説明

液体収容体モジュール及び液体噴射装置

【課題】 液体貯留手段と液体供給路との間の接続の精度を低下させることなく、液体貯留手段の液体の貯留容量を効率的に増加させる。
【解決手段】 モジュール53は、重ね合わされた第1及び第2のケース55,57を備える。そして、この各ケース55,57に対して、粘着テープ87及びラベル89が、各ケース55,57がお互いに離間しないように締結されている。粘着テープ87は、各ケース55,57に対して、インクの排出方向、すなわち支持口93c,97cの向く方向と直交する方向に環状に巻き付いている。また、粘着テープ87の貼り付け位置は、各ケース55,57のインクの排出方向のほぼ中間地点である。ラベル89は、粘着テープ87の一部分を上から覆いながら押さえ付けるようにして、各ケース55,57に対して貼り付けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体収容体モジュール及び液体噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液体噴射ヘッドのノズルからターゲットに対して液体を噴射する液体噴射装置として、インクジェット式プリンタが広く知られていた。そして、このインクジェット式プリンタを、例えば業務用に用いる場合には、液体貯留手段として、大容量のインクカートリッジをインクジェット式プリンタの本体側に配置する、いわゆるオフキャリッジタイプの構成が採用されることが多くなっていた。このオフキャリッジタイプのインクジェット式プリンタにおいては、前記インクカートリッジから、キャリッジに搭載された液体噴射ヘッドとしての記録ヘッドに対して、供給チューブを介して液体としてのインクが供給されるようになっていた。
【0003】
そして、上記のようなインクカートリッジとしては、インクを収容する可撓性のインクパックを備えたものが知られていた。そして、このインクパックの構造としては、インクの消費に伴って、インクを最後まで使い切ることのできる構造が望まれており、偏平薄型のものが知られていた。しかし、この偏平薄型タイプのインクパックは、容量を大きくしようとしてその厚みを大きくしたものに変更しようとすると、インク残量の低下に伴ってインクパックにしわや折り目が発生するおそれがあった。従って、厚みを大きくする場合には、インクを最後まで使い切るために、その偏平な側面方向の大きさについても拡大させる必要があった。この結果、インクジェット式プリンタ内における設置スペースが拡大し、インクジェット式プリンタをコンパクト化することができなくなるおそれがあった。
【0004】
そこで、偏平薄型のインクパックの大容量化を実現するために、インク1色あたりに、複数の偏平薄型のインクパックを備えたものが知られていた(例えば、特許文献1参照)。すなわち、複数のインクパックを共通の供給チューブへと接続し、インクの使用に応じて、複数のインクパック内のインクが共通の供給チューブへと供給されるようになっていた。そして、これら複数のインクパックをインクジェット式プリンタ内において設置する場合には、それぞれの偏平な側面を相互に略平行にして設置するようになっており、インクパックの偏平な側面方向における大きさを拡大させることを防ぐようになっていた。すなわち、インクパックの偏平な側面方向における大きさを拡大させることなく、インク容量を増加させることができるようになっていた。
【特許文献1】特開2000−229421号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年、上記のようなインクジェット式プリンタにおいては、供給チューブの引き回し距離が拡大する傾向があり、キャリッジの移動に伴って、供給チューブ内に動圧(圧力損失)が発生し、インク供給の信頼性が低下するという問題があった。そこで、供給チューブ内における圧力変動の影響を減少させる手段のうちの一つとして、前記インクカートリッジを、上記のような可撓性のインクパックと、同インクパックを収容するケースとによって構成させたものが知られていた。そして、ケースとインクパックとの間に形成された空間に、加圧した空気を導入させることによってインクパックを加圧するようになっていた。これにより、インクパック内のインクが供給チューブ内に加圧された状態で供給されるようになり、供給チューブ内におけるインクの圧力変動の影響を減少させることができるようになっていた。
【0006】
なお、このようなインクジェット式プリンタにおいて、上記のようなインクパックを複数備えた構成を採用する場合には、ケースに収容された状態のインクパックをケースごとに相互に略平行にして設置することが考えられていた。しかし、このような状態で、ケースとインクパックとの間に加圧空気を供給すると、ケースが加圧空気による圧力によって、膨張するように変形し、隣り合うケース同士がお互いに押圧しあうような状態となるおそれがあった。この結果、各インクカートリッジと供給チューブとを接続する接続部に対してケースの変形による力が加わり、接続の精度が低下する可能性があった。そして、インクの供給が良好に行われなくなるおそれがあり、印刷品質の低下を招くおそれがあった。
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであって、液体貯留手段と液体供給路との間の接続の精度を低下させることなく、液体貯留手段の液体の貯留容量を効率的に増加させることのできる液体収容体モジュール及び液体噴射装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、可撓性の液体収容袋内に液体を収容し、液体導出手段によって前記液体収容袋内の液体を前記液体収容袋外に排出可能とする液体収容部と、同液体収容部を収容する外郭ケースと、前記液体収容部と前記外郭ケースとの間の空間に流体を導入することを可能とする流体導入手段とを備えた液体収容体を、複数備えた液体収容体モジュールにおいて、前記複数の液体収容体を重ね合わせた状態で一体となるように覆い、隣り合う前記液体収容体同士の離間を規制するように締結する締結手段を備えた。
【0009】
従って、本発明によれば、液体収容体モジュールは、複数の液体収容体を重ね合わせて形成した。そして、このような場合に、流体導入手段によって、液体収容部と外郭ケースとの間の空間に流体を導入すると、外郭ケースが、流体の加圧力によって、外側に向かって弾性変形しようとし、隣り合う液体収容体同士が押圧力を受けて、互いに離間しようとするおそれがある。しかし、締結手段によって隣り合う液体収容体同士が締結されているので、押圧力による離間を規制することができる。従って、本発明の液体収容体モジュールを、液体を噴射する液体噴射装置等において使用するときには、液体導出手段を液体噴射装置の液体供給路等に対して接続することとなるが、これらの接続部については、隣り合う液体収容体同士の離間が規制されているため、その接続精度が保たれた状態とすることができる。
【0010】
この液体収容体モジュールにおいて、前記複数の液体収容体は、隣り合う前記液体収容体同士が、前記液体導出手段の前記液体の排出方向が同じ方向となるように配置されている。
【0011】
これによれば、複数の液体収容体の液体導出手段が近い位置にまとまるようになり、液体収容体モジュールを液体噴射装置等の液体供給路に接続するときの流路の動線をより簡単なものとすることができる。
【0012】
この液体収容体モジュールにおいて、前記外郭ケースは、前記空間に前記流体を導入したときに、最も大きく弾性変形する部分である最大変形点を備え、前記締結手段は、前記液体導出手段の前記液体の排出方向と平行な方向において、前記最大変形点と異なる位置において前記液体収容体を締結するように設けられている。
【0013】
これによれば、流体導入手段によって、液体収容部と外郭ケースとの間の空間に流体を導入すると、外郭ケースが最大変形点において大きく弾性変形する。そして、例えば、締結手段が、この最大変形点において液体収容体を締結している場合には、隣り合う液体収容体同士の押圧力の影響によって、この最大変形点が支点となって、液体収容体の両端部等において、隣り合う液体収容体同士が大きく離間するおそれがある。しかし、本発明においては、締結手段が、最大変形点と異なる場所において締結されているので、このような現象が生じることを防ぐことができる。
【0014】
この液体収容体モジュールにおいて、前記締結手段は、前記液体導出手段の前記液体の排出方向と平行な方向において、前記液体導出手段と前記最大変形点との間の位置において前記液体収容体を締結するように設けられている。
【0015】
これによれば、流体導入手段によって、液体収容部と外郭ケースとの間の空間に流体を導入すると、外郭ケースが、最大変形点において大きく弾性変形し、隣り合う液体収容体同士の間に離間しようとする力が働くこととなる。しかし、この最大変形点と液体導出手段との間の位置において液体収容体を締結手段によって締結しているので、最大変形点を支点とした、隣り合う液体導出手段同士を離間させようとする力を規制することができる。この結果、液体噴射装置等の液体供給路と液体導出手段との接続精度の低下を効果的に防ぐことができる。
【0016】
この液体収容体モジュールにおいて、前記締結手段は、可撓性を有するテープ状材料と、粘着性を有する粘着剤とを積層させて形成された粘着テープであり、前記粘着テープは、前記複数の液体収容体に対して、前記液体導出手段の前記液体の排出方向と異なる方向に巻き付くようにして貼り付けられて前記液体収容体を締結する。
【0017】
これによれば、粘着剤によって簡単に液体収容体に対して粘着テープを取り付けることができ、締結作業が容易となる。また、粘着テープは、可撓性を有しているため、より貼り付けやすく、締結をより確実にすることができる。さらに、粘着テープを、液体導出手段の液体の排出方向と異なる方向に巻き付くようにさせており、粘着テープの締結位置を、液体導出手段等の機能を阻害させないような位置とすることができる。
【0018】
この液体収容体モジュールにおいて、前記粘着テープは、重ね合わせた状態で一体となっている前記複数の液体収容体に対して、環状に巻き付くようにして貼り付けられることによって、前記液体収容体を締結する。
【0019】
これによれば、粘着テープによる接着面積が環状となっている分増加し、複数の液体収容体をより確実に締結することができる。この結果、粘着テープとして比較的粘着力の低いものを使用することも可能である。
【0020】
この液体収容体モジュールにおいて、前記テープ状材料は、PET(ポリエチレンテレフタレート)によって形成されている。
これによれば、テープ状材料を、比較的安価で強度があり、熱による伸びも少ないものとすることができる。この結果、複数の液体収容体の締結をより確実にすることができる。また、このようなテープ状材料を備えた粘着テープは、汎用品として手に入りやすい。
【0021】
この液体収容体モジュールにおいて、可撓性を有するシート材と、粘着性を有する粘着剤とを積層させて形成されたラベルを備え、前記ラベルは、前記粘着テープの上から前記液体収容体に対して貼り付けられている。
【0022】
これによれば、粘着テープと液体収容体との間のずれや伸びをラベルの粘着力によって防ぐことができるようになる。この結果、液体収容体をより確実に締結できる。
この液体収容体モジュールにおいて、前記締結手段は、前記液体導出手段の前記液体の排出方向と平行な方向において、前記最大変形点よりも前記液体導出手段から離間した離間位置において前記液体収容体を締結するように設けられている。
【0023】
これによれば、流体導入手段によって、液体収容部と外郭ケースとの間の空間に流体を導入すると、外郭ケースが、最大変形点において大きく弾性変形し、隣り合う液体収容体同士の間に離間しようとする力が働くこととなる。しかし、この最大変形点よりも液体導出手段から離間した離間位置において液体収容体を締結手段によって締結しているので、最大変形点を支点とした、離間位置における隣り合う液体収容体同士を離間させようとする力を規制することができる。
【0024】
この液体収容体モジュールにおいて、前記複数の液体収容体は、前記離間位置に位置する一側面が、お互いに1つの平面上に位置するように並ぶように配置され、前記締結手段は、可撓性を有するシート材と、粘着性を有する粘着剤とを積層させて形成されたラベルであり、前記ラベルは、前記複数の液体収容体の前記一側面によって形成されている前記平面上にわたって貼り付けられることによって前記液体収容体を締結する。
【0025】
これによれば、複数の液体収容体を、その一側面を同一の平面状に並ぶように配置し、ラベルを同平面に対して貼り付けることによって隣り合う液体収容体同士を締結することができる。従って、液体収容体モジュールに関する文字や図形等による情報を表示可能なラベルを、液体収容体の締結に兼用することができる。
【0026】
この液体収容体モジュールにおいて、前記液体収容体は、前記一側面に隣接するとともに、前記一側面に対して非平行となるように設けられている他側面を備え、前記ラベルは、前記平面に加えて、複数の前記液体収容体のうちの少なくとも1つに備えられている前記他側面にわたって貼り付けられている。
【0027】
これによれば、ラベルは、液体収容体の2つの面にわたって貼り付けられるようになり、ラベルによる締結力をより確実なものとすることができる。さらに、ラベルの面積が増えるので、ラベル上に表示可能な情報量を増やすことができる。
【0028】
この液体収容体モジュールにおいて、前記複数の液体収容体は、少なくとも締結用凸部及び締結用凹部のいずれか一方を備え、一の前記液体収容体の前記締結用凸部及び前記締結用凹部が、他の前記液体収容体の前記締結用凹部及び前記締結用凸部に対して、互いに嵌合、係合又は圧入されるように形成されている。
【0029】
これによれば、複数の液体収容体は、締結用凹部と締結用凸部とを嵌合、係合又は圧入させることによって、互いの位置決めがなされる。従って、簡単な構造及び組み立てで複数の液体収容体の位置決めを行うことができる。
【0030】
この液体収容体モジュールにおいて、前記液体収容体の前記外郭ケースは、開口部を有する箱体状の箱体部と、同箱体部の前記開口部を閉塞する蓋部とを備え、前記締結用凹部は、前記箱体部の下面に設けられているとともに、前記締結用凸部は、前記蓋部に設けられている。
【0031】
これによれば、液体収容体モジュールにおいて、外郭ケースの箱体部と蓋部とが交互に並ぶようにして複数の液体収容体が重ね合わされた状態とされる。従って、複数の液体収容体の向きを全て同一方向とするようにして重ね合わせることができ、複数の液体収容体のそれぞれに設けられている液体導出手段や流体導入手段等を、規則正しく配列できる。この結果、液体収容体モジュールを液体噴射装置等に装着させたときに、前記液体導出手段や流体導入手段等を、液体噴射装置の液体供給路等に対して接続させるときの動線を簡素化させることができる。また、複数の液体収容体の1つ1つ形状を、同一形状とさせやすくなり、液体収容体モジュールの部品の標準化がしやすくなる。
【0032】
この液体収容体モジュールにおいて、前記液体収容体モジュールに関する情報を格納する記憶素子を備え、前記記憶素子は、前記複数の液体収容体のうちの1つに設けられている。
【0033】
これによれば、液体収容体モジュールを構成する複数の液体収容体のうち、1つのみに記憶素子が設けられているようになる。従って、液体収容体の全てにそれぞれ記憶素子を設ける場合に比較して、液体収容体モジュールの構造を簡素化させることができる。また、液体収容体モジュールを液体噴射装置等に装着させる場合には、液体噴射装置側において、記憶素子を読み取るための読み取り手段を1つのみ備えればよい。
【0034】
本発明は、液体を噴射する液体噴射ヘッドと、前記液体を貯留する複数の液体収容体を備えた液体収容体モジュールと、前記複数の液体収容体の前記液体を前記液体噴射ヘッドへと供給する液体供給路とを備えた液体噴射装置において、前記液体収容体は、可撓性の液体収容袋内に液体を収容し、液体導出手段によって前記液体収容袋内の液体を前記液体供給路に排出可能とする液体収容部と、同液体収容部を収容する外郭ケースと、前記液体収容部と前記外郭ケースとの間の空間に流体を導入することを可能とする流体導入手段とを備え、前記複数の液体収容体を重ね合わせた状態で一体となるように覆い、隣り合う前記液体収容体同士の離間を規制するように締結する締結手段を備えた。
【0035】
従って、本発明によれば、液体収容体モジュールは、複数の液体収容体を重ね合わせて形成される。そして、この場合には、流体導入手段によって、液体収容部と外郭ケースとの間の空間に流体を導入すると、外郭ケースが流体の加圧力によって外側に向かって弾性変形しようとし、隣り合う液体収容体同士が押圧力を受けて、互いに離間しようとするおそれがある。しかし、締結手段によって隣り合う液体収容体同士が締結されているので、押圧力による離間を規制することができる。従って、液体収容体モジュールを液体噴射装置に対して装着させる場合には、液体導出手段を液体噴射装置の液体供給路に対して接続することとなるが、これらの接続部については、隣り合う液体収容体同士の離間が規制されているため、その接続精度を保たれた状態とすることができる。
【0036】
この液体噴射装置において、前記液体収容体モジュールを収容するモジュールホルダを備え、前記モジュールホルダは、前記複数の液体収容体のうち、少なくとも1つと係合するホルダ側係合部を備えた。
【0037】
これによれば、液体収容体モジュールとモジュールホルダとの係合は、複数の液体収容体のうちの少なくとも1つとモジュールホルダとを係合させることによって行われるようになる。従って、液体収容体モジュールの複数の液体収容体の1つ1つについてモジュールホルダに対して係合させるようなことがないので、係合構造を簡素化させることができる。また、液体収容体モジュールとモジュールホルダとの間の係合の精度の許容範囲も広げることができる。
【0038】
この液体噴射装置において、前記液体収容体モジュールの前記複数の液体収容体は、それぞれに係合部が形成され、前記ホルダ側係合部は、前記係合部に対して係合可能な形状に形成され、前記複数の液体収容体のうちの少なくとも1つにおける前記係合部に対して係合されている。
【0039】
これによれば、液体収容体モジュールをモジュールホルダに収容させるときの係合箇所の個数を、液体収容体モジュールを構成する全ての液体収容体の係合部をホルダ側係合部に係合させる場合に比較して少なくすることができる。従って、液体収容体モジュールのモジュールホルダに対する上下左右の位置決めや固定が、少ない係合部で行われるようになり、寸法の許容範囲が広がって寸法精度が高くなる。この結果、液体噴射装置の設計が容易となる。
【0040】
この液体噴射装置において、前記複数の液体収容体は、前記液体収容体モジュールを前記モジュールホルダに対して挿入するときの挿入方向と平行となるような向きを有する位置決め穴を備え、前記モジュールホルダは、前記挿入方向と平行となるような向きを有する棒状のガイド部材を備え、前記液体収容体モジュールが前記モジュールホルダに収容されるときには、前記ガイド部材は、前記液体収容体モジュールの複数の前記液体収容体のうちの1つの前記位置決め穴に対して貫挿されている。
【0041】
これによれば、液体収容体モジュールをモジュールホルダに対して装着するときには、液体収容体モジュールの複数の液体収容体のうちの1つに備えられている位置決め穴に対して、モジュールホルダのガイド部材が貫挿される。この結果、挿入方向と直交する方向における液体収容体モジュールの位置決めがなされる。従って、液体収容体モジュールの複数の液体収容体の全てについてガイド部材に対して貫挿させることなく位置決めを行うことができ、位置決め構造を簡素化させることができる。そして、液体収容体モジュールとモジュールホルダとの間の位置決め精度の許容範囲も広げることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
以下、本発明を具体化した実施形態を図1〜図9に従って説明する。図1に示すように、液体噴射装置としてのインクジェット式プリンタ(以下、プリンタ11という。)は、略直方体形状の箱体12を備え、同箱体12には、その前面12a及び上面12bの一部を開口させるための蓋体13が設けられている。さらに、プリンタ11は、箱体12の後方に給紙トレイ11aと、前方に排紙トレイ11bとを備えている。給紙トレイ11aは、印刷される前の紙(図示しない)が載置されるものであり、排紙トレイ11bは、印刷された後の紙が排出されて載置されるものである。
【0043】
また、プリンタ11は、前記箱体12内に、プラテン15、ガイド部材17、キャリッジ19、カラーインク貯留部21、ブラックインク貯留部23、流路部25、供給チューブ27を備える。プラテン15は、略長方形の板状に形成されており、箱体12内において、箱体12の長手方向に沿うようにして架設されている。そして、前記給紙トレイ11aに載置されている紙は、紙送り機構(図示しない)により同プラテン15上に給送され、前記排紙トレイ11bへと排出されるようになっている。ガイド部材17は、棒状に形成され、箱体12内において、前記プラテン15と平行となるように、かつ、プラテン15の上方に位置するようにして設けられている。
【0044】
キャリッジ19は、前記ガイド部材17に対して摺動可能に支持されている。そして、キャリッジ19は、タイミングベルト(図示しない)を介してキャリッジモータ(図示しない)に接続されており、キャリッジモータの駆動によってガイド部材17に沿って往復移動されるようになっている。そして、キャリッジ19は、前記プラテン15に対向する面に液体噴射ヘッドとしての記録ヘッド29を備えている。また、キャリッジ19上には、液体としてのインクを一時貯留するとともに、記録ヘッド29にインクを安定して供給するためのバルブユニット31が搭載されている。なお、本実施形態では、インクの色(ブラックインクBと、シアンC、マゼンタM、イエローYの各カラーインク)に対応して、バルブユニット31が4個設けられている。そして、記録ヘッド29の下面にはノズル吐出口(図示しない)が設けられており、圧電素子(図示しない)の駆動により、前記バルブユニット31から記録ヘッド29にインクが供給され、プラテン15上の紙に向かってインク滴が吐出されるようになっている。
【0045】
カラーインク貯留部21は、箱体12内において、同箱体12の前面12a側から見たときに、右側端部に位置するようにして設けられている。そして、カラーインク貯留部21は、第1の基台33、カラー用ホルダ35、第1の空気加圧ポンプ37を備える。第1の基台33は、略直方体形状に形成され、箱体12に対して固定されている。また、カラー用ホルダ35は、略直方体形状に形成され、前記第1の基台33上に設置されている。そして、本実施形態では、インクの色(シアンC、マゼンタM、イエローYの各カラーインク)に対応して、カラー用ホルダ35が3個設けられている。
【0046】
図2に示すように、各カラー用ホルダ35は、お互いに平行となるようにして接するようにして重ね合わせられている。そして、各カラー用ホルダ35は、その一側面35aにおいて開口するようにして、開口部38がそれぞれ形成されている。開口部38には、それぞれ、略直方体形状のカラーカートリッジ39が着脱可能に収容されている。なお、図2においては、着脱の様子をあらわす便宜上、3つのカラーカートリッジ39のうちの2つのみを図示している。図3に示すように、このカラーカートリッジ39は、カラー用ケース41内に、シアンインク、マゼンタインク、イエローインクのいずれかのインクを収容したカラー用インクパック43を備えている。
【0047】
図1に示すように、第1の空気加圧ポンプ37は、カラー用ホルダ35上に設置されている。そして、第1の空気加圧ポンプ37は、3本の空気供給チューブ(図示しない)を介して3つの前記カラーカートリッジ39(図2参照)に対してそれぞれ接続されている。そして、第1の空気加圧ポンプ37は、第1のモータ(図示しない)によって駆動され、前記カラーカートリッジ39の、カラー用ケース41とカラー用インクパック43との間に形成された空間に加圧した流体としての空気を供給することが可能となっている。
【0048】
ブラックインク貯留部23は、箱体12内において、同箱体12の前面12a側から見たときに、左側端部に位置するようにして設けられている。そして、ブラックインク貯留部23は、第2の基台45、モジュールホルダとしてのブラック用ホルダ47、第2の空気加圧ポンプ49を備える。第2の基台45は、略直方体形状に形成され、箱体12に対して固定されている。また、ブラック用ホルダ47は、略直方体形状に形成され、前記第2の基台45の上に設置されている。
【0049】
図4に示すように、このブラック用ホルダ47には、その一側面47aにおいて開口するようにして、開口部51が形成されている。そして、開口部51には、略直方体形状の液体収容体モジュールとしてのカートリッジモジュール(以下、モジュール53という。)が着脱可能に収容されている。そして、図5及び図6に示すように、このモジュール53は、外郭ケースとしての第1及び第2のケース55,57と、ブラックインクを収容した液体収容部としての第1及び第2のインクパック59,61とを備える。なお、本実施形態においては、第1のケース55と第1のインクパック59とによって液体収容体が構成されている。また、第2のケース57と第2のインクパック61とによって液体収容体が構成されている。
【0050】
図1に示すように、第2の空気加圧ポンプ49は、2本の空気供給チューブ(図示しない)を介して、モジュール53(図4参照)に対して接続されている。なお、2本の空気供給チューブのうちの一方は、第1のケース55と第1のインクパック59との間の空間に接続されている。また、他方は、第2のケース57と第2のインクパック61との間の空間に接続されている。そして、第2の空気加圧ポンプ49は、第2のモータ(図示しない)によって駆動され、前記第1及び第2のケース55,57と、第1及び第2のインクパック59,61との間に形成された空間に加圧空気を供給することが可能となっている。
【0051】
流路部25は、それぞれ板状に形成されたカラー用流路部25aとブラック用流路部25bとを備える。カラー用流路部25aには、3本の流路(図示しない)が形成されており、同カラー用流路部25aの一端には、前記流路に対して1つずつ接続されているインク供給針(図示しない)が形成されている。そして、同インク供給針は、前記カラーカートリッジ39(図2参照)が前記カラー用ホルダ35に対して装着されているときに、カラーカートリッジ39のカラー用インクパック43に対して1つずつ接続されるようになっている。
【0052】
ブラック用流路部25bには、1本の共通流路(図示しない)が形成されており、同ブラック用流路部25bの一端には、前記共通流路に対して共に接続されている2つのインク供給針(図示しない)が形成されている。そして、同インク供給針は、前記モジュール53(図4参照)が前記ブラック用ホルダ47に対して装着されているときに、ブラック用ホルダ47の第1及び第2のインクパック59,61に対して1つずつ接続されるようになっている。
【0053】
供給チューブ27は、可撓性の帯状に形成されており、4本の流路(図示しない)が形成されている。そして、供給チューブ27の一端には、前記カラー用流路部25aとブラック用流路部25bのそれぞれの他端が接続されている。すなわち、供給チューブ27の4本の流路のうちの3つは、前記カラー用流路部25aの3本の流路と接続され、供給チューブ27の4本の流路のうちの1つは、前記ブラック用流路部25bの共通流路と接続されている。なお、本実施形態においては、ブラック用流路部25bと供給チューブ27とによって液体供給路が構成されている。
【0054】
また、供給チューブ27の他端は、前記バルブユニット31と接続されている。すなわち、供給チューブ27によって、カラー用流路部25aに接続されているカラー用インクパック43とバルブユニット31とを接続するとともに、ブラック用流路部25bに接続されている第1及び第2のインクパック59,61とバルブユニット31とを接続するようになっている。従って、前記第1及び第2の空気加圧ポンプ37,49を駆動させると、カラー用インクパック43と第1及び第2のインクパック59,61とが加圧され、それぞれに収容されている各種のインクが、カラー用流路部25a及びブラック用流路部25bを経由して、前記供給チューブ27を介してバルブユニット31へと供給される。そして、この状態で、紙送り機構によって紙をプラテン15上に給送させて、キャリッジ19を往復移動させながら、記録ヘッド29からインクを吐出することにより、紙上に文字や画像の印刷を行うことが可能となっている。
【0055】
次に、前記カラーカートリッジ39について詳述する。なお、3つのカラーカートリッジ39は、収容されているインクの色が異なるのみで、その他の構造は同一のため、その説明を1つのみとしてその他の説明を省略する。
【0056】
図3に示すように、カラーカートリッジ39は、カラー用ケース41とカラー用インクパック43とを備える。カラー用ケース41は、カラー用蓋部63とカラー用本体ケース65とを備え、いずれもPP(ポリプロピレン)によって形成されている。カラー用蓋部63は、略長方形の板状に形成され、その周縁部に下方に向かって突出する蓋側係合部63aが8つ形成されている。また、これらの蓋側係合部63aには、カラー用蓋部63の外側に向かって突出する爪部63bがそれぞれ形成されている。
【0057】
カラー用本体ケース65は、上面が開口した箱形状に形成されている。そして、その大きさは、前記カラー用蓋部63を重ね合わせたときに、その開口が塞がれるような大きさとなっている。カラー用本体ケース65の前側側面65aには、その中央部分に支持口67が貫通するように形成されている。また、前側側面65aの前記支持口67の右側には、空気導入口69が貫通するように形成されている。さらに、前側側面65aには、前記支持口67と前記空気導入口69とを挟むようにして、一対の位置決め穴71,73が貫通するように形成されている。
【0058】
また、カラー用本体ケース65は、その底面65bから上方に向かって突出するようにして枠体75が形成されている。なお、枠体75は、カラー用本体ケース65の各側面65a,65c,65d,65eよりも若干の内側に位置するようにして略長方形形状の環状となるように形成されている。そして、前記支持口67と前記空気導入口69とは、この枠体75の内側の空間に対して連通されている。また、前記位置決め穴71,73は、この枠体75の内側の空間に対して非連通状態とされている。
【0059】
そして、この枠体75と、前記カラー用本体ケース65の各側面65a,65c,65d,65eとによって、溝部77が形成されている。そして、この溝部77には、本体側係合部77aが8つ形成されている。なお、この本体側係合部77aは、カラー用本体ケース65に対してカラー用蓋部63を重ね合わせたときに、カラー用蓋部63の前記蓋側係合部63aと係合するような形状及び位置に設けられている。また、カラー用本体ケース65の底面65bからは、4つのリブR1〜R4が突出形成されている。
【0060】
また、カラー用本体ケース65の側面65dには、記憶素子78が取り付けられている。そして、この記憶素子78には、カラーカートリッジ39に収容されているインクの色の種類や、残量といったデータが記憶されている。さらに、図3及び図7に示すように、カラー用本体ケース65の下面65fには、誤挿入防止溝65g、固定構造溝65h、ガイド溝65i,65jが設けられている。誤挿入防止溝65gは、カラーカートリッジ39の前記カラー用ホルダ35への挿入方向と平行となるように設けられている3本の溝となっている。そして、誤挿入防止溝65gの一端は、前記前側側面65aを突き抜けるように形成されている。また、固定構造溝65hは、略三角形形状に形成されるとともに、その溝の深さが部位によって異なるように形成された溝となっている。そして、固定構造溝65hについても、その一端が、前記前側側面65aを突き抜けるように形成されている。ガイド溝65i,65jは、断面長方形形状の溝であり、カラー用本体ケース65の周縁部寄りの位置においてそれぞれ凹設されている。
【0061】
図3に示すように、カラー用インクパック43は、液体収容袋としての袋部79と供給部材81とを備える。袋部79は、複数の層が積層された可撓性のフィルムによって形成されている。そして、袋部79は、本実施形態においては、1枚の略長方形形状のフィルムをその一端と他端とを熱溶着によって接着し、環状になるようにすることにより形成されている。さらに、袋部79は、環状に形成されたフィルムの一方の開口を熱溶着によって封止するとともに、他方の開口を、前記供給部材81を挟んだ状態で熱溶着することによって形成されている。そして、本実施形態の袋部79は、その両側部にマチ部83を備えている。
【0062】
供給部材81は、円柱部85と溶着部(図示しない)とを備え、同円柱部85と溶着部とを貫通するようにして供給孔85aが形成されている。そして、溶着部は前記袋部79に対して挟み込まれるようにして熱溶着されている。これにより、供給部材81の前記供給孔85aは、その一端が袋部79の内部に、他端が袋部79の外部に位置するようになり、袋部79の内外を連通する。
【0063】
そして、以上のように構成されたカラー用インクパック43は、前記カラー用本体ケース65に対して、前記枠体75の内側に位置するようにして収容されている。このとき、カラー用インクパック43は、その供給部材81の供給孔85aがカラー用本体ケース65の前記支持口67に対して対峙するような位置に収容されている。また、供給部材81は、カラー用本体ケース65のリブR1〜R4によって支持され、カラー用本体ケース65内におけるカラー用インクパック43のずれの発生が防がれるようになっている。
【0064】
そして、カラー用本体ケース65には、前記カラー用インクパック43が収容された状態で、前記枠体75の上端面に封止フィルム(図示しない)が貼着されている。この結果、枠体75、カラー用本体ケース65の底面65b、封止フィルムによって形成される空間が、ほぼ密閉状態に封止されている。そして、この状態で、カラー用本体ケース65に対してカラー用蓋部63が重ね合わされ、蓋側係合部63aと本体側係合部77aとが係合される。以上により、カラーカートリッジ39が形成されている。
【0065】
そして、以上のように形成されたカラーカートリッジ39は、図2に示すように、カラー用ホルダ35に装着される。なお、このとき、カラー用ホルダ35の開口部38の内部には、それぞれ2本の棒状のガイド部材35b,35cが、カラーカートリッジ39の挿入方向と平行となるようにして設けられている。また、開口部38の内部には、3つの略直方体形状の誤挿入防止凸部(図示しない)が、同挿入方向と平行となるようにして設けられている。さらに、開口部38の内部には、固定用部材(図示しない)が設けられている。
【0066】
そして、カラーカートリッジ39がカラー用ホルダ35に装着されているときには、前記2本のガイド部材35b,35cが、カラーカートリッジ39の前記位置決め穴71,73(図3参照)に対して挿入される。また、3つの誤挿入防止凸部が、カラーカートリッジ39の前記誤挿入防止溝65g(図7参照)と嵌合する。さらに、固定用部材が、カラーカートリッジ39の前記固定構造溝65h(図7参照)と係合する。以上により、カラー用ホルダ35に対してカラーカートリッジ39が誤挿入のない状態で装着されるととともに、位置決めがなされ、ずれの発生等が防がれる。
【0067】
また、カラー用ホルダ35にカラーカートリッジ39が装着されると、前記カラー用流路部25a(図1参照)の一端に設けられていたインク供給針とカラーカートリッジ39の供給孔85a(図3参照)とが接続される。さらに、第1の空気加圧ポンプ37(図1参照)に接続されている空気供給チューブと、前記カラーカートリッジ39の空気導入口69(図3参照)とが接続される。従って、第1の空気加圧ポンプ37が駆動されると、空気導入口69を介してカラーカートリッジ39のカラー用本体ケース65内部に空気が導入され、カラー用インクパック43に対して押し潰すような方向の加圧力が働く。この結果、カラー用インクパック43内に貯留されていたカラーインクが、供給孔85a、インク供給針を介してカラー用流路部25aへと排出され、前記バルブユニット31へと供給される。
【0068】
次に、前記モジュール53について詳述する。図5及び図6に示すように、モジュール53は、第1及び第2のケース55,57、第1及び第2のインクパック59,61、締結手段としての粘着テープ87、締結手段としてのラベル89を備える。
【0069】
第1のケース55は、蓋部としての第1の蓋部91と箱体部としての第1の本体ケース93とを備え、いずれもPP(ポリプロピレン)によって形成されている。第1の蓋部91は、前記カラー用蓋部63(図3参照)と同一の形状に形成されており、8つの蓋側係合部91aを備えている。また、第1の本体ケース93は、前記カラー用本体ケース65(図3参照)と同一の形状に形成されている。そして、第1の本体ケース93は、図5、図6及び図8に示すように、カラー用本体ケース65と同様にして、枠体93a、8つの本体側係合部93b、支持口93c、流体導入手段としての空気導入口93d、位置決め穴93e,93f、誤挿入防止溝93g、固定構造溝93h、2つのガイド溝(図示しない)を備える。なお、本実施形態においては、2つのガイド溝が締結用凹部に対応する。また、第1の本体ケース93は、カラー用本体ケース65において備えられていた前記記憶素子78を備えていないようになっている。
【0070】
また、図5及び図6に示すように、第2のケース57は、蓋部としての第2の蓋部95と箱体部としての第2の本体ケース97とを備え、いずれもPP(ポリプロピレン)によって形成されている。第2の蓋部95は、前記第1の蓋部91と同様の大きさの長方形の板状に形成されている。そして、その周縁部には、下方に向かって突出する蓋側係合部95aが8つ形成されている。なお、この蓋側係合部95aは、前記カラー用蓋部63の蓋側係合部63a(図3参照)と同様のものである。また、第2の蓋部95は、その上面95bに、上方へ向かって突出する第1〜第4の連結用凸部101〜104が設けられている。第1の連結用凸部101は、3つの略直方体形状に形成されている。そして、図6及び図8に示すように、第1の連結用凸部101は、第2の蓋部95と前記第1の本体ケース93とを重ね合わせたときに、第1の本体ケース93に形成されている誤挿入防止溝93gに対して嵌合されるような形状及び位置に形成されている。
【0071】
また、第2の連結用凸部102は、2つの三角柱を連結したような形状に形成されている。そして、第2の連結用凸部102は、第2の蓋部95と前記第1の本体ケース93とを重ね合わせたときに、第1の本体ケース93に形成されている前記固定構造溝93hに対して係合されるような形状及び位置に形成されている。締結用凸部としての第3及び第4の連結用凸部103,104は、第2の蓋部95の周縁部付近にそれぞれ設けられており、8つの前記蓋側係合部95aのうちの2つを上方に延長させて形成したような形状を有している。そして、第3及び第4の連結用凸部103,104は、第2の蓋部95と前記第1の本体ケース93とを重ね合わせたときに、第1の本体ケース93に形成されているガイド溝に対して係合されるような形状及び位置に形成されている。
【0072】
図5、図6及び図8に示すように、第2の本体ケース97は、前記カラー用本体ケース65(図3参照)及び前記第1の本体ケース93と同一の形状に形成されている。そして、カラー用本体ケース65と同様にして、枠体97a、8つの本体側係合部97b、支持口97c、流体導入手段としての空気導入口97d、位置決め穴97e,97f、係合部としての誤挿入防止溝97g、係合部としての固定構造溝97hを備える。また、第2の本体ケース97は、前記カラー用本体ケース65の記憶素子78と同様の記憶素子98を備える。
【0073】
また、図6に示すように、第1及び第2のインクパック59,61は、それぞれ、前記カラー用インクパック43(図3参照)と同一の形状に形成されており、内蔵するインクの種類が、カラーインクではなく、ブラックインクとなっている。そして、図6及び図8に示すように、カラー用インクパックと同様にして、液体導出手段としての第1及び第2の供給部材59a,61aを備え、第1及び第2の供給部材59a,61aには、第1及び第2の供給孔59b,61bが形成されている。
【0074】
そして、以上のように構成された第1及び第2のインクパック59,61は、それぞれ、前記第1及び第2の本体ケース93,97に対して、前記カラー用インクパック43(図3参照)と同様にしてそれぞれの枠体93a,97a内に収容されている。そして、第1及び第2の本体ケース93,97には、それぞれ、第1及び第2のインクパック59,61が収容された状態で、枠体93a,97aの上端面に封止フィルム(図示しない)が貼着されている。また、この状態で、第1の本体ケース93に対して第1の蓋部91が重ね合わされ、蓋側係合部91aと本体側係合部93bとが係合されている。さらに、第2の本体ケース97に対して第2の蓋部95が重ね合わされ、蓋側係合部95aと本体側係合部97bとが係合されている。
【0075】
そして、以上のようにして、第1及び第2のインクパック59,61は第1及び第2のケース55,57に対してそれぞれ収容されている。そして、この状態で、第1及び第2のケース55,57は、第1のケース55の第1の本体ケース93に対して第2のケース57の第2の蓋部95が重ね合わされるようにして係合されている。詳しくは、図6及び図8に示すように、第1の本体ケース93の誤挿入防止溝93gに対して第2の蓋部95の第1の連結用凸部101が嵌合している。また、第1の本体ケース93の固定構造溝93hに対して第2の蓋部95の第2の連結用凸部102が係合している。これにより、誤挿入防止溝93gと固定構造溝93hの開口が外観的に隠される。すなわち、第1及び第2の連結用凸部101,102は、誤挿入防止溝93gと固定構造溝93hの開口を外観的に隠すことが可能な形状に形成されている。さらに、第1の本体ケースの2つのガイド溝に対して第2の蓋部95の第3及び第4の連結用凸部103,104が係合している。なお、このとき、図5に示すように、第1及び第2のケース55,57の向きは、第1及び第2の本体ケース93,97の、前記支持口93c,97c等が設けられている前側側面93i,97iがお互いに同一面に位置するような向きとなっている。すなわち、支持口93c,97c等の方向は同一方向を向くようになっている。
【0076】
図6に示すように、粘着テープ87は、本実施形態においては、テープ状材料としてのPET(ポリエチレンテレフタレート)とアクリル系粘着剤とを積層して形成された日東電工株式会社製の汎用テープとなっている。そして、PETの厚みは25μm、アクリル系粘着剤の厚みは28μmとなっている。また、粘着テープ87自体の幅は12mmとなっている。そして、粘着テープ87は、その一端と他端とが重ね合わされ、アクリル系粘着剤の面が内側となるように環状に張合わされている。すなわち、粘着テープ87には、重ね合わせ部87aが形成されている。
【0077】
そして、図5に示すように、粘着テープ87は、重ね合わされて係合された第1及び第2のケース55,57に対して、それらの離間を防ぐようにして環状の状態で巻き付けられている。すなわち、この粘着テープ87によって、第1及び第2のケース55,57は、重ね合わされる方向において固定される。そして、その巻き付け方向は、第1及び第2の本体ケース93,97の前側側面93i,97iに対して平行な方向、すなわち、支持口93c,97cの向いている方向と直交する方向となっている。そして、その位置は、第1及び第2のケース55,57の長手方向、すなわち、支持口93c、97cの向いている方向において、第1及び第2のケース55,57のほぼ中間地点となっている。
【0078】
図5及び図6に示すように、ラベル89は、長方形のシート状に形成されており、シート材としての合成紙とアクリル系粘着剤とを積層して形成されたものとなっている。そして、合成紙の厚さは80μmとなっている。ラベル89は、アクリル系粘着材の面が内側となるようにしてほぼ直角に折り曲げられることにより屈曲部89aが形成されており、この屈曲部89aを境にして第1のラベル面107と第2のラベル面109とが形成されている。
【0079】
そして、図5及び図6に示すように、第1のラベル面107は、第1のケース55の第1の蓋部91の他側面としての表面91b上に貼り付けられている。なお、このとき、第1のラベル面107の大きさは、前記第1の蓋部91よりも小さく、かつ、前記粘着テープ87の一部分を上から覆いながら押さえ付けるような大きさとなっている。
【0080】
また、第2のラベル面109は、第1及び第2のケース55,57の第1及び第2の本体ケース93,97のそれぞれの一側面としての後側側面93j,97jの上に貼り付けられている。なお、後側側面93j,97jは、ぞれぞれ、前記支持口93c,97cが設けられている前側側面93i,97iに対して平行に対峙する離間位置に設けられている面であり、お互いに1つの平面上に並ぶように位置している。このとき、第2のラベル面109の大きさは、前記後側側面93j,97jを合わせた大きさよりも小さく、かつ、後側側面93j,97jの境目を越えて後側側面93j,97jの両方に対して貼り付けられるような大きさとなっている。従って、この第2のラベル面109によって、後側側面93j,97jの位置が離間しないよう、すなわち、第1及び第2のケース55,57が離間しないように規制されている。なお、本実施形態では、ラベル89は、前記粘着テープ87よりも、第1及び第2のケース55,57の重ね合わせる方向における締結力が低く、かつ、伸びが大きくなるよう形成されている。
【0081】
そして、以上のようにして、モジュール53は、第1及び第2のケース55,57が重ね合わされた状態で粘着テープ87及びラベル89によって一体となるように覆われ締結されて形成されており、図4に示すように、このモジュール53は、ブラック用ホルダ47に対して装着される。なお、このとき、ブラック用ホルダ47の開口部51の内部には、2本の棒状のガイド部材47b,47cがモジュール53の挿入方向と平行となるようにして設けられている。また、開口部51の内部には、3つの略直方体形状のホルダ側係合部としての誤挿入防止凸部(図示しない)が、同挿入方向と平行となるようにして設けられている。さらに、開口部51の内部には、ホルダ側係合部としての固定用部材(図示しない)が設けられている。
【0082】
そして、モジュール53がブラック用ホルダ47に対して装着されているときには、前記2本のガイド部材47b,47cが、モジュール53の第2のケース57の前記位置決め穴97e,97f(図5参照)に対して挿入される。また、3つの誤挿入防止凸部が、第2のケース57の前記誤挿入防止溝97g(図8参照)と嵌合する。さらに、固定用部材が、第2のケース57の前記固定構造溝97h(図8参照)と係合する。以上により、ブラック用ホルダ47に対してモジュール53が誤挿入のない状態で装着されるとともに、位置決めがなされ、ずれの発生等が防がれる。
【0083】
また、ブラック用ホルダ47にモジュール53が装着されると、前記ブラック用流路部25b(図1参照)の一端に設けられていた2つのインク供給針が、1つずつ、それぞれ第1及び第2のケース55,57の第1及び第2の供給孔59b,61b(図8参照)に対して接続される。さらに、第2の空気加圧ポンプ49(図1参照)に接続されている2本の空気供給チューブが、1つずつ、それぞれ第1及び第2のケース55,57の空気導入口93d,97d(図5参照)に対して接続される。従って、第2の空気加圧ポンプ49が駆動されると、空気導入口93d,97dを介して第1及び第2のケース55,57の第1及び第2の本体ケース93,97内部にそれぞれ空気が導入される。そして、第1及び第2のインクパック59,61のそれぞれに対して押し潰すような方向の加圧力が働く。この結果、第1及び第2のインクパック59,61内に貯留されていたブラックインクが、第1及び第2の供給孔59b,61b、インク供給針を介してブラック用流路部25bへと排出され、前記バルブユニット31へと供給される。
【0084】
なお、図9は、本実施形態におけるカートリッジモジュールの作用を説明した図である。この図9に示すように、第1及び第2のケース55,57に対して加圧空気が導入されているときには、第1及び第2の本体ケース93,97に対して空気による加圧力が加わる。そして、第1及び第2のケース55,57が外側に弾性変形しようとする。この結果、第1及び第2のケース55,57には、お互いに外側に離間しようとする力が働く。特に、構造上、図9に示す最大変形点としての点Aにおいて、変形量が大きくなることが知られている。なお、点Aとは、第1及び第2のケース55,57の長手方向において、中間地点よりも前記後側側面93j,97j寄りの位置となっている。すなわち、粘着テープ87よりも後側側面93j,97j寄りの位置となっている。
【0085】
従って、第1及び第2のケース55,57は、前側側面93i,97iにおいて、前記第1及び第2の供給孔59b,61b(図8参照)がインク供給針に接続されているが、前記粘着テープ87は、この接続部と点Aとの間に位置している。この結果、例えば、粘着テープ87を、点Aよりも前記後側側面93j,97j寄りに位置させた場合には、加圧空気を導入したときに、粘着テープ87の位置を支点として、前記接続部に対して、外側に離間しようとする力が働くこととなる。この結果、接続部の接続信頼性が低下するおそれがある。しかし、本実施形態においては、粘着テープ87を点Aよりも前側側面93i,97i寄りに位置させるようにしているので、外側に離間しようとする力を粘着テープ87の締結力によって抑えることができ、接続部の信頼性の低下が防がれている。
【0086】
また、逆に、後側側面93j,97jにおいては、粘着テープ87を点Aよりも前側側面93i,97i寄りに位置させたために、粘着テープ87を支点として、外側に離間しようとする力が働くこととなる。この結果、モジュール53がブラック用ホルダ47内において大きく変形した状態で収容され、モジュール53をブラック用ホルダ47から抜くときに、抜きづらくなるといった現象が生じるおそれがあった。また、後側側面93j,97jは、目に付きやすい位置にあり、外側に離間した状態では、美観上好ましくない場合があった。しかし、本実施形態においては、ラベル89によって後ろ側側面93j,97jについても、離間しないように規制しているため、このような現象が生じないようになっている。
【0087】
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
・本実施形態では、モジュール53は、第1及び第2のインクパック59,61を収容した第1及び第2のケース55,57を重ね合わせて形成した。なお、一般に、可撓性のインクパックを使用したインクカートリッジにおいて、貯留するインクの量を増加させる方法としては、単体のインクパックの大きさ自体を大きくするよりも、インクパック自体の数を増やしたほうが、スペースを有効に利用できたり、インクを最後まで効率的に使用できたりすることが知られている。従って、本実施形態では、単体のブラック用カートリッジを備えた場合に比較して、より効率的に大量のインクを貯留することができる。
【0088】
・本実施形態では、モジュール53は、第1及び第2のケース55,57を重ね合わせた状態で、粘着テープ87及びラベル89によってお互いが離間しないように締結するようにした。従って、粘着テープ87とラベル89がない状態で、空気導入口93dから第1及び第2のケース55,57内に空気を導入すると、第1及び第2のケース55,57が、空気の加圧力によって、外側に向かって弾性変形しようとする。この結果、隣り合う第1及び第2のケース55,57同士が押圧力を受けて、互いに離間するおそれがある。そして、モジュール53をブラック用ホルダ47に収容させたとき、インク供給針と第1及び第2の供給孔59b,61bとの接続精度に影響が出るおそれがある。しかし、本実施形態においては、粘着テープ87とラベル89によって押圧力による離間が規制されており、これらの接続精度を保たれた状態とすることができる。
【0089】
・本実施形態では、モジュール53において、第1及び第2のケース55,57は、第1及び第2の供給孔59b,61bのインクの排出方向が同一方向となるように配置するようにした。従って、第1及び第2の供給孔59b,61bの位置が近い位置にまとまり、プリンタ11内におけるインク供給の動線をより簡単なものとすることができる。
【0090】
・本実施形態では、粘着テープ87は、インクの排出方向において、点Aよりも第1及び第2の供給孔59b,61bに近い位置において第1及び第2のケース55,57を締結するようにした。従って、モジュール53に空気を導入すると、モジュール53が点Aにおいて大きく弾性変形し、隣り合う第1及び第2のケース55,57を離間させようとする。しかし、点Aと第1及び第2の供給孔59b,61bの間で粘着テープ87によって第1及び第2のケース55,57を締結しているので、点Aを支点とした、各供給孔59b,61bを離間させようとする力を規制することができる。この結果、各供給孔59b,61b同士の位置ずれを防ぐことができ、インク供給針とモジュール53との間の接続精度の低下を効果的に防ぐことができる。
【0091】
・本実施形態では、粘着テープ87は、モジュール53に対して、インクの排出方向と直交する方向に巻き付けられるようにした。従って、粘着テープ87は、第1及び第2の供給孔59b,61bや、記憶素子98といった手段に対して貼り付けられないような位置に設けられるようになり、これらの機能を阻害させないようにすることができる。
【0092】
・本実施形態では、粘着テープ87は、モジュール53に対して、環状に巻き付くようにして貼り付けられるようにした。従って、粘着テープ87による接着面積が環状となっている分増加し、第1及び第2のケース55,57をより確実に締結することができる。この結果、粘着テープ87として、比較的粘着力の低いものを使用することも可能であり、モジュール53の製造コストを抑えることができる。
【0093】
・本実施形態では、粘着テープ87は、PETとアクリル系粘着剤とを積層させた汎用性の高いテープを使用するようにした。従って、粘着テープ87を、比較的安価で強度があり、熱による伸びも少ないものにできる。この結果、第1及び第2のケース55,57の締結力をより確実なものとするとともに、製造コストも抑えることができる。
【0094】
・本実施形態では、ラベル89は、粘着テープ87の上から、第1のケース55に対して貼り付けられるようにした。従って、粘着テープ87と第1のケース55との間のずれや伸びをラベル89の粘着力によって防ぐことができる。この結果、第1及び第2のケース55,57をより確実に締結することができる。
【0095】
・本実施形態では、ラベル89は、第1及び第2のケース55,57の後側側面93j,97jに対して貼り付けられることによって、第1及び第2のケース55,57の離間を規制するようにした。従って、モジュール53をブラック用ホルダ47に収容するときには、後側側面93j,97jが比較的目に付きやすい位置にとなるが、この位置において、第1及び第2のケース55,57の離間を防ぐことができる。この結果、美観上好ましい状態とすることができる。また、この位置において第1及び第2のケース55,57が離間すると、モジュール53がブラック用ホルダ47から抜けにくくなるおそれもあり、このような現象を防ぐこともできる。さらに、ラベル89には、モジュール53に関する文字や図形等による情報を表示することが可能であり、情報を表示させる手段と、第1及び第2のケース55,57を締結させる手段とに兼用することができる。この結果、モジュール53の部品点数を減少させ、製造コストを抑えることができる。
【0096】
・本実施形態では、ラベル89の第1のラベル面107は、第1の蓋部91上に、第2のラベル面109は、後側側面93j,97jに対して貼り付けられるようにした。従って、ラベル89は、モジュール53の2つの面にわたって貼り付けられるようになり、ラベル89による締結力をより確実なものとすることができる。さらに、ラベル89の面積が増えるので、ラベル89上に表示可能な情報量を増やすことができる。
【0097】
・本実施形態では、第1及び第2のケース55,57は、第1及び第2の蓋部91,95と、第1及び第2の本体ケース93,97とを備え、第2の蓋部95に第1〜第4の連結用凸部101〜104を備えるとともに、第1の本体ケース93に、誤挿入防止溝93g、固定構造溝93h、ガイド溝を備えるようにした。そして、第1〜第4の連結用凸部101〜104と、誤挿入防止溝93g、固定構造溝93h、ガイド溝を、係合又は嵌合させるようにした。従って、モジュール53において、第1の蓋部91、第1の本体ケース93、第2の蓋部95、第2の本体ケース97が順に並ぶようにして、2つのケース55,57が重ね合わされた状態とされる。この結果、2つのケース55,57の向きを同一方向として重ね合わせることができ、それぞれの第1及び第2の供給孔59b,61bや、空気導入口93d,97dを規則正しく配列させることができる。従って、モジュール53をブラック用ホルダ47に収容させたときに、インクや空気の供給の動線を簡素化させることができる。また、第1及び第2のケース55,57の形状をほぼ同一形状とすることができ、部品の標準化がしやすくなり、モジュール53の製造コストを抑えることができる。
【0098】
・本実施形態では、モジュール53は、記憶素子98を1つのみ備えるようにした。従って、第1及び第2のケース55,57の両方に記憶素子を設ける場合に比較して、モジュール53の構造を簡素化させることができる。また、プリンタ11側においては、記憶素子98を読み取るための読み取り手段を1つのみ備えればよく、記憶素子の読み取り位置の精度の許容範囲が広がり、寸法精度を高くすることができる。この結果、プリンタ11の設計を容易にすることができる。
【0099】
・本実施形態では、モジュール53とブラック用ホルダ47との係合は、モジュール53の2つのケース55,57のうちの1つのみを使用して行うようにした。すなわち、第2のケース57の誤挿入防止溝97g、固定構造溝93hを使用して行うようにした。従って、第1及び第2のケース55,57の両方をブラック用ホルダ47に対して係合させる場合に比較して、係合構造を簡素化させることができる。この結果、モジュール53をブラック用ホルダ47に対して収容するときの上下左右の位置決めと固定が第2のケース57によって主に行われるようになり、係合の精度の許容範囲を広がって寸法精度が高くなる。この結果、プリンタ11の設計を簡素化させることができる。
【0100】
・本実施形態では、第1のケース55の誤挿入防止溝93gと第2のケース57の誤挿入防止溝97gとを同様の形状に、また、第1のケース55の固定構造溝93hと、第2のケース57の固定構造溝97hとを同様の形状に形成した。すなわち、同形状の誤挿入防止溝93g,97gや固定構造溝93h,97hを、モジュール53の形成及びブラック用ホルダ47への係合という、2つの異なる用途に使用している。この結果、カートリッジモジュールの部品を標準化させ、簡素化させることができる。
【0101】
・本実施形態では、モジュール53をブラック用ホルダ47に装着するときには、ブラック用ホルダ47のガイド部材47b,47cが、第2のケース57の位置決め穴97e,97fに挿入されるようにした。従って、2つのケース55,57のうちの1つの位置決め穴93e,93fのみが、ガイド部材47b,47cに対して挿入され、モジュール53の、挿入方向と直交する方向における位置決めがなされる。この結果、モジュール53とブラック用ホルダ47との間の位置決め構造を簡素化させることができる。また、位置決めの精度の許容範囲を広げることができ、プリンタ11の設計を簡素化できる。
【0102】
・本実施形態では、第1及び第2のケース55,57は、カラー用ケース41とほぼ同様の形状を有するように形成した。従って、本実施形態のように、所定の色のインクの貯留量を他の色のインクの貯留量と異ならせたい場合などに、インクカートリッジの設計を大幅に変更する必要がない。この結果、このような場合においても、部品をある程度標準化することが可能であり、製造コストを抑えることができる。
【0103】
なお、上記実施形態は、以下のように変更してもよい。
・上記実施形態では、モジュール53は、2つのケース55,57と、2つのインクパック59,61とを備えるようにした。これを、3つ以上のケースとインクパックとを備えるようにしてもよい。そして、このような場合には、ラベル89の第1のラベル面107が貼り付けられるケースのみ第1のケース55と同様の構造とし、その他のケースは、第2のケース57と同様の構造を有するようにする。そして、第2のケース57と同様に形成されているケースを第1のケース55に対して積層させるように重ね合わせることによって、モジュール53を形成するようにする。
【0104】
・上記実施形態では、締結手段として、粘着テープ87及びラベル89に具体化するようにした。これを、粘着テープ87又はラベル89のいずれか1つのみに具体化してもよい。また、第1及び第2のケース55,57の離間を規制して、インク供給針と第1及び第2の供給孔59b,61bとの接続精度を保つことができるのであれば、その他の締結手段、例えば、ねじ止め、ゴムバンド、各種継ぎ手等に具体化してもよい。
【0105】
・上記実施形態では、第1及び第2のケース55,57は、インクの排出方向が同一方向を向くように、モジュール53において配置されるようにした。これを同一の方向を向かないようにしてもよい。
【0106】
・上記実施形態では、粘着テープ87は、モジュール53において、点Aよりもインクの排出方向において、第1及び第2の供給孔59b,61bに近い位置において第1及び第2のケース55,57を締結した。これをその他の位置において締結してもよい。
【0107】
・上記実施形態では、粘着テープ87は、モジュール53に対して、インクの排出方向と直交する方向に巻き付けるようにした。これを、第1及び第2の供給孔59b,61bや、記憶素子98といった、モジュール53を機能させるための手段に重ならないのであれば、その他の方向に巻き付けるようにしてもよい。
【0108】
・上記実施形態では、粘着テープ87は、重ね合わせ部87aを有し、環状に第1及び第2のケース55,57を締結するようにした。これを、非環状の状態で第1及び第2のケース55,57を締結するようにしてもよい。
【0109】
・上記実施形態では、粘着テープ87は、PETとアクリル系粘着剤とを積層させた汎用性の高いテープであるようにしたが、可撓性を有するテープ状材料と粘着剤とによって形成されているその他の粘着テープを使用するようにしてもよい。
【0110】
・上記実施形態では、ラベル89は、粘着テープ87の上から第1のケース55に対して貼り付けられるようにした。これを、粘着テープ87の下において第1のケース55に対して貼り付けられるようにしてもよい。
【0111】
・上記実施形態では、ラベル89は、第1及び第2のラベル面107,109を備えるようにした。これを、いずれか一方のみ備えるようにしてもよい。また、ラベル89自体を設けないようにし、第1及び第2のケース55,57を、粘着テープ87のみによって締結するようにしてもよい。さらに、ラベル89に、第3のラベル面を新たに設けるようにしてもよい。そして、このような場合には、第3のラベル面を、例えば、第2の本体ケース97の下面に貼り付けるようにし、ラベル89が、第1及び第2のケース55,57の3つの面にわたって連続するようにして貼り付けられるようにしてもよい。
【0112】
・上記実施形態では、第1及び第2のケース55,57は、第1の本体ケース93に対して第2の蓋部95が重ね合わされるようにして、係合されるようにした。これを、その他の面同士重ね合わせるようにして係合させるようにしてもよい。
【0113】
・上記実施形態では、モジュール53は記憶素子98を1つのみ備えるようにした。これを、2つ以上備えるようにしてもよい。また、備えないようにしてもよい。
・上記実施形態では、モジュール53をブラック用ホルダ47に係合させるときに、モジュール53の第1及び第2のケース55,57のうち、第2のケース57のみをモジュール53に対して係合させるようにした。これを、第1のケース55のみをモジュール53に対して係合させるようにしてもよいし、両方を係合させるようにしてもよい。
【0114】
・上記実施形態では、第1及び第2の本体ケース93,97は、同様の形状となるように形成した。これを同様の形状とならないようにしてもよい。
・上記実施形態では、ブラック用ホルダ47は、2つのガイド部材47b,47cを備えるようにした。これを、モジュール53を、挿入方向と直交する方向において位置決めできるのであれば、ガイド部材を1つのみ、又は、3つ以上設けるようにしてもよい。
【0115】
・上記実施形態では、第2の蓋部95に形成されている第1〜第4の連結用凸部101〜104は、第1の本体ケース93の誤挿入防止溝93g、固定構造溝93h、ガイド溝に対して嵌合又は、係合されるような形状に形成されるようにした。これを、圧入されるような形状に形成するようにしてもよい。
【0116】
・上記実施形態では、第1及び第2のケース55,57は、カラー用ケース41とほぼ同様の形状を有するように形成した。これを、異なる形状に形成してもよい。
・上記実施形態では、液体収容体モジュールは、ブラックインクを貯留するカートリッジモジュールに具体化した。これを、その他の色のインクを貯留するカートリッジモジュールに具体化してもよい。
【0117】
・上記実施形態では、液体収容体モジュールは、インクを吐出するプリンタのカートリッジモジュールに具体化した。これを、外郭ケースと可撓性の液体収容体との間の空間に、加圧した流体を導入して液体収容体の内部の液体を液体導出手段を介して外部に排出させることができるのであれば、その他の液体収容体モジュールに具体化してもよい。
【0118】
・上記実施形態では、流体として空気を使用するようにしたが、その他の流体、例えば、水等を使用するようにしてもよい。
・上記実施形態では、液体噴射装置として、液体としてのインクを吐出するプリンタ(ファックス、コピア等を含む印刷装置)について説明したが、他の液体を噴射する液体噴射装置であってもよい。例えば、液晶ディスプレイ、ELディスプレイ及び面発光ディスプレイの製造などに用いられる電極材や色材などの液体を噴射する液体噴射装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する液体噴射装置、精密ピペットとしての試料噴射装置であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0119】
【図1】本実施形態のインクジェット式プリンタの要部斜視図。
【図2】同じく、カラーカートリッジホルダの斜視図。
【図3】同じく、カラーインクカートリッジの分解斜視図。
【図4】同じく、ブラックカートリッジホルダの斜視図。
【図5】同じく、カートリッジモジュールの斜視図。
【図6】同じく、カートリッジモジュールの分解斜視図。
【図7】同じく、カラーインクカートリッジの底面図。
【図8】同じく、カートリッジモジュールの断面図。
【図9】同じく、カートリッジモジュールの作用を説明する図。
【符号の説明】
【0120】
A…最大変形点、11…液体噴射装置としてのインクジェット式プリンタ、25b…液体供給路を構成するブラック用流路部、27…液体供給路を構成する供給チューブ、29…液体噴射ヘッドとしての記録ヘッド、47…モジュールホルダとしてのブラック用ホルダ、47b,47c…ガイド部材、53…液体収容体モジュールとしてのカートリッジモジュール、55,57…外郭ケースとしての第1及び第2のケース、59,61…液体収容部としての第1及び第2のインクパック、59a,61a…液体導出手段としての第1及び第2の供給部材、79…液体収容袋としての袋部、87…締結手段としての粘着テープ、89…締結手段としてのラベル、91b…他側面としての表面、91,95…蓋部としての第1及び第2の蓋部、93,97…箱体部としての第1及び第2の本体ケース、93d,97d…流体導入手段としての空気導入口、93j,97j…一側面としての後側側面、97e,97f…位置決め穴、97g…係合部としての誤挿入防止溝、97h…係合部としての固定構造溝、98…記憶素子、103,104…締結用凸部としての第3及び第4の連結用凸部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性の液体収容袋内に液体を収容し、液体導出手段によって前記液体収容袋内の液体を前記液体収容袋外に排出可能とする液体収容部と、同液体収容部を収容する外郭ケースと、前記液体収容部と前記外郭ケースとの間の空間に流体を導入することを可能とする流体導入手段とを備えた液体収容体を、複数備えた液体収容体モジュールにおいて、
前記複数の液体収容体を重ね合わせた状態で一体となるように覆い、隣り合う前記液体収容体同士の離間を規制するように締結する締結手段を備えたことを特徴とする液体収容体モジュール。
【請求項2】
請求項1に記載の液体収容体モジュールにおいて、
前記複数の液体収容体は、隣り合う前記液体収容体同士が、前記液体導出手段の前記液体の排出方向が同じ方向となるように配置されていることを特徴とする液体収容体モジュール。
【請求項3】
請求項2に記載の液体収容体モジュールにおいて、
前記外郭ケースは、前記空間に前記流体を導入したときに、最も大きく弾性変形する部分である最大変形点を備え、
前記締結手段は、前記液体導出手段の前記液体の排出方向と平行な方向において、前記最大変形点と異なる位置において前記液体収容体を締結するように設けられていることを特徴とする液体収容体モジュール。
【請求項4】
請求項3に記載の液体収容体モジュールにおいて、
前記締結手段は、前記液体導出手段の前記液体の排出方向と平行な方向において、前記液体導出手段と前記最大変形点との間の位置において前記液体収容体を締結するように設けられていることを特徴とする液体収容体モジュール。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1つに記載の液体収容体モジュールにおいて、
前記締結手段は、可撓性を有するテープ状材料と、粘着性を有する粘着剤とを積層させて形成された粘着テープであり、
前記粘着テープは、前記複数の液体収容体に対して、前記液体導出手段の前記液体の排出方向と異なる方向に巻き付くようにして貼り付けられて前記液体収容体を締結することを特徴とする液体収容体モジュール。
【請求項6】
請求項5に記載の液体収容体モジュールにおいて、
前記粘着テープは、重ね合わせた状態で一体となっている前記複数の液体収容体に対して、環状に巻き付くようにして貼り付けられることによって、前記液体収容体を締結することを特徴とする液体収容体モジュール。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の液体収容体モジュールにおいて、
前記テープ状材料は、PET(ポリエチレンテレフタレート)によって形成されていることを特徴とする液体収容体モジュール。
【請求項8】
請求項5〜7のいずれか1つに記載の液体収容体モジュールにおいて、
可撓性を有するシート材と、粘着性を有する粘着剤とを積層させて形成されたラベルを備え、
前記ラベルは、前記粘着テープの上から前記液体収容体に対して貼り付けられていることを特徴とする液体収容体モジュール。
【請求項9】
請求項3に記載の液体収容体モジュールにおいて、
前記締結手段は、前記液体導出手段の前記液体の排出方向と平行な方向において、前記最大変形点よりも前記液体導出手段から離間した離間位置において前記液体収容体を締結するように設けられていることを特徴とする液体収容体モジュール。
【請求項10】
請求項9に記載の液体収容体モジュールにおいて、
前記複数の液体収容体は、前記離間位置に位置する一側面が、お互いに1つの平面上に位置するように並ぶように配置され、
前記締結手段は、可撓性を有するシート材と、粘着性を有する粘着剤とを積層させて形成されたラベルであり、
前記ラベルは、前記複数の液体収容体の前記一側面によって形成されている前記平面上にわたって貼り付けられることによって前記液体収容体を締結することを特徴とする液体収容体モジュール。
【請求項11】
請求項10に記載の液体収容体モジュールにおいて、
前記液体収容体は、前記一側面に隣接するとともに、前記一側面に対して非平行となるように設けられている他側面を備え、
前記ラベルは、前記平面に加えて、複数の前記液体収容体のうちの少なくとも1つに備えられている前記他側面にわたって貼り付けられていることを特徴とする液体収容体モジュール。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1つに記載の液体収容体モジュールにおいて、
前記複数の液体収容体は、少なくとも締結用凸部及び締結用凹部のいずれか一方を備え、一の前記液体収容体の前記締結用凸部及び前記締結用凹部が、他の前記液体収容体の前記締結用凹部及び前記締結用凸部に対して、互いに嵌合、係合又は圧入されるように形成されていることを特徴とする液体収容体モジュール。
【請求項13】
請求項12に記載の液体収容体モジュールにおいて、
前記液体収容体の前記外郭ケースは、開口部を有する箱体状の箱体部と、同箱体部の前記開口部を閉塞する蓋部とを備え、
前記締結用凹部は、前記箱体部の下面に設けられているとともに、前記締結用凸部は、前記蓋部に設けられていることを特徴とする液体収容体モジュール。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか1つに記載の液体収容体モジュールにおいて、
前記液体収容体モジュールに関する情報を格納する記憶素子を備え、
前記記憶素子は、前記複数の液体収容体のうちの1つに設けられていることを特徴とする液体収容体モジュール。
【請求項15】
液体を噴射する液体噴射ヘッドと、前記液体を貯留する複数の液体収容体を備えた液体収容体モジュールと、前記複数の液体収容体の前記液体を前記液体噴射ヘッドへと供給する液体供給路とを備えた液体噴射装置において、
前記液体収容体は、
可撓性の液体収容袋内に液体を収容し、液体導出手段によって前記液体収容袋内の液体を前記液体供給路に排出可能とする液体収容部と、
同液体収容部を収容する外郭ケースと、
前記液体収容部と前記外郭ケースとの間の空間に流体を導入することを可能とする流体導入手段とを備え、
前記複数の液体収容体を重ね合わせた状態で一体となるように覆い、隣り合う前記液体収容体同士の離間を規制するように締結する締結手段を備えたことを特徴とする液体噴射装置。
【請求項16】
請求項15に記載の液体噴射装置において、
前記液体収容体モジュールを収容するモジュールホルダを備え、
前記モジュールホルダは、前記複数の液体収容体のうち、少なくとも1つと係合するホルダ側係合部を備えたことを特徴とする液体噴射装置。
【請求項17】
請求項16に記載の液体噴射装置において、
前記液体収容体モジュールの前記複数の液体収容体は、それぞれに係合部が形成され、
前記ホルダ側係合部は、前記係合部に対して係合可能な形状に形成され、前記複数の液体収容体のうちの少なくとも1つにおける前記係合部に対して係合されていることを特徴とする液体噴射装置。
【請求項18】
請求項16又は17に記載の液体噴射装置において、
前記複数の液体収容体は、前記液体収容体モジュールを前記モジュールホルダに対して挿入するときの挿入方向と平行となるような向きを有する位置決め穴を備え、
前記モジュールホルダは、前記挿入方向と平行となるような向きを有する棒状のガイド部材を備え、
前記液体収容体モジュールが前記モジュールホルダに収容されるときには、前記ガイド部材は、前記液体収容体モジュールの複数の前記液体収容体のうちの1つの前記位置決め穴に対して貫挿されていることを特徴とする液体噴射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−188250(P2006−188250A)
【公開日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−717(P2005−717)
【出願日】平成17年1月5日(2005.1.5)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】