説明

消化器疾患のためのハーブ組成物

本発明は、過敏性腸症候群および下痢などの機能的消化器疾患を治療するための、下痢止め作用を有する新規なハーブの剤形を提供する。下痢止め作用を有するこのハーブ製剤は、シサンペロス・パレイラ、マンギフェラ・インディカ、シナモマム・スピーシーズおよびブチャナニア・ランザンの煎じ汁と共に、シロップ、錠剤、カプセルおよび懸濁液用に準備された粉末などの経口投与用の製剤を作製するための通常の添加物を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、健康を保護する下痢止め作用を有するハーブ組成物の開発に関する。
【背景技術】
【0002】
下痢とは、消化管の一以上の機能の減退を原因とする状態である。消化管は、広範囲で予測できない量の食物を受け取り、混合し、消化しそして極めて高い効率で吸収する。消化管の末端で取り残される食物の混合物は、小さくて都合の良い量の大便として最後に排出される。一以上の上記のプロセスが減退する結果、不便でかさばり、しかも液状の便が頻繁に通過することとなり、これは「下痢」と称される。下痢は、軟便、液状便または水様便の通過としても定義される。下痢は次のケースのいずれかによって生じる。異常な運動、腸透過性の障害またはヒトの内臓における浸透圧的に活性な非吸収性物質の存在。大まかには、急性の下痢と慢性の下痢とに分類される。急性の下痢(胃腸炎)は主に感染性である;病理学的なメカニズムは、毒(予め生じた毒、エンテロトキシンおよびサイトトキシン)の生産、腸の癒着、粘膜の(軽微な、可変性のおよび深刻な)侵入ならびに全身感染症(ウイルス性肝炎)かもしれない。その他の種々の感染性因子を、非日和見病原体(シゲラ(Shigella)、サルモネラ(Salmonella)、イー・ヒストリチカ(E.histolytica)、ジアルジア・ランブリア(Giardia lamblia)など)、日和見感染症(原虫およびウイルス)、ヒト免疫不全ウイルス(細菌)として分類してもよい。慢性の下痢を、炎症性、浸透圧性、分泌性、改変された腸運動性および人為性として分類してもよい。
【0003】
科学および医学における発展および達成は極めて大きいにも関わらず、いくつかの疾患は未だに人類に挑戦しており、それらを制圧するための努力がなされている。我々は遺伝子治療の刺激的な期待と共に新しい世紀に足を踏み入れたのにも関わらず、ハーブ薬剤は依然として、世界人口が利用可能な治療の共通の形態の一つである。現代の下痢止め剤はこの疾患を完全に治療するわけではないことと同時に、伝統的なシステムに由来する薬剤について一定の見込みが存在し、この薬剤は、この疾患の症状を治療するよりも、むしろこの病気を完全に治すことができる。
【0004】
シサンペロス・パレイラ・リンネ・ヒルスタ(Cissampelos pareira(Linn.)Hirsuta) 科:ツヅラフジ科(Menispermaceae)
使用部位:根
植物学的記述:シサンペロス・パレイラ・リンネ・ヒルスタは、可変性で、高木となり、細長く、雌雄異体で、多年生植物であって、ほぼ直立するかまたは草および低木に覆いかぶさり、熱帯および亜熱帯世界における2,000メートルまでの標高に向かって分布している。根茎は木質の、多年生;葉は不完全な心臓形の基部を伴い、通常葉柄を中央にもつかまたは円形−腎臓形、卵形−半腎臓形であって、無毛または多毛で直径は3〜12cmを超える;花は黄緑色で、雄花は腋生で、繊維束から成る軟毛の多い集散花序または円錐花序であり、雌花は6〜15cmの長さのぶら下がった総状花序である;核果は小さく、卵形−半球形または倒卵形であって、扁平で、深紅色で多毛である;種子は馬蹄形である。この植物の全ての部分を薬剤として用いる。乾燥した根から、一般的にフォールス・パレイラ・ブラバ(FALSE PAREIRA BRAVA)として知られている薬剤が作られる。ペルーおよびブラジルに自生するコンドロデンドロン・トメントサム Ruiz and Pav.(Chondrodendron tomentosum Ruiz and Pav.)か、またはシー・プラチフィルム・ミアース(C.platyphyllum Miers)(Chopra et at,1958)のいずれかに由来するトゥルー・パレイラ・ブラバ(TRUE PAREIRA BRAVA)と混同することが、時々ある。この薬剤は、長い円筒状の卵形か、または扁平な根の断片からなり、全体または縦方向の切断面が0.1〜1.20cm×1.2〜10.0cmである;樹皮は灰色がかった茶色で、縦方向に皺があり、環状に上昇しながら横方向に交差しており、木質の内部は黄色がかった灰色で、同心円状の孔があり、髄には線がある;最初は芳香と甘みが感じられ、その後は強い苦味に変化する。インドでは毎年約1.7トンの根が栽培されている(wealth of India,Vol.3(Revised),1992,591−593)。
【0005】
医療用の用途:軽い傷には、樹液をジャガリーおよび卵と混ぜて体内に与える。葉の湿布を、膿瘍、腫れ物、疥癬、痒み、にきび、おできおよびやけどに適用する。レモンの液とニンニクの液と塩を混ぜた煎じ汁を、健胃薬として与える。傷の治療剤、解毒剤およびクシュタグナ(kushthaghna)としては、葉および根のペーストを瘻孔、清潔さ、皮膚疾患およびヘビ毒において体外的に用いる。体内的には、拒食症、消化不良、腹痛、下痢および赤痢において有用である。血液を清浄にするものであり、抗炎症性を有する。咳および呼吸困難にも用いられ、母乳を浄化することから、母乳の分泌の種々の障害において用いられる。利尿剤としての可能性もある。
【0006】
植物化学:根および葉は、数種のアルカロイドおよびエッセンシャルオイル(0.2%)を含む。ハヤチン(アルカロイド)のメチオジド誘導体およびメチクロリド誘導体が、強力な神経筋遮断薬であり、血圧を種々の程度に低下させることが報告された(Patnaik et al,Ind.J.Exp.Biol.11,1973,89−94)。メチオジドは塩化ツボクラリンの強さの三分の一であり、ガラミンの強さの1.5倍であることが分かった。ハヤチンメトクロリドは、単離された心筋に対する直接的な筋収縮効果を有する。
【0007】
薬理学:根は、収斂性、穏やかな強壮効果、利尿性、健胃性、抗結石性、鎮痛性、解熱性および月経促進性を有する。これらは、咳、消化不良、浮腫、子宮脱、膀胱炎、出血および月経過多などの泌尿生殖器の異常、ならびにカルキュラー腎炎に対して頻繁に処方されている(Kirtikar and Basu,1933,Vol.3,2146−2147)。下痢を治癒するために、この絞り汁をウシにも与える。根のペーストは、乳幼児の体の発疹である(Bhatnagar et al,Ind.J.Med.Res.49,1961,799−807)。シサンパレイン、ビス−ベンジル−イソキノリンアルカロイドは、細胞培養においてヒトの鼻咽頭の癌細胞に対して顕著で再現可能な阻害活性を示した。根は、グラム陰性株に対してよりもグラム陽性生物に対して顕著な抗菌性を示す(Adesina,Fitoterapia.53,1982,147−162)。茎および根のエタノール抽出物(50%)は、CNS抑制活性を示す。この植物についての下痢止めの性質は民族植物学的に言及されている(Jain,1991)が、この植物のこの活性についての科学的な検証はなされていなかった。
【0008】
マンギフェラ・インディカ(Mangifera indica) 科:ウルシ科(Anacardiaceae)
使用部位:種子仁
植物学的記述:1000を超えると推定される非常に多くのタイプのマンゴーがインドの種々の部分で栽培されており、それぞれはそれ自体固有の味、風味および果肉の粘度を有する。ベンガル南部、アッサム、ケララおよびマドラス南東の湿度の高い地帯においては、この木は豊富な果実を実らせない。というのは、これらの地域では寒い冬が無いからである。マンゴーは霜に耐えることができず、従って、パンジャブの丘陵地、ウッタルプラデシおよびヒマチャルプラデシの温帯地方ならびに900mより高いカシミールでは繁殖しない。霜の無いインド半島の平野および丘陵地においては、マンゴーは海抜ゼロから1,200mまでの範囲で成長するが、900mを超える海抜では、商業的に成功しない。インドでは、マンゴーは最も人気がありかつ最高級の果物であり、世界中の最も好ましい果物の間で突出した地位を占める。マンゴーが有する歴史的な評判を有するその他の熱帯の果実はほとんど無く、インドの民間伝承とこれほどまで密接に結合したその他のものはほどんど無い。マンゴーは、温度が115〜120°Fの高さのインド北部の地域で成長する。夏の期間を耐え抜く;しかしながら、強風を伴う高温では折れてしまう。好ましくはシシャム(shisham)(ダルベジア・シッソ(Dalbergia sissoo))およびその他の樹木をマンゴーのプランテーションの南西側に植えて、風を阻む。若く未成熟の果実は通常酸味があり、ピクルス、チヤットニ、アムチュールおよび料理に用いられる。缶詰にして、または絞り汁および絞りかす、ジャムおよびゼリー、砂糖煮(ムラーバ(murraba))およびアムペイパ(am papar)を作るのに用いて、熟した果実を保存する。
【0009】
医療用の用途:ジフテリアおよびリウマチに樹皮を用いる。粘膜を収縮させる作用があると考えられている。乾燥した花は収斂効果があり、下痢、慢性の赤痢および出血性疾患に用いられる。乾燥した仁はウシおよび家禽の餌として用いられる。
【0010】
植物化学:新鮮なインドマンゴーの分析から、次のような平均値が得られた。未成熟マンゴー−水分、90.0;タンパク質、0.7;脂質、0.1;炭水化物、8.8;ミネラル成分、0.4;カルシウム、0.01;およびリン、0.02%;鉄、4.5mg/100g;カロチン(ビタミンAとして)、150i.u.、リボフラビン、30μg;ならびにアスコルビン酸、3mg/100g;熟したマンゴー−水分、86.1;タンパク質、0.6;脂質、0.1;炭水化物、11.8;繊維、1.1;ミネラル成分、0.3mg/100g.;カロチン(ビタミンAとして)、4.800i.u.;ニコチン酸、0.3mg;リボフラビン、50μg;ならびにアスコルビン酸、13mg/100g。糖含量および酸含量は、品種および熟成の段階に伴って広い範囲で変動する9表4)。表5では、いくつかの熟したマンゴーの果肉のpH、糖含量およびβ−カロチン含量が示されている(Hlth Bull.,No.23,1951,46;Cheema et.al.,Indian J Agric.Sci.,1950,20,259)。
【0011】
未成熟な果実は熟成の間にデンプンが多くなり、そのデンプンが還元糖に加水分解して後者の一部がショ糖に合成される。未成熟だが完全に成長したピクルス用の品種のマンゴーは、クエン酸、リンゴ酸、シュウ酸、コハク酸および二種の未同定の酸(おそらく二または三塩基酸)を含む;クエン酸が支配的な構成成分である。果実が成熟するにつれて、酸性度が徐々に低下し、成熟段階では急激に低下する。マンゴー果実の非タンパク質性窒素画分に存在するアミノ酸は次のものである。アスパラギン酸、グルタミン酸、アラニン、グリシン、メチオニン、ロイシンならびにおそらくはシスチンおよびγ−アミノ酪酸(Govindarajan and Sreenivasaya,Curr.Sci.,1950,19,234)。カロチノイド色素の濃度は熟成の間に増加する。β−カロチンの増加速度はその他のものの増加速度よりも大きく、平均的な大きさのマンゴーは一日あたり1,200μgものβ−カロチンを合成することができる。この果実はカリウム源に富む。果肉の灰分の分析(灰分含量、0.53%)から、次の値が得られた。カリウム(K2O)、47.37;カルシウム(CaO)、6.38;マグネシウム(MgO)、1.62;リン(P25)、6.49;硫黄(SO3)、3.67;および塩素、3.88%、銅(1.9μg/g)およびヨウ素(16μg/kg)が熟した果実中に存在する。
【0012】
薬理学:葉、樹皮、茎および未成熟な果実の抽出物は、ムクロコッカス・ピヨゲンス var.アウレウス(Mcrocroccus pyogenes var.aureus)に対して穏やかな抗菌性を発揮する。抗菌性の存在は既に報告されていた。この種子仁は渋味を有する。これらは、物の無い時代にインドの特定の地域でヒトの食物として用いられる。これらを食べるために焼くかまたは茹でることが時々ある(Wealth of India,1992)。
【0013】
シナモマム・スピーシーズ(Cinnamomum Sps.)(F.Hamilt.)・ニーズアンドエバーム(Nees and Eberm) 科:クスノキ科
使用部位:葉および樹皮
植物学的記述:この種は、インド北部においてスパイスとして広く用いられているテジュパットの葉の源である。この木の樹皮、インドカシアの樹皮またはインドカシア・リグネア(Lignea)として取引されていることが知られている、はシッキムおよびヒマラヤ山脈の麓で生育している木から集める。この植物は中程度の大きさの木であり、高さが7.5mで太さが1.35m、熱帯および亜熱帯のヒマラヤ山脈のシッキム、アッサムおよびミゾルムにおける標高が1,000〜1800mの位置に分布している(Agarwal et al,Indian Perfumer.Vol.XXI,No.1,1977,15−20)。葉はトリプラで栽培されていることが分かった。樹皮はこげ茶色:葉は向かい合っているかまたはいつか互生であり、楕円形から長方形−皮針形、無毛、基部では葉脈が3本、幼若時はピンク色;花は浅黄色、軟毛で覆われ、円錐花序の形態である;果実は肥厚した花柄上で黒色、卵形であり、花被の基部で大きくなる。
【0014】
医療用の用途:葉は血糖低下性、刺激性、駆風性、サソリの針に対する解毒性を持つことが報告されており、疝痛、下痢およびリウマチに用いられる。これらは辛く強心薬とみなされており、咳および風邪において、インドナガコショウおよびハチミツと共に用いられる。小さじ2杯の粉末を、一日に4回一ヶ月間、糖尿病の患者に栄養制限食と共に与えると、血糖レベルが顕著に減少し、インスリンの放出または生産を促進する(Kirtikar and Basu,2nd ed.,1987,Vol.499−505)。乾燥した葉は、油脂における酸化防止剤として機能する。桂皮の木の新芽の樹皮の内部は、強力な局所刺激剤であり、胃を和らげ痙攣を軽減するように機能する;これは穏やかな収斂効果である。葉は苦みと甘みがあり、芳香性、熱を生じさせ、アレゼトリックであり(alexeteric)、駆虫性、利尿性、刺激性、駆風性および強壮性がある。これらは、心臓疾患、炎症、蠕虫病、消化不良、有痛性排尿困難、疝痛、唾液過多、眼炎、バタ(vata)が汚された状態、下痢、直腸炎、直腸痛、肝障害および脾臓障害に用いられる(Anonymous,1994)。葉のエッセンシャルオイルは、リゾコトニア・バタチコラ(Rhizocotnia bataticola)、フサリウム・モニニフォルメ(Fusarium moniliforme)、リゾコトニア・ソラニ(Rhizoctonia solani)、フィチム・ベクザンス(Pythium vexans)およびアルタナリア・ヘリアンチ(Alternaria helianthi)に対する抗真菌性があることが報告されている(Girjune et al,Indian drugs.16,1978,24−26)。この植物は、高投与量ではサッカロミセス・セレビシエ(S.cerevesiae)に対する活性があったのに対して、バチルス・サブチリス(B.subtilis)および大腸菌(E.coli)に対しては不活性であった(Minakshi et al,J.of Spices and Aromatic Crops.8(2),1999,135−144)。この植物の葉のオイルは、大腸菌、シュードモナス・アエルギノサ(P.aeruginosa)、エス・フェカリス(S.faecalis)およびエス・ピオゲネス(S.pyogenes)に対して活性があることが報告されている(Current Sci,1978,47(13),July5,454−455)。葉のエッセンシャルオイルは、動物およびヒトに白癬疾患を生じさせるトリコフィトン・メンタグロフィテス(Trichophyton mentagrophytes)およびミクロスポルム・アウドウニル(Microsporum audounil)に対して(1000ppmでは)もしかすると活性があるかもしれなかった(Yadav and Dubey,Ind.J.Pharm.Sci.6,1994,227−230)。トリコフィトン・メンタグロフィテスおよびミクロスポルム・アウドウニルに対する活性のように、ハーブ製剤の形態で真菌性皮膚疾患の治療に有効であることも分かった(Yadav et al,J.Med.Aromatic Plant Sci.1999,347−351)。
【0015】
植物化学:葉からはエッセンシャルオイル(0.3〜0.6%)が生じる。Kumaun hills(UP)およびJoginder Nagarからのオイルのサンプルから、それぞれ次の物理化学的特性が示される。sp gr30*、0.9730〜0.9876、0.9349;エステル価、54.13、45.49;アセチル化後のエステル価、149.82、152.70;アルデヒド含量、49.5、38.4および痕跡量のフェノール含量、4.7〜5.2%(Sood et al,1979)。nD28=1.4791、d28=0.9034および〔α〕D28=+6(Nath et al,1994)。二種のオイルの化学組成はそれぞれ次の通りである;桂皮アルデヒド、41.2、12.8;リナロール、15.7、50.3;ユージノール、13.3、1.0;酢酸ユージノール、12.5、−;β−カリオフィレン、4.0、−;ベンズアルデヒド、4.1、1.1;カンフル、3.2、−;カジネン、3.1、−:およびα−テルピネオール、1.8、2.9%(Iijas,1978)。シナモマム・スピーシーズのエッセンシャルオイルにおいて特定された種々の成分の中で、リナロールが、オイルの60.73%を構成する主な構成成分として報告されている(Nath et al,J.of Spices and Aromatic Crops.3(1)1994,33−35)。しかしながら、アッサムからのオイルのサンプル(収率は2%)は、80〜85パーセントもの多量のユージノールを含むことが分かっている。樹皮からのオイルは主要な構成成分として桂皮アルデヒド(70〜85%)を含む。その葉も、3,4’,5,7−テトラヒドロキシフラボン、3,3’,4’,5,7−ペンタヒドロキシフラボン、ケンフェロール−3−O−グルコピラノシド、ケンフェロール−3−O−ソフォロシド、ケンフェロール−3,7−ジ−O−ラムノピラノシドおよびケルセチン−3−O−ルチノシドを含む。
【0016】
薬理学:糖およびデンプンを含まない制限食(1800カロリー/日)を一ヶ月間継続する場合において、(インスリン非依存性の)糖尿病患者に粉末で投与している間は、血糖値が低下することが示された(Tripathi et al,J.Res.Indian.Med.Yoga H.19,1979,159−160;Chandola et al.,J.Res Ayur.Siddha.1,1980,275−281)。シナモマム・スピーシーズ・ブルーメ(Blume)(中国名:ルーグイ(Rougui)、英名:チャイニーズシナモン)は、腹痛;下痢、ショック;風邪;多汗症;咳および喘鳴;体の下部およびひざの痛み;月経困難症、無月経、低血圧;凍傷において推奨されている。
【0017】
ブチャナニア・ランザン(Buchanania lanzan)・リンネ 科:ウルシ科
使用部位:樹皮
植物学的記述:この種類は20種の木および低木を包含し、6種はインドに見られる。これは熱帯アジア、オーストラリアおよび太平洋の諸島に分布している。この木は、インドおよびビルマ;サトレジから3000’に迫るネパールまでのインド北西部においては、乾季に落葉する樹木であることが分かっている。この木は淡い灰色から灰色がかった茶色であり、時々淡い黄色、赤みがかったこげ茶色の外観を伴うことがあるが、最初にさらされた時は予想以上に光沢がある。この樹皮粉末を磨くと色が茶色になる。これはわずかに刺激的なにおいと渋味を有する。
【0018】
医学的特性:この葉については、強壮性と強心性が報告されており、これらの粉末は傷に対する一般的な薬剤である。その茎からは淡い色の粘液が染み出し、この液は肋間の痛みに用いられる。牛乳に溶かしたこの粘液は、リウマチの痛みにおいて体内に用いられる。
【0019】
植物化学:ブチャナニア・ランザンの種油のトリグリセリド組成物はSenguptaおよびRoychoudhuryによって研究され(J Sci Food Agric.28(5),2001,463−468)、葉のフラボノイドはAryaらによって研究されている(J.Ind.Chem.Soc.65,1988,882−883)のに対して、ミリセチン−3’−ラムノシド−3−ガラクトシドは、Aryaらによって同定された(Phytochemistry.31(7),1992,2569−2570)。トリテルペノイド、サポニン、還元糖およびフラボノイドが存在することも報告されている。この樹皮は、13.4%のタンニンおよび9.4%の非タンニン類を含む。
【0020】
薬理学:バッソラガムに似た透明な粘液が、ストレス時に傷から染み出す。ブチャナニア・ランザン・リンネの樹皮の水抽出物が、淡水魚のラベオ・ロヒタ(Labeo rohita)の挙動および色素胞に与える効果を研究した。(Chaudhary et al,J.Environ Biol.22(3),2001,229−31)。出産後の母親または病人に与えた植物の生成物の免疫賦活活性について、マクロファージ遊走インデックス(MMI)をマクロファージの活性化および細胞性免疫反応のパラメータとして、ならびに赤血球凝集性抗体(HA)の力価およびプラーク形成細胞(PFC)の計数を体液性免疫反応のパラメータとして用いて研究した(Puri et al.J.Ethnopharmacol.71(1−2),2000,89−92)。これまでに、我々は新規の相乗的なハーブ製剤を提示しており、このものは、伝統的に下痢の治療に用いられてきた植物を含む。従って、下痢の治療に有効な新規な製剤を開発するために、伝統的に用いられた植物の相乗的な組み合わせを開発する研究を行った。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
本発明の主な目的は、下痢止め作用を有する新規ハーブ製剤を提供することである。
【0022】
本発明の別の目的は、本発明で用いる植物が、高酸化防止性、肝臓保護性、消化促進性、胆汁分泌促進性、鎮静性および有益な免疫強化性を有することである。
【0023】
本発明のさらに別の目的は、下痢、腸の不快感に用いられる植物を組み合わせることによりハーブ製剤を調製することである。
【課題を解決するための手段】
【0024】
従って本発明は、下痢の治療に有用なハーブ製剤である。このハーブ製剤はシサンペロス・パレイラ、マンギフェラ・インディカ、シナモマム・スピーシーズおよびブチャナニア・ランザンを含み、高酸化防止性、肝臓保護性、消化促進性、胆汁分泌促進性、鎮静性および有益な免疫強化性を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
従って、本発明は、胃および十二指腸の急性潰瘍の治療に有用な下痢止め作用を有する新規のハーブの相乗的製剤を提供し、前記製剤は次のものを含む。
【0026】
本発明の一つの実施形態においては、消化器疾患の治療に有用な相乗的医薬組成物であって、前記組成物は、植物のシサンペロス・パレイラ、マンギフェラ・インディカ、シナモマム・スピーシーズ、ブチャナニア・ランザンから得られる抽出物と、任意で薬学的に許容される添加物とを含む。
【0027】
本発明のさらに別の実施形態においては、前記組成物は消化器疾患の治療に有用である。
【0028】
本発明のさらに別の実施形態においては、消化器疾患は下痢である。
【0029】
本発明のさらに別の実施形態においては、消化器疾患は赤痢である。
【0030】
本発明の別の実施形態においては、消化器疾患は胃潰瘍である。
【0031】
本発明のさらに別の実施形態においては、消化器疾患は十二指腸潰瘍である。
【0032】
本発明のさらに別の実施形態においては、消化器疾患は腹痛である。
【0033】
本発明のさらに別の実施形態においては、消化器疾患は痙攣である。
【0034】
本発明の別の実施形態においては、消化器疾患は過敏性腸症候群である。
【0035】
本発明のさらに別の実施形態においては、消化器疾患は抗痙攣の形態である。
【0036】
本発明のさらに別の実施形態においては、過剰の酸を中和することによって、ハーブ組成物は即座に胃の酸性度を軽減させる。
【0037】
本発明のさらに別の実施形態においては、前記組成物は、高酸化防止性、肝臓保護性、消化促進性、胆汁分泌促進性、鎮静性および免疫強化性を有する植物抽出物の相乗的混合物である。
【0038】
本発明のさらに別の実施形態においては、消化器疾患を治療するためのハーブ組成物であって、5〜10重量%のマンギフェラ・インディカからの抽出物、5〜10重量%のシサンペロス・パレイラのものならびに5〜10重量%のシナモマム・スピーシーズブチャナニア・ランザンのもの、任意で5〜10%のその他の薬理学的に許容される結合剤、希釈剤および潤滑剤を含む前記組成物。
【0039】
本発明のさらに別の実施形態では、植物抽出物は、根、種子および地上部から選択される植物の一部から得られる。
【0040】
本発明のさらに別の実施形態においては、シサンペロス・パレイラの抽出物は根から得られる。
【0041】
本発明のさらに別の実施形態においては、マンギフェラ・インディカの抽出物は種子仁から得られる。
【0042】
本発明のさらに別の実施形態においては、シナモマム・スピーシーズの抽出物は葉および樹皮から得られる。
【0043】
本発明のさらに別の実施形態においては、ブチャナニア・ランザンの抽出物は樹皮から得られる。
【0044】
本発明のさらに別の実施形態においては、植物抽出物は50%のアルコール水溶液抽出物である。
【0045】
本発明の別の実施形態においては、ハーブ組成物に用いられる前記結合剤は、デンプン、デンプン糊、アラビアゴムおよびカルボキシメチルセルロースからなる群より選択される。
【0046】
本発明のさらに別の実施形態においては、用いる希釈剤はラクトースである。
【0047】
本発明のさらに別の実施形態においては、用いる潤滑剤はデンプンおよびラクトース由来である。
【0048】
本発明の別の実施形態においては、66.7% w/wの砂糖シロップを媒体として用いる。
【0049】
本発明のさらに別の実施形態においては、前記組成物は、全製剤の約15〜50重量%を含む。
【0050】
本発明のさらに別の実施形態においては、ハーブ組成物を調製する方法であって、前記方法は、
a)葉、樹皮、根および地上部を含む群から、薬用植物の一部を得る工程;
b)工程(a)の植物の一部を乾燥させる工程;
c)工程(b)の乾燥した植物材料を粉末化して、粗粉末を得る工程、
d)乾燥した植物材料の粉末を25〜35℃の範囲の温度で抽出する工程;
e)その植物材料を、1:8〜1:15の割合のアルコール水溶液で4〜7日間かけて抽出する工程;
f)得られた抽出物を、減圧下40〜60℃の範囲の温度で濃縮する工程、ならびに
g)溶媒を完全に除去するために、濃縮された抽出物を凍結乾燥することによって、抽出物を得る工程、
h)マンギフェラ・インディカ、シサンペロス・パレイラ、ブチャナニア・ランザンおよびシナモマム・スピーシーズの抽出物と、5〜15重量%のその他の薬理学的に許容される結合剤、希釈剤および潤滑剤とを混合して、その組成物を調製する工程、を含む方法。
【0051】
本発明のさらに別の実施形態においては、40〜50%のエタノール水溶液を用いて抽出を実施する。
【0052】
本発明の別の実施形態においては、前記組成物を、シロップ、錠剤、カプセルおよび粉末からなる群より選択される経口用の製剤として適用する。
【0053】
本発明のさらに別の実施形態においては、ヒマシ油で誘導される下痢における適用量が25〜100mg/kgであり、これにより16.92〜76.69の予防%が与えられる。
【0054】
本発明の別の実施形態においては、ヒマシ油で促進される消化器の通過における適用量が25〜100mg/kgであり、これにより43.19〜66.70の治療比率%が与えられる。
【0055】
本発明の別の実施形態においては、ヒマシ油で誘導される体液貯留における適用量が25〜100mg/kgであり、その体液貯留が2.14±0.34〜1.12±0.10に減少する。
【0056】
本発明の別の実施形態においては、ヒマシ油で誘導される体液貯留における適用量が25〜100mg/kgであり、ナトリウムの濃度が151.6±9.6〜105.4±06.9に減少する。
【0057】
本発明の別の実施形態においては、ヒマシ油で誘導される体液貯留における適用量が25〜100mg/kgであり、カリウムの濃度が6.4±0.71〜5.6±0.31に減少する。
【0058】
本発明のさらに別の実施形態においては、インドメタシンで誘導される急性胃潰瘍における適用量を25〜100mg/kgとする結果、27.03〜75.38%の予防パーセントとなり、胃壁粘膜が顕著に肥厚する。
【0059】
本発明のさらに別の実施形態においては、システアミンで誘導される十二指腸潰瘍における適用量を25〜100mg/kgとすることにより、コントロールにおける潰瘍の80%の発生率と比べて41.7〜90.2の発生率(治療されたもの)が示される。
【0060】
本発明の別の実施形態においては、過剰の酸を中和することによって、この組成物が即座に胃の酸性度を軽減させる。
【0061】
本発明のさらに別の実施形態においては、これらの製剤の調製における第一工程は、錠剤、カプセルおよび液体の投与形態に製剤化することに適した植物材料を加工するプロセスを含む。植物の特定された部分を集め、暗黒条件下の室温(25〜35℃)で、72時間かまたは乾燥した材料が得られるまで乾燥させる。次いで、この材料を粉末化して微粉末にする。次いで、この乾燥した材料(1Kg)を粉末化して、50%アルコール水溶液(3L)で5日間かけて抽出する。この最後の時点で、溶媒のデカンテーションを行って、必要があれば植物の破片を除くためにろ過する。次いで、抽出物を減圧下、50℃未満で濃縮する。次いで、この抽出物を凍結乾燥し、粉末状態の抽出物を得る。15gのデンプンを水と混合し、加熱して糊を作る。次いで、植物抽出物の重量を測定したものをデンプン糊と混合し、次いでラクトースを量的に100gとなるように十分に添加する。次いで、これらの成分をデンプン糊と適切に混合して塊を得る。次いでこの塊を造粒機で造粒し、次いで104°Fで乾燥させて16メッシュの篩で篩い分けする。タルクを乾燥した顆粒に添加し、次いでこれらを打錠機で打錠して均一の錠剤を作製する。抽出物を適切な割合で添加してシロップを調製した。インド国薬局方1966年に従って、このシロップを調製した。
【0062】
本新規性は、製剤成分を個別に投与した場合では、消化器疾患に対する顕著な効果が示されないという事実の中に存在する。いくつかの成分は、以前には下痢の治療には決して用いられてこなかった。しかしながら、全ての成分を組成物として一緒に投与すると、消化管における問題の管理において顕著な結果が示される。いくつかの場合においては、この組成物は、標準的な合成薬よりも優れた役割を果たし、さらに驚くべきことに、標準的な合成薬とは異なり、この組成物にはいかなる副作用をも存在しない。
【0063】
表の簡単な説明
表1 ラットにおいてヒマシ油で誘導された下痢に与える製剤の効果。
表2 ラットにおいてヒマシ油で誘導された体液貯留に与える製剤(F5)の効果。
表3 ラットにおいてヒマシ油で促進された消化器の通過に与える製剤(F5)の効果。
表4 ラットにおいてインドメタシンで誘導された急性胃潰瘍に与える製剤(F5)の効果。
表5 ラットにおいてシステアミンで誘導された十二指腸潰瘍に与える製剤(F5)およびラニチジンの効果。
【0064】
本発明を、次の実施例によって例証するが、次のサンプルは本発明を例証する目的で与えられたものであり、本発明の範囲を制限するものと解釈すべきではない。
【実施例】
【0065】
実施例1
シサンペロス・パレイラを集め、暗黒条件下で乾燥させた。次いで、この乾燥した材料(1kg)を粉末化して、50%アルコール水溶液(3L)で5日間かけて抽出する。この最後の時点で、溶媒のデカンテーションを行って、必要があれば植物の破片を除くためにろ過する。次いで、抽出物を減圧下、50℃未満で濃縮する。次いで、この抽出物を凍結乾燥し、粉末形態の抽出物を得る。15gのデンプンを水と混合し、加熱して糊を作る。次いで、植物抽出物の重量を測定したものをデンプン糊と混合し、次いでラクトースを量的に100gとなるように十分に添加する。次いで、これらの成分をデンプン糊と適切に混合して塊を作る。次いでこの塊を造粒機で造粒し、次いで104°Fで乾燥させて16メッシュの篩で篩い分けする。タルクを乾燥した顆粒に添加し、次いでこれらを打錠機で打錠して均一の錠剤を作製する。抽出物を適切な割合で添加してシロップを調製した。インド国薬局方1966年に従って、このシロップを調製した。以下に与えられるこの製剤F1は、種々の消化器疾患の治療に有用である。
【0066】
製剤(F1)
シサンペロス・パレイラ 15%
ナトリウムバンゾアート 0.5%
砂糖シロップ 100%となる量
【0067】
実施例2
シサンペロス・パレイラおよびマンギフェラ・インディカを集め、暗黒条件下で乾燥させた。次いで、この乾燥した材料(1Kg)を粉末化して、50%アルコール水溶液(3L)で5日間かけて抽出する。この最後の時点で、溶媒のデカンテーションを行って、必要があれば植物の破片を除くためにろ過する。次いで、抽出物を減圧下、50℃未満で濃縮する。次いで、この抽出物を凍結乾燥し、粉末形態の抽出物を得る。15gのデンプンを水と混合し、加熱して糊を作る。次いで、植物抽出物の重量を測定したものをデンプン糊と混合し、次いでラクトースを量的に100gとなるように十分に添加する。次いで、これらの成分をデンプン糊と適切に混合して塊を作る。次いでこの塊を造粒機で造粒し、次いで104°Fで乾燥させて16メッシュの篩で篩い分けする。タルクを乾燥した顆粒に添加し、次いでこれらを打錠機で打錠して均一の錠剤を作製する。抽出物を適切な割合で添加してシロップを調製した。インド国薬局方1966年に従って、このシロップを調製した。この製剤F2は、種々の消化器疾患の治療に有用である。
【0068】
製剤(F2)
シサンペロス・パレイラ 15%
マンギフェラ・インディカ 15%
ナトリウムバンゾアート 0.5%
砂糖シロップ/水 100%となる量
【0069】
実施例3
シサンペロス・パレイラ、マンギフェラ・インディカおよびシナモマム・スピーシーズを集め、暗黒条件下で乾燥させた。次いで、この乾燥した材料(1Kg)を粉末化して、50%アルコール水溶液(3L)で5日間かけて抽出する。この最後の時点で、溶媒のデカンテーションを行って、必要があれば植物の破片を除くためにろ過する。次いで、抽出物を減圧下、50℃未満で濃縮する。次いで、この抽出物を凍結乾燥し、粉末形態の抽出物を得る。15gのデンプンを水と混合し、加熱して糊を作る。次いで、植物抽出物の重量を測定したものをデンプン糊と混合し、次いでラクトースを量的に100gとなるように十分に添加する。次いで、これらの成分をデンプン糊と適切に混合して塊を作る。次いでこの塊を造粒機で造粒し、次いで104°Fで乾燥させて16メッシュの篩で篩い分けする。タルクを乾燥した顆粒に添加し、次いでこれらを打錠機で打錠して均一の錠剤を作製する。抽出物を適切な割合で添加してシロップを調製した。インド国薬局方1966年に従って、このシロップを調製した。この製剤は種々の消化器疾患の治療に有用である。
【0070】
製剤(F3)
シサンペロス・パレイラ 10%
マンギフェラ・インディカ 10%
シナモマム・スピーシーズ 10%
ナトリウムバンゾアート 0.5%
糖を含むシロップ 100%となる量
【0071】
実施例4
ブチャナニア・ランザン・リンネを集め、暗黒条件下で乾燥させた。次いで、この乾燥した材料(1Kg)を粉末化して、50%アルコール水溶液(3L)で5日間かけて抽出する。この最後の時点で、溶媒のデカンテーションを行って、必要があれば植物の破片を除くためにろ過する。次いで、抽出物を減圧下、50℃未満で濃縮する。次いで、この抽出物を凍結乾燥し、粉末形態の抽出物を得る。15gのデンプンを水と混合し、加熱して糊を作る。次いで、植物抽出物の重量を測定したものをデンプン糊と混合し、次いでラクトースを量的に100gとなるように十分に添加する。次いで、これらの成分をデンプン糊と適切に混合して塊を作る。次いでこの塊を造粒機で造粒し、次いで104°Fで乾燥させて16メッシュの篩で篩い分けする。タルクを乾燥した顆粒に添加し、次いでこれらを打錠機で打錠して均一の錠剤を作製する。抽出物を適切な割合で添加してシロップを調製した。インド国薬局方1966年に従って、このシロップを調製した。この製剤F4は、種々の消化器疾患の治療に有用である。
【0072】
製剤(F4)
ブチャナニア・ランザン・リンネ 10%
ナトリウムバンゾアート 0.5%
糖を含むシロップ 100%となる量
【0073】
実施例5
シサンペロス・パレイラ、マンギフェラ・インディカ、シナモマム・スピーシーズおよびブチャナニア・ランザン・リンネを集め、暗黒条件下で乾燥させた。次いで、この乾燥した材料(1Kg)を粉末化して、50%アルコール水溶液(3L)で5日間かけて抽出する。この最後の時点で、溶媒のデカンテーションを行って、必要があれば植物の破片を除くためにろ過する。次いで、抽出物を減圧下、50℃未満で濃縮する。次いで、この抽出物を凍結乾燥し、粉末形態の抽出物を得る。15gのデンプンを水と混合し、加熱して糊を作る。次いで、植物抽出物の重量を測定したものをデンプン糊と混合し、次いでラクトースを量的に100gとなるように十分に添加する。次いで、これらの成分をデンプン糊と適切に混合して塊を作る。次いでこの塊を造粒機で造粒し、次いで104°Fで乾燥させて16メッシュの篩で篩い分けする。タルクを乾燥した顆粒に添加し、次いでこれらを打錠機で打錠して均一の錠剤を作製する。抽出物を適切な割合で添加してシロップを調製した。インド国薬局方1966年に従って、このシロップを調製した。この製剤は種々の消化器疾患の治療に有用である。
【0074】
製剤(F5)
シサンペロス・パレイラ 10%
マンギフェラ・インディカ 10%
シナモマム・スピーシーズ 10%
ブチャナニア・ランザン・リンネ 10%
ナトリウムバンゾアート 0.5%
糖を含むシロップ 100%となる量
【0075】
実施例6
正常な排便に与える効果の評価
6匹のマウスの群のそれぞれを、底にろ紙を備えた、離れたケージに個別に入れた。異なる投与量の抽出物を、異なる群に経口投与した。非特異的な下痢止め用の基準薬剤である塩酸ジフェノキシラート(5.0mg kg-1、経口)および1% CMC(10mg kg-1、経口)を2群に投与し、そして後者をコントロールとして扱った(Melo et al,J.Pharm.Pharmacol.40(1988),79−826)。それぞれの群における糞便の総数を、次の4時間の間、一時間ごとに評価した。処理群における糞便の総数の減少パーセントを、コントロール動物との比較によって得た。製剤F5はシサンペロス・パレイラ、マンギフェラ・インディカ、シナモマム・スピーシーズおよびブチャナニア・ランザンを含み、下痢発生の減少パーセントが、その他の組み合わせのそれよりも76.9%(表1)減少し、さらには標準的なアロパシー薬剤よりも減少した。表1は、F5が相乗効果が高いことを示す。
【0076】
【表1】

【0077】
実施例7
ヒマシ油で誘導される下痢
NwodoおよびAlumanahによって改変(J.Ethnopharmacol,31,1991,395−398)されたAwoutersらの方法(J.Pharm.Pharmacol,.30,1978,41−45)を利用した。簡単に記せば、24時間絶食させたラットを、それぞれの群が6匹の動物からなる5群にランダムに分けた。一群には1% CMC(10mL kg-1、経口)を与え、その他の群には異なる投与量の薬剤抽出物を経口投与した。別の群には塩酸ジフェノキシラート(5.0mg kg-1、経口)を懸濁液として与えた。60分後、それぞれの動物にカテーテルで2mlのヒマシ油を与え、個別のケージに入れ、4時間排便を観察した。透明なプラスチック製の皿をそれぞれのケージの下に置き、特徴的な下痢の滴を記録した。それぞれの群における糞便の総数を、次の4時間の間、一時間ごとに評価した。処理群における糞便の総数の減少パーセントを、コントロール動物との比較によって得た。製剤F5は、シサンペロス・パレイラ、マンギフェラ・インディカ、シナモマム・スピーシーズおよびブチャナニア・ランザンを含み、下痢発生の減少パーセントが、その他の組み合わせのそれよりも76.9%(表1)減少し、さらには標準的なアロパシー薬剤よりも減少した。表1は、F5が相乗効果が高いことを示す。
【0078】
実施例8
ヒマシ油で誘導された体液貯留ならびにNa+およびK+の分泌
Di Carloらによって改変(Phytother.Res.8,1994,42−45)されたRobertらの方法(Prostaglandins 11,1976,809−814)に従って、これを測定した。24時間絶食させたが水は自由に摂取させたラットを、それぞれの群が6匹のラットからなる異なる群にランダムに分けた。群I(コントロール)には1% CMC(10ml kg-1、経口)を投与し、群IIにはヒマシ油のみ(2ml)を投与し、その他の群には、ヒマシ油を投与する1時間前に、異なる投与量の種々の製剤を投与した。30分後、頚椎を脱臼させてラットを殺し、全血を採取した;小腸を幽門括約筋および回盲部の両方の位置で連結した。小腸の全体を切り裂き、その内容物を目盛り付きの計測用シリンダー内に取り出して内容物の体積を記録した。そしてフレーム光度計(Elico(登録商標)CL361,India)を用いて、液体サンプルのNa+濃度およびK+濃度について分析した。結果を表2に示す。この結果から、50および100mg/kgの投与量での腸液において顕著に低下したこと、およびNa+のレベルおよびK+のレベルが、151.6±09.6〜105.4±06.9および6.2±0.28〜5.6±0.31であったことが示される。治療時を通して、Na+イオンおよびK+イオンが維持されるので、これは非常に有効な製剤である。K+イオンのレベルのみが重要であり、わずかに100mg/kgであった。
【0079】
【表2】

【0080】
実施例9
小腸の通過
動物を、それぞれが6匹のラットからなる4群に分け、薬剤または媒体を経口投与した60分後に、それぞれの動物に1mlの炭粉(1%CMC中に懸濁した5%の活性炭)を経口投与した。群Iには1%CMC(10ml kg-1)を投与し、そしてその他の群の動物には種々の製剤を与えた。別の群には基準薬剤として硫酸アトロピン(0.1mg kg-1、腹膜内)を与えた。30分後、頚椎を脱臼させて動物を殺し、腸を引き伸ばさずに取り出し、湿らせたろ紙上に縦方向に置いた。腸(幽門括約筋〜盲腸)の長さおよび炭が移動した距離を腸の長さのパーセントとして、それぞれの動物について評価した。群の平均を比較し、阻害パーセントとして表した(Lutterodt,J.Ethnopharmacol.25,1989,235−247)。表3から、ヒマシ油で促進された消化器の通過に関する製剤F5の減少パーセントは43.19〜66.70%であり、製剤と共に炭が移動した距離は27.6±3.2〜50.9±2.6であったことが明らかとなった。従って、この製剤の投与量依存性の効果は、合成薬アトロピンと類似していた。アトロピンの長期使用は分泌を完全に遮断するが、これは害作用である。
【0081】
【表3】

【0082】
実施例10
急性の胃潰瘍/十二指腸潰瘍に対する予防
インドメタシンで誘導される胃潰瘍に対する種々の製剤の効果を評価するために、異なる投与量(25〜100mg kg-1、経口)の製剤を、10匹のマウスからなる群にそれぞれの投与量だけ投与した。同時に同数のマウスからなる一群を、コントロールとして扱った。結果を表4に示す。表4の結果は、投与量依存性の抗潰瘍性が顕著であり、予防のパーセント比率の範囲が27.03〜75.38であることを表す。製剤F5のpHは中性であるが、治療前の胃のpHは2.5〜4.2であり、それに対して治療後のpHはアルカリ側(7を超える)であることが分かった。合成薬/アロパシー薬のラニチジンは、製剤F5のそれとほとんど類似する82.20%を示すが、長期使用により胃における正常な分泌を遮断する。
【0083】
表5は、十二指腸潰瘍に対する製剤F5の効果を示す。この効果は、それを治療するための公知の標準的な合成薬ラニチジンに匹敵する。表5から、製剤F5が90.2%の予防を示すのに対して、標準的な合成薬の場合は同じく77%であることは明白である。ここで製剤F5としては、シサンペロス・パレイラ、マンギフェラ・インディカ、シナモマム・スピーシーズおよびブチャナニア・ランザンを含む。
【0084】
【表4】

【0085】
【表5】

【0086】
実施例11
フリーラジカル生成の測定
粘膜を除去した小腸を、氷冷した0.9%NaCl中で、Potter−Elvehjemガラスホモジナイザーを用いて30秒間ホモジナイズ(5%)した。このホモジネートを800×gで10分間の遠心分離にかけ、次いでその上清を12,000×gで15分間の遠心分離にかけ、次の測定に使われるミトコンドリア画分を得た(Das and Banerjee,Mol.Cell Biochem.125,1993,115−125)。スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)(Kakkar et al,Indian J.Biochem.Biophys.21,1984,130−132)およびカタザーゼ(CAT)(Aebi,Catalase,in Methods in Enzymatic Analysis,2 Ed,(Ed.: H.U.Bergmeyer)Acadamie Press,New York 1952,Vol.3,pp.673)などの酵素活性と共に、脂質ペルオキシダーゼ(LPO)のレベル(Ohkawa et al,Anal.Biochem.95,1979,351−358)を測定した。
【0087】
実施例12
一般的な巨視的な挙動および急性毒性の研究
異なる投与量(25〜2000mg kg-1、経口)の製剤を10匹のマウスの群に投与し、同時に同数のマウスの一群をコントロールとして扱った。これらの動物を1時間継続して、次の4時間は半時間の間隔をあけて、巨視的な挙動、たとえば一般的な運動性、ライジング、痙攣、尻尾をつまんだことに対する反応、かじる動作、立毛、瞳孔のサイズ、糞便の排出および摂食の挙動など、のあらゆる変化について観察し、さらに72時間まで死亡数について観察した。MillerおよびTainterの方法(Proc.Soc.Exp.Biol.Med.57,1944,261−264)によって、マウスでの急性LD50(50%の致死量)値を計算した。
【0088】
引用文献
20030119916 2003年6月26日 Fowler,David
6,187,313 2001年2月 Segelman
5,728,384 1998年3月 Tokuyama
Sairam et al.J.Ethnopharmacology.82 pp.1−9,2002。
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Anonymous,Indian Medicnal Plants,Vol.2 Orient Longman Ltd.publication,Madras.84−86,1994

【特許請求の範囲】
【請求項1】
消化器疾患を治療するためのハーブ組成物であって、前記組成物は、5〜10重量%のマンギフェラ・インディカ(Mangifera indica)からの抽出物、5〜10重量%のシサンペロス・パレイラ(Cissampelos pareira)のものならびに5〜10重量%のシナモマム・スピーシーズ(Cinnamomum sp.)ブチャナニア・ランザン(Buchanania lanzan)のもの、任意で5〜10%のその他の薬理学的に許容される結合剤、希釈剤および潤滑剤を含む前記組成物。
【請求項2】
消化器疾患が、下痢、赤痢、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、腹痛、過敏性腸症候群および抗痙攣である、請求項1に記載のハーブ組成物。
【請求項3】
前記組成物が、高酸化防止性、肝臓保護性、消化促進性、胆汁分泌促進性、鎮静性および免疫強化性を有する植物抽出物の相乗的混合物である、請求項1に記載のハーブ組成物。
【請求項4】
植物抽出物が、根、種子および地上部から選択される植物の一部から得られる、請求項1に記載のハーブ組成物。
【請求項5】
シサンペロス・パレイラの抽出物が根から得られる、請求項1に記載のハーブ組成物。
【請求項6】
マンギフェラ・インディカの抽出物が種子仁から得られる、請求項1に記載のハーブ組成物。
【請求項7】
シナモマム・スピーシーズの抽出物が葉および樹皮から得られる、請求項1に記載のハーブ組成物。
【請求項8】
ブチャナニア・ランザンの抽出物が樹皮から得られる、請求項1に記載のハーブ組成物。
【請求項9】
植物抽出物が50%のアルコール水溶液抽出物である、請求項1に記載のハーブ製剤。
【請求項10】
前記結合剤が、デンプン、デンプン糊、アラビアゴムおよびカルボキシメチルセルロースからなる群より選択される、請求項1に記載のハーブ組成物。
【請求項11】
用いる希釈剤がラクトースである、請求項1に記載のハーブ組成物。
【請求項12】
用いる潤滑剤がデンプンおよびラクトース由来である、請求項1に記載のハーブ組成物。
【請求項13】
66.7% w/wの砂糖シロップを媒体として用いる、請求項1に記載のハーブ組成物。
【請求項14】
前記組成物が全製剤の約15〜50重量%を含む、請求項1に記載のハーブ組成物。
【請求項15】
請求項1に記載のハーブ組成物を調製する方法であって、前記方法は、
a.葉、樹皮、根および地上部を含む群からの、薬用植物の一部を得る工程;
b.工程(a)の植物の一部を乾燥させる工程;
c.工程(b)の乾燥した植物材料を粉末化して粗粉末を得る工程。
d.乾燥した植物材料の粉末を25〜35℃の範囲の温度で抽出する工程;
e.その植物材料を、1:8〜1:15の割合のアルコール水溶液で4〜7日間かけて抽出する工程;
f.得られた抽出物を、減圧下40〜60℃の範囲の温度で濃縮する工程、ならびに
g.溶媒を完全に除去するために、濃縮された抽出物を凍結乾燥することによって、抽出物を得る工程、
h.マンギフェラ・インディカ、シサンペロス・パレイラ、ブチャナニア・ランザンおよびシナモマム・スピーシーズの抽出物と、5〜15重量%のその他の薬理学的に許容される結合剤、希釈剤および潤滑剤とを混合して、その組成物を調製する工程、を含む方法。
【請求項16】
工程(a)の薬用植物が、マンギフェラ・インディカ、シサンペロス・パレイラ、ブチャナニア・ランザンおよびシナモマム・スピーシーズを含む群より選択される、請求項15に記載のハーブ組成物を調製する方法。
【請求項17】
工程(b)において、40〜50%のエタノール水溶液を用いて抽出を実施する、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
マンギフェラ・インディカ、シサンペロス・パレイラおよびシナモマムの植物、ならびに根、種子および地上部から選択される植物の一部から植物抽出物を得る、請求項15に記載のハーブ組成物を調製する方法。
【請求項19】
シサンペロス・パレイラの抽出物が根である、請求項15に記載のハーブ組成物を調製する方法。
【請求項20】
マンギフェラ・インディカの抽出物が種子仁である、請求項15に記載のハーブ組成物を調製する方法。
【請求項21】
シナモマム・スピーシーズの抽出物が葉である、請求項15に記載のハーブ組成物を調製する方法。
【請求項22】
工程(f)において、植物抽出物が50%のアルコール水溶液の抽出物である、請求項15に記載のハーブ組成物を調製する方法。
【請求項23】
工程(h)において、前記結合剤がデンプン、デンプン糊、アラビアゴムおよびカルボキシメチルセルロースからなる群より選択される、請求項15に記載のハーブ組成物を調製する方法。
【請求項24】
工程(h)において、用いる希釈剤がラクトースである、請求項15に記載のハーブ組成物を調製する方法。
【請求項25】
工程(h)において、用いる潤滑剤がデンプンおよびラクトース由来である、請求項15に記載のハーブ組成物を調製する方法。
【請求項26】
前記組成物が全製剤の約25〜50重量%を含む、請求項15に記載のハーブ組成物を調製する方法。
【請求項27】
薬学的に許容される量をそれが必要な対象に投与することによる消化器疾患の治療のための組成物の使用。
【請求項28】
対象が哺乳動物である、請求項27に記載の組成物の使用。
【請求項29】
前記組成物を、シロップ、錠剤、カプセルおよび粉末を含む群より選択される経口用の製剤として適用する、請求項27に記載の組成物の使用。
【請求項30】
ヒマシ油で誘導される下痢における適用量が25〜100mg/kgであり、これにより16.92〜76.69の予防%を与える、請求項27に記載の組成物の使用。
【請求項31】
ヒマシ油で促進される消化器の通過における適用量が25〜100mg/kgであり、これにより43.19〜66.70の治療比率%を与える、請求項27に記載の組成物の使用。
【請求項32】
ヒマシ油で誘導される体液貯留における適用量が25〜100mg/kgであり、その体液貯留が2.14±0.34〜1.12±0.10に減少する、請求項27に記載の組成物の使用。
【請求項33】
ヒマシ油で誘導される体液貯留における適用量が25〜100mg/kgであり、ナトリウムの濃度が151.6±9.6〜105.4±06.9に減少する、請求項27に記載の組成物の使用。
【請求項34】
ヒマシ油で誘導される体液貯留における適用量が25〜100mg/kgであり、カリウムの濃度が6.4±0.71〜5.6±0.31に減少する、請求項27に記載の組成物の使用。
【請求項35】
インドメタシンで誘導される急性胃潰瘍における適用量を25〜100mg/kgとする結果、27.03〜75.38%の予防パーセントとなり、胃壁粘膜が顕著に肥厚する、請求項27に記載の組成物の使用。
【請求項36】
システアミンで誘導される十二指腸潰瘍における適用量を25〜100mg/kgとすることにより、コントロールにおける潰瘍の80%の発生率と比べて41.7〜90.2の発生率(治療されたもの)が示される、請求項27に記載の組成物の使用。
【請求項37】
過剰の酸を中和することによって、この組成物が即座に胃の酸性度を軽減させる、請求項27に記載の組成物の使用。

【公表番号】特表2009−502731(P2009−502731A)
【公表日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−512718(P2005−512718)
【出願日】平成15年12月29日(2003.12.29)
【国際出願番号】PCT/IN2003/000406
【国際公開番号】WO2005/063271
【国際公開日】平成17年7月14日(2005.7.14)
【出願人】(595059872)カウンシル オブ サイエンティフィク アンド インダストリアル リサーチ (81)
【Fターム(参考)】