説明

海苔養殖用殺藻殺菌処理剤、殺藻殺菌処理液及び養殖海苔の処理方法

【課題】 海苔養殖中に発生する珪藻・アオノリ等の雑藻類、及び赤腐れ菌・壺状菌・付着細菌等の病害菌を駆除する海苔養殖用殺藻殺菌処理剤、殺藻殺菌処理液及び養殖海苔の処理方法を提供する。
【解決手段】 下記(A)〜(L)の一種又は二種以上と、pH調整剤とを含有する海苔養殖用殺藻殺菌処理剤。
(A)炭素数4〜30の飽和脂肪族アルコ−ル(B)炭素数1〜18の飽和脂肪族アルデヒド(C)炭素数4〜20の不飽和脂肪酸のエステル化合物(D)炭素数1〜10のチオカルボン酸のエステル化合物(E)アニス酸、各エステル化合物(F)炭素数が1〜8のイソチアン酸エステル化合物(G)炭素数が2〜20の脂肪族単一エ−テル(H)炭素数が3〜20の脂肪族飽和ケトン(I)炭素数が20以下のチオエ−テル化合物(J)炭素数が20以下のチオ−ル化合物(K)モノテルペン(L)β−ラクトン

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海苔養殖中に発生する珪藻・アオノリ等の雑藻類、及び赤腐れ菌・壺状菌・付着細菌等の病害菌を駆除する海苔養殖用殺藻殺菌処理剤、殺藻殺菌処理液及び養殖海苔の処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、海苔養殖中に、珪藻、アオノリ等の雑藻が海苔葉体又は海苔網に大量に付着すると海苔の生育が阻害される。また、雑藻類の付着が少なくても雑藻が付着した海苔原藻を製品にすると緑色の斑点が見え、外観を損ねるため、商品価値が低下し、海苔生産者の水揚げ金額が低下することとなる。
更に、海苔養殖中に赤腐れ菌、壺状菌、付着細菌等の発生により海苔が腐敗し乾海苔の生産枚数が低下する場合もある。
【0003】
従来より、海苔に付着する珪藻は、主にリクモフォラ・メロシラ等の珪藻が殆どであったが、最近では、タビュラリア等の珪藻が多量発生付着するようになってきている。
これらの珪藻を完全に駆除する酸処理剤は、現在のところ見出されていないのが現状である。そのため、海苔の成長の抑制・乾海苔製品の品質低下を生じ大きな被害となっている。
【0004】
これらの雑藻、雑菌の駆除を目的として、従来より、酸性の液に、海苔網を浸す酸性処理や海苔網を海上に上げて乾燥させる干出という作業が行われているが、十分な効果が現れていない。
今までに知られている海苔養殖用の処理剤としては、例えば、炭素数1ないし4の飽和脂肪族モノカルボン酸、炭素数2ないし4の飽和または不飽和ジカルボン酸、グリコール酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、クエン酸から成る群から選ばれた有機カルボン酸の一種又は二種以上を有効成分として雑藻を駆除する殺藻剤(例えば、特許文献1参照)や、乳酸及び/又は酢酸とパラオキシ安息香酸エステルとを含有せしめ、短時間でケイソウを駆除することができるケイソウ駆除用処理剤(例えば、特許文献2参照)が知られている。
しかしながら、これらの処理剤では、その駆除効果が未だ十分でない点に課題があるものであった。
【0005】
一方、従来の養殖現場等においては、雑藻及び病害を駆除するために、クエン酸、リンゴ酸等を40〜80%の範囲で含有する製品を100〜120倍希釈液にて10〜30分の処理を行っていた。この場合、海苔網を取り外して処理を行うため、時間と手間がかかりすぎるという課題があった。
現在では、養殖規模の拡大により、海苔網を固定したまま、潜り船を潜らせる酸処理方法が採用されている。この方法では、60秒以下の短時間処理で効果を発揮する必要がある。そのため、クエン酸、リンゴ酸を主成分とする製品を高濃度で使用している。
しかしながら、雑藻及び病害を充分には駆除できていないのが現状であり、120秒以上の時間をかけたり、2回処理を行ったり、濃度を濃くしたりして対応しているが、期待される効果が得られていないのが現状である。
【0006】
最近の海苔養殖では、海苔生産者1軒当たりの養殖網の枚数が更に増加してきており、養殖網1枚当たりの酸処理に要する時間を短くせざるを得なくなり、より短時間で、より低濃度で効果があり、かつ安全な雑藻、病害菌の駆除剤の開発が求められている。
【特許文献1】特開昭50−121425号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【特許文献2】特開平11−286407号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記従来の課題等に鑑み、これを解消するためになされたものであり、海苔自体に害を与えることなく、珪藻、アオノリ等の雑藻類及び赤腐れ菌、壺状菌、付着細菌等の病害菌を短時間に駆除することができる海苔養殖用殺藻殺菌処理剤、殺藻殺菌処理液及び養殖海苔の処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記従来の課題及び現状等について、鋭意検討した結果、海苔自体に害を与えることなく、珪藻、アオノリ等の雑藻類及び赤腐れ菌、壺状菌、付着細菌等の病害菌を短時間に駆除することができる有効成分と、pH調整剤とを含有することにより、上記目的の海苔養殖用殺藻殺菌処理剤、殺藻殺菌処理液及び養殖海苔の処理方法が得られることを見い出し、本発明を完成するに至ったのである。
すなわち、本発明は、次の(1)〜(8)に存する。
(1) 下記(A)〜(L)からなる群から選択される一種又は二種以上と、pH調整剤とを含有することを特徴とする海苔養殖用殺藻殺菌処理剤。
(A)炭素数4〜30の飽和脂肪族アルコ−ル、炭素数3〜30の不飽和脂肪族アルコ−ル、脂環式アルコ−ル、芳香族アルコ−ル、複素環式アルコ−ル(アルコ−ル基が複数存在しても構わない)及びそのエステル化合物
(B)炭素数1〜18の飽和脂肪族アルデヒド、不飽和脂肪族アルデヒド、芳香族アルデヒド、複素環式アルデヒド(アルデヒド基が複数存在しても構わない)
(C)炭素数4〜20の不飽和脂肪酸のエステル化合物
(D)炭素数1〜10のチオカルボン酸のエステル化合物
(E)アニス酸、p−クレゾキシ酢酸、バニリン酸、フェニルプロピオン酸、フェノキシ酢酸、2−フランカルボン酸、4−ヒドロキシ−3−メトキシ桂皮酸、テレフタル酸、イソフタル酸、アントラニル酸、没食子酸の各エステル化合物
(F)一般式R−N=C=S(Rはアルキル基を示す)で示される炭素数が1〜8のイソチアン酸エステル化合物
(G)炭素数が2〜20の脂肪族単一エ−テル、脂肪族混成エ−テル、脂肪族不飽和エ−テル、芳香族エ−テル、環式エ−テル
(H)炭素数が3〜20の脂肪族飽和ケトン、脂肪族不飽和ケトン、脂環式ケトン、芳香族ケトン、複素環式ケトン
(I)一般式R1−S−R2又はR1−S−S−R2(R1、R2はアルキル基を示す)で表される炭素数が20以下のチオエ−テル化合物
(J)一般式R3SH(R3はアルキル基を示す)で表される炭素数が20以下のチオ−ル化合物
(K)モノテルペン化合物、セスキテルペン化合物、ジテルペン化合物
(L)β−ラクトン化合物、γ−ラクトン化合物、δ−ラクトン化合物
(2) 前記pH調整剤が、有機酸及び無機酸から成る群から選択された一種以上であることを特徴とする上記(1)に記載の海苔養殖用殺藻殺菌処理剤。
(3) 溶解助剤が含有されていることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の海苔養殖用殺藻殺菌処理剤。
(4) 前記溶解助剤がプロピレングリコール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブタンジオ−ル、ポリブチレングリコール、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、グリセリン脂肪酸エステル、蔗糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコ−ル脂肪酸エステル、レシチン、ポリビニルアルコ−ル、ポリビニルピロリドンの群の中から選ばれる少なくとも1種以上であることを特徴とする上記(3)に記載の海苔養殖用殺藻殺菌処理剤。
(5) 上記(1)乃至(3)の何れか一つに記載の殺藻殺菌剤が、水及び/又は海水で希釈されてなることを特徴とする海苔養殖用殺藻殺菌処理液。
(6) pHが1〜4に調整されてなることを特徴とする上記(4)に記載の海苔養殖用殺藻殺菌処理液。
(7) 無機塩類を添加することを特徴とする上記(5)又は(6)に記載の海苔養殖用殺藻殺菌処理液。
(8) 上記(5)乃至(7)の何れか一つに記載の殺藻殺菌処理液と、海苔又は海苔が付着した養殖具とを所定時間接触させることを特徴とする養殖海苔の処理方法。
【発明の効果】
【0009】
請求項1及び2に係る発明では、養殖海苔に発生する病害や珪藻などの雑藻を駆除することができる海苔養殖用殺藻殺菌処理剤を提供できる。
請求項3及び4に係る発明では、水に溶け難い成分を水に溶かすことができるので、養殖海苔に発生する病害や珪藻等の雑藻を駆除できる海苔養殖用殺藻殺菌処理剤を提供できる。
請求項5及び6に係る発明では、養殖海苔に発生する病害や珪藻等の雑藻を駆除できる海苔養殖用殺藻殺菌処理液を提供できる。
請求項7に係る発明では、無機塩類を添加することにより養殖海苔に発生する病害や珪藻等の雑藻をより効果的に駆除できる海苔養殖用殺藻殺菌処理液を提供できる。
請求項8に係る発明では養殖海苔に発生する病害や珪藻等の雑藻を駆除できる養殖海苔の処理方法を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の実施の形態を発明毎に詳しく説明する。
本発明の海苔養殖用殺藻殺菌処理剤は、下記(A)〜(L)からなる群から選択される一種又は二種以上と、pH調整剤とを含有することを特徴とするものである。
(A)炭素数4〜30の飽和脂肪族アルコ−ル、炭素数3〜30の不飽和脂肪族アルコ−ル、脂環式アルコ−ル、芳香族アルコ−ル、複素環式アルコ−ル(アルコ−ル基が複数存在しても構わない)及びそのエステル化合物
(B)炭素数1〜18の飽和脂肪族アルデヒド、不飽和脂肪族アルデヒド、芳香族アルデヒド、複素環式アルデヒド(アルデヒド基が複数存在しても構わない)
(C)炭素数4〜20の不飽和脂肪酸のエステル化合物
(D)炭素数1〜10のチオカルボン酸のエステル化合物
(E)アニス酸、p−クレゾキシ酢酸、バニリン酸、フェニルプロピオン酸、フェノキシ酢酸、2−フランカルボン酸、4−ヒドロキシ−3−メトキシ桂皮酸、テレフタル酸、イソフタル酸、アントラニル酸、没食子酸のエステル化合物
(F)一般式R−N=C=S(Rはアルキル基を示す)で示される炭素数が1〜8のイソチアン酸エステル化合物
(G)炭素数が2〜20の脂肪族単一エ−テル、脂肪族混成エ−テル、脂肪族不飽和エ−テル、芳香族エ−テル、環式エ−テル
(H)炭素数が3〜20の脂肪族飽和ケトン、脂肪族不飽和ケトン、脂環式ケトン、芳香族ケトン、複素環式ケトン
(I)一般式R1−S−R2又はR1−S−S−R2(R1、R2はアルキル基を示す)で表される炭素数が20以下のチオエ−テル化合物
(J)一般式R3SH(R3はアルキル基を示す)で表される炭素数が20以下のチオ−ル化合物
(K)モノテルペン、セスキテルペン、ジテルペン化合物
(L)β−ラクトン、γ−ラクトン、δ−ラクトン化合物
【0011】
本発明において、上記(A)成分〜(L)成分は、海苔自体に害を与えることなく、珪藻、アオノリ等の雑藻類及び赤腐れ菌、壺状菌、付着細菌等の病害菌を短時間に駆除することができる有効成分となるものである。具体的に用いることができる(A)成分〜(L)成分の化合物等を以下に詳述する。
本発明に用いる(A)成分の炭素数4〜30の飽和脂肪族アルコ−ルとしては、例えば、ブチルアルコ−ル、イソブチルアルコ−ル、sec−ブチルアルコ−ル、tert−ブチルアルコ−ル、n−アミルアルコ−ル、イソアミルアルコ−ル、ヘキシルアルコ−ル、ヘプチルアルコ−ル、オクチルアルコ−ル、カプリルアルコ−ル、ノニルアルコ−ル、デシルアルコ−ル、ウンデシルアルコ−ル、ラウリルアルコ−ル、トリデシルアルコ−ル、2,4−ジメチル−4−ノナノ−ル、メリシルアルコ−ル、1,10−デカンジオ−ル、ブチルセルソルブなどを例示できる。
また、用いることができる炭素数3〜30の不飽和脂肪族アルコ−ルとしては、例えば、アリルアルコ−ル、クロチルアルコ−ル、シトロネロ−ル、ゲラニオ−ル、プロパルギルアルコ−ル、ウンデシレンアルコ−ルなどを例示でき、また、フィト−ルなどのジテルペンアルコ−ルなどを例示できる。
用いることができる脂環式アルコ−ルとしては、例えば、シクロペンタノ−ル、シクロヘキサノ−ル、シクロヘキシルエタノ−ル、ボルネオ−ルなどを例示でき、芳香族アルコ−ルとしては、例えば、ベンジルアルコ−ル、桂皮アルコ−ルなどを例示でき、複素環式アルコ−ル(アルコ−ル基が複数存在しても構わない)としては、例えば、フルフリルアルコ−ルなどを例示でき、また、カルベオ−ルなどのモノテルペンアルコ−ル、ビサボノ−ルなどのセスキテルペンアルコ−ルも例示できる。
以上例示した(A)成分におけるアルコ−ル類のエステルとしては、例えば、ギ酸エステル、酢酸エステル、プロピオン酸エステルなどが例示できるが特に限定されるものではない。
【0012】
本発明に用いる(B)成分の炭素数が1〜18の飽和脂肪族アルデヒドとしては、例えば、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、バレルアルデヒド、イソバレリンアルデヒド、ピバリンアルデヒド、カプロンアルデヒド、ヘプトアルデヒド、カプリルアルデヒド、ペラルゴンアルデヒド、カプリンアルデヒド、ウンデシルアルデヒド、ラウリンアルデヒド、トリデシルアルデヒド、ステアリンアルデヒド、グリオキザ−ル、スクシンジアルデヒド、グルタルジアルデヒドなどを例示できる。
また、用いる不飽和脂肪族アルデヒドとしては、炭素数が3〜18の不飽和脂肪族アルデヒドが挙げられ、例えば、アクロレイン、クロトンアルデヒド、プロピオ−ルアルデヒド、シトラ−ルなどを例示でき、芳香族アルデヒドとしては、炭素数が7〜18の芳香族アルデヒドが挙げられ、例えば、ベンズアルデヒド、o−トルアルデヒド、サリチルアルデヒド、桂皮アルデヒド、α−ナフトアルデヒドなどを例示できる。
更に、用いる複素環式アルデヒド(アルデヒド基が複数存在しても構わない)としては、炭素数が4〜18の複素環式アルデヒド(アルデヒド基が複数存在しても構わない)が挙げられ、例えば、フルフラ−ル、シクロシトラ−ルなどを例示でき、シペロンなどのセスキテルペンアルデヒドなども例示できる。
【0013】
本発明に用いる(C)成分の炭素数4〜20の不飽和脂肪酸のエステル化合物としては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸ヘキサデシル、アクリルアミド、アクリルニトリル、クロトン酸エチル、クロトンアミド、クロトンニトリル、イソクロトン酸メチル、イソクロトン酸エチル、イソクロトンアミド、イソクロトンニトリル、ペンテン酸メチル、ペンテンアミド、ヘキセン酸メチル、ヘキセンアミド、ヘプテン酸メチル、ヘプテンアミド、オクテン酸メチル、オクテンアミド、ノネン酸メチル、ノネンアミド、デセン酸メチル、デセンアミド、ウンデシレン酸メチル、ウンデシレンアミド、オレイン酸メチル、オレインアミドなどを例示できる。
【0014】
本発明に用いる(D)成分の炭素数1〜10のチオカルボン酸のエステル化合物としては、例えば、チオグリコ−ル酸エチル、チオグリコ−ルアミド、チオ酢酸メチル、チオ酢酸エチル、チオ酢酸フェニル、チオ酢酸アミド、チオリンゴ酸ジエチル、チオリンゴ酸モノアミド、チオ乳酸エチル、チオ乳酸アミド、チオプロピオン酸メチル、チオプロピオン酸エチル、チオプロピオンアミド、チオプロピオン酸アニリド、チオ安息香酸メチル、チオ安息香酸エチル、チオ安息香酸アミド、チオサリチル酸メチル、チオサリチル酸エチル、チオジグリコ−ル酸ジメチル、チオヒドロアクリル酸メチルなどを例示できる。
【0015】
本発明に用いる(E)成分としては、アニス酸、p−クレゾキシ酢酸、バニリン酸、フェニルプロピオン酸、フェノキシ酢酸、2−フランカルボン酸、4−ヒドロキシ−3−メトキシ桂皮酸、テレフタル酸、イソフタル酸、アントラニル酸、没食子酸の各エステル化合物が挙げられる。各エステル化合物としては、例えば、メチルエステル、エチルエステル、酸アミド化合物などが例示できる。
本発明に用いる(F)成分の一般式R−N=C=Sで示される炭素数が1〜8のイソチアン酸エステル化合物としては、例えば、イソチオシアン酸アリル、イソチオシアン酸ベンジルなどを例示できる。
【0016】
本発明に用いる(G)成分の炭素数が2〜20の脂肪族単一エ−テルとしては、例えば、メチルエ−テル、イソアミルエ−テルなどを例示できる。また、脂肪族混成エ−テルとしては、炭素数が3〜20の脂肪族混成エ−テルが挙げられ、例えば、メチルエチルエ−テル、デカナ−ルプロピレングリコ−ルアセタ−ルなどが例示できる。更に、脂肪族不飽和エ−テルとしては、炭素数が4〜20の脂肪族不飽和エ−テルが挙げられ、例えば、ビニルエ−テル、ヒドロキシシトロネラ−ルジブチルアセタ−ルなどを例示でき、芳香族エーテルとしては、炭素数7〜20の芳香族エ−テルが挙げられ、例えば、アニソ−ル、α−ナフチルエ−テルなどを例示でき、環式エーテルとしては、炭素数3〜20の環式エ−テル化合物が挙げられ、例えば、酸化エチレン、ジオキサンなどを例示できる。
【0017】
本発明に用いる(H)成分の炭素数が3〜20の脂肪族飽和ケトンとしては、例えば、アセトン、ヘプタノン、デカノンなどを例示でき、脂肪族不飽和ケトンとしては、炭素数4〜20の脂肪族不飽和ケトンが挙げられ、例えば、メチルビニルケトン、メチルヘプテノンなどを例示できる。
また、用いる脂環式ケトンとしては、炭素数4〜20の脂環式ケトンが挙げられ、例えば、シクロブタノン、シクロヘキサノンなどを例示でき、芳香族ケトンとしては、炭素数8〜20の芳香族ケトンが挙げられ、例えば、アセトフェノン、2−アセトナフトンなどを例示でき、複素環式ケトンとしては、炭素数6〜20の複素環式ケトンが挙げられ、例えば、アセトチエノン、2−アセトフロンなどを例示できる。
【0018】
本発明に用いる(I)成分の一般式R1−S−R2またはR1−S−S−R2で表される炭素数が20以下のチオエ−テル化合物(R1、R2は共にアルキル基)としては、例えば、メチルエチルスルフィド、ジメチルジスルフィド、チオフェン、ベンジルメチルスルフィド、ベンジルプロピルジスルフィド、ジフルフリルスルフィドなどを例示できる。
本発明に用いる(J)成分の一般式R1SHで表される炭素数が20以下のチオ−ル化合物(R1はアルキル基)としては、例えば、メチルメルカプタン、ヘキサデカンチオ−ル、フルフリルメルカプタン、2−ナフタレンチオ−ル、1,6ヘキサンジチオ−ル、チオゲラニオ−ルなどを例示できる。
本発明に用いる(K)成分のモノテルペン化合物としては、例えば、ミルセン、リモネン、サビネンなどを例示でき、セスキテルペン化合物としては、例えば、ビサボレン、クルクメン、セスキベニヘンなどを例示でき、ジテルペン化合物としては、例えば、カンホレンミレンなどを例示できる。
本発明に用いる(L)成分のβ−ラクトン化合物としては、例えば、プロピオラクトン、γ−ラクトン化合物としては、例えば、ブチロラクトン、δ−ラクトン化合物としては、例えば、γ−バレロラクトンを例示できる。
【0019】
本発明では、上記(A)成分〜(L)成分の化合物から選択される一種類を単独で含有することができ、また、二種以上を混合して含有させることもできる。
上記(A)成分〜(L)成分の化合物において、殺藻殺菌効果に更に優れる点、経済性の点から、特に好ましくは、(A)成分中ではオクチルアルコール、カプリルアルコール、ノニルアルコール、デシルアルコール、ウンデシルアルコール、ラウリルアルコール、1,10−デカンジオール、ブチルセルソルブ、桂皮アルコール、フルフリルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ギ酸デシル、ギ酸ウンデシル、ギ酸ラウリル、ギ酸シトロネル、ギ酸ボンネル、酢酸フルフリル、酢酸テトラヒドロフルフリル、酢酸ゲラニル、酢酸シトロネル、プロピオン酸アミル、シトロネロール、ウンデシレンアルコールの使用が望ましく、(B)成分中では、カプリルアルデヒド、ペラルゴンアルデヒド、カプリンアルデヒド、ウンデシルアルデヒド、スクシンジアルデヒド、グルタルジアルデヒド、サリチルアルデヒド、桂皮アルデヒド、α−ナフトアルデヒド、フルフラール、シクロシトラールの使用が望ましく、(C)成分中ではデセン酸メチル、ウンデシレン酸メチルの使用が望ましく、(D)成分中では、チオ安息香酸メチル、チオサリチル酸メチルの使用が望ましく、(E)成分中では、2−フランカルボン酸メチル、4−ヒドロキシ−3−メトキシ桂皮酸メチルの使用が望ましく、(G)成分中では、デカナールプロピレングリコールアセタール、ヒドロキシシトネラールジブチルアセタールの使用が望ましく、(H)成分中では、デカノン、アセトフェノン、2−アセトナフトンの使用が望ましく、(I)成分中では、チオフェノン、ジフルフリルスルフィドの使用が望ましく、(J)成分中では、フルフリルメルカプトン、チオゲラニオールの使用が望ましく、(K)成分中では、ピサボレン、クルクメン、セスキベニヘンの使用が望ましい。
上記した(A)成分〜(L)成分の化合物には、更に必要に応じて後述するような各種添加剤や溶媒が添加されて本発明に係る処理剤とされる。
【0020】
本発明において、上記(A)成分〜(L)成分の化合物の合計含有量は、使用するpH調整剤(酸成分の種類又はその組み合わせ)に応じて適宜調整することができるが、通常の場合、処理剤全量中、0.01〜10重量%、好ましくは、0.1〜5重量%、更に好ましくは、0.1〜3重量%とすることが望ましい。
この合計含有量が0.01重量%未満であると、目的の殺藻殺菌効果を発揮することができず、一方、10重量%を超えると、効果が認められても海苔が傷む場合があり、好ましくない。
【0021】
上記した特定の(A)成分〜(L)成分の化合物に加えて、本発明に係る殺藻殺菌処理剤には、必須成分としてpH調整剤が含有される。
本発明では、pH調整剤を含有することによって、後述する処理液のpHを調整することができる。更に、上記した特定の化合物の中には、水又は海水に対する溶解度が小さく、十分水又は海水に溶解しない場合があるため、pH調整剤を含有することによって、水又は海水に溶解し難い特定の化合物、例えば、シクロペンタノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール、桂皮アルコール、ギ酸カプリル、ギ酸ノニル、ギ酸デシル、ギ酸ウンデシル、ギ酸ラウリル、ギ酸シトロネル、ギ酸ベンジル、酢酸ゲラニル、酢酸シトロネル、プロピオン酸ゲラニル、プロピオン酸シトロネル、カプロンアルデヒド、カプリルアルデヒド、グルタルジアルデヒド、シトラール、ベンズアルデヒド、サリチルアルデヒド、桂皮アルデヒド、ノネン酸メチル、デセン酸メチル、ウンデシン酸メチル、オレイン酸メチル、チオグリコール酸エチル、チオ酢酸メチル、チオ乳酸エチル、チオ安息香酸メチル、チオサリチル酸メチル、フェノキシ酢酸メチル、2−フランカルボン酸メチル、4−ヒドロキシ−3−メトキシ桂皮酸メチル、没食子酸メチル、チオゲラニオール、プロピオラクトンなどの溶解性を高めることができる。
【0022】
用いることができるpH調整剤としては、有機酸及び/又は無機酸が挙げられる。
有機酸としては、例えば、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、乳酸、プロピオン酸、フマル酸、シュウ酸、コハク酸、ギ酸、酢酸、グルコン酸、アジピン酸、フィチン酸、ケトグルタル酸、イタコン酸などを例示できる。また、無機酸としては、例えば、リン酸、塩酸、硫酸、硝酸などを例示できる。
これらのpH調整剤は、一種を単独で含有させることもでき、二種以上を混合して含有させることもできる。
用いるpH調整剤の中では、好ましくは、乳酸、酢酸、プロピオン酸が望ましい。この三種の有機酸は、養殖海苔に発生する病害及び雑藻の駆除効果を有するためである。また、本発明に係る上記した(A)成分〜(L)成分の化合物を溶解する能力が高いため、本発明に係る処理剤の効果を高めることができる。
【0023】
用いるpH調整剤の含有量は、特に限定されないが、有機酸を含有する場合、処理剤全量中、0.1〜90重量%、好ましくは、10〜90重量%が望ましい。無機酸を含有する場合、0.1〜20重量%とされる。
本発明に係る処理剤中の有機酸と無機酸は上述の各濃度を超えて含有すると、養殖海苔に発生する病害や雑藻の駆除効果は高くなるが、海苔が傷む場合がある。
【0024】
本発明に係る海苔養殖用殺藻殺菌処理剤には、上記(A)成分〜(L)成分の化合物、pH調整剤以外に、必要に応じて、溶解助剤を含有させることができる。
本発明に係る上記(A)成分〜(L)成分の化合物は、pH調整剤の含有量が低い場合、水又は海水に溶けにくい場合がある。このような場合に溶解助剤を含有させることで、水に溶けにくい特定の化合物、例えば、シクロペンタノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール、桂皮アルコール、ギ酸カプリル、ギ酸ノニル、ギ酸デシル、ギ酸ウンデシル、ギ酸ラウリル、ギ酸シトロネル、ギ酸ベンジル、酢酸ゲラニル、酢酸シトロネル、プロピオン酸ゲラニル、プロピオン酸シトロネル、カプロンアルデヒド、カプリルアルデヒド、グルタルジアルデヒド、シトラール、ベンズアルデヒド、サリチルアルデヒド、桂皮アルデヒド、ノネン酸メチル、デセン酸メチル、ウンデシレン酸メチル、オレイン酸メチル、チオグリコール酸エチル、チオ酢酸メチル、チオ乳酸エチル、チオ安息香酸メチル、チオサリチル酸メチル、フェノキシ酢酸メチル、2−フランカルボン酸メチル、4−ヒドロキシ−3−メトキシ桂皮酸メチル、没食子酸メチル、チオゲラニオール、プロピオラクトンを水又は海水に溶かすことができる。
用いることができる溶解助剤としては、例えば、プロピレングリコール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブタンジオ−ル、ポリブチレングリコール、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、グリセリン脂肪酸エステル、蔗糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコ−ル脂肪酸エステル、レシチン、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリビニルアルコ−ル、ポリビニルピロリドンなどを例示することができる。好ましくは、溶解助剤としての優れた効果、安全性、経済性の点から、ポリグリセリン脂肪酸エステル、エチルアルコール、ソルビタン脂肪酸エステルの使用が望ましい。
これらの溶解助剤を含有させる場合、その含有量は、特に限定されないが、処理剤全量中、好ましくは、0.01〜50重量%、更に好ましくは、0.01〜20重量%とすることが望ましい。
【0025】
また、本発明の海苔養殖用殺藻殺菌処理剤には、必要により、肥料成分として、アミノ酸、塩安、硝酸ソーダ、硝安、硝酸カリウム、リン酸ソーダ、燐安、リン酸カリウム、硫安、糖類等を適宜料含有することもできる。
以上説明した本発明に係る海苔養殖用殺藻殺菌処理剤は、実際に養殖中の海苔を処理する場合には、水又は海水などで希釈し処理液として使用される。
このように構成される本発明の海苔養殖用殺藻殺菌処理剤では、養殖海苔に発生する病害や珪藻などの雑藻を効果的に駆除することができる。また、溶解助剤を含有することにより、水に溶け難い成分を水に溶かすことができるので、養殖海苔に発生する病害や珪藻等の雑藻を更に効果的に駆除することができる。
【0026】
本発明に係る海苔養殖用殺藻殺菌処理液は、上述の殺藻殺菌処理剤を水又は海水などで希釈することにより調製される。
処理剤の希釈は、処理方法、海水等の温度、海苔の状況に応じて調製することができ、上記(A)成分〜(L)成分の化合物の合計含有量が、処理液全量中に、0.0001〜0.2重量%、好ましくは、0.001〜0.05重量%となるように、海水などで希釈することにより調製される。
また、本発明に係る処理液のpHは、含有する上記(A)成分〜(L)成分の化合物やpH調整剤の種類、或いは含有量や処理方法の違いによって適宜希釈調整することができるが、本発明の効果を更に発揮せしめる点から、好ましくは、pH1〜4程度、更に好ましくは、1〜2.5に調整することが好ましい。
この処理液のpHが1未満であると、海苔葉体や周囲の環境に悪影響を及ぼす場合があり、一方、4を越えると、本発明の効果を発揮できない場合がある。
更に、溶解助剤を含有する場合は、溶解助剤の含有量は、処理液全量中、0.0001〜0.4重量%となるよう調製される。
【0027】
本発明に係る海苔養殖用殺藻殺菌処理液には、更に、無機塩類を含有することができる。無機塩類を含有することで、養殖海苔に発生する病害や雑藻の駆除効果が更に高くなり、また、海苔への傷害を更に軽減することができる。
用いることができる無機塩類としては、具体的には、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、塩化カリウム、塩化アンモニウム、硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸カリウム、硫酸アンモニウム、硝酸ナトリウム、硝酸マグネシウム、硝酸カルシウム、硝酸カリウム、硝酸アンモニウム、塩化鉄、硫酸鉄、硝酸鉄、リン酸ナトリウム、リン酸マグネシウム、リン酸カルシウム、リン酸カリウム、リン酸アンモニウムの中から選ばれた1種または2種以上のものを用いることができる。
なお、無機塩類を添加する場合、処理液の比重を1.03〜1.20の範囲に調整することが好ましい。この比重が1.03未満の場合には、本発明に係る処理液の効果が発現し難くなることがあり、一方、比重が1.20を越えると、比重が高くなり過ぎて海苔が傷む場合がある。
このように構成される海苔養殖用殺藻殺菌処理液では、養殖海苔に発生する病害や珪藻等の雑藻を効果的に駆除できる。また、無機塩類を添加することにより、養殖海苔に発生する病害や珪藻等の雑藻をより更に効果的に駆除することができる。
【0028】
次に、本発明の養殖海苔の処理方法は、上記構成となる殺藻殺菌処理液と、海苔又は海苔が付着した養殖具とを所定時間接触させることを特徴とするものであり、例えば、上記構成となる殺藻殺菌処理液中に海苔又は海苔が付着した養殖具を5秒〜2分間浸漬することにより処理することができる。処理手段等としては、従来から行われている手段等を用いることができ、例えば、モグリ船による処理(海苔の養殖網の下に船を潜らせて処理液に網を素通ししながら行う処理)、小型船による素通し処理などが挙げられる。
本発明の処理方法によれば、養殖海苔に発生する病害や珪藻などの雑藻を短時間で、効果的に駆除することができるものとなる。
【実施例】
【0029】
次に、本発明を実施例に基づき説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0030】
〔試験例1〜25〕
(試料の調製)
海水に、下記表1〜25に示したように処理剤成分〔上記(A)成分〜(L)成分の化合物、pH調整剤、溶解助剤〕を添加して溶解混合して、各pHとなる海苔養殖用殺藻殺菌処理液を調製した。
下記表1〜25に示す各表において、最上段の項目の下欄が比較例となる殺藻殺菌処理液の組成であり、この比較例の下欄に記載する各成分の組み合わせの組成が各実施例となる殺藻殺菌処理液である。
調製した実施例及び比較例の各処理液で、珪藻が付着した海苔、又は赤腐れ菌が感染した海苔を所定時間処理して、珪藻又は赤腐れ菌の駆除効果と海苔の傷害を評価した。
珪藻又は赤腐れ菌の駆除評価は、
で評価し、珪藻又は赤腐れ菌が付着していない状態(珪藻又は赤腐れ菌が駆除された状態)になるまでの処理時間(秒)で示し、また、海苔の傷害は、海苔が傷まない処理時間(秒)で評価した。
これらの結果を下記表1〜25に示す。
【0031】
(試験例1)
【表1】

【0032】
(試験例2)
【表2】

【0033】
(試験例3)
【表3】

【0034】
(試験例4)
【表4】

【0035】
(試験例5)
【表5】

【0036】
(試験例6)
【表6】

【0037】
(試験例7)
【表7】

【0038】
(試験例8)
【表8】

【0039】
(試験例9)
【表9】

【0040】
(試験例10)
【表10】

【0041】
(試験例11)
【表11】

【0042】
(試験例12)
【表12】

【0043】
(試験例13)
【表13】

【0044】
(試験例14)
【表14】

【0045】
(試験例15)
【表15】

【0046】
(試験例16)
【表16】

【0047】
(試験例17)
【表17】

【0048】
(試験例18)
【表18】

【0049】
(試験例19)
【表19】

【0050】
(試験例20)
【表20】

【0051】
(試験例21)
【表21】

【0052】
(試験例22)
【表22】

【0053】
(試験例23)
【表23】

【0054】
(試験例24)
【表24】

【0055】
(試験例25)
【表25】

【0056】
上記表1〜25の結果から明らかなように、本発明範囲となる処理液〔表1及び2の上記(A)成分〜(L)成分の化合物+pH調整剤、表3〜25の上記(A)成分〜(L)成分の化合物+pH調整剤+溶解助剤〕は、本発明の範囲外となる処理液〔表1及び2のpH調整剤、表3〜25のpH調整剤+溶解助剤〕に較べて、短時間で赤腐れ駆除効果及び珪藻駆除効果に優れた海苔養殖用殺藻殺菌処理液となることが判明した。
【0057】
次に、本発明に係る海苔養殖用殺藻殺菌処理剤の処方例を示す。
(処方例1)
80%酢酸40g、80%乳酸12.5g、デシルアルコール0.3gを水47.2gに添加し溶解せしめ、均一に混合して製剤とした。
【0058】
(処方例2)
80%酢酸40g、80%乳酸12.5g、へプトアルデヒド0.3g、ポリグリセリン脂肪酸エステル1gを水46.2gに添加し溶解せしめ、均一に混合して製剤とした。
【0059】
(処方例3)
80%酢酸40g、80%乳酸12.5g、オレイン酸メチル0.3g、ポリグリセリン脂肪酸エステル1gを水46.2gに添加し溶解せしめ、均一に混合して製剤とした。
【0060】
(処方例4)
80%酢酸40g、80%乳酸12.5g、チオ乳酸エチル0.3g、ポリグリセリン脂肪酸エステル1gを水46.2gに添加し溶解せしめ、均一に混合して製剤とした。
【0061】
(処方例5)
80%酢酸40g、80%乳酸12.5g、プロピオラクトン0.3g、ポリグリセリン脂肪酸エステル1gを水46.2gに添加し溶解せしめ、均一に混合して製剤とした。
【0062】
(試験例26)
上記の処方例1〜5の処理剤を、海水で100倍希釈して処理液を調製した。
この処理液を用いて、上記試験例1等と同様に、珪藻又は赤腐れ菌の駆除効果と海苔の傷害を評価した。これらの結果を下記表26に示す。
【0063】
【表26】

【0064】
上記表26の結果から明らかなように、上記処方例1〜5の処理剤を希釈した各処理液も短時間で赤腐れ駆除効果及び珪藻駆除効果に優れたものであることが判明した。
【0065】
(試験例27)
更に、本発明に係る無機塩類を添加した殺藻殺菌処理液の実施例を示す。
下記表27に示す各組成により無機塩類を添加した殺藻殺菌処理液を調製し、上記試験例1等と同様に、珪藻又は赤腐れ菌の駆除効果と海苔の傷害を評価した。これらの結果を下記表27に示す。
【0066】
【表27】

【0067】
上記表27の結果から明らかなように、無機塩類を添加した殺藻殺菌処理液も短時間で赤腐れ駆除効果及び珪藻駆除効果に優れたものであることが判明した。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)〜(L)からなる群から選択される一種又は二種以上と、pH調整剤とを含有することを特徴とする海苔養殖用殺藻殺菌処理剤。
(A)炭素数4〜30の飽和脂肪族アルコ−ル、炭素数3〜30の不飽和脂肪族アルコ−ル、脂環式アルコ−ル、芳香族アルコ−ル、複素環式アルコ−ル(アルコ−ル基が複数存在しても構わない)及びそのエステル化合物
(B)炭素数1〜18の飽和脂肪族アルデヒド、不飽和脂肪族アルデヒド、芳香族アルデヒド、複素環式アルデヒド(アルデヒド基が複数存在しても構わない)
(C)炭素数4〜20の不飽和脂肪酸のエステル化合物
(D)炭素数1〜10のチオカルボン酸のエステル化合物
(E)アニス酸、p−クレゾキシ酢酸、バニリン酸、フェニルプロピオン酸、フェノキシ酢酸、2−フランカルボン酸、4−ヒドロキシ−3−メトキシ桂皮酸、テレフタル酸、イソフタル酸、アントラニル酸、没食子酸の各エステル化合物
(F)一般式R−N=C=S(Rはアルキル基を示す)で示される炭素数が1〜8のイソチアン酸エステル化合物
(G)炭素数が2〜20の脂肪族単一エ−テル、脂肪族混成エ−テル、脂肪族不飽和エ−テル、芳香族エ−テル、環式エ−テル
(H)炭素数が3〜20の脂肪族飽和ケトン、脂肪族不飽和ケトン、脂環式ケトン、芳香族ケトン、複素環式ケトン
(I)一般式R1−S−R2又はR1−S−S−R2(R1、R2はアルキル基を示す)で表される炭素数が20以下のチオエ−テル化合物
(J)一般式R3SH(R3はアルキル基を示す)で表される炭素数が20以下のチオ−ル化合物
(K)モノテルペン化合物、セスキテルペン化合物、ジテルペン化合物
(L)β−ラクトン化合物、γ−ラクトン化合物、δ−ラクトン化合物
【請求項2】
前記pH調整剤が、有機酸及び無機酸からなる群から選択された一種以上であることを特徴とする請求項1に記載の海苔養殖用殺藻殺菌処理剤。
【請求項3】
溶解助剤が含有されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の海苔養殖用殺藻殺菌処理剤。
【請求項4】
前記溶解助剤がプロピレングリコール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブタンジオ−ル、ポリブチレングリコール、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、グリセリン脂肪酸エステル、蔗糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコ−ル脂肪酸エステル、レシチン、ポリビニルアルコ−ル、ポリビニルピロリドンの群の中から選ばれる少なくとも1種以上であることを特徴とする請求項3に記載の海苔養殖用殺藻殺菌処理剤。
【請求項5】
請求項1乃至3の何れか一つに記載の殺藻殺菌処理剤が、水及び/又は海水で希釈されてなることを特徴とする海苔養殖用殺藻殺菌処理液。
【請求項6】
pHが1〜4に調整されてなることを特徴とする請求項4に記載の海苔養殖用殺藻殺菌処理液。
【請求項7】
無機塩類を添加することを特徴とする請求項5又は6に記載の海苔養殖用殺藻殺菌処理液。
【請求項8】
請求項5乃至7の何れか一つに記載の殺藻殺菌処理液と、海苔又は海苔が付着した養殖具とを所定時間接触させることを特徴とする養殖海苔の処理方法。


【公開番号】特開2007−45797(P2007−45797A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−234762(P2005−234762)
【出願日】平成17年8月12日(2005.8.12)
【出願人】(000208787)第一製網株式会社 (24)
【Fターム(参考)】