説明

浴室ユニット用壁パネル及び防水パン

【課題】 本発明は、強度を維持し、脚架台を取り付けるボス強度を有した浴室ユニット用防水パンを提供することを目的とする。また、本発明は、強度を維持し、脚架台を取り付けるボス強度を有した浴室ユニット用防水パンを提供することを目的とする。
【解決手段】 本発明は、繊維基材に熱膨張性マイクロカプセルを含有した熱硬化性樹脂を含浸させ、加熱加圧することで成形され、表裏面共に端部から離間させた部位を平面形状となす浴室ユニット用壁パネルである。また、本発明は、繊維基材に熱膨張性マイクロカプセルを含有した熱硬化性樹脂を含浸させ、加熱加圧することで成形される防水パンであって、裏面にリブを有し、このリブ部分の密度を他の部分の密度よりも高密度とした浴室ユニット用防水パンである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユニット工法により組み立てられる浴室に使用される、浴室ユニット用壁パネル及び浴室ユニット用防水パンに関する。
【背景技術】
【0002】
浴室ユニット用部材である壁パネル、防水パン等は、シート・モールディング・コンパウンド(SMC)、バルクモールディングコンパウンド(BMC)等の熱硬化性樹脂成形材料を加熱、加圧することにより製造されている。このような方法によって形成される壁パネルは、例えば特許文献1にあるように、繊維強化プラスチックを用いた薄肉成形品の裏面に、リブを追加することで、壁の強度をもたせている。
また、前記方法によって形成される防水パンは、例えば、特許文献2に紹介されているように、浴室内の断熱性能高めるために、成形品の裏面にウレタン発泡を吹き付ける方法、または、裏面のリブ間の空隙に発泡スチロールを貼り付ける方法が知られている。
【特許文献1】特開2001−065110
【特許文献2】特開2001−140316
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、前記した方法により形成された壁パネルは、浴室に設置されるカウンター、浴槽、鏡、灯具等を固定する際に、ビスを打つ必要があり、壁パネル裏面のリブが取付け位置と干渉している場合、リブを除去するといった煩わしさがある。
また、リブ無し壁パネルとする場合、強度を維持するために壁パネルを厚肉化する必要があり、製品質量が重くなることで取扱性が悪くなり、成形品の圧肉化による成形時の反り、ねじれ、ひけといった不良の発生原因ともなる。
【0004】
前述した防水パンは、浴室内の断熱性を高められるものの、浴室入室の際の足裏に感じる冷やり感を低減できないといった問題がある。SMC、BMC等の熱硬化性樹脂成形材料に断熱性を付与する方法としては、例えば特開2000−336131号にあるように、ガラスバルーンやシラスバルーンなどの微小中空体を配合してなるものが知られているが、本熱硬化性樹脂成形材料による単独成形品とした場合、強度を増すためのリブにガラスバルーンが混入、低密度化するため、全体強度が低下するといった問題がある。また、現地施工する場合には脚架台を取り付ける必要があり、通常製品裏面のボスを利用して取り付けられるが、低密度化したリブでは、十分な強度が不足してしまう。
【0005】
本発明は、従来の技術の有する前述した問題点を鑑みてなされたもので、重量を増加させることなく圧肉化をすることができる浴室ユニット用壁パネルを提供することを目的とする。
また、本発明は、強度を維持し、脚架台を取り付けるボス強度を有した浴室ユニット用防水パンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明は、繊維基材に熱膨張性マイクロカプセルを含有した熱硬化性樹脂を含浸させ、加熱加圧することで成形され、表裏面共に端部から離間させた部位を平面形状となす浴室ユニット用壁パネルである。
(2)また、本発明は、繊維基材に熱膨張性マイクロカプセルを含有した熱硬化性樹脂を含浸させ、加熱加圧することで成形される防水パンであって、裏面にリブを有し、このリブ部分の密度を他の部分の密度よりも高密度とした浴室ユニット用防水パンである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、リブを有しない低密度の厚肉品を形成することができ、浴室ユニットの内装部材を、取り付け位置に制限されず、自由に取り付け位置を選定することができる。また、低密度化が可能となったことで、浴室内の保温性を高めることができる。さらに、本発明における壁パネルは、リブを無くし平面部の板厚を増やすことで製品強度を保持する構造のため、従来のリブを有した壁パネルよりも壁パネル全体として薄くすることができ、浴室ユニットの内寸を広くすることができる。
金型形状は、リブといった複雑形状を加工する必要がなく、構造を簡素化することができ、初期投資費用の低減を図ることができる。
【0008】
本発明の浴室ユニット用防水パンによれば、裏面リブ以外の部分を低密度化したことで浴室入室時の足裏の冷やり感の低減を図ることができ、リブ、ボスの密度を高密度化することが可能なため、本SMC成形材料単独で製品強度、脚架台の取り付け強度を維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明における浴室ユニット用壁パネルは、例えば図1に示すような構造で形成される。壁パネル1は、表裏面ともに周囲端部から離間を持たせた部位を平面形状としており、周囲端部には、フランジ2を設けている。また、フランジ部分は、熱膨張性マイクロカプセルを含有しないSMCの加熱、加圧により形成された成形品、或いは、アルミ等の別部材をインサート成形して得ることもできる。
【0010】
本発明にて述べる離間は、特に制限されるものではないが、壁パネルの周囲端部から30mm以内であることが好ましく、これよりも内側には壁パネルの表面から様々な付属品を取り付けるビスを打ち込まれることが多い。
【0011】
本発明の壁パネルは、設置時の作業性を考え、密度を0.7以上1.3未満で形成されることが好ましく、この範囲であれば1人作業を行うこともできる。また、厚みは、8mm以上20mm未満であることが好ましく、この範囲であれば強度、断熱性共に十分に満足するものとなる。
【0012】
本発明の壁パネルは、表面形状に岩肌調のような微細な凹凸を形成することができ、また、加飾フィルム等との一体成形、表面塗装、スクリーン印刷、インクジェット印刷といった表面加飾方法に特に限定されるものではない。尚、本発明にて述べる平面形状とは、微細な凹凸を否定するものではなく、強度補強を行うリブがないことを意味する。
【0013】
本発明の浴室ユニット用防水パンは、例えば図2、3、4に示すような構造で形成されるものである。防水パン3は、リブ5(ボス6を含む)以外の部分の密度を0.7以上1.3未満で形成され、リブ5及びボス6の密度を1.2以上1.6未満で形成することが好ましく、リブ5及びボス6を含まない板厚を4mm以上10mm未満で形成することが好ましい。
【0014】
本発明における浴室ユニット用壁パネル、及び、防水パンを形成させるために使用される熱硬化性樹脂成形材料としては、不飽和ポリエステル樹脂、重合性単量体、低収縮材、硬化材、充填材、増粘材及び熱膨張性マイクロカプセルを配合、混練した樹脂組成物を、繊維強化材に含浸させて成るSMC、BMC等の繊維強化成形材料である。また、熱硬化性樹脂成形材料は、プレス成形にて所望する成形品を得るものであり、一時加圧による材料充填工程の後、金型を寸開して熱膨張性マイクロカプセルの膨張工程を行うものである。これにより、不飽和ポリエステル樹脂や繊維強化材を含む熱硬化性樹脂成分が成形品端部まで充填された成形品を得ることができる。投入される熱硬化性樹脂成形材料の質量は、成形品に所望する板厚、密度にあわせて自由に設定することが可能である。
【0015】
また、一時加圧から膨張工程へ移行するタイミングは、材料充填完了後から成形品内部の熱硬化性樹脂成形材料のゲル化開始までの間に実施される。好ましくは、一時加圧開始から10秒〜90秒経過時点で金型の寸開を開始する。これにより、成形品の表裏面に存在する熱膨張性マイクロカプセルの膨張を抑制でき、表裏面部は、発泡部位の少ない表面硬度、剛性の優れたものを得ることができる。逆に、一時加圧開始から90秒以上経過後に膨張工程を開始した場合、熱硬化性樹脂成形材料のゲル化、硬化が進行し、熱硬化性樹脂成形材料が金型の寸開に追随せず、前記追随できない部分は熱膨張性マイクロカプセルの膨張倍率が大きくなり機械的強度の低下等の要因となる。
【0016】
一時加圧開始から成形品を離型するまでの総成形時間は、成形品の硬化が完了するまで行われるが、好ましくは、硬化完了後30秒以上経過後に離型する。これにより、成形品内部の樹脂硬化に伴う発熱温度を金型内で冷却することができ、離型後の熱膨張性マイクロカプセルの膨張を抑えることで成形品のふくれや成形品内部のクラック、巣等の発生を抑制することができる。
【0017】
本発明における熱硬化性樹脂としては、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、エポキシ樹脂等を用いることができるが、この中でも不飽和ポリエステル樹脂が好適である。不飽和ポリエステル樹脂は、α、β−不飽和多塩基酸又はその無水物を必須成分として含む多塩基酸成分と多価アルコールを反応させて得られる。
不飽和ポリエステル樹脂の合成原料であるα、β−不飽和多塩基酸又はその無水物としては、例えば、α、β−不飽和二塩基酸又はその無水物、例えば、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、無水マレイン酸、これらの無水物などが挙げられる。これらは、2種以上併用してもよい。
多塩基酸成分としては、不飽和基の濃度を調節すること、可撓性、耐熱性などの特性を付与するために、α、β−不飽和多塩基酸又はその無水物のほか、飽和多塩基酸又はその無水物を併用するのが好ましい。このとき、α、β−不飽和多塩基酸又はその無水物としては、多塩基酸成分のうち、80モル%以上とするのが好ましい。α、β−不飽和多塩基酸又はその無水物が80モル%より少なくなると得られる成形品の光沢が漸次低下する傾向を示す。このことから、α、β−不飽和多塩基酸又はその無水物が、80モル%であるのがより好ましく、85〜95モル%であることが特に好ましい。
【0018】
併用される飽和多塩基酸又はその無水物としては、フタル酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロフタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、3、6−エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、グルタル酸、アジピン酸、セバチン酸、トリメリット酸、無水トリメリット酸、ピロメリット酸、ダイマー酸、こはく酸、アゼライン酸、ロジン−マレイン酸付加物などが挙げられる。これらは、2種以上を併用してもよい。
【0019】
不飽和ポリエステル樹脂のもう一つの合成原料である多価アルコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1、3−ブタンジオール、1、6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1、4−シクロヘキサンジオール、水素添加ビスフェノールA等の二価アルコール、グリセリン、トリメチロールプロパン等の三価アルコール、ペンタエリスリトール等の四価アルコールなどが挙げられる。これらは、2種以上を併用してもよい。
【0020】
多塩基酸成分と多価アルコールとは、当量比で、多塩基酸成分を1とするとき、多価アルコールを1〜1.3の範囲で使用することが好ましく、1.03〜1.05の範囲で使用することがより好ましい。多価アルコールが少なくなると、得られる不飽和ポリエステル樹脂の分子量が小さくなる傾向にあり、多くなると酸価が小さくなって増粘剤による増粘の進行が遅くなる傾向がある。
【0021】
不飽和ポリエステル樹脂の製造方法としては、従来から公知の方法によることができる。例えば、多塩基酸成分、多価アルコール成分を縮合反応させ、両成分が反応するときに生じる縮合水を系外に除きながら進められる。縮合水を系外に除去することは、好ましくは不活性気体を通じることによる自然留出又は減圧留出によって行われる。縮合水の留出を促進するため、トルエン、キシレンなどの溶剤を共沸成分として系中に添加することもできる。反応の進行は、一般に反応により生成する留出分量の測定、末端の官能基の定量、反応系の粘度の測定などにより知ることができる。
反応の温度は150℃以上とすることが好ましく、また酸化による副反応を防止するために窒素、二酸化炭素などの不活性気体を通気しながら反応させることが好ましい。
このことから、反応装置としては、ガラス、ステンレス製等のものが選ばれ、撹拌装置、水とアルコール成分の共沸によるアルコール成分の留出を防ぐための分留装置、反応系の温度を高める加熱装置、この加熱装置の温度制御装置、窒素など不活性気体の吹込み装置等を備えた反応装置を用いるのが好ましい。
【0022】
不飽和ポリエステルの数平均分子量は、1000〜4500であることが好ましい。分子量が1000よりも低いと増粘材を適量添加しても増粘が上がらず樹脂組成物とした場合に柔らかく作業性が悪化するなどの問題が発生する。分子量が4500よりも大きいと粘度が高く、ガラス繊維の含浸不良をおこし成形した場合成形品の表面特性が低下する。
【0023】
重合性単量体としては、例えば、スチレン、クロルスチレン、ジビニルベンゼン、ターシャリブチルスチレン、臭化スチレン等のスチレン誘導体、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル等のメタクリル酸又はアクリル酸のアルキルエステル、β−ヒドロキシメタクリル酸エチル、β−ヒドロキシアクリル酸エチル等のメタクリル酸又はアクリル酸のヒドロキシアルキルエステル、ジアリルフタレート、アクリルアミド、フェニルマレイミドなどがあげられる。また、エチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリメチールプロパントリメタクリレートなどの多官能のメタクリル酸、又はアクリル酸のエステル類を用いることもできる。
【0024】
不飽和ポリエステル樹脂と重合性単量体とを配合し、必要により重合禁止材などを加えて不飽和ポリエステル樹脂組成物とされる。
このときの不飽和ポリエステル樹脂と重合性単量体との配合割合は、両者の合計量を100質量部とするとき、不飽和ポリエステル樹脂が25〜80質量部、重合性単量体が75〜20質量部とするのが好ましい。25質量部未満であると不飽和ポリエステル樹脂組成物の粘度が低すぎてシート状に塗布しにくく、また、沈降等のため他の成分と均一に混合しにくくなり、さらに、得られる繊維強化成形材料を成形しても硬化収縮率が大きく、成形品に割れ、クラック等が生じる場合がある。不飽和ポリエステル樹脂が80質量部を超えると、粘度が高すぎて均一に塗布したり、他の成分との混合がしにくくなる場合がある。このことから、不飽和ポリエステル樹脂が40〜65質量部、重合性単量体が60〜35質量部とするのがより好ましい。
【0025】
重合禁止材としては、p−ベンゾキノン、ナフトキノン、トルキノン、ハイドロキノン、モノ−t−ブチルハイドロキノン、ジブチルヒドロキシトルエン等が挙げられる。重合禁止材は、前記不飽和ポリエステル樹脂と重合性単量体との総量に対して3質量%以下で使用されることが好ましい。
【0026】
低収縮材としては、ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレン、ポリカプロラクトン、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ブタジエンゴムなどの熱可塑性樹脂が用いられる。使用量は、成形品の成形収縮率や表面平滑性、表面光沢等の表面特性を考慮して決定されるが、前記不飽和ポリエステル樹脂と重合性単量体との総量100質量部に対して5〜30質量部の範囲で使用されることが好ましい。5質量部未満では低収縮効果が充分でなく、成形品が脱型しにくくなり、その結果、クラックが発生する場合がある。また、40質量部を超えると低収縮剤が分離しやすく、かすれが発生し、光沢度が著しく低下する。
【0027】
着色剤は製品の着色のために配合され、その配合割合は不飽和ポリエステル樹脂100質量部に対して1〜5.0質量部が好ましい。なお、着色剤としては、二酸化チタンや酸化鉄等の無機顔料及びフタルシアニン系等の有機顔料を用いることができる。
【0028】
本発明に用いられる熱膨張性マイクロカプセルは、加熱により膨張し、該温度で膨張最大となり、その温度を超えると収縮する性質を示すものであり、熱可塑性樹脂を殻とし、膨張剤を内包するものである。内包する膨張剤としては、例えばプロパン、プロピレン、ブテン、ノルマルブタン、イソブタン、イソペンタン、ネオペンタン、ノルマルペンタン、ヘキサン、ヘプタン、石油エーテル、メタンのハロゲン化物(塩化メチル、メチレンクロリド、CClF、CCl等)、テトラアルキルシラン(テトラメチルシラン、トリメチルシラン等)等が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、アクリルニトリル、メタクリルニトリル類−アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル類のポリマー等が例示される。
【0029】
熱膨張性マイクロカプセルの配合割合は、不飽和ポリエステル樹脂100質量部に対して1〜30質量部が好ましい。配合割合が1質量部未満の場合、熱膨張性マイクロカプセル1個当りの膨張倍率が高くなるため曲げ強度等の機械強度低下の要因となる。逆に、配合割合が30質量部以上の場合、熱膨張性マイクロカプセルの膨張倍率は低くなるが、成形品単位体積当りの熱膨張性マイクロカプセル量が多くなりすぎて、離型後の圧開放時に膨張し、成形品にふくれを発生させる要因となることや、成形品内部にマイクロカプセルが局所的に存在し、巣の発生等の要因となる。
【0030】
本発明に使用される熱膨張性マイクロカプセルは、内包する膨張剤の種類、殻の熱可塑性樹脂の種類によって所定の膨張開始温度のものを選択できるが、熱硬化性樹脂が硬化する前に収縮を伴わないで所望の膨張倍率となるよう調整することが必要である。よって、本発明に使用される熱膨張性マイクロカプセルは、プレス成形時の成形温度120℃〜150℃に対し、膨張開始温度が100℃以上成形温度以下、最大膨張温度が成形温度より高いものが好適である。さらに好ましくは、前記熱膨張性マイクロカプセルは、膨張開始から最大膨張に達するまでの各温度において緩やかに膨張が進行するものを使用する。膨張開始温度が100℃未満の場合、本発明の温度範囲では、熱硬化性樹脂の硬化に対し、熱膨張性マイクロカプセルの膨張が速やかに進行するため、発泡倍率の均一な成形品が得られない。また、張開始温度が150℃を超えると本発明の温度範囲内では、膨張開始が熱硬化性樹脂の硬化発熱時に開始するため、所望する膨張倍率に到達せず得られる成形品の充填性が不十分となる。
【0031】
増粘材としては、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、酸化カリウム、水酸化カリウム等が用いられるが、一般的には酸化マグネシウムが用いられる。増粘材の量は、成形材の作業性に応じて決定されるが、前記不飽和ポリエステル樹脂及び重合性単量体の総量に対して、0.5〜5.0質量%が好ましく、より好ましくは0.7〜2.0質量%である。増粘材が少な過ぎると樹脂組成物の粘度が上昇しない場合があり、樹脂組成物とした場合に柔らかく、取扱い時のべたつきによる作業性低下やプレス成形時にピンホール等の欠陥が発生しやすくなる等の問題が生じる。また、増粘材が多すぎると粘度上昇が著しく、繊維基材への含浸不良をおこし、成形した場合、成形品にふくれ、巣、ピンホール等の欠陥が生じるためである。
【0032】
充填材としては、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、珪酸マグネシウム、ガラスパウダ等が用いられる。その配合量は、前記不飽和ポリエステル樹脂及び重合性単量体及び熱可塑性樹脂総量100質量部に対して、100〜200質量部を含有することが好ましい。充填材の含有量が100質量部未満では、不飽和ポリエステル樹脂組成物の酸化マグネシウム等のアルカリ土類金属酸化物等による増粘反応が進みにくく、増粘後のタックフリー性が不足し、取扱い時のべたつきによる作業性低下やプレス成形時にピンホール等の欠陥が発生しやすくなる等の問題があるためである。また、200質量部を超えると、プレス成形時にSMCの流動性が低下し、充填不足が生じたり、また、強度が低下したりする恐れがある。
【0033】
不飽和ポリエステル樹脂組成物には、さらに、適宜、内部離型材、紫外線吸収剤等が配合される。
【0034】
内部離型材としては、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等が使用される。離型材の量は、前記不飽和ポリエステル樹脂及び重合性単量体の総量に対して、1.0〜10質量部が好ましく、より好ましくは2.0〜6.0質量部である。離型材の量が少なすぎると成形品が型に付き、脱型しづらく、また成形品にクラック等が入る場合がある。また、離型剤が多すぎると成形品強度が低下する傾向にある。
【0035】
繊維基材(補強材)としては、ガラス繊維や有機繊維が用いられる。ガラス繊維は、連続繊維、織布等の形態で用いられるが、ロービング状のものを0.5〜30mmに切断したものを用いることが好ましい。
一方、有機繊維を使用する場合は、不織布、クロス、あるいはチョップド短繊維等を用いることができるが、不織布は、SMCの成形時(成形品の製造時)に、クロスよりも樹脂の流動性がよく、チョップド短繊維よりも繊維の均一分散性、樹脂含浸性がよい。有機繊維としては、ポリエステル繊維、セルロース繊維、ナイロン繊維、アラミド繊維等の合成繊維やサイザル麻、ジュート等の天然繊維を用いることができるが、ポリエステル繊維が、不飽和ポリエステル樹脂との密着性に優れることから、好適である。又、サイザル麻やジュート等の天然繊維は、合成繊維に比べて安価であり、しかも天然物を有効利用できることから環境配慮の点からも好適である。
【0036】
SMC及びBMCは、通常の製造装置を用いて通常の方法により製造することができる。
例えば、SMCの場合、前記不飽和ポリエステル樹脂組成物を、上下に配置されたキャリアフィルムに均一な厚さとなるように塗布し、巻き出し装置から巻き出された所定の大きさの繊維補強材(織布又は不織布)を上記した上下に配置されたキャリアフィルムの不飽和ポリエステル樹脂組成物に挾み込み、次いで、全体を含浸ロールの間に通して、圧力を加えて繊維補強材を不飽和ポリエステル樹脂組成物に含浸させた後、ロール状に巻き取るかつづら折りに畳む。また、繊維補強剤として単繊維を用いる場合、キャリアフィルムに不飽和ポリエステル樹脂組成物を塗布し、ついで、単繊維をその上に散布する方法で製造される。
この後、必要に応じて熟成等を行う。増粘材を配合した場合には室温〜50℃の温度で処理して熟成することが好ましい。
離型フィルムとしては、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等を用いることができる。
【0037】
成形材料の粘度は、40℃において15、000〜150、000Pa・sとなるように調整されるのが好ましく、60、000〜120、000Pa・sとなるように調整されるのが特に好ましい。粘度が低すぎると、成形品表面にスカミングが発生し易く、また粘度が高すぎると型締め時間が長くなって成形サイクルが長くなる傾向を示す。ただし、繊維強化成形材料の最適の粘度は、成形品によって決定される。また、繊維強化成形材料の粘度は増粘材の配合量や熟成条件によって調整することができる。
【0038】
熱硬化性成形材料は、次の条件でプレス成形されると、所望の熱硬化性樹脂成形品を得ることができる。
成形方法は、一時加圧による材料充填工程の後、金型を寸開して熱膨張性マイクロカプセルの膨張工程を行なうものである。材料充填工程の成形圧力は面圧3MPa〜10MPa、膨張工程の成形圧力は0MPa〜1MPaであることが好ましい。充填工程の成形圧力を規定するのは、面圧3MPa未満の場合、加圧力不足のため成形品表面に巣、ピンホールが発生しやすくなる。一方、10MPaを超えるとプレスのエネルギーコストが高い割には、それほど外観向上が望めない。また、膨張工程の成形圧力は、1MPaを超えると、熱膨張性マイクロカプセルの膨張圧力がプレスの加圧力に負けるため、膨張不十分で、得られる成形品の発泡が不十分となる。
また、成形材料の充填性向上、及び、熱膨張性マイクロカプセルの膨張、収縮時に放出される内部ガスの影響による成形品表面の巣、ピンホールを抑制するために、必要に応じて一次加圧時に真空引きを実施により型内を真空状態とし、前記マイクロカプセルの内包ガスを型内から外部へ放散させることが好ましい。
【0039】
成形温度は、120℃〜150℃であることが好ましい。120℃未満の場合、成形品の表面光沢が著しく低下する。また、その成形温度に合わせて有機過酸化物を選定する必要があるが、この場合半減期温度がより低い有機過酸化物を用いる必要があり、SMCの保存安定性が著しく低下し、取扱性が困難となる。また、150℃を超えるとカプセルの膨張開始する前に樹脂の硬化が始まり、成形品の発泡が不十分となる。本発明における壁パネルの場合、好ましくは、上型と下型の温度を同じ温度とし、成形品の反り等を抑制するよう設定され、本発明における防水パンの場合、成形品の裏面側、すなわちリブ配置側の金型を、体裁面側の金型よりも低温とし、熱膨張性マイクロカプセルの膨張を抑制するよう設定される。
【0040】
本発明における防水パンを形成するために使用される金型は、好ましくは、リブを有する金型を固定し、体裁面側を型開きするよう設けられる。これによりリブ部の密度をその他の部分よりも高密度化することが可能となる。
【0041】
尚、熱硬化性成形材料の最外層に大理石模様等を現出する加飾シートやフィルムを配置して一体成形することにより、成形品表面に加飾層を設け、意匠性を付与することもできる。
【0042】
前述した熱硬化性樹脂成形材料を前述した成形方法で製造することにより、低密度、かつ圧肉の成形品を得ることができ、リブを有しない浴室ユニット用壁パネルを形成することができる。また、リブ、ボスの密度を平面部よりも高密度で形成し、かつ、平面部を低密度の厚肉成形品とした浴室ユニット用防水パンを形成することができる。
【実施例】
【0043】
以下に実施例を挙げて、本発明をより具体的に説明する。
浴室ユニット用壁パネルの形成に用いた材料は以下のものであり、不飽和ポリエステル樹脂:(ポリセット9415、日立化成工業株式会社、商品名)、低収縮材:ポリスチレン(デンカスチロール、電気化学工業株式会社、商品名、30%スチレン溶液として使用)、重合禁止剤:パラベンゾキノン(精工化学株式会社、商品名)、内部離型剤:(ジンクステアレート、日本油脂株式会社、商品名)、充填材:炭酸カルシウム(NS200、日東粉化工業株式会社、商品名)、熱膨張性マイクロカプセル(F−78D、又は、F−105D 松本油脂製薬株式会社、商品名)、増粘剤:酸化マグネシウムを不飽和ポリエステル樹脂に分散させたものを用いた。
また、成形条件は、金型温度:上型145℃(製品面)下型145℃、圧力:100kg/cmとし、長さ2000mm、幅800mm、板厚10mmの平板をプレス成形した。
【0044】
実施例1
不飽和ポリエステル樹脂85質量部に対し、低収縮材15質量部、重合禁止材0.8質量部、内部離型材4質量部、炭酸カルシウム140質量部、熱膨張性マイクロカプセルF−78D 5質量部、ガラス繊維を総質量に対し20質量%、増粘剤1.8質量部を混合し熱硬化性樹脂成形材料としたものを、一時加圧30秒間実施後、上型を7.5mm寸開し膨張工程を240秒間実施した。得られた発泡成形品は、平板部の密度0.9、板厚10mmの発泡成形体であり、成形品端部まで充填したものであり、ふくれ、成形品内部に巣、割れといった不具合がなく、熱伝導率0.2W/m・Kの成形品が得られた。また、本発泡成形体は、ユニットバス用壁パネルとしての強度を有するものである。
【0045】
実施例2
不飽和ポリエステル樹脂85質量部に対し、低収縮材15質量部、重合禁止材1質量部、内部離型材4質量部、炭酸カルシウム140質量部、熱膨張性マイクロカプセルF−105D 5質量部、ガラス繊維を総質量に対し20質量%、増粘剤1.8質量部を混合し熱硬化性樹脂成形材料としたものを、一時加圧30秒間実施後、上型を7.5mm寸開し膨張工程を240秒間実施した。得られた発泡成形品は、平板部の密度0.9、板厚10mmの発泡成形体であり、成形品端部まで充填したものであり、ふくれ、成形品内部に巣、割れといった不具合がなく、熱伝導率0.2W/m・Kの成形品が得られた。また、本発泡成形体は、ユニットバス用壁パネルとしての強度を有するものである。
【0046】
本発明における浴室ユニット防水パンの形成に用いた材料は以下のものであり、
不飽和ポリエステル樹脂:(ポリセット9415、日立化成工業株式会社、商品名)、低収縮材:ポリスチレン(デンカスチロール、電気化学工業株式会社、商品名、30%スチレン溶液として使用)、重合禁止剤:パラベンゾキノン(精工化学株式会社、商品名)、内部離型剤:(ジンクステアレート、日本油脂株式会社、商品名)、充填材:炭酸カルシウム(NS200、日東粉化工業株式会社、商品名)、熱膨張性マイクロカプセル(F−78D 松本油脂製薬株式会社、商品名)、増粘剤:酸化マグネシウムを不飽和ポリエステル樹脂に分散させたものを用いた。
成形条件は、金型温度:上型130℃(リブ、ボスを有する製品裏面側)下型145℃(製品体裁面側)、圧力100kg/cmとし、加圧開始時に真空引きを実施し、長さ1682mm、幅945mm、平板部の板厚8mmの防水パンをプレス成形した。
【0047】
実施例3
不飽和ポリエステル樹脂85質量部に対し、低収縮材15質量部、重合禁止材1質量部、内部離型材4質量部、炭酸カルシウム140質量部、熱膨張性マイクロカプセルF−78D 5質量部、ガラス繊維を総質量に対し20質量%、増粘剤1.8質量部を混合し熱硬化性樹脂成形材料としたものを、一時加圧60秒間実施後、上型を4.5mm寸開し、膨張工程を600秒間実施した。得られた成形品は、平板部の密度0.9、板厚8mm、リブ部の密度1.4の発泡成形体を得た。
得られた発泡成形体は、成形品端部まで充填したものであり、ふくれ、成形品内部に巣、割れといった不具合がなく、熱伝導率0.2W/m・Kの成形品が得られた。また、本成形品は、ユニットバス用防水パンとしての強度を有するものであった。
【0048】
以上の試験結果から、本発明の成形方法によれば、剛性、低密度、断熱性に優れた発泡成形体を製造できることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の実施例における浴室ユニットバス用壁パネルの概略図
【図2】本発明の実施例における浴室ユニットバス用防水パンの上面概略図
【図3】図2に示す防水パンの裏面外略図
【図4】ボス部の断面図
【符号の説明】
【0050】
1…壁パネル、2…フランジ、3…防水パン、4…排水口、5…リブ、6…ボス




【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維基材に熱膨張性マイクロカプセルを含有した熱硬化性樹脂を含浸させ、加熱加圧することで成形され、表裏面共に端部から離間させた部位を平面形状となす浴室ユニット用壁パネル。
【請求項2】
繊維基材に熱膨張性マイクロカプセルを含有した熱硬化性樹脂を含浸させ、加熱加圧することで成形される防水パンであって、裏面にリブを有し、このリブ部分の密度を他の部分の密度よりも高密度とした浴室ユニット用防水パン。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−316540(P2006−316540A)
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−141279(P2005−141279)
【出願日】平成17年5月13日(2005.5.13)
【出願人】(301050924)株式会社日立ハウステック (234)
【Fターム(参考)】