説明

液体吐出ヘッド、およびそれを用いた液体吐出ヘッドブロックならびに記録装置

【課題】記録装置への取り付けが容易になる液体吐出ヘッド、およびそれを用いた液体吐出ブロックならびに記録装置を提供する。
【解決手段】一方側に凸部を有する第1の位置決め部238aおよび第2の位置決め部238bを有し、前記一方と異なる側に凹部を有する第3の位置決め部238cとストッパ部238dとを有する液体吐出ヘッドである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液滴を吐出させる液体吐出ヘッド、およびそれを複数用いた液体吐出ヘッドブロックならびに記録装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、インクジェットプリンタやインクジェットプロッタなどの、インクジェット記録方式を利用した印刷装置が、一般消費者向けのプリンタだけでなく、例えば電子回路の形成や液晶ディスプレイ用のカラーフィルタの製造、有機ELディスプレイの製造といった工業用途にも広く利用されている。
【0003】
このようなインクジェット方式の印刷装置には、液体を吐出させるための液体吐出ヘッドが印刷ヘッドとして搭載されている。この種の印刷ヘッドには、インクが充填されたインク流路内に加圧手段としてのヒータを備え、ヒータによりインクを加熱、沸騰させ、インク流路内に発生する気泡によってインクを加圧し、インク吐出孔より、液滴として吐出させるサーマルヘッド方式と、インクが充填されるインク流路の一部の壁を変位素子によって屈曲変位させ、機械的にインク流路内のインクを加圧し、インク吐出孔より液滴として吐出させる圧電方式が一般的に知られている。
【0004】
また、このような液体吐出ヘッドには、記録媒体の搬送方向(副走査方向)と直交する方向(主走査方向)に液体吐出ヘッドを移動させつつ記録を行なうシリアル式、および記録媒体より主走査方向に長い液体吐出ヘッドを固定した状態で、副走査方向に搬送されてくる記録媒体に記録を行なうライン式がある。ライン式は、シリアル式のように液体吐出ヘッドを移動させる必要がないので、高速記録が可能であるという利点を有する。
【0005】
そこで一方方向の長い液体吐出ヘッドを、マニホールド(共通流路)およびマニホールドから複数の加圧室をそれぞれ介して繋がる吐出孔を有した流路部材と、前記加圧室をそれぞれ覆うように設けられた複数の変位素子を有するアクチュエータユニットとを積層して構成したものが知られている(例えば、特許文献1を参照。)。この液体吐出ヘッドでは、複数の吐出孔にそれぞれ繋がった加圧室がマトリックス状に配置され、それを覆うように設けられたアクチュエータユニットの変位素子を変位させることで、各吐出孔からインクを吐出させ、主走査方向に600dpiの解像度で印刷が可能とされている。
【0006】
また、特許文献1では、プリンタに、複数の液体吐出ヘッドを並べて用いることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−305852号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載のような液体吐出ヘッドを複数、記録装置に取り付けて使用する場合、良好な印刷結果を得るためには、それらの液体吐出ヘッドを、各液体吐出ヘッドの相対的な位置が所定の精度内になるように、それぞれ位置合わせして取り付ける必要があり、作業が煩雑であった。
【0009】
したがって、本発明の目的は、記録装置の取り付けが容易になる液体吐出ヘッド、およびそれを用いた液体吐出ブロックならびに記録装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の液体吐出ヘッドは、一方側に凸部を有する第1および第2の位置決め部を有し、前記一方と異なる側に凹部を有する第3の位置決め部とストッパ部とを有することを特徴とする。
【0011】
また、本発明の液体吐出ヘッドブロックは、前記液体吐出ヘッドを2つと、2つの前記液体吐出ヘッドの間に挟まれている位置調整治具とを有する液体吐出ヘッドブロックであって、前記位置調整治具は、2つの前記液体吐出ヘッドの吐出孔の位置が、前記位置調整治具を間に挟まない場合と比較して、前記一方方向に所定距離ずれた位置に配置されるように構成されていることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の記録装置は、前記液体吐出ヘッドの複数個を前記第1〜3の位置決め部および前記ストッパ部を用いて並べた液体吐出ヘッドブロック、あるいは、前記位置調整治具を用いて並べた前記液体吐出ヘッドブロックと、記録媒体を前記液体吐出ヘッドブロックに対して搬送する搬送部と、前記液体吐出ヘッドを制御する制御部を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
記録装置に、複数の液体吐出ヘッドを取り付ける際に、液体吐出ヘッド間の相対的位置合わせが容易にできるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態に係る液体吐出ヘッドを含む記録装置であるカラーインクジェットプリンタの概略構成図である。
【図2】図1の液体吐出ヘッドを構成する流路部材および圧電アクチュエータの平面図である。
【図3】図2の一点鎖線に囲まれた領域の拡大図であり、説明のため一部の流路を省略した図である。
【図4】図2の一点鎖線に囲まれた領域の拡大図であり、説明のため一部の流路を省略した図である。
【図5】図3のV−V線に沿った縦断面図である。
【図6】(a)は、吐出孔および各位置決め部の配置状態を示す模式図であり、(b)、(c)は2つの液体吐出ヘッドを位置合わせした状態を示す模式図である。
【図7】(a)は、2つの液体吐出ヘッドを位置合わせした状態を示す模式図であり、(b)は、3つの液体吐出ヘッドを位置合わせした状態を示す模式図である。
【図8】本実施形態の液体吐出ヘッドブロックの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、本発明の一実施形態による液体吐出ヘッドを含む記録装置であるカラーインクジェットプリンタの概略構成図である。このカラーインクジェットプリンタ1(以下、プリンタ1とする)は、2つの液体吐出ヘッド2が固定されている液体吐出ヘッドブロック32を有している。液体吐出ヘッドブロック32は、図1の手前から奥へ向かう方向に移動できるようになっている。2つの液体吐出ヘッド2は、印刷用紙Pの搬送経路に沿った方向に細長い長尺形状を有している。この長い方向を長手方向と呼ぶことがある。液体吐出ヘッドブロック32には、4つの液体吐出ヘッドは、図1の手前から奥へ向かう方向に平行に並んでいる。本発明の液体吐出ヘッド2は、液体吐出ヘッド2に設けられている位置決め部を相互に当接させて位置決めできるようにしてあるので、2つの液体吐出ヘッド
2の相対的な位置精度高くしてプリンタ1取り付ける必要ことができる。液体吐出ヘッド2に設けられている位置決め部の詳細については後述する。
【0016】
プリンタ1には、印刷用紙Pの搬送経路に沿って、給紙ユニット114、搬送ユニット120および紙受け部116が順に設けられている。また、プリンタ1には、液体吐出ヘッド2や給紙ユニット114などのプリンタ1の各部における動作を制御するための制御部100が設けられている。
【0017】
給紙ユニット114は、複数枚の印刷用紙Pを収容することができる用紙収容ケース115と、給紙ローラ145とを有している。給紙ローラ145は、用紙収容ケース115に積層して収容された印刷用紙Pのうち、最も上にある印刷用紙Pを1枚ずつ送り出すことができる。
【0018】
給紙ユニット114と搬送ユニット120との間には、印刷用紙Pの搬送経路に沿って、二対の送りローラ118aおよび118b、ならびに、119aおよび119bが配置されている。給紙ユニット114から送り出された印刷用紙Pは、これらの送りローラによってガイドされて、さらに搬送ユニット120へと送り出される。
【0019】
搬送ユニット120は、エンドレスの搬送ベルト111と2つのベルトローラ106および107を有している。搬送ベルト111は、ベルトローラ106および107に巻き掛けられている。搬送ベルト111は、2つのベルトローラに巻き掛けられたとき所定の張力で張られるような長さに調整されている。これによって、搬送ベルト111は、2つのベルトローラの共通接線をそれぞれ含む互いに平行な2つの平面に沿って、弛むことなく張られている。これら2つの平面のうち、液体吐出ヘッド2に近い方の平面が、印刷用紙Pを搬送する搬送面127である。
【0020】
ベルトローラ106には、図1に示されるように、搬送モータ174が接続されている。搬送モータ174は、ベルトローラ106を矢印Aの方向に回転させることができる。また、ベルトローラ107は、搬送ベルト111に連動して回転することができる。したがって、搬送モータ174を駆動してベルトローラ106を回転させることにより、搬送ベルト111は、矢印Aの方向に沿って移動する。
【0021】
ベルトローラ107の近傍には、ニップローラ138とニップ受けローラ139とが、搬送ベルト111を挟むように配置されている。ニップローラ138は、図示しないバネによって下方に付勢されている。ニップローラ138の下方のニップ受けローラ139は、下方に付勢されたニップローラ138を、搬送ベルト111を介して受け止めている。2つのニップローラは回転可能に設置されており、搬送ベルト111に連動して回転する。
【0022】
給紙ユニット114から搬送ユニット120へと送り出された印刷用紙Pは、ニップローラ138と搬送ベルト111との間に挟み込まれる。これによって、印刷用紙Pは、搬送ベルト111の搬送面127に押し付けられ、搬送面127上に固着する。そして、印刷用紙Pは、搬送ベルト111の回転に従って、液体吐出ヘッド2が設置されている方向へと搬送される。なお、搬送ベルト111の外周面113に粘着性のシリコンゴムによる処理を施してもよい。これにより、印刷用紙Pを搬送面127に確実に固着させることができる。
【0023】
液体吐出ヘッド2は、下端にヘッド本体2aを有している。ヘッド本体2aの下面は、液体を吐出する多数の吐出孔が設けられている吐出孔面4−1となっている。
【0024】
1つの液体吐出ヘッド2に設けられた吐出孔からは、4色の液滴(インク)が吐出されるようになっている。液体吐出ヘッド2の各色を吐出する吐出孔は、一方方向(印刷用紙Pと平行で印刷用紙Pの搬送方向に直交する方向であり、液体吐出ヘッド2の長手方向)に等間隔で配置されているため、各色を一方方向に隙間なく印刷することができる。液体吐出ヘッド2から吐出される液体の色は、例えば、それぞれ、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、シアン(C)およびブラック(K)である。液体吐出ヘッド2は、ヘッド本体2aの下面の吐出孔面4−1と搬送ベルト111の搬送面127との間にわずかな隙間をおいて配置されている。
【0025】
搬送ベルト111によって搬送された印刷用紙Pは、液体吐出ヘッド2と搬送ベルト111との間の隙間を通過する。その際に、印刷用紙Pは、一旦搬送が止められ、液体吐出ヘッドブロック32が、印刷用紙Pの搬送方向と略直交する方向に、印刷用紙Pの幅方向にわたって移動させられながら、液体吐出ヘッドブロック32内の液体吐出ヘッド2を構成するヘッド本体2aから印刷用紙Pの上面に向けて液滴が吐出される。2つの液体吐出ヘッド2からは、各色において、1つ目の一方の液体吐出ヘッド2から吐出されて着弾した液滴の間に、2つ目の液体吐出ヘッド2から吐出された液滴が着弾することにより、1つの液体吐出ヘッド2の解像度の倍の解像度で印刷が行われる。これによって、印刷用紙Pの上面には、液体吐出ヘッド2の長手方向の幅の分のカラー画像が形成される。その後、印刷用紙Pは、液体吐出ヘッド2の長手方向の幅の長さの分搬送される。これらを繰り返すことで、制御部100によって記憶された画像データに基づくカラー画像が形成される。このような印刷を行なうために、2つの液体吐出ヘッド2の相対的な位置精度を高くする必要があり、そのために、液体吐出ヘッド2には、相互に当接させることで、位置決めを行なうことのできる位置決め部を設けられている。
【0026】
搬送ユニット120と紙受け部116との間には、剥離プレート140と二対の送りローラ121aおよび121bならびに122aおよび122bとが配置されている。カラー画像が印刷された印刷用紙Pは、搬送ベルト111によって剥離プレート140へと搬送される。このとき、印刷用紙Pは、剥離プレート140の右端によって、搬送面127から剥離される。そして、印刷用紙Pは、送りローラ121a〜122bによって、紙受け部116に送り出される。このように、印刷済みの印刷用紙Pが順次紙受け部116に送られ、紙受け部116に重ねられる。
【0027】
なお、印刷用紙Pの搬送方向について最も上流側にある液体吐出ヘッド2とニップローラ138との間には、紙面センサ133が設置されている。紙面センサ133は、発光素子および受光素子によって構成され、搬送経路上の印刷用紙Pの先端位置を検出することができる。紙面センサ133による検出結果は制御部100に送られる。制御部100は、紙面センサ133から送られた検出結果により、印刷用紙Pの搬送と画像の印刷とが同期するように、液体吐出ヘッド2や搬送モータ174等を制御することができる。
【0028】
次に、本発明の液体吐出ヘッド2について説明する。図2は、ヘッド本体2aの平面図である。図3は、図2の一点鎖線で囲まれた領域の拡大図であり、説明のため一部の流路を省略した図である。図4は、図2の一点鎖線で囲まれた領域の拡大図であり、説明のため図5とは異なる一部の流路を省略した図である。なお、図3および図4において、図面を分かりやすくするために、圧電アクチュエータ基板21の下方にあって破線で描くべきマニホールド5、吐出孔8、加圧室10を実線で描いている。図3は図5のV−V線に沿った縦断面図である。
【0029】
ヘッド本体2aを構成する流路部材4は、マニホールド5と、マニホールド5と繋がっている複数の加圧室10と、複数の加圧室10とそれぞれ繋がっている複数の吐出孔8とを備え、加圧室10は流路部材4の上面に開口しており、流路部材4の上面が加圧室面4
−2となっている。また、流路部材4の上面にはマニホールド5と繋がる開口5aを有し、この開口5aより液体が供給されるようになっている。
【0030】
また、流路部材4の上面には、変位素子30を含む圧電アクチュエータ基板21が接合されており、各変位素子30が加圧室10上に位置するように設けられている。また、圧電アクチュエータ基板21には、各変位素子30に信号を供給するためのFPC(Flexible Printed Circuit)などの信号伝達部が接続されている。信号伝達部にはドライバICが実装されている。ドライバICは液体吐出ヘッド2の金属製の筐体に押し付けられるように実装されており、ドライバICの熱は、金属製の筐体に伝わり、外部に放散される。圧電アクチュエータ基板21上の変位素子30を駆動する駆動信号は、ドライバIC内で生成される。駆動信号の生成を制御する信号は、制御部100で生成され、信号伝達部の圧電アクチュエータ基板21と接続された側と反対側の端から入力される。制御部100と信号伝達部との間には、必要に応じて、液体吐出ヘッド2内に設けられた、配線基板などが設けられる。
【0031】
ヘッド本体2aは、平板状の流路部材4と、流路部材4上に、変位素子30を含む圧電アクチュエータ基板21を1つ有している。圧電アクチュエータ基板21の平面形状は長方形状であり、その長方形の長辺が流路部材4の長手方向に沿うように流路部材4の上面に配置されている。
【0032】
流路部材4の内部には4つのマニホールド5が形成されている。マニホールド5は流路部材4の長手方向に沿って延びる細長い形状を有しており、その両端において、流路部材4の上面にマニホールド5の開口5aが形成されている。本実施例においては、マニホールド5は独立して4本設けられており、それぞれ開口5aにおいて分岐流路52に繋がっている。
【0033】
流路部材4は、複数の加圧室10が2次元的に広がって形成されている。加圧室10は、角部にアールが施されたほぼ菱形の平面形状を有する中空の領域である。加圧室10は流路部材4の上面である加圧室面4−2に開口している。
【0034】
加圧室10は1つのマニホールド5と個別供給流路14を介して繋がっている。1つのマニホールド5に沿うようにして、このマニホールド5に繋がっている加圧室10の列である加圧室列11が、マニホールド5の両側に2列ずつ、合計4列設けられている。したがって、全体では16列の加圧室列11が設けられている。各加圧室列11における加圧室10の長手方向の間隔は同じであり、37.5dpiの間隔となっている。なお、各加圧室列11の端の加圧室10は、ダミーとなっており、マニホールド5とは繋がっていない。このダミーにより、端から1つ内側の加圧室10の周囲の構造(剛性)が他の加圧室10の構造(剛性)と近くなることで、液体吐出特性の差を少なくできる。
【0035】
各加圧室列11の加圧室10は、隣接する圧室列11の間に角部が位置するように千鳥状に配置されている。1つのマニホールド5に繋がっている加圧室10により加圧室群が構成されており、加圧室群は4つある。各加圧室群内における加圧室10の相対的な配置は同じになっており、各加圧室群は長手方向にわずかにずれて配置されている。これらの加圧室10は、流路部材4の上面における圧電アクチュエータ基板21に対向する領域に、加圧室群間などの少し間隔が広くなって部分はあるものの、ほぼ全面にわたって配列されている。つまり、これらの加圧室10によって形成された加圧室群は圧電アクチュエータ基板21とほぼ同一の大きさおよび形状の領域を占有している。また、各加圧室10の開口は、流路部材4の上面に圧電アクチュエータ基板21が接合されることで閉塞されている。
【0036】
加圧室10の個別供給流路14が繋がっている角部と対向する角部からは、流路部材4の下面の吐出孔面4−1に開口している吐出孔8に繋がるディセンダが伸びている。吐出孔面4−1に開口している吐出孔8は一方方向に長い吐出孔群36を構成している。ディセンダは、平面視において、加圧室の対角線を延長する方向に伸びている。つまり、長手方向の吐出孔8の配置と加圧室10配置は同じになっている。各加圧室列11において、加圧室10は37.5dpiの間隔で並んでおり、1つのマニホールド5に繋がっている加圧室10は全体として、長手方向に150dpiの間隔になっている。さらに、4つのマニホールド5に繋がっている加圧室10は、長手方向に600dpiに相当する間隔でずれて配置されているため、液体加圧室10は全体で長手方向に600dpiの間隔で形成されている。前述のように、吐出孔8の長手方向の配置は液体加圧室10と同じになっているので、吐出孔8の長手方向の間隔も600dpiになっている。
【0037】
これは別の言い方をすると、流路部材4の長手方向に平行な仮想直線に対して直交するように吐出孔8を投影すると、図6に示した仮想直線のRの範囲に、各マニホールド5に繋がっている4つの吐出孔8、つまり全部で16個の吐出孔8が、600dpiの等間隔となっているということである。これにより、全てのマニホールド5に同じ色のインクを供給することで、全体として長手方向に600dpiの解像度で画像が形成可能となる。また、1つのマニホールド5に繋がっている4つの吐出孔8は、仮想直線のRの範囲で150dpiの等間隔になっている。これにより、各マニホールド5に異なる色のインクを供給することで、全体として長手方向に150dpiの解像度で4色の画像が形成可能となる。この場合、さらに4つの液体吐出ヘッド2を用いて、それぞれ液体吐出ヘッド2において各色のインクを異なる位置のマニホールド5に供給するようにして、600dpiの解像度で4色の画像が形成してもよい。またさらに、2つの液体吐出ヘッド2を用いて、それぞれ液体吐出ヘッド2において各色のインクを異なる位置のマニホールド5に供給するようにして、300dpiの解像度で4色の画像が形成してもよい。このようにすることで、記録媒体P上において、主走査方向に並んだ同じ色のインクでは、吐出されたもとが、異なる液体吐出ヘッド2の、しかも液体吐出ヘッド2の中のマニホールド5の位置が異なるものになるので、液体吐出ヘッド2毎に生じる液体吐出特性のばらつきや、各液体吐出ヘッド2内におけるマニホールド5の位置により生じたばらつきを反映した同傾向の吐出ばらつきが並んで生じ難いので、きれいな画像が得られる。
【0038】
また、液体吐出ヘッド2を平行に2つ並べて、記録用紙P上に交互に印刷することで、1つの液体吐出ヘッド2の2倍の速度で印刷できるようにしてもよい。
【0039】
圧電アクチュエータ基板21の上面における各加圧室10に対向する位置には個別電極25がそれぞれ形成されている。個別電極25は、加圧室10より一回り小さく、加圧室10とほぼ相似な形状を有している個別電極本体25aと、個別電極本体25aから引き出されている引出電極25bとを含んでおり、個別電極25は、加圧室10と同じように、個別電極列および個別電極群を構成している。また、圧電アクチュエータ基板21の上面には、共通電極24と電気的に接続されている共通電極用表面電極28が形成されている。共通電極用表面電極28は、圧電アクチュエータ基板21の短手方向の中央部に、長手方向に沿うように2列形成され、また、長手方向の端近くで短手方向に沿って1列形成されている。図示した、共通電極用表面電極28は直線上に断続的に形成されたものであるが、直線上に連続的に形成してもよい。圧電アクチュエータ基板21には、2枚の信号伝達部が、圧電アクチュエータ基板21の2つの長辺側から、それぞれ中央に向かうように配置され、接合される。共通電極用表面電極28は、信号伝達部の端部(先端および圧電アクチュエータ基板21の長手方向の端)において接続され、共通電極用表面電極28およびその上に形成される共通電極用接続電極が、引出電極25bおよびその上に形成される接続電極26よりも面積が大きいため、信号伝達部が端からはがれ難くできる。
【0040】
また、吐出孔8は、流路部材4の下面側に配置されたマニホールド5と対向する領域を避けた位置に配置されている。さらに、吐出孔8は、流路部材4の下面側における圧電アクチュエータ基板21と対向する領域内に配置されている。これらの吐出孔8は、1つの群として圧電アクチュエータ基板21とほぼ同一の大きさおよび形状の領域を占有しており、対応する圧電アクチュエータ基板21の変位素子30を変位させることにより吐出孔8から液滴が吐出できる。
【0041】
ヘッド本体2aに含まれる流路部材4は、複数のプレートが積層された積層構造を有している。これらのプレートは、流路部材4の上面から順に、キャビティプレート4a、ベースプレート4b、アパーチャ(しぼり)プレート4c、サプライプレート4d、マニホールドプレート4e〜g、カバープレート4h、カバーSPプレート4iおよびノズルプレート4jである。これらのプレートには多数の孔が形成されている。各プレートの厚さは10〜300μm程度であることにより、形成する孔の形成精度を高くできる。各プレートは、これらの孔が互いに連通して個別流路12およびマニホールド5を構成するように、位置合わせして積層されている。ヘッド本体2aは、加圧室10は流路部材4の上面に、マニホールド5は内部の下面側に、吐出孔8は下面にと、個別流路12を構成する各部分が異なる位置に互いに近接して配設され、加圧室10を介してマニホールド5と吐出孔8とが繋がる構成を有している。
【0042】
各プレートに形成された孔について説明する。これらの孔には、次のようなものがある。第1に、キャビティプレート4aに形成された加圧室10である。第2に、加圧室10の一端からマニホールド5へと繋がる個別供給流路14を構成する連通孔である。この連通孔は、ベースプレート4b(詳細には加圧室10の入り口)からサプライプレート4c(詳細にはマニホールド5の出口)までの各プレートに形成されている。なお、この個別供給流路14には、アパーチャプレート4cに形成されている、流路の断面積が小さくなっている部位であるしぼり6が含まれている。
【0043】
第3に、加圧室10の他端から吐出孔8へと連通する流路を構成する連通孔であり、この連通孔は、以下の記載においてディセンダ(部分流路)と呼称される。ディセンダは、ベースプレート4b(詳細には加圧室10の出口)からノズルプレート4j(詳細には吐出孔8)までの各プレートに形成されている。ノズルプレート4jの孔は、吐出孔8として、流路部材4の外部に開口している径が、例えば10〜40μmのもので、内部に向かって径が大きくなっていくものが形成される。
第4に、マニホールド5を構成する連通孔である。この連通孔は、マニホールドプレート4e〜gに形成されている。
【0044】
第5に、カバーSPプレート4iに形成され、マニホールド5の下に形成されるダンパ室18となる孔である。ダンパ室18は、上述の第1〜4の孔とは繋がっておらず、液体は入るようにはなっていない。ダンパ室18とマニホールド5との間カバープレート4hは、ダンパとなり、マニホールド5の体積が変わるようにすることで、マニホールド5の液体の供給の過不足が吐出に影響を与えにくくしたり、マニホールド5を通じて加圧室10間の間で圧力が伝わって吐出特性に影響を与えるクロストークを小さくしたりする。ダンパ室18は密閉された空間であっても、空気が体積変化することでダンパが働くようになるが、上述した孔と別な孔によって、流路部材4の外部と繋がるようにしておけば、ダンパとして、より良く働く。
【0045】
第1〜4の連通孔が相互に繋がり、マニホールド5からの液体の流入口(マニホールド5の出口)から吐出孔8に至る個別流路12を構成している。マニホールド5に供給された液体は、以下の経路で吐出孔8から吐出される。まず、マニホールド5から上方向に向かって、個別供給流路14に入りを通り、しぼり6の一端部に至る。次に、しぼり6の延
在方向に沿って水平に進み、しぼり6の他端部に至る。そこから上方に向かって、加圧室10の一端部に至る。さらに、加圧室10の延在方向に沿って水平に進み、加圧室10の他端部に至る。そこから少しずつ水平方向に移動しながら、主に下方に向かい、下面に開口した吐出孔8へと進む。
【0046】
分岐流路部材51も、流路部材4と同様には圧延法等により得られプレート51a〜cに、エッチングや研削により所定の形状に加工されて、積層接着され、液体流路52および圧電アクチュエータが収納される加圧部収容部54となる凹部が設けられる。プレート51a〜cの厚さは、例えば0.3〜3m程度である。
【0047】
圧電アクチュエータ基板21は、2枚の圧電セラミック層21a、21bからなる積層構造を有している。これらの圧電セラミック層21a、21bはそれぞれ20μm程度の厚さを有している。圧電アクチュエータ基板21の圧電セラミック層21aの下面から圧電セラミック層21bの上面までの厚さは40μm程度である。圧電セラミック層21a、21bのいずれの層も複数の加圧室10を跨ぐように延在している。これらの圧電セラミック層21a、21bは、強誘電性を有するチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)系のセラミックス材料からなる。
【0048】
圧電アクチュエータ基板21は、Ag−Pd系などの金属材料からなる共通電極24およびとAu系などの金属材料からなる個別電極25を有している。個別電極25は上述のように圧電アクチュエータ基板21の上面における加圧室10と対向する位置に配置されている個別電極本体25aそこから引き出された引出電極25bとを含んでいる。引出電極25bの一端の、加圧室10と対向する領域外に引き出され部分には接続電極26が形成されている。接続電極26は例えばガラスフリットを含む銀−パラジウムからなり、厚さが15μm程度で凸状に形成されている。また、接続電極26は、信号伝達部に設けられた電極と電気的に接合されている。詳細は後述するが、個別電極25には、制御部100から信号伝達部を通じて駆動信号が供給される。駆動信号は、印刷媒体Pの搬送速度と同期して一定の周期で供給される。ダミー接続電極27は、圧電アクチュエータ基板21と信号伝達部とを接続し、接続強度を高めるとともに、圧電アクチュエータ基板21上で接続される部分の分布を均一化し、接続する際に、接続が安定してできる。
【0049】
共通電極24は、圧電セラミック層21aと圧電セラミック層21bとの間の領域に面方向のほぼ全面にわたって形成されている。すなわち、共通電極24は、圧電アクチュエータ基板21に対向する領域内の全ての加圧室10を覆うように延在している。共通電極24の厚さは2μm程度である。共通電極24は、圧電セラミック層21b上に個別電極25からなる電極群を避ける位置に形成されている共通電極用表面電極28に、圧電セラミック層21bに形成されたビアホールを介して繋がっていて、接地され、グランド電位に保持されている。共通電極用表面電極28は、多数の個別電極25と同様に、信号伝達部上の別の電極と接続されている。
【0050】
なお、後述のように、個別電極25に選択的に所定の駆動信号が供給されることにより、この個別電極25に対応する加圧室10内の液体に圧力が加えられる。これによって、個別流路12を通じて、対応する液体吐出口8から液滴が吐出される。すなわち、圧電アクチュエータ基板21における各加圧室10に対向する部分は、各加圧室10および液体吐出口8に対応する個別の変位素子30に相当する。つまり、2枚の圧電セラミック層からなる積層体中には、図5に示されているような構造を単位構造とする圧電アクチュエータである変位素子30が加圧室10毎に、加圧室10の直上に位置する振動板21a、共通電極24、圧電セラミック層21b、個別電極25により作り込まれており、圧電アクチュエータ基板21には加圧部である変位素子30が複数含まれている。なお、本実施形態において1回の吐出動作によって液体吐出口8から吐出される液体の量は5〜7pl(
ピコリットル)程度である。
【0051】
多数の個別電極25は、個別に電位を制御することができるように、それぞれが信号伝達部および配線を介して、個別に制御部100に電気的に接続されている。個別電極25を共通電極24と異なる電位にして圧電セラミック層21bに対してその分極方向に電界を印加したとき、この電界が印加された部分が、圧電効果により歪む活性部として働く。この構成において、電界と分極とが同方向となるように、制御部100により個別電極25を共通電極24に対して正または負の所定電位にすると、圧電セラミック層21bの電極に挟まれた部分(活性部)が、面方向に収縮する。一方、非活性層の圧電セラミック層21aは電界の影響を受けないため、自発的には縮むことがなく活性部の変形を規制しようとする。この結果、圧電セラミック層21bと圧電セラミック層21aとの間で分極方向への歪みに差が生じて、圧電セラミック層21bは加圧室10側へ凸となるように変形(ユニモルフ変形)する。
【0052】
本実施の形態における実際の駆動手順は、あらかじめ個別電極25を共通電極24より高い電位(以下高電位と称す)にしておき、吐出要求がある毎に個別電極25を共通電極24と一旦同じ電位(以下低電位と称す)とし、その後所定のタイミングで再び高電位とする。これにより、個別電極25が低電位になるタイミングで、圧電セラミック層21a、bが元の形状に戻り、加圧室10の容積が初期状態(両電極の電位が異なる状態)と比較して増加する。このとき、加圧室10内に負圧が与えられ、液体がマニホールド5側から加圧室10内に吸い込まれる。その後再び個別電極25を高電位にしたタイミングで、圧電セラミック層21a、bが加圧室10側へ凸となるように変形し、加圧室10の容積減少により加圧室10内の圧力が正圧となり液体への圧力が上昇し、液滴が吐出される。つまり、液滴を吐出させるため、高電位を基準とするパルスを含む駆動信号を個別電極25に供給することになる。このパルス幅は、圧力波がしぼり6から吐出孔8まで伝播する時間長さであるAL(Acoustic Length)が理想的である。これによると、加圧室10内
部が負圧状態から正圧状態に反転するときに両者の圧力が合わさり、より強い圧力で液滴を吐出させることができる。
【0053】
また、階調印刷においては、吐出孔8から連続して吐出される液滴の数、つまり液滴吐出回数で調整される液滴量(体積)で階調表現が行われる。このため、指定された階調表現に対応する回数の液滴吐出を、指定されたドット領域に対応する吐出孔8から連続して行なう。一般に、液体吐出を連続して行なう場合は、液滴を吐出させるために供給するパルスとパルスとの間隔をALとすることが好ましい。これにより、先に吐出された液滴を吐出させるときに発生した圧力の残余圧力波と、後に吐出させる液滴を吐出させるときに発生する圧力の圧力波との周期が一致し、これらが重畳して液滴を吐出するための圧力を増幅させることができる。なお、この場合後から吐出される液滴の速度が速くなると考えられるが、その方が複数の液滴の着弾点が近くなり、好ましい。
【0054】
以上、プリンタ1が備える、液体吐出ヘッド2、および液体吐出ヘッド2を複数有する液体吐出ヘッドブロック32について説明してきた。複数の液体吐出ヘッド2を用いて印刷する際には、複数の液体吐出ヘッド2から吐出された液滴が混在して着弾して、画像を形成することになるので、液体吐出ヘッド2をプリンタ1に取り付ける際には、プリンタ1に対する液体吐出ヘッド2の位置精度よりも、各液体吐出ヘッド2の相対位置精度が高い方が好ましい場合が多い。そこで、本発明の液体吐出ヘッド2では、液体吐出ヘッド2に設けられた位置決め部を当接されることで、液体吐出ヘッド2同士の位置を位置決めできるようにしている。
【0055】
図2〜5で示した実際の液体吐出ヘッド2の構造では、吐出孔8の配置が複雑であるため、位置決め部の構造などを、図6(a)で示す液体吐出ヘッド202で説明する。液体
吐出ヘッド202では、吐出孔208は、吐出孔開口面204−1に開口しており、一方方向に長い吐出孔群236を構成している。吐出孔208は4つの吐出孔列である直線L1〜L4上に並んでいる。直線L1〜L4上の吐出孔208の間隔は等しくなっており、吐出孔208は長手方向に等間隔d(mm、以下で単位を省略することがある)で並んでおり、これにより吐出孔群236に含まれる吐出孔208全体で、等間隔dで印刷することが可能になる。直線L1〜L4の間隔はp(mm、以下で単位を省略することがある)で等しくなっているが、等しくなくてもかまわない。
【0056】
また、液体吐出ヘッド202は、第1の位置決め部238a、第2の位置決め部238b、第3の位置決め部238c、ストッパ部238dを備えている。なお、第1〜3の位置決め部238a〜cおよびストッパ部238dを総称して位置決め部と呼ぶことがある。
【0057】
液体吐出ヘッド202では、一方側に凸部を有する第1および第2の位置決め部238a、bを備えており、前記一方側と異なる側に凹部を有する第3の位置決め部238c、ストッパ部238dを備えていることで、略同形状の2個の液体吐出ヘッド202を、一方の液体吐出ヘッド202の第1の位置決め部238aと、他方の液体吐出ヘッド202の第3の位置決め部238cとを当接させ、一方の液体吐出ヘッド202の第2の位置決め部238bと、他方の液体吐出ヘッド202のストッパ部238dとを当接させることで、相対的な位置決めをすることができる。これにより、液体吐出ヘッド202をそれぞれ、プリンタ1に取り付けて位置決めをするよりも、相対的な位置精度を高くでき、取り付けも簡単にできる。
【0058】
2つ液体吐出ヘッド202を当接させた状態に、さらに別の液体吐出ヘッド202を取る付ける際には、最初に使用しなかった位置決め部を使用して、位置決めして取り付けてもよいし、他の方法で取り付けてもよい。最初に使用しなかった位置決め部を使用して位置決めを行なえば、同一基準で作製された部位で位置決めをすることになるので、取り付け精度を高くできる。
【0059】
図6(a)では、前記一方側と異なる側が、前記一方と反対側であるが、これに限らず、異なる側として、例えば、前記一方側に対して90度異なる側などにするなどして、第3の位置決め部238c、ストッパ部238dを、第1の位置決め部238a、第2の位置決め部238bを使用する際に重ならないような任意の方向・部位に設ければよい。
【0060】
第1および第2の位置決め部238a、bは、前記凸部の位置決めをする際に当接する部位が凸曲面であり、第3の位置決め部238cは、前記凹部の位置決めをする際に当接する部位が凹曲面であり、ストッパ部238dの位置決めをする際に当接する部位が曲面であることにより、位置決め部の当接させた際の変形が小さくなるので、位置合わせ精度を高くできる。なお、ここでいう凸曲面、凹曲面、曲面とは、角などの突起部が含まれていないという意味であり、局所的に平面である部分を含まないことを意味するものではない。
【0061】
また、前記凸部が、吐出孔面204−1に略直交するとともに、吐出孔面204−1と平行な断面における外形の一部が円弧状である凸曲面であり、第3の位置決め部238cおよびストッパ部238dは、吐出孔面204−1と略直交する面を有するとともに、第1および第2の位置決め部238a、bの前記凸部と略同じ形状の面にそれぞれ当接させたときに、前記凹部は、前記凸部の円弧状の部位が、円弧状に沿って回転する回転の中心を定める形状を有しており、ストッパ部238dは、前記回転の中心で回転する液体吐出ヘッド202の角度を定める形状を有していることにより、2つの液体吐出ヘッド202の相対位置が遊びなく定まり、位置決めができる。
【0062】
第3の位置決め部238cにおける回転の中心を定める形状とは、吐出孔面204−1に平行な断面において、円弧形状の第1および2の位置決め部238a、bのいずれか一方に2点以上の点(3次元では、吐出孔面204−1と直交する直線)で当接するようになっていることにより、各点が当接したまま、円弧形状の中心点に対して回転できるようになっているものである。当接する部分は、点が連続した形状である線(3次元では、吐出孔面204−1と直交する平面)であってもよい。3つ以上の点で当接していると、どの2点で強く当接させられているかにより中心がわずかにずれるため、当接している点は2点であるのがよい。凹部における当接している点は、角のない面同士を当接させることにより、当接した際の変形が小さくできるので、位置精度を高くできる。2つの当接する部分は、吐出孔面204−1に平行な断面において、それぞれ直線にすれば、加工精度を高め易いので、位置精度を高くできる。その場合の2つの当接する部分の直線(3次元では、吐出孔面204−1と直交する平面)の成す角度が略90度であると、一方を当接させようとするときの力の向きが、他方の当接部分の位置をずらし難い向きになるため、当接させる動作による位置ずれが生じ難く、位置精度を高くできる。
【0063】
ストッパ部238dにおける回転の中心で回転する液体吐出ヘッド202の角度を定める形状とは、吐出孔面204−1に平行な断面において、例えば、第3の位置決め部238cと円弧形状の第1および2の位置決め部238a、bのいずれか一方とが当接した状態で、円弧形状で回転可能になっている液体吐出ヘッド202を、ストッパ部238dを円弧形状の第1および2の位置決め部238a、bのいずれか一方に当接させることで、回転の角度を定めるものである。当接する部分は、線(3次元では、吐出孔面204−1と直交する平面)あるいは2か所以上の点(3次元では、吐出孔面204−1と直交する直線)でもよいが、1点で当接させることにより、ストッパ部238dの形状を加工した際の精度の影響が、位置決めに影響し難くなるため、位置精度を高くできる。当接している点は、角のない面同士が当接させることにより、当接した際の変形が小さくなるので、位置精度が高くできる。ストッパ部238dの当接する部分は、吐出孔面204−1に平行な断面において、直線にすれば、加工精度を高め易いので位置精度を高くできる。当接する部分の直線(3次元では、吐出孔面204−1と直交する平面)は、液体吐出ヘッド202を回転させた際に、ストッパ部238dに当接させる、第1および2の位置決め部238a、bのいずれかが移動する方向に直交するようにすれば、当接させる際に、回転の軸がずれ難くなるので、位置精度を高くできる。
【0064】
なお、プリンタ1と液体吐出ヘッド202との位置合わせを、他の液体吐出ヘッド202との位置合わせに使っていない位置決め部を用いて行なえば、統一した位置合わせができるので、位置精度を高くできる。
【0065】
また、吐出孔面204−1が一方方向に長い長方形状であり、第1および第2の位置決め部238a、bが前記長方形状の一方の長辺側に位置しており、第3の位置決め部238cおよびストッパ部238dが前記長方形状の他方の長辺側に位置していることにより、2つ以上の液体吐出ヘッド202を並べて位置合わせすることができる。また、それぞれの位置決め部を前記長方形状の両端近く、あるいは両端より外側に設ければ、長方形状の吐出孔面204−1の角度を、より正確に定めることができる。
【0066】
2つの液体吐出ヘッド202を当接させて位置決めした状態を、図6(b)、(c)に示す。いずれにおいても、2つの液体吐出ヘッド202が短手方向に並べられており、図において上側の液体吐出ヘッド202の第3の位置決め部238cと下側の液体吐出ヘッド202の第1の位置決め部238aとを当接させ、上側の液体吐出ヘッド202のストッパ部238dと上側の液体吐出ヘッド202の第2の位置決め部238bとを当接させている。
【0067】
図6(b)では、上側の液体吐出ヘッド202の吐出孔208と、下側の液体吐出ヘッド202の吐出孔208との位置は、長手方向において同じ位置にされている。このようにすることで、例えば、記録用紙P上における長手方向の同一地点に、異なる色のインクを着弾させて、多色印刷ができる。また、例えば、記録用紙P上における長手方向の同一地点に、異なる液体吐出ヘッド202から短手方向に交互に着弾させるこことで、印刷速度を速くできる。なお、図6(b)では、2つの液体吐出ヘッド202の吐出孔群236の長手方向における位置が同じになっているが、これは必ずしも必要ではなく、長手方向における吐出孔群236の位置がdの整数倍ずれていてもよい。長手方向にも液体吐出ヘッド202を並べて印刷する際には、吐出孔群236の端が揃わないようにすることで、異なる液体吐出ヘッド202の間にある吐出特性の差を、記録用紙P上で目立たなくできる。長手方向に液体吐出ヘッド202を並べない場合は、吐出孔群236の端が揃うようにすれば、印刷範囲を広くできる。
【0068】
図6(c)では、上側の液体吐出ヘッド202の吐出孔208と、下側の液体吐出ヘッド202の吐出孔208との位置は、長手方向においてd/2ずれる位置にされている。このようにすることで、例えば、記録用紙P上における長手方向の解像度を倍にできる。さらに、n(nは2以上の整数)個の液体吐出ヘッド202を、吐出孔208の位置が長手方向においてd/nずつずれるようにすることで、長手方向の解像度をn倍にできる。なお、図では、長手方向における吐出孔群236の位置の差はd/2になっているが、これは必ずしも必要ではなく、長手方向における吐出孔群236の位置がdの整数倍+d/2ずれていてもよい。その理由は、図6(b)の場合と同様である。
【0069】
図7(a)に示した液体吐出ヘッド302は、第1および第2の位置決め部338a、b、第3の位置決め部338cおよびストッパ部338dの位置以外は液体吐出ヘッド202と同じものである。
【0070】
液体吐出ヘッド302は、図7(a)のように、2つの液体吐出ヘッド302を短手方向に並べて位置合わせする際に、図において上側の液体吐出ヘッド302の第3の位置決め部338cと下側の液体吐出ヘッド302の第1の位置決め部338aとを当接させ、上側の液体吐出ヘッド302のストッパ部338dと下側の液体吐出ヘッド302の第2の位置決め部338bとを当接させることにより、長手方向における吐出孔群236の位置を同じにできる。
【0071】
また、液体吐出ヘッド302は、図7(b)のように、相対的な位置合わせをして、長手方向に並べられている2つ液体吐出ヘッド302に対して、それらの短手方向に並べて位置合わせする際に、図において上側の液体吐出ヘッド302の第3の位置決め部338cと下側の一方の液体吐出ヘッド302の第2の位置決め部338bとを当接させ、上側の液体吐出ヘッド302のストッパ部338dと下側の他方の液体吐出ヘッド302の第1の位置決め部338aとを当接させることにより、長手方向において、吐出孔群236の端部が繋がるようになっている。このようにすることで、長手方向により長い範囲に印刷できるように液体吐出ヘッド302を位置合わせして並べることができる。図7(b)では、異なる液体吐出ヘッド302の吐出孔群236は、最も端の吐出孔208同士の長手方向の距離がdになるようにしてあるが、長手方向においてに吐出孔群236の端部が重なるようになっていてもよい。このように、液体吐出ヘッド302は、同じ位置合わせ部を用いて、異なる配置で位置合わせを行なうことができる。なお、下側の2つの液体吐出ヘッド302の相対的な位置合わせは、プリンタ1あるは他の液体吐出ヘッド302に対して位置合わせして取り付けることで行なえる。
【0072】
なお、図7(b)の状態を、位置決めを左下側の液体吐出ヘッド302と上側の液体吐
出ヘッド302の関係だけについて述べれば、第3の位置決め部338cと第2の位置決め部338bとで当接させ、2つの液体吐出ヘッド302の吐出孔面204−1における長辺が略平行となるように配置したときに、2つの液体吐出ヘッド302の吐出孔群236が、長手向において、端部で繋がるようになっている。
【0073】
図7(a)、(b)に示した2つの方法で位置合わせができるように、第1および第2の位置決め部338a、bの円弧状の面の中心、および第3の位置決め部338cを円弧状の面に当接させた場合の円弧上の面の中心が、長手方向において、吐出孔群236の端部に位置している。
【0074】
図8は、短手方向に並べられた2つの液体吐出ヘッド302とその間に挟まれている位置調整治具239とを含む液体吐出ヘッドブロック232の模式図である。位置調整治具239は、図の上側の液体吐出ヘッド202の第3の位置決め部238cおよびストッパ部238dと当接し、下側の液体吐出ヘッド202の第1および2の位置決め部238a、bと当接している。位置調整治具239を間に入れずに当接した場合と比較して、2つの液体吐出ヘッド202の吐出孔208の長手方向の位置がd/2ずれるようになっている。これにより図6(b)に示したような、吐出孔208の位置が揃うような位置合わせ部が設けられている液体吐出ヘッド202用いて、吐出孔208の位置が長手方向に所定距離ずれたるよう配置された液体吐出ヘッドブロック232が簡単にできる。
【0075】
置調整治具239は、液体吐出ヘッド202の、第1の位置決め部238a、第2の位置決め部238b、第3の位置決め部238c、およびストッパ部238dとそれぞれ略同じ形状の、第1の位置決め部239a、第2の位置決め部239b、第3の位置決め部239c、およびストッパ部239dを有することで、位置精度を高くできる。
【0076】
なお、本実施例では、加圧部として圧電変形を用いた変位素子30を示したが、これに限られるものでなく、加圧室10中の液体を加圧できるものなら他のものでよく、えば、加圧室10中の液体を加熱して沸騰させて圧力を生じさせるものや、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)を用いたものでも良い。
【符号の説明】
【0077】
1・・・プリンタ
2、202、302・・・液体吐出ヘッド
2a・・・ヘッド本体
4・・・流路部材
4a〜j・・・(流路部材の)プレート
4−1、204−1・・・吐出孔面
4−2・・・加圧室面
5・・・マニホールド
5a・・・(マニホールドの)開口
6・・・しぼり
8・・・吐出孔
9・・・吐出孔列
10・・・加圧室
11・・・加圧室列
12・・・個別流路
14・・・個別供給流路
21・・・圧電アクチュエータ基板
21a・・・圧電セラミック層(振動板)
21b・・・圧電セラミック層
24・・・共通電極
25・・・個別電極
25a・・・個別電極本体
25b・・・引出電極
26・・・接続電極
27・・・ダミー接続電極
28・・・共通電極用表面電極
30・・・変位素子(加圧部)
32、232・・・液体吐出ヘッドブロック
36、236・・・吐出孔群
238a、338a・・・第1の位置決め部
238b、338b・・・第2の位置決め部
238c、ss8c・・・第3の生き決め部
238d、338d・・・ストッパ部
239・・・位置調整治具
239a・・・(治具の)第1の位置決め部
239b・・・(治具の)第2の位置決め部
239c・・・(治具の)第3の位置決め部
238d・・・(治具の)ストッパ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方側に凸部を有する第1および第2の位置決め部を有し、前記一方と異なる側に凹部を有する第3の位置決め部とストッパ部とを有することを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項2】
前記第1および第2の位置決め部は、前記凸部が凸曲面であり、前記第3の位置決め部は、前記凹部が凹曲面であり、前記ストッパ部は曲面を有することを特徴とする請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項3】
複数の吐出孔が開口している吐出孔面を有するとともに、前記凸部が、前記吐出孔面に略直交するとともに、前記吐出孔面と平行な断面における外形の一部が円弧状である凸曲面であり、前記第3の位置決め部の凹部およびストッパ部は、前記吐出孔面に略直交する面を有するとともに、前記第1および第2の位置決め部の前記凸部と略同じ形状の面にそれぞれ当接させたときに、前記凹部は回転の中心を定める形状を有しており、前記ストッパ部は、前記回転の中心で回転する液体吐出ヘッドの角度を定める形状を有していることを特徴とする請求項1または2に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項4】
前記吐出孔面は一方方向に長い長方形状であり、前記第1および前記第2の位置決め部が前記長方形状の一方の長辺側に位置しており、前記第3の位置決め部およびストッパ部が前記長方形状の他方の長辺側に位置していることを特徴とする請求項1〜3に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項5】
前記複数の吐出孔は、前記一方方向に所定間隔を開けて開口している吐出孔群を構成しており、前記第1〜3の位置決め部および前記ストッパ部は、2つの前記液体吐出ヘッドを、それぞれ前記第1の位置決め部と前記第3の位置決め部とで当接させ、かつ前記第2の位置決め部と前記ストッパ部とで当接させたときに、2つの前記液体吐出ヘッドの吐出孔の前記一方方向における位置が、同じ位置になるか、前記所定間隔の1/n(nは2以上の整数)ずれた位置となるように配置されていることを特徴とする請求項4に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項6】
前記複数の吐出孔は、前記一方方向に所定間隔を開けて開口している吐出孔群を構成しており、前記第1〜3の位置決め部および前記ストッパ部は、2つの前記液体吐出ヘッドを、それぞれ前記第1の位置決め部と前記第3の位置決め部とで当接させ、かつ前記第2の位置決め部と前記ストッパ部とで当接させたときに、2つの前記液体吐出ヘッドの吐出孔の前記一方方向における位置が同じ位置になるように配置されており、さらに2つの前記液体吐出ヘッドを、前記第3の位置決め部と前記第2の位置決め部とで当接させ、2つの前記液体吐出ヘッドの前記吐出孔面における長辺が略平行となるように配置したときに、2つの前記液体吐出ヘッドの前記吐出孔群が、前記一方方向において、端部で繋がるように配置されていることを特徴とする請求項4に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項7】
請求項5または6に記載の液体吐出ヘッドを2つと、2つの前記液体吐出ヘッドの間に挟まれている位置調整治具とを有する液体吐出ヘッドブロックであって、前記位置調整治具は、2つの前記液体吐出ヘッドの吐出孔の位置が、前記位置調整治具を間に挟まない場合と比較して、前記一方方向に所定距離ずれた位置に配置されるように構成されていることを特徴とする液体吐出ヘッドブロック。
【請求項8】
前記位置調整治具が、前記第1の位置決め部、前記第2の位置決め部、前記第3の位置決め部、および前記ストッパ部とそれぞれ略同じ形状の、第1の位置決め部、第2の位置決め部、第3の位置決め部、およびストッパ部を有することを特徴とする請求項7に記載の液体吐出ヘッドブロック。
【請求項9】
請求項1〜6に記載の液体吐出ヘッドの複数個を前記第1〜3の位置決め部および前記ストッパ部を用いて並べた液体吐出ヘッドブロック、あるいは請求項7または8に記載の液体吐出ヘッドブロックと、記録媒体を前記液体吐出ヘッドブロックに対して搬送する搬送部と、前記液体吐出ヘッドを制御する制御部とを備えていることを特徴とする記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−10332(P2013−10332A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−146040(P2011−146040)
【出願日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】