説明

液体噴射ヘッド、液体噴射ヘッドユニット及び液体噴射装置

【課題】ノズル開口の開閉を確実に行うことができると共に、着弾位置ずれを抑制して、
コストを低減した液体噴射ヘッド、液体噴射ヘッドユニット及び液体噴射装置を提供する

【解決手段】液体を噴射するノズル開口13と、該ノズル開口13に連通する液体流路内
に圧力変化を生じさせて、前記ノズル開口13から液体を噴射させる圧力発生手段16と
、前記液体流路内に設けられて、前記ノズル開口13を前記液体流路内で開閉する開閉手
段100と、を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノズル開口から液体を噴射する液体噴射ヘッド、液体噴射ヘッドユニット及
び液体噴射装置に関し、特に液体としてインクを吐出するインクジェット式記録ヘッド、
インクジェット式記録ヘッドユニット及びインクジェット式記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット式プリンターやプロッター等のインクジェット式記録装置に代表される
液体噴射装置は、液体カートリッジや液体タンク等の液体貯留手段に貯留された液体を、
液滴として吐出可能な液体噴射ヘッドを有する。
【0003】
ここで、液体噴射ヘッドとしては、ノズル開口に連通する圧力発生室と、圧力発生室に
圧力変化を生じさせてノズル開口から液滴を吐出させる圧力発生手段とを具備する。そし
て、液体噴射ヘッドに搭載される圧力発生手段としては、例えば、縦振動型の圧電素子、
撓み振動型の圧電素子、発熱素子及び静電気力を用いたものなどが挙げられる。
【0004】
これらの液体噴射ヘッドでは、液体カートリッジ交換時や液体内に含まれる気泡が流路
内に残留し、ドット抜け等の印刷不良が発生する場合がある。そのため、液体噴射装置に
は、ノズル開口を介して流路内の液体を吸引する吸引装置が接続されたキャップ部材が設
けられている。
【0005】
このキャップ部材によれば、液体噴射ヘッドの端面にキャッピングしてノズル開口から
流路内の液体を吸引する吸引動作を行うことで、流路内にインクを充填してドット抜け等
の印刷不良を防止することができる。また、印刷を行わない待機状態では、ノズル開口を
キャップ部材で覆いノズル開口近傍のインクの乾燥を抑制している。
【0006】
しかしながら、液体噴射ヘッドが大型化(ノズル開口が多列化)するに伴い、全てのノ
ズル開口を覆うにはキャップ部材も大型化する必要があり、インクジェット式記録装置が
大型化してしまう。このことから、全てのノズル開口を覆わずに一部のノズル開口を覆う
小型のキャップ部材を設け、キャップ部材を移動させながら全てのノズル開口の吸引動作
を行う液体噴射装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
このような特許文献1の構成では、全てのノズル開口を同時にキャップ部材で覆うこと
ができないため、非印刷時のノズル開口近傍のインクの乾燥を抑制することができない。
【0008】
このため、ノズル開口の流路内に塞栓部を設け、ノズル開口の設けられた吐出面を移動
させることで、ノズル開口の開閉を行うインクジェット式記録ヘッドが提案されている(
例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2009−12371号公報
【特許文献2】特開2009−12372号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献2のように、吐出面を移動する場合、吐出面を移動させるため
の蛇腹状の可動域が必要で、この可動域に付着したインクをゴムブレードでワイピングし
たり拭うのは困難で、吐出面のクリーニングを正常に行うのが困難であるという問題があ
る。また、蛇腹状の可動域にインクが付着して固化すると、吐出面が正常に移動すること
ができず、ノズル開口の開閉を行うことができなくなるという問題がある。
【0011】
さらに、吐出面を移動させるため、常に同一の動作をするのが困難で、インク吐出方向
にばらつきが生じ、着弾位置ずれが生じ易いという問題がある。
【0012】
また、蛇腹状の可動域は、繰り返し駆動による耐久性が必要となり、耐久性の高い材料
を用いることで、高コストになってしまうという問題がある。
【0013】
なお、このような問題はインクジェット式記録ヘッドだけではなく、インク以外の液体
を噴射する液体噴射ヘッドにおいても同様に存在する。
【0014】
本発明はこのような事情に鑑み、ノズル開口の開閉を確実に行うことができると共に、
着弾位置ずれを抑制して、コストを低減した液体噴射ヘッド、液体噴射ヘッドユニット及
び液体噴射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決する本発明の態様は、液体を噴射するノズル開口と、該ノズル開口に連
通する液体流路内に圧力変化を生じさせて、前記ノズル開口から液体を噴射させる圧力発
生手段と、前記液体流路内に設けられて、前記ノズル開口を前記液体流路内で開閉する開
閉手段と、を具備することを特徴とする液体噴射ヘッドにある。
かかる態様では、吐出面を移動させることなく、液体流路の内部からノズル開口の開閉
を行うことで、吐出面のワイピングなどの清掃を容易に行うことができる。また、吐出面
を移動させることがないため、液体の飛翔方向のずれによる着弾位置ずれが生じるのを抑
制することができる。さらに、ノズル開口を所望のタイミングで閉口し、ノズル開口近傍
の液体の乾燥を抑制して、ドット抜け等の不良を抑制することができる。また、吐出面側
に吐出面を稼働させる蛇腹状の部材が不要となり、高コストな材料を使用しなくていいこ
とから、コストを低減することができる。
【0016】
ここで、前記開閉手段は、開閉制御手段によって制御されると共に、前記開閉制御手段
は、前記ノズル開口から液体を噴射するときは、前記開閉手段によって前記ノズル開口を
開口し、且つ前記ノズル開口から液体を噴射しないときは、前記開閉手段によって前記ノ
ズル開口を閉口するように制御することが好ましい。これによれば、吐出に使用していな
いノズル開口を閉口して、ノズル開口近傍の液体の乾燥を抑制して、ドット抜け等の不良
を抑制することができる。
【0017】
また、前記圧力発生手段が、前記液体流路を画成する振動板を変位させるものであると
共に、前記開閉手段が、前記振動板が前記ノズル開口に相対向する領域まで延設されて前
記圧力発生手段の駆動により振動しない領域に設けられた開閉部と、該開閉部が設けられ
た領域の振動板を変形させる移動手段と、を具備することが好ましい。これによれば、開
閉部の移動によってノズル開口を確実に開閉することができる。
【0018】
また、前記開閉部は、前記ノズル開口に向かって頂点が設けられた円錐形状を有するこ
とが好ましい。これによれば、液体吐出時には、開閉部が邪魔にならず、ノズル開口の閉
口を開閉部によって確実に行うことができる。
【0019】
また、前記移動手段が、前記振動板の前記開閉部とは反対側に設けられた開閉部用圧力
室と、該開閉部用圧力室内の圧力を調整する圧力調整手段と、を具備することが好ましい
。これによれば、圧力調整手段によって開閉部用圧力室内の圧力を調整することで、開閉
部を確実に移動させることができる。
【0020】
また、前記移動手段が、前記開閉部が設けられた前記振動板上に設けられた磁性材料か
らなる吸着板と、前記振動板の前記開閉部とは反対側に設けられた電磁石と、を具備する
ことが好ましい。これによれば、電磁石によって開閉部を確実に移動させることができる

【0021】
さらに、本発明の他の態様は、上記態様の液体噴射ヘッドを複数具備することを特徴と
する液体噴射ヘッドユニットにある。
かかる態様では、ノズル開口の開閉を確実に行うことができると共に、着弾位置ずれを
抑制して、コストを低減した液体噴射ヘッドユニットを実現できる。
【0022】
また、本発明の他の態様は、上記態様の液体噴射ヘッドユニット又は液体噴射ヘッドを
具備することを特徴とする液体噴射装置にある。
かかる態様では、ノズル開口の開閉を確実に行うことができると共に、着弾位置ずれを
抑制して、コストを低減した液体噴射装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】実施形態1に係る記録ヘッドの断面図である。
【図2】実施形態1に係る記録ヘッドの動作を示す要部拡大断面図である。
【図3】実施形態1に係る記録ヘッドの動作を示す要部拡大断面図である。
【図4】実施形態1に係る記録装置の概略構成を示す斜視図である。
【図5】実施形態1に係る記録装置の制御構成を示すブロック図である。
【図6】実施形態1に係る記録ヘッドの変形例を示す要部拡大断面図である。
【図7】実施形態2に係る記録ヘッドの断面図である。
【図8】実施形態2に係る記録ヘッドの動作を示す要部拡大断面図である。
【図9】実施形態3に係る記録ヘッドの断面図である。
【図10】実施形態3に係る記録ヘッドの動作を示す要部拡大断面図である。
【図11】実施形態4に係る記録ヘッドの断面図である。
【図12】実施形態4に係る記録ヘッドの動作を示す要部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に本発明を実施形態に基づいて詳細に説明する。
(実施形態1)
図1(a)は、本発明の実施形態1に係る液体噴射ヘッドの一例であるインクジェット
式記録ヘッドの圧力発生室の長手方向の断面図であり、図1(b)は、インクジェット式
記録ヘッドの圧力発生室の短手方向の要部断面図であり、図2及び図3は、図1(a)の
要部を拡大した断面図である。
【0025】
図1に示すように、本実施形態のインクジェット式記録ヘッド10は、複数の圧力発生
室11が並設された流路形成基板12と、各圧力発生室11に連通する複数のノズル開口
13が穿設されたノズルプレート14と、流路形成基板12のノズルプレート14とは反
対側の面に設けられる振動板15と、振動板15上に設けられる圧電素子16とを有する

【0026】
流路形成基板12には、図1(b)に示すように、各圧力発生室11が隔壁17によっ
て区画されてその幅方向に複数並設されている。また、図1(a)に示すように、流路形
成基板12の圧力発生室11の長手方向一端側には、複数の圧力発生室11に連通するマ
ニホールド18が流路形成基板12を貫通して設けられている。そして、各圧力発生室1
1とマニホールド18とは、それぞれインク供給路19を介して接続されている。このイ
ンク供給路19は、本実施形態では、圧力発生室11よりも狭い幅で形成されており、マ
ニホールド18から圧力発生室11に流入するインクの流路抵抗を一定に保持する役割を
果たしている。
【0027】
また、圧力発生室11は、本実施形態では、流路形成基板12を貫通することなく形成
されており、圧力発生室11のマニホールド18とは反対の端部側には、流路形成基板1
2を貫通してノズル開口13に連通するノズル開口連通路22が形成されている。すなわ
ち、本実施形態では、記録ヘッド10の内部には、マニホールド18、インク供給路19
、圧力発生室11及びノズル開口連通路22からなる液体流路が設けられている。
【0028】
流路形成基板12の一方面側にはノズルプレート14が接合されている。そして上述の
ように各ノズル開口13が流路形成基板12に設けられたノズル開口連通路22を介して
各圧力発生室11と連通している。また、流路形成基板12の他方面側、すなわち圧力発
生室11の開口面側には振動板15が接合され、圧力発生室11及びマニホールド18は
この振動板15によって封止されている。そして、圧力発生室11に対応する振動板15
上には圧電素子16が、その先端部を当接させた状態で固定されている。圧電素子16は
、圧電体層25と個別内部電極26及び共通内部電極27とが交互に積層され、圧電変形
に寄与しない不活性領域が固定基板28に固着されている。また、圧電素子16の不活性
領域には、駆動IC等の駆動回路29が搭載された、例えば、チップオンフィルム(CO
F)からなる回路基板30が接続されている。そして、回路基板30の各配線は、その基
端部側では、例えば、半田、異方性導電材等によって圧電素子16を構成する個別内部電
極26及び共通内部電極27に接続されている。
【0029】
また、振動板15上には、圧力発生室11に圧力変化を生じさせる圧力発生手段である
圧電素子16が固定基板28に固定された状態で収容される収容部31を有するヘッドケ
ース32が固定されている。
【0030】
また、圧電素子16の先端が当接する振動板15は、例えば、樹脂フィルム等の弾性部
材からなる弾性膜33と、この弾性膜33を支持する、例えば、金属材料等からなる支持
板34との複合板で形成されており、弾性膜33側が流路形成基板12に接合されている
。例えば、本実施形態では、弾性膜33は、厚さが数μmのPPS(ポリフェニレンサル
ファイド)フィルムからなり、支持板34は、厚さが数十μm程度のステンレス鋼板(S
US)からなる。また、振動板15の各圧力発生室11に対向する領域内には、圧電素子
16の先端部が当接する島部35が設けられている。すなわち振動板15の各圧力発生室
11の周縁部に対向する領域に他の領域よりも厚さの薄い第1の薄肉部36が形成されて
、この第1の薄肉部36の内側にそれぞれ島部35が設けられている。また、振動板15
のマニホールド18に対向する領域には、薄肉部36と同様に、支持板34が除去されて
実質的に弾性膜33のみで構成されるコンプライアンス部37が設けられている。ヘッド
ケース32のコンプライアンス部37に対向する部分には、コンプライアンス部37の変
形を許容する空間である空間部38が形成されている。なお、このコンプライアンス部3
7は、マニホールド18内の圧力変化が生じた時に、このコンプライアンス部37の弾性
膜33が変形することによって圧力変化を吸収し、マニホールド18内の圧力を常に一定
に保持する役割を果たす。
【0031】
また、本実施形態では、振動板15のノズル開口13に相対向する領域にも、第1の薄
肉部36と同様に、支持板34が除去されて弾性膜33のみで構成される第2の薄肉部3
9が設けられている。ヘッドケース32の第2の薄肉部39に対向する部分には、第2の
薄肉部39の変形を許容する空間である開閉部用圧力室40が設けられており、開閉部用
圧力室40には、ヘッドケース32に設けられた連通路41を介して詳しくは後述する圧
力調整手段111を構成する圧力調整手段111が接続されている。このような開閉部用
圧力室40は、本実施形態では、ノズル開口13の並設方向に亘って連続した空間として
設けられている。
【0032】
そして、振動板55のノズル開口13に相対向する領域に設けられた第2の薄肉部39
には、開閉手段100を構成する開閉部101が設けられている。
【0033】
図2に示すように、開閉部101は、例えば、金属や樹脂等の材料からなり、振動板1
5のノズル開口13に相対向する第2の薄肉部39に固定された円錐形状を有する。開閉
部101は、各ノズル開口13の中心にその先端が位置するように底面が振動板15の弾
性膜33に固定されている。このような開閉部101は、ノズル開口13の配置に対応し
て設ける必要があるため、開閉部101は、例えば、ノズルプレート14を用いて形成す
ることができる。開閉部101のノズルプレート14を用いた形成方法としては、例えば
、ノズルプレート14のノズル開口13内に光硬化樹脂を充填し、光硬化樹脂にノズル開
口13の斜め方向から光を照射することで、円錐形状の開閉部101を形成することがで
きる。このように形成した開閉部101をノズル開口13から取り出す前に、シート状の
弾性膜33に接着すれば、開閉部101をノズル開口13と同じ間隔で弾性膜33上に配
置することができる。
【0034】
さらに、振動板15上には、上述したように収容部31を有するヘッドケース32が固
定されており、ヘッドケース32の収容部31内に圧電素子16が高精度に位置決めされ
て固定されている。
【0035】
また、ヘッドケース32には、開閉手段100を構成する移動手段110が設けられて
いる。移動手段110は、開閉部101の設けられた第2の薄肉部39を変形させて、開
閉部101を移動させて、開閉部101によるノズル開口13の開閉を行わせるものであ
る。本実施形態では、移動手段110は、ヘッドケース32の第2の薄肉部39に相対向
する領域に設けられた開閉部用圧力室40と、開閉部用圧力室40内の圧力を調整する圧
力調整手段111と、を具備する。
【0036】
さらに、移動手段110の開閉部用圧力室40と圧力調整手段111とは、ヘッドケー
ス32の開閉部用圧力室40に連通する連通路41と、連通路41に接続された管部材1
12とを介して接続されている。圧力調整手段111は、開閉部用圧力室40を加圧する
ものであり、例えば、開閉部用圧力室40に気体を送風する送風ポンプ等からなる。
【0037】
このような移動手段110では、図2に示すように、圧力調整手段111(図1参照)
が開閉部用圧力室40内に圧力を印加していない状態では、開閉部101がノズル開口1
3側に移動することなく、ノズル開口13を開口する。
【0038】
これに対して、図3に示すように、圧力調整手段111(図1参照)が開閉部用圧力室
40内に圧力を印加すると、振動板15の第2の薄肉部39がノズル開口13側に撓み変
形し、開閉部101によってノズル開口13を閉口する。
【0039】
すなわち、圧力調整手段111によって、開閉部用圧力室40内の圧力を調整すること
で、開閉部101をノズル開口13側に移動せずにノズル開口13を開口することや、開
閉部101をノズル開口13側に移動してノズル開口13を閉口することができる。
【0040】
このように移動手段110が開閉部101によって所望のタイミングでノズル開口13
を閉口することで、非印刷時のノズル開口13近傍のインクの乾燥を抑制して、インクの
乾燥による増粘によって、インク飛翔方向にばらつきが生じ、着弾位置ずれが生じるのを
抑制することができる。
【0041】
また、液体流路であるノズル開口連通路22内に設けた開閉部101によって、ノズル
開口13の吐出面(ノズル開口13が開口するインク滴が吐出される側の面)を移動する
ことなく、ノズル開口13を開閉することができるため、インクジェット式記録ヘッド1
0の吐出面をブレード部材でワイピングして、吐出面に付着したインクを除去することが
できる。これにより、吐出面に付着したインクが固化して、ノズル開口13の開閉を阻害
したり、インク滴の着弾位置がずれるのを抑制することができる。
【0042】
なお、本実施形態では、開閉部用圧力室40をノズル開口13の並設方向に亘って連続
した空間として設けることで、移動手段110が全てのノズル開口13の開閉を同時に行
うようにしたが、特にこれに限定されず、例えば、開閉部用圧力室40を、ノズル開口1
3毎に独立して設けるようにすれば、各ノズル開口13の開閉を独立して行うことができ
る。もちろん、2以上のノズル開口13からなるノズル開口群毎に開閉部用圧力室40を
設けることで、ノズル開口群毎にノズル開口13の開閉を行うことができる。ちなみに、
開閉部用圧力室40をノズル開口13毎又はノズル開口群毎に設けた場合には、圧力調整
手段111を開閉部用圧力室40毎に設けるか、各開閉部用圧力室40と圧力調整手段1
11との間にバルブを設け、バルブの開閉によって各開閉部用圧力室40の圧力調整を独
立して行うようにすればよい。
【0043】
このような記録ヘッド10では、図2に示すように、開閉部101がノズル開口13を
開口した状態で、インク滴が吐出される。具体的には、後述するカートリッジからマニホ
ールド18にインクが供給されると、インク供給路19を介して各圧力発生室11にイン
クが分配される。実際には、圧電素子16に電圧を印加することにより圧電素子16を収
縮させる。これにより、振動板15が圧電素子16と共に変形されて圧力発生室11の容
積が広げられ、圧力発生室11内にインクが引き込まれる。そして、ノズル開口13に至
るまで内部にインクを満たした後、回路基板30を介して供給される記録信号に従い、圧
電素子16の個別内部電極26及び共通内部電極27に印加していた電圧を解除する。こ
れにより、圧電素子16が伸張されて元の状態に戻ると共に振動板15も変位して元の状
態に戻る。結果として圧力発生室11の容積が収縮して圧力発生室11内の圧力が高まり
ノズル開口13からインク滴が吐出される。
【0044】
このような本実施形態の記録ヘッド10は、カートリッジと連通するインク流路を具備
するインクジェット式記録ヘッドユニットの一部を構成して、インクジェット式記録装置
に搭載される。図4は、そのインクジェット式記録装置の一例を示す概略図である。
【0045】
図4に示すように、インクジェット式記録装置Iは、複数の記録ヘッド10を有するイ
ンクジェット式記録ヘッドユニット1(以下、ヘッドユニット1とも言う)を具備する。
ヘッドユニット1は、インク供給手段を構成するカートリッジ2A及び2Bが着脱可能に
設けられ、このヘッドユニット1を搭載したキャリッジ3は、装置本体4に取り付けられ
たキャリッジ軸5に軸方向移動自在に設けられている。このヘッドユニット1は、例えば
、ブラックインク組成物及びカラーインク組成物を吐出するものとしている。
【0046】
そして、駆動モーター6の駆動力が図示しない複数の歯車およびタイミングベルト7を
介してキャリッジ3に伝達されることで、ヘッドユニット1を搭載したキャリッジ3はキ
ャリッジ軸5に沿って移動される。一方、装置本体4にはキャリッジ軸5に沿ってプラテ
ン8が設けられており、図示しない給紙ローラーなどにより給紙された紙等の記録媒体で
ある記録シートSがプラテン8に巻き掛けられて搬送されるようになっている。
【0047】
このようなインクジェット式記録装置Iでは、インクカートリッジ2A、2Bの初期装
着時や交換時、印刷動作中のインクに含まれる気泡などにより、流路内に気泡が残留し、
この気泡が流路内(特に後述する圧力発生室)の圧力変動を吸収してしまうことからイン
ク滴の吐出が正常に行われず、ドット抜け等の印刷不良が発生する虞がある。そのため、
インクジェット式記録装置Iの非印刷領域には、ノズル開口13から液体流路内のインク
と共に気泡を吸引する吸引手段130が設けられている。
【0048】
吸引手段130は、記録ヘッド10のノズル開口13を覆うキャップ部材131と、こ
のキャップ部材131にチューブ132を介して接続された、例えば真空ポンプ等の吸引
装置133とで構成されている。
【0049】
キャップ部材131は、記録ヘッド10のインクが吐出される吐出面に相対向して設け
られている。このキャップ部材131は、複数のノズル開口の全てを覆う大きさではなく
、1個から複数個のノズル開口を選択的に覆う大きさで設けられている。本実施形態では
、キャップ部材131は、ヘッドユニット1の主走査方向の長さよりも短くして、キャリ
ッジ3をキャップ部材131に対して主走査方向に移動させることで、幅狭のキャップ部
材131によって、全てのノズル開口13を順次キャッピングできるようにしている。こ
れにより、キャップ部材131として、全てのノズル開口13を覆う大きさが不要となり
、インクジェット式記録装置Iの小型化を図ることができる。
【0050】
このような構成の吸引手段130では、キャップ部材131を記録ヘッド10の吐出面
に当接し、吸引装置133に吸引動作を行わせることでキャップ部材131の内部を負圧
として、ノズル開口13から液体流路内のインクを気泡と共に吸引して吸引動作を行う。
そして、上述のように、吸引動作を行いながらキャリッジ3を主走査方向に移動させるこ
とで、吸引手段130によって全てのノズル開口13の吸引動作を行うことができる。
【0051】
また、非印刷領域には、記録ヘッド10の吐出面をワイピングするゴム等で形成された
ブレード部材140が設けられている。ブレード部材140は、記録ヘッド10の主走査
方向の移動によりノズルプレート14の吐出面に弾性変形しながら摺接する高さで設けら
れており、記録ヘッド10を主走査方向に移動することで、吐出面をブレード部材140
によってワイピングすることができる。
【0052】
さらに、インクジェット式記録装置Iには、詳しくは後述するが、当該インクジェット
式記録装置Iの動作を制御する制御装置50が設けられている。
【0053】
ここで、このような記録ヘッド10を制御する制御構成について説明する。なお、図5
は、インクジェット式記録ヘッドの制御構成を示すブロック図である。
【0054】
図5に示すように、インクジェット式記録装置Iでは、実際に印刷を行う機構部となる
記録ヘッド10と、記録ヘッド10のノズル開口13からインクを吸引する吸引手段13
0と、記録ヘッド10、開閉手段100及び吸引手段130の動作を制御する制御装置5
0とを具備する。
【0055】
制御装置50は、印刷制御手段51、印刷位置制御手段52、吸引制御手段53及び開
閉制御手段54を有する。
【0056】
印刷制御手段51は、記録ヘッド10の印刷動作を制御し、例えば、印刷信号の入力に
伴って記録ヘッド10に設けられた駆動回路29を介して圧電素子16に駆動パルスを印
加して、記録ヘッド10にインクを吐出させる。
【0057】
印刷位置制御手段52は、記録ヘッド10の印刷時やクリーニング動作時(キャップ部
材131による吸引動作やブレード部材によるワイピング動作)の主走査方向及び副走査
方向の位置決めを行う。詳しくは、印刷位置制御手段52は、駆動モーター6を駆動して
キャリッジ3を主走査方向に移動することで記録ヘッド10の主走査方向の位置決めを行
い、図示しない紙送りモーターを駆動してプラテン8を回転し記録シートSを副走査方向
に移動することで記録シートSに対する記録ヘッド10の副走査方向の位置決めを行って
いる。そして、印刷位置制御手段52は、印刷時には記録ヘッド10が搭載されたキャリ
ッジ3を主走査方向に移動させながら、記録シートSを副走査方向に移動させる。また、
クリーニング動作時には、記録ヘッド10が搭載されたキャリッジ3を非印刷領域に移動
することで、ブレード部材によるワイピングや、非印刷領域に設けられた吸引手段130
による吸引動作等を行わせる。
【0058】
吸引制御手段53は、吸引手段130の吸引動作を制御する。すなわち、吸引制御手段
53は、所定のタイミングで吸引手段130の吸引装置133を動作させて、吸引手段1
30による記録ヘッド10のノズル開口13近傍のインクを吸引する吸引動作を行わせる
。詳しくは、吸引制御手段53は、印刷位置制御手段52を介して記録ヘッド10をキャ
ップ部材131に相対向する位置に移動し、記録ヘッド10をキャップ部材131でキャ
ッピングさせて吸引装置133を駆動することで吸引動作を行わせる。
【0059】
また、本実施形態では、キャップ部材131は、複数のノズル開口21の全てを覆う大
きさではなく、1個から複数個のノズル開口13を選択的に覆う大きさで設けられている
。したがって、吸引動作時には、キャップ部材131と記録ヘッド10とをノズル開口1
3の並設された方向に相対的に移動させながら行う。記録ヘッド10(キャリッジ3)を
主走査方向に移動することで、キャップ部材131に対して相対移動させる。このような
方法によれば、キャップ部材131のキャッピング面積を小さくすることができるため、
キャップ部材131を小型化することができ、インクジェット式記録装置Iを小型化する
ことができる。
【0060】
開閉制御手段54は、記録ヘッド10からインクが吐出されるタイミング、すなわち、
印刷制御手段51から印刷信号が出力されるタイミングに合わせて、開閉手段100の圧
力調整手段111の駆動を停止して、開閉部用圧力室40内を大気開放することで、開閉
部101をノズル開口13から離反させて、ノズル開口13を開口する(図2参照)。ま
た、開閉制御手段54は、印刷が行われない時、すなわち、印刷制御手段51から印刷信
号が出力されない時には、圧力調整手段111を駆動することで、開閉部用圧力室40内
を加圧して、開閉部101でノズル開口13を液体流路側から閉口する(図3参照)。
【0061】
ちなみに、開閉部101によってノズル開口13を開口する際には、圧力調整手段11
1を停止して開閉部用圧力室40を大気開放するだけではなく、開閉部用圧力室40を負
圧とするように内部の気体を吸引するようにすれば、開閉部101によるノズル開口13
の開口を短時間で且つ確実に行わせることができる。
【0062】
以上説明したように、本実施形態では、ノズル開口13を記録ヘッド10に設けられた
開閉手段100によって開閉するようにしたため、キャップ部材131によってノズル開
口13を覆わなくても、ノズル開口13近傍のインクの乾燥を抑制して、乾燥したインク
による目詰まり等のインク吐出不良を抑制することができる。また、キャップ部材131
として、全てのノズル開口13を覆わない小型のものを用いることができ、また、キャッ
プ部材131とは別に、全てのノズル開口13を覆う保護キャップも不要となるため、イ
ンクジェット式記録装置Iを小型化することができる。
【0063】
さらに、従来のようにキャップ部材131や保護キャップ等を用いることなく、記録ヘ
ッド10に設けられた開閉手段100によってノズル開口13を開閉することができるた
め、インクを吐出させずにキャリッジ3を移動している際など所望のタイミングでノズル
開口13を開閉することができる。ちなみに、キャップ部材131や保護キャップ等でノ
ズル開口13を覆って閉口する場合、キャップ部材131や保護キャップは非印刷領域に
設けられているため、キャリッジ3を非印刷領域まで移動しなくてはならないが、本実施
形態の開閉手段100によれば、キャリッジ3の移動中であっても、ノズル開口13を閉
口することができるため、ノズル開口13の保護を確実に行うことができると共にキャッ
プ部材131等に比べて、インクの乾燥をさらに効果的に抑制することができる。
【0064】
なお、本実施形態では、インクを吐出しないときに開閉手段100によってノズル開口
13を閉口し、インクを吐出する際に開閉手段100がノズル開口13を開口するように
したが、この開閉手段100によるノズル開口13の開閉に連動させて、ノズル開口13
のインクのメニスカスを圧力発生室11側に引き込むようにしてもよい。このような例を
図6に示す。なお、図6は、本発明の実施形態1に係るインクジェット式記録ヘッドの変
形例を示す要部を拡大した断面図である。
【0065】
図6(a)に示すように、インクを吐出している状態、すなわち、開閉手段100がノ
ズル開口13を開口した状態では、インクのメニスカスAは、ノズル開口13の吐出面側
に存在している。
【0066】
そして、開閉手段100によってノズル開口13を閉口する際には、圧電素子16を駆
動させて、圧力発生室11内の圧力を負圧にする。これにより、図6(b)に示すように
、ノズル開口13のインクのメニスカスAが、圧力発生室11側に後退する。このように
ノズル開口13のインクのメニスカスAを後退させた後に、図6(c)に示すように、開
閉手段100(開閉部101)によってノズル開口13を閉口する。また、インクを吐出
する際には、開閉手段100がノズル開口13を開口した後、ノズル開口13のインクの
メニスカスAを図6(a)に示す位置まで戻してからインクの吐出を行わせればよい。
【0067】
このように、開閉手段100によってノズル開口13を閉口する際に、ノズル開口13
のインクのメニスカスAを圧力発生室11側に後退させることで、開閉部101がノズル
開口13を閉口した際に、開閉部101とノズル開口13との間に残留するインク量を低
減することができる。ちなみに、メニスカスAを後退させずに、開閉部101によってノ
ズル開口13を閉口すると、ノズル開口13内のインクが開閉部101によって吐出面側
に押し出され、外部にさらされることで、乾燥・増粘が生じる虞がある。本実施形態では
、ノズル開口13を閉口する際に、メニスカスAを圧力発生室11内に後退させることで
、開閉部101とノズル開口13との間に残留して、外部にさらされるインクを低減し、
残留したインクの乾燥・増粘によって、インク吐出時にインクの着弾位置ずれ等が発生す
るのを低減することができる。
【0068】
なお、このようなノズル開口13のインクのメニスカスAの移動は、開閉制御手段54
が、印刷制御手段51を制御して圧電素子16を駆動させることで行うことができる。
【0069】
(実施形態2)
図7は、本発明の実施形態2に係る液体噴射ヘッドの一例であるインクジェット式記録
ヘッドの断面図であり、図8は、実施形態2に係るインクジェット式記録ヘッドの動作を
示す要部拡大断面図である。なお、上述した実施形態1と同様の部材には同一の符号を付
して重複する説明は省略する。
【0070】
図示するように、本実施形態のインクジェット式記録ヘッド10A(以下、記録ヘッド
10Aとも言う)には、開閉手段100Aとして、開閉部101Aと、移動手段110A
と、を具備する。
【0071】
開閉部101Aは、図8(a)に示すように、振動板15(第2の薄肉部39)が変形
していない状態では、ノズル開口13を閉口する大きさで設けられている。
【0072】
移動手段110Aは、開閉部用圧力室40と、圧力調整手段111Aと、開閉部用圧力
室40と圧力発生手段111Aとを連通する連通路41及び管部材112と、を具備する

【0073】
圧力調整手段111Aは、開閉部用圧力室40の気体を吸引する、例えば、真空ポンプ
等からなり、図8(b)に示すように、圧力調整手段111Aが開閉部用圧力室40内の
気体を吸引することで、開閉部用圧力室40内を負圧にする。このように開閉部用圧力室
40を負圧にすることで、第2の薄肉部39を変形させて、開閉部101Aをノズル開口
13から離反させ、ノズル開口13を開口することができる。
【0074】
このような構成では、インクジェット式記録装置Iの電源が切断された状態であっても
、図8(a)に示すように、ノズル開口13を開閉部101Aによって閉口することがで
きるため、電源が切断された状態のノズル開口13近傍のインクの乾燥を抑制することが
できる。
【0075】
(実施形態3)
図9は、本発明の実施形態3に係る液体噴射ヘッドの一例であるインクジェット式記録
ヘッドの断面図であり、図10は、実施形態3に係るインクジェット式記録ヘッドの動作
を示す要部拡大断面図である。なお、上述した実施形態と同様の部材には同一の符号を付
して重複する説明は省略する。
【0076】
図9に示すように、本実施形態の記録ヘッド10Bの開閉手段100Bは、開閉部10
1Aと、移動手段110Bと、を具備する。
【0077】
移動手段110Bは、開閉部用圧力室40と、送風ポンプ等からなる圧力調整手段11
1と、連通路41と、管部材112と、開閉部用圧力室40と外部とを連通する外部連通
孔42と、を具備する。
【0078】
このような移動手段110Bでは、図10に示すように、圧力調整手段111によって
開閉部用圧力室40内に気体を送風すると、開閉部用圧力室40に送風された気体は、外
部連通孔42を介して外部に排出される。このとき、第2の薄肉部39は、ベルヌーイの
定理によって負圧となり、第2の薄肉部39は、開閉部用圧力室40内に引き込まれ、開
閉部101Aがノズル開口13から離反されてノズル開口13が開口する。
【0079】
また、ノズル開口13を閉口する際には、圧力調整手段111による送風を停止するこ
とで、開閉部101はノズル開口13を閉口する。
【0080】
(実施形態4)
図11は、本発明の実施形態4に係る液体噴射ヘッドの一例であるインクジェット式記
録ヘッドの断面図であり、図12は、実施形態4のインクジェット式記録ヘッドの動作を
示す要部拡大断面図である。なお、上述した実施形態と同様の部材には同一の符号を付し
て重複する説明は省略する。
【0081】
図11に示すように、実施形態の記録ヘッド10Cには、開閉手段100Cが設けられ
、開閉手段100Cは、開閉部101Aと、移動手段110Cと、を具備する。
【0082】
移動手段110Cは、第2の薄肉部39に設けられた磁性材料からなる吸着板113と
、吸着板113を電磁力で吸着する電磁石114と、を具備する。
【0083】
吸着板113は、振動板15の第2の薄肉部39のヘッドケース32側に設けられた鉄
等の磁性材料からなる。
【0084】
また、電磁石114は、ヘッドケース32の開閉部用圧力室40Aの吸着板113に相
対向する位置に、吸着板113と離反した位置に設けられたものである。
【0085】
そして、図12に示すように、電磁石114の電磁力によって吸着板113を吸着する
ことで、開閉部101Aをノズル開口13から離反して、ノズル開口13を開口する。
【0086】
また、インクを吐出しない時には、電磁石114による吸着板113の吸着を解除する
ことで、図11に示すように、開閉部101Aはノズル開口13を閉口する。
【0087】
すなわち、本実施形態では、開閉部101Aを移動させる移動手段として、吸着板11
3と電磁石114とを設けるようにしたものである。なお、記録ヘッド10Cに上述した
実施形態1の開閉部101を設けた場合には、電磁石114の電磁力によって、吸着板1
13が電磁石114と反発するように、吸着板113として永久磁石や電磁石等を設ける
ようにすればよい。
【0088】
(他の実施形態)
以上、本発明の各実施形態について説明したが、本発明の基本的構成は上述したものに
限定されるものではない。
【0089】
また、上述した各実施形態では、流路(圧力発生室11)に圧力変化を生じさせる圧力
発生手段として、圧電体層25と個別内部電極26及び共通内部電極27と交互に積層さ
せて軸方向に伸縮させる縦振動型の圧電素子16を例示したが、圧力発生手段は、特にこ
れに限定されるものではなく、圧電体層25と個別内部電極26及び共通内部電極27と
を交互に積層させて積層方向の一端部を島部に当接させる横振動型の圧電素子を用いるよ
うにしてもよい。
【0090】
また、圧力発生手段としては、例えば、下電極、圧電材料からなる圧電体層及び上電極
を成膜及びリソグラフィー法によって形成した薄膜型の圧電素子を用いてもよく、また、
グリーンシートを貼付する等の方法により形成される厚膜型の圧電素子を使用することも
できる。また、圧力発生手段として、圧力発生室内に発熱素子を配置して、発熱素子の発
熱で発生するバブルによってノズル開口から液滴を吐出するものや、振動板と電極との間
に静電気を発生させて、静電気力によって振動板を変形させてノズル開口から液滴を吐出
させるものなども使用することができる。
【0091】
また、上述したインクジェット式記録装置Iでは、複数の記録ヘッド10を有するヘッ
ドユニット1がキャリッジ3に搭載されて主走査方向に移動するものを例示したが、特に
これに限定されず、例えば、記録ヘッド10が固定されて、紙等の記録シートSを副走査
方向に移動させるだけで印刷を行う、所謂ライン式記録装置にも本発明を適用することが
できる。
【0092】
また、上述した例では、複数の記録ヘッド10を有するヘッドユニット1をインクジェ
ット式記録装置Iに搭載するようにしたが、ヘッドユニット1には、それぞれ1つの記録
ヘッド10が搭載されていてもよく、また、単数又は複数の記録ヘッド10が直接インク
ジェット式記録装置Iに搭載されていてもよい。
【0093】
なお、上述した実施形態においては、液体噴射ヘッドの一例としてインクジェット式記
録ヘッドを挙げて説明したが、本発明は、広く液体噴射ヘッド全般を対象としたものであ
り、インク以外の液体を噴射する液体噴射ヘッドにも勿論適用することができる。その他
の液体噴射ヘッドとしては、例えば、プリンター等の画像記録装置に用いられる各種の記
録ヘッド、液晶ディスプレイ等のカラーフィルターの製造に用いられる色材噴射ヘッド、
有機ELディスプレイ、FED(電界放出ディスプレイ)等の電極形成に用いられる電極
材料噴射ヘッド、バイオchip製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド等が挙げられる

【符号の説明】
【0094】
I インクジェット式記録装置(液体噴射装置)、 1 インクジェット式記録ヘッド
ユニット(液体噴射ヘッドユニット)、 10、10A、10B、10C インクジェッ
ト式記録ヘッド(液体噴射ヘッド)、 11 圧力発生室、 12 流路形成基板、 1
3 ノズル開口、 16 圧電素子(圧力発生手段)、 30 回路基板、 50 制御
装置、 54 開閉制御手段、 100、100A、100B、100C 開閉手段、
101、101A 開閉部、 110、110A、110B、110C 移動手段、11
1、111A 圧力調整手段、 113 吸着板、 114 電磁石

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を噴射するノズル開口と、
該ノズル開口に連通する液体流路内に圧力変化を生じさせて、前記ノズル開口から液体
を噴射させる圧力発生手段と、
前記液体流路内に設けられて、前記ノズル開口を前記液体流路内で開閉する開閉手段と
、を具備することを特徴とする液体噴射ヘッド。
【請求項2】
前記開閉手段は、開閉制御手段によって制御されると共に、前記開閉制御手段は、前記
ノズル開口から液体を噴射するときは、前記開閉手段によって前記ノズル開口を開口し、
且つ前記ノズル開口から液体を噴射しないときは、前記開閉手段によって前記ノズル開口
を閉口するように制御することを特徴とする請求項1記載の液体噴射ヘッド。
【請求項3】
前記圧力発生手段が、前記液体流路を画成する振動板を変位させるものであると共に、
前記開閉手段が、前記振動板が前記ノズル開口に相対向する領域まで延設されて前記圧力
発生手段の駆動により振動しない領域に設けられた開閉部と、該開閉部が設けられた領域
の振動板を変形させる移動手段と、を具備することを特徴とする請求項1又は2記載の液
体噴射ヘッド。
【請求項4】
前記開閉部は、前記ノズル開口に向かって頂点が設けられた円錐形状を有することを特
徴とする請求項3記載の液体噴射ヘッド。
【請求項5】
前記移動手段が、前記振動板の前記開閉部とは反対側に設けられた開閉部用圧力室と、
該開閉部用圧力室内の圧力を調整する圧力調整手段と、を具備することを特徴とする請求
項3又は4記載の液体噴射ヘッド。
【請求項6】
前記移動手段が、前記開閉部が設けられた前記振動板上に設けられた磁性材料からなる
吸着板と、前記振動板の前記開閉部とは反対側に設けられた電磁石と、を具備することを
特徴とする請求項3又は4記載の液体噴射ヘッド。
【請求項7】
請求項1〜6の何れか一項に記載の液体噴射ヘッドを複数具備することを特徴とする液
体噴射ヘッドユニット。
【請求項8】
請求項7記載の液体噴射ヘッドユニットを具備することを特徴とする液体噴射装置。
【請求項9】
請求項1〜6の何れか一項に記載の液体噴射ヘッドを具備することを特徴とする液体噴
射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−201225(P2011−201225A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−72427(P2010−72427)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】