説明

液体噴射装置、メンテナンス方法

【課題】クリーニングに伴ってノズルから気泡が混入した場合であっても該気泡を排出することができる液体噴射装置、メンテナンス方法を提供する。
【解決手段】インクを噴射するノズル23が形成された液体噴射ヘッド18と、ノズル23のクリーニングを行うメンテナンス装置14と、ノズル23から第1液量のインクを噴射した後、ノズル23から第1液量よりも大きな第2液量のインクを噴射し、さらにその後第2液量よりも大きな第3液量のインクを噴射するように、液体噴射ヘッド18を制御する制御部60とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばインクジェット式プリンターなどの液体噴射装置、液体噴射装置におけるメンテナンス方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液体噴射装置の一つとして、インクジェット式プリンターが広く知られている。このプリンターでは、記録ヘッド(液体噴射ヘッド)に形成されたノズルから記録媒体にインク(液体)を噴射することにより印刷(記録)を施すようになっている。
【0003】
こうしたプリンターにおいては、例えばインク中にノズルから気泡が混入した状態や、インクが増粘した状態で、そのようなインクを噴射すると、印刷した画像にドット抜けが生じてしまうことがある。そのため、このようなプリンターでは、ノズル形成面に形成された各ノズルをキャップで囲んだ状態で該キャップ内の圧力を低下させることにより、気泡が混入したり増粘したりしたインクを排出させるクリーニングを実行するようになっている。
【0004】
また、ノズルからインクを噴射して印刷を行うプリンターでは、噴射時以外におけるノズルからのインクの漏出を抑制するために、ノズルから噴射可能なインクに負圧を付与している。そのため、クリーニングに伴ってキャップに排出された排出インク(排出液)が負圧により逆流して再びノズル内に混入してしまうことがある。そして、複数種類のインクが排出されたキャップから排出インクが逆流してノズル内に混入した状態で印刷を行うと、多数のノズルからなるノズル列において排出インクが混入したノズルと混入していないノズルとで色目が変化して印刷品質を低下させてしまうという問題があった。
【0005】
これに対し、特許文献1のプリンターでは、クリーニング後にノズルから印刷とは無関係にインクを噴射する所謂フラッシングを行い、ノズル内に混入した排出インクをノズル外に排出した状態で印刷を行うことにより印刷品質の低下を抑制していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−74113号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、クリーニングを行うと、インクのメニスカスが崩れて不安定な状態となるため、特許文献1のプリンターでは、まず通常のフラッシング時よりも小さなインク滴でインクを噴射する弱フラッシングを行うことによりメニスカスの安定を図り、その後に大きなインク滴でインクを噴射する通常フラッシングを行っていた。
【0008】
しかし、特許文献1のように、通常フラッシング時よりも小さなインク滴でインクを噴射する弱フラッシングを行ったとしても、小さなインク滴ではメニスカスを十分に安定させることができないことがあった。そして、そのようにメニスカスが不安定な状態では、その後に続けて大きなインク滴でインクを噴射する通常フラッシングをしても、クリーニングに伴って混入した気泡を十分に排出することができないという問題があった。
【0009】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、クリーニングに伴ってノズルから気泡が混入した場合であっても該気泡を排出することができる液体噴射装置、メンテナンス方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の液体噴射装置は、液体を噴射するノズルが形成された液体噴射ヘッドと、前記ノズルのクリーニングを行うクリーニング手段と、前記ノズルから第1液量の液体を噴射した後、前記ノズルから前記第1液量よりも大きな第2液量の液体を噴射し、さらにその後、前記第2液量よりも大きな第3液量の液体を噴射するように、前記液体噴射ヘッドを制御する制御手段とを備える。
【0011】
この構成によれば、ノズルからまず第1液量の液体が噴射されることにより、クリーニングに伴って崩れたメニスカスの回復が図られる。しかし、第1液量は小さいため、第1液量の液体を噴射するだけではメニスカスを安定させるには不十分であることもある。そこで、第1液量よりも大きな第2液量の液体がさらに噴射されることにより、メニスカスが整えられつつ、ノズル内に混入していた気泡の排出が図られる。しかし、第2液量の液体を噴射しても、気泡がノズル内に残ってしまうことがあるため、さらに第2液量よりも大きい第3液量の液体が噴射されることにより、ノズル内の気泡が排出される。したがって、クリーニングに伴ってノズルから気泡が混入した場合であっても該気泡を排出することができる。
【0012】
本発明の液体噴射装置において、前記制御手段は、前記液体噴射ヘッドに、前記第1液量、前記第2液量、前記第3液量での液体の噴射を複数回実行させる。
ノズルから混入して内部まで入り込んだ気泡は、大きな液量の液体の噴射によってさらに引き込まれてしまう虞がある。その点、この構成によれば、先の噴射によって気泡が内部まで入り込んでしまった場合であっても、液量が次第に大きくなる第1液量、第2液量、第3液量での液体の噴射を続けて行うことにより、気泡をノズルの開口付近まで移動させて排出することができる。
【0013】
本発明の液体噴射装置において、前記制御手段は、前記液体噴射ヘッドに、前記第1液量の液体を第1周波数で噴射させ、前記第2液量の液体を前記第1周波数よりも高い第2周波数で噴射させ、前記第3液量の液体を前記第2周波数よりも高い第3周波数で噴射させる。
【0014】
メニスカスが崩れた状態において高周波数で液体を噴射させると、さらにメニスカスを崩してしまう虞がある。その点、この構成によれば、第1液量、第2液量、第3液量の液体を順に噴射してメニスカスを徐々に安定させると共に、メニスカスの安定に合わせて徐々に周波数を高くするため、メニスカスの崩れを抑制しつつ液体を噴射することができる。
【0015】
本発明の液体噴射装置において、前記制御手段は、前記液体噴射ヘッドに、前記第1液量、前記第2液量での液体の噴射を実行させた後、前記第2液量、前記第3液量での液体の噴射を実行させる。
【0016】
この構成によれば、第1液量、第2液量、第3液量での液体の噴射のうち、メニスカスの安定化が最も期待できる第2液量での液体の噴射を連続させつつ、第1液量から第2液量、第2液量から第3液量へと噴射される液体の液滴の大きさを変化させるので、メニスカスを安定させつつ気泡を効率よく除去することができる。
【0017】
本発明のメンテナンス方法は、液体噴射ヘッドに形成されて液体を噴射するノズルのクリーニングを行うクリーニング段階と、前記ノズルから第1液量の液体を噴射させる第1の噴射段階と、前記ノズルから前記第1液量よりも大きな第2液量の液体を噴射させる第2の噴射段階と、前記ノズルから前記第2液量よりも大きな第3液量の液体を噴射させる第3の噴射段階とを備える。
【0018】
この構成によれば、上記液体噴射装置に係る発明と同様の作用効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態におけるプリンターの概略構成を示す断面図。
【図2】クリーニング時の液体噴射ヘッド及びキャップの模式断面図。
【図3】クリーニング時の液体噴射ヘッド及びキャップの模式断面図。
【図4】ワイピング時の液体噴射ヘッドの模式断面図。
【図5】フラッシング時の液体噴射ヘッド及びキャップの模式断面図。
【図6】フラッシングの種類を示す表。
【図7】(a)は弱フラッシング時のノズルの模式断面図、(b)は中フラッシング時のノズルの模式断面図、(c)は強フラッシング時のノズルの模式断面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を液体噴射装置の一種であるインクジェット式プリンター(以下、単に「プリンター」という)に具体化した実施形態を図1〜図7を参照しながら説明する。なお、以下の説明においては、図1中に矢印で示すように、鉛直方向における重力方向を下方向、反重力方向を上方向とする。また、鉛直方向と交差する方向であって、プリンターに給送された用紙が画像の形成時において搬送される搬送方向を前方向、その搬送方向の反対方向を後方向とする。さらに鉛直方向および搬送方向の双方と交差する方向であって液体噴射ヘッドが往復移動する方向すなわち走査方向を、前方から見て、それぞれ右方向、左方向と呼ぶことにする。
【0021】
図1に示すように、液体噴射装置としてのプリンター11の本体ケース12内には、媒体となる用紙Pに対してインク(液体)を噴射して印刷(記録)を施す記録部13と、クリーニング手段としてのメンテナンス装置14が左右方向に並ぶように収容されている。また、本体ケース12内には、左右方向に延びる棒状のガイド軸15と、用紙Pを支持する支持台16とが収容されている。
【0022】
記録部13は、ガイド軸15に左右方向への往復移動可能な状態で支持されたキャリッジ17と、キャリッジ17の下面側に支持された液体噴射ヘッド18とを備える。キャリッジ17は、図示しない駆動機構により、左右方向に往復移動するようになっている。なお、本実施形態においては、本体ケース12内の右端側をホームポジション側とするとともに、ホームポジション側から印刷領域となる左側に向かう左方向を移動方向Xとして図示している。
【0023】
キャリッジ17には、インクを収容したインクカートリッジ19が着脱可能に装着されるとともに、液体噴射ヘッド18側となる下流側に向けてインクを供給するインク供給路20が設けられている。インクカートリッジ19及びインク供給路20は、インクの色数等(本実施形態では4色)に対応して複数設けられている。
【0024】
液体噴射ヘッド18には、各インク供給路20を通じて供給されたインクを噴射する複数のノズル23が設けられているとともに、液体噴射ヘッド18の下面側からなるノズル形成面24には、ノズル23のノズル開口25が形成されている。また、支持台16上には、図示しない搬送機構によって後方から前方に向けて用紙Pが搬送される。そして、キャリッジ17が移動方向Xに沿って直線移動(走査)しながら、ノズル23から支持台16上の用紙Pにインク滴を噴射することにより、印刷(記録)が行われるようになっている。
【0025】
なお、液体噴射ヘッド18においては、各色に対応するノズル23が移動方向Xに沿って配置されるとともに、同一色のインクを噴射する複数のノズル23が用紙Pの搬送方向と一致するノズル列方向Yに沿って延びるノズル列N(図2参照)を形成している。すなわち、液体噴射ヘッド18には、複数のノズル23からなるノズル列Nが複数列設けられている。そして、キャリッジ17の走査毎にノズル列Nの長さに対応する幅の印刷が行われるとともに、間欠的に用紙Pが搬送されるようになっている。
【0026】
次に、液体噴射ヘッド18の構成について詳述する。
図1の一部拡大断面図に示すように、液体噴射ヘッド18は、上下方向に積層された流路形成部材40、振動板41、流路形成部材42及びノズルプレート43を備えている。
【0027】
流路形成部材40には、リザーバー44と、収容室45とが形成されているとともに、リザーバー44内にインクカートリッジ19から供給されたインクを流入させるための流入孔46が形成されている。また、振動板41には、リザーバー44内のインクを各ノズル23に向けて供給する複数の流出孔47が設けられている。
【0028】
図2に示すように、リザーバー44は、インクを一時貯留するために一方向(ノズル列方向Y)に沿って延びるように設けられている。そして、流入孔46は、リザーバー44のノズル列方向Yにおける中央付近に設けられているとともに、複数の流出孔47はノズル列方向Yに沿って並ぶように配置されている。なお、図2においては、簡略化のため、それぞれノズル列Nを構成するノズル23の数を省略して図示している。
【0029】
図1に示すように、流路形成部材42には、流出孔47を通じてリザーバー44と連通するキャビティ48が形成されている。また、収容室45内において振動板41の上面側には、キャビティ48の上方となる位置に圧電素子49が配設されている。
【0030】
また、ノズルプレート43にはキャビティ48と連通するノズル23が貫通形成されている。すなわち、キャビティ48は、リザーバー44からノズル23に向けて分岐するように形成されている。そして複数のノズル23は、リザーバー44、流出孔47、キャビティ48を介してそれぞれ連通している。
【0031】
また、液体噴射ヘッド18のノズル形成面24は、ノズルプレート43の下面(底面)によって構成されている。すなわち、複数のノズル23のノズル開口25は、一平面としてのノズル形成面24上に並ぶように配置されている。
【0032】
なお、ノズル23には、インクカートリッジ19に設けられた弁(図示略)により、負圧が付与された状態のインクが供給されるようになっている。そのため、インクはノズル23からの漏出が抑制されてノズル23内に保持され、ノズル開口25の付近にメニスカスMを形成するようになっている。なお、メニスカスMとは、毛細管現象によってインクの中央部がノズル開口25から見て凹面形状をなすように盛り上がってできる曲面のことである。
【0033】
また、振動板41は上下方向に振動可能に貼り付けられているとともに、圧電素子49は駆動信号を受けて伸縮することで、振動板41を上下方向に振動させるようになっている。また、振動板41が上下方向に振動すると、キャビティ48の容積が拡縮するようになっている。そして、キャビティ48の容積が縮小されると、キャビティ48内のインクがノズル23からインク滴として噴射されるようになっている。
【0034】
なお、本実施形態では、圧電素子49に対して3種類の電気信号が印加され、該電気信号に応じて振動板41の振動態様を変化させることにより第1〜第3液量のインク滴がそれぞれ噴射されるようになっている。ただし、第2液量は第1液量よりも大きく、且つ第3液量よりも小さいものとする(第1液量<第2液量<第3液量)。
【0035】
そして、ノズル23からインク滴が噴射されると、ノズル23内にはキャビティ48内から毛管力によってインクが補充される。すなわち、各インクカートリッジ19からインク供給路20を通じて液体噴射ヘッド18に供給されたインクはリザーバー44に一時貯留され、リザーバー44から流出孔47及びキャビティ48を通じて各ノズル23に供給されるようになっている。
【0036】
次に、メンテナンス装置14について説明する。
図1に示すように、メンテナンス装置14は、キャップ50と、キャップ50を移動させるための移動機構51と、廃液タンク52と、廃液チューブ53aと、吸引ポンプ53と、ワイパー部材54とを備えている。なお、廃液チューブ53aはキャップ50と廃液タンク52とを接続するとともに、その途中位置には吸引ポンプ53が設けられている。
【0037】
ワイパー部材54は、移動機構51によってノズル形成面24に当接するワイピング位置まで上昇移動することが可能となっている。そして、ワイパー部材54をワイピング位置に移動させた状態でキャリッジ17を移動させることで、液体噴射ヘッド18のノズル形成面24をワイピング(払拭)するようになっている。
【0038】
図2に示すように、キャップ50は、上側が開口した有底箱状をなし、その開口部50aがノズル形成面24に当接(キャッピング)することにより、ノズル23を囲む空間RSが形成されるようになっている。また、キャップ50の内底部には、廃液チューブ53aの上流端が開口するとともに、側壁部50bには、空間RSを大気に連通させるための大気開放弁55が設けられている。そして、キャップ50は、移動機構51によって上下方向に移動されることにより、液体噴射ヘッド18のノズル形成面24に当接する当接位置と、ノズル形成面24から離間した非当接位置(最下位置)との間を移動するようになっている。
【0039】
また、図1に示すように、プリンター11は、プリンター11の稼動状態を統括制御する制御手段としての制御部60を備えている。なお、制御部60は、圧電素子49(液体噴射ヘッド18)、移動機構51、吸引ポンプ53、大気開放弁55の駆動を制御し、キャッピング、クリーニング及びワイピングなどのメンテナンス動作を実行するようになっている。
【0040】
次に、メンテナンス装置14が液体噴射ヘッド18のメンテナンスを行う場合の作用について図2〜図7に基づいて説明する。
なお、キャリッジ17は、印刷が終了すると、支持台16上の印刷領域から右方に移動して、メンテナンス装置14の上方となるホームポジションに停止する。そして、大気開放弁55が閉弁された状態(図2では塗りつぶし表示)でキャップ50が当接位置に位置してノズル23を囲むようになっている。
【0041】
さて、図2に示すように、メンテナンス動作が実行されると、制御部60は、吸引ポンプ53を駆動して空間RS内の空気を吸引して該空間RS内に負圧を生じさせた後、吸引ポンプ53の駆動を停止する(クリーニング段階)。すると、ノズル23からは、ドット抜けの要因となる気泡や増粘インクがキャップ50内に排出されるとともに、インクの排出に伴って空間RSの負圧が徐々に解消されてインクの排出が停止する。
【0042】
そして、キャップ50内にインクが排出されると、図3に示すように、制御部60は、大気開放弁55を開弁し(図3では白抜き表示)、再び吸引ポンプ53を駆動する。すると、キャップ50内には大気開放弁55を介して空気が吸い込まれるとともに、排出インクが廃液チューブ53aを介して廃液タンク52に排出され、キャップ50内の負圧も解消される。
【0043】
ところで、ノズル23内に存在するインクにはインクカートリッジ19側から負圧が付与されている。そのため、例えば図2に示すように、キャップ50内に排出された排出液としての排出インクがノズル開口25に接触すると共に、そのときのインクカートリッジ19側からの負圧力が廃液タンク52側からの吸引圧よりも強い場合には、排出インク(図2では排出インクを網掛け表示)が気泡と共にノズル23内にキャップ50内から逆流して混入し、メニスカスMを崩してしまうことがある。
【0044】
さらに、図4に示すように、制御部60はクリーニングを実行すると、続いて移動機構51を制御してワイパー部材54をワイピング位置に移動させるとともに、キャリッジ17を移動方向Xに移動させる。するとワイパー部材54はノズル形成面24を払拭(ワイピング)し、ノズル形成面24に付着した排出インクなどを除去する。
【0045】
なお、ワイピングを行うことにより、ノズル形成面24に付着していた排出インクがノズル開口25から押し込まれ、ノズル23内に排出インクと気泡が混入するとともに、メニスカスMを崩してしまうことがある。
【0046】
そこで、制御部60は、移動機構51を制御してキャップ50を当接位置と非当接位置との間となるフラッシング位置(図5参照)に移動させる。さらに、制御部60は、圧電素子49を制御して全てのノズル23からインクを噴射させる弱フラッシング、中フラッシング、強フラッシングを順に実行する。
【0047】
なお、本実施形態では、図6に示すように、弱フラッシングでは、第1周波数(本実施形態では一例として1.44kHz)でノズル23から第1液量の場合の重量(本実施形態では一例として5ng)のインク滴を1000回噴射させる。そして、中フラッシングでは、第2周波数(本実施形態では一例として5.13kHz)でノズル23から第2液量の場合の重量(本実施形態では一例として8ng)のインク滴を3000回噴射させる。さらに強フラッシングでは、第3周波数(本実施形態では17.28kHz)でノズル23から第3液量の場合の重量(本実施形態では一例として20ng)のインク滴を4800回噴射させる。すなわち、中フラッシングは、弱フラッシングよりも高い周波数でインクを噴射するのに対し、強フラッシングよりも低い周波数でインクを噴射するようになっている(第1周波数<第2周波数<第3周波数)。
【0048】
したがって、図7(a)に示すように、メンテナンス(クリーニング、ワイピング)が行われた状態において、まず弱フラッシングを実行すると、ノズル23からは第1液量のインク滴が第1周波数で噴射される(第1の噴射段階)。すなわち、ノズル23からは、中フラッシングや強フラッシングに比べて低周波数で小液量のインク滴が噴射される。そのため、ノズル23内に混入した排出インクや気泡は排出されにくいものの、メニスカスMが崩れた状態でインクを噴射しても噴射したインクの飛行曲がりやミストの発生が抑制された状態で徐々にメニスカスMの崩れが整えられる。
【0049】
続いて、図7(b)に示すように、弱フラッシングを実行した後、続いて中フラッシングを実行する(第2の噴射段階)。すなわち、弱フラッシングによってメニスカスMの崩れが若干整えられているため、第1液量よりも大きな第2液量のインク滴を第1周波数よりも高い第2周波数で噴射してもインクの噴射に伴うメニスカスMの崩れは抑制される。したがって、中フラッシングによってメニスカスMをさらに整えつつ、弱フラッシングに比べて効率よく排出インク及び気泡が排出される。
【0050】
さらに図7(c)に示すように、中フラッシングを実行した後、続いて強フラッシングを実行する(第3の噴射段階)。すると、中フラッシングによってメニスカスMの崩れがさらに整えられているため、第2液量よりも大きな第3液量のインク滴を第2周波数よりも高い第3周波数で噴射してもインクの噴射に伴うメニスカスMの崩れは抑制される。したがって、噴射したインクの飛行曲がりやミストの発生が抑制された状態で排出インク及び気泡が排出されるとともに、メニスカスMが安定して印刷が可能な状態となる。
【0051】
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)弱フラッシングを行ってノズル23からまず第1液量のインク(インク滴)が噴射されることにより、クリーニングに伴って崩れたメニスカスMの回復が図られる。しかし、第1液量は小さいため、第1液量のインクを噴射するだけではメニスカスMを安定させるには不十分であることもある。そこで、中フラッシングを行って第1液量よりも大きな第2液量のインクがさらに噴射されることにより、メニスカスMを整えつつ、ノズル23内に混入した気泡の排出を図ることができる。しかし、第2液量のインクを噴射しても、気泡がノズル23内に残ってしまうことがあるため、強フラッシングを行ってさらに第2液量よりも大きな第3液量のインクを噴射することにより、ノズル23内の気泡を排出することができる。したがって、クリーニングに伴ってノズル23から気泡が混入した場合であっても該気泡を排出することができる。
【0052】
(2)メニスカスMが崩れた状態において高周波数(第3周波数)で液体を噴射させると、さらにメニスカスMを崩してしまう虞がある。その点、第1液量、第2液量、第3液量のインクを順に噴射してメニスカスMを徐々に安定させると共に、メニスカスMの安定に合わせて徐々に周波数を高くするため、メニスカスMの崩れを抑制しつつインクを噴射することができる。
【0053】
(3)1回の噴射で噴射されるインク滴の大きさを徐々に大きくすることにより、メニスカスMを徐々に安定させることができる。したがって、メニスカスMが崩れた状態で液量の大きなインクを噴射すると噴射されたインクに飛行曲がりが生じてしまうが、メニスカスMが徐々に安定するのに合わせてインク滴の大きさを徐々に大きくすることにより、飛行曲がりの発生を抑制することができる。
【0054】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・上記実施形態において、弱フラッシング、中フラッシング、強フラッシングの各フラッシングでインクを噴射する際の周波数は、弱フラッシング時のインク滴の大きさ<中フラッシング時のインク滴の大きさ<強フラッシング時のインク滴の大きさを満足できる範囲ならば、実施形態に一例として記載した周波数に限定されるものではない。
【0055】
・上記実施形態において、弱フラッシング、中フラッシング、強フラッシングからなるフラッシング処理を複数回繰り返して実行させてもよい。ノズル23から混入して内部まで入り込んだ気泡は、大きな液量のインクの噴射によってさらに引き込まれてしまう虞がある。その点、フラッシング処理を複数回実行することにより、先の噴射によって気泡が内部まで入り込んでしまった場合であっても、液量が次第に大きくなる第1液量、第2液量、第3液量でのインクの噴射を続けて行うことにより、気泡をノズル23のノズル開口25付近まで移動させて排出することができる。
【0056】
・上記実施形態において、第1液量、第2液量でのインク滴の噴射を実行した後、第2液量、第3液量でのインク滴の噴射を実行することにより、第1液量、第2液量、第3液量でのインクの噴射を行うようにしてもよい。この場合には、第1液量、第2液量、第3液量でのインクの噴射のうち、メニスカスの安定化が最も期待できる第2液量でのインクの噴射を連続させつつ、第1液量から第2液量、第2液量から第3液量へと噴射されるインクのインク滴の大きさを変化させるので、メニスカスを安定させつつ気泡を効率よく除去することができる。
【0057】
・上記実施形態において、フラッシングの種類を4種類以上としてもよい。そして、例えば、噴射するインクの液量が小さい順に、第1フラッシング、第2フラッシング、第3フラッシング、第4フラッシングとすると、第1フラッシング、第2フラッシング、第3フラッシングを実行した後に、第2フラッシング、第3フラッシング、第4フラッシングを行うようにしてもよい。
【0058】
・上記実施形態において、フラッシング処理の途中に待機時間を設定してもよい。例えば、弱フラッシング、中フラッシングを行った後に待機し、さらに中フラッシング、強フラッシングを行うようにしてもよい。また、弱フラッシング、中フラッシング、強フラッシングの合間に待機時間を設定してもよい。
【0059】
・上記実施形態では、液体噴射装置をインクジェット式プリンター11に具体化したが、インク以外の他の液体を噴射したり吐出したりする液体噴射装置に具体化してもよい。例えば微小量の液滴を吐出させる液体噴射ヘッド等を備える各種の液体噴射装置に流用可能である。なお、液滴とは、上記液体噴射装置から吐出される液体の状態をいい、粒状、涙状、糸状に尾を引くものも含むものとする。また、ここでいう液体とは、液体噴射装置が噴射させることができるような材料であればよい。例えば、物質が液相であるときの状態のものであればよく、粘性の高い又は低い液状体、ゾル、ゲル水、その他の無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)のような流状態、また物質の一状態としての液体のみならず、顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散又は混合されたものなどを含む。また、液体の代表的な例としては上記実施形態で説明したようなインクや液晶等が挙げられる。ここで、インクとは一般的な水性インク及び油性インク並びにジェルインク、ホットメルトインク等の各種液体組成物を包含するものとする。液体噴射装置の具体例としては、例えば液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ、面発光ディスプレイ、カラーフィルタの製造などに用いられる電極材や色材などの材料を分散又は溶解のかたちで含む液体を噴射する液体噴射装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する液体噴射装置、精密ピペットとして用いられ試料となる液体を噴射する液体噴射装置、捺染装置やマイクロディスペンサ等であってもよい。さらに、時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を噴射する液体噴射装置、光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂等の透明樹脂液を基板上に噴射する液体噴射装置、基板などをエッチングするために酸又はアルカリ等のエッチング液を噴射する液体噴射装置を採用してもよい。そして、これらのうちいずれか一種の液体噴射装置に本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0060】
11…プリンター(液体噴射装置)、14…メンテナンス装置(クリーニング手段)、18…液体噴射ヘッド、23…ノズル、60…制御部(制御手段)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を噴射するノズルが形成された液体噴射ヘッドと、
前記ノズルのクリーニングを行うクリーニング手段と、
前記ノズルから第1液量の液体を噴射した後、前記ノズルから前記第1液量よりも大きな第2液量の液体を噴射し、さらにその後、前記第2液量よりも大きな第3液量の液体を噴射するように、前記液体噴射ヘッドを制御する制御手段と
を備えることを特徴とする液体噴射装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記液体噴射ヘッドに、前記第1液量、前記第2液量、前記第3液量での液体の噴射を複数回実行させることを特徴とする請求項1に記載の液体噴射装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記液体噴射ヘッドに、前記第1液量の液体を第1周波数で噴射させ、前記第2液量の液体を前記第1周波数よりも高い第2周波数で噴射させ、前記第3液量の液体を前記第2周波数よりも高い第3周波数で噴射させることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の液体噴射装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記液体噴射ヘッドに、前記第1液量、前記第2液量での液体の噴射を実行させた後、前記第2液量、前記第3液量での液体の噴射を実行させることを特徴とする請求項1〜請求項3のうち何れか一項に記載の液体噴射装置。
【請求項5】
液体噴射ヘッドに形成されて液体を噴射するノズルのクリーニングを行うクリーニング段階と、
前記ノズルから第1液量の液体を噴射させる第1の噴射段階と、
前記ノズルから前記第1液量よりも大きな第2液量の液体を噴射させる第2の噴射段階と、
前記ノズルから前記第2液量よりも大きな第3液量の液体を噴射させる第3の噴射段階と
を備えることを特徴とするメンテナンス方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−179746(P2012−179746A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−42834(P2011−42834)
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】