説明

消化液処理方法及びその装置

【課題】ユーグレナの培養を促進させながら消化液を浄化する。
【解決手段】消化液処理装置1は、大気ガスA及びバイオガスBと共に消化液Dを導入してユーグレナを培養するユーグレナ槽11と、このユーグレナ槽11内に滞留した前記ユーグレナの培養液のpHを測定する測定手段であるセンサー24と、前記測定されたpHの値が4以下(例えばpH1.5以上4.0以下)となるようにpH調整液Cを消化液Dに供給するpH調整手段であるポンプP2とを備える。ユーグレナが培養された液相は固液分離処理してユーグレナを分離した後に、この液相を消化液Dと共にユーグレナ槽11でのユーグレナの培養に供するとよい。ユーグレナを除去した液相は曝気処理した後に固液分離処理し、この固液分離水を消化液Dと共に前記ユーグレナの培養に供するとよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機性廃棄物からメタンと炭酸ガスを主成分とするバイオガスを発生させる発酵技術、特に、メタン発酵から排出される消化液とバイオガスを用いてユーグレナを培養し、このユーグレナを資源として回収すると共に消化液を浄化する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ユーグレナは乾物当たりで51%ものたんぱく質を含んでおり高い栄養価がある。また、クロレラのような硬い細胞壁をもたないため、そのまま食べても簡単に消化できる。ユーグレナにはビタミン類や微量ミネラル類も豊富に含まれている。このようなことから家畜の餌として適している。また、ユーグレナ特有の成分からビフィズス菌の増殖作用など種々の生理活性が期待されているラミナリアオリゴ糖、甘味料、保存剤、保湿剤などに使われるトレハロース並びに生分解性フィルムなどの製造が可能である。
【0003】
食品残渣を原料としたメタン発酵消化液とバイオマスを使ってユーグレナを生産する装置としては例えば特許文献1に示されたバイオマス生産設備が挙げられる。この設備では消化液に凝集剤を添加して固液分離した上澄み液をユーグレナの培養液に利用している。培養槽は複数の槽に別れており、上部から光を照射して、底部からバイオガスを散気する構造となっている。各槽は各々独立に消化液を固液分離した液分が供給されるようになっているが培養後の液は最後の槽から排出されるようになっている。培養条件は常温(25℃)となっている。尚、消化液の浄化する手段については開示されていない。
【特許文献1】特開2003−8838
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
消化液を培養培地とし、光独立栄養にてユーグレナを培養する場合、消化液の濁度や色度が光を遮るために培養の効率が悪い。この問題に対しては大量の水による希釈や凝集剤を用いた固液分離によって対処がなされているが、ユーグレナの栄養成分が希薄となり、さらには一部が除去されたりするので、ユーグレナの生産性が悪い。
【0005】
消化液に含まれる汚濁成分を浄化する観点からするとユーグレナは主たる汚濁成分であるアンモニアとリン酸を吸収するので利用できる可能性が十分にある。
【0006】
しかしながら、希釈や凝集剤処理された消化液ではユーグレナの培養密度が低く、浄化効率が悪い。さらに、消化液に含まれる汚濁成分の濃度が高いため、汚濁成分を吸着できるほどの密度にユーグレナを培養することはできない。このため、従来の単なる押し流れ式の培養方法では汚濁物質をユーグレナとして回収することは不可能である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで、本発明の消化液処理方法は大気ガスとバイオガスを導入しながら消化液をpH4以下のもとでユーグレナと接触させて前記ユーグレナを培養する。
【0008】
この消化液処理方法によれば消化液の濁度や色度が低下してユーグレナの増殖に必要な光の透過性が向上するのでユーグレナの増殖が促進される。したがって、ユーグレナの培養密度が向上する。また、バイオガスが炭酸ガス源として利用されることで、大気ガスよりも高濃度な炭酸ガス濃度の環境が形成されやすくなり、これによってもユーグレナの増殖が促進する。
【0009】
前記ユーグレナが培養された液相は固液分離処理して前記ユーグレナを分離した後に、この液相を前記消化液と共に前記ユーグレナの培養に供するとよい。前記分離された液相のpH値は前記培養液のpH値とほぼ同等なので前記pHの調整を低廉に行える。前記分離されたユーグレナは飼料として利用できる。また、固液分離処理された液相にユーグレナが残留していても、この液相が前記消化液と共に前記ユーグレナの培養に供されることで前記ユーグレナの培養系のユーグレナ濃度が高まる。
【0010】
前記ユーグレナを除去した液相は曝気処理した後に固液分離処理し、この固液分離水を前記消化液と共に前記ユーグレナの培養に供するとよい。前記曝気により前記液相中の濁質成分が処理されて光の透過性が向上する。また、ユーグレナが培養される過程で発生する汚泥が減少し、回収されるユーグレナに混入する汚泥量が低減する。
【0011】
前記消化液はpH1.5以上4.0以下のもとでユーグレナと接触させるとよい。より一層効率的に消化液の色度及び濁度が低減させながらユーグレナを培養できる。
【0012】
また、本発明の消化液処理装置は大気ガス及びバイオガスと共に消化液を導入してユーグレナを培養するユーグレナ槽とこのユーグレナ槽内に滞留した前記ユーグレナの培養液のpHを測定する測定手段と前記測定されたpHの値が4以下となるようにpH調整液を前記消化液に供給するpH調整手段とを備える。
【0013】
この消化液処理装置によれば、ユーグレナ槽内に導入された消化液の濁度や色度が低下してユーグレナの増殖に必要な光の透過性が向上するのでユーグレナの増殖が促進される。また、バイオガスを炭酸ガス源とすることで大気ガスよりも高濃度な炭酸ガス濃度の環境が形成され、ユーグレナの増殖が促進する。
【0014】
前記消化液処理装置においては、前記ユーグレナ槽から供された前記ユーグレナの培養液を固液分離処理してユーグレナを分離する固液分離手段と、この固液分離手段によって分離された前記培養液の液相の一部を前記ユーグレナ槽に返送する循環槽とを備えるとよい。前記固液分手段によって分離された液相のpH値は前記培養液のpH値とほぼ同等なっているので前記培養液のpH調整を低廉に行える。また、前記固液分離手段によって分離された液相にユーグレナが残留していても、この液相を前記ユーグレナ槽に供されることで前記ユーグレナ槽内のユーグレナ濃度が高まる。
【0015】
さらに、前記消化液処理装置においては、前記固液分離手段によってユーグレナが除去された培養液を曝気処理する曝気槽と、この曝気槽から供給された液相を固液分離処理する沈殿槽とを備え、前記沈殿槽内で分離された液相成分を消化液と共に前記ユーグレナ槽に供するようにするとよい。前記曝気槽での曝気により前記液相中の濁質成分が処理されて光の透過性が向上する。また、前記ユーグレナ槽内で発生する汚泥が減少し、回収されるユーグレナに混入する汚泥量が低減する。
【0016】
前記測定手段は前記培養液の溶存酸素濃度、溶存二酸化炭素濃度を測定する機能を有するようにするとよい。前記培養液に含まれるユーグレナの活性状態を把握でき、ユーグレナの活性を高率に維持できる。前記測定項目の他には液温、酸化還元電位が例示される。
【0017】
前記大気ガス及びメタンガスは前記ユーグレナ槽の底部付近から導入するようにするとよい。前記培養液の攪拌と共に前記大気ガス及びメタンガスに含まれる炭酸ガスが前記培養液に溶解し易くなり、ユーグレナの増殖が促進される。また、前記ユーグレナ槽から排出されるガスの回収が容易となる。
【発明の効果】
【0018】
以上の発明によればユーグレナの培養を促進させながら消化液を浄化できる。
【0019】
本発明によって分離された固形成分は汚泥として回収でき、リン濃度の高い肥料として利用できる。また、本発明によって培養されて回収されたユーグレナは家畜の餌等に利用できる。さらに、本発明によって浄化された消化液は汚泥物質濃度、濁度、色度が低下しており、消化液のまままたは消化液を水で希釈したものに比べても放流や土壌浸透等が容易となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
図1は発明の第一の実施形態に係る消化液処理装置1の概略構成図である。
【0021】
ユーグレナは培養密度に限界があるので単純に培養しただけでは十分な浄化は望めない。そこで、消化液処理装置1ではユーグレナを回収した後の液相をユーグレナの培養液に戻すことにより、ユーグレナを効率的に培養すると共に消化液の浄化を行う。
【0022】
すなわち、消化液処理装置1はユーグレナ槽11と循環槽12とを備える。ユーグレナ槽11は少なくとも消化液を導入してユーグレナを培養するための槽である。循環槽12はユーグレナ槽11内に滞留したユーグレナの培養液の固液分離水を循環水(ウ)としてユーグレナ槽11に返送するための槽である。循環槽12は配管13,14を備えている。
【0023】
配管13はユーグレナ槽11内の培養液を導入する。配管13はユーグレナ槽11のほぼ中央側面部に接続されている。配管13にはバルブV1と固液分離装置15とが設置されている。バルブV1はユーグレナ槽11内の培養液の一部を引き抜くためのバルブである。固液分離装置15は前記引き抜かれた培養液からユーグレナを分離する。分離されたユーグレナGは家畜の餌等に利用される。固液分離装置15としては例えば汚泥濃縮技術に採用されている既知の遠心分離装置、重力濃縮装置、浮上分離装置、膜分離装置、ろ紙ろ過装置等が挙げられる。
【0024】
配管14は前記固液分離水をユーグレナ槽11に供給する。配管14には前記固液分離水をユーグレナ槽11に移送するためのポンプP1が設置されている。配管14は希釈水とpH調整液Cとが適宜に添加された消化液Dを含んだ固液分離水が循環水(ウ)としてユーグレナ槽11の上部から導入されるように設置されている。配管14にはpH調整液C、消化液D、希釈水Eが各々供給される配管16,17,18が接続されている。pH調整液C、消化液D、希釈水EはそれぞれポンプP2,P3,P4によって供給される。ポンプP2はユーグレナ槽11内の液相部分のpHを調整するための手段であってセンサー24によって測定されたpHに基づき動作する。pH調整液Cとしては酸溶液が挙げられる。前記酸溶液は水処理技術に採用されている既知の酸性水溶液を適用すればよい。また、配管14には循環槽12内の固液分離水を処理水として系外に排出するための配管26が接続されている。この配管26には前記処理水を移送するためのポンプP5が設置されている。
【0025】
ユーグレナ槽11には配管19,20,21が接続されている。配管19は少なくともそのガス吐出口がユーグレナ槽11内の液相(イ)内に配置される。バイオガスBはポンプP7によって供給され、大気ガスAはポンプP6によって供給される。配管20はユーグレナ槽11内の気相(ア)に滞留するガス成分をポンプP8によって吸引する。配管19は配管20から導入した前記ガス成分を吐出してユーグレナ槽11の液相(イ)内のユーグレナ流動性を維持させる。配管21はユーグレナ槽11内の気相(ア)の成分を系外排出する。ユーグレナ槽11から排出されたガスIはボイラーや発電に利用される。
【0026】
ユーグレナ槽11は光源22とヒーター23とセンサー24と備える。光源22は培養液に光を照射してユーグレナの活性を維持させる。光源22は光合成に有効な400〜700nmのいずれかの波長を含むものであればよく、太陽光、蛍光灯、発光ダイオード等またはこれらの光を光ファイバーなどで引き込んだ形態が挙げられる。ヒーター23は培養液の温度を維持させてユーグレナの活性を維持させる。光源22及びヒーター23はユーグレナ槽11の内外の適宜な位置に複数設置される。センサー24は培養液の液温、pH、溶存酸素濃度、溶存二酸化炭素濃度、液位及び酸化還元電位の測定手段である。
【0027】
さらに、ユーグレナ槽11の底部には汚泥濃縮部25が設けられている。汚泥濃縮部25にて濃縮された汚泥Hはセンサーによってユーグレナ槽11の液位が監視されるもとでバルブV2によって定期的に系外排出される。排出された汚泥Hは肥料として利用される。
【0028】
ポンプP6,P7はコンプレッサーとバルブを利用した注入方式に置き換えることができる。ポンプP1〜P5を用いた移送方式は液面の高低差と弁とを利用した移送方式に置き換えてもよい。バルブV1,V2はポンプによる移送方式に置き換えてもよい。
【0029】
図1及び図3を参照しながら消化液処理装置1の動作例について説明する。
【0030】
ステップS1では消化液Dと希釈水EとがそれぞれポンプP3,P4によってユーグレナ槽11に供給される。ステップS2では一定時間後にポンプP1が稼動し、循環槽12内の固液分離水(ウ)がユーグレナ槽11に供給される。ステップS3では一定時間後にポンプP1が停止し固液分離水(ウ)の供給が停止される。ステップS1〜S3は繰り返し実行される。1回の繰り返しは12時間〜7日間の時間で実行される。ユーグレナ槽11内の液相(イ)成分のユーグレナ濃度はポンプP1の稼動時間が調整されることで調節される。ユーグレナ槽11内の気相成分はポンプP8によって前記液相成分に注入されて循環する。
【0031】
また、ユーグレナ槽11では培養液内または培養液外に設置された光源22によって光が照射されてユーグレナが培養される。そして、ユーグレナ槽11内の液相部分(培養液)の液温、pH、溶存酸素濃度、溶存二酸化炭素濃度、液位はセンサー24によって測定される。さらに、ユーグレナ槽11では消化液に含まれるアンモニア、リン酸がユーグレナの培養に利用されるので消化液の汚濁物質の浄化が進む。そして、ユーグレナは増殖の際に消化液に含まれる重金属類やビタミン類を積極的に吸収するので、これによる消化液が浄化される。
【0032】
前記液相部分の液温は前記測定された液温の値に基づき制御されたヒーター23により20〜30℃に維持される。液相(イ)のpHは前記測定されたpHの値に基づき制御されたポンプP2によって例えばpH1.5〜4.0に調節される。液相(イ)の溶存酸素濃度及び溶存二酸化炭素濃度は前記測定された溶存酸素濃度及び溶存二酸化炭素濃度の値に基づき制御されたポンプP6,P7によって例えば溶存酸素濃度5〜70%(飽和炭酸ガス濃度比)及び溶存二酸化炭素濃度0〜50%(飽和炭酸ガス濃度比)に調節される。液相(イ)は前記測定された液位の値に基づき制御されたバルブV1によって液相(イ)の容量が一定の容量となるように調節される。
【0033】
図2は発明の第二の実施形態に係る消化液処理装置2の概略構成図である。
【0034】
消化液処理装置2は循環槽12内の液相をユーグレナ槽11に返送する系に曝気槽31と沈殿槽32とを設けている。曝気槽31には配管33,34,35が接続されている。配管33は循環槽12の液相を導入する。配管34はポンプ34から供給された曝気用の大気ガスLを導入する。配管33にはさらに配管36,37,38が接続されている。配管36はポンプP11から供給されたpH調整液Jを導入する。pH調整液JはpH調整液Cと同種のものを適用すればよい。配管37はポンプP12から供給された消化液Kを導入する。配管38はポンプP13から供給された希釈水Eを導入する。配管35は曝気槽31内の液相(エ)を沈殿槽32に移送するための配管である。配管35は液相(エ)を引き抜くためのポンプP14を備えている。また、曝気槽31は液相(エ)の液温、pH、溶存酸素濃度、液位等を監視するセンサー39を備えている。
【0035】
沈殿槽32は沈殿方式により濃縮させた汚泥Mを系外排出するためのバルブV3を備えている。一方、沈殿槽32内で汚泥Mが分離されて得られた前処理水(オ)はポンプP4によって引き抜かれて消化液Dの希釈水Eとして利用される。
【0036】
ポンプP10〜P14を用いた移送方式は液面の高低差と弁とを利用した移送方式に置き換えてもよい。バルブV3はポンプによる移送方式に置き換えてもよい。
【0037】
図2及び図4を参照しながら消化液処理装置2の動作例について説明する。
【0038】
ステップS11では曝気槽31に固液分離水(ウ)と共に消化液Dと希釈水EとがそれぞれポンプP3,P4によって供給される。ステップS12では曝気槽31内の液相(エ)が大気ガスによって曝気処理される。ステップS13では液相(エ)が沈殿槽32に移送される。ステップS14では普通沈殿によって汚泥Mが沈殿槽32内の前処理水(オ)から分離する。ステップS11〜S14は繰り返し実行される。
【0039】
ステップS15では沈殿槽32で得られた前処理水(オ)である固液分離水がポンプP4によってユーグレナ槽11に供給される。ステップS16ではポンプP1が稼動し、循環槽12内の液相(ウ)がユーグレナ槽11に供給される。ステップS17では一定時間後にポンプP1が停止し液相(ウ)の供給が停止される。ステップ18では液相(ウ)の一部が処理水FとしてポンプP5によって系外移送される。ステップS15〜S18は繰り返し実行される。
【0040】
以上のように消化液処理装置2によれば、曝気槽31には大気ガスLが供給され次いで沈殿槽32にて汚泥Mが固液分離されることにより、ユーグレナ槽11内の液相(イ)で発生する汚泥が減少し、回収されるユーグレナGに混入する汚泥量が低減する。
【0041】
また、曝気槽31及び沈殿槽32を介した前処理液はBODが低下しているので、液相成分における雑菌や原生生物等の汚泥の発生が抑制され、水質が安定すると共に回収したユーグレナ槽11への前記汚泥の混入が減少する。
【0042】
以下に消化液処理装置1の実施例を示した。
【0043】
表1は消化液処理装置1の構成に基づく連続培養装置(有効容量18L)によって消化液の浄化試験を行った結果を示したものである。開示された負荷の減少率(%)は希釈された消化液とユーグレナによって処理された消化液のアンモニア濃度、リン酸濃度、濁度、色度の値に基づき算出された。この表に示された減少率(%)の値から明らかなように24日間にわたってユーグレナを培養することができ、消化液のアンモニア濃度、リン酸濃度、濁度、色度が良好に低下することが確認された。
【0044】
【表1】

【0045】
図5は消化液処理装置1の構成に基づく連続培養装置(有効容量18L)においてpH3,pH6及びpH7で培養されたユーグレナの個体数の経時的変化を示す。この結果から明らかなようにpHが7未満のもとで培養されてもユーグレナの個体数は増加する傾向にあることが確認された。
【0046】
図6は前記連続培養装置においてpH3,pH6及びpH7で培養されたユーグレナの増殖率の経時的変化を示す。この結果から明らかなようにpHが7未満のもとで培養された場合でもユーグレナの増加率はpH7で培養された場合とほぼ同様の経時的変化を示すことが確認された。
【0047】
図7は前記連続培養装置においてpH3,pH6及びpH7で培養された場合の培養液pHの経時的変化を示す。この結果から明らかなようにpH3未満で培養されても培養液のpHの値はほぼ一定に維持されることが確認された。
【0048】
図8は消化液(汚泥濃度1.4%)のpHと着色度(JIS K−0102)の関係を示した特性図である。この結果から明らかなようにpH4以下の条件で消化液の着色度が低下する傾向にあることが確認された。
【0049】
図9は消化液(汚泥濃度1.4%)のpHと濁度(カオリン相当値,下水道試験法第2章第5節参照)の関係を示した特性図である。この結果から明らかなようにpH4以下の条件で消化液の濁度が低下する傾向にあることが確認された。
【0050】
図10は前記連続培養装置においてpH3で培養された場合の培養液pHの経時的変化を示す。この結果から明らかなようにpHが3未満で培養されても培養液のpHの値はほぼ一定に維持されることが確認された。
【0051】
図11は前記連続培養装置においてpH3で培養された場合のユーグレナの個体数の経時的変化を示す。この結果から明らかなようにpHが3未満のもとで培養されてもユーグレナの個体数は増加する傾向にあることが確認された。
【0052】
図12は前記連続培養装置において各種pHで90時間培養した後のユーグレナの個体数を示す。縦軸の数値0.0.E+00,0,5.0E+05,1.0E+06,1.5E+06,2.0E+06,2.5E+06,3.0E+06,3.5E+06はそれぞれ0,5.0×105,1.0×106,1.5×106,2.0×106,2.5×106,3.0×106,3.5×106を意味する。図示された結果から明らかなように特にpHが3〜4の条件でユーグレナの個体数が最大となる傾向にあることが確認された。
【0053】
図13は前記連続培養装置においてユーグレナを含んだ場合と含んでない場合に各種pHで培養した後の培養液の着色度を開示する。この結果から明らかなようにpHが4未満の条件のもとユーグレナを含んだ状態で培養されると特に着色度が減少する傾向にあることが確認された。
【0054】
図14は前記連続培養装置においてユーグレナを含んだ場合と含んでない場合に各種pHで培養した後の培養液の濁度を開示する。この結果から明らかなようにpHが4未満の条件のもとユーグレナを含んだ状態で培養されると特に濁度が減少する傾向にあることが確認された。
【0055】
また、図15〜図18は前記連続培養装置においてユーグレナを固液分離機によって回収しながら培養しているときのユーグレナの個体数及び培養液の溶存酸素、溶存酸素濃度(DO)、溶存二酸化炭素濃度(DCO2)、pH、温度の経日的変化をそれぞれ示す。
【0056】
図15の特性図によるとユーグレナは150000個/ml前後を推移しながら安定に維持されていることが確認できる。図16の特性図によると二酸化炭素濃度が大きく変動しているが1日1回の消化液の投入によって上昇してその後にユーグレナが消費して低下するパターンを示していることが確認できる。また、図17及び図18の特性図によると培養液のpH及び温度は前記連続培養装置のpH及び温度の調整機能によってほぼ一定に保持されることが確認できる。以上のことから発明の実施に係る連続培養装置によってユーグレナが安定に増殖することが示された。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】発明の第一の実施形態に係る消化液処理装置の概略構成図。
【図2】発明の第二の実施形態に係る消化液処理装置の概略構成図。
【図3】第一の実施形態に係る消化液処理装置の動作例を説明したフローチャート。
【図4】第二の実施形態に係る消化液処理装置の動作例を説明したフローチャート。
【図5】pH3,pH6及びpH7で培養されたユーグレナの個体数の経時的変化。
【図6】pH3,pH6及びpH7で培養されたユーグレナの増殖率の経時的変化。
【図7】pH3,pH6及びpH7で培養された場合の培養液pHの経時的変化。
【図8】pH調整を行った消化液と着色度の関係を示した特性図。
【図9】pH調整を行った消化液と濁度(カオリン相当値)の関係を示した特性図。
【図10】pH3で培養された場合の培養液pHの経時的変化。
【図11】pH3で培養された場合のユーグレナの個体数の経時的変化。
【図12】各種pHで培養した場合のユーグレナの個体数。
【図13】ユーグレナを含んだ場合と含んでない場合に各種pHで培養した後の培養液の着色度。
【図14】ユーグレナを含んだ場合と含んでない場合に各種pHで培養した後の培養液の濁度(カオリン相当値)。
【図15】培養液中のユーグレナの個体数の経日的変化。
【図16】培養液の溶存酸素濃度及び溶存炭酸ガス濃度の経日的変化。
【図17】培養液のpHの経日的変化。
【図18】培養液の水温の経日的変化。
【符号の説明】
【0058】
1,2…消化液処理装置
11…ユーグレナ槽
12…循環槽
13,14,16〜21,26,33〜38…配管
15…固液分離装置
22…光源
23…ヒーター
24,39…センサー
25…汚泥濃縮部
31…曝気槽
32…沈殿槽
V1〜V3…バルブ
P1〜P14
A…大気ガス、B…バイオガス、C…pH調整液、D…消化液、E…希釈水、F…処理水、G…ユーグレナ、H…汚泥、I…ガス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
大気ガスとバイオガスを導入しながら消化液をpH4以下のもとでユーグレナと接触させて前記ユーグレナを培養することを特徴とする消化液処理方法。
【請求項2】
前記ユーグレナが培養された液相を固液分離処理して前記ユーグレナを分離した後に、この液相を前記消化液と共に前記ユーグレナの培養に供すること
を特徴とする請求項1に記載の消化液処理方法。
【請求項3】
前記ユーグレナを除去した液相を曝気処理した後に固液分離処理し、この固液分離水を前記消化液と共に前記ユーグレナの培養に供すること
を特徴とする請求項2に記載の消化液処理方法。
【請求項4】
前記消化液をpH1.5以上4.0以下のもとでユーグレナと接触させること
を特徴とする請求項1に記載の消化液処理方法。
【請求項5】
大気ガス及びバイオガスと共に消化液を導入してユーグレナを培養するユーグレナ槽と、
このユーグレナ槽内に滞留した前記ユーグレナの培養液のpHを測定する測定手段と、
前記測定されたpHの値が4以下となるようにpH調整液を前記消化液に供給するpH調整手段と
を備えたこと
を特徴とする消化液処理装置。
【請求項6】
前記ユーグレナ槽から供された前記ユーグレナの培養液を固液分離処理してユーグレナを分離する固液分離手段と、
この固液分離手段によって分離された前記培養液の液相の一部を前記ユーグレナ槽に返送する循環槽と
を備えたこと
を特徴とする請求項5に記載の消化液処理装置。
【請求項7】
前記固液分離手段によってユーグレナが除去された培養液を曝気処理する曝気槽と、
この曝気槽から供給された液相を固液分離処理する沈殿槽と
を備え、
前記沈殿槽内で分離された液相成分は消化液と共に前記ユーグレナ槽に供されること
を特徴とする請求項6に記載の消化液処理装置。
【請求項8】
前記測定手段は前記培養液の溶存酸素濃度、溶存二酸化炭素濃度を測定する機能を有すること
を特徴とする請求項5から7のいずれか1項に記載の消化液処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2008−207154(P2008−207154A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−48877(P2007−48877)
【出願日】平成19年2月28日(2007.2.28)
【出願人】(501438773)財団法人畜産環境整備機構 (2)
【出願人】(000006105)株式会社明電舎 (1,739)
【Fターム(参考)】