説明

液体噴射装置、および、液体噴射装置の制御方法

【課題】駆動頻度に関わらず圧力発生手段の特性を揃えることが可能な液体噴射装置、および、その制御方法を提供する。
【解決手段】計数手段としてのCPUは、圧電振動子に対する駆動パルスの累積印加数を計数し、駆動信号生成部は、ノズルからインクが噴射されない程度の駆動パラメーターに設定されたエージング駆動パルスを発生可能であり、記録媒体に対する噴射領域外において、累積印加数に応じた駆動パラメーターに設定されたエージング駆動パルスAPを用いて圧電振動子を駆動するエージング処理を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット式記録装置などの液体噴射装置、および、液体噴射装置の制御方法に関し、特に、駆動信号に含まれる駆動波形を圧力発生手段に印加することにより当該圧力発生手段を駆動させ、ノズルに連通する圧力室内の液体に圧力変動を生じさせることでノズルから液体を噴射させる液体噴射装置、および、液体噴射装置の制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液体噴射装置は噴射ヘッドを備え、この噴射ヘッドから各種の液体を噴射(吐出)する装置である。この液体噴射装置としては、例えば、インクジェット式プリンターやインクジェット式プロッター等の画像記録装置があるが、最近ではごく少量の液体を所定位置に正確に着弾させることができるという特長を生かして各種の製造装置にも応用されている。例えば、液晶ディスプレイ等のカラーフィルタを製造するディスプレイ製造装置,有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイやFED(面発光ディスプレイ)等の電極を形成する電極形成装置,バイオチップ(生物化学素子)を製造するチップ製造装置に応用されている。そして、画像記録装置用の記録ヘッドでは液状のインクを噴射し、ディスプレイ製造装置用の色材噴射ヘッドではR(Red)・G(Green)・B(Blue)の各色材の溶液を噴射する。また、電極形成装置用の電極材噴射ヘッドでは液状の電極材料を噴射し、チップ製造装置用の生体有機物噴射ヘッドでは生体有機物の溶液を噴射する。
【0003】
上記の液体噴射ヘッドとしては、駆動波形を圧電振動子等の圧力発生手段に印加して当該圧力発生手段を駆動させることで、圧力室内の機能性液体に圧力変動を生じさせ、この圧力変動を利用してノズルから液体を噴射するように構成されたものがある。このような液体噴射方式を採用する液体噴射ヘッドでは、駆動回数が増加するにつれて変位量等の特性が変化していくことが判っている。例えば、圧力発生手段の一種である圧電振動子は、繰り返し駆動することにより分極特性が変化して変位量が低下する傾向にある。分極特性の変化は、駆動の繰り返しによって圧電体が印加電界と異なる方向に分極してしまうために生じる。このような特性の変化(劣化)が生じた場合、上記の駆動波形を初期の設定のまま用いて圧力発生手段を駆動した場合、ノズルから噴射されるインクの量や飛翔速度(噴射特性)も低下してしまうという問題があった。そして、ノズルの使用状況によっては、特性の変化度合いにばらつきが生じるため、例えば、記録画像等にムラやスジが発生する虞があった。
【0004】
上記の不具合に鑑み、ノズル列毎の圧力発生手段の駆動状況に応じて駆動電圧を補正することで、噴射特性の低下を防止した構成が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−066948号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記の構成では、特性の劣化が進むほど駆動電圧が高められるため、使用率が比較的高いノズルに対応する圧力発生手段の劣化がさらに進んでしまい、特性のバラツキをさらに拡大させてしまう虞があった。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、駆動頻度に関わらず圧力発生手段の特性を揃えることが可能な液体噴射装置、および、その制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の液体噴射装置は、上記目的を達成するために提案されたものであり、ノズルが複数列設されて成るノズル群と、各ノズルに連通する圧力室に圧力変動を生じさせる圧力発生手段と、を有し、当該圧力発生手段によって前記ノズルから液体を噴射させる液体噴射ヘッドと、
前記圧力発生手段を駆動させる駆動波形を発生させる駆動波形発生手段と、
前記液体噴射ヘッドによる液体の噴射を制御する制御手段と、
前記駆動波形の累積印加数を計数する計数手段と、
を備え、
前記駆動波形発生手段は、非噴射駆動波形を発生させ、
前記非噴射駆動波形の駆動パラメーターは、駆動電圧、単位時間あたりの電位変化率、電位を一定に維持するホールド時間、又は、パルス連続印加回数の少なくとも何れか1つであり、
前記制御手段は、前記累積印加数に応じて設定された前記非噴射駆動波形を用いて前記圧力発生手段を駆動するエージング処理を行うことを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、累積印加数に応じた駆動パラメーターに設定された非噴射駆動波形を用いて圧力発生手段を駆動するエージング処理を行うので、各圧力発生手段の劣化の度合いに応じて適切にエージング処理を行うことができる。これにより、同一ノズル群を構成する各ノズルにそれぞれ対応する各圧力発生手段の特性のばらつきを低減することが可能となる。その結果、各ノズルの噴射特性を可及的に揃えることが可能となる。また、非噴射駆動波形は、液体の噴射を伴わないので、エージング処理において液体を無駄に消費することがない。
【0010】
上記構成において、前記制御手段は、液体噴射ヘッドの主走査において記録が行われる記録領域、および、記録が行われない記録領域外のうち、記録が行われない記録領域外を有し、前記記録領域外においてエージング処理を行う構成を採用することが望ましい。
この構成によれば、記録領域外でエージング処理を行う構成であるため、エージング処理を行う期間を別途設ける必要が無く、スループットの低下を防止することができる。
【0011】
上記構成において、前記累積印加数が相対的に多いときは前記累積印加数が相対的に少ないときよりも前記駆動パラメーターの駆動強度を低く設定する構成を採用することが望ましい。
【0012】
また、上記構成において、前記非噴射駆動波形が直流電圧である構成を採用することができる。
【0013】
この構成によれば、非噴射駆動波形が直流電圧であることから、圧力発生手段の状態変位を繰り返さないので、圧力室内の液体が攪拌されない。このため、ノズル近傍の増粘した液体が圧力室側に取り込まれることを抑制することができる。このため、増粘した液体を排出するべく液体を捨て撃ちする所謂フラッシング処理に関して、エージング処理後においては不要となる。
【0014】
また、上記構成において、前記非噴射駆動波形が台形波である構成を採用することができる。
【0015】
この構成によれば、非噴射駆動波形が台形波であることから、エージング処理が、ノズルから液体を噴射させない程度にノズルにおけるメニスカスを微振動させる微振動処理を兼ねるので、これらの処理を別々に行う必要が無く効率が良い。
【0016】
さらに、上記構成において、前記非噴射駆動波形が三角波又は鋸波である構成を採用することができる。
【0017】
この構成によれば、非噴射駆動波形を三角波又は鋸波とすることで、圧力発生手段の変位の切り替えが急激となり、当該圧力発生手段に対するエージング駆動時の負荷がより大きくなる。これにより、より効率良くエージングを行うことができる。
【0018】
また、本発明の液体噴射装置の制御方法は、ノズルが複数列設されて成るノズル群と、各ノズルに連通する圧力室に圧力変動を生じさせる圧力発生手段と、を有し、当該圧力発生手段によって前記ノズルから液体を噴射させる液体噴射ヘッドと、
前記圧力発生手段を駆動させる駆動波形を発生させる駆動波形発生手段と、
前記液体噴射ヘッドによる液体の噴射を制御する制御手段と、
前記駆動波形の累積印加数を計数する計数手段と、
を備え、
前記駆動波形発生手段は、駆動パラメーターによって非噴射駆動波形を発生させ、
前記駆動パラメーターは、駆動電圧、単位時間あたりの電位変化率、電位を一定に維持するホールド時間、又は、パルス連続印加回数の少なくとも何れか1つであり、
前記制御手段は、前記累積印加数に応じて設定された前記非噴射駆動波形を用いて前記圧力発生手段を駆動するエージング処理を行うことを特徴とする。
【0019】
上記構成において、前記制御手段は、液体噴射ヘッドの主走査において記録が行われる記録領域と、記録が行われない記録領域外を有し、前記記録領域外においてエージング処理を行う構成を採用することが望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】プリンターの構成を説明する斜視図である。
【図2】記録ヘッドの構成を説明する斜視図である。
【図3】ノズルプレートの構成を説明する平面図である。
【図4】記録ヘッドの電気的構成を説明するブロック図である。
【図5】駆動信号の構成を説明する波形図である。
【図6】バンド記録について説明する模式図である。
【図7】同一ノズル列を構成する各ノズルの累積噴射回数の一例を示すグラフである。
【図8】記録処理とエージング処理が行われるタイミングを示したタイミングチャートである。
【図9】第2実施形態におけるエージング駆動パルスの構成を説明する波形図である。
【図10】第3実施形態におけるエージング駆動パルスの構成を説明する波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための形態を、添付図面を参照して説明する。なお、以下に述べる実施の形態では、本発明の好適な具体例として種々の限定がされているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。また、以下においては、本発明の液体噴射装置として、インクジェット式記録装置(以下、プリンター)を例に挙げて説明する。
【0022】
図1はプリンター1の構成を示す斜視図である。例示したプリンター1は、液体噴射ヘッドの一種である記録ヘッド2から、記録紙6、布、フィルム等の記録媒体(液体の着弾対象)に向けて、液体の一種であるインクを噴射する。このプリンター1は、記録ヘッド2が取り付けられると共に、液体供給源の一種であるインクカートリッジ3が着脱可能に取り付けられるキャリッジ4と、記録動作時の記録ヘッド2の下方に配設されたプラテン5と、キャリッジ4を記録紙6の紙幅方向、即ち、主走査方向に往復移動させるキャリッジ移動機構7と、主走査方向に直交する副走査方向に記録紙6を搬送する紙送り機構8と、を備えて概略構成されている。
【0023】
キャリッジ4は、主走査方向に架設されたガイドロッド9に軸支された状態で取り付けられており、キャリッジ移動機構7の作動により、ガイドロッド9に沿って主走査方向に移動するように構成されている。キャリッジ4の主走査方向の位置は、リニアエンコーダー10によって検出され、その検出信号、即ち、エンコーダーパルス(位置情報の一種)がプリンターコントローラー36のCPU38(図4参照)に送信される。リニアエンコーダー10は位置情報出力手段の一種であり、記録ヘッド2の走査位置に応じたエンコーダーパルスを、主走査方向における位置情報として出力する。このため、CPU38は、受信したエンコーダーパルスに基づいてキャリッジ4に搭載された記録ヘッド2の走査位置を認識できる。即ち、例えば、受信したエンコーダーパルスをカウントすることで、キャリッジ4の位置を認識することができる。これにより、CPU38はこのリニアエンコーダー10からのエンコーダーパルスに基づいてキャリッジ4(記録ヘッド2)の走査位置を認識しながら、記録ヘッド2による記録動作を制御することができる。
【0024】
キャリッジ4の移動範囲内における記録領域よりも外側の端部領域には、キャリッジの走査の基点となるホームポジションが設定されている。本実施形態におけるホームポジションには、記録ヘッド2のノズル形成面(ノズルプレート29:図2,3等参照)を封止するキャッピング部材11と、ノズル形成面を払拭するためのワイパー部材12とが配置されている。そして、プリンター1は、このホームポジションから反対側の端部へ向けてキャリッジ4が移動する往動時と、反対側の端部からホームポジション側にキャリッジ4が戻る復動時との双方向で記録紙6上に文字や画像等を記録する双方向記録を行う。
【0025】
図2は、記録ヘッド2の構成を説明する要部断面図である。本実施形態における記録ヘッド2は、圧力発生ユニット15と流路ユニット16とから構成されており、これらを重ね合わせて一体化されている。圧力発生ユニット15は、圧力室17を区画するための圧力室プレート18、供給側連通口22及び第1連通口24aを開設した連通口プレート19、及び、圧電振動子20を実装した振動板21と、を積層し、焼成等により一体化することで構成されている。また、流路ユニット16は、供給口23や第2連通口24bを形成した供給口プレート25、リザーバー26や第3連通口24cを形成したリザーバープレート27、及び、ノズル28が形成されたノズルプレート29からなるプレート部材を積層状態で接着することで構成されている。
【0026】
図3は、ノズルプレート29の構成を説明する図である。本実施例におけるノズルプレート29は、インクを噴射するノズル28が、記録紙2の搬送方向と平行に360個が並ぶノズル列33(ノズル群の一種)を構成している。本実施形態におけるノズル列33は、例えば360dpiの形成ピッチで開設されたノズル28から成り、ノズルプレート29に合計4列(33a〜33d)形成されている。上記ノズル列33を用いたバンド記録の詳細については後述する。なお、1つのノズル列33を構成するノズル28の数や、ノズル列33の本数に関しては例示したものには限られない。
【0027】
圧力室17とは反対側となる振動板21の外側表面には、圧力室17毎に対応して圧電振動子20が配設される。例示した圧電振動子20は、所謂撓み振動モードの圧電振動子であり、駆動電極20aと共通電極20bとによって圧電体20cを挟んで構成されている。そして、圧電振動子20の駆動電極に駆動信号(駆動パルス)が印加されると、駆動電極20aと共通電極20bとの間には電位差に応じた電場が発生する。この電場は圧電体20cに付与され、圧電体20cが付与された電場の強さに応じて変形する。即ち、駆動電極20aの電位を高くする程、圧電体層20cの幅方向(ノズル列方向)の中央部が圧力室17の内側(ノズルプレート29に近づく側)に撓み、圧力室17の容積を減少させるように振動板21を変形させる。一方、駆動電極20aの電位を低くする程、圧電体層20cの短尺方向の中央部が圧力室17の外側(ノズルプレート29から離れる側)に撓み、圧力室17の容積を増加させるように振動板21を変形させる。
【0028】
次に、プリンター1の電気的構成を説明する。
図4は、プリンター1の電気的な構成を説明するブロック図である。外部装置35は、例えばコンピューターやデジタルカメラなどの画像を取り扱う電子機器である。この外部装置35は、プリンター1と通信可能に接続されており、プリンター1において記録紙等の記録媒体に画像やテキストを印刷させるため、その画像等に応じた印刷データをプリンター1に送信する。
【0029】
本実施形態におけるプリンター1は、紙送り機構8、キャリッジ移動機構7、リニアエンコーダー10、記録ヘッド2、及び、プリンターコントローラー36を有する。
【0030】
プリンターコントローラー36は、本発明における制御手段の一種であり、プリンターの各部の制御を行う制御ユニットである。プリンターコントローラー36は、インターフェース(I/F)部37と、CPU38と、記憶部39と、駆動信号生成部40と、を有する。インターフェース部37は、外部装置35からプリンター1へ印刷データや印刷命令を送ったり、外部装置35がプリンター1の状態情報を受け取ったりする等プリンターの状態データの送受信を行う。CPU38は、プリンター全体の制御を行うための演算処理装置である。記憶部39は、CPU38のプログラムや各種制御に用いられるデータを記憶する素子であり、ROM、RAM、NVRAM(不揮発性記憶素子)を含む。CPU38は、記憶部39に記憶されているプログラムに従って、各ユニットを制御する。
【0031】
駆動信号生成部40は、本発明における駆動波形発生手段として機能する部分であり、駆動信号の波形に関する波形データに基づいて、アナログの電圧信号を生成する。また、駆動信号生成部40は、上記の電圧信号を増幅して駆動信号COMを生成する。本実施形態におけるプリンター1は、液量の異なるインク滴を噴射することで、大きさの異なるドットを記録紙6に形成する多階調記録が可能であり、本実施形態においては、大ドット、中ドット、小ドット、及び非噴射(微振動)の4階調での記録動作が可能に構成されている。そして、駆動信号生成部40は、例えば、図5(a)に示す第1噴射駆動パルスDP1、第2噴射駆動パルスDP2、第3噴射駆動パルスDP3、第4噴射駆動パルスDP4、及び、非噴射のノズル28のメニスカスを微振動させる印字内微振動パルスVP1(何れも、本発明における駆動波形の一種。)を含んで構成される第1駆動信号COM1を発生する。この第1駆動信号COM1は、記録媒体(記録紙6)に対してインクを噴射して画像やテキスト等を記録(印刷)する際に用いられる駆動信号であり、記録ヘッド2が記録紙6上における記録領域(1回のパス(主走査)において記録(ドットの形成)が行われる領域。)内で定速移動しているとき(以下、単に定速移動時という)に、この第1駆動信号COM1の駆動パルスのうち何れかが選択的に圧電振動子20に印加される。
【0032】
噴射駆動パルスDP1〜DP4は、ノズル28からインクを噴射させるべく駆動電圧(駆動パルスの最低電位から最高電位までの電位差)や波形等が定められた駆動パルスである。そして、駆動信号COM1に含まれる各噴射駆動パルスの選択数に応じて、記録媒体に対して記録するドットの大きさが変わる。具体的には、噴射駆動パルスDP1〜DP4の4つの噴射駆動パルス全てが選択されて圧電振動子20に印加されると、ノズル28からインクが4回連続して噴射される。これらのインクが記録媒体における所定の画素領域に着弾すると大ドットが形成される。同様に、各噴射駆動パルスのうちの2つ、例えば、第1噴射駆動パルスDP1および第3噴射駆動パルスDP3が選択されて圧電振動子20に印加されると、ノズル28からインクが2回連続して噴射され、記録媒体上には中ドットが形成される。また、各噴射駆動パルスのうちの1つ、例えば、第2噴射駆動パルスDP2が選択されて圧電振動子20に印加されると、ノズル28からインクが1回噴射され、記録媒体上には小ドットが形成される。なお、ドットの大きさを示す大・中・小は相対的なものであり、実際のドットの大きさや液量についてはプリンター1の仕様に応じて定められる。また、印字内微振動パルスVP1は、記録動作中のノズル28におけるインクの増粘を抑制するべく、ノズル28からインクが噴射されない程度にメニスカスを微振動させ得る駆動電圧や波形に設定された駆動パルスである。なお、噴射駆動パルスDP1〜DP4、および、印字内微振動パルスVP1の構成およびその作用は周知であるため、これらの詳細な説明は省略する。
【0033】
本実施形態における駆動信号生成部40は、図5(b)に示すように、記録ヘッド2が主走査中に記録領域外で加速移動或いは減速移動しているとき(以下、単に加減速移動時という)に使用される第2駆動信号COM2を発生させる。この第2駆動信号COM2には、圧電振動子20を駆動して当該圧電振動子20の特性劣化を意図的に促進させるためのエージング駆動パルスAP(広義の非噴射駆動波形の一種。)が含まれる。このエージング駆動パルスAPは、基準電位Vbからエージング電位Vhaまでプラス側(第1の極性側)に電位を変化させる第1電位変化部p11と、エージング電位Vhaを所定時間維持する電位維持部p12(狭義の非噴射駆動波形の一種であり、直流電圧に相当する。)と、エージング電位Vhaから電位をマイナス側(第2の極性側)に変化させて基準電位Vbまで復帰させる第2電位変化部p13とにより構成されている。
【0034】
このエージング駆動パルスAPの駆動電圧(エージング駆動パルスAPの駆動パラメーターの一種。)、すなわち、基準電位Vbからエージング電位Vhaまでの電位差VDaは、圧電振動子20を最大限(或いはその近傍まで)に変形させ得る値に設定されている。また、第1電位変化部p11の単位時間あたりの電位変化率(エージング駆動パルスAPの駆動パラメーターの一種。以下、単に電位変化率という。)VDa/Ta1は、ノズル28からインクが噴射されない程度の値に設定されている。同様に、第2電位変化部p13の電位変化率VDa/Ta2についても、ノズル28からインクが噴射されない程度の値に設定されている。そして、電位維持部p12の時間幅Th(第1電位変化部p11の終端から第2電位変化部p12の始端までの時間。エージング駆動パルスAPの駆動パラメーターの一種。)は、後述する累積印加数に応じて設定される。この点の詳細については後述する。
【0035】
このエージング駆動パルスAPが圧電振動子20に供給されると、まず、第1電位変化部p11により、圧電振動子20が圧力室17の内側に彎曲する状態に撓み、インク滴が噴射されない程度に圧力室17が収縮する。そして、電位維持部p12により圧力室17の収縮状態が所定時間維持される。このとき、圧電振動子20は、撓んだ状態が維持されるので、圧電振動子20の圧電特性の劣化が促進される。その後、第2電位変化部p13が供給されることにより、圧電振動子20が元の状態(基準電位Vbに対応する状態)に復帰して圧力室17が基準容積に復帰する。このエージング駆動パルスAPを用いたエージング処理については後述する。
【0036】
プリンターコントローラー36のCPU38は、リニアエンコーダー10から出力されるエンコーダーパルスEPからタイミングパルスPTSを生成するタイミングパルス生成手段として機能する。そして、CPU38は、このタイミングパルスPTSに同期させて印刷データの転送や、駆動信号生成部40による駆動信号の生成等を制御する。また、CPU38は、タイミングパルスPTSに基づいて、ラッチ信号LAT等のタイミング信号を生成して記録ヘッド2のヘッド制御部53に出力する。ヘッド制御部53は、プリンターコントローラー36からのヘッド制御信号(印刷データおよびタイミング信号)に基づき、記録ヘッド2の圧電振動子20に対する駆動信号COMに含まれる噴射駆動パルスやエージング駆動パルスの印加制御等を行う。
【0037】
さらに、CPU38は、圧電振動子20に対する駆動波形(駆動パルス)の印加数を計数(累積)する計数手段としても機能する。すなわち、駆動信号COMに含まれる駆動パルスが圧電振動子20に印加される毎に加算値を累積印加数に加算し、当該累積印加数を当該圧電振動子20に対応するノズル28と対応付けて記憶部39に記憶(更新)する。加算値に関して、例えば、1つの噴射駆動パルスについて「1」が設定される。本実施形態では、図5(a)に示す駆動波形のうち、DP1とDP2とDP3とDP4を使って大ドットを形成し、DP1とDP3を使って中ドットを形成し、DP2を使って小ドットを形成する。したがって、大ドットを形成した場合、加算値は「4」、中ドットを形成した場合、加算値は「2」、小ドットを形成した場合、加算値は「1」となる。また、印字内微振動パルスVP1に対しては「0.5」が設定されている。また、本実施形態におけるエージング駆動パルスAPについては、電位維持部p12の時間幅Thに応じて加算値が定められる。すなわち、時間幅Thが短いほど加算値が小さく設定される一方、時間幅Thが長いほど加算値が大きく設定される。
【0038】
次に、上記のように構成されたプリンター1におけるバンド記録について説明する。バンド記録では、記録紙6に対し、主走査方向に列設された複数のドットから成る主走査ライン(ラスタライン)を副走査方向に複数並べて形成してバンド(ドット群の一種)を記録し、このバンド単位で画像等を印刷する。
【0039】
図6は、記録紙6に記録された第1のバンドB1(第1のドット群に相当)および第2のバンドB2(第2のドット群に相当)の境界部分(バンド間の繋ぎ目部分)の近傍を拡大して示した模式図である。図6では、1番から360番までの全てのノズル28を用いて一回の主走査により1つのバンドBを記録する例を示す。同図では、説明の便宜上、主走査ライン毎に、当該主走査ラインを記録するノズル28およびその番号が図示されている。なお、各バンドを区別する目的で各バンドの形成範囲をそれぞれ異なるハッチングで示しているが、ハッチングの濃さは当該バンドにおける色の濃さを示すものではない。
【0040】
本実施形態においては、例えば、ノズル列を構成する各ノズル28に対応する圧電振動子17に対して上記の噴射駆動パルスを印加して各ノズル28から記録紙6に向けてインクを噴射させる。これにより、各々の着弾領域にインクを着弾させてドットを形成し、このドットを主走査方向に複数列設することでノズル28毎に主走査ラインをそれぞれ形成する。そして、副走査方向に連続的に並ぶ360本の主走査ラインにより1つのバンドBが構成される。第1のバンドB1は、記録ヘッド2の往動時に形成されるバンドであり、第2のバンドB2は、記録ヘッド2の復動時に形成されるバンドである。本実施形態では、第1のバンドB1において358番から360番までのノズル28に対応する範囲(第2のバンドB2側の端部)と、第2のバンドB2において1番から3番までのノズル28に対応する範囲(第1のバンドB1側の端部)とが重なるように記録が行われる。この重なった範囲が境界部(重複範囲)B′である。
【0041】
具体的には、往動時(往路)における記録では、上記の噴射駆動パルスが、ノズル列を構成する1番ノズルから365番ノズルの計360個のノズル28にそれぞれ対応する圧電振動子20に印加されることで、各ノズル28からそれぞれ規定量のインクが噴射される。このインクが記録紙6の着弾領域に着弾してドットが形成され、このドットがマトリクス状に並ぶことで第1のバンドB1が記録される。第1のバンドB1が記録されたならば、紙送り機構8によって記録紙6が副走査方向に送られ、次のバンドB2が記録される。この際、図6の例では、357ライン分だけ記録紙6の副走査が行われた後、第1のバンドB1の副走査方向下流側に連続して次の第2のバンドB2が記録される。つまり、記録済みの第1のバンドB1の358番の主走査ラインから360番の主走査ライン(358番から360番の各ノズル28によって記録された主走査ライン)に対して、次の第2のバンドB2の1番の主走査ラインから3番の主走査ライン(1番から3番の各ノズル28によって記録される主走査ライン)が重なる状態で、第2のバンドB2の記録が行われる。これにより、本実施形態においては、主走査ライン3つ分だけ隣接バンド同士が重なる境界部B′が生じる。なお、この境界部B′の幅(主走査ライン数)は、例示したものに限られるものではなく、記録される画像や仕様等に応じて増減されるものである。また、境界部B′を形成する際の記録ヘッド2の走査回数は2回に限られず、3回以上の走査で形成される場合もある。
【0042】
本実施形態における境界部B′では、往動時と復動時の2回に分けて画像等の記録が行われるので、印刷データに基づいてドットの間引き処理が行われる。すなわち、例えば、仮に1回の走査で境界部B′が記録されるときのドットの形成数を100%としたとき、往復で記録する場合には、往路で50%、復路で50%、或いは、往路で30%、復路で70%のようにドット形成数が設定される。このようにドットを間引くことにより、境界部B′の記録を行うノズル28では、境界部B′以外の部分を記録するノズル28と比較してインクの噴射頻度、すなわち、噴射回数が低下する。
【0043】
図7は、同一のノズル列33を構成する各ノズル28の累積噴射回数の一例を示すグラフである。ここで、累積噴射回数は、説明の便宜ため、プリンター1の製造後においてインクが噴射された回数をノズル28毎に単に累積したものであり、上記の累積印加数とは厳密には異なる。同図に示すように、同一ノズル列33を構成するノズル28において、累積噴射回数(噴射頻度)、すなわち、使用率が異なり、特に、本実施形態で示したバンド記録を行うプリンター1では、ノズル列33の端部に位置するノズル28の使用率が相対的に低く、ノズル列33の中央部に位置するノズル28の使用率が相対的に高くなる傾向となる。このため、ノズル列端部に位置するノズル28に対応する圧電振動子20と比較して、ノズル列33の中央部に位置するノズル28に対応する圧電振動子20の圧電特性の劣化が大きくなる。これにより、何らかの対策を講じない場合、ノズル列33の中央部と端部とでインクの噴射特性に差が生じ、記録紙6に記録された記録画像に色ムラやスジなどが生じ、画質の低下に繋がる虞がある。
【0044】
上記の点に鑑み、本発明に係るプリンター1では、記録ヘッド2の主走査中における記録紙6の記録領域外において、上記の累積印加数に応じてエージング処理を行い、各ノズル28に対応する圧電振動子20の特性を可及的に揃えるようにしている。以下、この点について説明する。
【0045】
図8は、記録ヘッド2の走査中における記録処理とエージング処理が行われるタイミングを示したタイミングチャートである。プリンター1では、同図に示すように、記録ヘッド2が、記録媒体の記録領域内を定速で移動している定速移動時(定速期間)には、第1駆動信号COM1に含まれる何れかの駆動パルスが選択的に圧電振動子20に印加されて記録処理または印字内微振動が行われる。一方、記録ヘッド2(キャリッジ4)が記録領域外から記録領域内に進入するまでの加速移動時(加速期間)と、記録領域を超えて停止或いは移動方向を変換する位置までの減速移動時(減速期間)には、上記第2駆動信号COM2に含まれるエージング駆動パルスAPを用いて、各ノズル28に対応する圧電振動子20に対してエージング処理が行われる。本実施形態においては、ノズル28毎に対応して記憶されている累積印加数に応じて、当該ノズル28に対応する圧電振動子20に対して印加するエージング駆動パルスAPの電位維持部p12の時間幅Thが定められることで、圧電振動子20毎にエージング強度(特性劣化を促進させる度合い)が異なるようになっている。すなわち、累積印加数が大きいほど、電位維持部p12の時間幅Thがより短く設定され、累積印加数が小さいほど、電位維持部p12の時間幅Thがより長く設定される。
【0046】
したがって、使用率が比較的多く、劣化が進んでいる圧電振動子20に対しては、比較的弱いエージング強度でエージングが行われる一方、使用率が比較的少なく、劣化があまり進んでいない圧電振動子20に対しては、比較的強いエージング強度でエージングが行われる。これにより、劣化があまり進んでいない圧電振動子20に対するエージングが促進されるので、当該圧電振動子20の特性を、劣化が比較的進んでいる圧電振動子20の特性に近づけることができ、同一ノズル列33を構成する各ノズル28にそれぞれ対応する各圧電振動子20の特性のばらつきを低減することが可能となる。その結果、各ノズル28の噴射特性を可及的に揃えることが可能となり、記録画像における色ムラやスジ等を低減することができる。また、エージング駆動パルスAPは、インクの噴射を伴わないので、エージング処理においてインクを無駄に消費することがない。さらに、記録ヘッド2の走査時において記録領域外でエージング処理を行う構成であるため、エージング処理を行う期間を別途設ける必要が無く、スループットの低下を防止することができる。加えて、圧電振動子20の伸縮動作を繰り返さないので、圧力室内のインクが攪拌されない。このため、ノズル近傍の増粘したインクが圧力室側に取り込まれることを抑制することができる。このため、増粘したインクを排出するべくインクを捨て撃ちする所謂フラッシング処理に関して、エージング処理後においては不要となる。なお、最も使用率が多い圧電振動子20に対してはエージング処理を行わないようにすることも可能である。
【0047】
ところで、本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて種々の変形が可能である。
【0048】
上記実施形態では、エージング駆動パルスAPの電位維持部p12の時間幅Thを累積印加数に応じて変えることによってエージングを行う構成を例示したが、これには限られない。例えば、電位維持部p12の時間幅Thは一定とし、累積印加数に応じて駆動電圧VDaを変えるようにしても良い。すなわち、この場合、累積印加数が大きいほど駆動電圧VDaはより低い値に設定され、累積印加数が小さいほど駆動電圧VDaはより大きい値に設定される。また、例えば、第1電位変化部p11または第2電位変化部p13の電位変化率を、累積印加数に応じて変えてもよい。すなわち、この場合、累積印加数が大きいほど電位変化率(VDa/Ta1またはVDa/Ta2)はより小さい値に設定され、累積印加数が小さいほど電位変化率はより大きい値に設定される。この場合の電位変化率は、ノズル28からインクが噴射されない範囲内の値に設定することが望ましい。
【0049】
図9は、第2実施形態におけるエージング駆動パルスAP′(本発明における非噴射駆動波形の一種であり、台形波の一種。)の構成を説明する波形図である。このエージング駆動パルスAP′は、基準電位Vbからエージング電位Vha′までプラス側に電位を変化させる第1電位変化部p21と、エージング電位Vha′を所定時間維持する電位維持部p22と、エージング電位Vha′から電位をマイナス側に変化させて基準電位Vbまで復帰させる第2電位変化部p23とにより構成されている。
【0050】
このエージング駆動パルスAP′の駆動電圧、すなわち、基準電位Vbからエージング電位Vha′までの電位差VDa′は、第1実施形態で例示したエージング駆動パルスAPの駆動電圧VDaよりも低く設定される。また、第1電位変化部p21の電位変化率VDa′/Ta1′は、ノズル28からインクが噴射されない程度の値に設定されている。同様に、第2電位変化部p23の電位変化率VDa′/Ta2′についても、ノズル28からインクが噴射されない程度の値に設定されている。さらに、電位維持部p22の時間幅Th′は、エージング駆動パルスAPの電位維持部p12の時間幅Thよりも十分に短く設定される。
【0051】
本実施形態におけるエージング駆動パルスAP′は、一般的なプリンターで用いられる微振動駆動パルスとして用いられる駆動波形の波形と近似している。このため、本実施形態におけるエージング駆動パルスAP′を用いたエージング処理は、所謂印字外微振動も兼ねる。そして、一回のエージング処理で各々の圧電振動子20に印加されるエージング駆動パルスAP′の連続印加回数(エージング駆動パルスAPに関する駆動パラメーターの一種。)は、ノズル28毎に対応して記憶されている累積印加数に応じて定められる。すなわち、累積印加数が大きいほど、連続印加回数がより少なく設定され、累積印加数が小さいほど、連続印加回数がより多く設定される。したがって、使用率が比較的多く、劣化が進んでいる圧電振動子20に対しては、比較的少ない印加回数でエージングが行われる一方、使用率が比較的少なく、劣化が進んでいない圧電振動子20に対しては、比較的多い印加回数でエージングが行われる。これにより、同一ノズル列33を構成する各ノズル28にそれぞれ対応する各圧電振動子20の特性のばらつきを低減することが可能となる。なお、本実施形態のエージング駆動パルスAP′1つあたりの累積印加数に対する加算値は、例えば、印字内微振動パルスVP1と同じ0.5に設定される。
【0052】
このように、本実施形態の構成によれば、エージング処理が微振動処理を兼ねるので、これらの処理を別々に行う必要が無く効率が良い。なお、その他の構成については上記第1実施形態と同様であるため、その説明は省略する。
【0053】
図10は、第3実施形態におけるエージング駆動パルスAP″(本発明における非噴射駆動波形の一種。)の構成を説明する波形図である。このエージング駆動パルスAP″は、基準電位Vbからエージング電位Vha″までプラス側に電位を変化させる第1電位変化部p31と、エージング電位Vha″から電位をマイナス側に変化させて基準電位Vbまで復帰させる第2電位変化部p32とにより構成されている。すなわち、このエージング駆動パルスAP″は、上記第1実施形態におけるエージング駆動パルスAPの電位維持部p12、あるいは、上記第2実施形態におけるエージング駆動パルスAP′の電位維持部p22に相当する波形成分を有していない点に特徴を有している。
【0054】
このエージング駆動パルスAP″の駆動電圧、すなわち、基準電位Vbからエージング電位Vha″までの電位差VDa″は、第1実施形態で例示したエージング駆動パルスAPの駆動電圧VDaよりも低く設定される。また、第1電位変化部p31の電位変化率VDa″/Ta1″は、ノズル28からインクが噴射されない程度の値に設定されている。同様に、第2電位変化部p32の電位変化率VDa″/Ta2″についても、ノズル28からインクが噴射されない程度の値に設定されている。
【0055】
本実施形態におけるエージング駆動パルスAP″は、所謂三角波(Ta1′=Ta2′の場合)あるいは鋸波(Ta1′≠Ta2′の場合)と呼ばれる電圧波形を呈するものである。このため、上記第1実施形態および第2実施形態の構成と比較して、圧電振動子20の伸縮方向の切り替えが急激となり、当該圧電振動子20に対するエージング駆動時の負荷がより大きくなる。そして、一回のエージング処理で各々の圧電振動子20に印加されるエージング駆動パルスAP″の連続印加回数(駆動パラメーターの一種。)は、ノズル28毎に対応して記憶されている累積印加数に応じて定められる。すなわち、累積印加数が大きいほど、連続印加回数がより少なく設定され、累積印加数が小さいほど、連続印加回数がより多く設定される。したがって、使用率が比較的多く、劣化が進んでいる圧電振動子20に対しては、比較的少ない印加回数でエージングが行われる一方、使用率が比較的少なく、劣化が進んでいない圧電振動子20に対しては、比較的多い印加回数でエージングが行われる。これにより、同一ノズル列33を構成する各ノズル28にそれぞれ対応する各圧電振動子20の特性のばらつきを低減することが可能となる。なお、本実施形態のエージング駆動パルスAP″1つあたりの累積印加数に対する加算値は、例えば、3に設定される。
なお、その他の構成については上記各実施形態と同様であるため、その説明は省略する。
【0056】
さらに、上記各実施形態では、圧力発生手段として、所謂撓み振動型の圧電振動子20を例示したが、これには限られず、例えば、所謂縦振動型の圧電振動子にも本発明を適用することも可能である。
この場合、例示した各駆動信号(駆動パルス)の波形に関し、電位の変化方向、つまり上下が反転した波形となる。
【0057】
そして、本発明は、駆動波形の印加により圧力発生手段を駆動して液体の噴射制御が可能な液体噴射装置であれば、プリンターに限らず、プロッター、ファクシミリ装置、コピー機等、各種のインクジェット式記録装置や、記録装置以外の液体噴射装置、例えば、ディスプレイ製造装置、電極製造装置、チップ製造装置等にも適用することができる。そして、ディスプレイ製造装置では、色材噴射ヘッドからR(Red)・G(Green)・B(Blue)の各色材の溶液を噴射する。また、電極製造装置では、電極材噴射ヘッドから液状の電極材料を噴射する。チップ製造装置では、生体有機物噴射ヘッドから生体有機物の溶液を噴射する。
【符号の説明】
【0058】
1…プリンター,2…記録ヘッド,6…記録紙,7…キャリッジ移動機構,8…紙送り機構,17…圧電振動子,21…ノズルプレート,25…圧力室,27…ノズル,36…プリンターコントローラー,38…CPU,40…駆動信号生成部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズルが複数列設されて成るノズル群と、各ノズルに連通する圧力室に圧力変動を生じさせる圧力発生手段と、を有し、当該圧力発生手段によって前記ノズルから液体を噴射させる液体噴射ヘッドと、
前記圧力発生手段を駆動させる駆動波形を発生させる駆動波形発生手段と、
前記液体噴射ヘッドによる液体の噴射を制御する制御手段と、
前記駆動波形の累積印加数を計数する計数手段と、
を備え、
前記駆動波形発生手段は、非噴射駆動波形を発生させ、
前記非噴射駆動波形の駆動パラメーターは、駆動電圧、単位時間あたりの電位変化率、電位を一定に維持するホールド時間、又は、パルス連続印加回数の少なくとも何れか1つであり、
前記制御手段は、前記累積印加数に応じて設定された前記非噴射駆動波形を用いて前記圧力発生手段を駆動するエージング処理を行うことを特徴とする液体噴射装置。
【請求項2】
前記制御手段は、液体噴射ヘッドの主走査において記録が行われる記録領域、および、記録が行われない記録領域外のうち、記録が行われない記録領域外を有し、前記記録領域外においてエージング処理を行うことを特徴とする請求項1に記載の液体噴射装置。
【請求項3】
前記累積印加数が相対的に多いときは前記累積印加数が相対的に少ないときよりも前記駆動パラメーターの駆動強度を低く設定することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の液体噴射装置。
【請求項4】
前記非噴射駆動波形は直流電圧であることを特徴とする請求項1から請求項3の何れか一項に記載の液体噴射装置。
【請求項5】
前記非噴射駆動波形は台形波であることを特徴とする請求項1から請求項3の何れか一項に記載の液体噴射装置。
【請求項6】
前記非噴射駆動波形は三角波又は鋸波であることを特徴とする請求項1から請求項3の何れか一項に記載の液体噴射装置。
【請求項7】
ノズルが複数列設されて成るノズル群と、各ノズルに連通する圧力室に圧力変動を生じさせる圧力発生手段と、を有し、当該圧力発生手段によって前記ノズルから液体を噴射させる液体噴射ヘッドと、
前記圧力発生手段を駆動させる駆動波形を発生させる駆動波形発生手段と、
前記液体噴射ヘッドによる液体の噴射を制御する制御手段と、
前記駆動波形の累積印加数を計数する計数手段と、
を備え、
前記駆動波形発生手段は、駆動パラメーターによって非噴射駆動波形を発生させ、
前記駆動パラメーターは、駆動電圧、単位時間あたりの電位変化率、電位を一定に維持するホールド時間、又は、パルス連続印加回数の少なくとも何れか1つであり、
前記制御手段は、前記累積印加数に応じて設定された前記非噴射駆動波形を用いて前記圧力発生手段を駆動するエージング処理を行うことを特徴とする液体噴射装置の制御方法。
【請求項8】
前記制御手段は、液体噴射ヘッドの主走査において記録が行われる記録領域と、記録が行われない記録領域外を有し、前記記録領域外においてエージング処理を行うことを特徴とする請求項7に記載の液体噴射装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−22931(P2013−22931A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−162895(P2011−162895)
【出願日】平成23年7月26日(2011.7.26)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】