説明

液体収容体

【課題】液体収容部の液中に混入した気泡が液体終端センサに付着することを防止して、液体残量がゼロになったことを正確に検出することができる液体収容体を提供する。
【解決手段】インクカートリッジ1は、容器本体3内に、インク収容部5と、インク供給部7と、インク収容部5に貯留したインク33をインク供給部7に誘導するインク誘導路9と、大気連通孔4と、を備える。インク誘導路9への気体の流入を検知することでインク収容部5の液体残量がゼロになったことを検出するインク終端センサ11が、インク誘導路9の途中に設けられると共に、インク33に混入した気泡を捕捉する気泡トラップ流路13が、インク終端センサによる検出位置とインク収容部5との間のインク誘導路9に設けられ、気泡トラップ流路13を通過するインク33中の気泡を該気泡トラップ流路13に捕捉可能な量のインク33が、気泡トラップ流路13に充填されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばインクジェットプリンタに着脱可能なインクカートリッジとして好適な大気開放タイプの液体収容体に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンタに着脱可能なインクカートリッジ(液体収容体)として、プリンタに着脱可能な容器本体内に、インクを収容するインク収容部(液体収容部)と、プリンタ側の印刷ヘッド(液体噴射部)に接続されるインク供給部(液体供給部)と、インク収容部に貯留したインクをインク供給部に誘導するインク誘導路(液体誘導路)と、インク収容部内のインクの消費に伴って外部から大気をインク収容部内に導入する大気連通孔と、を備える大気開放タイプのものが各種提案されている。
【0003】
また、このようなインクカートリッジには、圧電振動体を有するセンサを液体収容部内
の基準高さに配置したインク残量検出機構が設けられているものがある(例えば、特許文献1参照)。
このインク残量検出機構は、印刷処理によるインク消費で液体収容部のインク液面が基準高さまで下がって、インクの消費に伴って大気連通孔から液体収容部に導入された外気がセンサの検出位置に到達すると、センサ周囲がインク液で満たされている場合とセンサ周囲に空気が接触している場合における振動特性(残留振動)の変化から、インクの液面が基準高さまで下がったことを検出するもので、検出信号がインクの残量表示やカートリッジ交換時期の通知に利用される。
【0004】
ところで、大気開放タイプのインクカートリッジでは、製造後の搬送時の振動等により液体収容部内の空気が、インクで攪拌されて気泡となったり、インク消費に伴って大気連通孔から液体収容部に導入される外気が、カートリッジの着脱時に作用する衝撃等で微細な気泡となったりして、インクの液中を浮遊する場合がある。そして、インクの液中を浮遊する気泡がセンサ表面に付着すると、付着した気泡が残留振動の変化を招いて、インクの有無が正確に検出できずインクの液面が下がったものと誤検出されてしまう虞がある。
そこで、このような誤検出を防止するために、センサの周囲をインクの通過を許容する微細な隙間を残して仕切壁で囲い、気泡が仕切壁で形成した隙間に到達した時に、隙間で発生するメニスカスの毛細管力で気泡のセンサ側への侵入を防いで、誤検出を防止する技術が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2001−328278号公報
【特許文献2】特開2004−195653号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、プリンタ等の使用中にインクカートリッジの交換時期を正確に通知するためには、液体収容部内のインク残量がゼロになったときにそれを速やかに検知するように、プリンタ側へのインクの出口となる液体供給部の付近に、インクの有無を検出するセンサを設けることが有効である。
しかし、液体供給部の付近にセンサを設けても、インクに混入した気泡がセンサに付着することによって、液体収容部の液体残量がゼロになったと誤検出してしまうことがある。
【0007】
そこで、液体供給部の付近にセンサを設けるとともに、そのセンサ側にインク中の気泡が到達しないように、特許文献2に記載された技術(メニスカスを利用した気泡の通過防止技術)を適用することが考えられる。
しかし、特許文献2に記載された技術では、例えば、色変更のために使用途中のカートリッジがプリンタから取り外されて保管されるような状況下で、プリンタから取り外されたカートリッジが強く振られたり、あるいは落下等による強い衝撃を受けたりした場合には、メニスカスによる毛細管力を超えて気泡がセンサ側に流入してしまう虞があり、誤検出防止に対する信頼性が低い。
【0008】
また、例えば、寒冷地で液体収容体が使用されるような場合には、液体が凍結して膨張し、大気開放された大気連通孔から外部へ出てしまうことがある。そして、液体収容体が常温環境下に戻って凍結した液体が再び液化すると、外部の空気を大気連通孔から液体収容部内へと引き込んでしまう。このような場合にも、液体内に気泡が生じ、センサの誤検出を招く虞がある。
【0009】
そこで、本発明の目的は、液体収容体に強い振動が作用したり、落下等による衝撃が作用したりした場合でも、液体収容部の液中に混入した気泡が液体供給部付近に設けられた液体終端センサに付着することを防止して、液体収容部の液体残量がゼロになったことを正確に検出することができる液体収容体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決することのできる本発明に係る液体収容体は、機器に着脱可能な容器本体内に、液体収容部と、前記機器側の液体噴射部に接続される液体供給部と、前記液体収容部に貯留した液体を前記液体供給部に誘導する液体誘導路と、前記液体収容部内の液体の消費に伴って外部から大気を前記液体収容部内に導入する大気連通孔と、を備える大気開放タイプの液体収容体であって、
前記液体誘導路への気体の流入を検知することで前記液体収容部の液体残量がゼロになったことを検出する液体終端センサが、前記液体誘導路の途中に設けられると共に、液体に混入した気泡を捕捉する気泡トラップ流路が、前記液体終端センサによる検出位置と前記液体収容部との間の前記液体誘導路に設けられ、
前記気泡トラップ流路を通過する液体中の気泡を該気泡トラップ流路に捕捉可能な量の液体が、前記気泡トラップ流路に充填されていることを特徴としている。
【0011】
このような構成の液体収容体によれば、液体収容部から液体供給部へ向けて流れる液体誘導路に流入した液体中に浮遊する気泡には、液体誘導路中の液体終端センサによる検出位置よりも上流に設けられた気泡トラップ流路を通過する際に、該気泡トラップ流路に充填されている液体によって下流への流入に抗する浮力が作用するので、気泡は液体から分離されて捕捉される。
そのため、気泡が液体終端センサに流入することがない。したがって、液体収容部の液中に混入した気泡が液体供給部付近に設けられた液体終端センサに付着することがなく、液体供給部に流れる液体の終端(気液の境界)が液体終端センサを通過する前に、液体収容部の液体残量がゼロになったことを誤検出することがない。そのため、液体収容部の液体残量がゼロになったことを正確に検出することができる。
【0012】
また、本発明に係る液体収容体において、前記気泡トラップ流路は、液体の流れを垂直方向に方向変換する垂直方向変換部を有することが好ましい。
【0013】
このような構成の液体収容体によれば、流れを垂直方向に方向変換する垂直方向変換部で、液体中の気泡を分離する作用が働く。そのため、液体供給部に流れる液体は、液体終端センサにたどり着くまでに、垂直方向変換部による気泡の捕捉処理を受けることで、混入している気泡が分離除去された状態になる。
【0014】
また、本発明に係る液体収容体において、前記気泡トラップ流路は、液体の流れを水平方向に方向変換する水平方向変換部を有することが好ましい。
【0015】
このような構成の液体収容体によれば、流れを水平方向に方向変換する水平方向変換部で、液体中の気泡を分離する作用が働く。そのため、液体供給部に流れる液体は、液体終端センサにたどり着くまでに、水平方向変換部による気泡の捕捉処理を受けることで、混入している気泡が分離除去された状態になる。なお、垂直方向変換部と水平方向変換部とを適宜数組み合された構造とすることにより、液体供給部に流れる液体は垂直方向変換部及び水平方向変換部による気泡の捕捉処理を繰り返し受け、気泡がより確実に分離除去されるようになる。
【0016】
また、本発明に係る液体収容体において、前記気泡トラップ流路は、流路断面を前後の流路位置よりも垂直上方に拡張した気泡捕集空間を有することが好ましい。
【0017】
このような構成の液体収容体によれば、液体中に浮遊している気泡は、流路断面を垂直上方に拡張した気泡捕集空間に貯留され、該気泡捕集空間により大量の気泡をまとめて貯留することが可能になる。そして、気泡捕集空間に貯留された気体には、その前後の流路が気泡捕集空間の下方に位置しているため、該気泡捕集空間に充填されている液体によって下方の流路への接近に抗する浮力が作用する。そのため、気泡捕集空間に貯留された気体は、使用途中で機器から取り外された液体収容体に強い振動が作用したり、落下等による衝撃が作用したりした場合でも、気泡捕集空間の外に流出し難い。また、一つの気泡捕集空間で、大量の気泡を貯留しておくことができる。
【0018】
また、本発明に係る液体収容体において、前記気泡トラップ流路は、水平方向に行き止まりの気泡捕集空間を有することが好ましい。
【0019】
このような構成の液体収容体によれば、液体供給部への流路から外れた行き止まりの気泡捕集空間が、液体中に浮遊している気泡を貯留し、大量の気泡をまとめて貯留することが可能になる。
【0020】
また、本発明に係る液体収容体において、前記気泡トラップ流路の途中、または前記液体終端センサによる検出位置よりも上流の液体誘導路の途中に、気泡を捕捉する多孔質体が設けられていることが好ましい。
【0021】
このような構成の液体収容体によれば、流路途中に設けられた多孔質体が、液体に混入した気泡を効率よく捕捉するため、気泡の捕捉効率を向上させることができ、気泡捕捉の信頼性を向上させることができる。
【0022】
また、本発明に係る液体収容体において、前記液体誘導路または前記気泡トラップ流路が接続された前記液体収容部の液体供給口は、直径が2mm以下の円形断面流路に形成されていることが好ましい。
【0023】
このような構成の液体収容体によれば、液体収容部からの液体出口となる液体供給口が、直径が2mm以下の円形断面流路となっていて、該液体供給口自体が、気泡の流出を防止するメニスカスの表面張力を発揮するため、気泡が液体収容部から液体終端センサ側へ流出すること自体を抑止することができ、気泡トラップ流路への負担を軽減して、液体終端センサへの気泡の付着防止に対する信頼性を向上させることができる。
【0024】
また、本発明に係る液体収容体において、前記気泡トラップ流路を構成する流路は、流路断面が矩形に形成されていることが好ましい。
【0025】
このような構成の液体収容体によれば、流路断面が矩形のため、円形断面の流路で形成する場合と比較して、並走する流路間に無駄なスペースが残らず、高密度に複雑な流路を形成することができる。また、樹脂成形により気泡トラップ流路を形成する場合でも、成形性が向上する。
しかも、流路断面が矩形の場合は、円形断面の流路の場合と比較して、矩形の流路断面の隅部に流れの遅い淀み域が形成され、その内の上部の隅部は、流れの方向変換部で分離された気泡が溜まる気泡捕集空間として機能するため、気泡の捕捉作用も働くこととなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明に係る液体収容体の実施形態の例について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1から図8は本発明に係る液体収容体の一実施形態を示したものであって、図1は本発明の一実施形態に係る液体収容体の一部破断概略斜視図であり、図2は図1に示した液体収容体の側面図であり、図3は図1に示した液体収容体内において液体が流れる経路を示す模式図であり、図4は図1に示した気泡トラップ流路の側面図であり、図5は図4に示した気泡トラップ流路の平面図であり、図6は図5に示した気泡トラップ流路のVI−VI線に沿う断面図であり、図7は図5のVII矢視図であり、図8は図7のVIII矢視図である。
【0027】
本実施形態の液体収容体は、インクジェット式プリンタにおいて、液体噴射部である印刷ヘッドが搭載されたキャリッジ上のカートリッジ装着部に着脱可能なインクカートリッジ1である。
このインクカートリッジ1は、機器(プリンタのカートリッジ装着部)に着脱可能な容器本体3内に、インク33を貯留するインク収容部(液体収容部)5と、機器(プリンタのカートリッジ装着部)側の印刷ヘッドに接続されるインク供給部(液体供給部)7と、インク収容部5に貯留したインク33をインク供給部7に誘導するインク誘導路(液体誘導路)9と、インク収容部5内のインクの消費に伴って外部から大気をインク収容部5内に導入する大気連通孔4と、を備える大気開放タイプのインクカートリッジである。
【0028】
本実施形態の場合、インク誘導路9のインク供給部7に近接した位置には、当該インク誘導路9への気体の流入を検知することでインク収容部5のインク残量がゼロになったことを検出するインク終端センサ(液体終端センサ)11が設けられている。
このインク終端センサ11は、圧電振動体からなるセンサをインク誘導路9内に臨ませて配置したものであり、インク33の消費に伴って大気連通孔からインク収容部5に導入された外気がセンサの検出位置に到達すると、インク誘導路9に面したセンサの周囲がインク33で満たされている場合とセンサの周囲に空気が接触している場合における振動特性の変化から、インク残量がゼロになったことを検出する。
【0029】
また、インク終端センサ11による検出位置とインク収容部5との間のインク誘導路9の途中には、インク33に混入した気泡Buを捕捉する気泡トラップ流路13が設けられている。
【0030】
この気泡トラップ流路13は、図4及び図5に示すように、全体の概略構造としては、容器本体3の底部に収まる略直方体形状を成している。
この気泡トラップ流路13は、図5に示すように、上面の略中央に、インク収容部5からインク33が流入する入口13aが形成されるとともに、センサ側に位置する外側面に、インク33を排出する出口13bが形成されている。
【0031】
この気泡トラップ流路13は、図5及び図6に示すように、インク33の流れを垂直方向逆向きに方向変換する複数の垂直方向変換部21a〜21gと、流れを水平方向に約90度づつ方向変換する複数の水平方向変換部23a〜23fとが組み合されて、屈曲部の多い複雑な流路構造に形成されている。
【0032】
そして、この気泡トラップ流路13は、流路途中の数箇所に、流路断面を該気泡トラップ流路13の出口端に採用される前後の流路の位置である標準流路断面位置A(図6参照)よりも垂直上方に拡張した気泡捕集空間24a〜24cが形成されている。
図示した例の場合、気泡捕集空間24a〜24cの内では、一番下流側に位置する気泡捕集空間24cが一番大きな容積に設定されている。
【0033】
さらに、本実施形態の気泡トラップ流路13では、流路途中に、行き止まりの気泡捕集空間25が形成されている。
【0034】
また、気泡トラップ流路13が接続される入口13aは、直径が2mm以下の円形断面流路に形成されている。なお、本実施形態では、気泡トラップ流路13がインク誘導路9の内のインク収容部5側の端部に位置しており、気泡トラップ流路13の入口13aは、インク収容部5からインク誘導路9へのインク供給口(液体供給口)でもある。
【0035】
さらに、本実施形態において、気泡トラップ流路13は樹脂の射出成形により形成したものであり、気泡トラップ流路13を構成する各流路は、流路断面が矩形に設定されている。
【0036】
以上説明したインクカートリッジ1では、製造後の搬送時の振動等によりインク収容部5内の空気が、インク33で攪拌されたり、使用途中でインクカートリッジ1が振られたり、温度変化したりしてインク33中に気泡Buが混入しても、インク収容部5からインク供給部7へ向けて流れるインク誘導路9に流入したインク33中に浮遊する気泡Buには、インク誘導路9の途中に設けられたインク終端センサ11による検出位置よりも上流に設けられた気泡トラップ流路13を通過する際に、該気泡トラップ流路13に充填されているインク33によって下流への流入に抗する浮力が作用する。そこで、気泡Buはインク33から分離されて捕捉される(図6参照)。そのため、気泡Buがインク終端センサ11側に流入することがない。
【0037】
したがって、インク収容部5のインク33中に混入した気泡Buがインク供給部7付近に設けられたインク終端センサ11に付着することがなく、インク収容部5のインク残量がゼロになったことを誤検出することなく、インク収容部5のインク残量がゼロになったこと(所謂インクエンド)を正確に検出することができる。
【0038】
また、本実施形態のインクカートリッジ1では、気泡トラップ流路13が、流れを垂直方向に方向変換する複数の垂直方向変換部21a〜21gと、流れを水平方向に方向変換する複数の水平方向変換部23a〜23fとが組み合されることで、省スペースで立体的かつ複雑な流路構造を形成でき、それぞれの流れの方向変換部で、インク33中の気泡Buを分離する作用が働く。そのため、インク供給部7に流れるインク33は、インク終端センサ11にたどり着くまでに、気泡Buの捕捉処理を繰り返し受けて、混入している気泡Buが完全に分離除去された状態になり、インク33中に混入した気泡Buがインク終端センサ11に付着することに起因した誤検出の発生を確実に防止することができる。
【0039】
さらに、本実施形態のインクカートリッジ1では、流れの方向変換部21a〜21g,23a〜23fでインク33から分離された気泡Buは、流路断面を前後の流路より垂直上方に拡張した気泡捕集空間24a〜24cや行き止まりの気泡捕集空間25a,25bに貯留され、これらの気泡捕集空間24a〜24c,25a,25bにより大量の気泡Buをまとめて貯留することが可能になり、気泡捕集空間の容量不足による気泡Buの捕捉ミスの発生を無くすことができる。
【0040】
また、気泡捕集空間24a〜24cに貯留された気体には、その前後の流路が気泡捕集空間の下方に位置しているため、これら気泡捕集空間に充填されているインク33によって下方の流路への接近に抗する浮力が作用する。そのため、気泡捕集空間に貯留された気体は、使用途中で機器から取り外されたインクカートリッジ1に強い振動が作用したり、落下等による衝撃が作用したりした場合でも、気泡捕集空間の外に流出し難い。また、一つの気泡捕集空間で、大量の気泡Buを貯留しておくことができる。
【0041】
さらに、万が一、一つの気泡捕集空間に貯留されている気体がインクカートリッジ1に作用する振動や衝撃により隣接流路に流出することがあっても、流出した気体は、その下流に位置した垂直方向変換部や行き止まりの気泡捕集空間によって再度捕捉または貯留されるため、インク終端センサ11には到達し得ない。
【0042】
したがって、使用途中で機器から取り外されたインクカートリッジ1に強い振動が作用したり、落下等による衝撃が作用したりした場合でも、インク収容部5のインク33中に混入した気泡Buがインク供給部7付近に装備されたインク終端センサ11に付着することがなく、インク収容部5のインク液残量がゼロになったことを誤検出することなく、確実に検出することができる。
【0043】
さらに、本実施形態のインクカートリッジ1では、インク収容部5からのインク出口となるインク供給口(気泡トラップ流路13の入口13a)が、直径が2mm以下の円形断面流路となっていて、インク供給口(入口13a)が、気泡Buの流出を防止するメニスカスを形成するため、気泡Buがインク収容部5からインク終端センサ11側へ流出すること自体を抑止することができ、気泡トラップ流路13への気泡捕捉の負担を軽減して、インク終端センサ11への気泡Buの付着防止に対する信頼性を向上させることができる。
【0044】
さらに、本実施形態のインクカートリッジ1では、流路断面が矩形のため、円形断面の流路で形成する場合と比較して、並走する流路間に無駄なスペースが残らず、高密度に複雑な流路を形成することができ、また、樹脂成形により気泡トラップ流路13を形成する場合でも、成形性が向上する。
しかも、流路断面が矩形の場合は、円形断面の流路の場合と比較して、矩形の流路断面の隅部に流れの遅い淀み域が形成され、その内の上部の隅部は、流れの方向変換部で分離された気泡Buが溜まる気泡捕集空間として機能するため、気泡Buの捕捉または捕集も容易になる。
【0045】
なお、気泡トラップ流路13の途中、またはインク終端センサ11による検出位置よりも上流のインク誘導路9の途中に、気泡Buを捕捉する多孔質体が備えられていても良い。
このようにすると、流路途中に設けられた多孔質体が、インクに混入した気泡を微小な孔により効率よく捕捉するため、気泡の捕捉効率を向上させることができ、気泡捕捉の信頼性を向上させることができる。
【0046】
このように、上記インクカートリッジ1は、様々な方向へ流路が変換され、様々な方向で気泡Buを捕捉または捕集できる構成となっているため、インクカートリッジ1を如何なる姿勢にした場合でも、インク終端センサ11へ気泡Buが到達することが確実に防止される。そのため、インクエンドを正確に検出する精度が極めて高く、インク33を残留させたままインクカートリッジ1を取り替えてしまうような不具合が防がれる。
【0047】
なお、本発明に係る液体収容体の用途は、上記実施の形態に示したインクカートリッジに限らない。例えば、本発明の液体収容体は、液体噴射装置の液体噴射ヘッドに液体を供給するのに適したものである。ここで言う液体噴射装置としては、例えば、インクジェット式記録装置の液体噴射ヘッド(印刷ヘッド)、液晶ディスプレイのカラーフィルタを製造するカラーフィルタ製造装置の色剤噴射ヘッド、有機ELディスプレイ、FED(面発光ディスプレイ)等の電極を形成する電極材(導電ペースト)噴射ヘッド、さらにはバイオチップを製造するバイオチップ製造装置の生体有機物噴射ヘッド及び精密ピペットしての試料噴射ヘッドなどが該当する。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の一実施形態に係る液体収容体の一部破断概略斜視図である。
【図2】図1に示した液体収容体の側面図である。
【図3】図1に示した液体収容体内において液体が流れる経路を示す模式図である。
【図4】図1に示した気泡トラップ流路の側面図である。
【図5】図4に示した気泡トラップ流路の平面図である。
【図6】図5に示した気泡トラップ流路のVI−VI線に沿う断面図である。
【図7】図5のVII矢視図である。
【図8】図7のVIII矢視図である。
【符号の説明】
【0049】
1…インクカートリッジ(液体収容体)、3…容器本体、5…インク収容部(液体収容部)、7…インク供給部(液体供給部)、9…インク誘導路(液体誘導路)、11…インク終端センサ(液体終端センサ)、13…気泡トラップ流路、13a…入口(液体供給口)、13b…出口、21a〜21g…垂直方向変換部、23a〜23f…水平方向変換部、24a〜24c…気泡捕集空間、25a,25b…行き止まりの気泡捕集空間、33…インク(液体)、Bu…気泡


【特許請求の範囲】
【請求項1】
機器に着脱可能な容器本体内に、液体収容部と、前記機器側の液体噴射部に接続される液体供給部と、前記液体収容部に貯留した液体を前記液体供給部に誘導する液体誘導路と、前記液体収容部内の液体の消費に伴って外部から大気を前記液体収容部内に導入する大気連通孔と、を備える大気開放タイプの液体収容体であって、
前記液体誘導路への気体の流入を検知することで前記液体収容部の液体残量がゼロになったことを検出する液体終端センサが、前記液体誘導路の途中に設けられると共に、液体に混入した気泡を捕捉する気泡トラップ流路が、前記液体終端センサによる検出位置と前記液体収容部との間の前記液体誘導路に設けられ、
前記気泡トラップ流路を通過する液体中の気泡を該気泡トラップ流路に捕捉可能な量の液体が、前記気泡トラップ流路に充填されていることを特徴とする液体収容体。
【請求項2】
請求項1に記載の液体収容体であって、
前記気泡トラップ流路は、液体の流れを垂直方向に方向変換する垂直方向変換部を有することを特徴とする液体収容体。
【請求項3】
請求項1または2に記載の液体収容体であって、
前記気泡トラップ流路は、液体の流れを水平方向に方向変換する水平方向変換部を有することを特徴とする液体収容体。
【請求項4】
請求項1から3の何れか一項に記載の液体収容体であって、
前記気泡トラップ流路は、流路断面を前後の流路位置よりも垂直上方に拡張した気泡捕集空間を有することを特徴とする液体収容体。
【請求項5】
請求項1から4の何れか一項に記載の液体収容体であって、
前記気泡トラップ流路は、水平方向に行き止まりの気泡捕集空間を有することを特徴とする液体収容体。
【請求項6】
請求項1から5の何れか一項に記載の液体収容体であって、
前記気泡トラップ流路の途中、または前記液体終端センサによる検出位置よりも上流の液体誘導路の途中に、気泡を捕捉する多孔質体が設けられていることを特徴とする液体収容体。
【請求項7】
請求項1から6の何れか一項に記載の液体収容体であって、
前記液体誘導路または前記気泡トラップ流路が接続された前記液体収容部の液体供給口は、直径が2mm以下の円形断面流路に形成されていることを特徴とする液体収容体。
【請求項8】
請求項1から6の何れか一項に記載の液体収容体であって、
前記気泡トラップ流路を構成する流路は、流路断面が矩形に形成されていることを特徴とする液体収容体。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−44195(P2008−44195A)
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−220767(P2006−220767)
【出願日】平成18年8月12日(2006.8.12)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】