液体噴射装置および制御方法
【課題】フラッシング動作による液体の噴射量を削減する。
【解決手段】液体噴射装置が、圧力室50内の圧力の変動に応じて圧力室50内の液体を各ノズル56から噴射する複数の単位噴射部Uと、各圧力室50内の液体の状態を特定する状態特定手段と、状態特定手段により特定された各圧力室50内の液体の状態に応じた強度の微振動が各圧力室50に付与されるように各単位噴射部Uを制御する微振動制御手段と、各圧力室50に付与された微振動の強度に応じて各圧力室50のフラッシング動作による液体の噴射量が変化するように、各単位噴射部Uにフラッシング動作を実行させる噴射制御手段とを具備する。
【解決手段】液体噴射装置が、圧力室50内の圧力の変動に応じて圧力室50内の液体を各ノズル56から噴射する複数の単位噴射部Uと、各圧力室50内の液体の状態を特定する状態特定手段と、状態特定手段により特定された各圧力室50内の液体の状態に応じた強度の微振動が各圧力室50に付与されるように各単位噴射部Uを制御する微振動制御手段と、各圧力室50に付与された微振動の強度に応じて各圧力室50のフラッシング動作による液体の噴射量が変化するように、各単位噴射部Uにフラッシング動作を実行させる噴射制御手段とを具備する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インク等の液体を噴射する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
圧電振動子や発熱素子等の圧力発生素子により圧力室内の圧力を変化させることで圧力室内の液体(例えばインク)をノズルから噴射する液体噴射技術が従来から提案されている。この技術においては、ノズルの目詰まり等を防止するために強制的に各ノズルから液体を噴射するフラッシング動作が採用される。特許文献1には、圧力室内の液体に微振動を付与して増粘を低減した後にフラッシング動作を行う構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−42314号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、所期の効果を実現するために必要な微振動の強度や所期の効果を実現するために必要なフラッシング動作による噴射量は液体の状態(例えば増粘の度合)に応じて変化する。しかし、特許文献1の技術では、圧力室に付与された微振動の強度に関わらず、フラッシング動作による液体の噴射量が一定に維持されるから、液体の増粘した成分がフラッシング動作で充分に噴射されない可能性や、フラッシング動作により液体が必要以上に消費される可能性がある。以上の事情を考慮して、本発明は、フラッシング動作による液体の噴射量を削減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以上の課題を解決するために本発明が採用する手段を説明する。なお、本発明の理解を容易にするために、以下の説明では、本発明の要素と後述の実施形態の要素との対応を括弧書で付記するが、本発明の範囲を実施形態の例示に限定する趣旨ではない。
【0006】
本発明の液体噴射装置は、液体が充填された圧力室(例えば圧力室50)と、圧力室に連通するノズル(例えばノズル56)と、圧力室内の圧力を変動させる圧力発生素子(例えば圧電振動子422)とを各々が含み、圧力室内の圧力の変動に応じて圧力室内の液体を各ノズルから噴射する複数の単位噴射部(例えば単位噴射部U)と、各圧力室内の液体の状態(例えば増粘や沈降の度合)を特定する状態特定手段(例えば制御部60)と、状態特定手段により特定された各圧力室内の液体の状態に応じた強度の微振動が各圧力室に付与されるように各単位噴射部を制御する微振動制御手段(例えば制御部60)と、各圧力室に付与された微振動の強度に応じて各圧力室のフラッシング動作による液体の噴射量が変化するように各単位噴射部にフラッシング動作を実行させる噴射制御手段(例えば制御部60)とを具備する。
【0007】
以上の構成においては、状態特定手段により特定された各圧力室内の液体の状態に応じた強度の微振動が各圧力室に付与される。したがって、各圧力室内の液体の状態に関わらず同じ強度の微振動を各圧力室に付与する構成と比較して、液体の状態に応じた適切な強度の微振動を液体に付与することができる。また、各圧力室に付与された微振動の強度に応じて各圧力室のフラッシング動作による液体の噴射量が可変に制御される。したがって、各圧力室に付与された微振動の強度に関わらず同じ噴射量でフラッシング動作を行う構成と比較して適切なフラッシング動作を実行することができる。
【0008】
なお、状態特定手段が液体について特定する状態の典型例は液体の増粘の度合である。液体の増粘の度合に応じた強度の微振動の付与やフラッシング動作が実行される構成によれば、液体の増粘を適切に解消することができる。
【0009】
本発明の好適な態様において、微振動制御手段は、状態特定手段が特定した液体の増粘の度合が大きい圧力室に第1強度(例えば強度σ1)の微振動が付与され、状態特定手段が特定した液体の増粘の度合が小さい圧力室に第1強度を下回る第2強度(例えば強度σ2)の微振動が付与されるように単位噴射部を制御し、噴射制御手段は、第1強度の微振動が付与された圧力室のフラッシング動作による液体の噴射量(例えば噴射量FL3)が、第2強度の微振動が付与された圧力室のフラッシング動作による液体の噴射量(例えば噴射量FL4)を上回るように、各単位噴射部にフラッシング動作を実行させる。
【0010】
以上の構成においては、液体の増粘の度合が大きい圧力室に第1強度の微振動が付与され、液体の増粘の度合が小さい圧力室に第1強度を下回る第2強度の微振動が付与されるから、増粘の度合に関わらず各圧力室に第2強度の微振動を付与する構成と比較して、増粘の度合が大きい圧力室についても液体の増粘を有効に解消することができるという利点がある。また、増粘の度合に関わらず各圧力室に第1強度の微振動を付与する構成と比較すると、増粘の程度が小さい圧力室に対する微振動の強度が低減される分だけ、微振動の付与に必要な電力が低減されるという利点がある。
【0011】
なお、以上の説明では第1強度および第2強度のみに言及したが、本発明の範囲は、微振動の強度を第1強度および第2強度の2種類のみから択一的に設定する構成には限定されない。すなわち、微振動の強度が3種類以上から選択され得る構成であっても、3種類のうち2種類の強度を第1強度および第2強度として把握した場合に前述の要件を充足する構成は当然の本発明の範囲に包含される。
【0012】
また、第2強度の微振動が付与された単位噴射部については、第1強度の微振動が付与された圧力室のフラッシング動作による液体の噴射量よりも少ない噴射量でフラッシング動作が実行されるから、微振動の強度に関わらずフラッシング動作での噴射量が一定である構成と比較して、フラッシング動作による液体の噴射量を削減することができる。また、第1強度の微振動が付与された単位噴射部については、第2強度の微振動が付与された圧力室のフラッシング動作による液体の噴射量よりも多い噴射量でフラッシング動作が実行されるから、微振動の強度に関わらずフラッシング動作での噴射量が一定である構成と比較して、微振動で拡散した増粘成分を充分に噴射することが可能である。
【0013】
本発明の好適な態様において、状態特定手段は、各単位噴射部が最後に液体を噴射した時点からの経過時間(間欠時間T0)に応じて液体の状態を特定する。以上の構成においては、単位噴射部毎に状態の特定を行うので、微振動の強度およびフラッシング動作での噴射量を単位噴射部毎に変化させるような詳細な制御が可能である。また、本発明の好適な態様において、状態特定手段は、複数の単位噴射部のうち最後に液体を噴射した単位噴射部が最後に液体を噴射した時点からの経過時間に応じて液体の状態を特定する。以上の構成においては、単位噴射部毎に状態の特定を行わなくてもよいので、特定のための構成を簡略化できるとともに特定処理の負荷を削減できる。
【0014】
本発明の好適な態様において、状態特定手段は、各圧力室を振動させた結果に応じて液体の状態を特定する。例えば、各ノズルからの液体の噴射の有無に応じて液体の状態を特定する構成や、各圧力室内の振動に応じて液体の状態を特定する構成が採用される。以上の構成では、実際の液体の状態(噴射の可否)が評価されるので、例えば単位噴射部が最後に液体を噴射した時点からの経過時間に応じて液体の状態を特定する構成と比較して、正確に液体の状態を特定することができる。
【0015】
本発明の好適な態様において、微振動制御手段は、各圧力室内の液体が噴射可能となるまで、各圧力室に対する第1強度の微振動の付与を反復する。以上の構成においては、液体が噴射可能でない場合に各圧力室に1回だけ第1強度の微振動を付与する構成と比較して確実に液体の増粘を解消して圧力室内の液体を噴射可能とすることができる。
【0016】
本発明の好適な態様において、噴射制御手段は、第1強度の微振動を各圧力室に付与した回数(例えば回数n)に応じて、各圧力室のフラッシング動作による液体の噴射量を可変に制御する。以上の構成においては、フラッシング動作での噴射量が一定に維持される構成と比較して、微振動の反復で圧力室内に拡散した液体の増粘成分を充分に排出することができる。
【0017】
本発明の好適な態様において、噴射制御手段は、所定の回数(例えば閾値K)を上回る回数の第1強度の微振動を各圧力室に付与しても各圧力室内の液体が噴射可能とならない場合にはクリーニング動作を実行する。以上の構成では、微振動の付与で液体が噴射可能とならない場合にクリーニング動作が実行されるから、圧力室内の液体を確実に噴射可能とすることができる。なお、クリーニング動作は、微振動の付与と比較して強力に圧力室内の液体を流動させる動作として包括される。
【0018】
本発明の好適な態様において、第2強度は、微振動の停止に相当する。以上の構成においては、圧力室に対する微振動の付与の有無(オン/オフ)が制御されるから、圧力室に実際に付与される微振動の強弱を制御する場合と比較して微振動の制御が簡素化されるという利点がある。微振動を停止させる方法としては、圧力発生素子に供給される電位を所定値に維持する方法や、圧力発生素子に対する電位の供給を停止することで微振動を停止する方法が採用され得るが、消費電力の低減という観点からすると後者の方法が好適である。
【0019】
なお、本発明は、前述した各態様の液体噴射装置の動作方法(制御方法)としても特定される。本発明の制御方法は、液体が充填された圧力室(例えば圧力室50)と、圧力室に連通するノズル(例えばノズル56)と、圧力室内の圧力を変動させる圧力発生素子(例えば圧電振動子422)とを各々が含み、圧力室内の圧力の変動に応じて圧力室内の液体を各ノズルから噴射する複数の単位噴射部(例えば単位噴射部U)を具備する液体噴射装置において、各圧力室内の液体の状態を特定し、特定された各圧力室内の液体の状態に応じた強度の微振動が各圧力室に付与されるように各単位噴射部を制御し、各圧力室に付与された微振動の強度に応じて各圧力室のフラッシング動作による液体の噴射量が変化するように、各単位噴射部にフラッシング動作を実行させる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1実施形態に係る印刷装置の部分的な模式図である。
【図2】記録ヘッドの断面図である。
【図3】第1実施形態の印刷装置の電気的な構成のブロック図である。
【図4】駆動信号の波形図である。
【図5】記録ヘッドの電気的な構成のブロック図である。
【図6】間欠時間と着弾位置誤差との関係を示すグラフである。
【図7】間欠時間とフラッシング動作による必要噴射量との関係を示すグラフである。
【図8】第1実施形態の印刷装置の動作を示すフローチャートである。
【図9】記憶部が記憶するテーブルの構成を示す図である。
【図10】第2実施形態の印刷装置の電気的な構成のブロック図である。
【図11】記録ヘッドおよび噴射検出部の構成を示す図である。
【図12】第2実施形態の印刷装置の動作を示すフローチャートである。
【図13】第3実施懈怠の印刷装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
<A:第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係るインクジェット方式の印刷装置100の部分的な模式図である。印刷装置100は、微細な液滴状のインクを記録紙200に噴射する液体噴射装置であり、キャリッジ12と移動機構14と用紙搬送機構16とキャップ18とを具備する。
【0022】
キャリッジ12には、インクカートリッジ22と記録ヘッド24とが搭載される。インクカートリッジ22は、記録紙200に噴射されるインク(液体)を貯留する容器である。記録ヘッド24は、インクカートリッジ22に貯留されたインクを記録紙200に噴射する液体吐出部として機能する。なお、印刷装置100の筐体(図示略)にインクカートリッジ22を固定して記録ヘッド24にインクを供給する構成も採用され得る。
【0023】
図1の移動機構14は、案内軸122に沿ってキャリッジ12を主走査方向(記録紙200の幅方向)に往復させる。キャリッジ12の位置は、リニアエンコーダ等の検出器(図示略)で検出されて移動機構14の制御に利用される。用紙搬送機構16は、キャリッジ12の往復に並行して記録紙200を副走査方向に移動させる。キャリッジ12の往復時に記録ヘッド24が記録紙200にインクを噴射することで所望の画像が記録紙200に記録(印刷)される。
【0024】
移動機構14は、吐出面が記録紙200に対向する範囲の外側の位置(以下「待避位置」という)まで記録ヘッド24を移動させることが可能である。待避位置にある記録ヘッド24の吐出面に対向するようにキャップ18が配置される。キャップ18は、記録ヘッド24の吐出面を封止する。キャップ18の近傍には吐出面を払拭するワイパー(図示略)が配置される。
【0025】
図2は、記録ヘッド24の断面図(主走査方向に垂直な断面)である。図2に示すように、記録ヘッド24は、振動ユニット42と収容体44と流路ユニット46とを具備する。振動ユニット42は、圧電振動子422とケーブル424と固定板426とを含んで構成される。圧電振動子422は、圧電材料と電極とが交互に積層された縦振動型の圧電素子であり、ケーブル424を介して供給される駆動信号に応じて振動する。圧電振動子422を固定した固定板426が収容体44の内壁面に接合された状態で振動ユニット42は収容体44に収容される。
【0026】
流路ユニット46は、相互に対向する基板462と基板464との間隙に流路形成板466を介挿した構造体である。流路形成板466は、圧力室50と供給路52と貯留室54とを含む空間を基板462と基板464との間隙に形成する。圧力室50は、振動ユニット42毎に隔壁で個別に区画されるとともに供給路52を介して貯留室54に連通する。インクカートリッジ22から供給されるインクは貯留室54に貯留される。各ノズル56は、各圧力室50に対応するように基板462に形成される。各ノズル56は、流路ユニット46の外部と圧力室50とを連通させる貫通孔である。以上の説明から理解されるように、貯留室54から供給路52と圧力室50とノズル56とを経由して外部に至るインクの流路が形成される。
【0027】
基板464は、弾性材料で形成された平板材である。基板464のうち圧力室50の反対側の領域には島状の振動板48が形成される。振動板48には圧電振動子422の先端面(自由端)が接合される。したがって、駆動信号の供給により圧電振動子422が振動すると、振動板48を介して基板464が変位することで圧力室50の容積が変化して圧力室50内のインクの圧力が変動する。すなわち、圧電振動子422は、圧力室50内の圧力を変動させる圧力発生素子として機能する。以上に説明した圧力室50内の圧力の変動に応じてノズル56からインクを噴射することが可能である。すなわち、圧電振動子422と圧力室50とノズル56とで構成される要素は、インクを噴射する単位(以下「単位噴射部U」という)として機能する。
【0028】
図3は、印刷装置100の電気的な構成のブロック図である。図3に示すように、印刷装置100は、制御装置102と印刷処理部(プリントエンジン)104とを具備する。制御装置102は、印刷装置100の全体を制御する要素であり、制御部60と記憶部62と駆動信号発生部64と外部I/F(interface)66と内部I/F68とを含んで構成される。記録紙200に印刷される画像を示す印刷データDPが外部装置(例えばホストコンピュータ)300から外部I/F66に供給され、内部I/F68には印刷処理部104が接続される。印刷処理部104は、制御装置102による制御のもとで記録紙200に画像を記録する要素であり、前述の記録ヘッド24と移動機構14と用紙搬送機構16とを含んで構成される。
【0029】
印刷装置100の動作期間は、印刷実行期間と印刷準備期間とを包含する。印刷実行期間は、制御装置102による制御のもとで印刷処理部104が記録紙200に画像を記録する期間(すなわち、実際に印刷が実行される期間)である。他方、印刷準備期間は、印刷実行期間での動作を準備する期間であり、例えば印刷装置100の電源が投入された直後(印刷実行期間の開始前)に設定される。各圧力室50内のインクは、ノズル56内に露出する表面(メニスカス)からの水分の蒸発等に起因して経時的に増粘する。印刷準備期間では、圧力室50内のインクの噴射が増粘等に起因して阻害される状態が、ノズル56からインクが適正に噴射される状態に改善されるように記録ヘッド24(各単位噴射部U)を調整する期間である。具体的には、印刷準備期間では微振動の付与とフラッシング動作とが実行される。なお、印刷準備期間の時期は任意である。例えば、印刷準備期間を定期的に設定した構成も採用される。
【0030】
記憶部62は、制御プログラム等を記憶するROMと、画像の印刷に必要な各種のデータを一時的に記憶するRAMとを含んで構成される。制御部60は、記憶部62に記憶された制御プログラムの実行で印刷装置100の各要素(例えば印刷処理部104)を統括的に制御する。例えば、制御部60は、圧力室50内のインクの噴射とインクに対する微振動の付与(すなわち非噴射)との何れかを指示する制御データDCを生成する。微振動とは、圧力室50内のインクがノズル56から噴射されない程度の振動を意味する。制御データDCが指示する微振動には強微振動と弱微振動とがある。強微振動の強度(パワーや振幅)σ1は弱微振動の強度σ2を上回る(σ1>σ2)。
【0031】
制御部60は、外部装置300から外部I/F66に供給される印刷データDPに応じてインクの噴射/非噴射(微振動)を指示する制御データDCを印刷実行期間にて生成する。すなわち、記録紙200に対するインクの噴射で印刷データDPに応じた画像を記録紙200に記録する動作を記録ヘッド24に実行させる。また、制御部60は、印刷準備期間にて微振動の付与やフラッシング動作が実行されるように記録ヘッド24を制御する。
【0032】
駆動信号発生部64は、駆動信号COM1および駆動信号COM2を生成する。駆動信号COM1および駆動信号COM2の各々は、各圧電振動子422を駆動する周期信号である。図4に示すように、駆動信号COM1の1周期(記録周期)内には、噴射パルスPD1と強微振動パルスPS1とが配置され、駆動信号COM2の1周期内には弱微振動パルスPS2と噴射パルスPD2とが配置される。駆動信号発生部64は、印刷実行期間内および印刷準備期間内の双方において駆動信号COM1および駆動信号COM2を生成する。
【0033】
強微振動パルスPS1および弱微振動パルスPS2の各々は、微振動を圧力室50内に付与する駆動パルスである。図4に示すように、強微振動パルスPS1および弱微振動パルスPS2の各々は、所定の基準電位VREFから高位側(圧力室50を減圧させる方向)の電位まで電位が変化する区間p1と、区間p1の終端の電位を維持する区間p2と、電位が低位側に変化して基準電位VREFに復帰する区間p3とを含んで構成される台形状の波形である。弱微振動パルスPS2の区間p2の電位VH2は強微振動パルスPS1の区間p2の電位VH1を下回り、弱微振動パルスPS2の区間p1や区間p3の勾配は強微振動パルスPS1の区間p1や区間p3の勾配と比較して緩慢である。したがって、強微振動パルスPS1の供給で圧力室50内には強微振動(強度σ1)が付与され、弱微振動パルスPS2の供給で圧力室50内には弱微振動(強度σ2)が付与される。
【0034】
噴射パルスPD1および噴射パルスPD2の各々は、圧電振動子422に供給された場合に所定量のインクがノズル56から噴射するように圧力室50を振動させる駆動パルスである。図4に示すように、噴射パルスPD1および噴射パルスPD2の各々は、所定の基準電位VREFから高位側に電位が変化する区間d1と、基準電位VREFから低位側に電位が変化する区間d2と、高位側に電位が変化して基準電位VREFに復帰する区間d3とを含んで構成される。なお、噴射パルスPD1と噴射パルスPD2とで波形を相違させた構成も採用され得る。
【0035】
図5は、記録ヘッド24の電気的な構成の模式図である。図5に示すように、記録ヘッド24は、相異なる単位噴射部Uに対応する複数の駆動回路32を含んで構成される。駆動信号発生部64が生成した駆動信号COM1および駆動信号COM2は、内部I/F68を介して複数の駆動回路32に共通に供給される。また、制御部60が生成した制御データDCは内部I/F68を介して各駆動回路32に供給される。
【0036】
各駆動回路32は、制御部60から供給される制御データDCに応じた区間を駆動信号COM1または駆動信号COM2から選択して圧電振動子422に供給する。例えば、制御データDCがインクの噴射を指示する場合、駆動回路32は、駆動信号COM1の噴射パルスPD1と駆動信号COM2の噴射パルスPD2とを選択して圧電振動子422に供給する。したがって、圧力室50内のインクがノズル56から噴射される。
【0037】
また、強微振動の付与を制御データDCが指示する場合、駆動回路32は、駆動信号COM1の強微振動パルスPS1を選択して圧電振動子422に供給する。したがって、圧力室50内に強微振動が付与され、圧力室50内のインクは噴射されずに撹拌される。また、弱微振動の付与を制御データDCが指示する場合、駆動回路32は、駆動信号COM2の弱微振動パルスPS2を選択して圧電振動子422に供給する。したがって、圧力室50内に弱微振動が付与され、圧力室50内のインクは噴射されずに撹拌される。強微振動の強度σ1は弱微振動の強度σ2を上回るから、強微振動が付与された圧力室50内のインクは弱微振動が付与された圧力室50内のインクよりも充分に撹拌される。以上の説明から理解されるように、制御部60は、圧力室50に付与される微振動の強度を制御する手段(微振動制御手段)として機能する。
【0038】
また、制御部60は、記録ヘッド24にフラッシング動作を実行させる手段(噴射制御手段)としても機能する。制御部60は、印刷準備期間において記録ヘッド24にフラッシング動作を実行させる。フラッシング動作は、記録ヘッド24を待避位置(キャップ18上)に移動させた状態で各単位噴射部Uに強制的にインクを噴射させる動作である。制御部60は、インクの噴射を指示する制御データDCを各駆動回路32に供給することで各単位噴射部Uにフラッシング動作(すなわち、噴射パルスPD1および噴射パルスPD2の選択)を実行させる。フラッシング動作で各ノズル56から噴射されたインクは、待避位置のキャップ18に受容される。以上のフラッシング動作により、各ノズル56の目詰まりや圧力室50内への気泡の侵入が解消されるとともにインクの増粘が解消される。フラッシング動作における各単位噴射部Uからのインクの噴射量は、制御部60が各単位噴射部Uに制御データDCを供給してインク噴射回数を設定することにより可変に制御される。
【0039】
図6は、微振動パルスPS1およびPS2の供給で圧力室50に付与される微振動の効果を説明するためのグラフである。図6の横軸は、単位噴射部Uが最後にインクを噴射した時点からの経過時間(間欠時間)を意味し、図6の縦軸は、単位噴射部Uから噴射されたインクが実際に着弾する位置と目標の位置との距離(着弾位置誤差)を意味する。図6には、微振動パルス(PS1,PS2)の高位側の電位VH(VH1,VH2)を変化させた複数の場合について間欠時間と着弾位置誤差との関係が図示されている。
【0040】
前述の通り、圧力室50内のインクは、ノズル56内に露出する液面(メニスカス)から水分が蒸発することで局所的に増粘する。増粘が進行するほど単位噴射部Uから噴射されるインクの速度は低下するから、着弾位置誤差は、圧力室50内のインクの増粘の程度を示す指標(増粘が進行するほど着弾位置誤差が増加する)として把握される。図6から理解されるように、間欠時間が長期化するほど圧力室50内のインクの増粘が進行して結果的に着弾位置誤差が増加する。したがって、圧力室50内のインクの増粘を解消するには、間欠時間が長いほど高強度の微振動を付与する必要がある。
【0041】
微振動パルスPS1の供給で圧力室50内に微振動を付与すると、圧力室50内のインクが撹拌される。したがって、圧力室50内のインクのうちノズル56の近傍の増粘した成分(以下「増粘成分」という)が圧力室50内で拡散し、結果的に着弾位置誤差(局所的な増粘)は低減される。図6に示すように、微振動パルスの電位VHが高い(すなわち圧力室50内に付与される微振動の強度が高い)ほど着弾位置誤差の低減の効果は顕著となる。すなわち、微振動の強度が高いほど増粘成分が圧力室50内の広範囲に拡散するという傾向が図6から把握される。
【0042】
図7は、間欠時間(横軸)とフラッシング動作で要求されるインクの噴射量(縦軸)との関係を示すグラフである。図7の縦軸は、インクの増粘に起因した着弾位置誤差をフラッシング動作で充分に抑制する(理想的に着弾位置誤差をゼロにする)ために必要な噴射量(以下「必要噴射量」という)を意味する。間欠時間が長いほどインクの増粘は進行するから、図7から理解されるように必要噴射量は増加する。
【0043】
図7には、圧力室50に微振動を付与した場合(実線)と微振動を付与しない場合(破線)との各々について間欠時間と必要噴射量との関係が図示されている。前述の通り、微振動の強度が高いほど、インクの増粘成分は圧力室50内の広範囲に拡散する。そして、増粘成分の分布が広範囲に拡散するほど、フラッシング動作で増粘成分を充分に噴射するために必要なインクの吐出量(必要噴射量)は増加する。例えば図7から把握されるように、圧力室50内に微振動を付与した場合の必要噴射量(例えばFL1)は、微振動を付与しない場合の必要噴射量(例えばFL2)を上回る。すなわち、微振動の強度が高いほどフラッシング動作による必要噴射量が増加するという傾向が把握される。
【0044】
以上の傾向を背景として、制御部60は、印刷準備期間において、圧力室50内のインクの増粘の度合に応じた強度の微振動を各圧力室50に付与するとともに、微振動の強度に応じてフラッシング動作での噴射量が変化するように各単位噴射部Uにフラッシング動作を実行させる。以下では図8を参照して、印刷準備期間での制御部60の具体的な動作を詳細に説明する。なお、以下の説明では1個の単位噴射部Uの動作に着目して説明するが、制御部60は複数の単位噴射部Uを並行して制御することが可能である。
【0045】
図8の動作を開始すると、制御部60は、単位噴射部Uの圧力室50内のインクの増粘の度合(インクの状態)を判定する(S101,S102)。間欠時間T0が長いほどインクの増粘が進行するという前述の傾向を考慮して、第1実施形態の制御部60は、単位噴射部Uが最後にインクを噴射した時刻(以下「最終噴射時刻」という)TLからの経過時間(間欠時間T0)に応じて単位噴射部Uの圧力室50内のインクの増粘の度合(大小)を判定する。
【0046】
単位噴射部Uの間欠時間T0の特定には、記憶部62に記憶されたテーブルSTが使用される。図9に示すように、テーブルSTは、単位噴射部U毎に最終噴射時刻TLが登録されたデータテーブルである。テーブルSTの各最終噴射時刻TLは、各単位噴射部Uの圧力室50からインクが噴射される度に順次に更新される。
【0047】
制御部60は、最終噴射時刻TLと現在時刻との差分を間欠時間T0として算定し(S101)、ステップS101で算定した間欠時間T0と所定の閾値Tthとの大小に応じて圧力室50内のインクの増粘の度合(大小)を判定する(S102)。具体的には、間欠時間T0が閾値Tthを上回る場合には増粘が大きいと判定し、間欠時間T0が閾値Tthを下回る場合には増粘が小さいと判定する。閾値Tthは、増粘が進行してインクが噴射不能となる間欠時間T0が閾値Tthを上回るように実験的または統計的に選定される。したがって、ステップS102の判定は、インクの噴射の可否を判定する処理に相当する。以上から理解されるように、制御部60は、インクの増粘の度合(インクの状態)を判定する手段(状態特定手段)として機能する。
【0048】
インクの増粘が大きい(噴射不能)と判定した場合(S102:YES)、制御部60は、強微振動の付与を指示する制御データDCを単位噴射部Uに対応する駆動回路32に供給する(S103)。駆動回路32は、駆動信号COM1の強微振動パルスPS1を選択して圧電振動子422に供給する。したがって、圧電振動子422により圧力室50内に強微振動(強度σ1)が付与され、圧力室50内のインクは噴射されずに撹拌される。
【0049】
他方、インクの増粘が小さい(噴射可能)と判定した場合(S102:NO)、制御部60は、弱微振動の付与を指示する制御データDCを単位噴射部Uに対応する駆動回路32に供給する(S104)。駆動回路32は、駆動信号COM2の弱微振動パルスPS2を選択して圧電振動子422に供給する。したがって、圧電振動子422により圧力室50内に弱微振動(強度σ2)が付与され、圧力室50内のインクは噴射されずに撹拌される。
【0050】
制御部60は、ステップS103で強微振動が付与された単位噴射部Uについて、噴射量FL3のフラッシング動作(噴射パルスPD1および噴射パルスPD2の選択)を実行させる(S105)。他方、制御部60は、ステップS104で弱微振動が付与された単位噴射部Uについて、噴射量FL4のフラッシング動作(噴射パルスPD1および噴射パルスPD2の選択)を実行させる(S106)。
【0051】
フラッシング動作でのインクの噴射量FL3および噴射量FL4は、インクに付与された微振動の強度に応じて可変に設定される。図7を参照して説明した通り、微振動の強度が高いほどフラッシング動作による必要噴射量が増加する。したがって、ステップS103で強微振動が付与された単位噴射部Uの噴射量FL3は、ステップS104で弱微振動が付与された単位噴射部Uの噴射量FL4を上回るように設定される。
【0052】
以上に説明した第1実施形態では、各圧力室50に付与される微振動の強度がインクの状態(増粘の度合)に応じて可変に制御される。したがって、印刷準備期間において増粘の度合に関わらず各圧力室50に弱微振動を付与する構成と比較して、増粘の度合が大きい圧力室50についてもインクの増粘を有効に解消することができるという利点がある。また、印刷準備期間において増粘の度合に関わらず各圧力室50に強微振動を付与する構成と比較すると、増粘の程度が小さい圧力室50に対する微振動の強度が低減される分だけ、微振動の付与に必要な電力が低減されるという利点がある。
【0053】
更に、第1実施形態では、各圧力室50に付与された微振動の強度に応じてフラッシング動作での噴射量が可変に制御される。具体的には、弱微振動が付与された単位噴射部Uについては噴射量FL4のフラッシング動作が実行されるから、微振動の強度に関わらず噴射量FL3のフラッシング動作を実行する構成と比較して、フラッシング動作によるインクの消費量を削減することができる。また、強微振動が付与された単位噴射部Uについては噴射量FL3のフラッシング動作が実行されるから、微振動の強度に関わらず噴射量FL4のフラッシング動作を実行する構成と比較して、微振動で拡散した増粘成分を充分に噴射することが可能である。
【0054】
<B:第2実施形態>
本発明の第2実施形態を以下に説明する。なお、以下に例示する各態様において作用や機能が第1実施形態と同等である要素については、以上の説明で参照した符号を流用して各々の詳細な説明を適宜に省略する。
【0055】
第1実施形態では、最終噴射時刻TLからの経過時間(間欠時間T0)に応じて圧力室50内のインクの状態(増粘の度合)を判定した。第2実施形態では、圧電振動子422を振動させた結果に応じてインクの状態を判定する。また、1回の強微振動の付与ではインクが噴射可能な状態に遷移しない可能性があることを考慮して、インクが噴射可能となるまで圧力室50に微振動の付与を反復する。
【0056】
図10は、第2実施形態の印刷装置100のブロック図である。図10に示すように、印刷装置100は、第1実施形態と同様の要素に加えて噴射検出部20を具備する。噴射検出部20は、各単位噴射部Uによるインクの噴射を検出する要素であり、図11に示すように着弾部材72と検出回路76とを具備する。着弾部材72は、待避位置にある記録ヘッド24の吐出面26に対向するようにキャップ18内に収容された導電性の部材(例えば金属メッシュ)である。検出回路76は、着弾部材72に対するインクの着弾の有無に応じた検出信号Dを生成および出力する。
【0057】
各単位噴射部Uが噴射するインクは帯電している。したがって、単位噴射部Uから噴射されたインクが着弾部材72に着弾すると着弾部材72の電位が変化する。インクが増粘等により噴射不能である場合には、制御部60から噴射指示があっても単位噴射部Uからインクが噴射されず、着弾部材72の電位は変化しない。検出回路76は、着弾部材72の電位変化に応じた検出信号Dを生成して内部I/F68に出力する。したがって、制御部60は、各単位噴射部Uがインクを噴射可能な状態にあるか否かを検出信号Dに応じて判定することが可能である。以上に例示した噴射可否判定の詳細は、例えば特開2010-162711号公報に詳述されている。
【0058】
第2実施形態の制御部60は、印刷準備期間において、前掲の図8の処理に代えて図12の処理を実行する。図12の処理を開始すると、制御部60は、単位噴射部Uによるインクの噴射の可否を判定する(S201,S202)。具体的には、制御部60は、記録ヘッド24を待避位置に移動させたうえでインクの噴射を指示し(S201)、噴射の指示に応じてインクが実際に噴射されたか否かを、検出回路76が生成する検出信号Dに応じて判定する(S202)。
【0059】
インクが噴射可能であると判定した場合(S202:YES)、第1実施形態と同様に、圧力室50内に弱微振動が付与される(S207)。他方、インクが噴射不能であると判定した場合(S202:NO)、制御部60は、強微振動の付与を指示する制御データDCを、単位噴射部Uに対応する駆動回路32に供給する(S203)。したがって、圧力室50内に強微振動が付与される。
【0060】
強微振動の付与後、制御部60は、ステップS201およびステップS202と同様に、単位噴射部Uによるインクの噴射の可否を判定する(S204,S205)。強微振動の付与にも関わらず依然としてインクが噴射不能であると判定した場合(S205:NO)、制御部60は、圧力室50内への強微振動の付与(S203)およびインクの噴射可否の判断(S204,S205)を反復する。1回の強微振動の付与ではインクの噴射が可能とならない場合があるが、反復的に強微振動を付与することによりインクが噴射可能な状態に遷移し得る。インクが噴射可能になったと判定した場合(S205:YES)、制御部60はステップS206に処理を移行する。すなわち、制御部60は、圧力室50内のインクが噴射可能となるまで反復して圧力室50に強微振動を付与する。
【0061】
制御部60は、ステップS203で強微振動を付与した単位噴射部Uについて噴射量FL3のフラッシング動作を実行させる(S206)。他方、制御部60は、ステップS207で弱微振動を付与した単位噴射部Uについて噴射量FL4のフラッシング動作を実行させる(S208)。第1実施形態と同様、ステップS203で強微振動が付与された単位噴射部Uの噴射量FL3は、ステップS207で弱微振動が付与された単位噴射部Uの噴射量FL4を上回る。
【0062】
以上に説明した第2実施形態では、第1実施形態と同様の効果が奏される。さらに、インクが噴射可能となるまで強微振動の付与が反復されるので、噴射不能の場合に1回だけ強微振動を付与する第1実施形態と比較して確実に圧力室50内のインクを噴射可能とすることができる。
【0063】
<C:第3実施形態>
本発明の第3実施形態を以下に説明する。第2実施形態では圧力室50に付与した強微振動の反復回数に関わらずフラッシング動作での噴射量FL3を一定としたが、第3実施形態では圧力室50に対する強微振動の付与の回数に応じてフラッシング動作の噴射量を可変に制御する。また、第3実施形態では、所定の回数を上回る強微振動を圧力室50に付与してもインクが噴射可能とならない場合には、フラッシング動作に代えてクリーニング動作を実行する。
【0064】
第3実施形態の制御部60は、印刷準備期間において、前掲の図12の処理に代えて図13の処理を実行する。第2実施形態(図12)のステップS201およびステップS202と同様に、制御部60は、単位噴射部Uによるインクの噴射の可否を判定する(S301,S302)。インクが噴射可能であると判定した場合(S302:YES)、第1実施形態や第2実施形態と同様に、圧力室50内に弱微振動が付与される(S310)。
【0065】
他方、インクが噴射不能であると判定した場合(S302:NO)、制御部60は、強微振動の回数nを0に初期化する(S303)。そして、制御部60は、回数nに1を加算するとともに、強微振動の付与を指示する制御データDCを駆動回路32に供給する(S304)。したがって、圧力室50に強微振動が付与される。
【0066】
強微振動を付与すると、制御部60は、ステップS301およびステップS302と同様に、単位噴射部Uによるインクの噴射の可否を判定する(S305、S306)。強微振動の付与によりインクが噴射可能になったと判定した場合(S306:YES)、第2実施形態と同様に、制御部60は、強微振動の反復を終了してステップS308に処理を移行する。
【0067】
強微振動の付与にも関わらず依然としてインクが噴射不能であると判定した場合(S306:NO)、制御部60は、強微振動の回数nが所定の閾値Kを上回るか否かを判定する(S307)。回数nが閾値K以下である場合(S307:NO)、制御部60は、強微振動の付与を反復する(S304〜S306)。すなわち、閾値Kに相当する回数を上限として、インクが噴射可能な状態に遷移するまで強微振動の付与が反復される。
【0068】
閾値Kを上回る回数nの強微振動を付与したにも関わらずインクが噴射可能な状態に遷移しない場合(S307:YES)、制御部60は、強微振動の反復を強制的に終了して単位噴射部Uにクリーニング動作を実行させる。クリーニング動作は、フラッシング動作よりも強力に圧力室50内のインクを流動させる処理であり、例えば、記録ヘッド24を待避位置(キャップ18上)に移動させた状態で、吸引ポンプ(不図示)で圧力室50内のインクを強制的に吸引して排出する動作である。噴射不能な状態にある圧力室50内のインクがクリーニング動作で排出される結果、圧力室50内のインクが噴射可能な状態に変化する。
【0069】
また、制御部60は、ステップS310で弱微振動を付与した単位噴射部Uについて噴射量FL4のフラッシング動作を実行させる(S311)。他方、制御部60は、ステップS304〜S306で強微振動を付与した単位噴射部Uについて噴射量FL3のフラッシング動作を実行させる(S308)。第1実施形態や第2実施形態と同様、強微振動が付与された単位噴射部Uのフラッシング動作の噴射量FL3は、弱微振動が付与された単位噴射部Uのフラッシング動作の噴射量FL4を上回る。
【0070】
更に、制御部60は、単位噴射部Uに付与された強微振動の回数nに応じて噴射量FL3を可変に制御する。図7を参照して説明した通り、微振動の強度が高いほどフラッシング動作による必要噴射量が増加するから、制御部60は、強微振動の回数nが多いほど噴射量FL3が増加するように噴射量FL3を制御する。
【0071】
以上に説明した第3実施形態でも、第1実施形態や第2実施形態と同様の効果が奏される。更に、強微振動の付与を反復してもインクが噴射可能とならない場合にクリーニング動作を実行するので、クリーニング動作を実行しない第2実施形態と比較して確実に圧力室50内のインクを噴射可能とすることができる。また、制御部60がクリーニング動作の要否を判断するので、利用者がクリーニング要否を判断する手間を省くことができ、かつ適切なクリーニング要否の判断が可能となる。
【0072】
また、圧力室50に付与した強微振動の回数nが多くなるほどフラッシング動作での噴射量FL3が増加するから、噴射量FL3が一定に維持される第2実施形態と比較して、強微振動の付与で圧力室50内に拡散したインクの増粘成分を充分に排出することが可能である。
【0073】
<D:変形例>
以上の各形態は多様に変形される。具体的な変形の態様を以下に例示する。以下の例示から任意に選択された2以上の態様は相互に矛盾しない限り適宜に併合され得る。
【0074】
(1)変形例1
以上の各形態では、単位噴射部U毎にインクの状態を判断したが、一部の単位噴射部Uのインクの状態に応じて他の単位噴射部Uのインクの状態を推定する構成も採用される。例えば、複数の単位噴射部Uのうち最後にインクを噴射した1個の単位噴射部Uが最後にインクを噴射した時点からの経過時間に応じて、複数の単位噴射部Uのインクの増粘の度合(噴射の可否)を推定する構成が好適である。以上の構成では、単位噴射部U毎の判断が不要となるから、制御部60(状態特定手段)の処理の負荷が軽減される。
【0075】
(2)変形例2
以上の各形態では、複数系統の駆動信号(COM1,COM2)を記録ヘッド24に供給したが、1系統の駆動信号のみを各圧電振動子422の駆動に使用する構成や3系統以上の駆動信号を各圧電振動子422の駆動に使用する構成も採用され得る。1系統の駆動信号を使用する構成では、例えば、噴射パルスPD1と微振動パルスPS1と微振動パルスPS2とが時系列に配列された駆動信号が記録ヘッド24に供給される。
【0076】
また、駆動信号の各パルス(PD1,PD2,PS1,PS2)の波高や波形は任意である。例えば、噴射パルスPD1と噴射パルスPD2の波高を異ならせてもよい。また、図4に例示した台形状のパルスには限定されず、例えば矩形状のパルスを採用することも可能である。駆動信号の微振動パルス(PS1,PS2)の波形は、圧力室50内のインクがノズル56から吐出されない程度にインク(メニスカス)を揺動させる波形であれば、図4の例示に限定されることなく任意に変更され得る。
【0077】
(3)変形例3
以上の各形態では、インクの増粘の度合が小さい場合(インクが噴射可能である場合)に圧力室50内に弱微振動を付与したが、弱微振動の付与に代えて、圧力室50内の振動を停止させる構成も採用され得る。圧力室50内の振動を停止させる方法は任意である。例えば、圧電振動子422に供給される電位を所定値(例えば基準電位VREF)に固定することで圧力室50内の振動を停止させる構成や、圧電振動子422に対する電位(基準電位VREF)の供給を停止する(すなわち、圧電振動子422と駆動信号COM1および駆動信号COM2の供給線とを電気的に絶縁する)ことで圧力室50の微振動を停止する構成も採用され得る。
【0078】
以上の説明から理解されるように、制御部60(微振動制御手段)は、圧力室50内に付与される微振動の強度を可変に制御する要素として包括され、微振動の強度という概念は、微振動の強弱だけでなく微振動の有無も含意する。すなわち、第1強度と第1強度を下回る第2強度とを含む複数の強度の何れかに微振動の強度が可変に設定される場合を想定すると、第2強度は、実際に圧力室50内の圧力の変動を発生させる範囲内で第1強度を下回る強度と、圧力室50内に圧力の変動を発生させない強度(すなわち微振動の停止(オフ)に相当する強度ゼロ)との双方を包含する。
【0079】
(4)変形例4
以上の各形態では、印刷実行期間と印刷準備期間とで共通の駆動信号(COM1,COM2)を利用したが、駆動信号を印刷実行期間と印刷準備期間とで相違させた構成も採用され得る。
【0080】
(5)変形例5
圧力室50内のインクの増粘が進行する度合は、印刷装置100の使用環境(温度や湿度)に応じて変化する。したがって、インクの増粘の度合を判断するときの基準(例えば第1実施形態の閾値Tth)を印刷装置100の使用環境に応じて可変に設定する構成も好適である。
【0081】
(6)変形例6
第2実施形態や第3実施形態では、強微振動の付与毎に強度を変化させる構成も採用され得る。例えば、強微振動の付与毎に強度を段階的に上昇させる構成によれば、最初から高強度の強微振動を付与する場合と比較して、圧力室50内の過剰な振動(増粘成分の過剰な拡散)を抑制できるという利点がある。
【0082】
(7)変形例7
圧力室50内のインクの増粘の度合を特定する方法は以上の例示に限定されない。例えば、圧電振動子422を振動させたときの実際のインクの振動を検出して増粘の度合(噴射可否)を判定する構成も採用される。圧力室50内のインクの振動は印刷の実行中にも検出され得るから、印刷の実行中でもインクの増粘の度合を判定することが可能である。また、記録紙200に対して各単位噴射部Uからインクを噴射させたうえで記録紙200を光学的に読取ることで、各単位噴射部Uから実際にインクが噴射された否か(インクの増粘の度合)を判定する構成も採用される。
【0083】
(8)変形例8
以上の各形態では縦振動型の圧電振動子422を例示したが、圧力室50内の圧力を変化させる要素(圧力発生素子)の構成は以上の例示に限定されない。例えば、例えば撓み振動型の圧電振動子422や静電アクチュエータ等の振動体を利用することも可能である。また、本発明の圧力発生素子は、圧力室50に機械的な振動を付与する要素に限定されない。例えば、圧力室50の加熱で気泡を発生させて圧力室50内の圧力を変化させる発熱素子(ヒーター)を圧力発生素子として利用することも可能である。すなわち、本発明の圧力発生素子は、圧力室50内の圧力を変化させる要素として包括され、圧力を変化させる方法(ピエゾ方式/サーマル方式)や構成の如何は不問である。
【0084】
(9)変形例9
以上の各形態の印刷装置100は、プロッターやファクシミリ装置,コピー機等の各種の機器に採用され得る。もっとも、本発明の液体噴射装置の用途は画像の印刷に限定されない。例えば、各色材の溶液を噴射する液体噴射装置は、液晶表示装置のカラーフィルタを形成する製造装置として利用される。また、液体状の導電材料を噴射する液体噴射装置は、例えば有機EL(Electroluminescence)表示装置や電界放出表示装置(FED:Field Emission Display)等の表示装置の電極を形成する電極製造装置として利用される。また、生体有機物の溶液を噴射する液体噴射装置は、生物科学素子(バイオチップ、マイクロアレイ)を製造するチップ製造装置として利用される。
【0085】
また、以上の各形態では、記録ヘッド24を搭載したキャリッジ12が主走査方向に移動するシリアル型の印刷装置100を例示したが、記録紙の幅方向の全域にわたって複数のノズルが配列するように主走査方向に長尺状に構成されたライン型の記録ヘッドを利用した印刷装置にも本発明を適用することが可能である。
【符号の説明】
【0086】
100……印刷装置、12……キャリッジ、14……移動機構、16……用紙搬送機構、18……キャップ、20……噴射検出部、22……インクカートリッジ、24……記録ヘッド、32……駆動回路、42……振動ユニット、422……圧電振動子、46……流路ユニット、462,464……基板、466……流路形成板、48……振動板、50……圧力室、52……供給路、54……貯留室、56……ノズル、102……制御装置、104……印刷処理部、60……制御部、62……記憶部、64……駆動信号発生部、66……外部I/F、68……内部I/F、72……着弾部材、76……検出回路、200……記録紙、300……外部装置、COM1,COM2……駆動信号、PD1,PD2……噴射パルス、PS1……強微振動パルス、PS2……弱微振動パルス、ST……テーブル、T0……間欠時間、U……単位噴射部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、インク等の液体を噴射する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
圧電振動子や発熱素子等の圧力発生素子により圧力室内の圧力を変化させることで圧力室内の液体(例えばインク)をノズルから噴射する液体噴射技術が従来から提案されている。この技術においては、ノズルの目詰まり等を防止するために強制的に各ノズルから液体を噴射するフラッシング動作が採用される。特許文献1には、圧力室内の液体に微振動を付与して増粘を低減した後にフラッシング動作を行う構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−42314号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、所期の効果を実現するために必要な微振動の強度や所期の効果を実現するために必要なフラッシング動作による噴射量は液体の状態(例えば増粘の度合)に応じて変化する。しかし、特許文献1の技術では、圧力室に付与された微振動の強度に関わらず、フラッシング動作による液体の噴射量が一定に維持されるから、液体の増粘した成分がフラッシング動作で充分に噴射されない可能性や、フラッシング動作により液体が必要以上に消費される可能性がある。以上の事情を考慮して、本発明は、フラッシング動作による液体の噴射量を削減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以上の課題を解決するために本発明が採用する手段を説明する。なお、本発明の理解を容易にするために、以下の説明では、本発明の要素と後述の実施形態の要素との対応を括弧書で付記するが、本発明の範囲を実施形態の例示に限定する趣旨ではない。
【0006】
本発明の液体噴射装置は、液体が充填された圧力室(例えば圧力室50)と、圧力室に連通するノズル(例えばノズル56)と、圧力室内の圧力を変動させる圧力発生素子(例えば圧電振動子422)とを各々が含み、圧力室内の圧力の変動に応じて圧力室内の液体を各ノズルから噴射する複数の単位噴射部(例えば単位噴射部U)と、各圧力室内の液体の状態(例えば増粘や沈降の度合)を特定する状態特定手段(例えば制御部60)と、状態特定手段により特定された各圧力室内の液体の状態に応じた強度の微振動が各圧力室に付与されるように各単位噴射部を制御する微振動制御手段(例えば制御部60)と、各圧力室に付与された微振動の強度に応じて各圧力室のフラッシング動作による液体の噴射量が変化するように各単位噴射部にフラッシング動作を実行させる噴射制御手段(例えば制御部60)とを具備する。
【0007】
以上の構成においては、状態特定手段により特定された各圧力室内の液体の状態に応じた強度の微振動が各圧力室に付与される。したがって、各圧力室内の液体の状態に関わらず同じ強度の微振動を各圧力室に付与する構成と比較して、液体の状態に応じた適切な強度の微振動を液体に付与することができる。また、各圧力室に付与された微振動の強度に応じて各圧力室のフラッシング動作による液体の噴射量が可変に制御される。したがって、各圧力室に付与された微振動の強度に関わらず同じ噴射量でフラッシング動作を行う構成と比較して適切なフラッシング動作を実行することができる。
【0008】
なお、状態特定手段が液体について特定する状態の典型例は液体の増粘の度合である。液体の増粘の度合に応じた強度の微振動の付与やフラッシング動作が実行される構成によれば、液体の増粘を適切に解消することができる。
【0009】
本発明の好適な態様において、微振動制御手段は、状態特定手段が特定した液体の増粘の度合が大きい圧力室に第1強度(例えば強度σ1)の微振動が付与され、状態特定手段が特定した液体の増粘の度合が小さい圧力室に第1強度を下回る第2強度(例えば強度σ2)の微振動が付与されるように単位噴射部を制御し、噴射制御手段は、第1強度の微振動が付与された圧力室のフラッシング動作による液体の噴射量(例えば噴射量FL3)が、第2強度の微振動が付与された圧力室のフラッシング動作による液体の噴射量(例えば噴射量FL4)を上回るように、各単位噴射部にフラッシング動作を実行させる。
【0010】
以上の構成においては、液体の増粘の度合が大きい圧力室に第1強度の微振動が付与され、液体の増粘の度合が小さい圧力室に第1強度を下回る第2強度の微振動が付与されるから、増粘の度合に関わらず各圧力室に第2強度の微振動を付与する構成と比較して、増粘の度合が大きい圧力室についても液体の増粘を有効に解消することができるという利点がある。また、増粘の度合に関わらず各圧力室に第1強度の微振動を付与する構成と比較すると、増粘の程度が小さい圧力室に対する微振動の強度が低減される分だけ、微振動の付与に必要な電力が低減されるという利点がある。
【0011】
なお、以上の説明では第1強度および第2強度のみに言及したが、本発明の範囲は、微振動の強度を第1強度および第2強度の2種類のみから択一的に設定する構成には限定されない。すなわち、微振動の強度が3種類以上から選択され得る構成であっても、3種類のうち2種類の強度を第1強度および第2強度として把握した場合に前述の要件を充足する構成は当然の本発明の範囲に包含される。
【0012】
また、第2強度の微振動が付与された単位噴射部については、第1強度の微振動が付与された圧力室のフラッシング動作による液体の噴射量よりも少ない噴射量でフラッシング動作が実行されるから、微振動の強度に関わらずフラッシング動作での噴射量が一定である構成と比較して、フラッシング動作による液体の噴射量を削減することができる。また、第1強度の微振動が付与された単位噴射部については、第2強度の微振動が付与された圧力室のフラッシング動作による液体の噴射量よりも多い噴射量でフラッシング動作が実行されるから、微振動の強度に関わらずフラッシング動作での噴射量が一定である構成と比較して、微振動で拡散した増粘成分を充分に噴射することが可能である。
【0013】
本発明の好適な態様において、状態特定手段は、各単位噴射部が最後に液体を噴射した時点からの経過時間(間欠時間T0)に応じて液体の状態を特定する。以上の構成においては、単位噴射部毎に状態の特定を行うので、微振動の強度およびフラッシング動作での噴射量を単位噴射部毎に変化させるような詳細な制御が可能である。また、本発明の好適な態様において、状態特定手段は、複数の単位噴射部のうち最後に液体を噴射した単位噴射部が最後に液体を噴射した時点からの経過時間に応じて液体の状態を特定する。以上の構成においては、単位噴射部毎に状態の特定を行わなくてもよいので、特定のための構成を簡略化できるとともに特定処理の負荷を削減できる。
【0014】
本発明の好適な態様において、状態特定手段は、各圧力室を振動させた結果に応じて液体の状態を特定する。例えば、各ノズルからの液体の噴射の有無に応じて液体の状態を特定する構成や、各圧力室内の振動に応じて液体の状態を特定する構成が採用される。以上の構成では、実際の液体の状態(噴射の可否)が評価されるので、例えば単位噴射部が最後に液体を噴射した時点からの経過時間に応じて液体の状態を特定する構成と比較して、正確に液体の状態を特定することができる。
【0015】
本発明の好適な態様において、微振動制御手段は、各圧力室内の液体が噴射可能となるまで、各圧力室に対する第1強度の微振動の付与を反復する。以上の構成においては、液体が噴射可能でない場合に各圧力室に1回だけ第1強度の微振動を付与する構成と比較して確実に液体の増粘を解消して圧力室内の液体を噴射可能とすることができる。
【0016】
本発明の好適な態様において、噴射制御手段は、第1強度の微振動を各圧力室に付与した回数(例えば回数n)に応じて、各圧力室のフラッシング動作による液体の噴射量を可変に制御する。以上の構成においては、フラッシング動作での噴射量が一定に維持される構成と比較して、微振動の反復で圧力室内に拡散した液体の増粘成分を充分に排出することができる。
【0017】
本発明の好適な態様において、噴射制御手段は、所定の回数(例えば閾値K)を上回る回数の第1強度の微振動を各圧力室に付与しても各圧力室内の液体が噴射可能とならない場合にはクリーニング動作を実行する。以上の構成では、微振動の付与で液体が噴射可能とならない場合にクリーニング動作が実行されるから、圧力室内の液体を確実に噴射可能とすることができる。なお、クリーニング動作は、微振動の付与と比較して強力に圧力室内の液体を流動させる動作として包括される。
【0018】
本発明の好適な態様において、第2強度は、微振動の停止に相当する。以上の構成においては、圧力室に対する微振動の付与の有無(オン/オフ)が制御されるから、圧力室に実際に付与される微振動の強弱を制御する場合と比較して微振動の制御が簡素化されるという利点がある。微振動を停止させる方法としては、圧力発生素子に供給される電位を所定値に維持する方法や、圧力発生素子に対する電位の供給を停止することで微振動を停止する方法が採用され得るが、消費電力の低減という観点からすると後者の方法が好適である。
【0019】
なお、本発明は、前述した各態様の液体噴射装置の動作方法(制御方法)としても特定される。本発明の制御方法は、液体が充填された圧力室(例えば圧力室50)と、圧力室に連通するノズル(例えばノズル56)と、圧力室内の圧力を変動させる圧力発生素子(例えば圧電振動子422)とを各々が含み、圧力室内の圧力の変動に応じて圧力室内の液体を各ノズルから噴射する複数の単位噴射部(例えば単位噴射部U)を具備する液体噴射装置において、各圧力室内の液体の状態を特定し、特定された各圧力室内の液体の状態に応じた強度の微振動が各圧力室に付与されるように各単位噴射部を制御し、各圧力室に付与された微振動の強度に応じて各圧力室のフラッシング動作による液体の噴射量が変化するように、各単位噴射部にフラッシング動作を実行させる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1実施形態に係る印刷装置の部分的な模式図である。
【図2】記録ヘッドの断面図である。
【図3】第1実施形態の印刷装置の電気的な構成のブロック図である。
【図4】駆動信号の波形図である。
【図5】記録ヘッドの電気的な構成のブロック図である。
【図6】間欠時間と着弾位置誤差との関係を示すグラフである。
【図7】間欠時間とフラッシング動作による必要噴射量との関係を示すグラフである。
【図8】第1実施形態の印刷装置の動作を示すフローチャートである。
【図9】記憶部が記憶するテーブルの構成を示す図である。
【図10】第2実施形態の印刷装置の電気的な構成のブロック図である。
【図11】記録ヘッドおよび噴射検出部の構成を示す図である。
【図12】第2実施形態の印刷装置の動作を示すフローチャートである。
【図13】第3実施懈怠の印刷装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
<A:第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係るインクジェット方式の印刷装置100の部分的な模式図である。印刷装置100は、微細な液滴状のインクを記録紙200に噴射する液体噴射装置であり、キャリッジ12と移動機構14と用紙搬送機構16とキャップ18とを具備する。
【0022】
キャリッジ12には、インクカートリッジ22と記録ヘッド24とが搭載される。インクカートリッジ22は、記録紙200に噴射されるインク(液体)を貯留する容器である。記録ヘッド24は、インクカートリッジ22に貯留されたインクを記録紙200に噴射する液体吐出部として機能する。なお、印刷装置100の筐体(図示略)にインクカートリッジ22を固定して記録ヘッド24にインクを供給する構成も採用され得る。
【0023】
図1の移動機構14は、案内軸122に沿ってキャリッジ12を主走査方向(記録紙200の幅方向)に往復させる。キャリッジ12の位置は、リニアエンコーダ等の検出器(図示略)で検出されて移動機構14の制御に利用される。用紙搬送機構16は、キャリッジ12の往復に並行して記録紙200を副走査方向に移動させる。キャリッジ12の往復時に記録ヘッド24が記録紙200にインクを噴射することで所望の画像が記録紙200に記録(印刷)される。
【0024】
移動機構14は、吐出面が記録紙200に対向する範囲の外側の位置(以下「待避位置」という)まで記録ヘッド24を移動させることが可能である。待避位置にある記録ヘッド24の吐出面に対向するようにキャップ18が配置される。キャップ18は、記録ヘッド24の吐出面を封止する。キャップ18の近傍には吐出面を払拭するワイパー(図示略)が配置される。
【0025】
図2は、記録ヘッド24の断面図(主走査方向に垂直な断面)である。図2に示すように、記録ヘッド24は、振動ユニット42と収容体44と流路ユニット46とを具備する。振動ユニット42は、圧電振動子422とケーブル424と固定板426とを含んで構成される。圧電振動子422は、圧電材料と電極とが交互に積層された縦振動型の圧電素子であり、ケーブル424を介して供給される駆動信号に応じて振動する。圧電振動子422を固定した固定板426が収容体44の内壁面に接合された状態で振動ユニット42は収容体44に収容される。
【0026】
流路ユニット46は、相互に対向する基板462と基板464との間隙に流路形成板466を介挿した構造体である。流路形成板466は、圧力室50と供給路52と貯留室54とを含む空間を基板462と基板464との間隙に形成する。圧力室50は、振動ユニット42毎に隔壁で個別に区画されるとともに供給路52を介して貯留室54に連通する。インクカートリッジ22から供給されるインクは貯留室54に貯留される。各ノズル56は、各圧力室50に対応するように基板462に形成される。各ノズル56は、流路ユニット46の外部と圧力室50とを連通させる貫通孔である。以上の説明から理解されるように、貯留室54から供給路52と圧力室50とノズル56とを経由して外部に至るインクの流路が形成される。
【0027】
基板464は、弾性材料で形成された平板材である。基板464のうち圧力室50の反対側の領域には島状の振動板48が形成される。振動板48には圧電振動子422の先端面(自由端)が接合される。したがって、駆動信号の供給により圧電振動子422が振動すると、振動板48を介して基板464が変位することで圧力室50の容積が変化して圧力室50内のインクの圧力が変動する。すなわち、圧電振動子422は、圧力室50内の圧力を変動させる圧力発生素子として機能する。以上に説明した圧力室50内の圧力の変動に応じてノズル56からインクを噴射することが可能である。すなわち、圧電振動子422と圧力室50とノズル56とで構成される要素は、インクを噴射する単位(以下「単位噴射部U」という)として機能する。
【0028】
図3は、印刷装置100の電気的な構成のブロック図である。図3に示すように、印刷装置100は、制御装置102と印刷処理部(プリントエンジン)104とを具備する。制御装置102は、印刷装置100の全体を制御する要素であり、制御部60と記憶部62と駆動信号発生部64と外部I/F(interface)66と内部I/F68とを含んで構成される。記録紙200に印刷される画像を示す印刷データDPが外部装置(例えばホストコンピュータ)300から外部I/F66に供給され、内部I/F68には印刷処理部104が接続される。印刷処理部104は、制御装置102による制御のもとで記録紙200に画像を記録する要素であり、前述の記録ヘッド24と移動機構14と用紙搬送機構16とを含んで構成される。
【0029】
印刷装置100の動作期間は、印刷実行期間と印刷準備期間とを包含する。印刷実行期間は、制御装置102による制御のもとで印刷処理部104が記録紙200に画像を記録する期間(すなわち、実際に印刷が実行される期間)である。他方、印刷準備期間は、印刷実行期間での動作を準備する期間であり、例えば印刷装置100の電源が投入された直後(印刷実行期間の開始前)に設定される。各圧力室50内のインクは、ノズル56内に露出する表面(メニスカス)からの水分の蒸発等に起因して経時的に増粘する。印刷準備期間では、圧力室50内のインクの噴射が増粘等に起因して阻害される状態が、ノズル56からインクが適正に噴射される状態に改善されるように記録ヘッド24(各単位噴射部U)を調整する期間である。具体的には、印刷準備期間では微振動の付与とフラッシング動作とが実行される。なお、印刷準備期間の時期は任意である。例えば、印刷準備期間を定期的に設定した構成も採用される。
【0030】
記憶部62は、制御プログラム等を記憶するROMと、画像の印刷に必要な各種のデータを一時的に記憶するRAMとを含んで構成される。制御部60は、記憶部62に記憶された制御プログラムの実行で印刷装置100の各要素(例えば印刷処理部104)を統括的に制御する。例えば、制御部60は、圧力室50内のインクの噴射とインクに対する微振動の付与(すなわち非噴射)との何れかを指示する制御データDCを生成する。微振動とは、圧力室50内のインクがノズル56から噴射されない程度の振動を意味する。制御データDCが指示する微振動には強微振動と弱微振動とがある。強微振動の強度(パワーや振幅)σ1は弱微振動の強度σ2を上回る(σ1>σ2)。
【0031】
制御部60は、外部装置300から外部I/F66に供給される印刷データDPに応じてインクの噴射/非噴射(微振動)を指示する制御データDCを印刷実行期間にて生成する。すなわち、記録紙200に対するインクの噴射で印刷データDPに応じた画像を記録紙200に記録する動作を記録ヘッド24に実行させる。また、制御部60は、印刷準備期間にて微振動の付与やフラッシング動作が実行されるように記録ヘッド24を制御する。
【0032】
駆動信号発生部64は、駆動信号COM1および駆動信号COM2を生成する。駆動信号COM1および駆動信号COM2の各々は、各圧電振動子422を駆動する周期信号である。図4に示すように、駆動信号COM1の1周期(記録周期)内には、噴射パルスPD1と強微振動パルスPS1とが配置され、駆動信号COM2の1周期内には弱微振動パルスPS2と噴射パルスPD2とが配置される。駆動信号発生部64は、印刷実行期間内および印刷準備期間内の双方において駆動信号COM1および駆動信号COM2を生成する。
【0033】
強微振動パルスPS1および弱微振動パルスPS2の各々は、微振動を圧力室50内に付与する駆動パルスである。図4に示すように、強微振動パルスPS1および弱微振動パルスPS2の各々は、所定の基準電位VREFから高位側(圧力室50を減圧させる方向)の電位まで電位が変化する区間p1と、区間p1の終端の電位を維持する区間p2と、電位が低位側に変化して基準電位VREFに復帰する区間p3とを含んで構成される台形状の波形である。弱微振動パルスPS2の区間p2の電位VH2は強微振動パルスPS1の区間p2の電位VH1を下回り、弱微振動パルスPS2の区間p1や区間p3の勾配は強微振動パルスPS1の区間p1や区間p3の勾配と比較して緩慢である。したがって、強微振動パルスPS1の供給で圧力室50内には強微振動(強度σ1)が付与され、弱微振動パルスPS2の供給で圧力室50内には弱微振動(強度σ2)が付与される。
【0034】
噴射パルスPD1および噴射パルスPD2の各々は、圧電振動子422に供給された場合に所定量のインクがノズル56から噴射するように圧力室50を振動させる駆動パルスである。図4に示すように、噴射パルスPD1および噴射パルスPD2の各々は、所定の基準電位VREFから高位側に電位が変化する区間d1と、基準電位VREFから低位側に電位が変化する区間d2と、高位側に電位が変化して基準電位VREFに復帰する区間d3とを含んで構成される。なお、噴射パルスPD1と噴射パルスPD2とで波形を相違させた構成も採用され得る。
【0035】
図5は、記録ヘッド24の電気的な構成の模式図である。図5に示すように、記録ヘッド24は、相異なる単位噴射部Uに対応する複数の駆動回路32を含んで構成される。駆動信号発生部64が生成した駆動信号COM1および駆動信号COM2は、内部I/F68を介して複数の駆動回路32に共通に供給される。また、制御部60が生成した制御データDCは内部I/F68を介して各駆動回路32に供給される。
【0036】
各駆動回路32は、制御部60から供給される制御データDCに応じた区間を駆動信号COM1または駆動信号COM2から選択して圧電振動子422に供給する。例えば、制御データDCがインクの噴射を指示する場合、駆動回路32は、駆動信号COM1の噴射パルスPD1と駆動信号COM2の噴射パルスPD2とを選択して圧電振動子422に供給する。したがって、圧力室50内のインクがノズル56から噴射される。
【0037】
また、強微振動の付与を制御データDCが指示する場合、駆動回路32は、駆動信号COM1の強微振動パルスPS1を選択して圧電振動子422に供給する。したがって、圧力室50内に強微振動が付与され、圧力室50内のインクは噴射されずに撹拌される。また、弱微振動の付与を制御データDCが指示する場合、駆動回路32は、駆動信号COM2の弱微振動パルスPS2を選択して圧電振動子422に供給する。したがって、圧力室50内に弱微振動が付与され、圧力室50内のインクは噴射されずに撹拌される。強微振動の強度σ1は弱微振動の強度σ2を上回るから、強微振動が付与された圧力室50内のインクは弱微振動が付与された圧力室50内のインクよりも充分に撹拌される。以上の説明から理解されるように、制御部60は、圧力室50に付与される微振動の強度を制御する手段(微振動制御手段)として機能する。
【0038】
また、制御部60は、記録ヘッド24にフラッシング動作を実行させる手段(噴射制御手段)としても機能する。制御部60は、印刷準備期間において記録ヘッド24にフラッシング動作を実行させる。フラッシング動作は、記録ヘッド24を待避位置(キャップ18上)に移動させた状態で各単位噴射部Uに強制的にインクを噴射させる動作である。制御部60は、インクの噴射を指示する制御データDCを各駆動回路32に供給することで各単位噴射部Uにフラッシング動作(すなわち、噴射パルスPD1および噴射パルスPD2の選択)を実行させる。フラッシング動作で各ノズル56から噴射されたインクは、待避位置のキャップ18に受容される。以上のフラッシング動作により、各ノズル56の目詰まりや圧力室50内への気泡の侵入が解消されるとともにインクの増粘が解消される。フラッシング動作における各単位噴射部Uからのインクの噴射量は、制御部60が各単位噴射部Uに制御データDCを供給してインク噴射回数を設定することにより可変に制御される。
【0039】
図6は、微振動パルスPS1およびPS2の供給で圧力室50に付与される微振動の効果を説明するためのグラフである。図6の横軸は、単位噴射部Uが最後にインクを噴射した時点からの経過時間(間欠時間)を意味し、図6の縦軸は、単位噴射部Uから噴射されたインクが実際に着弾する位置と目標の位置との距離(着弾位置誤差)を意味する。図6には、微振動パルス(PS1,PS2)の高位側の電位VH(VH1,VH2)を変化させた複数の場合について間欠時間と着弾位置誤差との関係が図示されている。
【0040】
前述の通り、圧力室50内のインクは、ノズル56内に露出する液面(メニスカス)から水分が蒸発することで局所的に増粘する。増粘が進行するほど単位噴射部Uから噴射されるインクの速度は低下するから、着弾位置誤差は、圧力室50内のインクの増粘の程度を示す指標(増粘が進行するほど着弾位置誤差が増加する)として把握される。図6から理解されるように、間欠時間が長期化するほど圧力室50内のインクの増粘が進行して結果的に着弾位置誤差が増加する。したがって、圧力室50内のインクの増粘を解消するには、間欠時間が長いほど高強度の微振動を付与する必要がある。
【0041】
微振動パルスPS1の供給で圧力室50内に微振動を付与すると、圧力室50内のインクが撹拌される。したがって、圧力室50内のインクのうちノズル56の近傍の増粘した成分(以下「増粘成分」という)が圧力室50内で拡散し、結果的に着弾位置誤差(局所的な増粘)は低減される。図6に示すように、微振動パルスの電位VHが高い(すなわち圧力室50内に付与される微振動の強度が高い)ほど着弾位置誤差の低減の効果は顕著となる。すなわち、微振動の強度が高いほど増粘成分が圧力室50内の広範囲に拡散するという傾向が図6から把握される。
【0042】
図7は、間欠時間(横軸)とフラッシング動作で要求されるインクの噴射量(縦軸)との関係を示すグラフである。図7の縦軸は、インクの増粘に起因した着弾位置誤差をフラッシング動作で充分に抑制する(理想的に着弾位置誤差をゼロにする)ために必要な噴射量(以下「必要噴射量」という)を意味する。間欠時間が長いほどインクの増粘は進行するから、図7から理解されるように必要噴射量は増加する。
【0043】
図7には、圧力室50に微振動を付与した場合(実線)と微振動を付与しない場合(破線)との各々について間欠時間と必要噴射量との関係が図示されている。前述の通り、微振動の強度が高いほど、インクの増粘成分は圧力室50内の広範囲に拡散する。そして、増粘成分の分布が広範囲に拡散するほど、フラッシング動作で増粘成分を充分に噴射するために必要なインクの吐出量(必要噴射量)は増加する。例えば図7から把握されるように、圧力室50内に微振動を付与した場合の必要噴射量(例えばFL1)は、微振動を付与しない場合の必要噴射量(例えばFL2)を上回る。すなわち、微振動の強度が高いほどフラッシング動作による必要噴射量が増加するという傾向が把握される。
【0044】
以上の傾向を背景として、制御部60は、印刷準備期間において、圧力室50内のインクの増粘の度合に応じた強度の微振動を各圧力室50に付与するとともに、微振動の強度に応じてフラッシング動作での噴射量が変化するように各単位噴射部Uにフラッシング動作を実行させる。以下では図8を参照して、印刷準備期間での制御部60の具体的な動作を詳細に説明する。なお、以下の説明では1個の単位噴射部Uの動作に着目して説明するが、制御部60は複数の単位噴射部Uを並行して制御することが可能である。
【0045】
図8の動作を開始すると、制御部60は、単位噴射部Uの圧力室50内のインクの増粘の度合(インクの状態)を判定する(S101,S102)。間欠時間T0が長いほどインクの増粘が進行するという前述の傾向を考慮して、第1実施形態の制御部60は、単位噴射部Uが最後にインクを噴射した時刻(以下「最終噴射時刻」という)TLからの経過時間(間欠時間T0)に応じて単位噴射部Uの圧力室50内のインクの増粘の度合(大小)を判定する。
【0046】
単位噴射部Uの間欠時間T0の特定には、記憶部62に記憶されたテーブルSTが使用される。図9に示すように、テーブルSTは、単位噴射部U毎に最終噴射時刻TLが登録されたデータテーブルである。テーブルSTの各最終噴射時刻TLは、各単位噴射部Uの圧力室50からインクが噴射される度に順次に更新される。
【0047】
制御部60は、最終噴射時刻TLと現在時刻との差分を間欠時間T0として算定し(S101)、ステップS101で算定した間欠時間T0と所定の閾値Tthとの大小に応じて圧力室50内のインクの増粘の度合(大小)を判定する(S102)。具体的には、間欠時間T0が閾値Tthを上回る場合には増粘が大きいと判定し、間欠時間T0が閾値Tthを下回る場合には増粘が小さいと判定する。閾値Tthは、増粘が進行してインクが噴射不能となる間欠時間T0が閾値Tthを上回るように実験的または統計的に選定される。したがって、ステップS102の判定は、インクの噴射の可否を判定する処理に相当する。以上から理解されるように、制御部60は、インクの増粘の度合(インクの状態)を判定する手段(状態特定手段)として機能する。
【0048】
インクの増粘が大きい(噴射不能)と判定した場合(S102:YES)、制御部60は、強微振動の付与を指示する制御データDCを単位噴射部Uに対応する駆動回路32に供給する(S103)。駆動回路32は、駆動信号COM1の強微振動パルスPS1を選択して圧電振動子422に供給する。したがって、圧電振動子422により圧力室50内に強微振動(強度σ1)が付与され、圧力室50内のインクは噴射されずに撹拌される。
【0049】
他方、インクの増粘が小さい(噴射可能)と判定した場合(S102:NO)、制御部60は、弱微振動の付与を指示する制御データDCを単位噴射部Uに対応する駆動回路32に供給する(S104)。駆動回路32は、駆動信号COM2の弱微振動パルスPS2を選択して圧電振動子422に供給する。したがって、圧電振動子422により圧力室50内に弱微振動(強度σ2)が付与され、圧力室50内のインクは噴射されずに撹拌される。
【0050】
制御部60は、ステップS103で強微振動が付与された単位噴射部Uについて、噴射量FL3のフラッシング動作(噴射パルスPD1および噴射パルスPD2の選択)を実行させる(S105)。他方、制御部60は、ステップS104で弱微振動が付与された単位噴射部Uについて、噴射量FL4のフラッシング動作(噴射パルスPD1および噴射パルスPD2の選択)を実行させる(S106)。
【0051】
フラッシング動作でのインクの噴射量FL3および噴射量FL4は、インクに付与された微振動の強度に応じて可変に設定される。図7を参照して説明した通り、微振動の強度が高いほどフラッシング動作による必要噴射量が増加する。したがって、ステップS103で強微振動が付与された単位噴射部Uの噴射量FL3は、ステップS104で弱微振動が付与された単位噴射部Uの噴射量FL4を上回るように設定される。
【0052】
以上に説明した第1実施形態では、各圧力室50に付与される微振動の強度がインクの状態(増粘の度合)に応じて可変に制御される。したがって、印刷準備期間において増粘の度合に関わらず各圧力室50に弱微振動を付与する構成と比較して、増粘の度合が大きい圧力室50についてもインクの増粘を有効に解消することができるという利点がある。また、印刷準備期間において増粘の度合に関わらず各圧力室50に強微振動を付与する構成と比較すると、増粘の程度が小さい圧力室50に対する微振動の強度が低減される分だけ、微振動の付与に必要な電力が低減されるという利点がある。
【0053】
更に、第1実施形態では、各圧力室50に付与された微振動の強度に応じてフラッシング動作での噴射量が可変に制御される。具体的には、弱微振動が付与された単位噴射部Uについては噴射量FL4のフラッシング動作が実行されるから、微振動の強度に関わらず噴射量FL3のフラッシング動作を実行する構成と比較して、フラッシング動作によるインクの消費量を削減することができる。また、強微振動が付与された単位噴射部Uについては噴射量FL3のフラッシング動作が実行されるから、微振動の強度に関わらず噴射量FL4のフラッシング動作を実行する構成と比較して、微振動で拡散した増粘成分を充分に噴射することが可能である。
【0054】
<B:第2実施形態>
本発明の第2実施形態を以下に説明する。なお、以下に例示する各態様において作用や機能が第1実施形態と同等である要素については、以上の説明で参照した符号を流用して各々の詳細な説明を適宜に省略する。
【0055】
第1実施形態では、最終噴射時刻TLからの経過時間(間欠時間T0)に応じて圧力室50内のインクの状態(増粘の度合)を判定した。第2実施形態では、圧電振動子422を振動させた結果に応じてインクの状態を判定する。また、1回の強微振動の付与ではインクが噴射可能な状態に遷移しない可能性があることを考慮して、インクが噴射可能となるまで圧力室50に微振動の付与を反復する。
【0056】
図10は、第2実施形態の印刷装置100のブロック図である。図10に示すように、印刷装置100は、第1実施形態と同様の要素に加えて噴射検出部20を具備する。噴射検出部20は、各単位噴射部Uによるインクの噴射を検出する要素であり、図11に示すように着弾部材72と検出回路76とを具備する。着弾部材72は、待避位置にある記録ヘッド24の吐出面26に対向するようにキャップ18内に収容された導電性の部材(例えば金属メッシュ)である。検出回路76は、着弾部材72に対するインクの着弾の有無に応じた検出信号Dを生成および出力する。
【0057】
各単位噴射部Uが噴射するインクは帯電している。したがって、単位噴射部Uから噴射されたインクが着弾部材72に着弾すると着弾部材72の電位が変化する。インクが増粘等により噴射不能である場合には、制御部60から噴射指示があっても単位噴射部Uからインクが噴射されず、着弾部材72の電位は変化しない。検出回路76は、着弾部材72の電位変化に応じた検出信号Dを生成して内部I/F68に出力する。したがって、制御部60は、各単位噴射部Uがインクを噴射可能な状態にあるか否かを検出信号Dに応じて判定することが可能である。以上に例示した噴射可否判定の詳細は、例えば特開2010-162711号公報に詳述されている。
【0058】
第2実施形態の制御部60は、印刷準備期間において、前掲の図8の処理に代えて図12の処理を実行する。図12の処理を開始すると、制御部60は、単位噴射部Uによるインクの噴射の可否を判定する(S201,S202)。具体的には、制御部60は、記録ヘッド24を待避位置に移動させたうえでインクの噴射を指示し(S201)、噴射の指示に応じてインクが実際に噴射されたか否かを、検出回路76が生成する検出信号Dに応じて判定する(S202)。
【0059】
インクが噴射可能であると判定した場合(S202:YES)、第1実施形態と同様に、圧力室50内に弱微振動が付与される(S207)。他方、インクが噴射不能であると判定した場合(S202:NO)、制御部60は、強微振動の付与を指示する制御データDCを、単位噴射部Uに対応する駆動回路32に供給する(S203)。したがって、圧力室50内に強微振動が付与される。
【0060】
強微振動の付与後、制御部60は、ステップS201およびステップS202と同様に、単位噴射部Uによるインクの噴射の可否を判定する(S204,S205)。強微振動の付与にも関わらず依然としてインクが噴射不能であると判定した場合(S205:NO)、制御部60は、圧力室50内への強微振動の付与(S203)およびインクの噴射可否の判断(S204,S205)を反復する。1回の強微振動の付与ではインクの噴射が可能とならない場合があるが、反復的に強微振動を付与することによりインクが噴射可能な状態に遷移し得る。インクが噴射可能になったと判定した場合(S205:YES)、制御部60はステップS206に処理を移行する。すなわち、制御部60は、圧力室50内のインクが噴射可能となるまで反復して圧力室50に強微振動を付与する。
【0061】
制御部60は、ステップS203で強微振動を付与した単位噴射部Uについて噴射量FL3のフラッシング動作を実行させる(S206)。他方、制御部60は、ステップS207で弱微振動を付与した単位噴射部Uについて噴射量FL4のフラッシング動作を実行させる(S208)。第1実施形態と同様、ステップS203で強微振動が付与された単位噴射部Uの噴射量FL3は、ステップS207で弱微振動が付与された単位噴射部Uの噴射量FL4を上回る。
【0062】
以上に説明した第2実施形態では、第1実施形態と同様の効果が奏される。さらに、インクが噴射可能となるまで強微振動の付与が反復されるので、噴射不能の場合に1回だけ強微振動を付与する第1実施形態と比較して確実に圧力室50内のインクを噴射可能とすることができる。
【0063】
<C:第3実施形態>
本発明の第3実施形態を以下に説明する。第2実施形態では圧力室50に付与した強微振動の反復回数に関わらずフラッシング動作での噴射量FL3を一定としたが、第3実施形態では圧力室50に対する強微振動の付与の回数に応じてフラッシング動作の噴射量を可変に制御する。また、第3実施形態では、所定の回数を上回る強微振動を圧力室50に付与してもインクが噴射可能とならない場合には、フラッシング動作に代えてクリーニング動作を実行する。
【0064】
第3実施形態の制御部60は、印刷準備期間において、前掲の図12の処理に代えて図13の処理を実行する。第2実施形態(図12)のステップS201およびステップS202と同様に、制御部60は、単位噴射部Uによるインクの噴射の可否を判定する(S301,S302)。インクが噴射可能であると判定した場合(S302:YES)、第1実施形態や第2実施形態と同様に、圧力室50内に弱微振動が付与される(S310)。
【0065】
他方、インクが噴射不能であると判定した場合(S302:NO)、制御部60は、強微振動の回数nを0に初期化する(S303)。そして、制御部60は、回数nに1を加算するとともに、強微振動の付与を指示する制御データDCを駆動回路32に供給する(S304)。したがって、圧力室50に強微振動が付与される。
【0066】
強微振動を付与すると、制御部60は、ステップS301およびステップS302と同様に、単位噴射部Uによるインクの噴射の可否を判定する(S305、S306)。強微振動の付与によりインクが噴射可能になったと判定した場合(S306:YES)、第2実施形態と同様に、制御部60は、強微振動の反復を終了してステップS308に処理を移行する。
【0067】
強微振動の付与にも関わらず依然としてインクが噴射不能であると判定した場合(S306:NO)、制御部60は、強微振動の回数nが所定の閾値Kを上回るか否かを判定する(S307)。回数nが閾値K以下である場合(S307:NO)、制御部60は、強微振動の付与を反復する(S304〜S306)。すなわち、閾値Kに相当する回数を上限として、インクが噴射可能な状態に遷移するまで強微振動の付与が反復される。
【0068】
閾値Kを上回る回数nの強微振動を付与したにも関わらずインクが噴射可能な状態に遷移しない場合(S307:YES)、制御部60は、強微振動の反復を強制的に終了して単位噴射部Uにクリーニング動作を実行させる。クリーニング動作は、フラッシング動作よりも強力に圧力室50内のインクを流動させる処理であり、例えば、記録ヘッド24を待避位置(キャップ18上)に移動させた状態で、吸引ポンプ(不図示)で圧力室50内のインクを強制的に吸引して排出する動作である。噴射不能な状態にある圧力室50内のインクがクリーニング動作で排出される結果、圧力室50内のインクが噴射可能な状態に変化する。
【0069】
また、制御部60は、ステップS310で弱微振動を付与した単位噴射部Uについて噴射量FL4のフラッシング動作を実行させる(S311)。他方、制御部60は、ステップS304〜S306で強微振動を付与した単位噴射部Uについて噴射量FL3のフラッシング動作を実行させる(S308)。第1実施形態や第2実施形態と同様、強微振動が付与された単位噴射部Uのフラッシング動作の噴射量FL3は、弱微振動が付与された単位噴射部Uのフラッシング動作の噴射量FL4を上回る。
【0070】
更に、制御部60は、単位噴射部Uに付与された強微振動の回数nに応じて噴射量FL3を可変に制御する。図7を参照して説明した通り、微振動の強度が高いほどフラッシング動作による必要噴射量が増加するから、制御部60は、強微振動の回数nが多いほど噴射量FL3が増加するように噴射量FL3を制御する。
【0071】
以上に説明した第3実施形態でも、第1実施形態や第2実施形態と同様の効果が奏される。更に、強微振動の付与を反復してもインクが噴射可能とならない場合にクリーニング動作を実行するので、クリーニング動作を実行しない第2実施形態と比較して確実に圧力室50内のインクを噴射可能とすることができる。また、制御部60がクリーニング動作の要否を判断するので、利用者がクリーニング要否を判断する手間を省くことができ、かつ適切なクリーニング要否の判断が可能となる。
【0072】
また、圧力室50に付与した強微振動の回数nが多くなるほどフラッシング動作での噴射量FL3が増加するから、噴射量FL3が一定に維持される第2実施形態と比較して、強微振動の付与で圧力室50内に拡散したインクの増粘成分を充分に排出することが可能である。
【0073】
<D:変形例>
以上の各形態は多様に変形される。具体的な変形の態様を以下に例示する。以下の例示から任意に選択された2以上の態様は相互に矛盾しない限り適宜に併合され得る。
【0074】
(1)変形例1
以上の各形態では、単位噴射部U毎にインクの状態を判断したが、一部の単位噴射部Uのインクの状態に応じて他の単位噴射部Uのインクの状態を推定する構成も採用される。例えば、複数の単位噴射部Uのうち最後にインクを噴射した1個の単位噴射部Uが最後にインクを噴射した時点からの経過時間に応じて、複数の単位噴射部Uのインクの増粘の度合(噴射の可否)を推定する構成が好適である。以上の構成では、単位噴射部U毎の判断が不要となるから、制御部60(状態特定手段)の処理の負荷が軽減される。
【0075】
(2)変形例2
以上の各形態では、複数系統の駆動信号(COM1,COM2)を記録ヘッド24に供給したが、1系統の駆動信号のみを各圧電振動子422の駆動に使用する構成や3系統以上の駆動信号を各圧電振動子422の駆動に使用する構成も採用され得る。1系統の駆動信号を使用する構成では、例えば、噴射パルスPD1と微振動パルスPS1と微振動パルスPS2とが時系列に配列された駆動信号が記録ヘッド24に供給される。
【0076】
また、駆動信号の各パルス(PD1,PD2,PS1,PS2)の波高や波形は任意である。例えば、噴射パルスPD1と噴射パルスPD2の波高を異ならせてもよい。また、図4に例示した台形状のパルスには限定されず、例えば矩形状のパルスを採用することも可能である。駆動信号の微振動パルス(PS1,PS2)の波形は、圧力室50内のインクがノズル56から吐出されない程度にインク(メニスカス)を揺動させる波形であれば、図4の例示に限定されることなく任意に変更され得る。
【0077】
(3)変形例3
以上の各形態では、インクの増粘の度合が小さい場合(インクが噴射可能である場合)に圧力室50内に弱微振動を付与したが、弱微振動の付与に代えて、圧力室50内の振動を停止させる構成も採用され得る。圧力室50内の振動を停止させる方法は任意である。例えば、圧電振動子422に供給される電位を所定値(例えば基準電位VREF)に固定することで圧力室50内の振動を停止させる構成や、圧電振動子422に対する電位(基準電位VREF)の供給を停止する(すなわち、圧電振動子422と駆動信号COM1および駆動信号COM2の供給線とを電気的に絶縁する)ことで圧力室50の微振動を停止する構成も採用され得る。
【0078】
以上の説明から理解されるように、制御部60(微振動制御手段)は、圧力室50内に付与される微振動の強度を可変に制御する要素として包括され、微振動の強度という概念は、微振動の強弱だけでなく微振動の有無も含意する。すなわち、第1強度と第1強度を下回る第2強度とを含む複数の強度の何れかに微振動の強度が可変に設定される場合を想定すると、第2強度は、実際に圧力室50内の圧力の変動を発生させる範囲内で第1強度を下回る強度と、圧力室50内に圧力の変動を発生させない強度(すなわち微振動の停止(オフ)に相当する強度ゼロ)との双方を包含する。
【0079】
(4)変形例4
以上の各形態では、印刷実行期間と印刷準備期間とで共通の駆動信号(COM1,COM2)を利用したが、駆動信号を印刷実行期間と印刷準備期間とで相違させた構成も採用され得る。
【0080】
(5)変形例5
圧力室50内のインクの増粘が進行する度合は、印刷装置100の使用環境(温度や湿度)に応じて変化する。したがって、インクの増粘の度合を判断するときの基準(例えば第1実施形態の閾値Tth)を印刷装置100の使用環境に応じて可変に設定する構成も好適である。
【0081】
(6)変形例6
第2実施形態や第3実施形態では、強微振動の付与毎に強度を変化させる構成も採用され得る。例えば、強微振動の付与毎に強度を段階的に上昇させる構成によれば、最初から高強度の強微振動を付与する場合と比較して、圧力室50内の過剰な振動(増粘成分の過剰な拡散)を抑制できるという利点がある。
【0082】
(7)変形例7
圧力室50内のインクの増粘の度合を特定する方法は以上の例示に限定されない。例えば、圧電振動子422を振動させたときの実際のインクの振動を検出して増粘の度合(噴射可否)を判定する構成も採用される。圧力室50内のインクの振動は印刷の実行中にも検出され得るから、印刷の実行中でもインクの増粘の度合を判定することが可能である。また、記録紙200に対して各単位噴射部Uからインクを噴射させたうえで記録紙200を光学的に読取ることで、各単位噴射部Uから実際にインクが噴射された否か(インクの増粘の度合)を判定する構成も採用される。
【0083】
(8)変形例8
以上の各形態では縦振動型の圧電振動子422を例示したが、圧力室50内の圧力を変化させる要素(圧力発生素子)の構成は以上の例示に限定されない。例えば、例えば撓み振動型の圧電振動子422や静電アクチュエータ等の振動体を利用することも可能である。また、本発明の圧力発生素子は、圧力室50に機械的な振動を付与する要素に限定されない。例えば、圧力室50の加熱で気泡を発生させて圧力室50内の圧力を変化させる発熱素子(ヒーター)を圧力発生素子として利用することも可能である。すなわち、本発明の圧力発生素子は、圧力室50内の圧力を変化させる要素として包括され、圧力を変化させる方法(ピエゾ方式/サーマル方式)や構成の如何は不問である。
【0084】
(9)変形例9
以上の各形態の印刷装置100は、プロッターやファクシミリ装置,コピー機等の各種の機器に採用され得る。もっとも、本発明の液体噴射装置の用途は画像の印刷に限定されない。例えば、各色材の溶液を噴射する液体噴射装置は、液晶表示装置のカラーフィルタを形成する製造装置として利用される。また、液体状の導電材料を噴射する液体噴射装置は、例えば有機EL(Electroluminescence)表示装置や電界放出表示装置(FED:Field Emission Display)等の表示装置の電極を形成する電極製造装置として利用される。また、生体有機物の溶液を噴射する液体噴射装置は、生物科学素子(バイオチップ、マイクロアレイ)を製造するチップ製造装置として利用される。
【0085】
また、以上の各形態では、記録ヘッド24を搭載したキャリッジ12が主走査方向に移動するシリアル型の印刷装置100を例示したが、記録紙の幅方向の全域にわたって複数のノズルが配列するように主走査方向に長尺状に構成されたライン型の記録ヘッドを利用した印刷装置にも本発明を適用することが可能である。
【符号の説明】
【0086】
100……印刷装置、12……キャリッジ、14……移動機構、16……用紙搬送機構、18……キャップ、20……噴射検出部、22……インクカートリッジ、24……記録ヘッド、32……駆動回路、42……振動ユニット、422……圧電振動子、46……流路ユニット、462,464……基板、466……流路形成板、48……振動板、50……圧力室、52……供給路、54……貯留室、56……ノズル、102……制御装置、104……印刷処理部、60……制御部、62……記憶部、64……駆動信号発生部、66……外部I/F、68……内部I/F、72……着弾部材、76……検出回路、200……記録紙、300……外部装置、COM1,COM2……駆動信号、PD1,PD2……噴射パルス、PS1……強微振動パルス、PS2……弱微振動パルス、ST……テーブル、T0……間欠時間、U……単位噴射部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体が充填された圧力室と、前記圧力室に連通するノズルと、前記圧力室内の圧力を変動させる圧力発生素子とを各々が含み、前記圧力室内の圧力の変動に応じて前記圧力室内の前記液体を前記各ノズルから噴射する複数の単位噴射部と、
前記各圧力室内の前記液体の状態を特定する状態特定手段と、
前記状態特定手段により特定された前記各圧力室内の前記液体の状態に応じた強度の微振動が前記各圧力室に付与されるように前記各単位噴射部を制御する微振動制御手段と、
前記各圧力室に付与された前記微振動の強度に応じて前記各圧力室のフラッシング動作による前記液体の噴射量が変化するように前記各単位噴射部にフラッシング動作を実行させる噴射制御手段と
を具備する液体噴射装置。
【請求項2】
前記状態特定手段は、前記液体の増粘の度合を特定し、
前記微振動制御手段は、前記状態特定手段が特定した前記液体の増粘の度合が大きい圧力室に第1強度の微振動が付与され、前記状態特定手段が特定した前記液体の増粘の度合が小さい圧力室に前記第1強度を下回る第2強度の微振動が付与されるように前記単位噴射部を制御し、
前記噴射制御手段は、前記第1強度の微振動が付与された前記圧力室のフラッシング動作による液体の噴射量が、前記第2強度の微振動が付与された前記圧力室のフラッシング動作による液体の噴射量を上回るように、前記各単位噴射部にフラッシング動作を実行させる
請求項1の液体噴射装置。
【請求項3】
前記状態特定手段は、前記各単位噴射部が最後に前記液体を噴射した時点からの経過時間に応じて前記液体の状態を特定する
請求項1または請求項2の液体噴射装置。
【請求項4】
前記状態特定手段は、前記各圧力室を振動させた結果に応じて前記液体の状態を特定する
請求項1または請求項2の液体噴射装置。
【請求項5】
前記微振動制御手段は、前記各圧力室内の前記液体が噴射可能となるまで、前記各圧力室に対する前記第1強度の微振動の付与を反復する
請求項2の液体噴射装置。
【請求項6】
前記噴射制御手段は、前記第1強度の微振動を前記各圧力室に付与した回数に応じて、前記各圧力室のフラッシング動作による液体の噴射量を可変に制御する
請求項5の液体噴射装置。
【請求項7】
前記噴射制御手段は、所定の回数を上回る回数の前記第1強度の微振動を前記各圧力室に付与しても前記各圧力室内の前記液体が噴射可能とならない場合にはクリーニング動作を実行する
請求項5または請求項6の液体噴射装置。
【請求項8】
前記第2強度は、微振動の停止に相当する
請求項2から請求項7の何れかの液体噴射装置。
【請求項9】
液体が充填された圧力室と、前記圧力室に連通するノズルと、前記圧力室内の圧力を変動させる圧力発生素子とを各々が含み、前記圧力室内の圧力の変動に応じて前記圧力室内の前記液体を前記各ノズルから噴射する複数の単位噴射部を具備する液体噴射装置の制御方法であって、
前記各圧力室内の前記液体の状態を特定し、
前記特定された前記各圧力室内の前記液体の状態に応じた強度の微振動が前記各圧力室に付与されるように前記各単位噴射部を制御し、
前記各圧力室に付与された前記微振動の強度に応じて前記各圧力室のフラッシング動作による前記液体の噴射量が変化するように前記各単位噴射部にフラッシング動作を実行させる
液体噴射装置の制御方法。
【請求項1】
液体が充填された圧力室と、前記圧力室に連通するノズルと、前記圧力室内の圧力を変動させる圧力発生素子とを各々が含み、前記圧力室内の圧力の変動に応じて前記圧力室内の前記液体を前記各ノズルから噴射する複数の単位噴射部と、
前記各圧力室内の前記液体の状態を特定する状態特定手段と、
前記状態特定手段により特定された前記各圧力室内の前記液体の状態に応じた強度の微振動が前記各圧力室に付与されるように前記各単位噴射部を制御する微振動制御手段と、
前記各圧力室に付与された前記微振動の強度に応じて前記各圧力室のフラッシング動作による前記液体の噴射量が変化するように前記各単位噴射部にフラッシング動作を実行させる噴射制御手段と
を具備する液体噴射装置。
【請求項2】
前記状態特定手段は、前記液体の増粘の度合を特定し、
前記微振動制御手段は、前記状態特定手段が特定した前記液体の増粘の度合が大きい圧力室に第1強度の微振動が付与され、前記状態特定手段が特定した前記液体の増粘の度合が小さい圧力室に前記第1強度を下回る第2強度の微振動が付与されるように前記単位噴射部を制御し、
前記噴射制御手段は、前記第1強度の微振動が付与された前記圧力室のフラッシング動作による液体の噴射量が、前記第2強度の微振動が付与された前記圧力室のフラッシング動作による液体の噴射量を上回るように、前記各単位噴射部にフラッシング動作を実行させる
請求項1の液体噴射装置。
【請求項3】
前記状態特定手段は、前記各単位噴射部が最後に前記液体を噴射した時点からの経過時間に応じて前記液体の状態を特定する
請求項1または請求項2の液体噴射装置。
【請求項4】
前記状態特定手段は、前記各圧力室を振動させた結果に応じて前記液体の状態を特定する
請求項1または請求項2の液体噴射装置。
【請求項5】
前記微振動制御手段は、前記各圧力室内の前記液体が噴射可能となるまで、前記各圧力室に対する前記第1強度の微振動の付与を反復する
請求項2の液体噴射装置。
【請求項6】
前記噴射制御手段は、前記第1強度の微振動を前記各圧力室に付与した回数に応じて、前記各圧力室のフラッシング動作による液体の噴射量を可変に制御する
請求項5の液体噴射装置。
【請求項7】
前記噴射制御手段は、所定の回数を上回る回数の前記第1強度の微振動を前記各圧力室に付与しても前記各圧力室内の前記液体が噴射可能とならない場合にはクリーニング動作を実行する
請求項5または請求項6の液体噴射装置。
【請求項8】
前記第2強度は、微振動の停止に相当する
請求項2から請求項7の何れかの液体噴射装置。
【請求項9】
液体が充填された圧力室と、前記圧力室に連通するノズルと、前記圧力室内の圧力を変動させる圧力発生素子とを各々が含み、前記圧力室内の圧力の変動に応じて前記圧力室内の前記液体を前記各ノズルから噴射する複数の単位噴射部を具備する液体噴射装置の制御方法であって、
前記各圧力室内の前記液体の状態を特定し、
前記特定された前記各圧力室内の前記液体の状態に応じた強度の微振動が前記各圧力室に付与されるように前記各単位噴射部を制御し、
前記各圧力室に付与された前記微振動の強度に応じて前記各圧力室のフラッシング動作による前記液体の噴射量が変化するように前記各単位噴射部にフラッシング動作を実行させる
液体噴射装置の制御方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−96423(P2012−96423A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−245030(P2010−245030)
【出願日】平成22年11月1日(2010.11.1)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月1日(2010.11.1)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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