液体吐出ヘッド用液体供給部材、液体吐出装置及び画像形成装置
【課題】ヘッドから逆流してくる気泡も含めて液体供給経路中の気泡を循環流によって液体を外部に捨てることなく排出し、更に循環圧によってメニスカスを破壊するなどの悪影響がないようにすることが困難である。
【解決手段】液体供給部材10は、内部に液体吐出ヘッド1のノズルの並び方向に沿って液体が循環する液体循環路11を有し、液体循環路11の長手方向の端部には、液体循環路に液体を供給する供給ポート12と液体循環路11から液体を排出する排出ポート13が設けられ、液体循環路11は主幹流路11aと液体吐出ヘッド共通液室7側には共通液室7に連通する連通口となる狭連通流路11bとで構成され、狭連通流路11bは主幹流路11aよりも幅が狭いとともに、供給ポート12側及び排出ポート13側の部分が中央部よりも深く形成されている。
【解決手段】液体供給部材10は、内部に液体吐出ヘッド1のノズルの並び方向に沿って液体が循環する液体循環路11を有し、液体循環路11の長手方向の端部には、液体循環路に液体を供給する供給ポート12と液体循環路11から液体を排出する排出ポート13が設けられ、液体循環路11は主幹流路11aと液体吐出ヘッド共通液室7側には共通液室7に連通する連通口となる狭連通流路11bとで構成され、狭連通流路11bは主幹流路11aよりも幅が狭いとともに、供給ポート12側及び排出ポート13側の部分が中央部よりも深く形成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液体吐出ヘッド用液体供給部材、液体吐出装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタ、ファクシミリ、複写装置、これらの複合機等の画像形成装置として、例えば、記録液(液体)の液滴を吐出する液体吐出ヘッド(液滴吐出ヘッド)で構成した記録ヘッドを含む液体吐出装置を用いて、媒体(以下「用紙」ともいうが材質を限定するものではなく、また、被記録媒体、記録媒体、転写材、記録紙なども同義で使用する。)を搬送しながら、液体(以下、インクともいう。)を用紙に付着させて画像形成(記録、印刷、印写、印字も同義語で用いる。)を行ものがある。
【0003】
なお、画像形成装置は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックス等の媒体に液体を吐出して画像形成を行う装置を意味し、また、「画像形成」とは、文字や図形等の意味を持つ画像を媒体に対して付与することだけでなく、パターン等の意味を持たない画像を媒体に付与することをも意味する。また、液体とは記録液、インクに限るものではなく、画像形成を行うことができる液体であれば特に限定されるものではない。また、液体吐出装置とは、液体吐出ヘッドから液体を吐出する装置を意味し、画像を形成するものに限らない。
【0004】
液体吐出ヘッドとしては、インクを充填した液室の壁の一部に振動板を設け、圧電アクチュエータ等により振動板を変位させ液室内の体積を変化させて圧力を高め液滴を吐出させる圧電型ヘッドや、液室内に通電によって発熱する発熱体を設けて、発熱体の発熱により生じる気泡によって液室内の圧力を高め、液滴を吐出させるサーマル型ヘッドが知られている。
【0005】
このような液体吐出方式の画像形成装置においては、高速化を図るために、ノズル数、ヘッド数の増加などが行われている。最近では、短尺ヘッドを複数個つなぎ合わせる等して長尺ヘッドを形成し、ヘッドを走査することなく画像を形成可能なライン型画像形成装置も採用されている。
【0006】
ところが、ヘッドが長尺化し、ノズル数が増加すると、吐出不良が発生する確率が増加することになり、この吐出不良の原因の1つにヘッドの液室内の気泡の侵入が挙げられる。つまり、液室内に気泡が入ると、インクが供給されなくて不吐出となったり、滴吐出圧力が吸収されて異常吐出となったりする。小さな気泡でも、例えばそれがノズルの近傍に付着していると、液滴が曲がって飛翔し、異常画像となる。
【0007】
ヘッド内に液室に気泡が入る形態は、様々である。ヘッドにインクを供給する流路から流れてくる場合もあるし、ノズルから吸い込む場合もある。また、発熱体を用いてインクの膜沸騰で液滴を吐出するヘッドでは、その吐出プロセスで微小な気泡が液室内に残ってしまうこともある。
【0008】
このように、液室内に気泡が入った場合には、画像形成とは無関係の吐出(空吐出や予備吐出と呼ばれることが多い。)を行ったり、ノズル面をキャッピングして負圧を形成して、吸引、あるいは、インク供給経路をポンプ等で加圧してインクと一緒に気泡を排出する方法が知られている。これらの方法で気泡を排出すると、排出インクをリサイクルする方法もあるものの、基本的には多量のインクが画像形成とは無関係に使われて無駄になることになる。なお、リサイクルものとしては特許文献1がある。
【特許文献1】特開2005−212350号公報
【0009】
液室内の気泡に関しては前述した方法で排出する以外に方法はないが、インク供給経路内の気泡に関しては、インク供給経路内でインクを循環させて気泡を排除する方法がある。この方法によれば、前述したようにヘッドが長尺化した場合でもインクを排出することなく、インク供給路内の気泡が液室内に侵入することを回避できる。しかしながら、インクの循環によってインク供給経路内の気泡を排出する方式においては、インクの循環圧によってヘッドのノズルに形成されたメニスカスが破壊して、インクがにじみ出たりノズルから気泡を吸い込んだりする問題がある。
【0010】
そこで、特許文献2に記載されているようにインク循環時にノズル面を密閉するインクジェット記録装置がある。これは、インクタンクから記録ヘッドの共通液室へインクを導くインク供給通路と、共通液室からインクタンクへインクを導くインク排出通路と、共通液室に連通する吐出口を密閉する吐出口密閉手段と、インクタンクから共通液室へインクを圧送するインクポンプとを備え、吐出口密閉手段で吐出口を密閉した状態でインクポンプを作動させてインクタンクからインク供給通路、共通液室およびインク排出通路を通してインクを循環させることにより、インク流路内の空気をインクとともにインクタンク内へ排出するようにしている。
【特許文献2】特許第2821920号公報
【0011】
また、特許文献3に記載されているようにインク供給路を複数の連通路を備えた隔壁でヘッドの個別液室に近い側と遠い側を分割し、遠い側にインク流入パイプとインク流出パイプを設けてインク循環圧がメニスカスに影響しないようにしたヘッドがある。これは、サーマル型ヘッドとインクタンクとの間に循環経路を有し、循環経路中にインク圧送手段を備え、インクを吐出する複数の吐出口にそれぞれ連通する複数の液路に連通する共通液室が、複数の液路に直接連通する第1の共通液室と、第1の共通液室に近接し、複数の液路の側とは反対側に配置され、第1の共通液室との間に複数の連通路を備え、かつ、循環経路の一部を構成しインクタンクからの流入口およびインクタンクへの流出口を備えた第2の共通液室とに分割したものである。
【特許文献3】特開平08−238772号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上述したように、液体の循環によって液体供給経路内の気泡を排出する方式においては、液体の循環圧によってヘッドのノズルに形成されたメニスカスが破壊して、液体がにじみ出たりノズルから気泡を吸い込んだりする問題があることから、特許文献2、3になどに記載されている対策が講じられている。
【0013】
しかしながら、特許文献2に記載のように液体循環時にノズル面を密閉する構成にあっては、ヘッドが長尺化した場合に完全に密閉することが困難であると共に、液体循環中に液体を吐出して画像を形成することもできなくなるという課題がある。
【0014】
また、特許文献3に記載のように液体供給路を複数の連通路を備えた隔壁でヘッドの個別液室に近い側と遠い側を分割し、遠い側に液体流入パイプと液体流出パイプを設けて液体循環圧がメニスカスに影響しないようにする構成にあっては、インク供給経路の気泡が個別液室に混入することを防止するには有効であるが、個別液室で発生した気泡やノズルから吸い込まれた気泡が浮力などにより上流側に流れた場合でも隔壁によって個別液室に近い側に滞留し循環流で外部に排出できないという課題がある。
【0015】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、ヘッドから逆流してくる気泡も含めて液体供給経路中の気泡を循環流によって液体を外部に捨てることなく排出し、更に循環圧によってメニスカスを破壊するなどの悪影響がない液体吐出ヘッド用液体供給部材及びこの液体供給部材を備える液体吐出装置、画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記の課題を解決するため、本発明に係る液体吐出ヘッド用液体供給部材は、液滴を吐出する複数のノズルが連通する複数の液室に液体を供給する共通液室を有する液体吐出ヘッドに接続され、この液体吐出ヘッドの共通液室に液体を供給する液体供給部材であって、この液体供給部材は、内部に液体吐出ヘッドのノズルの並び方向に沿って液体が循環する液体循環路を有し、液体循環路の長手方向の端部には、液体循環路に液体を供給する供給ポートと液体循環路から液体を排出する排出ポートが設けられ、液体循環路の共通液室側には、共通液室に連通する連通口が設けられ、連通口は、液体循環路よりも幅が狭いとともに、供給ポート側及び排出ポート側の少なくともいずれかの部分が他の部分よりも深い構成とした。
【0017】
本発明に係る液体吐出ヘッド用液体供給部材は、液滴を吐出する複数のノズルが連通する複数の液室に液体を供給する共通液室を有する液体吐出ヘッドに接続され、この液体吐出ヘッドの共通液室に液体を供給する液体供給部材であって、内部に液体吐出ヘッドのノズルの並び方向に沿って液体が循環する液体循環路を有し、液体循環路の長手方向の端部には、液体循環路に液体を供給する供給ポートと液体循環路から液体を排出する排出ポートが設けられ、液体循環路の共通液室側には、共通液室に連通する連通口が設けられ、この連通口の周囲にリブが配置されている構成とした。
【0018】
本発明に係る液体吐出ヘッド用液体供給部材は、液滴を吐出する複数のノズルが連通する複数の液室に液体を供給する共通液室を有する液体吐出ヘッドに接続され、この液体吐出ヘッドの共通液室に液体を供給する液体供給部材であって、この液体供給部材は、内部に液体吐出ヘッドのノズルの並び方向に沿って液体が循環する液体循環路を有し、液体循環路の長手方向の端部には、液体循環路に液体を供給する供給ポートと液体循環路から液体を排出する排出ポートが設けられ、液体循環路の共通液室側の内壁面にはリブが形成されている構成とした。
【0019】
ここで、リブは液体循環路の供給ポート側及び排出ポート側の部分が他の部分よりも相対的に高さが高い構成とすることが好ましい。
【0020】
本発明に係る液体吐出ヘッド用液体供給部材は、液滴を吐出する複数のノズルが連通する複数の液室に液体を供給する共通液室を有する液体吐出ヘッドに接続され、この液体吐出ヘッドの共通液室に液体を供給する液体供給部材であって、内部に液体吐出ヘッドのノズルの並び方向に沿って液体が循環する液体循環路を有し、液体循環路の長手方向の端部には、液体循環路に液体を供給する供給ポートと液体循環路から液体を排出する排出ポートが設けられ、供給ポートから排出ポートに向けて液体を流したときの流れに直交する液体循環路の流路断面は、略中央部が狭くくびれて、両側が大面積である形状であり、一方の大面積の部分が共通液室の開口に連通し、他方の大面積の部分側に供給ポートと排出ポートが設けられている構成とした。
【0021】
ここで、液体循環路の短手方向の壁面に形成されるリブによって、供給ポートから排出ポートに液体を流したときの流れに直交する液体循環路の流路断面は、略中央部が狭くくびれて、両側が大面積である形状となっていることが好ましい。
【0022】
これらの本発明に係る液体吐出ヘッド用液体供給部材においては、供給ポートから排出ポートに液体を流したときの流れに直交する方向の流路断面が、上方に凸な形状である構成とすることができる。また、共通液室の上部開口と液体循環路の天面との間に液体の流れを阻害する部分がない構成とすることができる。
【0023】
本発明に係る液体吐出ヘッド用液体供給部材は、液滴を吐出する複数のノズルが連通する複数の液室に液体を供給する共通液室を有する液体吐出ヘッドに接続され、この液体吐出ヘッドの共通液室に液体を供給する液体供給部材であって、この液体供給部材は、内部に液体吐出ヘッドのノズルの並び方向に沿って液体が循環する液体循環路を有し、この液体循環路に液体を供給する供給ポートと液体循環路から液体を排出する排出ポートが設けられ、供給ポートと排出ポートのいずれかは液体循環路の長手方向端部以外の部分に設けられ、この長手方向端部以外の部分に設けられたポートに対応して共通液室との間に流れを整える整流部材が設けられている構成とした。
【0024】
これらの本発明に係る液体吐出ヘッド用液体供給部材においては、連通口を形成する部分が高熱伝導率材料で形成されている構成とすることができる。また、リブを備える本発明に係る液体吐出ヘッド用液体供給部材においては、リブが高熱伝導率材料で形成されている構成とすることができる。
【0025】
本発明に係る液体吐出ヘッド用液体供給部材は、液滴を吐出する複数のノズルが連通する複数の液室に液体を供給する共通液室を有する液体吐出ヘッドに接続され、この液体吐出ヘッドの共通液室に液体を供給する液体供給部材であって、この液体供給部材は、内部に液体吐出ヘッドのノズルの並び方向に沿って液体が循環する液体循環路を有し、液体循環路の長手方向の端部には、液体循環路に液体を供給する供給ポートと液体循環路から液体を排出する排出ポートが設けられ、液体循環路の共通液室側には、共通液室に連通する連通口が設けられ、連通口は、液体循環路よりも幅が狭い構成とした。
【0026】
本発明に係る液体吐出装置は、液体吐出ヘッドに対して液体を供給する本発明に係る液体供給部材を備えている構成とした。
【0027】
本発明に係る画像形成装置は、液体吐出ヘッドに対して液体を供給する本発明に係る液体供給部材を備えている構成とした。
【発明の効果】
【0028】
本発明に係る液体吐出ヘッド用液体供給部材によれば、内部に液体吐出ヘッドのノズルの並び方向に沿って液体が循環する液体循環路を有し、液体循環路の長手方向の端部には、液体循環路に液体を供給する供給ポートと液体循環路から液体を排出する排出ポートが設けられ、液体循環路の共通液室側には、共通液室に連通する連通口が設けられ、連通口は、液体循環路よりも幅が狭いとともに、供給ポート側及び排出ポート側の少なくともいずれかの部分が他の部分よりも深い構成としたので、液体吐出ヘッドで発生した気泡や液体供給経路上流から液体吐出ヘッド内に流入した気泡を液体吐出ヘッドのメニスカスを破壊することなく循環流によって排出することができる。
【0029】
本発明に係る液体吐出ヘッド用液体供給部材によれば、内部に液体吐出ヘッドのノズルの並び方向に沿って液体が循環する液体循環路を有し、液体循環路の長手方向の端部には、液体循環路に液体を供給する供給ポートと液体循環路から液体を排出する排出ポートが設けられ、液体循環路の共通液室側には、共通液室に連通する連通口が設けられ、この連通口の周囲にリブが配置されている構成としたので、液体吐出ヘッドで発生した気泡や液体供給経路上流から液体吐出ヘッド内に流入した気泡を液体吐出ヘッドのメニスカスを破壊することなく循環流によって排出することができる。
【0030】
本発明に係る液体吐出ヘッド用液体供給部材によれば、内部に液体吐出ヘッドのノズルの並び方向に沿って液体が循環する液体循環路を有し、液体循環路の長手方向の端部には、液体循環路に液体を供給する供給ポートと液体循環路から液体を排出する排出ポートが設けられ、液体循環路の共通液室側の内壁面にはリブが形成されている構成としたので、液体吐出ヘッドで発生した気泡や液体供給経路上流から液体吐出ヘッド内に流入した気泡を液体吐出ヘッドのメニスカスを破壊することなく循環流によって排出することができる。
【0031】
本発明に係る液体吐出ヘッド用液体供給部材によれば、内部に液体吐出ヘッドのノズルの並び方向に沿って液体が循環する液体循環路を有し、液体循環路の長手方向の端部には、液体循環路に液体を供給する供給ポートと液体循環路から液体を排出する排出ポートが設けられ、供給ポートから排出ポートに向けて液体を流したときの流れに直交する液体循環路の流路断面は、略中央部が狭くくびれて、両側が大面積である形状であり、一方の大面積の部分が共通液室の開口に連通し、他方の大面積の部分側に供給ポートと排出ポートが設けられている構成としたので、液体吐出ヘッドで発生した気泡や液体供給経路上流から液体吐出ヘッド内に流入した気泡を液体吐出ヘッドのメニスカスを破壊することなく循環流によって排出することができる。
【0032】
本発明に係る液体吐出ヘッド用液体供給部材によれば、内部に液体吐出ヘッドのノズルの並び方向に沿って液体が循環する液体循環路を有し、この液体循環路に液体を供給する供給ポートと液体循環路から液体を排出する排出ポートが設けられ、供給ポートと排出ポートのいずれかは液体循環路の長手方向端部以外の部分に設けられ、この長手方向端部以外の部分に設けられたポートに対応して共通液室との間に流れを整える整流部材が設けられている構成としたので、液体吐出ヘッドで発生した気泡や液体供給経路上流から液体吐出ヘッド内に流入した気泡を液体吐出ヘッドのメニスカスを破壊することなく循環流によって排出することができる。
【0033】
本発明に係る液体吐出ヘッド用液体供給部材によれば、内部に液体吐出ヘッドのノズルの並び方向に沿って液体が循環する液体循環路を有し、液体循環路の長手方向の端部には、液体循環路に液体を供給する供給ポートと液体循環路から液体を排出する排出ポートが設けられ、液体循環路の共通液室側には、共通液室に連通する連通口が設けられ、連通口は、液体循環路よりも幅が狭い構成としたので、液体吐出ヘッドで発生した気泡や液体供給経路上流から液体吐出ヘッド内に流入した気泡を液体吐出ヘッドのメニスカスを破壊することなく循環流によって排出することができる。
【0034】
本発明に係る液体吐出装置は、液体吐出ヘッドに対して液体を供給する本発明に係る液体供給部材を備えている構成としたので、安定した滴吐出を行うことができる。
【0035】
本発明に係る画像形成装置は、液体吐出ヘッドに対して液体を供給する本発明に係る液体供給部材を備えている構成としたので、安定した滴吐出を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。本発明に係る液体吐出ヘッド用液体供給部材の第1実施形態について図1ないし図3を参照して説明する。なお、図1は本発明に係る液体供給部材を液体吐出ヘッドに接続して一体化されて構成されるヘッドユニットを示す斜視説明図、図2は同ヘッドユニットの長手方向断面図、図3は図2のA−A線に沿う同ヘッドユニットの短手方向断面図である。
【0037】
液体吐出ヘッド1は、サーマル型ヘッドであり、発熱体基板2と流路基板3から構成される。流路基板3には液滴を吐出する複数のノズル5、各ノズル5が連通する複数の個別液室6が設けられ、発熱体基板3には各個別液室6に対応してそれぞれ発熱体素子が設けられている。発熱体基板2には、図示しないFPCなどの通電手段が接続されており、この通電手段を介して発熱体素子4にパルス電圧などが入力されることで発熱体素子4が駆動され、個別液室6内の液体に膜沸騰を生ぜしめ、ノズル5から液体の滴(液滴)が吐出される。本実施形態においては、図1に示すように、ヘッド長手方向に複数のノズル5を並べたノズル列が2列形成されており、各ノズル5に対応した個別液室6には、図3に示すように発熱体基板2の中央に設けられた共通液室7から液体が供給される構造となっている。
【0038】
そして、この液体吐出ヘッド1の発熱体基板2の共通液室7を形成する開口に対応して、図2及び図3に示すように、共通液室7に液体を供給する本発明に係る液体供給部材10の液体循環路11が接続されている。
【0039】
この液体供給部材10は内部に循環する液体が流れる液体循環路11を有する。この液体循環路11は、液体吐出ヘッド1に接続される側が開口断面積が相対的に小さい(狭断面の)狭連通流路11bで液体供給部材10から液体吐出ヘッド1の共通液室7に連通する液体の連通口を兼ねており、ヘッド1に遠い側が広い開口断面積を有する主幹流路11aとなっている。そして、液体供給部材10の長手方向(液体吐出ヘッド1のノズルの並び方向に沿う方向)の両端部には主幹流路11aに連通して液体を供給する供給ポート12と液体を排出する排出ポート13が形成されている。なお、開口断面積とは、図3で示す断面説明図のように、液体供給部材10の長手方向(液体吐出ヘッド1のノズルの並び方向、循環流生成方向)と直交する方向(液体供給部材10の短手方向)での断面における面積をいう。
【0040】
なお、後述するが、この液体供給部材10は図示しない液体供給経路内に配置され、供給ポート12から液体循環路11を通じて排出ポート13に向けて液体を流して液体を循環させるようにしている。なお、図2などで供給ポート12に向かう矢印、排出ポート13から外側に向かう方向の矢印は、それぞれ液体の流入方向及び排出方向を示している(以下でも同様である。)。
【0041】
このように構成した液体供給部材10の作用について図4及び図5の他、図6及び図7に示す比較例1、図8及び図9に示す比較例2との対比において説明する。
液体吐出ヘッド1は液体供給部材10の供給ポート12から供給される液体を吐出するが、経時的に供給ポート12に接続した図示しない液体供給経路から気泡50が混入し、図4及び図5に示すように、液体循環路11上部(天面11d)に滞留、蓄積する場合がある。気泡50が少量のうちは特に問題は生じないが、気泡50の量が多くなると、液体と一緒に液体吐出ヘッド1の個別液室6に混入し、吐出不良を起こすなどの不具合が生ずる。
【0042】
そこで、この液体供給部材10では、供給ポート12から排出ポート13に液体を流し、図示しない液体供給経路内で液体を循環させることで、気泡50はこの液体の循環流に乗って液体循環路11内から排出ポート13を通って外部に排出される。このとき、この液体供給部材10の液体循環路11は、循環流に直交する断面の断面積が相対的に広い形状の主幹流路11aに供給ポート12と排出ポート13を接続して循環流を生成するようにしており、更に液体吐出ヘッド1との間に循環流生成方向に直交する方向の開口断面積が相対的に狭い狭連通流路11bを設けているので、循環流が液体吐出ヘッド1に不具合をもたらすことがなくなる。
【0043】
例えば、図6及び図7に示す比較例1の構成では、液体供給部材10の液体循環路11が均一断面で液体吐出ヘッド1に近接して設けられ、供給ポート12と排出ポート13の間に循環流を生成した場合、矢印60に示す流速の大きな流れに乗って気泡50が排出ポート13から効率よく排出される。しかしながら、その一方で流速の大きい循環流が液体吐出ヘッド1の共通液室7のすぐ近くで生成されるため、液体吐出ヘッド1のノズル5のメニスカスが破壊されて、ノズル5から液体が溢れ出たり、逆にノズル5から気泡を吸い込んだりする不具合が生ずる。
【0044】
また、図8及び図9に示す比較例2の構成では、循環流を液体吐出ヘッド1から離れた位置に生成するようにしている。つまり、この比較例2では、液体循環路11の上方に供給ポート12と排出ポート13が形成されているため、液体循環路11内の上部に矢印61に示す比較的流速の大きな流れができ、液体循環路11内の下部は矢印62に示す比較的流速の小さな流れとなる。したがって、図8の液体吐出ヘッド1から供給ポート12と排出ポート13を結ぶ線までの高さhを大きくして循環流の位置を液体吐出ヘッド1から離せば、前述した比較例1の構成でのメニスカス破壊の問題は回避できる。
【0045】
しかしながら、この比較例2に示す構成では、液体循環路11の断面積が大きくなるため循環流の流速が減少し、その結果、気泡の排出性が損なわれる不具合が生じる。また、気泡排出性を上げるために、循環流の流量を増大させると、液体吐出ヘッド1のメニスカスへの影響が生じる結果となり、良好な条件を得にくくなる。
【0046】
これに対して、本実施形態に係る液体供給部材10は、図4及び図5に示すように、液体循環路11が、ヘッド1に接続する側が狭断面の狭連通流路11bで、ヘッド1に遠い側が広い断面を有する主幹流路11aとなっている。これにより、狭連通流路11bでは流路を形成する壁面が近接していて低い(小さい)流速でしか液体が流れず(流れの大きさ、速さを矢印SBで示している。)、循環流は実質的に主幹流路11aに形成される((流れの大きさ、速さを矢印MBで示している。)。したがって、循環流によって液体吐出ヘッド1のノズル5のメニスカスが破壊されることがなく、流速の速い(大きい)循環流を生成して、効率よく液体循環路11内の気泡50を排出できる。
【0047】
また、本実施形態の液体供給部材10は、図2及び図3に示すように、液体吐出ヘッド1の共通流路7の開口領域全面に液体供給部材10の連通口となる狭連通流路11bが開口しており、共通流路7と液体循環路11の天面11dの間に隔壁等の液体の流れを阻害する部材を設けないため、液体吐出ヘッド1の個別液室6の内部で発生した気泡やノズル5から吸い込んだ気泡が共通液室7に移動した場合に、浮力によって液体循環路11の天面11dに浮上することができ、循環流で排出することができる。
【0048】
ここで、液体供給部材10の液体循環路11の液体の流れ方向と直交する方向の断面の形状は、図3に示すように、平行平面で形成されるものに限られるものではない。例えば図10(a)に示すように、主幹流路11aに対して狭連通流路11bが短手方向に偏って配置されている非平行面形状であってもよい。また、図10(b)に示すように、主幹流路11aと狭連通流路11bが傾斜面11gで連続的につながっている形状でもよい。また、図10(c)に示すように、液体吐出ヘッド1との接合部の上方が直接主幹流路11aの天面に面していなくても、狭連通流路11bの傾斜面11b1を伝って気泡が上昇できる形状であればよい。また、図示しないが、各辺や角部を曲面とすることもできる。また、本実施形態では、供給ポート12と排出ポート13の内径を同じにしているが、必ずしも同じにする必要はなく、内径が異なる形状とすることもできる。
【0049】
このように、内部に液体吐出ヘッドのノズルの並び方向に沿って液体が循環する液体循環路を有し、液体循環路の長手方向の端部には、液体循環路に液体を供給する供給ポートと液体循環路から液体を排出する排出ポートが設けられ、液体循環路の共通液室側には、共通液室に連通する連通口が設けられ、連通口は、液体循環路よりも幅が狭い構成としたので、液体吐出ヘッドで発生した気泡や液体供給経路上流から液体吐出ヘッド内に流入した気泡を液体吐出ヘッドのメニスカスを破壊することなく循環流によって排出することができる。
【0050】
次に、本発明に係る液体供給部材の第2実施形態について図11ないし図13を参照して説明する。なお、図11は同実施形態に係るヘッドユニットの長手方向断面図、図12は図11のE−E線に沿う同ヘッドユニットの短手方向断面図、図13は図11のF−F線に沿う同ヘッドユニットの短手方向断面図である。
このヘッドユニットにおける液体供給部材10は、供給ポート12と排出ポート13のある両端部と中央部で狭連通流路11bの深さを変えたものである。
【0051】
つまり、供給ポート12から距離(長さ)Lsの領域(供給側領域)及び排出ポート13から距離Lsの領域(排出側領域)を両端部とし、これらの供給側領域及び排出側領域を除く領域を中央部とし、狭連通流路11bの深さHbは、両端部側を深く(例えば図13の断面位置では深さHb=Hb2)、中央部を浅く(図12の深さHb=Hb1)形成し、最も浅い中央部と最も深い両端部との間に深さYbの差を設けている。また、狭連通流路11bの深さHbは、中央部から供給ポート12、排出ポート13側に向かって傾斜面11hを形成することで漸次深くなるように形成している。
【0052】
このように構成することで、液体吐出ヘッド1の両端部のメニスカス破壊を確実に回避することができる。つまり、供給ポート12と排出ポート13は液体循環路11に比べて開口断面積が小さい開口であるため液体の流速が液体循環路11の部分よりも大きくなる。したがって、液体の循環によるメニスカスへの影響は、ポート12、13から遠い中央部よりもポート12、13に近い両端部の方が大きくなる。そこで、供給ポート12と排出ポート13が設けられる両端部の連通流路11bの深さを中央部より深くすることによって、液体吐出ヘッド1の両端部のメニスカス破壊をより確実に防止できる。
【0053】
また、供給ポート12、排出ポート13と主幹流路11aの接続部近傍における断面変化が滑らかになるように構成する、つまり、上述したように狭連通流路11bの深さは中央部から供給ポート12、排出ポート13側に向かって漸次深くなるように構成することで、主幹流路11a内の液体の流れも安定する。
【0054】
このように、内部に液体吐出ヘッドのノズルの並び方向に沿って液体が循環する液体循環路を有し、液体循環路の長手方向の端部には、液体循環路に液体を供給する供給ポートと液体循環路から液体を排出する排出ポートが設けられ、液体循環路の共通液室側には、共通液室に連通する連通口が設けられ、連通口は、液体循環路よりも幅が狭いとともに、供給ポート側及び排出ポート側の少なくともいずれかの部分が他の部分よりも深い構成であるので、液体吐出ヘッドで発生した気泡や液体供給経路上流から液体吐出ヘッド内に流入した気泡を、液体吐出ヘッドのメニスカスが破壊されることがより確実に回避されて、循環流によって排出することができる。
【0055】
次に、本発明に係る液体供給部材の第3実施形態について図14ないし図16を参照して説明する。なお、図14は同実施形態に係るヘッドユニットの長手方向断面図、図15は図14のG−G線に沿う同ヘッドユニットの平断面図、図16は図15のH−H線に沿う同ヘッドユニットの短手方向断面図である。
このヘッドユニットにおける液体供給部材10は、液体循環路11の共通液室側には液体吐出ヘッド1の共通液室7に連通する連通口17が設けられて液体吐出ヘッド1の共通液室7に連通しており、この連通口17の周囲に複数のリブ16が主幹流路11aに向かって立ち上がって設けられている。
【0056】
このように、リブ16が設けられることにより、液体循環路11の共通流路7側において循環する液体と壁面との接触面積が増大するので、液体供給部材10内部の液体を循環した場合に、循環流が液体循環路11内の共通流路側で緩やかになり、循環流によるメニスカスへの悪影響を低減することができる。
【0057】
このように、内部に液体吐出ヘッドのノズルの並び方向に沿って液体が循環する液体循環路を有し、液体循環路の長手方向の端部には、液体循環路に液体を供給する供給ポートと液体循環路から液体を排出する排出ポートが設けられ、液体循環路の共通液室側には、共通液室に連通する連通口が設けられ、この連通口の周囲にリブが配置されている構成とすることで、液体吐出ヘッドで発生した気泡や液体供給経路上流から液体吐出ヘッド内に流入した気泡を液体吐出ヘッドのメニスカスを破壊することなく循環流によって排出することができる。
【0058】
次に、本発明に係る液体供給部材の第4実施形態について図17ないし図19を参照して説明する。なお、図17は同実施形態に係るヘッドユニットの長手方向断面図、図18は図17のI−I線に沿う同ヘッドユニットの平断面図、図19は図17のJ−J線に沿う同ヘッドユニットの短手方向断面図である。
このヘッドユニットの液体供給部材10は、液体循環路11の液体吐出ヘッド1の共通液室7側の内壁面には複数のリブ16が形成され、供給ポート12と排出ポート13が設けられる両端部側と中央部で各リブ16の高さを変えたものである。
【0059】
つまり、前記第2実施形態と同様に、供給ポート12から長さLsの領域(供給側領域)及び排出ポート13から長さLsの領域(排出側領域)を両端部とし、これらの供給側領域及び排出側領域を除く領域を中央部とし、リブ16の高さHbは、両端部側を深く、中央部を浅く形成し、最も浅い中央部と最も深い両端部との深さの差はYbとしている。また、リブ16a、16bには供給ポート12、排出ポート13側に傾斜面16hを設けて、リブ16a、16bの高さは中央部から供給ポート12、排出ポート13側に向かって漸次高くなるように形成している。
【0060】
このように構成することで、液体吐出ヘッド1の両端部のメニスカス破壊を確実に回避することができる。つまり、供給ポート12と排出ポート13は液体循環路11に比べて開口断面積が小さい開口であるため液体の流速が液体循環路11の部分よりも大きくなる。したがって、液体の循環によるメニスカスへの影響は、ポート12、13から遠い中央部よりもポート12、13に近い両端部の方が大きくなる。そこで、第3実施形態と同様に共通液室7側での流れを抑えつつ、供給ポート12と排出ポート13が設けられる両端部のリブ16の高さを中央部より高くすることによって、液体吐出ヘッド1の両端部のメニスカス破壊をより確実に回避することができる。また、両端部領域におけるリブ16の高さを漸次変化させることで、領域供給ポート12、排出ポート13と液体循環路11の接続部近傍における断面変化が滑らかになるので流れも安定する。
【0061】
このように、内部に液体吐出ヘッドのノズルの並び方向に沿って液体が循環する液体循環路を有し、液体循環路の長手方向の端部には、液体循環路に液体を供給する供給ポートと液体循環路から液体を排出する排出ポートが設けられ、液体循環路の共通液室側の内壁面にはリブが形成されている構成とすることで、液体吐出ヘッドで発生した気泡や液体供給経路上流から液体吐出ヘッド内に流入した気泡を液体吐出ヘッドのメニスカスを破壊することなく循環流によって排出することができる
【0062】
次に、本発明に係る液体供給部材の第5実施形態について図20ないし図22を参照して説明する。なお、図20は同実施形態に係るヘッドユニットの平断面図、図21は図20のK−K線に沿う同ヘッドユニットの短手方向断面図、図22は図21と異なる他の例の図20のK−K線に沿う同ヘッドユニットの短手方向断面図である。
このヘッドユニットの液室供給部材10は、上記第3、第4実施形態ではリブ16を主に液体循環路11の長手方向(循環流生成方向)に平行に形成したのに対して、液体循環路11の長手方向(循環流生成方向)と直交する方向に形成したものである。
【0063】
この構成では、液体循環路11の共通流路7側において循環する液体と壁面との接触面積が増大するのに加えて、リブ16が形成されている領域では循環流の形成方向に液体循環路11の開口断面積が変化することによる流れの損失増大の効果もあるので、液体供給部材10内部の液体を循環した場合に、循環流が液体循環路11内の共通流路7側で緩やかになり、循環流によるメニスカスへの悪影響を低減することができる。
【0064】
この場合、図22に示す他の例のように、供給ポート12と排出ポート13の近く(両端部側)のリブ16の高さを中央部のリブ16の高さよりも高くすることで、前記第4実施形態と同様の理由で、液体吐出ヘッド1の両端部のメニスカス破壊をより確実に回避することができるとともに、領域供給ポート12、排出ポート13と液体循環路11の接続部近傍における断面変化が滑らかになるので流れも安定する。
【0065】
次に、本発明に係る液体供給部材の第6実施形態について図23を参照して説明する。なお、図23は同実施形態に係るヘッドユニットの短手方向断面図である。
このヘッドユニットの液体供給部材10は、液体循環路11の循環流生成方向に直交する断面での形状を、鉛直上方向に頂点を有する三角形形状に形成している。このように天面11d側を上に凸な形状にして狭めることにより、液体循環路内の気泡を一箇所に集められるので、循環流によって排出しやすくなると共に、細かい気泡が天面部で合体して大きな気泡になり排出しやすくなる。
【0066】
次に、本発明に係る液体供給部材の第7実施形態について図24及び図25を参照して説明する。なお、図24は同実施形態に係るヘッドユニットの長手方向断面図、図25は図24のL−L線に沿う同ヘッドユニットの短手方向断面図である。
このヘッドユニットの液体供給部材10は、前記第2実施形態の液体供給部材10において、供給ポート12、排出ポート13を長手方向両端部で液体循環路11の上面11a(天面)側に設けている。
【0067】
つまり、前記第2実施形態では供給ポート12、排出ポート13は液体循環路11の天面11aから高さ方向に高さYhだけ下がった位置に設けているのに対し、ここでは供給ポート12、排出ポート13は液体循環路11の天面11dから高さ方向に高さYh1(Yh1<Yh)だけ下がった位置に設けている。
【0068】
これにより、気泡50は浮力で液体循環路11の上面部に浮遊した状態で滞留するので、循環流は液体循環路11の天面部に近い位置で流速が大きくなるように生成することで気泡50を排出しやすい。そのため、供給ポート12と排出ポート13を液体循環路11の天面部に近い位置に形成することで、天面部付近の流速が大きく(速く)なるようにしている。
【0069】
また、前記第1ないし第7実施形態で説明した液体供給部材10のように、供給ポート12と排出ポート13の向きも液体循環路11の長手方向の向き、即ち循環流生成方向の向きに沿って設けることで、循環流の流れが循環の一方向のみになりやすいので、気泡排出効率を高めることができる。
【0070】
つまり、図26及び図27に示す比較例3のように、供給ポート12と排出ポート13を、液体供給部材10の液体吐出ヘッド1と接続する面と反対側の面(天面11d)側に設けて(液体循環路11に開口させて)も、循環流は生成されるが、循環流は矢印65〜67のような流れとなり、液体吐出ヘッド1方向の流速成分が大きくなるので、好ましくない。
【0071】
次に、本発明に係る液体供給部材の第8実施形態について図28を参照して説明する。なお、図28は同実施形態に係るヘッドユニットの長手方向断面図である。
このヘッドユニットの液体供給部材10は、供給ポート12を液体供給部材10の液体吐出ヘッド1と接続する面と反対側の面(天面11d側の部分:天面部という。)の長手方向中央部に設け、長手方向両端部に排出ポート13、13を設ける構成としている(あるいは、逆に、供給ポート12を両端部、排出ポート13を中央部天面側に設ける構成とすることもできる。)。なお、その他の構成は前記第2実施形態と同様である。
【0072】
そして、液体循環路11内には、供給ポート12と液体吐出ヘッド1の共通液室7との間に、供給ポート12から供給される液体の流れを排出ポート13、13に向かう方向に整える整流部材18を配置している。この整流部材18の共通液室7に対向する面を傾斜面19とし、共通液室7から浮上した気泡が整流部材18にトラップされにくくしている。
【0073】
このように構成することで、供給ポート12(又は排出ポート13)を液体供給部材10の長手方向中央部の天面部に設けた場合に、循環流が液体吐出ヘッド1のメニスカスに悪影響しないようにすることができる。
【0074】
つまり、図29に示す比較例4のように、整流部材18を設けない構成にあっては、供給ポート12と排出ポート13の間の距離が短いため気泡が排出しやすい面も多少あるが、液体吐出ヘッド1方向の流速成分が大きく、メニスカスに悪影響をしやすい不具合があると共に、1つの管路内で長手方向に正反対の2方向の流れが形成されるため、その境界部に流れのよどみができたり渦流が発生したりするので、一方向流れと比較すると気泡排出性が相対的に悪くなる。
【0075】
そこで、循環流の流れに沿う方向でない向きに供給ポート12又は排出ポート13を設ける場合には、ポートの液体流出入口と液体吐出ヘッド1の共通液室7の間に整流部材18を形成して流れを整えることによって循環流が液体吐出ヘッド1のメニスカスに悪影響しないようにすることができる。
【0076】
このように、内部に液体吐出ヘッドのノズルの並び方向に沿って液体が循環する液体循環路を有し、この液体循環路に液体を供給する供給ポートと液体循環路から液体を排出する排出ポートが設けられ、供給ポートと排出ポートのいずれかは液体循環路の長手方向端部以外の部分に設けられ、この長手方向端部以外の部分に設けられたポートに対応して共通液室との間に流れを整える整流部材が設けられている構成とすることで、液体吐出ヘッドで発生した気泡や液体供給経路上流から液体吐出ヘッド内に流入した気泡を液体吐出ヘッドのメニスカスを破壊することなく循環流によって排出することができる。また、液体供給部材の長手方向端部以外に供給ポートや排出ポートが設けられた場合にも、液体の循環によって発生するヘッドに悪影響を及ぼす流れの方向を整流部材によって変えることができるので、液体供給部材に多数のポートを設けて気泡排出の効率を向上することができる。
【0077】
なお、液体供給部材10の液体循環路11の内部に、図30に示す比較例5のようにフィルタ14を設けることは好ましくない。つまり、フィルタ14を設ける構成にすると、循環流の流れが液体吐出ヘッド側に影響しにくくなると共に、主幹流路11a内の気泡50が液体吐出ヘッド1に入りにくくなり有効である。しかし、逆に、ノズル5から混入したり、個別液室6の内部で発生した気泡51が、共通液室7の方に移動し、液体循環路11に向かうときにフィルタ14下部にトラップされてしまう。この気泡51は、循環流では排出できず、ノズル5から液体と一緒に排出するしかない。したがって、液体吐出ヘッド1や液体循環路11の内部にはフィルタを設けない方が好ましい。
【0078】
次に、本発明に係る液体供給部材の第9実施形態について図31及び図32を参照して説明する。なお、図31は同実施形態に係るヘッドユニットの長手方向断面図、図32は図31のN−N線に沿う同ヘッドユニットの短手方向断面図である。
前述した各実施形態においては、第2実施形態のように液体吐出ヘッド1の共通液室7に液体循環路11の狭連通流路11bが直接接続される構造や、第3実施形態のように液体循環路11の共通液室7側にリブ16を形成する構造を有する液体供給部材10について説明してきた。
【0079】
これに対して、この第9実施形態のヘッドユニットの液体供給部材10は、液体循環路11の狭連通流路11bと液体吐出ヘッド1の間に液体バッファ流路11cを設けている。つまり、供給ポート12から排出ポート13に向けて液体を流したときの流れに直交する液体循環路11の流路断面は、略中央部が狭くくびれて(狭連通流路11bの部分)、両側(主幹流路11a、液体バッファ流路11cの部分)が大面積である形状であり、一方の大面積の部分である液体バッファ流路11cが連通口17を介して共通液室7に連通し、他方の大面積の部分である主幹流路11a側に供給ポート12と排出ポート13が設けられている構成となっている。
【0080】
このような構成でも、メニスカスを破壊せずにヘッド1内及び液体循環路11内の気泡を循環流を用いて排出することができる。さらに、液体バッファ流路11cを設けることで、液滴を吐出する時の圧力波を液体バッファ流路11cで吸収しやすくなるので、液滴の吐出安定性が向上する。
【0081】
さらに、ここでは、液体循環路11を構成する主幹流路11aの天面11dを長手方向と直交する方向での断面形状で上に凸な曲面形状としている。また、主幹流路11aと供給ポート12及び排出ポート13との接続部を傾斜面11e、11fにより滑らかにつながる構成にしている。このようにすることで、主幹流路11a内での渦流の発生や流れの剥離等がなくなり気泡を効率よく排出できる。
【0082】
このように、内部に液体吐出ヘッドのノズルの並び方向に沿って液体が循環する液体循環路を有し、液体循環路の長手方向の端部には、液体循環路に液体を供給する供給ポートと液体循環路から液体を排出する排出ポートが設けられ、供給ポートから排出ポートに向けて液体を流したときの流れに直交する液体循環路の流路断面は、略中央部が狭くくびれて、両側が大面積である形状であり、一方の大面積の部分が共通液室の開口に連通し、他方の大面積の部分側に供給ポートと排出ポートが設けられている構成とすることで、液体吐出ヘッドで発生した気泡や液体供給経路上流から液体吐出ヘッド内に流入した気泡を液体吐出ヘッドのメニスカスを破壊することなく循環流によって排出することができる。
【0083】
また、供給ポートと排出ポートが設けられて循環流が生成される領域を通常の液体供給流量が確保できる範囲で狭くして循環流の流速を大きくできるので、更に気泡排出性が向上すると共に、ヘッドに近い領域を広い空間にして液体吐出ヘッドの吐出圧の伝播による不具合を解消するバッファ空間とすることで、更に吐出安定性が向上する。
【0084】
次に、本発明に係る液体供給部材の第10実施形態について図33及び図34を参照して説明する。なお、図33は同実施形態に係るヘッドユニットの長手方向断面図、図34は図33のO−O線に沿う同ヘッドユニットの短手方向断面図である。
ここでは、上記第3実施形態と第9実施形態を適用して、液体循環路11の中間部にリブ16を設けて液体バッファ流路11cを共通液室7の上部に設けている。
【0085】
このような構成でも、メニスカス破壊せずにヘッド内及び液体循環路11内の気泡を循環流を用いて排出することができる。さらに、液体バッファ流路11cを設けることで、液滴を吐出する際の圧力波を液体バッファ流路11cで吸収しやすくなるので、液滴の吐出安定性が向上する。
【0086】
次に、本発明に係る液体供給部材の第11実施形態について図35を参照して説明する。なお、図35は同実施形態に係るヘッドユニットの短手方向断面図である。
このヘッドユニットの液体供給部材10は、主幹流路11aを形成する主幹流路形成部10aと、狭連通流路11bを形成する狭連通流路形成部10bとが材質の異なる部材(部品)で構成し、狭連通流路形成部10bは主幹流路形成部10aよりも熱伝導率が大きい材料で形成している。ここで、熱伝導率が大きい材料としては、金属のほか、シリカ、アルミナ、窒化ホウ素、マグネシア、窒化アルミニウム、窒化ケイ素等の熱伝導性フィラが充填された樹脂も好適である。
【0087】
つまり、液体吐出ヘッド1は、その吐出周波数が高くなると自身の発熱により温度上昇する。特に、発熱体を駆動し膜沸騰で液滴を吐出する方式のサーマル型液体吐出ヘッド1においては温度上昇が著しい。液体吐出ヘッド1の温度上昇は、内部の液体の温度上昇を引き起こし、吐出される液体の温度が変わると、液滴の吐出体積や吐出速度が変わることになる。
【0088】
そこで、この実施形態のように、液体吐出ヘッド1に供給される液体が通過する最も狭い部分である液体供給部材10の狭連通流路形成部10bを金属等の熱伝導率の大きな材質で形成すると、液体吐出ヘッド1が発生する熱を効果的に奪って温度上昇を防止することができ、液体吐出ヘッド1に供給される液体の温度を安定化しやすく、安定した滴吐出特性を実現しやすくなる。
【0089】
次に、本発明に係る液体供給部材の第12実施形態について図36及び図37を参照して説明する。なお、図36は同実施形態に係るヘッドユニットの短手方向断面図、図37は図36のP−P線に沿う断面説明図である。
このヘッドユニットの液体供給部材10も、第11実施形態と同様に、主幹流路11aを形成する主幹流路形成部10aと、狭連通流路11bを形成する狭連通流路形成部10bとが材質の異なる部材(部品)で構成し、更に、狭連通流路形成部10bの放熱効果を更に高めるために、液体循環路11の内側及び外側に各々内部フィン15aと外部フィン15bを設けている。
【0090】
このように構成することで、液体循環路内の液体や外気との接触面積が拡大され、温度の安定化がさらに容易になる。
【0091】
また、内部フィン15aは、前記第5実施形態で説明したリブ16と同様に、循環流のヘッド1への影響を低減する作用も有する。したがって、内部フィン15aの向きとしては、少なくとも狭連通流路11bについては、図36に示すように、内部フィン15aの長手方向が主幹流路11aから液体吐出ヘッド1に向かう方向、即ち、循環流に対してフィンが直交するようにすることが好ましい。このような向きにすることにより、共通液室7からの気泡の浮上を妨げずに、狭連通流路11b内の循環流をさらに抑制することができる。
【0092】
次に、本発明に係る液体吐出装置を含む画像形成装置に適用について説明する。なお、ここでは、液体としてインクを吐出し、ファクシミリ装置、複写装置、これらの複合機などにも適用可能なインクジェットプリンタに適用した例を説明するが、本発明に係る液体吐出装置は、インク以外の液体、例えばDNA試料やレジスト、パターン材料などを吐出する液体吐出ヘッドや液体吐出装置、或いはこれらを備える画像形成装置にも適用することができる。
【0093】
まず、本発明に係る画像形成装置の第1実施形態について図38ないし図40を参照して説明する。なお、図38は同画像形成装置の構成図、図39は同装置の維持回復時の状態を示す説明図、図40は液体供給経路の説明に供する模式的説明図である。
この画像形成装置は、搬送される最大の紙幅に対応した長さを有する長尺形状の液体吐出ヘッドからなる記録ヘッド1(1K、1C、1M、1Y)が異なる4色(ブラック、シアン、マゼンタ、イエローの各色)のインクごとに4つ設けられたラインプリンタである。4つの記録ヘッド1は、ヘッドフレーム36に固定されており、図示しないヘッド昇降機構により4つのヘッド1が同時に上下に移動可能な構成となっている。
【0094】
記録ヘッド1のすぐ下方にはインクにより画像が記録される記録紙が搬送される。記録紙は、給紙トレイ38に積載保持されており、図示しない分離給紙機構により1枚ずつ送り出され、紙搬送ベルト30によって搬送され、記録完了後、排紙トレイ39に排紙される。
【0095】
紙搬送ベルト30は、ベルト搬送ローラ31とテンションローラ32によって張架されており、表層は樹脂材で構成された高抵抗層、裏層は樹脂材料にカーボンによる抵抗制御を行った中抵抗層の2層構造である。この紙搬送ベルト30には、金属ローラの外層に中抵抗層が形成され最外層に薄い高抵抗層が形成された帯電ローラ33が接触されている。
【0096】
そこで、帯電ローラ33に高電圧を印加することにより、紙搬送ベルト30と帯電ローラ33のニップ部近傍のエアーギャップで放電が生じ、紙搬送ベルト30上に電荷が付着する。帯電ローラ33に印加する電圧を正負の交流電圧とすると、紙搬送ベルト30上には正負の電荷が交互にストライプ状に付着する。このように帯電した紙搬送ベルト30に記録紙を供給すると、静電力によって記録紙が紙搬送ベルト30に吸着する。記録紙が強固に紙搬送ベルト30に保持された状態で印字を行うことができるため、高速に用紙を搬送しながら印字を行う場合でも、安定した印字品質を得ることができる。
【0097】
記録ヘッド1は、前述した第2実施形態で示すような発熱体4の駆動によるインクの膜沸騰により吐出圧を得るサーマル方式のものとし、液室6内の吐出エネルギー作用部(発熱体部)へのインクの流れ方向とノズル5の開口中心軸とを直角となしたサイドシューター方式の構成としている。
【0098】
このような構成とすることによって、発熱体4からのエネルギーをより効率良くインク滴の形成とその飛行の運動エネルギーへと変換でき、またインクの供給によるメニスカスの復帰も速いという構造上の利点を有する。また、エッジシューター方式において問題となる気泡が消滅する際の衝撃により発熱体4を徐々に破壊する、いわゆるキャビテーション現象をサイドシューターであれば回避することができる。つまり、サイドシューターにおいて気泡が成長し、その気泡がノズル5に達すれば気泡が大気に通じることになり温度低下による気泡の収縮が起こらない。そのため、記録ヘッドの寿命が長いという長所を有する。
【0099】
この記録ヘッド1は、例えば次のようにして製作することができる。まず、発熱体基板2は、熱酸化によって形成されたSiO2膜を有するシリコンウエハ上に発熱抵抗体層としてHfB2をRFマグネトロンスパッタで積層し、更に電極層としてAlをEB蒸着法で積層する。次に、フォトリソ技術によりAl層をリン酸硝酸系エッチング液でエッチングした。次に、RIEを用いて、発熱抵抗体層をエッチングする。発熱体4を露出するために、露出部分に相当する部分を除いた部分にレジスト膜を形成し、エッチング液で処理してレジストの設けられていない部分にあるAlをエッチングして、一対の電極間に発熱体4を設ける。最後に、電気熱変換体上に保護層としてのSiO2層を、更に発熱体配列部以外の部分にポリイミド層を設けて発熱体基板2を形成する。
【0100】
次いで、この発熱体基板2上に、溶解可能な樹脂層としてポリメチルイソプロペニルケトン(東京応化工業(株)社製ODUR−1010)をPET上に塗布、乾燥しドライフィルムとしたものをラミネートにより転写する。プリベーク後、個別液室6に対応するパターン露光を行い、メチルイソブチルケトン/キシレン=2/1を用いて現像する。次に、エポキシ樹脂、光カチオン重合開始剤、シランカップリング剤からなる樹脂組成物をメチルイソブチルケトン/キシレン混合溶媒に50wt%の濃度で溶解し、スピンコートにて感光性被覆樹脂層を形成する。その後、ノズル5に対応するパターン露光及びアフターベークを行った後、メチルイソブチルケトンで現像を行い、ノズル5を形成する。
【0101】
さらに、メチルイソブチルケトン中に超音波を付与しつつ浸漬し、残存している溶解可能な樹脂を溶出し、150℃ 1時間加熱し感光性被覆材料層を完全に硬化させた。最後に、共通液室7を、TMAH(水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液)によるシリコンの異方性エッチングにより形成する。このとき、作製した液室部材2がダメージを受けないように、環化ゴムからなる保護層でシリコン基板のノズル5を形成した側の面を保護する。
【0102】
以上により、600dpi/列、2400CH/列(1列に2400個のノズル5が配置されているという意味)、ノズル列間距離240μm、共通液室7の最大開口幅約1.8mm、長さ約110mmのライン型ヘッドを作製することができる。
【0103】
液体供給部材10は、第2実施形態に係る液体供給部材10とし、図11ないし図13に示す断面形状の流路(液循環路11)を有する部品を透明なポリカーボネート樹脂の切削/貼り合わせで作製し、液体吐出ヘッド1に接着固定している。この液体供給部材10の内部の寸法は、例えば、図11ないし図13において、Wa:5mm、Wb:2.4mm、Ha:6mm、Hb:4mm、Yb:1.5mm、Ls:5mmとしている。そして、液体供給部材10の両端には供給ポート12と排出ポート13を主幹流路11aの断面の中央部(Yh:3mmの位置)に設けて、図40に示すような液体供給経路内(インク供給系)に接続している。
【0104】
この液体供給経路(系)において、ヘッドタンク70は、記録ヘッド1にインクを供給すると共に、気泡を受け入れて外部に排出する機能を有するもので、内部が第1インク室71と上部に大気開放口73が設けられた第2インク室72に分けられており、ポンプP2によって第2インク室72から第1インク室71にインクを移送可能になっている。第2インク室72にはインクカートリッジ76が接続されており、フィルタ75によってろ過されたインクがポンプP1によってヘッドタンク70の第2インク室72に補充可能な構成となっている。
【0105】
このヘッドタンク70の第2インク室72の底面にはインクポートが設けられ、常開のバルブV2を介してヘッド1の液体供給部材10の排出ポート13に接続されている。第2インク室72のインク量はインク液面とヘッド1の水頭差Shが一定の値(10〜150mm)になるように液位検知センサ74によって管理される。
【0106】
ここで、通常の画像形成時においては、ポンプP1、P2は停止状態、バルブV2のみ開状態にする。インクは、第2インク室72から排出ポート13を経由して記録ヘッド1に供給される。インク消費により第2インク室72の液面が所定の位置よりも低くなると液位検知センサ74が検出する。これにより、バルブV1を開き、ポンプP1を動作させてインクカートリッジ76から第2インク室72にインクを補充する。補充停止は、液位検知センサ74の検出信号によって制御している。
【0107】
また、ヘッド1の目詰まり等が生じた場合は、ヘッド1の回復動作を行う。図38の状態からヘッド1が上方に移動し、維持ユニット35が水平方向に移動(図38の状態から図の右方向:矢示方向に移動)してヘッド1の真下に配置される。そして、ヘッド1が少し下降して、図41に示すように維持ユニット35のホルダ43で保持されているキャップ40にヘッド1のノズル5を形成したノズル面5aが密着した状態にする。この状態で、図40のバルブV1、V2を閉じてポンプP2のみを一定時間駆動する。
【0108】
これにより、第1インク室71内のインクが加圧されてヘッド1に流れ込む。バルブV2が閉じているので、インクはヘッド1のノズル5から排出される。この排出されるインクと一緒にヘッド1の目詰まりの原因となっていた気泡や異物が除去される。そして、ポンプP2を停止した後、ヘッド1をキャップ40と非接触状態になるレベルに上昇し、維持ユニット35を水平方向に移動(図39の状態から図の右方向に移動)して、図42のようにヘッド1のノズル面5aをワイパーブレード41でワイピングする。ワイピングによりノズル5にメニスカスが形成された後、バルブV2を開いてヘッド1を水頭差Shに相当する負圧状態に保持する。
【0109】
キャップ40内にはヘッド1から排出されたインクが溜まるので、それをポンプ45で吸引して廃液タンク44に廃出する。なお、キャップ40内のインクをフィルタを用いてろ過すれば、廃液タンク44ではなくヘッドタンク70の第2インク室72に戻すようにして吸引したインクをも再利用することも可能である。
【0110】
その後、ヘッド1の昇降及び維持ユニット35の水平移動により図38の状態で記録動作を行うか、図39の状態で記録指示があるまで待機する。この回復動作により、目詰まりが解消し、ヘッド1を良好な状態に維持することができる。
【0111】
ここで、図40に示す液体供給系において、液体供給部材10とヘッドタンク70をつなぐ流路80、81は通常は樹脂チューブであるので、チューブ素材自身の透気性により経時的に内部に気泡が混入する。この気泡が液体供給部材10の内部に多く堆積すると、記録動作中にインクの流れに乗ってヘッド1に混入し、インク滴吐出不良の原因となる。液体供給部材10から気泡を排出するには、図40において、バルブV2を開いた状態で、ポンプP2のみを駆動し、第2インク室72から第1インク室71にインクを流す。インクは、第1インク室71から液体供給部材10の供給ポート12に入り、液体供給部材内部の気泡と一緒に排出ポート13から排出され、第2インク室72に戻る。第2インク室72でインク中の気泡は浮上して大気開放口73から排出される。
【0112】
この画像形成装置における本発明に係る液体供給部材10を用いた場合の気泡排出性を評価するため、液体供給部材10の上流側に三方弁をつけてチューブ内に気泡を注入し、液体供給部材10の内部を観察しながらポンプP2を作動させて液体供給部材10内に気泡を混入させた。液体供給部材10内部の流れが止まるまで待機した後、再度ポンプV2を作動させて60ml/minの流量でインクを循環させた。その結果、液体供給部材10内の上部角部に小さい気泡が残留したが、概ね良好に気泡が排出できたことを確認した。また、ヘッド1のノズル面を観察したところ、ノズル5からのインクのにじみ出し等の不具合もなく、吐出不良なく良好な画像形成を行うことができた。
【0113】
次に、同様に液体供給部材10内に気泡を混入させた後、90ml/minでインクを循環したところ、先の条件で気泡が残留した角部にも気泡は残らず、良好に気泡排出が行えた。しかし、ノズル5を観察したところ、ノズル5からインクがにじみ出ていることが確認された。
【0114】
次に、第7実施形態(図24及び図25)で説明したように、供給ポート12と排出ポート13の位置を鉛直上方に変更(Yh1:1mmに変更)した液体供給部材10を用いて、同様に気泡排出実験を行った。その結果、90ml/minでインクを循環した場合でも、ノズル5からインクが滲み出す不具合もなく、良好に気泡排出が行えることが確認された。
【0115】
さらに、別の形態として、第6実施形態(図23)に示すように、主幹流路11aの上方角部を面取りして天面中央部が上に向けて凸になるような形状(Wa:5mm、Wb:2.4mm、Ha:6mm、Hb:4mm、Yh:3mm、Yc:1.5mm、Wc:1mm)とした。その結果、60ml/minでインクを循環した場合でも、ノズル5からインクが滲み出す不具合もなく、良好に気泡排出を行うことができた。
【0116】
ここで、比較例として、比較例1(図6及び図7)に示すように、液体循環路11から狭連通流路11bを取り除いた形態の液体供給部材(Wc:5mm、Hc:6mm、Yh:3mm)を作製し、これを用いて同様の気泡排出実験を行った。その結果、60ml/minの流量でインクを循環させることで気泡を排出することはできたが、ノズル5からのインクの滲み出しが観察された。循環流量を小さくしたり、供給ポート12と排出ポート13の位置を上方にオフセットしたりしたが、ノズル5からインクが滲み出さないで気泡排出性を確保できる条件は得られなかった。
【0117】
そこで、比較例2(図8及び図9)のように、液体循環路11の高さを増やした構成(Wd:5mm、Hd:12mm、Yh:3mm)として同様に気泡排出評価を行った。その結果、良好な気泡排出性を得るためには流量が120ml/min以上必要であったが、気泡排出動作を行うときのヘッドタンク70の第2インク室72内のインク水位が低い条件の時に頻度は少ないが、ノズル5のメニスカスが壊れて吐出しないチャンネル(ノズル5)が発生した。
【0118】
このように、液体循環路11の高さを増やす構成とする必要がある場合には、第9実施形態(図31及び図32)のような構成とする方法も有効である。第9実施形態の液体供給部材10では、液体循環路11のヘッド1に最も近い部分を大空間の液体バッファ流路11cとしており、その上部に狭連通流路11bと主幹流路11aを設けている。ヘッド1で発生して共通流路7に流れ出した気泡は浮力で主幹流路11aの天面11dまで上昇する。このとき、液体バッファ流路11cの上部は傾斜面としているので気泡は液体バッファ流路11c内に滞留しない。また、主幹流路11aの天面11dは上に凸な曲面形状としているので、気泡が最上部に集まって排出しやすい。
【0119】
このような構成では、循環流の位置をヘッド1から離して循環流のヘッド1への影響を低減化できる。また、主幹流路11aは記録動作における流量を確保するだけの断面積に最小化し、循環流を高速化して気泡の排出性を高めることができる。さらに、ヘッド1に近い部分に大きな容積のバッファ部(バッファ流路11c)が設けられるので、ヘッド1の吐出圧を吸収することができ、所謂相互干渉の抑制に有効である。この点においては、1つのノズルから複数種類の大きさの液滴を吐出させる圧電方式の吐出ヘッドに対して特に有効である。
【0120】
図31及び図32において、各部の寸法をWia:5mm、Wic:2.4mm、Hia:4mm、Hib:4mm、Hic:6mm、Yh:2mmとして、前述と同様の方法で気泡排出性の評価を実施したところ、60ml/minの流量で気泡が完全に排出でき、ノズルのメニスカス破壊なども生じなかった。また、気泡排出のためのインク循環動作を行いながら、画像形成も行うことができた。
【0121】
以上の実施形態では、液体供給部材10内にフィルタを設けていないため、記録動作を繰り返す中でヘッド側から気泡が発生した場合でも、狭連通流路11bを経由して主幹流路11aに浮上したため、インク循環により排出させることができた。これに対し、図30のように狭連通流路11bと主幹流路11aの間にフィルタ14を設けた液体供給部材10を用いて記録動作を繰り返したところ、ヘッド1で発生した気泡がフィルタ14を通過することができず、狭連通流路11b内に堆積し、前述した回復動作でなければ外部に排出できなかった。
【0122】
以上説明したように、本発明では液体供給部材のヘッドとの連通部を狭めて循環流の影響がノズルのメニスカスに及ばないようにしている。したがって、記録動作中に循環流を形成することもできる。インクを循環させながら記録を行うことで、気泡が堆積することがなくなり、気泡排出のために記録動作を中断することがなく記録のスループットが向上する。
【0123】
次に、本発明に係る画像形成装置の第2実施形態について説明する。
ここでは、液体供給部材10として、第4実施形態(図17ないし図19)に係る液体供給部材10を用いた。液体供給部材10は、図18及び図19に示す断面形状の流路を有する部材を透明なポリカーボネート樹脂の切削/貼り合わせで作製して、液体吐出ヘッド1に接着固定した。液体流路部材10の内部の寸法は、図19において、Wa:7mm、Ha:6mm、Hb:4mm、Yb:1.5mm、Ls:5mmとした。また、リブ16としては、まず共通液室7への開口部の長手方向両端に厚さ0.4mmのリブ16aを0.9mmピッチで3個設け、開口部の幅方向に厚さ0.5mmのリブ16bを0.9mm間隔で両側2個ずつ設けた。
【0124】
そして、液体供給部材10の長手方向両端に供給ポート12と排出ポート13を設け、上記画像形成装置の第1実施形態と同様に、図40に示すようなインク供給系(液体供給経路内)に接続し、気泡排出性を評価した。その結果、液体供給部材10内に故意に混入させた気泡を70ml/minの流量でインクを循環させることで、良好に気泡が排出できた。また、ノズル5からのインクのにじみ出し等の不具合もなく、吐出不良なく良好な画像形成を行うことができた。
【0125】
次に、本発明に係る画像形成装置の第3実施形態について図43をも参照して説明する。
ここでは、上記画像形成装置の第2実施形態で説明した液体供給部材10を、図41に示す液体供給経路内(インク供給系)に接続した。このインク供給系は、液体供給部材10の排出ポート13の下流側に流量調整弁V3を設けている点が前述した図40のインク供給系と異なっている。
【0126】
このように、排出ポート13の下流に流量調整弁V3を設けることで、排出ポート13から排出されるインクの流量(Qc)を調節することができるため、この流量Qcを小さくすることによって液体循環路11からヘッド1へインクを圧送することができる。これにより、液体循環路11内の気泡排出とヘッド1内の気泡排出を同時に行うことができる。
【0127】
次に、前述した図35に示す前記液体供給部材の第11実施形態、図36及び図37に示す第12実施形態の具体例について説明する。
この具体例では、液体供給部材10の内部の寸法は前記画像形成装置の第1実施形態で説明したと同じであるが、液体供給部材10を2つの異なる材質としている。具体的には、主幹流路11aを形成する主幹流路形成部10aをポリカーボネート樹脂、狭連通流路11bを形成する狭連通流路形成部10bをSUSとした。また、ヘッド1を前記画像形成装置の第1実施形態で説明したサーマル方式のものとしている。
【0128】
サーマル方式では特にヘッド1の温度上昇が著しいため、通常はヘッドの駆動周波数を下げたり、記録を一時中断したり、駆動するノズル数を減らしたりするが、この液体供給部材10ではヘッド1側の狭連通流路形成部10bを熱伝導率の大きい材料で形成しているので、直接ヘッド1に接合する形態にすることで、ヘッド1の熱を直接奪えて温度上昇を低減できる。また、流路の細まった部分を熱伝導率の大きい材料とするので、インクの熱を効率的に奪うことができ、連続して記録を行った場合でも安定した画像形成を行えることができた。
【0129】
さらに、第12実施形態(図36及び図37)に示すように、液体供給部材10の狭連通流路形成部10bの内側と外側を両方に複数のフィン15a、15bが設けられている構成としたところ、さらに、放熱効率が高まりより大きな印字デューティの画像を高速に印字することが可能となった。さらに、この液体供給部材10では、流路内のフィン15aを鉛直方向が長手方向になるようにしたので、ヘッド1からの気泡の浮上を妨げることなく放熱能力を向上することができた。また、流路内のフィン15aを循環流の流れる方向に対して直角方向に形成したことと、フィン15aを主幹流路11aの底部にも設けたことにより、狭連通流路11b部の循環流による流れを効果的に抑制でき、循環流によるメニスカス破壊に対する耐性が向上した。
【0130】
次に、前述した図28に示す前記液体供給部材の第8実施形態の具体例について説明する。
この液体供給部材10は、前述したように供給ポート12を液体供給部材10の中央部に設け、排出ポート13を液体供給部材の長手方向両端部に設けている。また、液体循環路11内の供給ポート12の真下に当たる位置に整流部材18を設けている。整流部材18は、供給ポート12の上面は供給されるインクが2つの排出ポート13の方向に滑らかに分流しやすいように曲面で形成し、下面(底面)は、ヘッド1から浮上する気泡を滞留させないように傾斜面とした。
【0131】
この液体供給部材10を図40又は図43に示すインク供給系に接続し、同じ循環流量で気泡排出評価を実施したところ、画像形成装置の第1実施形態で説明した場合よりも更に短時間で気泡を排出することができた。比較実験として、図29に示すように整流部材を設けない構成で同様の評価を行ったところ、図29の領域Qに気泡が若干残りやすい不具合があった。また、ヘッドの中央部のノズルのメニスカスが壊れやすい不具合が生じた。
【0132】
なお、本発明は、様々な液体吐出方式のヘッドに対して適用可能であるが、前述の実施形態で説明したサーマル方式のヘッドはインクも含めて昇温しやすいため、特に好適である。また、サーマル型ヘッドの中でも前述したサイドシュータ型のヘッドは、ヘッド内部で気泡が発生しやすく、発生した気泡が共通液室に流れやすいため更に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0133】
【図1】本発明に係る液体供給部材の第1実施形態の説明に供する液体供給部材を液体吐出ヘッドに接続して一体化されて構成されるヘッドユニットを示す斜視説明図である。
【図2】同ヘッドユニットの長手方向断面図である。
【図3】図2のA−A線に沿う同ヘッドユニットの短手方向断面図である。
【図4】同実施形態の作用説明に供するヘッドユニットの長手方向断面図である。
【図5】図4のB−B線に沿う同ヘッドユニットの短手方向断面図である。
【図6】同じく比較例1のヘッドユニットの長手方向断面図である。
【図7】図6のC−C線に沿う断面説明図である。
【図8】同じく比較例2のヘッドユニットの長手方向断面図である。
【図9】図8のD−D線に沿う断面説明図である。
【図10】同じく同実施形態の液体循環路の他の異なる断面形状の説明に供する模式的説明図である。
【図11】本発明に係る液体供給部材の第2実施形態の説明に供するヘッドユニットの長手方向断面図である。
【図12】図11のE−E線に沿う同ヘッドユニットの短手方向断面図である。
【図13】図11のF−F線に沿う同ヘッドユニットの短手方向断面図である。
【図14】本発明に係る液体供給部材の第3実施形態の説明に供するヘッドユニットの長手方向断面図である。
【図15】図14のG−G線に沿う同ヘッドユニットの平断面図である。
【図16】図14のH−H線に沿う同ヘッドユニットの短手方向断面図である。
【図17】本発明に係る液体供給部材の第4実施形態の説明に供するヘッドユニットの長手方向断面図である。
【図18】図17のI−I線に沿う同ヘッドユニットの平断面図である。
【図19】図17のJ−J線に沿う同ヘッドユニットの短手方向断面図である。
【図20】本発明に係る液体供給部材の第5実施形態の説明に供するヘッドユニットの平断面図である。
【図21】図20のK−K線に沿う同ヘッドユニットの短手方向断面図である。
【図22】図21と異なる他の例の図20のK−K線に沿う同ヘッドユニットの短手方向断面図である。
【図23】本発明に係る液体供給部材の第6実施形態の説明に供するヘッドユニットの短手方向断面図である。
【図24】本発明に係る液体供給部材の第7実施形態の説明に供するヘッドユニットの長手方向断面図である。
【図25】図24のL−L線に沿う同ヘッドユニットの短手方向断面図である。
【図26】比較例3のヘッドユニットの長手方向断面図である。
【図27】図26のM−M線に沿う同ヘッドユニットの短手方向断面図である。
【図28】本発明に係る液体供給部材の第8実施形態の説明に供するヘッドユニットの長手方向断面図である。
【図29】同実施形態の作用説明に供する比較例4のヘッドユニットの長手方向断面図である。
【図30】比較例5のヘッドユニットの短手方向断面図である。
【図31】本発明に係る液体供給部材の第9実施形態の説明に供するヘッドユニットの長手方向断面図である。
【図32】図31のN−N線に沿う同ヘッドユニットの短手方向断面図である。
【図33】本発明に係る液体供給部材の第10実施形態の説明に供するヘッドユニットの長手方向断面図である。
【図34】図33のO−O線に沿う同ヘッドユニットの短手方向断面図である。
【図35】本発明に係る液体供給部材の第11実施形態の説明に供するヘッドユニットの短手方向断面図である
【図36】本発明に係る液体供給部材の第12実施形態の説明に供するヘッドユニットの短手方向断面図である。
【図37】図36のP−P線に沿う断面説明図である。
【図38】本発明に係る画像形成装置の第1実施形態の説明に供する構成図である。
【図39】同装置の維持回復時の状態を示す説明図である。
【図40】同装置の液体供給経路の説明に供する模式的説明図である。
【図41】同画像形成装置の維持回復動作の説明に供する説明図である。
【図42】同じく維持回復動作の説明に供する説明図である。
【図43】本発明に係る画像形成装置の第3実施形態の説明に供する同装置の液体供給経路の説明に供する模式的説明図である。
【符号の説明】
【0134】
1…液体吐出ヘッド(記録ヘッド)
2…発熱体基板
3…流路形成部材
5…ノズル
6…液室
7…共通液室
10…液体供給部材
11…液体循環路
11a…主幹流路
11b…狭連通流路
11c…液体バッファ流路
16…リブ
【技術分野】
【0001】
本発明は液体吐出ヘッド用液体供給部材、液体吐出装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタ、ファクシミリ、複写装置、これらの複合機等の画像形成装置として、例えば、記録液(液体)の液滴を吐出する液体吐出ヘッド(液滴吐出ヘッド)で構成した記録ヘッドを含む液体吐出装置を用いて、媒体(以下「用紙」ともいうが材質を限定するものではなく、また、被記録媒体、記録媒体、転写材、記録紙なども同義で使用する。)を搬送しながら、液体(以下、インクともいう。)を用紙に付着させて画像形成(記録、印刷、印写、印字も同義語で用いる。)を行ものがある。
【0003】
なお、画像形成装置は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックス等の媒体に液体を吐出して画像形成を行う装置を意味し、また、「画像形成」とは、文字や図形等の意味を持つ画像を媒体に対して付与することだけでなく、パターン等の意味を持たない画像を媒体に付与することをも意味する。また、液体とは記録液、インクに限るものではなく、画像形成を行うことができる液体であれば特に限定されるものではない。また、液体吐出装置とは、液体吐出ヘッドから液体を吐出する装置を意味し、画像を形成するものに限らない。
【0004】
液体吐出ヘッドとしては、インクを充填した液室の壁の一部に振動板を設け、圧電アクチュエータ等により振動板を変位させ液室内の体積を変化させて圧力を高め液滴を吐出させる圧電型ヘッドや、液室内に通電によって発熱する発熱体を設けて、発熱体の発熱により生じる気泡によって液室内の圧力を高め、液滴を吐出させるサーマル型ヘッドが知られている。
【0005】
このような液体吐出方式の画像形成装置においては、高速化を図るために、ノズル数、ヘッド数の増加などが行われている。最近では、短尺ヘッドを複数個つなぎ合わせる等して長尺ヘッドを形成し、ヘッドを走査することなく画像を形成可能なライン型画像形成装置も採用されている。
【0006】
ところが、ヘッドが長尺化し、ノズル数が増加すると、吐出不良が発生する確率が増加することになり、この吐出不良の原因の1つにヘッドの液室内の気泡の侵入が挙げられる。つまり、液室内に気泡が入ると、インクが供給されなくて不吐出となったり、滴吐出圧力が吸収されて異常吐出となったりする。小さな気泡でも、例えばそれがノズルの近傍に付着していると、液滴が曲がって飛翔し、異常画像となる。
【0007】
ヘッド内に液室に気泡が入る形態は、様々である。ヘッドにインクを供給する流路から流れてくる場合もあるし、ノズルから吸い込む場合もある。また、発熱体を用いてインクの膜沸騰で液滴を吐出するヘッドでは、その吐出プロセスで微小な気泡が液室内に残ってしまうこともある。
【0008】
このように、液室内に気泡が入った場合には、画像形成とは無関係の吐出(空吐出や予備吐出と呼ばれることが多い。)を行ったり、ノズル面をキャッピングして負圧を形成して、吸引、あるいは、インク供給経路をポンプ等で加圧してインクと一緒に気泡を排出する方法が知られている。これらの方法で気泡を排出すると、排出インクをリサイクルする方法もあるものの、基本的には多量のインクが画像形成とは無関係に使われて無駄になることになる。なお、リサイクルものとしては特許文献1がある。
【特許文献1】特開2005−212350号公報
【0009】
液室内の気泡に関しては前述した方法で排出する以外に方法はないが、インク供給経路内の気泡に関しては、インク供給経路内でインクを循環させて気泡を排除する方法がある。この方法によれば、前述したようにヘッドが長尺化した場合でもインクを排出することなく、インク供給路内の気泡が液室内に侵入することを回避できる。しかしながら、インクの循環によってインク供給経路内の気泡を排出する方式においては、インクの循環圧によってヘッドのノズルに形成されたメニスカスが破壊して、インクがにじみ出たりノズルから気泡を吸い込んだりする問題がある。
【0010】
そこで、特許文献2に記載されているようにインク循環時にノズル面を密閉するインクジェット記録装置がある。これは、インクタンクから記録ヘッドの共通液室へインクを導くインク供給通路と、共通液室からインクタンクへインクを導くインク排出通路と、共通液室に連通する吐出口を密閉する吐出口密閉手段と、インクタンクから共通液室へインクを圧送するインクポンプとを備え、吐出口密閉手段で吐出口を密閉した状態でインクポンプを作動させてインクタンクからインク供給通路、共通液室およびインク排出通路を通してインクを循環させることにより、インク流路内の空気をインクとともにインクタンク内へ排出するようにしている。
【特許文献2】特許第2821920号公報
【0011】
また、特許文献3に記載されているようにインク供給路を複数の連通路を備えた隔壁でヘッドの個別液室に近い側と遠い側を分割し、遠い側にインク流入パイプとインク流出パイプを設けてインク循環圧がメニスカスに影響しないようにしたヘッドがある。これは、サーマル型ヘッドとインクタンクとの間に循環経路を有し、循環経路中にインク圧送手段を備え、インクを吐出する複数の吐出口にそれぞれ連通する複数の液路に連通する共通液室が、複数の液路に直接連通する第1の共通液室と、第1の共通液室に近接し、複数の液路の側とは反対側に配置され、第1の共通液室との間に複数の連通路を備え、かつ、循環経路の一部を構成しインクタンクからの流入口およびインクタンクへの流出口を備えた第2の共通液室とに分割したものである。
【特許文献3】特開平08−238772号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上述したように、液体の循環によって液体供給経路内の気泡を排出する方式においては、液体の循環圧によってヘッドのノズルに形成されたメニスカスが破壊して、液体がにじみ出たりノズルから気泡を吸い込んだりする問題があることから、特許文献2、3になどに記載されている対策が講じられている。
【0013】
しかしながら、特許文献2に記載のように液体循環時にノズル面を密閉する構成にあっては、ヘッドが長尺化した場合に完全に密閉することが困難であると共に、液体循環中に液体を吐出して画像を形成することもできなくなるという課題がある。
【0014】
また、特許文献3に記載のように液体供給路を複数の連通路を備えた隔壁でヘッドの個別液室に近い側と遠い側を分割し、遠い側に液体流入パイプと液体流出パイプを設けて液体循環圧がメニスカスに影響しないようにする構成にあっては、インク供給経路の気泡が個別液室に混入することを防止するには有効であるが、個別液室で発生した気泡やノズルから吸い込まれた気泡が浮力などにより上流側に流れた場合でも隔壁によって個別液室に近い側に滞留し循環流で外部に排出できないという課題がある。
【0015】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、ヘッドから逆流してくる気泡も含めて液体供給経路中の気泡を循環流によって液体を外部に捨てることなく排出し、更に循環圧によってメニスカスを破壊するなどの悪影響がない液体吐出ヘッド用液体供給部材及びこの液体供給部材を備える液体吐出装置、画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記の課題を解決するため、本発明に係る液体吐出ヘッド用液体供給部材は、液滴を吐出する複数のノズルが連通する複数の液室に液体を供給する共通液室を有する液体吐出ヘッドに接続され、この液体吐出ヘッドの共通液室に液体を供給する液体供給部材であって、この液体供給部材は、内部に液体吐出ヘッドのノズルの並び方向に沿って液体が循環する液体循環路を有し、液体循環路の長手方向の端部には、液体循環路に液体を供給する供給ポートと液体循環路から液体を排出する排出ポートが設けられ、液体循環路の共通液室側には、共通液室に連通する連通口が設けられ、連通口は、液体循環路よりも幅が狭いとともに、供給ポート側及び排出ポート側の少なくともいずれかの部分が他の部分よりも深い構成とした。
【0017】
本発明に係る液体吐出ヘッド用液体供給部材は、液滴を吐出する複数のノズルが連通する複数の液室に液体を供給する共通液室を有する液体吐出ヘッドに接続され、この液体吐出ヘッドの共通液室に液体を供給する液体供給部材であって、内部に液体吐出ヘッドのノズルの並び方向に沿って液体が循環する液体循環路を有し、液体循環路の長手方向の端部には、液体循環路に液体を供給する供給ポートと液体循環路から液体を排出する排出ポートが設けられ、液体循環路の共通液室側には、共通液室に連通する連通口が設けられ、この連通口の周囲にリブが配置されている構成とした。
【0018】
本発明に係る液体吐出ヘッド用液体供給部材は、液滴を吐出する複数のノズルが連通する複数の液室に液体を供給する共通液室を有する液体吐出ヘッドに接続され、この液体吐出ヘッドの共通液室に液体を供給する液体供給部材であって、この液体供給部材は、内部に液体吐出ヘッドのノズルの並び方向に沿って液体が循環する液体循環路を有し、液体循環路の長手方向の端部には、液体循環路に液体を供給する供給ポートと液体循環路から液体を排出する排出ポートが設けられ、液体循環路の共通液室側の内壁面にはリブが形成されている構成とした。
【0019】
ここで、リブは液体循環路の供給ポート側及び排出ポート側の部分が他の部分よりも相対的に高さが高い構成とすることが好ましい。
【0020】
本発明に係る液体吐出ヘッド用液体供給部材は、液滴を吐出する複数のノズルが連通する複数の液室に液体を供給する共通液室を有する液体吐出ヘッドに接続され、この液体吐出ヘッドの共通液室に液体を供給する液体供給部材であって、内部に液体吐出ヘッドのノズルの並び方向に沿って液体が循環する液体循環路を有し、液体循環路の長手方向の端部には、液体循環路に液体を供給する供給ポートと液体循環路から液体を排出する排出ポートが設けられ、供給ポートから排出ポートに向けて液体を流したときの流れに直交する液体循環路の流路断面は、略中央部が狭くくびれて、両側が大面積である形状であり、一方の大面積の部分が共通液室の開口に連通し、他方の大面積の部分側に供給ポートと排出ポートが設けられている構成とした。
【0021】
ここで、液体循環路の短手方向の壁面に形成されるリブによって、供給ポートから排出ポートに液体を流したときの流れに直交する液体循環路の流路断面は、略中央部が狭くくびれて、両側が大面積である形状となっていることが好ましい。
【0022】
これらの本発明に係る液体吐出ヘッド用液体供給部材においては、供給ポートから排出ポートに液体を流したときの流れに直交する方向の流路断面が、上方に凸な形状である構成とすることができる。また、共通液室の上部開口と液体循環路の天面との間に液体の流れを阻害する部分がない構成とすることができる。
【0023】
本発明に係る液体吐出ヘッド用液体供給部材は、液滴を吐出する複数のノズルが連通する複数の液室に液体を供給する共通液室を有する液体吐出ヘッドに接続され、この液体吐出ヘッドの共通液室に液体を供給する液体供給部材であって、この液体供給部材は、内部に液体吐出ヘッドのノズルの並び方向に沿って液体が循環する液体循環路を有し、この液体循環路に液体を供給する供給ポートと液体循環路から液体を排出する排出ポートが設けられ、供給ポートと排出ポートのいずれかは液体循環路の長手方向端部以外の部分に設けられ、この長手方向端部以外の部分に設けられたポートに対応して共通液室との間に流れを整える整流部材が設けられている構成とした。
【0024】
これらの本発明に係る液体吐出ヘッド用液体供給部材においては、連通口を形成する部分が高熱伝導率材料で形成されている構成とすることができる。また、リブを備える本発明に係る液体吐出ヘッド用液体供給部材においては、リブが高熱伝導率材料で形成されている構成とすることができる。
【0025】
本発明に係る液体吐出ヘッド用液体供給部材は、液滴を吐出する複数のノズルが連通する複数の液室に液体を供給する共通液室を有する液体吐出ヘッドに接続され、この液体吐出ヘッドの共通液室に液体を供給する液体供給部材であって、この液体供給部材は、内部に液体吐出ヘッドのノズルの並び方向に沿って液体が循環する液体循環路を有し、液体循環路の長手方向の端部には、液体循環路に液体を供給する供給ポートと液体循環路から液体を排出する排出ポートが設けられ、液体循環路の共通液室側には、共通液室に連通する連通口が設けられ、連通口は、液体循環路よりも幅が狭い構成とした。
【0026】
本発明に係る液体吐出装置は、液体吐出ヘッドに対して液体を供給する本発明に係る液体供給部材を備えている構成とした。
【0027】
本発明に係る画像形成装置は、液体吐出ヘッドに対して液体を供給する本発明に係る液体供給部材を備えている構成とした。
【発明の効果】
【0028】
本発明に係る液体吐出ヘッド用液体供給部材によれば、内部に液体吐出ヘッドのノズルの並び方向に沿って液体が循環する液体循環路を有し、液体循環路の長手方向の端部には、液体循環路に液体を供給する供給ポートと液体循環路から液体を排出する排出ポートが設けられ、液体循環路の共通液室側には、共通液室に連通する連通口が設けられ、連通口は、液体循環路よりも幅が狭いとともに、供給ポート側及び排出ポート側の少なくともいずれかの部分が他の部分よりも深い構成としたので、液体吐出ヘッドで発生した気泡や液体供給経路上流から液体吐出ヘッド内に流入した気泡を液体吐出ヘッドのメニスカスを破壊することなく循環流によって排出することができる。
【0029】
本発明に係る液体吐出ヘッド用液体供給部材によれば、内部に液体吐出ヘッドのノズルの並び方向に沿って液体が循環する液体循環路を有し、液体循環路の長手方向の端部には、液体循環路に液体を供給する供給ポートと液体循環路から液体を排出する排出ポートが設けられ、液体循環路の共通液室側には、共通液室に連通する連通口が設けられ、この連通口の周囲にリブが配置されている構成としたので、液体吐出ヘッドで発生した気泡や液体供給経路上流から液体吐出ヘッド内に流入した気泡を液体吐出ヘッドのメニスカスを破壊することなく循環流によって排出することができる。
【0030】
本発明に係る液体吐出ヘッド用液体供給部材によれば、内部に液体吐出ヘッドのノズルの並び方向に沿って液体が循環する液体循環路を有し、液体循環路の長手方向の端部には、液体循環路に液体を供給する供給ポートと液体循環路から液体を排出する排出ポートが設けられ、液体循環路の共通液室側の内壁面にはリブが形成されている構成としたので、液体吐出ヘッドで発生した気泡や液体供給経路上流から液体吐出ヘッド内に流入した気泡を液体吐出ヘッドのメニスカスを破壊することなく循環流によって排出することができる。
【0031】
本発明に係る液体吐出ヘッド用液体供給部材によれば、内部に液体吐出ヘッドのノズルの並び方向に沿って液体が循環する液体循環路を有し、液体循環路の長手方向の端部には、液体循環路に液体を供給する供給ポートと液体循環路から液体を排出する排出ポートが設けられ、供給ポートから排出ポートに向けて液体を流したときの流れに直交する液体循環路の流路断面は、略中央部が狭くくびれて、両側が大面積である形状であり、一方の大面積の部分が共通液室の開口に連通し、他方の大面積の部分側に供給ポートと排出ポートが設けられている構成としたので、液体吐出ヘッドで発生した気泡や液体供給経路上流から液体吐出ヘッド内に流入した気泡を液体吐出ヘッドのメニスカスを破壊することなく循環流によって排出することができる。
【0032】
本発明に係る液体吐出ヘッド用液体供給部材によれば、内部に液体吐出ヘッドのノズルの並び方向に沿って液体が循環する液体循環路を有し、この液体循環路に液体を供給する供給ポートと液体循環路から液体を排出する排出ポートが設けられ、供給ポートと排出ポートのいずれかは液体循環路の長手方向端部以外の部分に設けられ、この長手方向端部以外の部分に設けられたポートに対応して共通液室との間に流れを整える整流部材が設けられている構成としたので、液体吐出ヘッドで発生した気泡や液体供給経路上流から液体吐出ヘッド内に流入した気泡を液体吐出ヘッドのメニスカスを破壊することなく循環流によって排出することができる。
【0033】
本発明に係る液体吐出ヘッド用液体供給部材によれば、内部に液体吐出ヘッドのノズルの並び方向に沿って液体が循環する液体循環路を有し、液体循環路の長手方向の端部には、液体循環路に液体を供給する供給ポートと液体循環路から液体を排出する排出ポートが設けられ、液体循環路の共通液室側には、共通液室に連通する連通口が設けられ、連通口は、液体循環路よりも幅が狭い構成としたので、液体吐出ヘッドで発生した気泡や液体供給経路上流から液体吐出ヘッド内に流入した気泡を液体吐出ヘッドのメニスカスを破壊することなく循環流によって排出することができる。
【0034】
本発明に係る液体吐出装置は、液体吐出ヘッドに対して液体を供給する本発明に係る液体供給部材を備えている構成としたので、安定した滴吐出を行うことができる。
【0035】
本発明に係る画像形成装置は、液体吐出ヘッドに対して液体を供給する本発明に係る液体供給部材を備えている構成としたので、安定した滴吐出を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。本発明に係る液体吐出ヘッド用液体供給部材の第1実施形態について図1ないし図3を参照して説明する。なお、図1は本発明に係る液体供給部材を液体吐出ヘッドに接続して一体化されて構成されるヘッドユニットを示す斜視説明図、図2は同ヘッドユニットの長手方向断面図、図3は図2のA−A線に沿う同ヘッドユニットの短手方向断面図である。
【0037】
液体吐出ヘッド1は、サーマル型ヘッドであり、発熱体基板2と流路基板3から構成される。流路基板3には液滴を吐出する複数のノズル5、各ノズル5が連通する複数の個別液室6が設けられ、発熱体基板3には各個別液室6に対応してそれぞれ発熱体素子が設けられている。発熱体基板2には、図示しないFPCなどの通電手段が接続されており、この通電手段を介して発熱体素子4にパルス電圧などが入力されることで発熱体素子4が駆動され、個別液室6内の液体に膜沸騰を生ぜしめ、ノズル5から液体の滴(液滴)が吐出される。本実施形態においては、図1に示すように、ヘッド長手方向に複数のノズル5を並べたノズル列が2列形成されており、各ノズル5に対応した個別液室6には、図3に示すように発熱体基板2の中央に設けられた共通液室7から液体が供給される構造となっている。
【0038】
そして、この液体吐出ヘッド1の発熱体基板2の共通液室7を形成する開口に対応して、図2及び図3に示すように、共通液室7に液体を供給する本発明に係る液体供給部材10の液体循環路11が接続されている。
【0039】
この液体供給部材10は内部に循環する液体が流れる液体循環路11を有する。この液体循環路11は、液体吐出ヘッド1に接続される側が開口断面積が相対的に小さい(狭断面の)狭連通流路11bで液体供給部材10から液体吐出ヘッド1の共通液室7に連通する液体の連通口を兼ねており、ヘッド1に遠い側が広い開口断面積を有する主幹流路11aとなっている。そして、液体供給部材10の長手方向(液体吐出ヘッド1のノズルの並び方向に沿う方向)の両端部には主幹流路11aに連通して液体を供給する供給ポート12と液体を排出する排出ポート13が形成されている。なお、開口断面積とは、図3で示す断面説明図のように、液体供給部材10の長手方向(液体吐出ヘッド1のノズルの並び方向、循環流生成方向)と直交する方向(液体供給部材10の短手方向)での断面における面積をいう。
【0040】
なお、後述するが、この液体供給部材10は図示しない液体供給経路内に配置され、供給ポート12から液体循環路11を通じて排出ポート13に向けて液体を流して液体を循環させるようにしている。なお、図2などで供給ポート12に向かう矢印、排出ポート13から外側に向かう方向の矢印は、それぞれ液体の流入方向及び排出方向を示している(以下でも同様である。)。
【0041】
このように構成した液体供給部材10の作用について図4及び図5の他、図6及び図7に示す比較例1、図8及び図9に示す比較例2との対比において説明する。
液体吐出ヘッド1は液体供給部材10の供給ポート12から供給される液体を吐出するが、経時的に供給ポート12に接続した図示しない液体供給経路から気泡50が混入し、図4及び図5に示すように、液体循環路11上部(天面11d)に滞留、蓄積する場合がある。気泡50が少量のうちは特に問題は生じないが、気泡50の量が多くなると、液体と一緒に液体吐出ヘッド1の個別液室6に混入し、吐出不良を起こすなどの不具合が生ずる。
【0042】
そこで、この液体供給部材10では、供給ポート12から排出ポート13に液体を流し、図示しない液体供給経路内で液体を循環させることで、気泡50はこの液体の循環流に乗って液体循環路11内から排出ポート13を通って外部に排出される。このとき、この液体供給部材10の液体循環路11は、循環流に直交する断面の断面積が相対的に広い形状の主幹流路11aに供給ポート12と排出ポート13を接続して循環流を生成するようにしており、更に液体吐出ヘッド1との間に循環流生成方向に直交する方向の開口断面積が相対的に狭い狭連通流路11bを設けているので、循環流が液体吐出ヘッド1に不具合をもたらすことがなくなる。
【0043】
例えば、図6及び図7に示す比較例1の構成では、液体供給部材10の液体循環路11が均一断面で液体吐出ヘッド1に近接して設けられ、供給ポート12と排出ポート13の間に循環流を生成した場合、矢印60に示す流速の大きな流れに乗って気泡50が排出ポート13から効率よく排出される。しかしながら、その一方で流速の大きい循環流が液体吐出ヘッド1の共通液室7のすぐ近くで生成されるため、液体吐出ヘッド1のノズル5のメニスカスが破壊されて、ノズル5から液体が溢れ出たり、逆にノズル5から気泡を吸い込んだりする不具合が生ずる。
【0044】
また、図8及び図9に示す比較例2の構成では、循環流を液体吐出ヘッド1から離れた位置に生成するようにしている。つまり、この比較例2では、液体循環路11の上方に供給ポート12と排出ポート13が形成されているため、液体循環路11内の上部に矢印61に示す比較的流速の大きな流れができ、液体循環路11内の下部は矢印62に示す比較的流速の小さな流れとなる。したがって、図8の液体吐出ヘッド1から供給ポート12と排出ポート13を結ぶ線までの高さhを大きくして循環流の位置を液体吐出ヘッド1から離せば、前述した比較例1の構成でのメニスカス破壊の問題は回避できる。
【0045】
しかしながら、この比較例2に示す構成では、液体循環路11の断面積が大きくなるため循環流の流速が減少し、その結果、気泡の排出性が損なわれる不具合が生じる。また、気泡排出性を上げるために、循環流の流量を増大させると、液体吐出ヘッド1のメニスカスへの影響が生じる結果となり、良好な条件を得にくくなる。
【0046】
これに対して、本実施形態に係る液体供給部材10は、図4及び図5に示すように、液体循環路11が、ヘッド1に接続する側が狭断面の狭連通流路11bで、ヘッド1に遠い側が広い断面を有する主幹流路11aとなっている。これにより、狭連通流路11bでは流路を形成する壁面が近接していて低い(小さい)流速でしか液体が流れず(流れの大きさ、速さを矢印SBで示している。)、循環流は実質的に主幹流路11aに形成される((流れの大きさ、速さを矢印MBで示している。)。したがって、循環流によって液体吐出ヘッド1のノズル5のメニスカスが破壊されることがなく、流速の速い(大きい)循環流を生成して、効率よく液体循環路11内の気泡50を排出できる。
【0047】
また、本実施形態の液体供給部材10は、図2及び図3に示すように、液体吐出ヘッド1の共通流路7の開口領域全面に液体供給部材10の連通口となる狭連通流路11bが開口しており、共通流路7と液体循環路11の天面11dの間に隔壁等の液体の流れを阻害する部材を設けないため、液体吐出ヘッド1の個別液室6の内部で発生した気泡やノズル5から吸い込んだ気泡が共通液室7に移動した場合に、浮力によって液体循環路11の天面11dに浮上することができ、循環流で排出することができる。
【0048】
ここで、液体供給部材10の液体循環路11の液体の流れ方向と直交する方向の断面の形状は、図3に示すように、平行平面で形成されるものに限られるものではない。例えば図10(a)に示すように、主幹流路11aに対して狭連通流路11bが短手方向に偏って配置されている非平行面形状であってもよい。また、図10(b)に示すように、主幹流路11aと狭連通流路11bが傾斜面11gで連続的につながっている形状でもよい。また、図10(c)に示すように、液体吐出ヘッド1との接合部の上方が直接主幹流路11aの天面に面していなくても、狭連通流路11bの傾斜面11b1を伝って気泡が上昇できる形状であればよい。また、図示しないが、各辺や角部を曲面とすることもできる。また、本実施形態では、供給ポート12と排出ポート13の内径を同じにしているが、必ずしも同じにする必要はなく、内径が異なる形状とすることもできる。
【0049】
このように、内部に液体吐出ヘッドのノズルの並び方向に沿って液体が循環する液体循環路を有し、液体循環路の長手方向の端部には、液体循環路に液体を供給する供給ポートと液体循環路から液体を排出する排出ポートが設けられ、液体循環路の共通液室側には、共通液室に連通する連通口が設けられ、連通口は、液体循環路よりも幅が狭い構成としたので、液体吐出ヘッドで発生した気泡や液体供給経路上流から液体吐出ヘッド内に流入した気泡を液体吐出ヘッドのメニスカスを破壊することなく循環流によって排出することができる。
【0050】
次に、本発明に係る液体供給部材の第2実施形態について図11ないし図13を参照して説明する。なお、図11は同実施形態に係るヘッドユニットの長手方向断面図、図12は図11のE−E線に沿う同ヘッドユニットの短手方向断面図、図13は図11のF−F線に沿う同ヘッドユニットの短手方向断面図である。
このヘッドユニットにおける液体供給部材10は、供給ポート12と排出ポート13のある両端部と中央部で狭連通流路11bの深さを変えたものである。
【0051】
つまり、供給ポート12から距離(長さ)Lsの領域(供給側領域)及び排出ポート13から距離Lsの領域(排出側領域)を両端部とし、これらの供給側領域及び排出側領域を除く領域を中央部とし、狭連通流路11bの深さHbは、両端部側を深く(例えば図13の断面位置では深さHb=Hb2)、中央部を浅く(図12の深さHb=Hb1)形成し、最も浅い中央部と最も深い両端部との間に深さYbの差を設けている。また、狭連通流路11bの深さHbは、中央部から供給ポート12、排出ポート13側に向かって傾斜面11hを形成することで漸次深くなるように形成している。
【0052】
このように構成することで、液体吐出ヘッド1の両端部のメニスカス破壊を確実に回避することができる。つまり、供給ポート12と排出ポート13は液体循環路11に比べて開口断面積が小さい開口であるため液体の流速が液体循環路11の部分よりも大きくなる。したがって、液体の循環によるメニスカスへの影響は、ポート12、13から遠い中央部よりもポート12、13に近い両端部の方が大きくなる。そこで、供給ポート12と排出ポート13が設けられる両端部の連通流路11bの深さを中央部より深くすることによって、液体吐出ヘッド1の両端部のメニスカス破壊をより確実に防止できる。
【0053】
また、供給ポート12、排出ポート13と主幹流路11aの接続部近傍における断面変化が滑らかになるように構成する、つまり、上述したように狭連通流路11bの深さは中央部から供給ポート12、排出ポート13側に向かって漸次深くなるように構成することで、主幹流路11a内の液体の流れも安定する。
【0054】
このように、内部に液体吐出ヘッドのノズルの並び方向に沿って液体が循環する液体循環路を有し、液体循環路の長手方向の端部には、液体循環路に液体を供給する供給ポートと液体循環路から液体を排出する排出ポートが設けられ、液体循環路の共通液室側には、共通液室に連通する連通口が設けられ、連通口は、液体循環路よりも幅が狭いとともに、供給ポート側及び排出ポート側の少なくともいずれかの部分が他の部分よりも深い構成であるので、液体吐出ヘッドで発生した気泡や液体供給経路上流から液体吐出ヘッド内に流入した気泡を、液体吐出ヘッドのメニスカスが破壊されることがより確実に回避されて、循環流によって排出することができる。
【0055】
次に、本発明に係る液体供給部材の第3実施形態について図14ないし図16を参照して説明する。なお、図14は同実施形態に係るヘッドユニットの長手方向断面図、図15は図14のG−G線に沿う同ヘッドユニットの平断面図、図16は図15のH−H線に沿う同ヘッドユニットの短手方向断面図である。
このヘッドユニットにおける液体供給部材10は、液体循環路11の共通液室側には液体吐出ヘッド1の共通液室7に連通する連通口17が設けられて液体吐出ヘッド1の共通液室7に連通しており、この連通口17の周囲に複数のリブ16が主幹流路11aに向かって立ち上がって設けられている。
【0056】
このように、リブ16が設けられることにより、液体循環路11の共通流路7側において循環する液体と壁面との接触面積が増大するので、液体供給部材10内部の液体を循環した場合に、循環流が液体循環路11内の共通流路側で緩やかになり、循環流によるメニスカスへの悪影響を低減することができる。
【0057】
このように、内部に液体吐出ヘッドのノズルの並び方向に沿って液体が循環する液体循環路を有し、液体循環路の長手方向の端部には、液体循環路に液体を供給する供給ポートと液体循環路から液体を排出する排出ポートが設けられ、液体循環路の共通液室側には、共通液室に連通する連通口が設けられ、この連通口の周囲にリブが配置されている構成とすることで、液体吐出ヘッドで発生した気泡や液体供給経路上流から液体吐出ヘッド内に流入した気泡を液体吐出ヘッドのメニスカスを破壊することなく循環流によって排出することができる。
【0058】
次に、本発明に係る液体供給部材の第4実施形態について図17ないし図19を参照して説明する。なお、図17は同実施形態に係るヘッドユニットの長手方向断面図、図18は図17のI−I線に沿う同ヘッドユニットの平断面図、図19は図17のJ−J線に沿う同ヘッドユニットの短手方向断面図である。
このヘッドユニットの液体供給部材10は、液体循環路11の液体吐出ヘッド1の共通液室7側の内壁面には複数のリブ16が形成され、供給ポート12と排出ポート13が設けられる両端部側と中央部で各リブ16の高さを変えたものである。
【0059】
つまり、前記第2実施形態と同様に、供給ポート12から長さLsの領域(供給側領域)及び排出ポート13から長さLsの領域(排出側領域)を両端部とし、これらの供給側領域及び排出側領域を除く領域を中央部とし、リブ16の高さHbは、両端部側を深く、中央部を浅く形成し、最も浅い中央部と最も深い両端部との深さの差はYbとしている。また、リブ16a、16bには供給ポート12、排出ポート13側に傾斜面16hを設けて、リブ16a、16bの高さは中央部から供給ポート12、排出ポート13側に向かって漸次高くなるように形成している。
【0060】
このように構成することで、液体吐出ヘッド1の両端部のメニスカス破壊を確実に回避することができる。つまり、供給ポート12と排出ポート13は液体循環路11に比べて開口断面積が小さい開口であるため液体の流速が液体循環路11の部分よりも大きくなる。したがって、液体の循環によるメニスカスへの影響は、ポート12、13から遠い中央部よりもポート12、13に近い両端部の方が大きくなる。そこで、第3実施形態と同様に共通液室7側での流れを抑えつつ、供給ポート12と排出ポート13が設けられる両端部のリブ16の高さを中央部より高くすることによって、液体吐出ヘッド1の両端部のメニスカス破壊をより確実に回避することができる。また、両端部領域におけるリブ16の高さを漸次変化させることで、領域供給ポート12、排出ポート13と液体循環路11の接続部近傍における断面変化が滑らかになるので流れも安定する。
【0061】
このように、内部に液体吐出ヘッドのノズルの並び方向に沿って液体が循環する液体循環路を有し、液体循環路の長手方向の端部には、液体循環路に液体を供給する供給ポートと液体循環路から液体を排出する排出ポートが設けられ、液体循環路の共通液室側の内壁面にはリブが形成されている構成とすることで、液体吐出ヘッドで発生した気泡や液体供給経路上流から液体吐出ヘッド内に流入した気泡を液体吐出ヘッドのメニスカスを破壊することなく循環流によって排出することができる
【0062】
次に、本発明に係る液体供給部材の第5実施形態について図20ないし図22を参照して説明する。なお、図20は同実施形態に係るヘッドユニットの平断面図、図21は図20のK−K線に沿う同ヘッドユニットの短手方向断面図、図22は図21と異なる他の例の図20のK−K線に沿う同ヘッドユニットの短手方向断面図である。
このヘッドユニットの液室供給部材10は、上記第3、第4実施形態ではリブ16を主に液体循環路11の長手方向(循環流生成方向)に平行に形成したのに対して、液体循環路11の長手方向(循環流生成方向)と直交する方向に形成したものである。
【0063】
この構成では、液体循環路11の共通流路7側において循環する液体と壁面との接触面積が増大するのに加えて、リブ16が形成されている領域では循環流の形成方向に液体循環路11の開口断面積が変化することによる流れの損失増大の効果もあるので、液体供給部材10内部の液体を循環した場合に、循環流が液体循環路11内の共通流路7側で緩やかになり、循環流によるメニスカスへの悪影響を低減することができる。
【0064】
この場合、図22に示す他の例のように、供給ポート12と排出ポート13の近く(両端部側)のリブ16の高さを中央部のリブ16の高さよりも高くすることで、前記第4実施形態と同様の理由で、液体吐出ヘッド1の両端部のメニスカス破壊をより確実に回避することができるとともに、領域供給ポート12、排出ポート13と液体循環路11の接続部近傍における断面変化が滑らかになるので流れも安定する。
【0065】
次に、本発明に係る液体供給部材の第6実施形態について図23を参照して説明する。なお、図23は同実施形態に係るヘッドユニットの短手方向断面図である。
このヘッドユニットの液体供給部材10は、液体循環路11の循環流生成方向に直交する断面での形状を、鉛直上方向に頂点を有する三角形形状に形成している。このように天面11d側を上に凸な形状にして狭めることにより、液体循環路内の気泡を一箇所に集められるので、循環流によって排出しやすくなると共に、細かい気泡が天面部で合体して大きな気泡になり排出しやすくなる。
【0066】
次に、本発明に係る液体供給部材の第7実施形態について図24及び図25を参照して説明する。なお、図24は同実施形態に係るヘッドユニットの長手方向断面図、図25は図24のL−L線に沿う同ヘッドユニットの短手方向断面図である。
このヘッドユニットの液体供給部材10は、前記第2実施形態の液体供給部材10において、供給ポート12、排出ポート13を長手方向両端部で液体循環路11の上面11a(天面)側に設けている。
【0067】
つまり、前記第2実施形態では供給ポート12、排出ポート13は液体循環路11の天面11aから高さ方向に高さYhだけ下がった位置に設けているのに対し、ここでは供給ポート12、排出ポート13は液体循環路11の天面11dから高さ方向に高さYh1(Yh1<Yh)だけ下がった位置に設けている。
【0068】
これにより、気泡50は浮力で液体循環路11の上面部に浮遊した状態で滞留するので、循環流は液体循環路11の天面部に近い位置で流速が大きくなるように生成することで気泡50を排出しやすい。そのため、供給ポート12と排出ポート13を液体循環路11の天面部に近い位置に形成することで、天面部付近の流速が大きく(速く)なるようにしている。
【0069】
また、前記第1ないし第7実施形態で説明した液体供給部材10のように、供給ポート12と排出ポート13の向きも液体循環路11の長手方向の向き、即ち循環流生成方向の向きに沿って設けることで、循環流の流れが循環の一方向のみになりやすいので、気泡排出効率を高めることができる。
【0070】
つまり、図26及び図27に示す比較例3のように、供給ポート12と排出ポート13を、液体供給部材10の液体吐出ヘッド1と接続する面と反対側の面(天面11d)側に設けて(液体循環路11に開口させて)も、循環流は生成されるが、循環流は矢印65〜67のような流れとなり、液体吐出ヘッド1方向の流速成分が大きくなるので、好ましくない。
【0071】
次に、本発明に係る液体供給部材の第8実施形態について図28を参照して説明する。なお、図28は同実施形態に係るヘッドユニットの長手方向断面図である。
このヘッドユニットの液体供給部材10は、供給ポート12を液体供給部材10の液体吐出ヘッド1と接続する面と反対側の面(天面11d側の部分:天面部という。)の長手方向中央部に設け、長手方向両端部に排出ポート13、13を設ける構成としている(あるいは、逆に、供給ポート12を両端部、排出ポート13を中央部天面側に設ける構成とすることもできる。)。なお、その他の構成は前記第2実施形態と同様である。
【0072】
そして、液体循環路11内には、供給ポート12と液体吐出ヘッド1の共通液室7との間に、供給ポート12から供給される液体の流れを排出ポート13、13に向かう方向に整える整流部材18を配置している。この整流部材18の共通液室7に対向する面を傾斜面19とし、共通液室7から浮上した気泡が整流部材18にトラップされにくくしている。
【0073】
このように構成することで、供給ポート12(又は排出ポート13)を液体供給部材10の長手方向中央部の天面部に設けた場合に、循環流が液体吐出ヘッド1のメニスカスに悪影響しないようにすることができる。
【0074】
つまり、図29に示す比較例4のように、整流部材18を設けない構成にあっては、供給ポート12と排出ポート13の間の距離が短いため気泡が排出しやすい面も多少あるが、液体吐出ヘッド1方向の流速成分が大きく、メニスカスに悪影響をしやすい不具合があると共に、1つの管路内で長手方向に正反対の2方向の流れが形成されるため、その境界部に流れのよどみができたり渦流が発生したりするので、一方向流れと比較すると気泡排出性が相対的に悪くなる。
【0075】
そこで、循環流の流れに沿う方向でない向きに供給ポート12又は排出ポート13を設ける場合には、ポートの液体流出入口と液体吐出ヘッド1の共通液室7の間に整流部材18を形成して流れを整えることによって循環流が液体吐出ヘッド1のメニスカスに悪影響しないようにすることができる。
【0076】
このように、内部に液体吐出ヘッドのノズルの並び方向に沿って液体が循環する液体循環路を有し、この液体循環路に液体を供給する供給ポートと液体循環路から液体を排出する排出ポートが設けられ、供給ポートと排出ポートのいずれかは液体循環路の長手方向端部以外の部分に設けられ、この長手方向端部以外の部分に設けられたポートに対応して共通液室との間に流れを整える整流部材が設けられている構成とすることで、液体吐出ヘッドで発生した気泡や液体供給経路上流から液体吐出ヘッド内に流入した気泡を液体吐出ヘッドのメニスカスを破壊することなく循環流によって排出することができる。また、液体供給部材の長手方向端部以外に供給ポートや排出ポートが設けられた場合にも、液体の循環によって発生するヘッドに悪影響を及ぼす流れの方向を整流部材によって変えることができるので、液体供給部材に多数のポートを設けて気泡排出の効率を向上することができる。
【0077】
なお、液体供給部材10の液体循環路11の内部に、図30に示す比較例5のようにフィルタ14を設けることは好ましくない。つまり、フィルタ14を設ける構成にすると、循環流の流れが液体吐出ヘッド側に影響しにくくなると共に、主幹流路11a内の気泡50が液体吐出ヘッド1に入りにくくなり有効である。しかし、逆に、ノズル5から混入したり、個別液室6の内部で発生した気泡51が、共通液室7の方に移動し、液体循環路11に向かうときにフィルタ14下部にトラップされてしまう。この気泡51は、循環流では排出できず、ノズル5から液体と一緒に排出するしかない。したがって、液体吐出ヘッド1や液体循環路11の内部にはフィルタを設けない方が好ましい。
【0078】
次に、本発明に係る液体供給部材の第9実施形態について図31及び図32を参照して説明する。なお、図31は同実施形態に係るヘッドユニットの長手方向断面図、図32は図31のN−N線に沿う同ヘッドユニットの短手方向断面図である。
前述した各実施形態においては、第2実施形態のように液体吐出ヘッド1の共通液室7に液体循環路11の狭連通流路11bが直接接続される構造や、第3実施形態のように液体循環路11の共通液室7側にリブ16を形成する構造を有する液体供給部材10について説明してきた。
【0079】
これに対して、この第9実施形態のヘッドユニットの液体供給部材10は、液体循環路11の狭連通流路11bと液体吐出ヘッド1の間に液体バッファ流路11cを設けている。つまり、供給ポート12から排出ポート13に向けて液体を流したときの流れに直交する液体循環路11の流路断面は、略中央部が狭くくびれて(狭連通流路11bの部分)、両側(主幹流路11a、液体バッファ流路11cの部分)が大面積である形状であり、一方の大面積の部分である液体バッファ流路11cが連通口17を介して共通液室7に連通し、他方の大面積の部分である主幹流路11a側に供給ポート12と排出ポート13が設けられている構成となっている。
【0080】
このような構成でも、メニスカスを破壊せずにヘッド1内及び液体循環路11内の気泡を循環流を用いて排出することができる。さらに、液体バッファ流路11cを設けることで、液滴を吐出する時の圧力波を液体バッファ流路11cで吸収しやすくなるので、液滴の吐出安定性が向上する。
【0081】
さらに、ここでは、液体循環路11を構成する主幹流路11aの天面11dを長手方向と直交する方向での断面形状で上に凸な曲面形状としている。また、主幹流路11aと供給ポート12及び排出ポート13との接続部を傾斜面11e、11fにより滑らかにつながる構成にしている。このようにすることで、主幹流路11a内での渦流の発生や流れの剥離等がなくなり気泡を効率よく排出できる。
【0082】
このように、内部に液体吐出ヘッドのノズルの並び方向に沿って液体が循環する液体循環路を有し、液体循環路の長手方向の端部には、液体循環路に液体を供給する供給ポートと液体循環路から液体を排出する排出ポートが設けられ、供給ポートから排出ポートに向けて液体を流したときの流れに直交する液体循環路の流路断面は、略中央部が狭くくびれて、両側が大面積である形状であり、一方の大面積の部分が共通液室の開口に連通し、他方の大面積の部分側に供給ポートと排出ポートが設けられている構成とすることで、液体吐出ヘッドで発生した気泡や液体供給経路上流から液体吐出ヘッド内に流入した気泡を液体吐出ヘッドのメニスカスを破壊することなく循環流によって排出することができる。
【0083】
また、供給ポートと排出ポートが設けられて循環流が生成される領域を通常の液体供給流量が確保できる範囲で狭くして循環流の流速を大きくできるので、更に気泡排出性が向上すると共に、ヘッドに近い領域を広い空間にして液体吐出ヘッドの吐出圧の伝播による不具合を解消するバッファ空間とすることで、更に吐出安定性が向上する。
【0084】
次に、本発明に係る液体供給部材の第10実施形態について図33及び図34を参照して説明する。なお、図33は同実施形態に係るヘッドユニットの長手方向断面図、図34は図33のO−O線に沿う同ヘッドユニットの短手方向断面図である。
ここでは、上記第3実施形態と第9実施形態を適用して、液体循環路11の中間部にリブ16を設けて液体バッファ流路11cを共通液室7の上部に設けている。
【0085】
このような構成でも、メニスカス破壊せずにヘッド内及び液体循環路11内の気泡を循環流を用いて排出することができる。さらに、液体バッファ流路11cを設けることで、液滴を吐出する際の圧力波を液体バッファ流路11cで吸収しやすくなるので、液滴の吐出安定性が向上する。
【0086】
次に、本発明に係る液体供給部材の第11実施形態について図35を参照して説明する。なお、図35は同実施形態に係るヘッドユニットの短手方向断面図である。
このヘッドユニットの液体供給部材10は、主幹流路11aを形成する主幹流路形成部10aと、狭連通流路11bを形成する狭連通流路形成部10bとが材質の異なる部材(部品)で構成し、狭連通流路形成部10bは主幹流路形成部10aよりも熱伝導率が大きい材料で形成している。ここで、熱伝導率が大きい材料としては、金属のほか、シリカ、アルミナ、窒化ホウ素、マグネシア、窒化アルミニウム、窒化ケイ素等の熱伝導性フィラが充填された樹脂も好適である。
【0087】
つまり、液体吐出ヘッド1は、その吐出周波数が高くなると自身の発熱により温度上昇する。特に、発熱体を駆動し膜沸騰で液滴を吐出する方式のサーマル型液体吐出ヘッド1においては温度上昇が著しい。液体吐出ヘッド1の温度上昇は、内部の液体の温度上昇を引き起こし、吐出される液体の温度が変わると、液滴の吐出体積や吐出速度が変わることになる。
【0088】
そこで、この実施形態のように、液体吐出ヘッド1に供給される液体が通過する最も狭い部分である液体供給部材10の狭連通流路形成部10bを金属等の熱伝導率の大きな材質で形成すると、液体吐出ヘッド1が発生する熱を効果的に奪って温度上昇を防止することができ、液体吐出ヘッド1に供給される液体の温度を安定化しやすく、安定した滴吐出特性を実現しやすくなる。
【0089】
次に、本発明に係る液体供給部材の第12実施形態について図36及び図37を参照して説明する。なお、図36は同実施形態に係るヘッドユニットの短手方向断面図、図37は図36のP−P線に沿う断面説明図である。
このヘッドユニットの液体供給部材10も、第11実施形態と同様に、主幹流路11aを形成する主幹流路形成部10aと、狭連通流路11bを形成する狭連通流路形成部10bとが材質の異なる部材(部品)で構成し、更に、狭連通流路形成部10bの放熱効果を更に高めるために、液体循環路11の内側及び外側に各々内部フィン15aと外部フィン15bを設けている。
【0090】
このように構成することで、液体循環路内の液体や外気との接触面積が拡大され、温度の安定化がさらに容易になる。
【0091】
また、内部フィン15aは、前記第5実施形態で説明したリブ16と同様に、循環流のヘッド1への影響を低減する作用も有する。したがって、内部フィン15aの向きとしては、少なくとも狭連通流路11bについては、図36に示すように、内部フィン15aの長手方向が主幹流路11aから液体吐出ヘッド1に向かう方向、即ち、循環流に対してフィンが直交するようにすることが好ましい。このような向きにすることにより、共通液室7からの気泡の浮上を妨げずに、狭連通流路11b内の循環流をさらに抑制することができる。
【0092】
次に、本発明に係る液体吐出装置を含む画像形成装置に適用について説明する。なお、ここでは、液体としてインクを吐出し、ファクシミリ装置、複写装置、これらの複合機などにも適用可能なインクジェットプリンタに適用した例を説明するが、本発明に係る液体吐出装置は、インク以外の液体、例えばDNA試料やレジスト、パターン材料などを吐出する液体吐出ヘッドや液体吐出装置、或いはこれらを備える画像形成装置にも適用することができる。
【0093】
まず、本発明に係る画像形成装置の第1実施形態について図38ないし図40を参照して説明する。なお、図38は同画像形成装置の構成図、図39は同装置の維持回復時の状態を示す説明図、図40は液体供給経路の説明に供する模式的説明図である。
この画像形成装置は、搬送される最大の紙幅に対応した長さを有する長尺形状の液体吐出ヘッドからなる記録ヘッド1(1K、1C、1M、1Y)が異なる4色(ブラック、シアン、マゼンタ、イエローの各色)のインクごとに4つ設けられたラインプリンタである。4つの記録ヘッド1は、ヘッドフレーム36に固定されており、図示しないヘッド昇降機構により4つのヘッド1が同時に上下に移動可能な構成となっている。
【0094】
記録ヘッド1のすぐ下方にはインクにより画像が記録される記録紙が搬送される。記録紙は、給紙トレイ38に積載保持されており、図示しない分離給紙機構により1枚ずつ送り出され、紙搬送ベルト30によって搬送され、記録完了後、排紙トレイ39に排紙される。
【0095】
紙搬送ベルト30は、ベルト搬送ローラ31とテンションローラ32によって張架されており、表層は樹脂材で構成された高抵抗層、裏層は樹脂材料にカーボンによる抵抗制御を行った中抵抗層の2層構造である。この紙搬送ベルト30には、金属ローラの外層に中抵抗層が形成され最外層に薄い高抵抗層が形成された帯電ローラ33が接触されている。
【0096】
そこで、帯電ローラ33に高電圧を印加することにより、紙搬送ベルト30と帯電ローラ33のニップ部近傍のエアーギャップで放電が生じ、紙搬送ベルト30上に電荷が付着する。帯電ローラ33に印加する電圧を正負の交流電圧とすると、紙搬送ベルト30上には正負の電荷が交互にストライプ状に付着する。このように帯電した紙搬送ベルト30に記録紙を供給すると、静電力によって記録紙が紙搬送ベルト30に吸着する。記録紙が強固に紙搬送ベルト30に保持された状態で印字を行うことができるため、高速に用紙を搬送しながら印字を行う場合でも、安定した印字品質を得ることができる。
【0097】
記録ヘッド1は、前述した第2実施形態で示すような発熱体4の駆動によるインクの膜沸騰により吐出圧を得るサーマル方式のものとし、液室6内の吐出エネルギー作用部(発熱体部)へのインクの流れ方向とノズル5の開口中心軸とを直角となしたサイドシューター方式の構成としている。
【0098】
このような構成とすることによって、発熱体4からのエネルギーをより効率良くインク滴の形成とその飛行の運動エネルギーへと変換でき、またインクの供給によるメニスカスの復帰も速いという構造上の利点を有する。また、エッジシューター方式において問題となる気泡が消滅する際の衝撃により発熱体4を徐々に破壊する、いわゆるキャビテーション現象をサイドシューターであれば回避することができる。つまり、サイドシューターにおいて気泡が成長し、その気泡がノズル5に達すれば気泡が大気に通じることになり温度低下による気泡の収縮が起こらない。そのため、記録ヘッドの寿命が長いという長所を有する。
【0099】
この記録ヘッド1は、例えば次のようにして製作することができる。まず、発熱体基板2は、熱酸化によって形成されたSiO2膜を有するシリコンウエハ上に発熱抵抗体層としてHfB2をRFマグネトロンスパッタで積層し、更に電極層としてAlをEB蒸着法で積層する。次に、フォトリソ技術によりAl層をリン酸硝酸系エッチング液でエッチングした。次に、RIEを用いて、発熱抵抗体層をエッチングする。発熱体4を露出するために、露出部分に相当する部分を除いた部分にレジスト膜を形成し、エッチング液で処理してレジストの設けられていない部分にあるAlをエッチングして、一対の電極間に発熱体4を設ける。最後に、電気熱変換体上に保護層としてのSiO2層を、更に発熱体配列部以外の部分にポリイミド層を設けて発熱体基板2を形成する。
【0100】
次いで、この発熱体基板2上に、溶解可能な樹脂層としてポリメチルイソプロペニルケトン(東京応化工業(株)社製ODUR−1010)をPET上に塗布、乾燥しドライフィルムとしたものをラミネートにより転写する。プリベーク後、個別液室6に対応するパターン露光を行い、メチルイソブチルケトン/キシレン=2/1を用いて現像する。次に、エポキシ樹脂、光カチオン重合開始剤、シランカップリング剤からなる樹脂組成物をメチルイソブチルケトン/キシレン混合溶媒に50wt%の濃度で溶解し、スピンコートにて感光性被覆樹脂層を形成する。その後、ノズル5に対応するパターン露光及びアフターベークを行った後、メチルイソブチルケトンで現像を行い、ノズル5を形成する。
【0101】
さらに、メチルイソブチルケトン中に超音波を付与しつつ浸漬し、残存している溶解可能な樹脂を溶出し、150℃ 1時間加熱し感光性被覆材料層を完全に硬化させた。最後に、共通液室7を、TMAH(水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液)によるシリコンの異方性エッチングにより形成する。このとき、作製した液室部材2がダメージを受けないように、環化ゴムからなる保護層でシリコン基板のノズル5を形成した側の面を保護する。
【0102】
以上により、600dpi/列、2400CH/列(1列に2400個のノズル5が配置されているという意味)、ノズル列間距離240μm、共通液室7の最大開口幅約1.8mm、長さ約110mmのライン型ヘッドを作製することができる。
【0103】
液体供給部材10は、第2実施形態に係る液体供給部材10とし、図11ないし図13に示す断面形状の流路(液循環路11)を有する部品を透明なポリカーボネート樹脂の切削/貼り合わせで作製し、液体吐出ヘッド1に接着固定している。この液体供給部材10の内部の寸法は、例えば、図11ないし図13において、Wa:5mm、Wb:2.4mm、Ha:6mm、Hb:4mm、Yb:1.5mm、Ls:5mmとしている。そして、液体供給部材10の両端には供給ポート12と排出ポート13を主幹流路11aの断面の中央部(Yh:3mmの位置)に設けて、図40に示すような液体供給経路内(インク供給系)に接続している。
【0104】
この液体供給経路(系)において、ヘッドタンク70は、記録ヘッド1にインクを供給すると共に、気泡を受け入れて外部に排出する機能を有するもので、内部が第1インク室71と上部に大気開放口73が設けられた第2インク室72に分けられており、ポンプP2によって第2インク室72から第1インク室71にインクを移送可能になっている。第2インク室72にはインクカートリッジ76が接続されており、フィルタ75によってろ過されたインクがポンプP1によってヘッドタンク70の第2インク室72に補充可能な構成となっている。
【0105】
このヘッドタンク70の第2インク室72の底面にはインクポートが設けられ、常開のバルブV2を介してヘッド1の液体供給部材10の排出ポート13に接続されている。第2インク室72のインク量はインク液面とヘッド1の水頭差Shが一定の値(10〜150mm)になるように液位検知センサ74によって管理される。
【0106】
ここで、通常の画像形成時においては、ポンプP1、P2は停止状態、バルブV2のみ開状態にする。インクは、第2インク室72から排出ポート13を経由して記録ヘッド1に供給される。インク消費により第2インク室72の液面が所定の位置よりも低くなると液位検知センサ74が検出する。これにより、バルブV1を開き、ポンプP1を動作させてインクカートリッジ76から第2インク室72にインクを補充する。補充停止は、液位検知センサ74の検出信号によって制御している。
【0107】
また、ヘッド1の目詰まり等が生じた場合は、ヘッド1の回復動作を行う。図38の状態からヘッド1が上方に移動し、維持ユニット35が水平方向に移動(図38の状態から図の右方向:矢示方向に移動)してヘッド1の真下に配置される。そして、ヘッド1が少し下降して、図41に示すように維持ユニット35のホルダ43で保持されているキャップ40にヘッド1のノズル5を形成したノズル面5aが密着した状態にする。この状態で、図40のバルブV1、V2を閉じてポンプP2のみを一定時間駆動する。
【0108】
これにより、第1インク室71内のインクが加圧されてヘッド1に流れ込む。バルブV2が閉じているので、インクはヘッド1のノズル5から排出される。この排出されるインクと一緒にヘッド1の目詰まりの原因となっていた気泡や異物が除去される。そして、ポンプP2を停止した後、ヘッド1をキャップ40と非接触状態になるレベルに上昇し、維持ユニット35を水平方向に移動(図39の状態から図の右方向に移動)して、図42のようにヘッド1のノズル面5aをワイパーブレード41でワイピングする。ワイピングによりノズル5にメニスカスが形成された後、バルブV2を開いてヘッド1を水頭差Shに相当する負圧状態に保持する。
【0109】
キャップ40内にはヘッド1から排出されたインクが溜まるので、それをポンプ45で吸引して廃液タンク44に廃出する。なお、キャップ40内のインクをフィルタを用いてろ過すれば、廃液タンク44ではなくヘッドタンク70の第2インク室72に戻すようにして吸引したインクをも再利用することも可能である。
【0110】
その後、ヘッド1の昇降及び維持ユニット35の水平移動により図38の状態で記録動作を行うか、図39の状態で記録指示があるまで待機する。この回復動作により、目詰まりが解消し、ヘッド1を良好な状態に維持することができる。
【0111】
ここで、図40に示す液体供給系において、液体供給部材10とヘッドタンク70をつなぐ流路80、81は通常は樹脂チューブであるので、チューブ素材自身の透気性により経時的に内部に気泡が混入する。この気泡が液体供給部材10の内部に多く堆積すると、記録動作中にインクの流れに乗ってヘッド1に混入し、インク滴吐出不良の原因となる。液体供給部材10から気泡を排出するには、図40において、バルブV2を開いた状態で、ポンプP2のみを駆動し、第2インク室72から第1インク室71にインクを流す。インクは、第1インク室71から液体供給部材10の供給ポート12に入り、液体供給部材内部の気泡と一緒に排出ポート13から排出され、第2インク室72に戻る。第2インク室72でインク中の気泡は浮上して大気開放口73から排出される。
【0112】
この画像形成装置における本発明に係る液体供給部材10を用いた場合の気泡排出性を評価するため、液体供給部材10の上流側に三方弁をつけてチューブ内に気泡を注入し、液体供給部材10の内部を観察しながらポンプP2を作動させて液体供給部材10内に気泡を混入させた。液体供給部材10内部の流れが止まるまで待機した後、再度ポンプV2を作動させて60ml/minの流量でインクを循環させた。その結果、液体供給部材10内の上部角部に小さい気泡が残留したが、概ね良好に気泡が排出できたことを確認した。また、ヘッド1のノズル面を観察したところ、ノズル5からのインクのにじみ出し等の不具合もなく、吐出不良なく良好な画像形成を行うことができた。
【0113】
次に、同様に液体供給部材10内に気泡を混入させた後、90ml/minでインクを循環したところ、先の条件で気泡が残留した角部にも気泡は残らず、良好に気泡排出が行えた。しかし、ノズル5を観察したところ、ノズル5からインクがにじみ出ていることが確認された。
【0114】
次に、第7実施形態(図24及び図25)で説明したように、供給ポート12と排出ポート13の位置を鉛直上方に変更(Yh1:1mmに変更)した液体供給部材10を用いて、同様に気泡排出実験を行った。その結果、90ml/minでインクを循環した場合でも、ノズル5からインクが滲み出す不具合もなく、良好に気泡排出が行えることが確認された。
【0115】
さらに、別の形態として、第6実施形態(図23)に示すように、主幹流路11aの上方角部を面取りして天面中央部が上に向けて凸になるような形状(Wa:5mm、Wb:2.4mm、Ha:6mm、Hb:4mm、Yh:3mm、Yc:1.5mm、Wc:1mm)とした。その結果、60ml/minでインクを循環した場合でも、ノズル5からインクが滲み出す不具合もなく、良好に気泡排出を行うことができた。
【0116】
ここで、比較例として、比較例1(図6及び図7)に示すように、液体循環路11から狭連通流路11bを取り除いた形態の液体供給部材(Wc:5mm、Hc:6mm、Yh:3mm)を作製し、これを用いて同様の気泡排出実験を行った。その結果、60ml/minの流量でインクを循環させることで気泡を排出することはできたが、ノズル5からのインクの滲み出しが観察された。循環流量を小さくしたり、供給ポート12と排出ポート13の位置を上方にオフセットしたりしたが、ノズル5からインクが滲み出さないで気泡排出性を確保できる条件は得られなかった。
【0117】
そこで、比較例2(図8及び図9)のように、液体循環路11の高さを増やした構成(Wd:5mm、Hd:12mm、Yh:3mm)として同様に気泡排出評価を行った。その結果、良好な気泡排出性を得るためには流量が120ml/min以上必要であったが、気泡排出動作を行うときのヘッドタンク70の第2インク室72内のインク水位が低い条件の時に頻度は少ないが、ノズル5のメニスカスが壊れて吐出しないチャンネル(ノズル5)が発生した。
【0118】
このように、液体循環路11の高さを増やす構成とする必要がある場合には、第9実施形態(図31及び図32)のような構成とする方法も有効である。第9実施形態の液体供給部材10では、液体循環路11のヘッド1に最も近い部分を大空間の液体バッファ流路11cとしており、その上部に狭連通流路11bと主幹流路11aを設けている。ヘッド1で発生して共通流路7に流れ出した気泡は浮力で主幹流路11aの天面11dまで上昇する。このとき、液体バッファ流路11cの上部は傾斜面としているので気泡は液体バッファ流路11c内に滞留しない。また、主幹流路11aの天面11dは上に凸な曲面形状としているので、気泡が最上部に集まって排出しやすい。
【0119】
このような構成では、循環流の位置をヘッド1から離して循環流のヘッド1への影響を低減化できる。また、主幹流路11aは記録動作における流量を確保するだけの断面積に最小化し、循環流を高速化して気泡の排出性を高めることができる。さらに、ヘッド1に近い部分に大きな容積のバッファ部(バッファ流路11c)が設けられるので、ヘッド1の吐出圧を吸収することができ、所謂相互干渉の抑制に有効である。この点においては、1つのノズルから複数種類の大きさの液滴を吐出させる圧電方式の吐出ヘッドに対して特に有効である。
【0120】
図31及び図32において、各部の寸法をWia:5mm、Wic:2.4mm、Hia:4mm、Hib:4mm、Hic:6mm、Yh:2mmとして、前述と同様の方法で気泡排出性の評価を実施したところ、60ml/minの流量で気泡が完全に排出でき、ノズルのメニスカス破壊なども生じなかった。また、気泡排出のためのインク循環動作を行いながら、画像形成も行うことができた。
【0121】
以上の実施形態では、液体供給部材10内にフィルタを設けていないため、記録動作を繰り返す中でヘッド側から気泡が発生した場合でも、狭連通流路11bを経由して主幹流路11aに浮上したため、インク循環により排出させることができた。これに対し、図30のように狭連通流路11bと主幹流路11aの間にフィルタ14を設けた液体供給部材10を用いて記録動作を繰り返したところ、ヘッド1で発生した気泡がフィルタ14を通過することができず、狭連通流路11b内に堆積し、前述した回復動作でなければ外部に排出できなかった。
【0122】
以上説明したように、本発明では液体供給部材のヘッドとの連通部を狭めて循環流の影響がノズルのメニスカスに及ばないようにしている。したがって、記録動作中に循環流を形成することもできる。インクを循環させながら記録を行うことで、気泡が堆積することがなくなり、気泡排出のために記録動作を中断することがなく記録のスループットが向上する。
【0123】
次に、本発明に係る画像形成装置の第2実施形態について説明する。
ここでは、液体供給部材10として、第4実施形態(図17ないし図19)に係る液体供給部材10を用いた。液体供給部材10は、図18及び図19に示す断面形状の流路を有する部材を透明なポリカーボネート樹脂の切削/貼り合わせで作製して、液体吐出ヘッド1に接着固定した。液体流路部材10の内部の寸法は、図19において、Wa:7mm、Ha:6mm、Hb:4mm、Yb:1.5mm、Ls:5mmとした。また、リブ16としては、まず共通液室7への開口部の長手方向両端に厚さ0.4mmのリブ16aを0.9mmピッチで3個設け、開口部の幅方向に厚さ0.5mmのリブ16bを0.9mm間隔で両側2個ずつ設けた。
【0124】
そして、液体供給部材10の長手方向両端に供給ポート12と排出ポート13を設け、上記画像形成装置の第1実施形態と同様に、図40に示すようなインク供給系(液体供給経路内)に接続し、気泡排出性を評価した。その結果、液体供給部材10内に故意に混入させた気泡を70ml/minの流量でインクを循環させることで、良好に気泡が排出できた。また、ノズル5からのインクのにじみ出し等の不具合もなく、吐出不良なく良好な画像形成を行うことができた。
【0125】
次に、本発明に係る画像形成装置の第3実施形態について図43をも参照して説明する。
ここでは、上記画像形成装置の第2実施形態で説明した液体供給部材10を、図41に示す液体供給経路内(インク供給系)に接続した。このインク供給系は、液体供給部材10の排出ポート13の下流側に流量調整弁V3を設けている点が前述した図40のインク供給系と異なっている。
【0126】
このように、排出ポート13の下流に流量調整弁V3を設けることで、排出ポート13から排出されるインクの流量(Qc)を調節することができるため、この流量Qcを小さくすることによって液体循環路11からヘッド1へインクを圧送することができる。これにより、液体循環路11内の気泡排出とヘッド1内の気泡排出を同時に行うことができる。
【0127】
次に、前述した図35に示す前記液体供給部材の第11実施形態、図36及び図37に示す第12実施形態の具体例について説明する。
この具体例では、液体供給部材10の内部の寸法は前記画像形成装置の第1実施形態で説明したと同じであるが、液体供給部材10を2つの異なる材質としている。具体的には、主幹流路11aを形成する主幹流路形成部10aをポリカーボネート樹脂、狭連通流路11bを形成する狭連通流路形成部10bをSUSとした。また、ヘッド1を前記画像形成装置の第1実施形態で説明したサーマル方式のものとしている。
【0128】
サーマル方式では特にヘッド1の温度上昇が著しいため、通常はヘッドの駆動周波数を下げたり、記録を一時中断したり、駆動するノズル数を減らしたりするが、この液体供給部材10ではヘッド1側の狭連通流路形成部10bを熱伝導率の大きい材料で形成しているので、直接ヘッド1に接合する形態にすることで、ヘッド1の熱を直接奪えて温度上昇を低減できる。また、流路の細まった部分を熱伝導率の大きい材料とするので、インクの熱を効率的に奪うことができ、連続して記録を行った場合でも安定した画像形成を行えることができた。
【0129】
さらに、第12実施形態(図36及び図37)に示すように、液体供給部材10の狭連通流路形成部10bの内側と外側を両方に複数のフィン15a、15bが設けられている構成としたところ、さらに、放熱効率が高まりより大きな印字デューティの画像を高速に印字することが可能となった。さらに、この液体供給部材10では、流路内のフィン15aを鉛直方向が長手方向になるようにしたので、ヘッド1からの気泡の浮上を妨げることなく放熱能力を向上することができた。また、流路内のフィン15aを循環流の流れる方向に対して直角方向に形成したことと、フィン15aを主幹流路11aの底部にも設けたことにより、狭連通流路11b部の循環流による流れを効果的に抑制でき、循環流によるメニスカス破壊に対する耐性が向上した。
【0130】
次に、前述した図28に示す前記液体供給部材の第8実施形態の具体例について説明する。
この液体供給部材10は、前述したように供給ポート12を液体供給部材10の中央部に設け、排出ポート13を液体供給部材の長手方向両端部に設けている。また、液体循環路11内の供給ポート12の真下に当たる位置に整流部材18を設けている。整流部材18は、供給ポート12の上面は供給されるインクが2つの排出ポート13の方向に滑らかに分流しやすいように曲面で形成し、下面(底面)は、ヘッド1から浮上する気泡を滞留させないように傾斜面とした。
【0131】
この液体供給部材10を図40又は図43に示すインク供給系に接続し、同じ循環流量で気泡排出評価を実施したところ、画像形成装置の第1実施形態で説明した場合よりも更に短時間で気泡を排出することができた。比較実験として、図29に示すように整流部材を設けない構成で同様の評価を行ったところ、図29の領域Qに気泡が若干残りやすい不具合があった。また、ヘッドの中央部のノズルのメニスカスが壊れやすい不具合が生じた。
【0132】
なお、本発明は、様々な液体吐出方式のヘッドに対して適用可能であるが、前述の実施形態で説明したサーマル方式のヘッドはインクも含めて昇温しやすいため、特に好適である。また、サーマル型ヘッドの中でも前述したサイドシュータ型のヘッドは、ヘッド内部で気泡が発生しやすく、発生した気泡が共通液室に流れやすいため更に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0133】
【図1】本発明に係る液体供給部材の第1実施形態の説明に供する液体供給部材を液体吐出ヘッドに接続して一体化されて構成されるヘッドユニットを示す斜視説明図である。
【図2】同ヘッドユニットの長手方向断面図である。
【図3】図2のA−A線に沿う同ヘッドユニットの短手方向断面図である。
【図4】同実施形態の作用説明に供するヘッドユニットの長手方向断面図である。
【図5】図4のB−B線に沿う同ヘッドユニットの短手方向断面図である。
【図6】同じく比較例1のヘッドユニットの長手方向断面図である。
【図7】図6のC−C線に沿う断面説明図である。
【図8】同じく比較例2のヘッドユニットの長手方向断面図である。
【図9】図8のD−D線に沿う断面説明図である。
【図10】同じく同実施形態の液体循環路の他の異なる断面形状の説明に供する模式的説明図である。
【図11】本発明に係る液体供給部材の第2実施形態の説明に供するヘッドユニットの長手方向断面図である。
【図12】図11のE−E線に沿う同ヘッドユニットの短手方向断面図である。
【図13】図11のF−F線に沿う同ヘッドユニットの短手方向断面図である。
【図14】本発明に係る液体供給部材の第3実施形態の説明に供するヘッドユニットの長手方向断面図である。
【図15】図14のG−G線に沿う同ヘッドユニットの平断面図である。
【図16】図14のH−H線に沿う同ヘッドユニットの短手方向断面図である。
【図17】本発明に係る液体供給部材の第4実施形態の説明に供するヘッドユニットの長手方向断面図である。
【図18】図17のI−I線に沿う同ヘッドユニットの平断面図である。
【図19】図17のJ−J線に沿う同ヘッドユニットの短手方向断面図である。
【図20】本発明に係る液体供給部材の第5実施形態の説明に供するヘッドユニットの平断面図である。
【図21】図20のK−K線に沿う同ヘッドユニットの短手方向断面図である。
【図22】図21と異なる他の例の図20のK−K線に沿う同ヘッドユニットの短手方向断面図である。
【図23】本発明に係る液体供給部材の第6実施形態の説明に供するヘッドユニットの短手方向断面図である。
【図24】本発明に係る液体供給部材の第7実施形態の説明に供するヘッドユニットの長手方向断面図である。
【図25】図24のL−L線に沿う同ヘッドユニットの短手方向断面図である。
【図26】比較例3のヘッドユニットの長手方向断面図である。
【図27】図26のM−M線に沿う同ヘッドユニットの短手方向断面図である。
【図28】本発明に係る液体供給部材の第8実施形態の説明に供するヘッドユニットの長手方向断面図である。
【図29】同実施形態の作用説明に供する比較例4のヘッドユニットの長手方向断面図である。
【図30】比較例5のヘッドユニットの短手方向断面図である。
【図31】本発明に係る液体供給部材の第9実施形態の説明に供するヘッドユニットの長手方向断面図である。
【図32】図31のN−N線に沿う同ヘッドユニットの短手方向断面図である。
【図33】本発明に係る液体供給部材の第10実施形態の説明に供するヘッドユニットの長手方向断面図である。
【図34】図33のO−O線に沿う同ヘッドユニットの短手方向断面図である。
【図35】本発明に係る液体供給部材の第11実施形態の説明に供するヘッドユニットの短手方向断面図である
【図36】本発明に係る液体供給部材の第12実施形態の説明に供するヘッドユニットの短手方向断面図である。
【図37】図36のP−P線に沿う断面説明図である。
【図38】本発明に係る画像形成装置の第1実施形態の説明に供する構成図である。
【図39】同装置の維持回復時の状態を示す説明図である。
【図40】同装置の液体供給経路の説明に供する模式的説明図である。
【図41】同画像形成装置の維持回復動作の説明に供する説明図である。
【図42】同じく維持回復動作の説明に供する説明図である。
【図43】本発明に係る画像形成装置の第3実施形態の説明に供する同装置の液体供給経路の説明に供する模式的説明図である。
【符号の説明】
【0134】
1…液体吐出ヘッド(記録ヘッド)
2…発熱体基板
3…流路形成部材
5…ノズル
6…液室
7…共通液室
10…液体供給部材
11…液体循環路
11a…主幹流路
11b…狭連通流路
11c…液体バッファ流路
16…リブ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液滴を吐出する複数のノズルが連通する複数の液室に液体を供給する共通液室を有する液体吐出ヘッドに接続され、この液体吐出ヘッドの共通液室に前記液体を供給する液体供給部材であって、
この液体供給部材は、内部に前記液体吐出ヘッドのノズルの並び方向に沿って前記液体が循環する液体循環路を有し、
前記液体循環路の長手方向の端部には、前記液体循環路に液体を供給する供給ポートと前記液体循環路から液体を排出する排出ポートが設けられ、
前記液体循環路の前記共通液室側には、前記共通液室に連通する連通口が設けられ、
前記連通口は、前記液体循環路よりも幅が狭いとともに、前記供給ポート側及び排出ポート側の少なくともいずれかの部分が他の部分よりも深い
ことを特徴とする液体吐出ヘッド用液体供給部材。
【請求項2】
液滴を吐出する複数のノズルが連通する複数の液室に液体を供給する共通液室を有する液体吐出ヘッドに接続され、この液体吐出ヘッドの共通液室に前記液体を供給する液体供給部材であって、
この液体供給部材は、内部に前記液体吐出ヘッドのノズルの並び方向に沿って前記液体が循環する液体循環路を有し、
前記液体循環路の長手方向の端部には、前記液体循環路に液体を供給する供給ポートと前記液体循環路から液体を排出する排出ポートが設けられ、
前記液体循環路の前記共通液室側には、前記共通液室に連通する連通口が設けられ、
この連通口の周囲にリブが配置されている
ことを特徴とする液体吐出ヘッド用液体供給部材。
【請求項3】
液滴を吐出する複数のノズルが連通する複数の液室に液体を供給する共通液室を有する液体吐出ヘッドに接続され、この液体吐出ヘッドの共通液室に前記液体を供給する液体供給部材であって、
この液体供給部材は、内部に前記液体吐出ヘッドのノズルの並び方向に沿って前記液体が循環する液体循環路を有し、
前記液体循環路の長手方向の端部には、前記液体循環路に液体を供給する供給ポートと前記液体循環路から液体を排出する排出ポートが設けられ、
前記液体循環路の前記共通液室側の内壁面にはリブが形成されている
ことを特徴とする液体吐出ヘッド用液体供給部材。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の液体吐出ヘッドの液体供給部材において、前記リブは前記液体循環路の前記供給ポート側及び前記排出ポート側の部分が他の部分よりも相対的に高さが高いことを特徴とする液体吐出ヘッド用液体供給部材
【請求項5】
液滴を吐出する複数のノズルが連通する複数の液室に液体を供給する共通液室を有する液体吐出ヘッドに接続され、この液体吐出ヘッドの共通液室に前記液体を供給する液体供給部材であって、
この液体供給部材は、内部に前記液体吐出ヘッドのノズルの並び方向に沿って前記液体が循環する液体循環路を有し、
前記液体循環路の長手方向の端部には、前記液体循環路に液体を供給する供給ポートと前記液体循環路から液体を排出する排出ポートが設けられ、
前記供給ポートから前記排出ポートに向けて液体を流したときの流れに直交する前記液体循環路の流路断面は、略中央部が狭くくびれて、両側が大面積である形状であり、一方の大面積の部分が前記共通液室の開口に連通し、他方の大面積の部分側に前記供給ポートと前記排出ポートが設けられている
ことを特徴とする液体吐出ヘッド用液体供給部材。
【請求項6】
請求項5に記載の液体吐出ヘッド用液体供給部材において、前記液体循環路の短手方向の壁面に形成されるリブによって、前記供給ポートから前記排出ポートに液体を流したときの流れに直交する前記液体循環路の流路断面は、略中央部が狭くくびれて、両側が大面積である形状となっていることを特徴とする液体吐出ヘッド用液体供給部材。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載の液体吐出ヘッド用液体供給部材において、前記供給ポートから前記排出ポートに液体を流したときの流れに直交する方向の流路断面が、上方に凸な形状であることを特徴とする液体吐出ヘッド用液体供給部材。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかに記載の液体吐出ヘッド用液体供給部材において、前記共通液室の上部開口と前記液体循環路の天面との間に液体の流れを阻害する部分がないことを特徴とする液体吐出ヘッド用液体供給部材。
【請求項9】
液滴を吐出する複数のノズルが連通する複数の液室に液体を供給する共通液室を有する液体吐出ヘッドに接続され、この液体吐出ヘッドの共通液室に前記液体を供給する液体供給部材であって、
この液体供給部材は、内部に前記液体吐出ヘッドのノズルの並び方向に沿って前記液体が循環する液体循環路を有し、
この液体循環路に液体を供給する供給ポートと前記液体循環路から液体を排出する排出ポートが設けられ、
前記供給ポートと前記排出ポートのいずれかは前記液体循環路の長手方向端部以外の部分に設けられ、この長手方向端部以外の部分に設けられたポートに対応して前記共通液室との間に流れを整える整流部材が設けられている
ことを特徴とする液体吐出ヘッド用液体供給部材。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれかに記載の液体吐出ヘッド用液体供給部材において、前記連通口を形成する部分が高熱伝導率材料で形成されていることを特徴とする液体吐出ヘッド用液体供給部材。
【請求項11】
請求項2、4及び6のいずれかに記載の液体吐出ヘッド用液体供給部材において、前記リブが高熱伝導率材料で形成されていることを特徴とする液体吐出ヘッド用液体供給部材。
【請求項12】
液滴を吐出する複数のノズルが連通する複数の液室に液体を供給する共通液室を有する液体吐出ヘッドに接続され、この液体吐出ヘッドの共通液室に前記液体を供給する液体供給部材であって、
この液体供給部材は、内部に前記液体吐出ヘッドのノズルの並び方向に沿って前記液体が循環する液体循環路を有し、
前記液体循環路の長手方向の端部には、前記液体循環路に液体を供給する供給ポートと前記液体循環路から液体を排出する排出ポートが設けられ、
前記液体循環路の前記共通液室側には、前記共通液室に連通する連通口が設けられ、
前記連通口は、前記液体循環路よりも幅が狭い
ことを特徴とする液体吐出ヘッド用液体供給部材。
【請求項13】
液体吐出ヘッドから液滴を吐出させる液体吐出装置において、前記液体吐出ヘッドに対して液体を供給する請求項1ないし12のいずれかに記載の液体供給部材を備えていることを特徴とする液体吐出装置。
【請求項14】
液体吐出ヘッドから液滴を吐出させて画像を形成する画像形成装置において、前記液体吐出ヘッドに対して液体を供給する請求項1ないし12のいずれかに記載の液体供給部材を備えていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項1】
液滴を吐出する複数のノズルが連通する複数の液室に液体を供給する共通液室を有する液体吐出ヘッドに接続され、この液体吐出ヘッドの共通液室に前記液体を供給する液体供給部材であって、
この液体供給部材は、内部に前記液体吐出ヘッドのノズルの並び方向に沿って前記液体が循環する液体循環路を有し、
前記液体循環路の長手方向の端部には、前記液体循環路に液体を供給する供給ポートと前記液体循環路から液体を排出する排出ポートが設けられ、
前記液体循環路の前記共通液室側には、前記共通液室に連通する連通口が設けられ、
前記連通口は、前記液体循環路よりも幅が狭いとともに、前記供給ポート側及び排出ポート側の少なくともいずれかの部分が他の部分よりも深い
ことを特徴とする液体吐出ヘッド用液体供給部材。
【請求項2】
液滴を吐出する複数のノズルが連通する複数の液室に液体を供給する共通液室を有する液体吐出ヘッドに接続され、この液体吐出ヘッドの共通液室に前記液体を供給する液体供給部材であって、
この液体供給部材は、内部に前記液体吐出ヘッドのノズルの並び方向に沿って前記液体が循環する液体循環路を有し、
前記液体循環路の長手方向の端部には、前記液体循環路に液体を供給する供給ポートと前記液体循環路から液体を排出する排出ポートが設けられ、
前記液体循環路の前記共通液室側には、前記共通液室に連通する連通口が設けられ、
この連通口の周囲にリブが配置されている
ことを特徴とする液体吐出ヘッド用液体供給部材。
【請求項3】
液滴を吐出する複数のノズルが連通する複数の液室に液体を供給する共通液室を有する液体吐出ヘッドに接続され、この液体吐出ヘッドの共通液室に前記液体を供給する液体供給部材であって、
この液体供給部材は、内部に前記液体吐出ヘッドのノズルの並び方向に沿って前記液体が循環する液体循環路を有し、
前記液体循環路の長手方向の端部には、前記液体循環路に液体を供給する供給ポートと前記液体循環路から液体を排出する排出ポートが設けられ、
前記液体循環路の前記共通液室側の内壁面にはリブが形成されている
ことを特徴とする液体吐出ヘッド用液体供給部材。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の液体吐出ヘッドの液体供給部材において、前記リブは前記液体循環路の前記供給ポート側及び前記排出ポート側の部分が他の部分よりも相対的に高さが高いことを特徴とする液体吐出ヘッド用液体供給部材
【請求項5】
液滴を吐出する複数のノズルが連通する複数の液室に液体を供給する共通液室を有する液体吐出ヘッドに接続され、この液体吐出ヘッドの共通液室に前記液体を供給する液体供給部材であって、
この液体供給部材は、内部に前記液体吐出ヘッドのノズルの並び方向に沿って前記液体が循環する液体循環路を有し、
前記液体循環路の長手方向の端部には、前記液体循環路に液体を供給する供給ポートと前記液体循環路から液体を排出する排出ポートが設けられ、
前記供給ポートから前記排出ポートに向けて液体を流したときの流れに直交する前記液体循環路の流路断面は、略中央部が狭くくびれて、両側が大面積である形状であり、一方の大面積の部分が前記共通液室の開口に連通し、他方の大面積の部分側に前記供給ポートと前記排出ポートが設けられている
ことを特徴とする液体吐出ヘッド用液体供給部材。
【請求項6】
請求項5に記載の液体吐出ヘッド用液体供給部材において、前記液体循環路の短手方向の壁面に形成されるリブによって、前記供給ポートから前記排出ポートに液体を流したときの流れに直交する前記液体循環路の流路断面は、略中央部が狭くくびれて、両側が大面積である形状となっていることを特徴とする液体吐出ヘッド用液体供給部材。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載の液体吐出ヘッド用液体供給部材において、前記供給ポートから前記排出ポートに液体を流したときの流れに直交する方向の流路断面が、上方に凸な形状であることを特徴とする液体吐出ヘッド用液体供給部材。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかに記載の液体吐出ヘッド用液体供給部材において、前記共通液室の上部開口と前記液体循環路の天面との間に液体の流れを阻害する部分がないことを特徴とする液体吐出ヘッド用液体供給部材。
【請求項9】
液滴を吐出する複数のノズルが連通する複数の液室に液体を供給する共通液室を有する液体吐出ヘッドに接続され、この液体吐出ヘッドの共通液室に前記液体を供給する液体供給部材であって、
この液体供給部材は、内部に前記液体吐出ヘッドのノズルの並び方向に沿って前記液体が循環する液体循環路を有し、
この液体循環路に液体を供給する供給ポートと前記液体循環路から液体を排出する排出ポートが設けられ、
前記供給ポートと前記排出ポートのいずれかは前記液体循環路の長手方向端部以外の部分に設けられ、この長手方向端部以外の部分に設けられたポートに対応して前記共通液室との間に流れを整える整流部材が設けられている
ことを特徴とする液体吐出ヘッド用液体供給部材。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれかに記載の液体吐出ヘッド用液体供給部材において、前記連通口を形成する部分が高熱伝導率材料で形成されていることを特徴とする液体吐出ヘッド用液体供給部材。
【請求項11】
請求項2、4及び6のいずれかに記載の液体吐出ヘッド用液体供給部材において、前記リブが高熱伝導率材料で形成されていることを特徴とする液体吐出ヘッド用液体供給部材。
【請求項12】
液滴を吐出する複数のノズルが連通する複数の液室に液体を供給する共通液室を有する液体吐出ヘッドに接続され、この液体吐出ヘッドの共通液室に前記液体を供給する液体供給部材であって、
この液体供給部材は、内部に前記液体吐出ヘッドのノズルの並び方向に沿って前記液体が循環する液体循環路を有し、
前記液体循環路の長手方向の端部には、前記液体循環路に液体を供給する供給ポートと前記液体循環路から液体を排出する排出ポートが設けられ、
前記液体循環路の前記共通液室側には、前記共通液室に連通する連通口が設けられ、
前記連通口は、前記液体循環路よりも幅が狭い
ことを特徴とする液体吐出ヘッド用液体供給部材。
【請求項13】
液体吐出ヘッドから液滴を吐出させる液体吐出装置において、前記液体吐出ヘッドに対して液体を供給する請求項1ないし12のいずれかに記載の液体供給部材を備えていることを特徴とする液体吐出装置。
【請求項14】
液体吐出ヘッドから液滴を吐出させて画像を形成する画像形成装置において、前記液体吐出ヘッドに対して液体を供給する請求項1ないし12のいずれかに記載の液体供給部材を備えていることを特徴とする画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【公開番号】特開2008−194982(P2008−194982A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−33986(P2007−33986)
【出願日】平成19年2月14日(2007.2.14)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年2月14日(2007.2.14)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
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