説明

液体加熱ユニット、これを備える液処理装置、および液処理方法

【課題】放射光の透過により内部の液体が加熱される液体貯留槽または導管の温度を監視することができる液体加熱ユニット、これを備える液処理装置、および液体処理方法を提供する。
【解決手段】放射光を放射するランプヒータと、前記ランプヒータを内部空間に挿通可能な円筒形状を有し、前記放射光を透過する材料で形成される円筒部材と、前記円筒部材の外周部に沿って配置され、前記放射光によって内部を流れる液体を加熱する液体通流部と、前記液体通流部を外側から覆い、前記放射光を反射する反射板と、前記反射板の外部に取り付けられる第1の温度センサとを備える液体加熱ユニットが開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体基板やフラットパネルディスプレイ用基板などの被処理体を処理するために液体を加熱する液体加熱ユニット、これを備える液処理装置、および液処方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスやフラットパネルディスプレイなどを製造する際には、これらの製造に用いる基板を洗浄する工程が適宜行われる。洗浄工程では、洗浄液が基板に向けて吐出され、その洗浄液により基板に吸着した残留物等が洗い流される。洗浄効果を高めるため、洗浄液を加熱することも多く、その加熱のため液体加熱用の加熱ユニットが利用されている(たとえば特許文献1)。
【0003】
特許文献1に記載される溶液加熱装置は、たとえば水銀灯やハロゲンランプなどの溶液を放射加熱可能なランプヒータと、光透過性および耐薬品性を有する石英で形成され、ランプヒータが配置される中空部を有する円筒形状の溶液槽とを備えている。溶液槽には、溶液の取入口と排出口が設けられ、取入口から溶液槽に流入する溶液が、中空部に配置されるランプヒータによって所定の温度に加熱され、排出口から排出されて液処理装置へ供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−90614号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
液体加熱用の液体加熱ユニットにおいて液体を短時間で加熱するため、ハロゲンランプからの放射光に対して石英よりも透過性の高いPFA(テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)により液体貯留槽または導管を形成する場合がある。これにより、PFAを透過した放射光が液体に吸収され、液体が効率よく加熱される。このようにハロゲンランプからの放射光はPFAを透過するため、放射光によってPFAそのものが高温に加熱されることは殆どない。しかし、PFAの周囲の部材がハロゲンランプからの放射光により加熱されると、融点以上の温度にPFAが加熱されるおそれがある。
【0006】
ところが、ハロゲンランプからの放射光を透過する材料で構成される部材の温度は、ハロゲンランプからの放射光に影響され、正確に測定できないため、液体貯留槽または導管の温度を監視するのが難しいという問題がある。
【0007】
本発明は、放射光の透過により内部の液体が加熱される液体貯留槽または導管の温度を監視することができる液体加熱ユニット、これを備える液処理装置、および液体処理方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様によれば、放射光を放射するランプヒータと、前記ランプヒータを内部空間に挿通可能な円筒形状を有し、前記放射光を透過する材料で形成される円筒部材と、前記円筒部材の外周部に沿って配置され、前記放射光によって内部を流れる液体を加熱する液体通流部と、前記液体通流部を外側から覆い、前記放射光を反射する反射板と、
前記反射板の外部に取り付けられる第1の温度センサと、を備える液体加熱ユニットが提供される。
【0009】
本発明の第2の態様によれば、第1の態様の液体加熱ユニットと、前記液体加熱ユニットの前記液体通流部と接続される循環ラインと、前記循環ラインから分岐する供給ラインと、前記供給ラインが接続され、当該供給ラインから供給される液体により被処理体を処理する処理ユニットとを備える液処理装置が提供される。
【0010】
本発明の第3の態様によれば、第1の態様の液体加熱ユニットへ被処理体の処理に利用される液体を供給し、当該液体を所定の温度に加熱するステップと、前記液体加熱ユニットにより所定の温度に加熱された前記液体の温度を測定するステップと、前記液体加熱ユニットにより所定の温度に加熱された前記液体を、前記被処理体を処理する処理ユニットへ供給するステップと、前記測定するステップにより測定された前記液体の温度が所定の温度よりも低い場合に前記処理ユニットの動作を停止するステップとを含む液処理方法が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明の実施形態によれば、放射光の透過により内部の液体が加熱される液体貯留槽または導管の温度を監視することができる液体加熱ユニット、これを備える液処理装置、および液体処理方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1の実施形態による液体加熱ユニットを示す斜視図である。
【図2】図1の液体加熱ユニットを示す断面図である。
【図3】第1の実施形態の第1の変形例による液体加熱ユニットを示す断面図である。
【図4】第1の実施形態の第2の変形例による液体加熱ユニットを示す断面図である。
【図5】本発明の第2の実施形態による液処理装置を模式的に示す図である。
【図6】図5の液処理装置に備わる液処理ユニットを説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の限定的でない例示の実施形態について説明する。添付の全図面中、同一または対応する部材または部品については、同一または対応する参照符号を付し、重複する説明を省略する。
(第1の実施形態)
図1および図2を参照すると、本発明の第1の実施形態による液体加熱ユニット10は、筐体11と、筐体11の内面に取り付けられた取り付け治具12により保持されてほぼ円筒状の形状を有する反射板13(13a、13b)と、反射板13の内面側に配置され、スパイラル状に巻かれたチューブ14と、スパイラル状のチューブ14の内側に設けられる円筒管15と、円筒管15のほぼ中心の軸に沿って、筐体11の外側にまで延びるランプヒータ16とを備える。
【0014】
筐体11は、たとえばステンレススチールやアルミニウムなどの金属で作製され、ほぼ直方体の形状を有している(図1では内部構造を図示するため、筐体11の2つの面の図示を省略している)。また、筐体11の内部には断熱構造(図示せず)が設けられており、これにより、筐体11自体が過度に加熱されることはない。また、筐体11の対向する一組の面には、それぞれフランジ部15aが取り付けられており、これらのフランジ部15aにより円筒管15が保持されている。また、一方のフランジ部15aには冷却ガスの導入管11i(図2)が設けられ、他方のフランジ部15aには対応する排気管11o(図2)が設けられており、これらを通して、円筒管15の内部に冷却ガス(たとえば室温程度の窒素ガス)を供給することができる。これにより、ランプヒータ16および円筒管15が過度に昇温されるのを抑えることができる。また、円筒管15は、具体的には石英から作製されると好ましい。
【0015】
円筒管15の外周部に巻き回されるスパイラル状のチューブ14は、たとえばテトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)から作製される。PFAは、たとえば石英などと比べ、ランプヒータ16からの放射光に対して高い透過率を有しているため、PFAでチューブ14を作製すると、その内部を流れる液体の加熱に有利である。また、チューブ14は、液体の流入管14iおよび流出管14oを有し、図示しないポンプにより送出される液体が流入管14iからチューブ14へ流入し、流出管14oから流出する。また、流出管14oには三方継ぎ手14jが設けられている。三方継ぎ手14jにおける液体の流出方向と交差する方向から、O−リングや所定の配管部材を用いて温度センサTCが挿入されており、温度センサTCによる温度測定を通して、チューブ14内を流れる液体の温度が制御される。この温度センサTCは、白金測温抵抗体やサーミスタなどの温測抵抗体であっても良いが、熱電対であると好ましい。
なお、液体は、たとえばイソプロピルアルコール(IPA)、脱イオン水(DIW)などであって良い。
【0016】
チューブ14の周りを覆うように配置される反射板13は、たとえばステンレスチールやアルミニウムなどの金属で作製することができる。本実施形態においては、チューブ14および円筒管15の取り付けの便宜から、反射板13は、下反射板13aおよび上反射板13bに分離することができ、取り付け治具12により一体に取り付けられて全体として円筒形状を有している。反射板13は、ランプヒータ16からの放射光を反射し、チューブ14内を流れる液体をより効率よく加熱するのに資する。反射板13の内面はたとえば鏡面に研磨されて良い。
【0017】
また、反射板13は、その内側のチューブ14に接するか又は近接して設けられている。しかも、上述のとおり、本実施形態においては、チューブ14は円筒管15の外周部に巻き付けられているため、チューブ14は円筒管15にも接するか又は近接している。チューブ14内を流れる液体は、主として、チューブ14を透過する、ランプヒータ16からの放射光を吸収することにより加熱される一方、チューブ14が反射板13および円筒管15に接するか又は近接していることから、反射板13および円筒管15からチューブ14への熱の伝導によっても加熱され得る。すなわち、本実施形態の構成によれば、チューブ14内を流れる液体は効率よく加熱される。
【0018】
また、反射板13の外周面には温度センサ17が取り付けられている。温度センサ17としては、白金測温抵抗体やサーミスタなどの温測抵抗体や熱電対を利用することができる。温度センサ17は温調器21に電気的に接続されている。
【0019】
ランプヒータ16は、水銀灯やハロゲンランプヒータであって良く、筐体11の外側において治具16aにより支持されている。ランプヒータ16の電極16eには、電源22が接続され(図2参照)、この電源22からの電力によりランプヒータ16が点灯し、その放射光によりチューブ14内を流れる液体が加熱される。ランプヒータ16と電源22とから構成される回路には遮断器23が設けられており、遮断器23は温調器21と電気的に接続されている。反射板13の温度が所定の基準温度より高くなると、温調器21から遮断器23に対して信号が出力され、この信号を入力した遮断器23は、電源22からランプヒータ16への電力の供給を遮断する。これにより、後述するように円筒管15が過度に加熱されるのが抑制される。
【0020】
上記の構成を有する液体加熱ユニット10においては、ランプヒータ16からの放射光は、石英で形成される円筒管15を透過し、PFAで形成されるチューブ14を透過してチューブ14内を流れる液体により吸収される。これにより液体が加熱される。液体の温度は、チューブ14の流出管14oに設けられた温度センサにより監視され、電源22からランプヒータ16へ供給される電力を調整することにより液体の温度が所定の温度に制御される。これにより、液体加熱ユニット10が接続される液処理装置等に対して所定の温度の液体を供給することが可能となる。
【0021】
ここで、放射光が円筒管15を透過する際には、円筒管15を構成する石英が放射光を僅かではあるものの吸収するため、円筒管15もまた加熱されることとなる。ランプヒータ16自体の温度は約800℃から約1000℃までの温度にまで達することから、円筒管15もまたこの程度の温度まで加熱される可能性がある。石英の耐熱温度は1500℃程度であるため、円筒管15が熱により変形したり破損したりすることは殆どない。ところが、チューブ14を構成するPFAの融点は315℃程度であるため、1000℃程度まで加熱された円筒管15により、チューブ14が加熱されると、チューブ14には変形や破損が生じるおそれもある。そこで、チューブ14の保護のためチューブ14の温度を監視することが好ましい。しかし、ランプヒータ16からの放射光が照射され、しかもその放射光が透過するチューブ16の温度を温度センサで測定しようとしても正確に測定できない。また、円筒管15の温度を温度センサで測定する場合にも、同様に、正確な温度測定が難しい。
【0022】
しかし、本実施形態による液体加熱ユニット10によれば、チューブ14を取り囲むように配置される反射板13の外周面に取り付けられた温度センサ17によって反射板13の温度を測定することを通して、チューブ14、およびチューブ14よりもランプヒータ16に近く、より高温に加熱され得る円筒管15の温度を監視することが可能となる。すなわち、PFAの融点よりもたとえば10℃〜30℃低い温度に温調器21の基準温度を設定しておくことにより、反射板13の温度が基準温度を超えたときに、遮断器23により、ランプヒータ16への電力供給が遮断される。よって、円筒管15ひいてはチューブ14が過度に加熱されるのを抑制することが可能となる。
【0023】
また、チューブ14より内側に設けられ、ランプヒータ16に近い円筒管15の温度は、チューブ14や反射板13の温度よりも高くなるため、円筒管15の温度と反射板13の温度との相関関係を求め、これに基づいて上記の基準温度を決定しても良い。ただし、本実施形態において円筒管15は石英で作製されており、ランプヒータ16からの放射光で加熱される石英製の円筒管15の温度を測定することは難しい。そこで、ランプヒータ16によりチューブ14を流れる液体を加熱しつつ反射板13の温度を測定し、この温度が安定した後に、ランプヒータ16を消灯し、消灯直後の円筒管15の温度を予め設けた温度センサ等で測定し、この測定温度を円筒管15の温度とするという方法で、円筒管15の温度と反射板13の温度との相関関係を予め取得しておくと好ましい。これによれば、チューブ14よりも温度が高くなる円筒管15の温度が、たとえばPFAの融点よりも10℃〜30℃低い温度になったことを、反射板13に取り付けた温度センサ17で反射板13の温度を監視することにより把握することが可能となる。
【0024】
また、液体加熱ユニット10においては、チューブ14が円筒管15に巻きかけられているため、チューブ14が撓んでランプヒータ16に接し、ランプヒータ16が破損したりすることがない。また、万一、チューブ14から液体が漏洩した場合でも、ランプヒータ16の周りに円筒管15が配置されているので、漏洩した液体がランプヒータ16にかかることがなく、ランプヒータ16の破損を防ぐことができる。
【0025】
さらに、液体加熱ユニット10では、液体が流れるチューブ14を取り囲むように反射板13を設けているので、チューブ14(またはその隙間)を透過した、ランプヒータ16からの放射光が反射板13により反射されてチューブ14へ照射されるので、液体がより効率よく加熱される。
【0026】
(第1の実施形態の変形例1)
図3を参照しながら、第1の実施形態による液体加熱ユニット10の変形例1について説明する。図3は、変形例1の液体加熱ユニット10aを示す断面図である。図示のとおり、液体加熱ユニット10aは、液体が流れるチューブ14aが二重螺旋状に円筒管15に巻き回されている点で液体加熱ユニット10と異なり、他の構成において液体加熱ユニット10と実質的に同一である。ランプヒータ16からの反射光に対する吸収率が低い液体を用いる場合には、このように二重螺旋状に巻き回されたチューブ14aによれば、反射光を吸収しやすくなるため、効率よく液体を加熱することができる。
【0027】
また、変形例1の液体加熱ユニット10aにおいても、反射板13の外周面に取り付けられた温度センサ17により反射板13の温度が測定され、この測定を通して、チューブ14aおよび円筒管16の温度を監視することができる。そして、反射板13の温度が所定の基準温度を超えた場合に、ランプヒータ16への電力の供給を遮断することができる。すなわち、変形例1の液体加熱ユニット10aによっても、液体加熱ユニット10と同様の効果が提供される。
【0028】
(第1の実施形態の変形例2)
次に、図4を参照しながら、第1の実施形態による液体加熱ユニット10の変形例2について説明する。図4は、変形例2の液体加熱ユニット10bを示す断面図である。図示のとおり、液体加熱ユニット10bは、液体加熱ユニット10におけるチューブ14に代わり、液槽18を有している。この点を除き、液体ユニット10bは、液体加熱ユニット10と実質的に同一の構成を有している。液槽18は、円環形状を有する上面および下面によって封止された二重円筒管の形状を有し、たとえばPFAで作製されている。また、上面および下面には、それぞれ液体の流入管18iおよび流出管19oが設けられている。液体は、流入管18iから液槽18へ流入し、液槽18においてランプヒータ16により所定の温度に加熱され、流出管18oから流出する。液槽18の内側の空間には円筒管16が挿通されており、液槽18は円筒管16により内側から保持されている。
【0029】
このように構成される液体加熱ユニット10bにおいても、反射板13の外周面に取り付けられた温度センサ17により反射板13の温度が測定され、この測定を通して、液槽18および円筒管16の温度を監視することができる。そして、反射板13の温度が所定の基準温度を超えた場合に、ランプヒータ16への電力の供給を遮断することができる。すなわち、変形例2の液体加熱ユニット10bによっても、液体加熱ユニット10と同様の効果が提供される。
【0030】
(第2の実施形態)
続けて、図5および図6を参照しながら、本発明の第2の実施形態による液処理装置について説明する。図5に示すとおり、本実施形態による液処理装置100は、第1の実施形態による液体加熱ユニット10と、液体加熱ユニット10のチューブ14(図1または図2参照)とともに閉じた液体流路を形成する循環ライン40と、循環ライン40の途中に設けられ、液体加熱ユニット10および循環ライン40内で液体を循環させるポンプ46と、ポンプ46よりも上流側に設けられる貯留タンク46tとを有している。また、液処理装置100には、循環ライン40から分岐した複数の供給ライン30と、複数の供給ライン30に対応して設けられ、各供給ライン30が接続される複数の液処理ユニット50と、複数の供給ライン30のそれぞれから三方バルブ38aを介して分岐する複数の戻りライン35とが設けられている。さらに、各戻りライン35には、三方バルブ38aに隣接して開閉バルブ38bが設けられている。
【0031】
また、各戻りライン35は、互いに合流してポンプ46の上流側において循環ライン40に接続されている。この接続点の上流には第1のリリーフバルブ39bが設けられ、一方、この接続点の上流における循環ライン40には第2のリリーフバルブ39aが設けられている。第1および第2のリリーフバルブ39bおよび39aにより、戻りライン35における液体の圧力が、循環ライン40における液体の圧力よりも低くなるように制御される。また、循環ライン40、供給ライン30、および戻りライン35に断熱部材を設け、これらを流れる液体の温度低下を低減すると好ましい。
【0032】
三方バルブ38aは、循環ライン40から液処理ユニット50へ液体が流れる第1の経路と、循環ライン40から戻りライン35へ液体が流れる第2の経路とが択一的に形成されるように切り替わる。また、開閉バルブ38bは、三方バルブ38aが第1の経路を形成する場合に閉まり、三方バルブ38aが第2の経路を形成する場合に開く。このように三方バルブ38aと開閉バルブ38bとが協働することにより、循環ライン40から供給ライン30を通して液処理ユニット50へ液体が供給されて液処理に利用され、液処理ユニット50で液処理が行われないときは、液体は、供給ライン30から戻りライン35を経由して再び循環ライン40へ戻る。
【0033】
液処理ユニット50は、図6(a)に示すように、たとえば枚様式のウエハ洗浄ユニットであって良い。図示の例では、液処理ユニット50は、処理対象のウエハWを保持し回転するサセプタ52Sと、サセプタ52S上に支持ピン52Pを介して支持されるウエハWに液体を供給するディスペンサ62と、サセプタ52Sおよびディスペンサ62を収容する筐体54とを有している。
【0034】
ディスペンサ62は、ほぼ水平方向に延びるアーム62Aと、アーム62Aを保持し回動させるシャフト62Sとを有している。シャフト62Sが図示しない駆動機構により回動すると、アーム62Aは、図6(b)に示すように、サセプタ52S上のウエハWのほぼ中央の上方の第1の位置と、サセプタ52Sよりも外側の上方の第2の位置との間で移動することができる。また、アーム62Aの先端には貫通孔が形成されており、この貫通孔には、循環ライン40から分岐した供給ライン30の吐出部30Tが結合されている。
【0035】
アーム62Aが上記の第1の位置に移動すると、三方バルブ38aおよび開閉バルブ38bが上記の第1の経路を形成し、供給ライン30の吐出部30Tから液体がウエハWに向けて供給される。このとき、ウエハWはサセプタ52Sにより回転しており、ウエハWに供給された液体は、回転に伴う遠心力によりウエハWの表面を外側に向かって流れる。この流れと液体が有する溶解性とによりウエハWの表面が洗浄される。
【0036】
再び図5を参照すると、液処理装置100は、液処理ユニット50、三方バルブ38a、開閉バルブ38bなど、液処理装置100の構成部品または部材を制御する制御部45を有している。また、制御部45は、液体加熱ユニット10のチューブ14の流出管14o(図2参照)に挿入された温度センサと電気的に接続されており、チューブ14を流れる液体の温度(すなわち、液体加熱ユニット10の出口での温度)を監視している。この温度が、液処理ユニット50での処理に必要な温度よりも低くなった場合、制御部45は、液処理ユニット50の動作を停止するとともに、三方バルブ38aおよび開閉バルブ38bが第2の経路(循環ライン40→供給ライン30→戻りライン35)を形成するように制御する。これにより、処理効果(洗浄効果)が低い状態でウエハWが処理(洗浄)されるといった事態を避けることができる。
【0037】
なお、制御部45は、液体加熱ユニット10の出口での温度のみによって、液処理ユニット50の動作を継続するか、停止するかを判断することができる。すなわち、液体加熱ユニット10における液体の温度は、液体加熱ユニット10のチューブ14の流出管14oの温度センサ(図示せず)と、温調器21と、ランプヒータ16と、その電源22とにより制御される。また、液体加熱ユニット10の温度センサ17により測定される反射板13の温度が基準温度を超えると、ランプヒータ16への電力の供給が遮断されるが、これも液体加熱ユニット10において制御される。したがって、液体加熱ユニット10のランプヒータ16への電力の供給が遮断された場合であっても、液体加熱ユニット10の出口における液体の温度が液処理ユニット50での処理に必要な温度範囲内にあるときは、液処理ユニット50は動作を継続してよい。また、液体加熱ユニット10の出口における液体の温度が液処理ユニット50での処理に必要な温度範囲に維持される間に、液体加熱ユニット10の反射板13の温度を測定し、その温度が所定の基準温度よりも低い温度になったと判断された場合にはランプヒータ16への電力の供給を再開でき、液処理ユニット50における処理を継続することも可能となる。
【0038】
また、液体加熱ユニット10の出口における液体の温度が液処理ユニット50での処理に必要な温度範囲に維持される間に、液体加熱ユニット10の反射板13の温度を測定し、その温度が所定の基準温度よりも低い温度になった場合においては、低い温度になった時点で直ちにランプヒータ16への電力の供給を再開するのではなく、液体加熱ユニット10の出口における液体の温度が、液処理ユニット50での処理に必要な温度範囲の下限から所定の温度だけ高い温度(またはこれより低い温度)になったことが判断された時点で、ランプヒータ16への電力の供給を再開するようにしてもよい。この場合の所定の温度は、たとえば1℃から5℃であって良い。
【0039】
なお、液体の温度は、液体加熱ユニット10の出口で測定することに限られず、入口で測定されても良く、チューブ14内の所定の位置で測定しても良い。
【0040】
また、図示は省略するが、液処理装置100には、液処理ユニット50にて消費される液体を補充するための補充ラインが循環ライン40に接続されて良い。補充ラインは貯留タンク46tに対して設けられると好ましい。また、循環ライン40にバッファー槽を設け、ここに補充ラインを接続するようにしても良い。このようにすれば、補充ラインを通して室温程度の液体を補充しても液体温度の低下を防ぐことが可能となる。
【0041】
次に、図1および図5等を適宜参照しながら、上記のように構成される液処理装置100の動作(液処理方法)について説明する。
まず、ポンプ46を起動することにより、液体加熱ユニット10のチューブ14および循環ライン40の内部に液体を循環させる。液体加熱ユニット10のランプヒータ16へ電源22から電力が供給され、ランプヒータ16が点灯し、放射光が発せられる。この放射光は、円筒部16とチューブ14を透過し、チューブ14内を流れる液体に吸収され、これにより液体が加熱される。加熱された液体の温度は、チューブ14の流出管14o(図1または図2参照)に設けられた図示しない温度センサにより測定される。この測定結果に基づいて電源22が制御されて、液体の温度が所定の温度、すなわち、液処理ユニット50にて行われる処理に必要な温度より高い温度に維持される。この間、液処理装置100の三方バルブ38aおよび開閉バルブ38bは、循環ライン40から供給ライン30および戻りライン35を経由して循環ライン40に戻る経路(第2の経路)を形成しており、循環ライン40を流れる液体の一部は第2の経路を流れている。
【0042】
液体の温度が所定の温度に維持されたことが確認された後、所定のタイミングで、三方バルブ38aおよび開閉バルブ38bが制御部45により制御され、液体が処理ユニット50へ供給される。処理ユニット50では、制御部45による制御の下、ディスペンサ62のアーム62Aが、サセプタ52上に支持ピン52Pを介して保持されるウエハWのほぼ中央の上方に移動しており、この先端(30T)から液体がウエハWに対して供給されてウエハWが処理(洗浄)される。処理ユニット50における処理(洗浄)が終了すると、三方バルブ38aおよび開閉バルブ38bが切り替わって、液体が第2の経路を流れ、これにより、処理ユニット50への液体の供給が停止される。そして、処理ユニット50において処理済みのウエハWが搬出され、次のウエハWが搬入されると、再び処理(洗浄)が開始される。このようにして液処理装置100においてウエハWの処理が行われる。
【0043】
ウエハの液処理の間、液体加熱ユニット10においては、反射板13の温度の測定を通してチューブ14かつ/または円筒部15の温度が監視されており、反射板13が基準温度を超えた場合に、遮断器23により、ランプヒータ16への電力の供給が遮断される。遮断された場合であっても、液体の温度が所定の温度以上に維持される間は、液処理装置100における液処理は中断されることなく継続され、所定の温度よりも低くなった時点で、処理ユニット50の動作が停止される。
【0044】
以上、幾つかの実施形態を参照しながら本発明を説明したが、本発明は開示の実施形態に限定されることなく、添付の特許請求の範囲に照らし、種々に変形または変更することが可能である。
【0045】
たとえば、第2の実施形態による液処理装置100は、液体加熱ユニット10の代わりに液体加熱ユニット10a、10bを有していても良い。また、液処理装置100における液処理ユニット50は、枚様式のウエハ洗浄ユニットに限らず、バッチ式の洗浄槽であって良い。また、本発明の実施形態による液体加熱ユニットにより加熱されウエハの処理に利用される液体は、IPAやDIWに限られず、ウエハを乾燥するために使用される液体や、半導体やフラットパネルディスプレイ(FPD)の製造プロセスにおいて加熱して使用される薬液であって良いことは勿論である。また、被処理体としてのウエハWは、半導体ウエハに限らず、FPD用のガラス基板であっても良い。
【符号の説明】
【0046】
10、10a、10b・・・液体加熱ユニット、11・・・筐体、12・・・取り付け治具、13(13a、13b)・・・反射板、14、14a・・・チューブ、15・・・円筒管、16・・・ランプヒータ、17・・・温度センサ、18・・・液体槽、21・・・温調器、22・・・電源、23・・・遮断器、30・・・供給ライン、35・・・戻りライン、40・・・循環ライン、46・・・ポンプ、50・・・液処理ユニット、100・・・液処理装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射光を放射するランプヒータと、
前記ランプヒータを内部空間に挿通可能な円筒形状を有し、前記放射光を透過する材料で形成される円筒部材と、
前記円筒部材の外周部に沿って配置され、前記放射光によって内部を流れる液体を加熱する液体通流部と、
前記液体通流部を外側から覆い、前記放射光を反射する反射板と、
前記反射板の外部に取り付けられる第1の温度センサと
を備える液体加熱ユニット。
【請求項2】
前記液体通流部が、前記円筒部材の耐熱温度よりも低い融点と、前記円筒部材の前記放射光に対する透過率よりも高い透過率を有する、請求項1に記載の液体加熱ユニット。
【請求項3】
前記液体通流部が、前記円筒部材の外周部に螺旋状に巻かれる、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体で形成されるチューブである、請求項1または2に記載の液体加熱ユニット。
【請求項4】
前記第1の温度センサと電気的に接続される温度調整器を更に備え、
前記温度調整器は、前記第1の温度センサにより測定される前記反射板の温度が所定の基準温度を超えたときに信号を発する、請求項1から3のいずれか一項に記載の液体加熱ユニット。
【請求項5】
前記ランプヒータへ電力を供給する電力供給ラインに設けられ、前記信号を入力し、前記ランプヒータへの電力供給を遮断する遮断器を更に備える、請求項4に記載の液体加熱ユニット。
【請求項6】
前記流体通流部に設けられ、前記放射光によって加熱される液体の温度を測定する第2の温度センサを更に備える、請求項1から5のいずれか一項に記載の液体加熱ユニット。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の液体加熱ユニットと、
前記液体加熱ユニットの前記液体通流部と接続される主供給ラインと、
前記主供給ラインから分岐する供給ラインと、
前記供給ラインが接続され、当該供給ラインから供給される液体により被処理体を処理する処理ユニットと
を備える液処理装置。
【請求項8】
前記液体加熱ユニットにより加熱される液体の温度が、前記処理ユニットにおける処理に必要な温度範囲内にあるか否かを判断する制御部を更に備える、請求項7に記載の液処理装置。
【請求項9】
請求項5に記載の液体加熱ユニットと、
前記液体加熱ユニットの前記液体通流部と接続される主供給ラインと、
前記主供給ラインから分岐する供給ラインと、
前記供給ラインが接続され、当該供給ラインから供給される液体により被処理体を処理する処理ユニットと
を備え、
前記第1の温度センサにより測定される前記反射板の温度が所定の基準温度を超え、前記遮断器により前記ランプヒータへの電力供給が遮断された場合でも、前記液体加熱ユニットにより加熱される液体の温度が、前記液処理ユニットにおける処理に必要な温度範囲内であると前記制御部により判断されたときには、前記液処理ユニットの動作が継続される、液処理装置。
【請求項10】
請求項1に記載の液体加熱ユニットへ被処理体の処理に利用される液体を供給し、当該液体を所定の温度に加熱するステップと、
前記液体加熱ユニットにより所定の温度に加熱された前記液体の温度を測定するステップと、
前記液体加熱ユニットにより所定の温度に加熱された前記液体を、前記被処理体を処理する処理ユニットへ供給するステップと、
を含む液体処理方法。
【請求項11】
前記第1の温度センサにより測定される前記反射板の温度が所定の基準温度を超えた場合でも、前記液体加熱ユニットにより加熱される液体の温度が、前記液処理ユニットにおける処理に必要な温度範囲内であると前記制御部により判断されたときに、前記液処理ユニットの動作を継続するステップを更に含む、請求項10に記載の液体処理方法。
【請求項12】
前記液体加熱ユニットにおける前記反射板の温度が所定の基準温度よりも高い場合に、前記ランプヒータへの電力の供給を遮断するステップを更に含む、請求項10または11に記載の液体処理方法。
【請求項13】
前記遮断するステップの後に、前記第1の温度センサにより前記反射板の温度を測定するステップと、
前記測定するステップにおいて測定される前記反射板の温度が前記所定の基準温度よりも低いか否かを判断するステップと、
前記判断するステップにおいて、反射板の温度が前記所定の基準温度よりも低いと判断されてときに、前記ランプヒータへの電力の供給を再開するステップと
を更に含む、請求項12に記載の液体処理方法。
【請求項14】
前記遮断するステップの後に、前記第1の温度センサにより前記反射板の温度を測定するステップと、
前記反射板の温度を測定するステップにおいて測定された温度が前記基準温度以下であるか否かを判断する第1の判断ステップと、
前記第1の判断ステップにおいて、前記測定された温度が前記基準温度以下であると判断された場合に、前記液体加熱ユニットにより加熱される液体の温度が、前記液処理ユニットにおける処理に必要な温度範囲の下限よりも所定の温度だけ高い温度以下か否かを判断する第2の判断ステップと、
前記第2の判断ステップにおいて、前記液体の温度が、前記所定の温度だけ高い温度以下と判断された場合に、前記液体加熱ユニットの前記ランプヒータへの電力の供給を再開するステップを更に含む、請求項12に記載の液体処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−57904(P2012−57904A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−204053(P2010−204053)
【出願日】平成22年9月13日(2010.9.13)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】