説明

流量センサ、マスフローコントローラ、および流量センサの製造方法

【課題】流路を構成する部材間の密閉性を高め、ハロゲン系ガスに対しても使用可能な耐腐食性を有するMEMS型流量センサを提供する。
【解決手段】実施形態によれば、流量センサ10は、基材11の表面と流路構成基材21の裏面とが対向するように貼り合わせて、固定部材によって固定される。基材11は、表面上の流路形成領域に、一対の感熱膜12と、一対の感熱膜間の中間に位置するヒータ膜13と、流路保護膜15と、を有し、流路形成領域以外の領域上に、耐腐食性を有する金属保護膜を有する。流路構成基材21の裏面の流路形成領域に形成される溝と、流路形成領域以外の他の領域と溝とを区切り、他の領域に比して突出する側壁構成部と、を有し、耐腐食性を有する材料によって構成される。流路構成基材21の側壁構成部は、基材11の金属保護膜上に位置するように圧着される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、流量センサ、マスフローコントローラ、および流量センサの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、流量センサとして、巻線式センサに比して応答速度が速いMEMS(Micro Electro Mechanical System)センサが提案されている。MEMSセンサは、一般的にはシリコンなどの半導体基板に、半導体デバイスの製造プロセスで用いられる微細加工によって、ヒータや温度センサを形成することで製造される。しかし、このように製造されたMEMSセンサは、ハロゲン系のガスに対しては腐食されてしまうため、ハロゲン系ガスを多用する半導体製造プロセスで使用するのが難しい。そのため、腐食性を有するハロゲン系ガスに対しても使用可能なMEMSセンサが従来提案されている。
【0003】
腐食性を有するハロゲン系ガスに対してMEMSセンサを使用する場合には、MEMSセンサが耐腐食性を有するとともに、MEMSセンサの流路を構成する部材間の密閉性を高めて、有毒なハロゲン系ガスが周囲に漏れ出ないようにする必要がある。しかしながら、従来技術では、ハロゲン系ガスが周囲に漏れ出ないように密閉性を高めることに関しては開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−358127号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の一つの実施形態は、流路を構成する部材間でハロゲン系ガスが周囲に漏れ出ない十分な密閉性を有し、かつハロゲン系ガスに対しても使用可能な耐腐食性を有する流量センサ、マスフローコントローラおよび流量センサの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一つの実施形態によれば、流量センサは、第1の基板の第1の主面と、第2の基板の第2の主面とが対向するように貼り合わされ、固定部材によって固定される。前記第1の基板は、第1の主面上の流路形成領域に、一対の感熱膜と、前記一対の感熱膜間の中間に位置するヒータ膜と、前記感熱膜と前記ヒータ膜の形成位置以外に設けられる耐腐食性を有する流路保護膜と、を有する。また、前記第1の基板は、前記第1の主面上の前記流路形成領域以外の領域上に、耐腐食性を有する金属保護膜を有する。前記第2の基板は、前記第2の主面の前記流路形成領域に形成される溝と、前記流路形成領域以外の他の領域と前記溝とを区切り、前記他の領域に比して突出して設けられる側壁構成部と、を有し、耐腐食性を有する材料によって構成される。そして、前記第2の基板の前記側壁構成部は、前記第1の基板の前記金属保護膜上に位置するように圧着される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】図1は、実施形態による流量センサを備えるマスフローコントローラの構成を模式的に示す断面図である。
【図2】図2は、実施形態による流量センサの構成の一例を示す図である。
【図3−1】図3−1は、実施形態による流量センサの製造方法の手順の一例を模式的に示す斜視図である(その1)。
【図3−2】図3−2は、実施形態による流量センサの製造方法の手順の一例を模式的に示す斜視図である(その2)。
【図3−3】図3−3は、実施形態による流量センサの製造方法の手順の一例を模式的に示す斜視図である(その3)。
【図4】図4は、実施形態によるマスフローコントローラの他の構成例を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に添付図面を参照して、実施形態にかかる流量センサ、マスフローコントローラおよび流量センサの製造方法を詳細に説明する。なお、この実施形態により本発明が限定されるものではない。また、以下の実施形態で用いられる流量センサおよびマスフローコントローラの断面図は模式的なものであり、層の厚みと幅との関係や各層の厚みの比率などは現実のものとは異なる場合がある。さらに、以下で示す膜厚は一例であり、これに限定されるものではない。
【0009】
図1は、実施形態による流量センサを備えるマスフローコントローラの構成を模式的に示す断面図である。マスフローコントローラは、流量センサ10と、ガス流路構成部材50と、流量調整部60と、流量制御部70と、を備える。
【0010】
流量センサ10は、詳細は後述するが、MEMSセンサによって構成される熱式質量流量計からなり、基材11に流路構成基材21が貼り合わせられて固定された構造を有し、流路23を流れるガスの流量を検出する。基材11の第1の主面である表面上には、流路23の上流側と下流側に配置される一対の感熱膜12と、一対の感熱膜12間の中間に配置されるヒータ膜13と、流路保護膜15と、が設けられる。また、基材11の表面に対向する裏面上には、感熱膜12とヒータ膜13のそれぞれと接続される引き出し線17が設けられる。
【0011】
ガス流路構成部材50は、流量センサ10の流路23と、ガス流出口52との間を接続するガス流路51を有する。ガス流路51には、ガス流出口52から流出されるガス流量を調節する流量調整部60が設けられている。流量調整部60は、ガス流路51a,51bの間に設けられた弁61の開閉によって流量を調整する。弁61の開閉は、ロッド62を介して接続されたアクチュエータ63の移動量によって制御(調整)される。
【0012】
流量制御部70は、ブリッジ回路71と、増幅回路72と、流量設定回路73と、比較制御回路74と、温度設定回路75と、を有する。ブリッジ回路71は、流量センサ10の2つの感熱膜12間の抵抗変化を検出する回路である。増幅回路72は、ブリッジ回路71によって電気的に出力された流量測定値を増幅する。流量設定回路73は、予め設定されたガス流量を比較制御回路74に対して設定する。
【0013】
比較制御回路74は、増幅回路72からの流量測定値を流量設定回路73で設定された流量設定値と比較し、両者に差分がある場合には、その差分を打ち消す方向に(または差分が所定の範囲内に収まるように)流量調整部60の開度(弁61の位置)を変化させる設定信号、すなわちアクチュエータ63によって変化させる弁61の変位量を算出し、アクチュエータ63に出力する。また、比較制御回路74は、流量測定値と流量設定値との差分に対して、流量調整部60の開度をどの程度変化させればよいかについての開度調整情報を保持しており、この開度調整情報に基づいて変位量を出力する。温度設定回路75は、一対の感熱膜12が測定対象に比して所定の温度だけ高くなるように、ヒータ膜13を加熱する機能を有する。
【0014】
図2は、実施形態による流量センサの構成の一例を示す図であり、(a)は流量センサの構造を示す斜視図であり、(b)は流量センサの構造を模式的に示す分解斜視図である。この図に示されるように、流量センサ10は、感熱膜12が配置される基材11と、流路構成基材21と、これらを固定する固定部材25と、からなる。
【0015】
基材11は、石英やポリイミドなどの断熱性材料からなり、表面の流路23となる領域の上流および下流に配置される一対の感熱膜12と、一対の感熱膜12間の距離の中心付近に配置されるヒータ膜13と、を備える。感熱膜12とヒータ膜13とは、たとえばハロゲン系ガスなどの腐食性ガスに耐性を有するPtなどの材料によって構成される。
【0016】
基材11の表面の流路23となる領域には、ハロゲン系ガスなどの腐食性ガスに耐性を有する絶縁性の流路保護膜15が設けられている。また、基材11の表面上の流路23となる領域以外の領域には、腐食性ガスに耐性を有するAgなどからなる金属保護膜14が設けられている。
【0017】
基材11の表面に対向する裏面上には、感熱膜12やヒータ膜13とそれぞれ図示しないコンタクト層を介して接続される引き出し線17が設けられている。ここでは、紙面の左右方向に延在する3本の引き出し線17が配置されている。
【0018】
そして、基材11の所定の位置には、流路構成基材21との間で固定部材25を用いて固定するための貼り合わせ用孔16が、厚さ方向に貫通するように設けられている。ここでは、貼り合わせ用孔16は、矩形状の基材11の四隅付近に形成されている。
【0019】
流路構成基材21は、耐腐食性の高いステンレス鋼(SUS306Lなど)、ニッケル合金(インコネル(登録商標)など)、アルミニウム表面にアルマイト処理を施したものなどからなる。
【0020】
流路構成基材21の表面には特に加工は施されないが、第2の主面である裏面(基材11の表面に対向する側の面)側には、流路23となる溝23aと、流路23の側壁を構成するとともに、流路23を流れるガスを流路23内に密閉する側壁構成部22とを有する。側壁構成部22は、流路23の延在方向に沿って延在し、周囲に比して突出している。すなわち、溝23aと側壁構成部22以外の流路構成基材21の裏面側の領域は、側壁構成部22よりも低くなるように構成されている。なお、流路構成基材21がアルミニウムで構成される場合には、溝23aを構成する面にはアルマイト処理が施される。
【0021】
また、流路構成基材21の所定の位置には、基材11との間で固定部材25を用いて固定するための貼り合わせ用孔24が、厚さ方向に貫通するように設けられている。ここでは、貼り合わせ用孔24は、平面視で矩形状の流路構成基材21の四隅付近に形成されている。
【0022】
基材11の感熱膜12とヒータ膜13が形成された表面と、流路構成基材21の溝23aが形成された裏面と、を対向させ、基材11の流路保護膜15が流路構成基材21の溝23a内に収まるように位置合わせを行って、両者を固定部材25で固定する。このとき、側壁構成部22は、基材11の流路保護膜15の外側に形成された金属保護膜14に位置し、固定部材25による固定によって、金属保護膜14と圧着される結果、基材11と流路構成基材21との間はメタルシールによって密封された状態となる。
【0023】
ここで、流路保護膜15として、耐腐食性を有するアルミナ膜や酸化イットリウム粒子を含有する被膜(以下、イットリア膜という)を用いることができる。イットリア膜を用いる場合には、イットリア膜であればどのような膜であってもよいが、特に、CVD(Chemical Vapor Deposition)法、エアロゾルデポジション(Aerosol Deposition)法、衝撃焼結法などで成膜された緻密な膜の方が望ましい。
【0024】
イットリア膜の膜厚は適当な厚さ(たとえば5μm)でよいが、0.1μm以上1μm以下であることが好ましい。0.1μm未満では被覆性が不十分なためイットリア膜を設ける効果が十分得られず、却って膜はがれの原因となる虞がある。イットリア膜の厚さの上限は特に限定されるものではないが、あまり厚いとそれ以上の効果が得られず、また内部応力の蓄積によりクラックが発生し易くなりコストアップの要因ともなる。そのため、イットリア膜の厚さは0.1〜1μm、より好ましくは0.2〜0.5μmである。
【0025】
また、膜密度は90%以上、より好ましくは95%以上、さらには99%以上100%以下であることが好ましい。イットリア膜中に気孔(ボイド)が多く存在すると、その気孔からハロゲンガスが浸透し寿命を低下させる。特にイットリア膜表面に気孔が少ないことが望ましい。
【0026】
なお、膜密度とは気孔率の反対の用語であり、膜密度90%以上とは、気孔率10%以下と同じ意味である。膜密度の測定方法は、酸化物被膜を膜厚方向に切断し、その断面組織の光学顕微鏡による500倍の拡大写真を撮り、そこに写る気孔の面積率を算出する。そして、「膜密度(%)=100−気孔の面積率」により膜密度を算出する。膜密度の算出には、単位面積200μm×200μmの面積を分析するものとする。なお、膜厚が薄いときは、合計の単位面積が200μm×200μmとなるまで複数箇所測定するものとする。
【0027】
また、イットリア膜の表面粗さRaは3μm以下が好ましい。イットリア膜の表面凹凸が大きいと流路抵抗により流量制御時の精度を低下させる虞がある。表面粗さRaの測定はJIS−B−0601−1994に準ずるものとする。好ましくは表面粗さRaが2μm以下である。
【0028】
このようなイットリア膜は、たとえば、溶射法、CVD法、エアロゾルデポジション法、コールドスプレー法、ガスデポジション法、静電微粒子衝撃コーティング法、衝撃焼結法などを用いて形成することができる。
【0029】
このような構造の流量センサ10では、基材11の流路23を構成する部分には耐腐食性を有する流路保護膜15が形成され、感熱膜12やヒータ膜13、流路構成基材21も耐腐食性を有する材料によって構成されているので、流路23を構成する部材が、ハロゲン系ガスなどの腐食性ガスによって腐食されてしまうことを防ぐことができる。また、流路構成基材21に設けられた一対の側壁構成部22が、基材11の流路保護膜15を挟んだ金属保護膜14に圧着されているので、側壁構成部22と金属保護膜14との間がシールされる。すなわち、流路23の側面部からのガスの漏れを防ぐことができる。また、耐腐食性を有するAgなどの金属材料によって金属保護膜14が構成されるので、腐食性ガスの長時間の使用によってもメタルシール機能が劣化することがない。
【0030】
また、この流量センサ10を有するマスフローコントローラでは、流量センサ10がハロゲン系ガスなどの腐食性ガスに対して耐性を有するとともに、腐食性ガスを密閉することができるので、腐食性ガスの流量制御を安全に行うことができる。
【0031】
つぎに、流量センサ10の製造方法について説明する。図3−1〜図3−3は、実施形態による流量センサの製造方法の手順の一例を模式的に示す斜視図である。まず、基材11側の加工について説明する。図3−1(a)に示されるように、石英やポリイミドなどからなる基材11を用意する。厚さとしては、0.5〜10mmとすることができる。
【0032】
ついで、図3−1(b)に示されるように、基材11表面の感熱膜12とヒータ膜13の形成位置に、後に形成する感熱膜12およびヒータ膜13を基材11裏面の引き出し線17と接続するコンタクト層を形成する引き出し用孔31を形成する。引き出し用孔31は、機械加工またはウエットエッチングによって形成することができる。ウエットエッチングを用いる場合には、基材11の表面にレジストを塗布し、リソグラフィ技術によって引き出し用孔31を形成する位置が開口するようにパターニングを行った後、パターニングしたレジストをマスクとして、ウエットエッチングによって基材11に厚さ方向に貫通する引き出し用孔31を形成する。
【0033】
その後、図3−1(c)に示されるように、引き出し用孔31に導電性材料を埋め込み、コンタクト層32を形成する。たとえばワイヤ埋め込みやメッキ法によって、引き出し用孔31に導電性材料を埋め込み、引き出し用孔31以外の部分に形成された導電性材料をCMP(Chemical Mechanical Polishing)法などの方法で除去することにで、コンタクト層32を形成することができる。コンタクト層32として、たとえばPt,Cu,Niなどを用いることができる。
【0034】
ついで、図3−1(d)に示されるように、基材11の一方の主面のコンタクト層32形成位置上に、感熱膜12とヒータ膜13とを形成する。感熱膜12とヒータ膜13として、たとえばPtを用いることができ、感熱膜12とヒータ膜13の厚さとして、1μm以下、好ましくは0.1〜0.5μmとすることができる。感熱膜12とヒータ膜13は、パターン圧着法や蒸着法、スパッタリング法を用いて形成することができる。パターン圧着法では、厚さが1μm以下の矩形状のPt箔を基材11のコンタクト層32の形成位置を含む領域上に接着層を介して載置し、加熱しながら圧着することで、コンタクト層32に接続された感熱膜12とヒータ膜13が形成される。また、蒸着法やスパッタリング法を用いた形成法では、基材11上にレジストを塗布し、リソグラフィ技術によって感熱膜12とヒータ膜13のパターン形成位置を開口し、レジストパターンが形成された基材11上に蒸着法やスパッタリング法によってPt膜を形成した後、リフトオフによってレジストを除去することで、レジストパターンの開口部に残されたPt膜によって感熱膜12とヒータ膜13が形成される。
【0035】
その後、図3−2(a)に示されるように、流路23となる領域以外の領域に、感熱膜12とヒータ膜13と略同じ厚さを有し、耐腐食性を有する金属材料からなる金属保護膜14を、印刷法や蒸着法、スパッタリング法を用いて形成する。金属保護膜14として、たとえばAgを用いることができる。印刷法では、流路23の部分がマスクされた印刷マスクを基材11表面上に位置合わせをして配置し、Agペーストをスキージで基材11上に延ばした後、焼成することで金属保護膜14が形成される。また、蒸着法やスパッタリング法を用いる方法では、基材11上にレジストを塗布し、リソグラフィ技術によって流路23形成位置以外を開口し、レジストパターンが形成された基材11上に蒸着法やスパッタリング法によってAg膜を形成した後、リフトオフによってレジストを除去することで、レジストパターンが形成されていない領域にAg膜からなる金属保護膜14が形成される。
【0036】
ついで、図3−2(b)に示されるように、基材11の感熱膜12とヒータ膜13と金属保護膜14が形成されていない領域、つまり、流路23となる領域の感熱膜12とヒータ膜13とが形成されていない領域に、ハロゲン系ガスに対して耐性を有する流路保護膜15を形成する。流路保護膜15は、たとえば流路23となる領域以外の領域と感熱膜12とヒータ膜13とをレジストなどでマスクした後、溶射法やスパッタリング法、蒸着法などによって形成することができる。流路保護膜15として、アルミナ膜やイットリア膜を用いることができる。
【0037】
その後、図3−2(c)に示されるように、基材11の所定の位置に貼り合わせ用孔16を、機械加工やウエットエッチング法によって形成する。ウエットエッチング法で貼り合わせ用孔16を形成する場合には、基材11上にレジストを塗布し、リソグラフィ技術によって、貼り合わせ用孔16の形成位置が開口するようにパターニングを行った後、パターニングしたレジストをマスクとしてエッチング液に基材11を浸漬し、貼り合わせ用孔16を開口する。ここでは、貼り合わせ用孔16を矩形状の基材11の四隅に開けている。
【0038】
ついで、図3−2(d)に示されるように、基材11の裏面に引き出し線17を形成する。たとえば印刷法で裏面のコンタクト層32の形成位置を含む領域に所定形状の引き出し線17を形成したり、引き出し線17を形成しない領域をレジストでマスクし、メッキ法やスパッタリング法で引き出し線17を形成した後、リフトオフによってレジストを剥離することで引き出し線17を形成したりすることができる。以上で、基材11側の加工が終了する。
【0039】
つぎに、流路構成基材21の加工手順について説明する。まず、図3−3(a)に示されるように、流路構成基材21を用意する。流路構成基材21は、ハロゲン系ガスに対して耐腐食性を有する材料であることが望ましいが、加工後に耐腐食性の処理をするものであればAlでもよい。厚さとして、0.1〜数mmのものを使用することができる。ここでは説明の便宜上、流路構成基材21の厚さに垂直な方向の寸法は、基材11の厚さに垂直な方向の寸法と同じであるとしている。
【0040】
ついで、図3−3(b)に示されるように、機械加工やウエットエッチングなどの方法によって、流路23とメタルシール用の側壁構成部22を流路構成基材21の裏面に形成する。ここでは、流路構成基材21の左右方向中央付近に流路23となる溝23aを形成し、また溝23aの延在方向に垂直な方向の側壁が周囲に比して突出するように、流路構成基材21の裏面に段差23bを形成する。これによって、側壁構成部22が形成される。
【0041】
その後、図3−3(c)に示されるように、流路構成基材21の所定の位置に貼り合わせ用孔24を、基材11の場合と同様に機械加工やウエットエッチング法によって形成する。ここでは、貼り合わせ用孔24を矩形状の流路構成基材21の四隅に開けている。なお、流路構成基材21がAlで構成される場合には、流路構成基材21はアルマイト処理される。また、流路構成基材21を電解研磨することでさらに耐腐食性を向上させることができる。以上で、流路構成基材21の加工が終了する。
【0042】
ついで、基材11と流路構成基材21との貼り合わせ処理が行われる。これは、図2(b)に示されるように、基材11の表面と流路構成基材21の裏面とを対向させて両者を貼り合せ、貼り合わせ用孔16,24にボルトなどの固定部材25を挿入して固定する。固定部材25で両者が固定される際に、流路構成基材21の他の領域よりも突出している側壁構成部22が基材11上の金属保護膜14と圧着され、メタルシールの役割を果たす。その結果、図2(a)に示されるような流量センサ10が得られる。なお、以上では、基材11の加工を説明した後に流路構成基材21の加工について説明を行っているが、基材11と流路構成基材21の加工順序は、特に限定されるものではなく、いずれかを先に行ってもよいし、同時に行ってもよい。
【0043】
図4は、実施形態によるマスフローコントローラの他の構成例を模式的に示す断面図である。このマスフローコントローラは、図1の場合に比して、流量制御するガスの量が多い場合に用いられる。
【0044】
マスフローコントローラは、流量センサ10と、ガス流路構成部材50と、流量調整部60と、流量制御部70と、を備える。ガス流路構成部材50は、ガス流入口53と、ガス流出口52と、ガス流入口53とガス流出口52との間のガス流路51と、を有する。ガス流路51は、主流部51cから分岐したバイパス路51dに上記した流量センサ10が設けられ、合流したガス流路51aの下流側に流量調整部60が設けられている。なお、図1と同一の構成要素には、同一の符号を付して、その説明を省略している。
【0045】
以上説明してきたように、実施形態による流量センサ10では、流路23となる領域に、耐腐食性を有する材料からなる流路保護膜15を形成し、その中に感熱膜12とヒータ膜13とを配置し、流路23以外の領域に金属保護膜14を形成した基材11と、流路23となる部分が溝23aで構成され、その長手方向に沿って、周囲よりも突出した側壁構成部22が形成された耐腐食性を有する材料によって構成される流路構成基材21とを、側壁構成部22が流路保護膜15を挟んだ両側の金属保護膜14を押圧するように固定部材25によって固定した。これによって、腐食性ガスに対して耐性を有するとともに、側壁構成部22が流路保護膜15に密着し、メタルシールとして機能するので、腐食性ガスを流路23内に密閉することができるという効果を有する。また、腐食性ガスの漏れを防止することができ、流量センサ10やマスフローコントローラの安全性を高めることができるという効果を有する。さらに、半導体デバイスの製造プロセスと同様のプロセスで流量センサ10を製造することができるので、大量生産を行うことができ、その結果流量センサ10の製造コストを下げることができるという効果も有する。
【0046】
また、このような流量センサ10を有するマスフローコントローラは、巻線式センサを有するマスフローコントローラに比して応答速度が速く、かつ精度の高い流量制御を行うことができるという効果を有する。
【0047】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0048】
10…流量センサ、11…基材、12…感熱膜、13…ヒータ膜、14…金属保護膜、15…流路保護膜、16,24…貼り合わせ用孔、17…引き出し線、21…流路構成基材、22…側壁構成部、23…流路、23a…溝、23b…段差、25…固定部材、31…引き出し用孔、32…コンタクト層、50…ガス流路構成部材、51,51a,51b…ガス流路、51c…主流部、51d…バイパス路、52…ガス流出口、53…ガス流入口、60…流量調整部、61…弁、62…ロッド、63…アクチュエータ、70…流量制御部、71…ブリッジ回路、72…増幅回路、73…流量設定回路、74…比較制御回路、75…温度設定回路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の主面の流路形成領域上に、一対の感熱膜と、前記一対の感熱膜間の中間に位置するヒータ膜と、前記感熱膜と前記ヒータ膜の形成位置以外に設けられる耐腐食性を有する流路保護膜と、を有し、前記第1の主面の前記流路形成領域以外の領域上に、耐腐食性を有する金属からなる金属保護膜を有する第1の基板と、
前記第1の主面に対向して配置される第2の主面の前記流路形成領域に形成される溝と、前記流路形成領域以外の他の領域と前記溝とを区切り、前記他の領域に比して突出して設けられる側壁構成部と、を有し、耐腐食性を有する材料によって構成される第2の基板と、
前記第1の主面と前記第2の主面とが対向するように貼り合わせて両者を固定する固定部材と、
を備え、
前記第2の基板の前記側壁構成部は、前記第1の基板の前記金属保護膜上に位置するように圧着され、
前記流路保護膜は、アルミナ膜またはイットリア膜であることを特徴とする流量センサ。
【請求項2】
第1の主面上の流路形成領域に、一対の感熱膜と、前記一対の感熱膜間の中間に位置するヒータ膜と、前記感熱膜と前記ヒータ膜の形成位置以外に設けられる耐腐食性を有する流路保護膜と、を有し、前記第1の主面上の前記流路形成領域以外の領域上に、耐腐食性を有する金属保護膜を有する第1の基板と、
前記第1の主面に対向して配置される第2の主面の前記流路形成領域に形成される溝と、前記流路形成領域以外の他の領域と前記溝とを区切り、前記他の領域に比して突出して設けられる側壁構成部と、を有し、耐腐食性を有する材料によって構成される第2の基板と、
前記第1の主面と前記第2の主面とが対向するように貼り合わせて両者を固定する固定部材と、
を備え、
前記第2の基板の前記側壁構成部は、前記第1の基板の前記金属保護膜上に位置するように圧着されることを特徴とする流量センサ。
【請求項3】
前記第1の基板は、断熱性を有する材料によって構成され、
前記第2の基板は、耐腐食性を有する材料によって構成されることを特徴とする請求項1または2に記載の流量センサ。
【請求項4】
前記感熱膜と前記ヒータ膜は、Ptによって構成され、
前記金属保護膜は、Agによって構成されることを特徴とする請求項1から3のいずれか1つに記載の流量センサ。
【請求項5】
ガス流路を構成するガス流路構成部材と、
前記ガス流路中に配置され、ガスの流量を調整する弁、および前記弁の開度を調整するアクチュエータを有する流量調整手段と、
前記ガス流路を流れる前記ガスの流量である流量測定値を検出する請求項1から4のいずれか1つに記載の流量センサと、
前記流量センサによって検出される前記流量測定値が、前記ガス流路に流す流量である流量設定値となるように前記流量調整手段を制御する流量制御手段と、
を備えることを特徴とするマスフローコントローラ。
【請求項6】
前記ガス流路構成部材は、主流部と、前記主流部から分岐し、再び前記主流部に合流するバイパス路と、を有するように構成され、
前記流量センサは、前記バイパス路に設けられることを特徴とする請求項5に記載のマスフローコントローラ。
【請求項7】
第1の基板の第1の主面上の流路形成領域に、一対の感熱膜とヒータ膜とを形成する感熱膜形成工程と、
前記第1の基板の前記第1の主面上の前記流路形成領域以外の他の領域に金属保護膜を形成する金属保護膜形成工程と、
前記第1の基板の前記流路形成領域の前記感熱膜と前記ヒータ膜が形成されていない領域に耐腐食性を有する流路保護膜を形成する流路保護膜形成工程と、
を含む第1の基板加工工程と、
前記第1の主面に対向する第2の基板の第2の主面の前記流路形成領域に流路となる溝と、前記流路形成領域以外の他の領域と前記溝とを区切り、前記他の領域に比して突出する側壁構成部と、を形成する第2の基板加工工程と、
前記第1の基板の前記第1の主面と前記第2の基板の前記第2の主面とを対向させて、両者を貼り合わせ、前記第2の基板の前記側壁構成部を前記第1の基板の前記金属保護膜と圧着させるように固定する基板貼り合わせ工程と、
を含むことを特徴とする流量センサの製造方法。
【請求項8】
前記第2の基板は、耐腐食性材料からなることを特徴とする請求項7に記載の流量センサの製造方法。
【請求項9】
前記第2の基板は、アルミニウムからなる場合に、前記第2の基板加工工程では、前記第2の基板の加工後に、前記第2の基板をアルマイト処理することを特徴とする請求項7に記載の流量センサの製造方法。
【請求項10】
前記流路保護膜形成工程では、前記流路保護膜としてアルミナ膜またはイットリア膜を形成することを特徴とする請求項7から10のいずれか1つに記載の流量センサの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3−1】
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【図3−2】
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【図3−3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−68549(P2013−68549A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−208007(P2011−208007)
【出願日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】