体の混合を伴う様々な目的に利用可能である。
【0084】
図21は、マイクロリアクタの供給路141の他の好ましい形状を示す断面図である。マイクロリアクタに粘度の異なる2つの流体が供給される場合、図21に示すように、2つの供給路141の横幅を等しくして縦幅に差を設けることにより、2つの供給路141が占める横幅を小さくしつつ2つの流体に働く抵抗を等しくして両流体の流速を容易に近似させることができる。このような横幅が等しく縦幅が異なる微細流路14を有するマイクロリアクタは、図7中のステップS12において複数の中間基板12を形成する際に、貫通孔121を形成する箇所を変更することにより、等方性エッチングを利用して容易に形成することができる。
【0085】
図22は、3以上の微細流路14を積層方向に重ねて備えるマイクロリアクタの部分断面図である。図22に示すように、Z方向に隣接する微細流路14を隔てる基板16は、(+Z)側および(−Z)側の主面に凹部を備え、これらの凹部が基板16を挟んで対向する2つの微細流路14の一部を構成する。その結果、マイクロリアクタの薄型化が実現される。
【0086】
上記実施の形態に係る微細流路構造体は、2種類の流体の混合および反応に利用されるマイクロリアクタに適しており、流体分析機器の混合機部分等にも利用される。なお、流体の供給口を3以上設けて、3種類以上の流体の混合、および反応に利用しても良い。また、微細流路構造体は、燃料電池やその他様々な用途にも利用可能である。燃料電池として利用される場合には、図23に示すように、第1基板11および第1中間基板12上に第2基板13としてイオン交換膜等の機能性膜が設けられ、貫通孔121を有する第2中間基板12a、および、凹部が形成された第4基板17が第2基板13上に積層されることにより、第2基板13を挟んで対向する第1微細流路14および第2微細流路14aが形成される。また、図24に示すように、図23に示す微細流路構造体の第2基板13と第2中間基板12aとの間に、2つの第3中間基板12bおよびイオン交換膜13aをさらに設けることにより、2つのイオン交換膜を挟んで3層に重ねられた微細流路を有する微細流路構造体が形成されてもよい。
【0087】
上記実施の形態では、微細流路が内部に形成された微細流路構造体について説明しているが、本発明に係る流路構造体では、流路は必ずしも微細なもの(例えば、0.1mm〜2mm程度の深さや横幅のもの)には限定されず、深さや横幅が20mm程度の流路を有する流路構造体にも利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】本発明に係る微細流路構造体の基本構造を示す断面図である。
【図2】第1の実施の形態に係る微細流路構造体を示す平面図である。
【図3】マイクロリアクタの部分断面図である。
【図4】マイクロリアクタの部分断面図である。
【図5】中間基板の平面図である。
【図6】マイクロリアクタの部分断面図である。
【図7】マイクロリアクタの製造工程を示す図である。
【図8】中間基板の形成工程を示す図である。
【図9】中間基板の部分断面図である。
【図10】中間基板の部分断面図である。
【図11】第2の実施の形態に係るマイクロリアクタの部分断面図である。
【図12】第3の実施の形態に係るマイクロリアクタの平面図である。
【図13】第4の実施の形態に係るマイクロリアクタの部分断面図である。
【図14】マイクロリアクタの平面図である。
【図15】中間基板の底面図である。
【図16】マイクロリアクタの平面図である。
【図17】中間基板の底面図である。
【図18】第5の実施の形態に係るマイクロリアクタの正面図である。
【図19】マイクロリアクタの正面図である。
【図20】第6の実施の形態に係る流体混合装置の構成を示す正面図である。
【図21】マイクロリアクタの部分断面図である。
【図22】マイクロリアクタの部分断面図である。
【図23】微細流路構造体の他の例を示す部分断面図である。
【図24】微細流路構造体の他の例を示す部分断面図である。
【符号の説明】
【0089】
1,1a〜1g 微細流路構造体(マイクロリアクタ)
2 貯溜槽
3 超音波震動源
10 流体混合装置
11 第1基板
12 (第1)中間基板
12a 第2中間基板
13 第2基板
15 第3基板
14,14a 微細流路
20 液体
41,42 永久磁石
43 電磁石
121,121a 貫通孔
140,140a 平行部
141 供給路
142 混合路
1401 下端部
1402 中間部
1403 上端部
S11〜S14,S121〜S125 ステップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体が流れる流路が内部に形成された流路構造体であって、
所定の積層方向に対して垂直な板状またはシート状の第1部材と、
それぞれが板状またはシート状であり、前記第1部材上において前記積層方向に積層された少なくとも1つの中間部材と、
前記少なくとも1つの中間部材上に積層された板状またはシート状の第2部材と、
を備え、
前記第1部材、前記少なくとも1つの中間部材および前記第2部材により、前記流路の一部であって前記第1部材に平行な平行部が形成され、
前記平行部の内壁面のうち前記積層方向に関して両端の部位が前記第1部材および前記第2部材上に存在し、
前記少なくとも1つの中間部材が、等方性エッチングにより形成された貫通孔を有し、前記平行部の前記内壁面のうち前記両端の部位の間の部位が前記貫通孔により形成され、
前記平行部の前記積層方向の第1の幅が、前記積層方向に垂直な方向の第2の幅の2倍以上であることを特徴とする流路構造体。
【請求項2】
請求項1に記載の流路構造体であって、
前記第1部材および前記少なくとも1つの中間部材のそれぞれの厚さが、100μm以上であることを特徴とする流路構造体。
【請求項3】
請求項1または2に記載の流路構造体であって、
前記第1部材および前記少なくとも1つの中間部材のそれぞれの厚さが等しく、かつ、それぞれが同じ材料により形成されることを特徴とする流路構造体。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の流路構造体であって、
前記平行部の前記内壁面のうち前記第1部材上の部位が、等方性エッチングにより形成された凹面であることを特徴とする流路構造体。
【請求項5】
請求項4に記載の流路構造体であって、
それぞれが板状またはシート状であり、前記第1部材の前記少なくとも1つの中間部材とは反対側に積層された少なくとも1つの他の中間部材と、
前記少なくとも1つの他の中間部材上に積層された板状またはシート状の第3部材と、
をさらに備え、
前記第1部材、前記少なくとも1つの他の中間部材および前記第3部材により、もう1つの流路の一部であって前記第1部材に平行なもう1つの平行部が形成され、
前記もう1つの平行部の内壁面のうち前記積層方向に関して両端の部位が前記第1部材および前記第3部材上に存在し、
前記少なくとも1つの他の中間部材が、等方性エッチングにより形成された貫通孔を有し、前記もう1つの平行部の前記内壁面のうち前記両端の部位の間の部位が前記貫通孔により形成され、
前記もう1つの平行部の前記内壁面のうち前記第1部材上の部位が、等方性エッチングにより形成された凹面であることを特徴とする流路構造体。
【請求項6】
請求項5に記載の流路構造体であって、
前記流路を流れる流体と前記もう1つの流路を流れる流体との間で前記第1部材を介して熱交換が行われることを特徴とする流路構造体。
【請求項7】
請求項1ないし4のいずれかに記載の流路構造体であって、
前記第1部材、前記少なくとも1つの中間部材および前記第2部材により、もう1つの流路の一部であって前記第1部材に平行なもう1つの平行部が形成され、
前記流路を流れる流体と前記もう1つの流路を流れる流体との間で非接触状態にて熱交換が行われることを特徴とする流路構造体。
【請求項8】
請求項6または7に記載の流路構造体であって、
前記流路が、
複数の流体がそれぞれ通過する複数の供給路と、
前記複数の供給路に接続されて前記複数の流体が混合された混合流体が通過する混合路と、
を備えることを特徴とする流路構造体。
【請求項9】
流体混合装置であって、
請求項8に記載の流路構造体と、
前記流路構造体が浸漬される液体を貯溜する容器と、
前記液体に超音波振動を付与する超音波振動源と、
を備え、
前記もう1つの流路を流れる流体の温度と前記容器内の前記液体の温度とが異なることを特徴とする流体混合装置。
【請求項10】
請求項1ないし5のいずれかに記載の流路構造体であって、
前記流路が、
複数の流体がそれぞれ通過する複数の供給路と、
前記複数の供給路に接続されて前記複数の流体が混合された混合流体が通過する混合路と、
を備えることを特徴とする流路構造体。
【請求項11】
流体混合装置であって、
請求項10に記載の流路構造体と、
前記流路構造体が浸漬される液体を貯溜する容器と、
前記液体に超音波振動を付与する超音波振動源と、
を備えることを特徴とする流体混合装置。
【請求項12】
請求項1ないし4のいずれかに記載の流路構造体であって、
前記第1部材、前記少なくとも1つの中間部材および前記第2部材により、前記流路の一部であって前記第1部材に平行なもう1つの平行部が形成され、前記もう1つの平行部が、前記平行部よりも前記第2の幅が大きく、前記第1の幅が小さいことを特徴とする流路構造体。
【請求項13】
請求項12に記載の流路構造体であって、
前記もう1つの平行部が複数の分割流路に連絡しており、前記複数の分割流路のそれぞれが前記平行部であり、前記複数の分割流路のそれぞれの前記第2の幅の合計が、前記もう1つの平行部の前記第2の幅以下であり、前記複数の分割流路のそれぞれの前記第1の幅が前記もう1つの平行部の前記第1の幅以上であることを特徴とする流路構造体。
【請求項14】
請求項1ないし8,10,12並びに13のいずれかに記載の流路構造体であって、
前記流路の少なくとも一部に磁場を印加する磁場発生部をさらに備えることを特徴とする流路構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2006−122735(P2006−122735A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−310729(P2004−310729)
【出願日】平成16年10月26日(2004.10.26)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】