説明

液体吐出装置

【課題】簡易に実現可能な新たな第一液体増粘防止策が実行される液体吐出装置を提供する。
【解決手段】ノズルを備え、該ノズルから第一液体を吐出するためのヘッドと、第一液体非吐出時の第一液体増粘防止のために、前記ヘッドのノズル面が浸されている第二液体、を前記ヘッドに当接することなく保持する保持体と、を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出装置に関する。特に、ノズルを備え該ノズルから第一液体を吐出するためのヘッド、を有する液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ノズルを備え、該ノズルから第一液体の一例としてのインクを吐出するためのヘッド、を有する液体吐出装置の一例としてのインクジェットプリンタは、既によく知られている。このようなインクジェットプリンタにおいては、ヘッドが、搬送中の紙等の媒体に対してノズルからインクを吐出することによって、媒体にドットを形成し、画像を媒体に印刷する。
【特許文献1】特開2005−53119号公報
【特許文献2】特開2001−225484号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、インク非吐出時に、インク内の水分はノズルのメニスカスから蒸発しやすく、蒸発によりインクの粘度は上昇してしまう(増粘)。インクが増粘すると、ノズルは目詰まりやすくなり、ノズルからインクを吐出させようとしても、インクが吐出されなかったり、適正な量のインクが吐出されなかったりするおそれがある。
【0004】
そして、従来のインクジェットプリンタには、このようなインク非吐出時のインク増粘を防止するために、ヘッドのノズル面に接触してノズルを封止するためのキャップが設けられていた。すなわち、インク非吐出時には、キャップが、ノズル面に接触してキャップ内に密閉空間を形成することにより、前記メニスカスからの前記水分の蒸発を抑止し、このことにより、インクの増粘を防いでいた。
【0005】
しかしながら、キャップによりインクの増粘を防止する上記方策には、以下の問題があった。すなわち、キャップの封止機能を適切に発揮させるためには(換言すれば、キャップ内に適切な密閉空間を形成するためには)、キャップがノズル面に隙間が生じないように確実に接触しなければならない。そのためには、キャップが精度良く作られている必要があり、このことがキャップの製造の困難性の要因となっていた。特に、前記ヘッドが、ノズル面の長手方向において非常に長く、かつ、ノズル面の短手方向において非常に短い(非常に薄い)ラインヘッドである場合には、当該困難性がさらに顕著となっていた。したがって、当該方策よりも簡易に実現できる新たなインク増粘防止策が要請されていた。
【0006】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、簡易に実現可能な新たな第一液体(例えば、インク)増粘防止策が実行される液体吐出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
主たる本発明は、ノズルを備え、該ノズルから第一液体を吐出するためのヘッドと、第一液体非吐出時の第一液体増粘防止のために、前記ヘッドのノズル面が浸されている第二液体、を前記ヘッドに当接することなく保持する保持体と、を有することを特徴とする液体吐出装置である。
【0008】
本発明の他の特徴については、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも次のことが明らかにされる。
【0010】
ノズルを備え、該ノズルから第一液体を吐出するためのヘッドと、第一液体非吐出時の第一液体増粘防止のために、前記ヘッドのノズル面が浸されている第二液体、を前記ヘッドに当接することなく保持する保持体と、を有することを特徴とする液体吐出装置。
かかる場合には、簡易に実現可能な新たな第一液体増粘防止策が実行される液体吐出装置が提供される。
【0011】
また、前記第二液体は、水であることとしてもよい。
かかる場合には、第二液体を手軽に取得することが可能となるため、前記新たな第一液体増粘防止策がより一層簡易に実現される。
【0012】
また、前記保持体に前記水を供給するための供給部を有することとしてもよい。
かかる場合には、ノズル面が保持体に収容された水に浸からなくなることを、簡易な方法で回避することが可能となる。
【0013】
また、前記第二液体は、不揮発性の油であることとしてもよい。
かかる場合には、供給部等が不要となるため、前記新たな第一液体増粘防止策がより一層簡易に実現される。
【0014】
===プリンタ1の構成===
図1は、液体吐出装置の一例としてのインクジェットプリンタ(以下、プリンタ1ともいう)の全体構成のブロック図である。なお、本実施の形態に係るプリンタ1は、ヘッドをキャリッジによって移動させるものではなく、紙幅分の長さのヘッド(ラインヘッド)を用いるラインプリンタと呼ばれるものである。以下、プリンタの基本的な構成について説明する。
【0015】
プリンタ1は、搬送ユニット20、ヘッドユニット40、検出器群50、及びコントローラ60を有する。外部装置であるコンピュータ110から印刷データを受信したプリンタ1は、コントローラ60によって各ユニット(搬送ユニット20、ヘッドユニット40)を制御する。コントローラ60は、コンピュータ110から受信した印刷データに基づいて、各ユニットを制御し、紙Sに画像を印刷する。プリンタ1内の状況は検出器群50によって監視されており、検出器群50は、検出結果をコントローラ60に出力する。コントローラ60は、検出器群50から出力された検出結果に基づいて、各ユニットを制御する。
【0016】
搬送ユニット20は、媒体(例えば、紙Sなど)を所定の搬送方向に搬送させるためのものである。この搬送ユニット20は、紙挿入口に挿入された紙Sをプリンタ内に給紙するための給紙ローラと、給紙ローラによって給紙された紙Sを印刷可能な領域まで搬送するための搬送ローラと、印刷中の紙Sを支持するためのプラテン22(図3等参照)と、紙Sをプリンタの外部に排出するための排紙ローラとを有する。
【0017】
ヘッドユニット40は、複数のノズル44を備えたヘッド42と、インク非吐出時にインクの増粘を防止するためのインク増粘防止装置48と、を有している。
【0018】
ヘッド42は、搬送中の紙Sに対してノズル44から第一液体の一例としてのインクを吐出することによって、ヘッド42と対向する紙Sにドットを形成し、画像を紙Sに印刷する。前述したとおり、本実施の形態に係るヘッド42は、ラインヘッドであり、前記搬送方向と直交する方向(すなわち、紙幅方向)に長尺な、当該搬送方向に移動不可能な部材である。そして、当該ヘッド42は、紙幅分のドットを一度に形成することができる。
【0019】
図2は、ヘッド42のノズル面46(すなわち、ヘッド42の下面)におけるノズル44の配置を示した説明図である。ノズル面46には、ブラックインクノズル列K、シアンインクノズル列C、マゼンタインクノズル列M及びイエローインクノズル列Yが形成されている。各ノズル列は、ノズル44を複数個備えており、各ノズル列の複数のノズルは、紙幅方向に沿って、一定のノズルピッチで並んでいる。
【0020】
なお、詳細については後述するが、本実施の形態に係るヘッド42は、上下方向に移動可能となっている。すなわち、ヘッド42は、第一位置(図3参照)と当該第一位置よりも下方に位置する第二位置(図4参照)のうちのどちらかに位置することができるようになっており、双方の間を往復移動する。そして、インク増粘防止装置48によるインクの増粘防止作用が適切に発揮されるように、印刷が終了してプリンタ1が待機状態へ移行する際に、第一位置から第二位置へ(すなわち、下方向に)移動する。ヘッド42は、不図示のモータの回転力が当該ヘッド42に伝達されることにより移動し、モータの回転力のヘッド42への伝達は、ギア、カム等から構成される公知の伝達機構により実現される。なお、インク増粘防止装置48については、後に詳述する。
【0021】
検出器群50には、各種のセンサ等が含まれており、後述する水位センサ52も検出器群50に含まれる。
【0022】
コントローラ60は、プリンタの制御を行うための制御ユニット(制御部)である。コントローラ60は、インターフェース部61と、CPU62と、メモリ63と、ユニット制御回路64とを有する。インターフェース部61は、外部装置であるコンピュータ110とプリンタ1との間でデータの送受信を行う。CPU62は、プリンタ全体の制御を行うための演算処理装置である。メモリ63は、CPU62のプログラムを格納する領域や作業領域等を確保するためのものであり、揮発性のメモリであるRAM、不揮発性のメモリであるEEPROM等の記憶素子を有する。CPU62は、メモリ63に格納されているプログラムに従って、ユニット制御回路64を介して各ユニットを制御する。
【0023】
===インク増粘防止装置48について===
発明が解決しようとする課題で説明したように、一般的に、インクジェットプリンタには、インク非吐出時のインク増粘を防止するための機能が備えられており、当該機能は、例えば、ヘッドのノズル面に接触してノズルを封止するためのキャップにより実現されている。そして、本実施の形態に係るプリンタ1にもインク非吐出時のインク増粘を防止するための機能が備えられているが、プリンタ1には前記キャップが備えられておらず、以下で詳述するインク増粘防止装置48によりインクの増粘が防止される。
【0024】
以下、本実施の形態に係るインク増粘防止装置48の構成及び動作について説明する。なお、当該動作は、主として、プリンタ1内のコントローラ60により実現される。特に、本実施の形態においては、メモリ63に格納されたプログラムをCPU62が処理することにより実現される。そして、このプログラムは、以下に説明される各種の動作を行うためのコードから構成されている。
【0025】
図3乃至図5は、インク増粘防止装置48とその周辺の周辺部材(ヘッド42、プラテン22等)を示した模式図(概念図)である。図3は、プリンタ1が印刷状態にあるとき(インク吐出時)のインク増粘防止装置48及び周辺部材の様子を示した模式図である。図4は、プリンタ1が待機状態にあるとき(インク非吐出時)のインク増粘防止装置48及び周辺部材の様子を示した模式図である。図5は、図4のA−A断面を表したA−A断面模式図である。
【0026】
インク増粘防止装置48は、第二液体の一例としての水Wを保持する保持体の一例としての水槽400と、供給部420と、排出部440と、バルブ460と、を備えている。
【0027】
水槽400は、図4に示すように、インク非吐出時のインク増粘防止のためにヘッド42のノズル面46が浸されている水W、を保持するための固定された(移動不可能な)部材である。つまり、水槽400に保持(収容)された水Wにヘッド42のノズル面46が浸されることにより、当該水Wがノズル44のメニスカスからのインク内の水分の蒸発を抑止し、インクの増粘を防止する。
【0028】
この水槽400は、前記搬送方向と直交する方向(すなわち、紙幅方向)に長尺な(図5参照)直方体形状をなしており、当該直方体の上面に相当する箇所が開口400aとなっている。水槽400は、図3や図4に示すように、前記搬送方向において、前述したプラテン22の間に設けられており、かつ、ヘッド42の位置に対応した位置に備えられている。すなわち、プラテン22には、前記搬送方向におけるヘッド42の位置、に対応した位置に、前記紙幅方向(換言すれば、ヘッド42のノズル面46の長手方向)に沿った溝22aが設けられており、当該溝22aに水槽400が備えられている。そして、水槽400は、溝22a内において、プラテン22の上面22bよりも下方に位置している(より具体的には、水槽400の最上部が、前記上面22bよりも下方に位置している)。
【0029】
また、ヘッド42と水槽400との上下方向における相対位置関係は、プリンタ1が前記印刷状態にあるときと前記待機状態にあるときとで異なっている。すなわち、図3に示すように、プリンタ1が印刷状態にあるときには、ヘッド42のノズル44から搬送中の紙Sにインクが適切に吐出されるように、ヘッド42は、プラテン22の上面22bよりも上方(前記第一位置)に位置しており、したがって、水槽400はヘッド42から上下方向において離れた位置に位置している。そして、プリンタ1が印刷状態から待機状態へ移行する際に、ヘッド42が、下方向へ移動する。そして、図4に示すように、プリンタ1が待機状態にあるときには、水槽400は、ヘッド42から上下方向においてより近づいた位置に位置し(ヘッド42は前記第二位置に位置している)、ヘッド42のノズル面46が、インク非吐出時のインク増粘防止のために、水槽400に収容された水Wに浸かることとなる。
【0030】
なお、図4に示すように、ノズル面46の短手方向において、水Wの液面WSの一端E1は、ノズル面46の一端E2よりも外側に位置し、かつ、当該液面WSの他端E3は、ノズル面46の他端E4よりも外側に位置する。また、図5に示すように、ノズル面46の長手方向において、液面WSの一端E5は、ノズル面46の一端E6よりも外側に位置し、かつ、液面WSの他端E7は、ノズル面46の他端E8よりも外側に位置する。つまり、水Wを保持する水槽400は、ヘッド42に当接しておらず、したがって、水槽400は、ノズル面46がインク非吐出時のインク増粘防止のために浸されている水W、をヘッド42に当接することなく保持していることとなる。
【0031】
また、本実施の形態に係るプリンタ1には、液面WSの高さ(換言すれば、水Wの水位)を一定の値に維持する機能が備えられている。すなわち、水槽400に収容されている水Wの水位は、何の対策も講じなければ、プリンタ1の使用に伴って、水Wの蒸発等により変化し得る。そして、当該水位が変化すると、ノズル面46が、水槽400に収容された水Wに浸からなくなる恐れがある。そこで、このような不都合が起こらないように、本実施の形態に係るプリンタ1には、当該機能が備えられている。
【0032】
図4に示すように、プリンタ1には、供給用タンク420aと供給流路420bを有し、水槽400よりも上方に位置する供給部420と、排出用タンク440aと排出流路440bを有し、水槽400よりも下方に位置する排出部440とが設けられており、水槽400は、供給部420及び排出部440の各々と連結されている。そして、重力の作用により、供給部420から(より具体的には、供給用タンク420aから供給流路420bを介して)水槽400へ水が供給され、水槽400から排出部440へ(より具体的には、排出流路440bを介して排出用タンク440aへ)水が排出されるようになっている。また、供給流路420bと排出流路440bには、それぞれ、バルブ460として、供給側バルブ460aと排出側バルブ460bとが設けられている。
【0033】
さらに、プリンタ1には、センサの一例としての水位センサ52(図1)が備えられており、液面WSの高さが当該水位センサ52により検出されるようになっている。そして、水位センサ52の検出結果に基づいて、液面WSの高さが予め設定された目標値となるように、液面WSの高さが調整される。
【0034】
より具体的に説明すると、水位センサ52が液面WSの高さを検出すると、検出値が前記コントローラ60に送られる。そして、コントローラ60は、当該検出値を前記目標値と比較し、検出値が目標値よりも小さければ(検出された液面WSの高さが目標値よりも低ければ)、供給側バルブ460aが開状態となるように供給側バルブ460aを制御する。そして、供給側バルブ460aが開放すると、供給用タンク420aから水槽400へ水が供給されて液面WSが上昇し、該液面WSの高さが目標値に近づくこととなる。
【0035】
逆に、コントローラ60は、前記検出値を前記目標値と比較して、検出値が目標値よりも大きければ(検出された液面WSの高さが目標値よりも高ければ)、排出側バルブ460bが開状態となるように排出側バルブ460bを制御する。そして、排出側バルブ460bが開放すると、水槽400から排出用タンク440aへ水が排出されて液面WSが下降し、該液面WSの高さが目標値に近づくこととなる。
【0036】
そして、液面WSの高さが、目標値±δ(許容値)の範囲内に入ったら、コントローラ60は、液面WSの高さが目標値となったと見做し、開いていたバルブ460が閉状態となるようにバルブ460を制御する。かかる制御により、当該バルブ460は閉止される。
【0037】
このように、前述したコントローラ60とバルブ460(供給側バルブ460a及び排出側バルブ460b)は、液面WSの高さを調整するための調整部として機能する。そして、当該調整部は、水位センサ52の検出結果に基づいて液面WSの高さを上述のように調整し、このことにより、液面WSの高さが、一定の値に維持されることとなる。なお、本実施の形態に係るプリンタ1においては、かかる調整が定期的に行われるが、これに限定されるものではなく、例えば、当該調整が常時行われることとしてもよい。
【0038】
===本実施の形態に係るプリンタ1の有効性について===
発明が解決しようとする課題の項で説明したように、従来のインクジェットプリンタには、インク非吐出時のインク増粘を防止するために、ヘッドのノズル面に接触してノズルを封止するためのキャップが設けられていた。すなわち、インク非吐出時には、キャップが、ノズル面に接触してキャップ内に密閉空間を形成することにより、前記メニスカスからのインク内の水分の蒸発を抑止し、このことにより、インクの増粘を防いでいた。
【0039】
しかしながら、キャップによりインクの増粘を防止する上記方策には、以下の問題があった。すなわち、キャップの封止機能を適切に発揮させるためには(換言すれば、キャップ内に適切な密閉空間を形成するためには)、キャップがノズル面に隙間が生じないように確実に接触しなければならず、そのためには、キャップが精度良く作られている必要があった。そして、このことがキャップの製造の困難性の要因となっていた。特に、ヘッドが、ノズル面の長手方向において非常に長く、かつ、ノズル面の短手方向において非常に短い(非常に薄い)ラインヘッドである場合には、当該困難性がさらに顕著となっていた。したがって、当該方策よりも簡易に実現できる新たなインク増粘防止策が要請されていた。
【0040】
これに対し、本実施の形態に係るプリンタ1はかかる要請に応えるものとなっている。すなわち、プリンタ1は、インク非吐出時のインク増粘防止のために、ヘッド42のノズル面46が浸されている水W、をヘッド42に当接することなく保持する水槽400、を備えている。そして、ヘッド42のノズル面46が、水槽400に保持された水Wに浸かることにより、水槽400がヘッド42に当接しなくても(つまり、水槽400がノズル44を封止して前記密閉空間を形成しなくても)、ノズル44のメニスカスからのインク内の水分の蒸発が抑えられ、インクの増粘が適切に防止されることとなる。また、水槽400をヘッド42に当接させる必要がないため、水槽400をキャップのように精度良く作らなくてもよく、したがって、前述した製造の困難性も生じない。このように、本実施の形態に係るプリンタ1によれば、簡易に実現可能なインク増粘防止策が実行されることとなる。
【0041】
また、本実施の形態に係るプリンタ1に備えられたヘッド42は、ラインヘッドであるため、ノズル面46の長手方向において非常に長い。そのため、キャップを該ヘッド42に当該長手方向一端から他端に亘って隙間なく確実に接触させるためには、キャップが極めて高精度に作られる必要がある。これに対し、本実施の形態に係るプリンタ1においては、水槽400がヘッド42に当接しないため、かかる事項を気にする必要がない。
【0042】
また、本実施の形態に係るプリンタ1に備えられたヘッド42は、ラインヘッドであるため、ノズル面の短手方向において非常に短い(非常に薄い)。そのため、キャップを該ヘッド42に接触させるためには、キャップの大きさを小さくする必要があり、その製造が困難になる。これに対し、本実施の形態に係るプリンタ1においては、水槽400がヘッド42に当接しないため、水槽400の大きさをヘッド42の薄さに応じて小さくする必要はない。
【0043】
===その他の実施の形態===
以上、上記実施の形態に基づき本発明に係る液体吐出装置を説明したが、上記した発明の実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることはもちろんである。
【0044】
また、上記実施の形態においては、液体吐出装置の一例としてインクジェットプリンタについて説明したが、これに限定されるものではなく、インク以外の他の液体(機能材料の粒子が分散されている液状体、ジェルのような流状体を含む)を噴射したり吐出したりする液体吐出装置に具体化することもできる。例えば、液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ及び面発光ディスプレイの製造などに用いられる電極材や色材などの材料を分散または溶解のかたちで含む液状体を吐出する液状体吐出装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を吐出する液体吐出装置、精密ピペットとして用いられ試料となる液体を吐出する液体吐出装置であってもよい。さらに、時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を吐出する液体吐出装置、光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂等の透明樹脂液を基板上に吐出する液体吐出装置、基板などをエッチングするために酸又はアルカリ等のエッチング液を吐出する液体吐出装置、ジェルを吐出する流状体吐出装置であってもよい。そして、これらのうちいずれか一種の吐出装置に本発明を適用することができる。
【0045】
また、上記実施の形態においては、ヘッドとして、ラインヘッドを例に挙げて説明したが、これに限定されるものではない。例えば、キャリッジに設けられ、当該キャリッジの移動に伴って前記紙幅方向に移動するシリアルヘッドであってもよい。
【0046】
また、上記実施の形態に係るプリンタ1は、水槽400に水を供給するための供給部420を有することとしたが、これに限定されるものではない。例えば、プリンタ1に、このような供給部420が設けられていないこととしてもよい。
【0047】
前述したとおり、水槽400に収容されている水Wは、プリンタ1の使用に伴って、蒸発し、その水位が徐々に下がり得る。そして、プリンタ1に供給部420が設けられておらず、水槽400に水が供給されない場合には、ノズル面46が水槽400に収容された水Wに浸からなくなる恐れがあるため、何らかの別の対策を講ずる必要がある。当該対策として、水位の変化(下降)に応じてヘッド42の前述した第二位置を変化させる方策が考えられるが、かかる場合には、ヘッド42の移動機構が極めて複雑となる。
【0048】
これに対し、プリンタ1に供給部420を設けて、当該供給部420から水槽400に水を供給すれば、ノズル面46が水槽400に収容された水Wに浸からなくなることを、簡易な方法で回避することが可能となる。したがって、この点で、(上記実施の形態に限定されるものではなく前記別の方策でも構わないが)上記実施の形態の方がより望ましい。
【0049】
また、上記実施の形態に係るプリンタ1は、水Wの液面WSの高さを検出するための水位センサ52と、該水位センサ52の検出結果に基づいて、該液面WSの高さを調整するための調整部(コントローラ60及びバルブ460)と、を有することとしたが、これに限定されるものではない。例えば、プリンタ1に、水位センサ52や調整部が設けられていないこととしてもよい。
【0050】
プリンタ1に、水位センサ52や調整部をプリンタ1に設けることなく、ノズル面46が水槽400に収容された水Wに浸からなくなることを回避する方策としては、供給部420から水槽400に水を定期的に供給する方策が考えられる。しかしながら、水の蒸発度合いは一定ではないため(日や時間によって動的に変化するため)、かかる方策では、ノズル面46が水槽400に収容された水Wに浸からなくなる状況が確実に起こらないとは言い難い。
【0051】
これに対し、プリンタ1に水位センサ52と調整部を設けて、水位センサ52の検出結果に基づいた液面WSの高さの調整を行えば、ノズル面46が水槽400に収容された水Wに浸からなくなる状況の発生を確実に防止することができる。したがって、この点で、(上記実施の形態に限定されるものではなく前記方策でも構わないが)上記実施の形態の方がより望ましい。
【0052】
また、上記実施の形態においては、第二液体として、水Wを例に挙げて説明したが、これに限定されるものではない。例えば、第二液体は、油等他の液体であることとしてもよい。
【0053】
第二液体が水Wである場合には、第二液体を手軽に取得することが可能となるため、インク増粘防止装置48をより一層簡易に構築することができる。すなわち、新たな第一液体増粘防止策がより一層簡易に実現されることとなる。かかる点で、上記実施の形態の方が望ましい。
【0054】
また、第二液体が、油であって、当該油が不揮発性の油である場合には、以下のメリットが生ずる。すなわち、第二液体が不揮発性の油である場合には、当該第二液体が蒸発せず、液面の高さが変化しないため、前述した供給部等が不要になる。そのため、インク増粘防止装置をより一層簡易に構築することができ、したがって、新たな第一液体増粘防止策がより一層簡易に実現されることとなる。
【0055】
また、上記実施の形態においては、プリンタ1が印刷状態から待機状態へ移行する際、ノズル面46を水槽400に収容された水Wに浸すために、ヘッド42が下方向へ移動することとしたが、これに限定されるものではなく、例えば、水槽400が上方向へ移動することとしてもよい。
ただし、水Wが水槽400から零れる不都合が生じない点で、上記実施の形態の方がより望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】プリンタ1の全体構成のブロック図である。
【図2】ヘッド42のノズル面46におけるノズル44の配置を示した説明図である。
【図3】プリンタ1が印刷状態にあるとき(インク吐出時)のインク増粘防止装置48及び周辺部材の様子を示した模式図である。
【図4】プリンタ1が待機状態にあるとき(インク非吐出時)のインク増粘防止装置48及び周辺部材の様子を示した模式図である。
【図5】図4のA−A断面を表したA−A断面模式図である。
【符号の説明】
【0057】
1 プリンタ、
20 搬送ユニット、22 プラテン、22a 溝、22b 上面、
40 ヘッドユニット、42 ヘッド、44 ノズル、46 ノズル面、
48 インク増粘防止装置、50 検出器群、52 水位センサ、
60 コントローラ、61 インターフェース部、62 CPU、
63 メモリ、64 ユニット制御回路、110 コンピュータ、
400 水槽、400a 開口、420 供給部、
420a 供給用タンク、420b 供給流路、
440 排出部、440a 排出用タンク、440b 排出流路、
460 バルブ、460a 供給側バルブ、460b 排出側バルブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズルを備え、該ノズルから第一液体を吐出するためのヘッドと、
第一液体非吐出時の第一液体増粘防止のために、前記ヘッドのノズル面が浸されている第二液体、
を前記ヘッドに当接することなく保持する保持体と、
を有することを特徴とする液体吐出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の液体吐出装置において、
前記第二液体は、水であることを特徴とする液体吐出装置。
【請求項3】
請求項2に記載の液体吐出装置において、
前記保持体に前記水を供給するための供給部を有することを特徴とする液体吐出装置。
【請求項4】
請求項1に記載の液体吐出装置において、
前記第二液体は、不揮発性の油であることを特徴とする液体吐出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−12344(P2009−12344A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−177611(P2007−177611)
【出願日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】