浴室床およびその構築方法
【課題】所望の排水勾配を有した浴室を容易に構築することができるようにする。
【解決手段】構築予定の床の排水勾配に応じて、最も水上の床高さを決定し、出入口23側の隅に最水上のきわ根太高さを示すポイントP1をマークする。浴室1の他の3隅については、この排水勾配と、浴槽設置用段落しを考慮してきわ根太高さを決定し、各々の高さを示すポイントをマークする。これらの各マークを結ぶようにきわ根太仕上げラインL1を墨出しする。ラインL1に沿ってきわ根太25,28を取り付ける。きわ根太25,28に根太31,33,41,42を取り付け床板55を張る。
【解決手段】構築予定の床の排水勾配に応じて、最も水上の床高さを決定し、出入口23側の隅に最水上のきわ根太高さを示すポイントP1をマークする。浴室1の他の3隅については、この排水勾配と、浴槽設置用段落しを考慮してきわ根太高さを決定し、各々の高さを示すポイントをマークする。これらの各マークを結ぶようにきわ根太仕上げラインL1を墨出しする。ラインL1に沿ってきわ根太25,28を取り付ける。きわ根太25,28に根太31,33,41,42を取り付け床板55を張る。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は浴室床およびその構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
浴室床は防水パンで構成されることが多いが、根太上に床板を張ることによって構築されることもある。
【0003】
実開平2−9633号には、水平な根太(横木部材)の上に、根太と直交方向に縦木部材に床板を張ることによりバルコニー等の防水床パネルを構築することが記載されている。この床パネルに排水勾配をつけるために、上記縦木部材として高さの異なる複数種類のものを用いている。
【特許文献1】実開平2−9633号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記実開平2−9633号では、上記縦木部材として高さの異なるものを用いることにより排水勾配を設けるようにしている。このため、高さの異なる縦木部材を種々用意しておく必要があり、コスト高である。また、現場寸法に応じた各種の縦木部材を製作するところから、施工に着手するまでに徒に日が経過するという短所もある。
【0005】
本発明は、所望の排水勾配を有した浴室を速やかに構築することができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の浴室床は、浴室の土台又は基礎にきわ根太を取り付け、該きわ根太に根太を取り付け、該根太に床板を取り付けた浴室床であって、該床に排水勾配が形成されるように前記きわ根太を土台又は基礎に取り付けたことを特徴とするものである。
【0007】
請求項2の浴室床は、請求項1において、前記基礎にきわ根太を取り付ける場合には、該基礎にアングルを取り付け、該アングルにきわ根太を固定したことを特徴とするものである。
【0008】
請求項3の浴室床の構築方法は、浴室の土台又は基礎にきわ根太を取り付け、該きわ根太に根太を取り付け、該根太に床板を取り付ける浴室床の構築方法であって、該床に排水勾配が形成されるように前記きわ根太を土台又は基礎に取り付けることを特徴とするものである。
【0009】
請求項4の浴室床の構築方法は、請求項3において、最も水上の隅におけるきわ根太の位置を決定し、他の隅におけるきわ根太の位置をそれに合わせて決定することを特徴とするものである。
【0010】
請求項5の浴室床の構築方法は、請求項4において、決定されたきわ根太の位置を示す墨出しを土台又は基礎に行ない、この墨出しに従ってきわ根太を土台又は基礎に取り付けることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の浴室床及びその構築方法によると、排水勾配を形成するようにきわ根太を土台又は基礎に取り付けるので、種々の高さの異なる縦木部材が不要であり、浴室を速やかに構築することができ、工期が短くなると共に、コストも安いものとなる。
【0012】
なお、基礎に対してはアングルを用いることにより、きわ根太を堅固に取り付けることができる。
【0013】
きわ根太は、上記のように床に排水勾配が形成されるように土台又は基礎に取り付けられるが、この場合、最も水上の隅におけるきわ根太の位置を決定し、他の隅におけるきわ根太の位置をそれに合わせて決定することにより、きわ根太の傾斜を正確に決定することができる。この決定に従って墨出ししてきわ根太を取り付けることにより、設計通りの排水勾配を有した床が構築される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、第1図〜第29図を参照して実施の形態について説明する。
【0015】
第1図は構築された浴室床を有する浴室と、それに隣接するパウダールームの平面図、第2図〜第4図は第1図の矢印II方向〜IV方向の矢視図、第5図〜第7図は構築途中状態における第1図のV〜VII矢視図である。第8図〜第17図は床の構築途中図、第18,19図は第17図のXVIII−XVIII線、XIX−XIX線断面図、第20図〜第25図は洗い場カウンターの構築途中図、第26図〜第28図は浴槽回りの構築途中図、第29図は第26図のXXIX−XXIX線断面図である。
【0016】
第1図〜第4図の通り、浴室1に隣接してパウダールーム2が構築されている。浴室1内には洗い場3、カウンター4、浴槽カウンター5及び浴槽6が設けられている。パウダールーム2内のカウンター7には洗面器8と洋風便器9とが設置されている。浴室1とパウダールーム2との間は、ガラス間仕切り10、腰壁11及び、出入口23(第5図)に設けられた出入口ガラスドア12によって区画されている。
【0017】
この浴室1の構築方法について次に説明する。
【0018】
第5図の通り、基礎20上に土台21が設置され、浴室1の4隅に柱が立設され、必要な箇所に壁下地板24が取り付けられている。第5図の符号22はベタ基礎、23は浴室1とパウダールーム2との出入口を示す。
【0019】
第6図の通り、出入口の土台21の浴室1側の側面に、高さの小さいパネル21Aが取り付けられている。
【0020】
構築予定の床の排水勾配に応じて、最も水上の床高さを決定し、第5図の通り、出入口23側の隅に最水上のきわ根太高さを示すポイントP1をマークする。浴室1の他の3隅については、この排水勾配と、構築予定の床の仕上げ面の高さ、浴槽設置用段落しを考慮してきわ根太高さを決定し、各々の高さを示すポイントをマークする。これらの各マークを結ぶようにきわ根太仕上げラインL1を墨出しする。P1に近い部分では、ラインL1は土台21やパネル24,21Aに付着するが、P1よりも離れた水下側や、浴槽設置部ではラインL1は基礎20の側面に付着することになる。
【0021】
次に、上面と下面が略平行であるきわ根太25,28の上面がラインL1に沿うように取り付ける。
【0022】
出入口23付近では、第6図のようにパネル24,21Aにきわ根太25が取り付けられる。
【0023】
第7図のように、出入口23に隣接した腰壁11付近では、洗い場3よりも一段低くなるように段落しした浴槽設置部を構築するので、基礎20にLアングルよりなるブラケット27をビス留めし、このブラケット27上にきわ根太28を設置し、ビス29で固定する。
【0024】
その他の箇所についても、基礎20又は土台21にきわ根太25,28を取り付ける。なお、きわ根太25は洗い場用であり、きわ根太28は浴槽設置部用である。
【0025】
浴槽1の全周にわたってきわ根太25,28を設置した後、第8図及び第10図のように根太31をその端部をきわ根太25又は28に取り付けることにより設置する。なお、きわ根太25又は28に根太31を取り付けるには、第9図に示す取付金物32を用いる。図示の通り、この取付金物32は、きわ根太25又は28と根太31の側面にビス留めされる。ここでは上面と下面が略平行であるきわ根太25,28を用いたが、上面がラインL1と同じ勾配の斜面で形成されたきわ根太を用いてもよい。
【0026】
第10図の通り、洗い場の最も水下側には、根太31,31間にこれらと直交方向の短い根太(床梁)33を2本架設する。これらの根太33,33間には、第10図のXIII線矢視図である第13図の通り、排水口部材50が設置される。なお、根太31,33同士は前記取付金物32と同様の金物を介して連結される。
【0027】
上記の根太31は、第10図の通り、浴槽設置部の長手方向と平行に架設されている。洗い場と浴槽設置部との境界の根太31の浴槽設置部側の側面には、第10図のXI−XI線断面斜視図である第11図の通り、根太受け桟40がビス留めされる。この根太受け桟40と、浴槽設置部の対向するきわ根太28との間に根太41が複数本(この実施の形態では3本)架設される。
【0028】
第10図の通り、パウダールーム2から最も遠い水下側の根太41と、対向するきわ根太28との間には、短い根太42が架設される。根太41,42の取り付けにも、例えば第11図の通り取付金物32が使用される。根太31,33,41,42を取り付けた後、第12図のように根太31,41の下側の適宜箇所に床束43を立設して根太31,41を支承する。
【0029】
この床束43の上端は、U字形の受け金具44とビス45とを用いて根太31,41に固定される。床束43の下部は、足ボルト46にて構成されており、該足ボルト46によって高さ調整した後、ロックナット47で足ボルト46とロックするようになっている。足ボルト46の下端には、ベタ基礎22上に当接される金属板48が固設されている。
【0030】
また、すべての根太の取り付け後、前述の第13図の通り、根太33,33間に洗い場床排水口部材50を取り付ける。また、第14図に示すように、根太42,42間に浴槽設置部及び浴槽排水用の排水口部材51を取り付ける。
【0031】
この排水口部材50,51の設置後、根太上に床板55を張る。
【0032】
この床板張り作業に際しては、まず洗い場3に床板55を張った後、第15,16図の通り給水及び給湯用の樹脂管56,56を床下に引き回すと共に、樹脂管56,56用の継手57を床板55の水下側部分(第1図のカウンター4の内部)に取り付ける。この継手57は、床板55に突設された開口55aに挿通される。継手57は、そのフランジが開口55aの上縁に重ね合わされ、ビス57aによって固定されている。
【0033】
1対の継手57,57を床板55に取り付けた後、樹脂管56,56の末端をそれぞれ継手57,57に連結する。
【0034】
なお、後述の通り、吹き付け作業を行うため、継手57には第16図の通りキャップ57bを被せておく。
【0035】
第17図は、この継手57の設置及びすべての床板張りが終了した状態を示す平面図である。第18,19図は第17図のXVIII−XVIII線及びXIX−XIX線断面図であり、床板55の根太31への取り付け状態及びきわ根太25への取り付け状態を示している。第18図の55aはビスを示す。
【0036】
その後、洗い場カウンターの前面板の設置位置の下方に角材59(第21図)を取り付ける。
【0037】
このように床板を55張り、継手57の設置及び角材59の取り付け後、床面と、壁の下部とに連続して防水層60(第21図等参照)を吹き付け塗装により形成する。
【0038】
この防止層60は、洗い場床面から約1000cm程度の高さまで形成するのが好ましい。
【0039】
次いで、第20図及び第20図のXXI−XXI線断面図である第21図に示すように、パウダールーム2と反体側の壁パネル24に、水平方向にカウンター天板取付用アングル61をビス61a留めする。また、それに隣接する壁パネル24にカウンター前板取付用アングル62を鉛直方向にビス留めする。さらに、前記角材59の上側に、カウンター前板の下部を支承するためのアングル63をビス63a留めする。
【0040】
次に、第22図の通り、上縁にアングル67が取り付けられたカウンター前板66を該アングル62,63にビス留めにより取り付ける。この際、床板55には排水勾配が存在するので、前板66の水下側には、床勾配補正用のスペーサ65を床板55との間に介在させる。
【0041】
前板66の上端と、該パネル24のアングル61とに跨って、カウンター天板68をビス68aによって取り付ける。このカウンター天板68には、その浴槽設置部側に予めバス水栓70を取り付けておく。第23,24図はバス水栓70の取り付け状況を示す斜視図である。
【0042】
第23図の通り、カウンター天板68にはバス水栓取付用開口68bが設けられている。
【0043】
第24図の通り、バス水栓70は、給水用及び給湯用の配管71,71及び分岐管72,72を介して前記継手57,57に接続されている。分岐管72は継手57に固着されている。分岐管72のもう一方の流出口は、配管74を介して、カウンター前板66に設けられた洗い場用水栓75に接続されている。カウンター天板68は、浴槽設置部側と洗い場側との2枚よりなる。浴槽設置部側のカウンター天板に水栓70が取り付けられている。この浴槽設置部側の天板68を設置し、配管71,74の接続を行った後、洗い場側の天板68を設置する。
【0044】
このカウンター設置工事後、第25図の通り、浴槽エプロンパネルの受け桟(アングル)80,81を、根太31と、カウンター前板66とにビス80a,81aによって取り付ける。また、カウンター前板66には、浴槽設置用天板89(第27図)の支持用の受け桟82をビス留めしておく。
【0045】
第26図の通り、パウダールーム側においても壁パネル11,24にエプロンパネル受け桟83,84,85をビス留めしておく。そして、第27図の通り、受け桟80,81,84に支持させるようにしてエプロンパネル88を配置し、ビス88aでエプロンパネル88を受け桟81,84に留め付ける。第26,27図の通り、受け桟83,85とエプロンパネル88とに支承させるようにして浴槽設置用天板86を設置し、さらに天板89を設置する。
【0046】
次いで、浴槽90を浴槽設置部に配置し、そのフランジ部90aを天板86,89及び前記カウンター天板68の上側に配置する。また、洗い場3の床面等にタイル張り用下地板を張る。
【0047】
その後、洗い場3の床面、カウンター4の前面及び上面、エプロンパネル88、並びに天板86,89の上面にタイル張りする。第28図はエプロンパネル88及び天板89へのタイル張りを示す断面図であり、エプロンパネル88には平物のタイル91が貼り付けられ、上縁には役物タイル92が張り付けられている。浴槽フランジ部90aの下側のタイル91と該フランジ部90aとの隙間にはコーキング93が施されている。
【0048】
浴室1とパウダールーム2との出入口部分の水仕舞い構造の詳細を第29図に示す。なお、第29図は第26図のXXIX−XXIX断面を示している。
【0049】
第29図の通り、浴室1からパウダールーム2にかけて連続して防水層60が設けられている。洗い場の床面には、この防水層60の上に、タイル張り用下地板100を介してタイル101が張り付けられている。パウダールーム2においては、防水層60の上にタイル張り用下地板111を介してタイル112が張り付けられている。
【0050】
出入口23の土台21の上側には、ドアサッシ120が設置されている。前記第1図〜第3図のドア12はこのドアサッシ120に取り付けられている。
【0051】
このようにして構築される浴室1は、洗い場3及び浴槽設置部に適切な排水勾配が設けられている。この排水勾配は、傾斜付けされたきわ根太25,28によってもたらされたものであり、所望の勾配を精度よくつけることができる。また、前記実開平2−9633号の如き種々の高さの異なる縦木部材が不要であるので、低コストであり、受注から施工終了までの日数も少ない。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】実施の形態に係る浴室と、隣接するパウダールームの平面図である。
【図2】図1のII方向の矢視図である。
【図3】図1のIII方向の矢視図である。
【図4】図1のIV方向の矢視図である。
【図5】施工途中における図1のV方向の矢視図である。
【図6】施工途中における図1のVI方向の矢視図である。
【図7】施工途中における浴室の斜視図である。
【図8】施工途中における浴室の斜視図である。
【図9】きわ根太と根太との接合部の斜視図である。
【図10】浴室におけるきわ根太及び根太を示す平面図である。
【図11】根太と根太受け桟との接合部の斜視図である。
【図12】床束の斜視図である。
【図13】床排水口部材の設置状況を示す斜視図である。
【図14】浴槽設置部の排水口部材の設置状況を示す斜視図である。
【図15】給水、給湯用の樹脂管の引き回し構造を示す斜視図である。
【図16】樹脂管用継手の取付状況を示す断面図である。
【図17】床板張り後の浴室の平面図である。
【図18】図17のXVIII−XVIII断面図である。
【図19】図17のXIX−XIX断面図である。
【図20】カウンター設置用アングルの取付状況を示す斜視図である。
【図21】図20のXXI−XXI断面斜視図である。
【図22】カウンター設置状況を示す斜視図である。
【図23】バス水栓の設置状況を示す斜視図である。
【図24】分岐栓及びバス水栓の設置状況を示す斜視図である。
【図25】エプロンパネル用受け桟の設置状況を示す斜視図である。
【図26】浴槽設置部用天板及びエプロンパネル用受け桟の設置状況を示す斜視図である。
【図27】浴槽エプロンの設置状況を示す斜視図である。
【図28】浴槽エプロン及び浴槽の設置状況を示す斜視図である。
【図29】洗い場からパウダールームにかけての断面図である。
【符号の説明】
【0053】
1 浴室
2 パウダールーム
3 洗い場
4 洗い場カウンター
5 浴槽カウンター
6 浴槽
25,28 きわ根太
31,33,41,42 根太
55 床板
【技術分野】
【0001】
本発明は浴室床およびその構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
浴室床は防水パンで構成されることが多いが、根太上に床板を張ることによって構築されることもある。
【0003】
実開平2−9633号には、水平な根太(横木部材)の上に、根太と直交方向に縦木部材に床板を張ることによりバルコニー等の防水床パネルを構築することが記載されている。この床パネルに排水勾配をつけるために、上記縦木部材として高さの異なる複数種類のものを用いている。
【特許文献1】実開平2−9633号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記実開平2−9633号では、上記縦木部材として高さの異なるものを用いることにより排水勾配を設けるようにしている。このため、高さの異なる縦木部材を種々用意しておく必要があり、コスト高である。また、現場寸法に応じた各種の縦木部材を製作するところから、施工に着手するまでに徒に日が経過するという短所もある。
【0005】
本発明は、所望の排水勾配を有した浴室を速やかに構築することができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の浴室床は、浴室の土台又は基礎にきわ根太を取り付け、該きわ根太に根太を取り付け、該根太に床板を取り付けた浴室床であって、該床に排水勾配が形成されるように前記きわ根太を土台又は基礎に取り付けたことを特徴とするものである。
【0007】
請求項2の浴室床は、請求項1において、前記基礎にきわ根太を取り付ける場合には、該基礎にアングルを取り付け、該アングルにきわ根太を固定したことを特徴とするものである。
【0008】
請求項3の浴室床の構築方法は、浴室の土台又は基礎にきわ根太を取り付け、該きわ根太に根太を取り付け、該根太に床板を取り付ける浴室床の構築方法であって、該床に排水勾配が形成されるように前記きわ根太を土台又は基礎に取り付けることを特徴とするものである。
【0009】
請求項4の浴室床の構築方法は、請求項3において、最も水上の隅におけるきわ根太の位置を決定し、他の隅におけるきわ根太の位置をそれに合わせて決定することを特徴とするものである。
【0010】
請求項5の浴室床の構築方法は、請求項4において、決定されたきわ根太の位置を示す墨出しを土台又は基礎に行ない、この墨出しに従ってきわ根太を土台又は基礎に取り付けることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の浴室床及びその構築方法によると、排水勾配を形成するようにきわ根太を土台又は基礎に取り付けるので、種々の高さの異なる縦木部材が不要であり、浴室を速やかに構築することができ、工期が短くなると共に、コストも安いものとなる。
【0012】
なお、基礎に対してはアングルを用いることにより、きわ根太を堅固に取り付けることができる。
【0013】
きわ根太は、上記のように床に排水勾配が形成されるように土台又は基礎に取り付けられるが、この場合、最も水上の隅におけるきわ根太の位置を決定し、他の隅におけるきわ根太の位置をそれに合わせて決定することにより、きわ根太の傾斜を正確に決定することができる。この決定に従って墨出ししてきわ根太を取り付けることにより、設計通りの排水勾配を有した床が構築される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、第1図〜第29図を参照して実施の形態について説明する。
【0015】
第1図は構築された浴室床を有する浴室と、それに隣接するパウダールームの平面図、第2図〜第4図は第1図の矢印II方向〜IV方向の矢視図、第5図〜第7図は構築途中状態における第1図のV〜VII矢視図である。第8図〜第17図は床の構築途中図、第18,19図は第17図のXVIII−XVIII線、XIX−XIX線断面図、第20図〜第25図は洗い場カウンターの構築途中図、第26図〜第28図は浴槽回りの構築途中図、第29図は第26図のXXIX−XXIX線断面図である。
【0016】
第1図〜第4図の通り、浴室1に隣接してパウダールーム2が構築されている。浴室1内には洗い場3、カウンター4、浴槽カウンター5及び浴槽6が設けられている。パウダールーム2内のカウンター7には洗面器8と洋風便器9とが設置されている。浴室1とパウダールーム2との間は、ガラス間仕切り10、腰壁11及び、出入口23(第5図)に設けられた出入口ガラスドア12によって区画されている。
【0017】
この浴室1の構築方法について次に説明する。
【0018】
第5図の通り、基礎20上に土台21が設置され、浴室1の4隅に柱が立設され、必要な箇所に壁下地板24が取り付けられている。第5図の符号22はベタ基礎、23は浴室1とパウダールーム2との出入口を示す。
【0019】
第6図の通り、出入口の土台21の浴室1側の側面に、高さの小さいパネル21Aが取り付けられている。
【0020】
構築予定の床の排水勾配に応じて、最も水上の床高さを決定し、第5図の通り、出入口23側の隅に最水上のきわ根太高さを示すポイントP1をマークする。浴室1の他の3隅については、この排水勾配と、構築予定の床の仕上げ面の高さ、浴槽設置用段落しを考慮してきわ根太高さを決定し、各々の高さを示すポイントをマークする。これらの各マークを結ぶようにきわ根太仕上げラインL1を墨出しする。P1に近い部分では、ラインL1は土台21やパネル24,21Aに付着するが、P1よりも離れた水下側や、浴槽設置部ではラインL1は基礎20の側面に付着することになる。
【0021】
次に、上面と下面が略平行であるきわ根太25,28の上面がラインL1に沿うように取り付ける。
【0022】
出入口23付近では、第6図のようにパネル24,21Aにきわ根太25が取り付けられる。
【0023】
第7図のように、出入口23に隣接した腰壁11付近では、洗い場3よりも一段低くなるように段落しした浴槽設置部を構築するので、基礎20にLアングルよりなるブラケット27をビス留めし、このブラケット27上にきわ根太28を設置し、ビス29で固定する。
【0024】
その他の箇所についても、基礎20又は土台21にきわ根太25,28を取り付ける。なお、きわ根太25は洗い場用であり、きわ根太28は浴槽設置部用である。
【0025】
浴槽1の全周にわたってきわ根太25,28を設置した後、第8図及び第10図のように根太31をその端部をきわ根太25又は28に取り付けることにより設置する。なお、きわ根太25又は28に根太31を取り付けるには、第9図に示す取付金物32を用いる。図示の通り、この取付金物32は、きわ根太25又は28と根太31の側面にビス留めされる。ここでは上面と下面が略平行であるきわ根太25,28を用いたが、上面がラインL1と同じ勾配の斜面で形成されたきわ根太を用いてもよい。
【0026】
第10図の通り、洗い場の最も水下側には、根太31,31間にこれらと直交方向の短い根太(床梁)33を2本架設する。これらの根太33,33間には、第10図のXIII線矢視図である第13図の通り、排水口部材50が設置される。なお、根太31,33同士は前記取付金物32と同様の金物を介して連結される。
【0027】
上記の根太31は、第10図の通り、浴槽設置部の長手方向と平行に架設されている。洗い場と浴槽設置部との境界の根太31の浴槽設置部側の側面には、第10図のXI−XI線断面斜視図である第11図の通り、根太受け桟40がビス留めされる。この根太受け桟40と、浴槽設置部の対向するきわ根太28との間に根太41が複数本(この実施の形態では3本)架設される。
【0028】
第10図の通り、パウダールーム2から最も遠い水下側の根太41と、対向するきわ根太28との間には、短い根太42が架設される。根太41,42の取り付けにも、例えば第11図の通り取付金物32が使用される。根太31,33,41,42を取り付けた後、第12図のように根太31,41の下側の適宜箇所に床束43を立設して根太31,41を支承する。
【0029】
この床束43の上端は、U字形の受け金具44とビス45とを用いて根太31,41に固定される。床束43の下部は、足ボルト46にて構成されており、該足ボルト46によって高さ調整した後、ロックナット47で足ボルト46とロックするようになっている。足ボルト46の下端には、ベタ基礎22上に当接される金属板48が固設されている。
【0030】
また、すべての根太の取り付け後、前述の第13図の通り、根太33,33間に洗い場床排水口部材50を取り付ける。また、第14図に示すように、根太42,42間に浴槽設置部及び浴槽排水用の排水口部材51を取り付ける。
【0031】
この排水口部材50,51の設置後、根太上に床板55を張る。
【0032】
この床板張り作業に際しては、まず洗い場3に床板55を張った後、第15,16図の通り給水及び給湯用の樹脂管56,56を床下に引き回すと共に、樹脂管56,56用の継手57を床板55の水下側部分(第1図のカウンター4の内部)に取り付ける。この継手57は、床板55に突設された開口55aに挿通される。継手57は、そのフランジが開口55aの上縁に重ね合わされ、ビス57aによって固定されている。
【0033】
1対の継手57,57を床板55に取り付けた後、樹脂管56,56の末端をそれぞれ継手57,57に連結する。
【0034】
なお、後述の通り、吹き付け作業を行うため、継手57には第16図の通りキャップ57bを被せておく。
【0035】
第17図は、この継手57の設置及びすべての床板張りが終了した状態を示す平面図である。第18,19図は第17図のXVIII−XVIII線及びXIX−XIX線断面図であり、床板55の根太31への取り付け状態及びきわ根太25への取り付け状態を示している。第18図の55aはビスを示す。
【0036】
その後、洗い場カウンターの前面板の設置位置の下方に角材59(第21図)を取り付ける。
【0037】
このように床板を55張り、継手57の設置及び角材59の取り付け後、床面と、壁の下部とに連続して防水層60(第21図等参照)を吹き付け塗装により形成する。
【0038】
この防止層60は、洗い場床面から約1000cm程度の高さまで形成するのが好ましい。
【0039】
次いで、第20図及び第20図のXXI−XXI線断面図である第21図に示すように、パウダールーム2と反体側の壁パネル24に、水平方向にカウンター天板取付用アングル61をビス61a留めする。また、それに隣接する壁パネル24にカウンター前板取付用アングル62を鉛直方向にビス留めする。さらに、前記角材59の上側に、カウンター前板の下部を支承するためのアングル63をビス63a留めする。
【0040】
次に、第22図の通り、上縁にアングル67が取り付けられたカウンター前板66を該アングル62,63にビス留めにより取り付ける。この際、床板55には排水勾配が存在するので、前板66の水下側には、床勾配補正用のスペーサ65を床板55との間に介在させる。
【0041】
前板66の上端と、該パネル24のアングル61とに跨って、カウンター天板68をビス68aによって取り付ける。このカウンター天板68には、その浴槽設置部側に予めバス水栓70を取り付けておく。第23,24図はバス水栓70の取り付け状況を示す斜視図である。
【0042】
第23図の通り、カウンター天板68にはバス水栓取付用開口68bが設けられている。
【0043】
第24図の通り、バス水栓70は、給水用及び給湯用の配管71,71及び分岐管72,72を介して前記継手57,57に接続されている。分岐管72は継手57に固着されている。分岐管72のもう一方の流出口は、配管74を介して、カウンター前板66に設けられた洗い場用水栓75に接続されている。カウンター天板68は、浴槽設置部側と洗い場側との2枚よりなる。浴槽設置部側のカウンター天板に水栓70が取り付けられている。この浴槽設置部側の天板68を設置し、配管71,74の接続を行った後、洗い場側の天板68を設置する。
【0044】
このカウンター設置工事後、第25図の通り、浴槽エプロンパネルの受け桟(アングル)80,81を、根太31と、カウンター前板66とにビス80a,81aによって取り付ける。また、カウンター前板66には、浴槽設置用天板89(第27図)の支持用の受け桟82をビス留めしておく。
【0045】
第26図の通り、パウダールーム側においても壁パネル11,24にエプロンパネル受け桟83,84,85をビス留めしておく。そして、第27図の通り、受け桟80,81,84に支持させるようにしてエプロンパネル88を配置し、ビス88aでエプロンパネル88を受け桟81,84に留め付ける。第26,27図の通り、受け桟83,85とエプロンパネル88とに支承させるようにして浴槽設置用天板86を設置し、さらに天板89を設置する。
【0046】
次いで、浴槽90を浴槽設置部に配置し、そのフランジ部90aを天板86,89及び前記カウンター天板68の上側に配置する。また、洗い場3の床面等にタイル張り用下地板を張る。
【0047】
その後、洗い場3の床面、カウンター4の前面及び上面、エプロンパネル88、並びに天板86,89の上面にタイル張りする。第28図はエプロンパネル88及び天板89へのタイル張りを示す断面図であり、エプロンパネル88には平物のタイル91が貼り付けられ、上縁には役物タイル92が張り付けられている。浴槽フランジ部90aの下側のタイル91と該フランジ部90aとの隙間にはコーキング93が施されている。
【0048】
浴室1とパウダールーム2との出入口部分の水仕舞い構造の詳細を第29図に示す。なお、第29図は第26図のXXIX−XXIX断面を示している。
【0049】
第29図の通り、浴室1からパウダールーム2にかけて連続して防水層60が設けられている。洗い場の床面には、この防水層60の上に、タイル張り用下地板100を介してタイル101が張り付けられている。パウダールーム2においては、防水層60の上にタイル張り用下地板111を介してタイル112が張り付けられている。
【0050】
出入口23の土台21の上側には、ドアサッシ120が設置されている。前記第1図〜第3図のドア12はこのドアサッシ120に取り付けられている。
【0051】
このようにして構築される浴室1は、洗い場3及び浴槽設置部に適切な排水勾配が設けられている。この排水勾配は、傾斜付けされたきわ根太25,28によってもたらされたものであり、所望の勾配を精度よくつけることができる。また、前記実開平2−9633号の如き種々の高さの異なる縦木部材が不要であるので、低コストであり、受注から施工終了までの日数も少ない。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】実施の形態に係る浴室と、隣接するパウダールームの平面図である。
【図2】図1のII方向の矢視図である。
【図3】図1のIII方向の矢視図である。
【図4】図1のIV方向の矢視図である。
【図5】施工途中における図1のV方向の矢視図である。
【図6】施工途中における図1のVI方向の矢視図である。
【図7】施工途中における浴室の斜視図である。
【図8】施工途中における浴室の斜視図である。
【図9】きわ根太と根太との接合部の斜視図である。
【図10】浴室におけるきわ根太及び根太を示す平面図である。
【図11】根太と根太受け桟との接合部の斜視図である。
【図12】床束の斜視図である。
【図13】床排水口部材の設置状況を示す斜視図である。
【図14】浴槽設置部の排水口部材の設置状況を示す斜視図である。
【図15】給水、給湯用の樹脂管の引き回し構造を示す斜視図である。
【図16】樹脂管用継手の取付状況を示す断面図である。
【図17】床板張り後の浴室の平面図である。
【図18】図17のXVIII−XVIII断面図である。
【図19】図17のXIX−XIX断面図である。
【図20】カウンター設置用アングルの取付状況を示す斜視図である。
【図21】図20のXXI−XXI断面斜視図である。
【図22】カウンター設置状況を示す斜視図である。
【図23】バス水栓の設置状況を示す斜視図である。
【図24】分岐栓及びバス水栓の設置状況を示す斜視図である。
【図25】エプロンパネル用受け桟の設置状況を示す斜視図である。
【図26】浴槽設置部用天板及びエプロンパネル用受け桟の設置状況を示す斜視図である。
【図27】浴槽エプロンの設置状況を示す斜視図である。
【図28】浴槽エプロン及び浴槽の設置状況を示す斜視図である。
【図29】洗い場からパウダールームにかけての断面図である。
【符号の説明】
【0053】
1 浴室
2 パウダールーム
3 洗い場
4 洗い場カウンター
5 浴槽カウンター
6 浴槽
25,28 きわ根太
31,33,41,42 根太
55 床板
【特許請求の範囲】
【請求項1】
浴室の土台又は基礎にきわ根太を取り付け、該きわ根太に根太を取り付け、該根太に床板を取り付けた浴室床であって、
該床に排水勾配が形成されるように前記きわ根太を土台又は基礎に取り付けたことを特徴とする浴室床。
【請求項2】
請求項1において、前記基礎にきわ根太を取り付ける場合には、該基礎にアングルを取り付け、該アングルにきわ根太を固定したことを特徴とする浴室床。
【請求項3】
浴室の土台又は基礎にきわ根太を取り付け、該きわ根太に根太を取り付け、該根太に床板を取り付ける浴室床の構築方法であって、
該床に排水勾配が形成されるように前記きわ根太を土台又は基礎に取り付けることを特徴とする浴室床の構築方法。
【請求項4】
請求項3において、最も水上の隅におけるきわ根太の位置を決定し、他の隅におけるきわ根太の位置をそれに合わせて決定することを特徴とする浴室床の構築方法。
【請求項5】
請求項4において、決定されたきわ根太の位置を示す墨出しを土台又は基礎に行ない、この墨出しに従ってきわ根太を土台又は基礎に取り付けることを特徴とする浴室床の構築方法。
【請求項1】
浴室の土台又は基礎にきわ根太を取り付け、該きわ根太に根太を取り付け、該根太に床板を取り付けた浴室床であって、
該床に排水勾配が形成されるように前記きわ根太を土台又は基礎に取り付けたことを特徴とする浴室床。
【請求項2】
請求項1において、前記基礎にきわ根太を取り付ける場合には、該基礎にアングルを取り付け、該アングルにきわ根太を固定したことを特徴とする浴室床。
【請求項3】
浴室の土台又は基礎にきわ根太を取り付け、該きわ根太に根太を取り付け、該根太に床板を取り付ける浴室床の構築方法であって、
該床に排水勾配が形成されるように前記きわ根太を土台又は基礎に取り付けることを特徴とする浴室床の構築方法。
【請求項4】
請求項3において、最も水上の隅におけるきわ根太の位置を決定し、他の隅におけるきわ根太の位置をそれに合わせて決定することを特徴とする浴室床の構築方法。
【請求項5】
請求項4において、決定されたきわ根太の位置を示す墨出しを土台又は基礎に行ない、この墨出しに従ってきわ根太を土台又は基礎に取り付けることを特徴とする浴室床の構築方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【公開番号】特開2007−63863(P2007−63863A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−251773(P2005−251773)
【出願日】平成17年8月31日(2005.8.31)
【出願人】(000000479)株式会社INAX (1,429)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年8月31日(2005.8.31)
【出願人】(000000479)株式会社INAX (1,429)
【Fターム(参考)】
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