説明

液体吸収体、ヘッドメンテナンス装置、および液体噴射装置

【課題】払拭手段から飛散する液体を吸収する液体吸収体を提供する。
【解決手段】ワイパーブレード451の払拭方向への移動に際して、ワイパーブレード451に対して当接および離間するインクの吸収面を有する第1吸収材41と、第1吸収材41よりも重力方向下側であってかつ払拭方向前側となる位置にインクの吸収面を有する第2吸収材42と、を備え、第2吸収材42は、ワイパーブレード451が第1吸収材41の吸収面から離間するときに飛散するインクを受けるように、ワイパーブレード451が払拭する払拭幅よりも広い幅でインクを吸収する吸収面が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吸収体、この液体吸収体を有するヘッドメンテナンス装置、およびこのヘッドメンテナンス装置を備える液体噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、媒体に液体を噴射して画像等の記録を施す液体噴射ヘッドを備えた液体噴射装置には、液体噴射ヘッドから液体を適正に噴射させる噴射特性を維持するためのヘッドメンテナンス装置が備えられている。
【0003】
こうしたヘッドメンテナンス装置では、種々の噴射特性を維持するための動作が行われる。例えば、液体噴射ヘッドを吸引キャップによってキャピングして、増粘した液体をノズルから吸引ポンプによって吸引することによって、噴射特性を回復させることが行われる。このとき、液体噴射ヘッドに付着した不要な液体を払拭手段としてのワイピング部材によって捕捉して払拭することが行われる。
【0004】
そして、ヘッドメンテナンス装置では、例えば特許文献1に記載されているように、ワイピング部材に捕捉された液体が、例えばヘッドメンテナンス装置内において飛散して、液体噴射ヘッドのメンテナンスに関する機能を損なわせることがないように、液体吸収体(ワイパークリーナー)を備えている。すなわち、液体吸収体は、ワイピング部材の移動途中においてワイピング部材と摺接することによって、ワイピング部材に捕捉された液体を吸収してワイピング部材を清掃するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−221702号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ワイピング部材が液体吸収体と摺接している場合は、通常、ワイピング部材における液体吸収体との摺接部分は少なからず変形した状態になっている。従って、ワイピング部材は、液体吸収体との摺接が終了したとき、変形した状態から元の形状に戻ることになる。このとき、例えばこのワイピング部材の形状の戻りが速い場合、ワイピング部材に捕捉された液体が、液体吸収体に払拭されずにワイピング部材から飛散する場合がある。このため、飛散した液体による汚れなどによって、ヘッドメンテナンス装置が有するメンテナンスの機能が損なわれる虞がある。
【0007】
また、同様に、ワイピング部材が液体噴射ヘッドに当接している場合においても、通常、ワイピング部材は少なからず変形した状態になっている。従って、ワイピング部材は、液体噴射ヘッドとの当接が終了、つまり液体の払拭が終了したとき、変形した状態から元の形状に戻ることになる。このとき、例えばワイピング部材の形状の戻りが速い場合、ワイピング部材に捕捉された液体がワイピング部材から飛散することが生ずる。このため、飛散した液体による汚れなどによって、ヘッドメンテナンス装置が有する機能が損なわれる虞がある。
【0008】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、払拭手段から飛散する液体を吸収する液体吸収体を提供することを主な目的とする。さらには、このような液体吸収体を備えるヘッドメンテナンス装置、およびこのヘッドメンテナンス装置を備える液体噴射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の液体吸収体は、液体噴射ヘッドに付着した液体を払拭する払拭手段が前記液体噴射ヘッドを払拭することにより補足した前記液体を前記払拭手段から吸収する液体吸収体であって、前記払拭手段の前記払拭方向への移動に際して、前記払拭手段に対して当接および離間する前記液体の吸収面を有する第1吸収材と、前記第1吸収材よりも重力方向下側であってかつ前記払拭方向で前側となる位置に前記液体の吸収面を有する第2吸収材と、を備え、前記第2吸収材は、前記払拭手段が前記第1吸収材の吸収面から離間するときに飛散する前記液体を受けるように、前記払拭手段が払拭する払拭幅よりも広い幅で前記液体を吸収する吸収面が設けられている。
【0010】
この構成によれば、払拭手段が第1吸収材から離間するときに飛散する液体を、飛散する方向となる重力方向下側で受けることができる。また、飛散する液体の飛翔方向の広がりに応じて、吸収面を払拭手段の払拭幅よりも広い幅とするので、飛散する液体を確実に吸収面で受けることができる。従って、液体による汚染の抑制を実現することができる。
【0011】
本発明の液体吸収体において、前記第1吸収材と前記第2吸収材とは両吸収材間を前記液体が移動するように互いに接触している。
この構成によれば、液体吸収体は第1吸収材が吸収できる液体の容量と第2吸収材が吸収できる液体の容量とを合計した総容量分の液体を吸収できるので、液体吸収体は第1吸収材の吸収容量より多くの液体を吸収することができる。従って、液体による汚染の発生確率が低くなる。
【0012】
本発明の液体吸収体において、前記払拭手段が前記液体噴射ヘッドから離間するときに飛散する前記液体を受けるように、前記液体噴射ヘッドから前記払拭方向において離れた位置に、前記払拭手段の払拭幅よりも広い幅を有する壁面を備え、前記壁面によって受け止められるとともに、該壁面に沿って重力方向下側に移動する前記液体を吸収する吸収面を有する第3吸収材が備えられている。
【0013】
この構成によれば、払拭手段が液体噴射ヘッドから離間するときに飛散する液体を、飛散する方向となる払拭方向側で受けることができる。また、飛散する液体の飛翔方向の広がり応じて、壁面を払拭手段の払拭幅よりも広い幅とするので、確実に飛散する液体を受けることができる。そして、壁面に受けたのち、壁面に沿って重力方向下側に降下する液体を第3吸収材で吸収することによって、液体による汚染を抑制する液体吸収体を実現することができる。
【0014】
本発明の液体吸収体において、前記第3吸収材は、前記第1吸収材および前記第2吸収材のうちの少なくとも一方と、両吸収材間で前記液体が移動するように互いに接触している。
【0015】
この構成によれば、液体吸収体は第1吸収材が吸収できる液体の容量と第3吸収材が吸収できる液体の容量とを合計した総容量分の液体を吸収できる。または、第2吸収材が吸収できる液体の容量と第3吸収材が吸収できる液体の容量とを合計した総容量分の液体を吸収できる。あるいは、第1吸収材が吸収できる液体の容量と第2吸収材が吸収できる液体の容量、および第3吸収材が吸収できる液体の容量とを合計した総容量分の液体を吸収できる。従って、液体吸収体は液体を最大限吸収することができるので、液体による汚染の発生確率が低くなる。
【0016】
本発明のヘッドメンテナンス装置は、液体噴射ヘッドに付着した液体を払拭する払拭手段と、上記構成を有する液体吸収体と、を備える。
この構成によれば、払拭手段が払拭した液体を、飛散することなく液体吸収体に吸収するヘッドメンテナンス装置が得られる。従って、液体による汚染を抑制するヘッドメンテナンス装置を実現することができる。
【0017】
本発明の液体噴射装置は、液体を噴射する液体噴射ヘッドと、上記構成を有するヘッドメンテナンス装置と、を備えた。
この構成によれば、払拭手段が払拭した液体を、飛散することなく液体吸収体に吸収するヘッドメンテナンス装置を備えた液体噴射装置が得られる。従って、液体による汚染を抑制する液体噴射装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態に係るメンテナンス装置を有するプリンターの概略構成を示す斜視図。
【図2】実施形態のメンテナンス装置を一方向から見た斜視図。
【図3】実施形態のメンテナンス装置を別方向から見た斜視図。
【図4】フレーム構造体を取り除いた状態のメンテナンス装置を示す斜視図。
【図5】モーターの回転を太陽歯車の回転に伝達する歯車列を示す斜視図。
【図6】歯車列においてモーターの回転が切り替って伝達される歯車を示す斜視図。
【図7】(a)〜(c)は第1歯車と第2歯車の回転を切り替える切替手段の動作図。
【図8】(a)は遊星歯車機構における第1歯車の挙動図、(b)は遊星歯車機構における第2歯車の挙動図、(c)は第1歯車と第2歯車の挙動関係を示す状態図。
【図9】歯車列のうち、第1歯車もしくは第2歯車によって回転駆動される第3歯車、第4歯車、第5歯車、第6歯車について、それらの回転状態を示す図。
【図10】メンテナンス機能の全体の駆動系を模式的に示す駆動系統図。
【図11】第3歯車によって駆動されるメンテナンス機能の駆動系を示す斜視図。
【図12】第3歯車の回転を伝達するクラッチ機構の構造を示す分解斜視図。
【図13】クラッチ機構の状態図で、(a)は吸引キャップが最低位置から上昇する状態、(b)は吸引キャップが液体噴射ヘッドに当接した吸引状態、(c)は吸引キャップが液体噴射ヘッドに当接して形成された密閉空間を大気開放する状態、(d)は吸引キャップが最高位置から降下する状態、をそれぞれ示す模式図。
【図14】吸引キャップを昇降させるクランク機構の駆動系を示す斜視図。
【図15】(a)〜(f)は、吸引キャップを昇降させるクランク機構の動作図。
【図16】液体噴射ヘッド及び吸引キャップを示す斜視図。
【図17】図16における17−17線矢視断面図。
【図18】図17における18−18線矢視断面図。
【図19】(a)〜(e)は、液体噴射ヘッドに対して前後方向に位置決めされる吸引キャップの動作図。
【図20】(a)〜(d)は、液体噴射ヘッドに対して左右方向に位置決めされる吸引キャップの動作図。
【図21】液体噴射ヘッド及び吸引キャップを上方から見た平面図。
【図22】FLボックスを昇降させるカム機構の駆動系を示す斜視図。
【図23】FLボックスを昇降させるカム機構を左方から見た側面図。
【図24】FLボックスを昇降させるカム機構を後方から見た正面図。
【図25】(a)〜(c)は、FLボックスを昇降させるカム機構の動作図。
【図26】第4歯車によって駆動されるワイピング部材の駆動系を示す斜視図。
【図27】ワイピング部材の構成部品を示す斜視図。
【図28】ワイピング部材の着脱構造を示す斜視図で、(a)は装着状態、(b)は取り外した状態を示す斜視図。
【図29】ワイピング部材の前後方向における移動状態を示す側面図。
【図30】インク吸収体の構成を示す斜視図。
【図31】インク吸収体に収容されたインク吸収部材の構成図。
【図32】第5歯車によって駆動される放置キャップ、キャリッジロック体、FLボックスカバーの駆動系を示す斜視図。
【図33】第5歯車の構成を示す斜視図。
【図34】(a)〜(c)は、第5歯車の回転挙動を説明する模式図。
【図35】放置キャップを昇降させるカム機構の駆動系を示す斜視図。
【図36】放置キャップを斜め上方から見た斜視図。
【図37】放置キャップを昇降させるカム機構を斜め下方から見た斜視図。
【図38】放置キャップを昇降させるカム機構を斜め下方から見た斜視断面図。
【図39】放置キャップを昇降させるカム機構を斜め下方から見た別の斜視断面図。
【図40】(a)〜(e)は、放置キャップに対して係合するカム機構の動作図。
【図41】キャリッジロック体が上方へ移動する前の状態を示す模式図。
【図42】キャリッジロック体が上方へ移動中の状態を示す模式図。
【図43】キャリッジロック体が上方へ移動した状態を示す模式図。
【図44】FLボックスカバーの移動状態を示した模式図で(a)は平面図、(b)は側面図。
【図45】第6歯車によって駆動される吸引ポンプの駆動系を示す斜視図。
【図46】大気開放弁の開放機構を示す図で、(a)は斜視図、(b)は動作図。
【図47】歯車の回転状態を検出する検出手段の配置構成図。
【図48】メンテナンス装置の機能動作状態を示すタイミングチャート。
【図49】メンテナンスHPから吸引HPへの移行動作を示すフローチャート。
【図50】FLボックスの吸引動作を示すフローチャート。
【図51】吸引HPからメンテナンスHPへの移行動作を示すフローチャート。
【図52】液体噴射ヘッドクリーニング動作を示すフローチャート。
【図53】液体噴射ヘッドクリーニング動作を示すフローチャート。
【図54】FLボックスの高さ調節動作を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を液体噴射装置の一種であるインクジェット式プリンター(以下、「プリンター」と略す場合もある)11において具体化した実施形態について、図を参照して説明する。なお、以降の説明を容易にするため、図1に示したように、鉛直方向における重力方向を下方向、反重力方向を上方向とする。また、これと交差する方向であって、プリンター11に給送された用紙Sが画像の形成時において搬送される搬送方向を前方向、搬送方向と反対方向を後方向とする。さらに重力方向および搬送方向の双方と交差する方向であってキャリッジ14が往復移動する方向すなわち走査方向を、後方から見て、それぞれ右方向、左方向と呼ぶことにする。
【0020】
図1に示すように、プリンター11は、上側が開口する略四角箱状の本体ケース12内に架設されたキャリッジガイド軸13に案内されて、キャリッジ14が左右方向に往復動可能な状態で設けられている。キャリッジ14が、その後側で固定された無端状のタイミングベルト15は、本体ケース12の背板内面上に配設された一対のプーリー16,17に巻き掛けられている。そして、一方のプーリー16と一体で回動するように連結されたキャリッジモーター18が正逆転駆動されることにより、キャリッジ14は左右方向に往復動する構成となっている。
【0021】
キャリッジ14の下部には、液体としてのインクを噴射する液体噴射ヘッド30が設けられ、さらに本体ケース12内において液体噴射ヘッド30と対向する下方位置には、画像を形成する媒体としての用紙Sを支持するとともに、液体噴射ヘッド30と用紙Sとの間隔を規定する支持板20とが左右方向に延びる状態で配置されている。また、キャリッジ14の上部には、インクが収容されたインクカートリッジ21が着脱可能に装填されている。本実施形態では、液体噴射ヘッド30は左右方向に並設された図示しない複数のヘッドユニット(本実施形態では5つのヘッドユニット)を有し、インクカートリッジ21から供給されたインクを、それぞれのヘッドユニットの下側において前後方向に列状に設けられた図示しない多数のノズルの開口部から噴射する。
【0022】
プリンター11の後側には、給紙トレイ23が設けられ、給紙トレイ23上に積重された用紙Sは、図示しない複数の搬送ローラーによって1枚ずつ搬送方向となる後側から前側に搬送され、液体噴射ヘッド30と支持板20との間に供給されるようになっている。各搬送ローラーは、図1に示したように、プリンター11において本体ケース12の左下方向に配設された紙送りモーター25によって駆動されることにより、用紙Sが搬送方向に搬送される。このとき、搬送される用紙Sは、液体噴射ヘッド30との間で所定量離間するように、前述した支持板20に対して当接しながら搬送されるようになっている。なお、液体噴射ヘッド30は、例えば搬送される用紙Sの厚さに応じて液体噴射ヘッド30と用紙Sとの間の離間距離が常に所定量になるように、図示しない移動機構によって上下方向に移動できるようになっている。
【0023】
また、プリンター11には、キャリッジ14の移動距離に比例する数のパルスを出力するリニアエンコーダー26がキャリッジガイド軸13に沿って延びるように架設されている。このリニアエンコーダー26の出力パルスを用いて、キャリッジ14の左右方向における移動位置、移動方向及び移動速度に関するデータが求められ、この求められたデータに基づいて、キャリッジ14の左右方向における速度制御及び位置制御が行われる。そして、キャリッジ14を左右方向に往復移動(走査)させながら液体噴射ヘッド30のノズル開口部から用紙Sに向けてインクを噴射する動作と、用紙Sを前方向に所定の搬送量で搬送する動作とによって、用紙Sに文字や画像等が形成されるようになっている。
【0024】
さて、プリンター11には、支持板20の左側においてヘッドメンテナンス装置100が配置されている。すなわち、ヘッドメンテナンス装置100が配置された位置は、キャリッジ14の左右方向における移動経路上であって、用紙Sに対するインクの噴射が行われない位置、つまりホームポジションとなっている。ヘッドメンテナンス装置100は、液体噴射ヘッド30に対してインクの噴射特性を維持するために複数の機能部品を有し、このホームポジションにおいて、これらの機能部品を動作させて液体噴射ヘッド30のメンテナンスを行うようになっている。そして、これらの機能部品の動作が、駆動源としての1つのモーターによって全て行われるようになっている。
【0025】
また、プリンター11には、これらのメンテナンスに関する機能部品の動作の他、画像の形成動作、すなわちキャリッジ14の移動動作、インクの噴射動作、および用紙Sの搬送動作などを制御する制御回路が組み込まれた図示しない回路基板が、制御装置として備えられている。制御装置は、CPUやASICおよびメモリーなどによって構成されている。
【0026】
次に、複数のメンテナンスに関する機能部品を有する本実施形態のヘッドメンテナンス装置(以降、単に「メンテナンス装置」と呼ぶ)100の構成について、図2および図3を用いて説明する。なお、図2は図1と同じ方向、つまり左前方向から見たメンテナンス装置100の斜視図であり、図3は、図1及び図2の場合とは異なる左後方向から見たメンテナンス装置100の斜視図である。
【0027】
図2および図3に示すように、本実施形態のメンテナンス装置100は、インクを用紙Sに対して噴射しない放置状態にある液体噴射ヘッド30に対してノズルを囲うように当接させて閉空間を形成する放置キャップ550を有している。すなわち、この放置キャップ550は、プリンター11の電源オフ時などにおいて液体噴射ヘッド30におけるノズルが形成されたノズル形成面との間に閉空間を形成することによって、ノズルの開口部におけるインクの乾燥を抑制する機能部品として機能する。また、この放置キャップ550は、液体噴射ヘッド30に対して当接又は離間(以下、「離接」ともいう。)するように上下移動することによって、液体噴射ヘッド30をキャッピングするキャッピング装置として機能するようになっている。そして、液体噴射ヘッド30に設けられた5つのヘッドユニットにおけるノズルの開口部を、ヘッドユニットごとに全て覆うことによって、各ノズルの開口部を大気から遮断するようになっている。
【0028】
また、メンテナンス装置100は、この放置キャップ550が液体噴射ヘッド30と当接した状態においてキャリッジ14が左右方向に移動しないようにロックする機能部品としてキャリッジロック体590を有している。キャリッジロック体590は、キャリッジ14に対して上下移動できるようになっており、キャリッジ14に設けられた図示しない係合部と、上昇したキャリッジロック体590とが係合することによって、キャリッジ14が左右方向に移動しないようにロックするようになっている。
【0029】
また、メンテナンス装置100は、例えば増粘したインクをノズルの開口部から吸引することによってインクの噴射特性を回復させる機能部品として吸引キャップ350と吸引ポンプ650とを有している。吸引キャップ350は、液体噴射ヘッド30に対して離接するように上下移動することによって、放置キャップ550とは別の機能目的を有して液体噴射ヘッド30をキャッピングするキャップ装置として機能するようになっている。そして、液体噴射ヘッド30に設けられた5つのノズルユニットのうちの1つのノズルユニットに対してノズルを囲うように当接することによって、そのノズルの開口部を大気から遮断する閉空間を形成するようになっている。そして、そのように閉空間を形成した状態において、吸引ポンプ650が、吸引キャップ350によって覆われた閉空間を減圧してノズルの開口部からインクを吸引し、吸引したインクを、排出管61を介してプリンター11の本体ケースに設けられた図示しない廃インクタンクに排出するようになっている。
【0030】
また、メンテナンス装置100は、液体噴射ヘッド30におけるノズル形成面のノズルの開口部に付着した不要なインクを払拭する機能部品としてワイピング部材450を有している。ワイピング部材450はワイパーブレード451を有するとともに、前後に往復移動するようになっている。そして、液体噴射ヘッド30に対して、ワイパーブレード451をノズルの開口部の配列方向に沿って後方から前方に移動させることで、不要なインクをワイパーブレード451で捕捉して払拭するようになっている。なお、本実施形態では、ワイピング部材450は、吸引キャップ350が液体噴射ヘッド30から離間した状態で、吸引キャップ350上方の空間領域を移動するようになっている。
【0031】
さらに、メンテナンス装置100は、ワイパーブレード451に捕捉されたインクを吸収可能なインク吸収体40が、前方へ移動するワイパーブレード451の移動方向の端部に機能部品として配設されている。このインク吸収体40は、その一部にワイパーブレード451を当接させることによって、ワイパーブレード451に捕捉されたインクをインク吸収体40に移行させて吸収するようになっている。
【0032】
ところで、プリンター11では、インクに混入した気泡や増粘したインクをノズルから排出させるために強制的にインクを噴射させる動作、すなわちフラッシング動作が行われるようになっている。従って、メンテナンス装置100は、このフラッシング動作によって噴射されたインクを受容する機能部品としてフラッシングボックス(以降「FLボックス」と記す)380を有している。また、本実施形態のFLボックス(液体受容部材)380は、上下移動できるようになっており、例えば、液体噴射ヘッド30からのインクの噴射の有無を電気的に検査(これを「インク噴射検査」と称す)するために、液体噴射ヘッド30との間隔がインク噴射検査に最適な距離になるように調節するようになっている。なお、吸引ポンプ650は、吸引キャップ350からのインクの吸引に加えて、このFLボックス380内に噴射されたインクも吸引するようになっている。
【0033】
また、メンテナンス装置100は、FLボックス380におけるインクの受容部(ここでは上側の開口部)を覆うことによってFLボックス内のインクが乾燥しないようにする機能部品としてFLボックスカバー(覆蓋部材)580を有している。すなわち、FLボックスカバー580は、用紙Sに対してインクを噴射して画像を形成しないプリンター11の非使用時などにおいて、FLボックス380の上方を塞いだり開放したりするために、前後方向に移動できるようになっている。
【0034】
上述したメンテナンス装置100が有する各機能部品は、複数の樹脂製の枠部材91と複数の金属製の枠板92とによって構成されたフレーム構造体90によって、メンテナンス装置100内の定められた位置に配設され、上述したそれぞれの動作が行われるようになっている。また、フレーム構造体90には、メンテナンス装置100において各機能部品を適切に動作させるための検出信号を、信号配線51を介して制御装置に対して出力する回路基板50が取付けられている。
【0035】
さて、本実施形態のメンテナンス装置100は、駆動源としてのモーター(直流モーター)110を1つ有し、入力配線55を介して供給される電気信号に応じて回転するようになっている。また、モーター110には、ロータリーエンコーダー108が設けられ、回転数に応じて出力されるパルス信号によってモーター110の回転が制御されるようになっている。そして、この1つのモーター110の回転駆動によって、上述したメンテナンスのための複数の機能部品が動作するように、モーター110の回転駆動を伝達する駆動機構が構成されている。なお、モーター110が回転駆動しない場合において、機能部品を動作させるための手回し用のホイール115が設けられている。
【0036】
駆動機構は、メンテナンス装置100においてフレーム構造体90を取り外した図4に示すように、複数の歯車が噛み合う歯車列と、回転を抑止する抑止部材としての切替手段70とを備えて構成されている。複数の歯車は、フレーム構造体90に回転自在に支持された回転軸によってそれぞれ軸支されている。そして、この歯車列において、モーター110の回転が常時伝達される伝達駆動歯車118の回転駆動が、切替手段70の切り替え作動によって、第1回転部材としての第1歯車210及び第2回転部材としての第2歯車220のうちいずれか一方に伝達されるように構成されている。そして第1歯車210の回転によって第3歯車300(図6参照)と第4歯車400が、また第2歯車220の回転によって第5歯車500と第6歯車600が、それぞれ所定のタイミングで回転駆動され、メンテナンスのための所定の機能部品が動作するようになっている。なお、第1歯車210および第2歯車220を回転駆動させるときのモーター110の回転方向の制御、及びモーター110の回転停止の制御を行うための検出信号を出力する第1検出手段81、第2検出手段82、及び第3検出手段83が、回路基板50(図3参照)に取付けられている。これら3つの検出手段の検出動作については後述する。
【0037】
次に、メンテナンス装置100において、モーター110の回転駆動によって歯車列のうちいずれの歯車が回転駆動されることによって上述したメンテナンスに関するいずれの機能部品が動作するようになっているのかについて、その構成を順次説明する。
【0038】
最初に、モーター110の回転によって第1歯車210と第2歯車220の回転がどのように切り替えられるのかについて、伝達駆動歯車118までの伝達機構および切替手段70の切替機構を含めてその構成を、図5および図6〜図9を参照して説明する。
【0039】
図5に示すように、本実施形態のメンテナンス装置100は1つの駆動源としてのモーター110を有し、このモーター110の回転を、複数の伝達歯車によって伝達して、伝達駆動歯車118を回転駆動させるようになっている。具体的に説明すると、モーター110の回転軸に設けられたモーターピニオン111の回転を、同モーターピニオン111に噛合する第1伝達歯車114、同第1伝達歯車114に噛合する第2伝達歯車117、そして同第2伝達歯車117に噛合する伝達駆動歯車118に順次回転伝達する。第1伝達歯車114は、モーターピニオン111の回転数に対して少ない回転数の回転を第2伝達歯車117に伝達するように、モーターピニオン111と噛み合うピッチ径の大きい大歯車112と、第2伝達歯車と噛み合うピッチ径の小さい小歯車113とで構成されている。また第1伝達歯車114と噛み合う第2伝達歯車117と、この第2伝達歯車117と噛み合う伝達駆動歯車118とは、同じピッチ径を有し、伝達駆動歯車118が固定された第1の回転軸J1がモーター110から遠ざかるようにすることによって、歯車列の形成が領域的に容易になるようにしている。なお、第2伝達歯車117は第1の回転軸J1と平行な第2の回転軸J2に回転可能に軸支されている。
【0040】
伝達駆動歯車118が固定された第1の回転軸J1には、伝達駆動歯車118と一体で回転する太陽歯車120が固定されている。この太陽歯車120については後ほど詳しく説明する。また、前述したように、手回しが可能な所定の外形形状のホイール115を有する手回し歯車116が、第2伝達歯車117の小歯車113に噛み合うように配設されている。従って、伝達駆動歯車118は、1つのモーター110によって回転駆動されるとともに、ユーザーがホイール115を回転させることによっても、モーター110を駆動させることなく伝達駆動歯車118を所望する方向に回転させることができるようになっている。
【0041】
図6は、歯車列のうち、このようにモーター110の回転が伝達されて駆動される伝達駆動歯車118と、第1歯車210と、第2歯車220、および第1歯車210とそれぞれ噛み合う第3歯車300と第4歯車400、そして第2歯車220とそれぞれ噛み合う第5歯車500と第6歯車600とを示している。
【0042】
第1歯車210には、その外周面218において前後方向に互いにずれるとともに周方向に互いにほぼ半周ずれた2つの第1欠歯歯車211と第2欠歯歯車212とが形成されている。そして、第1欠歯歯車211に対して第3歯車300が、第2欠歯歯車212に対して第4歯車400が、それぞれ噛み合うようになっている。こうすることによって、第3歯車300と第4歯車400とにおいて、一方の歯車が回転するとき、他方の歯車が回転しないようになっている。
【0043】
なお、第3歯車300は、外周に形成された歯のうち、他の歯よりも軸方向に長い長歯301が複数(ここでは2つ)形成されており、第3歯車300が第1欠歯歯車211との噛み合いが外れて回転が終了したときに、この2つの長歯301が第1歯車210の外周面218に対して摺接するようになっている。こうすることによって、第3歯車300の回転が終了した以降、第3歯車300が再び第1欠歯歯車211と噛み合って回転するまで回転が規制されるようになっている。もとより、第4歯車400についても、外周に形成された複数の歯のうち長歯401が複数(ここでは4つ)形成されている。そして、第4歯車400が第2欠歯歯車212との噛み合いが外れて回転が終了したときに、この複数の長歯401が第1歯車210の外周面218に対して摺接して回転が規制されるようになっている。
【0044】
第2歯車220と噛み合う第5歯車500は、3つの歯車が回転軸方向となる前後方向において圧接されて互いに摩擦によって回転駆動されるとともに、3つのうち2つが欠歯歯車となっている。こうすることによって、一方向に所定の角度回転したとき回転を終了させるようにするとともに、一方向の回転終了後他方向への回転が円滑に開始できるようになっている。この第5歯車500の構造については後ほど詳しく説明する。
【0045】
さて、第1歯車210と第2歯車220は、伝達駆動歯車118と一体で回転する第1の回転軸J1を中心に回転可能に軸支されている。そして、伝達駆動歯車118の回転に伴って、第1歯車210と第2歯車220のいずれか一方が回転するように切り替えるための切替手段70を備えている。
【0046】
切替手段70は、一端が第2の回転軸J2にそれぞれ回動可能に軸支された第1フック部71と第2フック部72、および第2フック部72を第1フック部71に対して後方から見て時計方向に付勢する付勢手段としての捻りばね75とを有している。捻りばね75は、第1フック部71に設けられた第1係止部73に対して、第2フック部72に設けられた第2係止部74を当接させるように付勢するようになっている。従って、切替手段70は、通常この第1係止部73と第2係止部74との当接状態を維持しながら第1フック部71と第2フック部72とが連係して回転するようになっている。一方、第2フック部72に対して後方から見て反時計方向に捻りばね75の付勢力よりも大きな力が作用した場合は、第2フック部72は第1フック部71に対して反時計方向に回転することができるようになっている。
【0047】
第1フック部71は第2の回転軸J2に軸支された基端部分と反対側となる先端部分において、前方に突出する略円柱状の係合部位としての第1突起部77が形成され、第1歯車210の外周部分においてほぼ一周するように形成された外周溝部213と係合するようになっている。そして、第1歯車210の回転に応じてこの外周溝部213に係合しながら摺動する第1突起部77の挙動に応じて、第1フック部71が第2の回転軸J2を中心に回動(揺動)するようになっている。
【0048】
また、第2フック部72は、軸支された基端部分と反対側となる先端部分において、第2歯車220と対抗する側に爪状に突出した形状を有する第2突起部78が形成されている。一方、第2歯車220には、第5歯車500および第6歯車600へ回転を伝達する歯車以外に、その後側の外周部分において所定の間隔で複数の外歯221が形成されている。そして第2突起部78は、第1フック部71と連係して後方から見て時計方向に回動することによって外歯221と係合するようになっている。従って、第2突起部78は、この係合によって、第2歯車220の回転を抑止する抑止部位として機能して、第2歯車220の回転を抑止するようになっている。
【0049】
次に、切替手段70によって行われる第1歯車210と第2歯車220との間の回転の切り替えについて、その仕組みを、図7を参照して説明する。図7(a)は、第1歯車210が、後方から見て反時計方向の回転(以降、これを「CCW回転」と呼称する)によって回り切り、第1フック部71の係合部位としての第1突起部77が外周溝部213の一端に位置した状態を示している。この状態では、第1歯車210は時計方向の回転(以降、これを「CW回転」と呼称する)は可能であるが、CCW回転は不可能になっている。また、外周溝部213はその両端において第1の回転軸J1の中心から離れるように第1カム部214が形成され、第1突起部77が一方の端部に形成された第1カム部214に到達した場合、第1フック部71を第2の回転軸J2を中心にCCW回転させるようになっている。こうすることによって、第1突起部77によって第1歯車210のCCW回転を規制して停止させるとともに、第2フック部72の第2突起部78が第2歯車220の外周に設けられた外歯221と係合しなくなることで第2歯車220の回転を規制しないようになっている。
【0050】
この状態から、次に図7(b)に示すように第1歯車210がCW回転すると、第1突起部77は第1カム部214から離れ、外周溝部213における第1カム部214よりも第1の回転軸J1に近い位置で円弧状をなす第2カム部215に到達する。従って、第1フック部71は図示するように第2の回転軸J2を中心にCW回転するので、第2フック部72の第2突起部78が外歯221と係合して第2歯車220の回転を規制して停止させるようになる。もとより、この状態において、第1歯車210はCW回転およびCCW回転の双方への回転が可能である。
【0051】
そして、図7(c)に示すように、第1歯車210がCW回転して回り切り、第1フック部71の第1突起部77が、外周溝部213の他方の端部に形成された第1カム部214と係合する位置になると、第1歯車210は、CCW回転可能であるがCW回転が不可能な状態になる。また、外周溝部213は、他端に形成された第1カム部214においても、同様に第2カム部215よりも第1の回転軸J1から離間しているので、第1突起部77がこの外周溝部213の他端の第1カム部214に到達した場合、第1フック部71をCCW回転させることになる。この結果、切替手段70は、第1フック部71の第1突起部77が第1歯車210のCW回転を規制して停止させるとともに、第2フック部72の第2突起部78が第2歯車220の歯(外歯)と係合しなくなることで第2歯車220の回転を規制しないようになっている。
【0052】
このように、伝達駆動歯車118の回転は、切替手段70によって第1歯車210と第2歯車220とのいずれかが回転するように伝達される。すなわち、第1歯車210の回転が第1突起部77によって規制されて停止した状態では第2歯車220の回転は第2突起部78によって規制されず、その一方、第1歯車210の回転が第1突起部77によって規制されない状態では第2歯車220の回転が第2突起部78によって規制されて停止するようになっている。
【0053】
さて、本実施形態では、伝達駆動歯車118の回転駆動すなわち1つのモーター110の回転駆動を、前述の太陽歯車120から、この太陽歯車120と噛み合う遊星歯車230を用いた遊星歯車機構によって、第1歯車210あるいは第2歯車220に伝達するようになっている。
【0054】
具体的に、第1歯車210あるいは第2歯車220と、伝達駆動歯車118と、の間の回転伝達に用いられている遊星歯車機構について、図8を参照して説明する。図8(a)は、第1歯車210を前方から見た状態で示した遊星歯車機構の構造図であり、図8(b)は、第2歯車220を後方から見た状態で示した遊星歯車機構の構造図である。
【0055】
図8(a)に示すように、第1歯車210は第1の回転軸J1に対してほぼ対称となる位置において、この第1の回転軸J1の軸線に対してほぼ直交する面を基底面として前方(紙面手前方向)に突出する2つのアーム軸216が設けられている。これらのアーム軸216にはそれぞれ遊星歯車230が回転可能に軸支されている。また第1の回転軸J1には、伝達駆動歯車118と連動して回転する太陽歯車120が固定されるとともに、太陽歯車120は遊星歯車230と噛み合うように配設されている。また、図8(b)に示すように、遊星歯車230は、太陽歯車120と噛み合う位置と反対側となる対角位置において、第2歯車220の内周に設けられた歯車つまり内歯歯車222と噛み合うように構成されている。
【0056】
このように構成された太陽歯車120と遊星歯車230とを有する遊星歯車機構において、第1突起部77が第1歯車210の外周溝部213の両端以外に位置する場合は、第2突起部78が第2歯車220の外歯221と係合して第2歯車220の回転が規制された状態となる。この状態では、例えば、図8(a)に示すように、太陽歯車120のCW回転に伴って遊星歯車230はCCW回転しながら太陽歯車120の周りをCW回転つまり周回運動する。従って、この周回運動に伴って遊星歯車230の回転軸つまり2つのアーム軸216もCW回転するので、2つのアーム軸216が設けられた第1歯車210も同様にCW回転する。
【0057】
そして、第1歯車210が回転して第1突起部77が第1歯車210の外周溝部213の両端のいずれかに位置する場合は、第1歯車210の回転を規制するとともに、第2突起部78が第2歯車220の回転の規制を解除した状態となる。この状態では、例えば、図8(b)に示すように、遊星歯車230の回転軸つまり2つのアーム軸216が回転せず固定された状態となる。従って、この状態において、太陽歯車120がCW回転を継続した場合、遊星歯車230は固定された2つのアーム軸216を中心にCCW回転する。そして、この遊星歯車230のCCW回転によって、第2歯車220の内歯歯車222がCCW回転するので、第2歯車220はCCW回転する。
【0058】
この結果、本実施形態の太陽歯車120と遊星歯車230とによる遊星歯車機構および切替手段70によって、伝達駆動歯車118の回転を、図8(c)に示すように、第1歯車210と第2歯車220のいずれかが回転するように伝達することができるようになっている。すなわち、第1歯車210がCW回転またはCCW回転しているときは、第2歯車220は停止している。また、伝達駆動歯車118が一方向の回転を継続するとき、第1歯車210がCW回転をして停止すると第2歯車220がCCW回転を開始し、第1歯車210がCCW回転をして停止すると第2歯車220がCW回転を開始するようになっている。また、第2歯車220のCCW回転時に伝達駆動歯車118が逆転すると、第2歯車220は停止して第1歯車210が直ちにCCW回転を開始し、第2歯車220のCW回転時に伝達駆動歯車118が逆転すると、第2歯車220は停止して第1歯車210が直ちにCW回転を開始するようになっている。
【0059】
この結果、第3歯車300、第4歯車400、第5歯車500、および第6歯車600は、第1歯車210もしくは第2歯車220によって、それぞれ図9に示すように回転駆動されるようになっている。すなわち、第2フック部72によって第2歯車220の回転が規制された状態にあるとき、図中実線の矢印で示したように、太陽歯車120の回転によって遊星歯車230が周回運動する。この結果、ここでは説明の都合上図示しない第1歯車210が回転して、第3歯車300もしくは第4歯車400が回転駆動される。一方、第2フック部72による第2歯車220の回転規制が解除された状態にあるとき、図中破線の矢印で示したように、太陽歯車120の回転によって第2歯車220が回転し、第5歯車500および第6歯車600が回転駆動される。
【0060】
さて、本実施形態のメンテナンス装置100においては、第3歯車300から第6歯車600までのそれぞれの歯車の回転に応じて、メンテナンス装置100が有するメンテナンスのための複数の機能部品がそれぞれ動作するように駆動機構が構成されている。換言すれば、1つのモーター110の回転駆動によって複数の機能部品がそれぞれ動作するように、駆動機構の系列(駆動系)が複数構成されている。
【0061】
次に、それぞれの機能部品を動作させる駆動機構について説明する。なお、本実施形態のメンテナンス装置100においては、メンテナンスに関する機能部品を動作させる駆動系が複数構成されているため、これらの駆動系についての説明が多岐に渡る。そこで、以降の説明に関する理解を容易にするために、メンテナンスに関する全体の駆動系について、その駆動系を模式的に示した図10を参照して先に説明しておく。
【0062】
図10に示すように、本実施形態のメンテナンス装置100には、第3歯車300の回転によって、吸引キャップ350の上下移動とFLボックス380の上下移動を行う1つの駆動系が構成されている。この駆動系では、吸引キャップ350はクランク機構によって、またFLボックス380はカム機構によって、それぞれ上下方向へ移動するように第3歯車300の回転駆動を変換するようになっている。さらに、吸引キャップ350は、一方向にのみ回転するワンウェイクラッチ機構によって、上下移動における所定の位置において、一方向と反対の他方向への回転に対して第3歯車300の回転が伝達されないようにして所定の位置を維持するように構成されている。
【0063】
また、メンテナンス装置100には、第4歯車400の回転によって、ワイピング部材450を前後方向へ往復移動させる1つの駆動系が構成されている。この駆動系では、回転する軸に形成された螺旋溝にピンが係合する構成のスクリューカム機構によって、第4歯車400の回転駆動をワイピング部材450の前後方向への移動に変換するように構成されている。
【0064】
また、メンテナンス装置100には、第5歯車500の回転によって、放置キャップ550の上下移動とキャリッジロック体590の上下移動、およびFLボックスカバー580の前後移動を行う1つの駆動系が構成されている。この駆動系では、放置キャップ550はカム機構によって、またキャリッジロック体590はロッドとカム機構によって、それぞれ上下方向へ移動するように第5歯車500の回転駆動を変換するように構成されている。また、FLボックスカバー580は、ラックピニオン機構によって、第5歯車500の回転駆動を前後移動に変換するように構成されている。
【0065】
また、メンテナンス装置100には、第6歯車600の回転によって、吸引ポンプ650の回転駆動を行う1つの駆動系が構成されている。この駆動系では、吸引ポンプ650は、一方向の回転によって吸引を行う状態となる一方、他方向の回転では、吸引動作を行わない非吸引状態となるように構成されている。
【0066】
そして、上述するように、第2歯車220が第2フック部72によって回転規制されている状態(図10において左側)では、第1歯車210が、モーター110によって駆動される太陽歯車120の回転(例えばCW回転)と同じ方向に回転(つまりCW回転)するようになっている。このとき、第1歯車210は、その外周において、第3歯車300と第4歯車400のいずれか一方と噛み合うように歯車が形成されているので、吸引キャップ350(FLボックス380)が上下移動する間は、ワイピング部材450は前後移動しないようになっている。
【0067】
同じく上述するように、第1歯車210が第1フック部71によって回転規制されている状態(図10において右側)では、第2歯車220が、太陽歯車120の回転と逆方向に回転(ここではCCW回転)するようになっている。従って、吸引キャップ350(FLボックス380)が上下移動しない状態、あるいはワイピング部材450が前後移動しない状態で、放置キャップ550(キャリッジロック体590)の上下移動、FLボックスカバー580の前後移動、および吸引ポンプ650の回転駆動が行われるようになっている。
【0068】
以下、このように複数の機能部品をそれぞれ動作させる複数の駆動系を有するメンテナンス装置100について、以下、それぞれの駆動系の具体的な構成を順次説明する。
(吸引キャップとFLボックスの駆動系)
図11に示すように、本実施形態のメンテナンス装置100は第3歯車300の回転駆動によって、吸引キャップ350が上下方向に移動されるように駆動系が構成されている。すなわち、第1歯車210の回転によって第1欠歯歯車211と噛み合う第3歯車300が回転駆動される。この第3歯車300の回転は、クラッチ機構310によって、この第3歯車300が回転可能に軸支された第3の回転軸J3の回転に伝達される。伝達された第3の回転軸J3の回転駆動は、クランク機構360によって吸引キャップ350の上下移動に変換される。すなわち、吸引キャップ350は、フレーム構造体90に固定された吸引キャップガイド棒35に沿って上下移動して、図示しない液体噴射ヘッド30に対して離接するようになっている。
【0069】
さらに、第3歯車300の回転駆動によって、FLボックス380が上下方向に駆動されるように駆動系が構成されている。すなわち第3歯車300は第4の回転軸J4に回転可能に軸支された第4伝達歯車330を介してFLボックス駆動歯車340を回転させることによって、FLボックス駆動歯車340が固定された第8の回転軸J8を回転させる。そして、第8の回転軸J8の回転によって、第8の回転軸J8に固定されたFLカム384が回転して、FLボックス380を上下移動させるようになっている。
【0070】
これらの駆動系において、まず吸引キャップ350の上下移動に関する機構を説明する。本実施形態では、第3歯車300は、前述するように駆動側部材となる第3歯車300の回転を従動側部材となる第3の回転軸J3に伝達するクラッチ機構310が伝達機構として形成されている。また、このクラッチ機構310には、大気開放弁66を開閉させる弁開閉部材67の一部と係合するカム形状部317(図12参照)が設けられている。このカム形状部317が第3歯車300の回転に伴って回転することによって弁開閉部材67の一部と係合して大気開放弁66を上方移動させ、吸引キャップ350が液体噴射ヘッド30に当接して形成される閉空間を大気開放するようになっている。この大気開放に関する構成については後ほど説明する。
【0071】
次にクラッチ機構310について、図12を参照して説明する。本実施形態のクラッチ機構310は、第3の回転軸J3が所定の角度範囲に回転した状態、換言すれば、吸引キャップ350が所定量上昇したときに一方向の回転のみ伝達するワンウェイクラッチとして動作するように構成されている。
【0072】
クラッチ機構310は、図12の右上部に示すように、駆動側部材となる第3歯車300の回転を伝達する構成部品として、第3歯車300から前方向に順に、レバー部材311と、クラッチ板315と、捻りばね320と、クラッチ板規制部材325と、を備えている。
【0073】
レバー部材311は、その一端に貫通孔部312が設けられ、この貫通孔部312に対してクラッチ板315の後側の面において後方に突出して設けられたレバー軸部316が挿入されることで、クラッチ板315において揺動可能に軸支されている。またレバー部材311の他端には、第3歯車300に設けられた係合溝303に係合するように係合爪313が設けられている。そして、レバー部材311は、図12の丸枠内に示したように、そのレバー部材311のクラッチ板315側の面(前面)に設けられた突起部314に一端321が当接するとともに他端322がクラッチ板315に固定された捻りばね320によって、その付勢力が印加されるようになっている。このため、レバー部材311は、係合部材として機能し、捻りばね320によって常に係合爪313が係合溝303と係合する方向に付勢されるようになっている。
【0074】
クラッチ板315は第3の回転軸J3に固定され、第3の回転軸J3と一体で回転する。従って、クラッチ機構310は、第3歯車300の回転が、係合溝303と係合爪313との係合によってクラッチ板315の回転に伝達されることによって、第3の回転軸J3が回転するように構成されている。なお、クラッチ板315にはその外周部分において前方向に膨出して厚く形成されたカム形状部317が設けられている。このカム形状部317は、後述する吸引キャップ350内の閉空間を大気開放する際に機能するようになっている。
【0075】
クラッチ板規制部材325は、径方向に飛び出すとともに前後方向に沿って所定長さ延設された凸条部327によって、第3の回転軸J3を中心とした回転が規制される一方、第3の回転軸J3に沿って前後方向にスライドできるようになっている。そして、付勢手段(例えばコイルばね)329によって常に後方に付勢されている。このクラッチ板規制部材325には、後方から見てCW回転側に斜めの面を有し、CCW回転側に前後方向と略同じ方向の垂直面を有する三角形状突部328が、その外周部において後方に飛び出すように設けられている。なお、本実施形態では、三角形状突部328は、クラッチ板規制部材325において、第3の回転軸J3を中心に対角位置の夫々に1つ(合計2つ)形成されている。
【0076】
一方、クラッチ板315には、クラッチ板規制部材325に設けられた三角形状突部328が係合する三角形状凹部318が、図12の丸枠内に示したように、クラッチ板規制部材325と対向する前側の面に隣接して2箇所(合計4箇所)形成されている。従って、この三角形状突部328と三角形状凹部318とが係合した状態において、後方から見たときクラッチ板315は第3の回転軸J3に対して、CCW回転は可能であるが、CW回転が規制された状態となるように構成されている。
【0077】
この状態において、第3歯車300のCW回転に伴って係合溝303のCCW回転側が係合爪313に対して当接したとき、係合溝303と係合爪313との係合が外れるようになっている。すなわちCW回転が規制されたクラッチ板315に軸支されたレバー部材311はCW回転が規制された状態にある。そこで、係合溝303と係合爪313との当接によってレバー部材311がレバー軸部316を中心にCW回転(揺動)するように、係合溝303のCCW側と当接する係合爪313のCCW側の面形状が設定されている。換言すれば、レバー部材311の係合爪313は、このように第3歯車300のCW回転において、レバー部材311が捻りばね320による付勢力に抗して回転(揺動)して、係合溝303との係合が外れるように、その形状が設定されている。なお、係合爪313は、CCW回転において係合溝303との係合を維持して、第3歯車300の回転を第3の回転軸J3に伝達するように、その形状が設定されている。こうして、クラッチ機構310はワンウェイクラッチとして機能するようになっている。
【0078】
本実施形態では、このように三角形状突部328と三角形状凹部318とが係合する状態となるクラッチ板315の2つの回転位置において、クラッチ機構310がワンウェイクラッチとして動作する。すなわち、クラッチ板315の1つの回転位置は吸引キャップ350が液体噴射ヘッド30に当接してインクを吸引する吸引位置であり、もう1つの回転位置は、吸引キャップ350が液体噴射ヘッド30に当接して形成された閉空間を大気開放し、吸引キャップ350が液体噴射ヘッド30に当接した状態のままで吸引する大気開放吸引位置である。なお、大気開放吸引については後述する。そして、これ以外の少なくとも一部のクラッチ板315の回転位置においてワンウェイクラッチが動作しないように規制するようになっている。このワンウェイクラッチの動作の規制の仕組みについて、図13を参照して説明する。なお、図13では、説明を容易にするため、吸引キャップ350において液体噴射ヘッドと当接する部分構成部品を、吸引キャップ350として図示している。
【0079】
図13(a)に示すように、本実施形態では、クラッチ板315が回転開始の位置、すなわち吸引キャップ350が液体噴射ヘッド30に対して離間位置つまり基準位置にあるとき、ワンウェイクラッチが働くようになっている。すなわち、図13(a)に示したように、第3歯車300の係合溝303がCW回転する場合は、レバー部材311がレバー軸部316を中心にCW回転して係合溝303と係合爪313との係合が外れるようになっている。もとより、この基準位置において、三角形状突部328は三角形状凹部318と係合するようになっている。
【0080】
一方、第3歯車300の係合溝303がCCW回転すると、これと係合する係合爪313によってレバー部材311がCCW回転するように構成されている。この結果、レバー軸部316によってレバー部材311と連結されたクラッチ板315は、レバー部材311と一緒にCCW回転して第3の回転軸J3をCCW回転させ、吸引キャップ350を液体噴射ヘッド30に近づくように上昇させるようになっている。
【0081】
本実施形態では、この吸引キャップ350の上昇に際して、ワンウェイクラッチが働かないように構成されている。具体的には、レバー部材311の回転移動経路に即して、クラッチ板315の外周側において、レバー部材311の係合爪313が係合溝303との係合が外れないように、レバー部材311のレバー軸部316回りの回転を抑止する回転抑止部としての第1抑止壁95が設けられている。本実施形態では、第1抑止壁95はフレーム構造体90に形成されている。この結果、吸引キャップ350が最低位置から上昇して、吸引キャップ350が図中破線で示した位置に相当する移動区間H1を移動する間においては、ワンウェイクラッチが動作しないようになっている。
【0082】
次に、図13(b)に示すように、第3歯車300の係合溝303のCCW回転によって、吸引キャップ350が液体噴射ヘッド30と当接する吸引位置までクラッチ板315がCCW回転(ここでは基準位置から163度回転)した状態では、ワンウェイクラッチが動作するようになっている。すなわち、第1抑止壁95は、レバー部材311がレバー軸部316を中心に回転して係合溝303と係合爪313との係合が外れる状態になるまでの回転軌跡内に存在しないように形成されている。従って、この状態においては、モーター110が逆転駆動され、係合溝303がCW回転しても第3の回転軸J3はCW回転しないようになっている。なお、このモーター110の逆転によって吸引ポンプ650が動作して液体噴射ヘッド30からインクの吸引がおこなわれるようになっている。この、吸引ポンプ650による吸引については後述する。
【0083】
更に、図13(c)に示すように、第3歯車300の係合溝303の更なるCCW回転によって、クラッチ板315が所定角度CCW回転(ここでは基準位置から180度回転)した状態までは、ワンウェイクラッチが継続して動作するようになっている。すなわち、レバー部材311がレバー軸部316を中心に回転(揺動)して係合溝303と係合爪313との係合が外れる状態になるまでの回転軌跡内に、レバー部材311の回転を抑止する抑止壁が存在しないようになっている。なお、この状態において、吸引キャップ350は液体噴射ヘッド30に対して加圧状態で当接したまま、クラッチ板315に設けられたカム形状部317(図12参照)が弁開閉部材67と係合して吸引キャップ350内の閉空間を大気開放するようになっている。そして、1つのモーター110の駆動によって吸引ポンプ650が作動して、大気開放された状態の閉空間の吸引がおこなわれるようになっている。
【0084】
そして、図13(d)に示すように、第3歯車300の係合溝303と係合する係合爪313によってレバー部材311がCCW回転することによって、クラッチ板315が180度回転した状態から更にCCW回転する。この結果、クラッチ板315は、第3の回転軸J3をCCW回転させて吸引キャップ350を降下させることによって、吸引キャップ350を液体噴射ヘッド30に当接した当接位置から離間させた離間位置までの移動区間H2を移動させるようになっている。
【0085】
このとき、移動区間H2において、例えば吸引キャップ350を第3歯車300のCCW回転による降下に先んじて強制的に降下させようとした場合、第3の回転軸J3と連動するクラッチ板315のCCW回転(図中太線矢印)が第3歯車300のCCW回転よりも先行することになる。このため、クラッチ板315に対して相対的に第3歯車300はCW回転(図中破線矢印)する状態になる。したがってこのCW回転によって通常はワンウェイクラッチが働くので、クラッチ板315は回転に対する負荷抵抗が小さい状態でCCW回転するために吸引キャップ350の降下速度が速くなってしまう。
【0086】
そこで、本実施形態では、レバー部材311の回転移動経路に即して、クラッチ板315の外周側において、係合爪313と係合溝303との係合が外れないように、レバー部材311のレバー軸部316回りの回転を抑止する回転抑止部としての第2抑止壁96が設けられている。本実施形態では、第2抑止壁96は第1抑止壁95と同様にフレーム構造体90に形成されている。この結果、吸引キャップ350が当接位置から降下して、離間位置に到達する移動区間H2内において、第2抑止壁によってワンウェイクラッチが動作しない範囲が設定されている。
【0087】
このように第2抑止壁96を設けることによってワンウェイクラッチが働かないようにすることによって、クラッチ板315は、係合爪313によって係合溝303を押して第3歯車300を回転させることになる。この結果、このワンウェイクラッチが動作しない間において、第3歯車300の回転に伴う負荷抵抗がクラッチ板315の回転に対して発生するため、吸引キャップ350は早く降下しないことになる。
【0088】
なお、本実施形態では、クラッチ板315が360度回転して回転開始の位置、すなわち吸引キャップ350が離間位置つまり基準位置に戻ったとき、前述するようにワンウェイクラッチが働くようになっている。従って、第1抑止壁95および第2抑止壁96は、図13(a)に示したように、クラッチ板315が回転開始の位置、もしくは360度回転した位置、において、レバー部材311がレバー軸部316を中心に回転して係合溝303と係合爪313との係合が外れる状態になるまでの回転軌跡内に存在しないように形成されている。
【0089】
次に、吸引キャップ350の上下移動に関する機構について説明する。本実施形態では、上述するように、吸引キャップは離間位置においてワイピング部材450がその上側を移動することが可能な距離を隔てて液体噴射ヘッド30から離間している。そこで、本実施形態では昇降機構として機能するクランク機構360を用いて吸引キャップ350を大きく上下移動させるとともに、吸引キャップ350を液体噴射ヘッド30に対して前後左右方向において位置決めできるようになっている。以下、まず吸引キャップ350のクランク機構360による上下移動について、その構成を具体的に説明する。その後、吸引キャップ350の液体噴射ヘッド30に対する位置決め構造について説明する。
【0090】
図14に示すように、吸引キャップ350のクランク機構360は、第3の回転軸J3から駆動力が伝達されて作動する駆動レバー361と、該駆動レバー361に対して駆動力が伝達可能に連結される従動レバー362とを備えている。駆動レバー361は、後方側から見た輪郭形状が長手方向を有する略長円形状をなして構成されている。そして、駆動レバー361は、その長手方向の一方側の端部361a(図14では上端部)に対して第3の回転軸J3の前端部が嵌め込むようにして固定されて連結されている。また、駆動レバー361は、その長手方向の他方側の端部361b(図14では下端部)が従動レバー362に対して回動自在に連結されている。すなわち、駆動レバー361及び従動レバー362は、両部材間の連結部を中心として相対的に回動することが許容されるように連結されている。
【0091】
従動レバー362は、後方側から見た輪郭形状が、駆動レバー361と同様に長手方向を有する略長円形状をなして構成されている。そして、従動レバー362は、その長手方向の一方側の端部362a(図14では下端部)が第1連結部として駆動レバー361に対して回動自在に連結される一方、長手方向の他方側の端部362b(図14では上端部)が第2連結部として吸引キャップ350に対して回動自在に連結されている。
【0092】
従動レバー362の長手方向の寸法は、駆動レバー361の長手方向の寸法よりも大きく設定されている。そのため、図14に示すように、駆動レバー361及び従動レバー362が各々の長手方向を一致させるように重畳して配置された状態では、吸引キャップ350と連結された従動レバー362の他方側の端部362b(図14では上端部)の方が、駆動レバー361に連結される第3の回転軸J3よりも上方に位置するようになっている。
【0093】
吸引キャップ350は、従動レバー362が連結されるキャップホルダ(ホルダ部材)364と、このキャップホルダ364によって支持されるキャップ部材365とを備えている。なお、従動レバー362の第2連結部となる他方側の端部362b(図14では上端部)は、このキャップホルダ364と回転自在に連結されている。
【0094】
キャップ部材365は、左方から見た側面視で略U字状をなすように構成されており、その内底面から上方に向けて突出するように前後方向に細長く延びる略四角筒状の弾性材料からなる当接部366が設けられている。そして、キャップ部材365は、液体噴射ヘッド30に対して当接部366の弾性変形を伴いつつ密着することにより、液体噴射ヘッド30のノズルの開口部を気密状の閉空間で覆うようになっている。
【0095】
また、キャップ部材365の底面とキャップホルダ364の上面との間には、キャップ部材365の底面における長手方向の両側となる位置に付勢部材としてのコイルばね367がそれぞれ介設されている。そして、キャップ部材365は、通常、コイルばね367によって上方に付勢された状態でキャップホルダ364に対して前後左右方向が概略位置決めされて当接している。従って、キャップ部材365は下方に押されることによってコイルばね367が圧縮されてキャップホルダ364に対して相対的に下方向に移動できるようになっている。そして、この下方向の移動によって前後左右方向においても移動が可能な状態になるように構成されている。このようにキャップ部材365が前後左右方向に移動できるようになることによって、液体噴射ヘッド30(ヘッドユニット)に対するキャップホルダ364の位置が前後左右方向においてずれていても、後述するように吸引キャップ350におけるキャップ部材365を液体噴射ヘッド30に対して位置決めできるようになっている。なお、キャップ装置としての吸引キャップ350は、キャップホルダ364と、コイルばね367と、キャップ部材365とにより、一体的に昇降可能なキャップユニットを構成している。
【0096】
次に、吸引キャップ350のクランク機構360によって行われる吸引キャップ350の昇降動作の仕組みについて、図15を参照して説明する。図15(a)は、駆動レバー361が従動レバー362に対して前後方向に重畳するように配置された状態を示している。この状態では、従動レバー362においてキャップホルダ364に対して連結される端部362bが、駆動レバー361が第3の回転軸J3を中心として回動する場合の最下点に位置しており、キャップ部材365の当接部366が液体噴射ヘッド30に対して上下方向において最も離間した位置となる。本実施形態では、この位置が、吸引キャップ350の昇降動作の開始位置および終了位置である。
【0097】
この状態(開始位置)から、次に図15(b)に示すように、第3歯車300の回転駆動がクラッチ機構310によって伝達されてCCW回転する第3の回転軸J3によって、その回転が駆動レバー361に伝達される。すると、駆動レバー361は、第3の回転軸J3から伝達される駆動力に基づいて第3の回転軸J3の回転方向と同一方向にCCW回転するようになる。そして、駆動レバー361において、従動レバー362に連結された端部361bは、第3の回転軸J3を中心として周回運動する。
【0098】
ここで、上記のように、従動レバー362の端部361bが連結されているキャップホルダ364は、フレーム構造体90に固定された吸引キャップガイド棒35によって、その変位方向が上下方向に規制されている。そして、キャップホルダ364に連結される従動レバー362の端部362bも同様に、その変位方向が上下方向に規制されている。また、従動レバー362は、その長手方向の寸法が、駆動レバー361の長手方向の寸法よりも大きく設定されている。そのため、従動レバー362は、駆動レバー361に連結された第1連結部である一方側の端部362aが第3の回転軸J3を中心として周回運動すると、原理的にキャップホルダ364に連結された第2連結部である端部362bが上方に移動することになり、キャップホルダ364が上昇する。したがって、キャップホルダ364に対してコイルばね367を介して上方に付勢されたキャップ部材365は、キャップホルダ364の上昇に伴って、液体噴射ヘッド30に対して接近するように上昇するようになっている。
【0099】
なお、図15(a)(b)に示すように、クランク機構360は、駆動レバー361のCCW回転において、回転角度が小さい間は、キャップホルダ364の上昇量は少なく、回転角度が大きくなるにつれてキャップホルダ364が大きく上昇することがわかる。従って、本実施形態のクランク機構360において、駆動レバー361と従動レバー362の成す角度が所定の角度以上からキャップホルダ364を上昇させるように構成すれば、駆動レバー361の回転に対してキャップホルダ364を効率よく上昇させることができる。なお、実用的には、所定の角度として30度が好ましい。本実施形態では図15(a)のように駆動レバー361と従動レバー362の成す角度は0度である。この場合は、液体噴射ヘッド30と当接部366の距離を大きく取ることができる。よって、駆動レバー361と従動レバー362の成す角度は0度以上30度以下のときを駆動レバー361の始動する位置とするのが望ましい。
【0100】
続いて、図15(c)に示すように、第3の回転軸J3が更に回転すると、駆動レバー361は、その長手方向が水平方向の位置になったとき、従動レバー362と連結された方の端部361bが右側方向において最も離間するようになっている。換言すれば、駆動レバー361が回転(揺動)するために必要な右側の占有領域は、ほぼ駆動レバー361の長さ分で済むことになる。
【0101】
そして次に、図15(d)に示すように、第3の回転軸J3が更に回転すると、前述した吸引位置に到達するようになっている。このとき駆動レバー361は、本実施形態では開始位置から163度CCW回転した状態になっている。この状態では、従動レバー362は、駆動レバー361に対して連結される端部(第1連結部)362aから上方に位置するようになる。また、従動レバー362は、駆動レバー361に対してほぼ180度に近い鈍角をなすように交差した状態になる。すなわち、従動レバー362は、キャップホルダ364に対して連結される端部(第2連結部)362bが、駆動レバー361に対して連結される端部362aに対して図15(d)に示すように、僅かに左斜め上方に位置するようになる。この結果、クランク機構360は、キャップホルダ364を開始位置から凡そ駆動レバー361の長さの2倍の距離分、鉛直上方に上昇させることができるようになっている。
【0102】
この吸引位置において、キャップホルダ364に対してコイルばね367を介して連結されたキャップ部材365は、キャップホルダ364の上昇に伴って当接部366を液体噴射ヘッド30に対して密着させるようになっている。そして、この吸引位置においては、当接部366がキャップホルダ364に対して相対的に下側に移動して、液体噴射ヘッド30に対して弾性変形を伴いながら密着することにより、キャップ部材365の当接部366と液体噴射ヘッド30との間に気密状の閉空間が形成されるようになっている。また、この状態で吸引ポンプ650が作動することにより、キャップ部材365の当接部366と液体噴射ヘッド30のノズル形成面との間に形成された閉空間が減圧されて液体噴射ヘッド30のノズルからインクが吸引されることになる。
【0103】
続いて、図15(e)に示すように、第3の回転軸J3が更に回転すると、前述した大気開放吸引位置に到達するようになっている。このとき駆動レバー361は、本実施形態では開始位置から180度CCW回転した状態になっている。この状態では、従動レバー362は、駆動レバー361に対して連結される端部362aから上方に位置するとともに、駆動レバー361に対して180度をなして交差した状態、すなわち駆動レバー361と一直線になった状態になる。この結果、クランク機構360は、キャップホルダ364を開始位置から駆動レバー361の長さの2倍の距離分、鉛直上方に上昇させるようになっている。そして、従動レバー362においてキャップホルダ364に対して連結される端部362bは、駆動レバー361が第3の回転軸J3を中心として回動する場合の最上点に位置するようになっている。
【0104】
すると、キャップホルダ364が図15(d)に示す状態から僅かながら更に上昇することに伴って、キャップホルダ364とキャップ部材365との間に介設されたコイルばね367が更に圧縮する。その結果、キャップ部材365には、図15(d)に示す状態よりもコイルばね367から大きくなった付勢力が作用する。このため、キャップ部材365の当接部366が液体噴射ヘッド30に対して更に強く密着するようになる。そして、この大気開放吸引位置において、大気開放された閉空間を空吸引することにより、キャップ部材365内に貯留されたインクを排出するようになっている。
【0105】
なお、図15(d)(e)に示すように、クランク機構360は、駆動レバー361のCCW回転において、駆動レバー361と従動レバー362の成す角度が大きいときは、キャップホルダ364の上昇量は少なくなることがわかる。従って、本実施形態のクランク機構360において、駆動レバー361の回転角度が163度以下の所定の角度になったときキャップ部材365の当接部366が液体噴射ヘッド30に当接するようにキャップホルダ364を上昇させるように構成されている。こうすることによって、キャップ部材365の当接部366が液体噴射ヘッド30と当接した以降のキャップホルダ364の上昇量が抑制されるので、コイルばね367のキャップ部材365に対する付勢力の変化増加が抑制される。この結果、キャップ部材365における当接部366の弾性変形が抑制されることによって液体噴射ヘッド30に対して安定した密着状態を維持して当接させることができる。当接部366が弾性変形を繰り返すと弾性力が劣化するような材質の場合はこのように用いるのがよい。また、移動する角度が小さいため、動作時間を短くできる。なお、実用的には、所定の角度として135度以上が好ましい。本実施形態では、図15(e)のように駆動レバー361が180度まで回転している。この場合は、コイルばね367の付勢力が最大となるため、確実に当接部366を液体噴射ヘッド30に密着させたい場合に適している。
【0106】
続いて、図15(f)に示すように、第3の回転軸J3が更に回転すると、駆動レバー361は、その長手方向が水平方向の位置になったとき、従動レバー362と連結された端部361bが左側方向において最も離間するようになっている。換言すれば、駆動レバー361が回転(揺動)するために必要な左側の占有領域は、ほぼ駆動レバー361の長さ分で済むことになる。なお、駆動レバー361が、この水平位置になる過程において、吸引キャップ350は、キャップホルダ364に対してコイルばね367を介して連結されたキャップ部材365も同様に、液体噴射ヘッド30から離間するように降下する。なお、この場合、図15(e)に示す状態において、キャップ部材365の当接部366と液体噴射ヘッド30との間に形成された閉空間の圧力は大気開放に伴って大気圧と同程度となっているため、キャップ部材365は液体噴射ヘッド30からの離間動作が可能となっている。
【0107】
次に、吸引キャップ350の液体噴射ヘッド30に対する位置決め構造について図16〜図21を参照して具体的に説明する。なお、本実施形態では、液体噴射ヘッド30に設けられた形状を利用して、吸引キャップ350におけるキャップ部材365を、液体噴射ヘッド30のヘッドユニットに対して位置決めするように構成されている。従って、まず液体噴射ヘッド30の構造について説明する。
【0108】
図16の上側に示すように、本実施形態の液体噴射ヘッド30は、左右方向に配列された5つのヘッドユニット30aを有するとともに、前後左右方向において上方向に折り曲げられた金属製の板金31によって、これらが下側から覆われて保持されている。そして、液体噴射ヘッド30には、その前後方向の端面において所定量突出した突部32が、それぞれのヘッドユニット30aに対応して形成されている。従って、液体噴射ヘッド30における各ヘッドユニット30aの位置は、その前後方向が板金31によって、その左右方向が突部32によって定まるようになっている。
【0109】
次にキャップ部材365の構造について説明する。図16に示すように、吸引キャップ350のキャップ部材365には、その長手方向の両側から上方に突出するように壁部368が設けられている。これらの壁部368は、液体噴射ヘッド30が有するヘッドユニット30aの長手方向(前後方向)の寸法にほぼ等しい間隔を隔てて配置されている。そして、これらの壁部368には、上方からの平面視で略U字状をなす凹部369がその内面を前後方向に対向させるようにして形成されている。そして、キャップ部材365が液体噴射ヘッド30に対して接近するように上昇することによって、液体噴射ヘッド30の突部32が上方から各壁部368の凹部369に対して挿入されるようになっている。また、液体噴射ヘッド30の前後方向における板金31の部分が前後方向における各壁部368間に対して挿入されるようになっている。
【0110】
さて、図16および図17の断面図に示すように、各壁部368には、前後方向に対向する内側面の上端部において左右方向両側に第1傾斜面(第1摺接面)370が形成されている。これらの第1傾斜面(第2摺接面)370は、左右方向から見た側面視において、液体噴射ヘッド30に接近する上方に向かうに連れて第1傾斜面370同士の前後方向の離間距離が次第に大きくなるように形成されている。そして、各第1傾斜面370の下端部では、第1傾斜面370同士の前後方向の離間距離が、液体噴射ヘッド30の前後方向における板金31の寸法よりも若干大きくなるように形成されている。
【0111】
また、各壁部368において前後方向に対向する内側面には、上下方向の略中央となる位置において左右方向両側に第2傾斜面372が形成されている。これらの第2傾斜面372は、左右方向から見た側面視において、液体噴射ヘッド30に接近する上方に向かうに連れて第2傾斜面372同士の前後方向の離間距離が次第に大きくなるように形成されている。そして、各第2傾斜面372の下端部では、第2傾斜面372同士の前後方向の離間距離が、液体噴射ヘッド30の前後方向における板金31の寸法とほぼ等しくなるように形成されている。
【0112】
一方、図16および図18の断面図に示すように、各壁部368の凹部369には、左右方向に対向する内面の上端部に第3傾斜面373が形成されている。第3傾斜面373は、前後方向から見た側面視において、液体噴射ヘッド30に接近する上方に向かうに連れて凹部369の内面同士の左右方向の離間距離が次第に大きくなるように形成されている。これらの第3傾斜面373は、上側面部位374の方が下側面部位375よりも傾斜勾配が大きくなるように形成されている。すなわち、これらの第3傾斜面373は、上側面部位374と下側面部位375とが鈍角をなして交差するように形成されている。
【0113】
そして、第3傾斜面373は、上側面部位374と下側面部位375との境界部では、凹部369の内面同士の左右方向の離間距離が同方向における液体噴射ヘッド30の突部32の寸法よりも若干大きくなるように形成されている。また、第3傾斜面373は、下側面部位375の下端部では、凹部369の内面同士の左右方向の離間距離が同方向における液体噴射ヘッド30の突部32の寸法とほぼ等しくなるように形成されている。
【0114】
さて、本実施形態では、液体噴射ヘッド30の突部32が各壁部368の凹部369に対して上方から挿入されることによって、各ヘッドユニット30aに対するキャップ部材365の前後左右方向の位置決めがされるようになっている。以下、最初に前後方向の位置決めの機構を説明し、続いて左右方向の位置決めの機構について説明する。
【0115】
液体噴射ヘッド30に対する吸引キャップ350の前後方向における位置決め機構について、図19を参照して説明する。図19(a)は、キャップ部材365の当接部366が液体噴射ヘッド30に対して前後方向に位置ずれを生じつつ該液体噴射ヘッド30に対して上下方向に対向して配置された状態を示している。
【0116】
この状態から、次に図19(b)に示すように、吸引キャップ350が液体噴射ヘッド30に対して接近するように上昇すると、キャップ部材365の第1傾斜面370が液体噴射ヘッド30に設けられた板金31に対して接触するようになる。そして、キャップ部材365の第1傾斜面370が液体噴射ヘッド30の板金31に対して摺動すると、キャップ部材365が液体噴射ヘッド30に対して前後方向に相対移動しつつ、液体噴射ヘッド30に対して接近するように上昇する。
【0117】
そして次に、図19(c)に示すように、吸引キャップ350が液体噴射ヘッド30に対して更に接近するように上昇すると、キャップ部材365の第1傾斜面370が液体噴射ヘッド30の板金31を乗り上げる。すると、キャップ部材365の第2傾斜面372が液体噴射ヘッド30の板金31に対して接触するようになる。そして、キャップ部材365の第2傾斜面372が液体噴射ヘッド30の板金31に対して摺動すると、当接部366が液体噴射ヘッド30に対して前後方向に相対移動しつつ、液体噴射ヘッド30に対して接近するように上昇する。
【0118】
そして、吸引キャップ350が液体噴射ヘッド30に対して更に接近するように上昇すると、キャップ部材365の第2傾斜面372が液体噴射ヘッド30の板金31を乗り上げる。ここで、キャップ部材365は、第2傾斜面372の下端部同士の前後方向の離間距離が同方向における液体噴射ヘッド30の寸法とほぼ等しくなっている。そのため、キャップ部材365の第1傾斜面370が液体噴射ヘッド30の板金31を乗り上げると、液体噴射ヘッド30の板金31がキャップ部材365の両壁部368の間に嵌まり込むように挿入されるので、キャップ部材365は液体噴射ヘッド30すなわちヘッドユニット30aに対して前後方向において位置決めされることになる。こうして、液体噴射ヘッド30に対する吸引キャップ350の前後方向における位置決め機構が構成されている。
【0119】
なお、図19(d)に示すように、このように位置決めされた状態で当接部366が液体噴射ヘッド30に対して当接する位置までキャップ部材365が上昇すると、キャップ部材365の当接部366と液体噴射ヘッド30との間には液体噴射ヘッド30のノズルを覆う閉空間が確実に形成されることになる。更に、図19(d)に示すように、当接部366が液体噴射ヘッド30に対して当接した状態では、板金31における液体噴射ヘッド30の側面に密着した部分の上端部が、キャップ部材365の第2傾斜面372の下端部よりも上方に位置している。そのため、板金31の上端側部位は、キャップ部材365の第2傾斜面372に対して前後方向に僅かなクリアランスを介在させた状態となる。そのため、この状態から、次の図19(e)に示すように、吸引キャップ350が液体噴射ヘッド30から離間するように降下する場合には、液体噴射ヘッド30の板金31がキャップ部材365の内面に係止されることが抑制されることになる。
【0120】
次に、液体噴射ヘッド30に対する吸引キャップ350の左右方向における位置決め機構について、図20を参照して説明する。図20(a)は、キャップ部材365の当接部366が液体噴射ヘッド30に対して左右方向に位置ずれを生じつつ該液体噴射ヘッド30に対して上下方向に対向して配置された状態を示している。
【0121】
この状態から、次に図20(b)に示すように、吸引キャップ350が液体噴射ヘッド30に対して接近するように上昇すると、キャップ部材365の第3傾斜面373の上側面部位374が液体噴射ヘッド30の突部32に対して接触するようになる。そして、キャップ部材365の第3傾斜面373の上側面部位374及び下側面部位375が液体噴射ヘッド30の突部32に対して摺動すると、キャップ部材365の当接部366が液体噴射ヘッド30に対して左右方向に相対移動しつつ、液体噴射ヘッド30に対して接近するように上昇する。
【0122】
そして次に、図20(c)に示すように、吸引キャップ350が液体噴射ヘッド30に対して更に接近するように上昇すると、キャップ部材365の第3傾斜面373が液体噴射ヘッド30の突部32を乗り上げる。ここで、キャップ部材365は、第3傾斜面373の下側面部位375の下端部同士の左右方向の離間距離が同方向における液体噴射ヘッド30の突部32の寸法とほぼ等しくなっている。そのため、キャップ部材365の第3傾斜面373が液体噴射ヘッド30の突部32を乗り上げると、液体噴射ヘッド30の突部32がキャップ部材365の凹部369内に嵌まり込むように挿入されるので、キャップ部材365は液体噴射ヘッド30すなわちヘッドユニット30aに対して左右方向において位置決めされることになる。こうして、液体噴射ヘッド30に対する吸引キャップ350の左右方向における位置決め機構が構成されている。
【0123】
なお、図20(d)に示すように、このように位置決めされた状態でキャップ部材365の当接部366が液体噴射ヘッド30に対して当接する位置までキャップ部材365が上昇すると、キャップ部材365の当接部366と液体噴射ヘッド30のノズル形成面との間には、液体噴射ヘッド30のノズルを覆う閉空間が確実に形成されることになる。
【0124】
本実施形態では、前後方向の位置決めと左右方向の位置決めとは並行して行われるようになっている。従って図21に示すように、キャップ部材365は液体噴射ヘッド30に対して上昇したとき、前後左右方向において同時に位置決めされた状態になる。すなわち、キャップ部材365は前後方向において前後の壁部368に形成された第2傾斜面372間において、左右方向において前後の壁部368に形成された第3傾斜面373の下側面部位375間において、それぞれ同時に位置決めされるようになっている。なお、図21は液体噴射ヘッド30において最も左側に位置するヘッドユニット30aに対して、キャップ部材365が位置決めされた状態を上方から見た平面図である。
【0125】
次に、第3歯車300の回転駆動によって上下方向に駆動されるFLボックス(液体受容部材)380について、その上下移動に関する構造を説明する。この上下移動によって、液体噴射ヘッド30が上下移動して変位した場合、液体噴射ヘッド30との間隔がインク噴射検査において最適な距離になるように調節するようになっている。
【0126】
図22及び図23に示すように、FLボックス380は、上方が液体噴射ヘッド30から噴射されるインクを受容するために開口した有底略箱体状をなすように構成されている。また、FLボックス380の開口部には、ステンレス等の金属からなる格子状の電極部材381が検出用電極として設けられている。この電極部材381には、プリンター11に備えられた電圧印加回路382が液体噴射ヘッド30との間において所定の電位差を有する電圧を印加するように電気的に接続されている。そして、この電圧印加回路382による電圧の印加時において、電極部材381の電圧を検出する電圧検出回路383を備えている。なお、本実施形態では、電圧印加回路382および電圧検出回路383は上記したプリンター11の制御装置に備えられている。なお、制御装置とは別体で設けられていてもよい。
【0127】
そして、電圧印加回路382が電極部材381に電圧を印加することによって、液体噴射ヘッド30と電極部材381との間に所定の電位差を生じさせた状態で、液体噴射ヘッド30から帯電したインクが噴射されると、所定の電位差、すなわち電極部材381の電圧が変化する。そこで、電圧検出回路383が液体噴射ヘッド30から電極部材381にインクが噴射された際の電極部材381の電圧変化を検出することにより、実際にインクが噴射されたか否かを検査するインク噴射検査を実行するようになっている。このインク噴射検査では、検出精度を向上するため、電極部材381に電圧が印加された際に、液体噴射ヘッド30との間に生ずる所定の電圧差を安定化させることが重要である。このため、本実施形態では、液体噴射ヘッド30に対して電極部材381すなわちFLボックス380を平行に上下移動させる機構が構成されている。この機構を図23と図24を参照して説明する。
【0128】
図23及び図24に示すように、FLボックス380の後端部には、駆動部材としての第8の回転軸J8の前端部に固定された偏心カムからなるFLカム384が係合するカム係合部385が設けられている。このカム係合部385は、後方から見た側面視において、上方が開口した凹状をなすように構成されている。そして、このカム係合部385の底面に対して、FLカム384の周面における2つの曲面部384a,384bと、これら2つの曲面部384a,384bの間を繋ぐ2つの平行な平面部384cと、からなるカム面が係合するようになっている。
【0129】
なお、カム面における2つの曲面部384a,384bのうち、FLカム384の回転中心(すなわち、第8の回転軸J8)からの距離が遠い側の曲面部384aは、FLカム384の回転中心からの距離が平面部384cとの接続部位に近づくにつれて小さくなるように形成されている。その逆に、2つの曲面部384a,384bのうち、FLカム384の回転中心(すなわち、第8の回転軸J8)からの距離が近い側の曲面部384bは、FLカム384の回転中心からの距離が平面部384cとの接続部位に近づくにつれて大きくなるように形成されている。また、FLボックス380の下面外側には、該FLボックス380を上方に向けて付勢するコイルばね386が固定されている。そして、このコイルばね386は、FLボックス380のカム係合部385の底面をFLカム384のカム面に対して常に密着させるようにFLボックス380を上方に付勢している。
【0130】
次に、FLカム384によって行われるFLボックス380の昇降機構(変位機構)について、図25を参照して説明する。図25は、FLボックス380の昇降機構について説明の都合上、図24を模式的に示している。なお本実施形態では、図22に示したように、FLボックス380が最上方位置にある状態、すなわち上下方向において最も高い位置が基準位置となっている。
【0131】
図25(a)は、FLカム384がFLボックス380を最下方位置に押し下げた状態、すなわち、FLボックス380のカム係合部385の底面に対して、FLカム384のカム面における回転中心(第8の回転軸J8)から遠い側の曲面部384aが当接した、上下方向において最も低い状態を示している。本実施形態では、後述するメンテナンス装置100の動作において、インク噴射検査時におけるFLボックス380の高さ調節は、このように最も低い位置から上昇させて行うようになっている。
【0132】
この状態から、FLカム384が図25(a)に示す時計回り方向にCW回動すると、図25(b)に示すように、FLカム384は、FLボックス380のカム係合部385の底面に接触しているカム面の部分のカム径(すなわち、回転中心である第8の回転軸J8との距離)が次第に小さくなる。従って、FLボックス380は、コイルばね386からの付勢力に基づき、カム係合部385に接触した状態を維持しつつ上方に向けて次第に上昇する。
【0133】
この上昇において、本実施形態では、FLボックス380が液体噴射ヘッド30の下面に対して傾かないように移動できる平行移動機構が構成されている。この結果、FLボックス380内の電極部材381を、常に液体噴射ヘッド30の下面と平行状態で上下移動させることができるようになっている。
【0134】
本実施形態では、この平行移動機構として図23および図24に示すように、同じ長さを有する4つのリンク棒387を備えたリンク機構が用いられている。すなわち、各リンク棒387は、その一端が、FLボックス380の下側において回転可能に軸支された第1回転軸体388の端部に固定され、他端が、図示しないフレーム構造体90に対して回転可能に軸支された第2回転軸体389の端部に固定されている。そして、第1回転軸体388はFLボックス380の下側において前後方向に所定の距離を隔てて2本平行状態で備えられるとともに、第2回転軸体389はフレーム構造体90において、前後方向に第1回転軸体388と同じ所定の距離を隔てて2本平行状態で備えられている。
【0135】
従って、4つのリンク棒387は、全て平行状態を維持しながら、フレーム構造体90に軸支された第2回転軸体389を回転中心として回転(揺動)することになる。この結果、4つのリンク棒387のそれぞれにおいて一端側に固定された4本の第1回転軸体388は、上下方向において互いに同じ位置を維持しながら回転しつつ、軸支されているFLボックス380を、平行状態を維持しながら上下移動させることになる。このように、本実施形態の平行移動機構は、連結された回転軸体間の距離が変わらない所謂パンタグラフ構造を有して構成され、FLボックス380が傾かないようにして上下移動できるように構成されている。
【0136】
ところで、本実施形態のFLカム384はカム面となる外周部において、ほぼ直線部分となる平面部384cが曲面部384a,384bの両端から平行に連なるように形成されている。そして、FLカム384が凡そ90度CW回転し、図25(c)に示した状態の前後の状態では、FLカム384は、そのカム面のうち直線部分となる平面部384cが、図24に示したFLボックス380のカム係合部385と係合するようになっている。従って、FLカム384のカム面において、直線部分である平面部384c以外の部分である曲面部384a,384bではカム径がFLカム384の回転度合に応じて異なるように変化するため、FLカム384の回転に対するFLボックス380の上昇割合が変わるようになっている。
【0137】
その後、この状態から、FLカム384が時計回り方向にCW回動すると、図25(c)に示すように、FLカム384はFLボックス380のカム係合部385に接触しているカム面の部分のカム径が次第に小さくなる。従って、FLボックス380は、コイルばね386からの付勢力に基づき、カム係合部385に接触した状態を維持しつつ、図24に示したように、FLボックス380のカム係合部385の底面に対して、FLカム384のカム面における回転中心(第8の回転軸J8)から近い側の曲面部384bが当接する最上方位置(基準位置)に至るまで上昇する。
【0138】
そして、本実施形態では、FLボックス380が上記の最下方位置から最上方位置に上昇するまでの間の位置(例えば図25(c)に示した位置)において、FLボックス380の電極部材381が液体噴射ヘッド30に対するインク噴射検査を実行するのに最適な位置となるように構成されている。
【0139】
(ワイピング部材の駆動系)
次に、図26に示すように、本実施形態のワイピング部材450は、第4歯車400の回転駆動によって前後方向に移動するように駆動系が構成されている。すなわち、第1歯車210の回転によって第2欠歯歯車212と噛み合う第4歯車400が回転駆動される。第4歯車400は、第2欠歯歯車212と噛み合うピッチ系の小さい小径平歯車402とピッチ系の大きい大径平歯車403の2つの歯車を有し、第3の回転軸J3に回転可能に軸支されている。そして、大径平歯車403が第4の回転軸J4に固定されたワイピング歯車410に、第1歯車210の回転を伝達する。
【0140】
第4の回転軸J4には、軸の回転によって軸方向に沿って移動するワイパーユニット420が、この第4の回転軸J4によって軸通しされた状態で備えられている。そして、ワイパーユニット420はワイピング部材450を有し、ワイピング歯車410の回転によって第4の回転軸J4が回転することによって前後方向に移動して、ワイピング部材450を前後方向に移動させるようになっている。以下、この駆動系についての構成を詳しく説明する。
【0141】
第4歯車400は、第1歯車210における第2欠歯歯車212と噛み合う小径平歯車402と、ワイピング歯車410と噛み合う大径平歯車403とからなっている。このうち小径平歯車402は、前述するように軸方向における歯長が長い4つの長歯401を有しており、第2欠歯歯車212と同期して噛み合うようになっているとともに、その長歯によって回転が規制されるようになっている。すなわち、第4歯車400は回転する角度が制限されるようになっている。従って、第4歯車400の大径平歯車403と噛み合うワイピング歯車410によって回転駆動される第4の回転軸J4も、その回転角度が制限されるようになっている。
【0142】
ワイパーユニット420は、外周に螺旋状凹部411が形成された第4の回転軸J4の回転によって軸方向に沿う前後方向に移動する基台部421を備えている。基台部421は、第4の回転軸J4と略平行に配設されたワイパーユニット案内軸415に沿ってその一部が摺動することによって、第4の回転軸J4回りの回転が規制された状態で前後方向に移動するようになっている。またワイパーユニット420は液体噴射ヘッド30に付着した不要なインクを払拭するためのワイパーブレード451を備えるワイピング部材450を有している。なお、ワイパーブレード451は弾性変形可能なゴムや樹脂材料からなり、一旦変形しても変形状態が解除された場合はほぼ元の形状に戻るようになっている。
【0143】
ワイパーユニット420は、図26に示すように、第4の回転軸J4の回転角度に応じて後方の移動開始位置Psから前方の移動終了位置Peまでの間を往復移動するようになっている。そして、ワイパーブレード451は、ワイパーユニット420が移動開始位置Psに位置する状態では、ワイパーブレード451が上下方向に立設した状態になっている。また、ワイパーユニット420が前方の移動終了位置Peに移動した状態では、基台部421において前側から後側にスライドするスライド部材444によってワイパーブレード451は前方に倒れるようになっている。
【0144】
ここで、ワイパーユニット420について図27および図28を参照してその構成を説明する。図27の上部に示すように、ワイパーユニット420は基台部421と、スライド部材444と、保持部材430と、ワイピング部材450と、弾性棒体446とを有している。このうち、スライド部材444と、保持部材430と、弾性棒体446は、基台部421に設けられた左右方向に対して略直交する方向の主面を有する取付面422に組み付けられるとともに、ワイピング部材450は保持部材430に対して取付けられるようになっている。
【0145】
スライド部材444は、略矩形形状を有し、その長手方向の略中央上端部分に所定の歯数のラックが形成され、基台部421において前後方向に移動可能に収容されている。また、基台部421において取付面422から左方向に突出して立設するように取付軸部425が形成されている。保持部材430は、スライド部材444のラックと噛み合うピニオンが先端部に形成された略扇形状部431と、扇の要部に相当する基端部において左右方向に長手方向を有するとともに、左右方向に貫通する取付軸孔435が形成された軸形状部432とが一体で形成されている。保持部材430は、その取付軸孔435と基台部421の取付軸部425とを係合させることによって、ピニオンとラックとが噛み合わされた状態で基台部421に組み付けられる。
【0146】
そして、基台部421に保持部材430が組みつけられた後、弾性棒体446が基台部421に設けられた係止部423,424に対して組みつけられる。この弾性棒体446が組みつけられることによって、保持部材430が左方向に移動して抜け落ちないように抑制されるようになっている。また、保持部材430が取付軸孔435を中心に略90度回転したとき、弾性棒体446と、軸形状部432に設けられた2つの突起部433と、が上下方向で係合することによって突起部433を付勢して、保持部材430の回転前と回転後の姿勢を安定させるようになっている。
【0147】
また、この保持部材430の軸形状部432には、その払拭方向となる前側において、前方が開口する凹条部436が形成されるとともに、後側において後方に膨出した凸条部437が形成されている。そして、この凹条部436に対してワイピング部材450に設けられた軸状凸部456を前方から挿入して係合する。従って、軸状凸部456は回転軸部として機能し、凹条部436は軸状凸部456の軸受け部として機能するようになっている。
【0148】
その後、軸状凸部456を中心にワイピング部材450を後方すなわち左方向から見てCW回転させることによって、ワイピング部材450の後側に設けられたツマミ形状部452において下端側に設けられた矩形の開口孔457が、凸条部437と係合するようになっている。こうして、ワイピング部材450は、ワイピング部材450に設けられた係合部としての開口孔457と、移動部材としての保持部材430に設けられた被係合部としての凸条部437との係合によって保持部材430に取付けられるようになっている。このようにワイピング部材450は左方向から見てCW回転によって凸条部437と開口孔457とが係合して取付けられるようになっている。
【0149】
従って、ワイパーブレード451がインクを払拭するときには、ワイピング部材450に対して軸状凸部456を中心にCW回転する力が作用するため、凹条部436と軸状凸部456との係合および凸条部437と開口孔457との係合のいずれについても外れる方向に力が作用しないようになっている。もとより、ワイピング部材450は取り付けられた状態において、凸条部437と開口孔457との係合によって軸状凸部456を中心とするCCW回転も規制された状態になっている。
【0150】
従って、換言すれば、凸条部437と開口孔457との係合を解除してワイピング部材450をCW回転と逆のCCW回転させることによって、ワイピング部材450を保持部材430から取り外すことができるようになっている。すなわち、本実施形態では、ワイピング部材450は、作業者が、図28(a)に示したツマミ形状部452の上端側の部位を摘むことによって、ツマミ形状部452の上端側は前方向に撓み、ツマミ形状部452の下端側は後方向に変位するようになっている。そして、この変位によって開口孔457は保持部材430の凸条部437との係合が外れ、CCW回転できる状態になる。このように、ツマミ形状部452の上端側の部位は、ワイピング部材の取付け状態を解除する解除部位となる。
【0151】
そこで、作業者はこのツマミ形状部452の上端側の部位つまり解除部位を摘みながらCCW回転させるとともに前方に移動させるようにすることによって、図28(b)に示すように、ワイピング部材450の軸状凸部456を凹条部436から引き抜くことができる。こうして、ワイピング部材450は、保持部材430から取り外すことができるようになっている。
【0152】
さて、図27に示すように、基台部421には第4の回転軸J4が貫通するガイド孔428が形成され、このガイド孔428の上端から孔中心方向に所定量突出するように、係合ピン441が下側から挿入されている。この係合ピン441が、第4の回転軸J4に形成された螺旋状凹部411と係合することによって、基台部421つまりワイパーユニット420は第4の回転軸J4に沿って前後方向に往復移動するようになっている。
【0153】
次に、このワイパーユニット420の往復移動について、その仕組みを図29を参照して説明する。図29は、往復移動するワイパーユニット420を左方向から見た状態で示した側面図である。図29に示すように、第4の回転軸J4の表面に螺旋状に形成された螺旋状凹部411と、ワイパーユニット420の基台部421に挿入された係合ピン441とが係合する所謂スクリューカム機構によって、ワイパーユニット420は第4の回転軸J4に沿って前後に移動するようになっている。このとき、前述するように第4の回転軸J4は回転角度が所定角度に制限されて回転するため、ワイパーユニット420は図示するように、後方における移動開始位置Psと前方における移動終了位置Peとの間の定められたストロークSKを、第4の回転軸J4に沿って移動するようになっている。
【0154】
まず、ワイパーユニット420が移動開始位置Psにある場合、スライド部材444は図示しないフレーム構造体90にその後側が当接して、基台部421において前方向にスライド移動した状態になっている。この状態では、ワイピング部材450が有するワイパーブレード451は上下方向に立設した状態になっている。
【0155】
そして、ワイパーユニット420が第4の回転軸J4の所定角度の回転によって前方に移動して移動終了位置Peになった場合、スライド部材444は図示しないフレーム構造体90にその前側が当接して、基台部421において後方向にスライド移動した状態になる。すると、スライド部材444に形成されたラックが後方向に移動するため、このラックと噛み合うピニオンが左方向から見て略90度CCW回転する。この結果、保持部材430は軸形状部432の取付軸孔435を中心にCCW回転して、保持したワイピング部材450をCCW回転させ、ワイパーブレード451がほぼ前方向に90度倒れた横倒し状態を呈するようになっている。もとより、前述するように、この状態が、弾性棒体446によって安定して維持されるようになっている。
【0156】
なお、ワイパーユニット420は第4の回転軸J4が所定角度逆に回転すると、前方の移動終了位置Peから後方に移動して移動開始位置Psに戻るようになっている。このワイパーユニット420の戻りにおいて、スライド部材444は基台部421において後方向にスライド移動した状態のまま移動することになる。そして、移動開始位置Psに到達すると、スライド部材444に形成されたラックがフレーム構造体90に当接して前方向に移動するため、このラックと噛み合うピニオンが左方向から見て略90度CW回転する。この結果、保持部材430は軸形状部432の取付軸孔435を中心にCW回転して、保持したワイピング部材450をCW回転させ、ワイパーブレード451を横倒し状態から立設状態にして、液体噴射ヘッド30を払拭する状態に戻るようになっている。もとより前述するように、この立設状態が、弾性棒体446によって安定して維持されるようになっている。
【0157】
このようなワイパーユニット420の往復移動によって、ワイピング部材450は液体噴射ヘッド30を1つのヘッドユニットずつ払拭するようになっている。すなわち、図29に示すように、後方から前方へ移動する往移動では、ワイパーブレード451が立設状態で移動終了位置Peに移動することによって液体噴射ヘッド30と上下方向において係合するようになっている。これにより、液体噴射ヘッド30の不要なインクを払拭する。一方、前方から後方へ移動する復移動では、ワイパーブレード451が液体噴射ヘッド30と上下方向において係合しない横倒し状態で移動するようになっている。これにより、ワイパーブレード451が、既に払拭されてメンテナンスされた液体噴射ヘッド30に触れて汚すことなく、ワイパーユニット420を移動開始位置Psに戻すことができるようになっている。
【0158】
さらに、メンテナンス装置100には、図29に示すように、ワイパーユニット420の移動終了位置Pe側に、ワイパーブレード451が払拭して捕捉したインクを受けて吸収するインク吸収体40が配設されている。インク吸収体40は、吸収体ケース49に複数のインクの吸収材(例えば、多孔質の樹脂やパルプなどからなる部材)が組み込まれて構成されている。
【0159】
インク吸収体40の具体的な構成について、図30を参照して説明する。図30に示すように、インク吸収体40は、吸収体ケース49の上方において、ワイパーブレード451が液体噴射ヘッド30と離間するときにワイパーブレード451から飛散するインクを受け止める壁面部48が設けられている。すなわち、図中矢印Aで示した位置から立設していたワイパーブレード451を弾性変形させて倒しながら液体噴射ヘッド30の払拭を開始し、図中矢印Bで示した位置において液体噴射ヘッド30から離間するとき、ワイパーブレード451が後側に倒れた状態から立設状態に戻ることになる。このときワイパーブレード451が急速度で戻ることによって、ワイパーブレード451に捕捉されたインクが図中破線矢印D1で示したように左右方向に広がって飛散する場合がある。そこで、この壁面部48は、飛散するインクを受け止めるように、ワイパーブレード451の左右方向の幅よりも広い幅を左右方向に有して形成されている。そして、壁面部48の下側には、この壁面部48に沿って降下するインクを吸収する第3吸収材43が、その一端面を上側に露出させて本体ケースに組み込まれている。
【0160】
また、液体噴射ヘッド30から離間したのち前方へ移動するワイパーブレード451と当接してワイパーブレード451が捕捉したインクを直接払拭して吸収する第1吸収材41が、その一端面をインクの吸収面として後側に露出させて、吸収体ケース49に組み込まれている。
【0161】
また、インク吸収体40は、立設状態から横倒し状態になるワイパーブレード451の移動過程において、図30に示すように、ワイパーブレード451が第1吸収材41の吸収面に当接するように、第1吸収材41の露出する端面が位置決めされて配設されている。従って、液体噴射ヘッド30から離間するときと同様に、ワイパーブレード451は、第1吸収材41から離間するときにおいて第1吸収材41の下方において前方側に倒れることになる。このため、図中破線矢印D2で示したようにワイパーブレード451からインクが前方下側に飛散することがある。従って、この飛散するインクを受けて吸収するように、第1吸収材41の露出する端面よりも下側において後方に向いた露出面45をインクの吸収面として有する第2吸収材42が、吸収体ケース49に組み込まれている。
【0162】
第2吸収材42の露出面45における左右方向の幅は、ワイパーブレード451からの距離が短いことから、左右方向において、吸収体ケース49に設けた壁面部48の幅よりは狭い幅で形成されている。なお、本実施形態では、第2吸収材42の露出面45には、第4の回転軸J4の先端が当接するようになっている。こうすることによって、飛散したインクが第4の回転軸J4に付着した場合において、第4の回転軸J4の先端から付着したインクを吸収することができるようになっている。
【0163】
本実施形態の第2吸収材42は、第1吸収材41に吸収されたインクが第3吸収材43に移動できるように形成されている。また、第2吸収材42に吸収されたインクが、第3吸収材43に移動し易くなるように、各吸収材間を繋ぐように第4吸収材44が設けられている。この第4吸収材44を含め、各インクの吸収材について、図31を参照して説明する。
【0164】
図31に示すように、第3吸収材43は略直方体形状を有している。第4吸収材44は、上側が第3吸収材43と左右方向においてほぼ同じ幅を有する一方、下側がそれより狭い幅を有する略T字形の形状を有している。この下側の狭い幅の部分が前述の露出面45に相当する部分となる。
【0165】
第1吸収材41は、第3吸収材43と略同じ幅を有する直方体形状である。第2吸収材42は略薄板状を有し、その一端が第1吸収材41の前側上方において第1吸収材41と接触するように固定されて、インクが移動できるように連結されている。また、第2吸収材42は位置の異なる階段状の折れ曲がり部を有して形成されている。そして、階段状の折れ曲がり部において露出面45に相当する領域部分が設けられている。この露出面45に相当する領域が、インク吸収体40において後側に露出するようになっている。
【0166】
このように連結された第1吸収材41と第2吸収材42、および第3吸収材43と第4吸収材44は、図面右側に示すように、吸収体ケース49に設けられた収容空間47に対して取付けられる。
【0167】
具体的には、収容空間47においてインク吸収体40の後方側に設けられた第1吸収材41の取り付け用の取付空間(不図示)から、まず第2吸収材42における第1吸収材41との連結側と反対側の端部を収容空間47に挿入する。その後、第1吸収材41を、この取付空間に位置するように挿入することによって、第2吸収材42および第1吸収材41が吸収体ケース49の収容空間47に取付けられる。その後、第3吸収材43および第4吸収材44が、吸収体ケース49の上方から収容空間47に挿入されて取付けられる。このとき、収容空間47に取付けられた第2吸収材42に対して、挿入された第3吸収材43が前後方向で接触するようになっている。また挿入された第4吸収材44が第3吸収材43と前後方向において当接するとともに、露出面45の領域において第2吸収材42と前後方向で接触するようになっている。従って、インク吸収体40は、図31の左側における断面図に示すように、第1吸収材41から第4吸収材44まで全ての吸収材が取付けられた状態において、各インクの吸収材間でインクが移動できるようになっている。例えば、第1吸収材41に吸収されたインクは、他の吸収材(例えば第3吸収材43)へ移動できるようになっている。
【0168】
(放置キャップ、キャリッジロック体、FLボックスカバーの駆動系)
次に、図32に示すように、本実施形態のメンテナンス装置100は第2歯車220と噛み合う第5歯車500の回転駆動によって、放置キャップ550が上下方向に駆動されるように駆動系が構成されている。すなわち、第5歯車500の回転によって第5の回転軸J5が回転すると、この第5の回転軸J5に固定された第5伝達歯車530が回転する。すると、この第5伝達歯車530と噛み合う第6伝達歯車540が回転駆動される。この第6伝達歯車540は第7の回転軸J7に固定され、第6伝達歯車540の回転駆動は、第7の回転軸J7に設けられたカム機構によって放置キャップ550の上下移動に変換されるようになっている。この結果、放置キャップ550は、フレーム構造体90に固定された放置キャップガイド棒36に沿って上下移動し、図示しない液体噴射ヘッド30に対して当接した当接位置と、液体噴射ヘッド30から離間した離間位置と、の間を離接するようになっている。
【0169】
さらに、この第6伝達歯車540の回転駆動によって、キャリッジロック体590が上下方向に移動するように駆動系が構成されている。すなわち第6伝達歯車540の回転によって凡そ左右方向に移動するロッド部材593と、キャリッジロック体590に形成された斜面部591との間で形成されるカム機構によって上下方向に移動するようになっている。
【0170】
また、第5伝達歯車530の回転によって、FLボックスカバー580が前後方向に移動するように駆動系が構成されている。すなわち、第5伝達歯車530が回転すると、この第5伝達歯車530に形成された駆動側傘歯車531と噛み合う従動側傘歯車532を一端に有し、他端に平歯車533を有する第7伝達歯車534が回転する。そして、第7伝達歯車534の平歯車533と噛み合うピニオンである第8伝達歯車535が回転する。この第8伝達歯車535と噛み合うように、ラック581がFLボックスカバー580における第8伝達歯車535側の端縁において前後方向に形成されている。従って、第8伝達歯車535の回転によって、FLボックスカバー580は、フレーム構造体90に支持されるとともに、ラック581と反対側の端縁に沿って設けられたカバーガイド軸38に案内されて前後方向に移動するようになっている。
【0171】
なお、本実施形態では、第2歯車220によって回転駆動される第5歯車500は、その回転角度が規制されるように構成されている。第5歯車500の回転角度が規制されることによって、FLボックスカバー580は、前後方向において所定量移動するようになっており、例えば後から前に所定量移動してFLボックス380の上面を覆うようになっている。もとより、ロッド部材593の左右方向の移動量や放置キャップ550の上下方向の移動量についても同様に規制されるようになっている。
【0172】
また、本実施形態では、この第5の回転軸J5の回転状態を検出するために第5の回転軸J5の後端に回転を検出するための回転検出車508が取り付けられている。この回転検出車508にはその外周部において径方向に段差を有するように後ろ方向に膨出して突出する検出カム部509が形成され、この検出カム部509が検出信号を出力する第3検出手段83と係合するようになっている。この検出に関する具体的な構成については後述する。
【0173】
次に、第5歯車500の構成について図33を参照して説明する。図33に示すように、第5歯車500は、それぞれ形状の異なる3つの歯車が前後方向に重ねられた構成を有している。すなわち、第5歯車500は、第2歯車220と常時噛み合ってその回転を伝達する回転伝達歯車501と、この回転伝達歯車501の前方に重なって回転する駆動欠歯歯車511と、この駆動欠歯歯車511の前方に重なって回転する従動欠歯歯車521と、の3つの歯車を有している。
【0174】
駆動欠歯歯車511は、一部が欠歯状態となった欠歯部分514と、この欠歯部分の両側にそれぞれ形成された複数の歯(ここでは3歯)の部分であって、第5の回転軸J5の中心側が抉られた薄肉歯部分513を有している。また、従動欠歯歯車521は、同じく一部が欠歯状態となった欠歯部分524を有している。なお、欠歯部分524における欠歯の歯数は、欠歯部分514における欠歯の歯数よりも多くの歯(ここでは3歯)が欠歯になっている。
【0175】
回転伝達歯車501および駆動欠歯歯車511は、第5の回転軸J5を中心にして回動できるようになっている。また、駆動欠歯歯車511に対して、回転伝達歯車501が、ワッシャー505と固定リング506によって後方向の移動が規制されたコイルばね504によって後ろから前に付勢されて圧接された状態となっている。従動欠歯歯車521は第5の回転軸J5に固定されている。従動欠歯歯車521には、中心から外周方向に飛び出した突起形状を呈する外向突起部525が所定の外周範囲に設けられている。一方、駆動欠歯歯車511には、その前側の面において外周から中心方向に所定量飛び出した所定幅の突起形状を呈する内向突起部515(図34参照)が、回転軸となる第5の回転軸J5を中心にして略対角となる2箇所の位置に設けられている。そして、いずれかの内向突起部515が外向突起部525と回転時において当接することで、従動欠歯歯車521は駆動欠歯歯車511によって回転駆動されるようになっている。
【0176】
従って、第5歯車500は、第2歯車220と常時噛み合っている回転伝達歯車501の回転が従動欠歯歯車521の回転に伝達されることによって、第2歯車220の回転を第5の回転軸J5の回転に伝達するようになっている。また、従動欠歯歯車521および駆動欠歯歯車511に形成された欠歯によって、第5歯車500(第5の回転軸J5)の回転角度が規制されるようになっている。
【0177】
ここで、第5歯車500を構成する3つの歯車による回転角度の規制の仕組みを、図34を参照して説明する。図34(a)に示すように、従動欠歯歯車521(駆動欠歯歯車511)が、第2歯車220のCW回転によってCCW回転して欠歯位置に到達すると、従動欠歯歯車521は第2歯車220によって回転駆動されない状態になる。このとき回転伝達歯車501が継続してCCW回転しても、駆動欠歯歯車511を回転させる回転力(トルク)は伝達しないので、駆動欠歯歯車511はCCW回転が不可となって回転停止する。従って、従動欠歯歯車521も回転せず、第5の回転軸J5はCCW回転が規制された状態となる。
【0178】
次に、図34(b)に示すように、第2歯車220がCW回転からCCW回転に替わると、第2歯車220によってCW回転する回転伝達歯車501の回転が、圧接による摩擦力に伴って生ずる回転力(トルク)が駆動欠歯歯車511に伝達される。この結果、駆動欠歯歯車511はCW回転して、欠歯に隣接して形成された歯が第2歯車220との噛み合いを開始する。そして噛み合いの開始から複数(ここでは3つ)の歯が噛み合ったところで、駆動欠歯歯車511の内向突起部515が従動欠歯歯車521の外向突起部525と当接する。この当接によって、従動欠歯歯車521は駆動欠歯歯車511によってCW回転され、第2歯車220との噛み合いが開始される。以降、従動欠歯歯車521は、駆動欠歯歯車511と同期してCW回転を継続する。
【0179】
なお、駆動欠歯歯車511がCW回転して第2歯車との噛み合いを開始する際、噛み合いのタイミングがずれて歯同士が干渉する場合がある。そこで、本実施形態では、前述するように、駆動欠歯歯車511において、噛み合いの開始から複数(ここでは3つ)の歯まで、歯が歯車の回転中心方向に撓みやすくなるように、その複数の歯が形成された部分における歯車の径中心方向側が抉られた薄肉歯部分513が形成されている。また、歯形の詳しい説明は省略するが、噛み合いを開始する最初の歯は、歯の先端形状が他の歯よりも若干細くなるように形成されている。
【0180】
そして、図34(c)に示すように、従動欠歯歯車521(駆動欠歯歯車511)が、第2歯車220のCCW回転によってCW回転して欠歯位置に到達すると、従動欠歯歯車521は第2歯車220によって回転駆動されない状態になる。このとき回転伝達歯車501が継続してCW回転しても、駆動欠歯歯車511を回転させる回転力(トルク)は伝達しないようになっており、駆動欠歯歯車511はCW回転が不可となって回転停止する。従って、従動欠歯歯車521も回転せず、第5の回転軸J5はCW回転が規制された状態となる。このように、第5歯車500すなわち、第5の回転軸J5はCCW回転とCW回転とが規制されることによって、その回転角度が規制されるようになっている。
【0181】
次に、このように回転角度が規制された第5の回転軸J5の回転によって駆動される放置キャップ550、キャリッジロック体590、FLボックスカバー580について、その構成を順次説明する。まず放置キャップ550の上下移動に関する機構ついて、図35〜図40を参照して説明する。
【0182】
図35に示すように、放置キャップ550のカム機構560は、第6伝達歯車540を一端側に支持した第7の回転軸J7の中間部に基端部を固定された側面視形状が細長の略三角形状をなすカムフレーム561を備えている。また、カムフレーム561における先端部には、カムローラー562の軸部562aが回動自在に軸支されている。このカムローラー562の軸部562aは、カムフレーム561を前後方向に貫通してカムフレーム561の前後両側面から前後方向に突出するように構成されている。そして、第2歯車220の回転に連係して第6伝達歯車540が回転駆動すると、この第6伝達歯車540の回転駆動が第7の回転軸J7を介してカムフレーム561に伝達される。その結果、カムフレーム561が第7の回転軸J7を中心として回転するため、カムフレーム561の先端部に軸支されたカムローラー562が第7の回転軸J7を中心として周回運動するようになっている。本実施形態では、カム機構560におけるカムフレーム561及びこれに軸部562aが支持されたカムローラー562により、回転することで放置キャップ550を昇降させる昇降部材が構成されるとともに、その際における放置キャップ550との係合部としてはカムローラー562が第1係合部となる一方、軸部562aが第2係合部となる。
【0183】
また、図36及び図37に示すように、放置キャップ550のキャップホルダ(ホルダ部材)563における底面の略中央部には、第1被係合面となる凹部564が下方に開口するように形成されている。そして、この凹部564には、放置キャップ550のカム機構560が下方から挿入されるようになっている。また、放置キャップ550のキャップホルダ563には、その底面の右前隅部となる位置に、略円筒状をなすガイド部563aが下方に突出するように設けられている。そして、これらのガイド部563aには、フレーム構造体90に固定された放置キャップガイド棒36が遊嵌した状態で挿入されることにより、キャップホルダ563が上下方向に傾きが抑制されながらガイドされて円滑に摺動できるようになっている。また、キャップホルダ563の上方には、付勢部材としてのコイルばね565を介して放置キャップ550のキャップ部材550Aが取り付けられている。そして、コイルばね565は、キャップホルダ563に対するキャップ部材550Aの上下方向の相対移動を許容するようになっている。このようにキャッピング装置としての放置キャップ550は、キャップホルダ563と、コイルばね565と、キャップ部材550Aとにより、一体的に昇降可能なキャッピングユニットが構成されている。なお、キャップ部材550Aの上側には液体噴射ヘッド30のノズル形成面に対してノズルを囲うように当接可能な弾性材からなる当接部550aがヘッドユニットごとに設けられている。
【0184】
より具体的には、図38に示すように、キャップホルダ563の凹部564の底面には、左方寄りに位置する平面部位564aと、該平面部位564aから右側に向けて下り勾配の斜面状をなす傾斜面部位564bとが形成されている。そして、キャップホルダ563がカム機構560に対して取り付けられた状態では、カムフレーム561の先端部に軸支されたカムローラー562が、その周面を凹部564の底面の平面部位564aに接触させてキャップホルダ563を下方から支持している。
【0185】
また、図39に示すように、キャップホルダ563の底面における右方寄りの部分には、一対の壁部566が鉛直方向に沿うように設けられている。これらの壁部566は、凹部564の右内側面の近傍で下方へ凹状に窪んだ形状をなす凹面部566aと、その凹面部566aから左斜め上方に向けて斜状に延びる斜面部566bとを有している。これらの壁部566の斜面部566bの先端(図39では左端)は、凹部564における左側の平面部位564aよりも右方に位置している。すなわち、キャップホルダ563は、下側を向いた凹部564の底面の一部である平面部位564aが、凹部564と向き合うように上側を向いた壁部566の第2被係合面となる面(凹面部566aと斜面部566bで構成される面)に対して、放置キャップ550の昇降方向及び第7の回転軸J7の軸方向の双方と直交する左右方向において互いに重なり合わない非重なり領域となっている。そして、これらの壁部566は、カムフレーム561の前後方向の寸法とほぼ等しい距離を同方向に隔てて配置されている。
【0186】
また、キャップホルダ563がカム機構560に対して取り付けられた状態では、カムローラー562の軸部562aが壁部566の凹面部566a内に配置される。そのため、この状態でキャップホルダ563を上方に持ち上げたり左右に動かしたりしようとしても、カムローラー562の軸部562aが壁部566の凹面部566aに対して上方向及び左右方向から係止するため、カム機構560からのキャップホルダ563の取り外し動作が規制されるようになっている。
【0187】
次に、カム機構に対する放置キャップ550の装着動作の仕組みについて、図40を参照して説明する。図40(a)は、カム機構が、カムローラー562を最上方となる位置に配置しつつキャップホルダ563に対して上下方向に離間して配置された状態を示している。
【0188】
この状態から、次に図40(b)に示すように、キャップホルダ563を鉛直下方に移動させると、カム機構560のカムローラー562がキャップホルダ563の凹部564に対して下方から挿入される。この場合、カムローラー562の軸部562aは、キャップホルダ563の凹部564において、壁部566に対して左右方向においては重なり合わない非重なり領域である平面部位564aの下方空間域を通じて凹部564の内側に挿入される。そして、カムローラー562の周面がキャップホルダ563の凹部564の平面部位564aに対して接触してキャップホルダ563を下方から支持するようになる。
【0189】
そして、図40(c)に示すように、第7の回転軸J7が図40(c)に示す時計回り方向に回転すると、カムローラー562が凹部564の傾斜面部位564bに沿って転動する。すると、カムローラー562の軸部562aは、キャップホルダ563の壁部566の斜面部566bに対して上下方向に対向するように配置される。そのため、この状態でキャップホルダ563を上方に持ち上げたとしても、カムローラー562の軸部562aが壁部566の斜面部566bに対して上方向から係止するため、カム機構560からのキャップホルダ563の取り外し動作が規制される。
【0190】
なお、図40(c)に示すように、カムローラー562の軸部562aが第7の回転軸J7を中心として液体噴射ヘッド30から離間する方向となる下方向への回動軌跡を描くように移動した際には、カムローラー562の軸部562aがキャップホルダ563の壁部566の斜面部566bに対して左斜め上方向から右斜め下方向に押圧力を付与するようになる。すなわち、キャップホルダ563が放置キャップガイド棒36によって上下方向にガイドされながら降下する際に、キャップホルダ563の壁部566の斜面部566bには、カムローラー562の軸部562aが上方から圧接してキャップホルダ563を下方に押圧する。その結果、キャップホルダ563の降下動作が確実に行われるようになる。
【0191】
続いて、図40(d)に示すように、第7の回転軸J7が図40(d)に示す時計回り方向に更に回転すると、カムローラー562において凹部564の傾斜面部位564bを支持する部位の高さが鉛直下方に降下する。そして、カムローラー562の軸部562aがキャップホルダ563の壁部566の右側寄りの凹面部566aに対して上下方向に対向するようになる。また、この状態では、カムフレーム561は、その基端側の周面が凹部564の平面部位564aに対して下方から接触するようになる。すなわち、キャップホルダ563の凹部564の底面は、カムローラー562及びカムフレーム561によって下方から二箇所で支持されるようになる。
【0192】
そして次に、図40(e)に示すように、第7の回転軸J7が図40(e)に示す時計回り方向に更に回転すると、カムフレーム561の基端部の周面によって凹部564の平面部位564aを支持されたキャップホルダ563に対し、カムローラー562が凹部564の傾斜面部位564bから下方に離間するように第7の回転軸J7を中心として周回運動する。そして、カムローラー562の軸部562aがキャップホルダ563における壁部566の凹面部566aの内側面に対して上方から係合する。すると、キャップホルダ563は、凹部564の平面部位564aがカムフレーム561における基端部によって下方から支持される一方で、壁部566の凹面部566aがカムローラー562の軸部562aによって上方から係止されるため、カム機構に対して上下方向及び左右方向のがたつきが抑制された状態で連結される。
【0193】
次に、キャリッジロック体590の上下移動に関する機構について、図41〜図43を参照して説明する。図41に示すように、キャリッジロック体590は、第5伝達歯車530によって所定角度回転する第6伝達歯車540の回転に伴って、キャリッジロック体590が所定量上下方向に移動するようになっている。
【0194】
すなわち第6伝達歯車540の外周には、第5伝達歯車530と噛み合って所定の角度回転するように歯車541が所定の範囲に形成されている。また第6伝達歯車540の外周端部領域には、所定幅の溝部が円弧状に形成された円弧状溝部542が設けられている。この円弧状溝部542と係合するように円柱状の第1突出部595をその右側の第1端部594に有するロッド部材593が、メンテナンス装置100において備えられている。また、キャリッジロック体590には所定幅で右上から左下方向に傾斜した直線状溝部592が形成されている。この直線状溝部592の上側に沿って庇状に後方(紙面手前方向)に飛び出した斜面部591が形成されている。そしてロッド部材593の左側の第2端部596がこの斜面部591に摺接するとともに、この第2端部596においても円柱状の第2突出部597が設けられ、キャリッジロック体590に形成された直線状溝部592を摺動するようになっている。なお、ロッド部材593は、フレーム構造体90において前後方向に延設された2つの円筒リブ99の円筒面によって、その上下方向の移動が規制されている。またキャリッジロック体590は、同じくフレーム構造体90に設けられた図示しない案内部に沿って上下方向に摺動できるようになっている。
【0195】
このように構成されることによって、キャリッジロック体590は、ロッド部材593の第2端部596が左方向へ移動することによって、斜面部591と第2端部596との間で形成されるカム機構によって上方向に移動して液体噴射ヘッド30が設けられたキャリッジ14(図1参照)の左右方向の移動を規制するロック状態になるようになっている。このロック状態になる仕組みを、図42,43を参照して説明する。
【0196】
図42に示すように、第6伝達歯車540のCCW回転に伴って円弧状溝部542がCCW回転することによって、第1端部594の第1突出部595は、円弧状溝部542の右端によって左方向に押されて移動するようになっている。この移動において、ロッド部材593は円筒リブ99によって下側への移動が規制されるために、第2端部596は下側に移動することなくほぼ左方向に移動することになる。この結果、キャリッジロック体590は、左方向に移動する第2端部596によって斜面部591が持ち上げられることによって上方に移動を開始するようになっている。
【0197】
そして、図43に示すように、第6伝達歯車540が所定の回転角度の最後までCCW回転すると、第1端部594の第1突出部595は、円弧状溝部542の右端によって左方向にさらに押されて移動するようになっている。そして、この移動に伴ってロッド部材593の第2端部596はキャリッジロック体590の斜面部591に沿って摺動し、凡そ斜面の終端まで、ないしは、円柱状の第2突出部597が直線状溝部592の左端に位置するまで移動するようになっている。この結果、キャリッジロック体590は、第2端部596の移動に伴って斜面部591が移動開始前の位置から所定量上方に移動し、液体噴射ヘッド30が設けられたキャリッジ14と係合してキャリッジ14の左右方向の移動が規制された、所謂ロック状態になるのである。
【0198】
その後、図示しないが、キャリッジロック体590が所定量上方に移動した状態から、第2端部596が右方向へ移動することによって、キャリッジロック体590は下方向に移動してキャリッジ14のロック状態を解除するようになっている。すなわち、ロッド部材593の第2端部596に形成された第2突出部597と直線状溝部592との間で形成されるカム機構によって、キャリッジロック体590は下方向に移動するようになっている。なお、このとき、ロッド部材593は円筒リブ99によって上方向の移動が規制されるようになっている。
【0199】
次に、FLボックスカバー580の前後移動に関する機構について、図44を参照して説明する。図44(a)に示すように、FLボックスカバー580は第8伝達歯車535が上方から見てCCW回転することによって、噛み合うラックを後ろから前に移動させる。この結果、ラックが形成されたFLボックスカバー580は、FLボックスの上側を覆わない状態からFLボックス380を覆う状態に前方に移動するようになっている。なお、前述するように第5の回転軸J5は第5歯車500によってその回転角度が規制されている。従って、FLボックスカバー580は、第5の回転軸J5がこの規制された回転角度分回転したとき、FLボックス380を覆わない状態から覆う状態になる位置まで移動するようになっている。
【0200】
また、図44(b)に示すように、FLボックスカバー580には右側の端部において、下面側に回転可能に軸支されたカバーローラー582を有している。そして、FLボックスカバー580がFLボックス380を覆う際、このカバーローラー582のローラー面がFLボックス380の右側端部において上下方向に壁状に形成されたガイドリブ385aに対して上方から当接するようになっている。この当接によって、カバーローラー582は、図中二点鎖線で示すようにFLボックス380を下方に押し下げるようになっている。これにより、FLボックスカバー580がFLボックス380の上方を移動するとき、FLボックスカバー580とFLボックス380とが係合しないようになっている。
【0201】
(吸引ポンプの駆動系)
次に、図45に示すように、本実施形態の吸引ポンプ650は、第2歯車220と噛み合う第6歯車600の回転駆動によって回転駆動されるように駆動系が構成されている。すなわち、第6歯車600の回転によって第6歯車600と噛み合う第9伝達歯車610が回転駆動される。この第9伝達歯車610は第6の回転軸J6に固定されており、第9伝達歯車610の回転に伴って第6の回転軸J6が回転することによって吸引ポンプ650が動作するようになっている。
【0202】
本実施形態では、吸引ポンプ650は、配管63を通して吸引キャップ350内のインクを吸引するとともに、配管64を通してFLボックス380内のインクを吸引するようになっている。そして吸引したインクは排出管61によって図示しない廃インクタンクなどに排出されるようになっている。
【0203】
本実施形態では、吸引キャップ350内のインクの吸引において、吸引キャップ350が液体噴射ヘッド30に当接して形成された閉空間を減圧して液体噴射ヘッド30からインクの吸引を行うことに加えて、この閉空間が配管65を介して大気開放された状態で吸引する大気開放吸引が行われるようになっている。
【0204】
閉空間の大気開放は、配管65の端部に設けられた大気開放弁66の開放によって行われる。この大気開放弁66の開放について、その仕組みを図46を参照して説明する。図46(a)に示すように、大気開放弁66は弁開閉部材67において左方向に突出するように形成された腕部に挟持されている。弁開閉部材67はフレーム構造体に軸孔68によって回転可能に軸支されている。そして、下端において突出部69が設けられている。
【0205】
この突出部69は、図46(b)に示すように、クラッチ板のCCW回転に伴って、クラッチ板315の前側に設けられたカム形状部317(図12参照)と当接するとともに、当接するカム形状部317によって軸孔68を中心にCW回転するようになっている。この突出部69の回転によって、弁開閉部材67は、挟持している大気開放弁66を上昇させて配管65の端部を大気開放するようになっている。
【0206】
以上説明したように、メンテナンス装置100には、1つのモーター110の回転によって駆動される歯車の切替えによって複数の機能部品を動作させるための複数の駆動系が構成されている。そして、本実施形態では、メンテナンス装置100において、これらの駆動系を適切なタイミングで動作させるために、第1歯車210と第2歯車220、および第5の回転軸J5の回転状態を検出する仕組みが備えられている。
【0207】
具体的には、図47に示すように、メンテナンス装置100には、それぞれの回転状態を検出する第1検出手段81、第2検出手段82、第3検出手段83が設けられている。第1検出手段81は第1フック部71によって、第2検出手段82は第1歯車によって、また第3検出手段83は前述した回転検出車508によって、それぞれ所定の電圧が検出信号として出力されるようになっている。これらは、前述するようにフレーム構造体90に取付けられた回路基板50に設けられている。なお、本実施形態では、各検出手段は検出用レバーの変位(揺動)によって電気回路の短絡と遮断とを制御する小型の開閉器が用いられている。
【0208】
第1検出手段81は、その検出レバー81aと第1フック部71との係合具合によって検出信号を出力する。すなわち、第1歯車210が回転規制されて停止した状態では、第1検出手段81は第1フック部71と係合しない状態となることによって電圧を出力しないようになっている。一方、第1歯車210が回転しているときは、第1検出手段81は、第1フック部71が第2の回転軸J2を中心にCW回転して検出レバー81aと係合することによって検出レバー81aが変位し、所定の電圧を出力するようになっている。このように、第1検出手段81の検出信号によって、第1歯車210が回転しているのか第2歯車220が回転しているのかを検出できるようになっている。
【0209】
第2検出手段82は、第1歯車210の第1の回転軸J1周りの回転状態に応じて検出信号を出力する。すなわち、第1歯車210において径方向外側に突出形成された第1カム形状241と第2カム形状242とが、第2検出手段82の検出レバー82aと係合した状態では、検出レバー82aが変位することによって第2検出手段82は所定の電圧を出力する一方、係合しない状態では電圧を出力しないようになっている。なお、吸引キャップ350が液体噴射ヘッド30と当接して形成した閉空間を吸引する吸引位置に到達した状態になったとき、第2検出手段82が第1カム形状241と係合して所定の電圧が出力されるようになっている。また、ワイパーユニット420が移動を開始する状態になったとき、第2検出手段82が第2カム形状242と係合して検出レバー82aが変位し、所定の電圧が出力されるようになっている。また、ワイパーユニット420の移動中、所定の電圧が継続して出力されるようになっている。
【0210】
第3検出手段83は、第5の回転軸J5の回転状態を第5の回転軸J5に取り付けられた回転検出車508の回転状態に応じて検出信号を出力する。すなわち、回転検出車508において径方向に突出形成された検出カム部509が第3検出手段83と係合した状態では、第3検出手段83は検出レバー83aが図示するように変位して所定の電圧を出力する一方、係合しない状態では電圧を出力しないようになっている。そして、FLボックスカバー580の移動が開始された後、回転検出車508が所定角度回転すると、第3検出手段83は検出カム部509と係合した状態から係合しない状態になることによって、出力していた所定の電圧を出力しないようになっている。また、FLボックスカバー580の移動が終了するまでの回転検出車508の回転角が所定の角度になった時点から、第3検出手段83は、その検出レバー83aが検出カム部509と係合しない状態から係合する状態になるようになっている。これによって、第3検出手段83は、それまで出力していなかった所定の電圧を出力するようになっている。
【0211】
(メンテナンス装置における動作)
さて、以上説明したように、本実施形態のメンテナンス装置100では、1つのモーター110の駆動によって回転される歯車を切替え、その回転する歯車に応じた機能部品が動作するようになっている。そこで、メンテナンス装置100で行われる機能部品の動作(作用)について、図48に示したタイミングチャートを随時参照しながら、図49〜図53に示したフローチャートに従って、以下順次説明する。
【0212】
なお、以下の説明では、メンテナンス装置100において、放置キャップ550およびキャリッジロック体590が降下した状態であって、FLボックスカバー580が後方に位置した開状態を、吸引ホームポジション(吸引HP)と呼ぶ。一方、メンテナンス装置100において、放置キャップ550およびキャリッジロック体590が上昇した状態であって、FLボックスカバー580が前方に位置した閉状態を、メンテナンスホームポジション(メンテナンスHP)と呼ぶ。従って、メンテナンス装置100は、吸引HPでは、用紙Sに画像を形成する状態である液体噴射ヘッド30に対して、インクを正しく噴射させるように液体噴射ヘッド30からのインクの噴射機能を維持回復させる動作を行える状態になっている。また、メンテナンスHPでは、用紙Sに画像を形成する状態にはない液体噴射ヘッド30を放置キャップ550によって覆うとともに、液体噴射ヘッド30を搬送するキャリッジ14をロックし、さらにFLボックスカバー580によってFLボックス380を覆った状態になっている。このような状態になることによって、例えば液体噴射ヘッド30からのインクの噴射特性を長期間維持できるようになっている。
【0213】
(メンテナンスHPから吸引HPへの移行動作)
まず、メンテナンス装置100が現在メンテナンスHPにあるものとし、このメンテナンスHPから用紙Sへ画像を形成するために吸引HPへの移行動作を図49に示した歯車列の回転動作を示すフローチャートに従って説明する。なお、この動作を含め、以降説明するメンテナンス装置100における歯車列の回転動作は、前述したプリンター11の制御装置によって行われる。また、1つのモーター110の回転方向を変えることによって機能部品の動作を制御するようになっていることから、説明の都合上、モーターのCCW回転を正転、CW回転を逆転と呼ぶことにする。
【0214】
この移行動作が始まると、モーターの逆転駆動(CW回転)が行われる(ステップS11)。すなわち、制御装置は、モーター110に逆転用の駆動電圧を印加する。これによって、タイミングチャートの左側に示したメンテナンスHPから、モーター110のCW回転を示す破線の矢印に沿って右側に示した吸引HPまでタイミングチャートに示したように動作する。すなわち、まず第1歯車210がCCW回転する(ステップS12)。この回転によって、ワイピング部材450が復移動する。その後、第1歯車210は回転し切ってCCW回転が停止し、続いて第2歯車220がCW回転する(ステップS13)。この回転によって、タイミングチャートに示したように、放置キャップ550およびキャリッジロック体590が降下移動する。さらに、FLボックスカバー580が開移動する。
【0215】
そして、FLボックスカバー580の開状態を示す開信号を検出する(ステップS14)。制御装置は、前述するように、FLボックスカバー580が開状態となるときに第3検出手段83が出力する所定の電圧を検出する。そして第3検出手段83から電圧が出力されて検出信号が検出されるまでモーター110の逆転駆動を継続し(ステップS14:NO)、検出信号が検出されたら(ステップS14:YES)、制御装置は、駆動電圧を絶ってモーター110の駆動を停止する(ステップS15)。この動作によって、メンテナンス装置100はメンテナンスHPから吸引HPへ移行する。
【0216】
(FLボックス吸引動作)
次に、吸引HPにおいて、FLボックス380内のインクを吸引する動作を、タイミングチャートを参照しながら図50に示したフローチャートに従って説明する。なお、このFLボックス380内のインクの吸引動作において、同時に吸引キャップ350についても液体噴射ヘッド30から離間した開空状態で吸引が行われることになる。
【0217】
この動作が始まると、まずモーター110の逆転駆動(CW回転)が行われる(ステップS21)。すなわち、制御装置は、モーター110に逆転用の駆動電圧を印加する。このモーター110のCW回転によって、第1歯車210は回転せず第2歯車220がCW回転する(ステップS22)。この結果、タイミングチャートの右側の吸引HPにおいて示したように、第2歯車220の回転によって、吸引ポンプ650がCW回転し吸引動作が行われる。なお、この吸引動作において、FLボックスカバー580が開移動の終了前の状態(例えば閉状態)であれば、タイミングチャートに示したように、吸引動作と同時に開動作が行われる。
【0218】
次に、モーター110は所定回数逆転したか否かを判定する(ステップS23)。制御装置は、本実施形態では、モーター110のロータリーエンコーダー108から出力されるパルス数をカウントし、所定のカウント数に達したか否かによって、モーター110が所定回数逆転したか否かを判定する。そして所定回数逆転するまでモーター110を逆転駆動し(ステップS23:NO)、所定回数逆転したら(ステップS23:YES)、制御装置は、駆動電圧を絶ってモーター110の駆動を停止する(ステップS24)。この動作によって、FLボックス380内のインク(および吸引キャップ350内のインク)が吸引される。
【0219】
(吸引HPからメンテナンスHPへの移行動作)
次に、メンテナンス装置100が現在吸引HPにあるものとし、この吸引HPから、用紙Sへ画像を形成しないためメンテナンスHPへ移行する動作を、図48に示したタイミングチャートを参照しつつ図51に示したフローチャートに従って説明する。
【0220】
この移行動作が始まると、モーター110の正転駆動(CCW回転)が行われる(ステップS31)。制御装置は、モーター110に正転用の駆動電圧を印加する。これによって、タイミングチャートの右側に示した吸引HPから、モーター110のCCW回転を示す太い実線の矢印に沿って左側に示したメンテナンスHPまでタイミングチャートに示したように動作する。すなわち、まず第1歯車210がCW回転する(ステップS32)。この回転によって、吸引キャップ350が上下移動し、続いてワイピング部材450が往移動する。その後、第1歯車210は回転し切ってCW回転が停止し、続いて第2歯車220がCCW回転する(ステップS33)。この回転によって、タイミングチャートに示したように、放置キャップ550およびキャリッジロック体590が上昇移動する。さらに、FLボックスカバー580が閉移動する。
【0221】
そして、FLボックスカバー580の閉状態を示す閉信号を検出する(ステップS34)。制御装置は、前述するように、FLボックスカバー580が閉状態となるときに第3検出手段83が出力する所定の電圧を検出する。そして第3検出手段83から電圧が出力されて検出信号が検出されるまでモーター110の正転駆動を継続し(ステップS34:NO)、検出信号が検出されたら(ステップS34:YES)、制御装置は、駆動電圧を絶ってモーター110の駆動を停止する(ステップS35)。この動作によって、メンテナンス装置100は吸引HPからメンテナンスHPへ移行する。
【0222】
(液体噴射ヘッド30クリーニング動作)
次に、メンテナンス装置100が吸引HPにあるとき、この吸引HPにおいて液体噴射ヘッド30の噴射特性を維持あるいは回復させるために行われる液体噴射ヘッド30クリーニングについての動作を、図48に示したタイミングチャートを参照しつつ図52と図53に示したフローチャートに従って説明する。
【0223】
このクリーニング動作が始まると、モーター110の正転駆動(CCW回転)が行われる(ステップS41)。制御装置は、モーター110に正転用の駆動電圧を印加する。これによって、タイミングチャートの右側に示した吸引HPから、モーター110のCCW回転を示す太い実線の矢印に沿ってタイミングチャートに示したように動作する。すなわち、まず第1歯車210がCW回転する(ステップS42)。この回転によって、吸引キャップ350が上昇移動する。
【0224】
ついで、吸引位置信号を検出する(ステップS43)。制御装置は、第2検出手段82から最初に出力される所定の電圧を吸引位置信号として検出する。そして第2検出手段82から電圧が出力されて検出信号が検出されるまでモーター110の正転駆動を継続し(ステップS43:NO)、検出信号が検出されたら(ステップS43:YES)、制御装置は、駆動電圧を切り替えてモーター110を逆転駆動(CW回転)する(ステップS44)。これによって、第1歯車210はCCW回転する。このとき第3歯車300に設けられたクラッチ機構310がワンウェイクラッチとして機能することによって吸引キャップ350は上昇した位置、つまり液体噴射ヘッド30に当接した状態を維持する。
【0225】
その後、第1歯車210は回転し切ってCCW回転が停止し、続いて第2歯車220がCW回転する(ステップS45)。この結果、タイミングチャートの右側の吸引HPにおいて示したように、第2歯車220の回転によって、吸引ポンプ650がCW回転し吸引動作が行われる。
【0226】
次に、モーター110は所定回数逆転したか否かを判定する(ステップS46)。制御装置は、モーター110のロータリーエンコーダー108から出力されるパルス数をカウントし、所定のカウント数に達したか否かによって、モーター110が所定回数逆転したか否かを判定する。そして所定回数逆転するまでモーター110を逆転駆動し(ステップS46:NO)、所定回数逆転したら(ステップS46:YES)、制御装置は、再び駆動電圧を切り替えてモーター110を正転駆動(CCW回転)する(ステップS47)。これによって、第2歯車220は停止して第1歯車210が直ちにCW回転を開始する(ステップS48)。この第1歯車210のCW回転においては、吸引キャップ350は既に上昇した位置にあり、その上昇した位置が維持されている。
【0227】
ついで、再び吸引位置信号を検出する(ステップS49)。制御装置は、第2検出手段82から出力される所定の電圧(すなわち2回目の電圧)を吸引位置信号として検出する。そして、吸引位置信号が検出されてから所定の回転数、モーター110を正転駆動(CCW回転)させる(ステップS50)。ここでは、制御装置が、ロータリーエンコーダー108から出力されるパルス数が所定のパルス数になるまでモーターを回転駆動する。この回転駆動によって、メンテナンス装置100は、タイミングチャートに示したように、クラッチ板315のカム形状部317によって大気開放弁66が開放され、吸引キャップ350内の閉空間が大気開放されたバルブ開位置となる。
【0228】
次に、このバルブ開位置において、制御装置は、駆動電圧を切り替えてモーター110を逆転駆動(CW回転)する(ステップS51)。これによって、第1歯車210はCCW回転する。このとき第3歯車300に設けられたクラッチ機構310が同様にワンウェイクラッチとして機能することによって吸引キャップ350は上昇した位置、つまり液体噴射ヘッド30に当接した状態を継続して維持する。
【0229】
その後、第1歯車210は回転し切ってCCW回転が停止し、続いて第2歯車220がCW回転する(ステップS52)。この結果、タイミングチャートの右側の吸引HPにおいて示したように、第2歯車220の回転によって、吸引ポンプ650がCW回転し再び吸引動作が行われる。この場合は、吸引キャップ350が液体噴射ヘッド30に当接して形成される閉空間は、大気開放された状態で配管63,65を介して吸引が行われる。
【0230】
次に、モーター110は所定回数逆転したか否かを判定する(ステップS53)。制御装置は、モーター110のロータリーエンコーダー108から出力されるパルス数をカウントし、所定のカウント数に達したか否かによって、モーター110が所定回数逆転したか否かを判定する。そして所定回数逆転するまでモーター110を逆転駆動し(ステップS53:NO)、所定回数逆転したら(ステップS53:YES)、制御装置は、再び駆動電圧を切り替えてモーター110を正転駆動(CCW回転)する(ステップS54)。これによって、第2歯車220は停止して第1歯車210が直ちにCW回転を開始する(ステップS55)。この第1歯車210のCW回転によって、前述したバルブ閉位置に再び到達した以降は、吸引キャップ350は降下移動する。そして吸引キャップ350の降下が終了したのち、今度は第4歯車400が回転されるのでワイパーユニット420が移動終了位置Peへ移動することによってワイピング部材450は往移動する。これによって、ワイパーブレード451が液体噴射ヘッド30を払拭する。
【0231】
次いで、第1歯車210のCW回転のエンド信号を検出する(ステップS56)。制御装置は、第1検出手段81から出力されている電圧が出力されなくなったときを検出することによって、第1歯車210のCW回転の終了位置を示すエンド信号を検出する。そして、第1検出手段81から電圧が出力されなくなるまでモーター110の正転駆動(CCW回転)を継続し(ステップS56:NO)、電圧が出力されなくなったら(ステップS56:YES)、制御装置は、駆動電圧を切り替えてモーター110を逆転駆動(CW回転)する(ステップS57)。これによって、第1歯車210は、今度はCCW回転する(ステップS58)。
【0232】
タイミングチャートに示したように、この回転によって、今度は第4歯車400が逆方向に回転されてワイパーユニット420が移動開始位置Psに移動することによってワイピング部材450は復移動する。そして、ワイピング部材450が復移動を終了したのち、第3歯車300が回転されることになるが、同じくタイミングチャートに示したように、このとき第3歯車300に設けられたクラッチ機構310がワンウェイクラッチとして機能することによって、吸引キャップ350は降下した位置が維持されるようになっている。
【0233】
そして、第1歯車210のCCW回転のエンド信号を検出する(ステップS59)。制御装置は、同じく第1検出手段81から出力されている電圧が出力されなくなったときを検出することによって、第1歯車210のCCW回転の終了位置を示すエンド信号を検出する。そして、第1検出手段81から電圧が出力されなくなるまでモーター110の逆転駆動(CW回転)を継続し(ステップS59:NO)、電圧が出力されなくなったら(ステップS59:YES)、制御装置は、モーター110の駆動を停止する(ステップS60)。これによって、クリーニング動作は終了するとともに、メンテナンス装置100は吸引HPになる。
【0234】
(FLボックス高さ調節動作)
次に、メンテナンス装置100が吸引HPにあるとき、液体噴射ヘッド30から実際にインクが噴射しているか否かをインクの噴射に伴う電圧変化を利用して検査(すなわち、インク噴射検査)することが行われる。本実施形態では、FLボックス380にインクを噴射してインク噴射検査が行われるようになっており、このため、メンテナンス装置100において、FLボックス380の液体噴射ヘッド30との離間距離、すなわち上下方向の高さを調節動作するようになっている。このFLボックス380の高さ調節動作を、図48に示したタイミングチャートを参照しつつ図54に示したフローチャートに従って説明する。
【0235】
この動作が始まると、モーター110の正転駆動(CCW回転)が行われる(ステップS61)。制御装置は、モーター110に正転用の駆動電圧を印加する。これによって、タイミングチャートの右側に示した吸引HPから、モーター110のCCW回転を示す太い実線の矢印に沿ってタイミングチャートに示したように動作する。すなわち、まず第1歯車210がCW回転する(ステップS62)。この回転によって、タイミングチャートに示すように、吸引キャップ350が上昇して降下するまでの間、FLボックス380は吸引HPにおける通常位置となる上方の高い位置(基準位置)から降下を継続する。そして、吸引キャップ350が降下を終了した位置において最も低い位置になる。
【0236】
次に、吸引キャップ350の降下終了信号を検出する(ステップS63)。制御装置は、第2検出手段82が第2カム形状242と係合して出力される所定の電圧を降下終了信号として検出する。そして第2検出手段82から電圧が出力されて終了信号が検出されるまでモーター110の正転駆動を継続し(ステップS63:NO)、終了信号が検出されたら(ステップS63:YES)、制御装置は、所定回転数モーター110を逆転駆動(CW回転)する(ステップS64)。制御装置は、モーター110のロータリーエンコーダー108から出力されるパルス数をカウントすることによって、モーター110を所定回数逆転させる。
【0237】
この結果、第1歯車210は所定角度CCW回転し(ステップS65)、FLボックス380は所定量上昇して液体噴射ヘッド30との間の距離をインク噴射検査に適した距離に調節する。なお、このとき第1歯車210のCCW回転によって第3歯車300が回転されることになるが、第3歯車300に設けられたクラッチ機構310がワンウェイクラッチとして機能することによって、吸引キャップ350は降下した位置が維持されるようになっている。従って、液体噴射ヘッド30をFLボックス380と対向する位置に移動することができる。そして、この調節されて適した離間距離になった状態において、インク噴射検査を実施する(ステップS66)。
【0238】
次いで、インク噴射検査の終了後、再びモーター110を逆転駆動(CW回転)する(ステップS67)。これによって、第1歯車210は再びCCW回転する(ステップS68)。これによって、FLボックス380は上昇して基準位置に戻る。
【0239】
そして、第1歯車210のCCW回転のエンド信号を検出する(ステップS69)。制御装置は、同じく第1検出手段81から出力されている電圧が出力されなくなったときを検出することによって、第1歯車210のCCW回転の終了位置を示すエンド信号を検出する。そして、第1検出手段81から電圧が出力されなくなるまでモーター110の逆転駆動(CW回転)を継続し(ステップS59:NO)、電圧が出力されなくなったら(ステップS59:YES)、制御装置は、モーター110の駆動を停止する(ステップS70)。これによって、FLボックス380の高さ調節動作は終了するとともに、メンテナンス装置100は吸引HPになる。
【0240】
上記説明した実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)放置キャップ550の着脱時には、カム機構560におけるカムローラー562がキャップホルダ563における底面の凹部564のうち壁部566の凹面部566a及び斜面部566bとの非重なり領域となる平面部位564aに対応配置した状態で該平面部位564aがカムローラー562から上方へ離間するようにキャップユニットを移動させる。すると、壁部566の凹面部566a及び斜面部566bがカムローラー562に
(2)放置キャップ550では、カム機構560におけるカムローラー562が液体噴射ヘッド30に最も接近した状態になると、カムローラー562がキャップホルダ563における凹部564の平面部位564aに下方から係合し、キャップユニットも液体噴射ヘッド30に最も接近した状態となる。そして、こうした場合は、通常、液体噴射ヘッド30にキャップユニットはキャップ部材550Aの当接部550aを下方から当接させた状態となるため、キャップユニットは液体噴射ヘッド30とカムローラー562とで上下両側から挟まれた状態となり、不用意に抜けてしまうことを抑制できる。
【0241】
(3)放置キャップ550では、キャップホルダ563における昇降方向において離間した第1被係合面としての凹部564と第2被係合面としての凹面部566a及び斜面部566bに係合する係合部が一つの場合に比べて、カムローラー562が凹部564に係合した状態から軸部562aが凹面部566a及び斜面部566bに係合した状態に移行する時間を短縮することができ、短時間でキャップユニットを昇降移動させることができる。
【0242】
(4)放置キャップ550の当接部550aが液体噴射ヘッド30に対して当接した状態でキャップホルダ563が更に上昇すると、キャップホルダ563とキャップ部材550Aとの間に介設されたコイルばね565が圧縮されてキャップ部材550Aに対する付勢力を増大させる。その結果、このコイルばね565の付勢力に基づいて、液体噴射ヘッド30に対して放置キャップ550の当接部550aを密着させることができる。
【0243】
(5)ワイピング部材450が第1吸収材41から離間するときに飛散するインクを、飛散する方向となる重力方向下側で受けることができる。また、飛散するインクの飛翔方向の広がりに応じて、インクを受け止めて吸収する吸収面(露出面)を払拭手段の払拭幅よりも広い幅とするので、飛散するインクを確実に吸収面で受けることができる。従って、インクによる汚染の抑制を実現することができる。
【0244】
(6)インク吸収体40は第1吸収材41が吸収できる液体の容量と第2吸収材42が吸収できる液体の容量とを合計した総容量分の液体を吸収できるので、インク吸収体40は第1吸収材41の吸収容量より多くのインクを吸収することができる。従って、インクによる汚染の発生確率が低くなる。また、第1吸収材41が吸収したインクを第2吸収材42を介して移動させることができるので、第1吸収材41によってワイピング部材450に捕捉されたインクが常時吸収されるようにすることができる。
【0245】
(7)ワイピング部材450が液体噴射ヘッド30から離間するときに飛散するインクを、飛散する方向となる払拭方向側で受けることができる。また、飛散するインクの飛翔方向の広がり応じて、壁面部48をワイピング部材450の払拭幅よりも広い幅とするので、確実に飛散するインクを受けることができる。そして、壁面部48に受けたのち、壁面部48に沿って重力方向下側に降下するインクを第3吸収材43で吸収することによって、インクによる汚染を抑制するインク吸収体を実現することができる。
【0246】
(8)インク吸収体40は第1吸収材41が吸収できるインクの容量と第3吸収材43が吸収できるインクの容量とを合計した総容量分のインクを吸収できる。または、第2吸収材42が吸収できるインクの容量と第3吸収材43が吸収できるインクの容量とを合計した総容量分のインクを吸収できる。あるいは、第1吸収材41が吸収できるインクの容量と第2吸収材42が吸収できるインクの容量と第3吸収材43が吸収できるインクの容量とを合計した総容量分のインクを吸収できる。従って、インク吸収体40は各吸収材が有するインクの吸収容量に応じてインクを最大限吸収することができるので、インクによる汚染の発生確率が低くなる。
【0247】
(9)軸状凸部456が払拭方向側から凹条部436に挿入され開口孔457が凸条部437に係合された状態で保持部材430に取付けられたワイピング部材450は、軸状凸部456回りの回転が規制されるとともに、払拭方向への移動において軸状凸部456が保持部材430から払拭方向に移動しない。従って、ワイピング部材450は安定して液体噴射ヘッド30を払拭することができる。一方、ワイピング部材450において凸条部437と開口孔457との係合を解除すれば、ワイピング部材450の先端側を払拭方向に移動するように回転させて、軸状凸部456を凹条部436から離脱させることができるので、ワイピング部材450を保持部材430から容易に取り外すことができる。
【0248】
(10)ツマミ形状部452の上端側の部位によってワイピング部材450の開口孔457と保持部材430の凸条部437との係合を解除させることができるので、例えばワイピング部材450の交換を行う作業者がツマミ形状部452の上端側の部位を変位させることによって、容易にワイピング部材450を保持部材430から取り外して交換することができる。
【0249】
(11)例えばワイピング部材450の交換を行う作業者が、ワイピング部材450を払拭方向側と払拭方向と反対側の両方向から手で挟むようにすることによって、ツマミ形状部452の上端側の部位を払拭方向に変位させることができる。従って、作業者はワイピング部材450を挟むことによって容易にワイピング部材450を保持部材430から取り外して交換することができる。
【0250】
(12)吸引キャップ350が液体噴射ヘッド30に対して接近するように上昇した場合、吸引キャップ350は、液体噴射ヘッド30が第2傾斜面372及び第3傾斜面373に対して摺接することにより、昇降方向と交差する面内での液体噴射ヘッド30に対する相対的な位置が位置決め部によって位置決めされる。したがって、吸引キャップ350は液体噴射ヘッド30に接近する方向に移動した場合にノズルを囲うように正確に液体噴射ヘッド30に当接することができる。
【0251】
(13)第2傾斜面372及び第3傾斜面373のうち少なくとも一方の傾斜面は、液体噴射ヘッド30側に大きく開口した形状をなすようになる。そのため、吸引キャップ350を液体噴射ヘッド30に対して接近させるように上昇させた場合には、液体噴射ヘッド30は、この拡開した傾斜面に対して確実に摺接する。したがって、位置決め部は昇降方向と交差する方向への液体噴射ヘッド30に対する吸引キャップ350の相対的な位置を確実に位置決めすることができる。
【0252】
(14)液体噴射ヘッド30は、突部32を設けない場合と比較して、昇降方向と交差する方向から見た平面視形状が拡大するため、キャップの各摺接面に対して摺接し易くなる。したがって、液体噴射ヘッドに対するキャップの相対的な位置を確実に位置決めすることができる。
【0253】
(15)吸引キャップ350が上昇移動している場合に、吸引キャップ350が障害物によって上昇が妨げられたとき、駆動側の第3歯車300の双方向の回転が従動側の第3の回転軸J3に伝達されるので、吸引キャップ350を上昇途中で引き戻すことができる。あるいは、モーター110の正転駆動(CCW回転)によって吸引キャップ350が下降移動しているときに吸引キャップ350が降下方向に押された場合、下降移動に際して第3歯車300が回転するので、第3歯車300からモーター110に到る間の複数の回転伝達歯車が有する回転負荷によって、吸引キャップ350の降下が制動される。従って、コイルばねなどの付勢手段を用いることなく、下降移動中に吸引キャップ350が急激に降下しないようにすることができる。
【0254】
(16)第1抑止壁95あるいは第2抑止壁96によってレバー部材311の回転を抑止することによって、ワンウェイクラッチが作用しない区間を設定することができる。従って、複雑なクラッチ機構を用いることなく第3歯車300の双方向の回転を第3の回転軸J3に伝達するワンウェイクラッチが作用しない区間を容易に設定できる。
【0255】
(17)吸引キャップ350が液体噴射ヘッド30と当接した状態において、ワンウェイクラッチを作用させることができる。従って、吸引キャップ350が液体噴射ヘッド30と当接した状態を維持したまま、ワンウェイクラッチを作用させる第3歯車300の他方向への回転駆動に相当するモーター110の回転を利用して、他の機能部品(例えば吸引ポンプ650)を動作させることが可能になる。
【0256】
(18)吸引キャップ350が液体噴射ヘッド30と離間した状態において、ワンウェイクラッチを作用させることができる。従って、吸引キャップ350が液体噴射ヘッド30と離間した状態を維持したまま、ワンウェイクラッチを作用させる第3歯車300の他方向への回転駆動に相当するモーター110の回転を利用して、他の機能部品(例えば吸引ポンプ650)を動作させることが可能になる。
【0257】
(19)吸引キャップ350が液体噴射ヘッド30と当接した状態を維持したまま、ワンウェイクラッチを作用させる第3歯車300の他方向への回転駆動に相当するモーター110の回転を利用して、吸引ポンプ650を駆動する。この結果、吸引キャップ350が当接して形成した閉空間を減圧して液体噴射ヘッド30からインクを吸引することによって液体噴射ヘッドのメンテナンスができる。あるいは、吸引キャップ350が液体噴射ヘッド30と離間した状態を維持したまま、ワンウェイクラッチを作用させる第3歯車300の他方向への回転駆動に相当するモーター110の回転を利用して、吸引ポンプ650を駆動する。この結果、吸引キャップ350が大気開放された状態で吸引キャップ350内のインクを吸引することによって吸引キャップ350のメンテナンスができる。
【0258】
(20)液体噴射ヘッド30に各々異なる機能目的で当接して閉空間を形成する吸引キャップ(第1のキャップ)350と放置キャップ(第2のキャップ)及びワイピング部材450を有するプリンター11において、1つのモーター110によって、放置キャップ550を、吸引キャップ350およびワイピング部材450と区別して移動させることができる。従って、液体噴射ヘッド30のメンテナンスのための複数の機能部品を、例えば放置状態であるか否かに応じて例えば吸引HPからメンテナンスHPへ移行動作させるなど、1つのモーター110の回転を制御することによってそれぞれ移動させることができる。この結果、複数のメンテナンス機能を有するヘッドメンテナンス装置100の小型化を実現することができる。
【0259】
(21)吸引キャップ350とワイピング部材450とが同時に移動しないので、これらが相互に干渉することなく移動させるようにすることができる。従って、吸引キャップ350とワイピング部材450との移動領域を共有化することが可能であり、小型のヘッドメンテナンス装置100を実現することができる。
【0260】
(22)1つのモーター110によって、液体噴射ヘッド30を、吸引キャップ350およびワイピング部材450と干渉することなく放置キャップ550と対峙する位置に移動させることができる。従って、吸引キャップ350およびワイピング部材450と、放置キャップ550とを、近接して配設することができるので、複数のメンテナンス機能を有する小型のヘッドメンテナンス装置100を実現することができる。
【0261】
(23)吸引キャップ350が離間位置に維持された状態においてFLボックス380を移動させることができる。従って、液体噴射ヘッド30を、吸引キャップ350と干渉することなくFLボックス380と対峙する位置に移動させ、FLボックス380と液体噴射ヘッド30との間が予め定められた間隔になるようにFLボックス380を移動させることができる。従って、モーター110の数を増やすことなく、例えば液体噴射ヘッド30とFLボックス380間の電位変化を利用した液体の噴射検査を確実に行うことができる。
【0262】
(24)モーター110の数を増やすことなく、FLボックス380の受容面を覆うことができる。従って、例えばFLボックス380に受容された液体の乾燥を抑制することによって、メンテナンス機能が維持された小型のヘッドメンテナンス装置100を実現することができる。
【0263】
(25)1つのモーター110によって吸引ポンプ650を駆動してインクを吸引することができる。従って、小型のヘッドメンテナンス装置100を実現することができる。
(26)FLカム384などからなる昇降機構(変位機構)が検出用電極としての電極部材381を液体噴射ヘッド30のノズルに対して接近及び離間する昇降方向において変位させることにより、ノズルと電極部材381との間の距離をノズルの目詰まりを検出するのに適した距離に調整することができる。また、この場合、液体噴射ヘッド30が変位することはないため、液体噴射ヘッド30と媒体である用紙Sとの距離は変化しない。そのため、液体噴射ヘッド30のノズルの目詰まりを検出した後に、用紙Sに対して直ちに印刷などの処理を施すことができる。すなわち、処理のスループットが低下することを抑制しつつ、液体噴射ヘッド30のノズルの目詰まりを検出することができる。
【0264】
(27)電極部材381は、液体噴射ヘッド30のノズルから廃液として液体受容部材であるFLボックス380の受容部に噴射されたインクを受容することにより液体噴射ヘッド30のノズルの目詰まりを検出することができる。
【0265】
(28)FLカム384などからなる昇降機構(変位機構)は、第8の回転軸J8がFLカム384を回転駆動させると、FLボックス380がFLカム384の偏心回転に伴ってFLカム384から液体噴射ヘッド30のノズルに対して離接する方向に押圧力を受けるようになる。そのため、FLカム384などからなる昇降機構(変位機構)は、FLボックス380を液体噴射ヘッド30のノズルから離接させる方向に変位可能とする構成を実現することができる。
【0266】
(29)FLボックス380はFLカム384に対して常に密着するようにコイルばね386から付勢力が作用する。そのため、FLカム384などからなる昇降機構(変位機構)は、FLカム384がFLボックス380に対して液体噴射ヘッド30のノズルから離接する方向への変位力を確実に作用させることができる。
【0267】
(30)遊星歯車230が太陽歯車120と第2歯車220が有する内歯歯車222とに噛合う歯車構成において、第2歯車220の回転を抑止することで遊星歯車230が周回運動して第1歯車210を回転させる一方、第1歯車210の回転を規制するとともに第2歯車220の回転の抑止を解除することで第2歯車220を回転させる。この結果、太陽歯車120(すなわちモーター110)の回転駆動を伝達する伝達部材として、第1歯車210と第2歯車220のいずれかに切り替えることができる。こうして、複数の歯車を1つのモーター110で択一的に回転させることができる。また、第1歯車210の回転停止と同時に第2歯車220が回転するので、駆動される歯車を素早く切り替えることができる。さらに、遊星歯車230を第2歯車220の内歯歯車222と太陽歯車120との双方の歯車間に位置させるようにして噛み合わせることで遊星歯車230の歯飛びを防ぐようにすることができるので確実に駆動を伝達することができる。
【0268】
(31)第1歯車210の回転に連動して第2歯車220の回転を抑止する第2フック部72の第2突起部78を変位させることができる。従って、第1歯車210が回転しているときに、第2歯車220の回転を抑止してその回転を停止させることによって、1つのモーター110によって回転駆動させる歯車を一つにすることができる。この結果、例えば回転する歯車に応じて所望の駆動対象物を選択して駆動することが可能になる。
【0269】
(32)太陽歯車120(モーター110)の回転方向に応じて、第1歯車210および第2歯車220のいずれかが回転するように切り替えることができる。また、第1歯車210の回転によって第1突起部77は第1カム部214と係合する状態と第2カム部215と係合する状態との間を直ちに移行するので、第1突起部77の変位を素早く行うようにすることができる。この結果、第1突起部77と連動する第2突起部78の素早い変位によって、第2歯車220の回転を抑止したり抑止を解除したりできるので、1つのモーター110によって回転する歯車を素早く切り替えることができる。
【0270】
(33)第2歯車220に設けられた外歯221との噛み合いが成立せずに第2突起部78が外歯221の歯先に当たった場合、第2突起部78が第1突起部77に対して回動することで外歯221あるいは第2突起部78が損傷することを防ぐことができる。
【0271】
(34)クランク機構360は、駆動レバー361が駆動源となるモーター110から伝達される駆動力に基づいて第3の回転軸J3を中心として回動すると、従動レバー362の第1連結部となる一方側の端部362aが駆動レバー361に連動して変位する。そして、従動レバー362の第2連結部となる他方側の端部362bは、一方側の端部362aの変位に連動して変位することにより、吸引キャップ350のキャップ部材365を液体噴射ヘッド30に対して離接させるように作動(昇降)させる。この場合、従動レバー362の他方側の端部362bは、変位しつつある一方側の端部362aに対して相対変位する。そのため、従動レバー362を設けることなく駆動レバー361のみでキャップ部材365を作動させる場合と比較して、キャップ部材365の昇降ストロークを相対的に大きく確保することができる。すなわち、駆動レバー361の小型化に伴って、装置全体の大型化を抑制しつつ、吸引キャップ350の昇降ストロークを大きく確保することができる。
【0272】
(35)クランク機構360は、例えば、従動レバー362の第1連結部となる一方側の端部362aが駆動レバー361及び従動レバー362における下方寄りの位置に配置されるように駆動レバー361及び従動レバー362が互いに並行して重なり合った状態から、従動レバー362の一方側の端部362aが駆動レバー361に連動して第3の回転軸J3を中心として周回するように上方に変位すると、従動レバー362の他方側の端部362bが駆動レバー361よりも液体噴射ヘッド30に接近するように上昇する。すなわち、クランク機構360は、駆動レバー361の作動に伴って、従動レバー362の他方側の端部362bが、上方に変位する一方側の端部362aに対して更に上方に相対変位するため、キャップ部材365の昇降ストロークを大きく確保することができる。
【0273】
(36)従動レバー362における第1連結部となる一方側の端部362aと第2連結部となる他方側の端部362bとの距離が最大限に確保される。そのため、従動レバー362における長手方向の両端部362a,362b間の距離が、第3の回転軸J3と第1連結部である一方側の端部362aとの距離よりも大きくする構成を従動レバー362の大型化を伴うことなく実現することができる。したがって、従動レバー362の小型化に伴って、装置全体の大型化を抑制しつつ、吸引キャップ350の昇降ストロークを大きく確保することができる。
【0274】
なお、上記各実施形態は以下のような別の実施形態に変更してもよい。
・上記実施形態の放置キャップ550において、キャップホルダ563の壁部566には凹面部566aを形成することなく斜面部566bだけを上側の凹部564の傾斜面部位564bと平行に長く形成し、その斜面部566bにカムローラー562が転動可能に接触するようにしてもよい。
【0275】
・上記実施形態のインク吸収体40において、第1吸収材41と第3吸収材43との間において、第2吸収材42を介さずにインクが移動できるように直接接触するようにしてもよい。こうすれば、例えば第1吸収材41から第3吸収材43へのインクの移動が円滑になり、第1吸収材41においてワイピング部材450のインクを吸収してワイパーブレード451を確実に清掃することができる。
【0276】
・上記実施形態において、第4吸収材44を設けなくても良い。例えば、第3吸収材43が第4吸収材44と一体となった形状の吸収材であってもよい。また、第2吸収材42が第4吸収材44と一体となった形状の吸収材であってもよい。
【0277】
・上記実施形態において、第1吸収材41と第2吸収材42は連結されていなくてもよい。例えば夫々の吸収材においてインクを吸収できる容積を有する場合などでは、必ずしも第1吸収材41と第2吸収材42との間でインクを移動させなくてもよい。
【0278】
・上記実施形態において、壁面部48および第3吸収材43を設けなくても良い。メンテナンス装置100において液体噴射ヘッド30を払拭したのちワイパーブレード451に捕捉されたインクが飛散することがない構成を有する場合は、必ずしも壁面部48および第3吸収材43を設ける必要がない。
【0279】
・上記実施形態において、第3吸収材43は、第1吸収材41および第2吸収材42との間で、必ずしもインクが移動可能な接触構成を有していなくてもよい。例えば、第1吸収材、第2吸収材42、および第3吸収材43材がそれぞれ適切量インクを吸収できるように構成されている場合は、このような構成を採用できる。
【0280】
・上記実施形態において、ワイピング部材450を保持部材430に取付けられる場合、上記実施形態とは逆に、ワイピング部材450に設けられる係合部側が凸形状であって、保持部材430に設けられる被係合部側が凹形状であってもよい。例えば、ツマミ形状部452の下端側に開口孔457に替えて凸条の膨出部を設け、保持部材430の軸形状部432に凸条部437に替えて凹上の溝部を設けるようにしてもよい。この構成であっても、ワイピング部材450を保持部材430から同様な方法によって取り外して、ワイピング部材を交換することができる。
【0281】
・上記実施形態において、ワイピング部材450のツマミ形状部452の上端側は、その下端側に設けられた開口孔457と、保持部材430の凸条部437との係合を解除する解除部位として機能するように設けられたが、必ずしもツマミ形状部452の上端側が解除部位として機能しなくてもよい。例えば、ワイパーブレード451などワイピング部材450の一部を軸状凸部456を中心にCCW回転させるように前方に押すことによって、開口孔457と凸条部437との係合が解除されるように構成されている場合は、必ずしも解除部位を設ける必要はない。
【0282】
・上記実施形態において、解除部位としてのツマミ形状部452は、必ずしも払拭方向に変位することによって、開口孔457と凸条部437との係合が解除されるように構成されていなくてもよい。例えば、払拭方向と交差する方向に変位させることによって係合が解除されるような構成としてもよい。あるいは、払拭方向と反対方向に変位させることによって係合が解除されるような構成としてもよい。
【0283】
・上記実施形態において、吸引キャップ350のキャップ部材365の壁部368には第1傾斜面370及び第2傾斜面372の少なくとも一方が形成されていなくてもよい。すなわち、吸引キャップ350の位置決め部として機能する凹部369の開口側が拡開していなくてもよい。
【0284】
・上記実施形態において、クラッチ機構310を第3歯車と第3の回転軸J3との間の伝達以外に採用しても良い。例えば第5伝達歯車530にクラッチ機構310を搭載することで、放置キャップ550において上昇動作に更に吸引動作を付加するなど、モーター110の正逆双方向の回転を、ワンウェイクラッチ機構によって異なる動作で使い分けることが可能になる。
【0285】
・上記実施形態において、第1抑止壁95または第2抑止壁96のうち一方が形成されていないこととしてもよい。吸引キャップの上昇時もしくは降下時のいずれか一方においてのみ吸引キャップを上下移動させる必要がある場合は、このように構成ればよい。
【0286】
・上記実施形態において、例えば、吸引キャップ350を放置キャップ550と同様な機能で使用する場合は、吸引キャップ350が液体噴射ヘッド30に当接した状態で吸引を行わないことになる。そこで、このような場合は、吸引キャップ350が液体噴射ヘッド30と当接した状態においても、常に吸引キャップ350を上下移動させることができるように、ワンウェイクラッチが機能しないよう第1抑止壁95または第2抑止壁96をレバー部材311の回転を抑止するように形成してもよい。
【0287】
・上記実施形態において、例えばメンテナンス装置100が、吸引キャップ350が離間位置に到達した離間状態で大気吸引すなわち空吸引を行わない構成を有する場合、この離間状態において、必ずしもワンウェイクラッチが機能する必要はない。従って、このような場合は、第1抑止壁95または第2抑止壁96をレバー部材311の回転を抑止するように形成してもよい。
【0288】
・上記実施形態において、第1歯車210は、第3歯車300及び第4歯車400の双方と同時に噛み合うようになっていてもよい。メンテナンス装置100において、吸引キャップ350の移動動作と、ワイピング部材450の移動動作とを同時に行うことができる場合は、第3歯車300と第4歯車400とを同時に回転駆動しても差し支えない。
【0289】
・上記実施形態において、第1歯車210の回転によって吸引キャップ350が離間位置となっていれば、第1歯車210から第2歯車220へ回転が切り替わることによって放置キャップ550が上昇して当接位置に移動するようにしてもよい。例えば、ワイピング部材450の移動動作に関わらず、液体噴射ヘッド30を吸引キャップ350に対峙する位置から、放置キャップ550に対峙する位置に移動できる場合は、このように第1歯車210から第2歯車220へ回転を切り替えるようにしても差し支えない。
【0290】
・上記実施形態において、第3歯車300の回転によって駆動するメンテナンス機能部品として、必ずしもフラッシングボックス380を備えなくてもよい。例えば、吸引キャップ350をフラッシングボックス380と兼用で用いる場合や、フラッシングボックス380を第3歯車300以外の歯車で駆動したり、あるいはモーター110以外の他の駆動源で駆動したりする場合は、このような構成とすればよい。
【0291】
・上記実施形態において、第5歯車500の回転によって駆動するメンテナンス機能部品として、必ずしもFLボックスカバー580を備えなくてもよい。例えば、FLボックスカバー580が不要で備えていない場合や、FLボックスカバー580を第5歯車500以外の歯車で駆動したり、あるいはモーター110以外の他の駆動源で駆動したりする場合は、このような構成とすればよい。
【0292】
・上記実施形態において、第2歯車220と噛み合う第6歯車600の回転によって駆動するメンテナンス機能部品として、必ずしも吸引ポンプ650を備えなくてもよい。例えば、メンテナンス装置100において吸引が行われない構成である場合や、吸引ポンプ650を第1歯車210の回転で駆動したり、あるいはモーター110以外の他の駆動源で駆動したりする場合は、このような構成とすればよい。
【0293】
・上記各実施形態において、手回しが可能な所定の外形形状のホイール115を有する手回し歯車116が配設されていなくてもよい。例えば、メンテナンス装置100において、ホイール115を手回しして伝達駆動歯車118を回転させる場合と同様に、モーター110を回転制御して伝達駆動歯車118を回転させることができるようになっている場合は、手回しホイールはなくてもよい。
【0294】
・上記実施形態において、FLカム384は、第8の回転軸J8の回転時にFLボックス380のカム係合部385に偏心カムとして係合する構成ならば、その周面のカム面の形状は実施形態の2つの曲面部384a,384bと2つの平面部384cからなるものに限定されない。
【0295】
・上記実施形態において、第1歯車210に設けられた外周溝部213は、その両端の第1カム部214が、第2カム部215よりも第1の回転軸J1に近づくように形成されているようにしてもよい。この場合は、第1突起部77がこの外周溝部213の一端に到達した場合、第1フック部71を第2の回転軸J2を中心にCW回転させるようになる。従って、この場合は、第2フック部72がCW回転した場合に、第2歯車220の回転を規制しないように構成すればよい。
【0296】
・上記実施形態では、第1回転部材および第2回転部材を、それぞれ第1歯車210および第2歯車220として具体化したが、少なくとも一方の回転部材は歯車でなくてよい。例えば、滑車やカムなどであってもよい。要は、回転することによって対象物を駆動できるものであればよい。
【0297】
・上記実施形態において、遊星歯車2301つであってもよいし、3つ以上の複数であってもよい。なお、遊星歯車230が複数の場合は、第1の回転軸J1を中心に点対称となるように、互いに等しい間隔で離れて太陽歯車120と噛み合うように配設されることが好ましい。こうすれば、太陽歯車120の回転力が、遊星歯車230を介して均衡して第1歯車210あるいは第2歯車220に伝達される確率が高くなるので、それぞれの回転が安定する。
【0298】
・上記実施形態では、第2歯車220の回転の規制を、第1歯車210に設けられた外周溝部213における第1カム部214および第2カム部215と、第1フック部71に設けられた第1突起部77と、によって行ったが、必ずしもこの構成に限るものでないことは勿論である。例えば、第1フック部71に第1歯車210の回転状態を検出する検出センサーを設け、この検出センサーの検出に応じて、アクチュエーターによって第2フック部72をCW回転させるようにして、第2歯車220の回転を規制するように構成してもよい。
【0299】
・上記実施形態では、第2歯車220の回転の抑止を、第2歯車220の外歯221と第2フック部72の第2突起部78との係合によって行ったが、必ずしもこの構成に限るものでないことは勿論である。例えば、第2歯車220外周面に所定のピッチを有する円形穴を形成し、この穴に円柱状の第2突起部78が挿入する構成としてもよい。あるいは、第2歯車220の外周に円盤を形成し、この円盤を両側から挟みこんで回転を抑止する所謂ディスクブレーキの構成としてもよい。
【0300】
・上記実施形態において、クランク機構360の駆動レバー361と従動レバー362は、従動レバー362における一方側の端部362aと他方側の端部362bとの距離が、駆動レバー361における従動レバー362の他方側の端部362bに対する連結箇所(第1連結部)と回動中心となる第3の回転軸J3との距離と同じであってもよい。
【0301】
・上記実施形態では、液体噴射装置をインクジェット式のプリンター11に具体化したが、インク以外の他の液体を噴射したり吐出したりする液体噴射装置に具体化してもよい。微小量の液滴を吐出させる液体噴射ヘッド等を備える各種の液体噴射装置に流用可能である。なお、液滴とは、上記液体噴射装置から吐出される液体の状態をいい、粒状、涙状、糸状に尾を引くものも含むものとする。また、ここでいう液体とは、液体噴射装置が噴射させることができるような材料であればよい。例えば、物質が液相であるときの状態のものであればよく、粘性の高い又は低い液状体、ゾル、ゲル水、その他の無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)のような流状態、また物質の一状態としての液体のみならず、顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散又は混合されたものなどを含む。また、液体の代表的な例としては上記実施形態で説明したようなインクや液晶等が挙げられる。ここで、インクとは一般的な水性インク及び油性インク並びにジェルインク、ホットメルトインク等の各種液体組成物を包含するものとする。液体噴射装置の具体例としては、例えば液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ、面発光ディスプレイ、カラーフィルタの製造などに用いられる電極材や色材などの材料を分散又は溶解のかたちで含む液体を噴射する液体噴射装置がある。あるいは、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する液体噴射装置、精密ピペットとして用いられ試料となる液体を噴射する液体噴射装置、捺染装置やマイクロディスペンサー等であってもよい。さらに、時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を噴射する液体噴射装置、光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂等の透明樹脂液を基板上に噴射する液体噴射装置、基板などをエッチングするために酸又はアルカリ等のエッチング液を噴射する液体噴射装置を採用してもよい。そして、これらのうちいずれか一種の液体噴射装置に本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0302】
11…プリンター(液体噴射装置)、30…液体噴射ヘッド、32…突部、41…第1吸収材、42…第2吸収材、43…第3吸収材、70…切替手段、100…ヘッドメンテナンス装置、120…太陽歯車、210…第1歯車、214…第1カム部、215…第2カム部、220…第2歯車、221…外歯、222…内歯歯車、230…遊星歯車、300…第3歯車、313…係合爪、321…一端、322…他端、329…コイルばね(付勢手段)、350…吸引キャップ(キャップ装置)、361…駆動レバー、362…従動レバー、365…キャップ部材、366…当接部、380…フラッシングボックス(FLボックス)、400…第4歯車、420…ワイパーユニット、430…保持部材、450…ワイピング部材、500…第5歯車、550…放置キャップ(キャッピング装置)、550A…キャップ部材、550a…当接部、600…第6歯車、650…吸引ポンプ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体噴射ヘッドに付着した液体を払拭する払拭手段が前記液体噴射ヘッドを払拭することにより補足した前記液体を前記払拭手段から吸収する液体吸収体であって、
前記払拭手段の前記払拭方向への移動に際して、前記払拭手段に対して当接および離間する前記液体の吸収面を有する第1吸収材と、
前記第1吸収材よりも重力方向下側であってかつ前記払拭方向で前側となる位置に前記液体の吸収面を有する第2吸収材と、
を備え、
前記第2吸収材は、前記払拭手段が前記第1吸収材の吸収面から離間するときに飛散する前記液体を受けるように、前記払拭手段が払拭する払拭幅よりも広い幅で前記液体を吸収する吸収面が設けられていることを特徴とする液体吸収体。
【請求項2】
請求項1に記載の液体吸収体において、
前記第1吸収材と前記第2吸収材とは両吸収材間を前記液体が移動するように互いに接触していることを特徴とする液体吸収体。
【請求項3】
請求項1または2に記載の液体吸収体において、
前記払拭手段が前記液体噴射ヘッドから離間するときに飛散する前記液体を受けるように、前記液体噴射ヘッドから前記払拭方向において離れた位置に、前記払拭手段の払拭幅よりも広い幅を有する壁面を備え、
前記壁面によって受け止められるとともに、該壁面に沿って重力方向下側に移動する前記液体を吸収する吸収面を有する第3吸収材が備えられていることを特徴とする液体吸収体。
【請求項4】
請求項3に記載の液体吸収体において、
前記第3吸収材は、前記第1吸収材および前記第2吸収材のうちの少なくとも一方と、両吸収材間で前記液体が移動するように互いに接触していることを特徴とする液体吸収体。
【請求項5】
液体噴射ヘッドに付着した液体を払拭する払拭手段と、
請求項1ないし4のいずれか一項に記載の液体吸収体と、
を備えることを特徴とするヘッドメンテナンス装置。
【請求項6】
液体を噴射する液体噴射ヘッドと、
請求項5に記載のヘッドメンテナンス装置と、
を備えたことを特徴とする液体噴射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【図46】
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【図47】
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【図48】
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【図49】
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【図50】
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【図51】
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【図52】
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【図53】
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【図54】
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【公開番号】特開2012−121298(P2012−121298A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−275940(P2010−275940)
【出願日】平成22年12月10日(2010.12.10)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】