説明

液体収集装置

【課題】埃のような異物を排除して被験者から汗成分のような液体を次工程の分析装置で使用可能であり、確実に簡単に収集することができる液体収集装置を提供する。
【解決手段】液体収集装置1は、指の皮膚からの汗成分を収集するための携帯可能な装置であり、液体収集装置1は、指を挿入して指から汗成分を収集するための収集部11と、汗成分を回収するカセット容器としてのセンサーチップTを着脱可能に納めるカセット収容部13と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体収集装置に関し、特に汗成分などの液体を収集するための液体収集装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば血液中のグルコース値(血糖値)は、糖尿病疾患において非常に重要な指標であり、医療現場では、針を用いて採血を行っている。この採血をする際に、被験者の指には針を刺す必要があるので被験者には苦痛を伴う。
このため、被験者に対して針を刺さないで、いわゆる非侵襲でグルコース値が得られる方法が検討されている。例えば、指に対して霧吹きにより水分を与えることで、指の皮膚表面の汗成分を容器内に落下させて、その汗成分中に含まれるグルコース値を測定することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−315340号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、特許文献1に開示されているグルコースの測定では、被験者に対する負荷を軽減できるが、指を外気に露出させた状態で指に小型の噴霧器から水溶液を噴霧して、指に付着した水滴を、外気に露出した状態で筒状の容器内に落下させる必要がある。このため、指に水溶液を噴霧して指に付着した水滴を落下させる際に埃などの異物が混入するおそれがある。しかもこの筒状の容器は、必ず指の下方に配置させる必要がある。このため、指からたれてくる水滴が容器の外にこぼれてしまうおそれがある。
【0004】
このように、指は露出されており、指に噴霧器から水溶液を噴霧した状態で指から水滴が容器内に落下するのを待たなければならないので、指や水滴に埃など異物が付着してしまうおそれがある。従って、従来のグルコース測定方法では、異物を排除して指の汗成分を確実に容器内に収集することが難しい。さらに、少量の汗成分を用いてグルコース量を測定するためには、例えば遠心分離装置を用いて前記汗成分中のグルコース濃度を高めなくてはいけない。従って、収集された汗を効率良く収容するカセット容器が必要である。
そこで、本発明は上記課題を解消するために、埃のような異物を排除して被験者から汗成分のような液体を次工程の分析装置で使用可能であり、確実に簡単に収集することができる液体収集装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解消するために、本発明の液体収集装置は、指の皮膚からの汗成分を収集するための携帯可能な液体収集装置であって、
前記指を挿入して前記指から前記汗成分を収集するための収集部と、前記汗成分を回収するカセット容器を着脱可能に納めるカセット収容部と、を有することを特徴とする。
【0006】
本発明の液体収集装置は、好ましくは前記挿入部内の前記汗成分に対して汗成分回収剤を供給する汗成分回収剤供給部を有し、
前記汗成分回収剤供給部は、
前記汗成分回収剤を貯留する貯留部と、
前記貯留部内の前記汗成分回収剤を前記挿入部内に供給するためのポンプと、を有することを特徴とする。
【0007】
本発明の液体収集装置は、好ましくは前記収集部は、開口部と底部を有しており、前記開口部には挿入された前記指から前記汗成分を前記収集部内に掻き取るために弾性変形可能な掻き取り部材を備えることを特徴とする。
【0008】
本発明の液体収集装置は、好ましくは前記収集部内に配置されて前記汗成分を吸収する柔軟性を有する吸収部材と、
前記汗成分を吸収した前記吸収部材を押圧して前記汗成分を前記吸収部材から前記収集部内に絞り出すための押圧部材と、をさらに備えることを特徴とする。
本発明の液体収集装置は、好ましくは前記収集部の近傍には、振動を発生する振動子が配置されていることを特徴とする。
【0009】
本発明の液体収集装置は、好ましくは前記収集部の近傍には、ヒータが配置されていることを特徴とする。
本発明の液体収集装置は、好ましくは前記収集部と前記カセット収容部からなる第1構造部分は、前記汗成分回収剤供給部からなる第2構造部分に対して着脱可能であることを特徴とする。
本発明の液体収集装置は、好ましくは前記収集部の開口部を開閉可能な蓋部材を有することを特徴とする。
【0010】
本発明の液体収集装置は、好ましくは前記カセット容器は、前記皮膚からの前記汗成分を吸収する吸収室と、前記吸収室に連通し前記汗成分を電気信号に変換する試薬と前記電気信号を出力する電極を有する変換部からなり、前記カセット容器は前記カセット収容部に対して着脱可能に配置されることを特徴とする。
【0011】
本発明の液体収集装置は、好ましくは前記収集部は、前記吸収部が指先を封止して固定するサック状の汗収集部であり、前記カセット容器は、前記サック状の汗収集部の開口部に連通して着脱可能に付属されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、埃のような異物を排除して被験者から汗成分のような液体を次工程の分析装置で使用可能であり、確実に簡単に収集することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の好ましい実施形態を詳細に説明する。
第1実施形態
図1は、本発明の液体収集装置の好ましい第1実施形態を示す図である。
図1に示す液体収集装置1は、図1に示す例えば被験者の手の指1000の皮膚1001からの汗成分を試料として収集するための携帯型の液体収集装置であり、指を収集部に挿入することで、埃のような異物を排除して被験者から汗成分のような液体を確実に簡単に効率良く収集してセンサーチップ100内に納めることができる。図1は、指1000が収集部11内に挿入される前の状態を示しており、図2は、指1000が収集部11内に挿入された状態を示している。
【0014】
汗成分は、塩化ナトリウム、窒化酸化物、乳酸、カルシウム、尿素、アンモニア、糖類などを含んだ水で構成されている。この汗の成分は、血液から作り出され、血液中の血漿と呼ばれる液体成分が汗として使われている。汗は汗腺から分泌されるが、この汗腺は全身に約200万個〜500万個ある。一番密に汗腺が存在しているのは、手掌であり、その次に密なのは足の裏、額である。
そこで、本発明の実施形態の液体収集装置1は、被験者の手の指または足の指に着目して、指からの汗成分を確実に簡単に効率良く収集する。
【0015】
図1の液体収集装置1は、本体10を有しており、本体10内には、収集部11と、汗成分回収剤供給部12と、カセット収容部13と、制御部100と、バッテリBが配置されている。本体10は、例えばプラスチック製の直方体形状のケースである。
【0016】
液体収集装置1は、第1構造部分201と第2構造部分202を有する。第1構造部分201は、指を挿入して前記指から前記汗成分を収集するための収集部11と、収集部11内において汗成分回収剤とともに集められた汗成分を回収するためのカセット容器としてのセンサーチップTを、着脱可能に納めるためのカセット収容部13を有する。第2構造部分202は、収集部11内に汗成分に対して汗成分回収剤を供給する汗成分回収剤供給部12を有する。
【0017】
図1に示す収集部11は汗採取部とも言い、例えば人差し指などの指1000を挿入して指1000の皮膚の汗成分を採取するための部分である。収集部11は、例えば指1000の第1関節部分まで収容できるほぼ筒状の内部空間19を有している。収集部11は開口部23と底部22と内周部21を有している。収集部11の上部は開口部23であり、底部22は排出路11Pに接続されている。収集部11は、吸収部材70が指先を封止して固定するサック状の汗収集部であり、カセット容器としてのセンサーチップTは、サック状の汗収集部の開口部23に連通して着脱可能に付属されている
【0018】
このような収集部11の構造を採用しているので、収集部11が汗成分を収集しようとする指の部分を収容して外気に露出しないようにすることができ、埃などの異物が指の汗成分の採取部位や汗成分に付着するのを防止することができる。
【0019】
収集部11の開口部23には、掻き取り部材70が設けられている。この掻き取り部材70は、収集部11の内部空間19内に挿入された指1000の肌面から汗成分を収集部11内に掻き取る。
【0020】
このように汗成分を指1000から掻き取るために、掻き取り部材70は、弾性変形可能な収縮ゴムやプラスチックなどにより例えばリング状に形成されていて、掻き取り部材70の孔71の内径は、指1000の太さよりも小さい。従って、図2に示すように、指1000がこの掻き取り部材70の孔71を通じてZ方向に沿って収集部11内に挿入されると、掻き取り部材70の内周面は指1000により半径方向外側に向けて圧縮され、指1000を収集部11内からZ1方向に沿って引き抜く際には、掻き取り部材70の内周面は指1000の皮膚1001から汗成分を強制的に確実に掻き取って、収集部11の底部22へ落とすことができる。
【0021】
図1の収集部11の開口部23には、好ましくは蓋部材24が配置されており、この蓋部材24は例えば回転中心部25を中心として回転することで掻き取り部材70の孔71を閉じることができる。これにより、収集部11に指1000を挿入しない場合には、掻き取り部材70の孔71を蓋部材24により閉じておくことができ、収集部11内に埃などの異物が入らないようになっている。しかも、指1000の汗成分を収集した後に指1000を収集部11内から抜き取ると、掻き取り部材70の孔71は蓋部材24により閉じておくことができ、収集部11内に埃などの異物が入らず、収集した汗成分に対して埃などの異物が混入するのを確実に防ぐことができる。
【0022】
次に、図1に示す汗成分回収剤供給部12を説明する。
汗成分回収剤供給部12は、本体11において収集部11の横側に配置されている。
汗成分回収剤供給部12は、図2に示すように収集部11内に挿入されている指1000の皮膚1001に対して汗成分回収剤30を噴射して供給する。汗成分回収剤供給部12は、ポンプ40と、電動のモータ41と、貯留部42と、バルブ43,44と、パイプ46,47,48を有する。
【0023】
貯留部42は、汗成分回収剤30を貯留している。この汗成分回収剤30は、例えば界面活性材を含有する水溶液、具体例としてはアルコール液を貯留している。貯留部42は、パイプ46とパイプ47を通じて収集部11の内部空間19に接続されており、ポンプ40はパイプ48を通じてパイプ46の途中部分に接続されている。
バルブ43は、貯留部42とパイプ48の間に配置されている。バルブ44は、パイプ47に配置されている。
【0024】
モータ41はポンプ40を駆動することにより、バルブ43,44が開いている状態において、貯留部42内の汗成分回収剤30を、パイプ46,47を通じて収集部11内に供給することができる。
図1に示す制御部100は、モータ41の動作の制御と、バルブ43,44の開閉の制御を行う。バッテリBは、制御部100に対して電源供給を行う。
【0025】
次に、図1に示すカセット収容部13を、図3と図4を参照して説明する。
カセット収容部13には、カセット容器としてのセンサーチップTを着脱可能に収容することができる。カセット収容部13は、本体11において収集部11の下側に配置されている。図3は、図1に示す液体収集装置1に対して着脱可能に装着されるセンサーチップTの構造例を示す。図4は、図4のセンサーチップTを本体11のカセット収容部13内に装着する様子を示す斜視図である。
【0026】
図1と図4に示すように、カセット収容部13は本体11の側面部分に開口部50を有しており、カセット収容部13に、直方体形状の薄型のセンサーチップTをS方向に挿入することで、カセット収容部13はセンサーチップTを保持でき、またセンサーチップTはS1方向に沿ってカセット収容部13内から取り出すことができる。
【0027】
センサーチップTを、この開口部50を通じてカセット収容部13内に挿入する際には、指でセンサーチップTを押し込んで突き当てることで位置決めすればよい。センサーチップTをカセット収容部13内から取り出すのを容易にするために、センサーチップTは例えば引っ張って取り出すためのリボンのような取り出し部材51を有している。これにより、センサーチップTはカセット収容部13内から取り出すことができ、被験者によるセンサーチップTの挿入と取り出しが簡単にできる。
【0028】
図3に例示するセンサーチップTは、図2に示す収集部11内において汗成分回収剤30とともに集められた汗成分1200を回収するための汗成分回収部材の一例である。
図3に示すように、センサーチップTは、直方体形状の薄型のケース60と、吸収室80と、電極70,71を有している。吸収室80は、第1吸収部材61と第2吸収部材62で構成されている。ケース60は、例えばプラスチックにより作られており、吸収室80の第2吸収部材62には、電極70,71が収容されている。
【0029】
図1と図2に示す第1吸収部材61は、汗成分を毛細管現象を用いて吸収して採取することができる材質、多孔質材料例えば板状のスポンジである。ケース60は、第1吸収部材61に対応する部分に、開口部63を有している。しかし、第1吸収部材61は、多孔質材料以外に不織布などであっても良い。
一方、第2吸収部材62は、第1吸収部材61で採取された汗成分を遠心分離作用により、電極71,72側にグルコース濃度を高めて分離吸着させるための管路構造を有している。
【0030】
カセット容器としてのセンサーチップTは、被検者の皮膚からの汗成分を吸収する吸収室80と、吸収室80に連通し汗成分を電気信号に変換する試薬と電気信号を出力する電極70,71を有する変換部からなり、センサーチップTはカセット収容部13に対して着脱可能に配置される。この吸収室80は、図1と図2に示す第1吸収部材61と第2吸収部材62を有する。
【0031】
図1と図2に示すように、センサーチップTがカセット収容部13内においてS方向に突き当てて位置決めされると、収集部11のパイプ11Pが開口部63の上に来る。これにより、センサーチップTの第1吸収部61は、収集部11内において汗成分回収剤30とともに集められた汗成分1200を、排出路11Pを通じて吸収することで回収できる。
【0032】
このセンサーチップTがこのカセット収容部13内から取り出されると、図14において後で説明する遠心分離装置のディスク600に配置されて、図3に示すR方向に沿って遠心力を加える。これにより、図3にて第1吸収部材61内の汗成分は、第1吸収部材61内から第2吸収部材62内に移動して分離しようとする例えばグルコースを分離する。
【0033】
第1吸収部材61と第2吸収部材62内には、予めグルコースを吸着する薬液が注入されている。第1吸収部材61にグルコースを含む液体、例えば血液や汗成分が注入され、センサーチップTを連続回転して遠心力を与えると、第1吸収部材61から第2吸収部材62側にグルコースを含む液体が遠心力により移動して、第2吸収部材62の端部には比重差によりグルコースが電極に付着する。これにより、グルコースの量を電気信号の測定値は、この電極から得ることができる。この電極からの電気信号は、遠心分離装置の図3に示す処理回路77により変換処理される。
【0034】
グルコース(血中糖分)は、酵素層(バイオ層)で過酸化水素層に変換して、白金の電極で電子を取り出し、血液中の糖分濃度を、表示パネルに表示する。一例として示すこの測定方法は、GOD(glucose oxidase)固定化酵素電極による最大反応加速解析法であり、以下の通りである。
測定原理(GOD電極法)
G0Dを固定化した酵素膜と、金陰電極、および銀塩化銀陽電極を組み合わせて、GOD反応により消費される酸素量を測定する。
(1)酵素の作用により電極表面で、下記のGOD反応が起こる。
グルコース+O2+H2O→グルコン酸+H
この反応で、反応液中の酸素が消費される。
【0035】
(2)この酸素消費量を金陰極と銀塩化銀陽極からなる電極により、電流量として測定する。電極内部では、下記の反応が起こり、電流が流れ、この電流量は酸素分圧に比例する。酸素消費量は検体中のグルコース濃度に比例する。
金陰極 :O+2HO+4e−→ 4OH−
銀−塩化銀陽極 :4Ag+4Cl→ 4AgCl+4e−
さらに、本測定方法では、酸素消費量の変化を二次微分することによって反応加速度を求め、この加速度の最大値を検知して、グルコースを測定する。反応加速度もまた検体中のグルコース濃度に比例する。
【0036】
次に、上述した液体収集装置1を用いた汗成分の収集方法について説明する。
図1に示すカセット収容部13内には、新しいセンサーチップTが挿入して配置されている。蓋部材24が収集部11の開口部23を閉じた状態から、被験者は蓋部材24をJ方向に旋回することで、収集部11の開口部23を外部に露出させる。
【0037】
被験者の指1000は消毒した後に、図2に示すように掻き取り部材70の孔71を通じて、Z方向に沿って収集部11内に挿入する。この際に、掻き取り部材70の内周面は指1000により圧縮されて、掻き取り部材70の内周面は指1000の皮膚1001に密着される。
【0038】
被験者がスイッチSWを押すと、制御部100は、モータ41を駆動制御してポンプ40は圧力を発生させるとともに、制御部100は、バルブ43,44を開ける。これにより、貯留部42内の汗成分回収剤30が、収集部11内の指1000の皮膚1001に噴射して供給される。
【0039】
このようにして、被験者の指1000が収集部11内に挿入され、貯留部42内の汗成分回収剤30が、収集部11内の指1000の皮膚1001に噴射して供給されることで、指1000の皮膚1001の表面の汗成分1200が、表面の皮膚1001から汗成分回収剤30を用いて流し落とされる。この汗成分1200は、図2の排出路11PとセンサーチップTの開口部63を通じて、吸収室80の第1吸収部材61に落下することから、汗成分は第1吸収部材61に毛細管現象により吸収される。
【0040】
そして、制御部100は、スイッチSWを押してから一定時間が経過すると、モータ41の動作を停止させるとともに、バルブ43,44を閉じる。これにより、貯留部42内の汗成分回収剤30が、収集部11内の指1000の皮膚1001に噴射されなくなる。その後、被験者は図2に示すZ1方向に沿って指1000を収集部11内から抜く際には、掻き取り部材70は指1000の皮膚1001から汗成分を掻き取って、収集部11の底部22へ確実に落とすことができる。
【0041】
その後、蓋部材24により開口部23を閉じる。これにより、収集部11内に埃などの異物が混入しないので、異物が排出路11Pを通じてセンサーチップT内に侵入するのも防ぐことができる。
【0042】
被験者はカセット収容部13内からセンサーチップTを取り出して、センサーチップTは遠心分離装置に装着して図2のR方向に遠心力を与える。これにより、第1吸収部材61内の汗成分は、第1吸収部材61内から第2吸収部材62内に移動して分離しようとする例えばグルコースを分離する。
【0043】
図3に示すセンサーチップTは、この開口部50を通じてカセット収容部13内に挿入する際には、指でセンサーチップTを押し込んで突き当てれば、簡単にカセット収容部13内に位置決めして配置することができる。しかも、センサーチップTは例えば引っ張って取り出すためのリボンのような取り出し部材51を有しているので、センサーチップTはカセット収容部13内から容易に取り出すことができる。
【0044】
図1にて再び液体収集装置1を使用する場合には、蓋部材24をJ方向に開いて収集部11と排出路11Pを洗浄液により洗浄して、汗成分を洗浄すればよい。
例えば制御部100がモータ41を駆動してポンプ40を駆動し、しかもバルブ43,44を開けることで、収集部11内と排出路11P内は、貯留部42内の汗成分回収剤30を用いて確実に洗浄することができる。この場合には、カセット収容部13内にはセンサーチップTは入れておかない。
【0045】
以上説明したように、図1〜図4に示す液体収集装置1は、埃のような異物を排除して被験者から汗成分のような試料を次工程の分析装置で使用可能であり、確実に簡単に収集することができる。ポンプ40はモータ41により駆動することにより、自動的に汗成分に対して汗成分回収剤を供給することができる。汗成分回収剤供給部12の貯留部は、界面活性剤を含有する水溶液である。これにより、汗成分はこの水溶液を用いて収集部11側からセンサーチップT側に容易に収集できる。
【0046】
次に説明する各実施形態では、上述した第1実施形態と同じ個所には同じ符号を記して説明を省略する。
第2実施形態
次に、図5を参照して、本発明の液体収集装置の第2実施形態を説明する。
図5に示す第2実施形態の液体収集装置1が、図1に示す液体収集装置1と異なるのは、図1に示す貯留部42に代えて、別の貯留部の一例である加湿器125が配置されていることである。加湿器125はミスト発生装置の一例である。この加湿器125内には、例えば水またはアルコール液30Wが収容されている。制御部100がバルブ43,44を開けるとともに加湿器125を作動させることで、加湿器125は水またはアルコール液30Wを、収集部11内の指100の皮膚1001に霧状にして噴射するので、指1000の皮膚1001から汗成分が流し落とされる。これにより、汗成分を容易に回収できる。
図5の液体収集装置1の他の構成要素とその作用効果は、図1の液体収集装置1の対応する構成要素とその作用効果と同じであるので、説明を省略する。
【0047】
第3実施形態
次に、図6を参照して、本発明の液体収集装置の第3実施形態を説明する。
図6に示す第3実施形態の液体収集装置1が、図1に示す液体収集装置1と異なるのは、図1に示す排出路11Pに対してバルブ49が追加されていることである。制御部100がバルブ49を開けることにより、汗成分は、図1のパイプ11Pを通じてセンサーチップTの開口部63を通じて第1吸収室81の吸収部材61に落下するが、バルブ49を閉じていれば汗成分は、図1のパイプ11Pを通じてセンサーチップTの開口部63を通じて第1吸収室81の吸収部材61に落下しないようにすることができる。
また、バルブ49を閉じておくことで、収集部11内は貯留部42内の汗成分回収剤30により洗浄した後に、バルブ49を開けて排出することができる。
図6の液体収集装置1の他の構成要素とその作用効果は、図1の液体収集装置1の対応する構成要素とその作用効果と同じであるので、説明を省略する。
【0048】
第4実施形態
次に、図7を参照して、本発明の液体収集装置の第4実施形態を説明する。
図7に示す第4実施形態の液体収集装置1が、図1に示す液体収集装置1と異なるのは、第1構造部分201であるユニット部分150が、第2構造部分202である本体10に対して、着脱可能になっていることである。
このユニット部分150は、収集部11と、センサーチップTを収容するカセット収容部13を含み、ユニット部分150は、本体10側の汗成分回収剤供給部12に対して着脱可能である。パイプ47の端部47Dはパイプ46の端部46Fに対して着脱可能に接続できる。
【0049】
これにより、被験者の指1000が代わる度に、第1構造部分201である使用済みのユニット部分150を新しいユニット部分150に簡単に交換することができる。図7の液体収集装置1の他の構成要素とその作用効果は、図1の液体収集装置1の対応する構成要素とその作用効果と同じであるので、説明を省略する。
【0050】
第5実施形態
次に、図8を参照して、本発明の液体収集装置の第5実施形態を説明する。
図8に示す第5実施形態の液体収集装置1が、図1に示す液体収集装置1と異なるのは、掻き取り部材70に代えて、筒状のスポンジ部材90が着脱可能に配置されていることである。このスポンジ部材90は、吸収部材の一例であり、収集部11の内周面21に配置されており、図9に示すように収集部11内に指1000を挿入すると弾性変形して指1000の皮膚に密着される。
【0051】
使用に際しては、図8から図9に示すように、指1000が収集部11内のスポンジ部材90内に挿入され、貯留部42内の汗成分回収剤30が、収集部11のスポンジ部分20内の指1000の皮膚1001に噴射して供給されることで、指1000の皮膚1001の表面の汗成分が、表面の皮膚1001から汗成分回収剤30とともにスポンジ部材90に吸収される。
【0052】
その後、図10に示すように、押圧部材200がZ方向に沿ってスポンジ部材90内に挿入されることで、スポンジ部材90は圧縮されることから、汗成分は、図1の排出路11PとセンサーチップTの開口部63を通じて、第1吸収室81の吸収部材61に落下して、汗成分は凝縮して吸収部材61に吸収される。
【0053】
これにより、図8〜図10に示す液体収集装置1は、異物を排除して被験者から汗成分のような試料を確実に簡単に収集することができる。図8〜図10の液体収集装置1の他の構成要素とその作用効果は、図1の液体収集装置1の対応する構成要素とその作用効果と同じであるので、説明を省略する。
【0054】
第6実施形態
次に、図11を参照して、本発明の液体収集装置の第6実施形態を説明する。
図11に示す第6実施形態の液体収集装置1が、図1に示す液体収集装置1と異なるのは、ヒータ300が収集部11の近傍に配置されていることである。ヒータ300としては、例えばセラミックヒータを用いることができる。
【0055】
ヒータ300は制御部100によりオンオフ制御が行われ、ヒータ300が収集部11内に挿入された指1000の皮膚に熱を与えることで発汗作用を促すことができる。これにより、汗成分の収集効率を上げることができる。
図11の液体収集装置1の他の構成要素とその作用効果は、図1の液体収集装置1の対応する構成要素とその作用効果と同じであるので、説明を省略する。
なお、第6実施形態では、汗成分回収剤供給部12を備えていても良いが、汗成分回収剤供給部12は無くても良い。
【0056】
第7実施形態
次に、図12を参照して、本発明の液体収集装置の第7実施形態を説明する。
図12に示す第7実施形態の液体収集装置1が、図1に示す液体収集装置1と異なるのは、振動子400が収集部11の近傍に配置されていることである。
【0057】
振動子400は制御部100によりオンオフ制御が行われ、振動子400が発生する振動は、収集部11内に挿入された指1000の皮膚に発汗作用を促すことができる。これにより、汗成分の収集効率を上げることができる。
振動子400としては、例えば超音波振動子を使用することができる。超音波振動子は、例えば20kHzの振動周波数の振動を発生する。
【0058】
また、振動子400としては、超音波振動子を用いても良いが、機械的な振動を発生する装置を採用することもできる。例えば図13に示す振動子400の例は、電動モータである。振動子400は、ロータ401と、ステータ500と、重り550を有している。
ロータ401は、ロータコア402とマグネット403と主軸404を有している。重り550は、ロータコア402に固定されている。ステータ500は、ステータコア501と軸受502と駆動コイル503を有している。
【0059】
軸受502は主軸404を回転可能に支持している。制御部100が駆動コイル503に通電することで、駆動コイル503が発生する磁界と、ロータ401のマグネット403の磁界の相互作用により、ロータ401がステータ500に対して主軸404を中心として連続回転することで、重り550により振動を発生することができる。
【0060】
図12の液体収集装置1の他の構成要素とその作用効果は、図1の液体収集装置1の対応する構成要素とその作用効果と同じであるので、説明を省略する。なお、第6実施形態では、汗成分回収剤供給部12を備えていても良いが、汗成分回収剤供給部12は無くても良い。
【0061】
図14は、センサーチップTに対して遠心力を付加するための遠心分離装置の例を簡単に示している。
【0062】
図14では、ディスク600が、モータ601により回転中心軸CLを中心としてK方向に高速連続回転される。モータ601の駆動制御は制御部700により行われる。センサーチップTはディスク600の中心近傍に投入された後にR1方向に沿ってディスク600の外周部付近に移動される。そして、ディスク600が連続回転することにより、図3に示す第1吸収部材61から第2吸収部材62側にグルコースを含む液体が遠心力によりR方向に移動して、第2吸収部62の端部には比重差によりグルコースが電極に付着する。これにより、グルコースの量を電気信号の測定値は、この電極から得ることができる。
【0063】
図12の液体収集装置1は、指を挿入して前記指から前記汗成分を収集するための収集部11と、収集部11内において汗成分回収剤とともに集められた汗成分を回収するためのカセット容器としてのセンサーチップTを着脱可能に納めるためのカセット収容部13を有する。これにより、埃のような異物を排除して被験者から汗成分のような液体を次工程の分析装置で使用可能であり、確実に簡単に収集することができる
収集部11は、開口部23と底部22を有しており、開口部23には挿入された指から汗成分を収集部11内に掻き取るために弾性変形可能な掻き取り部材70を備える。これにより、汗成分は指から掻き取って収集部11内に移すことができる。
【0064】
液体収集装置1は、収集部11内に配置されて汗成分を吸収する柔軟性を有する吸収部材としてのスポンジ部材90、汗成分を吸収したスポンジ部材90を押圧して汗成分を収集部11内に絞り出すための押圧部材200を備える。これにより、汗成分は指からスポンジ部材90に移した後に絞り出すことで収集部11内に移すことができる。
収集部11の近傍には、振動を発生する振動子が配置されている。これにより、収集部11内に挿入された指1000の皮膚に発汗作用を促すことができ、汗成分の収集効率を上げることができる。
【0065】
収集部11の近傍には、ヒータが配置されている。これにより、収集部11内に挿入された指1000の皮膚に発汗作用を促すことができ、汗成分の収集効率を上げることができる。
【0066】
収集部11とカセット収容部13からなる第1構造部分201は、汗成分回収剤供給部12からなる第2構造部分202に対して着脱可能である。これにより、被験者の指1000が代わる度に、第1構造部分201である使用済みのユニット部分150を新しいユニット部分150に簡単に交換することができる。
【0067】
ところで、本発明は、上記実施形態に限定されず種々の変形例を採用できる。
本発明は、図示した実施形態に限らず、上述した各実施形態における特徴的な要素は、相互に組み合わせて構成することができる。例えば、図8に示すスポンジ部材90は、図11に示すヒータ300や図12に示す振動子400と組み合わせることができる。図6に示す排出路49は、他の実施形態の排出路11Pに対しても配置することができる。
蓋部材24は回転中心部25により開閉するのではなく、蓋部材を単に開口部23にはめ込んで取り付けるようにしても良い。
【0068】
バッテリBが本体10に内蔵されているが、バッテリBに加えて商用電源から電源供給するようにしても良い。また、指は、手の指であっても足の指であっても良い。人間の指に限らず、例えばサルなどの動物の指であっても良い。収集部11には、1本の指だけでなく、複数本の指を挿入できるようにして、各指から汗成分を収集するようにしても良い。
図示した液体収集装置1では、ポンプ40を駆動するためのモータ41を備えているが、モータ41に代えて手動ハンドルを用いていることができる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の液体収集装置の好ましい第1実施形態を示す図である。
【図2】図1の液体収集装置の収集部に対して指を挿入した状態を示す図である。
【図3】図1に示す液体収集装置に対して着脱可能に装着されるセンサーチップの一例を示す図である。
【図4】図3のセンサーチップを装着する様子を示す斜視図である。
【図5】本発明の液体収集装置の好ましい第2実施形態を示す図である。
【図6】本発明の液体収集装置の好ましい第3実施形態を示す図である。
【図7】本発明の液体収集装置の好ましい第4実施形態を示す図である。
【図8】本発明の液体収集装置の好ましい第5実施形態を示す図である。
【図9】図8の液体収集装置の収集部に指を挿入した状態を示す図である。
【図10】図9の液体収集装置の収集部から指を外して押圧部材200を収集部に押し込む様子を示す図である。
【図11】本発明の液体収集装置の好ましい第6実施形態を示す図である。
【図12】本発明の液体収集装置の好ましい第7実施形態を示す図である。
【図13】図7の第7実施形態に用いられる振動子の一例を示す図である。
【図14】本発明の液体収集装置に用いられるセンサーチップに遠心力を加える例を示す図である。
【符号の説明】
【0070】
1 液体収集装置
10 本体
11 収集部
11P 排出路
12 汗成分回収剤供給部
13 収容部
19 内部空間
20 スポンジ部分(柔軟性を有する吸収部材の一例)
23 開口部
24 蓋部材
30 汗成分回収剤
40 ポンプ
41 モータ
43,44,49 バルブ
46,47,48 パイプ(搬送経路の一例)
61 第1吸収部材
62 第2吸収部材
80 吸収室
100 制御部
150 ユニット部分
201 第1構造部分
202 第2構造部分
1000 指
1001 皮膚
1200 汗成分
T センサーチップ(カセット容器の一例)
B バッテリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
指の皮膚からの汗成分を収集するための携帯可能な液体収集装置であって、
前記指を挿入して前記指から前記汗成分を収集するための収集部と、前記汗成分を回収するカセット容器を着脱可能に納めるカセット収容部と、を有することを特徴とする液体収集装置。
【請求項2】
前記挿入部内に前記汗成分に対して汗成分回収剤を供給する汗成分回収剤供給部を有し、
前記汗成分回収剤供給部は、
前記汗成分回収剤を貯留する貯留部と、
前記貯留部内の前記汗成分回収剤を前記挿入部内に供給するためのポンプと、を有することを特徴とする請求項1に記載の液体収集装置。
【請求項3】
前記収集部は、開口部と底部を有しており、前記開口部には挿入された前記指から前記汗成分を前記収集部内に掻き取るために弾性変形可能な掻き取り部材を備えることを特徴とする請求項1に記載の液体収集装置。
【請求項4】
前記収集部内に配置されて前記汗成分を吸収する柔軟性を有する吸収部材と、
前記汗成分を吸収した前記吸収部材を押圧して前記汗成分を前記吸収部材から前記収集部内に絞り出すための押圧部材と、をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の液体収集装置。
【請求項5】
前記収集部の近傍には、振動を発生する振動子が配置されていることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1つの項に記載の液体収集装置。
【請求項6】
前記収集部の近傍には、ヒータが配置されていることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1つの項に記載の液体収集装置。
【請求項7】
前記収集部と前記カセット収容部からなる第1構造部分は、前記汗成分回収剤供給部からなる第2構造部分に対して着脱可能であることを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか1つの項に記載の液体収集装置。
【請求項8】
前記収集部の開口部を開閉可能な蓋部材を有することを特徴とする請求項7に記載の液体収集装置。
【請求項9】
前記カセット容器は、前記皮膚からの前記汗成分を吸収する吸収室と、前記吸収室に連通し前記汗成分を電気信号に変換する試薬と前記電気信号を出力する電極を有する変換部からなり、前記カセット容器は前記カセット収容部に対して着脱可能に配置されることを特徴とする請求項1に記載の液体収集装置。
【請求項10】
前記収集部は、前記吸収部材が指先を封止して固定するサック状の汗収集部であり、前記カセット容器は、前記サック状の汗収集部の開口部に連通して着脱可能に付属されていることを特徴とする請求項9に記載の液体収集装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2009−47615(P2009−47615A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−215369(P2007−215369)
【出願日】平成19年8月22日(2007.8.22)
【出願人】(394000493)ヒーハイスト精工株式会社 (76)
【Fターム(参考)】