説明

液体噴射ヘッド、液体噴射装置及び液体噴射ヘッドの製造方法

【課題】液体噴射ヘッドの外形形状を小型化し、かつ電極のパターニングを容易にする。
【解決手段】液体噴射ヘッド1は、液体を吐出するためのノズル3を有するノズルプレート4と、その上方に設置され、長手方向の深さが一定である溝5を構成する側壁6と、側壁6の壁面に形成され、側壁6を選択的に変形させる駆動電極7と、側壁6の上面USに設置され、溝5に液体を供給する供給口8と溝5から液体を排出する排出口9とを備えるカバープレート10と、溝5と供給口8の間、及び溝5と排出口9の間の各連通部よりも外側の溝5を閉止する封止材とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノズルから液体を吐出して被記録媒体に画像や文字、あるいは薄膜材料を形成する液体噴射ヘッド、これを用いた液体噴射装置、及び液体噴射ヘッドの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、記録紙等にインク滴を吐出して文字、図形を描画する、或いは素子基板の表面に液体材料を吐出して機能性薄膜を形成するインクジェット方式の液体噴射ヘッドが利用されている。この方式は、インクや液体材料を液体タンクから供給管を介して液体噴射ヘッドに供給し、チャンネルに充填したインクや液体材料をチャンネルに連通するノズルから吐出させる。インクの吐出の際には、液体噴射ヘッドや噴射した液体を記録する被記録媒体を移動させて、文字や図形を記録する、或いは所定形状の機能性薄膜を形成する。
【0003】
特許文献1には、圧電体材料から成るシートに多数の溝からなるインクチャンネルを形成したインクジェットヘッド100が記載されている。図16は特許文献1の図1に記載されるインクジェットヘッド100の断面図である。インクジェットヘッド100は、カバー125と圧電体から成るPZTシート103と底カバー137の3層構造を備える。カバー125はインクの小滴を吐出するためのノズル127を備える。PZTシート103の上面には断面形状が船型形状のインクチャンネル107が形成される。インクチャンネル107は長手方向に直交する方向に並列して複数形成され、隣接するインクチャンネルとの間は側壁113により区画される。側壁113の上側壁面には電極115が形成される。隣接するインクチャンネルの側壁面にも電極が形成される。つまり、側壁113は隣接するインクチャンネルの側壁面に形成した図示しない電極により挟まれている。
【0004】
インクチャンネル107とノズル127とは連通する。PZTシート103には底側に供給ダクト132と排出ダクト133が形成され、インクチャンネル107とその両端部付近において連通する。供給ダクト132からインクが供給され、排出ダクト133からインクが排出される。インクチャンネル107の左端部及び右端部のPZTシート103の表面には凹部129が形成される。凹部129の底面には図示しない電極が形成され、インクチャンネル107の側壁面に形成される電極115と電気的に導通する。凹部129には接続端子134が収納され、凹部129の底面に形成した電極と電気的に接続する。
【0005】
このインクジェットヘッド100は、次のように動作する。接続端子134から駆動信号が与えられると、側壁113を挟む電極115に駆動信号が印加される。すると、側壁113は厚み滑り変形してインクチャンネル107の容積を変化させる。これにより、インクチャンネル107に充填されたインクに圧力変動が与えられてノズル127からインクの小滴が吐出される。この種のインクジェットヘッドをサイドシュート型でスルーフロータイプという。インクチャンネル107内のインクは供給ダクト132から供給され排出ダクト133から排出して循環する。そのために、インクチャンネルに気泡が混入しても短時間で排出でき、キャップ構造やサービスステーションを用いずにメンテナンスを実施することができる。
【0006】
特許文献2には、上記インクジェットヘッドとは構造が異なるインクジェットヘッドが記載される。図17は特許文献2に記載さるインクジェットヘッドの部分斜視図である。インクジェットヘッドは、下部側に仕切により分離された2つの前置チャンバー931、941と、ベースプレート900により仕切られた上部側に2つのプレナムチャンバー980’、980’’と、2つのプレナムチャンバー980’、980’’を分離する圧電体から成る台形状のPZTブロック110と、その上部を閉塞し、複数のノズル994が形成されたプレート991を備える。前置チャンバー931には流入マニホールド930が設置され、ベースプレート900に形成したポート972を介してプレナムチャンバー980’にインクを供給することができる。前置チャンバー941には排出マニホールド940が設置され、ベースプレート900に形成したポートからインクを排出する。そして、プレナムチャンバー980’に流入したインクは台形状のPZTブロック110の間隙を通してプレナムチャンバー980’’に流れる。
【0007】
各PZTブロック110の両側面には駆動電極が形成されている。PZTブロック110の上面と傾斜面には、この駆動電極に接続し互いに電気的に分離した2つの引出電極が形成されている(特許文献1の図7を参照)。ベースプレート900の上面には多数の導電性トラックが形成され、上記引出電極に電気的に接続する(特許文献1の図14、図15を参照)。駆動信号を導電性トラック、引出電極を介して駆動電極に与えることによりPZTブロック110に滑り変形を生じさせ、PZTブロック110間のチャンバーに充填されたインクに圧力波を生じさせてノズル994からインクを吐出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第4658324号公報
【特許文献2】特許第4263742号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
近年、インクジェットヘッドは小型化が求められているが、特許文献1に記載されるインクジェットヘッドは小型化に限界がある。特許文献1のインクジェットヘッド100はインクチャンネル107が底側に凸の船型形状を有している。これは、PZTシート103の表面にインクチャンネル107の溝を形成する際に円盤状のダイシングブレード(ダイヤモンドホイールともいう。)を用いるので、溝の端部にダイシングブレードの外形形状が残ってしまうためである。例えば直径4インチのダイシングブレードを用いて深さ350μmのインクチャンネル107を形成する場合に、ダイシングブレードの円弧形状が転写されるPZTシート103上の合計長さは約12mmとなる。つまり、インクチャンネル107を形成する際に、インクチャンネル107のチャンネル長の他にその両端部に合計長さが約12mmの底が円弧形状のデッドスペースを確保しなければならない。直径2インチのダイシングブレードを用いた場合でもインクチャンネル107の両端部に合計長さが約8.3mmのデッドスペースが必要となる。そのために、インクジェットヘッド100を小型に形成することができず、加えてPZT基板をPZTシート103に分割する際の取り個数も少なくなりコストアップとなった。
【0010】
特許文献2に記載されるインクジェットヘッドはインクチャンネルを構成するPZTブロック110をベースプレート900に積み上げて構成する。そのため、特許文献1のインクジェットヘッドのようなインクチャンネルを形成するためのデッドスペースを確保する必要がない。しかし、特許文献2に記載されるインクジェットヘッドでは、PZTブロック110の上面や傾斜面、またベースプレート900の上面に電気的に分離する多数の導電性トラックを形成しなければならず、電極のパターニングが複雑で加工に長時間要した。
【0011】
即ち、台形状のPZTブロック110の上面とベースプレート900の上面との間には例えば約300μm以上の高低差が存在する。そのため、これらの表面に堆積した導電層をフォトリソグラフィー及びエッチング工程により一括パターニングして電極に分離することが困難である。そこで、PZTブロック110の上面及び傾斜面に堆積した導電層にレーザー光を照射して導電体を局所的に気化して除去する方法により電極のパターニングを行っている。しかし、形成する電極数は数百本以上であることから電極のパターニングに多大の時間を要する。
【0012】
また、特許文献1のインクチャンネル107はその両端部にダイシングブレードの外形形状が残り、インクチャンネル107の下部に形成される供給ダクト132や排出ダクト133との間にインクの流れが淀む滞留領域が形成される。同様に特許文献2のインクジェットヘッドは、その前置チャンバー931内において流入マニホールド930から流入したインクはポート972に流れるが、流入マニホールド930は多孔質材料で作られているので前置チャンバー931内にインクが充満する。そのため、前置チャンバー931の底面や上面角部にインクの流れが淀む滞留領域が形成され、インクに混入した気泡や異物が流路内に残留し、これがノズル994の吐出不良を起こす原因となる。
【0013】
本発明は、上記従来法の課題に鑑みてなされたものであり、上記デッドスペースをなくして液体噴射ヘッドをコンパクトに構成でき、しかも電極のパターニングが容易な液体噴射ヘッドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の液体噴射ヘッドは、液体を吐出するためのノズルを有するノズルプレートと、前記ノズルプレートの上方に設置され、長手方向の深さが一定である溝を構成する側壁と、前記側壁の壁面に形成される駆動電極と、前記側壁の上面に設置され、前記溝に液体を供給する供給口と前記溝から液体を排出する排出口とを備えるカバープレートと、前記溝と前記供給口の間、及び前記溝と前記排出口の間の各連通部よりも外側の溝を閉止する封止材と、を備えることとした。
【0015】
また、前記カバープレートは前記側壁の長手方向の端部上面を露出させて前記側壁の上面に設置され、前記端部上面に前記駆動電極に電気的に接続する引出電極が形成されることとした。
【0016】
また、表面に配線電極のパターンを有するフレキシブル基板を更に備え、前記フレキシブル基板は前記端部上面に接合され、前記配線電極は前記引出電極に電気的に接続されることとした。
【0017】
また、前記溝は液体吐出用の吐出溝と液体を吐出しないダミー溝を含み、前記供給口と前記排出口は前記吐出溝に連通し、前記吐出溝と前記ダミー溝は交互に並列に設置されることとした。
【0018】
また、前記供給口と前記排出口は、前記吐出溝に対して開口し前記ダミー溝に対して閉止することとした。
【0019】
また、前記ノズルプレートと前記側壁との間に設置される補強板を更に備え、前記補強板は、前記ノズルに連通する貫通孔を有することとした。
【0020】
また、前記側壁は互いに逆方向に分極された圧電体が積層された積層構造を有することとした。
【0021】
また、前記カバープレートは前記側壁の長手方向における端部上面を露出させて前記側壁の上面に設置され、前記端部上面には前記駆動電極に電気的に接続する引出電極が設置され、前記溝は液体吐出用の吐出溝と液体を吐出しないダミー溝を含み、前記供給口と前記排出口は前記吐出溝に連通し、前記吐出溝と前記ダミー溝が交互に並列に設置され、前記引出電極は、前記吐出溝を構成する2つの側壁の吐出溝側の壁面に形成される前記駆動電極に電気的に接続する共通引出電極と、前記2つの側壁のダミー溝側の壁面に形成される駆動電極に電気的に接続する個別引出電極を含み、前記個別引出電極は前記2つの側壁の前記端部上面の端部側に設置され、前記共通引出電極は前記2つの側壁の前記端部上面の前記カバープレート側に設置されることとした。
【0022】
また、前記駆動電極は前記側壁の長手方向における端部まで延在し、前記吐出溝側の壁面に形成される前記駆動電極は、前記側壁の前記端部の側において上端が前記端部上面よりも溝の深さ方向に深く形成され、前記ダミー溝側の壁面に形成される前記駆動電極は、前記側壁の前記端部よりも前記カバープレート側において上端が前記端部上面よりも溝の深さ方向に深く形成されることとした。
【0023】
また、前記側壁の吐出溝側の壁面と前記端部上面との間の角部が前記側壁の前記端部の側において面取りされ、前記側壁のダミー溝側の壁面と前記端部上面との間の角部が前記側壁の前記端部よりもカバープレート側において面取りされることとした。
【0024】
また、外周側に形成される共通配線電極と前記共通配線電極よりも内側に形成される個別配線電極とを有するフレキシブル基板を更に備え、前記フレキシブル基板は前記端部上面に接合され、前記共通配線電極は前記共通引出電極に電気的に接続し、前記個別配線電極は前記個別引出電極に電気的に接続することとした。
【0025】
本発明の液体噴射装置は、上記いずれか一に記載の液体噴射ヘッドと、前記液体噴射ヘッドを往復移動させる移動機構と、前記液体噴射ヘッドに液体を供給する液体供給管と、前記液体供給管に前記液体を供給する液体タンクと、を備えることとした。
【0026】
本発明の液体噴射ヘッドの製造方法は、圧電体材料を含む基板の表面に側壁により構成される溝を形成する溝形成工程と、前記基板に導電体を堆積して導電膜を形成する導電膜形成工程と、前記導電膜をパターニングして電極を形成する電極形成工程と、前記基板の表面にカバープレートを接合するカバープレート接合工程と、前記基板の表面とは反対側の裏面を研削し、前記溝を裏面側に開口させる研削工程と、前記基板の裏面側にノズルプレートを接合するノズルプレート接合工程と、を備えることとした。
【0027】
また、前記カバープレートは、前記溝に液体を供給する供給口と前記溝から液体を排出する排出口を有し、前記供給口と前記排出口の間の位置の前記ノズルプレートに液体を吐出するためのノズルを形成するノズル形成工程を備えることとした。
【0028】
また、前記溝と前記供給口の間、及び前記溝と前記排出口の間の各連通部よりも外側の溝に封止材を設置する封止材設置工程を備えることとした。
【0029】
また、前記研削工程の後に、前記基板の裏面側に補強板を接合する補強板接合工程を備えることとした。
【0030】
また、前記電極形成工程は、前記導電膜形成工程の前に前記基板の表面に樹脂膜から成るパターンを形成し、前記導電膜形成工程の後に前記樹脂膜を除去するリフトオフ法により前記電極を形成する工程からなることとした。
【0031】
また、前記電極形成工程は、前記側壁の壁面に駆動電極を形成するとともに、前記側壁の長手方向の端部上面に前記駆動電極と電気的に接続する引出電極を形成する工程からなることとした。
【0032】
また、表面に配線電極を形成したフレキシブル基板を前記端部上面に接合し、前記配線電極と前記引出電極とを電気的に接続するフレキシブル基板接合工程を備えることとした。
【0033】
また、前記溝形成工程は、液体を吐出するための吐出溝と液体を吐出しないダミー溝を交互に並列に形成する工程であり、前記引出電極は、前記吐出溝に形成した前記駆動電極に電気的に接続する個別引出電極と前記ダミー溝に形成した前記駆動電極に電気的に接続する共通引出電極を含み、前記電極形成工程は、前記個別引出電極を前記吐出溝を構成する2つの側壁の前記端部上面の端部側に形成し、前記共通引出電極を前記端部上面の前記個別引出電極よりも内部側に形成する工程であることとした。
【0034】
また、前記吐出溝を構成する2つの側壁の壁面と上面の端部側の角部と、前記ダミー溝を構成する2つの側壁の壁面と上面の前記端部側の角部よりも内部側の角部とを面取りする面取り工程を備えることとした。
【発明の効果】
【0035】
本発明の液体噴射ヘッドは、液体を吐出するためのノズルを有するノズルプレートと、ノズルプレートの上方に設置され、長手方向の深さが一定である溝を構成する側壁と、側壁の壁面に形成される駆動電極と、側壁の上面に設置され、溝に液体を供給する供給口と溝から液体を排出する排出口とを備えるカバープレートと、溝と供給口の間、及び溝と排出口の間の各連通部よりも外側の溝を閉止する封止材と、を備える。このように溝形成の際のダイシングブレードの外形形状が残ることがなく、液体噴射ヘッドの溝の長手方向の幅を狭く形成することができる。また、高低差のある表面に電極パターンを形成する必要がないので、液体噴射ヘッドの製造が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の第一実施形態に係る液体噴射ヘッドの模式的な分解斜視図である。
【図2】本発明の第一実施形態に係る液体噴射ヘッドの部分AAの模式的な縦断面図である。
【図3】本発明の第一実施形態に係る液体噴射ヘッドの部分BBの模式的な縦断面図である。
【図4】本発明の第二実施形態に係る液体噴射ヘッドの模式的な部分斜視図である。
【図5】本発明の第二実施形態に係る液体噴射ヘッドの引出電極と配線電極の接続状態を表す模式的な部分上面図である。
【図6】本発明の第三実施形態に係る液体噴射ヘッドの模式的な縦断面図である。
【図7】本発明の第四実施形態に係る液体噴射ヘッドの供給口の長手方向における縦断面に電極配線を付加した説明図である。
【図8】本発明の第五実施形態に係る液体噴射ヘッドの供給口の長手方向における模式的な縦断面図である。
【図9】本発明の第六実施形態に係る液体噴射ヘッドの模式的な斜視図である。
【図10】本発明の第七実施形態に係る液体噴射装置の模式的な斜視図である。
【図11】本発明の液体噴射ヘッドの基本的な製造方法を表す工程図である。
【図12】本発明の第八実施形態に係る液体噴射ヘッドの製造方法を表す工程図である。
【図13】本発明の第八実施形態に係る液体噴射ヘッドの製造方法を表す説明図である。
【図14】本発明の第八実施形態に係る液体噴射ヘッドの製造方法を表す説明図である。
【図15】本発明の第八実施形態に係る液体噴射ヘッドの製造方法を表す説明図である。
【図16】従来から公知のインクジェットヘッドの断面図である。
【図17】従来から公知のインクジェットヘッドの部分斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
<液体噴射ヘッド>
(第一実施形態)
図1は、本発明の第一実施形態に係る液体噴射ヘッドの模式的な分解斜視図であり、図2は部分AAの模式的な縦断面図であり、図3は部分BBの模式的な縦断面図である。なお、図2では側壁6の端部上面EJに接合したフレキシブル基板20を追加記載している。また、図1のAA線は、後に説明するスリット25a及び25bの上部に位置している。
【0038】
液体噴射ヘッド1は、ノズルプレート4と、並列に設置した複数の側壁6と、カバープレート10を積層した積層構造を備える。ノズルプレート4は液体を吐出するためのノズル3を備える。複数の側壁6は、ノズルプレート4の上方に設置され、長手方向の深さが一定の複数の溝5を構成する。各側壁6は全部又は一部が圧電材料、例えばチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)からなる圧電性セラミックスから成る。圧電性セラミックスは例えば上下方向に分極処理が施される。各側壁6の壁面WSには、側壁6の圧電材料に電界を印加して選択的に変形させるための駆動電極7が形成される。カバープレート10は、複数の側壁6の上面USに設置され、複数の溝5に液体を供給する供給口8と溝5から液体を排出する排出口9を備える。カバープレート10は、複数の側壁6の長手方向における端部上面EJを露出させて側壁6の上面USに設置される。
【0039】
複数の溝5は液体が充填される吐出溝5aと液体が充填されないダミー溝5bを含む。吐出溝5aとダミー溝5bは交互に配列する。供給口8と排出口9にはスリット25a、25bがそれぞれ形成される。供給口8と吐出溝5aはスリット25aを介して、吐出溝5aと排出口9はスリット25bを介してそれぞれ連通する。ダミー溝5bに対して供給口8と排出口9は閉止される。更に、吐出溝5aと供給口8の間、及び吐出溝5aと排出口9の間の各連通部よりも外側の吐出溝5aを封止する封止材11が設置される。従って、供給口8に供給された液体は、スリット25aを介して吐出溝5aに供給され、更に、スリット25bを介して排出口9に排出され、外部に漏えいしない。一方、ダミー溝5bは供給口8及び排出口9に対して閉止されるので液体が充填されない。ノズル3は供給口8と排出口9のほぼ中央に位置し、吐出溝5aに連通する。ノズル3は、ダミー溝5bに対応するように形成されても形成されなくてもどちらでも構わない。本実施形態では加工数の減少のためにダミー溝5bに対応してノズル3が形成されていない形態を示す。
【0040】
駆動電極7は、側壁6の壁面WSの上半分であり、側壁6の長手方向における端部まで延設される。各側壁6の端部上面EJには引出電極16が形成される。引出電極16は、吐出溝5aを構成する2つの側壁6の吐出溝5a側の壁面WSに形成される駆動電極7に電気的に接続する共通引出電極16bと、2つの側壁6のダミー溝5b側の壁面WSに形成される駆動電極7に電気的に接続する個別引出電極16aとを含む。個別引出電極16aは2つの側壁6の端部上面EJの端部側に設置され、共通引出電極16bは2つの側壁6の端部上面EJのカバープレート10側に設置される。
【0041】
図2に示すように、側壁6の端部上面EJにフレキシブル基板20が接合される。フレキシブル基板20の下側の表面には配線電極21が形成され図示しない駆動回路に接続する。配線電極21は、共通引出電極16bに電気的に接続する共通配線電極21bと、個別引出電極16aに電気的に接続する個別配線電極21aとを含む。フレキシブル基板20の配線電極21は接合面以外の表面に保護膜26が形成され、短絡等の発生を防止する。
【0042】
この液体噴射ヘッド1は次のように動作する。図示しない液体タンク等から供給口8にインク等の液体が供給される。供給された液体はスリット25aを介して吐出溝5aに流入し、スリット25bを介して排出口9に流出し、図示しない液体タンク等へ排出される。そして、個別配線電極21aと共通配線電極21bとに駆動信号が与えられ、側壁6を挟む駆動電極7の一方と他方で電位差ができると、側壁6は厚み滑り変形し、吐出溝5aの容積が瞬間的に変化して内部に充填された液体に圧力が印加され、ノズル3から液滴が吐出される。例えば、引き打ち法では、吐出溝5aの容積を一旦拡張させて供給口8から液体を引き込み、次に吐出溝5aの容積を縮小させてノズル3から液体を吐出する。液体噴射ヘッド1とその下部の被記録媒体を移動させて被記録媒体に液滴を描画して記録する。
【0043】
本発明は、側壁6の間に形成される溝5の長手方向の深さを一定とし、供給口8及び排出口9との間の連通部よりも外側の吐出溝5aを封止材11により閉止する構造とした。図2に示すように、封止材11は、吐出溝5aを塞ぐとともに、スリット25aおよび25bにかかるまで形成されている。その結果、溝5の研削の際に使用したダイシングブレードの外形形状が圧電体や基板に残ってデッドスペースとなることを防止することができ、液体噴射ヘッド1の溝5の長手方向の幅を大幅に小さく形成することができる。例えば、溝5の深さを350μmとした場合に、従来法と比べて液体噴射ヘッド1の幅を8mm〜12mm狭く形成することが可能となり、同じ大きさの圧電体基板からの取り個数が増大し、コストダウンを図ることができる。
【0044】
さらに、封止材11は、スリット25a、25bの壁面にかかるようにスリット25a、25bの内部に形成されるとともに、スリット25a、25bの壁面から離れるに従いなだらかに傾斜している。その結果、液体の滞留領域を少なくすることができる。つまり、吐出溝5aや供給口8及び排出口9には、液体が滞留し、液体中の気泡や異物が長時間留まる滞留領域が少ない。例えば、図16に示す従来公知のインクジェットヘッドでは、インクチャンネル107の両端部に滞留領域が形成され、気泡や異物がインクチャンネル107内に滞留しやすい。インクチャンネル107内に気泡が混入すると、液体を吐出させるための圧力波が気泡により吸収されて、ノズルから液滴を正常に吐出させることができない。このような不良が発生したときは気泡をチャンネル内から迅速に排出させる必要があるが、本発明は滞留領域が少ないので従来法と比較してこれらの気泡を迅速に排出させることができる。
【0045】
また、図16に示す従来例では接続端子134やこの接続部がインク吐出面から突出しないようにPZTシート103に凹部129を形成する必要があった。また、図17に示す従来例ではベースプレート900上に駆動回路等との間の接続部を形成する必要があり、その接続部はプレート991の表面よりも低く形成しなければならない。これに対し本実施形態においては、側壁6の上面USの一部である端部上面EJにフレキシブル基板20を接合し、反対側にノズルプレート4を接合して、液体はフレキシブル基板20の接合側とは反対側に吐出される。その結果、フレキシブル基板20の接合部に高さ制限がなく、フレキシブル基板20を側壁6の上面USに容易に接合することができるとともに、設計自由度が拡大する。
【0046】
また、本実施形態においては吐出溝5aとダミー溝5bを交互に並列に配列し、吐出溝5aには液体が充填されるがダミー溝5bには液体が充填されない。駆動の際には吐出溝5a側の駆動電極7を全て共通にGNDに接続し、ダミー溝5b側の駆動電極7に駆動信号を選択的に印加する。これにより、導電性の液体を使用する場合でも駆動信号が液体を介して漏洩することがなく、記録品質の低下を防止することができる。
【0047】
なお、カバープレート10はプラスチックやセラミックス等を使用できるが、側壁6と同じ材料、例えばPZTセラミックスを使用すれば、熱膨張係数が側壁6と等しくなり、熱変化に対する耐久性を向上させることができる。ノズルプレート4はプラスチック材料、金属材料、或いはセラミックス等を使用することができる。ノズルプレート4としてポリイミド材料を使用すれば、レーザー光によるノズル3の穴開け加工が容易となる。
【0048】
また、本実施形態においては封止材11を供給口8及び排出口9の側の吐出溝5aに設置したが、本発明はこれに限定されない。封止材11を、カバープレート10の両端側から吐出溝5aに流し込み、カバープレート10の供給口8及び排出口9よりも外側の吐出溝5aに封止材11を充填してもよい。
【0049】
(第二実施形態)
図4は本発明の第二実施形態に係る液体噴射ヘッド1の端部を表す模式的な部分斜視図であり、図5は、側壁6の端部上面EJに形成した引出電極16とフレキシブル基板20の下側の表面に形成した配線電極21の接続状態を表す模式的な部分上面図である。
【0050】
図4に示すように、カバープレート10は複数の側壁6の長手方向(y方向)における端部上面EJを露出させて複数の側壁6の上面に設置される。ここで、端部上面EJの側壁6の端部側を領域Raとしカバープレート10側を領域Rbとする。個別引出電極16aは、ダミー溝5bを構成する側壁6の端部上面EJの端部側(領域Ra)に形成され、ダミー溝5b側の壁面WSに形成される駆動電極7に電気的に接続する。共通引出電極16bは、吐出溝5aを構成する側壁6の端部上面EJのカバープレート10側(領域Rb)に形成され、吐出溝5a側の壁面WSに形成される駆動電極7に電気的に接続する。
【0051】
更に、領域Raにおいて吐出溝5aを構成する2つの壁面WSと端部上面EJとの角部が面取りされて面取り部19aが形成される。同様に、領域Rbにおいてダミー溝5bを構成する2つの壁面WSと端部上面EJとの角部が面取りされて面取り部19bが形成される。これらの面取り部19a、19bは壁面WSに導電膜が堆積された後に形成される。言い換えると、吐出溝5aの駆動電極7は、領域Raにおいてその上端が端部上面EJよりも吐出溝5aの深さ方向に深く形成される。同様に、ダミー溝5bの駆動電極7は、領域Rbにおいてその上端が端部上面EJよりもダミー溝5bの深さ方向に深く形成される。
【0052】
一方、フレキシブル基板20の引出電極16側の表面には、フレキシブル基板20の外周に沿って共通配線電極21bが形成され、共通配線電極21bの内側には複数の個別配線電極21aが形成されている。フレキシブル基板20を端部上面EJに異方性導電材料を介在して接合して、共通配線電極21bと領域Rbに形成される全ての共通引出電極16bとが電気的に接続され、各個別配線電極21aと吐出溝5aを挟む2つの側壁6の領域Raに形成される個別引出電極16aとが電気的に接続される。
【0053】
領域Ra及びRbにおいて駆動電極7の上端部は端部上面EJよりも低いので、フレキシブル基板20を端部上面EJに接合したときに、フレキシブル基板20上の共通配線電極21bとダミー溝5bの両壁面WS上の駆動電極7とは電気的に分離される。同様に、フレキシブル基板20上の個別配線電極21aと吐出溝5aの両壁面WS上の駆動電極7とは電気的に分離される。このように、側壁6の上面USに窪み等を形成することなしに、端部上面EJの引出電極16(個別引出電極16a及び共通引出電極16b)とフレキシブル基板20の配線電極21(個別配線電極21a及び共通配線電極21b)を電気的に接続することができる。また、フレキシブル基板20を端部上面EJに接合する際の位置合わせ精度は溝5の幅の略1/2程度に緩和される。
【0054】
なお、本実施形態では、領域Ra、Rbの側壁6の壁面WSと上面USとの間に面取り部19を形成してフレキシブル基板20上の共通配線電極21bとダミー溝5bの壁面WS上の駆動電極7の間、また、フレキシブル基板20上の個別配線電極21aと吐出溝5aの壁面WS上の駆動電極7の間を電気的に分離したが、本発明はこの構成に限定されない。面取り部19を形成することに代えて、当該部の駆動電極7をフォトリソグラフィー及びエッチング工程により除去してもよいし、レーザー光を照射して除去してもよい。また、当該部の駆動電極7を除去することに代えて、駆動電極7の上端部とフレキシブル基板20上の配線電極21との間に絶縁層を介在させて電気的に分離してもよい。
【0055】
(第三実施形態)
図6は、本発明の第三実施形態に係る液体噴射ヘッド1の模式的な縦断面図である。図6(a)が吐出溝5aの長手方向の縦断面図であり、図6(b)が溝5の長手方向に直交する方向の縦断面図である。第一実施形態と異なる部分は、ノズルプレート4と側壁6の間に補強板17が挿入されている点であり、その他の部分は第一実施形態と同様である。従って、以下、主に第一実施形態と異なる部分について説明し、その他は説明を省略する。同一の部分または同一の機能を有する部分には同一の符号を付した。
【0056】
側壁6の両壁面WSに形成した駆動電極7に駆動信号を印加して側壁6を厚み滑り変形させたときに、ノズルプレート4としてポリイミド膜のような合成樹脂材料を使用すると、ノズルプレート4が伸縮し側壁6の上端部が変位して、溝5に充填された液体に与える圧力変動の変換効率が低下する。そこで、ノズルプレート4と側壁6の間にノズルプレート4よりも弾性率の大きい補強板17を設置し、側壁6の上端部を固定して上記変換効率の低下を防止する。補強板17にはノズル3に対応する位置に貫通孔18を設け、液滴の吐出を可能とする。
【0057】
補強板17として、例えば厚さ50μm〜100μmの金属板やセラミックス板を使用することができる。金属材料としてMo、SUS(ステンレス)、Ni、Ti、Cr等を使用することができる。セラミックス材として、金属や半導体の酸化物、窒化物、炭化物から成るセラミックスや、マシナブルセラミックスを使用することができる。特に、熱膨張率が側壁6の材料に近似する材料を使用することが好ましい。例えば、側壁6としてPZTを使用したときは、熱膨張率がPZTに近似するMoやマシナブルセラミックスを使用することが好ましい。
【0058】
(第四実施形態)
図7は、本発明の第四実施形態に係る液体噴射ヘッド1を表し、供給口8の長手方向の縦断面に電極配線を付加した説明図である。第一実施形態と異なる点は、両端を除いて溝5を全て吐出溝5aとした点である。これに伴い、側壁6の上部に設置するカバープレート10の供給口8及び図示しない排出口は全ての吐出溝5aに連通する。また、側壁6の下部に設置したノズルプレート4は吐出溝5aのそれぞれに連通するノズル3を有する。各ノズル3は吐出溝5aの長手方向において供給口と排出口の略中央に位置する。端子T0〜T9のそれぞれは対応する吐出溝5aの両壁面に形成した駆動電極7に電気的に接続する。
【0059】
この液体噴射ヘッド1は3サイクル駆動により液滴を吐出する。即ち、端子T1と端子T0、端子T1と端子T2それぞれの間に駆動信号を印加して端子T1に対応する吐出溝5aから液体を吐出させる。次に端子T2と端子T1、端子T2と端子T3それぞれの間に駆動信号を印加して端子T2に対応する吐出溝5aから液体を吐出させる。次に端子T3と端子T2、端子T3と端子T4それぞれの間に駆動信号を印加して端子T3に対応する吐出溝5aから液体を吐出させる。以降これを繰り返す。つまり、隣接する3つの吐出溝5aを順に繰り返して選択して液体を吐出させる。これにより、第一実施形態の液体噴射ヘッド1よりも高密度に記録することができる。なお、第三実施形態と同様にノズルプレート4と側壁6との間に補強板17を挿入すれば、側壁6の変形効率が低下するのを防止することができる。
【0060】
(第五実施形態)
図8は、本発明の第五実施形態に係る液体噴射ヘッド1を表し、溝5の長手方向に直交する方向の模式的な縦断面図である。第一実施形態と異なる点は、側壁6の構成とその壁面WSに形成した駆動電極7であり、その他は第一実施形態と同様である。従って、以下、主に第一実施形態と異なる部分について説明し、同一の部分は説明を省略する。同一の部分または同一の機能を有する部分については同一の符号を付した。
【0061】
液体噴射ヘッド1は、ノズルプレート4、側壁6及びカバープレート10の積層構造を有している。複数の側壁6は長手方向の深さが一定である複数の溝5を構成し、複数の溝5は交互に配列する吐出溝5aとダミー溝5bからなる。カバープレート10は、供給口8と図示しない排出口9を有し、供給口8及び排出口9はスリット25a及び図示しないスリット25bを介して吐出溝5aに連通する。ノズルプレート4は各吐出溝5aに対応する位置にノズル3を有し、各ノズル3は各吐出溝5aに連通する。
【0062】
ここで、側壁6は分極処理が施された圧電体から形成され、側壁6の上半分の側壁6aの分極方向と下半分の側壁6bの分極方向は反対側に向いている。例えば側壁6aが上向きに分極され、側壁6bが下向きに分極される。そして駆動電極7は側壁6a及び側壁6bの壁面WSの上端から下端に亘って形成される。吐出溝5aの両駆動電極7をGNDに、吐出溝5aに隣接する2つのダミー溝5bの吐出溝5a側の2つの駆動電極7に駆動信号を印加することにより、側壁6を分極方向に対して屈曲させ、吐出溝5a内に充填された液体に圧力波を生じさせてノズル3から液体を吐出させる。電圧を上半分の側壁6aのみに印加する場合よりも分極方向を逆にして同じ電圧を側壁6aと側壁6bに印加するほうが側壁6の変形量が大きくなるので、同じ変形量を生じさせる場合は本実施形態の方が第一実施形態の場合よりも駆動電圧を低下させることができる。
【0063】
なお、カバープレート10を側壁6の長手方向における端部上面が露出するように側壁6の上面に設置し、第二実施形態と同様に、その端部上面に引出電極16を形成し、その引出電極16に配線電極21を形成したフレキシブル基板20を接合することができる。また、第三実施形態と同様に、ノズルプレート4と複数の側壁6との間に補強板17を設置して、側壁6の変形がノズルプレート4に吸収されて変形効率が低下するのを防止することができる。また、第四実施形態と同様に、溝5を全て吐出溝5aとし、3サイクル駆動により液滴を吐出させて、高密度に記録することができる。
【0064】
(第六実施形態)
図9は本発明の第六実施形態に係る液体噴射ヘッド1の模式的な斜視図である。図9(a)は液体噴射ヘッド1の全体斜視図であり、図9(b)は液体噴射ヘッド1の内部斜視図である。
【0065】
図9(a)及び(b)に示すように、液体噴射ヘッド1はノズルプレート4と複数の側壁6とカバープレート10と流路部材14の積層構造を備える。ノズルプレート4と複数の側壁6とカバープレート10の積層構造は第一〜第五実施形態のいずれかと同じである。ノズルプレート4と側壁6はy方向の幅がカバープレート10と流路部材14のy方向の幅よりも長く、カバープレート10は側壁6の一方の端部上面EJが露出するように側壁6の上面に接合される。複数の側壁6は、x方向に配列し、隣接する側壁6の間に長手方向の深さが一定の複数の溝5が形成される。カバープレート10は複数の溝5に連通する供給口8と排出口9を備える。
【0066】
流路部材14は、カバープレート10側の表面に開口する凹部からなる図示しない液体供給室と液体排出室を備え、カバープレート10とは反対側の表面に液体供給室と連通する供給継手27aと液体排出室と連通する排出継手27bを備える。
【0067】
各側壁6の壁面には図示しない駆動電極が形成され、当該側壁6の端部上面EJに形成される図示しない引出電極に電気的に接続される。フレキシブル基板20は端部上面EJに接合されている。フレキシブル基板20の端部上面EJ側の表面に多数の配線電極が形成され、端部上面EJに形成した引出電極16に電気的に接続される。フレキシブル基板20はその表面に駆動回路としてのドライバIC28や接続コネクタ29を備える。ドライバIC28は、接続コネクタ29から入力した信号に基づいて側壁6を駆動するための駆動信号を生成し、配線電極と引出電極を介して図示しない駆動電極に供給する。
【0068】
ベース30はノズルプレート4、側壁6、カバープレート10及び流路部材14の積層体を収納する。ベース30の下面にノズルプレート4の液体噴射面が露出する。フレキシブル基板20はベース30の側面から外部に引き出され、ベース30の外側面に固定される。ベース30はその上面に2つの貫通孔を備え、液体供給用の供給チューブ31aが一方の貫通孔を貫通して供給継手27aに接続し、液体排出用の排出チューブ31bが他方の貫通孔を貫通して排出継手27bに接続する。その他の構成は第一〜第五実施形態のいずれかと同様なので、説明を省略する。
【0069】
流路部材14を設け、上方から液体を供給し上方へ液体を排出するように構成するとともに、フレキシブル基板20にドライバIC28を実装し、フレキシブル基板20をz方向に折り曲げて立設した。既に説明したように、溝5を形成する際に溝5のy方向端部にダイシングブレードの外形形状が残りデッドスペースとなることがないので、y方向の幅を狭く形成できることに加えて、配線周りもコンパクトにまとめることができる。また、ドライバIC28や側壁6は駆動時に発熱するが、熱はベース30や流路部材14を介して内部を流れる液体に伝達される。即ち、被記録媒体の記録用液体を冷却媒体として利用して、内部で発生した熱を効率よく外部に放熱することができる。そのため、ドライバIC28や側壁6の過熱による駆動能力の低下を防止することができる。また、吐出溝内を液体が循環するので、気泡が混入した場合でもその気泡を外部に迅速に排出でき、無駄に液体を使用せず、記録不良による被記録媒体の無駄な消費を抑制することができる。これにより、信頼性の高い液体噴射ヘッド1を提供することが可能となる。
【0070】
<液体噴射装置>
(第七実施形態)
図10は本発明の第七実施形態に係る液体噴射装置2の模式的な斜視図である。液体噴射装置2は、液体噴射ヘッド1、1’を往復移動させる移動機構40と、液体噴射ヘッド1、1’に液体を供給する流路部35、35’と、流路部35、35’に液体を供給する液体ポンプ33、33’及び液体タンク34、34’を備えている。各液体噴射ヘッド1、1’は複数の吐出溝を備え、各吐出溝に連通するノズルから液滴を吐出する。液体噴射ヘッド1、1’は既に説明した第一〜第六実施形態のいずれかを使用する。
【0071】
液体噴射装置2は、紙等の被記録媒体44を主走査方向に搬送する一対の搬送手段41、42と、被記録媒体44に液体を吐出する液体噴射ヘッド1、1’と、液体噴射ヘッド1、1’を載置するキャリッジユニット43と、液体タンク34、34’に貯留した液体を流路部35、35’に押圧して供給する液体ポンプ33、33’と、液体噴射ヘッド1、1’を主走査方向と直交する副走査方向に走査する移動機構40を備えている。図示しない制御部は液体噴射ヘッド1、1’、移動機構40、搬送手段41、42を制御して駆動する。
【0072】
一対の搬送手段41、42は副走査方向に延び、ローラ面を接触しながら回転するグリッドローラとピンチローラを備えている。図示しないモータによりグリッドローラとピンチローラを軸周りに移転させてローラ間に挟み込んだ被記録媒体44を主走査方向に搬送する。移動機構40は、副走査方向に延びた一対のガイドレール36、37と、一対のガイドレール36、37に沿って摺動可能なキャリッジユニット43と、キャリッジユニット43を連結し副走査方向に移動させる無端ベルト38と、この無端ベルト38を図示しないプーリを介して周回させるモータ39を備えている。
【0073】
キャリッジユニット43は、複数の液体噴射ヘッド1、1’を載置し、例えばイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4種類の液滴を吐出する。液体タンク34、34’は対応する色の液体を貯留し、液体ポンプ33、33’、流路部35、35’を介して液体噴射ヘッド1、1’に供給する。各液体噴射ヘッド1、1’は駆動信号に応じて各色の液滴を吐出する。液体噴射ヘッド1、1’から液体を吐出させるタイミング、キャリッジユニット43を駆動するモータ39の回転及び被記録媒体44の搬送速度を制御することにより、被記録媒体44上に任意のパターンを記録することできる。
【0074】
<液体噴射ヘッドの製造方法>
次に本発明に係る液体噴射ヘッドの製造方法について説明する。図11は、本発明の液体噴射ヘッドの基本的な製造方法を表す工程図である。まず、圧電体基板又は圧電体基板と絶縁体基板を積層した基板、或いは分極方向が反対側を向いた2枚の圧電体基板を接合した基板を準備し、その表面に複数の溝を形成する(溝形成工程S1)。圧電体基板はPZTセラミックスを使用することができる。次に、溝が形成された基板の表面に導電体を堆積する(導電膜形成工程S2)。導電体として金属材料を用い、蒸着法、スパッタリング法、めっき法等により堆積して導電膜を形成する。その後、導電膜をパターニングして電極を形成する(電極形成工程S3)。電極は、側壁の壁面に駆動電極を、側壁の上面に引出電極を形成する。パターニングはフォトリソグラフィー及びエッチング工程、リフトオフ工程、或いはレーザー光を照射して導電膜を局所的に除去して電極パターンを形成する。
【0075】
次に、基板の表面、即ち複数の側壁の上面にカバープレートを接合する(カバープレート接合工程S4)。接合は接着剤を用いることができる。カバープレートには予め表面から裏面に貫通し、複数の溝に連通する供給口と排出口を形成しておく。カバープレートは接合する基板と同じ材料、例えばPZTセラミックスを使用することができる。基板とカバープレートの熱膨張係数を等しくすれば剥がれや亀裂が発生し難く、耐久性を向上させることができる。次に、基板の表面とは反対側の裏面を研削し、複数の溝を裏面側に開口させる(研削工程S5)。溝が開口することにより溝を分離する側壁は分離されるが、上面側にカバープレートが接合しているので、ばらばらに脱落することがない。次に、基板の裏面側にノズルプレートを接合し、溝の開口を塞ぐ(ノズルプレート接合工程S6)。
【0076】
本発明の製造方法によれば、溝形成工程S1において基板の表面にストレートに溝を形成するのでダイシングブレードの外形形状が基板に残ることがなく、液体噴射ヘッド1を小型化することができる。また、外部回路と接続する引出電極をノズルプレートの反対側の基板上面に設置するので、駆動回路との接続が容易となり、基板上面に複雑な引回し電極を形成する必要がない。また、高低差のある表面で電極のパターニングを行う必要がないので短時間で容易に電極パターンを形成することができる。以下、本発明について実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0077】
(第八実施形態)
図12〜図15は本発明の第八実施形態に係る液体噴射ヘッドの製造方法を表す図である。図12が液体噴射ヘッドの製造方法を表す工程図であり、図13〜図15が各工程の説明図である。本実施形態では図11に示す溝形成工程S1〜ノズルプレート接合工程S6の基本工程に、リフトオフ法により電極を形成するための樹脂パターン形成工程S01、駆動電極7と配線電極21との間の短絡防止のための面取り工程S31、側壁6の厚み滑り変形を液体への圧力に変換する変換効率を改善させるための補強板設置工程S51、吐出溝5aに液体を封止するための封止材設置工程S61、フレキシブル基板を端部上面EJに接合するフレキシブル基板接合工程S62、カバープレート10の上面に流路部材14を接合する流路部材接合工程S63を付加している。同一の部分または同一の機能を有する部分には同一の符号を付している。
【0078】
図13(a)は、圧電体基板15の縦断面図である。圧電体基板15としてPZTセラミックスを使用し基板垂直方向に分極処理を施した。図13(b)は、圧電体基板15の上面USに感光性樹脂22を塗布又は貼り付け、パターニングする樹脂パターン形成工程S01の説明図である。電極形成用の導電体を残す領域からは感光性樹脂22を除去し、導電体を残さない領域には感光性樹脂22を残す。
【0079】
図13(c)及び(d)は、圧電体基板15の表面にダイシングブレード23により複数の溝5を形成する溝形成工程S1の説明図である。図13(c)がダイシングブレード23を横方向から見た図であり、図13(d)がダイシングブレード23の移動方向から見た図である。吐出溝5aとダミー溝5bを交互に並列に研削し吐出溝5aとダミー溝5bの間に側壁6を介在させる。溝5は一定の深さ、例えば300μm〜350μmの深さに、吐出溝5a及びダミー溝5bを30μm〜100μmの幅に形成する。
【0080】
図13(e)及び(f)は、斜め蒸着法により溝5が開口する側の圧電体基板15の表面に導電体を堆積して導電膜32を形成する導電膜形成工程S2の説明図である。導電体を、溝5の長手方向に直交し、圧電体基板15の表面の法線に対して傾斜角(−θ)と傾斜角(+θ)の方向から蒸着し、側壁6の両壁面の上半分と上面USに導電体を堆積して導電膜32を形成する。導電体としてAl、Mo、Cr、Ag、Ni等の金属を使用することができる。斜め蒸着法によれば、溝5の深さ方向に所望の導電膜32を形成することができるため、側壁6の壁面WSに堆積した導電膜32のパターニングを行う必要がない。
【0081】
図13(g)は、リフトオフ法により導電膜32をパターニングして電極を形成する電極形成工程S3の説明図である。圧電体基板15の上面USから感光性樹脂22と感光性樹脂22上の導電膜32を除去し、溝5の壁面に駆動電極7を形成し、側壁6の上面USに図示しない引出電極を形成する。なお、導電膜32のパターニングは、導電膜形成工程S2の後にフォトリソグラフィー及びエッチング法により、或いはレーザー光により行うことができるが、上記のリフトオフ法のほうが簡便にパターニングすることができる。
【0082】
図14(h)は、側壁6の壁面WSと上面USとの角部の一部を面取りする面取り工程S31の説明図である。溝5の幅よりも若干厚いダイシングブレード23’を用いて、ダミー溝5bを構成する2つの側壁6の壁面WSと上面USの端部側の角部を面取りして面取り部19を形成する。同様に、吐出溝5aを構成する2つの側壁6の壁面WSと上面USの上記面取り部19よりも内部側の角部を面取りして面取り部を形成する。壁面WSに形成した駆動電極7の上端部が研削され、駆動電極7の上端が側壁6の上面USよりも低くなる。これにより、後のフレキシブル基板20を端部上面EJに接合したときに、共通配線電極21bとダミー溝5bの駆動電極7との間、またフレキシブル基板20の個別配線電極21aと吐出溝5aの駆動電極7との間が、短絡し或いは絶縁不良により駆動信号が漏洩することを防止する。
【0083】
図14(i)は、圧電体基板15の表面(上面US)にカバープレート10を接合するカバープレート接合工程S4の説明図である。カバープレート10には予め供給口8と排出口9とスリット25を形成しておく。カバープレート10を圧電体基板15の表面(上面US)に圧電体基板15の端部上面が露出するように接着剤により接合する。接合の際にスリット25を吐出溝5aに連通させ、ダミー溝5bに対して供給口8及び排出口9を閉止させる。カバープレート10は圧電体基板15とほぼ等しい熱膨張係数を有す材料を使用することが好ましい。本実施形態においてはカバープレート10としてPZTセラミックスを使用した。
【0084】
図14(j)は、圧電体基板15の表面とは反対側の裏面を研削し、溝5を裏面側に開口させる研削工程S5の説明図である。研削盤又は研磨定盤を用いて圧電体基板15を裏面側から研削し、各吐出溝5a及びダミー溝5bを裏面側に開口させる。これにより各側壁6は互いに分離されるが、各側壁6の上面USがカバープレート10に接着されているので、崩落することはない。
【0085】
図14(k)は、圧電体基板15の裏面側に補強板17を接合した補強板接合工程S51の説明図である。補強板17は圧電体基板15、即ち側壁6の裏面側に接着剤により接合した。補強板17にはカバープレート10の供給口8と排出口9の略中央の位置に吐出溝5aに連通する貫通孔18が設けてある。貫通孔18は、補強板17を圧電体基板15に接着する前に形成してもよいし、接着後に形成してもよい。補強板17として金属やセラミックスを使用することができる。金属Moやマシナブルセラミックスを使用すれば、PZTセラミックスと熱膨張率をほぼ等しくすることができ、温度変化に対する耐久性を向上させることができる。補強板17を設けることにより側壁6の変形を液体の圧力に変換する変換効率の低下を防ぐことができる。なお、補強板17としてセラミックスを使用する場合に、吐出溝5aに対応する貫通孔又は凹部を形成したセラミックス板を圧電体基板15の裏面に接着し、次にセラミックス板を裏面側から研削して薄膜化し、補強板17とすることができる。このほうが補強板17の取り扱いが容易で平坦性も向上する。マシナブルセラミックスを使用すれば、研削性に優れているので裏面側からの研削が容易となる。
【0086】
図14(l)は、補強板17の側壁6とは反対側にノズルプレート4を接合するノズルプレート接合工程S6の説明図である。ノズルプレート4には、補強板17の貫通孔18の位置にノズル3を設けている。ノズル3はノズルプレート4を補強板17に接合する前に形成してもよいし、接合した後に形成してもよい(ノズル形成工程)。補強板17に接合した後にノズル3を形成すれば位置合わせが容易となる。ノズル3は外側からレーザー光を照射して形成する。
【0087】
図15(m)は、供給口8及び排出口9との間の連通部よりも外側の吐出溝5aを閉止する封止材11を設置した封止材設置工程S61の説明図である。封止材11により吐出溝5aを塞いで液体が外部に漏えいすることを防止する。図15(m)では封止材11を供給口8及び排出口9側に設けているが、封止材11はカバープレート10の端部側に設けてもよい。なお、図15(m)に示すように、側壁6(圧電体基板15)の端部上面EJには引出電極16が形成され、個別引出電極16aが側壁6(圧電体基板15)の端部側に、共通引出電極16bがカバープレート10の端部側に設置されている。
【0088】
図15(n)は、端部上面EJのフレキシブル基板20を接合したフレキシブル基板接合工程S62の説明図である。フレキシブル基板20には予め個別配線電極21aと共通配線電極21bから成る配線電極21を形成しておく。個別配線電極21aと個別引出電極16aが電気的に接続し、共通配線電極21bと共通引出電極16bが電気的に接続するようにフレキシブル基板20を圧電体基板15の端部上面EJに接合する。配線電極21と引出電極16とは例えば異方性導電体を介して接着する。フレキシブル基板20上の配線電極21は接合領域以外の領域が保護膜26により覆われ、保護されている。また、フレキシブル基板20を液体が吐出されるノズルプレート4の側とは反対側の端部上面EJに接合したので接合部の厚さに制限がなく、設計自由度が拡大する。
【0089】
図15(o)は、流路部材14をカバープレート10の上面に接合した流路部材接合工程S63の説明図である。流路部材14には予め供給流路33a及び供給流路33aに連通する供給継手27aと、排出流路33b及び排出流路33bに連通する排出継手27bを形成しておく。接合の際に、流路部材14の供給流路33aをカバープレート10の供給口8に、流路部材14の排出流路33bをカバープレート10の排出口9に合わせる。流路部材14の供給継手27a及び排出継手27bを流路部材14の上面に設置したので、配管を集約しコンパクトに構成することができる。
【0090】
なお、本発明に係る液体噴射ヘッド1の製造方法は、吐出溝5aとダミー溝5bを交互に並列して形成することに限定されず、全ての溝5を吐出溝5aとし、ノズル3及び貫通孔18をそれぞれの吐出溝5aに対応させて形成してもよい。また、分極方向が逆向きの2枚の圧電体基板を積層した圧電体基板15を用い、導電膜形成工程S2において斜め蒸着に代えてスパッタリング法等により側壁6の壁面WS全面に導電膜を形成してもよい。
【符号の説明】
【0091】
1 液体噴射ヘッド
2 液体噴射装置
3 ノズル
4 ノズルプレート
5 溝、5a 吐出溝、5b ダミー溝
6 側壁
7 駆動電極
8 供給口
9 排出口
10 カバープレート
11 封止材
14 流路部材
15 圧電体基板
16 引出電極、16a 個別引出電極、16b 共通引出電極
17 補強板
18 貫通孔
19 面取り部
20 フレキシブル基板
21 配線電極、21a 個別配線電極、21b 共通配線電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吐出するためのノズルを有するノズルプレートと、
前記ノズルプレートの上方に設置され、長手方向の深さが一定である溝を構成する側壁と、
前記側壁の壁面に形成される駆動電極と、
前記側壁の上面に設置され、前記溝に液体を供給する供給口と前記溝から液体を排出する排出口とを備えるカバープレートと、
前記溝と前記供給口の間、及び前記溝と前記排出口の間の各連通部よりも外側の溝を閉止する封止材と、を備える液体噴射ヘッド。
【請求項2】
前記カバープレートは前記側壁の長手方向の端部上面を露出させて前記側壁の上面に設置され、
前記端部上面に前記駆動電極に電気的に接続する引出電極が形成される請求項1に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項3】
表面に配線電極のパターンを有するフレキシブル基板を更に備え、
前記フレキシブル基板は前記端部上面に接合され、前記配線電極は前記引出電極に電気的に接続される請求項2に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項4】
前記溝は液体吐出用の吐出溝と液体を吐出しないダミー溝を含み、前記供給口と前記排出口は前記吐出溝に連通し、前記吐出溝と前記ダミー溝は交互に並列に設置されている請求項1〜3のいずれか一項に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項5】
前記供給口と前記排出口は、前記吐出溝に対して開口し前記ダミー溝に対して閉止する請求項4に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項6】
前記ノズルプレートと前記側壁との間に設置される補強板を更に備え、
前記補強板は、前記ノズルに連通する貫通孔を有する請求項1〜5のいずれか一項に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項7】
前記側壁は互いに逆方向に分極された圧電体が積層された積層構造を有する請求項1〜6のいずれか一項に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項8】
前記カバープレートは前記側壁の長手方向における端部上面を露出させて前記側壁の上面に設置され、
前記端部上面には前記駆動電極に電気的に接続する引出電極が設置され、
前記溝は液体吐出用の吐出溝と液体を吐出しないダミー溝を含み、前記供給口と前記排出口は前記吐出溝に連通し、前記吐出溝と前記ダミー溝が交互に並列に設置され、
前記引出電極は、前記吐出溝を構成する2つの側壁の吐出溝側の壁面に形成される前記駆動電極に電気的に接続する共通引出電極と、前記2つの側壁のダミー溝側の壁面に形成される駆動電極に電気的に接続する個別引出電極を含み、
前記個別引出電極は前記2つの側壁の前記端部上面の端部側に設置され、前記共通引出電極は前記2つの側壁の前記端部上面の前記カバープレート側に設置される請求項1に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項9】
前記駆動電極は前記側壁の長手方向における端部まで延在し、
前記吐出溝側の壁面に形成される前記駆動電極は、前記側壁の前記端部の側において上端が前記端部上面よりも溝の深さ方向に深く形成され、
前記ダミー溝側の壁面に形成される前記駆動電極は、前記側壁の前記端部よりも前記カバープレート側において上端が前記端部上面よりも溝の深さ方向に深く形成される請求項8に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項10】
前記側壁の吐出溝側の壁面と前記端部上面との間の角部が前記側壁の前記端部の側において面取りされ、
前記側壁のダミー溝側の壁面と前記端部上面との間の角部が前記側壁の前記端部よりもカバープレート側において面取りされる請求項8又は9に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項11】
外周側に形成される共通配線電極と前記共通配線電極よりも内側に形成される個別配線電極とを有するフレキシブル基板を更に備え、
前記フレキシブル基板は前記端部上面に接合され、前記共通配線電極は前記共通引出電極に電気的に接続し、前記個別配線電極は前記個別引出電極に電気的に接続する請求項8〜10のいずれか一項に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の液体噴射ヘッドと、
前記液体噴射ヘッドを往復移動させる移動機構と、
前記液体噴射ヘッドに液体を供給する液体供給管と、
前記液体供給管に前記液体を供給する液体タンクと、を備える液体噴射装置。
【請求項13】
圧電体材料を含む基板の表面に側壁により構成される溝を形成する溝形成工程と、
前記基板に導電体を堆積して導電膜を形成する導電膜形成工程と、
前記導電膜をパターニングして電極を形成する電極形成工程と、
前記基板の表面にカバープレートを接合するカバープレート接合工程と、
前記基板の表面とは反対側の裏面を研削し、前記溝を裏面側に開口させる研削工程と、
前記基板の裏面側にノズルプレートを接合するノズルプレート接合工程と、を備える液体噴射ヘッドの製造方法。
【請求項14】
前記カバープレートは、前記溝に液体を供給する供給口と前記溝から液体を排出する排出口を有し、
前記供給口と前記排出口の間の位置の前記ノズルプレートに液体を吐出するためのノズルを形成するノズル形成工程を備える請求項13に記載の液体噴射ヘッドの製造方法。
【請求項15】
前記溝と前記供給口の間、及び前記溝と前記排出口の間の各連通部よりも外側の溝に封止材を設置する封止材設置工程を備える請求項14に記載の液体噴射ヘッドの製造方法。
【請求項16】
前記研削工程の後に、前記基板の裏面側に補強板を接合する補強板接合工程を備える請求項13〜15のいずれか一項に記載の液体噴射ヘッドの製造方法。
【請求項17】
前記電極形成工程は、前記導電膜形成工程の前に前記基板の表面に樹脂膜から成るパターンを形成し、前記導電膜形成工程の後に前記樹脂膜を除去するリフトオフ法により前記電極を形成する工程からなる請求項13〜16のいずれか一項に記載の液体噴射ヘッドの製造方法。
【請求項18】
前記電極形成工程は、前記側壁の壁面に駆動電極を形成するとともに、前記側壁の長手方向の端部上面に前記駆動電極と電気的に接続する引出電極を形成する工程からなる請求項13〜17のいずれか一項に記載の液体噴射ヘッドの製造方法。
【請求項19】
表面に配線電極を形成したフレキシブル基板を前記端部上面に接合し、前記配線電極と前記引出電極とを電気的に接続するフレキシブル基板接合工程を備える請求項18に記載の液体噴射ヘッドの製造方法。
【請求項20】
前記溝形成工程は、液体を吐出するための吐出溝と液体を吐出しないダミー溝を交互に並列に形成する工程であり、
前記引出電極は、前記吐出溝に形成した前記駆動電極に電気的に接続する個別引出電極と前記ダミー溝に形成した前記駆動電極に電気的に接続する共通引出電極を含み、
前記電極形成工程は、前記個別引出電極を前記吐出溝を構成する2つの側壁の前記端部上面の端部側に形成し、前記共通引出電極を前記端部上面の前記個別引出電極よりも内部側に形成する工程である請求項18又は19に記載の液体噴射ヘッドの製造方法。
【請求項21】
前記吐出溝を構成する2つの側壁の壁面と上面の端部側の角部と、前記ダミー溝を構成する2つの側壁の壁面と上面の前記端部側の角部よりも内部側の角部とを面取りする面取り工程を備える請求項20に記載の液体噴射ヘッドの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2013−10211(P2013−10211A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−143200(P2011−143200)
【出願日】平成23年6月28日(2011.6.28)
【出願人】(501167725)エスアイアイ・プリンテック株式会社 (198)
【Fターム(参考)】