説明

流量測定装置

【課題】安価で容易に防爆構造にできる液量測定装置を提供する。
【解決手段】液量測定装置1は、一端が、液滴が滴下される滴下空間10に液滴が導入されるように開口し、他端が、滴下空間10より低圧の低圧空間11に開口し、導入された液滴がプラグ状に管路を封止するような内径を有する細管9と、細管9の途中の内圧を計測する圧力検出器13と、圧力検出器13の検出する圧力の変動によって液滴の細管3の通過を検知し、液滴を計数する計量手段とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液滴を計数する流量測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、油分離器で圧縮装置の吐出ガスに含まれる油量を分離し、分離した油が油滴となって発熱体上に落下するように構成し、発熱体の温度変化を検出することで油滴の滴下を検出し、これを基に吐出ガスに含まれる油量を算出する装置が開示されている。この装置は、発熱体を用いるため、吐出ガスが揮発性ガスであって防爆構造が求められる場合には適用できない。
【0003】
引用文献2および3には、液滴が滴下される空間内に光学センサを配置して、液滴の滴下を検出する構成が記載されている。しかしながら、これらの構成を防爆構造とするには、防爆仕様の高価なセンサが必要であったり、ハウジングの外部にセンサを配置するためにセンサ用の窓を設けるなど構造が複雑になったりするという欠点があった。
【特許文献1】特許第4033648号公報
【特許文献2】特開昭61−57815号公報
【特許文献3】特開昭63−279118号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記問題点に鑑みて、本発明は、安価で容易に防爆構造にできる液量測定装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するために、本発明による液量測定装置は、一端が、液滴が滴下される滴下空間に前記液滴が導入されるように開口し、他端が、前記滴下空間より低圧の低圧空間に開口し、導入された前記液滴がプラグ状に管路を封止するような内径を有する細管と、前記細管の途中の内圧を計測する圧力検出器と、前記圧力検出器の検出する圧力の変動によって前記液滴の細管の通過を検知する計量手段とを有するものとする。
【0006】
この構成によれば、細管中に液滴がないとき、圧力検出器は、滴下空間から低圧空間へと吹き抜ける気体の圧損により、滴下空間の圧力より低く、低圧空間の圧力より高い圧力を検出する。そして、細管に液滴が導入されると、液滴がプラグ状に細管を封止し、前後の圧力差によって細管内を移動する。液滴の移動速度は、液滴がないときの気体の吹き抜け速度に比べて十分に遅いので、このときの細管内での圧損は無視できる。よって、液滴が細管に導入されてから圧力検出器に到達するまでは、圧力検出器は低圧空間と略同じ圧力を検出し、液滴が圧力検出器を通過してから低圧空間に排出されるまでは、圧力検出器は滴下空間と略同じ圧力を検出する。この圧力変化によって液滴の通過を検出し、計量手段により液滴の数を計数することによって液滴の量を測定できる。また、この構成では、装置内部に電気部品を配置する必要がなく、安価且つ容易に防爆構造にできる。
【0007】
また、本発明の液量測定装置は、滴下された前記液滴を受け取り、前記細管に導入する漏斗をさらに有してもよい。
【0008】
この構成によれば、液滴を確実に細管に導入できるので、液滴の検出が確実である。
【0009】
また、本発明の液量測定装置において、前記細管は、前記滴下空間において略垂直上向きに開口してもよい。
【0010】
この構成によれば、滴下された液滴を迅速に細管に導入でき、流量測定に遅れが発生しない。
【0011】
また、本発明の液量測定装置において、前記細管は、迂曲してもよい。
【0012】
この構成によれば、細管の長さを長くすることで、液滴がないときの気体の吹き抜け量を小さくして気体のロスを小さくできる。また、液滴の通過時間を十分に長くできるので、液滴の検出が確実である。
【0013】
また、本発明の液量測定装置において、前記圧力検出器は、前記細管の中央よりも前記低圧空間寄りに配設されてもよい。
【0014】
この構成によれば、吹き抜ける気体の圧力低下に伴う膨張により下流側ほど圧損が大きくなるので、圧力検出器を細管の中央より下流側に配置することで、滴下空間と低圧空間との中間の圧力を検出するようにし、圧力の低下と圧力の上昇との両方を確実に検出可能とする。
【0015】
また、本発明の液量測定装置において、前記計量手段は、前記前記圧力検出器の検出した圧力が所定の上限圧力以上となったことおよび所定の下限圧力以下となったことの少なくともいずれかを検知したとき、前記液滴の前記細管の通過を計数してもよい。
【0016】
この構成によれば、低圧空間の圧力より高く、且つ、液滴がないときに検出し得ない下限圧力、および、高圧空間の圧力より低く、且つ、液滴がないときに検出し得ない上限圧力を閾値とすることで、液滴の通過を検出できる。また、液滴の数を数えることで液体の量を測定できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、滴下空間から低圧空間に気体が吹き抜ける細管に液滴を導入し、液滴のプラグによって気体の吹き抜けを一時的に阻害することで、細管の途中部分の圧力を変化させ、この圧力変動によって液滴の通過を検出する。また、本発明の液量測定装置は、装置内部に電子部品を配置しないので、容易に防爆構造にできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
これより、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。図1に、本発明の1つの実施形態である液量測定装置1を備える空気圧縮装置2を示す。空気圧縮装置2は、油冷式スクリュ圧縮機3と、スクリュ圧縮機3の吐出空気から冷却用油を分離する主油分離器4と、主油分離器4で分離された冷却用油をスクリュ圧縮機3に環流する流路に、冷却用油を冷却するために配設された油冷却器5と、主油分離器4を介して需要設備に供給される圧縮空気の一部をサンプリングし、圧縮空気に残留する潤滑用油の量を測定する液量測定装置1とを有する。
【0019】
液量測定装置1は、主油分離器4よりもさらに分離能の高い分離エレメント6を内包する密閉構造のハウジング7と、スクリュ圧縮機3の吸込と連通する油回収容器8と、ハウジング7と油回収容器8との間を接続する細管9とを有する。
【0020】
ハウジング7の内部は、分離エレメント6により分離された油が滴下される滴下空間10を構成する。滴下空間10の圧力は、圧縮空気の吐出圧と略等しい圧力、例えば0.5MPaになる。
【0021】
油回収容器8は、その内部空間が、スクリュ圧縮機3の吸込に連通し、スクリュ圧縮機3の吸込圧力、例えば、0.1MPaに保たれる低圧空間11を構成する。
【0022】
細管9は、例えば、内径0.4mm、長さ10mのステンレス管をコイル状に巻回してなる。細管9の上端は、略垂直上向きにハウジング7の内部に挿入されて滴下空間10内に開口し、さらに、分離エレメント6から滴下される油滴(液滴)を受け取り、細管9に案内する漏斗12を有する。また、細管9の下端は、油回収容器8の低圧空間11に開口している。
【0023】
液量測定装置1は、さらに、細管9の中央よりも低圧空間11寄り、例えば、上端から管路長7m、下端から管路長3mの位置に、細管9の内圧を計測する圧力検出器13が設けられている。また、液量測定装置1は、例えばマイコンからなり、圧力検出器13の検出出力を監視する計量手段14を有する。
【0024】
滴下空間10に導入された圧縮空気は、滴下空間10から細管9を通して低圧空間11に吹き抜け、スクリュ圧縮機3の吐出に戻される。細管9を吹き抜ける圧縮空気の流量は、細管に9における圧損が滴下空間10の圧力と低圧空間11の圧力との差になるような流量であり、本実施形態の条件では0.4NL/minである。
【0025】
図2に、圧縮空気が吹き抜けるときの細管9の位置と内圧との関係を示す。圧縮空気は、細管9の内壁との摩擦による圧損によって、徐々に圧力が低下する。このとき、圧縮空気は、圧力の低下に伴って膨張し、体積が増加するので、下流側程流速が早くなる。これにより、低圧空間11に近付く程圧損が大きくなるため、図示するように、細管9の下流側は、圧力の低下が大きくなっている。
【0026】
本実施形態では、圧力検出器13を上端から7m、下端から3mの位置に配置しているので、細管9を空気が吹き抜けているとき、圧力検出器13は、約0.33MPaの圧力を検出する。つまり、通常、圧力検出器13は、滴下空間10の圧力と低圧空間11の圧力との概略中間の圧力を検出する。
【0027】
分離エレメント6で分離された油は、凝集して分離エレメント6から滴下空間10内に滴下される。滴下された油滴は、漏斗12に受け取られ、細管9の上端に案内されて、細管9に導入される。細管9の内径は、油滴の径に比べて十分に小さいので、細管9の中に導入された油滴は、概略円柱型のプラグ状になって細管9を封止する。
【0028】
この油滴のプラグは、細管9内の圧縮空気の吹き抜けを防止し、圧縮空気の圧損をなくす。このため、油滴の上流側の細管9の内圧は滴下空間10の圧力と略等しくなり、油滴の下流側の細管9の内圧は低圧空間11の圧力と略等しくなる。
【0029】
油滴のプラグは、前後の圧力差により、細管9内の空気の吹き抜けを防止しながら、ゆっくりと、本実施形態では、例えば0.4m/secの速度で移動し、滴下空間10から約25秒かけて低圧空間11に移動する。低圧空間11に排出された油滴は、油回収容器8に貯留される。
【0030】
つまり、通常、約0.33MPaの圧力を検出している圧力検出器13は、油滴が細管9に導入されると、約17.5秒間、約0.1MPaの圧力を検出し、その後、約7.5秒間、約0.5MPaの圧力を検出してから、通常の約0.33MPaの圧力を検出する。
【0031】
計量手段14は、圧力検出器13の検出出力が、所定の下限圧力、例えば、0.2MPa以下になると、上流に油滴があると判断し、圧力検出器13の検出出力が、所定の上限圧力、例えば、0.4MPa以上になると、下流に油滴があると判断する。計量手段14は、圧力検出器13の検出値が下限圧力以下の値から、上限圧力以上の値に変化したとき、油滴が細管9を通過したものと判断し、油滴の通過数を計数、具体的にはカウンタに1加算する。
【0032】
液量測定装置1では、単位時間当たりの油滴の通過数から、主油分離器4を通過して需要設備に供給される圧縮空気に含まれる冷却用油の油量を算出することができる。
【0033】
液量測定装置1は、圧縮空気と接する装置の内部に、センサ類を配置する必要がないので、空気に代えて、揮発性ガスを圧縮するような場合にも、ガスを密封して電気回路から隔離した防爆構造とすることが容易である。
【0034】
上記実施形態の液量測定装置1では、液滴がない状態で、圧力検出器13が滴下空間10の圧力と低圧空間11の圧力との略中間の圧力を検出するようにして、油滴が上流にある場合と油滴が下流にある場合とのいずれの場合も、圧力変化によって検出可能としている。しかしながら、本発明では、油滴による圧力低下および圧力上昇のいずれか一方だけを検出してもよい。すなわち、圧力検出器13の検出値が下限圧力以下の値となったことのみをもって、油滴の通過数を計数(カウンタに1加算)する条件としてもよく、逆に、圧力検出器13の検出値が上限圧力以上の値となったことのみをもって、油滴の通過数を計数(カウンタに1加算)する条件としてもよい。
【0035】
また、細管9を通過した液滴の数を計数する変わりに、液滴を検出した時間間隔から圧縮空気に含まれる液量を算出してもよい。
【0036】
また、上記実施形態では、冷却用油の油滴を検出しているが、他の種類の液体の液滴を検出してもよい。そのために、細管9の内径や管長は、液体の物性等を考慮して、細管9の中で液滴がプラグ状になり、且つ、圧力変化を検出するのに適当な速度で移動するように定めるとよい。
【0037】
また、上記実施形態では、細管9の管長を確保するために、細管9をコイル状に巻回しているが、細管9はどのように迂曲させてもよく、また、条件が許せば、直管であってもよい。
【0038】
また、細管9は、滴下空間10内に、垂直上向きに開口することが望ましいが、液滴を適切に導入できれば、傾斜または水平に開口してもよい。
【0039】
また、上記実施形態では、ハウジング7に導入された圧縮空気をすべて細管9を介してスクリュ圧縮機3の吸込に環流させているが、冷却用油の流量が小さい場合には、ハウジング7に導入した圧縮空気の一部または大部分を、調整弁を介してスクリュ圧縮機3の吸込に環流したり、需要設備へ供給するような配管を設けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の1つの実施形態の液量測定装置を備える空気圧縮装置。
【図2】図1の液量測定装置の細管内の圧力変化を示すグラフ。
【符号の説明】
【0041】
1…液量測定装置
2…空気圧縮装置
6…分離エレメント
7…ハウジング
8…油回収容器
9…細管
10…滴下空間
11…低圧空間
12…漏斗
13…圧力検出器
14…計量手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端が、液滴が滴下される滴下空間に前記液滴が導入されるように開口し、他端が、前記滴下空間より低圧の低圧空間に開口し、導入された前記液滴がプラグ状に管路を封止するような内径を有する細管と、
前記細管の途中の内圧を計測する圧力検出器と、
前記圧力検出器の検出する圧力の変動によって前記液滴の細管の通過を検知する計量手段とを有することを特徴とする液量測定装置。
【請求項2】
滴下された前記液滴を受け取り、前記細管に導入する漏斗をさらに有することを特徴とする請求項1に記載の液量測定装置。
【請求項3】
前記細管は、前記滴下空間において略垂直上向きに開口することを特徴とする請求項1または2に記載の液量測定装置。
【請求項4】
前記細管は、迂曲していることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の液量測定装置。
【請求項5】
前記圧力検出器は、前記細管の中央よりも前記低圧空間寄りに配設されていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の液量測定装置。
【請求項6】
前記計量手段は、前記前記圧力検出器の検出した圧力が所定の上限圧力以上となったことおよび所定の下限圧力以下となったことの少なくともいずれかを検知したとき、前記液滴の前記細管の通過を計数することを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の液量測定装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−48559(P2010−48559A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−210349(P2008−210349)
【出願日】平成20年8月19日(2008.8.19)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】